WO2024116532A1 - 二次電池用負極および二次電池 - Google Patents

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Abstract

二次電池は、正極、負極および電解液を備え、その負極は、複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子を含む。第1負極活物質粒子は、ケイ素の酸化物を含み、第2負極活物質粒子は、ケイ素の単体およびケイ素の合金のうちの少なくとも一方を含む。電子顕微鏡を用いた負極の断面の観察結果において、複数の第1負極活物質粒子のメジアン径は、5μm以上8μm以下であり、複数の第2負極活物質粒子のメジアン径は、0.12μm以上1.2μm以下であり、その複数の第2負極活物質粒子のメジアン径に対する複数の第1負極活物質粒子のメジアン径の比は、5以上50以下であり、その複数の第2負極活物質粒子の総面積に対する複数の第1負極活物質粒子の総面積の比は、0.6以上0.9以下である。

Description

二次電池用負極および二次電池
 本技術は、二次電池用負極および二次電池に関する。
 携帯電話機などの多様な電子機器が普及しているため、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度が得られる電源として二次電池の開発が進められている。この二次電池は、正極および負極(二次電池用負極)と共に電解液を備えており、その二次電池の構成に関しては、様々な検討がなされている。
 具体的には、負極が第1活物質粒子および第2活物質粒子を含んでいる(例えば、特許文献1参照。)。この第1活物質粒子は、ケイ素またはケイ素合金を含んでいると共に、第2活物質粒子は、酸化ケイ素(SiO(x=0.5~1.5))を含んでいる。
特開2015-232921号公報
 二次電池の構成に関する様々な検討がなされているが、その二次電池の電池特性は未だ十分でないため、改善の余地がある。
 優れた電池特性を得ることが可能である二次電池用負極および二次電池が望まれている。
 本技術の一実施形態の二次電池用負極は、複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子を含むものである。第1負極活物質粒子は、ケイ素の酸化物を含み、第2負極活物質粒子は、ケイ素の単体およびケイ素の合金のうちの少なくとも一方を含む。電子顕微鏡を用いた断面の観察結果において、複数の第1負極活物質粒子のメジアン径は、5μm以上8μm以下であり、複数の第2負極活物質粒子のメジアン径は、0.12μm以上1.2μm以下であり、その複数の第2負極活物質粒子のメジアン径に対する複数の第1負極活物質粒子のメジアン径の比は、5以上50以下であり、その複数の第2負極活物質粒子の総面積に対する複数の第1負極活物質粒子の総面積の比は、0.6以上0.9以下である。
 本技術の一実施形態の二次電池は、正極、負極および電解液を備え、その負極が上記した本技術の一実施形態の二次電池用負極の構成と同様の構成を有するものである。
 下記の4種類の構成条件は、上記したように、電子顕微鏡を用いた負極の断面の観察結果に基づいて特定される。この4種類の構成条件の特定手順の詳細に関しては、後述する。

(1)複数の第1負極活物質粒子のメジアン径の範囲
(2)複数の第2負極活物質粒子のメジアン径の範囲
(3)複数の第2負極活物質粒子のメジアン径に対する複数の第1負極活物質粒子のメジアン径の比の範囲
(4)複数の第2負極活物質粒子の総面積に対する複数の第1負極活物質粒子の総面積の比の範囲
 本技術の一実施形態の二次電池用負極または二次電池によれば、その二次電池用負極が複数の第1負極活物質粒子粒子および複数の第2負極活物質粒子を含んでおり、その第1負極活物質粒子がケイ素の酸化物を含んでおり、その第2負極活物質粒子がケイ素の単体およびケイ素の合金のうちの少なくとも一方を含んでおり、上記した4種類の構成条件が満たされているので、優れた電池特性を得ることができる。
 なお、本技術の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
本技術の一実施形態における二次電池用負極の構成を表す断面図である。 図1に示した複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子のそれぞれの構成を表す断面図である。 本技術の一実施形態における二次電池の構成を表す斜視図である。 図3に示した電池素子の構成を表す断面図である。 二次電池の適用例の構成を表すブロック図である。 試験用の二次電池の構成を表す断面図である。
 以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

 1.二次電池用負極
  1-1.構成
  1-2.動作
  1-3.製造方法
  1-4.作用および効果
 2.二次電池
  2-1.構成
  2-2.動作
  2-3.製造方法
  2-4.作用および効果
 3.変形例
 4.二次電池の用途
<1.二次電池用負極>
 まず、本技術の一実施形態の二次電池用負極(以下、単に「負極」と呼称する。)に関して説明する。
 ここで説明する負極は、電気化学デバイスである二次電池に用いられる。ただし、負極は、二次電池以外の他の電気化学デバイスに用いられてもよい。他の電気化学デバイスの具体例は、一次電池およびキャパシタなどである。
 この負極は、電気化学デバイスの動作時(電極反応時)において、電極反応物質を吸蔵放出する。電極反応物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属の具体例は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属の具体例は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
 以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。これにより、負極では、電極反応時においてリチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
<1-1.構成>
 図1は、負極の一例である負極100の断面構成を表していると共に、図2は、図1に示した複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122のそれぞれの断面構成を表している。
 この負極100は、図1に示したように、負極集電体110および負極活物質層120を備えている。
[負極集電体]
 負極集電体110は、図1に示したように、負極活物質層120を支持する導電性の支持部材であり、その負極活物質層120が設けられる一対の面(上面および下面)を有している。この負極集電体110は、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料の具体例は、銅などである。
 負極集電体110の表面は、電解法を用いて粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果を利用して、負極集電体110に対する負極活物質層120の密着性が向上するからである。
 ただし、負極集電体110は、省略されてもよい。すなわち、負極100は、負極活物質層120だけを含んでいてもよい。
[負極活物質層]
 負極活物質層120は、図1に示したように、リチウムを吸蔵放出する層であり、負極集電体110の片面(上面または下面)に設けられている。ただし、負極活物質層120は、負極集電体110の両面(上面および下面)に設けられていてもよい。
 この負極活物質層120は、2種類の粒子状の負極活物質を含んでいる。具体的には、負極活物質層120は、図2に示したように、複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122を含んでいる。複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122は、負極活物質層120の内部において互いに混在している。複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122のうちのほとんどは分散されているが、その複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122のうちの一部は互いに凝集している場合もある。
 ただし、図2では、図示内容を簡略化するために、第1負極活物質粒子121の断面形状を円形としている。しかしながら、第1負極活物質粒子121の断面形状は、特に限定されないため、円形に限られず、その円形以外の形状でもよい。もちろん、複数の第1負極活物質粒子121のそれぞれの断面形状は、1種類に限られず、2種類以上でもよい。
 ここで第1負極活物質粒子121の断面形状に関して説明したことは、第2負極活物質粒子122の断面形状に関しても同様である。すなわち、図2では、第2負極活物質粒子122の断面形状を円形としているが、その第2負極活物質粒子122の断面形状は、特に限定されないため、円形以外の形状でもよい。
(第1負極活物質粒子)
 複数の第1負極活物質粒子121は、相対的に大きいメジアン径を有しており、より具体的には、複数の第2負極活物質粒子122のメジアン径よりも大きいメジアン径を有している。
 ここで説明した複数の第1負極活物質粒子121のメジアン径は、いわゆるD50(μm)である。以下では、複数の第1負極活物質粒子121のメジアン径を「メジアン径MD1」と呼称する。
 第1負極活物質粒子121は、ケイ素の酸化物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。負極100を用いた二次電池において、充放電を繰り返しても放電容量が減少しにくくなるからである。
 ケイ素の酸化物の種類は、特に限定されない。中でも、ケイ素の酸化物は、式(1)により表される化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。不可逆容量が十分に減少するからである。
 SiO ・・・(1)
(xは、0.5<x<1.2を満たす。)
 なお、複数の第1負極活物質粒子121の詳細な構成(4種類の構成条件)に関して、後述する。
(第2負極活物質粒子)
 複数の第2負極活物質粒子122は、相対的に小さいメジアン径を有しており、より具体的には、複数の第1負極活物質粒子121のメジアン径よりも小さいメジアン径を有している。
 ここで説明した複数の第2負極活物質粒子122のメジアン径は、複数の第1負極活物質粒子121のメジアン径と同様に、いわゆるD50(μm)である。以下では、複数の第2負極活物質粒子122のメジアン径を「メジアン径MD2」と呼称する。
 第2負極活物質粒子122は、ケイ素の単体およびケイ素の合金のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。高いエネルギー密度が得られるからである。この第2負極活物質粒子122は、ケイ素の単体だけを含んでいてもよいし、ケイ素の合金だけを含んでいてもよいし、ケイ素の単体およびケイ素の合金の双方を含んでいてもよい。第2負極活物質粒子122がケイ素の合金を含んでいる場合において、そのケイ素の合金の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
 ケイ素の単体は、あくまで一般的なケイ素の単体を意味している。このため、ケイ素の単体は、微量の不純物を含んでいてもよい。すなわち、ケイ素の単体の純度は、必ずしも100%に限られない。
 ケイ素の合金の種類は、特に限定されない。具体的には、ケイ素の合金は、そのケイ素以外の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどの金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
 ケイ素の合金の具体例は、SiB、SiB、MgSi、NiSi、TiSi、MoSi、CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、ZnSiおよびSiCなどである。ただし、ここで例示したケイ素の合金の組成(ケイ素と金属元素との混合比)は、任意に変更可能である。
 なお、複数の第2負極活物質粒子122の詳細な構成(4種類の構成条件)に関して、後述する。
(他の材料)
 なお、負極活物質層120は、さらに、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
 他の材料は、負極結着剤であり、その負極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などの材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムの具体例は、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物の具体例は、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリアクリル酸およびカルボキシメチルセルロースなどである。
 また、他の材料は、負極導電剤であり、その負極導電剤は、炭素材料、金属材料および導電性高分子化合物などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。炭素材料の具体例は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。
 さらに、他の材料は、複数の粒子状の第3負極活物質(複数の第3負極活物質粒子)であり、その第3負極活物質粒子は、炭素材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。リチウムの吸蔵放出時において炭素材料の結晶構造はほとんど変化しないため、高いエネルギー密度が安定して得られる。また、炭素材料は負極導電剤としても機能するため、負極活物質層120の導電性が向上する。
 炭素材料の具体例は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などである。この黒鉛は、天然黒鉛でもよいし、人造黒鉛でもよいし、双方でもよい。難黒鉛化性炭素に関する(002)面の面間隔は、特に限定されないが、具体的には、0.37nm以上である。黒鉛に関する(002)面の面間隔は、特に限定されないが、具体的には、0.34nm以下である。
 また、炭素材料の具体例は、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭およびカーボンブラック類などである。このコークス類は、ピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークスなどを含む。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂およびフラン樹脂などの高分子化合物が適当な温度で焼成(炭素化)された焼成物である。この他、炭素材料は、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素でもよいし、非晶質炭素でもよい。炭素材料の形状は、特に限定されないが、具体的には、繊維状、球状、粒状および鱗片状などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
 負極活物質層120が複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122と共に複数の第3負極活物質粒子を含んでいる場合には、特に、負極100を用いた二次電池の電極反応時(充放電時)において、電池容量が担保されながら、負極活物質層120の破損および脱落などが抑制される。
 詳細には、ケイ素含有材料(ケイ素の酸化物、ケイ素の単体およびケイ素の合金)は、理論容量が高いという利点を有している反面、充放電時において激しく膨張収縮しやすいという懸念点を有している。一方、炭素材料は、理論容量が低いという懸念点を有している反面、充放電時において膨張収縮しにくいという利点を有している。よって、ケイ素含有材料と炭素材料とを併用することにより、高い理論容量が得られながら、充放電時において負極活物質層120の膨張収縮が抑制される。これにより、上記したように、電池容量が担保されながら、負極活物質層120の破損および脱落などが抑制される。
[詳細な構成]
 ここで、複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122のそれぞれの詳細な構成に関して説明する。
(4種類の構成条件)
 複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122のそれぞれの構成に関しては、所定の条件が満たされている。具体的には、電子顕微鏡を用いた負極100の断面の観察結果において、以下で説明する4種類の構成条件が満たされている。
 以下では、電子顕微鏡を用いた負極100の断面の観察結果の取得手順に関して説明したのち、4種類の条件の詳細に関して説明する。
 電子顕微鏡を用いた負極100の断面の観察結果を取得する場合には、厚さ方向(図1中の上下方向)において負極100を切断することにより、その負極100の断面を露出させる。これにより、複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122を含んでいる負極活物質層120の断面が露出する。
 こののち、電子顕微鏡を用いて負極活物質層120の断面を観察することにより、その断面の観察結果(電子顕微鏡写真)を取得する。これにより、図2に示したように、複数の第1負極活物質粒子121と複数の第2負極活物質粒子122とが併存している状態が観察される。電子顕微鏡の種類は、特に限定されないが、具体的には、走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。これにより、電子顕微鏡を用いた負極100の断面の観察結果が取得される。
 負極100の切断方法および切断条件は、特に限定されないと共に、負極100の断面の観察条件は、特に限定されない。具体的には、負極100を切断する場合には、切断用の装置としてイオンミリング装置を用いると共に、切断時の条件を加速電圧=6kV、放電電圧=1.5kV、切断時間=3時間とする。負極100の断面を観察する場合には、観察時の条件を観察倍率=2000倍~5000倍、加速電圧=3kVとする。
 第1条件として、メジアン径MD1は、所定の範囲内である。具体的には、メジアン径MD1は、5μm~8μmである。このメジアン径MD1の値は、小数点第三位の値が四捨五入された値とする。
 第2条件として、メジアン径MD2は、所定の範囲内である。具体的には、メジアン径MD2は、0.12μm~1.2μmである。このメジアン径MD2の値は、小数点第三位の値が四捨五入された値とする。
 第3条件として、メジアン径MD2に対するメジアン径MD1の比(粒径比RD)は、所定の範囲内である。具体的には、粒径比RD(=MD1/MD2)は、5~50である。この粒径比RDの値は、小数点第三位の値が四捨五入された値とする。
 第4条件として、複数の第2負極活物質粒子122の総面積S2に対する複数の第1負極活物質粒子121の総面積S1の比(面積比RS)は、所定の範囲内である。具体的には、面積比RS(=S1/S2)は、0.6~0.9である。この面積比RSの値は、小数点第二位の値が四捨五入された値とする。
 なお、面積比RSは、複数の第1負極活物質粒子121の存在量および複数の第2負極活物質粒子122の存在量に基づいて、その複数の第1負極活物質粒子121と複数の第2負極活物質粒子122との混合比を表す指標である。
 上記した4種類の構成条件が満たされているのは、その4種類の構成条件が満たされていない場合とは異なり、メジアン径MD1とメジアン径MD2との関係が適正化されると共に、複数の第1負極活物質粒子121と複数の第2負極活物質粒子122との混合比も適正化されるからである。これにより、負極100を用いた二次電池において、初回の充放電時から十分な放電容量が得られると共に、その後に充放電を繰り返しても放電容量が減少しにくくなる。
 特に、第3条件である粒径比RD(=5~50)に関しては、以下で説明する傾向がある。
 粒径比RDが5よりも小さい場合には、メジアン径MD1とメジアン径MD2との差が小さすぎるため、複数の第1負極活物質粒子121が第2負極活物質粒子122の表面を被覆するように配置されにくくなる。これにより、初回の充放電時から十分な放電容量が得られにくくなると共に、その後に充放電を繰り返すと放電容量が減少しやすくなる。
 一方、粒径比RDが50よりも大きい場合には、メジアン径MD1とメジアン径MD2との差が大きすぎるため、上記した粒径比RDが5よりも小さい場合と同様に、複数の第1負極活物質粒子121が第2負極活物質粒子122の表面を被覆するように配置されにくくなる。これにより、複数の第1負極活物質粒子121による第2負極活物質粒子122の表面の被覆量が不足するため、初回の充放電時から十分な放電容量が得られにくくなると共に、その後に充放電を繰り返すと放電容量が減少しやすくなる。
 中でも、粒径比RDは、10~30であることが好ましい。粒径比RDがより適正化されるため、初回の充放電時から十分な放電容量が得られやすくなると共に、その後に充放電を繰り返しても放電容量がより減少しにくくなるからである。
(元素分布)
 なお、第1負極活物質粒子121の表面における元素分布は、特に限定されない。中でも、X線光電子分光法(XPS)を用いた第1負極活物質粒子121の表面の分析結果において、全元素の存在量E1に対する炭素の存在量E2の割合(炭素割合RE=E2/E1)は、1%未満であることが好ましい。炭素を構成元素として含む被覆層が第1負極活物質粒子121の表面にほとんど設けられていないため、その被覆層が第1負極活物質粒子121の表面をほとんど被覆していないからである。この炭素割合REの値は、小数点第二位の値が四捨五入された値とする。
 ここで、全元素は、XPSを用いた第1負極活物質粒子121の表面分析において検出される全ての種類の元素であり、炭素も含んでいる。これにより、炭素割合REは、第1負極活物質粒子121の表面に炭素がどれほど存在しているかを表す指標である。
(算出手順および特定手順)
 メジアン径MD1を算出する場合には、最初に、電子顕微鏡写真中において、複数の第1負極活物質粒子121を特定する。続いて、複数の第1負極活物質粒子121から任意の300個の第1負極活物質粒子121を選択したのち、その300個の第1負極活物質粒子121のそれぞれの粒径(μm)を測定する。この場合には、人為的に粒径を測定してもよいし、任意の画像処理ソフトを用いて機械的に粒径を測定してもよい。なお、測定方向に応じて粒径が異なる場合には、その粒径の最大値を選択する。最後に、個数(=300個)と複数の粒径の測定結果とに基づいて、メジアン径MD1を計算する。
 メジアン径MD2を算出する手順は、複数の第1負極活物質粒子121の代わりに複数の第2負極活物質粒子122に着目することを除いて、上記したメジアン径MD1を算出する手順と同様である。
 粒径比RDを算出する場合には、上記した手順により、メジアン径MD1,MD2を算出したのち、粒径比RD(=MD1/MD2)という計算式を用いて、その粒径比RDを算出する。
 面積比RSを調べる場合には、最初に、電子顕微鏡写真中において、複数の第1負極活物質粒子121から任意の300個の第1負極活物質粒子121を選択する。続いて、300個の第1負極活物質粒子121のそれぞれの面積(μm)を測定したのち、その300個の面積を加算することにより、総面積S1(μm)を計算する。すなわち、総面積S1は、300個の第1負極活物質粒子121のそれぞれの面積の和である。
 続いて、複数の第1負極活物質粒子121の代わりに複数の第2負極活物質粒子122に着目することを除いて、上記した総面積S1を算出する手順と同様の手順により、総面積S2(μm)を計算する。すなわち、総面積S2は、300個の第2負極活物質粒子122のそれぞれの面積の和である。
 最後に、面積比RS(=S1/S2)という計算式を用いて、その面積比RSを算出する。
 炭素割合REを算出する手順は、以下で説明する通りである。以下では、負極活物質層120が複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122と共に負極結着剤および負極導電剤を含んでいる場合に関して説明する。
 最初に、負極100を解体することにより、複数の第1負極活物質粒子121を回収する。
 この場合には、負極活物質層120から負極集電体110を剥離させたのち、溶媒中に負極活物質層120を投入する。この溶媒は、負極結着剤を溶解可能である水性溶媒および有機溶剤のうちのいずれかである。非水溶媒の具体例は、水などであると共に、有機溶剤の具体例は、N-メチル-2-ピロリドンなどである。この場合には、負極結着剤が溶解されるのに対して、複数の第1負極活物質粒子121、複数の第2負極活物質粒子122および負極導電剤が溶解されない。これにより、負極結着剤が溶解除去されるため、複数の第1負極活物質粒子121と複数の第2負極活物質粒子122との混合物が回収される。
 続いて、複数の孔を有する篩に混合物を投入することにより、その混合物から複数の第1負極活物質粒子121を選別する。この場合には、複数の第1負極活物質粒子121が通過可能であると共に複数の第2負極活物質粒子122および負極導電剤が通過不能となるように、複数の孔のサイズを設定する。これにより、複数の第1負極活物質粒子121が孔を通過するのに対して、複数の第2負極活物質粒子122および負極導電剤が孔を通過しない。よって、複数の第1負極活物質粒子121が複数の第2負極活物質粒子122および負極導電剤から分離される。
 続いて、XPSを用いて第1負極活物質粒子121の表面分析を行うことにより、一連の元素の存在量を測定する。これにより、全元素の存在量E1が算出されると共に、炭素の存在量E2が算出される。
 最後に、炭素割合RE=(E2/E1)×100という計算式を用いて、その炭素割合REを算出する。
<1-2.動作>
 この負極100は、電極反応時において、以下のように動作する。
 負極活物質層120において、複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122のそれぞれにリチウムがイオン状態で吸蔵される。また、負極活物質層120において、複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122のそれぞれからリチウムがイオン状態で放出される。
<1-3.製造方法>
 以下で説明する一例の手順により、負極100を製造する。
 最初に、複数の第1負極活物質粒子121と、複数の第2負極活物質粒子122と、負極結着剤と、負極導電剤とを互いに混合させることにより、負極合剤とする。
 この場合には、第1条件および第2条件が満たされるように、メジアン径MD1,MD2のそれぞれを調整する。具体的には、メジアン径MD1に関して第1条件が満たされている複数の第1負極活物質粒子121を用いると共に、メジアン径MD2に関して第2条件が満たされている複数の第2負極活物質粒子122を用いることにより、粒径比RDに関して第3条件が満たされるようにする。
 また、複数の第1負極活物質粒子121と複数の第2負極活物質粒子122との混合比を調整することにより、面積比RSに関して第4条件が満たされるようにする。
 続いて、溶媒中に負極合剤を投入することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製する。この溶媒は、水性溶媒でもよいし、有機溶剤でもよい。
 最後に、負極集電体110の片面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層120を形成する。こののち、ロールプレス機などを用いて負極活物質層120を圧縮成型してもよい。この場合には、負極活物質層120を加熱してもよいし、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
 これにより、負極集電体110の上に負極活物質層120が形成されるため、負極100が完成する。
<1-4.作用および効果>
 この負極100によれば、その負極100が複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122を含んでおり、その第1負極活物質粒子121がケイ素の酸化物を含んでおり、その第2負極活物質粒子122がケイ素の単体およびケイ素の合金のうちのいずれか一方または双方を含んでいる。
 また、複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122に関して、上記した4種類の構成条件が満たされている。具体的には、メジアン径MD1は、5μm~8μmである(第1条件)。メジアン径MD2は、0.12μm~1.2μmである(第2条件)。粒径比RDは、5~50である(第3条件)。面積比RSは、0.6~0.9である(第4条件)。
 この場合には、上記したように、メジアン径MD1,MD2の関係が適正化されると共に、複数の第1負極活物質粒子121と複数の第2負極活物質粒子122との混合比も適正化される。これにより、負極100を用いた二次電池において、初回の充放電時から十分な放電容量が得られると共に、その後に充放電を繰り返しても放電容量が減少しにくくなる。よって、負極100を用いて優れた電池特性を有する二次電池を実現することができる。
 特に、粒径比RDが10~30であれば、初回の充放電時から十分な放電容量が得られやすくなると共に、その後に充放電を繰り返しても放電容量がより減少しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
 また、ケイ素の酸化物が式(1)に示した化合物を含んでいれば、不可逆容量が十分に減少するため、より高い効果を得ることができる。
 また、炭素割合REが1%未満であれば、第1負極活物質粒子121の表面が炭素によりほとんど被覆されないため、より高い効果を得ることができる。
 また、負極100がさらに複数の第3負極活物質粒子を含んでおり、その第3負極活物質粒子が炭素材料を含んでいれば、その負極100を用いた二次電池の充放電時において電池容量が担保されながら負極活物質層120の破損および脱落などが抑制されるため、より高い効果を得ることができる。
<2.二次電池>
 次に、負極100が適用される本技術の一実施形態の二次電池に関して説明する。
 ここで説明する二次電池は、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池であり、正極および負極と共に電解液を備えている。
 負極の充電容量は、正極の放電容量よりも大きいことが好ましい。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きいことが好ましい。充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを防止するためである。
 以下では、上記したように、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池では、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
<2-1.構成>
 図3は、二次電池の斜視構成を表していると共に、図4は、図3に示した電池素子20の断面構成を表している。ただし、図4では、外装フィルム10と電池素子20とが互いに分離された状態を示していると共に、XZ面に沿った電池素子20の断面を破線で示している。
 この二次電池は、図3および図4に示したように、外装フィルム10と、電池素子20と、正極リード31と、負極リード32と、封止フィルム41,42とを備えている。
 ここで説明する二次電池は、上記したように、電池素子20を収納するための外装部材として可撓性または柔軟性を有する外装フィルム10を用いているため、いわゆるラミネートフィルム型の二次電池である。
[外装フィルム]
 外装フィルム10は、図3に示したように、電池素子20が収納された状態において封止された袋状の構造を有している。これにより、外装フィルム10は、後述する正極21、負極22、セパレータ23および電解液を収納している。
 ここでは、外装フィルム10は、1枚のフィルム状の部材であり、折り畳み方向Fに折り畳まれている。この外装フィルム10には、電池素子20を収容するための窪み部10U(いわゆる深絞り部)が設けられている。
 具体的には、外装フィルム10は、融着層、金属層および表面保護層が内側からこの順に積層された3層のラミネートフィルムであり、その外装フィルム10が折り畳まれた状態において、互いに対向する融着層のうちの外周縁部同士が互いに融着されている。融着層は、ポリプロピレンなどの高分子化合物を含んでいる。金属層は、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。表面保護層は、ナイロンなどの高分子化合物を含んでいる。
 ただし、外装フィルム10の構成(層数)は、特に、限定されないため、1層または2層でもよいし、4層以上でもよい。
[電池素子]
 電池素子20は、外装フィルム10に収納されている。この電池素子20は、いわゆる発電素子であり、図3および図4に示したように、正極21、負極22、セパレータ23および電解液(図示せず)を含んでいる。
 ここでは、電池素子20は、いわゆる巻回電極体である。すなわち、正極21および負極22は、セパレータ23を介して互いに対向しながら、巻回軸Pを中心として巻回されている。この巻回軸Pは、図3から明らかなように、Y軸方向に延在する仮想軸である。
 電池素子20の立体的形状は、特に限定されない。ここでは、電池素子20は、扁平状の立体的形状を有しているため、巻回軸Pと交差する電池素子20の断面(XZ面に沿った断面)の形状は、長軸J1および短軸J2により規定される扁平形状である。
 長軸J1は、X軸方向に延在する仮想軸であり、短軸J2の長さよりも大きい長さを有している。短軸J2は、X軸方向と交差するZ軸方向に延在する仮想軸であり、長軸J1の長さよりも小さい長さを有している。ここでは、電池素子20の立体的形状は、扁平な円筒状であるため、その電池素子20の断面の形状は、扁平な略楕円形状である。
(正極)
 正極21は、図4に示したように、正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bを含んでいる。
 正極集電体21Aは、正極活物質層21Bが設けられる一対の面を有している。この正極集電体21Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その導電性材料の具体例は、アルミニウムなどである。
 正極活物質層21Bは、リチウムを吸蔵放出可能である正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。正極活物質層21Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法などである。
 ここでは、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの両面に設けられているため、正極21は、2個の正極活物質層21Bを含んでいる。ただし、ただし、正極活物質層21Bは、正極21が負極22に対向する側において正極集電体21Aの片面だけに設けられているため、その正極21は、1個の正極活物質層21Bだけを含んでいてもよい。
 正極活物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、リチウム含有化合物などである。このリチウム含有化合物は、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を構成元素として含む化合物であり、さらに、1種類または2種類以上の他元素を構成元素として含んでいてもよい。他元素の種類は、特に限定されないが、具体的には、長周期型周期表中の2族~15族に属する元素である。リチウム含有化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸化物、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などである。
 酸化物の具体例は、LiNiO、LiCoO、LiCo0.98Al0.01Mg0.01、LiNi0.5 Co0.2 Mn0.3 およびLiMnなどである。リン酸化合物の具体例は、LiFePO、LiMnPOおよびLiFe0.5 Mn0.5 POなどである。
 正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細は、上記した負極結着剤および負極導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。
(負極)
 負極22は、負極100の構成と同様の構成を有している。すなわち、負極22は、図4に示したように、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bを含んでいる。負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bのそれぞれの構成は、負極集電体110および負極活物質層120のそれぞれの構成と同様である。
 ここでは、負極活物質層22Bが負極集電体22Aの両面に設けられている。ただし、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。
(セパレータ)
 セパレータ23は、図4に示したように、正極21と負極22との間に介在している絶縁性の多孔質膜であり、その正極21と負極22との接触に起因した短絡の発生を防止しながらリチウムをイオン状態で通過させる。このセパレータ23は、ポリエチレンなどの高分子化合物を含んでいる。
(電解液)
 電解液は、液状の電解質であり、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに含浸されている。この電解液は、溶媒および電解質塩を含んでいる。
 溶媒は、非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。
 この非水溶媒は、エステル類およびエーテル類などであり、より具体的には、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上である。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
 炭酸エステル系化合物は、環状炭酸エステルおよび鎖状炭酸エステルである。環状炭酸エステルの具体例は、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンなどであると共に、鎖状炭酸エステルの具体例は、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルなどである。
 カルボン酸エステル系化合物は、鎖状カルボン酸エステルなどである。鎖状カルボン酸エステルの具体例は、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。
 ラクトン系化合物は、ラクトンなどである。ラクトンの具体例は、γ-ブチロラクトンおよびγ-バレロラクトンなどである。
 なお、エーテル類は、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソランおよび1,4-ジオキサンなどでもよい。
 また、非水溶媒は、不飽和環状炭酸エステル、フッ素化環状炭酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、酸無水物、ニトリル化合物およびイソシアネート化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。同様に、電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
 不飽和環状炭酸エステルの具体例は、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンおよび炭酸メチレンエチレンなどである。フッ素化環状炭酸エステルの具体例は、モノフルオロ炭酸エチレンおよびジフルオロ炭酸エチレンなどである。スルホン酸エステルの具体例は、プロパンスルトンおよびプロペンスルトンなどである。リン酸エステルの具体例は、リン酸トリメチルおよびリン酸トリエチルなどである。酸無水物の具体例は、コハク酸無水物、1,2-エタンジスルホン酸無水物および2-スルホ安息香酸無水物などである。ニトリル化合物の具体例は、スクシノニトリルなどである。イソシアネート化合物の具体例は、ヘキサメチレンジイソシアネートなどである。
 もちろん、非水溶媒の組成は、上記した一連の非水溶媒のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいれば、特に限定されないため、任意に設定可能である。
 電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
 リチウム塩の具体例は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(LiN(FSO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CFSO)、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CFSO)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C)、モノフルオロリン酸リチウム(LiPFO)およびジフルオロリン酸リチウム(LiPF)などである。高い電池容量が得られるからである。
 電解質塩の含有量は、特に限定されないが、具体的には、溶媒に対して0.3mol/kg~3.0mol/kgである。高いイオン伝導性が得られるからである。
[正極リード]
 正極リード31は、図3および図4に示したように、正極21の正極集電体21Aに接続されている正極配線であり、外装フィルム10の外部に導出されている。この正極リード31は、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その導電性材料の具体例は、アルミニウムなどである。なお、正極リード31の形状は、薄板状および網目状などのうちのいずれかである。
[負極リード]
 負極リード32は、図3および図4に示したように、負極22の負極集電体22Aに接続されている負極配線であり、外装フィルム10の外部に導出されている。ここでは、負極リード32の導出方向は、正極リード31の導出方向と同様の方向である。この負極リード32は、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その導電性材料の具体例は、銅などである。なお、負極リード32の形状に関する詳細は、正極リード31の形状に関する詳細と同様である。
[封止フィルム]
 封止フィルム41は、外装フィルム10と正極リード31との間に挿入されていると共に、封止フィルム42は、外装フィルム10と負極リード32との間に挿入されている。ただし、封止フィルム41,42のうちの一方または双方は、省略されてもよい。
 封止フィルム41は、外装フィルム10の内部に外気などが侵入することを防止する封止部材である。この封止フィルム41は、正極リード31に対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物を含んでおり、その高分子化合物の具体例は、ポリプロピレンなどである。
 封止フィルム42の構成は、負極リード32に対して密着性を有する封止部材であることを除いて、封止フィルム41の構成と同様である。すなわち、封止フィルム42は、負極リード32に対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物を含んでいる。
<2-2.動作>
 この二次電池は、充放電時において、以下のように動作する。
 充電時には、電池素子20において、正極21からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時には、電池素子20において、負極22からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極21に吸蔵される。放電時および充電時のそれぞれでは、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
<2-3.製造方法>
 二次電池を製造する場合には、以下で説明する一例の手順により、正極21および負極22のそれぞれを作製すると共に、電解液を調製したのち、その正極21、負極22および電解液を用いて二次電池を組み立てると共に、その組み立て後の二次電池の安定化処理を行う。
[正極の作製]
 最初に、正極活物質、正極結着剤および正極導電剤を互いに混合させることにより、正極合剤とする。続いて、溶媒に正極合剤を投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。この溶媒は、水性溶媒でもよいし、有機溶剤でもよい。最後に、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層21Bを形成する。こののち、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型してもよい。この場合には、正極活物質層21Bを加熱してもよいし、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。これにより、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが形成されるため、正極21が作製される。
[負極の作製]
 負極100の製造手順と同様の手順により、負極22を作製する。この場合には、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成する。
[電解液の調製]
 溶媒に電解質塩を投入する。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されるため、電解液が調製される。
[二次電池の組み立て]
 最初に、溶接法などの接合法を用いて、正極21の正極集電体21Aに正極リード31を接続させると共に、溶接法などの接合法を用いて、負極22の負極集電体22Aに負極リード32を接続させる。続いて、溶接法などの接合法を用いて、正極21の正極集電体21Aに正極リード31を接続させると共に、溶接法などの接合法を用いて、負極22の負極集電体22Aに負極リード32を接続させる。
 続いて、セパレータ23を介して正極21および負極22を互いに積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、巻回体(図示せず)を作製する。続いて、プレス機などを用いて巻回体を押圧することにより、扁平形状となるように巻回体を成形する。この成形後の巻回体は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに電解液が含浸されていないことを除いて、電池素子20の構成と同様の構成を有している。
 続いて、窪み部10Uの内部に巻回体を収容したのち、外装フィルム10(融着層/金属層/表面保護層)を折り畳むことにより、その外装フィルム10同士を互いに対向させる。続いて、熱融着法などの接着法を用いて、互いに対向する融着層のうちの2辺の外周縁部同士を互いに接合させることにより、袋状の外装フィルム10の内部に巻回体を収納する。
 最後に、袋状の外装フィルム10に電解液を注入したのち、熱融着法などの接着法を用いて、互いに対向する融着層のうちの残りの1辺の外周縁部同士を互いに接合させる。この場合には、外装フィルム10と正極リード31との間に封止フィルム41を挿入すると共に、外装フィルム10と負極リード32との間に封止フィルム42を挿入する。
 これにより、巻回体に電解液が含浸されるため、巻回電極体である電池素子20が形成される。よって、袋状の外装フィルム10の内部に電池素子20が封入されるため、二次電池が組み立てられる。
[二次電池の安定化]
 組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの各種条件は、任意に設定可能である。これにより、正極21および負極22のそれぞれの状態が電気化学的に安定化するため、二次電池が完成する。
<2-4.作用および効果>
 この二次電池によれば、負極22が負極100の構成と同様の構成を有している。よって、上記した理由により、初回の充放電時から十分な放電容量が得られると共に、その後に充放電を繰り返しても放電容量が減少しにくくなるため、優れた電池特性を得ることができる。
 特に、二次電池がリチウムイオン二次電池であれば、リチウムの吸蔵放出を利用して十分な電池容量が安定に得られるため、より高い効果を得ることができる。
<3.変形例>
 上記した二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例は、互いに組み合わされてもよい。
[変形例1]
 多孔質膜であるセパレータ23を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、高分子化合物層を含む積層型のセパレータを用いてもよい。
 具体的には、積層型のセパレータは、一対の面を有する多孔質膜と、その多孔質膜の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいる。正極21および負極22のそれぞれに対するセパレータの密着性が向上するため、電池素子20の位置ずれ(巻きずれ)が抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応などの副反応が発生しても、二次電池の膨れが抑制される。高分子化合物層は、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。高分子化合物層に関して優れた物理的強度および優れた電気化学的安定性が得られるからである。
 なお、多孔質膜および高分子化合物層のうちの一方または双方は、複数の絶縁性粒子を含んでいてもよい。二次電池の発熱時において複数の絶縁性粒子が放熱を促進させるため、その二次電池の安全性(耐熱性)が向上するからである。複数の絶縁性粒子は、無機材料および樹脂材料などの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。無機材料の具体例は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ベーマイト、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムなどである。樹脂材料の具体例は、アクリル樹脂およびスチレン樹脂などである。
 積層型のセパレータを作製する場合には、高分子化合物および溶媒などを含む前駆溶液を調製したのち、多孔質膜の片面または両面に前駆溶液を塗布する。この場合には、必要に応じて、前駆溶液に複数の絶縁性粒子を添加してもよい。
 この積層型のセパレータを用いた場合においても、正極21と負極22との間においてリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、上記したように、二次電池の安全性が向上するため、より高い効果を得ることができる。
[変形例2]
 液状の電解質である電解液を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、ゲル状の電解質である電解質層を用いてもよい。
 電解質層を用いた電池素子20では、セパレータ23および電解質層を介して正極21および負極22が交互に積層されている。この電解質層は、正極21とセパレータ23との間に介在していると共に、負極22とセパレータ23との間に介在している。
 具体的には、電解質層は、電解液と共に高分子化合物を含んでおり、その電解液は、高分子化合物により保持されている。電解液の漏液が防止されるからである。電解液の構成は、上記した通りである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどを含んでいる。電解質層を形成する場合には、電解液、高分子化合物および溶媒を含む前駆溶液を調製したのち、正極21および負極22のそれぞれの片面または両面に前駆溶液を塗布する。
 この電解質層を用いた場合においても、正極21と負極22との間において電解質層を介してリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、上記したように、電解液の漏液が防止されるため、より高い効果を得ることができる。
<4.二次電池の用途>
 二次電池の用途(適用例)は、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、電子機器および電動車両などにおいて、主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、主電源の代わりに用いられる電源でもよいし、主電源から切り替えられる電源でもよい。
 二次電池の用途の具体例は、以下で説明する通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオおよび携帯用情報端末などの電子機器である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。電子機器などに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用または産業用のバッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。これらの用途では、1個の二次電池が用いられてもよいし、複数個の二次電池が用いられてもよい。
 電池パックは、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、駆動用電源として二次電池を用いて走行する車両であり、その二次電池以外の他の駆動源を併せて備えたハイブリッド自動車でもよい。家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に蓄積された電力を利用して、家庭用の電気製品などを使用可能である。
 ここで、二次電池の適用例の一例に関して具体的に説明する。以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、適宜、変更可能である。
 図5は、電池パックのブロック構成を表している。ここで説明する電池パックは、1個の二次電池を用いた電池パック(いわゆるソフトパック)であり、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。
 この電池パックは、図5に示したように、電源71と、回路基板72とを備えている。この回路基板72は、電源71に接続されていると共に、正極端子73、負極端子74および温度検出端子75を含んでいる。
 電源71は、1個の二次電池を含んでいる。この二次電池では、正極リードが正極端子73に接続されていると共に、負極リードが負極端子74に接続されている。この電源71は、正極端子73および負極端子74を介して外部と接続可能であるため、充放電可能である。回路基板72は、制御部76と、スイッチ77と、熱感抵抗素子(PTC素子)78と、温度検出部79とを含んでいる。ただし、PTC素子78は、省略されてもよい。
 制御部76は、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでおり、電池パック全体の動作を制御する。この制御部76は、必要に応じて電源71の使用状態の検出および制御を行う。
 なお、制御部76は、電源71(二次電池)の電圧が過充電検出電圧または過放電検出電圧に到達すると、スイッチ77を切断することにより、電源71の電流経路に充電電流が流れないようにする。過充電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、4.20V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、2.40V±0.1Vである。
 スイッチ77は、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでおり、制御部76の指示に応じて電源71と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ77は、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などを含んでおり、充放電電流は、スイッチ77のON抵抗に基づいて検出される。
 温度検出部79は、サーミスタなどの温度検出素子を含んでいる。この温度検出部79は、温度検出端子75を用いて電源71の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部76に出力する。温度検出部79により測定された温度の測定結果は、異常発熱時において制御部76が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部76が補正処理を行う場合などに用いられる。
 本技術の実施例に関して説明する。
<実施例1~21および比較例1~13>
 以下で説明するように、二次電池を製造したのち、その二次電池の電池特性を評価した。
[二次電池の製造]
 ここでは、電池特性の評価として簡易評価を行うために、試験用の二次電池を作製した。図6は、試験用の二次電池(コイン型のリチウムイオン二次電池)の断面構成を表している。
 この二次電池は、図6に示したように、試験極61と、対極62と、セパレータ63と、外装カップ64と、外装缶65と、ガスケット66と、電解液(図示せず)とを備えている。ここでは、試験極61が負極に該当すると共に、対極62が正極に該当する。
 試験極61は、外装カップ64に収容されていると共に、対極62は、外装缶65に収容されている。試験極61および対極62は、セパレータ63を介して互いに積層されていると共に、電解液は、試験極61、対極62およびセパレータ63のそれぞれに含浸されている。外装カップ64および外装缶65は、ガスケット66を介して互いに加締められているため、試験極61、対極62およびセパレータ63は、外装カップ64および外装缶65により封入されている。
(試験極(負極)の作製)
 試験極61を作製する場合には、最初に、負極活物質80質量部と、負極結着剤(ポリアクリル酸)10質量部と、負極導電剤(カーボンブラック)10質量部とを互いに混合させることにより、負極合剤とした。負極活物質としては、複数の第1負極活物質粒子121(ケイ素の酸化物である酸化ケイ素(SiO))と、複数の第2負極活物質粒子122(ケイ素の単体(Si)またはケイ素の合金であるケイ素鉄ニッケル合金(SiFeNi))とを用いた。この場合には、必要に応じて、ケイ素の単体とケイ素の合金とを併用した。
 続いて、溶媒(水性溶媒である純水)に負極合剤を投入したのち、自公転式ミキサを用いて水性溶媒を混錬した。これにより、水性溶媒中において負極合剤が分散されたため、ペースト状の負極合剤スラリーが調製された。続いて、コーティング装置を用いて、負極集電体22A(厚さ=12μmである銅箔)の片面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層22Bを形成した。この場合には、負極合剤スラリーを加熱乾燥(乾燥温度=120℃)したのち、その負極合剤スラリーを真空乾燥した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層22Bを圧縮成形した。これにより、負極集電体22Aの片面に負極活物質層22Bが形成されたため、試験極61が作製された。
(対極の作製)
 上記したように、試験用の二次電池(図6に示したコイン型のリチウムイオン二次電池)を用いて電池特性の簡易評価を行うために、対極62としてリチウム金属板を用いた。
(電解液の調製)
 溶媒(環状炭酸エステルである炭酸エチレンおよび鎖状炭酸エステルである炭酸エチルメチル)に電解質塩(六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を添加したのち、その溶媒を撹拌した。この場合には、溶媒の混合比(重量比)を50:50としたと共に、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/l(=1mol/dm)とした。これにより、電解液が調製された。
(二次電池の組み立て)
 最初に、外装カップ64に試験極61を収容したと共に、外装缶65に対極62を収容した。続いて、電解液が含浸されたセパレータ63(厚さ=25μmである微多孔性ポリエチレンフィルム)を介して、外装カップ64に収容された試験極61と、外装缶65に収容された対極62とを互いに積層させた。この場合には、セパレータ63を介して負極活物質層22Bと対極62とを互いに対向させた。最後に、試験極61および対極62がセパレータ63を介して互いに積層されている状態において、ガスケット66を介して外装カップ64および外装缶65を互いに加締めた。これにより、外装カップ64および外装缶65により試験極61および対極62が封入されたため、二次電池が組み立てられた。
(二次電池の安定化)
 常温環境中(温度=23℃)において二次電池を1サイクル充放電させた。充電時には、0.1Cの電流で電圧が0.02Vに到達するまで定電流充電したのち、その0.02Vの電圧で電流が0.025Cに到達するまで定電圧充電した。放電時には、0.1Cの電流で電圧が1.5Vに到達するまで定電流放電した。0.1Cとは、電池容量(理論容量)を10時間で放電しきる電流値であると共に、0.025Cとは、その電池容量を40時間で放電しきる電流値である。
 これにより、試験極61および対極62のそれぞれの状態が電気化学的に安定化したため、二次電池が完成した。
(メジアン径MD1,MD2、大小関係、粒径比RD、面積比RSおよび炭素割合RE)
 二次電池の完成後、その二次電池を解体することにより、試験極61を回収したのち、メジアン径MD1,MD2(μm)、大小関係、粒径比RDおよび面積比RSのそれぞれを調べた結果は、表1~表3に示した通りである。
 ここで、「大小関係」とは、メジアン径MD1,MD2の大小関係を表している。「大小関係」の欄に記載されている「大」は、メジアン径MD1がメジアン径MD2よりも大きいことを意味している。一方、「大小関係」の欄に記載されている「小」は、メジアン径MD1がメジアン径MD2よりも小さいことを意味している。
 なお、試験極61を作製する場合には、第1負極活物質粒子121の表面を炭素被覆する処理を行わなかった。これにより、二次電池から試験極61を回収したのち、XPSを用いて第1負極活物質粒子121の表面分析を行った結果、炭素割合REは1%未満であった。
 メジアン径MD1,MD2(μm)、大小関係、粒径比RD、面積比RSおよび炭素割合REのそれぞれの算出手順および特定手順は、上記した通りである。
[電池特性の評価]
 電池特性として初回充放電特性およびサイクル特性を評価したところ、表1~表3に示した結果が得られた。
(初回充放電特性)
 最初に、常温環境中(温度=23℃)において二次電池を充電させることにより、充電容量(1サイクル目の充電容量)を測定した。続いて、同環境中において二次電池を放電させることにより、放電容量(1サイクル目の放電容量)を測定した。最後に、初回効率(%)=(1サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100という計算式に基づいて、初回充放電特性を評価するための指標である初回効率を算出した。充放電条件は、二次電池の安定化時における充放電条件と同様にした。
 なお、表1に示した初回効率の値は、比較例2における初回効率の値を1として規格化された値である。表2に示した初回効率の値は、比較例7における初回効率の値を1として規格化された値である。表3に示した初回効率の値は、比較例11における初回効率の値を1として規格化された値である。
(サイクル特性)
最初に、常温環境中(温度=23℃)において二次電池を充放電させることにより、放電容量(1サイクル目の放電容量)を測定した。充放電条件は、二次電池の安定化時における充放電条件と同様にした。
 続いて、同環境中においてサイクル数の総数が100サイクルに到達するまで二次電池を繰り返して充放電させることにより、放電容量(100サイクル目の放電容量)を測定した。充放電条件は、充電時の電流および放電時の電流のそれぞれを0.7Cに変更したことを除いて、二次電池の安定化時における充放電条件と同様にした。
 最後に、容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100という計算式に基づいて、サイクル特性を評価するための指標である容量維持率を算出した。
 なお、表1に示した容量維持率の値は、比較例2における容量維持率の値を1として規格化された値である。表2に示した容量維持率の値は、比較例7における容量維持率の値を1として規格化された値である。表3に示した容量維持率の値は、比較例11における容量維持率の値を1として規格化された値である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
[考察]
 表1~表3に示したように、初回効率および容量維持率のそれぞれは、試験極61の構成に応じて大きく変動した。
 具体的には、下記の4種類の構成条件が満たされている場合(実施例1~21)には、その4種類の構成条件が満たされていない場合(比較例1~13)と比較して、高い初回効率が得られたと共に、高い容量維持率も得られた。

 メジアン径MD1=5μm~8μm
 メジアン径MD2=0.12μm~1.2μm
 粒径比RD=5~50
 面積比RS=0.6~0.9
 特に、4種類の構成条件が満たされている場合(実施例1~21)には、以下で説明する傾向が得られた。第1に、第2負極活物質粒子122の材質に依存せずに、高い初回効率および高い容量維持率が得られた。この場合には、ケイ素の単体またはケイ素の合金のうちのいずれを用いても同様の傾向が得られたと共に、ケイ素の単体およびケイ素の合金を併用しても同様の傾向が得られた。第2に、粒径比RDが10~30であると、高い初回効率が維持されながら、高い容量維持率が得られた。
[まとめ]
 表1~表3に示した結果から、試験極61が複数の第1負極活物質粒子121および複数の第2負極活物質粒子122を含んでおり、その第1負極活物質粒子121がケイ素の酸化物を含んでおり、その第2負極活物質粒子122がケイ素の単体およびケイ素の合金のうちのいずれか一方または双方を含んでおり、上記した4種類の構成条件が満たされていると、高い初回効率が得られたと共に、高い容量維持率も得られた。よって、初回充放電特性およびサイクル特性の双方が向上したため、二次電池において優れた電池特性が得られた。
 以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術に関して説明したが、その本技術の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されないため、種々に変形可能である。
 具体的には、二次電池の電池構造がラミネートフィルム型およびコイン型である場合に関して説明した。しかしながら、二次電池の電池構造は、特に限定されないため、円筒型、角型およびボタン型などでもよい。
 また、電池素子の素子構造が巻回型である場合に関して説明した。しかしながら、電池素子の素子構造は、特に限定されないため、積層型および九十九折り型などでもよい。積層型では、正極および負極がセパレータを介して交互に積層されていると共に、九十九折り型では、正極および負極がセパレータを介して互いに対向しながらジグザグに折り畳まれている。
 さらに、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。具体的には、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
 本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であるため、本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本技術に関して、他の効果が得られてもよい。
 なお、本技術は、以下のような構成を取ることもできる。

<1>
 正極、負極および電解液を備え、
 前記負極は、複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子を含み、
 前記第1負極活物質粒子は、ケイ素の酸化物を含み、
 前記第2負極活物質粒子は、ケイ素の単体およびケイ素の合金のうちの少なくとも一方を含み、
 電子顕微鏡を用いた前記負極の断面の観察結果において、
 前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径は、5μm以上8μm以下であり、
 前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径は、0.12μm以上1.2μm以下であり、
 前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径に対する前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径の比は、5以上50以下であり、
 前記複数の第2負極活物質粒子の総面積に対する前記複数の第1負極活物質粒子の総面積の比は、0.6以上0.9以下である、
 二次電池。
<2>
 前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径に対する前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径の比は、10以上30以下である、
 <1>に記載の二次電池。
<3>
 前記ケイ素の酸化物は、式(1)により表される化合物を含む、
 <1>または<2>に記載の二次電池。
 SiO ・・・(1)
(xは、0.5<x<1.2を満たす。)
<4>
 X線光電子分光法を用いた前記第1負極活物質粒子の表面の分析結果において、炭素を含む全元素の存在量に対する前記炭素の存在量の割合は、1%未満である、
 <1>ないし<3>のいずれか1つに記載の二次電池。
<5>
 前記負極は、さらに、複数の第3負極活物質粒子を含み、
 前記第3負極活物質粒子は、炭素材料を含む、
 <1>ないし<4>のいずれか1つに記載の二次電池。
<6>
 リチウムイオン二次電池である、
 <1>ないし<5>のいずれか1つに記載の二次電池。
<7>
 複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子を含み、
 前記第1負極活物質粒子は、ケイ素の酸化物を含み、
 前記第2負極活物質粒子は、ケイ素の単体およびケイ素の合金のうちの少なくとも一方を含み、
 電子顕微鏡を用いた断面の観察結果において、
 前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径は、5μm以上8μm以下であり、
 前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径は、0.12μm以上1.2μm以下であり、
 前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径に対する前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径の比は、5以上50以下であり、
 前記複数の第2負極活物質粒子の総面積に対する前記複数の第1負極活物質粒子の総面積の比は、0.6以上0.9以下である、
 二次電池用負極。

Claims (7)

  1.  正極、負極および電解液を備え、
     前記負極は、複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子を含み、
     前記第1負極活物質粒子は、ケイ素の酸化物を含み、
     前記第2負極活物質粒子は、ケイ素の単体およびケイ素の合金のうちの少なくとも一方を含み、
     電子顕微鏡を用いた前記負極の断面の観察結果において、
     前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径は、5μm以上8μm以下であり、
     前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径は、0.12μm以上1.2μm以下であり、
     前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径に対する前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径の比は、5以上50以下であり、
     前記複数の第2負極活物質粒子の総面積に対する前記複数の第1負極活物質粒子の総面積の比は、0.6以上0.9以下である、
     二次電池。
  2.  前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径に対する前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径の比は、10以上30以下である、
     請求項1に記載の二次電池。
  3.  前記ケイ素の酸化物は、式(1)により表される化合物を含む、
     請求項1または請求項2に記載の二次電池。
     SiO ・・・(1)
    (xは、0.5<x<1.2を満たす。)
  4.  X線光電子分光法を用いた前記第1負極活物質粒子の表面の分析結果において、炭素を含む全元素の存在量に対する前記炭素の存在量の割合は、1%未満である、
     請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二次電池。
  5.  前記負極は、さらに、複数の第3負極活物質粒子を含み、
     前記第3負極活物質粒子は、炭素材料を含む、
     請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の二次電池。
  6.  リチウムイオン二次電池である、
     請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の二次電池。
  7.  複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子を含み、
     前記第1負極活物質粒子は、ケイ素の酸化物を含み、
     前記第2負極活物質粒子は、ケイ素の単体およびケイ素の合金のうちの少なくとも一方を含み、
     電子顕微鏡を用いた断面の観察結果において、
     前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径は、5μm以上8μm以下であり、
     前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径は、0.12μm以上1.2μm以下であり、
     前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径に対する前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径の比は、5以上50以下であり、
     前記複数の第2負極活物質粒子の総面積に対する前記複数の第1負極活物質粒子の総面積の比は、0.6以上0.9以下である、
     二次電池用負極。
PCT/JP2023/032772 2022-12-02 2023-09-08 二次電池用負極および二次電池 WO2024116532A1 (ja)

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