JP2000063903A - 粉末射出成形部品の製造方法 - Google Patents

粉末射出成形部品の製造方法

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JP2000063903A
JP2000063903A JP10228964A JP22896498A JP2000063903A JP 2000063903 A JP2000063903 A JP 2000063903A JP 10228964 A JP10228964 A JP 10228964A JP 22896498 A JP22896498 A JP 22896498A JP 2000063903 A JP2000063903 A JP 2000063903A
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organic binder
powder
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sintering
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Shizue Ito
静枝 伊藤
Koji Fujii
浩司 藤井
Hisato Hiraishi
久人 平石
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Original Assignee
Citizen Watch Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粉末射出成形法において、脱脂変形を防止
し、なおかつ表面品質に優れた焼結部品を得るための粉
末射出成形部品の製造方法。 【解決手段】 保形性に優れた第1のコンパウンドを作
製する工程と、成形性に優れた第2のコンパウンドを作
製する工程と、前記第2のコンパウンドを成形体表面の
少なくとも一部に用いて、二種類のコンパウンドを部分
的に使い分けて一体とした部品を射出成形する工程と、
得られた成形体中に含まれるバインダを除去する工程
と、得られた脱脂体を焼結する工程とからなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、焼結用粉末と有機
バインダ成分である少なくとも一種類の熱可塑性樹脂を
混練してコンパウンドを作製し、これを成形して射出成
形体とし、前記射出成形体中に含まれる有機バインダを
除去して脱脂体を得た後、前記脱脂体を焼結して焼結体
を作製する粉末射出成形部品の製造方法およびその粉末
射出成形部品に関する。
【0002】
【従来の技術】粉末射出成形法は、三次元の複雑形状の
部品を高い寸法精度で量産できる技術として広く用いら
れている。粉末射出成形法では、焼結用粉末に熱可塑性
樹脂である有機バインダを分散、混合し、これを射出成
形法により成形し、次いでこの成形体中に含まれる樹脂
を除去、すなわち脱脂をおこなった後、前記成形体を焼
結し、所望の焼結部品を作製する。ここで、有機バイン
ダを除去する方法として、加熱分解法(特公昭61−5
8563号公報など)、溶媒抽出法(特公昭59−27
743号公報など)、光分解法(特開平2−27574
8号公報など)が提案、実施されている。
【0003】粉末射出成形法においては、脱脂工程にお
ける有機バインダの軟化に伴う自重変形を防止すること
が重要な課題である。ここで、脱脂時の自重変形を防止
するため、有機バインダの一成分としてポリアセタール
を用いて、加熱により脱脂をおこなう方法や、酸触媒を
用いて脱脂をおこなう方法が提案、実施されている。
(特開平8−20803号公報、特開平5−78177
号公報など)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、変形抑
制に有効なポリアセタールやポリメタクリル酸エステル
などのバインダを含むコンパウンドは、流動性が悪いた
め、彫り込みの深い微細な形状を含んだ、複雑形状部品
を成形する場合、コンパウンドが均一に金型内に充填し
難いという問題点を有していた。また、これらの樹脂は
コンパウンドの流動性を向上させるために添加するパラ
フィンワックスやフタル酸エステル、ステアリン酸など
の可塑剤や滑剤との親和性が悪く、射出成形時にバイン
ダ成分が分離し、成形体の表面荒れに起因した焼結体の
外観品質の低下が問題となっていた。
【0005】一方、ポリエチレン、アタクチックポリプ
ロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性
樹脂を主成分とし、パラフィンワックスやフタル酸エス
テル、ステアリン酸などと混合したバインダ組成のコン
パウンドは、成形性が良く、成形体の表面品質は良好で
あるものの、溶融軟化時の粘性が低いため、脱脂工程に
おけるバインダ軟化に起因した自重変形が原因となり、
寸法精度に問題を生じていた。
【0006】すなわち、脱脂変形を抑制するためのコン
パウンドと、流動性が良く、複雑形状部品の表面品質を
向上させるためのコンパウンドには相反する性質が要求
され、両者の特性を満たすコンパウンドを見いだすこと
は困難であった。
【0007】〔発明の目的〕したがって、本発明の目的
は、上記問題点を解決して、脱脂時の自重変形を防止し
て寸法精度を向上させ、なおかつ外観表面品質に優れた
粉末射出成形部品の製造方法およびその粉末射出成形部
品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の粉末射出成形部品の製造方法は、下記記載
の構成を採用する。
【0009】すなわち、焼結用粉末と有機バインダ成分
である少なくとも一種類の熱可塑性樹脂を混練して、保
形性に優れた第1のコンパウンドを作製する工程と、焼
結用粉末と有機バインダ成分である少なくとも一種類の
熱可塑性樹脂を混練して成形性に優れた第2のコンパウ
ンドを作製する工程と、前記第2のコンパウンドを成形
体表面の少なくとも一部に用いて、二種類のコンパウン
ドを部分的に使い分けて一体とした部品を射出成形して
成形体を作製する工程と、得られた成形体から有機バイ
ンダ成分を除去して脱脂体を作製する工程と、得られた
脱脂体を焼結して焼結体を作製する工程とを有すること
を特徴とする。
【0010】さらに、上記目的を達成するために、本発
明の粉末射出成形部品の製造方法は、下記記載の構成を
採用する。すなわち、前記脱脂体を作製する工程が、成
形体中に含まれる有機バインダ成分の一部を除去する第
1の脱脂工程と、残余の有機バインダ成分を除去する第
2の脱脂工程とを有することを特徴とする。
【0011】さらに、前記第1の脱脂工程で、第1のコ
ンパウンド中に含まれる有機バインダの大部分を除去す
ることを特徴とする。
【0012】さらに、前記第1の脱脂工程で、第2のコ
ンパウンド中に含まれる有機バインダの大部分を除去す
ることを特徴とする。
【0013】さらに、上記目的を達成するために、本発
明の粉末射出成形部品の製造方法は、下記記載の構成を
採用する。すなわち、前記第1のコンパウンドの作製に
使用する有機バインダとして、少なくとも一部にポリア
セタールを用い、前記第1の脱脂工程が、前記ポリアセ
タールを酸含有雰囲気下で加熱して除去する工程である
ことを特徴とする。
【0014】さらに、前記第1の脱脂工程が、前記第2
のコンパウンドに含有される有機バインダの少なくとも
一部を、前記有機バインダが可溶な溶媒を用いて抽出除
去する工程であることを特徴とする。
【0015】さらに、前記第1のコンパウンド作製に使
用する有機バインダとして、少なくとも一部に光分解性
の樹脂を用い、前記第1の脱脂工程が、紫外線を照射し
ながら加熱することにより、前記光分解性の樹脂を分解
除去する工程であることを特徴とする。
【0016】さらに、上記目的を達成するために、本発
明の粉末射出成形部品の製造方法は、下記記載の構成を
採用する。すなわち、前記第2のコンパウンドの作製に
使用する粉末の比表面積が、前記第1のコンパウンドの
作製に使用する粉末の比表面積と同一かあるいは+0.
2m2 /g以内の範囲で大きいことを特徴とする。
【0017】さらに、前記第1のコンパウンドの作製に
使用する有機バインダの体積比率と、前記第2のコンパ
ウンドの作製に使用する有機バインダの体積比率の差
が、−2%から+2%の範囲であることを特徴とする。
【0018】〔作用〕本発明は、保形性に優れた第1の
コンパウンドを作製する工程と、成形性に優れた第2の
コンパウンドを作製する工程と、前記第2のコンパウン
ドを成形体表面の少なくとも一部に用いて、二種類のコ
ンパウンドを部分的に使い分けて一体とした部品を射出
成形して成形体を作製する工程と、得られた成形体中に
含まれるバインダを除去して脱脂体を作製する工程と、
得られた脱脂体を焼結して焼結体を作製する工程とを有
することを特徴とする。これによって、保形性と成形性
の異なるコンパウンドを局部的に組み合わせて一つの部
品を形成し、さらに、用いる有機バインダに応じて脱脂
手法を選択することができるため、自重変形が少なく、
寸法精度に優れ、なおかつ外観表面品質に優れた粉末射
出成形部品を製造することができる。
【0019】プラスチックの射出成形の分野では、二色
成形機などを用いて複数の樹脂を部分的に使い分け、一
体部品を得る方法が知られている。しかし、二色成形技
術を粉末射出成形法に適用する場合には、それぞれのコ
ンパウンドの収縮率を一定にすることが必要となる。こ
こで、収縮率について説明する。粉末射出成形法は、焼
結用粉末と熱可塑性樹脂である有機バインダの混合物を
射出成形した後に有機バインダを除去し、さらに焼結を
おこなって部品を製造する方法である。したがって、有
機バインダを含む射出成形体の寸法に比べて、有機バイ
ンダを含まない焼結体の寸法は小さくなり、この射出成
形体と焼結体との寸法変化率を収縮率で示している。粉
末射出成形法では、主に有機バインダ分の体積収縮と、
粉末の焼結緻密化による収縮の両者が収縮率を左右す
る。
【0020】同一粉末を用いた場合、収縮率は添加する
有機バインダの種類によらず、その量で決まるため、粉
末射出成形法に二色成形を応用する際には、各コンパウ
ンド中に含まれる有機バインダの体積比率を一定にする
必要がある。ここで、収縮率と粉末およびコンパウンド
の流動性の関係について示す。
【0021】まず、一定の粉末に対して、ポリアセター
ルやポリメタクリル酸エステルなどの保形性に優れた樹
脂を有機バインダとして用いる場合には、ステアリン酸
やワックス類などを有機バインダとして用いる場合に比
べて、体積比で多くの有機バインダを添加しなければな
らない。なぜならば、前者は後者に比べて溶融時の粘度
が高く、流動性に劣るためである。
【0022】また、ある一定の有機バインダを用いた場
合、比表面積の大きな焼結用粉末ほど、体積比で多くの
有機バインダを添加しなければならない。なぜならば、
比表面積の大きな粉末の表面を覆って流動性を確保する
ためには、より多くの有機バインダが必要なためであ
る。
【0023】すなわち、本発明において、第1のコンパ
ウンドおよび第2のコンパウンドで全く同一の粉末を用
いて、それぞれ同一の体積比で有機バインダを添加した
場合、一般的に、第1のコンパウンドの流動性は、第2
のコンパウンドの流動性よりも悪くなる。この現象は、
両コンパウンドの有機バインダの流動性がそれほど変わ
らない有機バインダ組成の場合は大きな問題とはならな
いが、流動性が大きく異なる有機バインダ組成を用いた
場合には、問題を生じる。すなわち、有機バインダ比率
を第1のコンパウンドの適正量に合わせた場合には、第
2のコンパウンドの有機バインダ量が過剰となり、有機
バインダと粉末が均一分布した成形体を得ることができ
なくなる。一方、有機バインダ比率を第2のコンパウン
ドの適正量に合わせた場合には、第1のコンパウンドの
有機バインダ量が不足し、射出成形が不可能になる。
【0024】そこで、本発明では、両コンパウンドに用
いる粉末の比表面積を規定することにより、両コンパウ
ンドの流動性を最適化することができる。すなわち、流
動性の良い第2のコンパウンドに用いる粉末として、そ
の比表面積が、前記第1のコンパウンドに用いる粉末の
比表面積と同一かあるいは0.2m2 /g以内の範囲で
大きい粉末を用いることにより、両コンパウンドの流動
性を最適化することができる。
【0025】粉末の比表面積により、コンパウンドの流
動性を調整する機構を以下に示す。一般に、コンパウン
ド中に添加された有機バインダの役割は、粉末表面全体
を覆う機能を果たす部分と、コンパウンドの流動性に寄
与する部分からなる。ここで、比表面積の大きな粉末ほ
ど、その粉末表面全体を覆うために必要な有機バインダ
の量は多くなるため、コンパウンドの流動性に寄与でき
るバインダの量が相対的に少なくなる。したがって、比
表面積の異なる粉末を用いて、同一の有機バインダ組成
かつ同一のバインダ量でコンパウンドを作製した場合に
は、比表面積の大きい粉末を用いたコンパウンドの方が
流動性は悪くなる。これは、比表面積の大きい粉末で
は、添加された有機バインダのうち、相対的に多くの部
分が粉末表面を覆うために機能し、流動性確保に関与で
きる有機バインダの量が相対的に少なくなるためであ
る。逆に、流動性の良い有機バインダ組成に対しては、
比表面積の大きな粉末を用いることにより、コンパウン
ドの流動性を相対的に低下させることができる。このよ
うに、有機バインダの種類とその流動性に応じて、比表
面積の異なる粉末を用いることによってコンパウンドの
流動性を調整することができる。
【0026】一方、比表面積の異なる粉末を用いた場
合、一定の焼結条件では緻密化の進行具合が異なり、収
縮率に差が生じる場合がある。ここで、本発明では、両
コンパウンド中に含まれる有機バインダの体積比率の差
を規定することにより、両コンパウンドの収縮率をほぼ
等しくなるように制御することができる。ここで、本発
明における有機バインダの体積比率とは、コンパウンド
中に含まれる粉末と有機バインダを体積比で示した時の
有機バインダの占める体積%である。本発明では、前記
第1のコンパウンド中に含まれる有機バインダの体積比
率と、前記第2のコンパウンド中に含まれる有機バイン
ダの体積比率の差を、−2%から+2%の範囲になるよ
うに調整することにより、両コンパウンドの収縮率を一
定にすることができ、欠陥のない焼結体を得ることがで
きる。一方、前記体積比率の差が本発明の範囲外の場合
には、両コンパウンドの収縮率の差に起因して、焼結工
程で製品にクラックや変形が発生し、最終焼結体に欠陥
が生じてしまう。
【0027】以上のように、本発明では、両コンパウン
ドに用いる粉末の比表面積と両コンパウンド中に含まれ
る有機バインダの体積比率の差を規定することにより、
両コンパウンドの流動性が最適化され、なおかつ収縮率
が一定の成形体を得ることができ、結果として欠陥のな
い粉末射出成形部品を製造することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための最
良の形態における粉末射出成形品の製造方法およびその
粉末射出成形部品について説明する。本発明の工程図を
図1に示す。
【0029】まず、本発明において、保形性に優れた第
1のコンパウンドを作製する。本発明における第1のコ
ンパウンドに用いる粉末1は、一般に粉末射出成形に用
いられる金属、セラミックの任意の焼結用粉末を用いる
ことができる。さらに、本発明における第1のコンパウ
ンドに用いる有機バインダ1は、保形性に優れた少なく
とも一種類の熱可塑性樹脂からなる。例えば、ポリアセ
タール、ポリスチレン、ポリαメチルスチレン、ポリメ
タクリル酸エステルなどを主成分とすることができる。
なお、これらの樹脂を2種類以上混合して用いることも
できる。また、流動性を確保する目的でポリエチレン、
アタクチックポリプロピレンなどの他、可塑剤や滑剤を
添加しても良い。
【0030】次に、前記焼結用粉末1と前記有機バイン
ダ1を加圧ニーダー、スクリュー式押出機等を用いて混
練し、第1のコンパウンドを得る。
【0031】次に、成形性に優れた第2のコンパウンド
を作製する。本発明における第2のコンパウンドに用い
る粉末2は、粉末1と比表面積が同一か、あるいは0.
2m2 /g以内の範囲で大きい粉末を用いる。第2のコ
ンパウンドに用いる有機バインダ2は、通常、第1のコ
ンパウンドに用いる有機バインダ1より流動性が良い
が、粉末2として上記に示したような比表面積を有する
粉末を用いることにより、両コンパウンドの流動性を最
適にすることができる。コンパウンドの流動性は、例え
ば、ある温度で一定荷重をかけた時の流れ値を測定する
ことにより、評価することができる。例えば、射出成形
温度にて10kgfの荷重で直径1mm、長さ1mmの
キャピラリー内を押し出した時の流れ値が、0.03か
ら0.1mL/秒の範囲となることが好ましい。一方、
比表面積が粉末1よりも0.2m2/g以上大きい粉末
あるいは粉末1よりも比表面積の小さい粉末を用いた場
合には、両コンパウンド共に適正なバインダ量で、なお
かつ収縮率を一致させることは極めて困難となる。
【0032】比表面積の大きな粉末としては、相対的に
粒径が細かい微粉末や、あるいは粉砕粉、水アトマイズ
粉末など異形状の粉末を用いることができる。特に、本
発明では、外観品質が要求される部分に粒径の細かい微
粉末を用いて、部分的にピンホールの少ない高密度な焼
結体を作製することにより、表面品質を向上させること
ができる。特に微粉末はコストが高いという問題点を有
していたが、本発明では、外観品質が要求される部品の
表面部分など、選択的に微粉末を使用することができる
ため、低コストで表面品質に優れた焼結体を得ることが
できる。また、粉末2の材質は粉末1と同一の材質か、
あるいは粉末1と同様の焼結雰囲気および焼結温度にて
焼結可能な粉末であれば、異種材料でも良い。
【0033】本発明における第2のコンパウンドに用い
る有機バインダ2は、少なくとも一種類の熱可塑性樹脂
からなり、溶融時の粘性が低く、流動性に優れた樹脂を
基本成分とする。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、パラフ
ィンワックス、カルナバワックス、フタル酸エステル、
ステアリン酸などを用いることができる。
【0034】次に、前記焼結用粉末2と前記有機バイン
ダ2を加圧ニーダー、ミキサー等を用いて混練し、第2
のコンパウンドを得る。ここで、本発明では、第2のコ
ンパウンド中に占める有機バインダの体積比率を、第1
のコンパウンド中に占める有機バインダの体積比率に対
して−2%から+2%の範囲で制御することにより、両
コンパウンドの収縮率をほぼ等しくなるように制御する
ことができる。
【0035】例えば、焼結用粉末1としてガスアトマイ
ズ粉末などの球形粉を用いて、比表面積の大きい焼結用
粉末2として同じくガスアトマイズ粉末でさらに粒径の
細かい微粉末を用いた場合には、同一焼結条件におい
て、焼結用粉末2の方が緻密化が顕著に進行し、焼結工
程での収縮率が大きくなるため、第2のコンパウンドに
おける有機バインダの体積比率を上記の範囲で少なくす
ればよい。また、焼結用粉末1としてガスアトマイズ粉
末などの球形粉を用い、比表面積の大きい焼結用粉末2
として、例えば水アトマイズ粉末などの異形状の粉末を
用いた場合、同一焼結条件において焼結用粉末2の方が
緻密化が進行しにくく、焼結工程での収縮率が小さくな
るため、第2のコンパウンドにおける有機バインダの比
率を上記の範囲で多くすればよい。いずれの場合も有機
バインダの比率を上記の範囲外に変化させた場合には、
焼結収縮工程での歪みが生じ、欠陥の無い焼結体を得る
ことが困難となる。
【0036】本発明における第1および第2のコンパウ
ンドは、目的とする部品の形状に応じて有機バインダ1
および有機バインダ2の組成を選択することができる。
ここで、両者の有機バインダの流動性が大きく異なる組
成を選択した場合には、粉末1と粉末2を、それらの比
表面積の差が本発明の範囲内で大きくなるように選択す
る。特に外観品質に優れた焼結体を得るためには、粉末
2として微粉末を用いることが好ましい。このように各
コンパウンドを製造するための粉末および有機バインダ
組成を決定した後、両コンパウンドの収縮率が一定とな
るように、それぞれの有機バインダの体積比率を決定す
る。有機バインダの体積比率は、両コンパウンドにおけ
る有機バインダの流動性と粉末の焼結収縮特性を考慮し
て、それぞれのコンパウンドにおける体積比率の差が本
発明の範囲内となるように決定する。
【0037】次に、前記コンパウンドを部分的に使い分
け、一体化した部品を成形し、所望の形状の射出成形体
を得る。本発明において、2種類のコンパウンドからな
る成形体を得るためには、プラスチックの成形で一般的
に用いられている二色成形機を利用することができる。
部品の形状に応じて、どちらのコンパウンドを先に成形
してもよい。本発明において、保形性に優れた第1のコ
ンパウンドは、特に自重変形が起こりやすい形状を支え
る部分に用いる。一方、成形性に優れた第2のコンパウ
ンドは、平滑な表面品質が要求されるような成形体表面
の少なくとも一部に用いる。
【0038】次に、前記射出成形体中に含まれる有機バ
インダを除去するため、脱脂をおこなう。本発明におい
て、有機バインダ1と有機バインダ2は、従来方法と同
様に、連続して加熱分解除去することができる。脱脂雰
囲気は、大気、不活性雰囲気、還元雰囲気など、使用す
る粉末に応じて任意に選択し、雰囲気圧力も減圧、常
圧、加圧下でおこなうことができる。
【0039】また、本発明においては第1の脱脂工程と
して、有機バインダの少なくとも一部をあらかじめ除去
しておくことができる。例えば、有機バインダの成分中
にポリアセタールを用いた場合、射出成形体をまず、発
煙硝酸などの酸触媒を含有する雰囲気下で加熱処理する
ことにより、ポリアセタールを除去した後、第2の脱脂
工程として、残余の成分を加熱分解除去することができ
る。
【0040】また、有機バインダ成分中に例えばワック
ス類やステアリン酸など、ある有機溶媒に可溶な成分を
用いたり、あるいはポリビニルアルコールやメチルセル
ロースなどの水溶性の成分を用いて、第1の脱脂工程と
して、射出成形体をまず有機溶媒や水に浸漬するなどし
て、可溶な成分をあらかじめ抽出除去した後、第2の脱
脂工程として、残余の成分を加熱分解除去することもで
きる。
【0041】あるいは、有機バインダ成分の少なくとも
一部として、ポリメタクリル酸エステル、ポリαメチル
スチレンなどの光分解性の成分を用い、第1の脱脂工程
として、射出成形体に紫外線を照射しながら加熱し、あ
らかじめこれらの成分を分解除去した後、第2の脱脂工
程として、残余の成分を加熱分解除去することもでき
る。
【0042】以上のように本発明では、保形性と流動性
の異なる種々のコンパウンドと脱脂手法を、部品の形状
に応じて使い分けることができるため、種々の部品に対
応して、脱脂時の自重変形を抑制し、なおかつ効率良く
脱脂をおこなうことができる。
【0043】本発明における焼結は、公知の方法により
原料粉末に応じた所定の雰囲気で、所定の温度、処理時
間おこなうことにより、所望の形状の粉末射出成形部品
を得ることができる。本発明においては、複雑形状部分
には成形性に優れた有機バインダ組成のコンパウンドを
用いているため、成形不良に起因した表面荒れなどの無
い、外観品質に優れた焼結部品を製造することができ
る。また、自重変形しやすい部分には保形性に優れた有
機バインダ組成のコンパウンドを用いているため、複雑
大型部品においても脱脂時の有機バインダ軟化に伴う自
重変形が防止でき、寸法精度に優れた焼結部品を製造す
ることができる。さらに、本発明においては、複数のコ
ンパウンドそれぞれについて、バインダ量および原料粉
末の比表面積を最適化することにより、各コンパウンド
の収縮率を同一にすることができるため、表面品質に優
れた、欠陥のない焼結部品を得ることができる。
【0044】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に
説明する。
【0045】(実施例1)焼結用粉末1として平均粒径
12μm、比表面積0.13m2 /gであるSUS31
6L球形粉末100gに対して、有機バインダ1として
ポリアセタール50重量%、ポリエチレン30重量%、
アタクチックポリプロピレン20重量%からなる混合物
を8.8g添加し、加圧ニーダーにて175℃にて混練
をおこない、第1のコンパウンドを得た。
【0046】次に前記粉末100gに対して、有機バイ
ンダ2としてポリプロピレン25重量%、エチレン酢酸
ビニル共重合体25重量%、ポリエチレン25重量%、
ステアリン酸15重量%、フタル酸ジブチル10重量%
からなる混合物を8.3g添加し、加圧ニーダーを用い
て150℃にて混練をおこない、第2のコンパウンドを
得た。ここで、粉末と有機バインダの混合比は両コンパ
ウンド共に粉末60体積%に対して、有機バインダ40
体積%とした。
【0047】得られた二種類のコンパウンドを、二色成
形機を用いて図2に示すような時計部品を成形した。ま
ず、第1のコンパウンドを用いて、図2におけるAに示
した部分を成形した。次に第2のコンパウンドを用い
て、図2におけるBに示した部分を成形した。
【0048】得られた成形体を窒素雰囲気中にて脱脂を
おこなった。まず、室温から150℃までを2.5℃/
分で昇温させ、続いて250℃までを0.4℃/分、続
いて350℃までを0.6℃/分、続いて500℃まで
を0.7℃/分で昇温させ、500℃で1時間保持をお
こない、脱脂体を得た。
【0049】次に前記脱脂体を水素雰囲気中、すべて1
0℃/分の昇温速度で昇温させ、500℃で1時間保持
した後、1100℃まで昇温させて1時間保持し、さら
に1350℃まで昇温させて2時間保持をおこない焼結
体を得た。また、図3に示したように焼結体の自重変形
量Dを測定した。変形量は10μmであった。
【0050】(実施例2)第1のコンパウンドとして、
実施例1で製造した第1のコンパウンドと同一のコンパ
ウンドを作製した。すなわち、実施例1で製造したコン
パウンドと同一組成のコンパウンドを実施例1と同一の
方法により製造した。
【0051】次に、焼結用粉末2として、平均粒径17
μmであり、比表面積0.24m/gであるSUS3
16L異形粉末100gに対して、有機バインダ2とし
て、実施例1で使用した有機バインダ2と同一組成のバ
インダを9.0g添加し、それらを混練して第2のコン
パウンドを得た。ここで、粉末と有機バインダとの混合
比は、粉末58体積%に対して有機バインダ42体積%
とした。
【0052】得られた二種類のコンパウンドを、二色成
形機を用いて図2に示すような時計部品を成形した。ま
ず、第1のコンパウンドを用いて、図2におけるAに示
した部分を成形した。次に第2のコンパウンドを用い
て、図2におけるBに示した部分を成形した。
【0053】次に、得られた射出成形体を実施例1と同
様の脱脂、焼結条件で処理をおこない、焼結体を得た。
得られた焼結体の変形量は10μmであった。
【0054】(実施例3)焼結用粉末1として、実施例
1で用いたSUS316L球形粉末100gに対して、
有機バインダ1として、ポリアセタール80重量%、ポ
リエチレン20重量%からなる混合物を10.4g添加
し、加圧ニーダーを用いて180℃にて混練をおこな
い、第1のコンパウンドを得た。ここで、粉末と有機バ
インダの混合比は、粉末58体積%に対して有機バイン
ダ42体積%とした。
【0055】次に、焼結用粉末2として、平均粒径10
μmであり、比表面積0.17m/gであるSUS3
16L球形粉末100gに対して、有機バインダ2とし
て、実施例1で使用した有機バインダ2と同一組成のバ
インダを8.6g添加し、それらを混練して第2のコン
パウンドを得た。ここで、粉末と有機バインダとの混合
比は、粉末59体積%に対して有機バインダ41体積%
とした。
【0056】得られた二種類のコンパウンドを、実施例
1と同様に時計部品を成形した。まず、第1のコンパウ
ンドを用いて、図2におけるAに示した部分を成形し
た。次に第2のコンパウンドを用いて、図2におけるB
に示した部分を成形した。
【0057】次に、前記射出成形体の脱脂をおこなっ
た。まず、前記射出成形体を120℃の窒素雰囲気中に
おいて、発煙硝酸を0.03cc/分で供給し、3時間
保持することにより、第1のコンパウンドに含まれるポ
リアセタールの酸触媒による分解除去をおこなった。次
に、残余の有機バインダを除去するため、窒素雰囲気中
にて、加熱分解脱脂をおこなった。まず、室温から15
0℃までを2.5℃/分で昇温させ、続いて250℃ま
でを0.4℃/分で昇温させ、500℃までを0.7℃
/分で昇温させ、500℃で1時間の保持をおこなっ
た。
【0058】さらに、実施例1と同様の条件で焼結をお
こなった。得られた焼結体の自重変形量は5μmであっ
た。
【0059】(実施例4)第1のコンパウンドとして、
実施例1で製造した第1のコンパウンドと同一のコンパ
ウンドを得た。すなわち、実施例1で製造したコンパウ
ンドと同一組成のコンパウンドを実施例1と同一の方法
により製造した。
【0060】次に、焼結用粉末2として、平均粒径8μ
mであり、比表面積0.19m2 /gであるSUS31
6L球形粉末100gに対して、有機バインダ2とし
て、パラフィンワックス50重量%、カルナバワックス
28重量%、ポリエチレン20重量%、ステアリン酸2
重量%からなる混合物を7.8g添加し、プラネタリー
タイプのミキサーを用いて150℃にて混練をおこな
い、第1のコンパウンドを得た。ここで、粉末と有機バ
インダとの混合比は、粉末61体積%に対して有機バイ
ンダ39体積%とした。
【0061】得られた二種類のコンパウンドを、実施例
1と同様に時計部品を成形した。まず、第1のコンパウ
ンドを用い、図2におけるAに示した部分を成形した。
次に第2のコンパウンドを用いて、図2におけるBに示
した部分を成形した。
【0062】次に、前記射出成形体の脱脂をおこなっ
た。まず、前記射出成形体をn−ヘキサン気相中、68
℃で2時間抽出をおこない、第2のコンパウンドに含ま
れるパラフィンワックス、カルナバワックス、ステアリ
ン酸の抽出除去をおこなった。得られた脱脂体を乾燥
後、残余の有機バインダを除去するため窒素雰囲気中に
て、加熱分解脱脂をおこなった。まず、室温から150
℃までを2.5℃/分で昇温させ、続いて250℃まで
を0.4℃/分で昇温させ、500℃までを0.7℃/
分で昇温させ、500℃で1時間の保持をおこなった。
【0063】さらに、実施例と同様の条件で焼結をおこ
なった。得られた焼結体の自重変形量は5μmであっ
た。
【0064】(実施例5)焼結用粉末1として、実施例
1で用いたSUS316L球形粉末100gに対して、
有機バインダ1として、ポリメチルメタクリレート70
重量%、ポリエチレン30重量%からなる混合物を9.
0g添加し、加圧ニーダーを用いて175℃にて混練を
おこない、第1のコンパウンドを得た。ここで、粉末と
有機バインダとの混合比は、粉末58体積%に対して有
機バインダ42体積%とした。
【0065】次に、第2のコンパウンドとして実施例3
で製造した第2のコンパウンドと同一のコンパウンドを
作製した。すなわち、実施例3で製造した第2のコンパ
ウンドと同一組成のコンパウンドを実施例3と同一の手
法により製造した。ここで、粉末と有機バインダとの混
合比は、粉末59体積%に対して有機バインダ41体積
%とした。
【0066】得られた二種類のコンパウンドを、実施例
1と同様に時計部品を成形した。まず、第1のコンパウ
ンドを用いて、図2におけるAに示した部分を成形し
た。次に第2のコンパウンドを用いて、図2におけるB
に示した部分を成形した。
【0067】次に、前記射出成形体の脱脂をおこなっ
た。まず、前記射出成形体に低圧水銀灯を用いて、25
4nmで光強度8.0mW /cm2の紫外線を照射しな
がらアルゴン雰囲気中110℃で5時間処理をおこな
い、第1のコンパウンド中に含まれるポリメチルメタク
リレートの分解除去をおこなった。次に、残余の有機バ
インダを除去するため、窒素雰囲気中にて、加熱分解脱
脂をおこなった。まず、室温から150℃までを2.5
℃/分で昇温させ、続いて250℃までを0.4℃/分
で昇温させ、500℃までを0.7℃/分で昇温させ、
500℃で1時間の保持をおこなった。
【0068】さらに、実施例1と同様の条件で焼結をお
こなった。得られた焼結体の自重変形量は5μmであっ
た。
【0069】(比較例1)コンパウンドとして、実施例
1で製造した第2のコンパウンドと同一組成のコンパウ
ンドを、実施例1と同一の方法により製造した。
【0070】上記コンパウンドを用いて、射出成形機を
用いて図2と同様の形状の時計部品を成形した。ここ
で、図2におけるA部およびB部ともに同様のコンパウ
ンドを使用した。
【0071】さらに、実施例1と同様の条件で脱脂、焼
結をおこなった。その結果、焼結体の自重変形量は50
μmとなり、不良品となった。
【0072】(比較例2)コンパウンドとして、実施例
3で製造した第1のコンパウンドと同一組成のコンパウ
ンドを、実施例3と同一の方法により製造した。
【0073】上記コンパウンドを用いて、射出成形機を
用いて図2と同様の形状の時計部品を成形した。ここ
で、図2におけるA部およびB部ともに同様のコンパウ
ンドを使用した。その結果、彫り込みが深く複雑な形状
である図2におけるBの部分の充填が不均一になり射出
成形体表面の荒れが認められた。
【0074】次に、前記射出成形体の脱脂をおこなっ
た。まず、前記射出成形体を120℃の窒素雰囲気中に
おいて、発煙硝酸を0.03cc/分で供給し、6時間
保持することにより、コンパウンドに含まれるポリアセ
タールの酸触媒による分解除去をおこなった。次に、残
余の有機バインダを除去するため窒素雰囲気中にて、加
熱分解脱脂をおこなった。まず、室温から500℃まで
を3℃/分で昇温させ、500℃で1時間の保持をおこ
なった。
【0075】さらに、実施例1と同様の条件で焼結をお
こなった。得られた焼結体の自重変形量は5μmであっ
たが、成形工程の不均一充填に起因して、焼結体の表面
荒れによる外観不良が発生した。
【0076】(比較例3)焼結用粉末1として、平均粒
径8μmであり、比表面積0.19m2 /gであるSU
S316L球形粉末100gに対して、有機バインダ1
として実施例1で作製した第1のコンパウンドと同様の
有機バインダ組成からなる混合物を9.5g添加して混
練し、第1のコンパウンドを作製した。ここで、粉末と
有機バインダの混合比は粉末58体積%に対して有機バ
インダ42体積%とした。
【0077】次に、焼結用粉末2として、平均粒径12
μmであり、比表面積0.13m2/gであるSUS3
16L球形粉末100gに対し、有機バインダ2として
実施例4で作製した第2のコンパウンドと同様の有機バ
インダ組成からなる混合物を7.8g添加して混練し、
第2のコンパウンドを作製した。ここで、粉末と有機バ
インダの混合比は粉末61体積%に対して有機バインダ
39体積%とした。
【0078】このようにして得られた二種類のコンパウ
ンドを、実施例1と同様に時計部品を成形した。まず、
第1のコンパウンドを用い、図2におけるAに示した部
分を成形した。次に第2のコンパウンドを用いて、図2
におけるBに示した部分を成形した。その結果、図2に
おけるBにおいて有機バインダが部分的に多く存在する
箇所が生じ、均一充填した射出成形体を得ることができ
なかった。ここで、本比較例における第2のコンパウン
ドでは、実施例4における第2のコンパウンドに比べ
て、粉末の比表面積の値が0.06m2 /g小さいにも
かかわらず、有機バインダの体積比が同一となってい
る。その結果として、本比較例における第2のコンパウ
ンドでは、有機バインダの量が過剰となり、充填不均一
な成形不良が発生したのである。
【0079】次に、得られた成形体を実施例4と同様の
条件で脱脂、焼結をおこなった。焼結体の変形量は10
μmであったが、図2におけるBの部分に成形時の充填
不均一に起因した外観不良が発生した。
【0080】(比較例4)比較例3で製造した第1のコ
ンパウンドと同一の粉末および同一の有機バインダ組成
で、第1のコンパウンドを作製した。ここで粉末と有機
バインダの混合比は、粉末100gに対して有機バイン
ダ8.8gとした。体積比率では、粉末60体積%に対
して、有機バインダ40体積%とした。
【0081】次に、比較例3で製造した第2のコンパウ
ンドと同一の粉末および同一の有機バインダ組成で、第
2のコンパウンドを作製した。ここで粉末と有機バイン
ダの混合比は、粉末100gに対して有機バインダ7.
2gとした。体積比率では、粉末63体積%に対して、
有機バインダ37体積%とした。
【0082】得られた二種類のコンパウンドを、実施例
1と同様に時計部品の成形を試みた。その結果、第1の
コンパウンドでは、流動性が悪く金型内に充填させるこ
とができなかった。ここで、本比較例における第1のコ
ンパウンドでは、実施例1における第1のコンパウンド
に比べて、粉末の比表面積の値が0.06m2 /g大き
いにもかかわらず、有機バインダの体積比が同一となっ
ている。その結果として、本比較例における第1のコン
パウンドでは、有機バインダの量が不足し、コンパウン
ドの流動性が悪くなり、金型充填不可能となったのであ
る。
【0083】(比較例5)比較例3で製造した第1のコ
ンパウンドと同一の粉末および同一の有機バインダ組成
で、第1のコンパウンドを作製した。ここで粉末と有機
バインダの混合比は、粉末100gに対して有機バイン
ダ9.5gとした。体積比率では、粉末58体積%に対
して、有機バインダ42体積%とした。
【0084】次に、比較例3で製造した第2のコンパウ
ンドと同様の粉末および有機バインダ組成で、第2のコ
ンパウンドを作製した。ここで粉末と有機バインダの混
合比は、粉末100gに対して有機バインダ7.2gと
した。体積比率では、粉末63体積%に対して、有機バ
インダ37体積%とした。
【0085】得られた二種類のコンパウンドを、実施例
1と同様に時計部品を成形した。まず、第1のコンパウ
ンドを用い、図2におけるAに示した部分を成形した。
次に第2のコンパウンドを用いて、図2におけるBに示
した部分を成形した。
【0086】次に、得られた射出成形体を実施例4と同
様の条件で脱脂、焼結をおこなった。その結果、第1の
コンパウンドの収縮率が第2のコンパウンドに比べて大
きくなりすぎたため焼結収縮が不均一に進行した。その
ため、焼結体にクラックと歪みが発生し、変形量も測定
不可能であった。
【0087】本発明における実施例および比較例で製造
したコンパウンドと焼結体の変形量を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】表1において、実施例1は両コンパウンド
に用いる粉末が同一で、なおかつ各コンパウンドにおけ
る有機バインダの体積比が等しい場合の例である。
【0090】実施例2は、粉末2の方が粉末1に比べて
比表面積が大きい場合の例である。同一条件で焼結をお
こなった場合、異形状である粉末2は、球形である粉末
1に比べて焼結収縮が進行しにくいため、結果として収
縮率が相対的に小さくなる。そこで、第2のコンパウン
ドでは有機バインダの量を第1のコンパウンドに比べて
増加させることによって両コンパウンドの収縮率を均一
にしているのである。
【0091】実施例3において、粉末2と粉末1はいず
れも球形粉である。同一条件で焼結した場合、粉末2は
粉末1に比べて粒径が細かいため、焼結収縮が進行しや
すく、結果として収縮率が相対的に大きくなる。そこ
で、第2のコンパウンドでは有機バインダの量を第1の
コンパウンドに比べて減少させることによって両コンパ
ウンドの収縮率を均一にしているのである。さらに、第
1のコンパウンドでは、酸触媒を用いて、ポリアセター
ルの軟化温度以下で脱脂をおこなっているため変形量も
低減している。さらに、部品の表面層のみに、微粉末を
使用することにより、比較例2に比べて焼結体表面のピ
ンホールが低減され、表面品質が向上した。一般に微粉
末はコストが高いが、本発明では部品の表面層のみに高
価な粉末を使用することができるため、低コストで外観
表面品質に優れた焼結体を得ることができる。
【0092】実施例4および実施例5も実施例3と同様
の手法により、両コンパウンドの収縮率を均一にした例
である。また、溶媒抽出脱脂や光分解脱脂を併用するこ
とにより、寸法精度に優れた焼結体を製造することがで
きる。
【0093】一方、比較例1に示したように、流動性に
優れたコンパウンド単独では、脱脂時における有機バイ
ンダの軟化による自重変形量が増大している。また、比
較例2に示したように、保形性に優れたコンパウンド単
独では、均一充填が不可能であり、表面荒れの不良が発
生している。
【0094】さらに、実施例3から5に示した通り、粉
末1の比表面積が粉末2の比表面積に比べて大きい場合
には、いずれの場合も欠陥の無い焼結体を得ることはで
きない。すなわち、粉末1に適した有機バインダ量で第
1のコンパウンドを作製した場合、両コンパウンドにお
ける収縮率を合わせるためには、第2のコンパウンド中
に有機バインダ量を過剰に添加しなければならず、結果
として成形不良が発生する(比較例3)。逆に、粉末2
に適した有機バインダ量で第2のコンパウンドを作製し
た場合、収縮率を合わせるためには、第1のコンパウン
ドの有機バインダ量が不足し、成形不可能となる(比較
例4)。また、粉末1および粉末2それぞれに対して適
正なバインダ量でコンパウンドを作製した場合、添加す
るバインダ量の差が大きくなりすぎるため、両コンパウ
ンドの収縮率が一致せず、クラックや歪みが発生する
(比較例5)。
【0095】以上のように、本発明による粉末射出成形
部品の製造方法を用いることにより、寸法精度および表
面品質に優れた焼結部品を製造することができる。
【0096】
【発明の効果】本発明により、保形性と成形性の異なる
コンパウンドを局部的に組み合わせて一つの部品を形成
し、それぞれに適した手法を用いて脱脂をおこなうこと
が可能であるため、自重変形が少なく、なおかつ外観表
面品質に優れた焼結部品を製造することができる。さら
に本発明は、各コンパウンドに用いる粉末の比表面積と
有機バインダの添加量により、コンパウンドの流動性と
収縮率を制御することができるため、用いる粉末やバイ
ンダ組成のそれぞれの長所を引き出し、粉末射出成形部
品の寸法精度、外観品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を示す工程図である。
【図2】本発明の実施例および比較例における成形体の
断面図である。
【図3】本発明の実施例および比較例における焼結体の
自重変形量を示す断面図である。
【符号の説明】
A 第1のコンパウンドを用いて成形した部分 B 第2のコンパウンドを用いて成形した部分 D 自重変形量

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 焼結用粉末と有機バインダ成分である少
    なくとも一種類の熱可塑性樹脂を混練して、保形性に優
    れた第1のコンパウンドを作製する工程と、 焼結用粉末と有機バインダ成分である少なくとも一種類
    の熱可塑性樹脂を混練して成形性に優れた第2のコンパ
    ウンドを作製する工程と、 前記第2のコンパウンドを成形体表面の少なくとも一部
    に用いて、二種類のコンパウンドを部分的に使い分けて
    一体とした部品を射出成形して成形体を作製する工程
    と、 得られた成形体から有機バインダ成分を除去して脱脂体
    を作製する工程と、 得られた脱脂体を焼結して焼結体を作製する工程とを有
    する、粉末射出成形部品の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記脱脂体を作製する工程が、成形体中
    に含まれる有機バインダ成分の一部を除去する第1の脱
    脂工程と、残余の有機バインダ成分を除去する第2の脱
    脂工程とを有することを特徴とする請求項1に記載の粉
    末射出成形部品の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記第1の脱脂工程で、第1のコンパウ
    ンド中に含まれる有機バインダの大部分を除去すること
    を特徴とする請求項2に記載の粉末射出成形部品の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 前記第1の脱脂工程で、第2のコンパウ
    ンド中に含まれる有機バインダの大部分を除去すること
    を特徴とする請求項2に記載の粉末射出成形部品の製造
    方法。
  5. 【請求項5】 前記第1のコンパウンドの作製に使用す
    る有機バインダとして、少なくとも一部にポリアセター
    ルを用い、前記第1の脱脂工程が、前記ポリアセタール
    を酸含有雰囲気下で加熱して除去する工程であることを
    特徴とする請求項2、請求項3または請求項4に記載の
    粉末射出成形部品の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記第1の脱脂工程が、前記第2のコン
    パウンドに含有される有機バインダの少なくとも一部
    を、前記有機バインダが可溶な溶媒を用いて抽出除去す
    る工程であることを特徴とする請求項2、請求項3また
    は請求項4に記載の粉末射出成形部品の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記第1のコンパウンド作製に使用する
    有機バインダとして、少なくとも一部に光分解性の樹脂
    を用い、前記第1の脱脂工程が、紫外線を照射しながら
    加熱することにより、前記光分解性の樹脂を分解除去す
    る工程であることを特徴とする請求項2、請求項3また
    は請求項4に記載の粉末射出成形部品の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記第2のコンパウンドの作製に使用す
    る粉末の比表面積が、前記第1のコンパウンドの作製に
    使用する粉末の比表面積と同一かあるいは+0.2m2
    /g以内の範囲で大きいことを特徴とする請求項1から
    請求項7のいずれか1項に記載の粉末射出成形部品の製
    造方法。
  9. 【請求項9】 前記第1のコンパウンドの作製に使用す
    る有機バインダの体積比率と、前記第2のコンパウンド
    の作製に使用する有機バインダの体積比率の差が、−2
    %から+2%の範囲であることを特徴とする請求項1か
    ら請求項8のいずれか1項に記載の粉末射出成形部品の
    製造方法。
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