WO2023079724A1

WO2023079724A1 - 歯列矯正機構

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Publication number: WO2023079724A1
Application number: PCT/JP2021/040921
Authority: WO
Inventors: 元彦杉山; 勝石亀
Original assignee: ＳｈｅｅｐＭｅｄｉｃａｌ株式会社
Priority date: 2021-11-08
Filing date: 2021-11-08
Publication date: 2023-05-11

Abstract

拡大床を確実に固定することが可能な歯列矯正機構（１０）は、少なくとも奥歯を覆うように装着されるマウスピース（２０）と、左右の床部（３１，３１）及びこれら左右の床部（３１，３１）を介して奥歯（５）の左右の位置を拡大する拡大ねじ（３２）を有する拡大床（３０）と、を備える。拡大床（３０）は、マウスピース（２０）が装着される部位に着脱自在に装着されるように構成され、マウスピース（２０）の左右の内側にそれぞれ突出するように設けられるとともに、マウスピース（２０）の装着時に左右の奥歯（５）の歯冠部に対応する部位にそれぞれ突出部（２３）が設けられる一方、左右の床部（３１，３１）における左右の奥歯（５）の歯冠部に対応する部位に嵌合凹部（３３）がそれぞれ形成され、複数の突出部（２３）にそれぞれ嵌合凹部（３３）が嵌り込んで係止されるように構成され、突出部（２３）の突出面が曲面形状に形成されている。

Description

歯列矯正機構

　本発明は、歯列部を矯正する歯列矯正機構に関する。

　従来、歯列部を矯正する装置には、緩徐拡大矯正装置がある。この緩徐拡大矯正装置には、例えば拡大床タイプの装置がある。この拡大床タイプの装置は、左右の床部と、これら左右の床部を上顎歯列部又は下顎歯列部に固定するためのワイヤと、左右の床部の中央に埋設された拡大ねじとを備えている。このような拡大床タイプの装置は、上記拡大ねじを回転させることで、床部を左右にスライドさせ、側方の上顎歯列部又は下顎歯列部に拡がる力を作用させている（例えば、特許文献１参照）。

特許第４３３２６４１号公報

　しかしながら、上述した特許文献１に記載された従来の拡大床タイプの装置では、左右の床部を上顎歯列部又は下顎歯列部に固定するためにワイヤを用いているため、装置を歯列に装着するのに時間がかかるとともに、装置が上顎歯列部又は下顎歯列部から外れることがあるという問題がある。

　本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、拡大装置を確実に固定することが可能な歯列矯正機構を提供することを課題としている。

　かかる課題を達成するために、請求項１に記載の発明は、少なくとも奥歯を覆うように装着されるマウスピースと、左右の床部及びこれら左右の床部を介して前記奥歯の左右の位置を拡大する拡大ねじを有する拡大装置と、を備え、前記拡大装置は、前記マウスピースが装着される部位に着脱自在に装着されるように構成され、前記マウスピースの左右の内側にそれぞれ突出するように設けられるとともに、前記マウスピースの装着時に前記左右の奥歯の歯冠部に対応する部位にそれぞれ突出部が設けられる一方、前記左右の床部における前記左右の奥歯の歯冠部に対応する部位に嵌合凹部がそれぞれ形成され、前記複数の突出部にそれぞれ前記嵌合凹部が嵌り込んで係止されるように構成され、前記突出部の突出面が曲面形状に形成されていることを特徴とする。

　また、請求項２に記載の発明は、左右の床部及びこれら左右の床部を介して前記奥歯の左右の位置を拡大する拡大ねじを有する拡大装置と、前記左右の奥歯の歯冠部の内側にそれぞれ接着剤で取り付けられるアタッチメントと、を備え、前記左右のアタッチメントにそれぞれ嵌り込んで係止される嵌合凹部が前記拡大装置の左右の床部に設けられ、前記アタッチメントの突出面が曲面形状に形成されていることを特徴とする。

　また、請求項３に記載の発明は、請求項１又は２に記載の構成に加え、前記嵌合凹部は、断面円弧状に形成されていることを特徴とする。

　請求項１に記載の発明によれば、マウスピースの左右の内側にそれぞれ突出するように設けられるとともに、マウスピースの装着時に左右の奥歯の歯冠部に対応する部位にそれぞれ突出部が設けられる一方、左右の床部における左右の奥歯の歯冠部に対応する部位に嵌合凹部がそれぞれ形成され、複数の突出部にそれぞれ嵌合凹部が嵌り込んで係止されるように構成され、突出部の突出面が曲面形状に形成されていることにより、左右の床部を介して奥歯の左右の位置を拡大するときの押圧力で複数の突出部にそれぞれ嵌合凹部が強固に嵌り込んで係止されるため、拡大装置を確実に固定することが可能となる。

　また、請求項２に記載の発明によれば、左右の奥歯の歯冠部の内側にそれぞれ接着剤で取り付けられるアタッチメントを備え、これら左右のアタッチメントにそれぞれ嵌り込んで係止される嵌合凹部が拡大装置の左右の床部に設けられ、アタッチメントの突出面が曲面形状に形成されていることにより、左右の床部を介して奥歯の左右の位置を拡大するときの押圧力で複数のアタッチメントにそれぞれ嵌合凹部が強固に嵌り込んで係止されるため、拡大装置を確実に固定することが可能となる。

　また、請求項３に記載の発明によれば、嵌合凹部は、断面円弧状に形成されていることにより、突出面が曲面形状のアタッチメントに断面円弧状の嵌合凹部が隙間なく嵌合されるため、拡大装置をより確実に固定することが可能となる。

本発明の第１実施形態に係る歯列矯正機構を上顎歯列部に設置した状態を示す下面図である。図１のＡ部拡大図である。図２のＢ－Ｂ線断面図である。第１実施形態に係る歯列矯正機構の突出部を示す拡大正面図である。図４のＣ－Ｃ線断面図である。図４のＤ－Ｄ線断面図である。同第１実施形態に係る歯列矯正機構の突出部の第１変形例を示す拡大正面図である。同第１実施形態に係る歯列矯正機構の突出部の第２変形例を示す拡大断面図である。本発明の第２実施形態に係る歯列矯正機構を上顎歯列部に設置した状態を示す下面図である。図９のＥ部を示す拡大図である。図１０のＦ－Ｆ線断面図である。

　以下、本発明の各実施形態について説明する。
［発明の第１実施形態］
　図１～図５は、本発明の第１実施形態を示す。なお、第１実施形態は、口腔内の上顎歯列部にマウスピース及び拡大装置を装着した例である。

　図１は、本発明の第１実施形態に係る歯列矯正機構を上顎歯列部に設置した状態を示す下面図である。図２は、図１のＡ部拡大図である。図３は、図２のＢ－Ｂ線断面図である。図４は、第１実施形態に係る歯列矯正機構の突出部を示す拡大正面図である。図５は、図４のＣ－Ｃ線断面図である。図６は、図４のＤ－Ｄ線断面図である。

　本実施形態の歯列矯正機構１０は、図１に示すように、口腔１内の例えば上顎歯列部２に装着して、上顎歯列部２の叢生状態を矯正するものである。歯列矯正機構１０は、マウスピース２０、拡大装置としての拡大床３０を有している。

　本実施形態のマウスピース２０は、透明な薄片で徐々に歯列を矯正すべき方向、すなわち個々の歯を整列すべき方向に移動させる形状に成型した成型物（アライナー）であり、複数段階的に用意して、それらを定期的に交換することにより矯正治療を進めていくものである。

　マウスピース２０は、上顎歯列部２の全ての歯、すなわち上顎歯列部２の前歯３、犬歯４及び奥歯５を覆うように形成された樹脂製のマウスピースであり、透明でかつ前歯３、犬歯４及び奥歯５を覆って所定の形状を保持する硬度を有している。マウスピース２０は、全体が弾性を有する樹脂材料で一体成形されている。具体的に、上記樹脂材料は、例えばポリウレタン等のウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びアクリル樹脂等から選択される。

　また、マウスピース２０は、上顎歯列部２の歯列弓（アーチ）に沿った形状に形成されて前歯３、犬歯４及び奥歯５の歯冠部を覆って保持する本体部２１と、当該本体部２１から歯肉６側に位置する歯肉部２２とを有している。

　ここで、前歯３は、切歯であって、左右の中切歯、左右の側切歯を備える。奥歯５は、臼歯であって、複数の小臼歯、複数の大臼歯を備える。

　マウスピース２０は、その左右の内側（舌側）のそれぞれに、複数の突出部２３が内側に向けて突出するように一体に成形されている。なお、突出部２３は、本体部２１とは別に成形し、突出部２３を本体部２１に接着するようにしてもよい。本実施形態では、マウスピース２０の左右の内側にそれぞれ２つ設けられている。これらの突出部２３は、マウスピース２０の装着時に左右の奥歯５、例えば第１小臼歯、第１大臼歯の歯冠部の内側に対応する部位にそれぞれ設けられている。複数の突出部２３には、後述するようにそれぞれ拡大床３０の床部の外周縁に形成された嵌合凹部が嵌り込むことにより、マウスピース２０を介して拡大床３０が左右の奥歯５の歯冠部の内側に係止されるように構成されている。

　複数の突出部２３は、図２～図４に示すようにそれぞれ突出面が曲面形状であって、中空に形成されて曲面部２３ａを有している。複数の突出部２３は、図４に示す左右の奥歯５の歯軸Ｘと直交する方向に延びる横長に形成されている。具体的には、複数の突出部２３は、図４～図６に示すようにそれぞれ半楕円球状に形成されている。複数の突出部２３は、歯軸Ｘの方向と同一方向の短軸と、歯軸Ｘと直交する方向の長軸を有している。

　拡大床３０は、図１に示すように左右の床部３１，３１と、拡大ねじ３２とを備える。左右の床部３１，３１は、それぞれプラスチックによって作製されている。左右の床部３１，３１には、それぞれ外周縁に複数の突出部２３に対応して嵌合凹部３３が複数設けられている。具体的には、左右の嵌合凹部３３は、拡大床３０の装着時に左右の床部３１，３１における左右の奥歯５の歯冠部に対応する部位となるようにそれぞれ形成され、複数の突出部２３にそれぞれ嵌り込んで係止されるように構成されている。左右の嵌合凹部３３は、それぞれ突出部２３の突出面と相対する側が断面円弧状に形成されている。

　拡大ねじ３２は、金属によって作製されて左右の床部３１，３１間に設置されている。拡大ねじ３２は、例えば専用の回転用工具を用いて回転させることで、左右の床部３１，３１を介して左右の奥歯５の位置を外側（頬側）に拡大するような押圧力を付与する。拡大ねじ３２の両側には、ガイド部３４，３４が設けられている。これらのガイド部３４，３４は、拡大ねじ３２を回転させたとき、左右の床部３１，３１が同一平面を保持して開くように案内する。左右の床部３１，３１は、拡大ねじ３２を回転させる前は互いに近接しており、最も幅が狭くなるようにしている。

　次に、本実施形態の歯列矯正機構１０の作用について説明する。

　まず、上顎歯列部２の前歯３、犬歯４及び奥歯５を本体部２１で覆うようにマウスピース２０を装着する。次いで、拡大床３０の左右の床部３１，３１の嵌合凹部３３をマウスピース２０の突出部２３に嵌め込んで係止する。すなわち、奥歯５の舌側における左右の歯冠部に対応して設けられた突出部２３にそれぞれ嵌合凹部３３を嵌め込むことで、マウスピース２０の奥歯５の左右の歯冠部間に拡大床３０を装着する。

　ここで、複数の突出部２３にそれぞれ嵌合凹部３３を対向させて位置決めし、拡大ねじ３２を回転操作することで、左右の床部３１，３１を外側（頬側）に拡大する。すると、床部３１，３１の嵌合凹部３３の中心位置と突出部２３の中心位置とが多少ずれたとしても、互いの曲面の一部同士が接触することができるようになり、拡大床３０をマウスピース２０に対して確実に固定することができる。これにより、マウスピース２０が口腔１内から抜け落ちにくくなる。

　また、マウスピース２０の突出部２３の突出面が曲面形状に形成され、左右の床部３１，３１の嵌合凹部３３が突出部２３の突出面と相対する側が断面円弧状に形成されているので、上記のように拡大床３０を確実に固定することができる他、拡大床３０を容易に装着することができる。

　なお、拡大床３０により奥歯５が矯正される際には、歯牙が拡大床３０の広がる方向と水平に移動せずに少し傾くこともある。そのような場合であっても、突出部２３と嵌合凹部３３との形状が互いに半楕円球状であるため、突出部２３の一部が確実に嵌合凹部３３の内部に入り込むことができる。そのため、拡大床３０による矯正が進んだとしても、マウスピース２０から拡大床３０が脱落しない効果も奏する。

　このように本実施形態の歯列矯正機構１０によれば、マウスピース２０の左右の内側にそれぞれ突出部２３が突出するように設けられるとともに、マウスピース２０の装着時に左右の奥歯５の歯冠部に対応する部位にそれぞれ突出部２３が設けられる一方、左右の床部３１，３１における左右の奥歯５の歯冠部に対応する部位に嵌合凹部３３がそれぞれ形成され、複数の突出部２３にそれぞれ嵌合凹部３３が嵌り込んで係止されるように構成され、突出部２３の突出面が曲面形状に形成されていることにより、左右の床部３１，３１を介して奥歯５の左右の位置を拡大するときの押圧力で複数の突出部２３にそれぞれ嵌合凹部３３が強固に嵌り込んで係止されるため、拡大床３０を確実かつ容易に固定することが可能となる。

　また、本実施形態によれば、嵌合凹部３３は、突出部２３の突出面と相対する側が断面円弧状に形成されていることにより、突出面が曲面形状の突出部２３に断面円弧状の嵌合凹部３３が接触する際に互いの中心位置がずれていても面接触で互いが押し付けられることになるため、拡大床３０をより確実かつ容易に固定することが可能となる。

　さらに、本実施形態によれば、突出部２３は、奥歯５の歯軸Ｘと直交する方向に延びる横長に形成されているため、突出部２３に嵌合凹部３３が嵌合すると、拡大床３０を一段と確実かつ容易に固定することが可能となる。

　なお、本実施形態では、マウスピース２０の第１小臼歯、第１大臼歯の歯冠部の内側に対応する部位に、それぞれ同一の半楕円球状の突出部２３を設けた例について説明したが、第１小臼歯、第１大臼歯の歯面の形状の相違に基づいて、第１小臼歯に対応する部位に設ける突出部２３と、第１大臼歯に対応する部位に設ける突出部２３の形状を変更するようにしてもよい。一般に、第１大臼歯の歯面が第１小臼歯の歯面よりも横長であることから、第１大臼歯に対応する部位に設ける突出部２３の方を横長の半楕円球状に形成することが望ましい。このように形成することで、拡大床３０を一段と強固に固定することが可能となる。

　また、本実施形態では、突出部２３を中空に形成した例について説明したが、突出部２３を中実に形成するようにしてもよい。この場合、マウスピース２０と一体に突出部２３を中実に形成するようにしてもよく、また中空の突出部２３の凹部に光を照射することで硬化する光重合コンポジットレジン等を埋め込んで中実に形成するようにしてもよい。これにより、突出部２３の強度が高まり、拡大床３０を一段と強固に固定することができる。これは、以下の変形例でも同様に適用可能である。
［発明の第１実施形態の第１変形例］
　図７には、本発明の第１実施形態の第１変形例を示す。

　図７は、同第１実施形態に係る歯列矯正機構の突出部の第１変形例を示す拡大正面図である。なお、前記第１実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して異なる構成及び作用について説明する。その他の実施形態及び変形例も同様である。

　前記第１実施形態の突出部２３は、半楕円球状に形成したが、第１変形例の突出部２４は、図７に示すように、ドーム（半球）状に形成されている。

　したがって、第１変形例では、突出部２４をドーム状に形成したことにより、前記第１実施形態と同様の作用、効果に加えて、突出部２４の成形が容易であり、拡大床３０を固定するための突出部２４を容易に設けることができる。その他の構成及び作用は、前記第１実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
［発明の第１実施形態の第２変形例］
　図８には、本発明の第１実施形態の第２変形例を示す。

　図８は、同第１実施形態に係る歯列矯正機構の突出部の第２変形例を示す拡大断面図である。

　本第２変形例の突出部２５は、図８に示すように、円錐台状に形成されている。突出部２５は、その突出面２５ａが面取りされてアール部２５ｂが形成されている。これにより、第２変形例の突出部２５も前記第１実施形態、その第１変形例と同様に嵌合面に角部が形成されておらず、曲面形状に形成されることとなる。

　したがって、第２変形例では、突出部２５を円錐台状に形成し、その突出面の角部を面取りして曲面状に形成したことにより、前記第１実施形態、その第１変形例と同様の作用、効果に加えて、突出部２５の周面が傾斜面に形成されているので、拡大床３０の嵌合凹部３３を円滑に嵌合させることができ、容易に拡大床３０を装着することができる。その他の構成及び作用は、前記第１実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
［発明の第２実施形態］
　図９～図１１には、本発明の第２実施形態を示す。

　図９は、本発明の第２実施形態に係る歯列矯正機構を上顎歯列部に設置した状態を示す下面図である。図１０は、図９のＥ部を示す拡大図である。図１１は、図１０のＦ－Ｆ線断面図である。

　本実施形態の歯列矯正機構１０Ａは、拡大床３０とアタッチメント２６とを有している。具体的には、図９～図１１に示すように、左右の奥歯５、例えば第１小臼歯、第１大臼歯の歯冠部の内側（舌側）にそれぞれアタッチメント２６が直接取り付けられている。これらのアタッチメント２６は、歯と同色であり、例えば光を照射することで硬化する光重合コンポジットレジン等を用いて形成される。このアタッチメント２６は、成形テンプレート及び光を照射する光重合用光照射装置を用い、光重合コンポジットレジンを硬化させることで形成される。

　これらのアタッチメント２６は、左右の奥歯５の歯冠部の内側に接着剤により固定され、この接着剤には、例えばブラケット用ボンディング剤が用いられる。具体的には、最初にテンプレート（薄く柔らかい樹脂で作られる歯列形状のマウスピース型）を作成し、アタッチメント２６を形成する位置に対応した箇所に凹部を形成する（凹部の具体的な形状は、アタッチメント２６の形状に対応している）。次に、歯面をセルフエッチングプライマー（歯面調整材）により処理する。この処理された歯面上に、ボンディング剤を塗布する。そして、テンプレートの凹部に光重合コンポジットレジンを充填し、歯牙にこのテンプレートを取り付ける。最終的に、光を照射して光重合によりボンディング剤及び光重合コンポジットレジンを硬化させてアタッチメント２６が歯面に形成される。上記ボンディング剤には、例えばガラスフィラー、メタクリル酸エステル、リン酸エステルモノマー、光重合開始材を含むものが用いられる。

　なお、複数のアタッチメント２６は、前記第１実施形態と同様にそれぞれ半楕円球状に形成されている。この形状以外に第１変形例のようにドーム（半球）状に形成されたもの、又は第２変形例のように突出面２５ａが面取りされてアール部２５ｂが形成された円錐台状に形成されたものでもよい。

　一方、拡大床３０には、これら左右の突出部２３にそれぞれ嵌り込んで係止する嵌合凹部３３が設けられている。これらの嵌合凹部３３は、前記第１実施形態と同様に断面円弧状に形成されている。

　次に、本実施形態の歯列矯正機構１０Ａの作用について説明する。

　まず、上顎歯列部２の左右の奥歯５の舌側にそれぞれアタッチメント２６を接着剤により取り付けておく。次いで、拡大床３０の左右の床部３１，３１の嵌合凹部３３を突出部２６に嵌め込んで係止することで、拡大床３０を奥歯５の左右の歯冠部間に装着する。

　このとき、床部３１，３１の嵌合凹部３３の中心位置とアタッチメント２６の中心位置とが多少ずれたとしても、互いの曲面の一部同士が接触することができるようになる。その結果、嵌合凹部３３の中心位置とアタッチメント２６の中心位置とに多少ずれが生じたとしても、拡大ねじ３４での回転操作で左右の床部３１，３１を外側（頬側）に拡大する押圧力によってアタッチメント２６に対して嵌合凹部３３を確実に固定することができる。これにより、アタッチメント２６から拡大床３０が抜けにくくなる。

　また、アタッチメント２６の突出面が曲面形状に形成され、左右の床部３１，３１の嵌合凹部３３がアタッチメント２６の突出面と相対する側が断面円弧状に形成されているので、上記のように拡大床３０を確実に固定することができる他、拡大床３０を容易に装着することができる効果も得られる。

　このように本実施形態の歯列矯正機構１０Ａによれば、左右の奥歯５の歯冠部の内側にそれぞれ接着剤で取り付けられるアタッチメント２６を備え、これら左右のアタッチメント２６にそれぞれ嵌り込んで係止される嵌合凹部３３が拡大床３０の左右の床部３１，３１に設けられ、アタッチメント２６の突出面が曲面形状に形成されていることにより、左右の床部３１，３１を介して奥歯５の左右の位置を拡大するときの押圧力で複数のアタッチメント２６にそれぞれ嵌合凹部３３が強固に嵌り込んで係止されるため、拡大床３０を確実かつ容易に固定することが可能となる。

　なお、本実施形態では、マウスピース２０の第１小臼歯、第１大臼歯の内側に、それぞれ同一の半楕円球状のアタッチメント２６を設けた例について説明したが、前記第１実施形態と同様に、第１小臼歯、第１大臼歯の歯面の形状の相違に基づいて、第１小臼歯に設けるアタッチメント２６と、第１大臼歯に設ける突出部２６の形状を変更するようにしてもよい。具体的には、第１大臼歯に設けるアタッチメント２６を第１小臼歯に設けるアタッチメント２６よりも横長の半楕円球状に形成する。このように形成することで、拡大床３０を一段と強固に固定することが可能となる。
［発明の他の実施形態］
　本発明の各実施形態及び各変形例について説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これらの実施形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

　上記各実施形態及び各変形例では、マウスピース２０、拡大床３０等の素材、形状については、口腔１内に入れることができるもので同様の機能を有するものであれば、適宜の素材、形状で構成されていてもよい。

　また、上記各実施形態及び各変形例は、口腔１内の上顎歯列部２にマウスピース２０及び拡大床３０のうち少なくとも拡大床３０を装着した例について説明したが、下顎歯列部に装着した場合についても同様に適用可能である。

　さらに、上記各実施形態及び各変形例では、マウスピース２０が前歯３及び奥歯４を覆うように装着した例について説明したが、奥歯４だけを覆うように装着してもよい。つまり、マウスピース２０は、少なくとも奥歯４を覆うように装着すればよい。

　そして、上記各実施形態及び各変形例では、突出部の形状を半楕円球状、ドーム状、円錐台形状に形成した例について説明したが、これ以外に三角錐、四角錐等の角錐状、各種角錐台状に形成したものでもよい。

　なお、アタッチメント２６は、事前に嵌合凹部３３に対応した形状の樹脂を硬化させたものを準備し、それを奥歯５の歯冠部の内側に接着剤により固定させるようにしてもよい。

　また、上記各実施形態及び各変形例では、突出部やアタッチメント（以下、突出部等と記載する）を第１小臼歯、及び第１大臼歯、又はそれらに対応するマウスピースに設けた例について説明したが、これに限定されない。例えば、左右それぞれ一か所に突出部等を設けるようにしてもよい。その場合には、第１小臼歯、第１大臼歯（一般的に、４番、６番とも呼ばれる）に突出部等を設けると安定的に固定しやすくなる。また、小臼歯、大臼歯の全て、又はそれらに対応するマウスピースに突出部等を設けるようにしてもよい。このような場合、突出部等の形状は、第１小臼歯から第２大臼歯にかけて歯面の形状に基づいて、徐々に横長になるような形状とすることで、より強固に拡大床３０を固定することができる。なお、口腔１内の歯牙の状況に応じて突出部等を設ける位置を変えるようにしてもよい。例えば、元々舌側に傾斜した歯牙がある場合には、その歯牙を避けて突出部等を設けるようにしてもよい。これにより、突出部等の嚙みこみ過ぎによる取外し困難な状況や、噛みこみ不足による脱落の虞を低減することができる。

　１　口腔
　２　上顎歯列部
　３　前歯
　４　犬歯
　５　奥歯
　６　歯肉
１０　歯列矯正機構
１０Ａ　歯列矯正機構
２０　マウスピース
２１　本体部
２２　歯肉部
２３　突出部
２３ａ　曲面部
２４　突出部
２５　突出部
２５ａ　突出面
２５ｂ　アール部
２６　アタッチメント
３０　拡大床（拡大装置）
３１　床部
３２　拡大ねじ
３３　嵌合凹部
３４　ガイド部

Claims

　少なくとも奥歯を覆うように装着されるマウスピースと、
　左右の床部及びこれら左右の床部を介して前記奥歯の左右の位置を拡大する拡大ねじを有する拡大装置と、
　を備え、
　前記拡大装置は、前記マウスピースが装着される部位に着脱自在に装着されるように構成され、
　前記マウスピースの左右の内側にそれぞれ突出するように設けられるとともに、前記マウスピースの装着時に前記左右の奥歯の歯冠部に対応する部位にそれぞれ突出部が設けられる一方、前記左右の床部における前記左右の奥歯の歯冠部に対応する部位に嵌合凹部がそれぞれ形成され、前記複数の突出部にそれぞれ前記嵌合凹部が嵌り込んで係止されるように構成され、
　前記突出部の突出面が曲面形状に形成されていることを特徴とする歯列矯正機構。
　左右の床部及びこれら左右の床部を介して前記奥歯の左右の位置を拡大する拡大ねじを有する拡大装置と、
　前記左右の奥歯の歯冠部の内側にそれぞれ接着剤で取り付けられるアタッチメントと、を備え、
　前記左右のアタッチメントにそれぞれ嵌り込んで係止される嵌合凹部が前記拡大装置の左右の床部に設けられ、
　前記アタッチメントの突出面が曲面形状に形成されていることを特徴とする歯列矯正機構。
　前記嵌合凹部は、断面円弧状に形成されていることを特徴とする請求項１又は２に記載の歯列矯正機構。