WO2024063025A1 - 樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、積層体の製造方法、半導体デバイスの製造方法、及び、半導体デバイス - Google Patents

樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、積層体の製造方法、半導体デバイスの製造方法、及び、半導体デバイス Download PDF

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Abstract

環化樹脂及びその前駆体、並びに、ポリアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂であって、エチレン性不飽和結合を含む基を有する樹脂と、光重合開始剤と、重合性化合物とを含み、上記重合性化合物が環構造を有し、上記環構造の環員である原子、及び、前記環構造内で前記環員と隣接する環員である原子のうち少なくとも一つの原子のいずれもが置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する、樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、積層体の製造方法、半導体デバイスの製造方法、及び、半導体デバイス。

Description

樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、積層体の製造方法、半導体デバイスの製造方法、及び、半導体デバイス
 本発明は、樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、積層体の製造方法、半導体デバイスの製造方法、及び、半導体デバイスに関する。
 現代では様々な分野において、樹脂を含む樹脂組成物から製造された樹脂材料を活用することが行われている。
 例えば、ポリイミドは、耐熱性及び絶縁性等に優れるため、様々な用途に適用されている。上記用途としては、特に限定されないが、実装用の半導体デバイスを例に挙げると、絶縁膜や封止材の材料、又は、保護膜としての利用が挙げられる。また、フレキシブル基板のベースフィルムやカバーレイなどとしても用いられている。
 例えば上述した用途において、ポリイミドは、ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物の形態で用いられる。
 このような樹脂組成物を、例えば塗布等により基材に適用して感光膜を形成し、その後、必要に応じて露光、現像、加熱等を行うことにより、硬化物を基材上に形成することができる。
 ポリイミド前駆体は、例えば加熱により環化され、硬化物中でポリイミドとなる。
 樹脂組成物は、公知の塗布方法等により適用可能であるため、例えば、適用される樹脂組成物の適用時の形状、大きさ、適用位置等の設計の自由度が高いなど、製造上の適応性に優れるといえる。ポリイミドが有する高い性能に加え、このような製造上の適応性に優れる観点から、上述の樹脂組成物の産業上の応用展開がますます期待されている。
 例えば、特許文献1には、重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体と、脂肪族環状骨格及び少なくとも2つのメタクリロイルオキシ基を有する重合性モノマーと、光重合開始剤と、溶剤と、を含有する感光性樹脂組成物が記載されている。
 特許文献2には、(A)重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体、(B)脂肪族環状骨格を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、及び(D)熱架橋剤を含有する感光性樹脂組成物が記載されている。
特開2022-021933号公報 特開2018-084626号公報
 硬化物の製造において露光及び現像を行う場合において、現像後に得られるパターンの解像性に優れることが求められている。
 本発明は、得られるパターンの解像性に優れる樹脂組成物、上記樹脂組成物を硬化してなる硬化物、上記硬化物を含む積層体、上記硬化物の製造方法、上記積層体の製造方法、上記硬化物の製造方法を含む半導体デバイスの製造方法、並びに、上記硬化物を含む半導体デバイスを提供することを目的とする。
 本発明の代表的な実施態様の例を以下に示す。
<1> 環化樹脂及びその前駆体、並びに、ポリアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂であって、エチレン性不飽和結合を含む基を有する樹脂と、
 光重合開始剤と、
 重合性化合物とを含み、
 上記重合性化合物が環構造を有し、上記環構造の環員である原子、及び、上記環構造内で上記環員と隣接する環員である原子のうち少なくとも一つの原子のいずれもが置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する、
 樹脂組成物。
<2> 上記重合性化合物が、下記式(1-1)又は下記式(1-2)のいずれかで表される構造である、<1>に記載の樹脂組成物。

 式(1-1)中、Arは芳香族環構造を表し、Z及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、Z及びZの少なくとも一方は炭素原子であり、Z及びZはいずれも上記Arの環員であり、X及びXはそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、XとXは結合して環構造を形成してもよく、X及びXの少なくとも1つと、上記芳香族環構造の環員のうちZ及びZとは異なる環員である原子とが結合して環構造を形成してもよく、Y及びYはそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、Xが単結合の場合はn1は1、Xが単結合の場合はn2は1である。
 式(1-2)中、Cyは環員数が5~15の脂肪族環構造を表し、Cyは他の環構造と更に複環を形成していてもよく、Z及びZはそれぞれ独立に、CRX2、炭素原子又は窒素原子を表し、Z及びZはいずれも上記Cyの環員であり、RX2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、X及びXはそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n3及びn4はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、Xが単結合の場合はn3は1、Xが単結合の場合はn4は1であり、破線が付された結合は二重結合又は単結合を表し、Z及びZのうちいずれか1つがCRX2又は窒素原子である場合、破線が付された結合は単結合である。
<3> 上記重合性化合物が、下記式(2-1)~式(2-4)のいずれかで表される構造である、<1>に記載の樹脂組成物。
 式(2-1)中、A11~A14はそれぞれ独立に、-CRX1=又は-N=を表し、RX1はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、化合物中にRX1が2以上存在する場合、RX1同士が結合して環構造を形成してもよく、X11及びX12はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、X11とX12は結合して環構造を形成してもよく、X11及びX12の少なくとも1つと、A11~A14の少なくとも1つとが結合して環構造を形成してもよく、Y11及びY12はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X11が単結合の場合はn11は1、X12が単結合の場合はn12は1である。
 式(2-2)中、A21及びA22はそれぞれ独立に、-CRX2-又は窒素原子を表し、RX2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、X21及びX22はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、Y21及びY22はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n21及びn22はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X21が単結合の場合はn21は1、X22が単結合の場合はn22は1であり、Cyは環員数が5~15の脂肪族環構造を表し、Cyは他の環構造と更に複環を形成していてもよい。
 式(2-3)中、A31及びA32はそれぞれ独立に、-CRX3=又は-N=を表し、RX3はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、化合物中にRX3が2以上存在する場合、RX3同士が結合して環構造を形成してもよく、X31~X34はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、X31とX32は結合して環構造を形成してもよく、X33とX34は結合して環構造を形成してもよく、X31~X34の少なくとも1つと、A31~A32の少なくとも1つとが結合して環構造を形成してもよく、Y31~Y34はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n31~n34はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X31が単結合の場合はn31は1、X32が単結合の場合はn32は1、X33が単結合の場合はn33は1、X34が単結合の場合はn34は1である。
 式(2-4)中、A41~A44はそれぞれ独立に、-CRX4=又は-N=を表し、RX4はそれぞれ独立に、水素原子、1価の置換基又はLとの結合部位を表し、A41~A44のうち少なくとも1つはRX4がLとの結合部位である-CRX4=であり、化合物中にRX4が2以上存在する場合、RX4同士が結合して環構造を形成してもよく、X41及びX42はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、X41とX42は結合して環構造を形成してもよく、X41及びX42の少なくとも1つと、A41~A44の少なくとも1つとが結合して環構造を形成してもよく、Y41及びY42はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n41及びn42はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X41が単結合の場合はn41は1、X42が単結合の場合はn42は1であり、Lは単結合又はm41価の連結基であり、Lが単結合である場合m41は2であり、m41は2以上の整数であり、それぞれm41個ずつ存在するA41~A44、X41及びX42、Y41及びY42、並びに、n41及びn42はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
<4> 上記X及び上記Xがそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含む基であり、上記X及び上記Xがそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含む基である、<2>に記載の樹脂組成物。
<5> 上記X及び上記Xがそれぞれ独立に、-O-又は-NR-であり、上記X及び上記Xがそれぞれ独立に、-O-又は-NR-であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基である、<2>に記載の樹脂組成物。
<6> 上記重合性化合物におけるエチレン性不飽和結合を含む基のうち少なくとも1つが、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、又は、(メタ)アクリロイル基若しくはビニルフェニル基を含む基である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7> 上記重合性化合物の分子量が2,000以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8> アゾール化合物、及び、シランカップリング剤を更に含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9> 上記樹脂の重量平均分子量が5,000~20,000である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10> 上記樹脂の全質量に対し、分子量が30,000以上である上記樹脂の含有量が20質量%以下である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11> 再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12> <1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
<13> <12>に記載の硬化物からなる層を2層以上含み、上記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む積層体。
<14> <1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含む、硬化物の製造方法。
<15> 上記膜を選択的に露光する露光工程及び上記膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含む、<14>に記載の硬化物の製造方法。
<16> 上記膜を50~450℃で加熱する加熱工程を含む、<14>又は<15>に記載の硬化物の製造方法。
<17> <14>~<16>のいずれか1つに記載の硬化物の製造方法を含む、積層体の製造方法。
<18> <14>~<16>のいずれか1つに記載の硬化物の製造方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
<19> <12>に記載の硬化物を含む、半導体デバイス。
 本発明によれば、得られるパターンの解像性に優れる樹脂組成物、上記樹脂組成物を硬化してなる硬化物、上記硬化物を含む積層体、上記硬化物の製造方法、上記積層体の製造方法、上記硬化物の製造方法を含む半導体デバイスの製造方法、並びに、上記硬化物を含む半導体デバイスが提供される。
 以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
 本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
 本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
 本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
 本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた露光も含む。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
 本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方、又は、いずれかを意味する。
 本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
 本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また本明細書において、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率である。
 本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法を用いて測定した値であり、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000、及び、TSKgel Super HZ2000(以上、東ソー(株)製)を直列に連結して用いることによって求めることができる。それらの分子量は特に述べない限り、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。ただし、溶解性が低い場合など、溶離液としてTHFが適していない場合にはNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いることもできる。また、GPC測定における検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
 本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」又は「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側又は下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、更に第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、又は、樹脂組成物層がある場合には、基材から樹脂組成物層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、鉛直上向きと異なることもありうる。
 本明細書において、特段の記載がない限り、組成物は、組成物に含まれる各成分として、その成分に該当する2種以上の化合物を含んでもよい。また、特段の記載がない限り、組成物における各成分の含有量とは、その成分に該当する全ての化合物の合計含有量を意味する。
 本明細書において、特に述べない限り、温度は23℃、気圧は101,325Pa(1気圧)、相対湿度は50%RHである。
 本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
(樹脂組成物)
 本発明の樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、環化樹脂及びその前駆体、並びに、ポリアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂であって、エチレン性不飽和結合を含む基を有する樹脂と、光重合開始剤と、重合性化合物とを含み、上記重合性化合物が環構造を有し、上記環構造の環員である原子、及び、上記環構造内で上記環員と隣接する環員である原子のうち少なくとも一つの原子のいずれもが置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する。
 以下、環化樹脂及びその前駆体、並びに、ポリアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を「特定樹脂」ともいう。
 以下、環構造を有し、上記環構造の環員である原子、及び、上記環構造内で上記環員と隣接する環員である原子のうち少なくとも一つの原子のいずれもが置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する重合性化合物を、「特定重合性化合物」ともいう。
 本発明の樹脂組成物は、露光及び現像に供される感光膜の形成に用いられることが好ましく、露光及び有機溶剤を含む現像液を用いた現像に供される膜の形成に用いられることが好ましい。
 本発明の樹脂組成物は、例えば、半導体デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜等の形成に用いることができ、再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられることが好ましい。
 特に、本発明の樹脂組成物が、再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられることも、本発明の好ましい態様の1つである。
 また、本発明の樹脂組成物は、ネガ型現像に供される感光膜の形成に用いられることが好ましい。
 本発明において、ネガ型現像とは、露光及び現像において、現像により非露光部が除去される現像をいい、ポジ型現像とは、現像により露光部が除去される現像をいう。
 上記露光の方法、上記現像液、及び、上記現像の方法としては、例えば、後述する硬化物の製造方法の説明における露光工程において説明された露光方法、現像工程において説明された現像液及び現像方法が使用される。
 本発明の樹脂組成物によれば、解像性に優れた硬化物が得られる。
 上記効果が得られるメカニズムは不明であるが、下記のように推測される。
 本発明の樹脂組成物は、環構造を有し、上記環構造の環員である原子、及び、上記環構造内で上記環員と隣接する環員である原子のうち少なくとも一つの原子のいずれもが置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する、という構造の重合性化合物(特定重合性化合物)を含む。
 上記特定重合性化合物は、特定重合性化合物同士、特定重合性化合物と樹脂等の他の成分といった分子間の反応も起こるが、分子内での架橋反応も起こりやすい。
 このような組成物を用いることにより、露光量が小さい領域(いわゆる、漏れ光が存在する領域等)では分子内での架橋反応によりエチレン性不飽和結合を含む基が消費されてしまい、このような領域は現像により除去されやすいと考えられる。
 このように、露光量が小さい領域が除去されやすいため解像性に優れると推測される。
 更に、上記のように露光量が小さい領域が現像により除去されやすいため、フォーカスマージンが広いと考えられる。フォーカスマージンが広いとは、目的とするパターンが得られる露光時の深さ方向の焦点位置の範囲が大きいことをいう。フォーカスマージンが広いことにより、焦点位置のブレが発生したとしても目的とするパターンが得られやすいと考えられる。
 ここで、特許文献1及び2には、特定重合性化合物を含有する樹脂組成物については記載されていない。
 以下、本発明の樹脂組成物に含まれる成分について詳細に説明する。
<特定樹脂>
 本発明の樹脂組成物は、環化樹脂及びその前駆体、並びに、ポリアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂であって、エチレン性不飽和結合を含む基を有する樹脂(特定樹脂)を含む。
 特定樹脂に含まれるエチレン性不飽和結合を含む基は、ラジカル重合性基であることが好ましい。
 また、特定樹脂に含まれるエチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、イソアリル基、2-メチルアリル基、ビニル基と直接結合した芳香環を有する基(例えば、ビニルフェニル基など)、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられ、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、(メタ)アクリルアミド基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
〔環化樹脂及びその前駆体〕
 本発明の樹脂組成物は、環化樹脂及びその前駆体からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂であって、エチレン性不飽和結合を含む基を有する樹脂を含むことが好ましい。
 環化樹脂は、主鎖構造中にイミド環構造又はオキサゾール環構造を含む樹脂であることが好ましい。
 本発明において、「主鎖」とは、樹脂分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とはそれ以外の結合鎖をいう。
 環化樹脂としては、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド等が挙げられる。
 環化樹脂の前駆体とは、外部刺激により化学構造の変化を生じて環化樹脂となる樹脂をいい、熱により化学構造の変化を生じて環化樹脂となる樹脂が好ましく、熱により閉環反応を生じて環構造が形成されることにより環化樹脂となる樹脂がより好ましい。
 環化樹脂の前駆体としては、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド前駆体等が挙げられる。
 すなわち、樹脂組成物は、特定樹脂として、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、及び、ポリアミドイミド前駆体からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
 樹脂組成物は、特定樹脂として、ポリイミド又はポリイミド前駆体を含むことが好ましい。
〔ポリイミド前駆体〕
 本発明で用いるポリイミド前駆体は、その種類等は特に限定されないが、下記式(2)で表される繰返し単位を含むことが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005

 式(2)中、A及びAは、それぞれ独立に、酸素原子又は-NR-を表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113及びR114は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、Rは水素原子又は1価の有機基を表す。
 式(2)におけるA及びAは、それぞれ独立に、酸素原子又は-NR-を表し、酸素原子が好ましい。
 Rは水素原子又は1価の有機基を表し、水素原子が好ましい。
 式(2)におけるR111は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、直鎖又は分岐の脂肪族基、環状の脂肪族基及び芳香族基を含む基が例示され、炭素数2~20の直鎖又は分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数3~20の芳香族基、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数6~20の芳香族基を含む基がより好ましい。上記直鎖又は分岐の脂肪族基は鎖中の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、上記環状の脂肪族基および芳香族基は環員の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。式(2)におけるR111の例としては、-Ar-および-Ar-L-Ar-で表される基が挙げられ、-Ar-L-Ar-で表される基が好ましい。但し、Arは、それぞれ独立に、芳香族基であり、Lは、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO-若しくは-NHCO-、あるいは、上記の2つ以上の組み合わせからなる基である。これらの好ましい範囲は、上述のとおりである。
 R111は、ジアミンから誘導されることが好ましい。ポリイミド前駆体の製造に用いられるジアミンとしては、直鎖又は分岐の脂肪族、環状の脂肪族又は芳香族ジアミンなどが挙げられる。ジアミンは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
 具体的には、R111は、炭素数2~20の直鎖又は分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数3~20の芳香族基、又は、これらの組み合わせからなる基を含むジアミンであることが好ましく、炭素数6~20の芳香族基を含むジアミンであることがより好ましい。上記直鎖又は分岐の脂肪族基は鎖中の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく上記環状の脂肪族基および芳香族基は環員の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。芳香族基を含む基の例としては、下記が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006

 式中、Aは単結合又は2価の連結基を表し、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NHCO-、又は、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-、若しくは、-SO-から選択される基であることがより好ましく、-CH-、-O-、-S-、-SO-、-C(CF-、又は、-C(CH-であることが更に好ましい。
 式中、*は他の構造との結合部位を表す。
 ジアミンとしては、具体的には、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン又は1,6-ジアミノヘキサン;
1,2-又は1,3-ジアミノシクロペンタン、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス-(3-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルシクロヘキシルメタン及びイソホロンジアミン;
m-又はp-フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、4,4’-又は3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-又は3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-又は3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-又は3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-又は3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノパラテルフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-10-ヒドロアントラセン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテル、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、3,3-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-ジメチル-3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4-及び2,5-ジアミノクメン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、アセトグアナミン、2,3,5,6-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-m-フェニレンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサン、2,7-ジアミノフルオレン、2,5-ジアミノピリジン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノ安息香酸のエステル、1,5-ジアミノナフタレン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)オクタフルオロブタン、1,5-ビス(4-アミノフェニル)デカフルオロペンタン、1,7-ビス(4-アミノフェニル)テトラデカフルオロヘプタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、p-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’-ビス(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロトリジン及び4,4’-ジアミノクアテルフェニルから選ばれる少なくとも1種のジアミンが挙げられる。
 また、国際公開第2017/038598号の段落0030~0031に記載のジアミン(DA-1)~(DA-18)も好ましい。
 また、国際公開第2017/038598号の段落0032~0034に記載の2つ以上のアルキレングリコール単位を主鎖にもつジアミンも好ましく用いられる。
 R111は、得られる有機膜の柔軟性の観点から、-Ar-L-Ar-で表されることが好ましい。但し、Arは、それぞれ独立に、芳香族基であり、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO-又は-NHCO-、あるいは、上記の2つ以上の組み合わせからなる基である。Arは、フェニレン基が好ましく、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1又は2の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-又は-SO-が好ましい。ここでの脂肪族炭化水素基は、アルキレン基が好ましい。
 また、R111は、i線透過率の観点から、下記式(51)又は式(61)で表される2価の有機基であることが好ましい。特に、i線透過率、入手のし易さの観点から、式(61)で表される2価の有機基であることがより好ましい。
 式(51)

 式(51)中、R50~R57は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基であり、R50~R57の少なくとも1つは、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、*はそれぞれ独立に、式(2)中の窒素原子との結合部位を表す。
 R50~R57の1価の有機基としては、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)の無置換のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)のフッ化アルキル基等が挙げられる。

 式(61)中、R58及びR59は、それぞれ独立に、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、*はそれぞれ独立に、式(2)中の窒素原子との結合部位を表す。
 式(51)又は式(61)の構造を与えるジアミンとしては、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(フルオロ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 式(2)におけるR115は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、芳香環を含む4価の有機基が好ましく、下記式(5)又は式(6)で表される基がより好ましい。
式(5)又は式(6)中、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。

 式(5)中、R112は単結合又は2価の連結基であり、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、及び-NHCO-、ならびに、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-CO-、-S-及び-SO-から選択される基であることがより好ましく、-CH-、-C(CF-、-C(CH-、-O-、-CO-、-S-及び-SO-からなる群より選択される2価の基であることが更に好ましい。
 R115は、具体的には、テトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基などが挙げられる。ポリイミド前駆体は、R115に該当する構造として、テトラカルボン酸二無水物残基を、1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
 テトラカルボン酸二無水物は、下記式(O)で表されることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010

 式(O)中、R115は、4価の有機基を表す。R115の好ましい範囲は式(2)におけるR115と同義であり、好ましい範囲も同様である。
 テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジフェニルヘキサフルオロプロパン-3,3,4,4-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ならびに、これらの炭素数1~6のアルキル及び炭素数1~6のアルコキシ誘導体が挙げられる。
また、国際公開第2017/038598号の段落0038に記載のテトラカルボン酸二無水物(DAA-1)~(DAA-5)も好ましい例として挙げられる。
 式(2)において、R111とR115の少なくとも一方がOH基を有することも可能である。より具体的には、R111として、ビスアミノフェノール誘導体の残基が挙げられる。
 式(2)におけるR113及びR114は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、環状アルキル基、芳香族基、又はポリアルキレンオキシ基を含むことが好ましい。また、R113及びR114の少なくとも一方がエチレン性不飽和結合を含む基を含むことが好ましく、両方がエチレン性不飽和結合を含む基を含むことがより好ましい。R113及びR114の少なくとも一方が2以上のエチレン性不飽和結合を含む基を含むことも好ましい。
 エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、イソアリル基、2-メチルアリル基、ビニル基と直接結合した芳香環を有する基(例えば、ビニルフェニル基など)、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基、下記式(III)で表される基などが挙げられ、下記式(III)で表される基が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
 式(III)において、R200は、水素原子、メチル基、エチル基又はメチロール基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。
 式(III)において、*は他の構造との結合部位を表す。
 式(III)において、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-、シクロアルキレン基又はポリアルキレンオキシ基を表す。
 好適なR201の例は、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基等のアルキレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、-CHCH(OH)CH-、ポリアルキレンオキシ基が挙げられ、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-、シクロヘキシル基、ポリアルキレンオキシ基がより好ましく、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、又はポリアルキレンオキシ基が更に好ましい。
 本発明において、ポリアルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基が2以上直接結合した基をいう。ポリアルキレンオキシ基に含まれる複数のアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
 ポリアルキレンオキシ基が、アルキレン基が異なる複数種のアルキレンオキシ基を含む場合、ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレンオキシ基の配列は、ランダムな配列であってもよいし、ブロックを有する配列であってもよいし、交互等のパターンを有する配列であってもよい。
 上記アルキレン基の炭素数(アルキレン基が置換基を有する場合、置換基の炭素数を含む)は、2以上であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、2~6であることがより好ましく、2~5であることが更に好ましく、2~4であることが一層好ましく、2又は3であることがより更に好ましく、2であることが特に好ましい。
 また、上記アルキレン基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
 また、ポリアルキレンオキシ基に含まれるアルキレンオキシ基の数(ポリアルキレンオキシ基の繰返し数)は、2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~6が更に好ましい。
 ポリアルキレンオキシ基としては、溶剤溶解性及び耐溶剤性の観点からは、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリトリメチレンオキシ基、ポリテトラメチレンオキシ基、又は、複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基が好ましく、ポリエチレンオキシ基又はポリプロピレンオキシ基がより好ましく、ポリエチレンオキシ基が更に好ましい。上記複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基において、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とはランダムに配列していてもよいし、ブロックを形成して配列していてもよいし、交互等のパターン状に配列していてもよい。これらの基におけるエチレンオキシ基等の繰返し数の好ましい態様は上述の通りである。
 式(2)において、R113が水素原子である場合、又は、R114が水素原子である場合、ポリイミド前駆体はエチレン性不飽和結合を有する3級アミン化合物と対塩を形成していてもよい。このようなエチレン性不飽和結合を有する3級アミン化合物の例としては、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレートが挙げられる。
 ポリイミド前駆体は、構造中にフッ素原子を有することも好ましい。ポリイミド前駆体中のフッ素原子含有量は、10質量%以上が好ましく、また、20質量%以下が好ましい。
 また、基板との密着性を向上させる目的で、ポリイミド前駆体は、シロキサン構造を有する脂肪族基と共重合していてもよい。具体的には、ジアミンとして、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを用いる態様が挙げられる。
 ポリイミド前駆体におけるカルボキシ基の量は、0.5~10mmol/gであることが好ましく2~8mmol/gであることがより好ましい。
 また、ポリイミド前駆体におけるエステル化率(カルボキシ基とカルボキシエステルの合計モル量に対するカルボキシエステルのモル量)は、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい、上記エステル化率の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
 式(2)で表される繰返し単位は、式(2-A)で表される繰返し単位であることが好ましい。すなわち、本発明で用いるポリイミド前駆体の少なくとも1種が、式(2-A)で表される繰返し単位を有する前駆体であることが好ましい。ポリイミド前駆体が式(2-A)で表される繰返し単位を含むことにより、露光ラチチュードの幅をより広げることが可能になる。
式(2-A)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012

 式(2-A)中、A及びAは、酸素原子を表し、R111及びR112は、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、R113及びR114は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R113及びR114の少なくとも一方は、エチレン性不飽和結合を含む基であり、両方がエチレン性不飽和結合を含む基であることが好ましい。
 A、A、R111、R113及びR114は、それぞれ独立に、式(2)におけるA、A、R111、R113及びR114と同義であり、好ましい範囲も同様である。R112は、式(5)におけるR112と同義であり、好ましい範囲も同様である。
 ポリイミド前駆体は、式(2)で表される繰返し単位を1種含んでいてもよいが、2種以上で含んでいてもよい。また、式(2)で表される繰返し単位の構造異性体を含んでいてもよい。ポリイミド前駆体は、上記式(2)の繰返し単位のほかに、他の種類の繰返し単位をも含んでいてもよい。
 本発明におけるポリイミド前駆体の一実施形態として、式(2)で表される繰返し単位の含有量が、全繰返し単位の50モル%以上である態様が挙げられる。上記合計含有量は、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、90モル%超であることが特に好ましい。上記合計含有量の上限は、特に限定されず、末端を除くポリイミド前駆体における全ての繰返し単位が、式(2)で表される繰返し単位であってもよい。
 ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、5,000~100,000が好ましく、10,000~50,000がより好ましく、15,000~40,000が更に好ましい。ポリイミド前駆体の数平均分子量(Mn)は、2,000~40,000が好ましく、3,000~30,000がより好ましく、4,000~20,000が更に好ましい。
 上記ポリイミド前駆体の分子量の分散度は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。ポリイミド前駆体の分子量の分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
 本明細書において、分子量の分散度とは、重量平均分子量/数平均分子量により算出される値である。
 樹脂組成物が特定樹脂として複数種のポリイミド前駆体を含む場合、少なくとも1種のポリイミド前駆体の重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が上記範囲であることが好ましい。また、上記複数種のポリイミド前駆体を1つの樹脂として算出した重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が、それぞれ、上記範囲内であることも好ましい。
〔ポリイミド〕
 本発明に用いられるポリイミドは、アルカリ可溶性ポリイミドであってもよく、有機溶剤を主成分とする現像液に対して可溶なポリイミドであってもよい。
 本明細書において、アルカリ可溶性ポリイミドとは、100gの2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液に対し、23℃で0.1g以上溶解するポリイミドをいい、パターン形成性の観点からは、0.5g以上溶解するポリイミドであることが好ましく、1.0g以上溶解するポリイミドであることが更に好ましい。上記溶解量の上限は特に限定されないが、100g以下であることが好ましい。
 ポリイミドは、得られる有機膜の膜強度及び絶縁性の観点からは、複数個のイミド構造を主鎖に有するポリイミドであることが好ましい。
-フッ素原子-
 得られる有機膜の膜強度の観点からは、ポリイミドは、フッ素原子を有することも好ましい。
 フッ素原子は、例えば、後述する式(4)で表される繰返し単位におけるR132、又は、後述する式(4)で表される繰返し単位におけるR131に含まれることが好ましく、後述する式(4)で表される繰返し単位におけるR132、又は、後述する式(4)で表される繰返し単位におけるR131にフッ化アルキル基として含まれることがより好ましい。
 ポリイミドの全質量に対するフッ素原子の量は、5質量%以上が好ましく、また、20質量%以下が好ましい。
-ケイ素原子-
 得られる有機膜の膜強度の観点からは、ポリイミドは、ケイ素原子を有することも好ましい。
 ケイ素原子は、例えば、後述する式(4)で表される繰返し単位におけるR131に含まれることが好ましく、後述する式(4)で表される繰返し単位におけるR131に後述する有機変性(ポリ)シロキサン構造として含まれることがより好ましい。
 上記ケイ素原子又は上記有機変性(ポリ)シロキサン構造はポリイミドの側鎖に含まれていてもよいが、ポリイミドの主鎖に含まれることが好ましい。
 ポリイミドの全質量に対するケイ素原子の量は、1質量%以上が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
-エチレン性不飽和結合-
 ポリイミドは、エチレン性不飽和結合を主鎖末端に有していてもよいし、側鎖に有していてもよいが、側鎖に有することが好ましい。
 上記エチレン性不飽和結合は、ラジカル重合性を有することが好ましい。
 エチレン性不飽和結合は、後述する式(4)で表される繰返し単位におけるR132又はR131に含まれることが好ましく、R132又はR131にエチレン性不飽和結合を含む基として含まれることがより好ましい。
 これらの中でも、エチレン性不飽和結合は、後述する式(4)で表される繰返し単位におけるR131に含まれることが好ましく、R131にエチレン性不飽和結合を含む基として含まれることがより好ましい。
 エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基等の芳香環に直接結合した、置換されていてもよいビニル基を有する基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基、下記式(IV)で表される基などが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
 式(IV)中、R20は、水素原子、メチル基、エチル基又はメチロール基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。
 式(IV)中、R21は、炭素数2~12のアルキレン基、-O-CHCH(OH)CH-、-C(=O)O-、-O(C=O)NH-、炭素数2~30の(ポリ)アルキレンオキシ基(アルキレン基の炭素数は2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2又は3が特に好ましい、アルキレンオキシ基の繰返し数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい)、又はこれらを2以上組み合わせた基を表す。
 上記炭素数2~12のアルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状又はこれらの組み合わせにより表されるアルキレン基のいずれであってもよい。
 上記炭素数2~12のアルキレン基としては、炭素数2~8のアルキレン基が好ましく、炭素数2~4のアルキレン基がより好ましい。
 これらの中でも、R21は下記式(R1)~式(R3)のいずれかで表される基であることが好ましく、式(R1)で表される基であることがより好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
 式(R1)~(R3)中、Lは単結合、又は、炭素数2~12のアルキレン基、炭素数2~30の(ポリ)アルキレンオキシ基若しくはこれらを2以上結合した基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、*は他の構造との結合部位を表し、●は式(IV)中のR21が結合する酸素原子との結合部位を表す。
 式(R1)~(R3)中、Lとしての炭素数2~12のアルキレン基、又は、炭素数2~30の(ポリ)アルキレンオキシ基の好ましい態様は、式(IV)のR21としての炭素数2~12のアルキレン基、又は、炭素数2~30の(ポリ)アルキレンオキシ基の好ましい態様と同様である。
 式(R1)中、Xは酸素原子であることが好ましい。
 式(R1)~(R3)中、*は式(IV)中の*と同義であり、好ましい態様も同様である。
 式(R1)で表される構造は、例えば、フェノール性ヒドロキシ基等のヒドロキシ基を有するポリイミドと、イソシアナト基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物(例えば、2-イソシアナトエチルメタクリレート等)とを反応することにより得られる。
 式(R2)で表される構造は、例えば、カルボキシ基を有するポリイミドと、ヒドロキシ基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物(例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等)とを反応することにより得られる。
 式(R3)で表される構造は、例えば、フェノール性ヒドロキシ基等のヒドロキシ基を有するポリイミドと、グリシジル基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物(例えば、グリシジルメタクリレート等)とを反応することにより得られる。
 式(IV)中、*は他の構造との結合部位を表し、ポリイミドの主鎖との結合部位であることが好ましい。
 ポリイミドの全質量に対するエチレン性不飽和結合の量は、0.0001~0.1mol/gであることが好ましく、0.0005~0.05mol/gであることがより好ましい。
-エチレン性不飽和結合を含む基以外の重合性基-
 ポリイミドは、エチレン性不飽和結合を含む基以外の重合性基を更に有していてもよい。
 エチレン性不飽和結合を含む基以外の重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基、メトキシメチル基等のアルコキシメチル基、メチロール基等が挙げられる。
 エチレン性不飽和結合を含む基以外の重合性基は、例えば、後述する式(4)で表される繰返し単位におけるR131に含まれることが好ましい。
 ポリイミドの全質量に対するエチレン性不飽和結合を含む基以外の重合性基の量は、0.0001~0.1mol/gであることが好ましく、0.001~0.05mol/gであることがより好ましい。
-酸価-
 ポリイミドがアルカリ現像に供される場合、現像性を向上する観点からは、ポリイミドの酸価は、30mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましく、70mgKOH/g以上であることが更に好ましい。
 上記酸価は500mgKOH/g以下であることが好ましく、400mgKOH/g以下であることがより好ましく、200mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
 ポリイミドが有機溶剤を主成分とする現像液を用いた現像(例えば、「溶剤現像」)に供される場合、ポリイミドの酸価は、1~35mgKOH/gが好ましく、2~30mgKOH/gがより好ましく、5~20mgKOH/gが更に好ましい。
 上記酸価は、公知の方法により測定され、例えば、JIS K 0070:1992に記載の方法により測定される。
 ポリイミドに含まれる酸基としては、保存安定性及び現像性の両立の観点から、pKaが0~10である酸基が好ましく、3~8である酸基がより好ましい。
 pKaとは、酸から水素イオンが放出される解離反応を考え、その平衡定数Kaをその負の常用対数pKaによって表したものである。本明細書において、pKaは、特に断らない限り、ACD/ChemSketch(登録商標)による計算値とする。pKaは、日本化学会編「改定5版 化学便覧 基礎編」に掲載の値を参照してもよい。
 酸基が例えばリン酸等の多価の酸である場合、上記pKaは第一解離定数である。
 このような酸基として、ポリイミドは、カルボキシ基、及び、フェノール性ヒドロキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、フェノール性ヒドロキシ基を含むことがより好ましい。
-フェノール性ヒドロキシ基-
 アルカリ現像液による現像速度を適切なものとする観点からは、ポリイミドは、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましい。
 ポリイミドは、フェノール性ヒドロキシ基を主鎖末端に有してもよいし、側鎖に有してもよい。
 フェノール性ヒドロキシ基は、例えば、後述する式(4)で表される繰返し単位におけるR132又はR131に含まれることが好ましい。
 ポリイミドの全質量に対するフェノール性ヒドロキシ基の量は、0.1~30mol/gであることが好ましく、1~20mol/gであることがより好ましい。
 本発明で用いるポリイミドとしては、イミド構造を有する高分子化合物であれば、特に限定はないが、下記式(4)で表される繰返し単位を含むことが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015

 式(4)中、R131は、2価の有機基を表し、R132は、4価の有機基を表す。
 エチレン性不飽和結合を含む基は、R131及びR132の少なくとも一方に位置していてもよいし、下記式(4-1)又は式(4-2)に示すようにポリイミドの末端に位置していてもよい。
式(4-1)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016

式(4-1)中、R133はエチレン性不飽和結合を含む基であり、他の基は式(4)と同義である。
式(4-2)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017

 R134及びR135の少なくとも一方はエチレン性不飽和結合を含む基であり、エチレン性不飽和結合を含む基でない場合は有機基であり、他の基は式(4)と同義である。
 R131は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、式(2)におけるR111と同様のものが例示され、好ましい範囲も同様である。
 R131としては、ジアミンのアミノ基の除去後に残存するジアミン残基が挙げられる。ジアミンとしては、脂肪族、環式脂肪族又は芳香族ジアミンなどが挙げられる。具体的な例としては、ポリイミド前駆体の式(2)中のR111の例が挙げられる。
 R131は、少なくとも2つのアルキレングリコール単位を主鎖にもつジアミン残基であることが、焼成時における反りの発生をより効果的に抑制する点で好ましい。より好ましくは、エチレングリコール鎖、プロピレングリコール鎖のいずれか又は両方を一分子中にあわせて2つ以上含むジアミン残基であり、更に好ましくは上記ジアミンであって、芳香環を含まないジアミン残基である。
 エチレングリコール鎖、プロピレングリコール鎖のいずれか又は両方を一分子中にあわせて2つ以上含むジアミンとしては、ジェファーミン(登録商標)KH-511、ED-600、ED-900、ED-2003、EDR-148、EDR-176、D-200、D-400、D-2000、D-4000(以上商品名、HUNTSMAN(株)製)、1-(2-(2-(2-アミノプロポキシ)エトキシ)プロポキシ)プロパン-2-アミン、1-(1-(1-(2-アミノプロポキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-アミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
 R132は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、式(2)におけるR115と同様のものが例示され、好ましい範囲も同様である。
 例えば、R115として例示される4価の有機基の4つの結合子が、式(4)中の4つの-C(=O)-の部分と結合して縮合環を形成する。
 R132は、テトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基などが挙げられる。具体的な例としては、ポリイミド前駆体の式(2)中のR115の例が挙げられる。有機膜の強度の観点から、R132は1~4つの芳香環を有する芳香族ジアミン残基であることが好ましい。
 R131とR132の少なくとも一方にOH基を有することも好ましい。より具体的には、R131として、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、上記の(DA-1)~(DA-18)が好ましい例として挙げられ、R132として、上記の(DAA-1)~(DAA-5)がより好ましい例として挙げられる。
 ポリイミドは、構造中にフッ素原子を有することも好ましい。ポリイミド中のフッ素原子の含有量は10質量%以上が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
 基板との密着性を向上させる目的で、ポリイミドは、シロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合してもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどが挙げられる。
 樹脂組成物の保存安定性を向上させるため、ポリイミドの主鎖末端はモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤により封止されていることが好ましい。これらのうち、モノアミンを用いることがより好ましく、モノアミンの好ましい化合物としては、アニリン、2-エチニルアニリン、3-エチニルアニリン、4-エチニルアニリン、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよく、複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
-イミド化率(閉環率)-
 ポリイミドのイミド化率(「閉環率」ともいう)は、得られる有機膜の膜強度、絶縁性等の観点からは、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがより好ましい。
 上記イミド化率の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
 上記イミド化率は、例えば下記方法により測定される。
 ポリイミドの赤外吸収スペクトルを測定し、イミド構造由来の吸収ピークである1377cm-1付近のピーク強度P1を求める。次に、そのポリイミドを350℃で1時間熱処理した後、再度、赤外吸収スペクトルを測定し、1377cm-1付近のピーク強度P2を求める。得られたピーク強度P1、P2を用い、下記式に基づいて、ポリイミドのイミド化率を求めることができる。
 イミド化率(%)=(ピーク強度P1/ピーク強度P2)×100
 ポリイミドは、繰り返し単位のすべてがR131及びR132の組み合わせが同じである上記式(4)で表される繰返し単位を含んでいてもよく、R131及びR132の組み合わせが異なる2種以上を含む上記式(4)で表される繰返し単位を含んでいてもよい。ポリイミドは、上記式(4)で表される繰返し単位のほかに、他の種類の繰返し単位を含んでいてもよい。他の種類の繰返し単位としては、例えば、上述の式(2)で表される繰返し単位等が挙げられる。
 ポリイミドは、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン(一部をモノアミンである末端封止剤に置換)を反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物(一部を酸無水物又はモノ酸クロリド化合物又はモノ活性エステル化合物である末端封止剤に置換)とジアミンを反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミン(一部をモノアミンである末端封止剤に置換)と縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、ジアミン(一部をモノアミンである末端封止剤に置換)と反応させる方法などの方法を利用して、ポリイミド前駆体を得、これを、既知のイミド化反応法を用いて完全イミド化させる方法、又は、途中でイミド化反応を停止し、一部イミド構造を導入する方法、更には、完全イミド化したポリマーと、そのポリイミド前駆体をブレンドする事によって、一部イミド構造を導入する方法を利用して合成することができる。また、その他公知のポリイミドの合成方法を適用することもできる。
 ポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、5,000~100,000が好ましく、10,000~50,000がより好ましく、15,000~40,000が更に好ましい。重量平均分子量を5,000以上とすることにより、硬化後の膜の耐折れ性を向上させることができる。機械特性(例えば、破断伸び)に優れた有機膜を得るため、重量平均分子量は、15,000以上が特に好ましい。
 ポリイミドの数平均分子量(Mn)は、2,000~40,000が好ましく、3,000~30,000がより好ましく、4,000~20,000が更に好ましい。
 上記ポリイミドの分子量の分散度は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。ポリイミドの分子量の分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
 樹脂組成物が特定樹脂として複数種のポリイミドを含む場合、少なくとも1種のポリイミドの重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が上記範囲であることが好ましい。上記複数種のポリイミドを1つの樹脂として算出した重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が、それぞれ、上記範囲内であることも好ましい。
〔ポリベンゾオキサゾール前駆体〕
 ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、国際公開第2022/145355号の段落0073~0095に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
〔ポリベンゾオキサゾール〕
ポリベンゾオキサゾールとしては、国際公開第2022/145355号の段落0096~0103に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
〔ポリアミドイミド前駆体〕
 ポリアミドイミド前駆体としては、国際公開第2022/145355号の段落0104~0119に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
〔ポリアミドイミド〕
 ポリアミドイミドとしては、国際公開第2022/145355号の段落0120~0133に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
〔ポリアミド〕
 ポリアミドは、下記式(PA-1)で表される繰返し単位を含むことが好ましい。

 式(PA-1)中、R118は2価の有機基であり、R119は2価の有機基である。
 ポリアミドは、エチレン性不飽和結合を主鎖末端に有していてもよいし、側鎖に有していてもよいが、側鎖に有することが好ましい。
 エチレン性不飽和結合は、式(PA-1)で表される繰返し単位におけるR118又はR119に含まれることが好ましく、R119にエチレン性不飽和結合を含む基として含まれることがより好ましい。
 エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基等の芳香環に直接結合した、置換されていてもよいビニル基を有する基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基、上述の式(III)で表される基などが挙げられる。
 式(PA-1)中、R118としては、下記構造の基が特に好ましい。下記構造中、*はそれぞれ、式(PA-1)中の2つのカルボキシ基との結合部位を表す。以下の構造における水素原子は置換基により置換されていてもよく、置換基としては、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、上述の式(III)で表される基を含む基などが挙げられる。

 Lは、単結合、又は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NHCO-、又は、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、又は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-、若しくは、-SO-から選択される基であることがより好ましく、-CH-、-O-、-S-、-SO-、-C(CF-、又は、-C(CH-であることが更に好ましい。
 式(PA-1)中、R119としては、上述の式(2)におけるR111と同様の基が挙げられる。また、下記構造の基が特に好ましい。下記構造中、*はそれぞれ、式(PA-1)中の2つの窒素原子との結合部位を表す。また、下記構造中の環構造における水素原子は置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基又はイソブチル基)、ヒドロキシ基、上述の式(III)で表される基を含む基等が挙げられる。
 上記構造中、X~Xはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-C(CH)(Ph)-、又は、1,1-シクロヘキサンジイル基を表す。また、Phはフェニル基を表す。
 X、X、X、X、X及びXは、-O-であることが好ましい。
 Xは、単結合、-O-、-S(=O)-、-C(CH-又は-C(CF-であることが好ましい。
 また、R119は下記構造の基であることも好ましい。下記構造中、RP1はそれぞれ独立に、単結合又はアルキレン基を表し、*はそれぞれ、式(PA-1)中の2つの窒素原子との結合部位を表す。RP1はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数2~6のアルキレン基がより好ましい。また、下記構造中の環構造における水素原子は置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基又はイソブチル基)、上述の式(III)で表される基を含む基等が挙げられる。
 また、R119は下記構造の基であることも好ましい。下記構造中、RP2はアルキレン基を表し、RP3はそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、n1は1~10の整数を表し、RP4はアルキレン基を表し、RP5はそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、RP6はそれぞれ独立に、アルキル基又はフェニル基を表し、n2は1~40の整数を表し、*はそれぞれ、式(PA-1)中の2つの窒素原子との結合部位を表す。
 RP2は炭素数2~20のアルキレン基が好ましく、2~12のアルキレン基がより好ましい。
 RP3はそれぞれ独立に、炭素数2~6のアルキレン基が好ましく、エチレン基又はプロピレン基がより好ましく、エチレン基が更に好ましい。
 n1は1~5の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましい。
 RP4は炭素数2~6のアルキレン基が好ましく、エチレン基又はプロピレン基がより好ましく、エチレン基が更に好ましい。
 RP5はそれぞれ独立に、炭素数2~10のアルキレン基が好ましく、炭素数2~6のアルキレン基がより好ましく、エチレン基、プロピレン基又はトリメチレン基が更に好ましく、トリメチレン基が特に好ましい。
 RP6はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基又はフェニル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基がより好ましく、メチル基又はフェニル基が更に好ましい。
 n2は1~20の整数であることがより好ましい。
 また、R119がエチレン性不飽和基を有する場合、R119は上述した各構造における水素原子の少なくとも1つが、上述の式(III)で表される基を含む基で置換された構造であることも好ましい。
上述の式(III)で表される基を含む基としては、下記式(III-2)で表される基が挙げられる。

下記式(III-2)中、Rは上述の式(III)で表される基を表す。
 また、樹脂組成物の保存安定性を向上させるため、ポリアミドは主鎖末端をモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤で封止することが好ましい。末端封止剤の好ましい態様は、上述のポリイミドにおける末端封止剤の好ましい態様と同様である。
 ポリアミドは、R118及びR119の組み合わせが同じである上記式(PA-1)で表される繰返し単位を含んでいてもよく、R118及びR119の組み合わせが異なる2種以上を含む上記式(PA-1)で表される繰返し単位を含んでいてもよい。また、ポリアミドは、上記式(PA-1)で表される繰返し単位のほかに、他の種類の繰返し単位をも含んでいてもよい。
 ポリアミドは、例えば、下記の方法により合成されるが、合成方法はこれに限定されるものではない。
 アミノ基で置換された2価カルボン酸とジアミンとを重縮合させることにより、ポリアミドを得ることができる。2価カルボン酸としては、上述の式(PA-1)におけるR119の両端にカルボキシ基が結合した化合物を用いることができる。ジアミンとしては、上述の式(PA-1)におけるR119の両端にアミノ基が結合した化合物を用いることができる。
 ポリアミドの重量平均分子量(Mw)は、5,000~70,000が好ましく、8,000~50,000がより好ましく、10,000~30,000が更に好ましい。重量平均分子量を5,000以上とすることにより、硬化後の膜の耐折れ性を向上させることができる。機械特性に優れた有機膜を得るため、重量平均分子量は、20,000以上が特に好ましい。
 また、ポリアミドの数平均分子量(Mn)は、800~250,000が好ましく、2,000~50,000がより好ましく、4,000~25,000が更に好ましい。
 ポリアミドの分子量の分散度は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。ポリアミドの分子量の分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
 また、樹脂組成物が特定樹脂として複数種のポリアミドを含む場合、少なくとも1種のポリアミドの重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が上記範囲であることが好ましい。また、上記複数種のポリアミドを1つの樹脂として算出した重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が、それぞれ、上記範囲内であることも好ましい。
〔ポリイミド前駆体等の製造方法〕
 ポリイミド前駆体等は、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させてポリアミック酸を得、縮合剤又はアルキル化剤を用いてエステル化する方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得て、その後ジアミンと縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸をハロゲン化剤を用いて酸ハロゲン化し、ジアミンと反応させる方法、などの方法を利用して得ることができる。上記製造方法のうち、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸をハロゲン化剤を用いて酸ハロゲン化し、ジアミンと反応させる方法がより好ましい。
 上記縮合剤としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン、1,1-カルボニルジオキシ-ジ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート、無水トリフルオロ酢酸等が挙げられる。
 上記アルキル化剤としては、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジアルキルホルムアミドジアルキルアセタール、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル等が挙げられる。
 上記ハロゲン化剤としては、塩化チオニル、塩化オキサリル、オキシ塩化リン等が挙げられる。
 ポリイミド前駆体等の製造方法では、反応に際し、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
 有機溶剤としては、原料に応じて適宜定めることができるが、ピリジン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、プロピオン酸エチル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン等が例示される。
 ポリイミド前駆体等の製造方法では、反応に際し、塩基性化合物を添加することが好ましい。塩基性化合物は1種でもよいし、2種以上でもよい。
 塩基性化合物は、原料に応じて適宜定めることができるが、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン等が例示される。
-末端封止剤-
 ポリイミド前駆体等の製造方法に際し、保存安定性をより向上させるため、ポリイミド前駆体等の樹脂末端に残存するカルボン酸無水物、酸無水物誘導体、或いは、アミノ基を封止することが好ましい。樹脂末端に残存するカルボン酸無水物、及び酸無水物誘導体を封止する際、末端封止剤としては、モノアルコール、フェノール、チオール、チオフェノール、モノアミン等が挙げられ、反応性、膜の安定性から、モノアルコール、フェノール類やモノアミンを用いることがより好ましい。モノアルコールの好ましい化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ドデシノール、ベンジルアルコール、2-フェニルエタノール、2-メトキシエタノール、2-クロロメタノール、フルフリルアルコール等の1級アルコール、イソプロパノール、2-ブタノール、シクロヘキシルアルコール、シクロペンタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等の2級アルコール、t-ブチルアルコール、アダマンタンアルコール等の3級アルコールが挙げられる。フェノール類の好ましい化合物としては、フェノール、メトキシフェノール、メチルフェノール、ナフタレン-1-オール、ナフタレン-2-オール、ヒドロキシスチレン等のフェノール類などが挙げられる。また、モノアミンの好ましい化合物としては、アニリン、2-エチニルアニリン、3-エチニルアニリン、4-エチニルアニリン、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよく、複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
 また、樹脂末端のアミノ基を封止する際、アミノ基と反応可能な官能基を有する化合物で封止することが可能である。アミノ基に対する好ましい封止剤は、カルボン酸無水物、カルボン酸クロリド、カルボン酸ブロミド、スルホン酸クロリド、無水スルホン酸、スルホン酸カルボン酸無水物などが好ましく、カルボン酸無水物、カルボン酸クロリドがより好ましい。カルボン酸無水物の好ましい化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水安息香酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などが挙げられる。また、カルボン酸クロリドの好ましい化合物としては、塩化アセチル、アクリル酸クロリド、プロピオニルクロリド、メタクリル酸クロリド、ピバロイルクロリド、シクロヘキサンカルボニルクロリド、2-エチルヘキサノイルクロリド、シンナモイルクロリド、1-アダマンタンカルボニルクロリド、ヘプタフルオロブチリルクロリド、ステアリン酸クロリド、ベンゾイルクロリド、などが挙げられる。
-固体析出-
 ポリイミド前駆体等の製造方法に際し、固体を析出する工程を含んでいてもよい。具体的には、反応液中に共存している脱水縮合剤の吸水副生物を必要に応じて濾別した後、水、脂肪族低級アルコール、又はその混合液等の貧溶媒に、得られた重合体成分を投入し、重合体成分を析出させることで、固体として析出させ、乾燥させることでポリイミド前駆体等を得ることができる。精製度を向上させるために、ポリイミド前駆体等を再溶解、再沈析出、乾燥等の操作を繰返してもよい。さらに、イオン交換樹脂を用いてイオン性不純物を除去する工程を含んでいてもよい。
 本発明において、特定樹脂の重量平均分子量を、5,000~20,000とすることも、好ましい態様の1つである。このような比較的小さい分子量の特定樹脂を用いることにより、組成物中での樹脂の溶解性、及び、現像時の未露光部の除去性に優れる。また、本発明の樹脂組成物は後述する特定重合性化合物及び光重合開始剤を含み、露光により特定重合性化合物が重合するため、現像時に露光部は除去されにくくなる。
 上記重量平均分子量の下限は、現像時の未露光部の除去性、現像時の露光部の除去されにくさ、樹脂自体の組成物中での溶解度などを考慮して決定すればよいが、6,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましい。
 上記重量平均分子量の上限は、現像時の未露光部の除去性、現像時の露光部の除去されにくさ、樹脂自体の組成物中での溶解度などを考慮して決定すればよいが、18,000以下であることが好ましく、16,000以下であることがより好ましい。
 また、特定樹脂の全質量に対し、分子量が30,000以上である特定樹脂の含有量が20質量%以下であることも好ましい。
 特定樹脂の全質量に対し、分子量が30,000以上である特定樹脂の含有量の割合は、上述のゲル浸透クロマトグラフィ法におけるピーク面積の割合(全ピーク面積に対する、分子量が30,000以上である領域に存在するピーク面積の割合)として算出することができる。具体的には、下記式により算出できる。
式:分子量30000以上の領域におけるピーク面積/全体のピーク面積×100
 上記含有量は、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
 また、上記含有量は、0質量%であってもよい。
〔含有量〕
 本発明の樹脂組成物における特定樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが一層好ましい。また、本発明の樹脂組成物における樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることが更に好ましく、97質量%以下であることが一層好ましく、95質量%以下であることがより一層好ましい。
 本発明の樹脂組成物は、特定樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
 本発明の樹脂組成物は、少なくとも2種の樹脂を含むことも好ましい。
 具体的には、本発明の樹脂組成物は、特定樹脂と、後述する他の樹脂とを合計で2種以上含んでもよいし、特定樹脂を2種以上含んでいてもよいが、特定樹脂を2種以上含むことが好ましい。
 本発明の樹脂組成物が特定樹脂を2種以上含む場合、例えば、ポリイミド前駆体であって、二無水物由来の構造(上述の式(2)でいうR115)が異なる2種以上のポリイミド前駆体を含むことが好ましい。
<他の樹脂>
 本発明の樹脂組成物は、上述した特定樹脂と、特定樹脂とは異なる他の樹脂(以下、単に「他の樹脂」ともいう)とを含んでもよい。
 他の樹脂としては、フェノール樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリシロキサン、シロキサン構造を含む樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、スチリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
 例えば、(メタ)アクリル樹脂を更に加えることにより、塗布性に優れた樹脂組成物が得られ、また、耐溶剤性に優れたパターン(硬化物)が得られる。
 例えば、後述する重合性化合物に代えて、又は、後述する重合性化合物に加えて、重量平均分子量が20,000以下の重合性基価の高い(例えば、樹脂1gにおける重合性基の含有モル量が1×10-3モル/g以上である)(メタ)アクリル樹脂を樹脂組成物に添加することにより、樹脂組成物の塗布性、パターン(硬化物)の耐溶剤性等を向上させることができる。
 本発明の樹脂組成物が他の樹脂を含む場合、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であることがより一層好ましく、10質量%以上であることが更に一層好ましい。
 本発明の樹脂組成物における、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが一層好ましく、50質量%以下であることがより一層好ましい。
 本発明の樹脂組成物の好ましい一態様として、他の樹脂の含有量が低含有量である態様とすることもできる。上記態様において、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることがより一層好ましい。上記含有量の下限は特に限定されず、0質量%以上であればよい。
 本発明の樹脂組成物は、他の樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<特定重合性化合物>
 本発明の樹脂組成物は、特定重合性化合物を含む。
 特定重合性化合物は、環構造を有し、上記環構造の環員である原子、及び、上記環構造内で上記環員と隣接する環員である原子のうち少なくとも一つの原子のいずれもが置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する化合物である。
 以下、置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する環員と、その環員に隣接する環員であって、置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する環員とを有する環構造を「特定環構造」とも記載する。
 特定重合性化合物における特定環構造は、芳香族環構造であってもよいし、脂肪族環構造であってもよいが、耐薬品性及び、破断伸びの観点からは、芳香族環構造であることが好ましく、解像性の観点からは脂肪族環構造であることが好ましい。
 芳香族環構造としては、芳香族炭化水素環構造、芳香族複素環構造のいずれであってもよいが、芳香族炭化水素環構造が好ましい。
 芳香族炭化水素環構造としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素環構造が好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環がより好ましく、ベンゼン環が更に好ましい。
 また芳香族炭化水素環構造は、芳香族複素環構造と縮合していてもよい。
 芳香族複素環構造としては、5員環構造又は6員環構造が好ましい。
 芳香族複素環構造における複素原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、窒素原子が好ましい。
 また芳香族複素環構造は、芳香族炭化水素環構造、又は、芳香族複素環構造と縮合していてもよい。
 芳香族複素環構造の具体例としては、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、インドール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チアナフテン、ジベンゾチオフェン、インダゾールベンズイミダゾール、アントラニル、ベンズイソオキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、プリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、アクリジン、イソキノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキザリン、ナフチリジン、フェナントロリン、プテリジン等の構造が挙げられる。
 脂肪族環構造としては、5~15員環であることが好ましく、5~10員環であることがより好ましく、5員環又は6員環であることがより好ましい。
 脂肪族環構造としては、飽和脂肪族環構造であってもよいし、不飽和脂肪族環構造であってもよい。
 また、脂肪族環構造としては、脂肪族炭化水素環構造であってもよいし、脂肪族複素環構造であってもよい。
 脂肪族炭化水素環構造としては、5~15員環であるシクロアルカン、5~15員環であるシクロアルケン等が挙げられる。環員数の好ましい態様は上述の通りである。
 また、脂肪族複素環構造における複素原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、窒素原子が好ましい。
 特定化合物は、特定環構造を1つのみ有してもよいし、2以上有してもよい。
 特定重合性化合物は、特定環構造の環員である原子、及び、特定環構造内で上記環員と隣接する環員である原子のうち少なくとも一つの原子のいずれもが置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する。
 すなわち、ある環員である原子と、その環員に隣接する2以上の環員のうち少なくとも一つの原子とが置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する。
 特定重合性化合物は、特定環構造の環員である原子、及び、特定環構造で上記環員と隣接する環員である原子のうち一つの原子が置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する態様も、本発明の好ましい態様の一つである。
 特定重合性化合物は、置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する環員(環員1)と、それに隣接する環員であって置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する環員(環員2)と、の2つの環員を含む構造を1つのみ有してもよいし、2以上有していてもよい。2以上有する場合、上記2つの環員を含む構造を1つの特定環構造内に有してもよいし、異なる特定環構造内に有してもよい。
 また、特定環構造は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子等の置換基を更に有していてもよい。上記アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基は、更にハロゲン原子等により置換されていてもよい。また、本明細書において、単に「アルキル基」等と記載した場合には、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はこれらの組み合わせにより表される構造のいずれをも含むものとする。
 以下に特定重合性化合物における特定環構造、又は特定環構造を含む構造の好ましい態様を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の構造中、*はそれぞれ、エチレン性不飽和結合を含む基を有する置換基との結合部位を表す。また、以下の構造中の水素原子は、本発明の効果が得られる範囲において更に置換されていてもよい。さらに、以下の環構造はさらに他の環構造と縮合していてもよいし、以下の環構造中の水素原子は公知の他の置換基により置換されていてもよい。
 上記置換基であるエチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、イソアリル基、2-メチルアリル基、ビニル基と直接結合した芳香環を有する基(例えば、ビニルフェニル基など)、(メタ)アクリロイル基、又は、これらを含む基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、又は、(メタ)アクリロイル基若しくはビニルフェニル基を含む基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、又は、(メタ)アクリロイル基を含む基であることが好ましい。
 特定環構造に結合する上記置換基であるエチレン性不飽和結合を含む基は、構造が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
 特に、特定重合性化合物におけるエチレン性不飽和結合を含む基のうち少なくとも1つが、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、又は、(メタ)アクリロイル基若しくはビニルフェニル基を含む基であることが好ましい。
 また、特定重合性化合物における上記置換基に含まれるエチレン性不飽和結合を含む基のうち少なくとも1つが、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、又は、(メタ)アクリロイル基若しくはビニルフェニル基を含む基であることが好ましく、上記置換基に含まれるエチレン性不飽和結合を含む基のいずれもが、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、又は、(メタ)アクリロイル基若しくはビニルフェニル基を含む基であることがより好ましい。
 上記置換基であるエチレン性不飽和結合を含む基としては、下記式(P-1)で表される基が挙げられる。

 式(P-1)中、Xは単結合又は2~4価の連結基を表し、Xは他の式(P-1)で表される基におけるX、又は、特定環構造の環員である原子と結合して環構造を形成してもよく、Yはエチレン性不飽和結合を含む基を表し、n1は1~3の整数を表し、Xが単結合の場合はn1は1であり、*は特定環構造の環員である原子との結合部位を表す。
 式(P-1)中、Xは単結合又は2~4価の連結基を表し、単結合又はn1価の連結基であることが好ましい。
 また、Xが連結基である場合、上記連結基はヘテロ原子を含む基であることが好ましく、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO-及び-NR-からなる群から選ばれた少なくとも1種の基、または、これらの基と炭化水素基との組み合わせにより表される基であることがより好ましく、-O-、-C(=O)-及び-NR-からなる群から選ばれた少なくとも1種の基、または、これらの基と炭化水素基との組み合わせにより表される基であることが更に好ましい。Rは水素原子又は1価の有機基であり、水素原子又は炭化水素基であることが好ましく、水素原子、アルキル基又はフェニル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
 上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、これらの結合により表される基のいずれであってもよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
 上記炭化水素基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
 Xにおける特定環構造との結合部位は、ヘテロ原子であることが好ましく、酸素原子又は窒素原子であることが好ましい。
 また、Xとしては、以下の式(X-1)~式(X-3)で表される基が好ましい。

 式(X-1)中、AX1は-O-又は-NR-を表し、Rは水素原子又は1価の有機基であり、*は特定環構造との結合部位を表し、#はエチレン性不飽和結合を含む基との結合部位を表す。
 式(X-2)中、LX1はn1+1価の連結基を表し、AX2は-O-又はNR-を表し、n1は式(P-1)中のn1と同一の値であり、Rは水素原子又は1価の有機基であり、*は特定環構造との結合部位を表し、#はエチレン性不飽和結合を含む基との結合部位を表し、LX1が単結合である場合、n1は1である。
 式(X-3)中、LX2は単結合又は2価の連結基を表し、AX3は-O-又はNR-を表し、XX1は単結合、-C(=O)-、-C(=O)NH-、又は、-CHCH(OH)-を表し、LX3はn1+1価の連結基を表し、AX4は-O-又はNR-を表し、n1は式(P-1)中のn1と同一の値であり、Rは水素原子又は1価の有機基であり、*は特定環構造との結合部位を表し、#はエチレン性不飽和結合を含む基との結合部位を表す。
 式(X-1)中、Rの好ましい態様は上述の通りである。
 式(X-2)中、Rの好ましい態様は上述の通りである。
 式(X-2)中、LX1は単結合又は炭化水素基であることが好ましく、単結合又は飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。上記炭化水素基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
 また、LX1は下記式(L-1)で表される基であることも好ましい。

 また、式(L-1)中、RL1はアルキレン基を表し、RL2はそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、mは1以上の整数を表し、*は式(X-2)中の*と同義であり、RL3は単結合又はn1+1価の連結基を表し、#は式(X-2)中のAX2との結合部位を表し、n1は式(P-1)中のn1と同一の値であり、RL3が単結合である場合、n1は1である。
 式(L-1)中、RL1は炭素数2~10のアルキレン基が好ましく、2~4のアルキレン基がより好ましく、エチレン基又はプロピレン基が更に好ましく、エチレン基が特に好ましい。
 式(L-1)中、RL2は炭素数2~10のアルキレン基が好ましく、2~4のアルキレン基がより好ましく、エチレン基又はプロピレン基が更に好ましく、エチレン基が特に好ましい。
 式(L-1)中、RL3は単結合又は炭化水素基であることが好ましく、単結合又は飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。上記炭化水素基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
 式(L-1)中、mは1~10の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましい。また、1又は2であることも本発明の好ましい態様の一つである。
 式(X-3)中、Rの好ましい態様は上述の通りである。
 式(X-3)中、LX2は、単結合又は炭化水素基基であることが好ましく、単結合又は飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。上記炭化水素基基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
 XX1は-C(=O)NH-が好ましい。ここで、XX1が-C(=O)NH-である場合、-C(=O)NH-における炭素原子がAX3と、窒素原子がLX3と結合することが好ましい。
 XX1が単結合の場合、AX3は-O-であることが好ましい。
 XX1が-C(=O)-の場合、AX3は-O-であることが好ましい。
 XX1が-CHCH(OH)-である場合、-CHCH(OH)-に含まれる-CH-がAX3と、-CH(OH)-がLX3と結合することが好ましい。また、XX1が-CHCH(OH)-である場合、AX3は-O-であることが好ましい。また、更にLX2におけるAX3との結合部位は、カルボニル基であることが好ましい。
 式(X-3)中、LX3は炭素数2~20の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2~10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数2~6の炭化水素基であることが更に好ましい。上記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、脂肪族飽和炭化水素基であることがより好ましい。
 Xで表される基の好ましい態様を以下に記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。下記構造中、*は特定環構造との結合部位を表し、#はエチレン性不飽和結合を含む基との結合部位を表す。また、下記構造中、n及びmは1以上の整数を表す。
 式(P-1)中、Yは、ビニル基、アリル基、イソアリル基、2-メチルアリル基、ビニル基と直接結合した芳香環を有する基(例えば、ビニルフェニル基など)、(メタ)アクリロイル基、又は、これらの基を含む基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、又は、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
 式(P-1)中、n1は1又は2であることが好ましい。また、n1が1である態様も、本発明の好ましい態様の一つである。
 特定重合性化合物は、下記式(1-1)又は下記式(1-2)のいずれかで表される構造であることが好ましい。

 式(1-1)中、Arは芳香族環構造を表し、Z及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、Z及びZの少なくとも一方は炭素原子であり、Z及びZはいずれも上記Arの環員であり、X及びXはそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、XとXは結合して環構造を形成してもよく、X及びXの少なくとも1つと、上記芳香族環構造の環員のうちZ及びZとは異なる環員である原子とが結合して環構造を形成してもよく、Y及びYはそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、Xが単結合の場合はn1は1、Xが単結合の場合はn2は1である。
 式(1-2)中、Cyは環員数が5~15の脂肪族環構造を表し、Cyは他の環構造と更に複環を形成していてもよく、Z及びZはそれぞれ独立に、CRX2、炭素原子又は窒素原子を表し、Z及びZはいずれも上記Cyの環員であり、RX2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、X及びXはそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n3及びn4はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、Xが単結合の場合はn3は1、Xが単結合の場合はn4は1であり、破線が付された結合は二重結合又は単結合を表し、Z及びZのうちいずれか1つがCRX2又は窒素原子である場合、破線が付された結合は単結合である。
 式(1-1)中、Arは上述の特定環構造に該当する芳香族環構造である。
 式(1-1)中、Arの好ましい態様は、上述の特定環構造が芳香族環構造である場合の好ましい態様と同様である。
 式(1-1)中、Z及びZはいずれも炭素原子であることが好ましい。
 式(1-1)中、X及びXはそれぞれ独立に、単結合又はn1+1価の連結基を表すことが好ましい。また、X及びXの好ましい態様は、上述の式(P-1)におけるXの好ましい態様と同様である。
 式(1-1)中、Y及びYの好ましい態様は、上述の式(P-1)におけるYの好ましい態様と同様である。
 式(1-1)中、n1及びn2の好ましい態様は、上述の式(P-1)におけるn1の好ましい態様と同様である。
 式(1-2)中、Cyは上述の特定環構造に該当する脂肪族環構造である。
 式(1-2)中、Cyの好ましい態様は、上述の特定環構造が脂肪族環構造である場合の好ましい態様と同様である。
 式(1-2)中、Z及びZはいずれもCRX2であることが好ましい。RX2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
 式(1-2)中、X及びXはそれぞれ独立に、単結合又はn1+1価の連結基を表すことが好ましい。また、X及びXの好ましい態様は、上述の式(P-1)におけるXの好ましい態様と同様である。
 式(1-2)中、Y及びYの好ましい態様は、上述の式(P-1)におけるYの好ましい態様と同様である。
 式(1-2)中、n3及びn4の好ましい態様は、上述の式(P-1)におけるn1の好ましい態様と同様である。
 これらの中でも、上記X及び上記Xがそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含む基であり、上記X及び上記Xがそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含む基であることが好ましい。
 ヘテロ原子を含む基としては、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO-及び-NR-からなる群から選ばれた少なくとも1種の基、または、これらの基と炭化水素基との組み合わせにより表される基であることが好ましく、-O-、-C(=O)-及び-NR-からなる群から選ばれた少なくとも1種の基、または、これらの基と炭化水素基との組み合わせにより表される基であることが好ましい。
 上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、これらの結合により表される基のいずれであってもよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
 また、ヘテロ原子を含む基としては、上述の式(X-1)~式(X-3)のいずれかで表される基が好ましい。
 特に、上記X及び上記Xがそれぞれ独立に、-O-又は-NR-であり、上記X及び上記Xがそれぞれ独立に、-O-又は-NR-であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であることが好ましい。
 Rの好ましい態様は上述の通りである。
 特定重合性化合物は、下記式(2-1)~式(2-4)のいずれかで表される構造であることが好ましい。

 式(2-1)中、A11~A14はそれぞれ独立に、-CRX1=又は-N=を表し、RX1はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、化合物中にRX1が2以上存在する場合、RX1同士が結合して環構造を形成してもよく、X11及びX12はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、X11とX12は結合して環構造を形成してもよく、X11及びX12の少なくとも1つと、A11~A14の少なくとも1つとが結合して環構造を形成してもよく、Y11及びY12はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X11が単結合の場合はn11は1、X12が単結合の場合はn12は1である。
 式(2-2)中、A21及びA22はそれぞれ独立に、-CRX2-又は窒素原子を表し、RX2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、X21及びX22はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、Y21及びY22はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n21及びn22はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X21が単結合の場合はn21は1、X22が単結合の場合はn22は1であり、Cyは環員数が5~15の脂肪族環構造を表し、Cyは他の環構造と更に複環を形成していてもよい。
 式(2-3)中、A31及びA32はそれぞれ独立に、-CRX3=又は-N=を表し、RX3はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、化合物中にRX3が2以上存在する場合、RX3同士が結合して環構造を形成してもよく、X31~X34はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、X31とX32は結合して環構造を形成してもよく、X33とX34は結合して環構造を形成してもよく、X31~X34の少なくとも1つと、A31~A32の少なくとも1つとが結合して環構造を形成してもよく、Y31~Y34はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n31~n34はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X31が単結合の場合はn31は1、X32が単結合の場合はn32は1、X33が単結合の場合はn33は1、X34が単結合の場合はn34は1である。
 式(2-4)中、A41~A44はそれぞれ独立に、-CRX4=又は-N=を表し、RX4はそれぞれ独立に、水素原子、1価の置換基又はLとの結合部位を表し、A41~A44のうち少なくとも1つはRX4がLとの結合部位である-CRX4=であり、化合物中にRX4が2以上存在する場合、RX4同士が結合して環構造を形成してもよく、X41及びX42はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、X41とX42は結合して環構造を形成してもよく、X41及びX42の少なくとも1つと、A41~A44の少なくとも1つとが結合して環構造を形成してもよく、Y41及びY42はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n41及びn42はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X41が単結合の場合はn41は1、X42が単結合の場合はn42は1であり、Lは単結合又はm41価の連結基であり、Lが単結合である場合m41は2であり、m41は2以上の整数であり、それぞれm41個ずつ存在するA41~A44、X41及びX42、Y41及びY42、並びに、n41及びn42はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
 式(2-1)中、A11~A14はいずれもが-CRX1=であるか、3つが-CRX1=であり、かつ、1つが-N=であることが好ましく、いずれもが-CRX1=であることがより好ましい。RX1はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基又はフェニル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
 式(2-1)中、X11、X12、Y11、Y12、n11及びn12の好ましい態様は、それぞれ、上述の式(1-1)におけるX、X、Y、Y、n1及びn2の好ましい態様と同様である。
 式(2-2)中、A21及びA22はいずれもが-CRX2-であることが好ましい。RX2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基又はフェニル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
 式(2-2)中、X21、X22、Y21、Y22、n21及びn22の好ましい態様は、それぞれ、上述の式(1-2)におけるX、X、Y、Y、n3及びn4の好ましい態様と同様である。
 式(2-2)中、Cyの好ましい態様は、式(1-2)における破線部を有する結合が単結合である場合のCyの好ましい態様と同様である。
 式(2-3)中、A31及びA32はいずれもが-CRX3=であるか、一方が-CRX3=であり、かつ、他方が-N=であることが好ましく、いずれもが-CRX3=であることがより好ましい。RX3はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基又はフェニル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
 式(2-3)中、X31、X32、Y31、Y32、n31及びn32の好ましい態様は、それぞれ、上述の式(1-1)におけるX、X、Y、Y、n1及びn2の好ましい態様と同様である。
 式(2-3)中、X33、X34、Y33、Y34、n33及びn34の好ましい態様は、それぞれ、上述の式(1-1)におけるX、X、Y、Y、n1及びn2の好ましい態様と同様である。
 式(2-4)中、A41~A44はいずれもが-CRX1=であるか、3つが-CRX1=であり、かつ、1つが-N=であることが好ましく、いずれもが-CRX1=であることがより好ましい。
 A41~A44のうち少なくとも1つはRX4がLとの結合部位である-CRX4=であり、A41~A44のうち1つがRX4がLとの結合部位である-CRX4=であることが好ましく、A42及びA43のうち1つがRX4がLとの結合部位である-CRX4=であることがより好ましい。
 RX4がLとの結合部位ではない場合、RX4はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基又はフェニル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
 式(2-4)中、X41、X42、Y41、Y42、n41及びn42の好ましい態様は、それぞれ、上述の式(1-1)におけるX、X、Y、Y、n1及びn2の好ましい態様と同様である。
 式(2-4)中、m41は2~6の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましい。また、m41が2であることも、本発明の好ましい態様の一つである。
 式(2-4)中、Lは単結合、又は、炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NR-、若しくはこれらの結合により表される基であることが好ましい。
 上記炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基が挙げられ、炭素数1~10の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。
 また、上記炭化水素基は、ハロゲン原子等の公知の置換基により水素原子が置換されていてもよい。
 Lの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。下記式中、*はそれぞれ、式(2-4)に記載されたA41~A44のいずれかとの結合部位を表す。
 特定重合性化合物の分子量は、2,000以下であることが好ましく、1,000以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。
 上記分子量の下限は特に限定されないが、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることが更に好ましい。
 特定重合性化合物の具体例としては、後述する実施例に記載したCX-1~CX-11が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
 特定重合性化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0質量%超50質量%以下であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
 樹脂組成物が後述する他の重合性化合物を含む場合、特定重合性化合物の含有量は、特定重合性化合物と他の重合性化合物の合計含有質量に対して、40~99質量%であることが好ましく、50~95質量%であることがより好ましく、60~90質量%であることが更に好ましい。
 また、特定重合性化合物の含有量は、特定重合性化合物と光重合開始剤の合計含有質量に対して、50~99質量%であることが好ましく、60~95質量%であることがより好ましく、70~90質量%であることが更に好ましい。
 特定重合性化合物1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合にはその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
<他の重合性化合物>
 本発明の樹脂組成物は、特定重合性化合物とは異なる他の重合性化合物を含むことが好ましい。
 他の重合性化合物としては、ラジカル架橋剤、又は、他の架橋剤が挙げられる。
〔ラジカル架橋剤〕
 本発明の樹脂組成物は、ラジカル架橋剤を含むことが好ましい。
 ラジカル架橋剤は、ラジカル重合性基を有する化合物である。ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基が好ましい。上記エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基などが挙げられる。
 これらの中でも、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基が好ましく、反応性の観点からは、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
 ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を1個以上有する化合物であることが好ましいが、2個以上有する化合物であることがより好ましい。ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を3個以上有していてもよい。
 上記エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物としては、エチレン性不飽和結合を2~15個有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を2~10個有する化合物がより好ましく、2~6個有する化合物が更に好ましい。
 得られるパターン(硬化物)の膜強度の観点からは、本発明の樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を2個有する化合物と、上記エチレン性不飽和結合を3個以上有する化合物とを含むことも好ましい。
 ラジカル架橋剤の分子量は、2,000以下が好ましく、1,500以下がより好ましく、900以下が更に好ましい。ラジカル架橋剤の分子量の下限は、100以上が好ましい。
 ラジカル架橋剤の具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類である。また、ヒドロキシ基やアミノ基、スルファニル基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲノ基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0113~0122の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
 ラジカル架橋剤は、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物としては、国際公開第2021/112189号公報の段落0203に記載の化合物等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
 上述以外の好ましいラジカル架橋剤としては、国際公開第2021/112189号公報の段落0204~0208に記載のラジカル重合性化合物等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
 ラジカル架橋剤としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330(日本化薬(株)製))、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D-320(日本化薬(株)製)、A-TMMT(新中村化学工業(株)製))、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310(日本化薬(株)製))、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)、A-DPH(新中村化学工業社製))、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
 ラジカル架橋剤の市販品としては、例えばエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、エチレンオキシ鎖を4個有する2官能メタクリレートであるSR-209、231、239(以上、サートマー社製)、ペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330(以上、日本化薬(株)製)、ウレタンオリゴマーであるUAS-10、UAB-140(以上、日本製紙社製)、NKエステルM-40G、NKエステル4G、NKエステルM-9300、NKエステルA-9300、UA-7200(以上、新中村化学工業社製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(以上、共栄社化学社製)、ブレンマーPME400(日油(株)製)などが挙げられる。
 ラジカル架橋剤としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。ラジカル架橋剤として、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する化合物を用いることもできる。
 ラジカル架橋剤は、カルボキシ基、リン酸基等の酸基を有するラジカル架橋剤であってもよい。酸基を有するラジカル架橋剤は、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル架橋剤がより好ましい。特に好ましくは、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル架橋剤において、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールである化合物である。市販品としては、例えば、東亞合成(株)製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M-510、M-520などが挙げられる。
 酸基を有するラジカル架橋剤の酸価は、0.1~300mgKOH/gが好ましく、1~100mgKOH/gがより好ましい。ラジカル架橋剤の酸価が上記範囲であれば、製造上の取扱性に優れ、現像性に優れる。また、重合性が良好である。上記酸価は、JIS K 0070:1992の記載に準拠して測定される。
 樹脂組成物は、パターンの解像性と膜の伸縮性の観点から、2官能のメタアクリレート又はアクリレートを用いることが好ましい。
 具体的な化合物としては、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、PEG(ポリエチレングリコール)200ジアクリレート、PEG200ジメタクリレート、PEG600ジアクリレート、PEG600ジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジメタクリレート、2-ヒドロキシー3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジメタクリレート、その他ウレタン結合を有する2官能アクリレート、ウレタン結合を有する2官能メタクリレートを使用することができる。これらは必要に応じ、2種以上を混合し使用することができる。
 なお、例えばPEG200ジアクリレートとは、ポリエチレングリコールジアクリレートであって、ポリエチレングリコール鎖の式量が200程度のものをいう。
 本発明の樹脂組成物は、パターン(硬化物)の反り抑制の観点から、ラジカル架橋剤として、単官能ラジカル架橋剤を好ましく用いることができる。単官能ラジカル架橋剤としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル等が好ましく用いられる。単官能ラジカル架橋剤としては、露光前の揮発を抑制するため、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。
 その他、2官能以上のラジカル架橋剤としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物類が挙げられる。
 ラジカル架橋剤を含有する場合、ラジカル架橋剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0質量%超60質量%以下であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
 ラジカル架橋剤は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を併用する場合にはその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
〔他の架橋剤〕
 本発明の樹脂組成物は、上述したラジカル架橋剤とは異なる、他の架橋剤を含むことも好ましい。
 他の架橋剤とは、上述したラジカル架橋剤以外の架橋剤をいい、上述の光酸発生剤、又は、光塩基発生剤の感光により、組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が促進される基を分子内に複数個有する化合物であることが好ましく、組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が酸又は塩基の作用によって促進される基を分子内に複数個有する化合物が好ましい。
 上記酸又は塩基は、露光工程において、光酸発生剤又は光塩基発生剤から発生する酸又は塩基であることが好ましい。
 他の架橋剤としては、国際公開第2022/145355号の段落0179~0207に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
〔光重合開始剤〕
 本発明の樹脂組成物は、光重合開始剤を含む。
 光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と作用し、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
 光ラジカル重合開始剤は、波長約240~800nm(好ましくは330~500nm)の範囲内で少なくとも約50L・mol-1・cm-1のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶剤を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
 光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノンなどのα-アミノケトン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどのα-ヒドロキシケトン化合物、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182、国際公開第2015/199219号の段落0138~0151の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報に記載された化合物、MATERIAL STAGE 37~60p,vol.19,No.3,2019に記載されたパーオキサイド系光重合開始剤、国際公開第2018/221177号に記載の光重合開始剤、国際公開第2018/110179号に記載の光重合開始剤、特開2019-043864号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-044030号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-167313号公報に記載の過酸化物系開始剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
 ケトン化合物としては、例えば、特開2015-087611号公報の段落0087に記載の化合物が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品では、カヤキュア-DETX-S(日本化薬(株)製)も好適に用いられる。
 本発明の一実施態様において、光ラジカル重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤を用いることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
 α-ヒドロキシケトン系開始剤としては、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE 184(IRGACUREは登録商標)、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE-2959、IRGACURE 127(以上、BASF社製)を用いることができる。
 α-アミノケトン系開始剤としては、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE 907、IRGACURE 369、及び、IRGACURE 379(以上、BASF社製)を用いることができる。
 アミノアセトフェノン系開始剤、アシルホスフィンオキシド系開始剤、メタロセン化合物としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0161~0163に記載の化合物も好適に使用することができる。この内容は本明細書に組み込まれる。
 光ラジカル重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物を用いることにより、露光ラチチュードをより効果的に向上させることが可能になる。オキシム化合物は、露光ラチチュード(露光マージン)が広く、かつ、光硬化促進剤としても働くため、特に好ましい。
 オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
 好ましいオキシム化合物としては、例えば、下記の構造の化合物や、3-(ベンゾイルオキシ(イミノ))ブタン-2-オン、3-(アセトキシ(イミノ))ブタン-2-オン、3-(プロピオニルオキシ(イミノ))ブタン-2-オン、2-(アセトキシ(イミノ))ペンタン-3-オン、2-(アセトキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オン、2-(ベンゾイルオキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オン、3-((4-トルエンスルホニルオキシ)イミノ)ブタン-2-オン、及び2-(エトキシカルボニルオキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。樹脂組成物においては、特に光ラジカル重合開始剤としてオキシム化合物を用いることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としてのオキシム化合物は、分子内に>C=N-O-C(=O)-の連結基を有する。
 オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE OXE 03、IRGACURE OXE 04(以上、BASF社製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光ラジカル重合開始剤2)、TR-PBG-304、TR-PBG-305(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-730、NCI-831及びアデカアークルズNCI-930((株)ADEKA製)、DFI-091(ダイトーケミックス(株)製)、SpeedCure PDO(SARTOMER ARKEMA製)が挙げられる。また、下記の構造のオキシム化合物を用いることもできる。
 光ラジカル重合開始剤としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0169~0171に記載のフルオレン環を有するオキシム化合物、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。
 また、国際公開第2021/020359号に記載の段落0208~0210に記載のニトロ基を有するオキシム化合物、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物、カルバゾール骨格にヒドロキシ基を有する置換基が結合したオキシム化合物を用いることもできる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
 光重合開始剤としては、芳香族環に電子求引性基が導入された芳香族環基ArOX1を有するオキシム化合物(以下、オキシム化合物OXともいう)を用いることもできる。上記芳香族環基ArOX1が有する電子求引性基としては、アシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基が挙げられ、アシル基およびニトロ基が好ましく、耐光性に優れた膜を形成しやすいという理由からアシル基であることがより好ましく、ベンゾイル基であることが更に好ましい。ベンゾイル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルケニル基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アシル基またはアミノ基であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基またはアミノ基であることがより好ましく、アルコキシ基、アルキルスルファニル基またはアミノ基であることが更に好ましい。
 オキシム化合物OXは、式(OX1)で表される化合物および式(OX2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、式(OX2)で表される化合物であることがより好ましい。

 式中、RX1は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、ホスフィノイル基、カルバモイル基またはスルファモイル基を表し、
 RX2は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシルオキシ基またはアミノ基を表し、
 RX3~RX14は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表す。
 ただし、RX10~RX14のうち少なくとも1つは、電子求引性基である。
 上記式において、RX12が電子求引性基であり、RX10、RX11、RX13、RX14は水素原子であることが好ましい。
 オキシム化合物OXの具体例としては、特許第4600600号公報の段落番号0083~0105に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
 特に好ましいオキシム化合物としては、特開2007-269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009-191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
 光ラジカル重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3-アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
 また、光ラジカル重合開始剤は、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく、メタロセン化合物又はオキシム化合物が更に好ましい。
 光ラジカル重合開始剤としては、国際公開第2021/020359号に記載の段落0175~0179に記載の化合物、国際公開第2015/125469号の段落0048~0055に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
 光ラジカル重合開始剤としては、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、樹脂組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)、特許第6469669号公報に記載されているオキシムエステル光開始剤などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
 樹脂組成物が光重合開始剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、0.5~15質量%が更に好ましく、1.0~10質量%が更により好ましい。光重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
 なお、光重合開始剤は熱重合開始剤としても機能する場合があるため、オーブンやホットプレート等の加熱によって光重合開始剤による架橋を更に進行させられる場合がある。
〔増感剤〕
 樹脂組成物は、増感剤を含んでいてもよい。増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸又は塩基を生成する。
 使用可能な増感剤として、ベンゾフェノン系、ミヒラーズケトン系、クマリン系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アントラセン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ペンゾピラン系、インジゴ系等の化合物を使用することができる。
 増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン(7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸エチル)、N-フェニル-N’-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、4-モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2-メルカプトベンズイミダゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン、ジフェニルアセトアミド、ベンズアニリド、N-メチルアセトアニリド、3‘,4’-ジメチルアセトアニリド等が挙げられる。
 また、他の増感色素を用いてもよい。
 増感色素の詳細については、特開2016-027357号公報の段落0161~0163の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
 樹脂組成物が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.5~10質量%が更に好ましい。増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
〔連鎖移動剤〕
 本発明の樹脂組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内に-S-S-、-SO-S-、-N-O-、SH、PH、SiH、及びGeHを有する化合物群、RAFT(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer)重合に用いられるチオカルボニルチオ基を有するジチオベンゾアート、トリチオカルボナート、ジチオカルバマート、キサンタート化合物等が用いられる。これらは、低活性のラジカルに水素を供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物を好ましく用いることができる。
 また、連鎖移動剤は、国際公開第2015/199219号の段落0152~0153に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
 樹脂組成物が連鎖移動剤を有する場合、連鎖移動剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましい。連鎖移動剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。連鎖移動剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
<塩基発生剤>
 本発明の樹脂組成物は、塩基発生剤を含んでもよい。ここで、塩基発生剤とは、物理的または化学的な作用によって塩基を発生することができる化合物である。好ましい塩基発生剤としては、熱塩基発生剤および光塩基発生剤が挙げられる。
 特に、樹脂組成物が環化樹脂の前駆体を含む場合、樹脂組成物は塩基発生剤を含むことが好ましい。樹脂組成物が熱塩基発生剤を含有することによって、例えば加熱により前駆体の環化反応を促進でき、硬化物の機械特性や耐薬品性が良好なものとなり、例えば半導体パッケージ中に含まれる再配線層用層間絶縁膜としての性能が良好となる。
 塩基発生剤としては、イオン型塩基発生剤でもよく、非イオン型塩基発生剤でもよい。塩基発生剤から発生する塩基としては、例えば、2級アミン、3級アミンが挙げられる。
 塩基発生剤は特に限定されず、公知の塩基発生剤を用いることができる。公知の塩基発生剤としては、例えば、カルバモイルオキシム化合物、カルバモイルヒドロキシルアミン化合物、カルバミン酸化合物、ホルムアミド化合物、アセトアミド化合物、カルバメート化合物、ベンジルカルバメート化合物、ニトロベンジルカルバメート化合物、スルホンアミド化合物、イミダゾール誘導体化合物、アミンイミド化合物、ピリジン誘導体化合物、α-アミノアセトフェノン誘導体化合物、4級アンモニウム塩誘導体化合物、イミニウム塩、ピリジニウム塩、α-ラクトン環誘導体化合物、アミンイミド化合物、フタルイミド誘導体化合物、アシルオキシイミノ化合物等が挙げられる。
 非イオン型塩基発生剤の具体例としては、国際公開第2022/145355号の段落0249~0275に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
 塩基発生剤としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
 非イオン型塩基発生剤の分子量は、800以下が好ましく、600以下がより好ましく、500以下が更に好ましい。下限は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更に好ましい。
 イオン型塩基発生剤の具体的な好ましい化合物としては、例えば、国際公開第2018/038002号の段落番号0148~0163に記載の化合物が挙げられる。
 アンモニウム塩の具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
 イミニウム塩の具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
 樹脂組成物が塩基発生剤を含む場合、塩基発生剤の含有量は、樹脂組成物中の樹脂100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましい。下限は、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。上限は、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が一層好ましく、5質量部以下がより一層好ましく、4質量部以下が特に好ましい。
 塩基発生剤は、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
<溶剤>
 本発明の樹脂組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
 溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、環状炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、ウレア類、アルコール類などの化合物が挙げられる。
 エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸へキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が好適なものとして挙げられる。
 エーテル類として、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が好適なものとして挙げられる。
 ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、3-メチルシクロヘキサノン、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノン等が好適なものとして挙げられる。
 環状炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素類、リモネン等の環式テルペン類が好適なものとして挙げられる。
 スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。
 アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-ホルミルモルホリン、N-アセチルモルホリン等が好適なものとして挙げられる。
 ウレア類として、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が好適なものとして挙げられる。
アルコール類として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール、および、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
 溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。
 本発明では、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、トルエン、ジメチルスルホキシド、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノンから選択される1種の溶剤、又は、2種以上で構成される混合溶剤が好ましい。ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとの併用、ジメチルスルホキシドとγ-バレロラクトンとの併用、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドとγ-ブチロラクトンとの併用、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドとγ-ブチロラクトンとジメチルスルホキシドとの併用又は、N-メチル-2-ピロリドンと乳酸エチルとの併用が特に好ましい。また、これらの併用された溶剤に、更にトルエンを溶剤の全質量に対して1~10質量%程度添加する態様も、本発明の好ましい態様の1つである。
 特に、樹脂組成物の保存安定性等の観点からは、溶剤としてγ-バレロラクトンを含む態様も、本発明の好ましい態様の1つである。このような態様において、溶剤の全質量に対するγ-バレロラクトンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。また、上記含有量の上限は、特に限定されず100質量%であってもよい。上記含有量は、樹脂組成物に含まれる特定樹脂などの成分の溶解度等を考慮して決定すればよい。
 また、ジメチルスルホキシドとγ-バレロラクトンとを併用する場合、溶剤の全質量に対して、60~90質量%のγ-バレロラクトンと、10~40質量%のジメチルスルホキシドを含むことが好ましく、70~90質量%のγ-バレロラクトンと、10~30質量%のジメチルスルホキシドを含むことがより好ましく、75~85質量%のγ-バレロラクトンと、15~25質量%のジメチルスルホキシドを含むことが更に好ましい。
 溶剤の含有量は、塗布性の観点から、本発明の樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることが更に好ましく、20~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、塗膜の所望の厚さと塗布方法に応じて調節すればよい。溶剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
<金属接着性改良剤>
 本発明の樹脂組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させる観点から、金属接着性改良剤を含むことが好ましい。金属接着性改良剤としては、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤、アルミニウム系接着助剤、チタン系接着助剤、スルホンアミド構造を有する化合物及びチオウレア構造を有する化合物、リン酸誘導体化合物、βケトエステル化合物、アミノ化合物等が挙げられる。
〔シランカップリング剤〕
 シランカップリング剤としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0316に記載の化合物、特開2018-173573の段落0067~0078に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2011-128358号公報の段落0050~0058に記載のように異なる2種以上のシランカップリング剤を用いることも好ましい。シランカップリング剤は、下記化合物を用いることも好ましい。以下の式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を表す。また、下記Rはブロックイソシアネート基におけるブロック化剤由来の構造が挙げられる。ブロック化剤としては、脱離温度に応じて選択すればよいが、アルコール化合物、フェノール化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、ラクタム化合物、活性メチレン化合物等が挙げられる。例えば、脱離温度を160~180℃としたい観点からは、カプロラクタムなどが好ましい。このような化合物の市販品としては、X-12-1293(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
 他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
 また、シランカップリング剤として、アルコキシシリル基を複数個有するオリゴマータイプの化合物を用いることもできる。
 このようなオリゴマータイプの化合物としては、下記式(S-1)で表される繰返し単位を含む化合物などが挙げられる。

 式(S-1)中、RS1は1価の有機基を表し、RS2は水素原子、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、nは0~2の整数を表す。
 RS1は重合性基を含む構造であることが好ましい。重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基、エポキシ基、オキセタニル基、ベンゾオキサゾリル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、イソアリル基、2-メチルアリル基、ビニル基と直接結合した芳香環を有する基(例えば、ビニルフェニル基など)、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基などが挙げられ、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基又は(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、ビニルフェニル基又は(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基が更に好ましい。
 RS2はアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることがより好ましい。
 nは0~2の整数を表し、1であることが好ましい。
 ここで、オリゴマータイプの化合物に含まれる複数の式(S-1)で表される繰返し単位の構造は、それぞれ同一であってもよい。
 ここで、オリゴマータイプの化合物に含まれる複数の式(S-1)で表される繰返し単位のうち、少なくとも1つにおいてnが1又は2であることが好ましく、少なくとも2つにおいてnが1又は2であることがより好ましく、少なくとも2つにおいてnが1であることが更に好ましい。
 このようなオリゴマータイプの化合物としては市販品を用いることができ、市販品としては例えば、KR-513(信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
〔アルミニウム系接着助剤〕
 アルミニウム系接着助剤としては、例えば、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等を挙げることができる。
 その他の金属接着性改良剤としては、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
 金属接着性改良剤の含有量は特定樹脂100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましい。上記下限値以上とすることでパターンと金属層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることでパターンの耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
<マイグレーション抑制剤>
 本発明の樹脂組成物は、マイグレーション抑制剤を更に含むことが好ましい。マイグレーション抑制剤を含むことにより、例えば、樹脂組成物を金属層(又は金属配線)に適用して膜を形成した際に、金属層(又は金属配線)由来の金属イオンが膜内へ移動することを効果的に抑制することができる。
 マイグレーション抑制剤としては、特に制限はないが、複素環(ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾー000000ル環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H-ピラン環及び6H-ピラン環、トリアジン環)を有する化合物、チオ尿素類及びスルファニル基を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体系化合物、ヒドラジド誘導体系化合物が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール、5-アミノ―1H-テトラゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
 これらの中でも、本発明の樹脂組成物はアゾール化合物を含むことが好ましい。
アゾール化合物とは、アゾール構造を含む化合物であり、アゾール構造とは、環員として窒素原子を含む5員環構造をいい、環員として2以上の窒素原子を含む5員環構造であることが好ましい。具体的には、アゾール構造は、イミダゾール構造、トリアゾール構造、テトラゾール構造等が挙げられる。これらの構造は、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾールなどのように、他の環構造と縮合等により多環を形成していてもよい。
 また、アゾール構造を有する化合物としては、アゾール構造に下記式(R-1)又は下記式(R-2)で表される基が直接結合した化合物も好ましい。

 式(R-1)中、Rは1価の有機基を表し、*はアゾール構造との結合部位を表す。
 式(R-2)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、*はアゾール構造との結合部位を表す。
 式(R-1)中、Rは炭化水素基、又は、炭化水素基と、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-及び-NR-からなる群より選ばれた少なくとも1種の基との結合により表される基であることが好ましい。Rは上述の通りである。
 上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの組み合わせにより表される基が好ましい。
 また、Rの総炭素数は1~30が好ましく、2~25が好ましく、3~20がより好ましい。
 Rにおける、式(R-1)中のカルボニル基との結合部位は、炭化水素基又は-NR-が好ましい。
 式(R-1)中、*はアゾール構造との結合部位を表し、アゾール構造の環員である炭素原子との結合部位であることが好ましい。
 式(R-2)中、Rは水素原子であることが好ましい。
 Rが1価の有機基である場合、Rは、炭化水素基、又は、炭化水素基と、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-及び-NR-からなる群より選ばれた少なくとも1種の基との結合により表される基であることが好ましい。Rは上述の通りである。
 上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの組み合わせにより表される基が好ましい。
 また、Rが1価の有機基である場合の総炭素数は1~30が好ましく、2~25が好ましく、3~20がより好ましい。
 Rが1価の有機基である場合、Rにおける式(R-2)中の窒素原子との結合部位は、炭化水素基又は-C(=O)-が好ましい。
 式(R-2)中、Rは炭化水素基、又は、炭化水素基と、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-及び-NR-からなる群より選ばれた少なくとも1種の基との結合により表される基であることが好ましい。Rは上述の通りである。
 上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの組み合わせにより表される基が好ましい。
 また、Rが1価の有機基である場合の総炭素数は1~30が好ましく、2~25が好ましく、3~20がより好ましい。
 Rにおける、式(R-2)中の窒素原子との結合部位は、炭化水素基又は-C(=O)-が好ましい。
 式(R-2)中、*はアゾール構造との結合部位を表し、アゾール構造の環員である炭素原子との結合部位であることが好ましい。
 マイグレーション抑制剤としては、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するイオントラップ剤を使用することもできる。
 その他のマイグレーション抑制剤としては、特開2013-015701号公報の段落0094に記載の防錆剤、特開2009-283711号公報の段落0073~0076に記載の化合物、特開2011-059656号公報の段落0052に記載の化合物、特開2012-194520号公報の段落0114、0116及び0118に記載の化合物、国際公開第2015/199219号の段落0166に記載の化合物などを使用することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
 マイグレーション抑制剤の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
 本発明の樹脂組成物がマイグレーション抑制剤を有する場合、マイグレーション抑制剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。
 マイグレーション抑制剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。マイグレーション抑制剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
 特に、本発明の樹脂組成物は、基材との密着性を向上する観点から、上述のアゾール化合物、及び、上述のシランカップリング剤を更に含むことが好ましい。これらの化合物を含有るすることにより、特に硬化物が高温高湿条件に晒された後であっても、基材との密着性が維持されやすい。
<重合禁止剤>
 本発明の樹脂組成物は、重合禁止剤を含むことが好ましい。重合禁止剤としてはフェノール系化合物、キノン系化合物、アミノ系化合物、N-オキシルフリーラジカル化合物系化合物、ニトロ系化合物、ニトロソ系化合物、ヘテロ芳香環系化合物、金属化合物などが挙げられる。
 重合禁止剤の具体的な化合物としては、国際公開第2021/112189の段落0310に記載の化合物、p-ヒドロキノン、o-ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル、フェノキサジン、1,4,4-トリメチル-2,3-ジアザビシクロ[3.2.2]ノナ-2-エン-N,N-ジオキシド等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
 本発明の樹脂組成物が重合禁止剤を有する場合、重合禁止剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.02~15質量%であることがより好ましく、0.05~10質量%であることが更に好ましい。
 重合禁止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。重合禁止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
<その他の添加剤>
 本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が得られる範囲で、必要に応じて、各種の添加物、例えば、界面活性剤、高級脂肪酸誘導体、熱重合開始剤、無機粒子、紫外線吸収剤、有機チタン化合物、酸化防止剤、光酸発生剤、凝集防止剤、フェノール系化合物、他の高分子化合物、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、消泡剤、難燃剤など)等を含んでいてもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。これらの添加剤を配合する場合、その合計含有量は本発明の樹脂組成物の固形分の3質量%以下とすることが好ましい。
〔無機粒子〕
 無機粒子として、具体的には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、ガラス等が挙げられる。
 無機粒子の平均粒子径は、0.01~2.0μmが好ましく、0.02~1.5μmがより好ましく、0.03~1.0μmがさらに好ましく、0.04~0.5μmが特に好ましい。
 無機粒子の上記平均粒子径は、一次粒子径であり、また体積平均粒子径である。体積平均粒子径は、例えば、Nanotrac WAVE II EX-150(日機装社製)による動的光散乱法で測定できる。
 上記測定が困難である場合は、遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法で測定することもできる。
〔有機チタン化合物〕
 樹脂組成物が有機チタン化合物を含有することにより、低温で硬化した場合であっても耐薬品性に優れる樹脂層を形成できる。
 使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機基が共有結合又はイオン結合を介して結合しているものが挙げられる。
 有機チタン化合物の具体例を、以下のI)~VII)に示す:
 I)チタンキレート化合物:樹脂組成物の保存安定性がよく、良好な硬化パターンが得られることから、アルコキシ基を2個以上有するチタンキレート化合物がより好ましい。具体的な例は、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n-ブトキサイド)ビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等である。
 II)テトラアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2-エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n-ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n-プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス[ビス{2,2-(アリロキシメチル)ブトキサイド}]等である。
 III)チタノセン化合物:例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム等である。
 IV)モノアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキサイド等である。
 V)チタニウムオキサイド化合物:例えば、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等である。
 VI)チタニウムテトラアセチルアセトネート化合物:例えば、チタニウムテトラアセチルアセトネート等である。
VII)チタネートカップリング剤:例えば、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等である。
 なかでも、有機チタン化合物としては、より良好な耐薬品性の観点から、上記I)チタンキレート化合物、II)テトラアルコキシチタン化合物、及びIII)チタノセン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。特に、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムが好ましい。
 有機チタン化合物を含む場合、その含有量は、特定樹脂100質量部に対し、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~2質量部であることがより好ましい。含有量が0.05質量部以上である場合、得られる硬化パターンの耐熱性及び耐薬品性がより良好となり、10質量部以下である場合、組成物の保存安定性により優れる。
 また、これらのその他の添加剤としては、、国際公開第2022/145355号の段落0316~0358に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
<樹脂組成物の特性>
 本発明の樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物の固形分濃度により調整できる。塗布膜厚の観点から、1,000mm/s~12,000mm/sが好ましく、2,000mm/s~10,000mm/sがより好ましく、2,500mm/s~8,000mm/sが更に好ましい。上記範囲であれば、均一性の高い塗布膜を得ることが容易になる。1,000mm/s以上であれば、例えば再配線用絶縁膜として必要とされる膜厚で塗布することが容易であり、12,000mm/s以下であれば、塗布面状に優れた塗膜が得られる。
<樹脂組成物の含有物質についての制限>
 本発明の樹脂組成物の含水率は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.5質量%未満であることがより好ましく、1.0質量%未満であることが更に好ましい。2.0%未満であれば、樹脂組成物の保存安定性が向上する。
 水分の含有量を維持する方法としては、保管条件における湿度の調整、保管時の収容容器の空隙率低減などが挙げられる。
 本発明の樹脂組成物の金属含有量は、絶縁性の観点から、5質量ppm(parts per million)未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅、クロム、ニッケルなどが挙げられるが、有機化合物と金属との錯体として含まれる金属は除く。金属を複数含む場合は、これらの金属の合計が上記範囲であることが好ましい。
 また、本発明の樹脂組成物に意図せずに含まれる金属不純物を低減する方法としては、本発明の樹脂組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、本発明の樹脂組成物を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、装置内をポリテトラフルオロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。
 本発明の樹脂組成物は、半導体材料としての用途を考慮すると、ハロゲン原子の含有量が、配線腐食性の観点から、500質量ppm未満が好ましく、300質量ppm未満がより好ましく、200質量ppm未満が更に好ましい。中でも、ハロゲンイオンの状態で存在するものは、5質量ppm未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。塩素原子及び臭素原子、又は塩素イオン及び臭素イオンの合計がそれぞれ上記範囲であることが好ましい。
 ハロゲン原子の含有量を調節する方法としては、イオン交換処理などが好ましく挙げられる。
 本発明の樹脂組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。収容容器としては、原材料や本発明の樹脂組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
<樹脂組成物の硬化物>
 本発明の樹脂組成物を硬化することにより、樹脂組成物の硬化物を得ることができる。
 本発明の硬化物は、樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
 樹脂組成物の硬化は加熱によるものであることが好ましく、加熱温度が120℃~400℃がより好ましく、140℃~380℃が更に好ましく、170℃~350℃が特に好ましい。樹脂組成物の硬化物の形態は、特に限定されず、フィルム状、棒状、球状、ペレット状など、用途に合わせて選択することができる。本発明において、硬化物は、フィルム状であることが好ましい。樹脂組成物のパターン加工によって、壁面への保護膜の形成、導通のためのビアホール形成、インピーダンスや静電容量あるいは内部応力の調整、放熱機能付与など、用途にあわせて、硬化物の形状を選択することもできる。硬化物(硬化物からなる膜)の膜厚は、0.5μm以上150μm以下であることが好ましい。
 本発明の樹脂組成物を硬化した際の収縮率は、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下が更に好ましい。ここで、収縮率は、樹脂組成物の硬化前後の体積変化の百分率を指し、下記の式より算出することができる。
 収縮率[%]=100-(硬化後の体積÷硬化前の体積)×100
<樹脂組成物の硬化物の特性>
 本発明の樹脂組成物の硬化物のイミド化反応率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。70%以上であれば、機械特性に優れた硬化物となる場合がある。
 本発明の樹脂組成物の硬化物の破断伸びは、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。
 本発明の樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、180℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることがさらに好ましい。
<樹脂組成物の調製>
 本発明の樹脂組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。
 混合方法としては、撹拌羽による混合、ボールミルによる混合、タンクを回転させる混合などが挙げられる。
 混合中の温度は10~30℃が好ましく、15~25℃がより好ましい。
 本発明の樹脂組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルター孔径は、例えば5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下が更に好ましく、0.1μm以下が更により好ましい。フィルターの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。フィルターの材質がポリエチレンである場合はHDPE(高密度ポリエチレン)であることがより好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数種のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種のフィルターを使用する場合は、孔径又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。接続態様としては、例えば、1段目として孔径1μmのHDPEフィルターを、2段目として孔径0.2μmのHDPEフィルターを、直列に接続した態様が挙げられる。また、各種材料を複数回ろ過してもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過であってもよい。また、加圧してろ過を行ってもよい。加圧してろ過を行う場合、加圧する圧力は例えば0.01MPa以上1.0MPa以下が好ましく、0.03MPa以上0.9MPa以下がより好ましく、0.05MPa以上0.7MPa以下が更に好ましく、0.05MPa以上0.5MPa以下が更により好ましい。
 フィルターを用いたろ過の他、吸着材を用いた不純物の除去処理を行ってもよい。フィルターろ過と吸着材を用いた不純物除去処理とを組み合わせてもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができる。例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材が挙げられる。
 フィルターを用いたろ過後、ボトルに充填した樹脂組成物を減圧下に置き、脱気する工程を施しても良い。
(硬化物の製造方法)
 本発明の硬化物の製造方法は、樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
 硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、膜形成工程により形成された膜を選択的に露光する露光工程、及び、露光工程により露光された膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含むことがより好ましい。
 硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、上記露光工程、上記現像工程、並びに、現像工程により得られたパターンを加熱する加熱工程及び現像工程により得られたパターンを露光する現像後露光工程の少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
 また、硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、及び、上記膜を加熱する工程を含むことも好ましい。
 以下、各工程の詳細について説明する。
<膜形成工程>
 本発明の樹脂組成物は、基材上に適用して膜を形成する膜形成工程に用いることができる。
 本発明の硬化物の製造方法は、樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
〔基材〕
 基材の種類は、用途に応じて適宜定めることができ、特に限定されない。基材としては、例えば、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基材、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材(例えば、金属から形成された基材、及び、金属層が例えばめっきや蒸着等により形成された基材のいずれであってもよい)、紙、SOG(Spin On Glass)、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ基材、モールド基材、プラズマディスプレイパネル(PDP)の電極板などが挙げられる。基材は、特に、半導体作製基材が好ましく、シリコン基材、Cu基材およびモールド基材がより好ましい。
 これらの基材にはヘキサメチルジシラザン(HMDS)等による密着層や酸化層などの層が表面に設けられていてもよい。
 基材の形状は特に限定されず、円形状であってもよく、矩形状であってもよい。
 基材のサイズは、円形状であれば、例えば直径が100~450mmが好ましく、200~450mmがより好ましい。矩形状であれば、例えば短辺の長さが100~1000mmが好ましく、200~700mmがより好ましい。
基材としては、例えば板状、好ましくはパネル状の基材(基板)が用いられる。
 樹脂層(例えば、硬化物からなる層)の表面や金属層の表面に樹脂組成物を適用して膜を形成する場合は、樹脂層や金属層が基材となる。
 樹脂組成物を基材上に適用する手段としては、塗布が好ましい。
 適用する手段としては、具体的には、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法などが挙げられる。膜の厚さの均一性の観点から、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、又は、インクジェット法が好ましく、膜の厚さの均一性の観点および生産性の観点からスピンコート法およびスリットコート法がより好ましい。適用する手段に応じて樹脂組成物の固形分濃度や塗布条件を調整することで、所望の厚さの膜を得ることができる。また、基材の形状によっても塗布方法を適宜選択でき、ウエハ等の円形基材であればスピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が好ましく、矩形基材であればスリットコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が好ましい。スピンコート法の場合は、例えば、500~3,500rpmの回転数で、10秒~3分程度適用することができる。
 また、あらかじめ仮支持体上に上記付与方法によって付与して形成した塗膜を、基材上に転写する方法を適用することもできる。
 転写方法に関しては特開2006-023696号公報の段落0023、0036~0051や、特開2006-047592号公報の段落0096~0108に記載の作製方法を好適に用いることができる。
 また、基材の端部において余分な膜の除去を行なう工程を行なってもよい。このような工程の例には、エッジビードリンス(EBR)、バックリンスなどが挙げられる。
 樹脂組成物を基材に塗布する前に基材に種々の溶剤を塗布し、基材の濡れ性を向上させた後に樹脂組成物を塗布するプリウェット工程を採用しても良い。
<乾燥工程>
 上記膜は、膜形成工程(層形成工程)の後に、溶剤を除去するため、形成された膜(層)を乾燥する工程(乾燥工程)に供されてもよい。
 すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、膜形成工程により形成された膜を乾燥する乾燥工程を含んでもよい。
 上記乾燥工程は膜形成工程の後、露光工程の前に行われることが好ましい。
 乾燥工程における膜の乾燥温度は50~150℃が好ましく、70℃~130℃がより好ましく、90℃~110℃が更に好ましい。また、減圧により乾燥を行っても良い。乾燥時間としては、30秒~20分が例示され、1分~10分が好ましく、2分~7分がより好ましい。
<露光工程>
 上記膜は、膜を選択的に露光する露光工程に供されてもよい。
 硬化物の製造方法は、膜形成工程により形成された膜を選択的に露光する露光工程を含んでもよい。
 選択的に露光するとは、膜の一部を露光することを意味している。また、選択的に露光することにより、膜には露光された領域(露光部)と露光されていない領域(非露光部)が形成される。
 露光量は、本発明の樹脂組成物を硬化できる限り特に限定されないが、例えば、波長365nmでの露光エネルギー換算で50~10,000mJ/cmが好ましく、200~8,000mJ/cmがより好ましい。
 露光波長は、190~1,000nmの範囲で適宜定めることができ、240~550nmが好ましい。
 露光波長は、光源との関係でいうと、(1)半導体レーザー(波長 830nm、532nm、488nm、405nm、375nm、355nm etc.)、(2)メタルハライドランプ、(3)高圧水銀灯、g線(波長 436nm)、h線(波長 405nm)、i線(波長 365nm)、ブロード(g,h,i線の3波長)、(4)エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー(波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)、Fエキシマレーザー(波長 157nm)、(5)極紫外線;EUV(波長 13.6nm)、(6)電子線、(7)YAGレーザーの第二高調波532nm、第三高調波355nm等が挙げられる。本発明の樹脂組成物については、特に高圧水銀灯による露光が好ましく、露光感度の観点で、i線による露光がより好ましい。
 露光の方式は特に限定されず、本発明の樹脂組成物からなる膜の少なくとも一部が露光される方式であればよいが、フォトマスクを使用した露光、レーザーダイレクトイメージング法による露光等が挙げられる。
<露光後加熱工程>
 上記膜は、露光後に加熱する工程(露光後加熱工程)に供されてもよい。
 すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、露光工程により露光された膜を加熱する露光後加熱工程を含んでもよい。
 露光後加熱工程は、露光工程後、現像工程前に行うことができる。
 露光後加熱工程における加熱温度は、50℃~140℃が好ましく、60℃~120℃がより好ましい。
 露光後加熱工程における加熱時間は、30秒間~300分間が好ましく、1分間~10分間がより好ましい。
 露光後加熱工程における昇温速度は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分が好ましく、2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分が更に好ましい。
 また、昇温速度は加熱途中で適宜変更してもよい。
 露光後加熱工程における加熱手段としては、特に限定されず、公知のホットプレート、オーブン、赤外線ヒーター等を用いることができる。
 また、加熱に際し、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す等により、低酸素濃度の雰囲気下で行うことも好ましい。
<現像工程>
 露光後の上記膜は、現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程に供されてもよい。
 すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、露光工程により露光された膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含んでもよい。
 現像を行うことにより、膜の露光部及び非露光部のうち一方が除去され、パターンが形成される。
 ここで、膜の非露光部が現像工程により除去される現像をネガ型現像といい、膜の露光部が現像工程により除去される現像をポジ型現像という。
〔現像液〕
 現像工程において用いられる現像液としては、アルカリ水溶液、又は、有機溶剤を含む現像液が挙げられる。
 現像液がアルカリ水溶液である場合、アルカリ水溶液が含みうる塩基性化合物としては、無機アルカリ類、第一級アミン類、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩が挙げられ、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジンが好ましく、より好ましくはTMAHである。現像液における塩基性化合物の含有量は、現像液全質量中0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.3~3質量%が更に好ましい。
 現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤としては、国際公開第2021/112189号の段落0387に記載の化合物を用いることができる。この内容は本明細書に組み込まれる。また、アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、オクタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルイソブチルカルビノール、トリエチレングリコール等、アミド類として、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等も好適に挙げられる。
 現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。本発明では特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、及び、シクロヘキサノンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む現像液が好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン及びジメチルスルホキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む現像液がより好ましく、シクロペンタノンを含む現像液が特に好ましい。
 現像液が有機溶剤を含む場合、現像液の全質量に対する有機溶剤の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、上記含有量は、100質量%であってもよい。
 現像液が有機溶剤を含む場合、現像液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を更に含んでもよい。現像液中の塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方がパターンに浸透することにより、パターンの破断伸び等の性能が向上する場合がある。
 塩基性化合物としては、硬化後の膜に残存した場合の信頼性(硬化物を更に加熱した場合の基材との密着性)の観点からは、有機塩基が好ましい。
 塩基性化合物としては、アミノ基を有する塩基性化合物が好ましく、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アンモニウム塩、3級アミドなどが好ましいが、イミド化反応を促進する為には、1級アミン、2級アミン、3級アミン又はアンモニウム塩が好ましく、2級アミン、3級アミン又はアンモニウム塩がより好ましく、2級アミン又は3級アミンが更に好ましく、3級アミンが特に好ましい。
 塩基性化合物としては、硬化物の機械特性(破断伸び)の観点からは、硬化膜(得られる硬化物)中に残存しにくいものが好ましく、環化の促進の観点からは、気化等により、加熱前に残存量が減少しにくいものであることが好ましい。
 したがって、塩基性化合物の沸点は、常圧(101,325Pa)で30℃~350℃が好ましく、80℃~270℃がより好ましく、100℃~230℃が更に好ましい。
 塩基性化合物の沸点は、現像液に含まれる有機溶剤の沸点から20℃を減算した温度よりも高いことが好ましく、現像液に含まれる有機溶剤の沸点よりも高いことがより好ましい。
 例えば、有機溶剤の沸点が100℃である場合、使用される塩基性化合物は、沸点が80℃以上が好ましく、沸点が100℃以上がより好ましい。
 現像液は塩基性化合物を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
 塩基性化合物の具体例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチレンジアミン、ブタンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、N-メチルヘキシルアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N―ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラブチルー1,6-ヘキサンジアミン、スペルミジン、ジアミノシクロヘキサン、ビス(2-メトキシエチル)アミン、ピペリジン、メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、ピペラジン、トロパン、N-フェニルベンジルアミン、1,2-ジアニリノエタン、2-アミノエタノール、トルイジン、アミノフェノール、ヘキシルアニリン、フェニレンジアミン、フェニルエチルアミン、ジベンジルアミン、ピロール、N-メチルピロール、N,N,N,N-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N,N-テトラメチルー1,3-プロパンジアミン等が挙げられる。
 塩基発生剤の好ましい態様は、上述の組成物に含まれる塩基発生剤の好ましい態様と同様である。特に、塩基発生剤は熱塩基発生剤であることが好ましい。
 現像液が塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含む場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、現像液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.1質量%以上が好ましい。
 塩基性化合物又は塩基発生剤が現像液が用いられる環境で固体である場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、現像液の全固形分に対して、70~100質量%であることも好ましい。
 現像液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方が2種以上である場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
 現像液は、他の成分を更に含んでもよい。
 他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
〔現像液の供給方法〕
 現像液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、膜が形成された基材を現像液に浸漬する方法、基材上に形成された膜にノズルを用いて現像液を供給するパドル現像、または、現像液を連続供給する方法がある。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
 現像液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、現像液をストレートノズルで供給する方法、又はスプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部への現像液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。
 また、現像液をストレートノズルにて連続供給後、基材をスピンし現像液を基材上から除去し、スピン乾燥後に再度ストレートノズルにて連続供給後、基材をスピンし現像液を基材上から除去する工程を採用してもよく、この工程を複数回繰り返しても良い。
 現像工程における現像液の供給方法としては、現像液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上で現像液が略静止状態で保たれる工程、基材上で現像液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが挙げられる。
 現像時間としては、10秒~10分間が好ましく、20秒~5分間がより好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、10~45℃が好ましく、18℃~30℃がより好ましい。
 現像工程において、現像液を用いた処理の後、更に、リンス液によるパターンの洗浄(リンス)を行ってもよい。また、パターン上に接する現像液が乾燥しきらないうちにリンス液を供給するなどの方法を採用しても良い。
〔リンス液〕
 現像液がアルカリ水溶液である場合、リンス液としては、例えば水を用いることができる。現像液が有機溶剤を含む現像液である場合、リンス液としては、例えば、現像液に含まれる溶剤とは異なる溶剤(例えば、水、現像液に含まれる有機溶剤とは異なる有機溶剤)を用いることができる。
 リンス液が有機溶剤を含む場合の有機溶剤としては、上述の現像液が有機溶剤を含む場合において例示した有機溶剤と同様の有機溶剤が挙げられる。
 リンス液に含まれる有機溶剤は、現像液に含まれる有機溶剤とは異なる有機溶剤であることが好ましく、現像液に含まれる有機溶剤よりも、パターンの溶解度が小さい有機溶剤がより好ましい。
 リンス液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。有機溶剤は、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、PGMEA、PGMEが好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、PGMEA、PGMEがより好ましく、シクロヘキサノン、PGMEAがさらに好ましい。
 リンス液が有機溶剤を含む場合、リンス液の全質量に対し、有機溶剤は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。また、リンス液の全質量に対し、有機溶剤は100質量%であってもよい。
 リンス液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含んでもよい。
 特に限定されないが、現像液が有機溶剤を含む場合、リンス液が有機溶剤と塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方とを含む態様も、本発明の好ましい態様の1つである。
 リンス液に含まれる塩基性化合物及び塩基発生剤としては、上述の現像液が有機溶剤を含む場合に含まれてもよい塩基性化合物及び塩基発生剤として例示された化合物が挙げられ、好ましい態様も同様である。
 リンス液に含まれる塩基性化合物及び塩基発生剤は、リンス液における溶剤への溶解度等を考慮して選択すればよい。
 リンス液が塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含む場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量はリンス液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.1質量%以上が好ましい。
 塩基性化合物又は塩基発生剤がリンス液が用いられる環境で固体である場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、リンス液の全固形分に対して、70~100質量%であることも好ましい。
 リンス液が塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含む場合、リンス液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方が2種以上である場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
 リンス液は、他の成分を更に含んでもよい。
 他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
〔リンス液の供給方法〕
 リンス液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、基材をリンス液に浸漬する方法、基材に液盛りによりリンス液を供給する方法、基材にリンス液をシャワーで供給する方法、基材上にストレートノズル等の手段によりリンス液を連続供給する方法がある。
 リンス液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、リンス液をシャワーノズル、ストレートノズル、スプレーノズルなどで供給する方法があり、スプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部へのリンス液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
 すなわち、リンス工程は、リンス液を上記露光後の膜に対してストレートノズルにより供給、又は、連続供給する工程であることが好ましく、リンス液をスプレーノズルにより供給する工程であることがより好ましい。
 リンス工程におけるリンス液の供給方法としては、リンス液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上でリンス液が略静止状態で保たれる工程、基材上でリンス液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが採用可能である。
 リンス時間としては、10秒~10分間が好ましく、20秒~5分間がより好ましい。リンス時のリンス液の温度は、特に定めるものではないが、10~45℃が好ましく、18℃~30℃がより好ましい。
 現像工程において、現像液を用いた処理の後、又は、リンス液によるパターンの洗浄の後に、処理液とパターンとを接触させる工程を含んでもよい。また、パターン上に接する現像液又はリンス液が乾燥しきらないうちに処理液を供給するなどの方法を採用しても良い。
 上記処理液としては、水及び有機溶剤の少なくとも一方と、塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方とを含む処理液が挙げられる。
 上記有機溶剤、及び、塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方の好ましい態様は、上述のリンス液において用いられる有機溶剤、及び、塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方の好ましい態様と同様である。
 処理液のパターンへの供給方法は、上述のリンス液の供給方法と同様の方法を用いることができ、好ましい態様も同様である。
 処理液における塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、処理液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.1質量%以上であることが好ましい。
 また、塩基性化合物又は塩基発生剤が処理液が用いられる環境で固体である場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、処理液の全固形分に対して、70~100質量%であることも好ましい。
 処理液が塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含む場合、処理液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方が2種以上である場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
<加熱工程>
 現像工程により得られたパターン(リンス工程を行う場合は、リンス後のパターン)は、上記現像により得られたパターンを加熱する加熱工程に供されてもよい。
 すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターンを加熱する加熱工程を含んでもよい。
 また、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程を行わずに他の方法で得られたパターン、又は、膜形成工程により得られた膜を加熱する加熱工程を含んでもよい。
 加熱工程において、ポリイミド前駆体等の樹脂は環化してポリイミド等の樹脂となる。
 また、特定樹脂、又は特定樹脂以外の架橋剤における未反応の架橋性基の架橋なども進行する。
 加熱工程における加熱温度(最高加熱温度)としては、50~450℃が好ましく、150~350℃がより好ましく、150~250℃が更に好ましく、160~250℃が一層好ましく、160~230℃が特に好ましい。
 加熱工程は、加熱により、上記塩基発生剤から発生した塩基等の作用により、上記パターン内で上記ポリイミド前駆体の環化反応を促進する工程であることが好ましい。
 加熱工程における加熱は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分の昇温速度で行うことが好ましい。上記昇温速度は2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分が更に好ましい。昇温速度を1℃/分以上とすることにより、生産性を確保しつつ、酸又は溶剤の過剰な揮発を防止することができ、昇温速度を12℃/分以下とすることにより、硬化物の残存応力を緩和することができる。
 加えて、急速加熱可能なオーブンの場合、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~8℃/秒の昇温速度で行うことが好ましく、2~7℃/秒がより好ましく、3~6℃/秒が更に好ましい。
 加熱開始時の温度は、20℃~150℃が好ましく、20℃~130℃がより好ましく、25℃~120℃が更に好ましい。加熱開始時の温度は、最高加熱温度まで加熱する工程を開始する際の温度のことをいう。例えば、本発明の樹脂組成物を基材の上に適用した後、乾燥させる場合、この乾燥後の膜(層)の温度であり、例えば、樹脂組成物に含まれる溶剤の沸点よりも、30~200℃低い温度から昇温させることが好ましい。
 加熱時間(最高加熱温度での加熱時間)は、5~360分が好ましく、10~300分がより好ましく、15~240分が更に好ましい。
 特に多層の積層体を形成する場合、層間の密着性の観点から、加熱温度は30℃以上であることが好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましく、120℃以上が特に好ましい。
 上記加熱温度の上限は、350℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、240℃以下が更に好ましい。
 加熱は段階的に行ってもよい。例として、25℃から120℃まで3℃/分で昇温し、120℃にて60分保持し、120℃から180℃まで2℃/分で昇温し、180℃にて120分保持する、といった工程を行ってもよい。また、米国特許第9159547号明細書に記載のように紫外線を照射しながら処理することも好ましい。このような前処理工程により膜の特性を向上させることが可能である。前処理工程は10秒間~2時間程度の短い時間で行うとよく、15秒~30分間がより好ましい。前処理工程は2段階以上のステップとしてもよく、例えば100~150℃の範囲で1段階目の前処理工程を行い、その後に150~200℃の範囲で2段階目の前処理工程を行ってもよい。
 更に、加熱後冷却してもよく、この場合の冷却速度としては、1~5℃/分であることが好ましい。
 加熱工程は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す、減圧下で行う等により、低酸素濃度の雰囲気で行うことが特定樹脂の分解を防ぐ観点で好ましい。酸素濃度は、50ppm(体積比)以下が好ましく、20ppm(体積比)以下がより好ましい。
 加熱工程における加熱手段としては、特に限定されないが、例えばホットプレート、赤外炉、電熱式オーブン、熱風式オーブン、赤外線オーブンなどが挙げられる。
<現像後露光工程>
 現像工程により得られたパターン(リンス工程を行う場合は、リンス後のパターン)は、上記加熱工程に代えて、又は、上記加熱工程に加えて、現像工程後のパターンを露光する現像後露光工程に供されてもよい。
 すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターンを露光する現像後露光工程を含んでもよい。本発明の硬化物の製造方法は、加熱工程及び現像後露光工程を含んでもよいし、加熱工程及び現像後露光工程の一方のみを含んでもよい。
 現像後露光工程においては、例えば、光塩基発生剤の感光によってポリイミド前駆体等の環化が進行する反応を促進することができる。
 現像後露光工程においては、現像工程において得られたパターンの少なくとも一部が露光されればよいが、上記パターンの全部が露光されることが好ましい。
 現像後露光工程における露光量は、感光性化合物が感度を有する波長における露光エネルギー換算で、50~20,000mJ/cmが好ましく、100~15,000mJ/cmがより好ましい。
 現像後露光工程は、例えば、上述の露光工程における光源を用いて行うことができ、ブロードバンド光を用いることが好ましい。
<金属層形成工程>
 現像工程により得られたパターン(加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方に供されたものが好ましい)は、パターン上に金属層を形成する金属層形成工程に供されてもよい。
 すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターン(加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方に供されたものが好ましい)上に金属層を形成する金属層形成工程を含むことが好ましい。
 金属層としては、特に限定なく、既存の金属種を使用することができ、銅、アルミニウム、ニッケル、バナジウム、チタン、クロム、コバルト、金、タングステン、錫、銀及びこれらの金属を含む合金が例示され、銅及びアルミニウムがより好ましく、銅が更に好ましい。
 金属層の形成方法は、特に限定なく、既存の方法を適用することができる。例えば、特開2007-157879号公報、特表2001-521288号公報、特開2004-214501号公報、特開2004-101850号公報、米国特許第7888181B2、米国特許第9177926B2に記載された方法を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ、PVD(物理蒸着法)、CVD(化学気相成長法)、リフトオフ、電解めっき、無電解めっき、エッチング、印刷、及びこれらを組み合わせた方法などが考えられる。より具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィ及びエッチングを組み合わせたパターニング方法、フォトリソグラフィと電解めっきを組み合わせたパターニング方法が挙げられる。めっきの好ましい態様としては、硫酸銅やシアン化銅めっき液を用いた電解めっきが挙げられる。
 金属層の厚さとしては、最も厚肉の部分で、0.01~50μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
<用途>
 本発明の硬化物の製造方法、又は、硬化物の適用可能な分野としては、電子デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜などが挙げられる。そのほか、封止フィルム、基板材料(フレキシブルプリント基板のベースフィルムやカバーレイ、層間絶縁膜)、又は上記のような実装用途の絶縁膜をエッチングでパターン形成することなどが挙げられる。これらの用途については、例えば、サイエンス&テクノロジー(株)「ポリイミドの高機能化と応用技術」2008年4月、柿本雅明/監修、CMCテクニカルライブラリー「ポリイミド材料の基礎と開発」2011年11月発行、日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会/編「最新ポリイミド 基礎と応用」エヌ・ティー・エス,2010年8月等を参照することができる。
 本発明の硬化物の製造方法、又は、本発明の硬化物は、オフセット版面又はスクリーン版面などの版面の製造、成形部品のエッチングへの使用、エレクトロニクス、特に、マイクロエレクトロニクスにおける保護ラッカー及び誘電層の製造などにも用いることもできる。
(積層体、及び、積層体の製造方法)
 本発明の積層体とは、本発明の硬化物からなる層を複数層有する構造体をいう。
 積層体は、硬化物からなる層を2層以上含む積層体であり、3層以上積層した積層体としてもよい。
 上記積層体に含まれる2層以上の上記硬化物からなる層のうち、少なくとも1つが本発明の硬化物からなる層であり、硬化物の収縮、又は、上記収縮に伴う硬化物の変形等を抑制する観点からは、上記積層体に含まれる全ての硬化物からなる層が本発明の硬化物からなる層であることも好ましい。
 すなわち、本発明の積層体の製造方法は、本発明の硬化物の製造方法を含むことが好ましく、本発明の硬化物の製造方法を複数回繰り返すことを含むことがより好ましい。
 本発明の積層体は、硬化物からなる層を2層以上含み、上記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む態様が好ましい。上記金属層は、上記金属層形成工程により形成されることが好ましい。
 すなわち、本発明の積層体の製造方法は、複数回行われる硬化物の製造方法の間に、硬化物からなる層上に金属層を形成する金属層形成工程を更に含むことが好ましい。金属層形成工程の好ましい態様は上述の通りである。
 上記積層体としては、例えば、第一の硬化物からなる層、金属層、第二の硬化物からなる層の3つの層がこの順に積層された層構造を少なくとも含む積層体が好ましいものとして挙げられる。
 上記第一の硬化物からなる層及び上記第二の硬化物からなる層は、いずれも本発明の硬化物からなる層であることが好ましい。上記第一の硬化物からなる層の形成に用いられる本発明の樹脂組成物と、上記第二の硬化物からなる層の形成に用いられる本発明の樹脂組成物とは、組成が同一の組成物であってもよいし、組成が異なる組成物であってもよい。本発明の積層体における金属層は、再配線層などの金属配線として好ましく用いられる。
<積層工程>
 本発明の積層体の製造方法は、積層工程を含むことが好ましい。
 積層工程とは、パターン(樹脂層)又は金属層の表面に、再度、(a)膜形成工程(層形成工程)、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方を、この順に行うことを含む一連の工程である。ただし、(a)膜形成工程および(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方を繰り返す態様であってもよい。また、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方の後には(e)金属層形成工程を含んでもよい。積層工程には、更に、上記乾燥工程等を適宜含んでいてもよいことは言うまでもない。
 積層工程後、更に積層工程を行う場合には、上記露光工程後、上記加熱工程の後、又は、上記金属層形成工程後に、更に、表面活性化処理工程を行ってもよい。表面活性化処理としては、プラズマ処理が例示される。表面活性化処理の詳細については後述する。
 上記積層工程は、2~20回行うことが好ましく、2~9回行うことがより好ましい。
 例えば、樹脂層/金属層/樹脂層/金属層/樹脂層/金属層のように、樹脂層を2層以上20層以下とする構成が好ましく、2層以上9層以下とする構成が更に好ましい。
 上記各層はそれぞれ、組成、形状、膜厚等が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
 本発明では特に、金属層を設けた後、更に、上記金属層を覆うように、上記本発明の樹脂組成物の硬化物(樹脂層)を形成する態様が好ましい。具体的には、(a)膜形成工程、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方、(e)金属層形成工程、の順序で繰り返す態様、又は、(a)膜形成工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方、(e)金属層形成工程の順序で繰り返す態様が挙げられる。本発明の樹脂組成物層(樹脂層)を積層する積層工程と、金属層形成工程を交互に行うことにより、本発明の樹脂組成物層(樹脂層)と金属層を交互に積層することができる。
(表面活性化処理工程)
 本発明の積層体の製造方法は、上記金属層および樹脂組成物層の少なくとも一部を表面活性化処理する、表面活性化処理工程を含むことが好ましい。
 表面活性化処理工程は、通常、金属層形成工程の後に行うが、上記現像工程の後(好ましくは、加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方の後)、樹脂組成物層に表面活性化処理工程を行ってから、金属層形成工程を行ってもよい。
 表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、露光後の樹脂組成物層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、金属層および露光後の樹脂組成物層の両方について、それぞれ、少なくとも一部に行ってもよい。表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部について行うことが好ましく、金属層のうち、表面に樹脂組成物層を形成する領域の一部または全部に表面活性化処理を行うことが好ましい。このように、金属層の表面に表面活性化処理を行うことにより、その表面に設けられる樹脂組成物層(膜)との密着性を向上させることができる。
 表面活性化処理は、露光後の樹脂組成物層(樹脂層)の一部または全部についても行うことが好ましい。このように、樹脂組成物層の表面に表面活性化処理を行うことにより、表面活性化処理した表面に設けられる金属層や樹脂層との密着性を向上させることができる。特にネガ型現像を行う場合など、樹脂組成物層が硬化されている場合には、表面処理によるダメージを受けにくく、密着性が向上しやすい。
 表面活性化処理は、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0415に記載の方法により実施することができる。この内容は本明細書に組み込まれる。
(半導体デバイス及びその製造方法)
 本発明は、本発明の硬化物、又は、積層体を含む半導体デバイスも開示する。
 また、本発明は、本発明の硬化物の製造方法、又は、積層体の製造方法を含む半導体デバイスの製造方法も開示する。
 本発明の樹脂組成物を再配線層用層間絶縁膜の形成に用いた半導体デバイスの具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0213~0218の記載及び図1の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
 以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
<ポリイミド前駆体の合成>
〔合成例SP-1:ポリイミド前駆体(SP-1)の合成〕
 21.18g(68.1ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.12g(136ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、23.93g(302ミリモル)のピリジンと、90gのダイグライムとを混合し、60℃の温度で5時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、混合物を-10℃まで冷却した後、塩化チオニル 17.12g(141ミリモル)を90分かけて滴下し、2時間撹拌し、ピリジニウムヒドロクロリドの白色沈澱が得られた。次いで、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル8.86g(44.2ミリモル)をNMP 100mL中に溶解させたものを、2時間かけて滴下した。次いで、エタノール 10.0g(217ミリモル)を加え、混合物を2時間撹拌した。次いで、4リットルの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過し、40℃で2日乾燥した。続いて、上記で乾燥した樹脂をテトラヒドロフラン200gに溶解し、イオン交換樹脂(MB-1:オルガノ社製)50gを添加し、6時間撹拌した。次いで、4リットルの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、減圧下、45℃で2日間乾燥しポリイミド前駆体(SP-1)を得た。得られたポリイミド前駆体SP-1の重量平均分子量は10,500、数平均分子量は3,400であった。ポリイミド前駆体(SP-1)は、下記式(SP-1)で表される繰返し単位を有する樹脂である。繰返し単位の構造は、H-NMRスペクトルから決定した。
<ポリイミド前駆体の合成>
〔合成例SP-2~SP-5:ポリイミド前駆体(SP-2)~(SP-5)の合成〕
 使用するカルボン酸二無水物及びジアミンを適宜変更した以外は、ポリイミド前駆体(SP-1)と同様の方法で、ポリイミド前駆体(SP-2)~(SP―5)を合成した。
 ポリイミド前駆体(SP-2)~(SP-5)は、それぞれ、下記式(SP-2)~(SP-5)で表される繰返し単位を有する樹脂である。各繰返し単位の構造は、H-NMRスペクトルから決定した。下記構造中、繰返し単位を示す括弧の添え字は各繰返し単位の含有モル比を表す。また、これらの樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量については下記表に記載した。

〔ジアミン(AA-1)の合成〕
 コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、還元鉄(富士フイルム和光純薬(株)製)27.9g(500ミリモル)、塩化アンモニウム(富士フイルム和光純薬(株)製)5.9g(110ミリモル)、酢酸(富士フイルム和光純薬(株)製)3.0g(50ミリモル)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.03gを秤り取り、イソプロピルアルコール(IPA)200mL、純水30mLを添加し、撹拌した。
 次いで、ジニトロ体(A-1)16.2gを少量ずつ1時間かけて添加し、30分撹拌した。次に、外温を85℃に昇温し、2時間撹拌し、25℃以下に冷却した後、セライト(登録商標)を使用してろ過した。ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、酢酸エチル800mLに溶解した。これを分液ロートに移し、飽和重曹水300mLで2回洗浄し、水300mL、飽和食塩水300mLで順に洗浄した。分液洗浄後、硫酸マグネシウム30gで乾燥後、エバポレーターを用いて濃縮、真空乾燥し、ジアミン(AA-1)を11.0g得た。ジアミン(AA-1)であることはH-NMRスペクトルから確認した。
H-NMRデータ(重クロロホルム、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン)
δ(ppm)=1.95(s、3H)、3.68(s、4H)、4.45-4.47(m、2H)、4.50-4.53(m、2H)、5.58(s、1H)、6.14(s、1H)、6.19-6.20(t、1H)、6.77-6.78(d、2H)
〔ポリイミドPI-1の合成〕
 撹拌機、コンデンサーを取りつけたフラスコ内で、20℃~30℃の範囲内で、16.5g(37.1ミリモル)の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物を100gのN-メチルピロリドンに溶解した。続いて上記で合成したAA-1を7.85g(29.7ミリモル)、アニリン0.93g(10ミリモル)を添加し、3時間撹拌した。続いて、ピリジン11.8g、無水酢酸9.48gを添加した後、内温を80℃に昇温し、3時間撹拌し、25℃以下まで冷却した。続いて、テトラヒドロフラン50gで希釈した後、2Lのメタノールに沈殿させ、ろ過し、これを回収して45℃で1日真空乾燥し、ポリイミド樹脂(PI-1)を得た。ポリイミド(PI-1)の重量平均分子量は、11,100、数平均分子量は、4,500であった。ポリイミド(PI-1)は、下記式(PI-1)で表される繰返し単位を有する樹脂である。繰返し単位の構造は、H-NMRスペクトルから決定した。
〔ポリアミド(PA-1)の合成〕
 撹拌機、コンデンサーを取りつけたフラスコ内で、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)12.0g(40.7ミリモル)、ピリジン7.07gを80gのN-メチルピロリドンに溶解した。続いて、上記で合成したAA-1を4.84g(18.3ミリモル)、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを5.86g(18.3ミリモル)添加し、20℃~35℃の範囲で3時間撹拌した。続いて、テトラヒドロフラン50gで希釈した後、2Lの水に沈殿させ、ろ過し、これを回収して45℃で1日真空乾燥した。続いて、上記で乾燥した樹脂をテトラヒドロフラン200gに溶解し、イオン交換樹脂(MB-1:オルガノ社製)30gを添加し、3時間撹拌した。次いで、2リットルの水の中でポリアミド樹脂を沈殿させ、水-ポリアミド樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリアミドを濾過して取得し、減圧下、45℃で2日間乾燥しポリアミド(PA-1)を得た。得られたポリアミド(PA-1)の重量平均分子量は30,500、数平均分子量は12,100であった。ポリアミド(PA-1)は、下記式(PA-1)で表される繰返し単位を有する樹脂である。繰返し単位の構造は、H-NMRスペクトルから決定した。下記構造中、繰返し単位を示す括弧の添え字は各繰返し単位の含有モル比を表す。
〔ポリイミド前駆体(A-1)の合成〕
 4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)77.5gと、4,4’-ビフタル酸二無水物73.5gをセパラブルフラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)134.0g及びγ-ブチロラクトン400mlを加えた。室温下で撹拌しながら、ピリジン79.1gを加えることにより、反応混合物を得た。反応による発熱の終了後、室温まで放冷し、更に16時間静置した。
 次に、氷冷下において、反応混合物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ-ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を、撹拌しながら40分かけて加えた。続いて、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル93.0gをγ-ブチロラクトン350mlに懸濁した懸濁液を、撹拌しながら60分かけて加えた。更に室温で2時間撹拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間撹拌した。その後、γ-ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物を、ろ過により取得し、反応液を得た。
 得られた反応液を3リットルのエチルアルコールに加えて、粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾取し、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28リットルの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾取した後に真空乾燥することにより、粉末状のポリイミド前駆体(A-1)を得た。このポリイミド前駆体(A-1)の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、22,600であった。ポリイミド前駆体(A-1)は、下記式(A-1)で表される繰返し単位を有する樹脂である。繰返し単位の構造は、H-NMRスペクトルから決定した。各繰返し単位の含有モル比は1:1である。
<特定重合性化合物の合成>
〔CX-1の合成〕
 コンデンサーを取り付けたフラスコに、2-アミノフェノール7.21g(65.2ミリモル)、トリエチルアミン14.6g(144ミリモル)、テトラヒドロフラン200mLを入れ、0~10℃に冷却した。続いて、メタクリル酸クロリド15.0g(143ミリモル)を80mLのテトラヒドロフランで希釈したものを、1時間かけて滴下し、60℃に昇温して3時間撹拌した。
 続いて、20℃~25℃まで冷却した後、反応液を酢酸エチル300mLと混合し、分液ロートに移した。300mLの飽和重曹水で2回洗浄し、飽和した塩化アンモニウム水溶液300mL、水300mL、飽和食塩水300mLを順に用いて洗浄し、硫酸ナトリウムで有機層を乾燥し、p-メトキシフェノール15mgを添加し、エバポレーターで溶媒を除去し、CX-1の結晶を得た。CX-1の結晶を酢酸エチル100mL、ヘキサン200mLの混合液で30分撹拌した後、ろ過し、40℃で24時間乾燥し、CX-1を12g得た。CX-1である事は、H-NMRスペクトルで確認した。CX-1は下記式(CX-1)で表される構造の化合物である。
H-NMRデータ:(重DMSO、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン)
δ(ppm)=1.90(s、3H)、1.96(s、3H)、5.46(s、1H)、5.76(s、1H)、5.83(s、1H)、6.25(s、1H)、7.24~7,27(m、3H)、7.53~7.55(t、1H)、9.42(s、1H)
〔CX-2~CX-8の合成〕
 原料を適宜変更した以外は、CX-1と同様の方法で、CX-2~CX-8を合成した。CX-2~CX-8はそれぞれ、下記式CX-2~CX-8で表される構造の化合物である。
〔CX-9の合成〕
 コンデンサーを取り付けたフラスコに、2-アミノフェノール7.21g(65.2ミリモル)、ネオスタンU-600(日東化成株式会社製)0.05g、テトラヒドロフラン100mLを入れ、10℃~15℃に冷却した。続いて、カレンズMOI(昭和電工(株)製)10.6g(68.5ミリモル)を、1時間かけて滴下し、60℃に昇温して5時間撹拌した。
 続いて、20℃~25℃まで冷却した後、反応液を酢酸エチル800mLと混合し、分液ロートに移した。300mLの飽和重曹水で2回洗浄し、飽和した塩化アンモニウム水溶液300mL、水300mL、飽和食塩水300mLを順に用いて洗浄し、硫酸ナトリウムで有機層を乾燥し、p-メトキシフェノール15mgを添加し、エバポレーターで溶媒を除去し、CX-9を13g得た。CX-9である事は、H-NMRスペクトルで確認した。CX-9は下記式CX-9で表される構造の化合物である。
〔CX-10~CX-11の合成〕
 原料を適宜変更した以外は、CX-9と同様の方法で、CX-10~CX-11を合成した。CX-10~CX-11はそれぞれ、下記式CX-10~CX-11で表される構造の化合物である。
<実施例及び比較例>
 各実施例において、それぞれ、下記表に記載の成分を混合し、各樹脂組成物を得た。また、各比較例において、それぞれ、下記表に記載の成分を混合し、各比較用組成物を得た。
 具体的には、表に記載の各成分の含有量は、表の各欄の「添加量」の欄に記載の量(質量部)とした。
 得られた樹脂組成物及び比較用組成物を、細孔の幅が0.5μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いて加圧ろ過した。
 また、表中、「-」の記載は該当する成分を組成物が含有していないことを示している。
 表に記載した各成分の詳細は下記の通りである。
〔樹脂〕
・SP-1~SP-5:上記で合成したポリイミド前駆体(SP-1)~(SP-5)。
・A-1:上記で合成したポリイミド前駆体(A-1)
・PI-1:上記で合成したPI-1
・PA-1:上記で合成したPA-1
〔重合性化合物〕
・CX-1~CX-11:上記で合成したCX-1~CX-11
・SR-209:SR-209(サートマー社製)
・ADPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業(株)製)
〔溶剤〕
・DMSO:ジメチルスルホキシド
・GBL:γ-ブチロラクトン
・NMP:N-メチルピロリドン
・γ-V:γ-バレロラクトン
 表中、「DMSO/GBL」及び、「DMSO/γ-V」の記載はDMSOとGBLをDMSO:GBL=80:20の混合比(質量比)及び、DMSO:γ-バレロラクトン=80:20で混合したものを用いたことを示している。
〔重合開始剤(いずれも商品名)〕
・OXE-01:IRGACURE OXE 01(BASF社製)
・OXE-02:IRGACURE OXE 02(BASF社製)
・Irgcue784:Irgcue784 (BASF社製)
〔マイグレーション抑制剤〕
・E-1~E-7:下記構造の化合物
〔金属接着性改良剤〕
・F-1~F-3:下記構造の化合物

F-4:X-12-1293(信越化学工業株式会社製)
F-5:KR-513(信越化学工業株式会社製)
〔重合禁止剤〕
・G-1:1,4-ベンゾキノン
・G-2:4-メトキシフェノール
・G-3:1,4-ジヒドロキシベンゼン
・G-4:下記構造の化合物
〔塩基発生剤〕
・H-1~H-3:下記構造の化合物
〔その他の添加剤〕
・I-1:2,2’,3,3’-テトラヒドロ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビ(1H-インデン)-5,5’,6,6’,7,7’ヘキサノールと1,2-ナフトキノン-(2)-ジアゾ-5-スルホン酸とのエステル
〔リンス液〕
・リンス液-1:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
・リンス液-2:N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン5質量%PGMEA溶液
<評価>
〔解像性の評価〕
 各実施例又は比較例において、それぞれ、シリコン基板上に、各樹脂組成物又は比較用組成物を塗布して、塗布膜を形成した。次いで、100℃のホットプレートを用いて240秒間加熱処理を行い膜厚15μmの樹脂組成物層を形成した。次いで、樹脂組成物層に対し、ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して、15μm四方のベイヤーを有するパターンマスクを介してi線(365nmの波長の光)を100~1000mJ/cmにて100mJ/cmずつ露光量を変化させて照射し、次いで、露光後のネガ型感光性樹脂組成物層が形成されているシリコン基板をスピン・シャワー現像機(DW-30型;(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、表の「現像方法(現像液)」の欄に記載の現像液を用いて23℃で60秒間現像を行ない、表の「リンス液」の欄に記載のリンス液を用いて15秒間リンスして(上述のリンス液1又はリンス液2のうち、表に記載したいずれかを用いた)未露光部を現像除去してパターンを形成した。樹脂組成物又は比較用組成物の解像性を以下の評価基準で評価した。なお、下地基板の露出幅が15μm±3μmである場合を、線幅15μmのパターン(15μm四方のパターン)を解像可能であるとした。上記パターンが解像可能である露光量の範囲が大きいほど、解像性に優れるといえる。評価結果は表の「解像性」の欄に記載した。
-評価基準-
A:厚さ15μm、線幅15μmのパターンを解像可能な露光量の最大値と最小値との差が900mJ/cm以上であった。
B:厚さ15μm、線幅15μmのパターンを解像可能な露光量の最大値と最小値との差が600mJ/cm以上900mJ/cm未満であった。
C:厚さ15μm、線幅15μmのパターンを解像可能な露光量の最大値と最小値との差が300mJ/cm以上600mJ/cm未満であった。
である。
D:厚さ15μm、線幅15μmのパターンを解像可能な露光量の最大値と最小値との差が300mJ/cm未満であった。
〔フォーカスマージン性の評価〕
 各実施例及び比較例において調製した各樹脂組成物又は比較用組成物を、それぞれ、8インチのシリコンウエハ上にスピンコート法により適用し、樹脂組成物層を形成した。得られた樹脂組成物層を適用したシリコンウエハをホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、シリコンウエハ上に8μmの均一な厚さの樹脂組成物層を形成した。
 この樹脂組成物層にマスクサイズが直径5μmの円形パターンのマスクを用いて、i線ステッパーFPA-3030iWa(NA=0.16)(Canon社製)により、200mJ/cmから600mJ/cmまで100mJ/cmステップでエネルギーを照射した。この際、各々の露光量に対し、フォーカスを膜表面を基準として膜底部方向に向けて、2μmずつ移動させ露光した。露光後に、スピン・シャワー現像機(DW-30型;(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、表の「現像方法(現像液)」の欄に記載の現像液を用いて23℃で60秒間現像を行ない、表の「リンス液」の欄に記載のリンス液を用いて15秒間リンスして(上述のリンス液1又はリンス液2のうち、表に記載したいずれかを用いた)未露光部を現像除去してパターンを形成した。
 露光した樹脂組成物層(樹脂層)を、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、表の「硬化条件」の「温度」の欄に記載の温度で180分間加熱して、樹脂組成物層の硬化層(樹脂層)のパターンを得た。
 得られた各パターンについて、パターン形状やパターン部の幅を光学顕微鏡下で観察し、フォーカスマージンを求めた。底面とパターンの側面がなす角の角度が80~100°であり、かつ、パターンの直径が4~6μmである場合に、パターンが形成されていると判断した。
フォーカスマージンが広い(数値が大きい)ほど、フォーカスマージン性が好ましい結果となる。
-評価基準-
A:フォーカスマージンが12μm以上であった。
B:フォーカスマージンが7μmを超えて12μm未満であった。
C:フォーカスマージンが4μmを超えて7μm以下であった。
D:フォーカスマージンが4μm以下であった。
〔破断伸びの評価〕
 各実施例及び比較例において、それぞれ、樹脂組成物又は比較用組成物をスピンコート法でシリコンウエハ上に適用して樹脂組成物層を形成した。得られた樹脂組成物層を適用したシリコンウエハをホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、シリコンウエハ上に約15μmの均一な厚さの樹脂組成物層を得た。
 得られた樹脂組成物層の全面に対して、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)を用いて、500mJ/cmの露光エネルギーでi線露光した。
 上記露光後の樹脂組成物層(樹脂層)を、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、表の「硬化条件」の「温度」の欄に記載の温度に達した後、180分間加熱した。硬化後の樹脂層(硬化膜)を4.9質量%フッ化水素酸水溶液に浸漬し、シリコンウエハから硬化膜を剥離した。剥離した硬化膜を、打ち抜き機を用いて打ち抜いて、試料幅3mm、試料長30mmの試験片を作製した。得られた試験片を、引張り試験機(テンシロン)を用いて、クロスヘッドスピード300mm/分で、25℃、65%RH(相対湿度)の環境下にて、JIS-K6251に準拠して試験片の長手方向の破断伸び率を測定した。評価は各5回ずつ実施し、試験片が破断した時の伸び率(破断伸び率)について、その算術平均値を指標値として用いた。
 上記指標値を下記評価基準に従って評価し、評価結果は表の「破断伸び」の欄に記載した。上記指標値が大きいほど、得られる硬化膜の膜強度(破断伸び)に優れるといえる。
(評価基準)
 A:上記指標値が70%以上であった。
 B:上記指標値が60%以上70%未満であった。
 C:上記指標値が50%以上60%未満であった。
 D:上記指標値が50%未満であった。
〔耐薬品性の評価〕
 各実施例及び比較例において調製した各樹脂組成物又は比較用組成物を、それぞれ、シリコンウエハ上にスピンコート法により適用し、樹脂組成物層を形成した。得られた樹脂組成物層を適用したシリコンウエハをホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、シリコンウエハ上に15μmの均一な厚さの樹脂組成物層を形成した。シリコンウェハ上の樹脂組成物層を、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)を用いて、500mJ/cmの露光エネルギーで全面露光し、露光した樹脂組成物層(樹脂層)を、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、表の「硬化条件」の「温度」の欄に記載の温度で180分間加熱して、樹脂組成物層の硬化層(樹脂層)を得た。
 得られた樹脂層について下記の薬液に下記の条件で浸漬し、溶解速度を算定した。
薬液:ジメチルスルホキシド(DMSO)と25質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の90:10(質量比)の混合物
評価条件:薬液中に樹脂層を75℃で15分間浸漬して浸漬前後の膜厚を比較し、溶解速度(nm/分)を算出した。膜厚は、エリプソメーター(Foothill社製KT-22)で塗布面10点において膜厚測定を実施し、その算術平均値として求めた。
 評価は下記評価基準に従って行い、評価結果は表の「耐薬品性」の欄に記載した。溶解速度が小さいほど、耐薬品性に優れるといえる。
-評価基準-
A:溶解速度が200nm/分未満であった。
B:溶解速度が200nm/分以上300nm/分未満であった。
C:溶解速度が300nm/分以上400nm/分未満であった。
D:溶解速度が400nm/分以上であった。
<実施例101>
 実施例1において使用した樹脂組成物を、表面に銅薄層が形成された樹脂基材の銅薄層の表面にスピンコート法により層状に適用して、100℃で4分間乾燥し、膜厚20μmの樹脂組成物層を形成した後、ステッパー((株)ニコン製、NSR1505 i6)を用いて露光した。露光はマスク(パターンが1:1ラインアンドスペースであり、線幅が10μmであるバイナリマスク)を介して、波長365nmで行った。露光後、100℃で4分間加熱した。上記加熱後、シクロペンタノンで2分間現像し、PGMEAで30秒間リンスし、層のパターンを得た。
 次いで、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、230℃に達した後、230℃で3時間維持して、再配線層用層間絶縁膜を形成した。この再配線層用層間絶縁膜は、絶縁性に優れていた。
 また、これらの再配線層用層間絶縁膜を使用して半導体デバイスを製造したところ、問題なく動作することを確認した。

Claims (19)

  1.  環化樹脂及びその前駆体、並びに、ポリアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂であって、エチレン性不飽和結合を含む基を有する樹脂と、
     光重合開始剤と、
     重合性化合物とを含み、
     前記重合性化合物が環構造を有し、前記環構造の環員である原子、及び、前記環構造内で前記環員と隣接する環員である原子のうち少なくとも一つの原子のいずれもが置換基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する、
     樹脂組成物。
  2.  前記重合性化合物が、下記式(1-1)又は下記式(1-2)のいずれかで表される構造である、請求項1に記載の樹脂組成物。

     式(1-1)中、Arは芳香族環構造を表し、Z及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、Z及びZの少なくとも一方は炭素原子であり、Z及びZはいずれも前記Arの環員であり、X及びXはそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、XとXは結合して環構造を形成してもよく、X及びXの少なくとも1つと、前記芳香族環構造の環員のうちZ及びZとは異なる環員である原子とが結合して環構造を形成してもよく、Y及びYはそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、Xが単結合の場合はn1は1、Xが単結合の場合はn2は1である。
     式(1-2)中、Cyは環員数が5~15の脂肪族環構造を表し、Cyは他の環構造と更に複環を形成していてもよく、Z及びZはそれぞれ独立に、CRX2、炭素原子又は窒素原子を表し、Z及びZはいずれも前記Cyの環員であり、RX2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、X及びXはそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n3及びn4はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、Xが単結合の場合はn3は1、Xが単結合の場合はn4は1であり、破線が付された結合は二重結合又は単結合を表し、Z及びZのうちいずれか1つがCRX2又は窒素原子である場合、破線が付された結合は単結合である。
  3.  前記重合性化合物が、下記式(2-1)~式(2-4)のいずれかで表される構造である、請求項1に記載の樹脂組成物。

     式(2-1)中、A11~A14はそれぞれ独立に、-CRX1=又は-N=を表し、RX1はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、化合物中にRX1が2以上存在する場合、RX1同士が結合して環構造を形成してもよく、X11及びX12はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、X11とX12は結合して環構造を形成してもよく、X11及びX12の少なくとも1つと、A11~A14の少なくとも1つとが結合して環構造を形成してもよく、Y11及びY12はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X11が単結合の場合はn11は1、X12が単結合の場合はn12は1である。
     式(2-2)中、A21及びA22はそれぞれ独立に、-CRX2-又は窒素原子を表し、RX2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、X21及びX22はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、Y21及びY22はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n21及びn22はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X21が単結合の場合はn21は1、X22が単結合の場合はn22は1であり、Cyは環員数が5~15の脂肪族環構造を表し、Cyは他の環構造と更に複環を形成していてもよい。
     式(2-3)中、A31及びA32はそれぞれ独立に、-CRX3=又は-N=を表し、RX3はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、化合物中にRX3が2以上存在する場合、RX3同士が結合して環構造を形成してもよく、X31~X34はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、X31とX32は結合して環構造を形成してもよく、X33とX34は結合して環構造を形成してもよく、X31~X34の少なくとも1つと、A31~A32の少なくとも1つとが結合して環構造を形成してもよく、Y31~Y34はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n31~n34はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X31が単結合の場合はn31は1、X32が単結合の場合はn32は1、X33が単結合の場合はn33は1、X34が単結合の場合はn34は1である。
     式(2-4)中、A41~A44はそれぞれ独立に、-CRX4=又は-N=を表し、RX4はそれぞれ独立に、水素原子、1価の置換基又はLとの結合部位を表し、A41~A44のうち少なくとも1つはRX4がLとの結合部位である-CRX4=であり、化合物中にRX4が2以上存在する場合、RX4同士が結合して環構造を形成してもよく、X41及びX42はそれぞれ独立に、単結合又は2~4価の連結基を表し、X41とX42は結合して環構造を形成してもよく、X41及びX42の少なくとも1つと、A41~A44の少なくとも1つとが結合して環構造を形成してもよく、Y41及びY42はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含む基を表し、n41及びn42はそれぞれ独立に、1~3の整数を表し、X41が単結合の場合はn41は1、X42が単結合の場合はn42は1であり、Lは単結合又はm41価の連結基であり、Lが単結合である場合m41は2であり、m41は2以上の整数であり、それぞれm41個ずつ存在するA41~A44、X41及びX42、Y41及びY42、並びに、n41及びn42はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
  4.  前記X及び前記Xがそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含む基であり、前記X及び前記Xがそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含む基である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  5.  前記X及び前記Xがそれぞれ独立に、-O-又は-NR-であり、前記X及び前記Xがそれぞれ独立に、-O-又は-NR-であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  6.  前記重合性化合物におけるエチレン性不飽和結合を含む基のうち少なくとも1つが、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、又は、(メタ)アクリロイル基若しくはビニルフェニル基を含む基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7.  前記重合性化合物の分子量が2,000以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8.  アゾール化合物、及び、シランカップリング剤を更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9.  前記樹脂の重量平均分子量が5,000~20,000である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  10.  前記樹脂の全質量に対し、分子量が30,000以上である前記樹脂の含有量が20質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11.  再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  12.  請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
  13.  請求項12に記載の硬化物からなる層を2層以上含み、前記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む積層体。
  14.  請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含む、硬化物の製造方法。
  15.  前記膜を選択的に露光する露光工程及び前記膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含む、請求項14に記載の硬化物の製造方法。
  16.  前記膜を50~450℃で加熱する加熱工程を含む、請求項14に記載の硬化物の製造方法。
  17.  請求項14に記載の硬化物の製造方法を含む、積層体の製造方法。
  18.  請求項14に記載の硬化物の製造方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
  19.  請求項12に記載の硬化物を含む、半導体デバイス。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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