JP2000064026A - 炭窒化ホウ素膜の製造方法及びその装置 - Google Patents

炭窒化ホウ素膜の製造方法及びその装置

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JP2000064026A
JP2000064026A JP10238594A JP23859498A JP2000064026A JP 2000064026 A JP2000064026 A JP 2000064026A JP 10238594 A JP10238594 A JP 10238594A JP 23859498 A JP23859498 A JP 23859498A JP 2000064026 A JP2000064026 A JP 2000064026A
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boron
nitrogen
carbon
ions
ion
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Toshiya Watanabe
俊哉 渡辺
Nobuki Yamashita
信樹 山下
Ryosuke Hoshina
良祐 保科
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性に優れた所望の炭窒化ホウ素膜中の
組成比を有する炭窒化ホウ素膜を製造できる手段を提供
するにある。 【解決手段】 真空容器11内の基材13に対して、イ
オン照射を行うイオン源14と、前記基材13に対して
蒸着を行う蒸発源15とを具備し、前記基材13上に膜
状の炭素、窒素及びホウ素の化合物を低温で形成させる
ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭窒化ホウ素膜の
製造方法及びその装置に関する。例えば、各種回転機械
の軸受やスライドなどの摺動部材や情報機器記憶装置
等、耐摩耗性を要求される部材や電子工業材料、耐熱材
料、高靭性材料等へ適用されるものである。
【0002】
【従来の技術】炭窒化ホウ素の低圧相(常温・常圧で安
定な相)は、黒鉛(グラファイト)と六方晶窒化ホウ素
(hBN)の固溶体から成る物質で、潤滑性、耐熱性、
耐食性、高熱伝導性等の両者の特徴を合わせ持つと共
に、グラファイトに優る耐高温酸化特性及びhBNに優
る強度を有すると言われている。また、電気的には、グ
ラファイトが導電体であるのに対しhBNは優れた絶縁
体であることから、炭窒化ホウ素膜中におけるグラファ
イトとhBNの固溶割合を変化させることにより、電気
的特性を連続的に制御できることが予想される。
【0003】さらに、炭窒化ホウ素の高圧相(高温・高
圧で安定な相)は、ダイヤモンドと立方晶窒化ホウ素
(cBN)の固溶体で、硬度、耐酸化性等両者の特長を
合わせ持つ物質と予想されているが、任意の炭素、窒
素、ホウ素組成比を有する炭窒化ホウ素の低圧相が合成
できれば、高圧相の前駆体として利用範囲もさらに広が
るものである。以上の性質を利用して、各種回転機器の
軸受けやスライド等の摺動部材や情報機器記憶装置等の
保護膜、電子工業材料、耐熱材料、高靭性材料等への応
用が期待されている。
【0004】従来の炭窒化ホウ素の合成方法としては、
アンモニア、アセチレン等と塩化ホウ素との反応や、四
塩化炭素、アセトニトリルと塩化ホウ素との反応や、ジ
メチルアミンボラン等の窒素及びホウ素を含有する有機
化合物の熱分解等の気相化学蒸着法(CVD法)が用い
られていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの方法
では、原料の混合状態や反応が不均一になることによる
組成のずれが生じたり、混合過程に中間生成物が合成さ
れるといった問題がある。そのため、反応の均一化はも
とより、原料の混合過程にも煩雑且つ高度の技術を要し
た。
【0006】さらに、これらの手法による合成は、処理
温度が高温(1000〜1400℃)で、高速度工具鋼
等高温で変質してしまう材料上に成膜することは不可能
である。従って、炭窒化ホウ素の持つ特長を最大限に活
用するためには、所望の組成から成る密着性の優れた膜
状の炭窒化ホウ素を低温で製造する技術の開発が必要不
可欠となる。本発明は、上記従来技術の問題点を解決し
た炭窒化ホウ素膜の製造方法を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の請求項1に係る炭窒化ホウ素膜の製造方法は、イオ
ン照射と蒸着を同時に行うことにより、基材上に膜状の
炭素、窒素及びホウ素の化合物を低温で形成させること
を特徴とする。上記目的を達成する本発明の請求項2に
係る炭窒化ホウ素膜の製造方法は、請求項1において、
イオン照射は、窒素含有イオンのみ又は窒素含有イオン
と炭素若しくはホウ素含有イオンの混合イオンとし、蒸
着物質は、炭素及びホウ素又は炭素若しくはホウ素を含
む固体を原料とすることを特徴とする。
【0008】上記目的を達成する本発明の請求項3に係
る炭窒化ホウ素膜の製造方法は、請求項1において、効
率的に炭窒化ホウ素膜を製造するため、窒素含有イオン
のみ又は窒素含有イオンと炭素若しくはホウ素含有イオ
ンの混合イオンのエネルギーを3keV以下とすること
を特徴とする。上記目的を達成する本発明の請求項4に
係る炭窒化ホウ素膜の製造装置は、真空容器内の基材に
対して、イオン照射を行うイオン源と、前記基材に対し
て蒸着を行う蒸発源とを具備し、前記基材上に膜状の炭
素、窒素及びホウ素の化合物を低温で形成させることを
特徴とする。
【0009】上記目的を達成する本発明の請求項5に係
る炭窒化ホウ素膜の製造装置は、真空容器内の基材に対
して、窒素含有イオンのみ又は窒素含有イオンと炭素若
しくはホウ素含有イオンの混合イオンを照射するイオン
源と、前記基材に対して炭素及びホウ素又は炭素若しく
はホウ素を含む固体を原料として蒸着を行う蒸発源とを
具備し、前記基材上に膜状の炭素、窒素及びホウ素の化
合物を低温で形成させることを特徴とする。上記目的を
達成する本発明の請求項6に係る炭窒化ホウ素膜の製造
装置は、請求項4又は5において、前記イオン源は、効
率的に炭窒化ホウ素膜を製造するため、窒素含有イオン
のみ又は窒素含有イオンと炭素若しくはホウ素含有イオ
ンの混合イオンのエネルギーを3keV以下とすること
を特徴とする。
【0010】上記目的を達成する本発明の請求項7に係
る炭窒化ホウ素膜の製造方法は、窒素、炭素、ホウ素を
それぞれ含有するイオン照射を同時に行うことにより、
基材上に膜状の炭素、窒素及びホウ素の化合物を形成さ
せることを特徴とする。上記目的を達成する本発明の請
求項8に係る炭窒化ホウ素膜の製造方法は、請求項7に
おいて、前記イオン照射はエネルギーを3keV以下と
することを特徴とする。
【0011】〔作用〕従来の炭窒化ホウ素膜の製造方法
に対し、本発明は、イオン照射と蒸着を同時に行うイオ
ン蒸着法であり、原料の供給比を変化させるだけで炭窒
化ホウ素膜の組成を制御することが可能であり、また、
イオンの持つエネルギーにより、原料の反応性や炭窒化
ホウ素膜と基材との密着性の向上が期待できる。さら
に、処理温度が低温(150〜500℃)であるため、
母材を変質することなく、低温で炭窒化ホウ素膜の合成
が可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】〔実施例1〕本発明の第1の実施
例に係る炭窒化ホウ素膜の製造装置を図1に示す。同図
に示す装置は、真空容器11内の基材ホルダー12に取
り付けられた基材13に対し、イオン源14から窒素含
有イオンと炭素含有イオンとを混合したイオン20を照
射すると同時に、真空容器11内の下部に設置された蒸
発源15内の原料16であるホウ素へ電子ビーム17を
照射し、蒸発したホウ素の蒸気18を基材13上に蒸着
させるものである。尚、ホウ素の蒸気18の基材13へ
の蒸発量は、モニター19で測定する。
【0013】上記構成を有する本実施例に係る炭窒化ホ
ウ素膜の製造装置は、以下のように炭窒化ホウ素膜を製
造することができる。先ず、基材13(例えば高速度工
具鋼)を有機溶剤(例えばアセトン)で超音波洗浄を施
した後、真空容器11内の基材ホルダー12に設置し、
2×10-6torr以下に予備排気する。次に、イオン
源14に供給した窒素含有ガス(例えば窒素、アンモニ
ア等)及び炭素含有ガス(例えばメタン、アセチレン
等)の混合ガスをイオン源14内でイオン化し、窒素含
有イオンと炭素含有イオンを混合したイオン20を基材
13へ照射すると同時に、蒸発源15よりホウ素の蒸気
18を基材13上に蒸着させる。
【0014】ここで、窒素含有イオンと炭素含有イオン
を混合したイオン20のエネルギーを0.5keV、窒
素/メタン供給比を1:1、ホウ素の蒸気18の蒸発速
度を0.5Å/secとすると、ホウ素/炭素/窒素組
成比1:1:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。また、
窒素含有イオンと炭素含有イオンを混合したイオン20
のエネルギーを0.5keV、窒素/メタン供給比を
3:7、ホウ素の蒸気18の蒸発速度を0.5Å/se
cとするとホウ素/炭素/窒素組成比2:2:1の炭窒
化ホウ素膜を合成できた。
【0015】さらに、窒素含有イオンと炭素含有イオン
を混合したイオン20のエネルギーを0.5keV、窒
素/メタン供給比を3:7、ホウ素の蒸気18の蒸発速
度を0.26Å/secとするとホウ素/炭素/窒素組
成比1:2:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。このよ
うに窒素含有イオンと炭素含有イオンを混合したイオン
20のエネルギーを一定とし、窒素含有イオン/炭素含
有イオン供給比及びホウ素の蒸気18の蒸発速度を変化
させることにより、炭窒化ホウ素膜中のホウ素/炭素/
窒素組成比を変化させることができる。
【0016】この効果は、窒素含有イオンと炭素含有イ
オンを混合したイオン20のエネルギーが3keV以下
であれば0.5keV以外のときでも得ることができ
る。以上の方法で作製した炭窒化ホウ素膜を光電子分光
分析により分析した結果、炭素、窒素、ホウ素の互いの
結合が認められ、炭窒化ホウ素が合成されていることが
確認できた。
【0017】〔実施例2〕本実施例は、図1の装置を用
いる実施例1において、イオン源14に導入したガスを
窒素含有ガス(例えば窒素、アンモニア等)及びホウ素
含有ガス(例えば塩化ホウ素、シボラン等)の混合ガス
とし、窒素含有イオンとホウ素含有イオンを混合したイ
オン20を基材13へ照射すると同時に、蒸発源15内
の原料16である炭素へ電子ビーム17を照射し、蒸発
した炭素の蒸気18を基材13上に蒸着させるものであ
る。その他については、前述した実施例1と同様であ
る。
【0018】ここで、窒素含有イオンとホウ素含有イオ
ンを混合したイオン20のエネルギーを0.5keV、
窒素/塩化ホウ素供給比を1:1、炭素の蒸気18の蒸
発速度を1.9Å/secとすると、ホウ素/炭素/窒
素組成比1:1:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。ま
た、窒素含有イオンとホウ素含有イオンを混合したイオ
ン20のエネルギーを0.5keV、窒素/塩化ホウ素
供給比を1:1、炭素の蒸気18の蒸発速度を2.9Å
/secとするとホウ素/炭素/窒素組成比1:2:1
の炭窒化ホウ素膜を合成できた。
【0019】さらに、窒素含有イオンとホウ素含有イオ
ンを混合したイオン20のエネルギーを0.5keV、
窒素/塩化ホウ素供給比を1:2、炭素の蒸気18の蒸
発速度を2.5Å/secとするとホウ素/炭素/窒素
組成比2:2:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。この
ように窒素含有イオンとホウ素含有イオンを混合したイ
オン20のエネルギーを一定とし窒素含有イオン/ホウ
素含有イオン供給比及び炭素の蒸気18の蒸発速度を変
化させることにより、炭窒化ホウ素膜中のホウ素/炭素
/窒素組成比を変化させることができる。
【0020】この効果は、窒素含有イオンとホウ素含有
イオンを混合したイオン20のエネルギーが3keV以
下であれば0.5keV以外のときでも得ることができ
る。以上の方法で作製した炭窒化ホウ素膜を光電子分光
分析により分析した結果、炭素、窒素、ホウ素の互いの
結合が認められ、炭窒化ホウ素が合成されていることが
確認できた。
【0021】〔実施例3〕本実施例は、図1の装置を用
いる実施例1において、イオン源14に導入したガスを
窒素含有ガス(例えば窒素、アンモニア等)のみとし、
窒素を含有するイオン20を基材13へ照射すると同時
に、蒸発源15内の原料16である炭化ホウ素へ電子ビ
ーム17を照射し、蒸発した炭化ホウ素の蒸気18を基
材13上に蒸着させるものである。その他については、
前述した実施例1と同様である。ここで、イオン20の
エネルギーを0.5keV、炭化ホウ素の蒸気18の蒸
発速度を0.3Å/secとすると、ホウ素/炭素/窒
素組成比4:1:5の炭窒化ホウ素膜を合成できた。
【0022】また、イオン20のエネルギーを0.5k
eV、炭化ホウ素の蒸気18の蒸発速度を0.5Å/s
ecとするとホウ素/炭素/窒素組成比4:1:4の炭
窒化ホウ素膜を合成できた。このようにイオン20のエ
ネルギーを一定とし炭化ホウ素の蒸気18の蒸発速度を
変化させることにより、炭窒化ホウ素膜中のホウ素/炭
素/窒素組成比を変化させることができる。
【0023】この効果は、イオン20のエネルギーが3
keV以下であれば0.5keV以外のときでも得るこ
とができる。以上の方法で作製した炭窒化ホウ素膜を光
電子分光分析により分析した結果、炭素、窒素、ホウ素
の互いの結合が認められ、炭窒化ホウ素が合成されてい
ることが確認できた。
【0024】〔実施例4〕本実施例は、図1の装置を用
いる実施例1において、イオン源14に導入したガスを
窒素含有ガス(例えば窒素、アンモニア等)及び炭素含
有ガス(例えばメタン、アセチレン等)の混合ガスと
し、窒素含有イオンと炭素含有イオンを混合したイオン
20を基材13へ照射すると同時に、蒸発源15内の原
料16である炭化ホウ素へ電子ビーム17を照射し、蒸
発した炭化ホウ素の蒸気18を基材13上に蒸着させる
ものである。その他については、前述した実施例1と同
様である。
【0025】ここで、窒素含有イオンと炭素含有イオン
を混合したイオン20のエネルギーを0.5keV、窒
素/メタン供給比を1:4、炭化ホウ素の蒸気18の蒸
発速度を0.5Å/secとすると、ホウ素/炭素/窒
素組成比1:1:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。ま
た、窒素含有イオンと炭素含有イオンを混合したイオン
20のエネルギーを0.5keV、窒素/メタン供給比
を1:8、炭化ホウ素の蒸気18の蒸発速度を0.5Å
/secとするとホウ素/炭素/窒素組成比1:2:1
の炭窒化ホウ素膜を合成できた。
【0026】さらに、窒素含有イオンと炭素含有イオン
を混合したイオン20のエネルギーを0.5keV、窒
素/メタン供給比を1:4、炭化ホウ素の蒸気18の蒸
発速度を0.3Å/secとするとホウ素/炭素/窒素
組成比4:4:5の炭窒化ホウ素膜を合成できた。この
ように窒素含有イオンと炭素含有イオンを混合したイオ
ン20のエネルギーを一定とし窒素含有イオン/炭素含
有イオン供給比及び炭化ホウ素の蒸気18の蒸発速度を
変化させることにより、炭窒化ホウ素膜中のホウ素/炭
素/窒素組成比を変化させることができる。
【0027】この効果は、窒素含有イオンと炭素含有イ
オンを混合したイオン20のエネルギーが3keV以下
であれば0.5keV以外のときでも得ることができ
る。以上の方法で作製した炭窒化ホウ素膜を光電子分光
分析により分析した結果、炭素、窒素、ホウ素の互いの
結合が認められ、炭窒化ホウ素が合成されていることが
確認できた。
【0028】〔実施例5〕本発明の第5の実施例に係る
炭窒化ホウ素膜の製造装置を図2に示す。同図に示す装
置は、真空容器11内の基材ホルダー12に取り付けら
れた基材13に対し、イオン源141から窒素含有イオ
ン201を、イオン源142から炭素含有イオン202
を照射すると同時に、真空容器11内の下部に設置され
た蒸発源15内の原料16であるホウ素へ電子ビーム1
7を照射し、蒸発したホウ素の蒸気18を基材13上に
蒸着させるものである。尚、ホウ素の蒸気18の基材1
3への蒸発量は、モニター19で測定する。イオン源1
41及びイオン源142のどちらから窒素含有イオン及
び炭素含有イオンを供給しても構わない。
【0029】上記構成を有する本実施例に係る炭窒化ホ
ウ素膜の製造装置は、以下のように炭窒化ホウ素膜を製
造することができる。先ず、基材13(例えば高速度工
具鋼)を有機溶剤(例えばアセトン)で超音波洗浄を施
した後、真空容器11内の基材ホルダー12に設置し、
2×10-6torr以下に予備排気する。次に、窒素含
有ガス(例えば窒素、アンモニア等)をイオン源141
内でイオン化し窒素含有イオン201を照射し、また、
炭素含有ガス(例えばメタン、アセチレン等)の混合ガ
スをイオン源142内でイオン化し炭素含有イオン20
2を基材13へ照射すると同時に、蒸発源15よりホウ
素の蒸気18を基材13上に蒸着させる。
【0030】ここで、窒素含有イオン201と炭素含有
イオン202のエネルギーを0.5keV、窒素/メタ
ン供給比を1:1、ホウ素の蒸気18の蒸発速度を0.
5Å/secとすると、ホウ素/炭素/窒素組成比1:
1:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。また、窒素含有
イオン201と炭素含有イオン202のエネルギーを
0.5keV、窒素/メタン供給比を3:7、ホウ素の
蒸気18の蒸発速度を0.5Å/secとするとホウ素
/炭素/窒素組成比2:2:1の炭窒化ホウ素膜を合成
できた。
【0031】さらに、窒素含有イオン201と炭素含有
イオン202のエネルギーを0.5keV、窒素/メタ
ン供給比を3:7、ホウ素の蒸気18の蒸発速度を0.
26Å/secとするとホウ素/炭素/窒素組成比1:
2:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。このように窒素
含有イオン201と炭素含有イオン202のエネルギー
を一定とし窒素含有イオン/炭素含有イオン供給比及び
ホウ素の蒸気18の蒸発速度を変化させることにより、
炭窒化ホウ素膜中のホウ素/炭素/窒素組成比を変化さ
せることができる。
【0032】この効果は、窒素含有イオン201と炭素
含有イオン202のエネルギーが3keV以下であれば
0.5keV以外のときでも得ることができる。また、
窒素含有イオン201と炭素含有イオン202のエネル
ギーは必ずしも同じとする必要はなく、窒素含有イオン
201と炭素含有イオン202のエネルギーそれぞれが
3keV以下であれば、本実施例と同様な効果が得られ
る。以上の方法で作製した炭窒化ホウ素膜を光電子分光
分析により分析した結果、炭素、窒素、ホウ素の互いの
結合が認められ、炭窒化ホウ素が合成されていることが
確認できた。
【0033】〔実施例6〕本実施例は、図2の装置を用
いる実施例5において、窒素含有ガス(例えば窒素、ア
ンモニア等)をイオン源141内でイオン化し窒素含有
イオン201を照射し、また、ホウ素含有ガス(例えば
塩化ホウ素、ジボラン等)の混合ガスをイオン源142
内でイオン化しホウ素含有イオン202を基材13へ照
射すると同時に、蒸発源15内の炭素16へ電子ビーム
17を照射し、蒸発した炭素の蒸気18を基材13上に
蒸着させるものである。その他については、前述した実
施例5と同様である。
【0034】ここで、窒素含有イオン201とホウ素含
有イオン202のエネルギーを0.5keV、窒素/塩
化ホウ素供給比を1:1、炭素の蒸気18の蒸発速度を
1.9Å/secとすると、ホウ素/炭素/窒素組成比
1:1:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。また、窒素
含有イオン201とホウ素含有イオン202のエネルギ
ーを0.5keV、窒素/塩化ホウ素供給比を1:1、
炭素の蒸気18の蒸発速度を2.9Å/secとすると
ホウ素/炭素/窒素組成比1:2:1の炭窒化ホウ素膜
を合成できた。
【0035】さらに、窒素含有イオン201とホウ素含
有イオン202のエネルギーを0.5keV、窒素/塩
化ホウ素供給比を1:2、炭素の蒸気18の蒸発速度を
2.5Å/secとするとホウ素/炭素/窒素組成比
2:2:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。このように
窒素含有イオン201とホウ素含有イオン202のエネ
ルギーを一定とし窒素含有イオン/ホウ素含有イオン供
給比及び炭素の蒸気18の蒸発速度を変化させることに
より、炭窒化ホウ素膜中のホウ素/炭素/窒素組成比を
変化させることができる。
【0036】この効果は、窒素含有イオン201とホウ
素含有イオン202のエネルギーが3keV以下であれ
ば同じエネルギーとする必要はなく、また、0.5ke
V以外のときでも得ることができる。以上の方法で作製
した炭窒化ホウ素膜を光電子分光分析により分析した結
果、炭素、窒素、ホウ素の互いの結合が認められ、炭窒
化ホウ素が合成されていることが確認できた。
【0037】〔実施例7〕本実施例は、図2の装置を用
いる実施例5において、窒素含有ガス(例えば窒素、ア
ンモニア等)をイオン源141内でイオン化し窒素含有
イオン201を照射し、また、炭素含有ガス(例えばメ
タン、アセチレン等)の混合ガスをイオン源142内で
イオン化し炭素含有イオン202を基材13へ照射する
と同時に、蒸発源15内の原料16である炭化ホウ素へ
電子ビーム17を照射し、蒸発した炭化ホウ素の蒸気1
8を基材13上に蒸着させるものである。その他につい
ては、前述した実施例5と同様である。
【0038】ここで、窒素含有イオン201と炭素含有
イオン202のエネルギーを0.5keV、窒素/メタ
ン供給比を1:4、炭化ホウ素の蒸気18の蒸発速度を
0.5Å/secとすると、ホウ素/炭素/窒素組成比
1:1:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。また、窒素
含有イオン201と炭素含有イオン202のエネルギー
を0.5keV、窒素/メタン供給比を1:8、炭化ホ
ウ素の蒸気18の蒸発速度を0.5Å/secとすると
ホウ素/炭素/窒素組成比1:2:1の炭窒化ホウ素膜
を合成できた。
【0039】さらに、窒素含有イオン201と炭素含有
イオン202のエネルギーを0.5keV、窒素/メタ
ン供給比を1:4、炭化ホウ素の蒸気18の蒸発速度を
0.3Å/secとするとホウ素/炭素/窒素組成比
4:4:5の炭窒化ホウ素膜を合成できた。このように
窒素含有イオン201と炭素含有イオン202のエネル
ギーを一定とし窒素含有イオン/炭素含有イオン供給比
及び炭化ホウ素の蒸気18の蒸発速度を変化させること
により、炭窒化ホウ素膜中のホウ素/炭素/窒素組成比
を変化させることができる。
【0040】この効果は、窒素含有イオン201と炭素
含有イオン202のエネルギーが3keV以下であれば
同じエネルギーとする必要はなく、また、0.5keV
以外のときでも得ることができる。以上の方法で作製し
た炭窒化ホウ素膜を光電子分光分析により分析した結
果、炭素、室素、ホウ素の互いの結合が認められ、炭窒
化ホウ素が合成されていることが確認できた。
【0041】〔実施例8〕本発明の第8の実施例に係る
炭窒化ホウ素膜の製造装置を図3に示す。同図に示す装
置は、真空容器11内の基材ホルダー12に取り付けら
れた基材13に対し、イオン源14からイオン20を照
射すると同時に、真空容器11内の下部に設置された蒸
発源151内のホウ素161へ電子ビーム171を照射
し蒸発したホウ素蒸気181を基材13上に蒸着させる
と共に、蒸発源152内の炭素162へ電子ビーム17
2を照射し蒸発した炭素蒸気182を基材13上に蒸着
させるものである。
【0042】ホウ素蒸気181の基材13への蒸発量は
モニター191により測定され、炭素蒸気182の基材
13への蒸発量はモニター192で測定される。蒸発源
151及び蒸発源152のどちらからホウ素及び炭素を
供給しても構わない。また、モニター191及び192
に測定蒸気以外の蒸気の入り込みを防ぐために、仕切板
10が設けられている。
【0043】上記構成を有する本実施例に係る炭窒化ホ
ウ素膜の製造装置は、以下のように炭窒化ホウ素膜を製
造することができる。先ず、基材13(例えば高速度工
具鋼)を有機溶剤(例えばアセトン)で超音波洗浄を施
した後、真空容器11内の基材ホルダー12に設置し、
2×10-6torr以下に予備排気する。
【0044】次に、イオン源14に供給した窒素含有ガ
ス(例えば窒素、アンモニア等)をイオン源14内でイ
オン化し、イオン20を基材13へ照射すると同時に、
蒸発源151内のホウ素161を電子ビーム171によ
り蒸発させホウ素蒸気181を基材13上に蒸着させる
と共に、蒸発源152内の炭素162を電子ビーム17
2により蒸発させ炭素蒸気182を基材13上に蒸着さ
せる。ここで、イオン20のエネルギーを0.5ke
V、ホウ素の蒸気181の蒸発速度を0.5Å/se
c、炭素蒸気182の蒸発速度を1.4Å/secとす
ると、ホウ素/炭素/窒素組成比1:1:1の炭窒化ホ
ウ素膜を合成できた。
【0045】また、イオン20のエネルギーを0.5k
eV、ホウ素蒸気181の蒸発速度を0.5Å/se
c、炭素蒸気182の蒸発速度を2.4Å/secとす
ると、ホウ素/炭素/窒素組成比1:2:1の炭窒化ホ
ウ素膜を合成できた。さらに、イオン20のエネルギー
を0.5keV、ホウ素蒸気181の蒸発速度を1.0
Å/sec、炭素蒸気182の蒸発速度を2.4Å/s
ecとするとホウ素/炭素/窒素組成比2:2:1の炭
窒化ホウ素膜を合成できた。このようにイオン20のエ
ネルギーを一定とし、ホウ素蒸気181の蒸発速度及び
炭素蒸気182の蒸発速度を変化させることにより、炭
窒化ホウ素膜中のホウ素/炭素/窒素組成比を変化させ
ることができる。
【0046】この効果は、イオン20のエネルギーが3
keV以下であれば0.5keV以外のときでも得るこ
とができる。以上の方法で作製した炭窒化ホウ素膜を光
電子分光分析により分析した結果、炭素、窒素、ホウ素
の互いの結合が認められ、炭窒化ホウ素が合成されてい
ることが確認できた。
【0047】ここで、図4に実施例1〜8により作製し
た、ホウ素/炭素/窒素組成比の異なる炭窒化ホウ素膜
のSUSボール/炭窒化ホウ素膜摺動試験結果を示すよ
うに、本発明で製造した炭窒化ホウ素膜の摩擦係数は、
その組成比の違いにより多少のばらつきはあるものの、
全て比較材である高速度工具鋼やTiNより低く、さら
に摩耗幅も小さいという結果が得られ、耐摩耗性に優れ
ていることも確認された。なお、摩擦係数は炭窒化ホウ
素膜中の組成比により決定されるものであり、実施例に
挙げた製造方法による差異は無かった。さらに、何れの
実施例で製造した炭窒化ホウ素膜の平均表面粗さは約1
0nm以下と非常に滑らかであり、優れた耐摩耗性を示
す裏付けとなっている。
【0048】〔実施例9〕本発明の第9の実施例に係る
炭窒化ホウ素膜の製造方法について図5を参照して説明
する。同図に示す装置は、真空容器11内の基材ホルダ
ー12に取り付けられた基材13に対し、イオン源14
から窒素含有イオン、炭素含有イオン及びホウ素含有イ
オンの混合イオン20を照射するものである。
【0049】このような炭窒化ホウ素膜の製造装置によ
り、炭窒化ホウ素膜は、以下のように合成される。先
ず、基材13(例えば高速度工具鋼)を有機溶剤(例え
ばアセトン)で超音波洗浄を施した後、真空容器11内
の基材ホルダー12に設置し、2×10-6torr以下
に予備排気する。
【0050】次に、イオン源14に供給した窒素含有ガ
ス(例えば窒素、アンモニア等)と炭素含有ガス(例え
ばメタン、アセチレン等)とホウ素含有ガス(例えば塩
化ホウ素、ジボラン等)の混合ガスをイオン源14内で
イオン化し、窒素含有イオンと炭素含有イオンとホウ素
含有イオンの混合イオン20を基材13へ照射する。こ
こで、例えば窒素イオンとメタンイオンと塩化ホウ素イ
オンの混合イオン20のエネルギーを0.5keV、塩
化ホウ素/メタン/窒素の供給量の比を1:4:1とす
ると、ホウ素/炭素/窒素組成比1:1:1の炭窒化ホ
ウ素膜を合成できた。
【0051】また、窒素イオンとメタンイオンと塩化ホ
ウ素イオンの混合イオン20のエネルギーを0.5ke
V、塩化ホウ素/メタン/窒素の供給量の比を1:8:
1とすると、ホウ素/炭素/窒素組成比1:2:1の炭
窒化ホウ素膜を合成できた。また、窒素イオンとメタン
イオンと塩化ホウ素イオンの混合イオン20のエネルギ
ーを0.5keV、塩化ホウ素/メタン/窒素の供給量
の比を2:8:1とするとホウ素/炭素/窒素組成比
2:2:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。
【0052】このように、窒素含有イオンと炭素含有イ
オンとホウ素含有イオンの混合イオン20のエネルギー
を一定とし、ホウ素含有ガス/炭素含有ガス/窒素含有
ガスの供給量の比を変化させることにより、炭窒化ホウ
素膜中のホウ素/炭素/窒素組成比を変化させることが
できる。なお、窒素含有イオンと炭素含有イオンとホウ
素含有イオンの混合イオン20のエネルギーが3keV
以下であれば、当該イオン20のエネルギーが0.5k
eV以外のときでも同様に炭窒化ホウ素膜のホウ素/炭
素/窒素組成比を調整することができる。以上の方法で
作製した炭窒化ホウ素膜を光電子分光法により調べた結
果、ホウ素、炭素、窒素のお互いの結合が認められ、炭
窒化ホウ素が合成されていることが確認できた。
【0053】〔実施例10〕本発明の第10の実施例に
係る炭窒化ホウ素膜の製造方法について図6を参照して
説明する。同図に示す装置は、真空容器11内の基材ホ
ルダー12に取り付けられた基材13に対し、イオン源
141から混合イオン201を照射すると同時に、イオ
ン源142からイオン202を照射するものである。
【0054】混合イオン201は、窒素を含有するイオ
ン、ホウ素を含有するイオン及び炭素を含有するイオン
の内の2種類のイオンを混合したものである。また、イ
オン202は、イオン源141に含まれない残り1種類
のイオンよりなる。イオン源141及びイオン源142
のどちらから2種類の混合イオンを供給しても構わな
い。
【0055】このような炭窒化ホウ素膜の製造装置によ
り、炭窒化ホウ素膜は、以下のように合成される。先
ず、基材13(例えば高速度工具鋼)を有機溶剤(例え
ばアセトン)で超音波洗浄を施した後、真空容器11内
の基材ホルダー12に設置し、2×10-6torr以下
に予備排気する。
【0056】次に、イオン源141に供給した窒素含有
ガス(例えば窒素、アンモニア等)及びホウ素含有ガス
(例えば塩化ホウ素、ジボラン等)の混合ガスをイオン
源141内でイオン化し、窒素含有イオン及びホウ素含
有イオンの混合イオン201を照射すると同時に、イオ
ン源142に供給した炭素含有ガス(例えばメタン、ア
セチレン等)をイオン源142内でイオン化し、炭素含
有イオン202を照射する。
【0057】ここで、例えば窒素イオン及び塩化ホウ素
イオンの混合イオン201及びメタンイオン202のエ
ネルギーを0.5keV、塩化ホウ素/メタン/窒素の
供給量の比を1:4:1とすると、ホウ素/炭素/窒素
組成比1:1:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。ま
た、窒素イオン及び塩化ホウ素イオンの混合イオン20
1及びメタンイオン202のエネルギーを0.5ke
V、塩化ホウ素/メタン/窒素の供給量の比を1:8:
1とすると、ホウ素/炭素/窒素組成比1:2:1の炭
窒化ホウ素膜を合成できた。
【0058】また、窒素イオン及び塩化ホウ素イオンの
混合イオン201及びメタンイオン202のエネルギー
を0.5keV、塩化ホウ素/メタン/窒素の供給量の
比を2:8:1とするとホウ素/炭素/窒素組成比2:
2:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。このように、窒
素含有イオン及びホウ素含有イオンの混合イオン201
及び炭素含有イオン202のエネルギーを一定とし、ホ
ウ素含有ガス/炭素含有ガス/窒素含有ガスの供給量の
比を変化させることにより、炭窒化ホウ素膜中のホウ素
/炭素/窒素組成比を変化させることができる。
【0059】なお、窒素含有イオン及びホウ素含有イオ
ンの混合イオン201及び炭素含有イオン202のエネ
ルギーが3keV以下であれば、エネルギーが0.5k
eV以外のときでも同様に炭窒化ホウ素膜のホウ素/炭
素/窒素組成比を調整することができる。また、窒素を
含有するイオン、ホウ素を含有するイオン、及び炭素を
含有するイオンの内の何れのイオンを組み合わせて2種
類の混合イオン201としても、同様な効果が得られ
る。
【0060】さらに、2種類の混合イオン201及び2
種類の混合イオン201に含まれないイオン202のエ
ネルギーは、3keV以下であれば必ずしも同じでなく
とも同様な効果が得られる。以上の方法で作製した炭窒
化ホウ素膜を光電子分光法により調べた結果、ホウ素、
炭素、窒素のお互いの結合が認められ、炭窒化ホウ素が
合成されていることが確認できた。
【0061】〔実施例11〕本発明の第11の実施例に
係る炭窒化ホウ素膜の製造方法について図7を参照して
説明する。同図に示す装置は、真空容器11内の基材ホ
ルダー12に取り付けられた基材13に対し、イオン源
141から窒素を含有するイオン201と、イオン源1
42からホウ素含有イオン202と、イオン源143か
ら炭素含有イオン203とを同時に照射するものであ
る。イオン源141、イオン源142、イオン源143
の何れから窒素含有イオン、ホウ素含有イオン、炭素含
有イオンを供給しても構わない。
【0062】このような炭窒化ホウ素膜の製造装置によ
り、炭窒化ホウ素膜は、以下のように合成される。先
ず、基材13(例えば高速度工具鋼)を有機溶剤(例え
ばアセトン)で超音波洗浄を施した後、真空容器11内
の基材ホルダー12に設置し、2×10-6torr以下
に予備排気する。
【0063】次に、基材13に対し、イオン源141に
供給した窒素含有ガス(例えば窒素、アンモニア等)を
イオン源141内でイオン化し、窒素含有イオン201
を照射し、イオン源142に供給したホウ素含有ガス
(例えば塩化ホウ素、ジボラン等)をイオン源142内
でイオン化し、ホウ素含有イオン202を照射すると共
に、イオン源143に供給した炭素含有ガス(例えばメ
タン、アセチレン等)をイオン源143内でイオン化
し、炭素含有イオン203を照射する。ここで、窒素含
有イオン201、ホウ素含有イオン202、炭素含有イ
オン203は同時に基材13に照射する。
【0064】ここで、例えば窒素イオン201、塩化ホ
ウ素イオン202、メタンイオン203のエネルギーを
それぞれ0.5keV、塩化ホウ素/メタン/窒素の供
給量の比を1:4:1とすると、ホウ素/炭素/窒素組
成比1:1:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。また、
窒素イオン201、塩化ホウ素イオン202、メタンイ
オン203のエネルギーをそれぞれ0.5keV、塩化
ホウ素/メタン/窒素の供給量の比を1:8:1とする
と、ホウ素/炭素/窒素組成比1:2:1の炭窒化ホウ
素膜を合成できた。
【0065】また、窒素イオン201、塩化ホウ素イオ
ン202、メタンイオン203のエネルギーをそれぞれ
0.5keV、塩化ホウ素/メタン/窒素の供給量の比
を2:8:1とするとホウ素/炭素/窒素組成比2:
2:1の炭窒化ホウ素膜を合成できた。このように窒素
含有イオン201、ホウ素含有イオン202、炭素含有
イオン203のエネルギーを一定とし、ホウ素含有ガス
/炭素含有ガス/窒素含有ガスの供給量の比を変化させ
ることにより、炭窒化ホウ素膜中のホウ素/炭素/窒素
組成比を変化させることができる。
【0066】なお、窒素含有イオン201、ホウ素含有
イオン202、炭素含有イオン203のエネルギーが3
keV以下であれば、エネルギーが0.5keV以外の
ときでも同様に炭窒化ホウ素膜のホウ素/炭素/窒素組
成比を調整することができる。また、窒素含有イオン2
01、ホウ素含有イオン202、炭素含有イオン203
のエネルギーは、3keV以下であれば必ずしも同じで
なくとも同様な効果が得られる。
【0067】以上の方法で作製した炭窒化ホウ素膜を光
電子分光法により調べた結果、ホウ素、炭素、窒素のお
互いの結合が認められ、炭窒化ホウ素が合成されている
ことが確認できた。ここで、図8に第9〜第11の実施
例で作製した炭窒化ホウ素膜のSUSボール/炭窒化ホ
ウ素膜摺動試験の結果を示すように、本発明で製造した
炭窒化ホウ素膜の摩擦係数は、その組成により多少のば
らつきがあるものの、基材である高速度工具鋼やTiN
より低く、さらに摩耗幅も小さいという結果が得られ、
耐摩耗性に優れていることも確認された。
【0068】なお、摩擦係数は炭窒化ホウ素膜中の組成
比により決定されるものであり、実施例に挙げた製造方
法による差異は無かった。また、第9〜第11の実施例
で作製した炭窒化ホウ素膜の平均表面粗さは約10nm
以下と非常に滑らかであり、この低い表面粗さも本発明
で得られた炭窒化ホウ素膜が優れた耐摩耗性を示す要因
となっている。上述したように、本発明は、窒素を含有
するイオン照射、炭素を含有するイオン照射、ホウ素を
含有するイオン照射を同時に行うことにより、基材上に
膜状の炭素、窒素及びホウ素の化合物を低温(150〜
500℃)で形成させることができる。
【0069】尚、窒素、炭素、ホウ素を含有するイオン
の照射エネルギーが3keV以上のときは、イオンのエ
ッチング効果により形成される炭窒化ホウ素膜の成膜速
度が著しく減少するため、これらのイオンの照射エネル
ギーをそれぞれ3keV以下とすることにより、効率的
に炭窒化ホウ素膜を製造することができる。
【0070】
【発明の効果】以上、実施例に基づいて具体的に説明し
たように、本発明の請求項1に係る炭窒化ホウ素膜の製
造方法は、イオン照射と蒸着を同時に行うことにより、
基材上に膜状の炭素、窒素及びホウ素の化合物を低温で
形成させるので、原料の供給比を変化させるという簡略
な手順により、耐摩耗性に優れた所望の組成比を有する
炭窒化ホウ素膜を製造可能である。
【0071】また、本発明の請求項2に係る炭窒化ホウ
素膜の製造方法は、請求項1において、イオン照射は、
窒素含有イオンのみ又は窒素含有イオンと炭素若しくは
ホウ素含有イオンの混合イオンとし、蒸着物質は、炭素
及びホウ素又は炭素若しくはホウ素を含む固体を原料と
することができる。即ち、本発明は、低温で製造可能で
あることより基材の選択範囲が広がるため、広く各種回
転機器の軸受やスライド等の摺動部材や情報機器の記憶
装置等、耐摩耗性を要求される部材や電子工業材料、耐
熱材料、高靭性材料等に対し好適である。
【0072】また、本発明の請求項3に係る炭窒化ホウ
素膜の製造方法は、請求項1において、効率的に炭窒化
ホウ素膜を製造するため、窒素含有イオンのみ又は窒素
含有イオンと炭素若しくはホウ素含有イオンの混合イオ
ンのエネルギーを3keV以下としたので、窒素含有イ
オンと炭素含有イオンの混合イオンのエネルギーを一定
とし、窒素含有イオン/炭素含有イオン供給比及びホウ
素の蒸気の蒸発速度を変化させることにより、炭窒化ホ
ウ素膜中のホウ素/炭素/窒素組成比を変化させること
ができる。
【0073】また、本発明の請求項4に係る炭窒化ホウ
素膜の製造装置は、真空容器内の基材に対して、イオン
照射を行うイオン源と、前記基材に対して蒸着を行う蒸
発源とを具備し、前記基材上に膜状の炭素、窒素及びホ
ウ素の化合物を低温で形成させるので、原料の供給比を
変化させるという簡略な手順により、耐摩耗性に優れた
所望の組成比を有する炭窒化ホウ素膜を製造可能であ
る。
【0074】また、本発明の請求項5に係る炭窒化ホウ
素膜の製造装置は、真空容器内の基材に対して、窒素含
有イオンのみ又は窒素含有イオンと炭素若しくはホウ素
含有イオンの混合イオンを照射するイオン源と、前記基
材に対して炭素及びホウ素又は炭素若しくはホウ素を含
む固体を原料として蒸着を行う蒸発源とを具備し、前記
基材上に膜状の炭素、窒素及びホウ素の化合物を低温で
形成させることができる。即ち、本発明は、低温で製造
可能であることより基材の選択範囲が広がるため、広く
各種回転機器の軸受やスライド等の摺動部材や情報機器
の記憶装置等、耐摩耗性を要求される部材や電子工業材
料、耐熱材料、高靭性材料等に対し好適である。
【0075】また、本発明の請求項6に係る炭窒化ホウ
素膜の製造装置は、請求項4又は5において、前記イオ
ン源は、効率的に炭窒化ホウ素膜を製造するため、窒素
含有イオンのみ又は窒素含有イオンと炭素若しくはホウ
素含有イオンの混合イオンのエネルギーを3keV以下
としたので、窒素含有イオンと炭素含有イオンの混合イ
オンのエネルギーを一定とし、窒素含有イオン/炭素含
有イオン供給比及びホウ素の蒸気の蒸発速度を変化させ
ることにより、炭窒化ホウ素膜中のホウ素/炭素/窒素
組成比を変化させることができる。
【0076】また、本発明の請求項7に係る炭窒化ホウ
素膜の製造方法は、窒素、炭素、ホウ素をそれぞれ含有
するイオン照射を同時に行うことにより、基材上に膜状
の炭素、窒素及びホウ素の化合物を形成させるので、原
料の供給比を変化させるという簡略な手順により、耐摩
耗性に優れた所望の組成比を有する炭窒化ホウ素膜を製
造可能であり、また低温で製造可能であることより基材
の選択範囲が広がるため、広く各種回転機器の軸受やス
ライド等の摺動部材や情報機器の記憶装置等、耐摩耗性
を要求される部材や電子工業材料、耐熱材料、高靭性材
料等に対し好適である。
【0077】また、本発明の請求項8に係る炭窒化ホウ
素膜の製造方法は、請求項7において、前記イオン照射
はエネルギーを3keV以下とするので、炭窒化ホウ素
膜の成膜速度の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1〜第4の実施例に係る炭窒化ホウ
素膜の製造装置の概略図である。
【図2】本発明の第5〜第7の実施例に係る炭窒化ホウ
素膜の製造装置の概略図である。
【図3】本発明の実施例8に係る炭窒化ホウ素膜の製造
装置の概略図である。
【図4】本発明の第1〜第8の実施例により作成した炭
窒化ホウ素膜のSUSボール/炭窒化ホウ素膜摺動試験
結果を示すグラフである。
【図5】本発明の第9の実施例において使用した炭窒化
ホウ素膜製造装置の概略図である。
【図6】本発明の第10の実施例において使用した炭窒
化ホウ素膜製造装置の概略図である。
【図7】本発明の第11の実施例において使用した炭窒
化ホウ素膜製造装置の概略図である。
【図8】本発明の第9〜第11の実施例により作製した
炭窒化ホウ素膜のSUSボール/炭窒化ホウ素膜摺動試
験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
11 真空容器 12 基材ホルダー 13 基材 14,141,142,143 イオン源 15,151,152 蒸発源 16 原料 17,171,172 電子ビーム 18,181,182 蒸気 19,191,192 モニター 20,201,202,203 イオン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 保科 良祐 神奈川県横浜市金沢区幸浦一丁目8番地1 三菱重工業株式会社基盤技術研究所内 Fターム(参考) 4K029 BA54 BC02 BD04 BD05 CA09 DB05 DE02 EA09

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオン照射と蒸着を同時に行うことによ
    り、基材上に膜状の炭素、窒素及びホウ素の化合物を低
    温で形成させることを特徴とする炭窒化ホウ素膜の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、イオン照射は、窒素
    含有イオンのみ又は窒素含有イオンと炭素若しくはホウ
    素含有イオンの混合イオンとし、蒸着物質は、炭素及び
    ホウ素又は炭素若しくはホウ素を含む固体を原料とする
    ことを特徴とする炭窒化ホウ素膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1において、効率的に炭窒化ホウ
    素膜を製造するため、窒素含有イオンのみ又は窒素含有
    イオンと炭素若しくはホウ素含有イオンの混合イオンの
    エネルギーを3keV以下とすることを特徴とする炭窒
    化ホウ素膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 真空容器内の基材に対して、イオン照射
    を行うイオン源と、前記基材に対して蒸着を行う蒸発源
    とを具備し、前記基材上に膜状の炭素、窒素及びホウ素
    の化合物を低温で形成させることを特徴とする炭窒化ホ
    ウ素膜の製造装置。
  5. 【請求項5】 真空容器内の基材に対して、窒素含有イ
    オンのみ又は窒素含有イオンと炭素若しくはホウ素含有
    イオンの混合イオンを照射するイオン源と、前記基材に
    対して炭素及びホウ素又は炭素若しくはホウ素を含む固
    体を原料として蒸着を行う蒸発源とを具備し、前記基材
    上に膜状の炭素、窒素及びホウ素の化合物を低温で形成
    させることを特徴とする炭窒化ホウ素膜の製造装置。
  6. 【請求項6】 請求項4又は5において、前記イオン源
    は、効率的に炭窒化ホウ素膜を製造するため、窒素含有
    イオンのみ又は窒素含有イオンと炭素若しくはホウ素含
    有イオンの混合イオンのエネルギーを3keV以下とす
    ることを特徴とする炭窒化ホウ素膜の製造装置。
  7. 【請求項7】 窒素、炭素、ホウ素をそれぞれ含有する
    イオン照射を同時に行うことにより、基材上に膜状の炭
    素、窒素及びホウ素の化合物を形成させることを特徴と
    する炭窒化ホウ素膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記イオン照射はエネルギーを3keV
    以下とすることを特徴とする請求項7記載の炭窒化ホウ
    素膜の製造方法。
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JP2010207922A (ja) * 2009-03-06 2010-09-24 Mitsubishi Materials Corp 表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具

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JP2010207922A (ja) * 2009-03-06 2010-09-24 Mitsubishi Materials Corp 表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具

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