JP2000008250A - 高速織機用おさ - Google Patents

高速織機用おさ

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JP2000008250A
JP2000008250A JP11125635A JP12563599A JP2000008250A JP 2000008250 A JP2000008250 A JP 2000008250A JP 11125635 A JP11125635 A JP 11125635A JP 12563599 A JP12563599 A JP 12563599A JP 2000008250 A JP2000008250 A JP 2000008250A
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Yukio Miya
宮  行男
Shigeru Kizaki
茂 木崎
Osamu Sugiyama
杉山  修
Akiteru Hatayama
明照 畑山
Yoshitsugu Shibuya
義継 渋谷
Mitsugi Enomoto
貢 榎本
Koichi Naoi
直井  孝一
Yuji Fukazawa
深沢  裕二
Takanori Minamitani
孝典 南谷
Shotaro Shimizu
章太郎 清水
Hiroshi Tagawa
宏 田川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高速織機用おさにおいて、天然繊維から合成
繊維、新素材繊維に至る多種類の繊維に適合するおさ羽
を提供すると共に、おさ羽の耐久性及び耐摩耗性を飛躍
的に改良させること。 【解決手段】 ステンレス鋼等の金属製薄板を基材(2
4)とする多数枚のおさ羽(20)と左右側端の親羽
(14、14)と上下一対の縁金(12、12)とで構
成される高速織機用おさであって、親羽(14、14)
にそれぞれ隣接すると共に、順次、おさの中央に向かっ
て配置されたおさ羽のうち、最大摩耗部(22A,22
B)を含む少なくとも一部が中間層(26)を介してダ
イヤモンドライクカーボン膜(28)で被覆されてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高速織機用おさに関
し、さらに詳しくは、おさを構成するおさ羽の耐摩耗性
を向上させるために硬質膜を被覆したおさ羽を有する高
速織機用おさに関する。
【0002】
【従来の技術】織機の部品であるおさとは、織機の縦糸
を揃え、横糸を押しつけて織目を整えるものであり、金
属の薄板で作られた多数枚のおさ羽を微小な間隔で平行
に重ね、左右両側端の親羽と上下の縁金とからなる枠体
で固定したものである。高速織機においてはステンレス
鋼製のおさ羽が一般に用いられているが、織機の運転の
高速化、新素材繊維の出現などのため消耗が激しく、お
さ羽の耐摩耗性が大きな問題となっている。
【0003】すなわち、おさ羽の摩耗は織布の毛羽立
ち、糸切れの原因となり、おさの交換には多大な労力と
費用を要することから、おさ羽の耐久性が織機の作業能
率とコストを決定する最大の要因となっている。織布に
おいては、縦糸の配列幅よりも織布の幅が縮小する「織
り縮み」という現象があるので、おさの両側端部の近傍
に配置されているおさ羽には特に強い摩擦力が作用し、
この部分の耐久性がおさ全体の寿命を決定する。
【0004】そこで、おさ羽の耐久性を向上するため
に、特におさの両側端部近傍のおさ羽の表面に、硬質ク
ロムメッキ膜、炭化タングステン、炭化チタン、窒化チ
タンなどのセラミック膜(特開昭60−52658
号)、酸化クロム膜(特開61−245346号、US
4822662号)などの耐摩耗性に優れた硬質膜を被
覆することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】硬質クロムメッキ膜は
電気メッキにより被覆されるが、耐摩耗性が充分ではな
く、密着性、耐食性にも難点がある。セラミック膜はP
VD(物理蒸着)法、CVD(化学蒸着)法、溶射法な
どにより被覆されるが、密着性、高温処理に伴う基材の
軟化などに問題がある。酸化クロム膜は熱化学的方法に
より被覆され、ポリエステル繊維に対しては効果が認め
られているが、天然繊維、新素材繊維に対してはそれほ
ど効果が認められない。
【0006】おさ羽の摩耗は、繊維の種類、摩擦力、お
さの振動特性などが複雑に関係する現象であり、表面硬
度の高い硬質膜が必ずしも好結果を与えるとは限らない
ことが知られている。従って、繊維の種類、織機の運転
速度その他の条件に適合した硬質膜が採用されている
が、未処理のステンレス鋼基材と比較して2〜5倍程度
の耐久性の向上が認められるに過ぎない。
【0007】そこで、本発明は、天然繊維から合成繊
維、新素材繊維に至る多種類の繊維に適合し、耐久性が
飛躍的に改良されたおさ羽を有する高速織機用おさを比
較的低いコストで提供することを目的とするものであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明による高速織機用おさは、以下の各態様を有
する。
【0009】第1の態様によれば、金属製薄板を基材と
する多数枚のおさ羽が、その厚さ方向に所定の間隔を保
って互いに平行に配列され、左右の両最側端に位置する
一対の親羽と上下一対の縁金とで構成される枠体によっ
て固定保持されている高速織機用おさであって、前記一
対の親羽に隣接して配置されている前記おさ羽は、最大
摩耗部を含む少なくとも一部に中間層を介して水素を結
合した非晶質のダイヤモンドライクカーボン膜で被覆さ
れ、前記中間層は、炭化チタニウム、炭化ジルコニウ
ム、炭化ハフニウムのなかから選ばれる材料からなる。
【0010】第2の態様によれば、金属製薄板を基材と
する多数枚のおさ羽が、その厚さ方向に所定の間隔を保
って互いに平行に配列され、左右の両最側端に位置する
一対の親羽と上下一対の縁金とで構成される枠体によっ
て固定保持されている高速織機用おさであって、前記一
対の親羽に隣接して配置されている前記おさ羽は、最大
摩耗部を含む少なくとも一部に中間層を介して水素を結
合した非結晶のダイヤモンドライクカーボン膜で被覆さ
れ、前記中間層は、過剰に炭素を含有する炭化チタニウ
ムからなる。
【0011】第3の態様によれば、金属製薄板を基材と
する多数枚のおさ羽が、その厚さ方向に所定の間隔を保
って互いに平行に配列され、左右の両最側端に位置する
一対の親羽と上下一対の縁金とで構成される枠体によっ
て固定保持されている高速織機用おさであって、前記一
対の親羽に隣接して配置されている前記おさ羽は、最大
摩耗部を含む少なくとも一部に中間層を介して水素を結
合した非結晶のダイヤモンドライクカーボン膜で被覆さ
れ、前記中間層は、クロムまたはチタニウムからなる下
層とシリコンからなる上層とで構成されている 上記第1から第3までのいずれか一態様において、前記
おさにおける中央部の複数枚のおさ羽は、硬質膜で被覆
されていない前記金属薄板からなるか、あるいは該金属
薄板に酸化物、炭化物または窒化物からなる硬質化合物
膜および硬質クロムメッキ膜のうちから選ばれる硬質膜
で被覆されている。
【0012】また、上記各態様に記載の前記おさに配列
される複数枚の前記おさ羽は、左右両端部の親羽にそれ
ぞれ隣接する群からおさの中央部に向かって順番に第1
群、第2群、第3群とするとき、前記第1群は、中間層
を介して水素を結合した非晶質のダイヤモンドライクカ
ーボン膜で被覆されており、前記第2群は、酸化物、炭
化物または窒化物からなる硬質化合物膜および硬質クロ
ムメッキ膜のうちから選ばれる硬質膜で被覆されてお
り、前記第3群は、硬質膜で被覆されていない前記金属
薄板からなる。
【0013】ここで、本発明で採用するDLC膜とは、
水素を結合した非晶質のカーボン膜であり、例えば下記
の文献に紹介されている。 (A Review of Recent Work On Hard i-C Films; L. P.
Andersson; Thin solidFilms, 86 (1981) 第193頁-第20
0頁) DLC膜を形成する方法の1例としては、炭化水素ガス
雰囲気中でのプレズマCVD処理が上げられる。DLC
膜はダイアモンドに次ぐ硬さと、銅の約5倍と言う高い
熱伝導性を示し、さらに摩擦係数が極めて小さい。これ
らの特徴は機械部品の摺動面などに利用されている。ま
た、抗張力が大きく内部摩擦が小さいと言う特徴が音響
機器に適した振動特性を実現することから、スピーカー
の振動板などにも応用されている。高速で駆動されるお
さ羽の摩耗機構におけるDLC膜の挙動については、い
まだ不明の点が多いが、単に表面硬度が高く、摩擦係数
が小さいと言う点だけでなく、熱伝導性と振動特性もお
さ羽の耐久性の向上に寄与しているものと考えられる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の実施
例を詳述する。
【0015】図1は本発明および従来技術の対象とする
おさの正面図である。おさ10は、上下の一対の縁金1
2と左右両最側端に位置する一対の親羽14とからなる
枠体16によって、多数のおさ羽20を所定の間隔を保
って平行に固定保持したものである。おさ羽20は金属
製の薄板状のものであり、その平面形状は図2あるいは
図3に示されるようなものである。
【0016】図2に示されるおさ羽20Aは、平おさ羽
と呼ばれている単純な帯状のものである。また、図3に
示されるおさ羽20Bは、異形おさ羽と呼ばれており、
ウォータージェット織機、エアージェット織機に用いら
れている。いずれのおさ羽においても、図2および図3
において斜線を施した部分22Aおよび22B、すなわ
ち、おさ羽の中央部が最も過激な摩擦を受ける最大摩耗
部であり、本発明のおさ羽においては、少なくともこの
部分を含むおさ羽の一部がDLC膜(厚さ1〜2μm)
によって被覆される。
【0017】おさ羽の基材としては一般にステンレス鋼
が用いられているが、ステンレス鋼の表面に直接DLC
膜を被覆した場合には密着性が不十分であり、本発明の
目的が達成されない。
【0018】そこで本発明においては、ステンレス鋼基
材とDLC膜との間に中間層を介在させて密着性を向上
させるようにした。中間層としては、ステンレス鋼と密
着性のよいクロム(Cr)あるいはチタニウム(Ti)
を下層(厚さ0.1〜0.2μm)とし、DLC膜と密
着性のよいシリコン(Si)を上層(厚さ0.3〜0.
4μm)とする2層構造の膜、あるいはチタニウム(T
i)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)など
の炭化物膜が効果的であるが、特に過剰な炭素を含有す
る炭化チタニウム膜(特開昭64−79372号)が最
も有効であった。なお、本発明のDLC膜の厚さは、中
間層を含めて2〜3μmである。
【0019】図4は、図3に図示のおさ羽20Bの最大
摩耗部22Bの要部断面図であり、ステンレス鋼から成
る基材24の表面に中間層26として炭化チタニウム膜
が被覆されており、さらにその表面にDLC膜28が被
覆されている。炭化チタニウム膜は、炭化水素ガスを導
入した真空槽内で、プラズマCVD法によって形成する
ことができる。
【0020】
【実施例】図1に戻って、織機用おさにおけるおさ羽の
配列位置とおさ羽の耐久性(耐久性比)との関係を説明
する。
【0021】おさ羽20は両側端の親羽14に近接する
群から中央に向かって順に、第1群201、第2群20
2、第3群203と3つの群に分けて構成されている。
第1群201は、ステンレス鋼基材の表面に中間層を介
してDLC膜を被覆したおさ羽群からなり、第2群20
2は、ステンレス鋼基材の表面にDLC膜とは別種の硬
質膜を被覆したおさ羽群からなり、第3群203は未処
理のステンレス鋼基材からなるおさ羽群である。
【0022】このように複数種のおさ羽群からなる本発
明のおさ、すべてのおさ羽にDLC膜を被覆した本発明
のおさ、DLC膜とは別種の硬質膜を被覆した従来技術
におけるおさ、およびステンレス鋼基材のみからなる一
般的なおさをそれぞれ用いて各種の繊維を織布し、おさ
羽およびおさの耐久性を調べた。これらの結果が表1お
よび表2ならびに表3に示される。
【0023】
【表1】 繊維:綿糸 表1は、繊維として最も一般的な綿糸を用い、高速織機
により標準的な織布を行った場合の耐久性試験の結果を
示す。比較例1に示すように、ステンレス鋼基材のみか
らなる従来のおさを用いて、所定の条件の下で織布を実
行した場合、約12時間の稼働で「糸切れ」、「毛羽立
ち」などの欠陥が発生した。すなわち、おさ羽の摩耗に
よるおさの寿命は12時間であった。この結果を耐久性
の基準値1.0として、欠陥が発生するまでの稼働時間
から耐久性比を算出した。
【0024】比較例2に示されるように、おさ羽全体の
10%に相当する側端部のおさ羽に硬質クロムメッキを
被覆した従来例のおさにおいては、耐久性は2倍以上に
なることがわかる。また、比較例3に示されるように、
全体の20%に相当する側端部のおさ羽に酸化クロム
(Cr23)を被覆した従来例においては、耐久性は約
3倍になっている。
【0025】これに対して、本発明の実施例1に示され
るように、側端部から40%に相当する部分にDLC膜
を被覆した本発明のおさ羽を有するおさを用いた場合に
は、耐久性が約7倍に向上する。
【0026】この場合、おさ自体のコストが約5倍に上
昇するが、織布の品質および織機の稼働効率を考慮すれ
ば充分に採算が取れる。一方、本発明の実施例2に示さ
れるように、最も大きな摩擦力を受ける側端部であっ
て、かつ全体の10%に相当する第1群にDLC膜を被
覆した本発明のおさ羽を配列し、これに続く第2群には
酸化クロムを被覆したおさ羽と硬質クロムメッキを被覆
したおさ羽とを配列し、中央部であって、かつ全体の6
0%に相当する部分には第3群としてステンレス鋼基材
からなるおさ羽を配列したおさにおいては、実施例1と
同等の耐久性が得られ、コストを半減させることが可能
となる。このように、複数の種類の硬質膜を採用して摩
耗量をおさ全体に平準化することは、コストの低減に有
効な手段である。
【0027】
【表2】 繊維:異形ポリエステル 複雑な断面形状を有する異形ポリエステル繊維を織布す
る場合には、ステンレス鋼基材からなるおさ羽の摩耗が
著しく、織機の稼働効率が極めて低いことが知られてい
る。表2は本発明のおさ羽を有するおさを、異形ポリエ
ステル繊維の織布に適用した場合の実施例が、比較例と
ともに示されるものである。比較例4に示されるよう
に、ステンレス鋼基材からなるおさ羽の摩耗は著しく、
その耐久性は綿糸を織布する場合の3割程度に低下す
る。そこで比較例5に示されるように、側端部近傍のお
さ羽に硬質クロムメッキを被覆したおさが用いられてい
る。
【0028】これに対して本発明の実施例3に示すよう
に、側端部であって、かつ全体の70%に相当する部分
にDLC膜を被覆した本発明のおさ羽を用いたおさにお
いては、耐久性が飛躍的に向上する。さらに実施例4に
示すように、DLC膜と硬質クロムメッキとを併用すれ
ば、コストを低減することが可能である。
【0029】
【表3】 繊維:特殊糊剤使用綿糸 特殊な機能を有するセラミック微粉末を糊材とともに付
着させた繊維が、機能性新素材繊維として注目されてい
る。比較例6に示されるように、このような新素材繊維
を通常のステンレス鋼製おさ羽を用いて織布すると、極
めて短時間で欠陥が発生し、実用上は稼働が不可能であ
る。そこで比較例7に示されるように超硬質膜として知
られている窒化チタン(TiN)膜を全体に被覆したお
さ羽を有するおさが用いられている。しかし、それでも
おさ羽の摩耗量は大きく、2〜3時間で欠陥を生ずるた
め作業性が悪く、織機の稼働効率が極めて低くなる。
【0030】これに対して、本発明の実施例5に示され
るように、全体にDLC膜を被覆したおさ羽を有するお
さを用いれば、連続8時間の稼働が可能であり、織布の
作業性に特に問題はなくなる。さらに、本発明の実施例
6に示されるように、側端部近傍にのみDLC膜を被覆
した本発明のおさ羽を、そして中央部には窒化チタン膜
を被覆したおさ羽をそれぞれ配置すれば、コストを低減
して同等の効果を得ることができる。
【0031】次に、おさ羽へのDLC膜被覆による耐摩
耗性の効果を定量的に示すために、加速試験機を用いた
摩耗試験を行った。
【0032】加速試験用装置の概要を図5に示す。図5
において、摩耗試験を受ける各種のおさ羽試料1は、1
000rpmで回転する回転ドラム2上の回転半径45
mmの位置に、互いに90度の等角度間隔で設置固定さ
れた。給糸パーン3から引き出された糸4(ポリエステ
ル50D24Fフルダル糸)は、油剤などを除去するた
めに、ウォータ・バス5内を通された後、接圧式のテン
サー6によって張力計7での張力が20gfになるよう
に調整されながら、回転ドラム2の回転方向とは逆方向
に0.5m/minの速度で巻き取りロール8によって
巻き取られるようにした。なお、要所での糸の経路が変
わらないように、各所にヤーンガイド(図示せず)が配
設された。この結果、糸4とおさ羽試料1との摩擦速度
は4.7m/sとなった。
【0033】上記加速試験機の条件は実際の製織条件よ
りかなり厳しい摩擦条件であるが、後述する試験結果に
も示されるように、現在実用されているおさ羽(後述の
おさ羽試料No.1)の100倍以上の長時間にわたっ
て摩耗痕の現れないDLC膜被覆おさ羽の摩耗特性を、
同一条件で、かつ、良好な再現性のもとで試験するため
に定めた条件である。
【0034】各おさ羽試料の摩耗特性は以下のように数
値化された。すなわち、加速試験開始後、一定時間
(1、3、10、…1000minの対数系列:ただ
し、必要に応じて5minの対数系列のデータを追加し
た)経過したおさ羽試料1を金属顕微鏡で100倍に拡
大して観察した。このとき、試験糸4のフィラメントに
より形成された溝の痕跡が見出されたおさ羽試料では、
本加速試験によって“摩耗した”と判断して実験を打ち
切った。一方、糸溝の痕跡が発見されなかったおさ羽試
料では、更に別の新しいおさ羽試料を用いて、より長時
間の摩耗試験を糸溝の痕跡が確認されるまで続けて行っ
た。このように、糸溝が発見され、加速試験を打ち切っ
た時間を摩耗時間とした。従って、この摩耗時間が長け
れば長いほど、摩耗性に優れていることになるわけであ
る。
【0035】ここで、上記加速試験(摩耗試験)に適用
された各種おさ羽試料を表4に示すことにする。
【0036】
【表4】 なお、上記表4において、タイプ“T”はオーステナイ
ト系のステンレス鋼(例えば、JISのSUS301)
を基材とし、タイプ“W”はフェライト系のステンレス
鋼(例えば、JISのSUS430)を基材としたもの
であり、Tタイプの生材(試料No.1)は糸と接触さ
せる部分の幅を4mm、厚さを0.24mmとし、Wタ
イプの生材(試料No.5)は糸と接触させる部分の幅
を2.2mm、厚さを0.31mmとした。また、硬度
は明石マイクロビッカース硬度計MVK−E型によって
加重50gfで測定した。ただし、Wタイプでは表面が
粗く鮮明な圧痕が得られなかったため、FISCHER
SCOPE H−100Vダイナミック被膜硬度計によ
り0〜10gf間でのHV相当値を求めた。
【0037】表4に示した7種類のおさ羽試料に対する
耐摩耗性の試験結果が図8に示される。図8において、
○は金属顕微鏡の観察により全く摩耗痕が発見されなか
ったもの、◎は僅かに摩耗痕が認められたものの、それ
を写真(×150倍)に現像した場合には周囲と判別が
つかないほど浅い痕であったもの、●は写真によっても
はっきりと摩耗痕が認められたものを示す。すなわち、
図8の横軸に示した各おさ羽試料に関する棒グラフ中、
ハッチングを施した時間帯で摩耗が発生したことを表し
ている。縦軸は加速試験開始からの時間を対数的に表し
ている。
【0038】図8のグラフから明らかなように、現在、
通常のエアジェット織機の変形おさ羽として実際に使わ
れているおさ羽試料No.1が3分で摩耗したのに比
べ、全面にDLC膜を被覆したおさ羽試料No.3(図
6の(A)及び(B)にそれぞれ平面図及びその VIB
−VIB線に沿った断面図で示される)は加速試験におい
て100倍、すなわち、300分でようやく摩耗したこ
とがわかる。そして、本発明のように、部分的にDLC
膜を施したおさ羽試料No.4(図7の(A)及び
(B)にそれぞれ平面図及びその VIIB−VIIB線に沿
った断面図で示される)では、さらに約3倍、すなわ
ち、1000分近くの摩耗時間であったことがわかる。
Wタイプのおさ羽試料においては、全面にDLC膜を施
したおさ羽試料No.7が生材のおさ羽試料No.5に
比べて数十倍の摩耗時間を有することを示している。そ
して、現在市販されているセラミックコートのおさ羽試
料No.6に比べても、数倍の摩耗時間を有することを
示している。
【0039】また、DLC膜を被覆したおさ羽に対する
実際の織機上での耐摩耗性を調べるため、表4に示した
おさ羽試料No.1を用いたエアジェットルーム用変形
おさの織耳部の数羽を表4に示したおさ羽試料No.3
と同様なおさ羽(厚さ0.2mm)に入れ替えた、密度
75羽/37.9mm、前兆1440mm、外天地11
3mmの試験用おさを試作後、これを実際の織布工場で
2年間使用した。仕掛糸はレーヨン75D、織機回転数
は800rpmであった。その結果、織耳部で入れ替え
たどのDLCおさ羽にも摩耗痕が全く観察されなかった
のに対し、これらより摩耗条件のゆるい位置に配置され
た生材おさ羽(おさ羽試料No.1と同様のおさ羽)に
は、たて糸及びよこ糸とによる摩耗痕が観察された。特
に、たて糸による摩耗痕はおさの天地方向で0.5mm
にわたって羽厚の半分以上に及んでいた。これにより、
実機上でのDLCコーティングによる効果を確認するこ
とができた。
【0040】上記したDLCコーティングによって得ら
れる効果の要因を検討してみると、DLC膜自体の極め
て高い硬度がまず挙げられると共に、プラズマCVD法
によって形成されたDLC膜は基材表面に対して平行な
層状膜として成膜されることが判明した。プラズマCV
D法によるDLC膜は、基材表面に対して層状形成され
ることによって、表面の平滑性が優れ、摩擦係数が小さ
くなると言える。因に、イオンプレーティング法による
TiN膜その他は、基材表面に対して柱状に成膜され、
また、プラズマ溶射法によるAl2 O3 膜その他は、基
材表面に対して梨地状に成膜される。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば次
のような特有の効果が得られる。 (1)本発明のおさ羽は、天然繊維、合成繊維から新素
材繊維までの各種の繊維に適用され得、優れた耐久性を
示す。 (2)本発明のおさ羽に被覆されるDLC膜の厚さは中
間層も含めて2〜3ミクロンで充分に効果を発揮するの
で、配列間隔の小さい細目のおさにも適用可能である。 (3)織布の品質と織機の稼動効率を考慮して、本発明
のおさ羽をおさの所定箇所に配置することによって、所
望の耐久性を確保し得ると共に、総合的なコストダウン
を可能にする。 (4)本発明のおさ羽は、極めて高い硬度と優れた平滑
性を有することから、糸と滑らかに接っすることがで
き、耐摩耗性に優れ、フィラメント切れ(毛羽立ちの原
因となる)や断糸が防止される。 (5)本発明のおさ羽は、糸に含まれているノリが付着
し難いので、メンテナンスのための織機の停止回数が減
り、稼働時間を延長することができ、生産性を向上させ
ることができる。また、おさ羽にノリが固着したとき、
除去剤として強アルカリ薬品を使用しても、おさ羽が傷
むことがない。 (6)本発明のおさ羽は、耐用寿命が著しく長いので、
織機の稼働率向上と織布品質の安定化に大きく寄与す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明および従来技術の対象とする織機
用おさの正面図である。
【図2】図2は本発明および従来技術の対象とする平お
さ羽の平面図である。
【図3】図3は本発明および従来技術の対象とする異形
おさ羽の平面図である。
【図4】図4は本発明の実施例におけるおさ羽の要部断
面図である。
【図5】図5は本発明の実施例および比較例に対して行
った湿式加速試験機の概略構成図である。
【図6】図6は湿式加速試験に用いた本発明の実施例の
形状を示し、(A)は平面図であり、(B)図6Aにお
ける線 VIB−VIBに沿った断面図である。
【図7】図7は湿式加速試験に用いた本発明のもう1つ
の実施例の形状を示し、(A)は平面図であり、(B)
図7Aにおける線 VIIB−VIIBに沿った断面図であ
る。
【図8】図8は湿式加速試験による耐摩耗性の結果を示
すグラフである。
【符号の説明】
1 DHL膜被覆おさ羽 2 回転ドラム 3 給糸パーン 4 糸 5 ウォータ・バス 6 テンサー 7 張力計 8 巻き取りロール 10 おさ 12 縁金 14 親羽 16 枠体 20,20A,20B おさ羽 22A,22B 最大摩耗部 24 基材 26 中間層 28 DLC膜 201 第1群 202 第2群 203 第3群
フロントページの続き (72)発明者 渋谷 義継 埼玉県戸田市新曽260 (72)発明者 榎本 貢 東京都東久留米市八幡町2−11−67 (72)発明者 直井 孝一 埼玉県狭山市狭山台4−20−27 (72)発明者 深沢 裕二 東京都練馬区下石神井3−14−4 (72)発明者 南谷 孝典 埼玉県狭山市狭山台4−46−17 (72)発明者 清水 章太郎 東京都国立市東1−13−11 (72)発明者 田川 宏 千葉県柏市北柏3−15−2

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製薄板を基材とする多数枚のおさ羽
    が、その厚さ方向に所定の間隔を保って互いに平行に配
    列され、左右の両最側端に位置する一対の親羽と上下一
    対の縁金とで構成される枠体によって固定保持されてい
    る高速織機用おさであって、 前記一対の親羽に隣接して配置されている前記おさ羽
    は、最大摩耗部を含む少なくとも一部に中間層を介して
    水素を結合した非晶質のダイヤモンドライクカーボン膜
    で被覆され、 前記中間層は、炭化チタニウム、炭化ジルコニウム、炭
    化ハフニウムのなかから選ばれる材料からなることを特
    徴とする高速織機用おさ。
  2. 【請求項2】 金属製薄板を基材とする多数枚のおさ羽
    が、その厚さ方向に所定の間隔を保って互いに平行に配
    列され、左右の両最側端に位置する一対の親羽と上下一
    対の縁金とで構成される枠体によって固定保持されてい
    る高速織機用おさであって、 前記一対の親羽に隣接して配置されている前記おさ羽
    は、最大摩耗部を含む少なくとも一部に中間層を介して
    水素を結合した非結晶のダイヤモンドライクカーボン膜
    で被覆され、 前記中間層は、過剰に炭素を含有する炭化チタニウムか
    らなることを特徴とする高速織機用おさ。
  3. 【請求項3】 金属製薄板を基材とする多数枚のおさ羽
    が、その厚さ方向に所定の間隔を保って互いに平行に配
    列され、左右の両最側端に位置する一対の親羽と上下一
    対の縁金とで構成される枠体によって固定保持されてい
    る高速織機用おさであって、 前記一対の親羽に隣接して配置されている前記おさ羽
    は、最大摩耗部を含む少なくとも一部に中間層を介して
    水素を結合した非結晶のダイヤモンドライクカーボン膜
    で被覆され、 前記中間層は、クロムまたはチタニウムからなる下層と
    シリコンからなる上層とで構成されていることを特徴と
    する高速織機用おさ。
  4. 【請求項4】 前記おさにおける中央部の複数枚のおさ
    羽は、前記金属薄板からなることを特徴とする請求項1
    から3までのうちのいずれか一項に記載の高速織機用お
    さ。
  5. 【請求項5】 前記おさにおける中央部の複数枚のおさ
    羽は、酸化物、炭化物または窒化物からなる硬質化合物
    膜および硬質クロムメッキ膜のうちから選ばれる硬質膜
    で被覆されていることを特徴とする請求項1から3まで
    のうちのいずれか一項に記載の高速織機用おさ。
  6. 【請求項6】 前記おさに配列される複数枚の前記おさ
    羽は、左右両端部の親羽にそれぞれ隣接する群からおさ
    の中央部に向かって順番に第1群、第2群、第3群とす
    るとき、 前記第1群は、中間層を介して水素を結合した非晶質の
    ダイヤモンドライクカーボン膜で被覆されており、 前記第2群は、酸化物、炭化物または窒化物からなる硬
    質化合物膜および硬質クロムメッキ膜のうちから選ばれ
    る硬質膜で被覆されており、 前記第3群は、硬質膜で被覆されていない前記金属薄板
    からなることを特徴とする請求項1から3までのうちの
    いずれか一項に記載の高速織機用おさ。
  7. 【請求項7】 前記おさ羽は、平おさまたは異形おさで
    あることを特徴とする請求項1から6までのうちのいず
    れか一項に記載の高速織機用おさ。
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