WO2023058662A1 - リグノセルロース溶液及び成形品並びにその製造方法 - Google Patents

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Abstract

リグノセルロースを含むバイオマスを粗粉砕して、粗粉末を得る粉砕工程、粗粉末と有機酸とを混合する混合工程、及び、粗粉末を有機酸に溶解する溶解工程を有する製造方法により、リグノセルロース溶液が得られる。この溶液から、リグノセルロースを主成分とする成形品が形成される。成形品の密度は1.20g/cm3未満である。一態様において、成形品は実質的に接着剤成分を含まない。他の態様において、リグノセルロースを構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンは、有機酸とエステル結合を形成している。さらに他の態様の成形品は、密度1.60g/cm3未満であって、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンに結合する官能基の量が0.35以上0.60以下である。

Description

リグノセルロース溶液及び成形品並びにその製造方法
 本開示は、リグノセルロースの可溶化方法、並びに、この方法により得られるリグノセルロース溶液及び成形品に関する。
 近年、環境問題への関心の高まりから、石油資源由来の材料に代えて、バイオマス資源由来の材料開発が求められている。特に、食糧との競合がなく、大気中の二酸化炭素を増加させない木質系バイオマスの利用が要望されている。
 木質系バイオマスの主成分は、リグノセルロースと称される天然高分子混合物である。リグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンが複雑に絡み合った強固な高次構造を形成している。詳細には、リグノセルロースでは、直鎖高分子であるセルロースが分子内及び分子間水素結合により結晶構造を形成して強固なミクロフィブリルを構成し、これにキシランやグルコマンナン等のヘミセルロースが絡み合い、さらに不規則芳香族高分子であるリグニンがこれら多糖類のマトリックスの空隙に充填されて、強固な複合体を形成している。そのため、リグノセルロース全体は、温和な条件では、水、有機溶媒等の溶媒に溶解しない。これらの溶媒にリグノセルロース全体を溶解させるためには、ボールミル等の摩砕処理により植物細胞壁を物理的に破壊する前処理、又は、触媒を含む溶媒中での高温反応による細胞壁成分の分離前処理が必要である。摩砕処理や高温反応に要するエネルギー及びコストへの負荷が大きいことから、木質系バイオマス利用上の大きな問題となっていた。
 このように、従来、リグノセルロースの溶解を目的として、高温での化学的分解により水素結合を緩和して分解反応を促進する検討がなされてきた。例えば、有機溶媒中での高温加熱処理、酸又はアルカリによる分解反応、高温下での水熱反応等を利用して、リグノセルロースを溶解する試みがなされてきた。
 特許文献1(特許第3155603号公報)には、木材等のリグノセルロース物質を酸触媒、環状エステル及び多価アルコールの存在下で加熱することによる、リグノセルロース物質の液化溶液の製造方法が開示されている。この方法は、化学薬品中で木材の酸分解を促進する木材液化法であり、硫酸等の酸触媒、及び、ポリエチレングリコール等の多価アルコール系の化学薬品の使用と、150℃程度の反応温度への加熱が必要であった。
 リグニンが結合したセルロースの成形性を改善して、任意の形状のリグノセルロース成形体を得るための技術として、特許文献2(特開平11-181105号公報)では、リグニンを5%程度含有するパルプをアルカリ水溶液で前処理し、二硫化炭素を添加して溶解した後、凝固・再生することによるリグノセルロース成形体の製造方法が提案されている。
 また、リグニンの構造解析のために、木材からリグニンを天然に近い状態で取り出す方法として、ボールミルを用いた磨砕リグニン又はミルドウッドリグニン取得法と称される分析技術が知られている。例えば、非特許文献1(Green Chemistry 16,3569 (2014) )には、ボールミルを用いて粉砕した微細木粉のギ酸への可溶化方法が記載されている。具体的には、ボールミルで微粉砕した木材を、α-ケト酸であるピルビン酸と、アルデヒド系カルボン酸であるグリオキシル酸及びギ酸に室温で溶解する方法が記載されている。また、得られた木材溶液から透明フィルムが得られたとの記載がある。非特許文献2(ACS Sustainable Chem. Eng. 5, 12, 11536 (2017) )では、微粉砕したブナ材が、室温で4~7日間かけてギ酸に直接溶解されている。また、この溶液から溶媒を蒸発さて得られる透明な平板状木質フィルムは、折り曲げることができ、折り紙に使用できるとの記載がある。
 特許文献3(特開平4-33986号公報)に開示されたリグノセルロース膜は、代表的には、広葉樹材チップを解砕等して得たリグノセルロース繊維に、濃厚アルカリ水溶液及び二硫化炭素を加えて溶解した後、凝固・再生することにより製造されると記載されている。特許文献4(特開2003-104815号公報)では、リグノセルロース材料にフェノール類を加えて加熱反応させることにより、可溶性リグノセルロース物質が得られている。特許文献5(特開2008-308530号公報)では、リグノセルロース繊維材料を、リグノセルロースの分子量が10,000以下になるまで、機械的摩砕手段を用いて摩砕することにより、可溶性リグノセルロースを得る方法が提案されている。
特許第3155603号公報 特開平11-181105号公報 特開平4-33986号公報 特開2003-104815号公報 特開2008-308530号公報
Yuri Nishiwaki-Akine and Takashi Watanabe, "Dissolution of wood in α-keto acid and aldehydic carboxylic acids and fractionation at room temperature", Green Chemistry, 16, 3569 (2014) Y. Nishiwaki-Akine, S. Kanazawa, T. Uneyama, K. Nitta, R. Yamamoto-Ikemoto, and Takashi Watanabe, "Transparent woody film made by dissolution of finely divided Japanese beech in formic acid at room temperature", ACS Sustainable Chem. Eng. 5, 12, 11536 (2017)
 特許文献1-4では、リグノセルロースの溶解に、環境への負荷が懸念される有機溶媒等の化学薬品が用いられている。特許文献5並びに非特許文献1-2では、このような有機溶媒は使用されないが、リグノセルロースを低分子量化して可溶化するために、ボールミルを用いた長時間の粉砕が必要であり、工業的に困難である。ボールミルによる長時間の粉砕によれば、リグノセルロースの細胞壁が粉砕され、さらには、リグノセルロースに含まれるセルロースのセルロースI型結晶構造が破壊され、結晶化度が低下すると考えられる。また、J.Zehr著“Handbuch der Raumexplosionen,Abschnitt IIb, Eigenschaften brennbar Staube und Nebel in Luft” p.164(1965)では、可燃性の微粉末として、針葉樹の松で70~150μm、ブナで70~100μm以下の粒径が記載されている。そして、ボールミル粉砕によれば、可燃性である木材の微粉末が発生する場合があり、この微粉末の飛散による作業環境への影響が懸念される。エネルギー効率向上及びコスト低減の観点から、さらには、作業者の安全性向上の観点から、木質系バイオマスの利用技術には、さらなる改良の余地がある。
 本開示の目的は、木質系バイオマスの利用方法として、環境及び作業者への負荷が少なく、エネルギー的にも有利なリグノセルロース溶液及び成形品の製造方法の提供である。本開示の他の目的は、産業上利用性が高く、かつ環境負荷の少ないリグノセルロース溶液及び成形品の提供である。
 本開示者らは、リグノセルロースを含むバイオマスに対する圧力変動が、有機酸への溶解性を顕著に向上させ、粗粉砕したバイオマスであっても可溶化させうることを見出し、本開示の製造方法及び成形品を完成させた。さらに、本開示者らは、粗粉砕したバイオマスであっても、溶解に用いる有機酸濃度が、粗粉末の溶解状態に影響することを見出し、本開示を完成させた。
 即ち、本開示のリグノセルロース溶液の製造方法は、
 (1)リグノセルロースを含むバイオマスを粗粉砕して、粗粉末を得る粉砕工程
 (2)粗粉末と有機酸とを混合する混合工程、
及び
 (3)粗粉末を有機酸に溶解する溶解工程
を有している。
 他の観点から、本開示のリグノセルロース含有成形品は、リグノセルロースを主成分として含み、その密度が1.20g/cm未満である。一実施態様に係る成形品は、実質的に接着剤成分を含まない。他の実施態様に係る成形品では、リグノセルロースの構成成分であるセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの少なくとも一部が、有機酸とのエステル結合を形成している。
 さらに他の観点から、本開示のリグノセルロース含有成形品は、リグノセルロースを主成分として含み、その密度が1.60g/cm未満であってよい。この実施態様に係る成形品では、リグノセルロースを構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの水酸基の少なくとも一部に、下記式(1)で示される官能基が結合されており、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 
 上記式(1)中、Rは水素原子又は下記式(2)で示される官能基であり、この式(2)中、Rが水素原子又はメチル基であり、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 
 赤外線吸収スペクトルから求められる上記官能基の結合量が、0.35以上0.60以下である。
 本開示の製造方法によれば、原料であるバイオマスを長時間かけて微粉砕することなく、しかも、環境への負荷が大きい化学薬品を使用せずに、リグノセルロース溶液及び成形品を得ることができる。この製造方法により得られるリグノセルロース溶液及び成形品では、リグノセルロースを構成するセルロース、リグニン等の物性が発揮されうる。さらには、リグノセルロースの溶解状態を制御することができる。
図1は、本開示の一実施形態に係る製造方法の粉砕工程で得られる、バイオマスの粗粉末が示された写真である。 図2は、図1の粗粉末を溶解して得られる可溶化リグノセルロース含有溶液が示された写真である。 図3は、図2の可溶化リグノセルロース含有溶液から形成された可溶化リグノセルロース含有シートの写真である。 図4は、図3のシートの表面状態が示された電子顕微鏡写真であり、倍率4a:500倍、4b:1000倍である。 図5は、図3のシートの断面が示された電子顕微鏡写真であり、倍率5a:100倍、5b:300倍である。 図6は、比較例1のシートの表面状態が示された電子顕微鏡写真であり、倍率6a:500倍、6b:1000倍である。 図7は、比較例1のシートの断面状態が示された電子顕微鏡写真であり、倍率7a:300倍、7b:1000倍である。 図8は、リグノセルロース含有成形品の多次元核磁気共鳴測定チャートの一例である。 図9は、図8のチャートに示されたピーク(α,γ-F-Aα及びα,γ-F-Aγ1/F-Aγ2)に対応する構造式である。 図10は、図8のチャートに示されたピーク(γ-F-Bγ2)に対応する構造式である。 図11は、リグノセルロース含有成形品の多次元核磁気共鳴測定チャートの一例である。 図12は、図11のチャートに示されたピーク(6-F-C6)に対応する構造式である。
 以下、好ましい実施形態の一例を具体的に説明する。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
 なお、本願明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」の意味である。また、特に注釈のない限り、試験温度は全て室温(20℃±5℃)である。本願明細書において、質量%とは、所謂weight percentを意味し、質量濃度Mass concentrationを意味するものではない。
 [リグノセルロース溶液の製造方法]
 本開示のリグノセルロース溶液の製造方法は、粉砕工程、混合工程及び溶解工程を有している。粉砕工程は、原料であるリグノセルロースを含むバイオマス(以下、原料バイオマスと称する場合がある)を粗粉砕して、粗粉末を得る工程である。混合工程は、この粗粉末と有機酸とを混合する工程である。溶解工程は、この粗粉末を有機酸に溶解する工程である。
 本開示の製造方法によれば、多大なエネルギーを消費する微粉砕処理を要することなく、しかも、環境への負荷が大きい化学薬品を用いずに、利用価値の高いリグノセルロース溶液を容易かつ安全に得ることができる。
 (原料バイオマス)
 リグノセルロースを含むバイオマスとしては特に限定はなく、広葉樹、針葉樹等の木質系バイオマス、稲わら、フスマ等の草本系バイオマスが適宜選択されて用いられる。ここで、リグノセルロースとは、主としてセルロース、ヘミセルロース及びリグニンからなる天然高分子の混合物を意味する。選択するバイオマスの種類により、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンの含有量は異なるが、本開示の製造方法においてはその組成は特に限定されない。組成の異なるリグノセルロースを含む2種以上のバイオマスを原料として用いることができる。
 (粉砕工程)
 本開示の粉砕工程では、原料バイオマスが粗粉砕されてリグノセルロースを含む粗粉末が得られる。一般的に、粉砕では、数百mm以上のサイズである砕料を数十mm程度まで粉砕する装置を「粗砕機」と称し、数十mmオーダーの材料を数mmから数百μm程度に粉砕する装置を「中砕機」と称する。単に「粉砕機」と言う場合には、この「中砕機」を意味する。また、数μmオーダーまで微細化することを目的とする装置を「微粉砕機」と称し、数μm以下の微粉生成を目的とする装置を「超微粉砕機」と称する。
 本明細書において、粒子径0.35mm以上の粒子を含む粉末が「粗粉末」と称され、この粗粉末を得るための粉砕が「粗粉砕」と称される。従って、本開示の粉砕工程では、「粉砕機」を用いて「粗粉砕」がなされる。本開示の粉砕工程で得られる粗粉末は、「微粉砕機」及び「超微粉砕機」を用いた高度の微粉砕処理がなされていない。そのため、原料バイオマス中のセルロース、リグニン等の構造破壊が少なく、例えば、セルロースの結晶性や、リグニン特有の抗菌性、紫外線吸収性等が、粉砕後においても維持される。また、「微粉砕機」又は「超微粉砕機」による高度の微粉砕処理が不要であるため、微粉末の発生が抑制される。
 本開示の製造方法において、粗粉末に含まれる粒子の粒子径は、0.10mm~3.0mmであってよく、0.15mm~2.0mmであってよく、0.20mm~1.0mmであってよく、0.25mm~0.75mmであってよく、0.30mm~0.55mmであってよく、0.35mm~0.50mmであってよい。安全性向上の観点から、粒子径100μm未満の粒子を含まない粗粉末が好ましく、粒子径80μm以下の粒子を含まない粗粉末がより好ましい。さらに好ましい粗粉末は、粒子径が0.35mm~0.50mmの範囲内である粗粉末である。粗粉末の粒子径は、JIS標準ふるいを用いた篩分級法により測定される。
 前述した粗粉末が得られる限り、原料バイオマスを粗粉砕する方法は特に限定されず、圧縮粉砕、衝撃粉砕、せん断粉砕等既知の粉砕方法が用いられ得る。乾式粉砕であってもよく、湿式粉砕であってもよい。前述した通り、本開示の製造方法によれば、粗粉末が得られる程度の粉砕方法で十分である。従って、ミクロンレベルの粉砕が可能で、かつ低コストである乾式粉砕が好適に用いられる。なお、必要に応じて、後述する混合工程において、湿式粉砕を併用してもよく、粗粉末と有機酸とを混合した状態で湿式粉砕してもよい。混合工程における湿式粉砕を併用する場合、粉砕工程で得られる粗粉砕の粒径は、前述した範囲より大きなものであってもよい。また、混合工程における湿式粉砕を併用する場合には、使用する有機酸濃度を調整してもよく、後述する溶解工程における保持時間(溶解時間)を調整してもよい。
 粉砕工程におけるエネルギー及びコスト低減の観点から好ましい粉砕機として、ジョークラッシャー、ジャイレトリクラッシャー、クラッシングロール、ハンマーミル、ローラーミル、カッターミル、ハンマークラッシャー、ウィレーミル、石臼型粉砕機等が挙げられる。2種以上の粉砕機を併用してもよい。せん断及び衝撃によって粉砕するウィレーミル及び石臼型粉砕機が好ましい。原料バイオマスの粗粉砕は、連続式であってもよく、バッチ式であってもよい。本開示の粉砕工程前に、既知の切断機、チッパー等を用いて原料バイオマスを小片化(チップ化)してもよい。
 例えば、木質系バイオマスの場合、自然の森林から採取して丸太等に切削した後、デバ―キング又はチッピングと称される工程により、チップ状に加工される。こうして得られる3cm角程度のウッドチップを、本開示の原料バイオマスとして入手し、粉砕工程にて粗粉砕してもよい。この粉砕工程において、被粉砕物のサイズ(数cm程度)Aに対する破砕物の粒径B(数mm程度)の比である粉砕比(B/A)は、1/20~1/2の範囲で選択することができる。この粉砕比(B/A)は1/10程度であってよく、1/3~1/4程度であってよい。粉砕比(B/A)が大きい程、原料バイオマスとして、多様なチップを選択することができるという利点がある。また、粉砕に関し、Bondの法則がしられている。Bondの法則とは、一定重量の被粉砕物を粉砕するに要する仕事が、粉砕物の粒径の平方根に反比例するという法則をいう。この法則によれば、粉砕物の粒径が小さいほど、また、粉砕比(B/A)が大きいほど、大きな仕事が必要となる。従って、後述する溶解工程との兼ね合いもあるが、なるべく粉砕物の粒径が大きく、かつ、粉砕比(B/A)が小さいことが好ましい。
 また、前述した通り、本開示における粉砕方法は、衝撃、せん断及び摩擦であってよく、硬さが必要な圧縮粉砕に限定されるものではない。粉砕方法によっては、粉砕物の結晶化度が変化する場合がある。例えば、特許第6137525号には、セルロース含有原料を-5~25℃の温度条件下でせん断力を加えて除熱粉砕し、セルロースを非晶化する工程を含む非晶化セルロースの製造方法が記載されている。このように、粉砕の方法によって、粉砕物中のセルロースが非晶化される場合がある。このため、後述する溶解時間との関連で、目的とする粉砕物の結晶化度を考慮して、粉砕方法を選択することが好ましい。
 (混合工程)
 混合工程では、リグノセルロースを含む粗粉末と有機酸とが混合される。粗粉末と有機酸とが均一に混合されることが好ましい。
 (有機酸)
 本工程で使用可能な有機酸は特に限定されないが、代表的な有機酸は、カルボン酸である。脂肪族カルボン酸であってもよく、芳香族カルボン酸であってもよい。粗粉末の溶解性に優れるとの観点から、α-ケト酸及びホルミル基を有するカルボン酸が好ましく、ギ酸、グリオキシル酸及びピルビン酸からなる群から選択される有機酸が特に好ましい。
 有機酸の添加量は、原料バイオマスの種類、粗粉末の粒度、有機酸の種類等に応じて適宜選択される。溶解効率が向上するとの観点から、有機酸の添加量は、粗粉末1重量部に対して、4重量部以上が好ましく、9重量部以上がより好ましい。後述する成形品が得られやすいとの観点から、有機酸の添加量は、粗粉末1重量部に対して、200重量部以下が好ましく、49重量部以下がより好ましい。粗粉末1重量部に対する有機酸の量は、4~200重量部であってよく、4~49重量部であってよく、9~200重量部であってよく、9~49重量部であってよい。
 有機酸を粗粉末に添加する方法は、特に限定されず、有機酸をそのまま粗粉末に添加してもよく、有機酸溶液(例えば、有機酸水溶液)として粗粉末に添加してもよい。換言すれば、この製造方法が、有機酸と溶媒に溶解して有機酸溶液を調製する工程をさらに有してもよく、この有機酸を粗粉末に添加することにより、混合工程をおこなってもよい。溶媒としては、有機酸の良溶媒であれば特に限定されないが、安全性及び入手しやすいとの観点から、水が好適に用いられる。
 有機酸溶液として粗粉末に添加する場合、有機酸濃度にも特に限定はなく、原料バイオマスの種類、粗粉末の粒度、有機酸の種類、溶解条件等に応じて適宜選択される。例えば、高濃度の有機酸溶液であれば、粗粉末を短時間で均一に溶解できる。溶解効率向上の観点から、有機酸濃度は、濃度80質量%以上であってよく、その上限は100質量%であってよい。一方で、有機酸溶液が低濃度であるほど、得られる成形品の機械的強度が大きい傾向にある。これは、後述する溶解工程において、有機酸がリグノセルロースとのエステル反応が生じるが、低濃度の有機酸溶液ではエステル化の程度が低いため、リグノセルロース中のセルロースの微結晶が残存して、成形品の強度向上に寄与するものと推測される。また、有機酸濃度が75質量%未満であれば、有機酸の蒸気圧が低下して爆発限界を超えないため、作業の安全性を確保することができる。また、有機酸濃度が低い場合には、設備に求められる耐腐食性の程度を下げることができるので、設備費用を削減できる利点がある。さらに、有機酸がギ酸の場合、水と共沸するので、高濃度のギ酸水溶液を得るためには、ギ酸の回収、再生又は精製という高いエネルギーコストが発生する。エネルギーコスト低減の観点から、低濃度のギ酸水溶液が好ましい。
 (溶解工程)
 溶解工程では、リグノセルロースを含む粗粉末が有機酸に溶解することにより、リグノセルロースを含む溶液が得られる。溶解工程では、粗粉末が有機酸に部分溶解してもよい。部分溶解の場合、ろ過等により不溶解分を除去することにより、本開示のリグノセルロース溶液が得られる。なお、本明細書において、「溶解」とは、目視にて、有機酸中の粗粉末の形状を認識できない状態を意味する。顕微鏡観察等により、溶液中にリグノセルロースに由来する繊維状物質が観察される場合も、粗粉末自体の形状が消失している場合は、「溶解」と定義される。また、このような「溶解」状態の液体を、本開示において「溶液」と定義する。
 本開示のリグノセルロース溶液が得られる限り、溶解工程における溶解条件は特に限定されず、原料バイオマスの種類、粗粉末の粒度、有機酸の種類等に応じて適宜選択される。溶解効率が高いとの観点から、溶解温度は20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。エネルギー削減の観点から、好ましい溶解温度は100℃以下である。溶解時間(保持時間)は、粗粉末の溶解状態を確認しながら、適宜調整することができる。
 溶解を促進する観点から、溶解工程において、撹拌処理をおこなってもよく、粉砕を伴う撹拌処理をおこなってもよい。有機酸中での粉砕を伴う撹拌処理をおこなうことで、より温和な条件によるバイオマスの溶解が可能になる。換言すれば、本開示の製造方法は、溶解工程において、有機酸中で粗粉末を粉砕しつつ撹拌することを含む。溶解工程において、リグノセルロース溶液が得られるまで、粉砕を伴う撹拌処理を継続してもよく、粉砕を伴う撹拌処理を所定時間おこなった後、粉砕を伴わない撹拌処理に移行してもよい。粉砕を伴う撹拌処理のための装置として、例えば、ビーズミル、コロイドミル、ディズクリファイナー、コニカルリファイナー等が挙げられる。この攪拌処理において、ジェットミル、高圧ホモジナイザー、石臼型粉砕機等を使用して粉砕してもよい。このような粉砕を、湿式粉砕と称する。湿式粉砕をおこなう場合には、前述の粉砕工程における原料バイオマスの粗粉砕をさらに簡略にすることができる。
 (金属塩)
 好ましくは、溶解工程では、有機酸とともに、一般式M(SO(式中、Mは3価の金属であり、MはNH又は1価の金属である)で示される金属塩とが併用される。この一般式で示される金属塩は、「ミョウバン」とも称される複塩である。金属塩の水和物であってもよい。有機酸とミョウバンとの併用により、粗粉末の有機酸への溶解性が向上する。
 3価の金属の具体例として、アルミニウム、鉄、クロム等が挙げられる。1価の金属の具体例として、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。好ましい金属塩は、硫酸アルミニウムカリウムである。硫酸アルミニウムカリウムの12水和物が金属塩として用いられてもよい。
 有機酸との併用効果が顕著であるとの観点から、金属塩の添加量は、粗粉末100重量部に対して、1重量部以上が好ましく、2重量部以上がより好ましく、5重量部以上がさらに好ましい。リグノセルロース含有率の高い溶液又は成形品が得られるとの観点から、金属塩の添加量は、30重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらに好ましい。
 (調圧工程)
 本開示の製造方法では、粗粉末と有機酸とを混合する前、及び/又は、粗粉末と有機酸とを混合した後に、圧力調整手段を用いて加圧又は減圧する調圧工程をさらに有してもよい。この調圧工程において、原料バイオマス(粗粉末)に加えられる圧力変動が、リグノセルロースの強固な高次構造を緩和して、有機酸への溶解性を顕著に向上するものと推測される。この調圧工程をおこなうことにより、比較的低温での溶解が可能になり、溶解工程における加熱及び/保温に要するエネルギーが削減される。圧力変動によって、粗粉末の組織内に有機酸が効率的に導入されるとの観点から、粗粉末に有機酸を添加後に加圧又は減圧することが好ましい。なお、粉砕工程及び溶解工程における方法及び条件によっては、当該調圧構成を省略することができる。
 調圧工程において減圧する場合には、1.0kPa以上10.0kPa(絶対圧)の範囲で減圧することが好ましい。また、調圧工程において加圧する場合には、200kPa以上1000kPa以下(ゲージ圧)の範囲で加圧することが好ましい。本明細書中、減圧処理によって大気圧より低い圧力を示す場合は絶対圧を使用し、加圧処理によって大気圧より高い圧力を示す場合は、大気圧を基準としたゲージ圧を使用する。
 調圧工程において用いる圧力調整手段は特に限定されない。アスピレーター、エジェクター、コンプレッサー、機械式ポンプ等既知の手段により、前述した圧力範囲に調整される。
 (リグノセルロース溶液)
 本開示の製造方法により得られるリグノセルロース溶液は、可溶化したリグノセルロースを含む。このリグノセルロース溶液の濃度は0.5質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。製造容易との観点から、リグノセルロース溶液の濃度は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。リグノセルロース溶液の濃度は、0.5~20質量%であってよく、0.5~10質量%であってよく、2.0~20質量%であってよく、2.0~10質量%であってよい。
 リグノセルロース溶液が、一般式M(SO(式中、Mは3価の金属であり、MはNH又は1価の金属である)で示される金属塩を含んでもよい。この金属塩の例として、リグノセルロース溶液の製造方法に関して前述した金属塩が挙げられる。好ましい金属塩は、硫酸アルミニウムカリウムである。リグノセルロース溶液中の金属塩の含有量は、原料である粗粉末100重量部に対して、1重量部以上が好ましく、2重量部以上がより好ましく、5重量部以上がさらに好ましい。金属塩の含有量は30重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらに好ましい。本開示の効果が阻害されない範囲で、リグノセルロース溶液が、色素等既知の添加剤をさらに含んでもよい。
 (成形品)
 本開示の成形品は、前述したリグノセルロース溶液から形成される。この成形品の主成分は、リグノセルロースである。本明細書において、「主成分」とは、その含有量が少なくとも50質量%以上である成分を意味する。このリグノセルロース含有成形品における、リグノセルロースの含有量は、少なくとも50質量%以上であり、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、上限値は100質量%である。
 詳細には、本開示の成形品は、リグノセルロース溶液から、未反応の有機酸を含む液状成分を除去する過程で、所定の形状を付加することにより得ることができる。換言すれば、この成形品は、バイオマスに由来するリグノセルロースと、有機酸と、を材料として得ることができる。従って、この成形品は、既知の接着剤を用いて木粉を所定の形状に固化形成したパーティクルボード等とは、本質的に異なるものである。即ち、本開示の成形品は、実質的に接着剤成分を含まない。ここで、用語「含まない」とは、成形品の製造工程において意図的に接着剤を添加しないことを意味し、通常用いられる分析手法によっては、成形品中に検出されないことを意味する。また、ここでいう「接着剤成分」とは、従来既知の合成接着剤の構成成分を意味するものであり、原料バイオマス中に本来含まれているリグニン等の接着性の成分を意味するものではない。
 本開示の効果が阻害されない範囲で、成形品が、有機酸に由来する官能基を有してもよい。なお、「成形品が有機酸に由来する官能基を有する」とは、成形品が未反応の有機酸を含むことを意味するものではなく、成形品の構成成分に有機酸がエステル結合していることを意味する。即ち、リグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンから構成されている。このセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの少なくとも一部と、有機酸とがエステル結合を形成することにより、有機酸に由来する官能基を有する本開示の成形品が得られうる。本開示の成形品は、成形終了時点では実質的に未反応の有機酸を含まない。なお、本開示の成形品の保存状態及び保存期間によっては、成形品のセルロース、ヘミセルロース及びリグニンに結合した有機酸のエステル結合の一部が加水分解して有機酸を生じる場合がある。従って、本開示の成形品が、加水分解により生じた有機酸を含むことを排除するものではない。
 好ましくは、リグノセルロースを構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの水酸基の少なくとも一部に、下記式(1)で示される官能基が結合されている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 
ここで、式(1)中、Rは水素原子又は下記式(2)で示される官能基である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基である。
 式(1)で示される官能基は、前述した溶解工程において、リグノセルロース中の水酸基と有機酸とがエステル反応することにより形成される。このようにリグノセルロースを構成するリグニン、セルロース及びヘミセルロースの少なくとも一部に官能基が導入されることで、セルロースの結晶が小さくなる、あるいは結晶化度がある程度低下する。これにより、リグノセルロースの有機酸への溶解が促進されたものと思われる。リグノセルロースを構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの水酸基の全部に、式(1)で示される官能基が結合されてもよい。この有機酸の例として、リグノセルロース溶液の製造方法に関して前述した有機酸が挙げられる。好ましい有機酸は、ギ酸、グリオキシル酸及びピルビン酸である。即ち、式(1)で示される官能基が、リグノセルロースを構成するリグニン、セルロース及びヘミセルロースの水酸基の少なくとも一部と、ギ酸、グリオキシル酸及びピルビン酸から選択される有機酸と、のエステル反応により形成されたものであってよい。
 より好ましい有機酸はギ酸である。リグノセルロースの構成成分中の水酸基の少なくとも一部と、ギ酸とのエステル反応により、ホルミル基が形成される。好ましい実施態様において、成形品は、式(1)に示される官能基としてホルミル基が結合したリグノセルロースを主成分として含んでいる。
 リグノセルロースに結合している官能基は、多次元核磁気共鳴測定(3D-NMR測定)により確認することができる。例えば、リグノセルロースに結合している官能基がホルミル基の場合、1H-13CHSQC, edited-HSQC, HMBC, 3D TOCSY-HSQC NMRによって、セルロースのグルコース残基の6位、ヘミセルロースの主要骨格であるキシランのキシロース残基の3位、並びに、リグニン結合部位と推定できるβ-0-4及びβ-5のα位及びγ位に結合したホルミル基を確認することができる。
 以下に、ホルミル基を例として、リグノセルロースに結合している官能基の具体的な同定方法を説明する。図8は、本開示の成形品を多次元核磁気共鳴測定して得られたチャートであって、リグニンがホルミル化されていることを示すチャートである。添え字(α,γ-F-Aα及びα,γ-F-Aγ1/F-Aγ2)で示されたピークが対応する構造式が、図9に示されている。添え字(γ-F-Bγ2)で示されたピークが対応する構造式が、図10に示されている。即ち、図8のチャートでこれらのピークが検出されることにより、リグニンの結合部位であるβ-0-4及びβ-5のα位及び/又はγ位の少なくとも一部がホルミル化されていることを確認することができる。
 図11は、本開示の成形品を多次元核磁気共鳴測定して得られたチャートであって、セルロースがホルミル化されていることを示すチャートである。添え字(γ-F-Bγ2)で示されたピークが対応する構造式が、図12に示されている。即ち、図11のチャートでこのピークが検出されることにより、セルロースのグルコース残基の6位の少なくとも一部がホルミル化されていることを確認することができる。
これらは、上記の標準チャートから解析することができる。
 上記のようにNMR、特には多次元核磁気共鳴測定(3D-NMR測定)を行うことで、官能基が結合している相手方の構造が特定できる。これにより、本開示の官能基はリグノセルロースを構成するリグニン、セルロース、ヘミセルロースの少なくとも一部に結合していることが確認できる。
 同様にして、多次元核磁気共鳴測定(3D-NMR測定)をおこなって、本開示の成形品の標準チャートを解析することにより、ホルミル基のような官能基が結合している相手方の構造を特定することができる。これにより、本開示の成形品では、例えば、式(1)で示される官能基が、リグノセルロースを構成するリグニン、セルロース、ヘミセルロースの少なくとも一部に結合していることを確認することができる。
 (官能基の結合量)
 本開示の成形品において、リグノセルロースを構成するリグニン、セルロース及びヘミセルロースに結合している官能基の量は特に限定されず、本開示の効果が得られる範囲内で適宜調整される。例えば、多次元核磁気共鳴測定(3D-NMR測定)を用いて、官能基の結合量を特定する場合、多種多様の構造と結合した官能基の帰属を全ておこなう必要がある。この作業は非常に煩雑であり、官能基の結合量を求める方法として、現実的ではない。このため、本開示では、官能基の結合量を、赤外線吸収スペクトルのピーク強度に基づいて定量する方法を採用する。具体的には、薄膜化した成形品を吸光分析して得られる赤外線吸収スペクトルにより、リグニン、セルロース及びヘミセルロースに結合している官能基が検出される。例えば、式(1)で示される官能基の場合、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンに結合した官能基の量は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)により得られる吸収スペクトルにおいて、セルロースのC-O-C結合に帰属される1025cm-1のピークと、式(1)で示される官能基のC=O結合に帰属される1725cm-1のピークとの比率として定義される。即ち、縦軸を吸光度(ABS.:Absorbance)として出力した吸光スペクトルにおいて、式(1)で示される官能基の結合量は、式(1)で示される官能基のC=O結合に帰属されるピーク高さH1の、セルロースのC-O-C結合に帰属されるのピーク高さH2に対する比H1/H2として求められる。この官能基の結合量は、0.10以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.25以上がさらに好ましく、0.35以上が特に好ましく、また、2.00以下が好ましく、1.80以下がより好ましく、1.50以下がさらに好ましく、1.25以下がよりさらに好ましく、0.60以下が特に好ましい。官能基の結合量は、0.10~2.00であってよく、0.10~1.80であってよく、0.10~1.50であってよく、0.10~1.25であってよく、0.10~0.60であってよく、0.15~2.00であってよく、0.15~1.80であってよく、0.15~1.50であってよく、0.15~1.25であってよく、0.15~0.60であってよく、0.25~2.00であってよく、0.25~1.80であってよく、0.25~1.50であってよく、0.25~1.25であってよく、0.25~0.60であってよく、0.35~2.00であってよく、0.35~1.80であってよく、0.35~1.50であってよく、0.35~1.25であってよく、0.35~0.60であってよい。好ましい実施態様では、赤外吸収スペクトルにより求められる官能基の結合量は、0.35以上0.60以下である。
 赤外吸収スペクトルにより求められる官能基の結合量が0.10を下回る場合には、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンの水酸基に結合する官能基の量が十分ではなく、有機酸又は有機酸溶液への溶解時に、残渣として残留する不溶解物の量が増加する。また、成形品がフィルムの場合、この不溶解物が異物として残留して、フィルム厚みの均一性の異常となる。さらに、成形品のガラス転移温度が高いために、熱成形時に高温が必要である。このため、成形時に熱分解が生じることもあるので好ましくない。
 一方、赤外吸収スペクトルにより求められる官能基の結合量が2.00を上回る場合、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンの水酸基に官能基を結合させる過程で、水分含有量の低い有機酸溶液の使用、長時間の溶解処理、脱水効果を発揮するため高温での加熱溶解等が必要となる。このため、原料バイオマスを構成する多糖類あるいはセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの分子量が低下して、得られる成形品の物性、特に、折れ曲げ性、最大伸度、ヤング率等の強度が低下するため好ましくない。
 好ましい実施態様としては、式(1)で示される官能基がホルミル基の場合である。特に好ましい態様としては、赤外吸収スペクトルにより求められるホルミル基の結合量(以下、「ホルミル化度」と称する)が、0.35以上0.60以下である。この態様では、後述するように密度が1.20g/cm以上であっても、良好な折り曲げ性が発揮されうる。この態様の成形品は、強度と伸度との両方が要求され、なおかつ熱的な耐久性が求められる用途に適用することができる。例えば、パソコンの筐体、自動車のダッシュボード等の、高密度かつ高強度であり、高いガラス転移点が要求される用途には、ホルミル化度0.35~0.60であり、密度1.20g/cm以上の成形品が好適である。
 なお、本開示の成形品をフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で測定する際には、前処理をおこなって、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンに結合していない有機酸を全て測定用サンプルから除去する。従って、仮に、保管条件等によって、本開示の成形品中に加水分解した有機酸が存在する場合でも、この遊離した有機酸に由来する官能基は、本開示における官能基の結合量からは除外される。また、FT-IR測定用サンプルとして成形品の薄膜を得ることが難しい場合、所定の厚みのサンプルをATR法(全反射測定法)により測定してもよい。
 官能基の結合量は、リグノセルロースを含む粗粉末の溶解に使用する有機酸溶液の濃度及び溶解温度により調整することができる。例えば、有機酸溶液の濃度を高く、また、溶解温度を高くすることにより、官能基の結合量が多い成形品を得ることができる。また、有機酸とのエステル化反応は、反応系の温度を高くする、また、反応時間を長くすることにより、反応系がエステル化の方向に進行するので、官能基の結合量が増加する。
 本開示のリグノセルロース含有成形品に含まれるリグノセルロースは、原料バイオマス中のリグノセルロースが微粉砕処理を経ることなく可溶化されたものである。この成形品は、リグノセルロースに由来する繊維状物質を含んでいてもよい。繊維状物質は、セルロースI型結晶構造をもつものであってもよい。リグノセルロースに由来する繊維状物質とは、粉砕工程において破壊されなかったセルロース繊維であると考えられる。この繊維状物質の存在は、走査型電子顕微鏡観察により確認することができる。
 本開示のリグノセルロース含有成形品の密度は、1.20g/cm未満であるところ、1.15g/cm以下が好ましく、1.10g/cm以下がより好ましい。密度1.20g/cm未満の成形品は、折り曲げ性が良好である。機械的強度に優れるとの観点から、成形品の密度は、0.20g/cm以上が好ましく、0.30g/cm以上がより好ましい。
 一実施態様において、本開示のリグノセルロース含有成形品の密度は、1.6g/cm未満であってよい。好ましくは、官能基の結合量(特には、ホルミル化度)が0.35~0.60の場合、成形品の密度は1.2g/cm以上1.6g/cm未満であってよい。この成形品は、応力が高く、折れ曲げ性にも優れる。粗粉末の粒径を小さくして溶解することにより、官能基の結合量を大きくすることができる。なお、粗粉末の粒径を小さくして官能基の結合量を大きくする場合、密度が過度に低下して所望の折り曲げ性が得られない場合がある。なお、本開示の成形品の密度は、JIS Z 8807「固体の密度及び比重の測定方法」に準じて測定される見掛け密度である。
 本開示のリグノセルロース含有成形品は、亀裂等を生じることなく変形可能な機械的物性を有している。リグノセルロース含有成形品が有する引張特性は、その用途及び形状により適宜設定されるが、変形容易との観点から、この成形品のヤング率は0.05GPa以上が好ましく、1.0GPa以上がより好ましい。耐久性の観点から、好ましいヤング率は4.0GPa以下である。耐久性の観点から、この成形品の最大応力は、0.5MPa以上が好ましく、5.0MPa以上がより好ましく、10MPa以上がさらに好ましく、20MPa以上が特に好ましい。変形容易との観点から、好ましい最大応力は80MPa以下である。変形容易との観点から、この成形品の最大伸度は0.5%以上が好ましく、1.5%以上がより好ましい。耐久性の観点から、好ましい最大伸度は5.0%以下である。なお、リグノセルロース含有成形品のヤング率、最大応力及び最大伸度は、ISO527-1の規定に準拠した引張試験により測定される。測定方法及び測定条件の詳細は、実施例にて後述する。
 例えば、原料バイオマスをより微細に粉砕して粗粉末の粒径を小さくする、また、溶解工程で高濃度の有機酸を使用することで、セルロースI型構造を有する結晶成分の少ないリグノセルロース溶液を得ることができる。このリグノセルロース溶液から得られる成形品は、最大伸度が大きく、表面平滑性が高い。一方、原料バイオマスの粉砕比を小さくして粗粉末の粒径を大きくする、また、溶解工程で使用する有機酸濃度を低くする、あるいは、溶解時間を短くすることにより、セルロースI型構造を有する結晶成分を多く含むリグノセルロース溶液が得られる。このリグのせるロール溶液から得られる成形品は、最大応力(強度)が高い。このように、本開示の製造方法によれば、成形品に要求される特性、粉砕工程でのエネルギー効率、生産性、溶解工程での溶解効率、有機酸の回収エネルギー等を考慮して、各工程における方法及び条件を選択することにより、所望の成形品を得ることができる。
 高い耐熱性が得られるとの観点から、本開示のリグノセルロース含有成形品のガラス転移温度Tgは、100℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、210℃以上がさらに好ましく、220℃以上が特に好ましい。上限値は特に限定されないが、好ましいガラス転移温度Tgは280℃以下である。本開示の成形品のガラス転移温度は、動的粘弾性測定により測定される。測定方法及び測定条件の詳細は、実施例にて後述する。
 本開示のリグノセルロース含有成形品が、一般式M(SO(式中、Mは3価の金属であり、MはNH又は1価の金属である)で示される金属塩を含んでもよい。この金属塩の例として、リグノセルロース溶液の製造方法に関して前述した金属塩が挙げられる。このリグノセルロース含有成形品が前述した金属塩を含む場合、この成形品中の金属塩の含有量は、成形品100重量部に対して、1重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。好ましい金属塩の含有量は20重量部以下である。本開示の効果が阻害されない範囲で、リグノセルロース含有成形品が、色素等既知の添加剤をさらに含んでもよい。
 本開示の成形品は、有機酸に対する溶解性に優れている。詳細には、この成形品は、有機酸に対する不溶物量が5.0質量%以下である。本願明細書において、有機酸に対する不溶物量は、成形品を粗粉砕して得られる粗粉末を、この粗粉末1重量部に対して50重量部の有機酸と混合して溶解した後、得られた溶解液を20メッシュの篩に通した際に、篩上の残る残渣の重量を測定する溶解試験により求められる。この残渣の、有機酸と混合した粗粉末に対する割合(質量%)が、不溶物量として算出される。この溶解試験において、有機酸と粗粉末とを混合する前及び/又は混合した後に、減圧又は加圧する調圧工程をおこなってもよい。
 本開示のリグノセルロース含有成形品は、その少なくとも一部に有機酸がエステル結合したセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含む。セルロース、ヘミセルロース及びリグニンは、それぞれ特有の数平均分子量を有している。そのため、本開示の成形品をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定して得られるクロマトグラムでは複数のピークが検出される場合がある。代表的には、分子量が大きい順に、第一のピーク及び第二のピークが検出される。第一のピークの数平均分子量は、5万~1000万であってよく、10万~500万であってよく、20万~200万であってよい。第二のピークの数平均分子量は、500~10万であってよく、800~5万であってよく、1000~1万であってよい。なお、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンの分子量が近接している場合には、複数のピークが重複して、単一ピークとして検出される場合もある。GPCによる分子量の測定方法及び測定条件の詳細は、実施例にて後述する。
 前述した通り、本開示のリグノセルロース含有成形品は、その少なくとも一部に有機酸がエステル結合したセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含む。そのため、本開示の成形品が、DMSOに溶解しない不溶解物を含む場合がある。本開示の成形品がDMSOに溶解しない不溶解物を含む場合、その成形品中のDMSO不溶解物の量は特に限定されないが、例えば、その量は0質量%を超えて80質量%以下であってよく、5.0~80質量%であってよい。DMSO不溶解物量の測定方法及び測定条件は、実施例にて後述する。なお、付言として、DMSOに溶解しない成分の存在は、前述した有機酸に溶解しない成分を意味するものではない。ギ酸等の有機酸には溶解するもののDMSOには溶解しないため、GPCによる分子量測定できない成分の存在を意味するだけである。
 本開示のリグノセルロース含有成形品の形状等は特に限定されないが、代表的な成形品としてシート又はフィルムが挙げられる。リグノセルロースを含むシート及びフィルムは、例えば、リグノセルロース溶液を基材上に流延する工程と、基材上のリグノセルロース溶液を乾燥する工程とを含む製造方法により得られる。フィルム又はシートの厚さは、その用途に応じて選択することができるが、例えば、フィルムは厚さ10~300μmであってよく、10~150μmが好ましく、10~100μmがより好ましい。シートは厚さ300~600μmであってよい。
 従来、原料バイオマスを微粉砕して得られるリグノセルロースから形成されたシート及びフィルムは、乾燥時に脆く、折曲げにより亀裂が生じる。これに対し、本開示のリグノセルロース溶液から形成されたシート及びフィルムは、原料バイオマスの微粉砕処理を経ていないため、リグノセルロースに由来する繊維状物質を含む。この繊維状物質を含むことにより、シート及びフィルムの折り曲げ性が向上する。本開示のリグノセルロース溶液から形成されたシート及びフィルムは、90度以上の角度で折り曲げたときに亀裂が生じない。
 また、本開示のリグノセルロース含有成形品とは、換言すれば、原料バイオマスに由来する物性を備えた、原料バイオマスを主成分とする成形品である。この成形品は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンが有する物性を備えることができる。この成形品は、例えば、抗菌性、紫外線吸収性、金属吸着能等の機能が求められるフィルム、繊維、壁紙等として、医療、衣服、住宅設備等の分野に適用することができる。特に、フィルム又はシート形状の成形品が有用である。
 以下、実施例によって本開示の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本開示が限定的に解釈されるべきではない。
 [溶解試験]
 [実施例1]
 ユーカリのチップを、20メッシュの篩を装着したウィレーミルを用いて粉砕した後、得られた木粉を、JIS標準篩を用いて分級した。目開き500μmの篩を通過し、目開き355μmの篩を通過しない粒子を採取して、ユーカリ木粉(粒子径355μ~500μm)を得た。得られた粗粉末が図1に示されている。
 次に、200mgのユーカリ木粉を容量30mlのフラスコに投入し、窒素ガス雰囲気下で、濃度80質量%のギ酸溶液(ナカライテスク社製)を10ml添加した。続いて、フラスコに水流アスピレーターを接続して30分間減圧することにより5kPa(絶対圧)に調整した後、2分間窒素ガスを添加し、撹拌しながら50℃に昇温した。50℃で7日間経過後、目視にて、ユーカリ木粉が消失し、実施例1のリグノセルロース溶液が得られたことを確認した。実施例1のリグノセルロース溶液が、図2に示されている。
 [実施例2-32]
 原料バイオマスの種類、溶解条件等を下表1-8に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2-32のリグノセルロース溶液を得た。実施例22及び24では、金属塩として硫酸アルミニウムカリウム12水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製)を使用した。実施例25-28及び30-32では、純度98質量%以上のギ酸(ナカライテスク社製)を蒸留水で稀釈して、下表7及び8に示す濃度に調整したギ酸溶液を使用した。下表7中、ギ酸濃度100%として示されている実施例29では、純度98質量%以上のギ酸(ナカライテスク社製)を稀釈することなくそのまま使用した。いずれの溶液中にも木粉の残存は視認されなかった。
 [比較例1]
 ユーカリのチップをボールミルに投入して48時間粉砕することにより、微粉末を得た。この微粉末が、目開き75μmのJIS標準篩を全量通過することを確認した。得られた微粉末200mgを容量30mlのフラスコに投入し、窒素ガス雰囲気下で、濃度80質量%のギ酸(ナカライテスク社製)を10ml添加した。室温で1日間撹拌した後、微粉末の消失を目視にて確認した。
 [比較例2]
 原料バイオマスとしてスギの木粉を用いた以外は比較例1と同様にして溶解試験をおこなった。室温で1日間撹拌した後、微粉末の消失を目視にて確認した。
 [製膜試験]
 実施例1-29及び比較例1-2のリグノセルロース溶液を、それぞれ、セロファン上に流延した後、室温下、蓋付きの培養皿に一晩静置した後、3時間減圧することにより、リグノセルロース含有シートを得た。また、実施例30-32のリグノセルロース溶液を、それぞれ、セロファン上に流延した後、室温下、培養皿に蓋をせずに一晩静置した後、3時間減圧することにより、リグノセルロース含有シートを得た。実施例1のリグノセルロース含有シートの外観が、図3に示されている。各シートの物性を以下の方法にて評価した。
 [密度]
 JIS Z 8807「固体の密度及び比重の測定方法」に準じて、実施例1-32及び比較例1-2のリグノセルロース含有シートの見掛け密度(g/cm)を測定した。各5回の測定値の平均が、下表1-8に示されている。
 [引張特性評価]
 実施例1-26及び30-32並びに比較例1-2のリグノセルロース含有シートを打ち抜いてダンベル形状の試験片を作成した。比較例1及び2は、打ち抜き時に破損して試験片を作成できなかったため、以下の引張試験はおこなわなかった。
 引張試験機(エー・アンド・デイ社製の商品名「万能引張試験機(テンシロン)RTG-1310」)を使用して、ISO527-1の規定に準拠して引張試験(引張速度10mm/min、つかみ具間距離50mm)をおこない、実施例1-24のヤング率(単位:GPa)、最大応力(単位:MPa)及び最大伸度(単位:%)を測定した。各5回の測定値の平均が、下表1-6及び8に示されている。なお、実施例30-32のヤング率は測定しなかった。
 [ガラス転移温度]
 動的粘弾性測定装置(TA instruments社製の商品名「RSA G2」)を使用して、実施例1-24及び比較例1-2のリグノセルロース含有シートのガラス転移温度を測定した。測定は、窒素雰囲気下、温度範囲-90~200℃、昇温速度3℃/分、印加歪0.1%、周波数1Hzでおこなった。貯蔵弾性率、損失弾性率及び損失正接tanδが極大値を示した温度が、それぞれTg(1)、Tg(2)及びTg(3)として、下表1-6に示されている。
 [折れ曲げ性]
 実施例1-16及び30-32並びに比較例1-2のリグノセルロース含有シートを90度以上の角度で折り曲げたときの状態を評価した。評価結果が下表1-4及び8に示されている。表中、折り曲げ性「G」は、90度以上折り曲げても亀裂が生じなかったことを示し、折り曲げ性「B」は、90度まで折り曲げる際に亀裂、白化等が生じたことを示す。
 [走査型電子顕微鏡観察]
 走査型電子顕微鏡を用いて、実施例1及び比較例1のリグノセルロース含有シートの表面状態及び断面状態を観察した。断面状態は、各シートから採取した試験片を樹脂に包埋後、ミクロトームを用いて断面を切り出すことにより観察した。図4に、実施例1の表面状態(倍率500倍(4a)、1000倍(4b))が示されている。図5に、実施例1の断面状態(倍率100倍(5a)、300倍(5b))が示されている。図6に、比較例1の表面状態(倍率500倍(6a)、1000倍(6b))が示されている。図7に、比較例1の断面状態(倍率300倍(7a)、1000倍(7b))が示されている。
 [分子量評価]
 実施例25-29のリグノセルロース含有シートから各5mgを採取して精秤した後、容量5mLのバイヤル瓶に投入した。このバイヤル瓶に、ジメチルスルホキシド(DMSO、富士フィルム和光純薬社製)5gを添加して、常温で4日間撹拌した後、減圧ろ過をおこなって、ろ液とろ過残渣とをそれぞれ回収した。
 得られたろ過残渣を蒸留水で洗浄して、デシケータ内に静置し、1週間減圧乾燥した後、乾燥物の重量を測定した。DMSOに投入したシートの重量に対する乾燥物の重量の比率を算出した。算出結果が、DMSO不溶解物量として、下表7に示されている。
 一方、減圧ろ過で得られたろ液は、孔径0.2μmのフィルターを用いてろ過した後、以下の測定条件で、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC測定)に供した。得られたクロマトグラムでは、2~3種類のピークが検出された。ピーク面積に基づいて算出した構成比率が1%以上のピークについて、数平均分子量Mnと、各ピークの構成比率(%)とを求めた。得られた結果が、分子量の大きい順にP(1)、P(2)及びP(3)として、下表7に示されている。
  測定装置:島津製作所製の商品名「HPLC-Prominence」
  カラム:アジレント・テクノロジー社製の商品名「PLGEL 20μm MIXED-A (300mm - 7.5m)」
  移動相:ジメチルスルホキシド(DMSO)
  流速:0.5mL/min
  カラム温度:40℃
  検出器:示差屈折率検出器(RID)
  保持時間:60min
  試料注入量:50μL
  標準試料:プルラン(Mw=736,000、343,000、202,000、110,000、50,600、23,000、9,900、6,600)
 [官能基の結合量(ホルミル化度)評価]
 実施例1-32のリグノセルロース含有シートの赤外吸収スペクトル分析をおこなった。詳細には、前処理として、真空乾燥機を使用して、実施例1-32のリグノセルロース含有シートを温度80℃で3時間減圧乾燥した。その後、真空乾燥機から取り出したシートを、直ちに、赤外吸収スペクトル分析に供した。分析には、フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー社製)を使用した。ATR法にて得られたスペクトルから、官能基(ホルミル基)のC=O結合に基づくピーク(波長1725cm-1)の吸光度H1と、セルロースのエーテル結合(C-O-C結合)に基づくピーク(波長1025cm-1)の吸光度H2とを求め、H2に対するH1の比H1/H2を算出した。得られた結果が、ホルミル化度(IR)として、下表1-8に示されている。
 [官能基(ホルミル基)の結合状態の評価]
 実施例17-29のリグノセルロース含有シート約600mgを採取して、容量50mLのバイヤル瓶に投入した。このバイヤル瓶に、10mlのギ酸を添加して、24時間室温で攪拌することにより、再溶解液を得た。各再溶解液に、20mlの2-メチルテトラヒドロフランと80mlの超純水を加え、激しく攪拌した後、遠心分離(1,2000g、20分間)をおこなって、3層に分離させた。各層から分画成分を採取して乾燥させた後、前述した方法により、官能基(ホルミル基)の結合状態を評価した。
 乾燥した2-メチルテトラヒドロフラン画分を0.5mlのDMSO-d6に溶解して、2D 1H-13C HSQC, HMBC, 3D TOCSY-HSQCで測定した。以下、実施例17について記載する。実施例17で得られたNMRチャートが、図8に示されている。50℃で可溶して形成したユーカリフィルム中のホルミル基の2D 1H-13C HSQCスペクトルは、脂肪族領域内でHSQCのボックス内に表示されている。2次元1H-13C HMBCスペクトルのホルミルプロトンと炭素領域とは、それぞれ縦と下の横長の四角内に示されている。HSQCボックス内に挿入した点線四角と円は、それぞれホルミル基を持つβ-O-4とβ-5ユニットのユニット間相関を示した。丸印は四角印の1.7倍低い等高線レベルである。3次元TOCSY-HSQCスペクトルはF3 = 5.44 ppmのF1-F2平面(β-5αのプロトン共鳴)であった。また、β-O-4のホルミル化a位とg位はそれぞれa, g-F-Aa, a, g-F-Ag1/ F-Ag2、β-5のg位はF-Bg2、キシランの3位は3-F-X3とHSQC boxで示され、HMBCとTOCSYで相関した信号として確認された。また、β-O-4、β-5、キシロースのシグナルがそれぞれ認められた。
 実施例17の乾燥したセルロースリッチの沈殿物画分を、ボールミルで微粉砕した。この粉砕サンプルを0.5mlのDMSO-d6:pyridine-d5 (4:1, v/v)に溶解して、超音波を3時間かけたものを2D 1H-13C HSQC及びHMBCで測定した。得られたNMRチャートが、図11に示されている。図11のHMBCの縦長の四角は2D 1H-13C HMBCスペクトルのホルミルプロトン領域である。セルロースの6位のグルコースがホルミル化されたシグナルは6-F-C6となる。リグニンのβ-O-4結合のa, g-F-Aaの位置はHMBCとの相関が認められた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000014
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000016
 表1-8に示されるように、実施例の製造方法によれば、環境負荷の大きい化学薬品を用いることなく、かつ、原料バイオマスの微粉砕を要することなく、リグノセルロース溶液及び成形品を得ることができる。表8の結果から、有機酸濃度が低い程、成形品の最大応力が高い傾向にあることが確認できる。また、図4-6に示されるように、実施例1のリグノセルロース含有シートには、比較例1とは異なり、原料バイオマス中のリグノセルロースに由来する繊維状物質が存在する。これにより、実施例1のリグノセルロース含有シートでは、比較例と比べて、低い密度による軽量性、高いガラス転移温度による優れた耐熱性、及び、良好な耐折れ曲げ性が達成されたと考えられる。
 以上の評価結果から、本開示の優位性は明らかである。本開示の製造方法は、リグノセルロースを含む種々のバイオマスの利用に適用されうる。
 [開示項目]
 以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態を開示する。
 [項目1]
 リグノセルロースを含むバイオマスを粗粉砕して、粗粉末を得る粉砕工程と、
 上記粗粉末と有機酸とを混合する混合工程と、
 上記粗粉末を上記有機酸に溶解する溶解工程と、
を有している、リグノセルロース溶液の製造方法。
 [項目2]
 上記粗粉末が、粒子径0.35mm以上の粒子を含む、項目1に記載の製造方法。
 [項目3]
 上記有機酸が、α-ケト酸、又は、ホルミル基を有するカルボン酸である、項目1又は2に記載の製造方法。
 [項目4]
 上記有機酸が、ギ酸、グリオキシル酸及びピルビン酸からなる群から選択される、項目1から3のいずれかに記載の製造方法。
 [項目5]
 上記有機酸と溶媒に溶解して有機酸溶液を調製する工程をさらに有し、
 上記混合工程では、上記粗粉末に上記有機酸溶液を添加する、項目1から4のいずれかに記載の製造方法。
 [項目6]
 上記有機酸溶液の濃度が75質量%未満である、項目5に記載の製造方法。
 [項目7]
 上記溶解工程で、上記有機酸と、一般式M(SO(式中、Mは3価の金属であり、MはNH又は1価の金属である)で示される金属塩とが併用される、項目1から6のいずれかに記載の製造方法。
 [項目8]
 上記金属塩が硫酸アルミニウムカリウムである、項目7に記載の製造方法。
 [項目9]
 上記混合工程前及び/又は混合工程後に、減圧又は加圧する調圧工程をさらに含む、項目1から8のいずれかに記載のリグノセルロース溶液の製造方法。
 [項目10]
 上記調圧工程において1.0kPa以上10.0kPa以下(絶対圧)の範囲で減圧する、項目9に記載の製造方法。
 [項目11]
 上記調圧工程において200kPa以上1000kPa以下(ゲージ圧)の範囲で加圧する、項目9に記載の製造方法。
 [項目12]
 上記溶解工程における溶解温度が100℃以下である、項目1から11のいずれかに記載の製造方法。
 [項目13]
 項目1から12のいずれかに記載の製造方法により得られるリグノセルロース溶液。
 [項目14]
 項目13に記載のリグノセルロース溶液から形成される、リグノセルロース含有成形品。
 [項目15]
 リグノセルロースを主成分として含み、その密度が1.20g/cm未満であり、実質的に接着剤成分を含まない、リグノセルロース含有成形品。
 [項目16]
 リグノセルロースを主成分として含み、その密度が1.20g/cm未満であり、
 上記リグノセルロースを構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの少なくとも一部と、有機酸とがエステル結合を形成している、リグノセルロース含有成形品。
 [項目17]
 上記リグノセルロースを構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの水酸基の少なくとも一部に、下記式(1)で示される官能基が結合されており、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
 
上記式(1)中、Rは水素原子又は下記式(2)で示される官能基であり、この式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基である、項目15又は16に記載のリグノセルロース含有成形品。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
 
 [項目18]
 リグノセルロースを主成分として含み、その密度が1.60g/cm未満であり、
 上記リグノセルロースを構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの水酸基の少なくとも一部に、下記式(1)で示される官能基が結合されており、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
 
 上記式(1)中、Rは水素原子又は下記式(2)で示される官能基であり、この式(2)中、Rが水素原子又はメチル基であり、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
 
 赤外線吸収スペクトルから求められる上記官能基の結合量が、0.35以上0.60以下である、リグノセルロース含有成形品。
 [項目19]
 一般式M(SO(式中、Mは3価の金属であり、MはNH又は1価の金属である)で示される金属塩をさらに含む、項目15~18のいずれかに記載のリグノセルロース含有成形品。
 [項目20]
 上記リグノセルロースに由来する繊維状物質を含む、項目15から19のいずれかに記載のリグノセルロース含有成形品。
 [項目21]
 シート又はフィルムである、項目15から20のいずれかに記載のリグノセルロース含有成形品。
 [項目22]
 90度以上の角度で折り曲げたときに亀裂が生じない、項目21に記載のリグノセルロース含有成形品。
 [項目23]
 ガラス転移温度Tgが200℃以上である、項目15から22のいずれかに記載のリグノセルロース含有成形品。
 [項目24]
 以下の溶解試験により求められる不溶物量が5質量%以下である、項目15から23のいずれかに記載のリグノセルロース含有成形品。
 (溶解試験)
 成形品を粗粉砕して得られる粗粉末を、この粗粉末1重量部に対して50重量部の有機酸と混合して溶解する。得られた溶解液を20メッシュの篩に通した後、篩上の残る残渣の重量を測定し、この残渣の、上記有機酸と混合した粗粉末に対する割合(単位:質量%)を、不溶物量として求める。
 [項目25]
 上記リグノセルロースが可溶化されたリグノセルロースである、項目15から24のいずれかに記載のリグノセルロース含有成形品。
 [項目26]
 上記リグノセルロースが、
(1)グルコース残基の6位の少なくとも一部が有機酸でエステル化されたセルロース
(2)キシロース残基の3位の少なくとも一部有機酸でエステル化されたキシランを主要骨格とするヘミセルロース
及び
(3)結合部位であるβ-0-4及びβ-5のα位及び/又はγ位の少なくとも一部が有機酸でエステル化されたリグニン
から選択される1又は2以上を含んで構成されている、請求項15から25のいずれかに記載のリグノセルロース含有成形品。

Claims (26)

  1.  リグノセルロースを含むバイオマスを粗粉砕して、粗粉末を得る粉砕工程と、
     上記粗粉末と有機酸とを混合する混合工程と、
     上記粗粉末を上記有機酸に溶解する溶解工程と、
    を有している、リグノセルロース溶液の製造方法。
  2.  上記粗粉末が、粒子径0.35mm以上の粒子を含む、請求項1に記載の製造方法。
  3.  上記有機酸が、α-ケト酸、又は、ホルミル基を有するカルボン酸である、請求項1に記載の製造方法。
  4.  上記有機酸が、ギ酸、グリオキシル酸及びピルビン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の製造方法。
  5.  上記有機酸を溶媒に溶解して有機酸溶液を調製する工程をさらに有し、
     上記混合工程では、上記粗粉末に上記有機酸溶液を添加する、請求項1に記載の製造方法。
  6.  上記有機酸溶液の濃度が75質量%未満である、請求項5に記載の製造方法。
  7.  上記溶解工程で、上記有機酸と、一般式M(SO(式中、Mは3価の金属であり、MはNH又は1価の金属である)で示される金属塩とが併用される、請求項1に記載の製造方法。
  8.  上記金属塩が硫酸アルミニウムカリウムである、請求項7に記載の製造方法。
  9.  上記混合工程前及び/又は混合工程後に、減圧又は加圧する調圧工程をさらに含む、請求項1に記載のリグノセルロース溶液の製造方法。
  10.  上記調圧工程において1.0kPa以上10.0kPa以下(絶対圧)の範囲で減圧する、請求項9に記載の製造方法。
  11.  上記調圧工程において200kPa以上1000kPa以下(ゲージ圧)の範囲で加圧する、請求項9に記載の製造方法。
  12.  上記溶解工程における溶解温度が100℃以下である、請求項1に記載の製造方法。
  13.  請求項1に記載の製造方法により得られるリグノセルロース溶液。
  14.  請求項13に記載のリグノセルロース溶液から形成される、リグノセルロース含有成形品。
  15.  リグノセルロースを主成分として含み、その密度が1.20g/cm未満であり、実質的に接着剤成分を含まない、リグノセルロース含有成形品。
  16.  リグノセルロースを主成分として含み、その密度が1.20g/cm未満であり、
     上記リグノセルロースを構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの少なくとも一部と、有機酸とがエステル結合を形成している、リグノセルロース含有成形品。
  17.  上記リグノセルロースを構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの水酸基の少なくとも一部に、下記式(1)で示される官能基が結合されており、
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
     
     上記式(1)中、Rは水素原子又は下記式(2)で示される官能基であり、この式(2)中、Rが水素原子又はメチル基である、請求項15又は16に記載のリグノセルロース含有成形品。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
     
  18.  リグノセルロースを主成分として含み、その密度が1.60g/cm未満であり、
     上記リグノセルロースを構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの水酸基の少なくとも一部に、下記式(1)で示される官能基が結合されており、
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
     
     上記式(1)中、Rは水素原子又は下記式(2)で示される官能基であり、この式(2)中、Rが水素原子又はメチル基であり、
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
     
     赤外線吸収スペクトルから求められる上記官能基の結合量が、0.35以上0.60以下である、リグノセルロース含有成形品。
  19.  一般式M(SO(式中、Mは3価の金属であり、MはNH又は1価の金属である)で示される金属塩をさらに含む、請求項15、16又は18に記載のリグノセルロース含有成形品。
  20.  上記リグノセルロースに由来する繊維状物質を含む、請求項15、16又は18に記載のリグノセルロース含有成形品。
  21.  シート又はフィルムである、請求項15、16又は18に記載のリグノセルロース含有成形品。
  22.  90度以上の角度で折り曲げたときに亀裂が生じない、請求項21に記載のリグノセルロース含有成形品。
  23.  ガラス転移温度Tgが200℃以上である、請求項15、16又は18に記載のリグノセルロース含有成形品。
  24.  以下の溶解試験により求められる不溶物量が5質量%以下である、請求項15、16又は18に記載のリグノセルロース含有成形品。
     (溶解試験)
     成形品を粗粉砕して得られる粗粉末を、この粗粉末1重量部に対して50重量部の有機酸と混合して溶解する。得られた溶解液を20メッシュの篩に通した後、篩上の残る残渣の重量を測定し、この残渣の、上記有機酸と混合した粗粉末に対する割合(単位:質量%)を、不溶物量として求める。
  25.  上記リグノセルロースが可溶化されたリグノセルロースである、請求項15、16又は18に記載のリグノセルロース含有成形品。
  26.  上記リグノセルロースが、
    (1)グルコース残基の6位の少なくとも一部が有機酸でエステル化されたセルロース
    (2)キシロース残基の3位の少なくとも一部有機酸でエステル化されたキシランを主要骨格とするヘミセルロース
    及び
    (3)結合部位であるβ-0-4及びβ-5のα位及び/又はγ位の少なくとも一部が有機酸でエステル化されたリグニン
    から選択される1又は2以上を含んで構成されている、請求項15、16又は18に記載のリグノセルロース含有成形品。
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