JP2000016930A - 口腔内速崩錠及びその製造方法 - Google Patents

口腔内速崩錠及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】特別な装置を用いずに、口腔内で素早く崩壊も
しくは溶解し、かつPTP包装から押し出しが可能な口
腔内速崩錠を調製する。 【解決手段】水に対する溶解性の高い糖類と膨潤性賦形
剤とを湿式造粒して調製した顆粒、および結晶セルロー
スを打錠して、口腔内速崩錠を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術】本発明は、口腔内で素早く崩壊も
しくは溶解する錠剤、及びその製造方法に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
【従来の技術】近年、嚥下困難になりやすい高齢者や小
児にとっても服用しやすい経口投与剤の開発が行われて
いる。中でも口腔内ですばやく崩壊もしくは溶解する口
腔内速崩錠は、服用が容易であり、シロップなどの液剤
に比べ1回の服用も正確であることから、その構成や製
造方法について種々の報告がされている。
【0004】しかし、凍結乾燥法で製造される速崩錠
(例えば特公昭62−50445号公報記載の発明)
は、錠剤の硬度がPTP包装から取り出す際に押し出す
ことができないほど低いため、容器の裏面のシールをは
がして速崩錠を取り出す構造の包装材が必要となる。さ
らに、製剤化の工程中や携帯中及び服用の際に錠剤のく
ずれや割れが生じやすく、取り扱い性に課題を残してい
る。
【0005】また、圧縮成形法による速崩錠の製法(特
開平5−271054号公報に記載の発明)は、顆粒を
湿らせて打錠し成形するものであるが、通常の打錠機を
用いると杵へ顆粒等が付着するなどの打錠障害が生じる
と考えられ、この障害を克服する工夫が必要である。
【0006】また、一般に錠剤を打錠する際にはロータ
リー式打錠機が汎用されているが、製造工程及び流通過
程において錠剤の形状を維持するために充分な錠剤硬度
を得るためには、大きな打錠圧力が必要となり、その結
果、錠剤の速崩性をも同時に維持することは困難であ
る。一方で、ロータリー式打錠機を使用することなく、
口腔内速崩錠を製造する場合は、設備投資や特別な技術
開発が必要となる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、ロータリー式
打錠機を用いつつも、口腔内での崩壊性ならびに取り扱
い性に優れる速崩錠、ならびにこれを製造する方法を提
供するものである。
【0008】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭
意検討した結果、特定の糖と膨潤性賦形剤とを湿式造粒
した顆粒を調製し、この顆粒にさらに結晶性セルロース
を加えて打錠することにより、所望の口腔内速崩錠を製
造できることを見出した。
【0009】すなわち本発明は、水に対する溶解性の高
い糖類と膨潤性賦形剤とを湿式造粒して調製した顆粒
と、結晶セルロースとを打錠して得られる口腔内速崩錠
と、その製造方法である。
【0010】本発明の速崩錠は、以下の工程により調製
することができる。
【0011】まず、糖と膨潤性賦形剤を混合し、必要に
応じてこれに結合剤を加えて、湿式造粒法を用いて圧縮
性が高く溶解性の高い顆粒を製造する。この顆粒に対し
て、さらに結晶セルロースを加えて低打錠圧で打錠す
る。
【0012】この方法により、口腔内で5秒から数十秒
程ですみやかに崩壊する、優れた服用性を有する口腔内
速崩錠を調製することができる。また、この様にして得
た本発明の速崩錠は、PTP包装から押し出すことがで
きる硬度を有している。すなわち本発明の速崩錠は、錠
剤の包装に多用されるPTP包装から服用前に指で押し
出す際に、崩れ若しくは割れることなく押し出すことが
できる硬度を有するものである。
【0013】本発明で使用される糖類は、水に対する溶
解性に優れた糖類を使用する。例えば蔗糖、ソルビトー
ル、エリスリトール、キシリトールが使用でき、中でも
清涼感があり溶解性の高い点でエリスリトール、キシリ
トールが特に好ましい。これら糖類は単独でまたは二種
以上を併用して用いても良い。
【0014】顆粒中の糖類の量は、口腔内での溶解性を
考慮して多量に配合することが好ましく、顆粒全体に対
して40%重量以上、好ましくは60〜95重量%であ
る。また、本発明の顆粒中に含まれる膨潤性賦形剤は、
水分の存在下で膨潤する性質の賦形剤であれば特に限定
されるものではない。例えば、結晶セルロース、カルボ
キシメチルセルロースカルシウム(CMC−Ca)、低
置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、
クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム等を例
示できる。これら膨潤性賦形剤は単独でまたは二種以上
を併用して用いても良く、特に速崩錠の硬度と崩壊の点
で結晶セルロースとクロスポビドンの併用が最も好まし
い。
【0015】この顆粒中への膨潤性賦形剤の配合は、錠
剤の圧縮成型性の向上に加え、打錠障害の回避の点で重
要である。顆粒中の膨潤性賦形剤の配合量は膨潤性賦形
剤の種類により異なるが、顆粒全体に対して40%以
下、好ましくは5〜20重量%さらに好ましくは10〜
15%である。
【0016】本発明で行うことができる湿式造粒法に
は、高速撹拌造粒、練合造粒、流動層造粒、転動流動層
造粒等があるが、顆粒の圧縮性顆粒及び錠剤中への水の
浸透性を考慮すると流動型の造粒機が好ましい。また、
噴霧乾燥機等の造粒機を用いることもできる。具体的に
は、それぞれの方法に応じて市販されている各種造粒装
置を、その機器の操作方法に従って使用すればよい。
【0017】尚、本発明では、ヒドロキシプロピルセル
ロース(HPC)等の結合剤を加えて造粒することも可
能である。本発明において結合剤を加える方法として
は、結合剤を造粒前に粉体として加える、または造粒溶
媒に溶解させる、あるいはその造粒前の粉体と造粒溶媒
の両方に加える等の何れの方法でも行うことができる。
ただし、結合剤の効果は錠剤の速崩性と相反するもので
あるから、造粒時に使用する結合剤は少量とすることが
好ましく、特に造粒溶媒に結合剤を溶解して使用する場
合には、造粒溶媒由来の結合剤の重量を、顆粒全体の4
重量%以下、特に2重量%以下とすることが好ましい。
【0018】この様にして得られる顆粒とともに打錠す
る結晶セルロースは、錠剤の崩壊性や強度、製剤時の打
錠障害との関係においてきわめて重要である。
【0019】例えば、後述の比較例7に見られるよう
に、顆粒外に崩壊剤としてL−HPCを加えた場合、結
晶セルロース(実施例4)と比較して硬度が低くなる傾
向がある(図2)。また、クロスポビドンを顆粒外に配
合した場合(比較例5及び6)には、押し上げレール値
が高くなり、打錠障害発生の傾向が認められる(図
1)。また、顆粒外に結晶セルロースを配合しないもの
(比較例4)では、押し上げレール値が高く、打錠障害
が起こる傾向がある(図1)。
【0020】特に、打錠障害を起こしやすいエリスリト
ールやキシリトール等の糖類を用いて打錠する際には、
硬度の確保及び打錠障害の回避という点で、顆粒外への
結晶セルロースの使用が有利であるということができ
る。
【0021】その使用量は、口腔内でのざらつきを増さ
ない程度に押さえる必要があるが、好ましくは錠剤重量
に対して30重量%以下、さらに好ましくは15%重量
以下とすればよい。
【0022】本発明においては、上記顆粒と結晶性セル
ロースとの混合物を打錠する際に滑沢剤を加えることも
できる。本発明で使用できる滑沢剤としては、ステアリ
ン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウム等を例示す
ることができる。滑沢剤を用いる方法としては、打錠す
る混合粉末に加える方法、あるいは打錠時に杵または臼
に直接滑沢剤を付着させる方法の何れでもよい。
【0023】ただし、滑沢剤は一般に疎水性で、錠剤の
崩壊性を低下させるものでもあることから、その使用量
は錠剤全体に対して0.5重量%以下とすることが好ま
しい。 本発明のPTP包装から押し出し可能な口腔内
速崩錠に必要とされる硬度(必要硬度)は、調製する錠
剤の径によって異なるが、例えば、錠剤径が6mmまた
は8mmのときの必要硬度は1kg、錠剤径が10mm
のときの必要硬度が2kg、錠剤径が15mmまたは2
0mmのときの必要硬度は3kgとすればよい。 ま
た、上記の必要硬度を得るための打錠圧は、錠剤の重量
とその形状によって適宜調整する必要がある。実施例1
〜実施例3に示した錠剤径8mm隅角平面の口腔内速崩
錠を調製するときの、錠剤重量と一般的な打錠機である
ロータリー型打錠機を用いた場合の打錠圧との関係を表
1に示す。硬度測定は、シュロイニゲル硬度計を用いて
10回行い、結果をその平均で示した。
【0024】
【表1】
【0025】上記に例示する以外の径、重量、および形
状の口腔内速崩錠を調製しようとする場合は、上記例示
に基づき、錠剤の径、重量、および形状の変更に応じて
打錠圧を調整すればよい。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の口腔内速崩錠は上述のよ
うにして製造することができるが、打錠時において、増
量剤としての賦形剤(直打用賦形剤も含む)、矯味剤、
崩壊助剤等として知られる軽質無水ケイ酸等を、適宜使
用することもできる。
【0027】また、本発明において、薬物は顆粒中ある
いは顆粒外に任意に配合することができる。その際、不
快な味を適当な方法でマスキング処理した薬剤や、配合
禁忌を回避するため予め造粒された薬剤、薬物の放出速
度を制御するために、疎水性皮膜、胃溶性皮膜または腸
溶性皮膜等を施したマイクロカプセル等も、本発明に使
用することができる。
【0028】本発明に使用可能な薬物としては、その物
性的な理由による制約はなく、消炎剤、血管拡張剤、中
枢神経薬、向精神薬、抗躁鬱剤、抗ヒスタミン剤、緩下
剤、ビタミン剤、整腸剤、胃腸薬、高血圧治療剤、低血
圧治療剤、抗血小板凝集剤、解熱剤、鎮咳剤、喘息防止
剤、鎮うん剤、鎮痙剤、利尿剤、抗ガン剤、ペプチド性
医薬品、駆虫剤、抗生物質、滋養強壮剤など、経口投与
可能な薬物であれば何れも使用可能である。
【0029】
【発明の効果】本発明の口腔内速崩錠は、一般的な錠剤
の製造機器をそのまま使用して簡便に製造することがで
き、崩壊性と服用感に優れると共に、PTP包装材から
押し出して取り出すことができる等の操作性にも優れる
ものである。
【0030】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明を詳しく説明す
るがこれらは本発明を限定するものではない。
【0031】実施例1 エリスリトール(微粉)543.6g、結晶セルロース
72g、クロスポビドン36g、HPC36g、軽質無
水ケイ酸7.2gを混合し、36メッシュ(M)で篩過
した(表2の実施例1の混合粉体)。この混合粉体を流
動層造粒機(FLO−1、フロイント製)を使用し、H
PC1%、軽質無水ケイ酸2.5%を含む水懸濁液(表
2の実施例1の結合液)を用い造粒した。
【0032】造粒物を22Mで篩過後、造粒物450g
を結晶セルロース50g、ステアリン酸カルシウム1.
0gからなる混合物(表2の実施例1の顆粒外混合物)
と混合後、ロータリー打錠機(コレクト12 菊水製作
所製)を用いて、ターンテーブル回転数を30rpmと
し、8mmφ隅角平面の杵で打錠した(表2の実施例
1)。 実施例2 表2の実施例2に示す原料成分を用い、転動流動造粒機
(ニューマルメライザーNQ−160、フジパウダル
製)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、8m
mφ隅角平面の錠剤を得た。
【0033】実施例3 表2の実施例3に示す原料成分を用い、結合液中の軽質
無水ケイ酸を除き、更に転動流動層造粒機を用いた以外
は実施例1と同様の操作を行い、8mmφ隅角平面の錠
剤を得た。
【0034】実施例4 表2の実施例4に示す原料成分を用い、造粒機として流
動層造粒機(FLO−1、フロイント社製)を用い、実
施例1と同様の操作を行い(打錠機:コレクト12、菊
水製作所製)、8mmφ隅角平面の錠剤を得た。
【0035】実施例5 表2の実施例4に示す原料成分のエリスリトールをキシ
リトールに変え、実施例4と同様の操作を行い、8mm
φ隅角平面の錠剤を得た。
【0036】実施例6 表2の実施例4に示す原料成分のエリスリトールをソル
ビトールに変え、実施例4と同様の操作を行い、8mm
φ隅角平面の錠剤を得た。
【0037】実施例7 表2の実施例7に示す原料成分を用い、造粒機として流
動層造粒機(FLO−1、フロイント社製)を用い、実
施例4と同様の操作を行い(打錠機:コレクト12、菊
水製作所製)、8mmφ隅角平面の錠剤を得た。
【0038】
【表2】
【0039】比較例1 直打用乳糖560g、L−HPC140g、ステアリン
酸カルシウム1.4gを混合後、ロータリー打錠機(コ
レクト12 菊水製作所製)を用いて、ターンテーブル
回転数を30rpmとし、8mmφ隅角平面の杵で打錠
した。
【0040】比較例2 エリスリトール(粉砕品)350g、直打用乳糖210
g、結晶セルロース140g及びステアリン酸カルシウ
ム1.4gを混合後、ロータリー打錠機(コレクト1
2、菊水製作所製)を用いて、比較例1と同様にして8
mmφ隅角平面の杵で打錠した。
【0041】比較例3 結晶セルロース679g、軽質無水ケイ酸21g、ステ
アリン酸カルシウム1.4gを混合後、ロータリー打錠
機(コレクト12、菊水製作所製)を用いて、比較例1
と同様にして8mmφ隅角平面の杵で打錠した。
【0042】比較例4 表2の実施例4に示す顆粒外の結晶セルロースを抜き、
その等量を顆粒内のエリスリトールとして増量した他は
実施例4と同様な操作を行い、8mmφ隅角平面の錠剤
を得た(表3の比較例4)。
【0043】比較例5 表2の実施例4に示す顆粒外の結晶セルロースをクロス
ポビドンに変えた以外は実施例4と同様な操作を行い、
8mmφ隅角平面の錠剤を得た(表3の比較例5)。
【0044】比較例6 表2の実施例4に示す顆粒外の結晶セルロースをクロス
ポビドンに変え、さらに減量した以外は実施例4と同様
な操作を行い、8mmφ隅角平面の錠剤を得た(表3の
比較例6)。
【0045】比較例7 表2の実施例4に示す顆粒外の結晶セルロースをL−H
PCに変えた以外は実施例4と同様な操作を行い、8m
mφ隅角平面の錠剤を得た(表3の比較例7)。
【0046】
【表3】
【0047】試験例 実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた錠剤につい
て、硬度及び口腔内での崩壊時間を測定した。硬度測定
は、シュロイニゲル硬度計を用いて10回行い、結果を
その平均で示した。また、口腔内での崩壊時間の測定
は、健康な成人男子が口腔内にいれ完全に崩壊するまで
の時間を測定して行い、結果を2回行った平均で示し
た。この結果を表4に示す。
【0048】
【表4】
【0049】上記のように、実施例1〜3の本発明の口
腔内速崩錠は、適度な硬度と崩壊性を示した。
【0050】一方、比較例1は水に対して溶解性の高い
糖であるエリスリトールを、水に対する溶解性が低い乳
糖に置換したものであるが、この錠剤は30秒程度で崩
壊するものの、低打錠圧で打錠しても10秒程度で崩壊
するものは得られなかった。比較例2は湿式造粒するこ
となく直打法で調製したものであるが、錠剤硬度が低
く、逆に強く打錠して硬度を高めると速崩性が失われ
た。比較例3は膨潤性の繊維を多量に配合したものであ
るが、口腔内のざらつき感の発生が認められた。
【0051】性の低下が認められた。
【0052】また、実施例4及び比較例4〜7で得られ
た錠剤について硬度4kgに換算した口腔内崩壊時間を
表5に記す。
【0053】
【表5】
【0054】L−HPCを顆粒外に配合したもの(比較
例7)が、崩壊時間が遅延しているのに対し、他の例で
は崩壊時間に大きな差はなかった。
【0055】以上の結果より、崩壊時間については、顆
粒の内外に膨潤性賦形剤を配合しても影響を及ぼさない
こともあるが、圧縮成型性(錠剤硬度)の向上及び打錠
障害回避には、顆粒内に膨潤性賦形剤、さらに顆粒の外
側に結晶セルロースを配合する必要がある。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例4に記載の本発明と、比較例4〜7に記
載の錠剤との押し上げレール値の実測値を示す。図2
は、実施例4に記載の本発明と、比較例4〜7に記載の
錠剤との錠剤硬度の実測値を示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水に対する溶解性の高い糖類と膨潤性賦形
    剤とを湿式造粒して調製した顆粒と、結晶セルロースと
    を打錠して得られる口腔内速崩錠。
  2. 【請求項2】水に対する溶解性の高い糖類が、蔗糖、ソ
    ルビトール、キシリトール、エリスリトールよりなる群
    から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の口腔内
    速崩錠。
  3. 【請求項3】水に対する溶解性の高い糖類と膨潤性賦形
    剤とを湿式造粒して調製した顆粒と、結晶セルロースと
    を打錠することを特徴とする、口腔内速崩錠の製造方
    法。
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