JP5070629B2 - 織機用部材およびその製造方法 - Google Patents
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(2)使用する原糸が、遠赤外線を利用して保温性を向上させたり、紫外線を利用して殺菌性を発揮させるためにCuOやTiO2などの超微粒子などを含むものである場合、これらの原糸に対しても、良好な耐摩耗性を有すること、
(3)原糸に含浸されている糊が付着しにくく、その糊が付着したとしても簡単に除去できるものであること、
(4)“おさ”の表面に付着した糊を除去するために実施する水洗、酸、アルカリ水溶液による洗浄などが行われても、常に健全な状態を維持できるものであること、
(1)長期にわたって優れた密着性と耐摩耗性とを示すDLC薄膜を、低コストで提供することができない。
(2)“おさ”基材表面に、電気めっき法やPVD法によって各種の金属や炭化物のアンダーコートを形成した上に、DLC薄膜を間接的に形成しているため、作業性や生産性が悪い。
(3)DLC薄膜自体の耐食性や耐久性が劣り、品質に不安が残る。
(1)金属製“おさ”基材の表面に、もし、密着性に優れたDLC薄膜を直接形成することにした場合、従来技術では必須とされていたアンダーコートの施工を省略することができるようになり、生産コストの大幅な低減を図ることができる。
(2)“おさ”用基材の表面に対し、DLC薄膜を直接施工するには、基材の種類、即ち、鋼種の選定と、それの化学成分とその組成を所定の範囲にすることが不可欠である。
(3)選定された鋼種からなる“おさ”用基材の表面に対し、DLC薄膜を直接形成するには、前処理を行うことが有効である。この前処理とは、真空容器中において前記基材に負の電位を与えると共に、Ar、Heなどの不活性ガスをプラズマ状態にしてイオン化させ、このイオンを該基材表面に衝突させることにより、該基材表面の酸化膜を除去する処理を行うことが有効である。
(4)上記処理と共に、衝突面に原子論的規模の小さな凹みを付加して結晶面のみならず、結晶粒界を活性化させ、その後、同じ真空容器内に炭化水素系ガスを導入することによって、DLC薄膜を生成させるようにすることが好ましい。
(1)前記鋼製基材は、研磨面の表面粗さが、Ra≦0.5μm、Rz≦1.5μmで、圧力:0.1〜1.0Paの不活性ガス中でプラズマエッチングして活性化させた表面を有すること、
(2)前記炭素水素固形物堆積膜は、厚さが1.5〜10μmの範囲にあること、
がより好ましい解決手段である。
(1)“おさ”などとなる基材の表面に直接、DLC薄膜が被覆形成されているため、CrやTi、Si、WC、SiCなどからなるアンダーコートの施工が不要となる。そのため、アンダーコートの施工に必要な各種の装置、処理時間、経費、材料などが不要で、処理時間が短縮される。しかも、生産性が大幅に向上し、生産コストの低減効果に加え、省資源対策にもなる。
(2)アンダーコートの施工が省略できるため、従来、この処理のために行われてきた電気めっき、特にクロムめっきの施工(環境汚染成分として厳しく制限されている六価クロム水溶液(CrO3)が使用されている)がなくなり、作業全体の安全性の向上、作業環境の向上をもたらすことができる。
(3)本発明において用いられるDLC薄膜は、Hvが1000〜2700と高く、かつ繊維との接触抵抗値が小さく、耐摩耗性に優れ、しかも密着性がよいため、強い曲げ変形などに対して十分な耐久性を示す。
(4)本発明において用いられるDLC薄膜は、水素含有が13〜22原子%で残部が炭素からなる気相析出微粒子からなるので、柔軟性を有し、使用中の“おさ”が変形した場合でも十分追随でき、また、酸、アルカリ水溶液に浸食されず、初期性能を長期間にわたって維持できるため、織機製品の生産コストの低減のみならず、織機製品の品質の向上に効果がある。
図1は、そのおさ“おさ”の基本となる基材の表面に直接、DLC薄膜を形成するという本発明方法の工程図である。以下、この図に従って本発明の構成を説明する。
本発明においてはまず、“おさ”本体とすべき基材の表面に、いわゆるアンダーコートなどの中間層を介在させることなく、DLC薄膜を直接形成するのに適した基材を選定することが重要である。即ち、金属製基材の表面に、直に、炭素と水素を主成分とするアモルファス状のDLC薄膜を、高い密着力をもって被覆形成するには、その金属製基材の化学成分や組成、特性などを検討することが重要である。
(b)密着性を阻害する金属成分:Ni、Cu
(c)含有量が少なく影響力の小さい金属および非金属成分:Mn、P、S
なお、(a)良好な密着性を示す金属成分として表示したC、C23C6は、金属成分ではないが、鋼中に含まれることが多い非金属成分であるので便宜上(a)に含めた。
有効成分量=鋼中の(Cr+Mo)量−鋼中の(Ni+Cu)量≧7mass%
上記有効成分量算出式を用いて、各種のステンレス鋼の化学成分量について、その有効成分量を求めた結果を、表1に示す。この結果から明らかなように、多量のCrを含むSUS310鋼であっても、Ni量が多い場合は不適合鋼種となり、また、Niを含まないSUS410鋼では、適合鋼種となるなど、ステンレス鋼の全てが一律に適合鋼種となる訳ではないことがわかった。
選択したステンレス鋼基材から切り出しされた“おさ”は、次に、その表面を研磨する。“おさ”の寸法は、目的によって多少の違いはあるものの、幅:3〜10mm、長さ:80〜120mm、厚さ:0.1〜0.7mm程度の薄い板状のものである。この薄い鋼板をバレル研磨、自動バフ研磨などによって、鋼板の表面(両面)はもとより端部も研磨し、鋭角的な部分をなくすことが大切である。また、必要に応じて化学研磨や電解研磨を用いて鏡面に仕上げてもよい。
算術平均粗さRa:0.5μm以下
十点平均粗さRz:1.5μm以下
本発明では、研磨仕上げした“おさ”用基材の表面に対し、DLC薄膜を直に、被覆形成できるようにするために、活性化のための前処理としてプラズマエッチング処理を行う。“おさ”用基材に対してプラズマエッチング処理を行う方法としては、多くの技術があるが、本発明では、プラズマエッチング処理とDLC薄膜とを同一の装置を用いて行い得る、高周波−高電圧パルス重畳型のプラズマCVD法(以下、単に「プラズマCVD法」と呼ぶ)の利用が好適である。
プラズマエッチング処理前 Ra:0.09μm、Rz:0.28μm
プラズマエッチング処理後 Ra:0.09μm、Rz:0.16μm
次に、プラズマエッチング処理を終了した後、被処理体を反応容器中に設置したままの状態で炭化水素ガスを容器中へ導入する。次いで、高電圧パルス発生装置からの高電圧パルス(負の高電圧パルス)を被処理体に印加すると、導入された炭化水素ガスの一部がプラズマ化し、その中のプラスイオンに帯電したものが、負の電位の被処理体の表面に誘引吸着され、その結果、最終的には炭素と水素を主成分とするアモルファス状の固形物からなるDLC薄膜が、被処理体の表面に気相析出することとなる。
(a)導入された炭化水素ガスのイオン化(ラジカルと呼ばれる中性な粒子も存在する)がおこり、
(b)炭化水素系ガスから変化したイオンおよびラジカルは、負の電圧が印加されたキャリア本体42の表面に衝撃的に衝突し、
(c)衝突時のエネルギーによって、結合エネルギーの小さいC−H間が切断され、その後、活性化されたCとHが重合反応を繰り返して高分子化し、炭素と水素を主成分とするアモルファス状の炭素水素固形物を気相析出し、
(d)そして、上記(c)の反応が起こると、被処理体の表面には、アモルファス状炭素水素固形物微粒子の堆積層からなるDLC薄膜が形成されることになる。
(a)DLC薄膜のみを形成する処理の場合:数百V〜数KV
(b)プラズマエッチング処理を重点的に行う場合:数百V〜数十KV
また、高電圧パルスの発生は、次の条件とする。
(c)パルス幅:1μsec〜10msec
(d)パルス数:1〜複数回の繰返し可能
なお、プラズマ発生用電源における高周波電力の出力周波数は、数十KHz〜数GHzの範囲で変化させることができる。
(イ)常温(18℃)で気相状態のもの
CH4、CH2CH2、C2H2、CH3CH2CH3、CH3CH2CH2CH3
(ロ)常温で液相状態のもの
C6H5CH3、C6H5CH2CH、C6H4(CH3)2、CH3(CH2)4CH3、C6H12、
C6H4Cl
前記装置および処理方法によって、基材表面に形成する本発明に特有のDLC薄膜は、次のような特徴がある。
(a)本発明に特有な前記DLC薄膜によれば、Crを含む“おさ”用基材表面に対して直に、この薄膜を被覆形成するので、耐摩耗性と密着性に優れた“おさ”を製造することができる。
(b)本発明に特有のものであるDLC薄膜は、撥水性が良好である。そのため、繊維や原糸に付着している水溶性の糊が付着し難い上に、たとえその糊が付着したとしても容易に水洗して除去することができるので、環境汚染源となるアルカリ水溶液による洗浄が不要となる。
(c)本発明に特有のものであるDLC薄膜は、基材表面(エッチングされた金属面)に対し直に、形成されているため、DLC薄膜の気孔発生原因となる酸化膜が存在せず、薄膜の状態でも気孔がなく、酸、アルカリ性溶液中に浸漬しても、基材が腐食されたり、赤錆が発生するようなことがない。
(d)本発明に特有のものであるDLC薄膜は、柔軟性に加え、Hvが1000〜2700程度の硬さを有しているため、繊維や原糸と長期間にわたって接触しても摩耗することが少ない。なお、このような特徴を備えた本発明に特有のものであるDLC薄膜は、“おさ”基材の表面に、1.5〜10μmの厚さに被覆形成するのがよい。その理由は、1.5μm未満の厚さでは、“おさ”としての耐用期間が十分に得られないし、一方で、10μm以上厚くしても、上記の性能が格段に向上するものでないので経済的に得策でない。
この実施例では、好適な基材の条件を探るため、化学成分の異なる鋼、非鉄金属およびその他の金属皮膜を供試体として、それぞれの表面に被覆形成したDLC薄膜の密着性をスクラッチ試験によって評価した。
供試基材として、下記の金属材料および金属表面処理膜を用いた。
(a)鋼基材:SS400鋼、STBA24鋼、STBA26鋼、SUS304鋼、SUS316鋼、SUS310鋼、SUS329JI鋼、SUS405鋼、SUS430鋼
(b)非鉄金属基材:NCF600、NW2200、C1200
(c)電気めっき基材:SS400鋼上にCrめっき膜100μm厚に施工
(d)PVD被覆基材:SUS304鋼上にMo、Nb、Ta、Si、Wを2μm厚に形成
なお、基材の寸法は、幅15mm×長さ30mm×厚さ1mmであり、上記鋼鉄および非金属材料の記号は、すべてJIS規定のものである。
前記供試基材の表面には、プラズマエッチング処理後、プラズマCVD法によって、その表面に2μm厚さのDLC薄膜を被覆形成した。
スクラッチ試験はISO20502に規定されているセラミック薄膜の密着性を評価するための試験方法に準じて行った。
試験後、ダイヤモンド針によって、疵をつけられたDLC薄膜の表面は、拡大鏡で観察した結果から、代表的なスクラッチ疵の発生状況を図4に示す写真で記録し、1から4までの評価基準を作成して、DLC薄膜の密着性を判定した。
試験結果を表2に要約した。この表には、供試基材の化学成分量から計算した有効成分(Cr含量)とともに、スクラッチ試験の評価値を一括してまとめた。
この結果から明らかなように、Cr、Mo、Nb、Ta、Si、Wなどの金属薄膜上に形成したDLC薄膜(No.13〜18)の密着性は極めて良好であり、微小な剥離も観察されなかった。一方、Ni、Cuを多量に含む非鉄合金基材上に形成したDLC薄膜(No.10〜12)の密着性評価は4に属し、スクラッチ疵の周辺において大きな剥離が発生した。また、鋼基材であっても、SS400鋼(No.1)、STBA24鋼(No.2)ではDLC薄膜の密着性は比較的低い(評価3)。これに対して、有効成分量が7mass%以上である鋼種(No.3〜5、7〜9)では、スクラッチ疵の周囲に微小な剥離が認められる程度であり、実用上十分な強度の密着強さを有することが認められた(評価2)。ただSUS310鋼基材(No.6)表面のDLC薄膜の密着性は、前者に比較するとやや低く評価3と判断された。
有効成分量=鋼中の(Cr+Mo)量−鋼中の(Ni+Cu)量=7mass%
この実施例では、前記有効成分量が7mass%以上であるステンレス鋼(SUS304鋼)基材の表面に、水素含有量の異なるDLC薄膜を形成し、その水素含有量と基材の曲げ変形に対する抵抗および耐食性の変化について調査し、DLC薄膜の好適水素含有量を解明する。
供試試験片は、ステンレス鋼(SUS304鋼)とし、この基材から寸法:幅15mm×長さ70mm×厚さ1.8mmの試験片を作製した。その後、この試験片の全面をRa:0.08μm、Rz:0.09μmに研磨し、この研磨面に対し、プラズマエッチング処理後、水素含有量が5〜32原子%で、残部が炭素成分であるDLC薄膜を、3.0μm厚さに被覆形成した。
DLC薄膜を形成した試験片の中心から180°に曲げ変形を与え(Uベンド形状)、曲げ部のDLC薄膜の外観状況を20倍の拡大鏡で観察した。また、その観察後の曲げ試験後の試験片をpH(水素イオン濃度)12に調節したNaOH水溶液に20℃の温度で96時間浸漬して、DLC薄膜と基材の耐アルカリ性を調べた。また、耐酸性試験として、曲げ試験片を5%HCl水溶液中に20℃の条件で96時間浸漬し、薄膜と酸水溶液の変化を観察した。
表3に試験結果を要約した。この試験結果から明らかなように、水素含有量の少ないDLC薄膜(Nо.1、2、3)は、180°の変形を与えるとクラックが発生したり、微小な面積であるが、局所的に薄膜の剥離らしき箇所が観察された。これらのDLC薄膜は柔軟性に乏しいことがうかがえる。一方、曲げ試験後の試験片をPH12のアルカリ水溶液に浸漬しても全ての供試試験片は変化することなく、浸漬前の状態を維持しており、耐アルカリ性については、十分な抵抗力を有していることが確認された。また、5%HCl中に浸漬した試験片では、水素含有量13%未満(Nо.3)のDLC薄膜のみ、浸漬した5%HCl水溶液が無色から淡い黄色に変化した。この変色は、曲げ変形時に発生したDLC薄膜の欠陥部から、HCl水溶液が内部へ侵入し、SUS304鋼を侵食した結果であると推定される。水素含有量15原子%〜32原子%のDLC薄膜(Nо.4〜7)には、全く異常は認められず、耐酸性にも優れた性能を発揮した。しかし、水素耐摩耗性の低下が危惧されるので、本発明では、水素含有量13〜22原子%の範囲にすることが有効であることが確かめられた。
この実施例では、SUS410鋼(Cr:11.50〜13.50mass%、有効成分量≦7mass%)基材の表面粗さと、その表面に被覆形成したDLC薄膜の耐食性について調査した。
供試基材として、幅15mm×長さ30mm×厚さ2μmのSUS410鋼試験片を作製した後、その表面を下記の粗さに研磨したものを準備した。
Ra:0.05〜1.1μm Ra:0.09〜4.8μm
DLC薄膜の形成には、前記プラズマCVD法を用い、0.2〜10μm厚のDLC薄膜を被覆形成したが、成膜に際する前処理としてのプラズマエッチング処理の有無の影響についても評価できるようにした。
DLC薄膜を被覆形成した試験片を18℃の3%HCl水溶液中に100時間浸漬させた後、これを軽く水洗し、その後、さらにこの試験片を20℃の室温で24時間放置した。この操作によって試験片の表面に発生する赤錆の有無によって、耐食性を評価した。本試験において、酸浸漬後水洗し、さらに室内に放置したのは、酸浸漬のみの場合に比較すると、DLC薄膜に欠陥が存在すると、赤錆の発生が明瞭にみとめられるからである。
試験結果を表4に要約した。DLC薄膜の耐食性を基材表面の粗さと、プラズマエッチング処理の有無の組合せから評価すると、下記のとおりである。
(a)一般に、プラズマエッチング処理を施した基材表面に形成したDLC薄膜は、プラズマエッチング処理をしない場合に比較して、耐食性に優れた皮膜を形成する。
(b)表面粗さの小さい基材表面に形成したDLC薄膜は、表面粗さの大きい基材表面に形成した皮膜に比較して耐食性に優れている。即ち、欠陥の少ないDLC薄膜が形成され易いといえる。
(c)同一厚さのDLC薄膜の耐食性は、表面粗さが小さく、かつプラズマエッチング処理を施した条件のものが最も良好である。
(d)以上の試験結果から、基材表面の粗さをRa:0.05〜0.5μm、Rz:0.09〜1.5μmの範囲にすれば、プラズマエッチング処理施工条件下のもとで、DLC薄膜の厚さが0.5〜10μmの範囲内において、耐食性に優れたDLC薄膜を選択することが可能であることがわかった。
この実施例では、SUS410鋼基材の表面に被覆形成するDLC薄膜の密着性と、前処理としてのプラズマエッチング処理の効果について調査した。
供試基材として実施例1記載のSUS410鋼と同じものを供試した。
(2)DLC薄膜の形成方法と膜厚
実施例1と同じ方法で薄膜を形成し、膜厚に2μmとした。
(3)DLC薄膜の密着性試験方法
実施例1で実施したISO20502に規定されているスクラッチ試験によってDLC薄膜の密着性を評価した。
(4)試験結果
試験結果を表5に示した。この結果から明らかなよう、供試したDLC薄膜の密着性は、図4に示したスクラッチ疵とその周辺で発生する局部的なDLC薄膜の剥離状況からの判定によると、評価2と評価4に分類することができる。しかし、プラズマエッチングの前処理を施した試験片表面に形成した薄膜の密着性評価は、膜厚が大きくなっても評価2を維持しているのに対して、前処理をしない場合の密着性の評価は、膜厚が大きくなると、評価3および4となり、密着性が低下する傾向が認められる。この原因は、DLC薄膜が厚くなるほど、皮膜に発生する残留応力が大きくなるため、僅かなスクラッチ疵の発生によっても薄膜の残留応力が開放され、これにともなって、微小な剥離が誘発されたものと考えられる。
この実施例では、本発明に係るDLC薄膜を含む3種類の表面処理膜を形成した“おさ”の表面に対して、合金繊維の糸を接触させながら、高速度で走らせ皮膜の耐久性を調査した。
SUS410鋼製の“おさ”(寸法:幅6mm×長さ90mm×厚さ0.5mm)の表面に、本発明に適合するDLC薄膜を2.0μmの厚さに被覆したものを準備した。このDLC薄膜の水素含有量は14原子%で残部が炭素であり、また、その硬さはHv=2050であった。
なお、比較用の表面処理皮膜として、下記の皮膜を“おさ”の全面に被覆形成した。
(a)電気Crめっき膜(厚さ5μm)
(b)化学緻密化法によるCr2O3膜(厚さ3μm)
試験終了後の“おさ”の表面状態を20倍の拡大鏡を用いて観察した結果、比較例の電気めっきCr膜の表面では、糸と接触した皮膜では、すでに窪みが明瞭に確認され、また、Cr2O3膜においても、凹部の形成跡が観察された。しかし、本発明に係るDLC薄膜の表面では異常は認められず、健全な状態を維持していた。
22 Raで表示される粗さ
23 Rzで表示される粗さ
24 DLC薄膜
25 DLC薄膜で被覆できなったRzで表示される粗さの凸部
31 反応容器
32 被処理体(“おさ”基材)
33 導体
34 高電圧パルス発生用電源
35 プラズマ発生用電源
36 重畳装置
37a、37b バルブ
38 アース線
39 高電圧導入端子
51 試験用の“おさ”
52 試験用の糸
53 糸巻
54 駆動用の糸巻
Claims (6)
- 研磨し、活性化処理したステンレス鋼製基材の表面に、アンダーコートを介在させることなしに直に、アモルファス状の炭素水素固形物の堆積膜を被覆形成してなるものにおいて、上記ステンレス鋼製基材が、CrとMoの質量含有量の和が、同じ基材中に含まれるNiとCuの質量含有量の和よりも7質量%以上多く含まれているステンレス鋼であり、前記炭素水素固形物の堆積膜は、該堆積膜中に含まれる水素量が13〜22原子%で、残部が炭素からなり、硬さがHv:1000〜2700の範囲にあることを特徴とする織機用部材。
- 前記ステンレス鋼製基材は、研磨面の表面粗さが、Ra≦0.5μm、Rz≦1.5μmで、圧力:0.1〜1.0Paの不活性ガス中でプラズマエッチングして活性化させた表面を有することを特徴とする請求項1に記載の織機用部材。
- 前記炭素水素固形物堆積膜は、厚さが1.5〜10μmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の織機用部材。
- ステンレス鋼製基材の表面を研磨して平滑面に仕上げ、次いで、そのステンレス鋼製基材を不活性ガス中において、該基材を負の電位に設定してプラズマエッチング処理を行うことにより、該基材表面を活性化させ、その後、同じ雰囲気中において該基材を負の電位に設定した上で炭化水素系ガスを供給し、かつ高周波の高電圧パルスをかけることにより、該基材表面にアンダーコートを介在させることなしに直接、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状の炭素水素固形物微粒子を気相析出させることにより、これら微粒子の堆積層からなる皮膜を形成する方法において、前記ステンレス鋼製基材として、CrとMoの質量含有量の和が、同じ基材中に含まれるNiとCuの質量含有量の和よりも7質量%以上多く含まれているステンレス鋼を用い、前記皮膜は、該皮膜中に含まれる水素量が13〜22原子%で、残部が炭素からなり、硬さがHv:1000〜2700の範囲にあることを特徴とする織機用部材の製造方法。
- 前記皮膜は、厚さが1.5〜10μmの範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の織機用部材の製造方法。
- 前記ステンレス鋼製基材は、研磨面の表面粗さが、Ra≦0.5μm、Rz≦1.5μmで、圧力:0.1〜1.0Paの不活性ガス中でプラズマエッチングして活性化させた表面を有することを特徴とする請求項4または5に記載の織機用部材の製造方法。
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