WO2023074338A1 - エタノール含有組成物 - Google Patents

Abstract

本発明は、エタノールを６５質量％以上という高濃度で配合していても安定であり、なおかつコクのあるクリームのような使用感及び外観を与えることのできる乳化組成物を提供することを目的とする。本発明は、（ａ）特定構造のポリエーテル変性シリコーン；（ｂ）アクリロイルジメチルタウリン構造を有するコポリマー及びクロスポリマーから選択される少なくとも１種からなる水溶性増粘剤；（ｃ）油分；及び、（ｄ）エタノールを含む乳化組成物であって、前記（ｃ）油分の配合量が組成物全量に対して５質量％以上であり、前記（ｄ）エタノールの配合量が組成物全量に対して６５質量％以上であることを特徴とする乳化組成物に関する。

Description

エタノール含有組成物

　本発明はエタノールを含有する乳化組成物に関する。より詳細には、エタノールを高配合しても乳化安定性に優れ、塗布中の密着感があり、塗布後にべたつかず、しっとりした感触を与える、使用性に優れた乳化組成物に関する。

　エタノールの殺菌（抗菌）及び消毒作用、揮発性に基づく清涼感は従来から知られており、これらの特徴を活かしたエタノール高配合製剤が知られている。特に、昨年来の新型コロナウイルス感染症（ＣＯＶＩＤ－１９）の感染防止に有効とされる手指消毒用製剤は一時的に品薄になるほど需要が増大した。

　しかし、エタノール等の両親媒性物質は油－水乳化系を不安定化することが知られており、従来のエタノール高配合製剤は（化粧水のような）水系組成物が多かった。そのため、肌に塗布した際にシャバシャバした（水っぽい）感触であった。また、特許文献１に記載されているように、エタノール高配合製剤にカルボキシビニルポリマー等の水溶性増粘剤を配合して高粘度に調製しても、塗布後のべたつきや肌の乾燥感といった問題があった。

　特許文献２には、ポリオキシエチレン（硬化）ヒマシ油という特定の乳化剤を用いることにより、１価アルコールを安定に配合したエマルション（アルコール耐性エマルション）、特にＯ／Ｗエマルションが得られることが記載されている。

　しかしながら、特許文献１に記載された組成物におけるエタノール（低級アルコール）の配合量は最大で５０重量％である。また、特許文献２において、エマルションの安定性に対するエタノールの影響が検討されている例におけるエタノール量は、２１．６ｗｔ％（実施例１）及び３５ｗｔ％（実施例２）しかない。

特開２０１７－１３２７１１号公報 特許第５３７４６９０号公報

　本発明は、エタノールを６５質量％以上という高濃度で配合しても安定であり、なおかつクリームのようなコクのある使用感及び外観を与えることのできる乳化組成物を提供することを課題とする。

　本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造のポリエーテル変性シリコーン、特定構造の水溶性増粘剤を、油分及びエタノールと組み合わせて配合することにより、上記の課題を解決した乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

　すなわち本発明は、
（ａ）下記一般式（１）：

［式（１）中、
Ａは、下記一般式（２）：
－Ｃ_３Ｈ_６Ｏ（Ｃ_２Ｈ_４Ｏ）_ａ（Ｃ_３Ｈ_６Ｏ）_ｂＲ’　　　（２）
（Ｒ’は、水素原子、アシル基及び炭素数１～４のアルキル基からなる群から選択される基であり、ａは５～５０の整数であり、ｂは５～５０の整数である）で表されるポリオキシアルキレン基であり、
Ｒは、メチル基又はフェニル基であり、
ｍは、５０～１，０００の整数であり、
ｎは、１～４０の整数である］で表されるポリエーテル変性シリコーンの１種または２種以上；
（ｂ）アクリロイルジメチルタウリン構造を有するコポリマー及びクロスポリマーから選択される少なくとも１種からなる水溶性増粘剤；
（ｃ）油分；及び
（ｄ）エタノールを含む乳化組成物であって、
前記（ｃ）油分の配合量が組成物全量に対して５質量％以上であり、
前記（ｄ）エタノールの配合量が組成物全量に対して６５質量％以上であることを特徴とする乳化組成物を提供する。

　本発明の乳化組成物は、エタノールを６５質量％以上という高濃度で配合（高配合）していても安定性に優れる。また、本発明の乳化組成物は、特定の水溶性増粘剤と５質量％以上の油分を含有しているため、塗布時には密着感やコク感のあるクリームのような感触を与え、塗布後はしっとりして保湿力を想起させる外観とすることができる。

　本発明の乳化組成物（以下、単に「組成物」という場合もある）は、（ａ）特定構造のポリエーテル変性シリコーン、（ｂ）特定構造の水溶性増粘剤、（ｃ）油分、及び（ｄ）エタノールを含む。

（ａ）特定構造のポリエーテル変性シリコーン
　本発明の組成物における、ポリエーテル変性シリコーン（以下、「ａ成分」ともいう）は、下記一般式（１）で表される構造を有する（本明細書では「特定構造のポリエーテル変性シリコーン」ともいう）。当該特定構造のポリエーテル変性シリコーンは、１種でも２種以上を組み合わせて使用してもよい。

式（１）中、
Ａは、下記一般式（２）：
－Ｃ_３Ｈ_６Ｏ（Ｃ_２Ｈ_４Ｏ）_ａ（Ｃ_３Ｈ_６Ｏ）_ｂＲ’　　　（２）
（Ｒ’は、水素原子、アシル基及び炭素数１～４のアルキル基からなる群から選択される基であり、ａは５～５０の整数であり、ｂは５～５０の整数である）で表されるポリオキシアルキレン基であり、
Ｒは、メチル基又はフェニル基であり、
ｍは、５０～１，０００の整数であり、
ｎは、１～４０の整数である。

　前記Ｒ’のアシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、アクリロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基等が挙げられ、炭素数１～４のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ｉ－プロピル基、ｎ－プロピル基、ｔ－ブチル基、ｎ－ブチル基等が例示される。

　なお、前記Ａのポリオキシアルキレン基において、ａまたはｂが５未満である場合には、ポリエーテル変性シリコーンが十分な界面活性効果を示さなくなり、またａ又はｂが５０を超える場合には、得られた組成物にべたつき感を生じる場合がある。

　式中のｍが５０未満であり、ｎが１未満である場合には、乳化安定性に乏しく、またｍが１，０００を超え、ｎが４０を超える場合には、得られた組成物にべたつき感が生じるようになる。また、ｍ：ｎは２００：１～５：１であることが好ましく、６０：１～１５：１であることが特に好ましい。

　本発明で使用する特定構造のポリエーテル変性シリコーン（ａ成分）としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ダウ・東レ株式会社製のＤＯＷＳＩＬ（商品名）ＢＹ１１－０３０（５０質量％のＰＥＧ／ＰＰＧ－１９／１９ジメチコンと５０質量％のシクロペンタシロキサンを含む。ＰＥＧ／ＰＰＧ－１９／１９ジメチコンとは、上記一般式においてｍ＝４００、ｎ＝１０、ａ＝１９、ｂ＝１９となる分子量５５０００のポリエーテル変性シリコーンである）、ＤＯＷＳＩＬ（商品名）ＢＹ２５－３３７（５０質量％のＰＥＧ／ＰＰＧ－１９／１９ジメチコンと５０質量％の軽質流動イソパラフィン（水添ポリイソブテン）を含む）等を挙げることができる。

　本発明に用いられる特定構造のポリエーテル変性シリコーン（ａ成分）の配合量は特に限定されないが、好ましくは、組成物全量に対して、実分で０．１～５．０質量％、より好ましくは０．３～４．０質量％である。本発明の組成物において、特定構造のポリエーテル変性シリコーン（ａ成分）の配合量が、実分にして０．１質量％未満であると安定な乳化が難しく、また、５．０質量％を超えると組成物にべたつき感が生じる場合がある。

（ｂ）特定構造の水溶性増粘剤
　本発明の組成物に使用する水溶性増粘剤（以下、「ｂ成分」ともいう）は、分子内に「アクリロイルジメチルタウリン構造を有するコポリマー及びクロスポリマー」から選択したもの（「特定構造の水溶性増粘剤」ともいう）である。

　本発明における特定構造の水溶性増粘剤（ｂ成分）は、特に限定されないが、（ジメチルアクリルアミド／アクリロイルジメチルタウリンＮａ）クロスポリマー、（アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム／ＶＰ）コポリマー、（アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム／メタクリル酸ベヘネス－２５）クロスポリマーからなる群から選択される１種または２種以上とするのが好ましい。市販品を使用してもよく、例えば、（アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム／ＶＰ（ビニルピロリドン））コポリマー（クラリアントジャパン株式会社製「Ａｒｉｓｔｏｆｌｅｘ　ＡＶＣ」）、（アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム／メタクリル酸ベヘネス－２５）クロスポリマー（クラリアントジャパン株式会社製「Ａｒｉｓｔｏｆｌｅｘ　ＨＭＢ」）等を挙げることができる。

　本発明に用いられる特定構造の水溶性増粘剤（ｂ成分）の配合量は特に限定されないが、好ましくは、組成物全量に対して、０．１～５．０質量％、より好ましくは０．３～４．０質量％である。本発明の組成物において、特定構造の水溶性増粘剤（ｂ成分）の配合量が、０．１質量％未満であると所望の粘度が得られず、また、５．０質量％を超えると組成物にべたつき感を生じる場合がある。

（ｃ）油分
　本発明の組成物における油分（「ｃ成分」ともいう）は、化粧料等に配合可能な油性成分であれば特に限定されず、好ましくは、常温（２５℃）で液状の油分である。例えば、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、ミネラルオイル、スクワラン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン等の炭化水素油、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリ（カプリル・カプリン酸）グリセリル等のエステル油、ミリスチルアルコール、セタノール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等の炭素数１２～２２の脂肪族アルコール、各種の植物油及び動物油、シリコーン油等が挙げられる。油分は、１種のみ又は２種以上組み合わせて使用することができる。但し、乳化組成物の安定性の観点から、非極性油を含めるのが好ましい。

　本発明の組成物における油分（ｃ成分）の配合量は、組成物全量に対して５質量％以上である。油分の配合量が５質量％未満であると、コクのあるクリームのような使用感が得られない。
　また、油分総量に対して１０質量％以上の非極性油を含むのが好ましい。非極性油としては、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン、ミネラルオイル等の炭化水素油、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン油が例示できる。

（ｄ）エタノール
　本発明の組成物は、エタノール（「ｄ成分」ともいう）を組成物全量に対して６５質量％以上含有している。エタノールの配合量は、７０質量％以上、７５質量％以上、または８０質量％以上とすることも可能である。

　エタノール等の両親媒性物質は、油－水乳化を破壊する性質を持つが、本発明の乳化組成物は、（ａ）特定構造のポリエーテル変性シリコーン、（ｂ）特定構造の水溶性増粘剤を配合した乳化組成物、好ましくは水中油型乳化組成物であるため、多量のエタノールを配合しても、乳化安定性が維持できる。

　本発明の乳化組成物は、上記の必須成分（ａ）～（ｄ）に加えて、各種の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有していてもよい。
　任意成分としては、多価アルコール又はセルロース系水溶性ポリマー等が挙げられる。

　多価アルコールを配合することにより、組成物に保湿効果を付与することができる。多価アルコールとしては、グリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
　多価アルコールの配合量は、特に限定されないが、組成物全量に対して１～１０質量％とするのが好ましい。

　セルロース系水溶性ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。セルロース系水溶性ポリマーを配合することにより、使用感を更に改善することができる。
　セルロース系水溶性ポリマーの配合量は、好ましくは０．１～２質量％程度である。

　本発明の乳化組成物は、上記の必須成分（ａ）～（ｄ）に加えて、花粉、ＰＭ２．５、ウイルス等の微粒子付着抑制効果がある成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。

　前記、微粒子付着抑制効果のある成分としては、ポリクオタニウム－５１（２－メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ブチルとの重合体）が挙げられる。ポリクオタニウム－５１の配合量としては、組成物全量に対して１～５質量％程度である。

　本発明の組成物は、６５質量％以上という多量のエタノールを含有しているため、消毒用製剤、特に手指消毒用として提供するのに適している。
　本発明の組成物は、前記多量のエタノールのみならず、５質量％以上の油分を含有しているため、肌にクリームのような感触を与えることができる。さらに、乳白濁して増粘された外観となる処方とすることにより、肌に塗布した際のしっとり感や保湿感を想起させることができる。従って、エタノールに基づく殺菌・消毒効果を備えたハンドクリームなどの化粧料としても提供できる。

　以下に実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明する。ただし、以下の実施例等は本発明の範囲を何ら限定するものではない。なお、特記しない場合、配合量は、組成物全量に対する質量％を表すものとする。

　下記の表１～表３に掲げた処方でエタノール含有水中油型乳化組成物（試料）を調製した。各例の試料について、「乳化安定性」、「増粘性」、及び「使用性」を以下の基準に従って評価した。それらの結果を各表に示す。

「乳化安定性」
　各試料の調製直後の状態、並びに、０℃、２５℃、及び５０℃の温度条件下で各々４週間保管した後の試料の状態を、目視および実体顕微鏡（４００倍）により観察し、その外観および乳化粒子を以下の基準に従って評価した。
　Ａ：調製直後および各温度保管後のいずれにおいても試料は均一であり、乳化粒子の合一は認められなかった。
　Ｂ：調製直後および各温度保管後のいずれにおいても試料は均一であるが、いずれか１つ以上の温度保管条件下において、調製直後と比較して明確な乳化粒子サイズの増大（合一を含む）を確認した。
　Ｃ：調製直後の試料は均一であるが、いずれか１つ以上の温度保管条件下において、試料の分離を確認した。
　Ｄ：試料調製の段階で増粘剤が溶解・分散せず、不均一な状態であるため評価不能であった。

「増粘性」
　各試料を５０ｍｌのバイアル瓶に１０ｇずつ充填した後、容器を倒立させた際に試料がたれ落ちる様子を観察して以下の基準に従って評価した。
　Ａ：容器を倒立させてから少なくとも１分間、試料は流動せず明確なたれ落ちを確認しなかった。
　Ｂ：容器を倒立させると徐々に試料が流動し、１分後の時点で試料の一部がたれ落ちている様子を確認した。
　Ｃ：容器を倒立させると直ちに試料の大半がたれ落ちることを確認した。

「使用性」
　化粧品評価専門パネル１０名により各試料の使用性（塗布中の密着感、べたつきのなさ、しっとり感）を以下の基準に従って５段階で評価し、１０名のパネルによる評価の平均点を下記の４段階の基準に従って判定した。
（評価基準）
　評価結果：　評点
　非常に良好：５点
　良好　　　：４点
　普通　　　：３点
　やや不良　：２点
　不良　　　：１点
（判定基準）
　判定：評点の平均点
　Ａ：４．５以上
　Ｂ：３．５以上～４．５未満
　Ｃ：１．５以上～３．５未満
　Ｄ：１．５未満

　表１に示すように、一般式（１）で表されるポリエーテル変性シリコーン（ａ成分）を配合した実施例１は優れた乳化安定性を示したが、前記ポリエーテル変性シリコーンに代えて別の非イオン性界面活性剤（シリコーン系又は非シリコーン系）を配合した比較例１～５では安定な乳化ができなかった。

　表２に示すように、アクリロイルジメチルタウリン構造を有するコポリマー及びクロスポリマーから選択される水溶性増粘剤（ｂ成分）を配合した実施例２～４は適切に増粘でき、使用性にも優れていたが、本発明の（ｂ成分）に該当しない水溶性増粘剤を用いた比較例６及び７は使用性の低下又は適切な増粘ができないという問題を生じた。
　表３に示した結果から、本発明の組成物における油分（ｃ成分）の種類を入れ換えても同様に優れた特性を示すことが確認された。

Claims (7)

1. （ａ）下記一般式（１）：
   

   

   ［式（１）中、
   Ａは、下記一般式（２）：
   －Ｃ_３Ｈ_６Ｏ（Ｃ_２Ｈ_４Ｏ）_ａ（Ｃ_３Ｈ_６Ｏ）_ｂＲ’　　　（２）
   （Ｒ’は、水素原子、アシル基及び炭素数１～４のアルキル基からなる群から選択される基であり、ａは５～５０の整数であり、ｂは５～５０の整数である）で表されるポリオキシアルキレン基であり、
   Ｒは、メチル基又はフェニル基であり、
   ｍは、５０～１，０００の整数であり、
   ｎは、１～４０の整数である］で表されるポリエーテル変性シリコーンの１種または２種以上；
   （ｂ）アクリロイルジメチルタウリン構造を有するコポリマー及びクロスポリマーから選択される少なくとも１種からなる水溶性増粘剤；
   （ｃ）油分；及び
   （ｄ）エタノールを含む乳化組成物であって、
   前記（ｃ）油分の配合量が組成物全量に対して５質量％以上であり、
   前記（ｄ）エタノールの配合量が組成物全量に対して６５質量％以上である、乳化組成物。
2. （ｂ）水溶性増粘剤が、（ジメチルアクリルアミド／アクリロイルジメチルタウリンＮａ）クロスポリマー、（アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム／ＶＰ）コポリマー、（アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム／メタクリル酸ベヘネス－２５）クロスポリマーからなる群から選択される１種または２種以上である、請求項１に記載の乳化組成物。
3. （ｃ）油分が、油分総量に対して１０質量％以上の非極性油を含む、請求項１に記載の乳化組成物。
4. 非極性油が、炭化水素油及びシリコーン油から選択される１種または２種以上である、請求項３に記載の乳化組成物。
5. 多価アルコールを更に含有する、請求項１に記載の乳化組成物。
6. ヒドロキシプロピルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースを更に含有する、請求項１に記載の乳化組成物。
7. 手指消毒用である、請求項１から６のいずれか一項に記載の乳化組成物。