JP2000044354A - セラミックス複合粉体の製造方法 - Google Patents

セラミックス複合粉体の製造方法

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JP2000044354A
JP2000044354A JP10210510A JP21051098A JP2000044354A JP 2000044354 A JP2000044354 A JP 2000044354A JP 10210510 A JP10210510 A JP 10210510A JP 21051098 A JP21051098 A JP 21051098A JP 2000044354 A JP2000044354 A JP 2000044354A
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泰久 河野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 セラミックススラリ乾燥時におけるpHの低
下を抑え、セラミックス原料粉体におけるセラミックス
主成分原料粉体に対する添加物の分散の偏析を防止し、
添加物が均一に分散したセラミックス原料粉体を得る。 【解決手段】 セラミックスの主成分原料粉体を分散さ
せると共に、易水溶性の元素から成る添加物成分を分散
したセラミックススラリを作る工程と、このセラミック
ススラリに塩基を加える工程と、前記セラミックススラ
リを乾燥し、それに含まれるセラミックス粉体を水酸化
物として析出させる工程とによりセラミックス複合粉末
を製造するに当たり、セラミックススラリに高沸点の有
機塩基、あるいは尿素を添加した後、セラミックススラ
リを乾燥する。この乾燥時のセラミックススラリのpH
の低下は、有機塩基や尿素を添加しないものに比べて小
さい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は積層セラミックスコ
ンデンサ、積層セラミックスインダクタ、積層セラミッ
クス多層基板等のセラミックス電子部品の原料なるセラ
ミックス粉体であって、セラミックスの主成分原料粉体
にセラミックス添加物を添加したセラミックス複合粉体
の製方法に関する。特に、セラミックスの主成分原料粉
体に対するセラミックス添加物の分散性を向上させるこ
とができるセラミックス複合粉体の製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】素地にセラミックスを使用したセラミッ
クス電子部品の代表的なものとして、積層セラミックス
コンデンサ、積層セラミックスインダクタ、セラミック
スバリスタ、積層セラミックスLC部品、積層セラミッ
クス多層基板等がある。例えば、積層セラミックスコン
デンサの素地を形成するためのセラミックス原料粉体
は、一般に次のような工程により製造される。まず、誘
電体であるチタン酸バリウム等のセラミックス主成分原
料粉体と複数のセラミックス添加物成分との混合物に、
水と分散剤とを混ぜ、スラリとして湿式混合する。その
後、このセラミックススラリを適宜の乾燥機で乾燥し、
固化することにより、セラミックス複合粉体を得る。
【0003】セラミックス原料粉体にセラミックス添加
物を添加する目的は大きく分けて二つある。一つは温度
特性の改善で、このような目的で添加される添加物とし
ては、母材となる誘電体のキュリー点を変化させるシフ
タやキュリー点付近の誘電率を抑制するデフ°レッサ等
として作用する金属化合物をあげることができる。この
ような添加物はセラミックスの電気的特性を著しく変化
させるものとなる。もう一つは、複合粉体の低温での焼
結性を向上させることで、このような目的で添加される
添加物としては、シリカ等の低融点化合物をあげること
ができる。
【0004】近年、積層セラミックスコンデンサ等のセ
ラミクス電子部品は小型化、高性能化が著しい。例え
ば、積層セラミックスコンデンサの場合、小形化と大容
量化が著しい。これに伴い、積層セラミックスコンデン
サの素地を形成する誘電体層の厚みが著しく薄くなって
きている。このような状況下において、誘電体層の中の
添加物成分の分散が不均一であると、誘電体層の電気的
特性が局部的に異なって不均一化し、積層セラミックス
コンデンサの温度特性、品質、信頼性を著しく低下させ
る。このため、積層セラミックスコンデンサの特性、品
質、信頼性を保持するためには、誘電体層の中の添加物
成分の均一な分散が不可欠である。
【0005】誘電体層の中の添加物成分の分散は、焼成
前のセラミクス原料粉体における添加物成分の分散の履
歴にある程度依存するることが分かっている。従って、
誘電体層の中の添加物成分の均一な分散のためには、セ
ラミックス原料粉体に対する添加物成分の分散性が極め
て重要である。セラミックス原料粉体に添加物を離水溶
性の粉体として加え、セラミックススラリとした場合、
粉体レベル以上の分散は望めない。そこで、添加物とし
て易水溶性の化合物を加えて、金属イオン化すれば分散
は原子レベルに達し、均一な分散が図れる。しかし、液
相のままだと乾燥時に水の蒸発に伴って、イオンが移動
して局部的に濃縮され、偏析してしまう。そこで、あら
かじめ水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア
等の塩基を加え、セラミックススラリを水酸化物として
乾燥し、粉体を析出固定化させると組成の分散は良好と
なると考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとしている課題】ところが、塩基が
アンモニア水等の揮発性の化合物の場合は、スラリを乾
燥するときに、その初期に塩基が蒸発してしまい、pH
が低下し、水酸化物の再溶出が起こる。また、セラミッ
クススラリに塩基を過剰に投入し、セラミクススラリの
pHを高くしても、一般に水酸化物は高pH下ではゲル
化し易いものが多く、偏析の原因となる。一方、不揮発
性の水酸化バリウムや水酸化ナトリウム等の塩基の場
合、バリウムやナトリウムが製品の電気的特性に悪影響
を及ぼす。以上の課題は、積層セラミックスコンデンサ
用のセラミクス原料粉体を製造する場合だけでなく、他
のセラミクス電子部品用のセラミクス原料粉体を製造す
る場合も同様である。
【0007】そこで、本発明は前記従来のセラミックス
原料粉体の製造方法の課題に鑑み、セラミックススラリ
乾燥時におけるpHの低下を有効に抑え、セラミックス
原料粉体におけるセラミックス主成分原料粉体に対する
添加物の分散の偏析を防止し、添加物が均一に分散した
セラミックス原料粉体を得ることができるセラミックス
原料粉体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明では、前記の目的
を達成するため、セラミックスの主成分原料粉体を分散
させると共に、易水溶性の元素から成る添加物成分を分
散したセラミックススラリに塩基を加え、このセラミッ
クススラリを乾燥し、それに含まれるセラミックス複合
粉体を水酸化物として析出させるに当たり、セラミック
ススラリに高沸点の有機塩基、あるいは尿素を添加する
ことで、前記乾燥時のセラミックススラリのPHを安定
に保ち、セラミックス粉体組成の分散を保ちながら、セ
ラミックススラリを乾燥するものである。
【0009】すなわち、本発明によるセラミックス複合
粉体の製造方法は、セラミックスの主成分原料粉体を分
散させると共に、易水溶性の元素から成る添加物成分を
分散したセラミックススラリを作る工程と、このセラミ
ックススラリに塩基を加える工程と、前記セラミックス
スラリを乾燥し、それに含まれるセラミックス粉体を水
酸化物として析出させる工程とによりセラミックス複合
粉末を製造するに当たり、セラミックススラリに高沸点
の有機塩基、あるいは尿素を添加した後、セラミックス
スラリを乾燥することを特徴とするとするものである。
【0010】有機塩基としては、100℃以下で蒸発し
難い非揮発性のものを使用し、例えばアミン、トリスヒ
ドロキシメチルアミノメタン(Tris(hydrox
ymethyl)amiomethane)、トリエタ
ノールアミン(Triethanolamine)、テ
トラメチルアミノヒドロキシド(Tetramethy
laminohydroxide)を用いる。セラミッ
クススラリの乾燥時に、前記のような有機塩基や尿素を
使用することにより、焼成段階でそれらが熱分解を起こ
し窒素酸化物、二酸化炭素或いは水となって系外へ放出
されるため、焼成後のセラミックス素体の中に残らな
い。しかし、多量に投入すると、乾燥時に有機物が偏析
し、セラミックス素体を作るためのセラミックスグリー
ンシートの平滑化に阻害するので、アミンの使用は少量
に止め、アンモニアを併用する。つまり、金属イオンの
水酸化にはアンモニアを供給し、乾燥時にはアミンを用
い、セラミックススラリのpHを安定させる。高価なア
ミンの使用を抑えることで、コストダウンにも寄与す
る。
【0011】また別の方法として、アミンの代わりに尿
素を用いることもできる。アンモニアで金属水酸化物を
生成した後、セラミックススラリに尿素を投入する。尿
素は60℃以上で徐々にアンモニアに分解する。つま
り、セラミックススラリの乾燥時に、アンモニアの蒸発
する分を尿素が分解してアンモニアを生成し、セラミッ
クススラリのpHの低下を抑えることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、積層セラミックスコンデン
サ用のセラミックス複合粉体を製造する場合を例とし
て、その実施の形態を説明する。まず、積層セラミック
スコンデンサの誘電体層を形成するためのセラミックス
主成分原料となるチタン酸バリウムに、少量の添加物と
してのシリカとアンモニア、分散剤を配合し、これをイ
オン交換水に投入し、3φのジルコニアビーズと共にボ
ールミルで3時間程撹拌し、分散し、セラミックススラ
リを作る。次に、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢
酸カルシウム等の塩基の水溶液を用意し、これを前記セ
ラミックススラリに適量加え、さらに24時間程撹拌す
る。その後、セラミックススラリに適量のアミン、トリ
スヒドロキシメチルアミノメタン、トリエタノールアミ
ンまたはテトラメチルアミノヒドロキシドを添加し、バ
ットに空ける。そして、このセラミックススラリを13
0℃前後の温度に保ったオーブンで乾燥させ、セラミッ
クス複合粉体を得る。
【0013】このようなセラミックス複合粉体の製造方
法では、セラミックススラリを130℃前後の温度で乾
燥する際、乾燥中のセラミックススラリのpHの低下が
小さい。そのため、水酸化物の再溶出が起こり難い。従
って、乾燥時にセラミックスの主成分原料粉体から添加
物成分の粒子が遊離せず、セラミックスの主成分原料粉
体に対して添加物成分が均一に分散したままセラミック
ス複合粉体が析出し、固定化される。そして、アミン、
トリスヒドロキシメチルアミノメタン、トリエタノール
アミンまたはテトラメチルアミノヒドロキシドは、セラ
ミックス複合粉体からセラミックスグリーンシートを作
り、これを積層し、裁断して焼成する際に、窒素酸化
物、二酸化炭素或いは水として分解し、焼成後のセラミ
ックス素体の中に残らない。以上は、積層セラミックス
コンデンサ用のセラミックス複合粉体の製造方法を例に
説明したが、他のセラミックス電子部品用のセラミック
ス複合粉体の製造方法としても、同様の製造方法が適用
できる。
【0014】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について、具
体的数値をあげて説明する。 (実施例1)まず、積層セラミックスコンデンサの誘電
体層を形成するためのセラミックス主成分原料となるチ
タン酸バリウム1kg、添加物であるシリカ10g、2
9%濃アンモニア水を40ml、アクリル系分散剤5g
を配合し、これをイオン交換水2lに投入し、3φのジ
ルコニアビーズと共にボールミルで3時間撹拌し、分散
し、セラミックススラリを作った。次に、酢酸マグネシ
ウム、酢酸マンガン、酢酸カルシウムをイオン交換水2
00mlに溶解した水溶液を用意し、これを前記セラミ
ックススラリに加え、さらに24時間撹拌した。その
後、セラミックススラリにトリスヒドロキシメチルアミ
ノメタン5gを添加し、バットに空けた。そして、この
セラミックススラリを130℃前後の温度に保ったオー
ブンの中で乾燥させ、セラミックス複合粉体を得た。
【0015】乾燥時のセラミックススラリのpHの変化
を図1に「アンモニア+Tris」として示した。ま
た、このセラミックス複合粉体の組成の分散性をEPM
A(Electric Probe Micro An
alysis)マッピングにより測定し、その結果の良
不良を○と×で表1の「アンモニア+Tris」の欄に
示した。さらに、このセラミックス複合粉体を使用して
積層セラミックスコンデンサを製作し、その電気的特性
と信頼性を測定し、その結果を表1の「アンモニア+T
ris」の欄に示した。
【0016】(実施例2)前記実施例1において、セラ
ミックススラリの乾燥時に、トリスヒドロキシメチルア
ミノメタンに代えて尿素30gを加え、その他は同実施
例1と同様にしてセラミックス複合粉体を得た。この乾
燥時のセラミックススラリのpHの変化を図1に「アン
モニア+尿素」として示した。また、このセラミックス
複合粉体の組成の分散性をEPMAマッピングにより測
定し、その結果の良不良を○と×で表1の「アンモニア
+尿素」の欄に示した。さらに、このセラミックス複合
粉体を使用して積層セラミックスコンデンサを製作し、
その電気的特性と信頼性を測定し、その結果を表1の
「アンモニア+尿素」の欄に示した。
【0017】(比較例)前記実施例1において、セラミ
ックススラリの乾燥時に、トリスヒドロキシメチルアミ
ノメタンを加えず、その他は同実施例1と同様にしてセ
ラミックス複合粉体を得た。この乾燥時のセラミックス
スラリのpHの変化を図1に「アンモニア」として示し
た。また、このセラミックス複合粉体の組成の分散性を
EPMAマッピングにより測定し、その結果の良不良を
○と×で表1の「アンモニア」の欄に示した。さらに、
このセラミックス複合粉体を使用して積層セラミックス
コンデンサを製作し、その電気的特性と信頼性を測定
し、その結果を表1の「アンモニア」の欄に示した。
【0018】
【表1】
【0019】図1に示した結果から明らかな通り、乾燥
時にそれぞれトリスヒドロキシメチルアミノメタンと尿
素を添加した実施例1と実施例2とでは、トリスヒドロ
キシメチルアミノメタンと尿素を添加しなかった比較例
と比べて、セラミックススラリの乾燥時のpHの変化、
具体的にはpHの低下が小さい。さらに、表1に示した
結果から、実施例1及び実施例2により得られたセラミ
ックス複合粉体では、セラミックス主成分原料粉体に対
する添加物成分の分散性も良好であった。また、このセ
ラミックス複合粉体から作られた積層セラミックスコン
デンサは、電気的特性、信頼性共に良好であった。他
方、比較例により得られたセラミックス複合粉体では、
セラミックス主成分原料粉体に対する添加物成分の分散
性が不良であった。また、このセラミックス複合粉体か
ら作られた積層セラミックスコンデンサは、電気的特
性、信頼性共に不良であった。
【0020】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によるセラミ
ックス複合粉体の製造方法では、セラミックススラリに
高沸点の有機塩基、あるいは尿素を添加することで、前
記乾燥時のセラミックススラリのPHを安定に保ち、セ
ラミックス粉体組成の分散を保ちながら、セラミックス
スラリを乾燥することができる。これにより、セラミッ
クス原料粉体におけるセラミックス主成分原料粉体に対
する添加物の分散の偏析を防止し、添加物が均一に分散
したセラミックス原料粉体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例と比較例によるセラミックス複
合粉体の製造工程におけるセラミックススラリの乾燥時
の同スラリのpHの時間的な変化を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G030 AA10 AA16 AA37 BA09 GA03 GA04 GA16 4G042 DA02 DB01 DB28 DC03 DD04 DD10 5E001 AB03 AE00 AE02 AE03 AE04 AH00 AH08 AJ02 5E082 AB03 BC40 FF17 FG06 FG22 FG26 FG27 FG32 FG54 LL02 LL35 MM24 PP06

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミックスの主成分原料粉体を分散さ
    せると共に、易水溶性の元素から成る添加物成分を分散
    したセラミックススラリを作る工程と、このセラミック
    ススラリに塩基を加える工程と、前記セラミックススラ
    リを乾燥し、それに含まれるセラミックス粉体を水酸化
    物として析出させる工程とを有するセラミックス複合粉
    体の製造方法において、セラミックススラリに高沸点の
    有機塩基、あるいは尿素を添加した後、セラミックスス
    ラリを乾燥することを特徴とするセラミックス複合粉体
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 有機塩基として100℃以下で蒸発し難
    い非揮発性のものを使用することを特徴とする請求項1
    に記載のセラミックス複合粉体の製造方法。
  3. 【請求項3】 有機塩基としてアミンを用いることを特
    徴とする請求項1または2に記載のセラミックス複合粉
    体の製造方法。
  4. 【請求項4】 有機塩基としてトリスヒドロキシメチル
    アミノメタン、トリエタノールアミンまたはテトラメチ
    ルアミノヒドロキシドを用いることを特徴とする請求項
    3に記載のセラミックス複合粉体の製造方法。
  5. 【請求項5】 有機塩基として尿素を用いることを特徴
    とする請求項1または2に記載のセラミックス複合粉体
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 アンモニアを含むセラミックススラリの
    乾燥時に、有機塩基を添加することを特徴とする請求項
    1〜5の何れかに記載のセラミックス複合粉体の製造方
    法。
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