JP2000001755A - 耐硫酸露点腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents

耐硫酸露点腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法

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JP2000001755A
JP2000001755A JP17087898A JP17087898A JP2000001755A JP 2000001755 A JP2000001755 A JP 2000001755A JP 17087898 A JP17087898 A JP 17087898A JP 17087898 A JP17087898 A JP 17087898A JP 2000001755 A JP2000001755 A JP 2000001755A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高濃度の硫酸が凝結する環境での耐食性に優れ
るオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法を提
供する。 【解決手段】重量%で、C≦0.05%、Si:0.05〜1.0%、
Mn:0.1〜2.0%、Ni:12〜27%、Cr:16〜26%、Cu:3.
0超〜8.0%、Mo:0.5〜5.0%、Al:0.01〜0.5%、N<0.
05%、P≦0.04%、S≦0.005%、残部は Fe及び不純物の
化学組成で、鋼中に析出している金属Cuの量が面積割合
で 0.1%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼。そ
の製造法は、固溶化熱処理した後、更に、600〜1100℃
で5分以上加熱する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、火力発電や産業用
ボイラで使用される熱交換器、煙道、煙突などで問題と
なる硫酸腐食に対して優れた抵抗性を有するオーステナ
イト系ステンレス鋼及びその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】火力発電用や産業用のボイラ燃料として
使用される石油や石炭といった所謂「化石燃料」には硫
黄(S)が含まれている。このため、化石燃料が燃焼す
ると排ガス中に硫黄酸化物(SOx)が生成する。排ガ
スの温度が低下すると、SOxはガス中の水分と反応し
て硫酸となり、露点温度以下にある低温の部材表面で結
露し、これによって硫酸露点腐食が生ずる。
【0003】このため、排ガス系に使用される熱交換器
においては、部材表面で硫酸が露を結ばないように排ガ
ス温度を150℃以上の高い温度に保持していた。
【0004】ところが、近年のエネルギー需要の増大と
エネルギー有効利用の観点から、例えば熱交換器からの
排ガス温度を低くするというような、熱エネルギーをで
きるだけ有効に回収しようという動きがあり、硫酸に対
して抵抗性を有する材料(耐硫酸腐食性に優れた材料)
が求めれるようになってきた。
【0005】排ガス温度を150℃以上に保持しない場
合、一般的な組成の排ガスからは140℃程度の温度域
で、80%程度の高濃度の硫酸が部材表面で結露する。
このような硫酸に対しては、所謂「低合金鋼」が各種部
材用鋼として用いられてきた。これは、前記のような高
温高濃度の硫酸に対しては汎用のステンレス鋼よりも低
合金鋼の方が耐食性が大きいためである。
【0006】一方、防食技術(vol.26(1977
年)731〜740ページ)などに述べられているよう
に、硫酸の露点よりも20℃〜60℃温度が下がった領
域で硫酸による腐食が大きくなる。これは露点付近では
結露する硫酸の量が少ないためである。このため、排ガ
ス温度を150℃以上に保持しない場合には、一般に、
温度的には100℃近傍が最も耐食性を要求される領域
となり、ここでは硫酸の濃度は約70%となる。しか
し、この領域では汎用のステンレス鋼はもちろん低合金
鋼でも腐食量が大きく使用できない。
【0007】硫酸環境中にある部材に対しては、特定の
耐食材料を用いれば良いことが、例えば特開昭56−9
3860号公報、特開平2−170946号公報、特開
平4−346638号公報や特開平5−156410号
公報などで提案されている。
【0008】特開昭56−93860号公報には、温度
が100℃前後で、濃度が95%以上の硫酸環境中で優
れた耐食性を有する、Cr:18.0〜29.0%、N
i:20.0〜45%、Mo:4.0〜9.0%、S
i:1.5〜5.0%、Cu:0.5〜3.0%、M
n:2.0%以下、C:0.10%以下の化学組成から
なる「耐硫酸腐食性合金」が開示されている。しかし、
この公報で提案された鋼は、例えば前記した100℃近
傍で硫酸の濃度が約70%となる環境下での耐食性が必
ずしも充分ではない。
【0009】特開平2−170946号公報には、C:
0.004〜0.05%、Si:5%以下、Mn:2%
以下、Cr:18〜25%、Ni:14〜24%、M
o:1〜4.5%、Cu:0.5〜2.0%、Al:
0.05%以下、N:0.01〜0.3%を基本にP、
S及びOの含有量、耐全面腐食性指数及び耐隙間腐食性
指数を規制した、「耐食性の優れた煙突・煙道及び脱硫
装置用高合金ステンレス鋼」が提案されている。上記公
報に記載のステンレス鋼は、確かに50%濃度の硫酸に
1000ppmのFe3+と1000ppmのCl- とを
添加した環境下での耐食性には優れている。しかし、例
えば、既に述べた100℃近傍で硫酸の濃度が約70%
となるような環境下での耐食性は充分なものではない。
【0010】特開平4−346638号公報には、重量
で、C:0.050%以下、Si:1.00%以下、M
n:2.00%以下、P:0.050%以下、S:0.
0050%以下、Ni:8.0〜30%、Cr:15〜
28%、Mo:2%を超え7%以下、Cu:2%を超え
5%以下、N:0.05〜0.35%、B:0.001
5%を超え0.010%以下を含有し、Oを60ppm
以下とし、しかもCu、Mo、B及びOの含有量を特定
した、「熱間加工性に優れた耐硫酸露点腐食ステンレス
鋼」が開示されている。この公報に記載のステンレス鋼
は0.05重量%以上のNを含有させてオーステナイト
組織の安定化と耐食性の確保とを図ろうとするものであ
るが、Cu含有量が高い場合には、1000℃を下回る
温度域での熱間加工性の低下が著しい。
【0011】特開平5−156410号公報には、重量
%で、C:0.04%以下、Si:5〜7%、Mn:2
%以下、Cr:15〜25%、Ni:4〜24%、W:
0.5〜3%の化学組成からなる「高温、高濃度硫酸用
ステンレス鋼」が開示されている。しかし、この公報で
提案されたステンレス鋼は、Cuを含有していないの
で、例えば前記した100℃近傍で硫酸の濃度が約70
%となる環境下での耐食性が充分ではない。
【0012】Cu含有量を高めたオーステナイト系ステ
ンレス鋼としては、例えば、特開平9−176800号
公報に、重量%で、C:0.1%以下、Si:2%以
下、Mn:5%以下、Cr:10〜30%、Ni:5〜
15%、Cu:1.0〜5.0%を含み、必要に応じ
て、更に、Nb:0.02〜1%、Ti:0.02〜1
%、Mo:3%以下、Al:1%以下、Zr:1%以
下、V:1%以下、B:0.05%以下、REM(希土
類元素):0.05%以下の1種以上をも含む化学組成
で、マトリックス中のCuを主体とする第2相の分散量
を特定した「抗菌性に優れたオーステナイト系ステンレ
ス鋼」が開示されている。しかし、この公報で提案され
たオーステナイト系ステンレス鋼は、単に「抗菌性」を
対象とするものであり、多量のCuを含んでいても、N
含有量が高い場合には、前記した100℃近傍で硫酸の
濃度が約70%となる環境下での耐食性が充分でない。
更に、1000℃を下回る温度域での熱間加工性の低下
が著しくなる場合がある。又、Ni含有量が高々15%
であるので、前記した100℃近傍で硫酸の濃度が約7
0%となる環境下での耐食性が充分でない場合もある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高濃
度の硫酸が凝結する環境(硫酸露点環境)での耐食性に
優れ、火力発電用ボイラや産業用ボイラなどの排ガス系
部材、例えば、熱交換器、煙道や煙突などの部材に使用
可能なオーステナイト系ステンレス鋼とその製造方法を
提供することにある。
【0014】本明細書の以下の記載における「高濃度の
硫酸が凝結する環境」とは、「70〜140℃」の温度
で「50〜80%」の濃度の硫酸が結露する環境をい
う。なお、硫酸による腐食は既に述べたように、硫酸の
露点よりも20℃〜60℃低い温度域で最も大きくな
る。このため、本発明において耐食性は、特に、上記環
境で最も腐食性が高い100℃近傍で濃度が70%程度
の硫酸環境中での耐食性を確保することを課題とした。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記(1)に
示す耐硫酸腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス
鋼及び(2)に示すその製造方法にある。
【0016】(1)重量%で、C:0.05%以下、S
i:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、N
i:12〜27%、Cr:16〜26%、Cu:3.0
%を超えて8.0%以下、Mo:0.5〜5.0%、A
l:0.01〜0.5%、N:0.05%未満、P:
0.04%以下及びS:0.005%以下を含み、残部
はFe及び不可避不純物からなる化学組成で、更に、鋼
中に析出している金属Cuの量が面積割合で0.1%以
上であることを特徴とする耐硫酸露点腐食性に優れたオ
ーステナイト系ステンレス鋼。
【0017】(2)上記(1)に記載の化学組成を有す
るオ−ステナイト系ステンレス鋼を固溶化熱処理した
後、更に、600〜1000℃で5分以上加熱すること
を特徴とする耐硫酸露点腐食性に優れたオーステナイト
系ステンレス鋼の製造方法。
【0018】なお、本発明でいう「金属Cu」とは、ε
−Cuのような金属Cu単体をいう。又、鋼中に析出し
ている金属Cuの面積割合とは、透過型電子顕微鏡で観
察した場合における、析出したCuの面積割合のことを
指す。
【0019】以下、上記の(1)、(2)に記載のもの
をそれぞれ(1)、(2)の発明という。
【0020】本発明者らは、Ni−Crオーステナイト
系ステンレス鋼に「高濃度の硫酸が凝結する環境」で耐
食性を確保させるために、広範囲の濃度の硫酸に対して
耐食性試験を行って合金元素の影響を詳細に検討した。
その結果、下記の事項を知見した。
【0021】(a)前記した「高濃度の硫酸が凝結する
環境」、なかでも、硫酸濃度が70%、温度が100℃
の環境において、オーステナイト系ステンレス鋼に良好
な耐食性を付与するためには、電気化学的にアノード活
性溶解を抑えるとともに、カソード反応である水素発生
を抑制する作用を有するCuを重量%で3.0%を超え
て含有させ、しかも、Cuの一部を「金属Cu」として
所定量鋼中に析出させれば良い。
【0022】(b)Cuの一部を「金属Cu」として所
定量鋼中に析出させるためには、固溶化熱処理した後
で、適切な熱処理を施せば良い。
【0023】(c)前記した環境でオーステナイト系ス
テンレス鋼に良好な耐食性を付与するためには、上記
(a)の含有量のCuと、それぞれ適正量のMo、Cr
及びNiとを同時に含有させるとともにNの含有量を低
く抑えれば良い。
【0024】(d)Nの含有量を低く抑えれば、Cuの
含有量を高めたオーステナイト系ステンレス鋼であって
も熱間加工性は良好である。
【0025】本発明は、上記の知見に基づいて完成され
たものである。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の各要件について詳
しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「重
量%」を意味する。
【0027】(A)ステンレス鋼の化学組成 C:0.05%以下 Cは、強度を高める作用を有するが、Crと結合して粒
界にCr炭化物を形成し、耐粒界腐食性を低下させてし
まうので0.05%以下とする。強度を高める必要があ
る場合には0.03%を超えて0.05%までを含有さ
せても良いが、耐食性の確保が優先される場合には、C
の含有量は0.03%以下とすることが望ましい。
【0028】Si:0.05〜1.0% Siは、脱酸作用を有する。しかし、その含有量が0.
05%未満では添加効果に乏しい。一方、1.0%を超
えると熱間加工性の低下を助長し、Cu添加量の増加と
相俟って工業的規模での所望製品への加工が難しくなる
場合がある。したがって、Siの含有量を0.05〜
1.0%とした。
【0029】Mn:0.1〜2.0% Mnは、Sを固定して熱間加工性を向上させるととも
に、オーステナイトを安定化させる作用がある。しか
し、その含有量が0.1%未満では添加効果に乏しい。
一方、2.0%を超えて含有させてもその効果は飽和
し、コストが嵩むばかりである。したがって、Mnの含
有量を0.1〜2.0%とした。
【0030】Ni:12〜27% Niは、オーステナイトを安定化させる作用を有すると
ともに、前記した「高濃度の硫酸が凝結する環境」中で
の耐食性を高める作用もある。こうした効果を充分確保
するためには、12%以上の量のNiを含有させること
が必要である。しかし、Niは高価な元素であるため、
その含有量が27%を超えるとコストが極めて高くなっ
て経済性に欠ける。したがって、Niの含有量を12〜
27%とした。なお、「高濃度の硫酸が凝結する環境」
中で充分な耐食性を確保するためには15%を超える量
のNiを含有させることが好ましい。
【0031】Cr:16〜26% Crはオーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を確保す
るのに有効な元素である。特に、Nを後述の含有量に規
制したオーステナイト系ステンレス鋼において、16%
以上のCrを後述する量のCu及びMoとともに含有さ
せると、既に述べた「高濃度の硫酸が凝結する環境」で
良好な耐食性を確保することができる。しかし、Crを
多量に含有させると、N含有量を低くし、CuとMoと
を複合添加したオーステナイト系ステンレス鋼の場合で
あっても、前記の環境中における耐食性が却って劣化す
るし加工性の低下も生ずる。特に、Cr含有量が26%
を超えると前記環境中におけるオーステナイト系ステン
レス鋼の耐食性劣化が著しくなる。したがって、Crの
含有量を16〜26%とした。なお、熱間加工性の点か
らはCrの含有量を23%以下にすることが好ましい。
【0032】Cu:3.0%を超えて8.0%以下 Cuは、硫酸環境中での耐食性を確保するのに必須の元
素である。3.0%を超えるCuを前述の量のCr及び
後述する量のMoとともに含有させ、その上で、Cuの
一部を「金属Cu」として後述の量鋼中に析出させれ
ば、「高濃度の硫酸が凝結する環境」において、Nの含
有量を後述の範囲にしたオーステナイト系ステンレス鋼
に良好な耐食性を付与することができる。Cr及びMo
と複合添加するCuの含有量が多いほど耐食性向上効果
が大きいので、Cuの含有量は4.0%以上とすること
が好ましく、5.0%を超える量のCuを含有させるこ
とがより好ましい。なお、Cuの含有量を増やすことに
より前記環境中での耐食性は向上するが熱間加工性が低
下し、特に、Cuの含有量が8.0%を超えると、Nを
後述の含有量に制限しても熱間加工性の著しい劣化を生
ずる。したがって、Cuの含有量を3.0%を超えて
8.0%以下とした。
【0033】Mo:0.5〜5.0% Moはオーステナイト系ステンレス鋼の硫酸環境中での
耐食性を確保するのに有効な元素である。しかし、その
含有量が0.5%未満では前記の効果が得られない。一
方、Moを多量に含有させると熱間加工性が低下し、特
に、Moの含有量が5.0%を超えると、熱間加工性の
著しい劣化を生ずる。したがって、Moの含有量を0.
5〜5.0%とした。なお、Moの含有量は1.0〜
5.0%とすることが好ましい。
【0034】Al:0.01〜0.5% Alは、脱酸作用を有する。しかし、その含有量が0.
01%未満では添加効果に乏しい。一方、その含有量が
0.5%を超えると、Nを後述の含有量に制限したオー
ステナイト系ステンレス鋼であっても熱間加工性が低下
してしまう。したがって、Al含有量を0.01〜0.
5%とした。
【0035】N:0.05%未満 Nは、本発明において重要な意味を持つ元素である。従
来、Nはオーステナイト組織の安定化や耐食性向上の目
的から積極的に添加されてきた。しかし、本発明が対象
とする「高濃度の硫酸が凝結する環境」においては、N
の含有量が0.05%以上になると、前記した量のC
u、Mo及びCrを含有させたオーステナイト系ステン
レス鋼であっても、耐食性が低下してしまう。更に、C
uとMoの含有量の上限をそれぞれ8.0%、5.0%
にした場合であっても、Nの含有量が0.05%以上に
なると熱間加工性が低下してしまう。このため、「高濃
度の硫酸が凝結する環境」における耐食性と熱間加工性
とをオーステナイト系ステンレス鋼に付与させるため
に、Nの含有量を0.05%未満とした。なお、N含有
量は低ければ低いほど良い。
【0036】P:0.04%以下 Pは、熱間加工性及び耐食性を劣化させるのでその含有
量は低いほど良く、特に、0.04%を超えると「高濃
度の硫酸が凝結する環境」における耐食性の劣化が著し
い。したがって、Pの含有量を0.04%以下とした。
【0037】S:0.005%以下 Sは、熱間加工性を劣化させる元素であり、その含有量
はできるだけ少ない方が良い。特に、0.005%を超
えると熱間加工性の著しい劣化を招く。したがって、S
の含有量を0.005%以下とした。なお、S含有量は
0.003%以下とすることが好ましい。
【0038】(B)鋼中に析出している金属Cuの量
(面積割合) 上記の化学組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼
に対して「高濃度の硫酸が凝結する環境」における耐食
性を確保させるためには、鋼中に析出している金属Cu
の量(体積割合)を適正化しておくことが重要である。
なお、本発明では、金属Cuの体積割合を、直接的に測
定することが可能な「面積割合」で表示する。
【0039】鋼中に析出している金属Cuの量が面積割
合で0.1%未満では「高濃度の硫酸が凝結する環境」
における耐食性が確保できない。したがって、鋼中に析
出している金属Cuの量を面積割合で0.1%以上とし
た。なお、金属Cuが析出している面積割合の上限は特
に規定する必要はなく、8.0%含有させたCuのすべ
てが金属Cuとして析出した場合の面積割合、例えば4
%であっても良い。ここで、既に述べたように、鋼中に
析出している金属Cuの面積割合とは、透過型電子顕微
鏡で観察した場合における、析出したCuの面積割合の
ことを指す。
【0040】なお、「高濃度の硫酸が凝結する環境」に
おける耐食性を充分安定して確保するために、金属Cu
は鋼中に微細析出したものであることが好ましい。
【0041】(C)熱処理 鋼中に金属Cuを析出させるために、600〜1000
℃で5分以上加熱する熱処理を行う。加熱温度が600
℃未満では、Cu析出の核成長速度が遅くなって析出量
が不足する。一方、加熱温度が1000℃を超えると、
Cuの析出核が生成しにくくなるため、やはり析出量が
不十分となるしたがって、加熱温度を600〜1000
℃とした。
【0042】上記温度域での加熱時間が5分未満の場合
には、核の生成、成長が不十分となるため、析出量が不
足する。したがって、加熱時間を5分以上とした。この
加熱時間の上限は、特に規定する必要はないが、生産性
を高める目的から、例えば10時間程度を上限としても
良い。なお、10時間程度までの加熱では析出したCu
が凝集粗大化することはない。
【0043】なお、充分な耐食性を付与するために、鋼
中に金属Cuを析出させるための熱処理は、900〜1
000℃の温度域で少なくとも1時間加熱する処理とす
ることが望ましい。
【0044】
【実施例】表1に示す化学組成のオーステナイト系ステ
ンレス鋼を17Kg高周波真空溶解炉を用いて溶製し
た。表1における鋼1〜17は化学組成が本発明で規定
する範囲内にある本発明例の鋼であり、鋼18〜20は
その成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲か
ら外れた比較例の鋼である。
【0045】
【表1】
【0046】次いで、これらの鋼の鋼塊を通常の方法で
熱間鍛造、熱間圧延し、更に、1100℃で固溶化熱処
理して、厚さ6mm×幅100mm×長さ700mmの
板材を製造した。こうして得られた固溶化熱処理後の板
材から機械加工によって厚さ3mm×幅10mm×長さ
40mmの腐食試験片を作製し、表2に示す条件で熱処
理を施した。
【0047】
【表2】
【0048】熱処理した試験片の一部を、透過型電子顕
微鏡で観察して、鋼中に析出している金属Cuの面積割
合を測定した。
【0049】熱処理した試験片はその表面を#600の
エメリー紙で湿式研磨し、更にアセトンで脱脂してか
ら、次に示す硫酸腐食試験にも供した。すなわち、硫酸
が結露する環境を模擬する試験としての硫酸噴霧試験に
供した。
【0050】この硫酸噴霧試験においては、噴霧用ガス
として乾燥空気を用い、濃度が70%で温度が100℃
の硫酸を、試料面への付着速度が20mg/(cm2
h)の条件で100℃の腐食試験片に噴霧した。噴霧時
間は5時間とし、試験前後の重量変化を測定して腐食速
度を算出した。
【0051】表2に、鋼中に析出している金属Cuの面
積割合と硫酸噴霧試験の結果も併せて示す。
【0052】表2から、規定の量のCr、Cu、Ni及
びMoを含有し、且つ、鋼中に析出している金属Cuの
量が面積割合で0.1%以上である試験番号1〜13の
本発明例の場合においては、腐食速度は0.40〜0.
95g/(m2 ・h)と1.0g/(m2 ・h)を下回
り耐硫酸腐食性が優れていることがわかる。
【0053】これに対して、規定の量のCr、Cu、N
i及びMoを含有するものの、熱処理が本発明で規定す
る条件から外れ、鋼中に析出している金属Cuの量が本
発明で規定する量を下回る試験番号14〜17の比較例
の場合においては、腐食速度は1.8〜10.4g/
(m2 ・h)と大きく、耐硫酸腐食性が劣っている。
【0054】試験番号18の場合には鋼中に析出してい
る金属Cuの量は面積割合で0.1%以上あるものの、
用いた鋼がMoを含まない比較例の鋼18であるため腐
食速度は9.5g/(m2 ・h)と大きく、耐硫酸腐食
性が劣っている。
【0055】試験番号19の場合には用いた鋼がCuを
含まない比較例の鋼19であり、本発明で規定する条件
で熱処理しても鋼中に金属Cuが析出しない。このた
め、腐食速度は21.5g/(m2 ・h)であり、耐硫
酸腐食性が極めて劣っている。
【0056】試験番号20の場合には用いた鋼である比
較例の鋼20のCu含有量が本発明で規定する量を下回
り、しかも、本発明で規定する条件で熱処理しても鋼中
に析出している金属Cuの量が本発明で規定する量を下
回っている。このため、腐食速度は5.6g/(m2
h)で、耐硫酸腐食性が劣っている。
【0057】
【発明の効果】本発明のオーステナイト系ステンレス鋼
は、高濃度の硫酸が凝結する環境での耐食性に優れるの
で、火力発電用ボイラや産業用ボイラなどの排ガス系部
材、例えば、熱交換器、煙道や煙突などの部材に使用す
ることができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.05%以下、Si:
    0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:
    12〜27%、Cr:16〜26%、Cu:3.0%を
    超えて8.0%以下、Mo:0.5〜5.0%、Al:
    0.01〜0.5%、N:0.05%未満、P:0.0
    4%以下及びS:0.005%以下を含み、残部はFe
    及び不可避不純物からなる化学組成で、更に、鋼中に析
    出している金属Cuの量が面積割合で0.1%以上であ
    ることを特徴とする耐硫酸露点腐食性に優れたオーステ
    ナイト系ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の化学組成を有するオ−ス
    テナイト系ステンレス鋼を固溶化熱処理した後、更に、
    600〜1000℃で5分以上加熱することを特徴とす
    る耐硫酸露点腐食性に優れたオーステナイト系ステンレ
    ス鋼の製造方法。
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