WO2024038628A1 - 可変速動力装置及び制御方法 - Google Patents

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隆治 広江
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    • H02P21/14Estimation or adaptation of machine parameters, e.g. flux, current or voltage
    • H02P21/18Estimation of position or speed

Abstract

可変速動力装置は、電機子巻線が設けられて電機子を形成する固定子と、磁極を有する第1の回転子と、前記第1の回転子と前記固定子との間に設けられて負荷を駆動する第2の回転子と、を有する同期機と、前記同期機を駆動する電流及び電圧に基づいて、前記電機子に発生する誘起電圧の電気角を推定する誘起電圧ベクトル推定部と、推定した前記誘起電圧の電気角に基づいて、前記同期機を駆動する電力の周波数を調整する電力変換器と、を備える。

Description

可変速動力装置及び制御方法
 本開示は、可変速動力装置及び制御方法に関する。
 本願は、2022年8月19日に日本に出願された特願2022-130963号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 図23には、一般的な同期機90Aを用いた可変速動力装置9Aの一例が示されている。可変速動力装置9Aは、同期機90Aと、可変速化のための電力変換器91(インバータ)とにより構成される。同期機90Aは、固定子901Aと、回転子902Aとを有する。
 同期機90Aが発生するトルクには限度があるので、重量物を駆動するためには、一般には機械的な減速機92(ギア)が用いられる。減速機92は、同期機90Aの出力軸94と連結され、同期機90Aの回転速度を減速して負荷に伝達するものである。しかし、減速機92は、ギア同士が接触して動力を伝達するものであることから、摺動部のメンテナンスが必要となる。このため、減速機を用いない可変速動力装置として、第1の回転子と、第2の回転子の2つの回転子を有する同期機を用いた可変速動力装置が考えられている。2つの回転子を有する同期機は、磁気ギアードモータと呼ばれている。磁気ギアードモータは、磁力によって回転子同士が非接触で動力を伝達するため、摺動部のメンテナンスが不要となる他に、減速機を用いた構成と比較して部品点数が少ないことから、小型化かつ軽量化できるというメリットがある。
 図24には、磁気ギアードモータ90Bを用いた可変速動力装置9Bの一例が示されている。可変速動力装置9Bは、磁気ギアードモータ90Bと、電力変換器91とにより構成される。磁気ギアードモータ90Bは、固定子901Bと、第1の回転子902Bと、固定子901B及び第1の回転子902Bの間に設けられた第2の回転子903Bとを有する。第1の回転子902Bは、出力軸94Aを介して他の負荷または動力に接続されても良い。
 同期機90A、及び磁気ギアードモータ90Bを駆動する電力は一般的に三相交流である。一般の同期機90Aの回転数は、駆動する電力の周波数に同期する。電力の周波数を変更すると、それに同期して同期機90Aの回転数も変わり、負荷の速度も変わる。したがって、駆動する電力の周波数と、負荷の速度との関係を予め調べておけば、周波数を調節して負荷を希望の速度で動かすことができる。磁気ギアードモータ90Bも一般の同期機90Aと同じであり、駆動する電力の周波数を調節して負荷の速度を変えることができる。
 一般の同期機90Aや磁気ギアードモータ90Bにおいて、負荷が過大なときには脱調が発生する可能性がある。同期機90Aには出力できるトルクに上限があることを先に述べたが、負荷がトルクの上限を持続的に超えると電力に対し同期機90Aの回転が遅れ脱調する。脱調状態では、同期機90Aの回転数は駆動する電力の周波数と無関係となるので、負荷を希望の速度で動かすことはできない。そればかりか、脱調すると負荷となる機械に大きな振動や騒音が発生し、機械が壊れる可能性もある。したがって、同期機90A及び磁気ギアードモータ90Bの運転では脱調させないことが重要である。
 一般的な同期機90Aでは、回転子902Aの磁極が回転することにより電機子(固定子901Aの電機子巻線)に発生する誘起電圧の電気角に、駆動する電力の電圧を同期させることにより脱調を防いでいる。より具体的には、誘起電圧の電気角と、駆動電力の電圧の角度すなわち電気角との差が±90度を超えないように電力線93の電圧の位相を調整している。これにより、電力変換器91が出力する電力の位相または周波数は、回転子902Aの回転角度または回転速度が反映され、例えば、負荷が過大であり回転子902Aの回転が遅れたときには、駆動周波数を下げて、脱調を防ぐことが可能となる。
 誘起電圧は電機子に鎖交する磁束を時間微分したものである。鎖交磁束は回転子902Aと共に回転するので、回転子902Aの角度が分かれば鎖交磁束も、それを微分した誘起電圧もわかる。一般的な同期機90Aでは、回転子902Aが一つなので、電機子に発生する誘起電圧は、一つの回転子902Aの角度が分かれば十分であった。回転子902Aは出力軸94に接続されているため、出力軸94に設けた回転角度センサ95により、出力軸94の角度、すなわち、回転子902Aの角度を計測することができる。例えば、特許文献1には、回転角度センサによって出力軸の角度を測り、出力軸の回転に同期して駆動する交流電力を転流させる技術が記載されている。このようにすると、電力線を流れる電力の周波数は出力軸に同期する。
国際公開第2015/186714号公報
 磁気ギアードモータ90Bは、同期機90Aの回転子902Aに相当する第1の回転子902Bの他に、第2の回転子903Bを有している。例えば、特許文献1には、第1の回転子(第1ロータ)と第2の回転子(第2ロータ)とを有する磁気ギアードモータにおいて、第2の回転子から動力を出力する磁気ギアードモータがさらに記載されている。つまり、特許文献1に記載の磁気ギアードモータにおいて、出力軸の角度を測る回転角度センサは、第2の回転子の角度を計測している。
 磁気ギアードモータにおいて、電機子に発生する誘起電圧は、第2の回転子の角度のみならず第1の回転子の角度にも依存する。このため、特許文献1に記載の技術では、第1の回転子の影響を無視したことによる誤差が生じ得る。そうすると、誘起電圧が第2の回転子よりも、第1の回転子の角度により決まる状況では、脱調する可能性がある。
 本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、同期機の脱調を抑制することができる可変速動力装置及び制御方法を提供する。
 本開示の一態様によれば、可変速動力装置は、電機子巻線が設けられて電機子を形成する固定子と、磁極を有する第1の回転子と、前記第1の回転子と前記固定子との間に設けられて負荷を駆動する第2の回転子と、を有する同期機と、前記同期機を駆動する電流及び電圧に基づいて、前記電機子に発生する誘起電圧の電気角を推定する誘起電圧角度推定部と、推定された前記誘起電圧の電気角に基づいて、前記同期機を駆動する電力の周波数を調整する電力変換器と、を備える。
 本開示の一態様によれば、電機子巻線が設けられて電機子を形成する固定子と、磁極を有する第1の回転子と、前記第1の回転子と前記固定子との間に設けられて負荷を駆動する第2の回転子と、を有する同期機の制御方法は、前記同期機を駆動する電流及び電圧に基づいて、前記電機子に発生する誘起電圧の電気角を推定するステップと、推定された前記誘起電圧の電気角に基づいて、前記同期機を駆動する電力の周波数を調整するステップと、を有する。
 本開示に係る可変速動力装置及び制御方法によれば、同期機の脱調を抑制することができる。
本開示の第1の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 本開示の第1の実施形態に係る同期機の断面図である。 本開示の第1の実施形態に係る電力変換器の動作の概念を説明するための図である。 本開示の第2の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 本開示の第3の実施形態に係る第1の回転子の断面図である。 本開示の第4の実施形態に係る第1の回転子の断面図である。 本開示の第4の実施形態に係る第1の回転子の斜視図である。 本開示の第5の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 本開示の第6の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 本開示の第7の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 本開示の第8の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 本開示の第8の実施形態に係る電力変換器の機能構成を示す図である。 本開示の第9の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 第9の実施形態に係る電力変換器の機能構成を示す図である。 本開示の第9の実施形態に係る誘起電圧ベクトルの一例を示す図である。 本開示の第10の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 本開示の第10の実施形態に係る電力変換器の動作を説明するための図である。 本開示の第10の実施形態に係る負荷角の一例を示す図である。 本開示の第11の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 本開示の第12の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 本開示の第12の実施形態に係る電力変換器の機能構成を示す図である。 本開示の少なくとも一の実施形態に係る可変速動力装置を構成する機器のハードウェア構成の一例を示す図である。 従来の可変速動力装置の一例を示す第1の図である。 従来の可変速動力装置の一例を示す第2の図である。
<第1の実施形態>
 以下、本開示の第1の実施形態に係る可変速動力装置1について、図を参照しながら説明する。
(可変速動力装置の機能構成)
 図1は、本開示の第1の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 図1に示すように、可変速動力装置1は、同期機2と、制御装置3と、電力変換器4とを備えている。
 同期機2は、磁気ギアードモータである。磁気ギアードモータは、磁気ギアード発電機としての役割も果たす。したがって、本実施形態に係る同期機2は、モータ及び発電機の両方の役割を表す。なお、以降では、同期機2をモータとして使用する例について説明する。
 図2は、本開示の第1の実施形態に係る同期機の断面図である。
 図1及び図2に示すように、同期機2は、固定子21と、第1の回転子22と、第2の回転子23と、出力軸24と、出力軸24Aを有している。
 固定子21は、第1の回転子22及び第2の回転子23の周囲を囲う環状の構造体である。固定子21は、径方向の内側に突出する複数の歯211それぞれに電機子巻線212が設けられて電機子を形成する。
 第1の回転子22は、回転軸Oを中心に回転するロータである。第1の回転子22は、軟磁性材料で形成されたコア221と、複数の磁極222とを有する。磁極222は、例えば永久磁石である。なお、図2の例では、第1の回転子22の磁極数は4であるが、これに限られることはない。他の実施形態では、第1の回転子22の磁極数は変更してもよい。第1の回転子22は、出力軸24Aを介して他の負荷または動力に接続される。
 また、図2の例では、第1の回転子22のコア221の外周面を全て覆うように永久磁石を配置した構成が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、第1の回転子22は、外周面から径方向の外側に突出する複数の磁極(突極)がコア221と一体形成されている構成であってもよい。この場合、第1の回転子22には、磁石または電磁石が設けられていなくてもよい。さらに他の実施形態では、第1の回転子22のコア221を磁性鋼板のような軟磁性材料で形成し、コア221の外周面に間隔をあけて磁石を配置するようにしてもよい。すなわち、図2の例のようにコア221の外周面の全てを磁石で覆うのではなく、隣接する磁石と磁石との間(境界部)に軟磁性材料が露出する構成であってもよい。
 第2の回転子23は、固定子21と第1の回転子22との間に設けられる。第2の回転子23は、第1の回転子22の周囲を囲う環状の構造体であり、回転軸Oを中心に回転する。図1に示すように、第2の回転子23は、出力軸24に連結され、出力軸24に接続された負荷を駆動する。また、図2に示すように、第2の回転子23は、磁極231と、非磁性部232とが周方向に交互に配置されたものである。磁極231は、磁性材料(軟磁性材料または硬磁性材料)からなる。非磁性部232は、非磁性材料からなる。なお、非磁性部232は、磁性材料を径方向に切り欠いて作った空隙であってもよい。
 また、図2の例のように、固定子21と第2の回転子23との間(固定子21の歯211の内周面)に、複数の磁石213が環状に配設されていてもよい。なお、他の実施形態では、磁石213を省略してもよい。
 制御装置3は、同期機2の動作を制御するための装置である。本実施形態に係る制御装置3は、誘起電圧角度推定部31を有している。誘起電圧角度推定部31は、鎖交磁束推定部310と、算出部311とを有している。
 鎖交磁束推定部310は、第1の回転子22の角度(第1角度)と、第2の回転子23の角度(第2角度)とに基づいて電機子巻線212に鎖交する磁束の角度を推定する。なお、本実施形態に係る鎖交磁束推定部310は、第1の回転子22に設けられた第1角度センサ13から第1の回転子22の角度を取得し、第2の回転子23に設けられた第2角度センサ14から第2の回転子23の角度を取得する。
 算出部311は、推定された磁束の角度に基づいて、電機子の誘起電圧の電気角を算出する。算出した誘起電圧の電気角は、電力変換器4に出力される。
 電力変換器4は、電力線11(同期機2の電機子巻線212)を介して同期機2と電気的に接続される。電力変換器4は、電力の周波数指令値と、制御装置3より入力された誘起電圧の電気角とに基づいて、V/f制御やベクトル制御などの技術を用いて同期機2を駆動する電力の周波数、電圧、電流を調整する。
(制御装置の動作)
 次に、本実施形態に係る制御装置3の動作について詳細に説明する。一例として、第1の回転子22はコア221の外周面を全て覆うように永久磁石を配置した構成について具体的に説明する。まず、鎖交磁束推定部310が実行する鎖交磁束の角度推定について説明する。一般の同期機は、第2の回転子を有さないので、鎖交磁束の角度は第1の回転子から直ちに定まる。このため角度推定の必要はない。角度推定は磁気ギアードモータのように複数の回転子を有するものに有効である。説明を簡単にするため、第1の回転子の角度は、その起磁力が最大になる方向を基準にすると、第1の回転子の基準方向から角度θ進んだ位置の起磁力は次式(1)で近似できる。ここに、pは第1の回転子の極数である。磁石を有する回転子については、回転子の機械的な角度に極数を2で除した値を乗じたものは電気角と呼ばれる。回転子が機械的に1回転する間に、起磁力は電気角に従ってp/2交番する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
 固定子21の一つの電機子を基準にして、第1の回転子22の角度を測るとθであったとする。このとき式(1)から、固定子21の基準点からθ進んだ方向の前記起磁力は次式(2)となる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000002
 第2の回転子23は、磁極231と非磁性部232とが周方向に交互に配置されているので、第2の回転子23の磁束の通り易さ、すなわちパーミアンスは第2の回転子23の角度、言い換えれば第2の回転子23上の周方向の位置、によって変化する。第2の回転子の角度は、前記パーミアンスが最大になる周方向を基準にすると、第2の回転子の基準方向から第2の回転子上を角度θ進んだ位置の前記パーミアンスは次式(3)で近似できる。ここに、pは第2の回転子23の極数である。パーミアンスの変化により動力を得る回転子では、回転子の角度(機械的な角度)に極数を乗じた値が電気角となる。回転子が機械的に1周するとパーミアンスはp回増減の周期を繰り返す。また、B20≧B21>0である。これは、パーミアンスは常に正であるという物理的な拘束条件を表している。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000003
 固定子21の一つの電機子を基準にして、第2の回転子23の角度を測ったところθであったとする。このとき、固定子21の基準点からθ進んだ方向の前記パーミアンスは次式(4)となる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000004
 第1の回転子22の角度がθ、第2の回転子23の角度がθであるとき、固定子21の基準点からθ進んだ方向で電機子に鎖交する磁束は次式で表される。記号φ(θ)|θ,θは、「第1の回転子22の角度がθであり、第2の回転子23の角度がθである」との事前情報の下での角度θの磁束φを意味している。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000005
 一般に、磁束の角度θφとは、磁束の大きさが最大となる角度のことだから、θφは次式(6)で表される。式(5)の求解は、鎖交するθについての偏微分がゼロとなるように数値的な探索によってもよいし、数値的に解いてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000006
 なお、ここでは、第2の回転子23と固定子21の歯211との間に磁石213が設けられていないタイプの同期機2を例に説明したが、他のタイプ(図2のように磁石213が設けられているタイプ)の同期機2についても同様に計算ができる。
 さらに、ここでは、鎖交磁束推定部310が、A1やB20、B21などの定数から磁束の方向を計算で求めた。これに限らず、数値解析や実験で最大方向を求めることもできる。例えば、電機子の鎖交磁束を、第1の回転子22の角度と第2の回転子23の角度とから推定するテーブルを予め用意しておいてもよい。この場合、鎖交磁束推定部310は、第1の回転子22の角度θと第2の回転子23の角度θとをそれぞれ計測し、用意したテーブルから鎖交磁束の角度を算出する。
 また、鎖交磁束の角度から、誘起電圧の電気角(一般的には鎖交磁束を電気角でπ/2進めたものである)がわかる。算出部311は、鎖交磁束推定部310が推定した鎖交磁束の角度に基づいて、誘起電圧の電気角を算出する。算出した誘起電圧の電気角は、電力変換器4に出力される。
(電力変換器の動作)
 図3は、本開示の第1の実施形態に係る電力変換器の動作の概念を説明するための図である。本実施形態では、出力軸は第2の回転子に接続される。
 電力変換器4は、誘起電圧の電気角に基づくベクトル制御により同期機2を制御する例である。ベクトル制御は、一般に、同期機2の出力トルクを調節する。出力トルクの指令値は、ベクトル制御の上位に配置した速度制御器が出力する。速度制御器は、速度指令を表す電力の周波数指令と負荷軸の電気角周波数を入力し、例えば、比例積分制御の演算によりトルク指令を出力する。本実施形態では、第2の回転子23が負荷軸に相当する。ベクトル制御器は誘起電圧の電気角と電力変換器4が出力する電力の電流とに基づき、電圧指令と周波数指令を出力する。電力変換器4は、電圧指令と周波数指令に従って電機子に電力を供給する。
(作用効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1は、同期機2の第1の回転子22の角度と、第2の回転子23の角度とから電機子に発生する誘起電圧の電気角を推定する誘起電圧角度推定部31と、推定された誘起電圧の電気角に基づいて、同期機2を駆動する電力の周波数を調整する電力変換器4とを備える。
 また、本実施形態に係る誘起電圧角度推定部31は、第1の回転子22の角度及び第2の回転子23の角度に基づいて電機子巻線212に鎖交する磁束の角度を推定する鎖交磁束推定部310と、鎖交磁束の角度及び第2の回転子23の角度に基づいて誘起電圧の電気角を算出する算出部311とを有する。
 電力変換器4にベクトル制御を採用すると、同期機2の機械的出力の速応性は、V/f制御を採用するときより向上する。ベクトル制御を行うには誘起電圧の電気角が必要である。しかし、従来の技術では誘起電圧の電気角が不明であり、ベクトル制御が本来有する速応性を得ることができなかった。または、誘起電圧の電気角が不正確であるため、第1の回転子が振動し、脱調する場合があった。
 本実施形態によると、第1の回転子の角度と第2の回転子の角度に基づき推定した誘起電圧の電気角を用いてベクトル制御を行い、ベクトル制御本来の速応性により磁気ギアードモータの速応性を改善し、または、脱調を防止する効果が得られる。
<第2の実施形態>
 次に、本開示の第2の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
 図4は、本開示の第2の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 図4に示すように、本実施形態に係る制御装置3は、第1角度推定部32をさらに有している。第1角度推定部32は、例えば、試験や解析により事前に定める調整定数βとβとを用いて、第2角度センサ14が測定した第2の回転子23の角度(第2角度)と電圧の角度θとに基づいて、第1の回転子22の角度(第1角度)を推定する。
(制御装置の動作)
 次に、本実施形態に係る制御装置3の動作について詳細に説明する。本実施形態に係る制御装置3は、第1の回転子22の第1角度センサ13の代わりに、第2の回転子23の角度と、三相交流の電圧及び電流とから第1の回転子22の角度を推定する第1角度推定部32を用いる。
 第2の回転子23の角度の計測値をθ、無負荷状態で第2の回転子23が一周したときに第1の回転子が何周するかをn12で表すと、第2の回転子23の角度の計測値θから第1の回転子22の角度は次の式(7)で表される伝達関数で近似できる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000007
 伝達関数のパラメータn12、J、C、及びKは、同期機2に固有の値であり事前の試験などで定めることができる。n12の値は、第2の回転子23の極数pと、第1の回転子の極数pとから計算できる。第1の回転子22の磁極222と、第2の回転子23の磁極231とが共に永久磁石か電磁石を有する場合、または、それらが共に永久磁石も電磁石も有しない場合、「n12=p/p」である。第1の回転子22の磁極222のみに永久磁石か電磁石を有する場合、「n12=2p/p」である。第2の回転子23の磁極231のみに永久磁石か電磁石を有する場合、「n12=p/(2p)」である。第1角度推定部32は、この伝達関数の演算を行う。事前の試験で、伝達関数のパラメータKなどが同期機の出力トルクによって値を大きく変えることが分れば、Kなどの値を同期機の運転に応じて変更しても良い。
 鎖交磁束推定部310、及び算出部311の動作は、第1の実施形態と同様である。
(作用効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1は、第2の回転子23の角度に基づいて第1の回転子22の角度を推定する第1角度推定部32をさらに備える。
 このようにすることで、第1の回転子22の角度を計測する第1角度センサ13や、その配線を不要とすることができる。これにより、可変速動力装置1のコンパクト化、低コスト化を実現することができる。
<第3の実施形態>
 次に、本開示の第3の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。本実施形態では、出力軸は第2の回転子に接続される。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(第1の回転子の構成)
 図5は、本開示の第3の実施形態に係る第1の回転子の断面図である。
 図5に示すように、本実施形態に係る第1の回転子22は、回転軸Oの周囲に形成された肉抜き部223を有している。肉抜き部223は、第1の回転子22のコア221を肉抜きして形成したものである。
 第2の実施形態では、第1の回転子22の第1角度センサ13の代わりに、第1角度推定部32が第1の回転子22の角度を推定した。すなわち、第1の回転子22の角度は実際の値ではなく推定値で代用した。第1の回転子22の角度の推定値は、第1の回転子22の慣性能率と、第1の回転子22に作用する電磁的なトルクからなる運動方程式で計算する。第1の回転子22の角度の推定値の精度は、運動方程式の特性根から決まる固有周波数ωが高いほど、また、減衰比ζが高いほど向上する。これらは、第2の回転子23の慣性能率を下げることにより達成できる。
 慣性能率をJ[kgm2]、電磁的なトルクの機械角勾配をK[Nm/rad]、電磁気的なトルクの機械角速度勾配をC[Nm/(rad/s)]と表すと、特性方程式は、「Js+Cs+K=0」と表される。特性根は、「-C±√(C-4KJ)/2J」である。固有角周波数ωは「√(K/J)」、減衰比ζは「C/2√(KJ)」である。
 第1の回転子22の肉抜きをしない場合、慣性能率Jが大きいので固有角周波数ωは小さく、減衰比ζは小さくなり、第1の回転子22の角度の推定精度が劣化する可能性がある。
 本実施形態は、第1の回転子22の慣性能率Jを下げて固有角周波数と減衰比を共に上げて、第2の実施形態で述べた伝達関数(式7)を、以下の式(8)のように減衰の効いた1次遅れの応答にして、第1角度推定部32における角度推定の誤差を小さくする。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000008
 Jを小さくするには、第1の回転子22のコア221(軟磁性体)に肉抜き部223を形成して、第1の回転子22の慣性能率を小さくする。
 肉抜き部223は、磁極222の周方向の広がりの中央(磁極222の中央)で多く、隣接する磁極との間(磁極の中間)で少なくする。つまり、肉抜き部223の径方向の長さ(回転軸Oからの長さ)は、磁極222の中央に近付くほど長く、隣接する二つの磁極222の中間に近付くほど短くなるように設定される。
 第1の回転子22は外部の負荷と無縁である。同期機の回転子は、負荷が無いとき、磁束が最大となる角度を向いて平衡する。このとき、図5に示すように、磁束の主成分は磁極の中央では径方向であり、周方向の成分は少ない。したがって、磁極の中央では深く肉抜きしても磁束を妨げない。
 肉抜き部223について、磁極222の中央で多く、磁極の中間で少なくするとは、具体的には、図5に示すように、肉抜きの長さdを磁極の中央から計った角度θに対して計るとき、次式(9)が成り立つことである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000009
 ここで、E(d(θ))は、dの平均値である。肉抜きの穴が複数ある場合は、一つ一つの肉抜きの穴についてdを算出し、それを合計した値がE(d(θ))となる。
(作用、効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1において、第1の回転子22は、回転軸Oの周囲に肉抜き部223を有する。
 このようにすることで、第1の回転子22の慣性能率を下げ、減衰比を高くすることができる。この結果、第1角度推定部32における第1の回転子22の角度の推定精度を向上させることができる。
 本実施形態では、このように第1の回転子22の角度を精度よく推定できることから、鎖交磁束推定部310の処理を簡易化してもよい。具体的には、鎖交磁束推定部310は、第1の回転子22の電気角を第2の回転子23の電気角と電圧の電気角の加重和で近似して、鎖交磁束の角度を推定してもよい。
 また、肉抜き部223の径方向の長さは、磁極222の中央に近付くほど長くなるように設定される。
 このようにすることで、磁束を妨げることなく肉抜き部223を形成することができる。
<第4の実施形態>
 次に、本開示の第4の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。本実施形態では、出力軸は第2の回転子に接続される。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(第1の回転子の構成)
 図6は、本開示の第4の実施形態に係る第1の回転子の断面図である。
 図7は、本開示の第4の実施形態に係る第1の回転子の斜視図である。
 図6~図7に示すように、本実施形態に係る第1の回転子22は、磁極222の中央を含む子午面内を貫く磁束と鎖交されるように巻回した制動巻線224をさらに有している。
 図7は、第1の回転子22の周方向の一部を子午面に沿って切断したイメージである。磁極222の中央を含む子午面内を貫く磁束が鎖交するように制動巻線224を巻回するには、例えば、図7に示すように、磁極中央を含む子午面に導体を巻回すればよい。図7の例では、制動巻線224は、肉抜き部223の最も深く肉抜きされた部分(コア221の内周面)と、コア221の径方向の外周面とに巻回される。
 制動巻線224により追加的に発生する減衰係数をCと記すと、第1の回転子22の伝達関数は次式(10)で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000010
 これに加えて、本実施形態では、第3の実施形態と同様に肉抜きしてJを小さくしているので、次式(11)のように伝達関数は係数n12で近似される。すなわち、第1の回転子22は第2の回転子23の角度に遅れなく追従することができるので、より確実に脱調を抑制することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000011
(作用、効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1において、第1の回転子22は、磁極222の中央を含む子午面内を貫く磁束と鎖交するように巻回した制動巻線224をさらに有する。
 このようにすることで、可変速動力装置1は、第3の実施形態よりもさらに脱調し難くなる。
<第5の実施形態>
 次に、本開示の第5の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。本実施形態では、出力軸は第2の回転子に接続される。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(可変速動力装置の機能構成)
 図8は、本開示の第5の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 図8に示すように、本実施形態に係る可変速動力装置1は、第2の実施形態に係る構成に加えて、第1電動機5をさらに備えている。第1電動機5は、回転子51(第3の回転子)と、電気線52とを有している。なお、第1電動機5は、たとえば誘導電動機である。第1電動機5は、同期機2と同期速度が等しくなるように、または、同期機2と極数が等しくなるように構成される。
 第1電動機5の回転子51は、同期機2の第1の回転子22と機械的に接続される。
 電気線52は、同期機2の電機子巻線212と電気的に並列に接続される。
(第1電動機及び電力変換器の動作)
 第3~第4の実施形態では、第1の回転子22の肉抜き部223及び制動巻線224により、第1の回転子22の運動の減衰比を改善した。しかし、第1の回転子22は同期機2の内部にあるので場所の制約から、肉抜き部223や、制動巻線224だけでは十分に改善できない場合もある。
 このため、本実施形態では、第3~第4の実施形態に係る肉抜き部223及び制動巻線224の働きを外部に配置した第1電動機5に置き換える。第1電動機5は電力変換器4と接続されて、電力変換器4が同期機2に供給する三相交流電力の一部を消費する。第1電動機は誘導機の性質から電力の周波数により決まる第1電動機5の同期速度と、第1電動機5の回転速度の差に比例した減衰力を発生する。第1電動機5は第1の回転子22に接続されるので、発生した減衰力は第1の回転子にも減衰力として作用する。このため、第1の回転子の減衰係数Cを大きくしたのと同じ効果が得られる。
 同期機2の第1の回転子22は外部の負荷に接続されないので、負荷はかからない。したがって、第1電動機5は小型で充分である。
(作用効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1は、同期機2の第1の回転子22と極数が同数であり、第1の回転子22と機械的に接続される回転子51(第3の回転子)と、同期機2の電機子巻線212と電気的に並列に接続される電気線52と、を有する第1電動機5をさらに備える。
 このようにすることで、第1角度推定部32の精度が向上する。この結果、可変速動力装置1は、より急激な負荷変化に追従可能となり、脱調が回避できる範囲を広げることができる。つまり、さらに強固に脱調を抑制することができる。
<第6の実施形態>
 次に、本開示の第6の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。本実施形態では、出力軸は第2の回転子に接続される。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(可変速動力装置の機能構成)
 図9は、本開示の第6の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 図9に示すように、本実施形態に係る可変速動力装置1は、第2の実施形態に係る構成に加えて、減速機6をさらに備えている。
 減速機6は、同期機2の第1の回転子22と第2の回転子23とを接続する継手63を有している。継手63は、弾性継手または粘性継手である。また、減速機6は、第1ギア61及び第2ギア62を有している。第1ギア61は、同期機2の出力軸24と連結される。したがって、第1ギア61は、第2の回転子23と同じ速度で回転する。第2ギア62は、第1ギア61から伝達された同期機2の第2の回転子23の動力を、継手63にさらに伝達する。継手63は、第1の回転子22と軸64を介して連結される。これにより、第1の回転子22の角度は、第2の回転子23の角度に追従するようになる。減速機6の速度比を第1の回転子と第2の回転子の速度比と等しくすれば、定常的には減速機は無負荷で運転される。そして、両者に過渡的に速度差が生じたときに限り、粘弾性継手の働きによって、速度差に応じた減衰力が発生する。これは、第1の回転子22の減衰係数Cが大きくなったのと同じ効果を与える。これにより、第1の回転子22が第2の回転子23に対して振動することを抑制することができる。これにより、第1角度推定部32において、第1の回転子22の角度を推定する精度を向上させることができる。
 なお、図9には、減速機6の各構成(第1ギア61、第2ギア62、継手63、及び、継手63と第1の回転子22とを連結する軸64)を同期機2の外部に配置する例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、減速機6は、例えば遊星歯車などにより構成され、同期機2の内部に配置される構成であってもよい。
(作用効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1は、同期機に接続される減速機6をさらに備える。減速機6は、同期機2の第1の回転子22及び前記第2の回転子を接続する継手63を有する。
 このようにすることで、可変速動力装置1は、同期機2の第1の回転子22が第2の回転子23に対して不規則に振動することを抑制することができる。これにより、第1角度推定部32において、第1の回転子22の角度を推定する精度を向上させることができる。
<第7の実施形態>
 次に、本開示の第7の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。本実施形態では、出力軸は第2の回転子に接続される。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(可変速動力装置の機能構成)
 図10は、本開示の第7の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 図10に示すように、本実施形態に係る可変速動力装置1は、第2の実施形態に係る構成に加えて、第2電動機7と、第2電力変換器8とをさらに備えている。
 第2電動機7は、回転子71(第4の回転子)を有している。回転子71は、同期機2の第1の回転子22と機械的に接続される。第5の実施形態の第1電動機5と同様に、第2電動機7は、たとえば小型の誘導電動機、または小型の同期電動機である。
 第2電力変換器8は、第2電動機7を駆動する電力の周波数を調整することにより、同期機2の第1の回転子の回転数に第2の回転子23の回転数が一致するよう第2電動機7に電力を供給する。さらに、第2電力変換器8は、同期機2を助勢するよう第2電動機7に電力を供給しても良い。
(第2電動機及び第2電力変換器の動作)
 図10に示すように、同期機2の第1の回転子22には、第2電動機7が接続されている。第2電動機7は、第2電力変換器8により電力が供給される。第2電力変換器8は、同期機2の第2の回転子23の角度の時間微分値から得る第2の回転子23の回転数[rps]にp12/2を乗じて、第2の回転子23の回転数が第1の回転子22の同期回転数となるよう第2電力変換器8の目標周波数を生成する。第2電力変換器8は、第1の回転子22の回転数が、同期回転数に一致するように第2電動機7を駆動する電力の周波数や位相を調整する。さらに、第2電力変換器8は、同期機2を助勢するよう第2電動機7に電力を駆動する電力の電圧を追加的に進相させても良い。
(作用効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1は、同期機2の第1の回転子22と機械的に接続される第2電動機7と、同期機2の第2の回転子23の速度に一致するように、第2電動機7を駆動する電力の周波数を調整する第2電力変換器8とをさらに備える。第2電力変換器8が第2電動機7に供給する電力は、第2電動機7および第1の回転子22が第2の回転子23に対して相対運動する場合には減衰力として作用し、この相対運動が制限される。さらに、第2電力変換器8と第2電動機7によって同期機2を助勢すると負荷の駆動能力が向上する。
 このようにすることで、可変速動力装置1は、同期機2の第1の回転子22が第2の回転子23に対して不規則に振動することを抑制することができる。これにより、第1角度推定部32において、第1の回転子22の角度を推定する精度を向上させることができる。この結果、可変速動力装置1は、より急激な負荷変化に追従可能となり、脱調が回避できる範囲を広げることができる。つまり、さらに強固に脱調を抑制することができる。
<第8の実施形態>
 次に、本開示の第8の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(可変速動力装置の機能構成)
 図11は、本開示の第8の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 図11に示すように、本実施形態に係る可変速動力装置1は、鎖交磁束推定部310を有さない。鎖交磁束推定部310は、第1の回転子22と第2の回転子23とによる誘起電圧の電気角に基づいて、電力変換器4でベクトル制御を実施した。本実施形態では、電力変換器4において、ベクトル制御に変えてV/f制御を用いることにより、誘起電圧の電気角の推定を不要とする。同期機の回転速度は駆動電力の周波数の同期速度に時間的に遅れをもって追従し、最終的に同期速度で整定することが知られている。本願の磁気ギアードモータも同期機に属すのでこの性質を有している。
 したがって、駆動電力の周波数の変更が時間的に急でないならば、磁気ギアードモータの回転は駆動電力の周波数から決まる同期速度に遅れながらも追従するので、速度調節は駆動電力の周波数により比較的簡単に達成できる。しかし、駆動電力の周波数を時間的に急に変更すると、回転の追従遅れが過大となり、脱調し、同期機本来の機能が失われる。
 磁気ギアードモータは、第1の回転子と第2の回転子を有するので、脱調の可能性はそれぞれにある。脱調は、駆動電力の電圧の電気角と回転子の電気角のオフセットが±90°を超えると発生する。そこで、それぞれの回転子の前記オフセットを比較し、オフセットが大きい側の回転子のオフセットが±90°を超えないように駆動電力の電圧を調節して脱調を回避する。第1角度センサ13により第1の回転子22の角度を計測する。誘起電圧角度推定部31は、第1角度センサ13により計測した値を、第1の回転子の極数pの1/2で除して第1の回転子の電気角を得る。同様に、誘起電圧角度推定部31は、第2角度センサ14により計測した値を第2の回転子の極数pで除して第2の回転子の電気角を得る。
 図12を用いて詳細に説明する。電力変換器4は、第1の回転子22の誘起電圧の電気角と第2の回転子23の誘起電圧の電気角を入力し、それぞれ、電圧の電気角に対するオフセット1とオフセット2とを算出する。オフセット1とオフセット2を比較し、絶対値が大きい方の値を最終オフセットと定め、最終オフセットに基づいて同期機2を駆動する電力の電圧の電気角θを調節し、同期機2の脱調を回避する。この調節は、例えば、図12に示すように、電力変換器4の内部の演算機能部41の負荷調整器411において、最終オフセットが予め定めた許容範囲(例えば[-30°,+30°]の範囲)内であれば、周波数指令の調整値はゼロである。最終オフセットが許容範囲を超えるときには、最終オフセットの絶対値が小さくなるように、最終オフセットに比例した値を調整値として周波数指令に加算するなどして調整する。
 電力の電圧の指令は、例えば、電力の周波数指令に基づいて予め設定した設定関数から定める。
(作用効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1において、電力変換器4は、第1の回転子22の電気角および第2の回転子23の電気角のうち、電圧の電気角とのオフセットの絶対値が大きい方に基づいてV/f制御を行い、同期機2を駆動する電力の周波数を調整する。
 本実施形態に係る可変速動力装置1は、例えば第1の実施形態に記載のベクトル制御を行うものと異なり、第1の回転子と第2の回転子とによる合成磁束の角度の推定が不要となるので、鎖交磁束推定部310の処理を省略することができる。緩やかな応答が求められる用途においては、本実施形態に係る可変速動力装置1を採用することにより、より簡易な処理で脱調を抑制することが可能となる。本実施形態の特徴は、第1の回転子22と第2の回転子23のうちで、脱調に近い側の回転子の誘起電圧の電気角に基づき駆動電力の特に周波数を調節する処である。なお、他の実施形態では、第1の回転子22の誘起電圧の電気角を基準とするベクトル制御器と第2の回転子23の誘起電圧の電気角を基準とするベクトル制御器とを有し、脱調に近い側の回転子のベクトル制御器を用いてベクトル制御を行う構成であっても良い。
<第9の実施形態>
 次に、本開示の第9の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
 図13は、本開示の第9の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。 図13に示すように、本実施形態に係る制御装置3は、誘起電圧ベクトル推定部312を有している。
 誘起電圧ベクトル推定部312は、同期機2を駆動する電力線11の電圧及び電流に基づいて、誘起電圧ベクトルの角度を推定して誘導電圧の電気角を出力する。算出した誘起電圧の電気角は、電力変換器4に出力される。
 図14は、第9の実施形態に係る電力変換器の機能構成を示す図である。
 図14に示すように、本実施形態に係る電力変換器4は、演算機能部41に、ベクトル制御器に加え負荷調整器411を有する。負荷調整器411の具体的な構成は、第8の実施形態と同様である。
 演算機能部41は、負荷調整器411において、電圧の電気角θと、負荷軸(本実施形態においては、第2の回転子23)に設けられた第2角度センサ14が測定した角度(第2角度)のオフセットに基づいて電力の周波数を調整し、負荷軸の脱調を防ぐ。 
(制御装置の動作)
 次に、本実施形態に係る制御装置3の動作について詳細に説明する。誘起電圧ベクトル推定部312は、電機子に発生する誘起電圧ベクトルを、電圧ベクトル及び電流ベクトルと、電機子のインピーダンスとから推定する。電流ベクトルと電圧ベクトルは、第2の回転子の電気角θから、それぞれ式(12)、式(13)で算出する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000012
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000013
 ここで、iは同期機2に供給する交流の相電流、vは同期機2に供給する交流の相電圧、である。記号の「・」は複素数を示している。jは虚数単位である。
 同期機2は一般的に三相交流で駆動される。三相間に違いがあるときには、電圧ベクトルと電流ベクトルとはそれぞれ式(14)、式(15)で計算する。三相はU相、V相、W相であり、V相の電気角とW相の電気角は、同じ時刻のU相の電気角から、それぞれ120°(2π/3)と240°(4π/3)を差し引いたものである。このような相間の違いを考慮するものも本実施形態の範囲に含まれる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000014
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000015
 または、簡単に瞬時値から次式(16)、(17)で計算してもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000016
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000017
 電機子のインピーダンスをZ^・(Zの上部に「・」を付したもの。以下、同様。)で表すことにすると、誘起電圧ベクトルE^・は、電圧ベクトルV^・と電流ベクトルI^・から以下の式(18)で計算できる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000018
 ここで、インピーダンスは抵抗RとインダクタンスLから次式(19)で計算する。RとLの値は予め定める。ωは、例えば、調整後の周波数指令の角周波数である。この他に、ωとして、第1の回転子22の電気角周波数、第2の回転子23の電気角周波数、誘起電圧の電気角周波数を用いても良い。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000019
 図15は、本開示の第8の実施形態に係る誘起電圧ベクトルの一例を示す図であり、負荷運転状態を表している。
 図15は、第1の回転子22の影響により誘起電圧ベクトルの角度が、第2の回転子23の電気角に対してオフセットする様子を表している。図15は、第1の回転子22の誘起電圧ベクトルE^・と第2の回転子23の誘起電圧ベクトルE^・の和である誘起電圧ベクトルE^・の電気角が実軸となるよう描いている、δは電圧ベクトルV^・と誘起電圧ベクトルE^・の成す角度であり、負荷角と呼ばれる値である。εは誘起電圧E^・と第2の回転子23の誘起電圧の成す角度である。
 負荷運転状態において、磁気ギアードモータの誘起電圧E^・の角度は、一般に、第1の回転子の角度だけから決まるものでも、第2の回転子の角度だけから決まるものでもない。ベクトル制御を行うには、誘起電圧の角度が必要であり、本願の第1の実施形態では、第1の回転子の角度を計測し、第2の回転子の角度を計測し、誘起電圧E^・の電気角を推定した。第1の実施形態では、回転子の角度の計測が必要であった。これに対し、本実施形態は、電圧ベクトルV^・と電流ベクトルI^・の計測値から、式(18)に基づき誘起電圧E^・の電気角を求める。本実施例では、角度センサが不要となることが特徴である。
 第8の実施形態で述べたように、電圧ベクトルV^・に対する負荷軸、例えば第2の回転子、のオフセットδ+εが±90°(±π/2)の範囲を超えると負荷軸は脱調する。ベクトル制御は、磁気ギアードモータに供給する電力を調節するものであり、第1の回転子または第2の回転子への配分を動的には調節することができない。そこで、電力変換器4は、図14のように、第8の実施形態で述べた負荷調整器411を加えて、負荷軸のオフセットδ+εが例えば±45°などの予め定めた許容範囲となるよう、周波数指令を調節する。
 負荷調整器411は、周波数指令を入力し、調整後の周波数指令を出力する。速度制御器は、負荷軸の電気角周波数が調整後の周波数指令に一致するよう、例えば比例積分制御によりトルク指令を出力する。ここで言うトルク指令とは、誘起電圧の角周波数で回転する仮想的な回転軸のトルクである。ベクトル制御器は、誘起電圧の電気角に基づき周波数指令と電圧指令を調節して、磁気ギアードモータを迅速に整定させる。整定状態では、電力変換器4が供給した電力は損失分を除いて全て負荷軸で消費される。
(作用効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1において、誘起電圧ベクトル推定部312は、同期機2を駆動する電圧及び電流と、に基づいて、誘起電圧ベクトルを推定し、誘起電圧の電気角を出力する。
 これにより、回転子の角度計がなくても、可変速動力装置1においてベクトル制御を実施することできる。
<第10の実施形態>
 次に、本開示の第10の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
 図16は、本開示の第10の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。
 図16に示すように、本実施形態に係る誘起電圧ベクトル推定部312は、同期機2を駆動する電力の電圧、電流及び電圧の電気角周波数に基づいて、負荷角δを推定する。本実施形態では、第2の回転子23の第2角度センサ14は不要である。
(制御装置及び電力変換器の動作)
 第9の実施形態では、第2の回転子23の角度を測るための第2角度センサ14が必要であり、センサや配線のコストがかかった。一方、本実施形態は、角度を測るセンサや配線のコストを不要とする。具体的に、本実施形態では、電圧ベクトルを基準にして、電流ベクトルと誘起電圧ベクトルを計算する。
 図17は、本開示の第10の実施形態に係る電力変換器の動作の例を説明するための図である。
 電圧は電力変換器4の内部にある電圧の角度指令に一致するように電力変換器4が出力する。よって、電圧の電気角は電圧の角度指令θをそのまま用いる。電圧の振幅は電力変換器4の内部にある指令値|V|に従うとして、実軸をθにとると、電圧ベクトルは次式(21)で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000020
 電圧ベクトルの電気角θを基準にすると、電流ベクトルは次式(22)のように表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000021
 図18は、本開示の第10の実施形態に係る負荷角の一例を示す図である。
 誘起電圧ベクトルE^・は、第8の実施形態と同様に、電圧ベクトルV^・と電流ベクトルI^・から、上記した式(18)で計算できる。式(19)におけるインピーダンスの計算には電圧Vの電気角周波数ωを用いる。本実施形態では、電圧ベクトルを基準に表しているので、図18に示すように、誘起電圧ベクトルの電気角は負荷角δである。したがって、図17に示すように、電力変換器4は、演算機能部41において負荷角δを計算するのではなく、制御装置3から入力された誘起電圧ベクトルの電気角(負荷角δ)を使って周波数指令値の修正値を算出する。
(作用効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1において、誘起電圧ベクトル推定部312は、同期機2を駆動する電力の電圧、電流及び電圧の電気角周波数に基づいて、負荷角δを推定する。
 このようにすることで、可変速動力装置1は、第1の回転子22の第1角度の測定を不要とすることができる。これにより、第1角度センサ13や配線のコストを削減することができる。
<第11の実施形態>
 次に、本開示の第11の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
 図19は、本開示の第11の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。
 図19に示すように、本実施形態に係る制御装置3は、インピーダンス変更部33をさらに有している。なお、図19には、第10の実施形態の構成(図16)にインピーダンス変更部33を加えた態様が例示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、第9の実施形態の構成(図13)にインピーダンス変更部33を加えた態様であってもよい。
 インピーダンス変更部33は、同期機2の有効電力と、無効電力と、電圧の電気角周波数ωとに基づいて、電機子のインピーダンスの値を変更する。電気角周波数は電圧に限らない。例えば、電流、第1の回転子、第2の回転子の電気角周波数は、整定状態では電圧の電気角周波数に一致する。電圧の電気角周波数は、これらの電気角周波数で代用しても良い。
 また、本実施形態に係る誘起電圧ベクトル推定部312は、同期機2を駆動する電流と、電圧の電気角と、変更されたインピーダンスの値とに基づいて、誘起電圧ベクトルを推定する。
(制御装置の動作)
 誘起電圧ベクトルの推定には電機子のインピーダンスを用いる。このインピーダンスは、一定値ではなく、第1の回転子22と第2の回転子23の運動や、磁気飽和により同期機2内部の磁気回路の磁束の通り易さ(パーミアンス)により変動する。本実施形態では、同期機2の有効電力、無効電力、及び回転数に応じて、インピーダンスの値を変更する。
 インピーダンスの初期値は、事前の試験などで設定する。電圧Vの電気角周波数は、第2の回転子の電気角周波数で代用してもよい。
 有効電力Pとは、負荷を駆動する動力となる電力であり、電圧ベクトルV^・と電流ベクトルI^・から次式(23)で計算する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000022
 ここに、記号*は共役な複素数を、Reは複素数の実数部を表す。
 そして、無効電力Qとは、負荷の駆動ではなく主に磁気エネルギーとして保存される電力であり次式(24)で計算する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000023
 式(24)において、Imは複素数の虚数部を表す。
(作用効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1は、同期機2の有効電力と、無効電力と、電圧の電気角周波数とに基づいてインピーダンスの値を変更するインピーダンス変更部33をさらに有している。また、誘起電圧ベクトル推定部312は、同期機2を駆動する電流と、電圧の電気角と、変更したインピーダンスの値とに基づいて誘起電圧ベクトルを推定する。
 このようにすることで、可変速動力装置1は、インピーダンスの変化を誘起電圧ベクトルの計算に反映することができるので、より精度よく誘起電圧ベクトルを推定することができる。
<第12の実施形態>
 次に、本開示の第12の実施形態に係る可変速動力装置1について説明する。
 上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
 図20は、本開示の第12の実施形態に係る可変速動力装置の機能構成を示す図である。
 本実施形態に係る制御装置3は、第9の実施形態に係る制御装置3を改良したものである。具体的には、図20に示すように、本実施形態に係る制御装置3は、誘起電圧ベクトル推定部312に加えて、位相補償部314をさらに有している。
 位相補償部314(位相補償器)は、第2の回転子23の電気角に基づいて、第1の回転子22の慣性を位相補償する位相補償信号を生成する。
 また、本実施形態に係る誘起電圧ベクトル推定部312は、同期機2を駆動する電力の電圧、電流及び電圧の電気角周波数に基づいて、誘起電圧の電気角に加えて第1の回転子22の電気角θe1を推定する。
(制御装置の動作)
 磁気ギアードモータは、第1の回転子22と第2の回転子23を有する。二つの回転子に対し、電機子は共通である。このため、例えば第2の回転子23に電機子から動力を与えようとしても、その一部は第1の回転子22の運動を励起し、第1の回転子22は振動する。本実施形態は、第1の回転子22に減衰力を与えて、第1の回転子22の振動を抑制することが狙いである。
 第1の回転子22の誘起電圧ベクトルE^・は、整定状態では電圧ベクトルV^・に一致する。しかし、過渡状態では第1の回転子22もそれ自身の慣性を加速または減速するために動力を使うので、両者は一致しない。そこで、式(25)から第1の回転子22の誘起電圧ベクトルE^・を推定する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000024
 第2の回転子23の誘起電圧ベクトルE^・は、大きさAE2を事前に試験して取得してあるものとする。電圧ベクトルの角度θ、電流ベクトルの角度θ、第2の回転子23の電気角θe2の計測値を用いると、第1の回転子22の誘起電圧ベクトルは、式(26)で表すことができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000025
 従って、誘起電圧ベクトルの角度、すなわち、第1の回転子22の電気角θe1が式(27)により得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000026
 位相補償部314は、第1の回転子22の電気角θe1に基づき、補償トルクを演算し、出力する。補償トルクTは、例えば、式(28)のように、第1の回転子22の速度に比例して発生させる。kD、τDは調整定数である。sはラプラス演算子である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000027
(電力変換器の動作)
 図21は、本開示の第12の実施形態に係る電力変換器の機能構成を示す図である。 図21に示すように、電力変換器4は補償トルクを入力し、演算機能部41において、速度制御器が出力するトルク指令からトルク補償信号を差し引いて、補償後のトルク指令を演算する。ベクトル制御器は補償後のトルク指令に従って、電力の周波数と電圧を調節する。
(作用効果)
 以上のように、本実施形態に係る可変速動力装置1において、誘起電圧角度推定部31は、同期機2を駆動する電力の電圧、電流及び電圧の電気角周波数に基づいて、誘起電圧の電気角に加えて第1の回転子22の電気角θe1を推定する。
 このようにすることで、可変速動力装置1は、同期機2の脱調を抑制しつつ、第1の回転子22の振動等を減衰させることができる。
<ハードウェア構成>
 図22は、本開示の少なくとも一の実施形態に係る可変速動力装置を構成する機器のハードウェア構成の一例を示す図である。
 以下、図22を参照しながら、可変速動力装置1を構成する制御装置3、電力変換器4、及び第2電力変換器8のハードウェア構成の一例について説明する。
 図22に示すように、コンピュータ1000は、プロセッサ1001、主記憶装置1002、補助記憶装置1003、インタフェース1004を備える。
 上述の各実施形態に記載の制御装置3、電力変換器4、及び第2電力変換器8は、それぞれコンピュータ1000に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムを補助記憶装置1003から読み出して主記憶装置1002に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ1001は、プログラムに従って、各種処理に用いる記憶領域を主記憶装置1002に確保する。また、プロセッサ1001は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置1003に確保する。
 プログラムは、コンピュータ1000に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、補助記憶装置1003に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ1000は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1001によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
 補助記憶装置1003の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置1003は、コンピュータ1000のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1004または通信回線を介してコンピュータ1000に接続される外部記憶装置1010であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1000に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1000が当該プログラムを主記憶装置1002に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置1003及び外部記憶装置1010は、一時的でない有形の記憶媒体である。
 以上のとおり、本発明に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
<付記>
 上述の実施形態に記載の可変速動力装置及び制御方法は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の第1の態様によれば、可変速動力装置(1)は、電機子巻線(212)が設けられて電機子を形成する固定子(21)と、磁極(222)を有する第1の回転子(22)と、第1の回転子(22)と固定子(21)との間に設けられて負荷を駆動する第2の回転子(23)と、を有する同期機(2)と、同期機(2)を駆動する電流及び電圧に基づいて、電機子に発生する誘起電圧の電気角を推定する誘起電圧ベクトル推定部(312)と、推定された誘起電圧の電気角に基づいて、同期機(2)を駆動する電力の周波数を調整する電力変換器(4)と、を備える。
(2)本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る可変速動力装置(1)において、誘起電圧ベクトル推定部(312)は、同期機(2)を駆動する電流及び電圧と、第2の回転子(23)の電気角とに基づいて誘起電圧ベクトルを推定し、第2の回転子(23)の電気角に対する誘起電圧ベクトルのオフセットを求め、第2の回転子(23)の電気角と、推定された誘起電圧ベクトルのオフセットに基づいて、誘起電圧の電気角を推定する。
(3)本開示の第3の態様によれば、第2の態様に係る可変速動力装置(1)において、誘起電圧ベクトル推定部(312)は、第2の回転子(23)の電気角と、誘起電圧ベクトルとに基づいて、誘起電圧ベクトルのオフセットを位相補償する位相補償信号を生成する位相補償部(314)をさらに有し、生成した位相補償信号にさらに基づいて、誘起電圧の電気角を推定する。
(4)本開示の第4の態様によれば、第1の態様に係る可変速動力装置(1)において、誘起電圧ベクトル推定部(312)は、同期機(2)を駆動する電流及び電圧と、電圧の電気角周波数とに基づいて誘起電圧ベクトルを推定し、誘起電圧ベクトルの電圧のベクトルに対する角度を誘起電圧の電気角として推定する。
(5)本開示の第5の態様によれば、第2から第4の何れか一の態様に係る可変速動力装置(1)は、同期機(2)の有効電力と、無効電力と、前記電圧の電気角周波数とに基づいて、電機子のインピーダンスの値を変更するインピーダンス変更部(33)をさらに備え、誘起電圧ベクトル推定部(312)は、更新したインピーダンスの値にさらに基づいて、誘起電圧ベクトルを推定する。
(6)本開示の第6の態様によれば、電機子巻線(212)が設けられて電機子を形成する固定子(21)と、磁極(222)を有する第1の回転子(22)と、第1の回転子(22)と固定子(21)との間に設けられて負荷を駆動する第2の回転子(23)と、を有する同期機(2)の制御方法は、同期機(2)を駆動する電流及び電圧に基づいて、電機子に発生する誘起電圧の電気角を推定するステップと、推定した誘起電圧の電気角に基づいて、同期機(2)を駆動する電力の周波数を調整するステップと、を有する。
 本開示に係る可変速動力装置及び制御方法によれば、同期機の脱調を抑制することができる。
1 可変速動力装置
11 電力線
13 第1角度センサ
14 第2角度センサ
2 同期機
21 固定子
211 歯
212 電機子巻線
213 磁石
22 第1の回転子
221 コア
222 磁極
223 肉抜き部
224 制動巻線
23 第2の回転子
231 磁極
232 非磁性部
24 出力軸
3 制御装置
31 誘起電圧角度推定部
310 鎖交磁束推定部
311 算出部
312 誘起電圧ベクトル推定部
314 位相補償部
315 負荷角推定部
32 第1角度推定部
33 インピーダンス変更部
4 電力変換器
41 演算機能部
5 第1電動機
51 回転子(第3の回転子)
52 電気線
6 減速機
61 第1ギア
62 第2ギア
63 継手
64 軸
7 第2電動機
71 回転子(第4の回転子)
8 第2電力変換器
1000 コンピュータ
1001 プロセッサ
1002 主記憶装置
1003 補助記憶装置
1004 インタフェース
1010 外部記憶装置

Claims (6)

  1.  電機子巻線が設けられて電機子を形成する固定子と、磁極を有する第1の回転子と、前記第1の回転子と前記固定子との間に設けられて負荷を駆動する第2の回転子と、を有する同期機と、
     前記同期機を駆動する電流及び電圧に基づいて、前記電機子に発生する誘起電圧の電気角を推定する誘起電圧ベクトル推定部と、
     推定した前記誘起電圧の電気角に基づいて、前記同期機を駆動する電力の周波数を調整する電力変換器と、
     を備える可変速動力装置。
  2.  前記誘起電圧ベクトル推定部は、
     前記同期機を駆動する前記電流及び前記電圧と、前記第2の回転子の電気角とに基づいて誘起電圧ベクトルを推定し、前記第2の回転子の電気角に対する前記誘起電圧ベクトルのオフセットを求め、
     前記第2の回転子の電気角と、前記誘起電圧ベクトルのオフセットとに基づいて、前記誘起電圧の電気角を推定する、
     請求項1に記載の可変速動力装置。
  3.  前記誘起電圧ベクトル推定部は、前記第2の回転子の電気角と、前記誘起電圧ベクトルとに基づいて、前記誘起電圧ベクトルのオフセットを位相補償する位相補償信号を生成する位相補償部をさらに有し、
     生成した前記位相補償信号にさらに基づいて、前記誘起電圧の電気角を推定する、
     請求項2に記載の可変速動力装置。
  4.  前記誘起電圧ベクトル推定部は、
     前記同期機を駆動する前記電流及び前記電圧と、前記電圧の電気角周波数とに基づいて誘起電圧ベクトルを推定し、
     前記誘起電圧ベクトルの前記電圧のベクトルに対する角度を前記誘起電圧の電気角として推定する、
     請求項1に記載の可変速動力装置。
  5.  前記同期機の有効電力と、無効電力と、前記電圧の電気角周波数とに基づいて、前記電機子のインピーダンスの値を変更するインピーダンス変更部をさらに備え、
     前記誘起電圧ベクトル推定部は、更新した前記インピーダンスの値にさらに基づいて、前記誘起電圧ベクトルを推定する、
     請求項2から4の何れか一項に記載の可変速動力装置。
  6.  電機子巻線が設けられて電機子を形成する固定子と、磁極を有する第1の回転子と、前記第1の回転子と前記固定子との間に設けられて負荷を駆動する第2の回転子と、を有する同期機の制御方法であって、
     前記同期機を駆動する電流及び電圧に基づいて、前記電機子に発生する誘起電圧の電気角を推定するステップと、
     推定した前記誘起電圧の電気角に基づいて、前記同期機を駆動する電力の周波数を調整するステップと、
     を有する制御方法。
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