JP2000073699A - 道路トンネルの換気・排煙システム - Google Patents

道路トンネルの換気・排煙システム

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JP2000073699A
JP2000073699A JP10257503A JP25750398A JP2000073699A JP 2000073699 A JP2000073699 A JP 2000073699A JP 10257503 A JP10257503 A JP 10257503A JP 25750398 A JP25750398 A JP 25750398A JP 2000073699 A JP2000073699 A JP 2000073699A
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tunnel
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air
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Noriaki Sato
憲明 佐藤
Takashi Yamada
隆司 山田
Kozo Komatsu
厚造 小松
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NIPPON MAINTENANCE KK
Ebara Corp
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METROPOLITAN EXPRESSWAY PUBLIC CORP
NIPPON MAINTENANCE KK
Ebara Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長大トンネルの換気、坑口環境保全ならびに
排煙を併せて良好に行え、且つ経済的な道路トンネルの
換気・排煙システムを提供する。 【解決手段】 トンネル内を縦流換気区間I,III と送
排気兼排煙区間II,IVとに区分けし、該送排気兼排煙区
間がトンネル中央付近及び出口側に位置するように配置
し、前記縦流換気区間には、トンネル内にトンネルの長
さ方向に沿った送気流量を発生させるファン2a,2b
を配置するとともに、前記送排気兼排煙区間には、複数
の送気口3a,3b,3cを有する送気ダクト4a,4
b,4cと複数の排気口5a,5bを有する排気ダクト
6a,6bとを設けた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、道路トンネルの
換気・排煙システムに係り、特に自動車が通行する長大
トンネルに要求される条件、即ち、1)トンネル内の環
境保全、2)坑口周辺の環境保全、3)車両火災等非常
時の排煙処理、4)経済性、などを満足させるようにし
た道路トンネルの換気・排煙システムに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車トンネルは、そのトンネル延長・
規模とも長大化しており、それにともなって換気システ
ムに課せられる条件が、質的に高度かつ多様化してい
る。道路トンネル内の換気は、トンネル内における通行
の安全、快適性および維持管理作業のための環境を確保
すること等を目的としている。このため、自動車の排出
ガスによる汚染空気濃度を許容値以下に維持する必要あ
り、道路トンネル内の汚染空気を外部に排出するととも
に、トンネル内に必要な新鮮空気量を導入・確保しなけ
ればならない。また近年では、トンネル出口から集中的
に漏れ出す汚染物質の大気環境保全への配慮が強く求め
られている。
【0003】更に、トンネル内で車両火災などの非常事
態における効率的かつ迅速な排煙処理機能も併せ持つこ
とが換気・排煙システムに求められている。
【0004】道路トンネル内の換気は、一般に自然換
気、縦流換気、横流換気の3方式に分類され、それぞれ
の利害得失を有している。自然換気方式は、文字通り強
制的な換気設備を特に設けずに、トンネル内の空気の流
通を自然に任せる方式である。縦流換気方式は、トンネ
ル内にジェットファン等のファンを設け、強制的にトン
ネル入口から新鮮空気を吸い込んで、トンネル内を縦方
向(長さ方向)に流通させて、トンネル出口から排出す
るようにした換気方式である。この換気方式は比較的経
済的であるが、トンネルが長大化すると、トンネル内の
出口付近での汚染物質濃度が高くなり、環境保全上の問
題が生じる。
【0005】横流換気方式は、車道に沿ってトンネルの
ほぼ全域に送気ダクトと排気ダクトとを設けて、新鮮空
気の導入と汚染空気の排出を同時に行い、自動車の通行
に伴い発生する汚染空気が送気ダクトから供給される新
鮮空気で薄められると共に、排気ダクトに直ちに排出さ
れるので、トンネル全域を良好な環境に保つことが可能
である。この換気方式は、トンネル延長に制限がないこ
とや火災時への対応に優れていることなどの面で最も信
頼性が高い。
【0006】しかしながら、上記横流換気方式にあって
は、送気ダクトと排気ダクトとをトンネル延長方向のほ
ぼ全長に亘って設けることから、送風機及び排風機を含
むダクト設備費が高価であることなどの経済上の難点が
ある。又、この換気方式を有する一方通行トンネルで
は、自動車の通行に伴うピストン作用により、トンネル
内に縦流風(トンネル内の長さ方向に沿った風)が誘起
されるため、この縦流風に乗って自動車の排出ガスがト
ンネル出口坑口に漏れ出し、このため、坑口周辺の大気
環境保全上の問題が生じてしまう。特に都市部の自動車
トンネルの出口付近で問題である。
【0007】図7は、従来の長大トンネルの排気システ
ムの一例を示す。トンネル1の出口坑口1bに近いとこ
ろに、集中排気立坑15を設け、図示しない排風機を備
えることで、図中の矢印方向に空気の流れを形成し、ト
ンネル1内を強制的に換気している。係る換気方式によ
ればトンネル出口坑口1bからも新鮮空気が流入するの
で、坑口の環境を良好に保全できる。しかしながら、係
る換気方式では、図2の鎖線で示すようにトンネル入口
1aから立坑集中排気口15に向かって直線的に汚染物
質の濃度が上昇し、坑口区間では逆流効果を受け濃度が
低下するが、許容濃度レベルを維持するためトンネル流
速(即ちトンネル流量)を大きくする必要がある。ま
た、立坑直下で急激な流速差が生じて、走行自動車をは
じめ歩行者への風環境が良好でない等の問題がある。
【0008】近年、延長が10kmクラスの道路トンネ
ルが出現し、或いは今後も計画されており、ますます道
路トンネルの長大化が進むものと考えられる。この様な
道路トンネルの長大化にあって、換気・排煙システムに
求められている条件は、トンネル内の環境保全の他にト
ンネル坑口周辺の環境保全、排煙機能そして換気塔の設
置スペース等に係わる経済的な換気・排煙システムの実
現である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の換気方式では、上記条件を満足させることが困難
で、新しい換気・排煙システムの構築が強く望まれてい
た。
【0010】本発明は上述した事情に鑑みて為されたも
ので、長大トンネルの換気、坑口環境保全ならびに排煙
を併せて良好に行え、且つ経済的な道路トンネルの換気
・排煙システムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の道路トンネルの
換気・排煙システムは、トンネル内を縦流換気区間と送
排気兼排煙区間とに区分けし、該送排気兼排煙区間がト
ンネル中央付近及び出口側に位置するように配置し、前
記縦流換気区間には、トンネル内にトンネルの長さ方向
に沿った送気流量を発生させるファンを配置するととも
に、前記送排気兼排煙区間には、複数の送気口を有する
送気ダクトと複数の排気口を有する排気ダクトとを設
け、前記排気ダクトの排気流量及び前記送気ダクトの送
気流量は、前記縦流換気区間の送気流量とバランスさせ
たことを特徴とする。
【0012】このように構成した本発明によれば、基本
的に縦流換気方式を採用することにより、設備コストの
低減を図るとともに、トンネル中央付近及び出口坑口側
に設けた送排気兼排煙区間でトンネル内の汚染空気の排
気及び新鮮空気の導入を行い、特にトンネルの出口坑口
側に設けることにより、汚染物質がトンネル出口から集
中的に漏れ出してしまうことを防止することができる。
【0013】ここに、前記各送排気兼排煙区間毎に換気
塔を設けるとともに、この換気塔と前記送気ダクトとを
内部に送風機を設置した送気側連絡ダクトで、換気塔と
前記排気ダクトとを内部に排風機を設置した排気側連絡
ダクトで、それぞれ接続することを特徴とし、これによ
り、前記送風機及び排風機の運転に伴って、送排気兼排
煙区間でのトンネル内の汚染空気の排気及び新鮮空気の
導入を行うことができる。
【0014】また、トンネルの中間部に位置する前記送
排気兼排煙区間には、その上流側に送気ダクトと排気ダ
クトとを、下流側に送気ダクトのみを設け、トンネルの
出口坑口側に位置する前記送排気兼排煙区間にはそのほ
ぼ全域に送気ダクトと排気ダクトとを設けることによ
り、トンネル中央付近及び出口付近で汚染物質濃度を極
めて低くすることができ、トンネル内の汚染物質濃度を
平準化することができると共に、坑口漏れ出し量も極め
て僅かなものとすることができる。
【0015】更に、トンネル内での火災発生時に前記送
風機を排風機として使用するようにすることを特徴とす
る。これにより、火災発生等の異常時の排煙処理の増強
応援を実現させることができる。
【0016】また、本発明の道路トンネルの換気・排煙
システムは、トンネル内にその上流側から、縦流換気区
間、送排気兼排煙区間、縦流換気区間、送排気兼排煙区
間、…を順次配列したことを特徴とする。このように縦
流換気区間と送排気兼排煙区間の組合せをトンネルの長
さに対応して複数組配列することで、長大トンネルにお
いてもトンネルの全区間に亘って良好な環境に維持する
ことが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態の道路
トンネルの換気・排煙システムを図面を参照して説明す
る。図1に示すように、トンネル1は、その入口側1a
から出口側1bに向かって、縦流換気区間I、送排気兼
排煙区間II、縦流換気区間III 及び送排気兼排煙区間IV
の4つの換気区間に区分けされている。
【0018】そして、それぞれの換気区間I〜IVには、
トンネル内に所定の換気風を与えるための機械換気設備
が具備されているのであるが、これらの機械換気設備の
方式と具体的な役割は次の通りである。
【0019】即ち、縦流換気区間Iには、トンネル1の
天井部に位置してジェットファン2aが設置されてい
る。このジェットファン2aは、通常換気時の自動車ピ
ストン作用によるトンネル内空気流量の不足分を補う昇
圧装置であり、また、車両火災等が発生した非常時に
は、自動車ピストン風が期待できないので、排煙処理の
際の煙遡上防止のための縦流風発生装置として転用され
る。
【0020】トンネルの中央部に位置する送排気兼排煙
区間IIは、上流側に位置してトンネル内への新鮮空気の
供給とトンネル内汚染空気の外部排出とを行う送排気区
間II−1と、下流側に位置して新鮮空気の送気のみを行
う送気専用区間II−2とに区分けされている。
【0021】即ち、この送排気兼排煙区間IIの前記送排
気区間II−1の路面側には、内部に多数の送気口3aを
有する送気ダクト4aが、同じく天井側には、内部に多
数の排気口5aを有する排気ダクト6aがそれぞれ設け
られている。具体的には、送気口はトンネル下部側壁と
して、送・排気口間の横方向のパスが長い位置を選ぶ。
送気専用区間II−2には、路面側及び天井側の双方に内
部に送気口3bを有する送気ダクト4bが設けられてい
る。
【0022】又、ダクト付き送・排気区間IIの延長距離
は、トンネル総延長にもよるがダクトスペースを削減す
る意味から300m〜700mの範囲内で計画するとよ
い。尚、送気口及び排気口は、トンネルの長さ方向に沿
って均一な風量が得られるように、ダンパ等で開度が調
整されている。
【0023】そして、換気塔7aが備えられ、この換気
塔7aと前記送気ダクト4a,4bとは送気側連絡ダク
ト8aで繋がれているとともに、この送気側連絡ダクト
8a内に送風機9aが設置されている。一方、この換気
塔7aと前記排気ダクト6aとは排気側連絡ダクト10
aで繋がれているとともに、この排気側連絡ダクト9a
内に排風機11aが設置されている。
【0024】ここに、前記各送気側連絡ダクト8aの各
送気ダクト4a,4bを繋ぐラインには、開閉自在なダ
ンパ12が介装されている。
【0025】これにより、前記送風機9aの運転に伴っ
て、各送気ダクト4a,4bの送気口3a,3bからト
ンネル1内への新鮮空気の導入を、排風機11aの運転
に伴って、排気ダクト6aの排気口5aからトンネル1
内の汚染空気の排気を行うのであり、それぞれの区間内
の単位長さ当たり排気流量qe 、及び同送気流量q
bは、計画の範囲内でその流量を変えられるようになっ
ている。
【0026】また、車両火災等非常時には、送風機9a
を逆転運転させる等の手段によって、トンネル1の天井
側に位置する送気ダクト4bの送気口3bを排気口に転
用して、排煙口として煙の外部への排出を行うことがで
きるように構成されている。
【0027】縦流換気区間III は、前記縦流換気区間I
と基本的に同様で、その天井部には、当該区間における
通常換気時における自動車ピストン作用によるトンネル
内流量の不足分を補う昇圧装置としてのジェットファン
2bが設置されている。このジェットファン2bは、車
両火災等の非常時には、自動車ピストン風が期待できな
いので、排煙処理の際の煙遡上防止のための縦流風発生
装置に転用され、また、火災発生地点により、このジェ
ットファン2bの運転は、縦流換気区間Iのジェットフ
ァン2aと連動した運転モードとされる。
【0028】出口坑口側の送排気兼排煙区間IVには、道
路面側に位置して多数の送気口3cを有する送気ダクト
4cが、天井側に位置して多数の排気口5bを有する排
気ダクト6bがトンネル1の長さ方向に沿って該区間IV
のほぼ全長に亘ってそれぞれ設けられている。送・排気
口の相対的な配置は、上述したII−1区間と基本的に同
様である。
【0029】そして、換気塔7bが備えられ、この換気
塔7bと前記送気ダクト4cとは送気側連絡ダクト8b
で繋がれているとともに、この送気側連絡ダクト8b内
に送風機9bが設置されて、一方、換気塔7bと前記各
排気ダクト5bとは排気側連絡ダクト10bで繋がれて
いるとともに、この排気側連絡ダクト10b内に排風機
11bが設置されている。
【0030】ここに、前記各送気側連絡ダクト8bの送
気ダクト4cとを繋ぐライン及び排気側連絡ダクト10
bの排気ダクト5bとを繋ぐラインには、開閉自在なダ
ンパ12が介装されている。
【0031】これにより、前記送風機9bの運転に伴っ
て、送気ダンパ4cの送気口3cからトンネル1内への
新鮮空気の導入を、排風機11bの運転に伴って、排気
ダンパ6bの排気口5bからトンネル1内の汚染空気の
排気を行うのであり、それぞれの区間内の単位長さ当た
り排気流量qe 、及び同送気流量qb は、計画の範囲内
でその流量を変えられ、しかも送気流量に対する排気流
量の相対的な増量を行うことにより、トンネル出口流量
を零もしくは逆流流量となるように設定されている。
【0032】次に、通常時および非常時におけるトンネ
ル1内の換気、坑口環境保全ならびに排煙システムにつ
いて説明する。
【0033】まず、通常時のトンネル内環境保全ならび
に坑口周辺環境保全のための換気パターンにおいては、
図1に示すような流れを実現する。図中の白抜き太矢印
がトンネル内の換気風の流れ方向を示し、それ以外の矢
印は、ジェットファン2a,2b、送気口3a,3b,
3c及び排気口5a,5b付近ならびに連絡ダクト8
a,8b,10a,10bの空気の流れ方向を示してい
る。
【0034】即ち、縦流換気区間Iでは、ジェットファ
ン2aおよび自動車ピストン作用などの昇圧効果で、ト
ンネル内に縦流風速Ur(図2参照)の換気風を自動車
走行方向に生じさせる。尚、この区間の汚染濃度分布C
rは、図2に示すように、トンネル入口側1aから縦流
換気区間Iの終端に向かってほぼ直線的に増大する。
【0035】トンネル中央部の送排気兼排煙区間IIの上
流側の送排気区間II−1では、単位長さ当たりの排気流
量qe と同送気流量qb の大小を適切に設定することに
より、当該区間の縦流風速Urを任意に変えることがで
きる。この時、トンネル下流側の濃度負荷の軽減を図る
ことから、当該区間の排気流量qe を送気流量qb より
増大させることにより、送排気区間II−1の終端の縦流
風速Urを小さくすることができる。また、この区間の
濃度分布は、縦流換気区間Iの終端を初期濃度として、
横流換気理論により予測することができる。
【0036】更に、送気専用区間II−2では上流側から
漏れ出した汚染空気を新鮮空気の送気によりトンネル入
口側1aの初期濃度より若干高い濃度レベルまで稀釈
し、縦流換気区間III 以降のトンネル区間における濃度
負荷の軽減を図る。このように、送排気兼排煙区間IIを
設けることにより、換気能力を適正に分散して換気塔配
置の省スペース化を図ることができる。
【0037】縦流換気区間III では、縦流換気区間Iと
同様、ジェットファン2bおよび自動車ピストン作用な
どの昇圧効果で、トンネル内に縦流風速Urの換気風を
自動車走行方向に生じさせる。尚、この区間の濃度分布
Crは、図2に示すように、トンネル入口側1aから縦
流換気区間III の終端に向かってほぼ直線的に増大す
る。
【0038】出口坑口側の送排気兼排煙区間IVでは、単
位長さ当たりの排気流量qe と同送気流量qb の大小を
適切に設定することにより、当該区間の縦流風速Urを
任意に変えることができる。当該区間の通常時における
換気・排煙システムは、トンネル内環境は勿論、坑口環
境保全のための役割を担っている。具体的な作用および
効用を以下に記述する。
【0039】図1に示す通常換気時における換気・排煙
システムでは、トンネル内環境を一定の水準に維持する
ため、トンネル内で必要とする換気風量を満足させる縦
流風を流すことを前提としている。この縦流風は、同図
白抜き矢印に示す方向に吹き抜けるが、トンネル出口側
1bにおいては、外部への坑口漏れ出し量を抑制するた
め、トンネル出口流量を零もしくは逆流流量となるよう
に坑口側の送排気兼排煙区間IVにおける送排気流量
b 、qe の両者を適切に設定する。
【0040】トンネル出口坑口から漏れ出す汚染物質量
とトンネル内対象区間の汚染物質総発生量との比率を坑
口漏れ出し率Eoと呼ぶが、この坑口漏れ出し率Eoは
特に換気風の流動状態に依存する。この坑口漏れ出し率
Eoは、排気率ERに大きく依存し、この排気率が大き
くなるほど低下し、また排気率がある程度の値になると
坑口漏れ出し率の低下が飽和傾向となることなどが分か
っている。
【0041】前記坑口漏れ出し率Eoおよび排気率ER
の定義は次に示す通りである。 Eo={qout /(Ge+gL)}×100(%) (1) ER=qe2・l2 /(Qr2+qb2・l2) (2) ここに、 qout :坑口漏れ出し量 Ge :IV区間の単位長さ当たり汚染物質総発生量 gL :III区間からの残存漏れ出し量 Qr2:III区間終端のトンネル内流量 qe2:IV区間の単位長さ当たり排気流量 l2 :IV区間延長距離 qb2:IV区間の単位長さ当たり送気流量
【0042】これまでの実験および理論検討の結果、実
用上の最小坑口漏れ出し率を実現できる排気率ERは、
1.1〜1.2の範囲であることが判明した。この排気
率はトンネル出口側からトンネル内の空気流量の10%
〜20%の逆流流量を導入することに相当する。この排
気率を満足させれば自動車の走行条件等にもよるが、坑
口漏れ出し率を概ね10%以下にする事が可能である。
【0043】尚、この排気率の実現は、図1に示す縦流
換気区間III の終端部の空気流量Qr2の計測値に基づい
て式(2)の関係を満足させるように、IV区間の単位長
さ当たり排気流量ならびに単位長さ当たり送気流量
r2、qb2を、送・排風機の回転速度あるいは、ダンパ
ーの開閉操作により設定する。
【0044】図2に通常換気時のトンネル内汚染濃度C
r及び流速分布Urの概念図を示す。尚、図中の実線は本
発明の一実施形態を示し、図中の点線は図7に示す従来
例の一例である。図示の例は、坑口逆流状態の排気率E
R>1の運転条件における概念図である。従来の換気方
式では、図2からわかるように、トンネル内濃度分布
は、トンネル入口から立坑集中排気口位置に向かって直
線的に濃度が上昇し、坑口区間では逆流効果を受け濃度
が低下するが、この際トンネル内許容濃度レベルを維持
するためトンネル流速(即ちトンネル内流量)を大きく
する必要がある。
【0045】又、本発明によるトンネル内の流速Urの推
移は縦流換気区間では一定で、ダクト付き送・排気区間
においては、送気流量と排気流量の大小を変えることに
より、トンネル内流速をトンネルの長さ方向に漸減およ
び漸増させている。特に、出口坑口では、逆流形成とな
る負の流速値を実現させている。
【0046】同図に示すように、縦流換気区間Iでは、
トンネル入口側から該区間Iの終端に向かってほぼ直線
的に濃度が上昇し、トンネル中央部の送排気兼排煙区間
IIでは、送排気の効果を受け濃度値が低下する。更に、
縦流換気区間III では、トンネル出口側に向かって再び
濃度は上昇し、その後、坑口側の送排気兼排煙区間IVに
おいて送排気の効果を受けトンネル出口側に向かって濃
度は低下する。
【0047】この時、トンネル出口端では極めて小さい
汚染濃度値となり、汚染物質の坑口漏れ出し量も極めて
少なくなる。また、トンネル内の流速Urの推移は縦流
換気区間III では一定で、送排気兼排煙区間II,IVにお
いては、送気流量と排気流量の大小を変えることによ
り、トンネル内流速値低下もしくは坑口区間逆流形成と
なる負の流速値を実現させていることが分かる。尚、図
中のCr* はトンネル内で維持すべきトンネル内許容濃
度レベルを示す。
【0048】このように本発明の換気・排煙システムで
は、トンネル内流速Urの推移において、従来の例えば
集中排気方式のように立坑直下の同一断面内での急激な
流速差は起こらず、トンネル長さ方向に対して漸増もし
くは漸減する流速分布を実現することができる。従っ
て、トンネル内の走行自動車をはじめ歩行者への風環境
が極めて良好なものとなる。
【0049】次に、トンネル1内での車両火災など非常
時における排煙について説明する。
【0050】まず、図3に示すように、縦流換気区間I
の地点F1で車両火災が発生した場合には、通常のジェ
ットファン2a,2bの運転に加え送排気兼排煙区間II
の送気専用区間II−2の天井側の送気ダクト3bの送気
口4bを排煙口に転用し、隣接の排気口(ここでは排煙
口)5aとともに火災に伴って発生する煙を天井部に誘
引・外部排出させる。
【0051】この時、縦流換気区間I,III のジェット
ファン2a,2bは、トンネル1の下流側に噴流を発生
しており、トンネル内の縦流風の方向も下流側となるの
で、煙は上流に遡上することは無い。従って、トンネル
の利用者は速やかに煙の拡散方向と逆のトンネル入口側
1a、或いはもっとも近い避難坑への避難行動をとれば
よい。
【0052】尚、送排気区間II−1の送気口3a及び送
気専用区間II−2の路面側に位置する送気口3bは、煙
の断面内の拡散を抑制する意味からダクト12を介して
閉鎖する。また、送排気兼排煙区間IVの排気口5bは、
火災規模に応じて縦流風増強が必要となる場合に排気運
転を行う。
【0053】次に、図4に示すように、縦流換気区間II
I 内の地点F2で車両火災が発生した場合には、通常の
ジェットファン2a,2bの運転に加え出口抗口側の送
排気兼排煙区間IVの排気口5bを排煙口に転用し、火災
に伴って発生する煙を天井部に誘引・外部排出させる。
【0054】この時、縦流換気区間I,III のジェット
ファン2a,2bは、トンネル下流側に噴流を発生して
おり、トンネル内の縦流風の方向も下流側となるので、
煙は上流に遡上することは無い。従って、利用者は速や
かに煙の拡散方向と逆のトンネル入り口側あるいはもっ
とも近い避難坑への避難行動をとればよい。
【0055】尚、通常換気時の送気口3cは、煙の断面
内の拡散を抑制する意味からダンパ12を介して閉鎖す
る。尚、送排気兼排煙区間IIの送気口3a,3bは、火
災規模に応じて縦流風増強が必要となる場合に送気運転
を行う。
【0056】図5は運用システムの概要を示す。本発明
の道路トンネルの換気・排煙システムの運用はコントロ
ーラ16により自動化されている。具体的には、ビデオ
カメラVc、汚染物質の濃度センサSc、風速センサS
u等の情報をコントローラ16に伝達する。コントロー
ラ16では、これらの情報を分析して、送風量、排風量
等を決定し、換気・排煙を制御する。即ち、通常時の換
気パターンおよびトンネル内車両火災など非常時におけ
る排煙パターンとともに、その運用に際しては、自動車
交通量および平均走行速度などの交通流の計測情報、さ
らにトンネル内の煤煙透過率、濃度ならびに風速そして
火災発生のビデオ情報などを基に、送・排風機運転ある
いは、ダンパー開閉操作などを制御プログラムにしたが
って行うことになる。このシステムの運用の基本は、上
述したそれぞれのパターンでのトンネル内の空気の流れ
を的確に制御することにある。
【0057】次に図6を参照して長大トンネルへの対応
について説明する。(A)は中規模の長さのトンネルに対
応したもので、図1に示す実施形態に対応したものであ
る。即ち、トンネル内にその上流側から、縦流換気区間
(I)、送排気兼排煙区間(II)、縦流換気区間(III)、送
排気兼排煙区間(IV)が順番に配列されている。ここで縦
流換気区間IとIII は、トンネル内にトンネルの長さ方
向に沿った送気流量を発生させるもので、同一の形式の
ものである。送排気兼排煙区間IIとIVは、複数の送気口
を有する送気ダクトと、複数の排気口を有する排気ダク
トを設けたことで共通するが、送排気兼排煙区間IIがト
ンネル内部に設られるものであるのに対して、送排気兼
排煙区間IVはトンネルの出口側に設けられるものであ
る。
【0058】図6(B)は(A)のトンネルよりも長いトン
ネルに好適な配列であり、トンネル内にその上流側か
ら、縦流換気区間(I)、送排気兼排煙区間(II)、縦流換
気区間(III)、送排気兼排煙区間(II)、縦流換気区間(II
I)、送排気兼排煙区間(IV)を順に配列したものである。
図6(C)は(B)のトンネルよりも更に長大なトンネルに
好適な配列であり、縦流換気区間(I)、送排気兼排煙区
間(II)、縦流換気区間(III)、送排気兼排煙区間(II)、
縦流換気区間(III)、送排気兼排煙区間(II)、縦流換気
区間(III)、送排気兼排煙区間(IV)を配列したものであ
る。このようにして、長大なトンネルにおいても、縦流
換気区間と送排気兼排煙区間とを組合せて順に配列する
ことで、トンネル全長に亘って、良好な環境条件を保持
することができる。また、図6(C)における実施形態に
おいては、縦流換気区間と送排気兼排煙区間とを組合せ
を4組配列しているが、それ以上の多数組を配列するよ
うにしても勿論よい。
【0059】尚、上述した実施形態ではトンネル内を一
方向に自動車が通行するいわゆる一方通行の例について
述べたが、両方向に通行する対面通行の場合にも、本発
明の趣旨を同様に適用できることは、勿論である。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
基本的に縦流換気方式を採用することにより、設備コス
トの低減を図り、しかも送排気兼排煙区間でトンネル内
の汚染空気の排気及び新鮮空気の導入を行って、トンネ
ル内の環境を保全するとともに、送排気兼排煙区間をト
ンネルの出口坑口側に設けることにより、汚染物質がト
ンネル出口から漏れ出してしまうことを極力防止して坑
口周辺の環境を保全することができる。
【0061】また、トンネルの中間部に位置する前記送
排気兼排煙区間の下流側に送気ダクトのみを設けて新鮮
空気の集中的な導入を行うことができ、これによって、
換気能力の適正分散を図って、換気塔設置の省スペース
化を図ることができる。
【0062】更に、トンネル内での火災発生時に前記送
風機を排風機として使用することにより、火災発生等の
異常時の排煙処理の増強応援を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の道路トンネルの換気・排
煙システムを示す断面図。
【図2】同じく、通常換気時のトンネル内濃度及び流速
分布の概念図。
【図3】同じく、縦流換気区間Iで火災が発生した時の
排煙パターンの概念図。
【図4】同じく、縦流換気区間IIIで火災が発生した時
の排煙パターンの概念図。
【図5】同じく、システム運用の概念図。
【図6】縦流換気区間と送排気兼排煙区間の組合せ例を
示す概念図。
【図7】従来の道路トンネルの換気・排煙システムを示
す断面図。
【符号の説明】
1 トンネル 2a,2b ジェットファン 3a,3b,3c 送気口 4a,4b,4c 送気ダクト 5a,5b 排気口 6a,6b 排気ダクト 7a,7b 換気塔 8a,8b 送気側連絡ダクト 9a,9b 送風機 10a,10b 排気側連絡ダクト 11a,11b 排風機 I,III 縦流換気区間 II,IV 送排気兼排煙区間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 憲明 東京都千代田区霞ヶ関1−4−1 首都高 速道路公団内 (72)発明者 山田 隆司 東京都文京区後楽1丁目2番7号 株式会 社日本メンテナンス内 (72)発明者 小松 厚造 東京都大田区羽田旭町11番1号 株式会社 荏原製作所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トンネル内を縦流換気区間と送排気兼排
    煙区間とに区分けし、該送排気兼排煙区間がトンネル中
    央付近及び出口側に位置するように配置し、 前記縦流換気区間には、トンネル内にトンネルの長さ方
    向に沿った送気流量を発生させるファンを配置するとと
    もに、 前記送排気兼排煙区間には、複数の送気口を有する送気
    ダクトと複数の排気口を有する排気ダクトとを設けたこ
    とを特徴とする道路トンネルの換気・排煙システム。
  2. 【請求項2】 前記各送排気兼排煙区間毎に換気塔を設
    けるとともに、この換気塔と前記送気ダクトとを内部に
    送風機を設置した送気側連絡ダクトで、換気塔と前記排
    気ダクトとを内部に排風機を設置した排気側連絡ダクト
    で、それぞれ接続したことを特徴とする請求項1記載の
    道路トンネルの換気・排煙システム。
  3. 【請求項3】 前記トンネルの中央部に位置する前記送
    排気兼排煙区間にはその上流側に送気ダクトと排気ダク
    トとを、下流側に送気ダクトのみを設け、トンネルの出
    口抗口側に位置する前記送排気兼排煙区間にはそのほぼ
    全域に送気ダクトと排気ダクトとを設けたことを特徴と
    する請求項1または2記載の道路トンネルの換気・排煙
    システム。
  4. 【請求項4】 トンネル内での火災発生時に前記送風機
    を排風機として使用するようにしたことを特徴とする請
    求項2または3記載の道路トンネルの換気・排煙システ
    ム。
  5. 【請求項5】 トンネル内にその上流側から、縦流換気
    区間、送排気兼排煙区間、縦流換気区間、送排気兼排煙
    区間を順に配置し、 前記縦流換気区間には、トンネル内にトンネルの長さ方
    向に沿った送気流量を発生させるファンを配置すると共
    に、 前記送排気兼排煙区間には、複数の送気口を有する送気
    ダクトと複数の排気口を有する排気ダクトとを設けたこ
    とを特徴とする道路トンネルの換気・排煙システム。
  6. 【請求項6】 トンネル内にその上流側から、縦流換気
    区間、送排気兼排煙区間、縦流換気区間、送排気兼排煙
    区間、縦流換気区間、送排気兼排煙区間を順に配置し、 前記縦流換気区間には、トンネル内にトンネルの長さ方
    向に沿った送気流量を発生させるファンを配置すると共
    に、 前記送排気兼排煙区間には、複数の送気口を有する送気
    ダクトと複数の排気口を有する排気ダクトとを設けたこ
    とを特徴とする道路トンネルの換気・排煙システム。
  7. 【請求項7】 トンネル内にその上流側から、縦流換気
    区間、送排気兼排煙区間、縦流換気区間、送排気兼排煙
    区間、縦流換気区間、送排気兼排煙区間、縦流換気区
    間、送排気兼排煙区間を順に配置し、 前記縦流換気区間には、トンネル内にトンネルの長さ方
    向に沿った送気流量を発生させるファンを配置すると共
    に、 前記送排気兼排煙区間には、複数の送気口を有する送気
    ダクトと複数の排気口を有する排気ダクトとを設けたこ
    とを特徴とする道路トンネルの換気・排煙システム。
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