JP2000047272A - 光導波路素子およびその作製方法 - Google Patents

光導波路素子およびその作製方法

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JP2000047272A
JP2000047272A JP10192709A JP19270998A JP2000047272A JP 2000047272 A JP2000047272 A JP 2000047272A JP 10192709 A JP10192709 A JP 10192709A JP 19270998 A JP19270998 A JP 19270998A JP 2000047272 A JP2000047272 A JP 2000047272A
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optical waveguide
buffer layer
thin film
substrate
waveguide device
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JP10192709A
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English (en)
Inventor
Keiichi Nashimoto
恵一 梨本
Masao Watabe
雅夫 渡部
Hiroaki Moriyama
弘朗 森山
Shigetoshi Nakamura
滋年 中村
Hideyori Osakabe
英資 長ケ部
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Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低駆動電圧特性と低伝搬損失特性を同時に解
決できる構造を有する光導波路素子およびその作製方法
を提供すること。 【解決手段】 導電性または半導電性の下部電極2と、
下部電極2上に設けられたエピタキシャルまたは単一配
向性のバッファ層4と、バッファ層4上に設けられたエ
ピタキシャルまたは単一配向性の光導波路1と、光導波
路1上に設けられた導電性薄膜または半導電性薄膜の上
部電極7とを具備する光導波路素子による。本発明の光
導波路素子は上部電極7と下部電極2との間に電圧を印
加することにより、光導波路に入射する光ビームを変
調、スイッチング、または偏向することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光導波路と、この
光導波路内に入射されたレーザ・ビームを電気光学効果
によって偏向、スイッチング、あるいは変調するための
電極が備えられた光導波路素子およびその作製方法に関
する。本発明は特に、レーザ・プリンター、デジタル複
写機、ファクシミリ用の光偏向素子、光通信や光コンピ
ューター用の光スイッチおよび光変調素子、光ディスク
用のピックアップなどを含むオプト・エレクトロニクス
全般に適用可能な光導波路素子およびその作製方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】レーザ・ビーム・プリンター、デジタル
複写機、ファクシミリなどに用いられるレーザ・ビーム
光偏向装置として、気体レーザや半導体レーザからのビ
ームをを偏向するポリゴンミラーと呼ばれる回転多面鏡
と、その回転多面鏡により反射されたレーザ・ビームを
感光体などの結像面上において、等速度直線運動の状態
に集光するfθレンズとで構成されたものが代表的に用
いられている。このようなポリゴンミラーを用いる光偏
向装置はポリゴンミラーをモーターによって高速回転さ
せるために耐久性に問題があるとともに騒音が発生し、
また光走査速度がモーターの回転数によって制限される
問題がある。
【0003】一方、固体型のレーザ・ビーム光偏向装置
としては、音響光学効果を利用した光偏向素子があり、
なかでも光導波路型素子が期待されている。この光導波
路素子はポリゴンミラーを用いたレーザ・ビーム光走査
装置の欠点を解決するレーザ・ビーム光走査素子とし
て、プリンターなどへの応用が検討されている。この光
導波路型の光偏向素子は、LiNbOやZnOなどよ
りなる光導波路と、この光導波路内にレーザ光ビームを
カップリング(入射)させる手段を有し、さらに光導波
路中の光ビームを音響光学効果により偏向するための表
面弾性波を励起するくし形の電極と偏向された光ビーム
を光導波路中よりアウトプットするための手段が備えら
れたものであり、このほかに必要に応じて薄膜レンズな
どが素子へ付加される。しかしながら、音響光学効果を
利用した光偏向素子は一般に偏向速度限界によるレーザ
偏向速度の上限の問題があり、レーザ・プリンター、デ
ジタル複写機、ファクシミリなどの画像形成装置への応
用には限界が存在する。
【0004】これに対して、音響光学効果と比較して変
調速度の速い電気光学効果を有する酸化物強誘電体材料
を用いた、例えば「A.Yariv,Optical Electronics,4th
ed.(New York,Rinehart and Winston,1991)336〜3
39頁」等に解説されたプリズム型光偏向素子が知られ
ている。このような素子としてはセラミックや単結晶を
用いたバルク素子があるが、寸法が大きく、また、駆動
電圧がかなり高いために実用的な偏向角度を得ることが
できなかった。また、Ti拡散型光導波路やプロトン交
換型光導波路を作製したLiNbO単結晶ウエハーを
用いてカスケード型にプリズムを配したプリズム型ドメ
イン反転光偏向素子またはプリズム型電極光偏向素子が
「Q.Chen,et al.,J.Lightwave Tech.vol.12(1994)14
01頁」(文献1)や特開平1−248141号公報な
どに示されている。しかし、LiNbO単結晶ウエハ
の厚さである0.5mm程度の電極間隔が必要となるた
めに依然として駆動電圧が高く、上記の文献1では±6
00Vの駆動電圧でもわずか0.2度程度の偏向角度し
か得られておらず、実用的な偏向角度を得ることはでき
ないという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これに対して、本発明
者達は導電性基板上に設けられた電気光学効果を有する
酸化物光導波路と、この光導波路内に光ビームを入射さ
せる光源を有し、光導波路中の光ビームを電気光学効果
によって偏向するための電極が備えられた薄膜光導波路
を用い、駆動電圧の問題を解決したプリズム型光偏向素
子を発明し、これを特開平9−5797号公報に開示し
た。
【0006】しかし、光導波路を伝搬するレーザ光の電
磁界分布は基板への染みだしが起こる。実用的な抵抗率
を有する基板の吸収係数は大きく、多くの場合には染み
だし成分は導電性基板中のキャリアによって強く吸収さ
れるため、薄膜光導波路中の伝搬損失は光導波路自体の
散乱による損失に加えて、吸収により数十dB/cmと
なり、実用には不十分であるという問題があった。ま
た、一般に、コプレーナ型電極配置を有する素子におい
て、光導波路上の金属電極と光導波路間にはSiO
よるクラッド層が挿入され、金属電極への電磁界の染み
だしを防ぎ、伝搬光の吸収を回避する方法がとられてい
る。しかし、電気光学効果を有する酸化物光導波路材料
の比誘電率は数十から数千におよび、SiOの比誘電
率3.9と比べると極めて大きく、さらに、上記の導電
性基板上の薄膜光導波路構造においては等価回路として
直列コンデンサを形成するため、薄膜光導波路にかかる
実効電圧は印加電圧に対して数%以下にしかならず、結
局駆動電圧の大幅な増加を招くこととなってしまう問題
があった。
【0007】一方、シリコン基板上にスピネル層を形成
し、その上にPLZTバッファ層と、さらにその上にバ
ッファ層よりも屈折率の大きいPLZT光導波路層を設
けた構造により低電圧で駆動する素子を提供する方法が
特公平6−70693号公報に示されている。しかし、
スピネル層の比誘電率はPLZT薄膜の2000近くに
達する比誘電率と比較して8程度と小さいため、スピネ
ル層を10nm程度の極薄膜にしなければ駆動電圧が大
幅に増加してしまうという問題を生じる。また、このよ
うな極薄膜スピネル層の上にPLZT薄膜を成長させる
とPLZT薄膜の結晶性の低下やPbのSi基板への拡
散などが起こる問題も生じる。さらに、シリコンの屈折
率が3.45と大きいため、屈折率が2.6前後である
PLZTによって光導波路層とそれより低い屈折率を有
するバッファ層の構造を設けても、屈折率が1.75で
あるスピネル層を10nmより1桁以上厚くしなければ
光はシリコン基板にリークし、実際にはPLZT光導波
路層における光減衰が極めて大きくなってしまう問題も
生じる。
【0008】そのほかに、シリコン基板上にスピネルや
MgOなどのエピタキシャル層を形成し、その上にRu
、OsO、IrO、ReOなどのエピタキシ
ャル導電性酸化物層と、さらにその上にPLZTなどの
光導波路層を設けた構造も特公平6−88875号公報
に示されている。しかし、この構造ではスピネルやMg
Oなどの層と導電性酸化物層の格子整合性、および導電
性酸化物層とPLZTなどの光導波路層の格子整合性が
低く、散乱による光伝搬損失を少なくすることが可能な
結晶性を有するエピタキシャル薄膜の成長が困難である
という問題を生じる。また、RuO、OsO、Ir
、ReOなどのエピタキシャル導電性酸化物はい
ずれも不透明であるために、光導波路品質の結晶性を有
するエピタキシャル成長が達成されても実際には光伝搬
損失が極めて大きくなる問題がある。従って、低駆動電
圧特性と低光伝播損失特性とを両立する構造が必要であ
った。
【0009】本発明の目的は、光導波路素子において、
低駆動電圧特性と低伝搬損失特性を同時に解決できる構
造およびその作製方法を提供することにある。また、本
発明の目的は、光導波路素子を各種の偏向素子、スイッ
チング素子、あるいは変調素子へ利用可能とすることで
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、導電性
または半導電性の下部電極と、下部電極上に設けられた
エピタキシャルまたは単一配向性のバッファ層と、バッ
ファ層上に設けられたエピタキシャルまたは単一配向性
の薄膜光導波路と、光導波路上に設けられた導電性薄膜
または半導電性薄膜の上部電極と、を具備する光導波路
素子によって達成できる。また、本発明の光導波路素子
は上部電極と下部電極との間に電圧を印加することによ
り、光導波路に入射する光ビームを変調、スイッチン
グ、または偏向することができる。ここで、単一配向性
とは、薄膜のX線回折パターンにおいて基板面に平行な
特定の結晶面の強度が他の結晶面の強度に対して1%以
下である場合を指し、エピタキシャルとは単一配向性の
薄膜がさらに基板の面内方向にも単一配向性を有してい
る場合を指す。
【0011】本発明の光導波路素子において、下部電極
基板として導電性または半導電性の単結晶基板、あるい
は基板とバッファ層の間に設けた導電性または半導電性
のエピタキシャルまたは単一配向性の薄膜として用いる
ことが可能な材料は、NbなどをドープしたSrTiO
、AlドープZnO、In、RuO、BaP
bO、SrRuO、YBaCu7−x、Sr
VO、LaNiO、La0.5Sr0.5Co
、ZnGa、CdGa、CdGa
、MgTiO、MgTiなどの酸化物、S
i、Ge、ダイアモンドなどの単体半導体、AlAs、
AlSb、AlP、GaAs、GaSb、InP、In
As、InSb、AlGaP、AlLnP、AlGaA
s、AlInAs、AlAsSb、GaInAs、Ga
InSb、GaAsSb、InAsSbなどのIII−
V系の化合物半導体、ZnS、ZnSe、ZnTe、C
aSe、Cdte、HgSe、HgTe、CdSなどの
II−VI系の化合物半導体、Pd、Pt、Al、A
u、Agなどの金属などを用いることができる。
【0012】このうち、下部電極の上部に配置する酸化
物薄膜光導波路の膜質を考えると、下部電極には酸化物
を用いることが望ましい。これらの導電性または半導電
性の単結晶基板、あるいは導電性または半導電性のエピ
タキシャルまたは単一配向性の薄膜は、強誘電体薄膜の
結晶構造、および偏向速度、スイッチング速度、または
変調速度によって必要とされるキャリア・モビリティに
応じて選ばれることが望ましい。また、導電性または半
導電性の単結晶基板、あるいは導電性または半導電性の
エピタキシャルまたは単一配向性の薄膜は、抵抗率とし
ては10Ω・cm以下、望ましくは10Ω・cm以
下がRC時定数の点より有効である。しかし、電圧降下
が無視できる程度の抵抗率であれば下部電極として利用
可能である。屈折率としては、通常の光導波路材料より
も高い、例えば3.45と大きな屈折率を有するシリコ
ン基板を用いる場合には、基板への光のリークを阻止す
るためにバッファ層の膜厚をかなり厚くする必要が生じ
るため、光導波路材料よりも低い屈折率を有することが
バッファ層の厚さを低減し、低電圧駆動化するために望
ましい。
【0013】基板と光導波路との間に設けた導電性また
は半導電性のエピタキシャルまたは単一配向性の薄膜の
基板として用いることが可能な材料は、SrTiO
BaTiO、BaZrO、LaAlO、Zr
、Y8%−ZrO、MgO、MgAl
、LiNbO、LiTaO、Al、ZnO
などの酸化物、Si、Ge、ダイアモンドなどの単体半
導体、AlAs、AlSb、AlP、GaAs、GaS
b、InP、InAs、InSb、AlGaP、AlL
nP、AlGaAs、AlInAs、AlAsSb、G
aInAs、GaInSb、GaAsSb、InAsS
bなどのIII−V系の化合物半導体、ZnS、ZnS
e、ZnTe、CaSe、Cdte、HgSe、HgT
e、CdSなどのII−VI系の化合物半導体などを用
いることができる。このうち、基板の上部に配置する酸
化物薄膜光導波路の膜質にとって有利な材料は酸化物で
ある。
【0014】バッファ層は薄膜光導波路材料よりも小さ
い屈折率を有し、かつバッファ層の比誘電率と光導波路
の比誘電率の比が0.002以上、望ましくはバッファ
層の比誘電率と光導波路の比誘電率の比が0.006以
上であり、かつバッファ層の比誘電率が8以上である材
料が選ばれる。また、バッファ層材料は導電性基板材料
と光導波路材料とのエピタキシ関係を保持できることが
必要である。このエピタキシ関係を保持できる条件とし
ては、バッファ層材料が導電性基板材料と光導波路材料
の結晶構造に類似で、格子常数の差が10%以下である
ことが望ましいが、必ずしもこの関係に従わなくともエ
ピタキシ関係を保持できればよい。
【0015】具体的には、ABO型のペロブスカイト
型酸化物では、正方晶、斜方晶または擬立方晶系として
例えばSrTiO、BaTiO、(Sr1−xBa
)TiO(0<x<1.0)、PbTiO、Pb
1−xLa(ZrTi −y1−x/4(0
<x<0.3、0<y<1.0、xおよびyの値により
PZT、PLT、PLZT)、Pb(Mg1/3Nb
2/3)O、KNbO など、六方晶系として例えば
LiNbO、LiTaOなどに代表される強誘電
体、タングステンブロンズ型酸化物ではSrBa
1−xNb、Pb Ba1−xNbなど、
またこのほかに、BiTi12、PbKNb
15、KLiNb15、ZnOさらに以上の
置換誘導体より選ばれる。バッファ層の膜厚と光導波路
の膜厚の比は0.1以上、望ましくは0.5以上であ
り、かつバッファ層の膜厚が10nm以上であることが
有効である。
【0016】薄膜光導波路材料としては酸化物から選択
され、具体的にはABO型のペロブスカイト型では正
方晶、斜方晶または擬立方晶系として例えばBaTiO
、PbTiO、Pb1−xLa(ZrTi
1−y1−x/4(xおよびyの値によりPZ
T、PLT、PLZT)、Pb(Mg1/3
2/3)O 、KNbOなど、六方晶系として例え
ばLiNbO、LiTaOなどに代表される強誘電
体、タングステンブロンズ型ではSrBa1−xNb
、PbBa1−xNbなど、またこのほ
かに、BiTi12、PbKNb15、K
LiNb15、さらに以上の置換誘導体などよ
り選ばれる。薄膜光導波路の膜厚は通常0.1μmから
10μmの間に設定されるが、これは目的によって適当
に選択することができる。
【0017】上部電極はPt、Al、Crなどの各種金
属電極や、光導波路よりも小さい屈折率を有するITO
やAlドープZnOなどの透明酸化物電極を用いること
が可能である。また、光導波路と上部電極との間には光
導波路よりも小さい屈折率を有するクラッド層を設ける
場合には、上部電極は任意の材料を用いることができる
が駆動電圧の増加を招くのでITOなどの透明酸化物電
極を用いることが望ましい。
【0018】バッファ層および薄膜光導波路は電子ビー
ム蒸着、フラッシュ蒸着、イオン・プレーティング、R
f−マグネトロン・スパッタリング、イオン・ビーム・
スパッタリング、レーザ・アブレーション、MBE、C
VD、プラズマCVD、MOCVDなどより選ばれる気
相成長法およびゾルゲル法、MOD法などのウエット・
プロセスにより作製された薄膜の固相成長法によって作
製される。このうちゾルゲル法やMOD法などのウエッ
ト・プロセスにより金属アルコキシドや有機金属塩など
の金属有機化合物の溶液を基板に塗布し、さらに焼成す
ることによってバッファ層と薄膜光導波路を固相エピタ
キシャル成長することが最も有効である。これらの固相
エピタキシャル成長は、各種気相成長法と比較して設備
コストが低く、基板面内での均一性が良いだけでなく、
バッファ層と光導波路層の構造制御にとって重要な屈折
率の制御が、バッファ層および光導波路層に必用な屈折
率を有する薄膜組成に応じて金属有機化合物前駆体の組
成を配合するだけで容易に、再現性良く実現でき、さら
に光伝搬損失も低いバッファ層と光導波路層の成長が可
能である。
【0019】ゾルゲル法やMOD法などを用いた固相エ
ピタキシャル成長において、有機金属化合物は各種の金
属と、有機化合物、望ましくは常圧での沸点が80°C
以上である有機化合物との反応生成物である金属アルコ
キシドまたは金属塩より選ばれるがこれに限られるわけ
ではない。金属アルコキシド化合物の有機配位子として
は、RO−またはRORO−より選ばれる(式
中、RおよびRは脂肪族炭化水素基を表し、R
エーテル結合を有してもよい2価の脂肪族炭化水素基を
表す)。これらの原料は所定の組成にて望ましくは常圧
での沸点が80°C以上であるアルコール類、ジケトン
類、ケトン酸類、アルキルエステル類、オキシ酸類、オ
キシケトン類、及び酢酸などより選ばれた溶媒と反応さ
れ、または溶媒中に溶解されたのち、基板への塗布をさ
れる。これら有機金属化合物は加水分解をした後に塗布
をすることも可能であるが、エピタキシャル強誘電体薄
膜を得るためには加水分解をしないことが望ましい。さ
らに、これらの反応工程は、乾燥した窒素やアルゴン雰
囲気中にて行うことが得られる薄膜の品質の点より望ま
しい。
【0020】金属アルコキシド化合物はROHまたは
OROHで表される有機溶媒中で蒸留や還流によ
って合成することができ、RおよびRの脂肪族炭化
水素基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好まし
く、Rは、炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数2〜
4のアルキレン基がエーテル結合によって結合している
全炭素数4〜8の2価の基が好ましい。沸点が80°C
以上である溶媒としては具体的には、金属アルコキシド
のアルコール交換反応が容易な例えば(CH CH
OH(沸点82.3°C)、CH(C)CHO
H(沸点99.5°C)、(CHCHCHOH
(沸点108°C)、COH(沸点117.7°
C)、(CHCHCOH(沸点130.5
°C)、CHOCHCHOH(沸点124.5°
C)、COCHCHOH(沸点135°
C)、COCHCHOH(沸点171°C)
などのアルコール類が最も望ましいが、これらに限定さ
れるものではなくCOH(沸点78.3°C)な
ども使用可能である。
【0021】この溶液を単結晶基板上にスピンコート
法、ディッピング法、スプレー法、スクリーン印刷法、
インクジェット法より選ばれた方法にて塗布する。これ
らの塗布の工程は、乾燥した窒素やアルゴン雰囲気中に
て行うことが得られる薄膜の品質の点より望ましい。
【0022】この後、必要に応じて、前処理として酸素
を含む雰囲気中、望ましくは酸素中にて、0.1〜10
00°C/秒の昇温速度、望ましくは1〜100°C/
秒の昇温速度で基板を加熱し、100°C〜500°
C、望ましくは200°C〜400°Cの結晶化の起こ
らない温度範囲で塗布層を熱分解することによりアモル
ファス状の薄膜を形成する。さらに、酸素を含む雰囲気
中、望ましくは酸素中にて、10〜500°C/秒の昇
温速度、望ましくは20〜100°C/秒の昇温速度で
高速加熱し、650°C〜1200°C、望ましくは7
00°C〜900°Cの温度範囲で強誘電体薄膜を基板
表面より固相エピタキシャル成長させる。このエピタキ
シャル結晶化においては、上記の温度にて1秒間から2
4時間、望ましくは10秒間から12時間の加熱を行
う。これらの酸素雰囲気としては少なくとも一定時間乾
燥した酸素雰囲気を用いることが得られる薄膜の品質の
点より望ましいが、必要に応じて加湿することも可能で
ある。これらのエピタキシャル結晶化工程において、一
層の膜厚が10nmから1000nm、望ましくは膜厚
50nmから200nmの強誘電体薄膜層を単結晶基板
上に固相エピタキシャル成長することを一回以上行う。
それぞれのエピタキシャル成長の後には0.01〜10
0°C/秒の冷却速度で冷却を行なう。
【0023】次に、本発明の光導波路素子の基本原理に
ついて図1乃至図10を用いて詳細に説明する。本発明
の光導波路素子に用いられるスラブ型光導波路の一般的
な形態を図1および図2に示す。ここで、光は導波路1
1をz方向に進行する。導波路11はn 、εで示さ
れる屈折率・比誘電率を有しており、n、εで示さ
れる屈折率および比誘電率を有する媒質12及びn
εで示される屈折率および比誘電率を有する媒質13
に挟まれている。また、図1において、x方向はこれら
の媒質12、13、および光導波路11の表面に垂直な
方向であり、y方向はx方向およびz方向と垂直な方向
と定義する。図2に示すように、媒質13と光導波路1
1との境界の座標をx=0とし、光導波路11の厚さを
dと仮定する。
【0024】このときに、z方向にexpj[ωt−β
z]で伝搬する光波の波動方程式は次のようになる。
【0025】 δ(E,H)/δ +δ(E,H)/δ +χ (E, H)/δ =0 ・・・[1] (χ =k −β、k =ωμε=k 、i=1,2 ,3) ここで、ωは光波の角周波数、μは真空の透磁率、j
は虚数、βは伝搬定数である。
【0026】y方向に電磁界が一様であるとすれば、e
xpj[ωt−βz]を省いて、E ,H∝F(x)
とおくことによって、[1]式は次のような波動方程式
となる。 dF(x)/d +χ F(x)=0 ・・・[2]
【0027】従って、すべての電磁界成分は指数関数ま
たは三角関数で表されることになり、一方向に一様な電
磁界はTEモード(E=0)とTMモード(H
0)として表され、電磁界成分は次のようになる。
【0028】ここで、TEモードについて、媒質12の
領域(以下、II領域という)および媒質13の領域
(以下、III領域という)での電磁界は、|x|=∞
で0でなければならないから、 III領域:Ey3=Eexp(−γx)、x>0 ・・・[3] I領域:Ey1=Ecos(kx+φ)、−d<x<0 ・・ ・[4] II領域:Ey2=Eexp{γ(x+d)}、x<−d ・・・ [5] となり、電磁界は基板へ染みだすことがわかる。なお、
光導波路11の領域がI領域である。ここで、 γ=k(N−n 0.5 ・・・[6] k=k(n −N0.5 ・・・[7] γ=k(N−n 0.5 ・・・[8] また、x=0において電界成分EとHが連続である
境界条件より、 E=Ecosφ ・・・[9] tanφ=γ/k ・・・[10] x=−dにおいても同様であるから境界条件を適用し
て、 E=Ecos(kd−φ) ・・・[11] tan(kd−φ)=γ/k ・・・[12] これらの関係より、
【0029】 kd=(m+1)π−tan−1(k/γ)−tan−1(k/γ ) ・・・[13]
【0030】ここで、mはモード・ナンバー(m=0,
1,2,.....)である。このような解析的方法に
よって電磁界分布を求める以外に、FDM(Finite Dif
ference Method)によって電磁界分布を求めることもで
きる。
【0031】ここで、図3は抵抗率0.05Ω・cm、
吸収係数α=174を有する、NbドープSrTiO
導電性基板上(n=2.40)に600nmの厚さの
PZT(52/48)薄膜光導波路(n=2.56)
が設けられた構造における、波長633nmでのTE
モードの強度分布の模式図を示す。計算値は全光強度の
3.6%が基板(図1における媒質12に相当するも
の)へ染みだすことを示した。この際、基板の光吸収に
より光導波路中の光伝搬にともない基板へ染みだした成
分が吸収され、伝搬損失となる。光強度は式[3]、
[4]、[5]で表される振幅の2乗であり、基板中の
強度の割合I/IはI、II、IIIの各領域の積
分値の和に対するIIの領域の積分値として次のように
なる。
【0032】
【数1】
【0033】このとき光導波路表面や光導波路中の粒界
などによる散乱、および光導波路自身の吸収による損失
に加えて、基板吸収によって生じる伝搬損失は次のよう
に表される。 −10・log(I/Iin)=(10−α・δ・z) ・・・[15]
【0034】この伝搬損失は光導波路の膜厚に依存し、
光導波路膜厚が厚いほうが電界の光導波路中での閉じ込
めが強くなり、基板へ染みだす割合が少なくなるために
伝搬損失は図4に示すように小さくなる。
【0035】ここで図5を用いて本発明の原理を定性的
に説明する。図5に示すように、染みだしの生じている
基板の領域の厚さ分を吸収のないノンドープSrTiO
バッファ層14で置き換えればNbドープSrTiO
導電性基板による吸収はなくなり、伝搬損失の低減が
可能となる。このときの光導波路11、バッファ層1
4、基板12の材料、物理特性、および厚さを表1に示
す。
【0036】
【表1】
【0037】バッファ層がこのように薄膜光導波路と導
電性基板の隔離層として機能するためには、一般に、バ
ッファ層材料の屈折率が薄膜光導波路材料の屈折率より
も小さいことが必要である。また、バッファ層材料は導
電性基板材料と光導波路材料とのエピタキシ関係を保持
できることが必要である。このエピタキシ関係を保持で
きる条件としては、バッファ層材料が導電性基板材料と
光導波路材料の結晶構造に類似で、格子常数の差が10
%以下であることが望ましいが、必ずしもこの関係に従
わなくともエピタキシ関係を保持できる場合がある。表
1のノンドープSrTiOバッファ層の例では、Nb
ドープSrTiO導電性基板とPZT(52/48)
薄膜光導波路と同様のペロブスカイト構造を有し、格子
常数の差はNbドープSrTiO導電性基板に対して
は0%、PZT(52/48)薄膜光導波路に対しては
3%を有する。
【0038】図5及び表1によって説明される構造にお
けるバッファ層膜厚と基板吸収による伝搬損失の関係を
図6に示す。これによれば、バッファ層膜厚がゼロの
(バッファ層がない)場合の伝搬損失は62.9dB/
cmにもなるが、膜厚300nmの膜厚のバッファ層を
光導波路と基板との間に挿入すると伝搬損失はわずか
0.6dB/cmにまで低減できることが示される。
【0039】図7には各波長におけるPZT(52/4
8)薄膜光導波路/ノンドープSrTiOバッファ層
/NbドープSrTiO基板構造における、基板吸収
による伝搬損失が1dB/cmとなる光導波路膜厚とバ
ッファ層膜厚の関係を示す。この図からわかるように、
一般に、波長が長いほうが屈折率の波長分散による低下
と実効屈折率の低下とにより電界の光導波路中での閉じ
込めが弱くなり、基板への染みだしが多くなる。しか
し、バッファ層の膜厚を適切に選択することによって伝
搬損失を小さくすることができることがわかる。バッフ
ァ層と光導波路の膜厚比は伝搬損失を1dB/cm以下
に低減するために少なくとも0.1以上が必要である。
また、TEのシングルモードでの動作を前提とする際
には0.5以上とすることが適切である。バッファ層と
光導波路の膜厚比の上限としては、光導波路のTE
ードのカットオフ膜厚において最大となり、一般に10
程度となる。
【0040】一方、導電性基板と薄膜光導波路の間にバ
ッファ層が存在すると、上下電極間に印加した電圧は薄
膜光導波路とバッファ層のそれぞれの容量に従って分配
され、薄膜光導波路に実際に印加される実効電圧は低下
する。図8に光導波路/バッファ層/基板の等価回路を
示す。この等価回路は薄膜光導波路の容量Cとバッフ
ァ層の容量Cからなる直列回路で表され、これらの容
量と等価回路全体の容量Cとの関係は次のようにな
る。 1/C=1/C+1/C=(C+C)/(C・C) ・・ ・[16] 電荷Qは同じなので、 Q=C=C ・・・[17] ((C・C)/(C+C))・V=C ・・・[18] 従って、薄膜光導波路に印加される実効電圧Vは、薄
膜光導波路の比誘電率をε、膜厚をd、バッファ層
の比誘電率をε、膜厚をdとすると次式のようにな
る。
【0041】 V=(C/(C+C))・V=(ε/(ε+ε ))・V ・・・[19]
【0042】NbドープSrTiO基板上(ε=3
00)に600nmの厚さのPZT薄膜光導波路(ε
=900)が設けられた場合に、基板と同じ屈折率と比
誘電率を有する300nmの厚さのSrTiOバッフ
ァ層(ε=300)を設けた場合には、
【0043】V=ε/(ε+ε
・V=300×600/(900×300+300×
600)・V=0.40V
【0044】と印加電圧Vの40%を実効電圧V
して光導波路に印加可能となる。[19]式は、さらに
下記のように変形できる。
【0045】V/V=(ε/ε)/{(d
)+(ε/ε)}=1/{(d/d)/
(ε/ε)+1}
【0046】 1/(V/V)=(d/d)/(ε/ε)+1 ε/ε=(d/d)/{1/(V/V)−1} ・・・[2 0]
【0047】d/dとε/εの関係を0.02
≦V/V≦0.4及び0.4≦V/V≦0.9
の範囲の値についてそれぞれ図9及び図10に示す。本
発明においてはd/dは0.1以上であるので、V
/Vが0.02以上の値となるε/εは図9よ
り0.002以上となる。また、V/Vが0.1以
上となることが望ましいとすれば、ε/εとしては
0.006以上が望ましいことになる。ε/εの上
限としては、バッファ層と薄膜光導波路に用いることが
できる材料の組合せで決まり、10程度となる。光導波
路を構成する材料の比誘電率は4000に達するものが
あるため、ε/εとして0.002以上という条件
を具備すべきことを考慮すると、バッファ層の比誘電率
εは8以上の値を有することが望ましい。バッファ層
と薄膜光導波路に用いることができる材料の組合せは、
実効電圧が印加電圧の1%以下となる条件では、導電性
基板上に電気光学効果を有するエピタキシャル光導波路
を設け、駆動電圧を大幅に低減する目的に対し有効では
なくなる。すなわち、実効電圧が印加電圧の2%以下と
なる条件ではバッファ層を有する膜厚1.0μmの光導
波路素子へ印加する電圧は、バッファ層がなく、拡散光
導波路を有する厚さ50.0μmのウエハー素子へ印加
する電圧と等しくなり、このような厚さ50.0μmま
でのウエハーは研磨などによって加工可能であるため、
導電性基板上に電気光学効果を有するエピタキシャル光
導波路を設けるメリットがなくなる。
【0048】
【発明の実施の形態】本発明の第1の実施の形態による
光導波路素子を図11、図12を用いて説明する。図1
1は本実施の形態による光導波路素子の上面図であり、
図12はその側面図である。本実施の形態においては表
2に示すように抵抗率が0.05Ω・cm、吸収係数1
74のNb0.5%ドープSrTiO(100)単結
晶導電性の下部電極基板2上へ、膜厚130nmのエピ
タキシャルSrTiOバッファ層4を成長させ、次に
膜厚900nmのエピタキシャルPZT(52/48)
薄膜光導波路1を成長させ、さらにプリズム型電極7を
形成することによってプリズム型偏向素子を作製した。
【0049】
【表2】
【0050】SrTiOバッファ層4は化学量論組成
のSrTiOターゲットを用いRfスパッタリングに
より成長させた。成長条件はRfパワー50W、O
Ar比=4/6、圧力=7.5mTorr、ターゲット
−基板間距離=50mm、基板温度は450°Cとし
た。膜厚130nmのSrTiOバッファ層4を成長
させた後、PZT(52/48)光導波路層1をゾルゲ
ル法を用いた固相エピタキシャル成長によって作製し
た。まず、無水酢酸鉛Pb(CHCOO)、ジルコ
ニウム・イソプロポキシドZr(O−i−C
、およびチタン・イソプロポキシドTi(O
−i−Cを出発原料として、2−メトキシエ
タノールに溶解し、6時間の蒸留を行ったのち18時間
の還流を行い、最終的にPb濃度で0.6MのPZT
(52/48)用前駆体溶液を得た。さらに、この前駆
体溶液をSrTiOバッファ層を有するNbドープS
rTiO基板へスピンコーティングを行った。
【0051】以上の操作はすべてN雰囲気中にて行っ
た。次に、加湿O雰囲気中で20°C/secにて昇
温して350°Cにて保持の後、650°Cに保持し、
最後に電気炉の電源を切り冷却した。これにより膜厚1
00nmの第一層目のPZT薄膜を固相エピタキシャル
成長した。これをさらに8回繰り返すことにより総膜厚
900nmのエピタキシャルPZT薄膜が得られた。結
晶学的関係は単一配向のPZT(100)//SrTi
(100)//Nb−SrTiO(100)、面
内方位PZT[001]//SrTiO[001]/
/Nb−SrTiO[001]の構造が得られた。P
ZT(100)面によるロッキングカーブ半値幅は2.
05°となった。このPZT薄膜光導波路1のポーリン
グを行った後、PZT薄膜光導波路1上には膜厚100
nmのRfスパッタリング法によって成膜したITO薄
膜による15個の底辺100μm、高さ200μmのプ
リズム形上部電極アレイ7をリフト・オフ法によって形
成し、プリズム型EO(エレクトロ・オプティック)偏
向素子を作製した。また、NbドープSrTiO基板
へのオーミック・コンタクトはInによって得た。
【0052】ここで、一般に電気光学効果を有する材料
に電場を加えると、対称心のない結晶構造における電場
による屈折率変化は次のようになり、 Δn=n−n=−aE−bE− ・・・[2
1] このうち一次の項はポッケルス(Pockels)効果
と呼ばれ、一般に次のように示され、 Δn=−1/2rnE ・・・[22] 二次の項がカー(Kerr)効果と呼ばれ、一般に次の
ように示される。 Δn=−1/2Rn ・・・[23]
【0053】実際には、電場を大きくしていくと一次の
電気光学効果であるPockels効果に次第に二次の
電気光学効果であるKerr効果が重畳する形で屈折率
変化が起こる。このような電気光学効果を用いる際は、
対称心のない結晶構造を持ち高い係数を持つ強誘電体を
用いることとなり、前述した例のような酸化物強誘電体
が代表的である。このような強誘電体に局所電場を印加
するとのようにその部分の屈折率の低下が起こる。
【0054】本実施の形態においては、三角形のプリズ
ム型電極7が図11および図12に示される位置に配置
され、距離dを隔てて設けられた下部電極であるNbド
ープSrTiO(100)基板と上部電極であるIT
O電極との間に電圧Vが印加されると、 Δn=−1/2・r・n・(V/d) ・・・[24] の屈折率変化が生じ、プリズムの長さをL、幅をWとす
ると
【0055】 θ=−Δn×L/W=1/2・r・n・(V/d)・(L/W) ・・ ・[25]
【0056】の偏向が生じる。なお、二次の電気光学効
果であるKerr効果を有する強誘電体を用いたプリズ
ム型光偏向素子において次のようになる。 θ=1/2・R・n・(V/d)・(L/W) ・・・[26]
【0057】まず、光導波路特性の評価を行なうため、
プリズム・カップリングによって633nmのレーザ光
を本実施の形態による光導波路素子のPZT薄膜光導波
路1に導入し、光伝搬方向のTEモードの散乱光強度
分布を光ファイバーによって測定した。散乱光強度の対
数と光伝搬距離の関係の傾きより、光伝搬損失を求めた
ところ、本実施の形態による光導波路素子の膜厚130
nmのSrTiOバッファ層4上のPZT光導波路1
の光伝搬損失は16dB/cmであり、実用レベルに入
る特性を示した。これに対して、吸収のないノンドープ
SrTiO基板上への成長条件を変化させることによ
ってロックキングカーブ半値幅0.54°および2.0
1°のPZT薄膜光導波路を直接成長し、PZT薄膜光
導波路の散乱および吸収による光伝搬損失を求めると、
半値幅0.54°のPZT薄膜光導波路は4dB/c
m、半値幅2.01°のPZT薄膜光導波路は13dB
/cmであった。従って、本実施の形態による光導波路
素子のロックキングカーブ半値幅2.05°のPZT薄
膜光導波路自身の散乱および吸収による伝搬損失は13
dB/cmと考えられ、先の式[14]および[15]
に基づくシミュレーションによって求めた基板吸収によ
る伝搬損失に加え合わせると、本実施の形態による光導
波路素子の膜厚130nmのSrTiOバッファ層上
のPZT光導波路の光伝搬損失は16dB/cmとな
り、シミュレーションによって求めた基板吸収による伝
搬損失の傾向と本実施の形態による光導波路素子の実測
値が図13に示すように一致することが分かった。
【0058】一方、本実施の形態による光導波路素子の
SrTiOバッファ層のみをNbドープSrTiO
基板上へ成長した状態で膜厚130nmのSrTiO
バッファ層の比誘電率を測定したところ予想していた値
である300よりも低い値である65を示した。この差
異を調べるため組成を分析したところSr/Ti比は
0.6/1.0と化学量論組成より大幅にずれが生じて
いることが判明した。一方、NbドープSrTiO
板上へ直接成長したPZT薄膜光導波路において測定し
た比誘電率は900であった。従って、式[19]より
求められるPZT薄膜光導波路の実効電圧は33%とな
った。また、NbドープSrTiO基板上へ直接成長
したPZT薄膜光導波路において電気光学係数、および
屈折率を測定した結果、r=50pm/V、およびn=
2.56であった。
【0059】本実施の形態による光導波路素子の膜厚1
30nmのSrTiOバッファ層を有するプリズム型
EO偏向素子へ、レーザ光源9で633nmの波長のレ
ーザ・ビーム6を生成し、レンズ10でこれを幅1mm
にコリメートした後、PZT薄膜光導波路1へ入射プリ
ズム5を介して導入した。入射したレーザ・ビーム6は
下部NbドープSrTiO基板電極2とITO上部プ
リズム電極7の間に電圧を印加することによりプリズム
電極下の部分とそれ以外の部分において異なる屈折率が
発生し、レーザ・ビームが偏向された。偏向の後、偏向
されたレーザ・ビーム6は端面からの出射ビーム8とし
て出射された。投影面上でのレーザ・スポット位置の変
位より偏向角度を求めると、100V印加、すなわち実
効電圧33Vで1.70度の偏向が確認された。先に求
めたr=50pm/V、およびn=2.56と、設計値
となるd=900nm、W=100μm、L=200μ
mより実効電圧33Vでの偏向角度を逆に求めると実測
とほぼ同じ1.76度となった。
【0060】以上のように、バッファ層と光導波路の膜
厚比が0.1以上の領域では伝搬損失が実用的な範囲に
入り、本発明の実施の形態による光導波路素子は有効に
機能することが証明された。
【0061】次に本実施の形態に対する第1の比較例の
説明をする。本比較例においては第1の実施の形態と同
様に抵抗率が0.05Ω・cm、吸収係数174のNb
0.5%ドープSrTiO(100)単結晶導電性の
下部電極基板上へ、膜厚12nmのエピタキシャルSr
TiOバッファ層を成長させ、次に膜厚900nmの
エピタキシャルPZT(52/48)薄膜光導波路を成
長させた。このときの、バッファ層と光導波路の膜厚比
は約0.014である。
【0062】SrTiOバッファ層は化学量論組成の
SrTiOターゲットを用いRfスパッタリングによ
り基板温度450°Cで成長させた。膜厚12nmのS
rTiOバッファ層を成長の後、PZT(52/4
8)光導波路層も第1の実施の形態と同様にゾルゲル法
を用いた固相エピタキシャル成長によって総膜厚900
nmのエピタキシャルPZT薄膜を得た。結晶学的関係
は単一配向のPZT(100)//SrTiO(10
0)//Nb−SrTiO(100)、面内方位PZ
T[001]//SrTiO[001]//Nb−S
rTiO[001]の構造が得られた。PZT(10
0)面によるロッキングカーブ半値幅は1.69°とな
った。
【0063】プリズム・カップリングによって633n
mのレーザ光を本比較例による光導波路素子のPZT薄
膜光導波路に導入し、TEモードの伝搬損失を測定し
たところ、42dB/cmとバッファ層の挿入効果はほ
とんど見られなかった。これに対して、吸収のないノン
ドープSrTiO基板上へ直接成長したロックキング
カーブ半値幅2.01°のPZT薄膜光導波路の散乱お
よび吸収による光伝搬損失が16dB/cm程度である
ため、本比較例による光導波路素子のロックキングカー
ブ半値幅1.69°のPZT薄膜光導波路自身の散乱お
よび吸収による伝搬損失もほぼ13dB/cmと考えら
れ、シミュレーションによって求めた膜厚12nmのS
rTiOバッファ層上のPZT光導波路の基板吸収に
よる伝搬損失22dB/cmに加え合わせると、本比較
例のPZT光導波路の光伝搬損失は35dB/cmとな
り、実測値とほぼ一致する。このようなシミュレーショ
ンから予想されるように、バッファ層を挿入してもバッ
ファ層と光導波路の膜厚比が0.1未満の領域では実用
レベルの伝搬損失は得られないことがわかる。
【0064】次に本実施の形態に対する第2の比較例の
説明をする。本比較例においては第1の実施の形態と同
様の吸収係数174のNb0.5%ドープSrTiO
(100)単結晶導電性の下部電極基板上へ、膜厚90
0nmのエピタキシャルPZT(52/48)薄膜光導
波路を直接成長させた。PZT(52/48)光導波路
層は第1の実施の形態と同様にしてゾルゲル法を用いた
固相エピタキシャル成長によって、総膜厚900nmの
エピタキシャルPZT薄膜を作製した。結晶学的関係は
単一配向のPZT(100)//Nb−SrTiO
(100)、面内方位PZT[001]//Nb−S
rTiO[001]の構造が得られた。成長条件はP
ZT(100)面によるロッキングカーブ半値幅が1.
96°となるように調整した。
【0065】プリズム・カップリングによって633n
mのレーザ光を本比較例のPZT薄膜光導波路に導入
し、TE0モードの伝搬損失測定を行ったところ、減衰
が大きく伝搬損失は求めることができなかった。ロック
キングカーブ半値幅が1.96°であることより、PZ
T薄膜光導波路自体の光伝搬損失は16dB/cm程度
と考えられ、また、基板吸収による光伝搬損失はシュミ
レーションによると22dB/cmであることより、本
比較例のPZT薄膜光導波路の伝搬損失は38dB/c
m以上と考えられる。
【0066】次に本実施の形態に対する第3の比較例の
説明をする。本比較例においては第1の実施の形態と同
様に抵抗率が0.05Ω・cm、吸収係数174のNb
0.5%ドープSrTiO(100)単結晶導電性の
下部電極基板上へ、屈折率が1.46、比誘電率が3.
9である膜厚300nmのSiOバッファ層を成長さ
せ、次に膜厚900nmのPZT(52/48)薄膜光
導波路を成長させた。
【0067】SiOバッファ層はゾルゲル法を用いて
形成した。膜厚300nmのSiO バッファ層を成長
の後、PZT(52/48)光導波路層も第1の実施の
形態と同様にゾルゲル法を用いて総膜厚900nmのP
ZT薄膜を得た。SiOバッファ層は非晶質であるた
め導電性基板と光導波路とのエピタキシ関係を保持でき
ず、結晶学的関係はランダムであった。
【0068】プリズム・カップリングによって633n
mのレーザ光を本比較例による光導波路素子のPZT薄
膜光導波路に導入し、伝搬損失を測定したところ、散乱
が激しいため光伝搬が全く見られなかった。式[19]
より求められるPZT薄膜光導波路の実効電圧は、PZ
T(52/48)薄膜光導波路の膜厚900nm、比誘
電率900、およびSiOバッファ層の膜厚300n
m、比誘電率3.9よりわずか1.3%となり、第1の
実施の形態による光導波路素子のように100Vを印加
しても実効電圧は1.3Vにしかならない。
【0069】次に、本発明の第2の実施の形態による光
導波路素子について説明する。本実施の形態においては
第1の実施の形態と同様に抵抗率が0.05Ω・cm、
吸収係数174のNb0.5%ドープSrTiO(1
00)単結晶導電性の下部電極基板上へ、膜厚300n
mのエピタキシャルSrTiOバッファ層を成長さ
せ、次に膜厚900nmのエピタキシャルPZT(52
/48)薄膜光導波路を成長させ、さらにプリズム型電
極を形成することによってプリズム型EO偏向素子を作
製した。
【0070】SrTiOバッファ層はSr/Ti比を
1.0以上にしたSrTiOターゲットを用いRfス
パッタリングにより、基板温度600°Cで成長させ
た。膜厚300nmのSrTiOバッファ層を成長の
後、第1の実施の形態と同様にゾルゲル法を用いた固相
エピタキシャル成長によって総膜厚900nmのエピタ
キシャルPZT薄膜を得た。結晶学的関係は単一配向の
PZT(100)//SrTiO(100)//Nb
−SrTiO(100)、面内方位PZT[001]
//SrTiO[001]//Nb−SrTiO
[001]の構造が得られた。PZT(100)面に
よるロッキングカーブ半値幅は0.51°となった。こ
のPZT薄膜光導波路のポーリングを行った後、PZT
薄膜光導波路上には膜厚100nmのITO薄膜による
15個の底辺100μm、高さ1000μmのプリズム
形上部電極アレイを形成し、プリズム型EO偏向素子を
作製した。また、NbドープSrTiO基板へのオー
ミック・コンタクトはInによって得た。
【0071】プリズム・カップリングによって633n
mのレーザ光を本実施の形態による光導波路素子のPZ
T薄膜光導波路に導入し、TEモードの伝搬損失を測
定したところ、3.8dB/cmと良好な値を示した。
これに対して、吸収のないノンドープSrTiO基板
上へ直接成長したロックキングカーブ半値幅0.54°
のPZT薄膜光導波路の散乱および吸収による光伝搬損
失が4dB/cm程度であるため、本実施の形態による
光導波路素子のロックキングカーブ半値幅0.51°の
PZT薄膜光導波路自身の散乱および吸収による伝搬損
失もほぼ4dB/cmと考えられ、図13のシミュレー
ションによって求めた膜厚300nmのSrTiO
ッファ層上のPZT光導波路の基板吸収による伝搬損失
0.15dB/cmに加え合わせると、本実施の形態に
よる光導波路素子のPZT光導波路の光伝搬損失は4.
15dB/cmとなり、実測値とほぼ一致することが分
かった。
【0072】一方、本実施の形態による光導波路素子の
SrTiOバッファ層のみをNbドープSrTiO
基板上へ成長した状態で膜厚300nmのSrTiO
バッファ層の比誘電率を測定したところ予想通りの30
0を示した。一方、第1の実施の形態と同様にNbドー
プSrTiO基板上へ直接成長したPZT薄膜光導波
路において比誘電率を測定した結果、900であった。
従って、式[19]より求められるPZT薄膜光導波路
の実効電圧は50%となった。また、NbドープSrT
iO基板上へ直接成長したPZT薄膜光導波路におい
て電気光学係数、および屈折率を測定した結果、r=5
0pm/V、およびn=2.56であった。
【0073】第1の実施の形態と同様に本実施の形態に
よる光導波路素子のプリズム型EO偏向素子へ633n
mの波長のレーザ・ビームを幅1mmにコリメートした
後、PZT薄膜光導波路へプリズムを介して導入し、下
部NbドープSrTiO基板電極とITO上部プリズ
ム電極間に電圧を印加することにより導入されたレーザ
・ビームが偏向された。偏向の後、偏向されたレーザ・
ビームは端面から出射され、投影面上でのレーザ・スポ
ット位置の変位より偏向角度を求めると、20V印加、
すなわち実効電圧10Vで2.61度の偏向が確認され
た。先に求めたr=50pm/V、およびn=2.56
と、設計値となるd=900nm、W=100μm、L
=1000μmより実効電圧10Vでの偏向角度を逆に
求めると実測とほぼ同じ2.67度となった。
【0074】次に、本発明の第3の実施の形態による光
導波路素子について説明する。本実施の形態においては
第1の実施の形態とほぼ同様に表3に示すように抵抗率
が0.05Ω・cm、吸収係数174のNb0.5%ド
ープSrTiO(100)単結晶導電性の下部電極基
板上へ、膜厚300nmのエピタキシャルSrTiO
バッファ層を成長させ、次に膜厚900nmのエピタキ
シャルPLZT(9/65/35)薄膜光導波路を成長
させ、さらにプリズム型電極を形成することによってプ
リズム型EO偏向素子を作製した。
【0075】
【表3】
【0076】SrTiOバッファ層はSr/Ti比を
1.0以上にしたSrTiOターゲットを用いRfス
パッタリングにより、基板温度600°Cで成長させ
た。膜厚300nmのSrTiOバッファ層を成長の
後、第1の実施の形態と同様にゾルゲル法を用いた固相
エピタキシャル成長によって総膜厚900nmのエピタ
キシャルPLZT薄膜を得た。結晶学的関係は単一配向
のPLZT(100)//SrTiO(100)//
Nb−SrTiO(100)、面内方位PLZT[0
01]//SrTiO[001]//Nb−SrTi
[001]の構造が得られた。PLZT薄膜光導波
路上には膜厚100nmのITO薄膜による15個の底
辺100μm、高さ1000μmのプリズム形上部電極
アレイを形成し、プリズム型EO偏向素子を作製した。
また、NbドープSrTiO基板へのオーミック・コ
ンタクトはInによって得た。
【0077】プリズム・カップリングによって780n
mのレーザ光を本実施の形態による光導波路素子のPL
ZT薄膜光導波路に導入し、TEモードの伝搬損失を
測定したところ、1.7dB/cmと良好な値を示し
た。また、SrTiOバッファ層の比誘電率測定値3
00と、PLZT薄膜光導波路の比誘電率測定値190
0より、式[19]より求められるPLZT薄膜光導波
路の実効電圧は32%となった。また、PLZT薄膜光
導波路の電気光学係数、および屈折率を測定した結果、
二次の係数R=3×10−16/V、およびn=
2.49であった。
【0078】第1の実施の形態と同様に本実施の形態に
よる光導波路素子のプリズム型EO偏向素子へ633n
mの波長のレーザ・ビームを幅1mmにコリメートした
後、PLZT薄膜光導波路へプリズムを介して導入し、
下部NbドープSrTiO基板電極とITO上部プリ
ズム電極間に電圧を印加することにより導入されたレー
ザ・ビームが偏向された。偏向の後、偏向されたレーザ
・ビームは端面から出射され、投影面上でのレーザ・ス
ポット位置の変位より偏向角度を求めると、5V印加、
すなわち実効電圧1.6Vで4.23度の偏向が確認さ
れた。先に求めたR=3×10−16/V、およ
びn=2.49と、設計値となるd=900nm、W=
100μm、L=1000μmより実効電圧1.6Vで
の偏向角度を逆に求めると実測とほぼ同じ4.19度と
なった。
【0079】次に、本発明の第4の実施の形態による光
導波路素子について説明する。本実施の形態においては
第1の実施の形態とほぼ同様に表4に示すように抵抗率
が0.05Ω・cm、吸収係数174のNb0.5%ド
ープSrTiO(100)単結晶導電性の下部電極基
板上へ、膜厚500nmのエピタキシャルPLZT(9
/65/35)バッファ層を成長させ、次に膜厚100
0nmのエピタキシャルPZT(52/48)薄膜光導
波路を成長させ、さらにプリズム型電極を形成すること
によってプリズム型EO偏向素子を作製した。
【0080】
【表4】
【0081】PLZT(9/65/35)バッファ層お
よびPZT(52/48)薄膜光導波路は、第1の実施
の形態と同様にゾルゲル法を用いた固相エピタキシャル
成長によってPLZT(9/65/35)バッファ層の
積層の後、PZT(52/48)薄膜光導波路を積層す
ることによって得た。結晶学的関係は単一配向のPZT
(100)//PLZT(100)//Nb−SrTi
(100)、面内方位PZT[001]//PLZ
T[001]//Nb−SrTiO[001]の構造
が得られた。PZT薄膜光導波路上には膜厚100nm
のITO薄膜による15個の底辺100μm、高さ10
00μmのプリズム形上部電極アレイを形成し、プリズ
ム型EO偏向素子を作製した。また、NbドープSrT
iO基板へのオーミック・コンタクトはInによって
得た。
【0082】プリズム・カップリングによって633n
mのレーザ光を本実施の形態による光導波路素子のPZ
T薄膜光導波路に導入し、TE0モードの伝搬損失を測
定したところ、5.5dB/cmという良好な値を示し
た。また、PLZTバッファ層の比誘電率測定値190
0と、PZT薄膜光導波路の比誘電率測定値900よ
り、式[19]より求められるPLZT薄膜光導波路の
実効電圧は81%となった。また、PZT薄膜光導波路
の電気光学係数、および屈折率を測定した結果、r=5
0pm/V、およびn=2.56であった。
【0083】第1の実施の形態と同様に本実施の形態に
よる光導波路素子のプリズム型EO偏向素子へ633n
mの波長のレーザ・ビームを幅1mmにコリメートした
後、PLZT薄膜光導波路へプリズムを介して導入し、
下部NbドープSrTiO基板電極とITO上部プリ
ズム電極間に電圧を印加することにより導入されたレー
ザ・ビームが偏向された。偏向の後、偏向されたレーザ
・ビームは端面から出射され、投影面上でのレーザ・ス
ポット位置の変位より偏向角度を求めると、5V印加、
すなわち実効電圧4.5Vで0.96度の偏向が確認さ
れた。先に求めた=50pm/V、およびn=2.56
と、設計値となるd=1000nm、W=100μm、
L=1000μmより実効電圧4.5Vでの偏向角度を
逆に求めると実測とほぼ同じ1.08度となった。
【0084】次に、本発明の第5の実施の形態による光
導波路素子について説明する。本実施の形態においては
第1の実施の形態と同様に表5に示すように、La1.
0%ドープSrTiO(100)単結晶導電性の下部
電極基板上へ、膜厚500nmのエピタキシャルSr
0.60Ba0.40Nbバッファ層を成長さ
せ、次に膜厚1000nmのエピタキシャルSr
0.75Ba0.25Nb薄膜光導波路を成長さ
せた。
【0085】
【表5】
【0086】Sr0.60Ba0.40Nbバッ
ファ層およびSr0.75Ba0. 25Nb薄膜
光導波路は、ターゲット表面をUVレーザー・パルスに
より瞬間的に加熱し蒸着を行うエキシマ・レーザー・デ
ポジション法によって、O雰囲気、基板温度700°
Cで成長した。結晶学的関係は単一配向のSr0.7
Ba0.25Nb(100)//Sr0.60
0.40Nb(100)//La−SrTiO
(100)の構造が得られた。プリズム・カップリン
グによって633nmのレーザ光を本実施の形態による
Sr0.75Ba0.25Nb薄膜光導波路に導
入し、TEモードの伝搬損失を測定したところ、6.
6dB/cmと良好な値を示した。
【0087】上記第1の実施の形態乃至第5の実施の形
態による光導波路素子と同様に酸化物導電性基板上にバ
ッファ層を配し、その上に薄膜光導波路を設けた構造の
他の実施の形態による光導波路素子の光導波路、バッフ
ァ層、導電性基板の材料、物理特性の諸値を表6乃至表
11に示す。
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】
【表11】
【0094】なお、本発明の光導波路素子の構造はこれ
らに限られるものではない。また、以上の実施の形態で
はプリズム型EO偏向素子を示したが、本発明は言うま
でもなくブラッグ反射型スイッチ、全反射型スイッチ、
方向性結合スイッチ、マッハツェンダ干渉スイッチ、位
相変調素子、モード変換素子、波長フィルター素子など
EO効果を用いるすべての光導波路素子において同様に
適応可能であり、これらの薄膜光導波路素子においても
同じく低駆動電圧特性と低伝搬損失特性を同時に解決で
きる構造が提供される。
【0095】次に、本発明の第6の実施の形態による光
導波路素子について説明する。本実施の形態においては
表12に示すように低抵抗のn型GaAs(100)半
導体単結晶の下部電極基板上へ、膜厚1000nmのエ
ピタキシャルMgOバッファ層を成長させ、次に膜厚1
000nmのエピタキシャルPZT薄膜光導波路を成長
させた。
【0096】
【表12】
【0097】GaAs基板へのエピタキシャル層の形成
を、ターゲット表面をUVレーザ・パルスにより瞬間的
に加熱し蒸着を行うエキシマ・レーザ・デポジション法
によって行った。レーザはXeClエキシマ・レーザ
(波長308nm)を用い、パルス周期4Hz、パルス
長17ns、エネルギー130mJ(ターゲット表面で
のエネルギー密度1.3J/cm)の条件とした。タ
ーゲットと基板の距離は50mmである。ターゲットは
BaTiO、またMgOは波長308nmに吸収を持
たないために金属Mgを用いた。MgOは10eV以上
の高い結合エネルギーを持っているため、Oを成膜中
に導入することによってMgは容易に酸化される。
【0098】GaAs基板は溶剤洗浄の後、HSO
系の溶液にてエッチングを行った。さらにこの基板を脱
イオン水とエタノールでリンスし、最後に窒素流下でエ
タノールによるスピン乾燥を行った。スピン乾燥後に基
板をただちにデポジション・チャンバーに導入し、一定
温度、バックグラウンド圧力3×10−7Torrにて
加熱を行ってGaAs表面の不動体層の脱離(昇華)を
図り、続いてMgOの成膜を350°Cで行った。Mg
OとGaAsとの結晶学的関係は格子不整が25.5%
となるにもかかわらず、MgOとGaAsの結晶方位の
関係はMgO(100)//GaAs(100)、面内
方位MgO[001]//GaAs[001]であるこ
とがわかった。MgOと半導体の界面を高分解能透過型
電子顕微鏡にて観察すると、MgO−GaAs界面では
MgO:GaAs=4:3の格子整合による二次元超格
子が形成されており、界面には二次層などの生成はなく
急峻な界面であった。さらに、700°CにてBaTi
をエピタキシャル成長し、BaTiO(100)
//MgO(100)//GaAs(100)、BaT
iO[001]//MgO[001]//GaAs
[001]となる光導波路構造を得た。
【0099】本実施の形態と同様に半導体Si基板上に
SrTiOバッファ層を配し、その上にPZT薄膜光
導波路を設けた構造の他の実施の形態による光導波路素
子の光導波路、バッファ層、導電性基板の材料、物理特
性の諸値を表13に示すが、このような構造はこれらに
限られるものではない。
【0100】
【表13】
【0101】次に、本発明の第7の実施の形態による光
導波路素子について説明する。本実施の形態においては
表14に示すようにMgO単結晶基板上へ、膜厚100
nmのエピタキシャルPt導電層を成長させ、次に膜厚
300nmのSrTiOバッファ層を成長させ、さら
に膜厚1000nmのエピタキシャルPZT(52/4
8)薄膜光導波路を成長させた。
【0102】
【表14】
【0103】Pt導電層およびSrTiOバッファ層
はRfスパッタリングにより成長させた。Pt導電層を
Ptをターゲットを用いてAr雰囲気、基板温度400
°Cでエピタキシャル成長した後、SrTiOバッフ
ァ層をSr/Ti比を1.0以上にしたSrTiO
ーゲットを用いてO/Ar雰囲気、基板温度500°
Cでエピタキシャル成長した。PZT薄膜光導波路は、
第1の実施の形態と同様にゾルゲル法を用いた固相エピ
タキシャル成長によって得た。結晶学的関係は単一配向
のPZT(100)//SrTiO(100)//P
t(100)//MgO(100)、面内方位PZT
[001]//SrTiO[001]//Pt[00
1]//MgO[001]の光導波路構造が得られた。
【0104】次に、本発明の第8の実施の形態による光
導波路素子について説明する。本実施の形態においては
表15に示すようにSrTiO単結晶基板上へ、下部
電極として膜厚100nmのエピタキシャルSrRuO
導電層を成長させ、次に膜厚500nmのPLZT
(9/65/35)バッファ層を成長させ、さらに膜厚
1000nmのエピタキシャルPZT(52/48)薄
膜光導波路を成長させた。
【0105】
【表15】
【0106】SrRuO導電層はRfスパッタリング
により成長させた。SrRuO導電層をSrRuO
をターゲットを用いてArとO混合雰囲気、基板温度
600°Cでエピタキシャル成長した後、PLZTバッ
ファ層およびPZT薄膜光導波路は、第4の実施の形態
と同様にゾルゲル法を用いた固相エピタキシャル成長に
よって得た。結晶学的関係は単一配向のPZT(10
0)//PLZT(100)//SrRuO(10
0)//SrTiO(100)の構造が得られた。プ
リズム・カップリングによって633nmのレーザ光を
本実施の形態によるPZT(52/48)薄膜光導波路
に導入し、TEモードの伝搬損失を測定したところ、
3.7dB/cmと良好な値を示した。
【0107】次に、本発明の第9の実施の形態による光
導波路素子について説明する。本実施の形態においては
表16に示すようにSrTiO単結晶基板上へ、下部
電極として膜厚100nmのSrRuO導電層を成長
させ、次に膜厚500nmのエピタキシャルSr
0.60Ba0.40Nbバッファ層を成長さ
せ、次に、膜厚1000nmのエピタキシャルSr
0.75Ba0.25Nb薄膜光導波路を成長さ
せた。
【0108】
【表16】
【0109】SrRuO導電層、Sr0.60Ba
0.40Nbバッファ層、Sr 0.75Ba
0.25Nb薄膜光導波路の各層はRfスパッタ
リングにより成長させた。SrRuO導電層をSrR
uOターゲットを用いてArとO 混合雰囲気、基板
温度600°Cでエピタキシャル成長した後、Sr
0.60Ba0.40Nbバッファ層およびSr
0.75Ba0.25Nb薄膜光導波路は、O
雰囲気、基板温度700°Cで成長した。結晶学的関係
は単一配向のSr0.75Ba0.25Nb(1
00)//Sr0.60Ba0.40Nb(10
0)//SrRuO(100)//SrTiO(1
00)の構造が得られた。プリズム・カップリングによ
って633nmのレーザ光を本実施の形態によるSr
0.75Ba0.25Nb薄膜光導波路に導入
し、TEモードの伝搬損失を測定したところ、5.5
dB/cmと良好な値を示した。
【0110】上記実施の形態と同様に基板上に導電層と
バッファ層を配し、その上に薄膜光導波路を設けた構造
の他の実施の形態による光導波路素子の光導波路、バッ
ファ層、導電性基板の材料、物理特性の諸値を表17乃
至表24に示す。
【0111】
【表17】
【0112】
【表18】
【0113】
【表19】
【0114】
【表20】
【0115】
【表21】
【0116】
【表22】
【0117】
【表23】
【0118】
【表24】
【0119】なお、本発明の対象となる構造はこれらに
限られるものではなく、本明細書に現れた技術的な思想
から当業者ならば予測できる光導波路素子の構造すべて
に及ぶものである。
【0120】
【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、低駆動電
圧特性と低伝搬損失特性を同時に解決できる電気光学効
果を有する薄膜光導波路素子およびその作製方法が実現
できる。本発明の光導波路素子は各種の偏向素子、スイ
ッチング素子、あるいは変調素子などを含む電気光学効
果を利用する光導波路素子全般へ利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光導波路素子の原理を説明するための
図である。
【図2】本発明の光導波路素子における電磁界分布を示
す図である。
【図3】本発明の光導波路素子における電界分布を示す
図である。
【図4】吸収係数が174のSrTiO基板上のPZ
T光導波路の伝搬損失と膜厚の関係を示す図である。
【図5】バッファ層を有する光導波路における電界分布
を示す図である。
【図6】吸収係数が174のSrTiO基板上の膜厚
600nmのPZT光導波路の伝搬損失とSrTiO
バッファ層の膜厚の関係を示す図である。
【図7】吸収係数が174のSrTiO基板上による
吸収伝搬損失が1dB/cmとなるPZT光導波路の膜
厚とSrTiOバッファ層の膜厚の関係を示す図であ
る。
【図8】光導波路/バッファ層/基板の等価回路を示す
図である。
【図9】実効電圧と印加電圧の比が0.02〜0.4の
範囲のバッファ層膜厚/光導波路膜厚対バッファ層誘電
率/光導波路誘電率の関係を示す図である。
【図10】実効電圧と印加電圧の比が0.4〜0.9の
範囲のバッファ層膜厚/光導波路膜厚対バッファ層誘電
率/光導波路誘電率の関係を示す図である。
【図11】第1の実施の形態による光導波路素子のEO
プリズム型偏向素子の上面図である。
【図12】第1の実施の形態による光導波路素子のEO
プリズム型偏向素子の側面図である。
【図13】吸収係数が174のSrTiO基板上の膜
厚900nmのPZT光導波路の伝搬損失とSrTiO
バッファ層の膜厚の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 薄膜光導波路 2 導電性基板 4 バッファ層 5 入射プリズム 6 入射ビーム 7 プリズム電極 8 出射ビーム 9 レーザ光源 10 レンズ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森山 弘朗 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 中村 滋年 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 長ケ部 英資 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 Fターム(参考) 2H047 AA02 CC03 DD02 EE06 GG03 GG07 HH08 2K002 AB03 AB04 AB09 BA06 CA02 CA03 CA22 CA25 DA05 EB04 EB09 FA02 HA02

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性または半導電性の下部電極と、 前記下部電極上に設けられたエピタキシャルまたは単一
    配向性のバッファ層と、 前記バッファ層上に設けられたエピタキシャルまたは単
    一配向性の薄膜光導波路と、 前記光導波路上に設けられた導電性薄膜または半導電性
    薄膜の上部電極と、 を具備する光導波路素子。
  2. 【請求項2】請求項1記載の光導波路素子において、 前記バッファ層は、前記光導波路よりも小さい屈折率を
    有する酸化物であることを特徴とする光導波路素子。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の光導波路素子に
    おいて、 前記バッファ層の比誘電率と前記光導波路の比誘電率の
    比は、0.002以上であることを特徴とする光導波路
    素子。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載の光導波
    路素子において、 前記バッファ層の比誘電率は、8以上であることを特徴
    とする光導波路素子。
  5. 【請求項5】請求項1乃至4のいずれかに記載の光導波
    路素子において、 前記バッファ層の膜厚と前記光導波路の膜厚の比は、
    0.1以上であることを特徴とする光導波路素子。
  6. 【請求項6】請求項1乃至5のいずれかに記載の光導波
    路素子において、 前記バッファ層の膜厚は、10nm以上であることを特
    徴とする光導波路素子。
  7. 【請求項7】請求項1乃至6のいずれかに記載の光導波
    路素子において、 前記下部電極は、単結晶基板であることを特徴とする光
    導波路素子。
  8. 【請求項8】請求項1乃至6のいずれかに記載の光導波
    路素子において、 前記下部電極は、単結晶基板上に形成されたエピタキシ
    ャルまたは単一配向性の薄膜であることを特徴とする光
    導波路素子。
  9. 【請求項9】請求項1乃至8のいずれかに記載の光導波
    路素子において、 前記下部電極は、酸化物であることを特徴とする光導波
    路素子。
  10. 【請求項10】請求項1乃至9のいずれかに記載の光導
    波路素子において、 前記下部電極の抵抗率は、10Ω・cm以下であるこ
    とを特徴とする光導波路素子。
  11. 【請求項11】請求項1乃至10のいずれかに記載の光
    導波路素子において、 前記下部電極の屈折率は、前記光導波路よりも小さいこ
    とを特徴とする光導波路素子。
  12. 【請求項12】請求項1乃至11のいずれかに記載の光
    導波路素子において、 前記光導波路は、酸化物であることを特徴とする光導波
    路素子。
  13. 【請求項13】請求項1乃至12のいずれかに記載の光
    導波路素子において、 前記光導波路は、強誘電体であることを特徴とする光導
    波路素子。
  14. 【請求項14】請求項1乃至13のいずれかに記載の光
    導波路素子において、 前記上部電極は、前記光導波路よりも小さい屈折率を有
    する酸化物であることを特徴とする光導波路素子。
  15. 【請求項15】請求項1乃至14のいずれかに記載の光
    導波路素子において、 前記上部電極と前記下部電極との間に電圧を印加するこ
    とにより、前記光導波路に入射する光ビームを変調、ス
    イッチング、または偏向することを特徴とする光導波路
    素子。
  16. 【請求項16】請求項1乃至15のいずれかに記載の光
    導波路素子の作製方法において、 酸化物である前記バッファ層および前記光導波路は、前
    記下部電極上に金属有機化合物を塗布して焼成し、固相
    エピタキシャル成長させて形成することを特徴とする光
    導波路素子の作製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPWO2004068235A1 (ja) * 2003-01-27 2006-05-25 富士通株式会社 光偏向素子およびその製造方法
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