WO2024181386A1 - ゲノムへのランダム変異導入法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ゲノム(原核生物のゲノム、真核生物の核ゲノムおよびオルガネラゲノム)に、ランダム変異を導入する方法の提供を課題とする。具体的には、本発明は、ゲノムDNAにランダムな変異を導入する方法であって、以下の(a)および/または(b)の工程を含む方法である。 (a)DNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させる工程、 (b)塩基置換酵素、または塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子の複合体を、細胞内に導入する工程。

Description

ゲノムへのランダム変異導入法
 本発明は、ゲノムDNAへランダムに変異を導入する方法に関する。
 植物や動物の育種法の1つとして、ランダム変異原処理を行った突然変異育種法がある。この方法は、何らかの方法でゲノム(核ゲノムおよびオルガネラゲノム)に損傷を与えることで、ゲノムの塩基置換や塩基の挿入欠失を引き起こし、生じた変異集団の中から望ましい形質を示す個体を選抜する方法で、いわゆる順遺伝学的なアプローチとして知られている。植物ゲノムへのランダム変異の導入は、初期の頃は、X線を用いて実施されていたが、その後、メタンスルホン酸エチル(Ethyl methane sulfonate:EMS)やN-ニトロソ-N-メチル尿素(N-Methyl-N-nitrosourea:NMU)などの化学変異原処理、γ線をはじめとする放射線による処理などが多く用いられるようになってきた。
 核にコードされた遺伝子やタンパク質に関する知見が蓄積されると、重要なタンパク質の機能を改善する「指向性進化」のために、特定の遺伝子領域に絞ったランダム変異(focused mutagenesis)を導入するerror prone PCRやDNAシャッフリングが行われるようになった。また、CRISPR/Cas9やBase editorに代表される「ゲノム編集」ツールにより、ゲノムDNAの一部だけを改変し、求める変異体を効率的に得ることが出来るようになった。ゲノム編集ツールであるCRISPR/Cas9やBase editorは指向性進化法のためのツールとしても応用され始めており、突然変異誘発の大きな流れはfocused mutagenesisに向いている。
 核ゲノムの遺伝子で逆遺伝学や指向性進化が盛んにおこなわれる一方、近年細胞質に存在するミトコンドリア(mt)ゲノムにおけるmitoTALENによる標的遺伝子の破壊(非特許文献1、非特許文献2)や、色素体(pt)ゲノムとmtゲノムの両方における標的一塩基置換(非特許文献3、非特許文献4、特許文献1)、そしてmitoTALENを応用したmtゲノム内のfocused mutagenesis(非特許文献5)が達成された。
 しかし、オルガネラゲノムには、遺伝子自体の機能やアミノ酸配列と機能の関係性、未知のORF(open reading frame)、遺伝子のシス配列・遺伝子間配列の役割など、多くの未解明点が残されている。開発された上記のオルガネラゲノムの直接改変法はそれらの未解明点を調べる有力な手段であるが、両オルガネラゲノム上のすべての遺伝子や遺伝子間領域を標的として改変を行うことは現実的ではない。そのため、知見の不足している段階で特に有力なゲノムワイドなランダム変異導入技術は、オルガネラゲノムに関する研究やそこから翻訳されるタンパク質の機能改善に重要な役割を果たすと言える。
 ptゲノムに関して、ランダム変異導入のための方法はいくつか報告されており、化学変異原処理による直接変異導入と核コードの遺伝子変異による副次的変異導入の二つに大別される。前者の例として、1960年台後半よりNMUを使った複数の高等植物へのptゲノム改変が行われ、以降標準的に用いられるようになった(非特許文献6)。また、核ゲノムへのランダム変異導入剤として一般的なEMSによっても、タバコ(Nicotiana tabacum)のルビスコ大サブユニット遺伝子(rbcL)点変異系統の創出(非特許文献7)や、赤トウガラシ(Capsicum annuum L.)の葉緑体コード遺伝子改変による抗生物質耐性の獲得が行われている(非特許文献8)。後者は主にオルガネラゲノム修復関連の核にコードされた遺伝子を変異させることによる。当初chloroplast mutator(chm)として単離されたMutS Homolog 1(msh1)変異が有名であるが、この遺伝子の変異はptゲノム、mtゲノムの両方に影響することが後に明らかとなった(非特許文献9)。また、why1why3二重変異体はptゲノム特異的な変異を引き起こすとされるが、それらは短い相同配列間の組換えを用いた誤修復による構造変化であると報告された(非特許文献10)。このように複数の報告がされている中で、ptゲノム特異的にランダムに点変異を導入する効率的な手法は確立していない。
 また、mtゲノムに関するランダム変異導入はより報告が少なく、二品種のタバコ細胞を融合させて新規のmtゲノム構造を得た例(非特許文献11)や、RNAiノックダウンのmsh1変異体における構造変化が引き起こすCMS(cytoplasmic male sterility)個体の創出(非特許文献12)、T-DNA挿入によるmsh1ホモ変異体とreca3ホモ変異体における構造変化(非特許文献13)、および複数のT-DNA挿入msh1ホモ変異体における野生型の100-1000倍の挿入欠失、10倍の塩基置換、構造変化(非特許文献9)などが挙げられるが、mtゲノムへ特異的に点変異を導入することは困難である。
 以上のように、オルガネラゲノムに対して、多様な突然変異変化を導入する技術は、未だに確立しておらず、さらなる改善された技術の開発が必要とされている。また、核ゲノムについても、新たな効率的な突然変異の導入法が望まれている。
WO2022/158561A1
Kazamaら, (2019) Nature Plants, 5, 722-730. Arimuraら, (2020) The Plant Journal: For Cell and Molecular Biology, 104, 1459-1471. Nakazatoら, (2021) Nature Plants, 7, 906-913. Nakazatoら, (2022) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 119, e2121177119. Fornerら, (2022) Nature Plants, 8, 245-256. Fluhrら, (1985) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 82, 1485-1489. Shikanaiら, (1996) Plant Molecular Biology, 31, 399-403. Subhashら, (1997) In Vitro Cellular & Developmental Biology-Plant, 33, 285-287. Wuら, (2020) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 117, 16448-16455. Marechalら, (2009) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 106, 14693-14698. Belliardら, (1979) Nature, 281, 401-403. Sandhuら, (2007) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 104, 1766-1770. Shedgeら, (2007) The Plant Cell, 19, 1251-1264.
 上記事情に鑑み、本発明は、ゲノム(核ゲノム、色素体ゲノムおよびミトコンドリアゲノムなどのオルガネラゲノム、ならびに原核生物のゲノム)に、ランダム変異を導入するための新たな方法の提供を課題とする。
 本発明者らは、ゲノムDNAにランダム変異を導入すべく、鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、まず、オルガネラゲノムを対象にして、研究を進めたところ、1)オルガネラゲノムのDNAポリメラーゼの変異体であって、DNA複製エラー頻度が上昇した変異体(例えば、エラー修復活性が低下または喪失したオルガネラDNAポリメラーゼの変異体など)を用いる方法、および2)塩基置換酵素(例えば、シチジンデアミナーゼなど)を用いてゲノムDNA中に1塩基置換を導入する方法、によりオルガネラゲノムへのランダム変異の導入が可能であることを見出した。
 本発明者らは、上記1)におけるオルガネラゲノムのDNAポリメラーゼ(以下「POP(Plant Organellar DNA polymerase)とも記載する」)として、大腸菌のDNA polymerase I(PolI)様の酵素に着目した。植物において、PolIの相同遺伝子は、種によって遺伝子の数が異なっており、また、それが機能するオルガネラも異なっている。例えば、モデル植物として知られているシロイヌナズナの核ゲノムには、PolIAとPolIBという2つのPolIがコードされているが、PolIAおよびPolIB共に、ミトコンドリアと葉緑体の両方に移行し、DNA複製を行うことが知られている。本発明者らは、シロイヌナズナにおいてPolIAおよびPolIBのポリメラーゼドメインの一方もしくは両方はそのままにし(変異などを加えない)、PolIAおよびPolIBのエキソヌクレアーゼドメイン(すなわち、複製エラー修復ドメイン)にアミノ酸置換を導入して機能不全にすることで、オルガネラゲノムへのランダムな点変異の導入が可能であると考えた。具体的には、PolIAをノックアウトし、PolIBのエキソヌクレアーゼドメインの活性を低下させたシロイヌナズナ変異体を作製した。この変異体のT2植物において、緑葉に斑入りが見られたことから、植物の葉の緑色をつかさどる葉緑体のゲノムに変異が入っていることが示唆された。
 さらに、本発明者らは、上記2)の塩基置換酵素として二重鎖DNA中のCをUに置換するシチジンデアミナーゼである、バークホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)に由来するdouble-stranded DNA deaminase toxin A(DddA)のシチジンデアミナーゼドメイン(cytidine deaminase:CDとも記載する)を使用した。また、CDとオルガネラゲノムDNAとの結合をサポートする因子として、ミトコンドリア局在の配列非特異的DNA結合タンパク質であるAtWHIRLY2(WHY2、AT1G71260)をCDに融合させ、CDとWHY2の複合体を作製した。この複合体に、オルガネラ移行シグナルを付加したコンストラクトを用いて、オルガネラゲノム特異的なランダム変異の導入を試みた。その結果、オルガネラゲノムに特異的に複数の点変異が導入されたことが確認され、特に、葉緑体ゲノムについては、点変異が導入されたことで斑入りの葉などの表現型が観察された。
 上記方法は,オルガネラゲノムのみならず、核ゲノムや原核生物のゲノムへのランダム変異の導入にも適用可能である。
 本発明は、上記知見に基づいて完成されたものである。
 すなわち、本発明は以下の(1)~(19)である。
(1)ゲノムDNAにランダムな変異を導入する方法であって、以下の(a)および/または(b)の工程を含む方法。
(a)DNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させる工程、
(b)塩基置換酵素、または塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子の複合体を、細胞内に導入する工程。
(2)ゲノムDNAにランダムな変異が導入された細胞を作製する方法であって、以下の(a)および/または(b)の工程を含む方法;
(a)DNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させる工程、
(b)塩基置換酵素、または塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子の複合体を、細胞内に導入する工程。
(3)前記DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性を低下または喪失させることにより、DNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記ゲノムがオルガネラのゲノムである、上記(3)に記載の方法。
(5)前記エキソヌクレアーゼ活性を低下または喪失させる方法が、オルガネラDNAポリメラーゼのExoII領域に存在するアスパラギン酸に変異を加えることである、上記(4)に記載の方法。
(6)前記変異がアスパラギン酸からアスパラギンへの置換である、上記(5)に記載の方法。
(7)前記DNAポリメラーゼのポリメラーゼドメインに変異を導入することにより、DNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の方法。
(8)前記塩基置換酵素がシチジンデアミナーゼである、上記(1)または(2)に記載の方法。
(9)前記シチジンデアミナーゼが、以下の(a)または(b)に記載のいずれかのタンパク質である、上記(8)に記載の方法;
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、シチジンデアミナーゼ活性を有するタンパク質。
(10)前記シチジンデアミナーゼと前記配列非特異的DNA結合因子との複合体が、シチジンデアミナーゼのN末端の一部分とそれ以外の部分との間に当該配列非特異的DNA結合因子が融合されているものである、上記(9)に記載の方法。
(11)前記シチジンデアミナーゼと前記配列非特異的DNA結合因子との複合体に、核移行シグナルペプチド、色素体移行シグナルペプチドまたはミトコンドリア移行シグナルペプチドを付加した該複合体のコードDNAを、植物細胞内の核ゲノムに導入し、該シグナルペプチドを付加した融合体を植物細胞内で発現させることを含む、上記(9)に記載の方法。
(12)前記シチジンデアミナーゼと前記配列非特異的DNA結合因子との複合体に、核移行シグナルペプチド、色素体移行シグナルペプチドまたはミトコンドリア移行シグナルペプチドを付加した該複合体のコードDNAを、植物細胞内の核ゲノムに導入し、該シグナルペプチドを付加した融合体を植物細胞内で発現させることを含む、上記(10)に記載の方法。
(13)上記(2)に記載の方法で作製された植物細胞。
(14)上記(13)に記載の植物細胞を含む種子または植物。
(15)塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子との複合体タンパク質
(16)前記塩基置換酵素が以下の(a)または(b)に記載のいずれかのタンパク質であり、前記配列非特異的DNA結合因子がWHY2である、上記(15)に記載の複合体タンパク質;
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、シチジンデアミナーゼ活性を有するタンパク質。
(17)核移行シグナルペプチド、色素体移行シグナルペプチドまたはミトコンドリア移行シグナルペプチドが付加された、上記(15)または(16)に記載の複合体タンパク質。
(18)上記(16)に記載の複合体タンパク質をコードする核酸。
(19)上記(17)に記載の複合体タンパク質をコードする核酸。
 なお、本明細書において「~」の符号は、その左右の値を含む数値範囲を示す。
 本発明によれば、ゲノムにランダム変異を導入することが可能である。さらに、本発明によりゲノムに変異が導入された生物の中から、形態や表現型に変化が認められたものを選択することができる。特に、有用な変異を示した生物に関しては、その変異を詳細に解析することで、動植物の育種、原核生物にあっては産業上有用な変異体の作出を行う上で、有効な情報を取得することが可能となる。
図1は、各種生物のDNAポリメラーゼの3'-5'エキソヌクレーゼドメインをアラインメントした図である。Clustal Omegaにより作成した。ExoI、ExoIIおよびExoIIIは、生物種間で保存されている領域である。 図2は、DNAポリメラーゼのExoII領域における、nTALECDの認識配列の生物種間の相同性(a)と、形質転換に使用した導入ベクターの概略図(b)を示す。 図3は、nTALECD_polIb_1333NCtag系統の遺伝子型AFLP解析結果と表現型を示す。aは、変異体と野生型のPolIB遺伝子の塩基置換部位を含むPCR産物を、制限酵素MseIで切断した時の仮想電気泳動像である。bは、T2世代におけるPolIB遺伝子の遺伝子型判定結果を示す。図に示しているうち#22-6がpolIb ホモ、それ以外がヘテロと判定できる。マーカーは100 bpラダーである。cは、T3世代におけるPolIB遺伝子の遺伝子型判定結果を示す。#22-6の自殖後代がすべてホモと判定されており、導入した変異が固定したと考えることができる。マーカーは100 bpラダーである。dは、Col-0(上図)およびnTALECD_polIb_1333NCtag(下図)のT3世代 (polIa tag homo + polIb exo- homo) の代表例を示す。左の写真にはrosette leavesに、右の写真にはcauline leavesに斑入りが観察される。Rosette leavesは低温処理終了後26日目の写真である。 図4は、NGSによるオルガネラゲノムDNA中のSNP(Single Nucleotide Polymorphism)変異を検出した結果を示す。 図5は、PTP/MTP-WHY2-CD-UGI(上図)およびPTP/MTP-CD-UGI(下図)のコンストラクトの概略図を示す。 図6は、pt/mtCWC 170またはpt/mtCWC188を導入したT1植物の表現型を示す。aは、pt/mtCWC 170およびpt/mtCWC188のコンストラクトの概略図である。Right Border(RB)とLeft Border(LB)間の植物の核ゲノムに挿入されるT-DNAの領域を示す。b-eは、シーケンス解析を行ったT1全個体および野生型(Col-0)の低温処理後(Days After Statidication;DAS)20日目の表現型を示す。スケールバーは2 mm。b、c、dおよびeは、各々、ptCWC 170、ptCWC 188、 mtCWC 170およびmtCWC 188の表現型である。 図7は、任意に選択したptゲノム上の三遺伝子(psbAatpFおよびclpP)における、ptCWC 188 T1個体で導入された塩基置換の状況を調べた結果である。aは、各遺伝子中に検出された塩基置換とその位置を示す。Silent:アミノ酸置換を引き起こさない変異(サイレント変異)。nonsense:終止コドンへの変化を起こす変異(ナンセンス変異)。Base No.:遺伝子のCDSの一番目の塩基から数えた番目。(5') -3~+3:変異したシトシンが含まれるDNA鎖側におけるシトシンの下流3 bpから上流3 bpの配列。bは、T1個体における各遺伝子中に検出された塩基置換数と置換割合を示す。TC→TTはGA→AAを含み、All TCはGAという文字列も含む。mutation rate / Kbは解読された配列の中で起こった全塩基置換(C:G→T:A + non C:G→T:A)をシーケンスリード長(seq. read)で除した値を千倍した値で、1 Kb当たりの変異の数を表す。 図8は、任意に選択したmtゲノム上の二遺伝子(ccmFCおよびnad5)における、mtCWC T1個体で導入された塩基置換を調べた結果(1)である。aはmtCWC170固体、bはmtCWC188固体について調べた結果を示す。Base No.:遺伝子のCDSの一番目の塩基から数えた番目。(5') -3~+3:変異したシトシンが含まれるDNA鎖側におけるシトシンの下流3 bpから上流3 bpの配列。黄背景はmtCWC 170とmtCWC188において共通に起こった塩基置換。(5') -3~+3の列における青文字は同時に置換されている可能性のある塩基。 図9は、任意に選択したmtゲノム上の二遺伝子(ccmFCおよびnad5)における、mtCWC T1個体で導入された塩基置換を調べた結果(2)である。aはmtCWC170固体、bはmtCWC188固体について調べた結果を示す。TC→TTはGA→AAを含み、All TCはGAという文字列も含む。mutation rate / Kbは解読された配列の中で起こった全塩基置換(C:G→T:A + non C:G→T:A)をシーケンスリード長(seq. read)で除した値を千倍した値で、1 Kb当たりの変異の数を表す。 図10は、CDに導入したアミノ酸変異の位置と、mtSepCD、pt/mt- G1309E、pt/mt-E1347Dおよびpt/mt-GSVGのコンストラクトの概略図を示す。aは、DddA全長におけるDddAtox, CD、CD half 1397N/Cおよび各アミノ酸置換の位置を示す概略図である。図の上部の数字はDddA全長におけるアミノ酸配列の番号を示す。bおよびcは、mtSepCD、pt/mt- G1309E、pt/mt-E1347Dおよびpt/mt-GSVGのコンストラクトの概略図である。Right Border(RB)とLeft Border(LB)間の植物の核ゲノムに挿入されるT-DNAを示す。 図11は、mtSepCD、pt/mt- G1309E、pt/mt-E1347Dおよびpt/mt-GSVGを導入したT1植物の表現型を示す。a-eは、一回目に播種を行った12個体のうち、PCRでT-DNAの核への挿入が確認されたT1植物または発芽不良個体、および野生型(Col-0)の14 DAS(mtSepCDは14、21 DAS)の表現型である。スケールバーは2 mm。fは、追加で播種したpt-E1347D、mt-E1347D、pt-GSVG、mt-GSVGの全個体の14 DASの表現型である。スケールバーは5 mm。gは、斑入りが見られたpt-GSVGの2個体の拡大図である。矢印は葉の斑入りの部分を示す。スケールバーは2 mm。 図12は、任意に選択したmtゲノム上の二遺伝子(nad5およびrps14)における、mt-GSVGおよびmtSepCD T1個体で導入された塩基置換を調べた結果である。aおよびbは、各々、nad5およびrps14中に検出された塩基置換とその位置を示す。Base No.:遺伝子のCDSの一番目の塩基から数えた番目。(5') -3~+3:変異したシトシンが含まれるDNA鎖側におけるシトシンの下流3 bpから上流3 bpの配列。 (5') -3~+3の列における青文字は同時に置換されている可能性のある塩基。cは、T1個体における各遺伝子中に検出された塩基置換数と置換割合を示す。
 以下に本発明の実施形態について説明する。なお、「本実施形態」と記す場合、特に断らない限り、本明細書に記載されている全ての実施形態を指すものとする。
 第1の実施形態は、ゲノムDNAにランダムな変異を導入する方法であって、以下の(a)および/または(b)の工程を含む方法である。
(a)DNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させる工程、
(b)塩基置換酵素、または塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子の複合体を、細胞内に導入する工程。
 本実施形態におけるゲノムとは、原核生物のゲノム、真核生物の核およびオルガネラのゲノムが含まれる。本実施形態において、オルガネラとは、細胞内小器官のうち、その内部にゲノムを有するオルガネラのことで、具体的には、ミトコンドリアおよび色素体のことである。本実施形態において、「色素体」とは、植物や藻類などの細胞中に存在する小器官のことで、光合成などの同化作用、糖や脂肪などの貯蔵、種々の化合物の合成などを行っている。色素体の例として、葉緑体、白色体および有色体などが挙げられる。
 本実施形態の工程(a)において、DNAポリメラーゼは、核に存在するゲノムDNA、ミトコンドリアや色素体に存在するゲノムDNA、または原核生物のゲノムDNAの複製に関与するDNAポリメラーゼのことである。原核生物のDNAポリメラーゼとして、特に限定はしないが、例えば、Pol I、Pol II、Pol IIIなどが挙げられる。真核生物の核のゲノムDNAの複製に関与するDNAポリメラーゼとして、特に限定はしないが、例えば、Polα、Polδ、Polεなどが挙げられる。オルガネラゲノムDNAの複製については、例えば、DNAポリメラーゼγ(Pol γ)が動物細胞のミトコンドリアゲノムDNAの複製に、POP(Plant organellar DNA polymerase)と称されるDNAポリメラーゼが植物細胞や原生生物の細胞のオルガネラゲノムDNAの複製に関与している。原核生物のDNAポリメラーゼ、真核生物のPolδ、Polε、PolγおよびPOPなどのDNAポリメラーゼは、DNA複製を担うポリメラーゼドメインと、複製の際に誤って取り込まれた塩基を削除して正しい塩基に修復する(すなわち、複製エラーを修復する)、エキソヌクレアーゼドメイン(3’→5’および/または5’→3’エキソヌクレアーゼ活性ドメイン)から構成されている。本実施形態において、DNAポリメラーゼの複製エラー頻度を上昇させるために、特に限定はしないが、例えば、細胞内に存在するDNAポリメラーゼのポリメラーゼ活性はそのまま維持し、エキソヌクレアーゼ活性のみを低下または喪失させてもよい。DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性の低下または喪失は、例えば、エキソヌクレアーゼドメインに変異を導入することによって達成することができる。
 また、細胞内に存在するDNAポリメラーゼのポリメラーゼドメインへの変異によりDNAの複製エラー頻度が上昇するとの報告がある(JiおよびDay, (2020). Nucleic Acids Research, 48, 11868-11879;Minnickら, (1999). The Journal of Biological Chemistry, 274, 3067-3075;ShinkaiおよびLoeb, (2001). The Journal of Biological Chemistry, 276, 46759-46764)。そこで、DNAポリメラーゼのポリメラーゼドメインに変異を導入することによっても、当該ポリメラーゼの複製エラー頻度を上昇させることが可能である。ただし、合成中のDNA鎖の3’末端の水酸基にヌクレオチドを付加するというポリメラーゼ本来の活性は野生型のポリメラーゼ同様に保持している必要はある。
 以下にオルガネラDNAポリメラーゼを例にして、本実施形態の説明を行う。
 オルガネラDNAポリメラーゼの3’→5’エキソヌクレアーゼドメインには、ExoI、ExoIIおよびExoIIIと称される領域が存在しており、これらの領域のアミノ酸配列は多くの生物種において保存されていることが示されている(例えば、Bernadら, (1989) Cell 59, 219-228など、および図1を参照のこと)。これら3つの保存された領域のうち、ExoII領域に存在するアスパラギン酸(D)(図1および図2aを参照のこと)に変異(欠失、置換など)を導入すると、エキソヌクレアーゼ活性が喪失することが報告されている(Takeuchiら, (2007) Plant Molecular biology 64, 601-611;Trifunovicら, (2004) Nature 429, 417-423)。従って、オルガネラDNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性は、エキソヌクレアーゼドメインのExoII領域のアスパラギン酸を欠失または他のアミノ酸に置換することにより、低下または喪失させることができる。当該アスパラギン酸の欠失または置換は、当該技術分野において周知の方法(例えば、TALE、CRISPR-Cas9などを用いた方法)により、核ゲノムにコードされているオルガネラDNAポリメラーゼ遺伝子のExoIIのアスパラギン酸コード領域を標的として、変異を導入することにより、実施することができる。
 あるいは、インビトロにおいて、オルガネラDNAポリメラーゼ遺伝子のエキソヌクレアーゼドメインをコードする領域に種々の変異を導入し、エキソヌクレアーゼ活性を低下または喪失させる変異を予め同定した後、当該変異を細胞内の核ゲノムに導入することによって、細胞内のオルガネラDNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性を低下または喪失させてもよい。このようなエキソヌクレアーゼ活性を低下または喪失させる変異の同定は、当業者であれば容易に実施することができる。
 ところで、植物のオルガネラDNAポリメラーゼは、種によって遺伝子の数や、どのオルガネラで機能するか(すなわち、ミトコンドリアで機能するか、色素体で機能するのか)が異なっている。例えば、シロイヌナズナの場合、オルガネラDNAポリメラーゼ遺伝子として、PolIAPolIBが同定されており、これらの遺伝子産物は、いずれもミトコンドリアおよび色素体の両方に移行し、DNA複製を行う 。これに対し、イネ科の植物においては、2つのオルガネラDNAポリメラーゼのうち、一方が色素体で機能し、他方がミトコンドリアで機能するというように、2つのポリメラーゼが異なる役割を持っていることが示唆されている。さらに、1種類のオルガネラDNAポリメラーゼしか持たない植物種も存在している。
 従って、植物細胞において、色素体とミトコンドリアを区別して、そのゲノムDNAにランダムな変異を導入する場合、2種類のオルガネラDNAポリメラーゼが各々異なるオルガネラで機能する場合には、所望のオルガネラで特異的に機能するDNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させればよい。他方、1または複数のDNAポリメラーゼが存在し、いずれのオルガネラにおいても機能する場合には、例えば、全てのオルガネラDNAポリメラーゼを欠失させた上で、所望の変異体オルガネラDNAポリメラーゼ(すなわち、DNA複製エラー頻度が上昇したDNAポリメラーゼ変異体)にミトコンドリアまたは色素体に特異的に移行させるためのシグナルペプチドなどを融合させたものを植物細胞内で発現させるなどの工夫をする必要がある。
 本実施形態の工程(b)において、塩基置換酵素とは、ゲノムDNAの任意の塩基を他の塩基に変換する酵素のことで、例えば、DNA中のシトシン(C)をウリジン(U)に改変する、バークホルデリア・セノセパシアのDddA(Burkholderia cenocepacia DddA)のシチジンデアミナーゼドメイン(以下「DddAtox」または単に「CD」とも記載する)(詳細は、WO2022/158561を参照のこと)、アデニン(A)をイノシン(I)に改変する、アデノシンデアミナーゼ(Choら, Cell, 185:1764-1776 2022などを参照のこと)などを例示することができる。
 本実施形態において、塩基置換酵素として、DddAtoxまたはDddAtoxと実質的に同一のタンパク質を用いることができる。DddAtoxとして、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を使用してもよい。また、DddAtoxと実質的に同一のタンパク質として、配列番号1で表されるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、最も好ましくは約99%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、シチジンデアミナーゼ活性(二重鎖DNA中のCをUに改変する活性)を有するタンパク質を使用してもよい。ここで、「シチジンデアミナーゼ活性」とは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質のシチジンデアミナーゼ活性と同等以下のシチジンデアミナーゼ活性のことである。ここで、「同等以下のシチジンデアミナーゼ活性」とは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質のシチジンデアミナーゼ活性と同程度か、またはより減弱化された活性、例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質のシチジンデアミナーゼ活性の約50%~約100%、約70%~約100%、または約90%~約100%のシチジンデアミナーゼ活性のことである。
 なお、本明細書において、「同程度」、「約」とは、±10%の数値範囲を意味する。
 DddAtoxと実質的に同一のタンパク質として、以下のタンパク質を例示することができる;
1.配列番号1で表されるアミノ酸配列中、37番目のセリン(S)がグリシン(G)に、59番目のグリシン(G)がセリン(S)に、109番目のアラニン(A)がバリン(V)に、129番目のセリン(S)がグリシン(G)に置換されたDddAtox変異体、
2.配列番号1で表されるアミノ酸配列中、58番目のグルタミン酸(E)がアスパラギン酸(D)に置換されたDddAtox変異体。
 また、本実施形態の工程(b)における配列非特異的DNA結合因子(本明細書中、単に「DNA結合因子」とも記載する)としては、特に限定はしないが、例えば、ミトコンドリアの局在するWHY2(アクセッション番号;Q8VYF7、AT1G71260)、WHY1(アクセッション番号;A0A654E9P6、AT1G14410)、WHY3(アクセッション番号;A0A178VLN3、AT2G02740)など、葉緑体に局在するPEND(Plastid envelope DNA binding protein)(アクセッション番号;AB189736、Q5DW98)、PTAC2(PLASTID TRANSCRIPTIONALLY ACTIVE2)(アクセッション番号;AT1G74850、A0A178WNJ2)、PTAC3(PLASTID TRANSCRIPTIONALLY ACTIVE3)(アクセッション番号;AT3G04260、F4J3M2)、GUN1(Genomes Uncoupled 1)(アクセッション番号;AT2G31400、A0A654EZ94)などを挙げることができる。本実施形態で使用される配列非特異的DNA結合因子は、塩基置換酵素がオルガネラゲノムDNAに結合または接触することをサポートまたは促進する効果を有している。
 本実施形態の塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子の複合体(以下「塩基置換酵素-DNA結合因子複合体」とも記載する)の塩基置換酵素とDNA結合因子は、ペプチド結合などによる直接結合であっても、リンカーなどを介した間接結合のいずれであってもよい。また、塩基置換酵素の全長とDNA結合因子の全長同士が結合していてもよく、その場合、いずれのタンパク質がN末端側であってもよい。あるいは、塩基置換酵素、またはDNA結合因子の両方またはいずれか一方が分割され(例えば、塩基置換酵素が分割され)、各分割分の間に他のタンパク質が挿入された複合体(例えば、塩基置換酵素のN端側とC端側の間にDNA結合因子が挟まれた複合体)であってもよい。
 より具体的に、塩基置換酵素としDddAtoxを使用し、DNA結合因子としてWHY2を使用する場合を例に説明を行う。DddAtoxは、適切な位置で分割された場合、2つの部分タンパク質が再会合してシチジンデアミナーゼ活性を回復する。例えば、配列番号35で表されるDddAtoxのアミノ酸配列において、第40番目から第100番目のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸間で分割してもよく、例えば、第44番目と第45番目のアミノ酸の間、第94番目と第95番目のアミノ酸の間で分割すると、再会合してシチジンデアミナーゼ活性を回復する。従って、上記アミノ酸位置で分割したDddAtoxのN端側部分、WHY2、DddAtoxのC端側部分、の順に融合させた複合体タンパク質は、WHY2によりゲノムDNAに結合すると、結合領域において、DddAtoxのN端側部分とC端側部分が再結合し、シチジンデアミナーゼ活性を回復することができる。従って、例えば、DddAtoxを所望の細胞内で発現させる際に、DddAtox毒性の影響が強く出るような場合には、上述のシチジンデアミナーゼ活性が減弱化されたDddAtoxを発現させてもよく、または、適切な位置で分割したDddAtoxのN端側部分とC端側部分の間にDNA結合因子が挿入された複合体を発現させてもよい。
 さらに、塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体には、他のペプチドやタンパク質が融合されていてもよい。
 例えば、塩基置換酵素としてDddAtoxを使用する場合、DddAtoxの作用を向上させる機能を有する他のタンパク質、例えば、ウラシルグリコシラーゼインヒビター(Uracil Glycosylase Inhibitor:UGI)などが融合されていてもよい。UGIは、Uを取り除くウラシルグリコシラーゼの活性を阻害する。従って、DddAtoxなどのシチジンデアミナーゼを塩基置換酵素として使用する場合には、UGIが、Cから改変されたUが除去されるのを防ぎ、その作用を向上させることができる。
 なお、塩基置換酵素として、シチジンデアミナーゼ以外の酵素を使用する場合においても、当該酵素の機能を向上させる他のタンパク質が融合されてもよい。
 塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体によってゲノムDNAに変異を導入するためには、まず塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体を細胞内で発現させる必要がある。さらに、真核生物細胞の場合において、核ゲノムDNA、オルガネラゲノムDNAに変異を導入するためには、当該塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体を細胞内で発現させたのち、各々、核またはオルガネラ内に輸送する必要がある。
 塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体を核内に輸送する方法として、塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体のコードDNAに核移行(局在)シグナル(nuclear localization signal/sequence:NLS)ペプチドを融合させて細胞内で発現させる方法を挙げることができる。本実施形態において使用可能な核移行シグナルペプチドは、限定はしないが、例えば、SV40ラージT抗原のNLSペプチド(PKKKRKV、配列番号57)、ヌクレオプラズミンのNLSペプチド(AVKRPAATKKAGQAKKKKLD、配列番号58)、EGL-13のNLSペプチド(MSRRRKANPTKLSENAKKLAKEVEN、配列番号59)、c-MycのNLSペプチド(PAAKRVKLD、配列番号60)、TUSタンパク質のNLSペプチド(KLKIKRPVK、配列番号61)などを挙げることができる。これら以外にも使用可能な核移行シグナルペプチドは存在しており、例えば、核移行シグナルのデータベースであるNLSdb(https://rostlab.org/services/nlsdb/browse/signals)などを参照のこと。
塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体をミトコンドリア内に輸送する方法として、塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体のコードDNAにミトコンドリア移行シグナルペプチド(明確な高次構造や配列相同性をもたないが、例えば、塩基性アミノ酸と複数の疎水性アミノ酸が交互に現れる特徴を示すペプチドなど)のコードDNAを融合させ、これを細胞内で発現させる方法を挙げることができる。本実施形態において使用可能なミトコンドリア移行シグナルペプチドは、動物細胞の場合、ヒトのATPase Fb1サブユニット由来のシグナルペプチド(Payamら, EMBO Mol Med, 6:458-466 2014)、ヒトのシトクロームcオキシダーゼ 第8サブユニット(Bacmanら, Gene Therapy, 17:713-720 2010) などを例示することができ、植物細胞の場合、例えば、シロイヌナズナのATPase δ’サブユニット由来のシグナルペプチド(MFKQASRLLS RSVAAASSKS VTTRAFSTEL PSTLDS、配列番号2)、イネのALDH2a遺伝子産物由来のシグナルペプチド(MAARRAASSL LSRGLIARPS AASSTGDSAI LGAGSARGFL PGSLHRFSAA PAAAATAAAT EEPIQPPVDV KYTKLLINGN FVDAASGKTF ATVDP、配列番号3)およびエンドウのシトクロームcオキシダーゼVb-3由来のシグナルペプチド(MWRRLFTSPH LKTLSSSSLS RPRSAVAGIR CVDLSRHVAT QSAASVKKRV EDVV、配列番号4)の他、シロイヌナズナのATPase βサブユニット由来のシグナルペプチドおよびchaperonin CPN-60由来のシグナルペプチド(Loganら, Journal of Experimental Botany, 50 865-871 2000およびイネのF1F0-ATPase inhibitor proteinのシグナルペプチド(Nakazonoら, Plant, 210 188-194 2000)などを挙げることができる。
 塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体を色素体内に輸送する方法として、塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体のコードDNAに色素体移行シグナルペプチド(明確な高次構造や配列相同性をもたないが、例えば、塩基性アミノ酸と複数の疎水性アミノ酸に富み酸性アミノ酸が少なく、タンパク質アミノ酸配列のN末端に付加することで葉緑体や色素体に特異的に選別輸送される機能を示すペプチドなど)のコードDNAを融合させて、細胞内で発現させる方法を挙げることができる。本実施形態において使用可能な色素体移行シグナルペプチドは、例えば、植物色素体に局在するタンパク質が持つシグナルペプチドが好ましい。好ましいシグナルペプチドとしては、限定はしないが、例えば、RECA1、RBCS、CAB、NEP、SIG1~5、GUN2~5などのタンパク質由来のシグナルペプチドの他、RPL12およびRPS9などの核コード葉緑体リボソームタンパク質由来のシグナルペプチド、核コード葉緑体tRNAアミノアシル転移因子由来のシグナルペプチド、核コード葉緑体ヒートショックタンパク質由来のシグナルペプチド、FtsZ、FtsH、MinC、MinD、MinEなどタンパク質由来のシグナルペプチド、核コード葉緑体光合成関連酵素複合体酵素群由来のシグナルペプチド、核コード色素体脂質代謝酵素群由来のシグナルペプチド、核コードチラコイド構成タンパク質群由来のシグナルペプチドなどがある。色素体移行シグナルペプチドについては、例えば、von HEIJNEら, European Journal of Biochemistry, 180, 535-545 1989などを参照のこと。
 場合によっては、オルガネラ移行ペプチドを付加した塩基置換酵素もしくは塩基置換酵素-DNA結合因子複合体をコードするプラスミドDNA、mRNAまたは塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子複合体を直接細胞内へ導入する方法(導入方法としては、例えば、ウィルス法、パーティクルガン法、PEG法、細胞膜透過性ペプチド法など)も使用可能である。
 本実施形態にかかる塩基置換酵素または塩基置換酵素-DNA結合因子質複合体(さらに、他のペプチド(シグナルペプチドなど)やタンパク質が結合されていてもよい)をコードするDNAは、当該技術分野において公知の方法により作製することができる。あるいは、市販のキットを使用して作製してもよい。
 第2の実施形態は、ゲノムDNAにランダムな変異が導入された細胞を作製する方法であって、以下の(a)および/または(b)の工程を含む方法である。
(a)DNAポリメラーゼの複製エラー修復活性を低下または喪失させる工程、
(b)塩基置換酵素、または塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子の複合体を、細胞内に導入する工程。
 第2の実施形態にかかる方法で作製された細胞は、当該細胞が由来する生物の変異個体または変異系統の作製のために使用してもよい。従って、本実施形態には、第2の実施形態にかかる方法で作製された細胞が含まれる他、当該細胞を含む生物個体も含まれる。例えば、植物を例にすると、第2の実施形態にかかる方法で作製された植物細胞、当該植物細胞を含む種子もしくは植物(植物成体)も本実施形態に含まれる。
 本実施形態(第1および第2の実施形態)における「細胞」は、原核生物の細胞および真核生物の細胞のいずれであってもよい。原核生物の細胞としては、特に限定はしないが、例えば、エシェリヒア属菌(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)など)、バチルス属菌(バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)など)、アグロバクテリウム(例えば、リゾビウム属菌(例えば、Rhizobium tumefacienceRhizobium rhizogenes)など)を用いてもよい。真核生物の細胞としては、特に限定はしないが、例えば、酵母[サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)など]、動物細胞の株化された細胞、動物の生体から採取した初代培養細胞(マウス胎児線維芽細胞MEF、初代培養神経細胞など)、ES細胞、iPS細胞、さらに、植物細胞としては、植物由来の培養細胞の他、植物由来の細胞(例えば、胚珠由来の細胞など)であってもよく、さらに、種々の形態の植物由来の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルス、未熟胚、花粉等が含まれる。
 動物としては、特に限定されず、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ヒトもしくは非ヒトの霊長類(例えば、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなど)などを挙げることができる。ほ乳動物以外では、例えば、線虫(C. elegans)、魚類(ゼブラフィッシュ)、両生類(アフリカツメガエル、ネッタイツメガエル)などを挙げることができる。
 また、植物としては、特に限定されず、種子植物であれば、いかなるものであってもよい。あえて例示するならば、例えば、イネ科植物、例えば、イネ、コムギ、トウモロコシ、オオムギ、ライムギ、ソルガムなど、あるいは、アブラナ科の植物、例えば、ミヤマナズナ属、シロイヌナズナ属(シロイヌナズナなど)、セイヨウワサビ属(セイヨウワサビなど)、イワナズナ属、アブラナ属[タアサイ、カラシナ、タカナ、セイヨウアブラナ、ミズナ、ハゴロモカンラン(ケール)、ハボタン、カリフラワー、キャベツ、メキャベツ(コモチカンラン)、ブロッコリー、チンゲンサイ、ノザワナ、アブラナ、ハクサイ、コマツナ、カブなど]、アマナズナ属、ナズナ属、タネツケバナ属、カラクサナズナ属、エダウチナズナ属、イヌナズナ属、キバナスズシロ属(ルッコラなど)、ハナダイコン属、ダイコンモドキ属、マガリバナ属、イオノプシディウム属、マメグンバイナズナ属、ニワナズナ属、ゴウダソウ属、マルコルミア属、アラセイトウ属、オランダガラシ属、オオアラセイトウ属、ダイコン属(ダイコン、ハツカダイコンなど)、ミヤガラシ属、イヌガラシ属、キハナハタザオ属、グンバイナズナ属、ワサビ属(ワサビなど)などに属する植物を使用することができる。さらに、トマト、ジャガイモ、ピーマン、シシトウ、ペチュニアなどのナス科植物、ヒマワリ、タンポポなどのキク科植物、ヒルガオ、サツマイモなどのヒルガオ科植物、コンニャク、タロイモ、サトイモ、ヤツガシラなどのサトイモ科植物、ダイズ、アズキ、インゲンなどマメ科植物、カボチャ、キュウリ、メロンなどのウリ科植物、タマネギ、ネギ、ニンニクなどのヒガンバナ科植物などを例示することができる。植物由来の培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。さらに、種々の形態の植物由来の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルス、未熟胚、花粉等が含まれる。
 本実施形態において、細胞内においてタンパク質(例えば、塩基置換酵素や塩基置換酵素-DNA結合因子複合体など)を発現させる場合、発現させる宿主細胞としては、例えば、細菌細胞(例えば、Escherichia coli B strainE. coli Kl2 strainCorynebacterium ammoniagenesC. glutamicumSerratia liquefaciensStreptomyces lividansPseudomonas putidaなど)、カビ(例えば、Penicillium camembertiiAcremonium chrysogenumなど)、動物細胞、植物細胞、バキュロウイルス/昆虫細胞または酵母細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae およびPichia pastorisなど)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 本実施形態において、タンパク質を発現させるための発現用ベクターは、各種宿主細胞に適したベクターを用いることができる。当該発現用ベクターは、第1および第2の実施形態にかかる方法において、細胞内でタンパク質を発現させる場合にも使用することができる。発現用ベクターとしては、例えば、pBR322、pBR325、pUC118、pETなど(大腸菌宿主)、pEGF-C、pEGF-Nなど(動物細胞宿主)、pVL1392、pVL1393など(昆虫細胞宿主、バキュロウイルスベクター)、pG-1、Yep13またはpPICZなど(酵母細胞宿主)、植物細胞用のバイナリーベクター(pBG、pBI、pGreen、pCAMBIA、pLC、pSB11、pSB200、pRI)などを使用することができる。これらの発現ベクターは、各々のベクターに適した、複製開始点、選択マーカーおよびプロモーターを有しており、必要に応じて、エンハンサー、転写終結配列(ターミネーター)、リボソーム結合部位およびポリアデニル化シグナル等を有していてもよい。さらに、発現ベクターには、発現したポリペプチドの精製を容易にするため、FLAGタグ、Hisタグ、HAタグおよびGSTタグなどを融合させて発現させるための塩基配列が挿入されていてもよい。
 発現用ベクターの作製は、当業者に公知の手法により実施することができ、適宜、市販のキットなどを使用して行うこともできる。また、本実施形態にかかる発現ベクターは単離または精製されていることが好ましい。
 発現させたタンパク質を培養菌体または培養細胞から抽出する際には、培養後、公知の方法で菌体または培養細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体または細胞を破壊したのち、遠心分離や濾過により、可溶性抽出液を取得する。特に、培養細胞を宿主として用いる場合は、培養上清中に発現させたタンパク質を、上清を回収する事により取得する方が望ましい。得られた抽出液または培養上清から、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて目的のタンパク質を取得することができる。公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、SDS-PAGE等の主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの電荷の差を利用する方法、アフィニティクロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法(例えば、GSTタグと共にポリペプチドを発現させた場合にはグルタチオンを担体に結合させた樹脂を、Hisタグと共にポリペプチドを発現させた場合にはNi-NTA樹脂やCoベースの樹脂を、HAタグと共にポリペプチドを発現させた場合には抗HA抗体樹脂を、FLAGタグと共にポリペプチドを発現させた場合には、抗FLAG抗体結合樹脂などを使用する方法)、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法または等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
 本明細書において引用されたすべての文献の開示内容は、全体として明細書に参照により組み込まれる。また、本明細書全体において、単数形の「a」、「an」、および「the」の単語が含まれる場合、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、単数のみならず複数のものを含むものとする。
 以下に実施例を示してさらに本発明の説明を行うが、実施例は、あくまでも本発明の実施形態の例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
I.オルガネラゲノムDNAポリメラーゼの複製エラー修復活性を低下または喪失させることによる、オルガネラDNAへのランダム変異の導入
I-1.材料と方法
I-1-1.解析ソフト
 遺伝子のアラインメント、系統樹の作成、塩基置換ターゲット部位の選定はすべてGeneious Prime(Biomatters, NZ) にて行った。
I-1-2.植物材料
 植物材料として、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana L.)の野生型(Col-0:Columbia-0)とその形質転換体(後述)を用いた。1/2 MS固形培地上で、7~8日間春化処理ののち22℃、長日条件(16時間-明 / 8時間-暗)で発芽させた。発芽後2~3週間でJiffy-7 pots(Jiffy, Nederland)に移植し、22℃、長日条件(16時間-明 / 8時間-暗)で生育させた。
I-1-3.形質転換体および変異体系統の作成
 形質転換体は、以下の対立遺伝子のものを用意した(表1)。
 T-DNA挿入系統 (SALK_022638, SALK_134274C)は、ABRC(Arabidopsis Biological Resource Center)より分譲を受けた。PolIAPolIBのエキソヌクレアーゼ活性の不活性化については、ゲノム編集の標的一文字置換酵素として、それぞれDddA11(Mokら, (2022). Nature Biotechnology, 40, 1378-1387)、DddA11のホモログ、DddA(Mokら, (2020). Nature, 583, 631-637) を用いたnTALECD(後述)による標的一塩基置換を、アグロバクテリウムによる遺伝子導入で行った。各対立遺伝子の単一変異体に加え、PolIAをT-DNAでノックアウトし(以下「tag」)、さらにPolIBのエキソヌクレアーゼ活性を不活性化(以下「exo-」)した二重変異体(polIa tag + polIb exo-)、polIa exo- + polIb tag、およびpolIa exo- + polIb exo-二重変異体を作製した。
 オルガネラゲノムのスクリーニングに用いる系統の作製は、既報(Wuら, (2020). Proceedings of the National Academy of Sciences, 117, 16448-16455)に開示される方法に基づいて行った。共通の野生型オルガネラゲノムを祖母に持つスクリーニング系統を作製するために、以下の手順に従って実施した。目的の変異をホモで持つ個体を花粉親とし、野生型を種子親として交配させ、目的遺伝子はヘテロ、細胞質は野生型を引き継いだF1を作出した。次に、そのF1を自殖させ、目的遺伝子について遺伝子型の分離したF2を得た。そのF2個体群の中から目的遺伝子がホモ、ヘテロまたは野生型である個体をそれぞれ3~5個体選抜し、これらをM1世代として自殖させ、オルガネラゲノムの解析を行う系統とした。
I-1-4.TALECD発現コンストラクトの作製
 PolIAおよびPolIBのエキソヌクレアーゼ活性を不活性化するために、nTALECD(nuclear Transcription Activator-Like Effector Cytidine Deaminase)発現コンストラクトを作製した。
 オルガネラDNAポリメラーゼと類似の活性を有する大腸菌のPolIにおいて、エキソヌクレアーゼドメインのExoII領域に存在するアスパラギン酸(図1を参照のこと)をアスパラギンへ置換することが、エキソヌクレアーゼ活性の不活性化に十分であることが示唆されている(Derbyshireら, (1991). The EMBO Journal, 10, 17-24)。さらに、当該アスパラギン酸に対応する、イネのオルガネラDNAポリメラーゼのアスパラギン酸をアルギニンに置換すると、大腸菌ポリメラーゼと同様にエキソヌクレアーゼ活性が喪失することが示されている(Takeuchiら, (2007) Plant Molecular biology 64, 601-611)。以上の知見を踏まえて、シロイヌナズナのPolIAおよびPolIBのExoII領域に存在する、上記アスパラギン酸と相同な位置のアスパラギン酸をアスパラギンに置換することにした(図2a)。
 標的のアスパラギン酸(PolIAに関しD368、PolIBに関しD361)をアスパラギン(N)に置換するためのnTALECD(nuclear Transcription Activator-Like Effector Cytidine Deaminase)発現コンストラクトは、既報(非特許文献3および非特許文献4)に開示される方法に若干の変更を加えた方法で作製した。TALEは、2分子がセットになって標的配列を指定する(TALE leftおよびTALE right)ので、1コンストラクトにつき左右2種類のTALEを作製した。TALEのDNA結合モチーフは、Platinum Gate TALEN Kit(Sakumaら, (2013). Scientific Reports, 3, 3379)を使用して作製した。TALE leftおよびTALE raight各々のN末端には核移行シグナル(NLS)が付加されている。また、C末端にはDouble-stranded DNA deaminase toxin A (DddA) 、またはDddA11を特定のアミノ酸番号(1333番目と1397番目)で分割したサブユニットが連結されている。これらの分割サブユニットは、標的塩基部位において会合することにより、シチジンデアミナーゼとして機能する。
 TALE leftとDddAサブユニットを含むpENTR_L1-L4、HSP terminatorおよびRPS5A promoterを含むpENTR_R4-R3、TALE rightとDddAサブユニットを含むpENTR_L3-L2の3種のエントリーベクターを、LR Clonase II Plus enzyme mix(invitrogen)を用いたmulti-LR反応(ThermoFisher Scientific)によってGatewayデスティネーションベクターに導入した。デスティネーションベクターは、pK7WG2(Karimiら, (2002). Trends in Plant Science, 7, 193-195)にRPS5A promoterをさらに含むように構築した(図2b)。
I-1-5.シロイヌナズナ植物体への形質転換
 シロイヌナズナ植物体への形質転換は、フローラルディップ法(Floral dipping)(Cloughら, (1998) The Plant Journal : For Cell and Molecular Biology, 16, 735-743)により実施した。形質転換体の選抜には、種子特異的発現GFPを用い、T1種子において発光する種子を形質転換個体として選抜した。その後、T2種子においてGFPを発現していない種子を選抜することで、ヌルセグリガントを確認した。
I-1-6.ゲノムDNAの抽出
I-1-6-1.次世代シーケンス(NGS:Next-Generation Sequencing)用DNA抽出
 オルガネラゲノムの変異とオフターゲット(Off-target)解析のためのNGSは、Illumina社のシーケンサーを用いた。発芽後3~4週間のシロイヌナズナのロゼット葉を採取し、液体窒素で凍結させたのち、ジルコニアビーズを使用して、マルチビーズショッカー(安井機械)で30秒、1800 rpm処理して破砕した。その後の抽出プロトコルはDNeasy Plant Pro Kit(QIAGEN)を使用し、添付の使用説明書に従い実施した。
I-1-6-2.簡易DNA抽出
 上記サンプル以外の植物について、遺伝子型の同定が必要なものについては簡易DNA抽出を行った。発芽後1~2週間のシロイヌナズナの本葉を採取し、それをPlant Very Rapid PCR Isolation Buffer(100 mM Tris pH9.5、10 mM EDTA pH8.0)中で、98℃で15分間インキュベートした。
I-1-7.各変異体の遺伝子型の同定
 T-DNA挿入系統については、既報(O’Malleyら, (2015). A User's Guide to the Arabidopsis T-DNA Insertion Mutant Collections, 323-342)に開示される方法に基づいて作製したプライマーを用いて遺伝子型を決定した。TALECDによって塩基置換を創出した系統については、標的部位を含む領域をPCRした後、サンガーシーケンスによる塩基配列に解析、制限酵素MseIによる切断結果に基づいて、その遺伝子型を同定した。すなわち、PCR産物および制限酵素処理産物を、TBE bufferおよび0.1% EtBrを含む1%または3%アガロースゲル上で、電圧100Vの電気泳動を行うことで遺伝子型を判定した。使用したプライマーを表2に示す。
I-1-8.NGS解析
 polIa tag + polIb exo-系統(系統名はnTALECD_polIb_1333NCtag。名付けのルールは後述)について、次世代シーケンサーNovaseq6000(Illumina)を用いて全ゲノム配列のシーケンスを行った。得られたそのデータをコンセンサス配列にマッピングさせることにより、形質転換体のオルガネラゲノムに導入された有意な量の塩基多型、挿入および欠失を検出した。
I-2. 結果
I-2-1.PolIBエキソヌクレーゼ不全系統の作出
 polIa tagホモである系統に対して、PolIB遺伝子のエキソヌクレアーゼ部位の標的アミノ酸に対し、nTALECDによる形質転換を行い、エキソヌクレアーゼ活性の不活性化を試みた(当該系統を、nTALECD_polIb_1333NC/1397NCtagとする)。nTALECD_polIb_1333NCコンストラクトを導入した形質転換体のT2世代において、polIb exo-ホモ個体とヘテロ個体の各々を取得し自殖後代を得た(図3aおよびb)。T2世代でpolIb exo- ホモとなった1個体(図3Bの#22-6)について、その子であるT3世代を播種した。polIapolIbの変異がホモに揃ってから2世代目である(図3c)。T3植物の形態を観察したところ、緑葉に斑入りが認められた(図3d)。斑入りが認められた葉は、そのほとんどがロゼット葉ではなく、花芽に付随して生える葉であった。この結果は、植物の葉の緑色をつかさどる葉緑体のゲノムに変異が入っていることを示唆している。polIa tagの単一変異体では、緑葉に斑の入った表現型は観察されなかったことから、ここで得られたpolIb exo- ホモとなった植物の表現型は、PolIBのエキソヌクレアーゼ活性に変異が導入されたことにより生じたと考えられる。
I-2-2.NGSによるオルガネラゲノム変異検出
 図3dに示した個体の兄弟にあたる3個体について、全ゲノム配列のシーケンスを実施した。NGS readを葉緑体(AP000423)とミトコンドリア(BK010421)のリファレンスゲノム塩基配列にマッピングし、そのコンセンサス配列を比較したところ、ホモプラスミーに固定された変異は見出すことができなかった。
 そこで、さらに微細な(allele frequencyの低い)SNP変異を検出するために、さらに解析を進めた。その結果を図4に示す。
 サンプル中の全てのオルガネラゲノムコピーに変異が入った状態(ホモプラスミー) や、オルガネラコピーのうち一部に変異が入り(ヘテロプラスミー)、 かつそれが過半数である、という変異は検出できなかったものの、WT allele frequency < 0.5%*となるような箇所にSNP変異が見つかった (図4)。ミトコンドリアゲノム(BK010421)については、解析した3サンプルに共通した変異(69022 bp、CからTへの置換)が見つかった。または、葉緑体ゲノム(AP000423)に関しては、1サンプル(#22-6-9)についてallele frequencyが10%を上回る変異が見つかった(123260 bp、AからTへの置換)。さらに、#22-6-1についても変異が見つかっている (126016 bp、TからAへの置換)(図4) 。なお、すべてのサンプルについて、ミトコンドリアゲノムのコピー数の変化は見られなかった。
 以上の結果から、ホモ変異は検出できなかったものの、葉緑体ゲノムとミトコンドリアゲノムの両方に、野生型と異なる多数の、また多様な塩基置換変異(C to T、C to A、G to Cなど)の創出が確認された。そのアリル頻度は野生型のアリル頻度平均(ノイズと思われる)を引いたもので10%を超えるものもあり、最近の知見(Brozら, (2022) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 119, e2206973119)からも、数%のアリル頻度の変異ゲノムの混在が、当該世代もしくは次の世代で容易に逆転して優勢になりホモ固定化される可能性は十分に高いと考えられる。
II.塩基置換酵素(本実施例ではシチジンデアミナーゼを使用)、または塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子の複合体を用いたオルガネラDNAへのランダム変異の導入
II-1.材料と方法
II-1-1.
 植物材料として用いたシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana ecotype:Col-0)とそれに由来する変異体は1/2濃度のMS固形培地上(0.8%または0.5% agarおよびクラフォラン125 mg/L)、およびJiffy-7 pots(Jiffy, Nederland)で生育させた。播種後5-7日間4℃で春化処理を行った後、温度22°C、光強度160-215μmol/m2 sec、明期16時間、暗期8時間の培養器内で生育させた。
II-1-2.シチジンデアミナーゼ(CD)のクローニングとCD-WHY2融合遺伝子の構築
 塩基置換酵素として用いたdouble-stranded DNA deaminase toxin A(DddA)の1290番目から1427番目の部分(配列番号1)(以下「cytidine deaminase = CD」と記載する)は大腸菌でクローニングするために無毒化する必要があった。そのためのCDのコード領域内のSalI切断箇所に早期終止コドン化を引き起こす挿入配列を組み込んだエントリーベクター“CD-SalI-inserted”をIn-Fusion HD Cloning Kit (TaKaRa)により作製した。挿入配列はWHIRLY2WHY2)遺伝子(アクセッション番号:AT1G71260)中の422番目の塩基から522番目の塩基を用いた。
CDは一部のコンストラクトでDddAの1397番目のアミノ酸を境に二分割して用いており、N末端側をCD half 1397N、C末端側をCD half 1397Cと記載する。融合タンパク質CWC(CD half 1397N-WHY2-CD half 1397C)およびSepCD(Separated CD half)は、In-Fusion反応によりエントリーベクターを作製した。ベクターのlinearizationはいずれもNew England Biolabs製の制限酵素により行った。In-Fusion反応はすべてKitに添付の使用説明書に従い、プライマーや制限酵素は表3に記載のものを使用した。
 エントリーベクターは、LR反応(LR ClonaseTM II Plus enzyme;Thermo Fisher Scientific、USA)によりデスティネーションベクター(ミトコンドリアまたは葉緑体移行シグナル、RPS5A遺伝子のプロモーター、35sターミネーター、およびオレオシンプロモーター::オレオシン-GFP融合タンパク質を持つ)に組み込んだ。
II-1-3.植物の形質転換
 シロイヌナズナの形質転換はAgrobacterium tumefaciens C58C1株を用い、フローラルディップ法により行った。
II-1-4.形質転換体の選抜
 フローラルディップ法を経てTiプラスミドが導入された個体の種子は、オレオシンプロモーター::オレオシン-GFP融合タンパク質の発現によりGFP蛍光を呈する。したがって蛍光実体顕微鏡下で蛍光種子を選別することで、形質転換体(核ゲノムにゲノム編集酵素発現ベクターを持つ個体)の選抜を行った。
II-1-5.葉緑体/ミトコンドリア標的ペプチド(PTP/MTP)
 核に導入されたベクターからの翻訳産物を葉緑体へ移行させるための標的ペプチド(Plastid Targeting Peptide = PTP)は、シロイヌナズナの第一染色体上にコードされるRECA1(アクセッション番号:AT1G79050)のN末端側から54アミノ酸の配列を用いた。また、ミトコンドリア標的ペプチド(Mitochondria Targeting Peptide = MTP)はシロイヌナズナの第五染色体上にコードされるATPase F1複合体のδサブユニット(アクセッション番号:AT5G47030)のN末端側から36アミノ酸の配列を用いた。
II-1-6.DNA粗抽出
 植物に含まれるDNAをPCRにより増幅するための準備として、簡易抽出バッファー(100 mM Tris・HCl (pH 9.5)、10 mM EDTA (pH8.0))25μLに本葉一枚(成長に著しく遅延のあった個体に関しては地上部全体)を浸し、98℃で15分間熱を加えた。その後25~50μLの滅菌蒸留水を加えた。
II-1-7.PCR
 核ゲノムへのTiプラスミド挿入の成否をPCRによっても確認した。Tiプラスミド中のカナマイシン耐性遺伝子NPTIIの一部をKOD One(登録商標)PCR Master Mix -Blue-(Dye-containing 2×PCR Master Mix)(TOYOBO)を用いて増幅し、電気泳動によりバンドの有無を確認した。
II-1-8.ミトコンドリアと葉緑体のゲノムの一部シーケンスのための遺伝子増幅
 ミトコンドリアと葉緑体のゲノムにおけるランダム変異の有無を簡易的に確認するために、それぞれのゲノムから2、3箇所を選択し、PCRで増幅した。また、核ゲノムにおけるオフターゲットの確認のため、1箇所(ELM1)をPCRで増幅した。PCR反応にはQuick Taq(登録商標)HS DyeMix(TOYOBO)を用い、計15μLの反応液で40サイクル行った。そのうち2μLは確認のため電気泳動に用い、残りの13μLをFastGene Gel/PCR Extraction Kit(日本ジェネティクス)によりDNAを精製した。表4のプライマーを用いた。
II-1-9.サンガーシーケンスによる解析
 サンガーシーケンスはすべてEurofins Genomicsに委託した。データはGeneious Prime (Biomatters, New Zealand)を用いて行った。
II-1-10.表現型解析
 植物の表現型のための撮影はカメラ(EM-5;Olympus)を用いた。
II-2.結果
II-2-1.完全長CDによるアグロバクテリウムの増殖阻害
 完全長のCDは、Tiプラスミド中で安定的にクローニングされ(図5)、アグロバクテリウムを介した植物の形質転換を試みたが、ここでアグロバクテリウムが増殖しない現象が生じた。PTP-CD -UGIのコンストラクト(図5下)でのみアグロバクテリウムが増殖したため、フローラルディップを行い、形質転換種子を得た。しかし、このT1植物からDNAを抽出し、2個体に関して核ゲノムに組み込まれたT-DNAの配列を調べたところ、CDの遺伝子部分に少なくとも400 bpを超える挿入配列が検出された。この配列をblast x(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)により調べたところ、アグロバクテリウムが持つトランスポゼースの配列(Sequence ID:NSY71839.1)と相同であった。このことは、アグロバクテリウムが毒性に抵抗し何とかCDに変異を導入したものだけが生き残ったことを示唆している。従って、完全長のCDを保持するアグロバクテリウムが増殖することは困難であると判断した。そこで、バクテリアが生存可能であり、植物に対する致死的な表現型を回避しつつ塩基置換を導入する活性を有した新規融合タンパク質の構築を開始した。
II-2-2.pt/mtCWC融合タンパク質によるランダム点変異の検出とT1植物の致死表現型
 一塩基置換酵素における分割位置(DddA全長のアミノ酸配列の1397番目と1398番目の間で分割されている;CD half 1397N、CD half 1397Cと記載する)の間にWHY2を挟み込んだコンストラクトを作製した。これはCD間に物理的な障害を生じさせることにより活性のあるCDが形成されるための障壁を設けることを意図した。分割されたCDが活性を持つためには分子内、もしくは分子間で偶発的にCD half 1397NとCD half 1397Cが接触する必要がある。
 また、WHY2は基本的にミトコンドリアへ局在するとされるが、インビトロでは葉緑体への輸送も確認されている。そのため、WHY2のオルガネラ標的ペプチドによって輸送された後に融合タンパク質が分断されることを防ぐため、予測されるオルガネラ標的ペプチドを取り除いた。TargetP-2.0(https://services.healthtech.dtu.dk/service.php?TargetP-2.0)によりWHY2のアミノ酸配列の29番目、32番目、67番目の位置に標的ペプチドの切断部位が予測された。67番目については他の二箇所よりも予測の確率が低いとされていたため、これを考慮し68番目のアミノ酸まで取り除いた170残基のWHY2を用いたコンストラクト(PTP/MTP-CD half 1397N-WHY2(170 aa)-CD half 1397C-UGI;pt/mtCWC 170と記載する)、そして50番目のアミノ酸まで除いたWHY2(188 aa)を用いたpt/mtCWC 188の二通りを設計・構築した。
 計4通りのコンストラクトは、卵細胞のごく初期から強い発現を示すことでゲノム編集に有効であるとされるプロモーターpRPS5Aにより発現させた(図6a)。フローラルディップ法には各コンストラクト14~16個体の野生型のシロイヌナズナ(Col-0)を用いた。GFP蛍光によりTiプラスミドの核への挿入が成功したと思われる種子(個体)数は、ptCWC 170では総種子量400μLのうち50μLを調べて45粒、ptCWC 188では総種子量300μLのうち250μLを調べ21粒、mtCWC 170では総種子量400μL全てを調べて17粒、mtCWC188では総種子量400μL全てを調べ7粒であった。それらをptCWC 170では25粒、その他のコンストラクトでは全種子を播種した。ptCWC 170では全25個体が発芽し、22/25個体が野生型Col-0と大差のない成長を示したが、中には成長が遅延したと思われる個体(#4、7)や子葉が白色であった個体(#12)が含まれていた(図5b)。ptCWC 188では、21個体中1個体が発芽しなかった。野生型と変わらない成長を示した個体が1個体あったが(#8)、播種し発芽した20個体のうち18個体は地上部全体が白色で、致死性であった。残りの1個体はPCRでTiプラスミドの挿入が確認されなかった(図5c)。mtCWC 170の播種した17個体中の2個体は発芽しなかった。4個体(#5、8、13、14)は本葉の出ない致死性の表現型であり、7個体(#2、6、10、11、15、16、17)は重度の成長遅延が見られた。残りの4個体はT-DNAの挿入がPCRで確認されなかった。mtCWC 188では播種した7個体全てが発芽したが、4個体(#2、3、6、7)が本葉の出ない致死性の表現型であり、1個体(#1)が野生型様、残りの2個体はT-DNAの挿入がPCRで確認されなかった。(図6d、e)。
 続いて、T1植物より粗抽出したDNAから、それぞれのコンストラクトでゲノム上の複数の領域を選択してPCRで増幅した。葉緑体ゲノム上の三つの遺伝子(psbAatpFclpP)およびミトコンドリアゲノム上の二遺伝子(ccmFCnad5)を選び、PCRで増幅したのちサンガーシーケンスにより遺伝子の塩基配列を確認した。
 まず、ptCWC 170では成長遅延の個体(#4)、子葉が白色であった個体(#12)、やや成長遅延が疑われる個体(#1、2)、野生型様の成長が見られた個体(#3、11、13、14)の計8個体に関してシーケンスを行った。全8個体についてpsbAが830 bp(CDS領域内に収まる)、atpFが865 bp(イントロン領域~第二エキソン領域)、ccmFCが200 bp(第二イントロン領域~第三エキソン領域)配列が解読できたが、この領域内に塩基置換は確認されなかった。なお、ccmFCでは配列の途中にアデニンの13塩基長のタンデムリピートが存在しており、おそらくその影響でPCRまたはサンガーシーケンス用のポリメラーゼによる誤取り込みが起こり、波形が乱れたと考えられる。
 一方、ptCWC 188では、唯一の野生型様表現型を示す #8と、白色致死の表現型を示す #1、2、3、5、6の計6個体に関してシーケンスを行った。そのうち5個体について解読された配列全体にC:G→T:Aの(サンガーシークエンスで確認できるレベルで)ヘテロプラスミーの塩基置換が導入されていた。塩基置換が確認された5個体は地上部全体が白色の致死表現型を示していたもので、野生型様の表現型であった#8の個体では塩基置換は確認されなかった。また全ての塩基置換は5'-TC(変異塩基Cの直前がT)というコンテクストで起こっており、先行研究において大腸菌でCDを発現させた際のコンテクストと一致していた(図7;Mokら, (2020). Nature, 583, 631-637. doi:10.1038/s41586-020-2477-4)。また、塩基置換が確認された5個体の1 Kb当たりの塩基置換数を計算すると2.41-8.43 /Kb(psbA)、1.16-3.47 /Kb(atpF)、10.0-30.0 /Kb(clpP)の範囲であった。また、すべてのTCモチーフの内の2.33-8.14%(psbA)、0.86-2.59%(atpF)、8.33-25.0%(clpP)に塩基置換が導入されていた(図7b)。塩基置換の発生したTCモチーフの位置は各個体で揃っており、共通性を持っているように思われる(図6a、b)。
 同様に、mtCWC 170/188においてccmFCnad5領域をシーケンシングした。mtCWC 170では致死表現型であった#5、13、14に関してシーケンスを行ったところ、三個体全てでヘテロプラスミー以上の塩基置換が検出された。mtCWC 188では唯一の野生型様表現型であった #1と、致死表現型であった #2、6、7の計4個体に関してシーケンスを行った。mtCWC 188の#1では塩基置換が検出されず、致死表現型を持つ3個体でヘテロプラスミー以上の塩基置換が検出された。1 Kb当たりの塩基置換は、mtCWC 170で5.56-40.9 /Kb(ccmFC)、15.0-41.5 /Kb(nad5)の範囲、mtCWC 188で24.7-66.7 /Kb(ccmFC)、43.7-74.5 /Kb(nad5)と、非常に高い塩基置換の密度が確認された(表5. c, d)。さらに驚くべきことに、mtCWC 170/188の両方において、1細胞内に多コピー(50-120程度)であるmtゲノムについてホモに塩基置換が起こったと思われるホモプラスミーが確認された(図8a、b)。また、中にはTCコンテクスト以外での塩基置換も存在していた。確認された7種類の例外箇所のうち、5種類はTCCというコンテクストにおいてTに隣接する方のCが塩基置換されており、TTCという配列を持ったDNA鎖が混在している。(図8a、b)。
 mtCWC 170では2つの遺伝子で全個体あわせて54箇所、mtCWC 188では全個体で計67箇所のヘテロプラスミー以上の塩基置換が確認された(図8a、b)。大部分の塩基置換の位置はコンストラクト内、またはmtCWC 170-mtCWC 188間で揃っていると思われた(2遺伝子で合計45の共通箇所、図8a、b)。mtCWC 170でのみ確認された塩基置換は2遺伝子合わせて9箇所(mtCWC 170で確認された塩基置換中の16.7%)、mtCWC 188では22箇所(同様に、32.8%)であった。
II-2-3.CWC融合タンパク質による標的特異的に確認された塩基置換
 CWC融合タンパク質を導入したT1個体のシーケンス解析により、シーケンスリード全体に渡る多数の塩基置換が確認された。続いて、塩基置換がオルガネラ標的ペプチドによって標的としたそれぞれのオルガネラに特異的なものであるのかを簡易的に確認するために、ptCWC 170/188導入個体においてmtゲノム上の遺伝子nad5の、mtCWC 170/188導入個体においてはptゲノム上の遺伝子psbAのDNA配列を、サンガーシーケンスにより調べた。また、全4コンストラクトにおいて核ゲノムの第五染色体上に座上する遺伝子ELM1ELONGATED MITOCHONDRIA1)の配列に関しても確認した。この遺伝子はミトコンドリアの正常な形態の維持に役割を持っているが、ミトコンドリアの形態に最も重度の異常を及ぼすT-DNA挿入による遺伝子破壊も植物の生育には大きな影響を示さないことが報告されている(Arimuraら, (2008). Plant Cell, 20, 1555-1566. doi:10.1105/tpc.108.058578)。図7、図8で調べた全個体に関して上記の通り2遺伝子ずつを調べたところ、非標的のゲノム上の遺伝子における塩基置換は確認されなかった。
 以上の結果から、標的としたオルガネラゲノムに特異的な多数の点変異を導入されたことが示された。
 なお、ここまでに得られた変異体はいずれも致死性の表現型を示しており、さらに遺伝子内、遺伝子間に複数存在する多重変異の影響を受けていると考えられる。変異を誘導して得られる変異集団は多様な表現型を持ち、それを特定の遺伝子の残基の変異に紐づけることができる遺伝型を持つことが望ましい。そこで次なる試みとして、CDの活性を低下させ、導入される塩基置換をより少なく調節するための改良を行った。
II-2-4.CDの分断(Separated CD half)、及びアミノ酸置換導入CDによる緩和した表現型
 CDによって導入される塩基置換の程度をより低く制御するために、二通りの戦略を立てた。一つはCWC融合タンパク質を改良したSeparated CD half(SepCD)である。WHY2と結合させたCD half 1397 NおよびCD half 1397Cのそれぞれの遺伝子の後にターミネーターを配置した(図10b)。これにより別々の分子となったCD half断片が出会う確率を低下させることを狙った。このコンストラクトは現在のところミトコンドリアを標的としたもののみで試みた(mtSepCD)。
 もう一方の戦略ではCDの活性を低下させると予想される三種類のアミノ酸置換を導入したCDを利用する。一種類目は、Error-prone PCRにより得られた四重アミノ酸置換変異体(DddA全長におけるS1326G, G1348S, A1398V, S1418G;GSVG変異体)で、CDの毒性の低下が報告されている(Mokら, (2022). Nature Communications, 13 4038. doi:10.1038/s41467-022-31745-y)。二種類目と三種類目は先述した完全長CDの大腸菌でのクローニングにおいて、本発明者らによって見出された変異体である。DddA全長内の1309番目のアミノ酸がグリシンからグルタミン酸に置き換わった変異体(G1309E)と、1347番目のアミノ酸がグルタミン酸からアスパラギン酸に置き換わった変異体(E1347D)を用いた(図10a)。1347番目のグルタミン酸は亜鉛に結合し脱アミノ酸反応を触媒する塩基で、デアミナーゼファミリー間で非常に高度に保存されており、このグルタミン酸をアラニンに置換した変異体E1347Aは失活酵素、または活性の低い酵素であると報告されている。よって、E1347Dも低い酵素活性を持つ可能性があると考えた。以上3種類のアミノ酸置換を持つCDを用いて融合タンパク質を設計した(それぞれG1309E、E1347D、GSVG と呼ぶ。)(図10b)。これらの変異体CDのうちmt-G1309Eは、野生型のCDを用いた際と同じように、アグロバクテリウムの増殖を阻害した。pt-G1309Eを導入した場合は、プレート培養時にわずかに得られたコロニーからの液体培地での大量増殖が確認されたが、菌液を用いたPCRでCD部位を増幅し配列を確認したところ、CDの上流に結合されているWHY2 に入った塩基置換により、早期の終止コドンへの変化が起こっていた。このことからG1309Eを持つCDは野生型のCDと同様に強い活性を有していると判断し、植物への形質転換に利用することを断念した。
 従って、mtSepCD、pt-E1347D、mt-E1347D、pt-GSVG、mt-GSVGの計5コンストラクトをシロイヌナズナに形質転換した。mtSepCDではフローラルディップ法に12個体を用い、pt/mt-E1347D、pt/mt-GSVGの4コンストラクトではフローラルディップ法に8個体を用いた。Tiプラスミドの核への挿入が成功したと思われるGFP蛍光を呈する種子数はmtSepCDでは総種子量500μL全てを調べて2粒、pt-E1347Dでは総種子量350μLのうち75μLを調べて41粒、mt-E1347Dでは総種子量200μL全てを調べて22粒、pt-GSVGでは総種子量500μLのうち75μLを調べて29粒、mt-GSVGでは総種子量650μLのうち100μLを調べて29粒であった。まず、それぞれのコンストラクトで12粒ずつ(mtSepCDでは得られた2粒のみ)GFP蛍光種子を播種した(図11a-eは播種した全個体を表す。ただし、cの#8、dの#12はPCRでT-DNAが陰性であったため除く)。サンガーシーケンス、およびT2種子の確保のために、アミノ酸置換導入CDを用いた4コンストラクト(pt-E1347D、mt-E1347D、pt-GSVG、mt-GSVG)は追加で順に15粒、8粒、15粒、15粒ずつ播種を行った(図11f)。
 pt -E1347Dでは、播種した27個体のうち3個体が発芽しなかった。発芽した24個体のうち19個体はおおよそ野生型様の表現型を示したが、生長遅延(#1、4、9、10)や子葉の黄色変(#11)が疑われる個体も存在していた(図11a、f)。mt -E1347Dでは、播種した22個体のうち4個体が発芽しなかった。発芽した18個体のうち11個体は野生型様表現型、5個体で生長遅延(#1、5、7、8、13)、2個体で葉の黄色変(#1、4)が観察された。(図11b、f)。pt-GSVGでは26個体全てが発芽した。13個体で生長遅延(#1、2、4、5、6、7、9、10、11、12、19、21、27)、3個体で子葉の白/黄色化(#9、18、27)などに加え、葉緑体ゲノム変異の代表的な表現型といわれる斑入りの葉が確認された(#13、15)(図11c、f、g;gの矢印は斑入りの部分を示す)。一方、mt-GSVGにおいては顕著な生長遅延が全26個体を通じて確認された(図11d、f)。中にはMS培地上で複数の本葉をつけたものがあったが、土に植え替えると生長せず致死であったため、T2種子は得られなかった。
 mtSepCDに関してはT1の2個体のうち1個体(#1)は野生型に近い、もしくは生長遅延した表現型が観察されたが、その後土でも生長しT2種子が得られた。またもう1個体(#2)は赤黒い茎が観察され、21 DASの時点で栄養生長を止め花蕾が見られた(図11e)。この個体は土への植え替え後に致死となった。
II-2-5.mtSepCDおよびアミノ酸置換導入CD による塩基置換効率の低減化
 それぞれの個体について個別に塩基置換を調べるため、ptゲノム、mtゲノム上から任意に選んだ2つずつの遺伝子、および核ゲノムの遺伝子ELM1についてPCRで配列を増幅しサンガーシーケンシングを行った。ptゲノムはpsbArbcL、mtゲノムはnad5rps14を選択した。rbcLは光合成における炭素固定を触媒する酵素の大サブユニットをコードする。rps14は内部にストップコドンがあり、核ゲノムに機能型配列が存在する偽遺伝子であることが知られている。
 pt-E1347Dは#4、5、6、13、14、25、27の7個体、およびpt-GSVGは#4、6、13、14、15、19、21、22、24の9個体がptゲノム上の2遺伝子に関して調べられた。今回のコンストラクトではT2種子を得ることも目的としていたため、野生型様もしくは斑入りで土への植替え後も生長する見込みのある個体に関してシーケンスを行った。いずれの個体でもpsbAは800 bp以上、rbcLは700 bp以上がシーケンスで配列が解読された。この領域での塩基置換はpt-E1347D の#5におけるrbcLで確認された弱いシグナルにより示唆される低頻度のプラスミ―のみであった。この塩基置換はrbcLの106番目のアスパラギン酸をアスパラギンに変化させるもので、置換後のチミンと野生型のシトシンが混在したヘテロ、またはキメラの状態であると考えられる)。
 mtゲノム上の2遺伝子に関してはmt-E1347Dの#1、4、13、19、mt-GSVGの#13、15、18、25、SepCDの#1、2が調べられた。mt-E1347Dに関しては成長遅延個体(#1、13)と野生型様個体(#4、19)を2個体ずつ調べた。また、mt-GSVGに関してはできるだけサイズの大きい個体を選んだ。nad5は約750 bp、rps14は約600 bpが全個体に関して配列解読され、そのうちヘテロプラスミーの塩基置換がmt-GSVGの4個体(#13、15、18、25)、およびSepCDの2個体で検出された(図12b)。nad5で検出された塩基置換はすべてmtCWCのいずれかのコンストラクトでも検出されたものであった(図12a)。nad5では全TCのうち1.02-7.14%、rps14では1.18-4.71%に塩基置換が導入されており、1 Kb当たりの塩基置換は1.33-9.33箇所(nad5)、1.63-6.50箇所(rps14)であった(図12c)。
II-2-6.ターゲットとしたオルガネラ以外のゲノムにおける塩基置換の検出
 pt-E1347Dのうちの4個体(#4、5、13、14)、pt-GSVGの4個体(#13、15、21、22)に関して、mtゲノム上のnad5と核ゲノム上のELM1の配列を増幅しサンガーシーケンスで塩基置換について確認した。また、mt-E1347D、mt-GSVG、mtSepCDでmtゲノムの2遺伝子を読んだ全個体に関して、ptゲノム上のpsbA、およびELM1の配列を同様に確認した。
 ここで、pt-E1347D の#13の個体にnad5上の、mt-E1347D #19とmtGSVG #25の2個体にELM1上の弱いシグナルで塩基置換が検出された。これらの3つの塩基置換のうち2つはC:G→T:Aの変化であったが、いずれもCT:GAのコンストラクトではなかった。残る1つはA→Cの変化であった。pt-E1347D #13のnad5変異は第一イントロン上のものであった。mt-E1347D #19のELM1変異は第四エキソン上でグルタミン酸からアスパラギン酸のアミノ酸置換を引き起こす。そして、mtGSVG #25の塩基置換はELM1の第五エキソン上でアラニンからバリンへのアミノ酸置換を起こす。また、pt-E1347D #13に見られたnad5の434番目のGからAへの塩基置換はmtCWC 188 #2(図7b)、およびmtSepCD #2(図12a)においても確認された非TCコンストラクトにおける塩基置換であった。
 以上の結果から、本方法によってミトコンドリアゲノム、もしくは葉緑体ゲノムに多数のC to T(または逆鎖のG to A)変異が入った多様な植物集団を作製することに成功した。本実験の時点では変異が多少多く入りすぎて生育困難な変異体も生じたが、酵素や仕組みの低活性化により生育状態の改善を行うことができた。このような改善は当業者であれば容易に行うことが可能である。本実施例において開示した変異はC to T (G to A)のみであったが、同じCDを用いたゲノム編集酵素(mtpTALECDやptpTALECD)を組み合わせて用いることによって、有効な変異だけを野生型植物や作物に“移植”することが簡単に達成可能であることは、本発明にかかる方法の大きな利点の一つである。
 本発明により、オルガネラゲノムへのランダムな変異の導入が可能となる。従って、医療分野、農業分野、畜産分野および環境分野における利用が期待される。

Claims (19)

  1.  ゲノムDNAにランダムな変異を導入する方法であって、以下の(a)および/または(b)の工程を含む方法。
    (a)DNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させる工程、
    (b)塩基置換酵素、または塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子の複合体を、細胞内に導入する工程。
  2.  ゲノムDNAにランダムな変異が導入された細胞を作製する方法であって、以下の(a)および/または(b)の工程を含む方法;
    (a)DNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させる工程、
    (b)塩基置換酵素、または塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子の複合体を、細胞内に導入する工程。
  3.  前記DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性を低下または喪失させることにより、DNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4.  前記ゲノムがオルガネラのゲノムである、請求項3に記載の方法。
  5.  前記エキソヌクレアーゼ活性を低下または喪失させる方法が、オルガネラDNAポリメラーゼのExoII領域に存在するアスパラギン酸に変異を加えることである、請求項4に記載の方法。
  6.  前記変異がアスパラギン酸からアスパラギンへの置換である、請求項5に記載の方法。
  7.  前記DNAポリメラーゼのポリメラーゼドメインに変異を導入することにより、DNAポリメラーゼのDNA複製エラー頻度を上昇させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  8.  前記塩基置換酵素がシチジンデアミナーゼである、請求項1または2に記載の方法。
  9.  前記シチジンデアミナーゼが、以下の(a)または(b)に記載のいずれかのタンパク質である、請求項8に記載の方法;
    (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (b)配列番号1で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、シチジンデアミナーゼ活性を有するタンパク質。
  10.  前記シチジンデアミナーゼと前記配列非特異的DNA結合因子との複合体が、シチジンデアミナーゼのN末端の一部分とそれ以外の部分との間に当該配列非特異的DNA結合因子が融合されているものである、請求項9に記載の方法。
  11.  前記シチジンデアミナーゼと前記配列非特異的DNA結合因子との複合体に、核移行シグナルペプチド、色素体移行シグナルペプチドまたはミトコンドリア移行シグナルペプチドを付加した該複合体のコードDNAを、植物細胞内の核ゲノムに導入し、該シグナルペプチドを付加した融合体を植物細胞内で発現させることを含む、請求項9に記載の方法。
  12.  前記シチジンデアミナーゼと前記配列非特異的DNA結合因子との複合体に、核移行シグナルペプチド、色素体移行シグナルペプチドまたはミトコンドリア移行シグナルペプチドを付加した該複合体のコードDNAを、植物細胞内の核ゲノムに導入し、該シグナルペプチドを付加した融合体を植物細胞内で発現させることを含む、請求項10に記載の方法。
  13.  請求項2に記載の方法で作製された植物細胞。
  14.  請求項13に記載の植物細胞を含む種子または植物。
  15.  塩基置換酵素と配列非特異的DNA結合因子との複合体タンパク質
  16.  前記塩基置換酵素が以下の(a)または(b)に記載のいずれかのタンパク質であり、前記配列非特異的DNA結合因子がWHY2である、請求項15に記載の複合体タンパク質;
    (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (b)配列番号1で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、シチジンデアミナーゼ活性を有するタンパク質。
  17.  核移行シグナルペプチド、色素体移行シグナルペプチドまたはミトコンドリア移行シグナルペプチドが付加された、請求項15または16に記載の複合体タンパク質。
  18.  請求項16に記載の複合体タンパク質をコードする核酸。
  19.  請求項17に記載の複合体タンパク質をコードする核酸。
     
     

     
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