JP2000038528A - カチオン電着塗料組成物 - Google Patents

カチオン電着塗料組成物

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JP2000038528A
JP2000038528A JP10206519A JP20651998A JP2000038528A JP 2000038528 A JP2000038528 A JP 2000038528A JP 10206519 A JP10206519 A JP 10206519A JP 20651998 A JP20651998 A JP 20651998A JP 2000038528 A JP2000038528 A JP 2000038528A
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resin
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coating composition
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JP10206519A
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Hiroyuki Sakamoto
裕之 坂本
Takayuki Kokubu
孝幸 国分
Ichiro Kawakami
一郎 川上
Toshitaka Kawanami
俊孝 川浪
Hitoshi Hori
仁 堀
Takao Saito
孝夫 斉藤
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Nippon Paint Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paint Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 つきまわり性に優れるとともに、所望の析出
膜厚や平滑性を維持するための浴管理が容易なカチオン
電着塗料組成物を提供する。 【解決手段】 樹脂固形分100gあたりスルホニウム
基10〜300mmol及び炭素−炭素不飽和結合50
〜2000mmol含有する基体樹脂に、アミン化合物
を、上記基体樹脂固形分100gあたり1〜50mmo
lであって、かつ、上記基体樹脂に含有されるスルホニ
ウム基の含有量の5mol%以上配合してなるカチオン
電着塗料組成物であって、上記カチオン電着塗料組成物
は、それを電着して得られる塗膜中に、電着される上記
カチオン電着塗料組成物中の基体樹脂に含有されるスル
ホニウム基の50%未満が残存するものであるカチオン
電着塗料組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電着浴管理が容易
なカチオン電着塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】カチオン電着塗装は、複雑な形状を有す
る被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、
自動的かつ連続的に塗装することができるので、自動車
車体等の大型で複雑な形状を有し、高い防錆性が要求さ
れる被塗物の下塗り塗装方法として汎用されている。ま
た、他の塗装方法と比較して、塗料の使用効率が極めて
高いことから経済的であり、工業的な塗装方法として広
く普及している。
【0003】このようなカチオン電着塗装においては、
従来、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等を骨格としたポリ
アミン化樹脂を主成分とする電着塗料組成物の使用が一
般的であり、通常、ポリアミン化樹脂は有機酸で中和さ
れ正に荷電している。
【0004】カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料組
成物中に被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加する
ことにより行われる。この塗装の過程における被膜の析
出は電気化学的な反応によるものであり、被塗物表面に
析出した被膜は絶縁性を有するので、塗装過程におい
て、被膜の析出が進行して析出膜の膜厚が増加するのに
従い、膜厚の増加に比例して被膜の電気抵抗は大きくな
る。その結果、当該部位への塗料の析出は低下し、代わ
って未析出部位への被膜の析出が始まる。このようにし
て、順次未被着部分に塗料エマルション粒子が被着して
塗装を完成させる。本明細書中、被塗物の未被着部位に
被膜が順次形成されることをつきまわり性という。
【0005】しかしながら、このような中和アミノ基を
水和基とするカチオン電着塗料組成物を使用する場合、
アミノ基のイオン放出が可逆的であって、塗装浴の温度
条件により、析出性や膜性質が敏感に変化する。この様
子を図1及び図2に示した。図1から明らかなように、
析出膜厚は、浴温の変化につれて大きく変化する。ま
た、図2から明らかなように、膜の平滑性を維持するこ
とができる温度範囲は狭い。従って、良好なつきまわり
性を発揮し、所望の析出膜厚や平滑性を維持するために
は、浴温を、例えば、±2℃程度の幅で制御する必要が
あり、浴管理の負担が極めて大きいものであった。
【0006】ところで、WO98/03701号公報に
は、従来の中和アミノ基を水和基とする電着塗料組成物
とは異なるカチオン電着塗料組成物が開示され、このも
のは、分子内にスルホニウム基とエチニル基やニトリル
基等の三重結合を含有する基体樹脂からなる。しかしな
がら、上記公報には、このカチオン電着塗料組成物は、
つきまわり性に優れていることが記載されているもの
の、浴温度と析出膜厚や平滑性との関係については、な
んら開示するところはない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の現状
に鑑みて、つきまわり性に優れるとともに、所望の析出
膜厚や平滑性を維持するための浴管理が容易なカチオン
電着塗料組成物を提供することを目的とするものであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、樹脂固形分1
00gあたりスルホニウム基10〜300mmol及び
炭素−炭素不飽和結合50〜2000mmolを含有す
る基体樹脂に、アミン化合物を、上記基体樹脂固形分1
00gあたり1〜50mmolであって、かつ、上記基
体樹脂に含有されるスルホニウム基の含有量の5mol
%以上配合してなるカチオン電着塗料組成物であって、
上記カチオン電着塗料組成物は、それを電着して得られ
る塗膜中に、電着される上記カチオン電着塗料組成物中
の基体樹脂に含有されるスルホニウム基の50%未満が
残存するものであるカチオン電着塗料組成物である。
【0009】本発明の好ましい一態様においては、上記
炭素−炭素不飽和結合の少なくとも15%は、プロパル
ギル基の炭素−炭素不飽和三重結合である。以下に本発
明を詳述する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のカチオン電着塗料組成物
は、基体樹脂及びアミン化合物からなる。上記基体樹脂
は、スルホニウム基及び炭素−炭素不飽和結合を含有す
る。
【0011】上記スルホニウム基は、上記基体樹脂の水
和官能基である。スルホニウム基は、電着塗装過程で一
定以上の電圧又は電流が与えられると、以下に示すよう
に電極上で電解還元反応をうけてイオン性基が消失し、
スルフィドとなって不可逆的に不導体化することができ
る。上記カチオン電着塗料組成物が高度のつきまわり性
を発揮することができるのは、このためであると考えら
れる。
【0012】
【化1】
【0013】また、この電着塗装過程においては、電極
反応が引き起こされ、生じた水酸化物イオンをスルホニ
ウム基が保持することにより電解発生塩基が電着被膜中
に発生するものと考えられる。この電解発生塩基は、電
着被膜中に存在する熱による反応性の低いプロパルギル
基を熱による反応性の高いアレン結合に変換することが
できる。
【0014】スルホニウム基の含有量は、上記基体樹脂
固形分100gあたり10〜300mmolである。1
0mmol/100g未満であると、充分なつきまわり
性や硬化性を発揮することができず、また、水和性、浴
安定性が悪くなる。300mmol/100gを超える
と、被塗物表面への被膜の析出が悪くなる。好ましく
は、基体樹脂固形分100gあたり10〜250mmo
lであり、10〜150mmolがより好ましい。
【0015】上記炭素−炭素不飽和結合は、炭素−炭素
間の二重結合又は三重結合である。上記基体樹脂におい
て、上記炭素−炭素不飽和結合は、上記基体樹脂の分子
末端に存在してもよく、又は、上記基体樹脂の骨格を形
成する分子鎖中の一部に存在していてもよい。上記炭素
−炭素不飽和結合は、硬化官能基として機能するととも
に、理由は不明であるが、スルホニウム基と併存するこ
とにより、樹脂組成物のつきまわり性を一層向上させる
ことができる。
【0016】上記炭素−炭素不飽和結合の含有量は、上
記基体樹脂固形分100gあたり50〜2000mmo
lである。50mmol/100g未満であると、充分
なつきまわり性や硬化性を発揮することができない。2
000mmol/100gを超えると、カチオン電着塗
料として使用した場合の水和安定性に悪影響を及ぼし、
被塗物表面への被膜の析出が悪くなる。好ましくは、基
体樹脂固形分100gあたり80〜1000mmolで
あり、80〜500mmolがより好ましい。
【0017】上記基体樹脂において、上記炭素−炭素不
飽和結合は、数において少なくとも15%がプロパルギ
ル基の炭素−炭素三重結合であることが硬化性の観点か
ら好ましい。
【0018】なお、上記炭素−炭素不飽和結合の含有量
は、例えば、長鎖不飽和脂肪酸等の分子内に複数個の炭
素−炭素二重結合をもつ分子が導入された場合であって
も、導入された、分子内に複数個の炭素−炭素二重結合
をもつ分子自体の含有量をもって表すものとする。これ
は、複数個の炭素−炭素二重結合を持つ分子が導入され
ても、硬化反応に関与するのは、実質的にそのうちの一
つの炭素−炭素二重結合のみであると考えられるからで
ある。
【0019】上記基体樹脂としては、上述のスルホニウ
ム基及び上記炭素−炭素不飽和結合を含有するものであ
る限り特に限定されるものではなく、アクリル樹脂やエ
ポキシ樹脂を使用可能であるが、樹脂骨格中にスルホニ
ウム基や上記炭素−炭素不飽和結合を容易に導入するこ
とができるように、エポキシ基を1分子中に少なくとも
2個有するポリエポキシドが好ましい。上記ポリエポキ
シドとしては特に限定されず、例えば、エピビスエポキ
シ樹脂、これをジオール、ジカルボン酸、ジアミン等に
より鎖延長したもの;エポキシ化ポリブタジエン;ノボ
ラックフェノール型ポリエポキシ樹脂;ノボラッククレ
ゾール型ポリエポキシ樹脂;ポリグリシジルアクリレー
ト;脂肪族ポリオール又はポリエーテルポリオールのポ
リグリシジルエーテル;多塩基性カルボン酸のポリグリ
シジルエステル等を挙げることができる。これらのう
ち、硬化性を高めるための多官能基化が容易であるノボ
ラックフェノール型ポリエポキシ樹脂、ノボラッククレ
ゾール型ポリエポキシ樹脂、ポリグリシジルアクリレー
トが好ましい。
【0020】上記ポリエポキシドの数平均分子量は、5
00〜20000が好ましい。数平均分子量が500未
満であると、カチオン電着塗装の塗装効率が悪くなり、
20000を超えると被塗物表面で良好な被膜を形成す
ることができない。樹脂骨格に応じてより好ましい数平
均分子量を設定可能であり、例えば、ノボラックフェノ
ール型エポキシ樹脂、ノボラッククレゾール型エポキシ
樹脂の場合には、700〜5000であることがより好
ましい。
【0021】上記基体樹脂が上記ポリエポキシドを骨格
とするものである場合、上記ポリエポキシドのエポキシ
基を介してスルホニウム基及び上記炭素−炭素不飽和結
合が導入されている。上記基体樹脂は、一分子中にスル
ホニウム基及び上記炭素−炭素不飽和結合を共に含有し
ていることが好ましいが、必ずしもその必要はなく、例
えば、一分子中にスルホニウム基又は上記炭素−炭素不
飽和結合のいずれかを含有していてもよい。この後者の
場合にあっては、基体樹脂を構成する樹脂分子全体とし
て、これら2種の官能基の全てを含有している。すなわ
ち、上記基体樹脂は、一般には、スルホニウム基又は上
記炭素−炭素不飽和結合のうちのいずれか一つ又は二つ
以上を有する複数の樹脂分子からなるものであってよ
い。本明細書中、上記基体樹脂は、上述の意味において
スルホニウム基及び上記炭素−炭素不飽和結合を含有す
る。
【0022】本発明のカチオン電着塗料組成物の第二の
成分は、アミン化合物である。上記アミン化合物の添加
により、電着過程における電解還元によるスルホニウム
基のスルフィドへの変換率が増大する。上記アミン化合
物としては特に限定されず、例えば、1級〜3級の単官
能及び多官能の脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ア
ミン等のアミン化合物を挙げることができる。これらの
うち、水溶性又は水分散性のものが好ましく、例えば、
モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミ
ン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピ
ルアミン、トリブチルアミン等の炭素数2〜8のアルキ
ルアミン;モノエタノールアミン、ジメタノールアミ
ン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミ
ン、シクロヘキシルアミン、モルホリン、N−メチルモ
ルホリン、ピリジン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾ
リン、イミダゾール等を挙げることができる。これらは
単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。な
かでも、水分散安定性が優れているので、モノエタノー
ルアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールア
ミン等のヒドロキシアミンが好ましい。
【0023】上記アミン化合物は、直接、本発明のカチ
オン電着塗料組成物中に配合することができる。従来の
中和型アミン系のカチオン電着塗料組成物では、遊離の
アミンを添加すると、樹脂中の中和酸を奪うことにな
り、電着溶液の安定性が著しく悪化するが、本発明にお
いては、このような浴安定性の阻害が生じることはな
い。
【0024】上記アミン化合物の配合量は、上記基体樹
脂固形分100gあたり1〜50mmolである。配合
量が1mmol/100g未満であると化合物を添加す
ることによる効果が発揮できず、50mmol/100
gを超えると配合量に応じた効果が期待できず不経済で
ある。好ましくは、1〜30mmol/100gであ
る。上記アミン化合物の配合量は、また、上述の条件を
充たした上で、上記カチオン電着塗料組成物に含まれる
上記基体樹脂に含有されるスルホニウム基の含有量の5
mol%以上である必要がある。配合量が上記条件を充
たしても、上記基体樹脂に含有されるスルホニウム基の
含有量の5mol%以上でない場合は、スルホニウム基
のスルフィドへの変換率の向上に充分寄与することがな
い。好ましくは、7mol%以上である。
【0025】本発明のカチオン電着塗料組成物は、更
に、それを電着して得られる塗膜中に、電着される上記
カチオン電着塗料組成物中の上記基体樹脂に含有される
スルホニウム基の50%未満が残存するものである。こ
の条件は、上記アミン化合物の含有量を上述の範囲に設
定することによって達成することができる。残存スルホ
ニウム基が、電着される本発明のカチオン電着塗料組成
物中に含まれる上記基体樹脂中に含有されるスルホニウ
ム基の50%以上、換言すれば、電着される本発明のカ
チオン電着塗料組成物中に電着される前に含有されてい
るスルホニウム基のうち、スルフィドに変換されずにス
ルホニウム基のまま残存している割合が50%以上であ
ると、析出性や平滑性に対する浴温度の影響が大きく、
浴管理が難しくなる。好ましくは、40%未満である。
【0026】上記基体樹脂の製造方法を、エポキシ樹脂
を使用する場合を典型例として以下に説明する。エポキ
シ樹脂以外の樹脂を使用する場合にも、以下の方法を適
宜変更することにより、実施可能である。上記基体樹脂
は、例えば、一分子中に少なくとも2つのエポキシ基を
有するエポキシ樹脂に、エポキシ基と反応する官能基及
び炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を反応させて、
炭素−炭素不飽和結合を含有するエポキシ樹脂を得る工
程(1)、並びに、工程(1)で得られた炭素−炭素不
飽和結合を含有するエポキシ樹脂中の残存エポキシ基
に、スルホニウム基を導入する工程(2)からなる工程
によって好適に製造することができる。
【0027】上記一分子中に少なくとも2つのエポキシ
基を有するエポキシ樹脂としては、上述したポリエポキ
シ樹脂等を好適に使用することができる。
【0028】上記エポキシ基と反応する官能基及び炭素
−炭素不飽和結合を有する化合物としては、例えば、水
酸基やカルボキシル基等のエポキシ基と反応する官能基
と炭素−炭素不飽和結合とをともに含有する化合物であ
ってよく、具体的には、プロパルギルアルコールやプロ
パルギル酸等の水酸基又はカルボキシル基と炭素−炭素
三重結合とを有する化合物;2−ヒドロキシエチルアク
リレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒド
ロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタ
クリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキ
シブチルメタクリレート、アリルアルコール、メタクリ
ルアルコール等の水酸基と炭素−炭素不飽和二重結合と
を有する化合物;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリ
ル酸、クロトン酸、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸
等のカルボキシル基と炭素−炭素不飽和二重結合とを有
する化合物;マレイン酸エチルエステル、フマル酸エチ
ルエステル、イタコン酸エチルエステル、コハク酸モノ
(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸
モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル等のハ
ーフエステル類;オレイン酸、リシノール酸等の合成不
飽和脂肪酸;アマニ油、大豆油等の天然不飽和脂肪酸等
を挙げることができる。
【0029】工程(1)における反応条件は、通常、室
温又は80〜140℃にて数時間である。また、必要に
応じて触媒や溶媒等の反応を進行させるために必要な公
知の成分を使用することができる。反応の終了は、エポ
キシ当量の測定により確認することができ、得られた樹
脂の不揮発分測定や機器分析により、導入された官能基
を確認することができる。
【0030】なお、炭素−炭素不飽和結合を含有するエ
ポキシ樹脂を得る工程としては、上記工程(1)以外
に、炭素−炭素不飽和結合を分子内に有するモノマー、
例えば、グリシジルメタクリレートにプロパルギルアル
コールを付加したモノマー等を、その他のモノマーと共
重合することによっても行うことができる。上記その他
のモノマーとしては上記モノマーと共重合可能なもので
あれば特に限定されず、例えば、アクリル酸又はメタク
リル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−
ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、
フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒド
ロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル等のエステル;
プラクセルFM(商品名)シリーズ(メタクリル酸2−
ヒドロキシエチルとカプロラクトンとの付加物、ダイセ
ル工業社製);アクリルアミド、N−メチロールアクリ
ルアミド等のその誘導体;スチレン、α−メチルスチレ
ン、酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0031】工程(2)においては、上記工程(1)、
又は、該当する場合には、上述の炭素−炭素不飽和結合
を分子内に有するモノマーとその他のモノマーとを共重
合する方法で得られた炭素−炭素不飽和結合を含有する
エポキシ樹脂の残存エポキシ基に、スルホニウム基を導
入する。スルホニウム基の導入は、スルフィド/酸混合
物とエポキシ基を反応させてスルフィドの導入及びスル
ホニウム化を行う方法や、スルフィドを導入した後、更
に、酸又はアルキルハライド等により、導入したスルフ
ィドのスルホニウム化反応を行い、必要によりアニオン
交換を行う方法等により行うことができる。反応原料の
入手容易性の観点からは、スルフィド/酸混合物を使用
する方法が好ましい。
【0032】上記スルフィドとしては特に限定されず、
例えば、脂肪族スルフィド、脂肪族−芳香族混合スルフ
ィド、アラルキルスルフィド、環状スルフィド等を挙げ
ることができる。具体的には、例えば、ジエチルスルフ
ィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジ
ヘキシルスルフィド、ジフェニルスルフィド、エチルフ
ェニルスルフィド、テトラメチレンスルフィド、ペンタ
メチレンスルフィド、チオジエタノール、チオジプロパ
ノール、チオジブタノール、1−(2−ヒドロキシエチ
ルチオ)−2−プロパノール、1−(2−ヒドロキシエ
チルチオ)−2−ブタノール、1−(2−ヒドロキシエ
チルチオ)−3−ブトキシ−1−プロパノール等を挙げ
ることができる。
【0033】上記酸としてはスルホニウム基の対アニオ
ンとなりうるものであれば特に限定されず、例えば、ぎ
酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、ほう酸、酪酸、ジメチ
ロールプロピオン酸、塩酸、硫酸、りん酸、N−アセチ
ルグリシン、N−アセチル−β−アラニン等を挙げるこ
とができる。
【0034】上記スルフィド/酸混合物における上記ス
ルフィドと上記酸との混合比率は、通常、モル比率でス
ルフィド/酸=100/60〜100/100程度が好
ましい。
【0035】上記アルキルハライドとしては特に限定さ
れず、例えば、フッ化メチル、塩化メチル、臭化メチ
ル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨ
ウ化イソプロピル等を挙げることができる。
【0036】上記工程(2)の反応は、例えば、上記工
程(1)で得られた炭素−炭素不飽和結合を含有するエ
ポキシ樹脂と、例えば、上述のスルホニウム基含量にな
るように設定された所定量の上記スルフィド及び上記酸
との混合物とを、使用するスルフィドの5〜10倍モル
の水と混合し、通常、50〜90℃で数時間攪拌して行
うことができる。反応の終了点は、残存酸価が5以下と
なることを目安とすればよい。得られた樹脂中のスルホ
ニウム基導入の確認は、電位差滴定法により行うことが
できる。
【0037】スルフィドの導入後にスルホニウム化反応
を行う場合も、上記に準じて行うことができる。
【0038】上述のように、スルホニウム基の導入を、
炭素−炭素不飽和結合の導入の後に行うことにより、加
熱によるスルホニウム基の分解を防止することができ
る。
【0039】こうして得られた基体樹脂に、アミン化合
物を所定量配合することによって本発明のカチオン電着
塗料組成物を製造することができる。
【0040】本発明のカチオン電着塗料組成物には、上
述の基体樹脂自体が硬化性を有するので、硬化剤の使用
は必ずしも必要ない。しかし、硬化性の更なる向上のた
めに使用してもよい。このような硬化剤としては、例え
ば、プロパルギル基及び不飽和二重結合のうち少なくと
も1種を複数個有する化合物、例えば、ノボラックフェ
ノール等のポリエポキシドやペンタエリスリットテトラ
グリシジルエーテル等に、プロパルギルアルコール等の
プロパルギル基を有する化合物や(メタ)アクリル酸や
アリルアルコール等の不飽和二重結合を有する化合物を
付加反応させて得た化合物等を挙げることができる。
【0041】上記硬化剤は、残存するグリシジル基にス
ルホニウム基を導入し、自己乳化型エマルションとした
ものであってもよい。上記スルホニウム基を導入する方
法としては特に限定されず、例えば、上記基体樹脂の製
造方法で述べた方法を挙げることができる。また、全て
のグリシジル基に不飽和結合を導入したものをコアと
し、不飽和結合及びスルホニウム基を併せ持つものをシ
ェルとして乳化させたものであってもよい。
【0042】上記硬化剤の使用量は、本発明のカチオン
電着塗料組成物中、樹脂固形分として80重量%以下で
あることが好ましい。上記硬化剤を使用する場合、硬化
剤中の不飽和結合の量及びスルホニウム基の量は、上述
の本発明のカチオン電着塗料組成物における含有量の範
囲内であるように調節して使用されることが好ましい。
【0043】本発明のカチオン電着塗料組成物には、不
飽和結合間の硬化反応を進行させるために、硬化触媒を
使用することができる。このような硬化触媒としては特
に限定されず、例えば、ニッケル、コバルト、銅、マン
ガン、パラジウム、ロジウム等の遷移金属に対して、シ
クロペンタジエンやアセチルアセトン等の配位子や酢酸
等のカルボン酸等が結合したもの等を挙げることができ
る。これらのうち、銅のアセチルアセトン錯体、酢酸銅
が好ましい。上記硬化触媒の配合量は、カチオン電着塗
料組成物樹脂固形分100gあたり0.1〜20mmo
lであることが好ましい。
【0044】本発明のカチオン電着塗料組成物は、必要
に応じて、通常のカチオン電着塗料組成物に用いられる
その他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分と
しては特に限定されず、例えば、顔料、顔料分散樹脂、
界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の塗料用添加
剤等を挙げることができる。
【0045】上記顔料としては特に限定されず、例え
ば、二酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着
色顔料;塩基性けい酸鉛、りんモリブデン酸アルミニウ
ム等の防錆顔料;カオリン、クレー、タルク等の体質顔
料等の一般にカチオン電着塗料組成物に使用されるもの
等を挙げることができる。上記顔料の配合量は、カチオ
ン電着塗料組成物中、固形分として0〜50重量%であ
ることが好ましい。
【0046】上記顔料分散樹脂としては特に限定され
ず、一般に使用されている顔料分散樹脂を使用すること
ができる。また、樹脂中にスルホニウム基と炭素−炭素
不飽和結合とを含有する顔料分散樹脂を使用してもよ
い。このようなスルホニウム基と不飽和結合とを含有す
る顔料分散樹脂は、例えば、ビスフェノール型エポキシ
樹脂とハーフブロック化イソシアネートとを反応させて
得られる疎水性エポキシ樹脂に、スルフィド化合物を反
応させるか、又は、上記樹脂に、一塩基酸及び水酸基含
有二塩基酸の存在下でスルフィド化合物を反応させる方
法等により得ることができる。
【0047】本発明のカチオン電着塗料組成物は、上記
基体樹脂、アミン化合物に、必要に応じて、上述のその
他の各成分を混合し、水に溶解又は分散すること等によ
り得ることができる。カチオン電着塗装に用いる場合に
は、不揮発分が10〜30%の浴液となるように調製さ
れることが好ましい。また、カチオン電着塗料組成物中
の炭素−炭素不飽和結合及びスルホニウム基の含有量
が、上述の範囲を逸脱しないように調製されることが好
ましい。
【0048】本発明のカチオン電着塗料組成物を使用し
て電着塗装を行う場合、被塗物としては導電性のあるも
のであれば特に限定されず、例えば、鉄板、鋼板、アル
ミニウム板及びこれらを表面処理したもの、これらの成
型物等を挙げることができる。
【0049】電着塗装は、被塗物を陰極として陽極との
間に、通常、50〜500Vの電圧を印加して行う。印
加電圧が50V未満であると電着が不充分となり、50
0Vを超えると、消費電力が大きくなり、不経済であ
る。本発明の組成物を使用して上述の範囲内で電圧を印
加すると、電着過程における急激な膜厚の上昇を生じる
ことなく、被塗物全体に均一な被膜を形成することがで
きる。
【0050】上記電圧を印加する場合のカチオン電着塗
料組成物の浴液温度は、通常、10〜45℃の範囲で設
定可能であり、例えば、30℃等の温度に適宜設定する
ことができる。本発明のカチオン電着塗料組成物を使用
する場合においては、上記浴液温度は、設定温度の、例
えば、±10℃以内に制御すればよく、30℃を設定温
度とする場合は、浴液温度を20〜40℃の範囲に制御
すれば、所望の電着塗膜を得ることができる。
【0051】電着過程は、(i)カチオン電着塗料組成
物に被塗物を浸漬する過程、(ii)上記被塗物を陰極
して、陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過
程、(iii)析出させた上記被膜に、電圧を更に印加
することにより、上記被膜の単位体積あたりの電気抵抗
値を増加させる過程、から構成されることが好ましい。
また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なる
が、一般には、2〜4分とすることができる。
【0052】上述のようにして得られる電着被膜は、電
着過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜2
60℃、好ましくは160〜220℃で、10〜30分
間焼き付けることにより硬化させて、塗装を完了する。
【0053】本発明のカチオン電着塗料組成物を使用し
た場合、硬化後の電着塗膜の膜厚は10〜25μmが好
ましい。10μm未満であると、防錆性が不充分であ
り、25μmを超えると、塗料の浪費につながる。本発
明のカチオン電着塗料組成物においては、上述の電解還
元反応により、電着によって被塗物表面に析出した被膜
が不導体化し、結果として、つきまわり性が飛躍的に向
上することになる。従って、塗膜の膜厚が上述の範囲で
あっても、被塗物全体に均一な塗膜を形成することがで
きるので、充分な防錆性を発揮することができる。
【0054】また、このようにして形成された電着塗膜
中の残存スルホニウム基量は、塗料組成物中のスルホニ
ウム基量の50%未満に減少している。すなわち、本発
明のカチオン電着塗料組成物中のスルホニウム基の50
%以上がスルフィド基に変換されているものと考えられ
る。
【0055】このようにして得られる塗膜が形成された
被塗物は、目的に応じて必要な中塗り及び/又は上塗り
が更に施される。例えば、自動車用外板の場合には、一
般に、耐チッピング性を付与するための溶剤型、水性又
は粉体の中塗り塗料を塗布し焼き付けた後、更に、ベー
ス塗料を塗布し、これを硬化させずにクリア塗料を塗布
する、いわゆるウェットオンウェット方法で塗装され、
その後これらの塗膜を同時に焼き付ける2コート1ベー
ク塗装方法が適用される。その際、上記ベース塗料とし
ては水性塗料を使用し、上記クリア塗料としては、粉体
塗料を使用することが、環境問題に対する配慮として好
ましい。もちろんこの他に、1コート塗装方法が用いら
れるソリッド系にも適用が可能である。
【0056】本発明のカチオン電着塗料組成物が、析出
性や平滑性において広い温度範囲にわたって、事実上、
浴液温度に依存しないのは、以下の理由によるものであ
ると考えられる。すなわち、従来のカチオン電着塗料組
成物における塗膜の析出は、析出の初期過程では、電着
過程で電極から発生する水素ガスが、電着時のジュール
熱による析出膜の軟化の結果、容易に析出膜中のガス通
路から脱泡して更に析出過程が進行し、遂に、析出膜の
膜厚増加によってガス放出が阻害され、このため電極反
応が阻害される。この過程を通じて順次、つきまわり性
が発揮されていくものと考えられている。従って、この
析出過程の進行に重要なのは、析出膜が電着時のジュー
ル熱により軟化し、電極で発生する水素ガスが容易に析
出膜中のガス通路から脱泡する過程であるから、塗膜の
析出性や平滑性に対する浴液温度の影響は大きい。この
事実は、既に言及したとおり、図1及び2に示されてい
る。
【0057】一方、本発明のカチオン電着塗料組成物の
析出過程は、水和官能基であるスルホニウム基が電極反
応によってスルフィド基に変換されることによる不導体
化、これに伴う膜の電気抵抗の増加とその結果である析
出停止を通じて、順次つきまわり性が発揮されていくも
のと考えられる。従って、析出過程の進行に重要なの
は、スルホニウム基のスルフィド基への変換過程であ
る。この変換過程は、事実上、電極における電圧の印加
に支配され、通常の浴液温度範囲内では、浴液温度が変
化しても、この変換過程の変化は小さい。かくして、本
発明のカチオン電着塗料組成物は、塗膜の析出過程の温
度依存性が、従来のカチオン電着塗料組成物と異なり、
広い温度範囲において極めて小さくなっている。
【0058】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるもの
ではない。
【0059】製造例1 スルホニウム基、プロパルギル
基及びメタクリロイル基を含有するカチオン電着塗料用
樹脂の製造 エポキシ当量200.4のクレゾールノボラック型エポ
キシ樹脂(エポトートYDCN−701(商品名)、東
都化成社製)100.0gにプロパルギルアルコール1
3.5g、ジメチルベンジルアミン0.3gを攪拌機、
温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えたセパラブル
フラスコに加え、105℃に昇温し、3時間反応させ
た。この後、内容物温度を70℃まで冷却し、メタクリ
ル酸15.5gとハイドロキノン0.1gの混合物を3
0分かけて滴下し、全量滴下時点から90℃まで昇温
し、この温度で2時間反応させ、エポキシ当量1655
プロパルギル基及びメタクリロイル基を含有する樹脂を
得た。このものに、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)
−2,3−プロパンジオール10.6g、氷酢酸4.7
g、脱イオン水7.0gを入れ、75℃で保温しつつ6
時間反応させ、残存酸価が5以下であることを確認した
後、脱イオン水47.8gを加え、目的の樹脂溶液を得
た。このものの固形物濃度は、70.0重量%、スルホ
ニウム価は27.4mmol/100gワニスであっ
た。
【0060】製造例2 スルホニウム基、プロパルギル
基及び長鎖不飽和脂肪酸残基を含有するカチオン電着塗
料用樹脂の製造 エポキシ当量200.4のクレゾールノボラック型エポ
キシ樹脂(エポトートYDCN−701(商品名)、東
都化成社製)100.0gにプロパルギルアルコール1
3.5g、ジメチルベンジルアミン0.2gを攪拌機、
温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えたセパラブル
フラスコに加え、105℃に昇温し、1時間反応させ、
エポキシ当量が445のプロパルギル基を含有する樹脂
を得た。このものに、リノール酸50.6g、追加のジ
メチルベンジルアミン0.1gを加え、更に同温度にて
3時間反応を継続し、エポキシ当量が2100のプロパ
ルギル基と長鎖不飽和脂肪酸残基とを含有する樹脂を得
た。このものに、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−
2,3−プロパンジオール10.6g、氷酢酸4.7
g、脱イオン水7.0gを入れ、75℃で保温しつつ6
時間反応させ、残存酸価が5以下であることを確認した
後、脱イオン水62.9gを加え、目的の樹脂溶液を得
た。このものの固形物濃度は、69.3重量%、スルホ
ニウム価は23.5mmol/100gワニスであっ
た。
【0061】比較製造例1 攪拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えたセ
パラブルフラスコに、ビスフェノールAとエピクロルヒ
ドリンをアルカリ触媒下で反応させて得たエポキシ当量
950のビスフェノール型エポキシ樹脂(エピコート1
004(商品名)、油化シェルエポキシ社製)190
0.0gを入れ、エチレングリコールモノブチルエーテ
ル993gに溶解した後、反応系を90℃に保温しなが
らジエタノールアミン210gを滴下した。滴下終了
後、110℃に昇温し、1時間30分間反応させて樹脂
固形分68%の樹脂溶液を得た。次いで、ジフェニルメ
タンジイソシアネートをエチレングリコールモノ2−エ
チルヘキシルエーテルでブロックした硬化剤を、得られ
た樹脂溶液との固形分重量比が(樹脂溶液)/(硬化
剤)=75/25となるように混合し、これに3重量%
のジブチル錫オキサイドを配合した。この樹脂組成物1
383g(固形分75%)を、予め用意した脱イオン水
672gと氷酢酸21gの混合水溶液に添加し、高速回
転攪拌機で1時間攪拌した後、更に、脱イオン水138
1.5gを加え、固形分濃度が30重量%となるように
水溶液を調製して比較検討用エマルションとした。
【0062】実施例1 基体樹脂として、製造例1で得られたスルホニウム基、
プロパルギル基及びメタクリロイル基を含有するカチオ
ン電着塗料用樹脂142.9gにニッケルアセチルアセ
トナート1.0g、メチルアミノエタノール0.6g、
脱イオン水155.6gを加え、高速回転ミキサーで1
時間攪拌後、更に、脱イオン水373.3gを加え、固
形分濃度が15重量%となるように水溶液を調製して電
着塗料とした。
【0063】実施例2 基体樹脂として、製造例2で得られたスルホニウム基、
プロパルギル基及び長鎖不飽和脂肪酸残基を含有するカ
チオン電着塗料用樹脂144.3gにニッケルアセチル
アセトナート1.0g、メチルアミノエタノール0.6
g、脱イオン水154.1gを加え、高速回転ミキサー
で1時間攪拌後、更に、脱イオン水373.3gを加
え、固形分濃度が15重量%となるように水溶液を調製
して電着塗料とした。
【0064】比較例1 基体樹脂として、製造例1で得られたスルホニウム基、
プロパルギル基及びメタクリロイル基を含有するカチオ
ン電着塗料用樹脂142.9gにニッケルアセチルアセ
トナート1.0g、脱イオン水156.2gを加え、高
速回転ミキサーで1時間攪拌後、更に、脱イオン水37
3.3gを加え、固形分濃度が15重量%となるように
水溶液を調製して電着塗料とした。
【0065】比較例2 基体樹脂として、製造例2で得られたスルホニウム基、
プロパルギル基及び長鎖不飽和脂肪酸残基を含有するカ
チオン電着塗料用樹脂144.3gにニッケルアセチル
アセトナート1.0g、脱イオン水154.7gを加
え、高速回転ミキサーで1時間攪拌後、更に、脱イオン
水373.3gを加え、固形分濃度が15重量%となる
ように水溶液を調製して電着塗料とした。
【0066】比較例3 比較製造例1で得られた比較検討用エマルション267
2gに攪拌条件下、脱イオン水2672gを加え固形分
濃度が15重量%となるように水溶液を調製した。更
に、このものに、攪拌条件下、ジメチルアミノエタノー
ルの20%水溶液26.7gを添加し、電着塗料を調製
しようとしたが、忽ち凝集、分離してしまった。
【0067】比較例4 最終段階でジメチルアミノエタノールの水溶液を添加し
ないこと以外は、比較例3と同様にして、電着塗料を調
製した。
【0068】評価 (1)乾燥膜厚の計測 実施例及び比較例で調製された各電着塗料を使用して、
浴温度15℃、25℃、35℃の三水準に設定し、それ
ぞれ冷間圧延鋼板(JIS G 3141 SPCC−
SD)を陰極、ステンレス容器を陽極として250Vに
て3分間電着塗装を行い、電着塗膜を形成した。被塗物
を電着浴から引き上げ、水洗し、160℃×20分間焼
き付け、乾燥塗膜を得た。このようにして得た塗膜を、
電磁膜厚計を用いて乾燥膜厚の計測を行った。この結果
を表1に示した。
【0069】(2)電着塗膜中のスルホニウム基残存率
の測定 実施例及び比較例で調製された各電着塗料について、塗
料中のスルホニウム官能基濃度を電位差滴定器で、0.
1NのHCl水溶液を用いて計測することにより、樹脂
固形分100gあたりのスルホニウム基含量aを求め
た。次いで、各浴温度水準で電着塗装された塗膜を焼き
付け乾燥させることなくテトラヒドロフランで溶出さ
せ、溶液中のスルホニウム官能基濃度を同様の方法で計
測することにより、各電着塗料を使用した電着塗膜の樹
脂固形分100gあたりのスルホニウム基含量bを求め
た。電着塗膜中のスルホニウム基残存率を、 (b/a)×100(%) として算出した。結果を表1に示した。
【0070】(3)乾燥塗膜の表面粗度の計測 実施例及び比較例で調製された各電着塗料を使用して、
浴温度15℃、25℃、35℃の三水準に設定し、それ
ぞれ冷間圧延鋼板(JIS G 3141 SPCC−
SD)を陰極、ステンレス容器を陽極として250Vに
て3分間電着塗装を行い、電着塗膜を形成した。被塗物
を電着浴から引き上げ、水洗し、160℃×20分間焼
き付け、乾燥塗膜を得た。このようにして得た塗膜を、
表面粗度計ハンディサーフE−30A型(東京精密社
製)を用いて、表面粗度Ra(μm)の計測を行った。
この結果を表1に示した。
【0071】
【表1】
【0072】表の結果から、本発明のカチオン電着塗料
組成物は、15〜35℃における塗膜の特性変化が比較
例に比べて大幅に小さく、これらの温度範囲で、事実上
同じ品質の塗膜を形成することが可能であることが判明
した。
【0073】
【発明の効果】本発明のカチオン電着塗料組成物は、上
述の構成よりなるので、電着塗装における浴液温度の許
容温度範囲が広い。従って、通電で発生するジュール熱
による浴温上昇を制御する冷却装置を小型化することが
でき、また、浴液管理の負担が大幅に軽減される。更
に、高いつきまわり性を実現するので、塗料消費量が節
約でき、平滑性に優れた良好な塗膜を形成できる塗装条
件を広い温度範囲にわたって実現することができ、工業
上極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】電圧250V、SPC処理板使用の場合の従来
のカチオン電着塗料組成物の析出膜厚の温度変化を示す
グラフ。
【図2】電圧250V、SPC処理板使用の場合の従来
のカチオン電着塗料組成物の析出膜表面粗度Ra(μ
m)の温度変化を示すグラフ。
フロントページの続き (72)発明者 川上 一郎 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 (72)発明者 川浪 俊孝 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 (72)発明者 堀 仁 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 (72)発明者 斉藤 孝夫 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 Fターム(参考) 4J038 DB161 DB331 DB351 DB461 GA01 GA13 JB03 JB04 JB05 JB06 JB07 JB29 JB30 JB32 NA01 NA23 NA27 PA04 PC02

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂固形分100gあたりスルホニウム
    基10〜300mmol及び炭素−炭素不飽和結合50
    〜2000mmolを含有する基体樹脂に、アミン化合
    物を、前記基体樹脂固形分100gあたり1〜50mm
    olであって、かつ、前記基体樹脂に含有されるスルホ
    ニウム基の含有量の5mol%以上配合してなるカチオ
    ン電着塗料組成物であって、前記カチオン電着塗料組成
    物は、それを電着して得られる塗膜中に、電着される前
    記カチオン電着塗料組成物中の前記基体樹脂に含有され
    るスルホニウム基の50%未満が残存するものであるこ
    とを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
  2. 【請求項2】 炭素−炭素不飽和結合の少なくとも15
    %は、プロパルギル基の炭素−炭素三重結合である請求
    項1記載のカチオン電着塗料組成物。
  3. 【請求項3】 基体樹脂は、エポキシ樹脂を骨格とする
    樹脂である請求項1又は2記載のカチオン電着塗料組成
    物。
  4. 【請求項4】 エポキシ樹脂は、ノボラッククレゾール
    型エポキシ樹脂及びノボラックフェノール型エポキシ樹
    脂からなる群から選択された少なくとも1種である請求
    項3記載のカチオン電着塗料組成物。
  5. 【請求項5】 樹脂固形分100gあたり、スルホニウ
    ム基の含有量は、10〜250mmol、炭素−炭素不
    飽和結合の含有量は、80〜500mmolであり、ア
    ミン化合物の配合量は、1〜30mmolであって、か
    つ、基体樹脂に含有されるスルホニウム基の含有量の7
    mol%以上であり、電着して得られる塗膜中の残存ス
    ルホニウム基は、電着されるカチオン電着塗料組成物中
    の基体樹脂に含有されるスルホニウム基の40%未満で
    ある請求項1、2、3又は4記載のカチオン電着塗料組
    成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002265882A (ja) * 2001-03-15 2002-09-18 Nippon Paint Co Ltd カチオン電着塗料組成物、塗膜形成方法及び塗膜を有する被塗装物
JP2006167681A (ja) * 2004-12-20 2006-06-29 Nippon Paint Co Ltd 複層塗膜形成方法
CN114874413A (zh) * 2022-02-25 2022-08-09 上海金力泰化工股份有限公司 一种配套薄膜前处理的阴极电泳涂料用分散树脂及其制备方法及应用

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