JP2000001585A - 熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形品

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JP2000001585A
JP2000001585A JP17019498A JP17019498A JP2000001585A JP 2000001585 A JP2000001585 A JP 2000001585A JP 17019498 A JP17019498 A JP 17019498A JP 17019498 A JP17019498 A JP 17019498A JP 2000001585 A JP2000001585 A JP 2000001585A
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rubbery polymer
thermoplastic resin
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particles
polymer
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JP17019498A
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English (en)
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Masato Honma
雅登 本間
Akiyoshi Tamai
晃義 玉井
Shinichi Tamura
真一 田村
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ABS樹脂に代表される耐衝撃性に優れたゴム
質重合体含有熱可塑性組成物を(射出)成形してなる薄
肉成形品の耐衝撃性を一層高める。 【解決手段】熱可塑性樹脂組成物に含有されるゴム質重
合体がその内部に少なくとも2つのオクルージョン成分
を包含し、かつ該オクルージョン径、全オクルージョン
間の平均最近接距離、及びこれに該当するゴム質重合体
のしめる割合を規定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴム質重合体を含
有する耐衝撃性、成形加工性、表面外観が良好で、特に
薄肉衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物及びそれからな
る成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アクリロニトリル−ブタジエン−スチレ
ン共重合体(ABS樹脂)は、耐衝撃性、成形加工性及
び表面外観特性に優れた熱可塑性樹脂として、広く使用
されている。近年、OA機器、携帯電話や家電製品の軽
量化に伴い、その部品やハウジングの薄肉化が著しく進
んでいる。
【0003】そこで、薄肉化しても成形品の強度を保持
するため、ABS樹脂に代表されるゴム強化スチレン系
樹脂の衝撃強度を向上させる技術が一層必要である。
【0004】ここで、ゴム強化スチレン系樹脂はマトリ
ックスであるスチレン系樹脂中にゴム質重合体粒子が分
散した構造である。このとき、ゴム質重合体に予めマト
リックス樹脂と相溶性のある成分をグラフトしておくこ
とが必要であり、このグラフトゴムにより耐衝撃性を発
現している。マトリックスの強度を向上させようと高分
子量化することでも高衝撃化が期待できるが、樹脂の成
形加工性を損なうため、耐衝撃性向上技術としてはグラ
フトゴムに着目して検討が進められてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般的に、耐衝撃性を
向上させるためには粒子径の大きなゴム質重合体を使用
することが有効である。しかしながら、この方法では樹
脂成形品の表面外観や光沢性等が著しく低下するなどの
問題が生じる。また、小粒径のゴムと大粒径のゴムを併
用する、いわゆるバイモーダルゴムを使用する方法で
は、各々のゴムを別々に製造する必要があり、生産性・
経済性から商品価値が大きく損なわれることがある。
【0006】そこで、汎用性を維持しつつ耐衝撃性を向
上させるため、近年ゴム質重合体の特性からグラフト特
性まで検討してきたが、耐衝撃性と流動性、表面外観及
び光沢性のバランスを維持しつつ薄肉成形品の耐衝撃性
を著しく向上させる技術は見いだされていない。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題の
解決を鋭意検討した結果、汎用性、物性バランスを維持
しつつ衝撃特性、特に薄肉衝撃特性を著しく向上させる
手段として、グラフトゴムがある特定構造を有すること
が有効であることを見いだした。
【0008】即ち、本発明は、「ゴム質重合体を含有す
る熱可塑性樹脂組成物において、ゴム質重合体内部に
0.03〜0.3μmの径を有するオクルージョン成分
を少なくとも2個包含し、かつ該オクルージョン成分間
の平均最近接距離が0.1μm以下であるゴム質重合体
が、ゴム質重合体中20%以上の個数をしめることを特
徴とする熱可塑性樹脂組成物」である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を具体
的に説明する。本発明で重量とは質量を意味する。
【0010】本発明の熱可塑性樹脂組成物及びそれを成
形してなる成形品は、ゴム質重合体を含有しており、該
ゴム質重合体が熱可塑性樹脂マトリックスに対し、粒子
状に分散していることが好ましい。
【0011】分散性については、熱可塑性樹脂ペレット
及びその成形品を透過型電子顕微鏡観察において、ゴム
質重合体のみをオスミウム酸で染色することで確認でき
る。このとき、ゴム質重合体が個々に粒子状であること
が好ましく、特に10μmを越える凝集体が存在すると
表面外観特性が悪化するため、好ましくない。
【0012】また、本発明におけるゴム質重合体の数平
均粒径は0.6μm以下が好ましく、特に好ましくは
0.1〜0.6μmである。
【0013】ここで、使用するゴム質重合体としては、
共役ジエンを主成分とした重合体または共重合体が好適
である。このうち共役ジエンの含有量は60重量%以
上、特に75重量%以上が好ましい。具体的には、ポリ
ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、水素
化スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタ
ジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合
体及びイソプレンゴムなどを使用することができる。
【0014】上記ゴム質重合体の分散媒であるマトリッ
クスとしては、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル
系単量体及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体
からなる重合体が好ましく用いられる。
【0015】使用する芳香族ビニル系単量体としてはス
チレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビ
ニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレ
ン、o−クロロスチレン及びo,p−ジクロロスチレン
などが挙げられるが、特にスチレンが好ましく用いられ
る。これらは1種または2種以上を併用しても良い。
【0016】シアン化ビニル系単量体としては、アクリ
ロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリ
ルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好まし
い。
【0017】また、これらと共重合可能な他の単量体と
しては、不飽和カルボン酸系単量体、不飽和カルボン酸
無水物系単量体、不飽和カルボン酸エステル系単量体、
またはマレイミド系単量体などを用いることができる。
具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸
メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル
酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メ
タ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘ
キシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、無水マレイ
ン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エ
チルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−
フェニルマレイミド等が使用できる。
【0018】芳香族ビニル系単量体の割合は全単量体に
対し50〜90重量%が好ましく、特に好ましくは60
〜80重量%であり、シアン化ビニル系単量体の割合は
10〜50重量%が好ましく、特に好ましくは20〜4
0重量%である。
【0019】熱可塑性樹脂組成物の流動性、成形加工性
の観点から、芳香族ビニル系単量体の割合が50重量%
以上が好ましく、熱可塑性樹脂の強度、耐薬品性の観点
から、シアン化ビニル系単量体の割合が10重量%以上
が好ましい。また、これらと共重合可能な他の単量体は
50重量%以下で用いることにより本発明の目的を達成
させることが可能である。
【0020】ここで、ゴム質重合体と熱可塑性樹脂マト
リックスとは非相容であるため、ゴム質重合体にマトリ
ックスと相溶する成分がグラフトしていることが好まし
い。即ち、ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル系単量
体、シアン化ビニル系単量体及び必要に応じこれらと共
重合可能な他の単量体をグラフト重合することが好まし
い。
【0021】ここで、各単量体として、上記のマトリッ
クスである芳香族ビニル系重合体と同様の成分を同様の
範囲で使用することが好ましく、組成、グラフト量につ
いては特に制限はないがゴム質重合体の分散性を損なわ
ないような組成とグラフト量に調整することが好まし
い。
【0022】従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物及び
それからなる成形品は、グラフト重合体と芳香族ビニル
系重合体を主な構成成分とする。そこで、熱可塑性樹脂
をアセトンに溶解させると、ゴム質重合体を主成分とす
る不溶成分(A)と芳香族ビニル系重合体を主成分とす
る可溶成分(B)に分離することが可能である。
【0023】溶解条件としては、熱可塑性樹脂組成物に
対し、重量比で約100倍のアセトンとを70℃下、3
時間以上還流させることが好ましい。このとき、アセト
ン不溶成分(A)とアセトン溶液から抽出したアセトン
可溶成分(B)の重量比(A)/{(A)+(B)}
は、0.05〜0.5が好ましく、特に好ましくは0.
1〜0.3である。重量比が0.5を越えると熱可塑性
樹脂組成物の流動性が低下する場合があり、0.05未
満では十分な耐衝撃性が得られない場合がある。
【0024】また、アセトン可溶成分(B)のメチルエ
チルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は0.3〜
1.0dl/gが好ましく、特に好ましくは0.4〜
0.6dl/gである。極限粘度が1.0dl/gを越
えると樹脂組成物の流動性、成形加工性が低下する場合
があり、0.3dl/g未満では強度、耐衝撃性が低下
する場合がある。
【0025】本発明は、上記の熱可塑性樹脂組成物を射
出成形して得られた成形品、特に薄肉成形品での耐衝撃
性が著しく向上するものである。従来、耐衝撃性の指標
として12.7mmのノッチ付きアイゾット衝撃試験が
公知であるが、本発明では6.4mm及び3.2mmの
ノッチ付きアイゾット衝撃試験の結果を薄肉成形品とし
て評価した。
【0026】本発明は熱可塑性樹脂組成物のマトリック
スに分散しているグラフト化ゴム質重合体(以下、グラ
フトゴムとする)がある特定の構造をとる場合に達成さ
れる。構造観察は、透過型電子顕微鏡で行うことが可能
である。但し、観察箇所によっては、特に薄肉成形品の
場合、グラフトゴムの配向により、正確な形態観察に支
障をきたすことがある。そのため、透過型電子顕微鏡観
察を行うにあたり、観察されるゴム質重合体のアスペク
ト比が1.2以下である箇所で行うことが好ましい。ゴ
ムのアスペクト比は成形条件によっても異なるが、成形
品表層より中心部に向かって約500μmの箇所であれ
ば、ほぼ上記条件を満たすことが可能である。
【0027】本発明では、このとき観察されるグラフト
ゴムがその内部に少なくとも2つの0.03〜0.3μ
mの径を有するオクルージョン成分を包含し、かつ全オ
クルージョン間の平均最近接距離が0.1μm以下であ
るグラフトゴムが、観察断面中に観察されるグラフトゴ
ムのうち個数で20%以上であることが必要である。
【0028】本発明のオクルージョン成分とは、ゴム質
重合体の内部に存在する、芳香族ビニル系単量体、シア
ン化ビニル系単量体及びこれらと共重合可能な他のビニ
ル系単量体からなる重合体を意味し、熱可塑性樹脂ペレ
ット及び成形品をオスミウム酸で染色し透過型電子顕微
鏡にて観察したとき、染色したゴム粒子内部に粒子状の
無染色領域として確認できるものを指す。
【0029】この特定構造のグラフトゴムの個数が20
%未満では、本発明の成形品、とりわけ薄肉での耐衝撃
性が劣るため好ましくない。即ち、本発明においては、
グラフトゴム内部に包含される該オクルージョンが薄肉
成形品の耐衝撃性を向上させる。
【0030】一般にゴム質重合体を含む熱可塑性樹脂の
射出成形品では、薄肉化するほどゴム成分が配向するこ
とが公知である。ここでゴムが配向した場合、耐衝撃発
現機構のクレーズ生成の条件であるゴム質重合体の易変
形性が損なわれ衝撃強度は低下する。しかしながら、ゴ
ム内部にオクルージョン構造を有すると、ゴム質重合体
が配向過程で高弾性率化し、射出成形時のゴム成分配向
が抑制でき、特に薄肉成形品の耐衝撃性を著しく向上さ
せることができる。
【0031】そして、薄肉の成形品ではその表層部の配
向の影響が大きい。ここで、表層部の配向としては、成
形品表面から0.5〜2.5μm離れた位置で確認する
ことで求められる。この位置のゴム質重合体の配向、即
ちアスペクト比が5以下であると、本発明の効果である
耐衝撃性が十分に達成される。
【0032】ここで、オクルージョンが単独ではその効
果がほとんど得られないため、少なくとも2つのオクル
ージョン構造を含有することが必要である。かつ、オク
ルージョンの径が0.03〜0.3μmであるオクルー
ジョンを含むことが必要である。オクルージョン径が
0.3μmを越えると衝撃強度が逆に低下する傾向を示
すため、好ましくない。また、オクルージョン間の平均
最近接距離は0.1μm以下であり、これを越えると薄
肉成形品の耐衝撃性の向上効果が十分得られない。ここ
での最近接距離とは、同一ゴム質重合体内部に包含され
隣りあうオクルージョンの壁間を結ぶ線分のうち最短の
ものを指し、各ゴム質重合体毎に全最近接距離を平均し
たものが平均最近接距離である。
【0033】尚、観察するグラフトゴムは無作為抽出
で、少なくとも100個のゴム質重合体について観察す
る必要がある。
【0034】本発明の熱可塑性樹脂の製造方法について
は特に制限はなく、従来より公知の方法で製造すること
が可能である。即ち、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単
量体、シアン化ビニル系単量体及びこれらと共重合可能
な他の単量体混合物をグラフトさせる方法については、
従来公知の乳化重合、塊状重合などで製造することがで
きる。但し、工業的には乳化重合で製造することが品質
上有利である。
【0035】また、上記方法で得られたグラフト重合体
は、必要に応じ別途製造された芳香族ビニル系重合体と
溶融混練してもよい。該芳香族ビニル系重合体の製造方
法は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合のど
の方法でも製造することができる。また、溶融混練方法
についても、特に制限はなく、単軸及び二軸の押出機な
どを使用した簡便な方法で得ることができる。
【0036】本発明のゴム質重合体にオクルージョン構
造を包含させる方法についても制限はないが、グラフト
重合を行う前、もしくはグラフト重合時にゴム質重合体
内部形成させることが可能である。具体的には、ゴム内
部への浸透が可能な油溶性の重合触媒を使用する方法
や、単量体混合物を予め重合開始前に仕込む方法、及び
乳化剤の使用量を調節することでの製造が可能である。
【0037】また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には目
的に応じてカーボンブラック、チタン化合物及び各種の
色素を付与する顔料や染料、リン系、フェノール系の安
定剤、ハロゲン系化合物、アンチモン化合物、金属水酸
化物などの難燃剤、フェノール系、ホスファイト系及び
イオウ系などの酸化防止剤、ヒンダードフェノール系、
ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエー
ト系及びシアノアクリレート系の紫外線吸収剤、ワック
ス、高級脂肪酸や酸エステル系及び酸アミド系、更に高
級アルコールなどの滑剤及び可塑剤、ガラス繊維、タル
ク、鉱物などのフィラー等を添加することもできる。
【0038】本発明の熱可塑性樹脂組成物は射出成形を
行うことによって、特に薄肉成形品での耐衝撃性を著し
く向上させることができる。ここで、射出成形方法は一
般に公知な方法で、射出成形機のシリンダー温度は20
0〜250℃、金型温度は40〜80℃程度に設定する
ことで、本発明の効果を得ることが可能である。
【0039】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説
明する。
【0040】1.本発明の分析方法 (1)透過型電子顕微鏡観察 成形品断片にオスミウム酸を浸漬させ、一昼夜放置し
た。ミクロトームにて表層より500μmの部分を凍結
切削し、観察した。
【0041】(2)アセトン不溶成分の割合 成形品断片M(g)にM×100(cc)のアセトンを
加え、4時間還流した。この溶液を9,000rpmで
30分間遠心分離後、不溶成分を濾過した。この不溶成
分を60℃で5時間減圧乾燥し、重量A(g)を測定し
た。アセトン不溶成分の割合は、A×100/M(%)
で求められる。
【0042】(3)アセトン可溶成分の割合 (2)の濾液からアセトンを蒸発させ、その残留分にメ
タノールを添加してアセトン可溶成分を抽出した。抽出
物を60℃×3時間減圧乾燥した後、0.4g/100
ccのメチルエチルケトン溶液をメスフラスコで調整し
た。この溶液を用い、30℃の恒温槽内で極限粘度の測
定を行った。
【0043】2.本発明の評価方法 (1)ノッチ付きアイゾット衝撃試験(J/m) ASTM D256−56に準じて測定を行った。尚、
試験片は従来の試験として12.7mmを、薄肉衝撃試
験として6.4mm,3.2mmを用いた。
【0044】(2)溶融粘度 島津製フローテスターCFT−500を用い、以下の条
件で溶融粘度を測定した。
【0045】プランジャー面積:1cm2 ダイ孔径:1mmφ×2mm長 測定温度:230℃ 荷 重:50kg/cm2 (3)光沢 光沢測定用平板試験片でスガ試験機械製デジタル変角光
沢計UGV−50を用いて、入射角60度で測定した。
【0046】3.実施例および比較例の製造方法 (1)グラフト重合体の製造方法 ポリブタジエンゴムのラテックスをガラス製反応容器に
仕込み、さらに撹袢しながらイオン交換水に溶解したブ
ドウ糖、ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄を仕込み、
反応容器内の温度を65℃まで昇温した。
【0047】この混合液に、スチレン28重量部、アク
リロニトリル12重量部及びt−ドデシルメルカプタン
0.2重量部からなる単量体混合液、そしてクメンハイ
ドロパーオキサイドのオレイン酸カリウム水溶液を別々
にそれぞれ連続滴下してその単量体の95重量%以上が
重合した時点で重合を完結させた。
【0048】得られたグラフト重合体のラテックスを硫
酸で凝固し、水酸化ナトリウムで中和後、水洗、脱水、
乾燥してグラフト重合体パウダーを得た。
【0049】実施例、比較例とも使用する原料、薬品量
は同一である。
【0050】実施例では、グラフト重合を行う際に、単
量体混合液の添加を開始剤添加前から行い、ゴム質重合
体(固形分)60重量部、単量体混合液20重量部が反
応容器に仕込まれた後、クメンハイドロパーオキサイド
のオレイン酸カリウム水溶液を連続滴下し重合を開始し
た。一方、比較例では、ゴム質重合体(固形分)60重
量部、単量体5重量部が反応容器に仕込まれた後重合を
開始した。
【0051】また、単量体混合物及びクメンハイドロパ
ーオキサイドのオレイン酸カリウム水溶液の連続滴下の
方法については、実施例では1.5時間で滴下終了する
のに対し、比較例では2.5時間で滴下を終了した。
【0052】(2)芳香族ビニル系重合体の製造方法 攪拌装置を備えた重合槽内にスチレン70重量部、アク
リロニトリル30重量部からなる単量体を懸濁重合しビ
ーズ状重合体を得た。
【0053】(3)熱可塑性樹脂組成物の製造方法 グラフト重合体、芳香族ビニル系重合体の混合物100
重量部に対しエチレンビスステアリルアミド1重量部を
配合し、ヘンシェルミキサーで混合した。次に、40m
mφ単軸押出機により混練温度220℃で押出し、ペレ
ット化した。
【0054】尚、グラフト重合体と芳香族ビニル系重合
体の配合量は、熱可塑性樹脂組成物に含有されるポリブ
タジエンの含量が、実施例1および比較例1は11重量
%、実施例2および比較例2は16重量%となるように
設定した。
【0055】(4)熱可塑性樹脂組成物の成形方法 物性評価を行うため、成形温度230℃、金型温度60
℃の温度条件で射出成形し、所定の各試験片を作製し
た。成形圧力は成形下限圧より更に0.5MPa高い射
出圧力とした。
【0056】上記製造方法により、得られた物性評価結
果を表1に示した。また、図1〜4に実施例2及び比較
例2の透過型電子顕微鏡写真を示す。染色されている部
分がゴム質重合体成分である。図1および2は成形品表
面から500μm以上離れた位置での断面観察であり、
図3および4は成形品の表層から約4μmまでの断面観
察結果である。
【0057】
【表1】
【0058】表1および、図1〜4から以下のことが明
らかである。
【0059】実施例、比較例ともに、ゴム質重合体の分
散性は良好であり、その数平均粒径は0.6μm以下で
ある。
【0060】実施例2では、ゴム質重合体内部に複数の
オクルージョンを包含し、かつ径が0.05〜0.3μ
mの大きなオクルージョンを含有している。また隣り合
うオクルージョン間は0.1μm以下であり、ゴム質重
合体にほぼ均一にオクルージョンが分散しているのがわ
かる。
【0061】一方、比較例2では、ゴム質重合体内部に
は0.03〜0.3μm以上の大きなオクルージョンを
ほとんど包含していない。また、このオクルージョンを
包含しているゴム質重合体も若干みられるが、観察され
るゴム質重合体のうちの個数で10%程度である。
【0062】図3から実施例2では、成形品表層部での
ゴム質重合体の配向が5以下であるのに対し、図4から
比較例2では5を越える大きな配向が観察される。
【0063】以上のことから、実施例のような内部構造
によって、物性バランスを維持しながら薄肉試験片の耐
衝撃強度を向上させることができることがわかる。
【0064】
【発明の効果】本発明は、耐衝撃性、成形加工性、成形
品表面外観、光沢などの物性バランスが良好で、特に薄
肉成形品での耐衝撃性に優れている。
【0065】本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びそれか
らなる(特に射出成形してなる)成形品に関するもので
あり、OA機器、携帯電話や家電製品の部品及びハウジ
ングなどの広範囲な成形材料として用いられ、上記効果
は樹脂組成物に分散しているゴム質重合体の内部構造を
規定することによって発揮されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2のゴム質重合体の粒子構造に関する透
過型電子顕微鏡写真である(成形品表面から500μm
以上離れた位置)(倍率:50000倍)。
【図2】比較例2のゴム質重合体の粒子構造に関する透
過型電子顕微鏡写真である(成形品表面から500μm
以上離れた位置)(倍率:50000倍)。
【図3】実施例2のゴム質重合体の粒子構造に関する透
過型電子顕微鏡写真である(成形品の表層から約4μm
までの断面)(倍率:20000倍)。
【図4】比較例2のゴム質重合体の粒子構造に関する透
過型電子顕微鏡写真である(成形品の表層から約4μm
までの断面)(倍率:20000倍)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B29K 9:00 25:00 55:02 Fターム(参考) 4F206 AA13G AH42 JA07 4J002 BC061 BN142 BN152 FD010 FD020 FD030 FD090 FD130 FD170 GM00 GQ00 4J026 AA17 AA45 AA49 AA68 AA69 AC10 AC11 AC12 AC32 AC36 BA05 BA06 BA08 BA27 BA29 BA31 BA35 BA38 BB03 BB04 CA07 CA10 DB04 DB05 DB10 DB11 GA08 GA09

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ゴム質重合体を含有する熱可塑性樹脂組成
    物において、ゴム質重合体内部に0.03〜0.3μm
    の径を有するオクルージョン成分を少なくとも2個包含
    し、かつ該オクルージョン成分間の平均最近接距離が
    0.1μm以下であるゴム質重合体が、ゴム質重合体中
    20%以上の個数をしめることを特徴とする熱可塑性樹
    脂組成物。
  2. 【請求項2】ゴム質重合体が粒子状に分散しており、該
    ゴム質重合体粒子の数平均粒径が0.6μm以下である
    ことを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】ゴム質重合体を主成分とするアセトン不溶
    成分(A)と、アセトン可溶成分(B)とからなり、そ
    の重量比(A)/{(A)+(B)}が0.1〜0.5
    であることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑
    性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】アセトン可溶成分(B)が、芳香族ビニル
    系化合物単位を50〜90重量%、シアン化ビニル系化
    合物単位を10〜50重量%及びこれらと共重合可能な
    他のビニル系化合物0〜50重量%から構成される芳香
    族ビニル系共重合体を主成分とすることを特徴とする請
    求項1〜3いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】アセトン可溶成分(B)のメチルエチルケ
    トン溶媒、30℃で測定した極限粘度が0.3〜1.0
    dl/gである請求項1〜4いずれかに記載の熱可塑性
    樹脂組成物。
  6. 【請求項6】請求項1〜5いずれかに記載の熱可塑性樹
    脂組成物からなる成形品。
  7. 【請求項7】表面から0.5〜2.5μmの深さの位置
    に存在するゴム質重合体粒子のアスペクト比が5以下で
    あることを特徴とする請求項6記載の成形品。
  8. 【請求項8】射出成形して得られることを特徴とする請
    求項6または7記載の成形品。
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