WO2023026311A1

WO2023026311A1 - 変色材料及び変色性着色剤

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Publication number: WO2023026311A1
Application number: PCT/JP2021/030697
Authority: WO
Inventors: 陽介北川; 勇人白松; 智浩水原
Original assignee: 株式会社松井色素化学工業所
Priority date: 2021-08-21
Filing date: 2021-08-21
Publication date: 2023-03-02
Also published as: JPWO2023026311A1; EP4389831A1; CN117836375A

Abstract

水又は水を含有する液体によって変色し得、水又は水を含有する液体の検知に有効に利用し得る変色材料及び変色性着色剤の提供。　電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するものの３成分、並びに対象物への定着のための親油性固着剤を含む定着用材料を含有する組成物であって、水又は水を含有する液体によって変色し得る変色材料。少なくとも前記３成分からなり、水又は水を含有する液体によって変色し得る変色性組成物が、所定微小体に保持又は担持されてなり、水又は水を含有する液体によって変色し得る変色性着色剤。前記変色性着色剤と前記定着用材料を含有し、水又は水を含有する液体によって変色し得る変色材料。

Description

変色材料及び変色性着色剤

　本発明は、水又は水を含有する液体によって変色し得る変色材料及び変色性着色剤に関する。

　水分インジケーター又は結露インジケーター用のインキ組成物や発色組成物として、例えば次のようなものが開示されている。

　特開２００３－１８３５４６号公報には、ポリビニルピロリドンに炭素数２～２２のアルキル基を、樹脂全体に対し、１～８０重量％含有するようグラフト重合させてなる樹脂、および／または、ヒドロキシエチルセルロースおよび／またはヒドロキシプロピルセルロースの親水基の末端のＯＨ基に、炭素数２～２２のアルキル基を片側に有する、オレフィンオキシド、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、またはグリシド酸エステルからなる群から選択される少なくとも１つをグラフト重合させてなる樹脂と、着色剤としての顔料とから主としてなる水分インジケーター用インキ組成物が開示されている。

　この水分インジケーターインクは、印刷されたインジケーター部分のインク被膜が水分により溶け出して図柄が崩れ去ることにより水との接触を視認し得るものである。

　特開２００５－１８５６４３号公報には、少なくともインキバインダー、水分の存在下で塩基性物質からなる顕色剤の働きかけで発色する着色剤及びｐＨ調整剤を含有する水分インジケーターインキ組成物を、該顕色剤を有するシートに印刷することにより、尿や水分用のインジケーターとして機能し、着色剤が流出せず、色調が目立つものが開示されている。

　特許第４６０７３５０号公報には、基材上にあって結露水分の観察面側に設けられ粉体の水溶性染料の露出している変色層が、
前記水溶性染料の０．０１～２０重量部と、その表面で結露した水及びそれにより溶解した前記水溶性染料を拡散するものでポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、石油系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ケトン系樹脂、セルロース系樹脂から選ばれる疎水性樹脂の３～９重量部及び前記水溶性染料を非溶解の有機溶剤からなるインキビヒクルと、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、酸化白土、カオリン、ベントナイト及びセリサイトから選ばれる少なくとも一種類であって前記粉体の水溶性染料を隠蔽し前記拡散した前記水に溶解した前記水溶性染料で染色される隠蔽性粉体の１０重量部とを含んでいるインキの１００重量部によって、
前記染色により変色する膜状に形成されている結露インジケータが開示されている。

　この結露インジケーターは、粉体状に印刷した水溶性染料が結露などの水分に溶解し、染料が流れ出す等して拡散することにより色を呈するものである。

　特許６７６７０２１号公報には、樹脂（Ａ）と、接触する液体のｐＨに応じて変色する呈色性化合物（Ｂ）と、親水性溶媒（Ｃ）とを含有し、樹脂（Ａ）が、第４級アンモニウム塩基を有する樹脂である水分インジケータ用インキ組成物、並びに、液不透過性かつ透湿性のシート状基材と、シート状基材の一方の表面に印刷された、前記の水分インジケータ用インキ組成物で構成される水分検知部とを備える水分検知シートが開示されている。

　すなわち、水分検知後も呈色性化合物が溶出しにくく、基材への密着性及びデザイン性に優れた水分検知部を形成することが可能な、フレキソ印刷法やグラビア印刷法等の各種印刷方法に適した水分インジケータ用インキ組成物、及びそれを用いた水分検知シートである。

　特許５９９６４００号公報には、電子供与性呈色性有機化合物、フェノール性水酸基を有する酸と水酸基とカルボン酸基を有する酸とカルボン酸基を複数有する酸から選ばれた少なくとも１種、水溶性及び油溶性樹脂、シクロデキストリン、及び溶剤を含有する水分インジケーター用組成物であって、水分インジケーター用組成物を基材に塗布後、水分検知前に無色であるが、水分を検知すると十分に発色し得るとされるものが開示されている。

　この水分インジケーター用組成物は、シクロデキストリンを含有することにより、ポリビニルピロリドン等の水溶性及び油溶性樹脂を用いた場合の減感作用を抑制させ、発色及び消色の程度を明確にさせることができ、目視にて容易に確認することができるものとされている。

　電子機器、電子部品、精密機器等においては、結露や水没に起因するトラブル発生を可及的に防止し又は速やかに善後策を講じ得るものとする上で、結露や水没を早期に確実に検知することが求められており、その他の様々な製品においても、水分管理のための水分検知が求められている。また、幼児用及び大人用の紙おむつや各種生理用品においては、水分検知によって交換時期等を、より的確且つ速やかに示すことが求められている。

　このような点において、前記の水分インジケーター又は結露インジケーター用のインキ組成物や発色組成物は、必ずしも十分なものであるとは考えられない。

特開２００３－１８３５４６号公報特開２００５－１８５６４３号公報特許第４６０７３５０号公報特許６７６７０２１号公報特許５９９６４００号公報

　本発明は、水又は水を含有する液体によって変色し得、水又は水を含有する液体の検知に有効に利用し得る変色材料及び変色性着色剤を提供することを目的とする。

　本発明は、例えば次のように表すことができる。

　(1) 電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するもの、並びに対象物への定着のための親油性固着剤を含む定着用材料を含有する組成物であって、
水又は水を含有する液体によって変色し得るものであることを特徴とする変色材料。

　(2) 上記対象物に定着した状態において、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである上記(1)記載の変色材料。

　(3) 上記呈色調整剤の溶解度パラメーター（δ）が１０以上であり、
上記電子受容性化合物と前記呈色調整剤の溶解度パラメーター（δ）の差がプラスマイナス３以内である上記(1)又は(2)記載の変色材料。

　(4) 上記親油性固着剤の溶解度パラメーター（δ）が１２以下である上記(1)乃至(3)の何れか１項に記載の変色材料。

　(5) 上記定着用材料が含有する全固着剤中に、溶解度パラメーター（δ）が１２以下である親油性固着剤を、８０重量％以上含有し、
上記前記電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び呈色調整剤と前記全固着剤が均一状に混合した上記(1)乃至(4)の何れか１項に記載の変色材料。

　(6) 上記の溶解度パラメーター（δ）が１２以下である親油性固着剤が、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンブタジエン共重合樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジン酸エステル、マイクロスタリンＷＡＸ、パラフィンＷＡＸ、及び、ポリエチレンＷＡＸからなる群から選ばれた１種又は２種以上である上記(5)記載の変色材料。

　(7) 上記親油性固着剤を含む定着用材料が、当該親油性固着剤が揮発性有機溶剤に溶解又は溶解及び分散してなるビヒクルである上記(1)乃至(6)の何れか１項に記載の変色材料。

　(8) 上記親油性固着剤の溶解度パラメーター（δ）及び上記揮発性有機溶剤の溶解度パラメーター（δ）が、何れも１２以下である上記(7)記載の変色材料。

　(9) 上記定着用材料中の全固着剤が、沸点が２００℃以下の揮発性有機溶剤に溶解し又は溶解及び分散しており、
前記定着用材料が含有する全揮発性有機溶剤中に、前記沸点が２００℃以下の揮発性有機溶剤であって溶解度パラメーター（δ）が１２以下であるものを、８０重量％以上含有する上記(7)又は(8)記載の変色材料。

　(10) ホットメルト型印刷インク、有機溶剤蒸発乾燥型印刷インク、熱硬化型ドライオフセットインク、又は静電潜像現像用トナーである上記(1)乃至(9)の何れか１項に記載の変色材料。

　(11) 少なくとも電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するものからなり、水又は水を含有する液体によって変色し得る変色性組成物が、
所定微小体に保持又は担持されてなり、水又は水を含有する液体によって変色し得るものであることを特徴とする変色性着色剤。

　(12) 上記所定微小体は、上記保持又は担持している変色性組成物に水又は水を含有する液体が接し得るものである上記(11)記載の変色性着色剤。

　(13) 上記所定微小体のうち、少なくとも上記変色性組成物を保持又は担持する部分が、塩基性又は中性を呈する上記(11)又は(12)記載の変色性着色剤。

　(14) 上記所定微小体が多孔性物質である上記(11)乃至(13)の何れか１項に記載の変色性着色剤。

　(15) 上記多孔性物質の細孔容積が０．３ｃｍ^３/ｇ以上である上記(14)記載の変色性着色剤。

　(16) 上記多孔性物質の平均細孔径が２０オングストローム以上である上記(14)又は(15)記載の変色性着色剤。

　(17) 上記(11)乃至(16)の何れか１項に記載の変色性着色剤と、対象物への定着のための親油性固着剤を含む定着用材料を含有し、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである変色材料。

　(18) 上記対象物に定着した状態において、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである上記(17)記載の変色材料。

　(19) ホットメルト型印刷インク、有機溶剤蒸発乾燥型印刷インク、熱硬化型ドライオフセットインク、又は静電潜像現像用トナーである上記(17)又は(18)記載の変色材料。

　(20) 上記(1)乃至(9)並びに(17)及び(18)の何れか１項に記載の水又は水を含有する液体によって変色し得る変色材料が定着してなる物品。

　本発明の変色材料及び変色性着色剤は、水又は水を含有する液体によって変色し得るので、水又は水を含有する液体の検知に有効に利用し得る。

　本発明を実施するための形態を説明する。

　本発明の変色材料は、水又は水を含有する液体によって変色し得るものであり、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するもの、並びに親油性固着剤を含む定着用材料を含有する組成物であって、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである。

　また本発明の変色性着色剤は、変色性組成物が、所定微小体に保持又は担持されてなり、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである。前記変色性組成物は、少なくとも電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するものからなり、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである。

　また本発明の別の変色材料は、本発明の変色性着色剤と親油性固着剤を含む定着用材料を含有し、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである。

　(1) 電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物は、両者の間で電子の授受が行われることにより呈色し得るが、第三の成分としての溶媒が存在すると電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の結合は切断され消色状態となる。

　従来の一般的な感温変色性色素の場合は、第三の成分としての親油性の溶媒が、融点以上の液体状態では、前記の電子の結合は切断されて消色状態となり、融点以下の固体状態では前記の電子の授受による結合がなされ呈色することが知られている。すなわち、電子の授受が可逆的に生じることにより可逆的に変色する。

　一方、本発明は、電子の授受が行われることにより呈色し得る電子供与性呈色性有機化合物及び電子受容性化合物の２成分に、両者の間の電子の授受による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤を加えた、３成分を有する場合において、その呈色調整剤が親水性を有するものであるときに、水又は水を含有する液体によって前記呈色を妨げる作用が抑えられ、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受による呈色が可能となるという新たな知見に基づくものである。

　(2) 電子供与性呈色性有機化合物

　電子供与性呈色性有機化合物は、電子受容性化合物（顕色性物質）と呈色反応を生起して呈色する成分であり、ロイコ色素として知られているものが代表的な電子供与性呈色性有機化合物である。

　電子供与性呈色性有機化合物としては、例えば、感圧複写紙用色素又は感熱記録紙用色素として知られているロイコ色素や、その他の感温変色性組成物を構成するものとして従来公知のロイコ色素を用いることができるが、これらに限るものではない。

　使用し得る電子供与性呈色性有機化合物の具体例としては、トリフェニルメタンフタリド系、フルオラン系、フェノチアジン系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系、スピロピラン系、ローダミンラクタム系、トリフェニルメタン系、トリアゼン系、スピロフタランキサンテン系、ナフトラクタム系、アゾメチン系の各化合物が挙げられる。

　電子供与性呈色性有機化合物のより具体的な例としては、
３，６－ジメトキシフルオラン、３，６－ジブトキシフルオラン、３－ジエチルアミノ－７－クロロフルオラン、３－ジエチルアミノ－７フェニルアミノフルオラン、３－クロロ－６－フェニルアミノフルオラン、３－ジエチルアミノ－６，８－ジメチルフルオラン、３－ジエチルアミノ－６－メチル－７－クロロフルオラン、３，３ビス（１－ｎ－ブチル－２－メチル－インドール－３イル）フタリド、３－（４－ジエチルアミノフェノール）－３－（１－エチル－２－メチルインドール－３イル）フタリド、３－（４－ジエチルアミノ－２－メチル）フェニル－３－（１，２－ジメチルインドール－３－イル）フタリド、３－ジエチルアミノ－７，８－ベンゾフラン、６－（ジメチルアミノ）－３，３－ビス［４－（ジメチルアミノ）フェニル］－１（３Ｈ）－イソベンゾフラン、３－（２－メチル－４ジエチルアミノフェノール）－３－（１－メチル－２－メチルインドール－３－イル）フタリド、２－（Ｎ－フェニル－Ｎ－メチルアミノ）－６－（Ｎ－ｐ－トリル－Ｎ－エチルアミノ）フルオラン、３－（４－ジエチルアミノ－２－エトキシフェノール）－３－（１－エチル－２－メトキシインドール－３－イル）－４－アザフタリド、７－（４－ジエチルアミノ－２－ヘキシルオキシ－フェニル）－７－（１－エチル－２－メチル－１Ｈ－インドール－３－イル）－７Ｈ－フロ（３，４－ｂ）ピリジン－５－ワン、３，３－ビス（ｐ－ジエチルアミノフェニル）－６－ジメチルアミノフタリド、３，３－ビス（ｐ－ジメチルアミノフェニル）－６－ジメチルアミノフタリド、３，３’－ビス（ｐ－ジメチルアミノフェニル）フタリド、４，４’－ビス（ジエチルアミノ）ベンゾフェノン、３－シクロヘキシルアミノ－６－クロロフルオラン、スピロ［イソベンゾフラン－１（３Ｈ），９’－［９Ｈ］キサンテン］－３－ワン，６’（プロピルメチルアミノ）－３’－メチル－２’－フェニルアミノ、３－ブチルアミノ－６－メチル－７－アニリノフルオラン、スピロ［イソベンゾフラン－１（３Ｈ），９’－［９Ｈ］キサンテン］－３－ワン，６’－（イソブチルエチルアミノ）－３’－メチル－２’－フェニルアミノ、スピロ［イソベンゾフラン－１（３Ｈ），９’－［９Ｈ］キサンテン］－３－ワン，６’－（シクロヘキシルメチルアミノ）－３’－メチル－２’－フェニルアミノ、３－ジエチルアミノ－６－メチル－７－キシリジノフルオラン、３－ジエチルアミノ－７－クロロ－アニリノフルオラン、２’－（２－クロロアニリノ）－６’－ジブチルアミノスピロ（フタリド－３，９’－キサンテン）、３，３ビス（１－エチル－２－メチル－インドール－３－イル）フタリド、３－（４－エチルフェノール）アミノ－２－エトキシフェニル）－３－（１－エチル－２－メチルインドール－３－イル）－４－アザフタリド、３，６－ビスジフェニルアミノフルオラン、５’－クロロ－６’－メチル－３，６－ビスジフェニルアミノフルオラン、２－（ジブチルアミノ）－８－（ジエチルアミノ）－４－メチルスピロ［５Ｈ－（１）ベンゾピラノ（２，３－ｄ）ピリミジン－５，１’（３’Ｈ）－イソベンゾフラン］－３’－オン、３，３－ビス（４－ジエチルアミノ－２－エトキシフェニル）－４－アザフタリド
等を挙げることができるが、これらに限るものではない。

　本発明においては、前記の電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び親水性を有する呈色調整剤の３成分のうち、前記電子供与性呈色性有機化合物を何れか１種用いるか又は２種以上組み合わせて用いることにより、発色状態の色相を任意に調整することができる。

　(3) 電子受容性化合物

　電子受容性化合物（顕色性物質）は、ロイコ色素等の電子供与性呈色性有機化合物との呈色反応により呈色するようにするための成分である。

　電子受容性化合物（顕色性物質）としては、例えば、感圧複写紙用顕色剤、感熱記録紙用顕色剤、感温変色性組成物用顕色剤として従来知られているものや、その他の有機系顕色性物質、その他の酸顕色性物質を用いることができ、具体例としては、ビスフェノール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体等の親油性を有する物質を挙げることができる。

　電子受容性化合物（顕色性物質）のより具体的な例としては、５－ブチルベンゾトリアゾール、ビスベンゾトリアゾール－５－メタン、１，１’－ビフェニル－４，４’－ジオール、ｏ－メチレンビスフェノール、ｐ－メチレンビスフェノール、２，２’－ビスフェノール、４，４’－イソプロピリデンジフェノール、２，２’－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ヘキサフルオロプロパン、ビス（４－ヒドロキシフェニル）サルフェート、４，４’－（２－エチルヘキシリデン）ビスフェノール、４，４’－ヘキシリデンビスフェノール、４，４’－オクチリデンビスフェノール、４，４’－（４－メチルオクチリデン）ビスフェノール、４，４’－デシリデンビスフェノール、４，４’－（１，３－ジメチルブチリデン）ビスフェノール、４，４’－（１，５－ジメチルヘキシリデン）ビスフェノール、４，４’－（１－メチル－４－メチルヘプチリデン）ビスフェノール、４，４’－（２－エチル－ヘキシリデン）ビスフェノール、４，４’－（１－エチル－オクチリデン）ビスフェノール、４，４’－エチリデンビスフェノール、２，２’－メチレンビス（４－メチルフェノール）、４，４’－（１－メチル－エチリデン）ビス（２－メチルフェノール）、４，４’－シクロヘキシリデンビスフェノール、４，４’－（１－フェニルエチリデン）ビスフェノール、４，４’－（１－メチル－プロピリデン）ビスフェノール、４，４’－（２－メチル－プロピリデン）ビスフェノール、４，４’－シクロペンチリデンビスフェノール、４，４’－（フェニルメチレン）ビスフェノール、ビス（３－アリル－４－ヒドロキシフェニル）スルホン、４－ヒドロキシ－４－イソプロポキシジフェニルスルホン、４，４'－ジヒドロキシジフェニルスルホン、２，４'－ジヒドロキシジフェニルスルホン、パラオキシ安息香酸、没食子酸、ハイドロキノン等を挙げることができるが、これらに限るものではない。

　本発明においては、電子供与性呈色性有機化合物及び親水性を有する呈色調整剤と共に前記３成分を構成する電子受容性化合物（顕色性物質）を、何れか１種用いるか又は２種以上組み合わせて用いることができる。

　(4) 呈色調整剤

　(4-1) 呈色調整剤は、前記３成分における電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色（両者間の電子の授受による呈色）を妨げる作用（減感作用）を有する。その一方において、この呈色調整剤が親水性を有するものであることにより、水又は水を含有する液体によって、呈色調整剤の前記作用は抑えられ、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受による呈色（換言すれば変色）が可能となる。

　(4-2) 「電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受による呈色を妨げる呈色調整剤の作用が、水又は水を含有する液体によって抑えられる」というのは、前記３成分（特に呈色調整剤）が水又は水を含有する液体と接することや水又は水を含有する液体に濡れることにより、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受による呈色を妨げる呈色調整剤の作用が抑えられることを意味する。呈色調整剤の親水性が温度によって変化する場合において親水性が低い状態の温度においては、前記３成分（特に呈色調整剤）が水又は水を含有する液体と接し或いは水又は水を含有する液体に濡れても、前記呈色調整剤の作用が抑えられないこと又は抑える程度が低いこともあり得る。なお、前記呈色調整剤の作用は、周囲の空気等の湿度変化のみによっては抑え難いものと考えられる。

　(4-3) 呈色調整剤は、本発明における水又は水を含有する液体による変色機能の根幹にかかわる成分であり、親水性を有することを要する。

　本発明の変色材料又は変色性着色剤の、水又は水を含有する液体による変色（特にその視認性）を明確なものとする上で、呈色調整剤の溶解度パラメーター（δ）は１０以上であることが好ましく、前記電子受容性化合物と呈色調整剤の溶解度パラメーター（δ）の差はプラスマイナス３以内であることが好ましい。前記電子受容性化合物と呈色調整剤の溶解度パラメーター（δ）の差は、より好ましくはプラスマイナス２以内、更に好ましくはプラスマイナス１．５以内である。

　電子受容性化合物（顕色性物質）と呈色調整剤を、両者の溶解度パラメーター（δ）が互いに可及的に近い値であるものとすることにより、本発明における電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受による呈色を妨げる呈色調整剤の作用（減感作用）を可及的に高めることができる。これにより、本発明の変色材料又は変色性着色剤の、水又は水を含有する液体による変色前の状態における電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受による呈色を可及的に防ぐことができ、水又は水を含有する液体によって電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受により呈色状態となった場合との差異（変色、特にその視認性）を、明確なものとすることができる。

　なお、本発明における呈色調整剤及び有機溶剤の溶解度パラメーター（ＳＰ値）（δ）［単位：（ｃａｌ／ｃｍ^３）^１／２］は下記式[1]に従ってFedors法により計算することができる。
δ＝（ΣΔｅi／ΣΔｖi）^１／２　．．．．[1]
［式[1]中、"Δｅi"は、原子及び原子団の蒸発エネルギー（ｃａｌ／ｍｏｌ）、"Δｖｉ"は、モル体積（ｃｍ^３／ｍｏｌ）である。なお、計算に必要な原子及び原子団の各パラメーターは、R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.14,147(1974)を参照する。］

　本発明における親油性固着剤については、Hansen球法を用いて次のように溶解度パラメーターを測定することができる。
(i) 対象となる試料を、溶解度パラメーター既知の溶媒に混合し、溶解したか否かを判別する。
（加硫ゴムなどの溶解しない試料は、膨潤や軟化、クラック発生を基に溶解度パラメーターを計算する。）
(ii) 溶解性試験の結果を、溶解度パラメーター（δ_{D（分散項）}、δ_P(極性項)、δ_{H（水素結合項）}）の三次元空間にプロットする。
(iii) 溶解した座標を含み、溶解しなかった溶媒の座標を含まない球（Hansen球）を求める。

　この球の中心座標は試料の溶解度パラメーター、半径は試料を溶解させる溶媒の範囲を示す。

　(4-4) また、本発明の変色材料又は変色性着色剤の、水又は水を含有する液体による変色（特にその視認性）を明確なものとする上で、呈色調整剤は、水に対する溶解度（g/100gH₂O）が、少なくとも本発明の変色材料又は変色性着色剤の使用環境温度（少なくとも水又は水を含有する液体が存在し得る温度であり、例えば、常温、１乃至４０℃、５乃至３０℃、４０乃至８０℃、６０乃至９０℃、０乃至１００℃等）において、１００以上であるものを用いることが好ましい。より好ましくは２００以上、更に好ましくは無限大である。なお、使用環境というのは、例えば、水若しくは水を含有する液体による本発明の変色材料又は変色性着色剤の変色が求められる環境である。

　呈色調整剤として、水に対する溶解度が可及的に高いものを用いることにより、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受による呈色を妨げる呈色調整剤の作用（減感作用）が、水又は水を含有する液体によって可及的に効果的に抑えられ、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受による呈色を可及的に効果的に生じさせる（例えば、高い濃度で発色させる）こととなるので、水又は水を含有する液体によって変色する前の状態との差異（変色、特にその視認性）を、より明確なものとすることができる。

　なお、本発明における前記３成分（特に呈色調整剤）に水又は水を含有する液体が接し或いは水又は水を含有する液体に前記組成物が濡れて変色する場合のメカニズムについては、例えば、その３成分中の呈色調整剤の水に対する溶解度(g/100gH₂O)が１００以上である場合のように十分に大きい場合に、その呈色調整剤が水と接することにより溶解度パラメーターが大きい水（δ＝２３．４）との混合溶媒となり、その結果、その混合溶媒の溶解度パラメーター（δ）と、電子受容性化合物と電子供与性呈色性有機化合物の結合状態における溶解度パラメーター（δ）との差が開き、混合溶媒となった呈色調製剤の減感作用が働かなくなるために変色が生じるものと考えることができるが、本発明は、このメカニズムの説明に従うものと限るものではない。

　(4-5) 呈色調整剤の具体例としては、
１－メトキシ－２－プロパノール、１－エトキシ－２－プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール２００、ポリエチレングリコール３００、ポリエチレングリコール４００、ポリエチレングリコール６００、ポリエチレングリコール１０００、ポリエチレングリコール２０００、ポリエチレングリコール４０００、ポリエチレングリコール６０００、ポリプロピレングリコール２００００、ポリプロピレングリコール４００、ポリプロピレングリコール７５０、１，３プロパンジオール、１，３ブタンジオール、１，５ペンタンジオール、１，６ヘキサンジオール、１，３シクロヘキサンジオール等が挙げられるがこれらに限るものではない。

　本発明においては、電子供与性呈色性有機化合物及び電子受容性化合物と共に前記３成分を構成する呈色調整剤を、何れか１種用いるか又は２種以上組み合わせて用いることができる。

　(4-6) また、呈色調整剤として、蒸気圧が２０℃で０．０１ｍｍHg以下のものを用いることにより、日常環境で揮発することが十分に防がれ、本発明の変色材料又は変色性着色剤が水又は水を含有する液体によって変色する機能を長期にわたり安定的に維持することができる。

　呈色調整剤は、本発明の変色材料又は変色性着色剤の使用環境温度において、単体の場合に液体であるものであっても、固体であるものであっても、塑性若しくは流動性を有するものであってもよい。

　(5) 変色性着色剤

　本発明の変色性着色剤は、上記変色性組成物が、所定微小体に保持又は担持されてなり、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである。

　(5-1) 本発明の変色性着色剤における所定微小体は、上記変色性組成物を保持又は担持して、水又は水を含有する液体によって変色し得る着色剤を構成するためのものである。

　所定微小体は、前記保持又は担持している変色性組成物に水又は水を含有する液体が接し得るものとすることができる。

　このような所定微小体の例としては、粉末状の多孔性物質等の微小体としての多孔性物質のように、多数の細孔等に保持又は担持している前記変色性組成物に外部の水又は水を含有する液体が直接又は細孔を通じて接し得るものや、多孔性のマイクロカプセルのように、内部に保持又は担持された前記変色性組成物に、外部の、水又は水を含有する液体が、多数の細孔を通じて接し得るものを挙げることができる。尤も、本発明において用い得る所定微小体はこれらに限るものではない。

　このように少なくとも前記３成分からなる変色性組成物が所定微小体に担持されてなる変色性着色剤とすることにより、前記変色性組成物の組成を個々の所定微小体において保ちながら、水又は水を含有する液体によって安定的に且つ可及的に速やかに変色し得るものすることができる。なお、所定微小体は、保持又は担持した前記変色性組成物の変色が可及的にはっきりと表れるもの、特に明確に視認されるものとする上で、無色、白色又は淡色であることや透明性を有することが好ましいが、これらに限るものではない。

　(5-2) 所定微小体のうち、少なくとも前記変色性組成物を保持又は担持する部分は、水又は水を含有する液体による本発明の変色性着色剤の変色（特にその視認性）を明確なものとする上で、塩基性又は中性（好ましいｐＨ領域は、6．0乃至12．0、より好ましくは6．5乃至11．0、更に好ましくは7．0乃至9．0）を呈するものであることが望ましい。（尤も、塩基性又は中性を呈する部分は、所定微小体の他の部分を含むものとする若しくは全部であるものとすることが、可能であり又は好ましい。）。

　前記変色性組成物が、特に強酸性の所定微小体（多孔性物質等）に保持又は担持されたものの場合、水又は水を含有する液体に接した場合の変色が小さいか又は生じないこととなりがちである。その理由は、親水性を有する呈色調整剤により電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる減感作用が、水又は水を含有する液体に接していない状態において十分に発揮されず、水又は水を含有する液体に接した場合との差異が小さいか又は生じないためであると推定される。従って、本発明の変色性着色剤及び前記変色性組成物に水可溶性の酸性物質を含むことは好ましくない。

　(5-3) 本発明の変色性着色剤において、前記変色性組成物は、固体の状態で所定微小体に保持又は担持されていることが好ましいが、これに限らず、例えば、粘稠体やその他の塑性若しくは流動性を有する状態で所定微小体に保持又は担持（例えば粉末状の多孔性物質の多数の細孔に吸着・付着若しくは含浸、又は、多孔性のマイクロカプセルに内包）されているものであってもよい。

　本発明の変色性着色剤は、少なくとも電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色調整剤を、例えば、加熱溶融溶解により又は加熱溶融混合により又は加熱溶解により、好ましくは液状の変色性組成物として、又は、その他の塑性若しくは流動性を有する状態の変色性組成物として、所定微小体に適用した後（例えば変色性組成物を所定微小体に付着、吸着、含浸又は内包させた後）、使用環境（例えば使用環境温度）において、所定微小体に、好ましくは固体として、保持又は担持した状態としたもの、又は、例えば粘稠体やその他の塑性若しくは流動性を有する状態で、保持又は担持（例えば付着、吸着、含浸又は内包）した状態としたものとすることができる。

　(5-4) 本発明の変色性着色剤における所定微小体の好ましい例としては、粉末状の多孔性物質等の多孔性物質を挙げることができる。

　(a) 所定微小体としての多孔性物質の細孔容積及び細孔径の一方又は両方は、少なくとも電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色調整剤からなる変色性組成物が、多孔性物質に安定的に担持され、水又は水を含有する液体による電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受によって生じる呈色が効果的に視認される（例えば、高い濃度で視認される）ものとする上で、次のようなものとすることが好ましい。

　すなわち、多孔性物質の細孔容積は、０．３ｃｍ^３/ｇ以上であることが好ましい。より好ましくは０．４ｃｍ^３/ｇ以上、更に好ましくは０．５ｃｍ^３/ｇ以上である。

　また、多孔性物質の細孔径は、２０オングストローム以上であることが好ましい。より好ましくは５０オングストローム以上、更に好ましくは１００オングストローム以上である。

　(b) 本発明の変色性着色剤における多孔性物質としては、例えば、
二酸化ケイ素、シリカゲル、二酸化ケイ素・アルミナ焼成物（または二酸化ケイ素・アルミナ複合体もしくは混合物）、アルミニウムシリケート、ゼオライト、アルミナ、珪藻土類、タルク、ベントナイト類、クレー類、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸性白土、酸化チタン、イオン交換樹脂などを用いることができるが、これらに限るものではない。なお、酸性を呈する多孔性物質については、中和処理をした上で本発明の変色性着色剤に用いることが好ましい。

　本発明の変色性着色剤における多孔性物質としては、何れか１種を用いるか又は２種以上組み合わせて用いることができる。好ましくは、塩基性又は中性を呈するものである。

　(c) 所定微小体が多孔性物質である場合の本発明の変色性着色剤は、例えば、少なくとも電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色調整剤を、例えば、加熱溶融溶解により又は加熱溶融混合により又は加熱溶解により、好ましくは液状の変色性組成物として、又は、その他の塑性若しくは流動性を有する状態の変色性組成物として、所定微小体としての多孔性物質に付着、吸着又は含浸等させた後、使用環境において、多孔性物質に、好ましくは固体として保持又は担持（例えば付着若しくは吸着）した状態としたもの、又は、例えば、粘稠体やその他の塑性若しくは流動性を有する状態で保持又は担持（例えば付着、吸着若しくは含浸）した状態としたものとすることができる。

　前記少なくとも３成分からなる変色性組成物を所定微小体としての多孔性物質に付着、吸着又は含浸等させて保持又は担持させる操作は、例えば、前記少なくとも３成分を、加熱溶融溶解又は加熱溶融混合又は加熱溶解により液状（又は、その他の塑性若しくは流動性を有する状態）として、継続的に攪拌している粉末状の多孔性物質等の所定微小体としての多孔性物質群に対し加えることにより行うことができる。

　具体的には次のように行い得る。

　例えば、耐熱性容器内で電子供与性呈色性有機化合物１部並びに溶解度パラメーター（δ）の差がプラスマイナス２以内の電子受容性化合物３乃至５部及び呈色調整剤５乃至２０部を１００乃至１６０℃で加熱溶融して混合した変色性組成物を準備し、細孔容積が０．３ｃｍ^３/ｇ以上であり細孔径が２０オングストローム以上の粉末状の（好ましくは中性からアルカリ性の）多孔性物質を別の耐熱容器内で継続的に攪拌し、その容器内に前記加熱溶融状態の変色性組成物を徐々に投入してその変色性組成物を前記粉末状の多孔性物質群に吸着（又は含浸等）させて担持させることができる。

　或いは例えば、前記と同様の多孔性物質を耐熱性容器内で１００乃至１６０℃に加熱しつつ継続的に撹拌し、これに対し、前記加熱溶融状態の変色性組成物を徐々に投入してその変色性組成物を前記粉末状の多孔性物質群に吸着（又は含浸等）させて担持させることができる。

　このような操作により、前記少なくとも３成分からなる変色性組成物を粉末状の多孔性物質等の所定微小体としての多孔性物質群に保持又は担持させる場合に、保持又は担持させることができる最大量（飽和保持又は担持量）を超えていないか超えているかは、前記少なくとも３成分を、液状（又は、その他の塑性若しくは流動性を有する状態）として、継続的に攪拌している所定微小体としての多孔性物質群に対し加えた後、粉体等の微小体の群の状態であるか、否か（例えば、微小体群と液状物又はその他の塑性若しくは流動性を有する物との混合状態である、或いは、半流動体状であるか）、により判断し得る。なお、前記変色性組成物の量が飽和保持又は担持量に達していない場合でも、前記変色性組成物を所定微小体としての多孔性物質群に保持又は担持させるための攪拌等の操作が不十分な場合は、同様に粉体等の微小体の群の状態とならないことがあり得る。

　(d) 前記変色性組成物を粉末状の多孔性物質等の所定微小体としての多孔性物質に保持又は担持させることができる最大量（飽和保持又は担持量）は、主に、多孔性物質の細孔容積と細孔径により異なるが、概ね、多孔性物質１部に対し前記変色性組成物が０．５乃至１．５部の範囲の量である。

　本発明の変色性着色剤が水又は水を含有する液体によって変色することによる変色前後の差異（特にその視認性）を可及的に明確なものとする上で、飽和保持又は担持量（又はそれに近い量、例えば飽和保持又は担持量の５０質量％以上、好ましくは７０質量％以上、より好ましくは８０質量％以上、更に好ましくは９０質量％以上、より好ましくは９５質量％以上）の前記少なくとも３成分からなる変色性組成物を粉末状の多孔性物質等の所定微小体としての多孔性物質に保持又は担持させたものとすることが好ましい。

　飽和保持又は担持量（或いは、前記変色性組成物を所定微小体としての多孔性物質群に保持又は担持させるための攪拌等の操作が不十分な場合において飽和保持又は担持量よりも少ない量）の前記変色性組成物を保持又は担持した所定微小体としての多孔性物質の群と、所定微小体としての多孔性物質に保持又は担持されていない前記変色性組成物の混合状態である場合は、経時的に前記変色性組成物がブリードする恐れや、空気中の湿度変化により生じる微量の水（液体）によって、前記変色性組成物中の呈色調整剤が電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用が不十分となってやや呈色した状態となる恐れがある。

　(6) 定着用材料

　(6-1) 本発明の変色材料における定着用材料というのは、主に定着のために用いられ、親油性固着剤を含むものであり、常温又は使用温度域において例えば液状又は固体状であるものとすることができる。定着用材料は、例えば各種添加剤等の他の物質を含んでいてもよい。

　本発明の変色材料における定着用材料の用例としては、ホットメルト型印刷インク（変色材料）におけるビヒクル（定着用材料）、有機溶剤蒸発乾燥型印刷インク（変色材料）におけるビヒクル（定着用材料）、熱硬化型ドライオフセットインク（変色材料）におけるビヒクル（定着用材料）、静電潜像現像用トナー（変色材料）におけるバインダー樹脂等を主とする成分（定着用材料）、クレヨン（変色材料）やオイルパステル（変色材料）などにおけるＷＡＸ類（定着用材料）、液状塗料（変色材料）におけるビヒクル（定着用材料）を挙げることができる。

　(6-2) 親油性固着剤

　(a) 本発明の変色材料における定着用材料に含まれる親油性固着剤というのは、所要の対象物（例えば、紙、合成樹脂製フィルム［例えばポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム］、合成紙、不織布、織物、編物等のシート状物品、織物や編物等からなる被服等の繊維製品、天然皮革や合成皮革若しくはこれらからなる製品、木・合成樹脂・金属若しくはその他の材料製の板状物品又はその他の形状の物）への定着のための主要な成分であり、溶解度パラメーター（δ）が１２以下のものを用いることが好ましい。親油性固着剤の溶解度パラメーター（δ）は、より好ましくは１１以下、更に好ましくは１０以下である。

　上記本発明の変色材料としてのホットメルト型印刷インクにおけるビヒクル（定着用材料）の軟化点及びそのビヒクルに含まれる親油性固着剤の軟化点は、何れも、５０乃至１４０℃であることが好ましい。なお、ホットメルト型印刷インク以外の変色材料における定着用材料の軟化点及び定着用材料に含まれる親油性固着剤の軟化点については、何れもこの限りではない。

　親油性固着剤の例としては、合成樹脂、合成ゴム等の高分子物質や天然樹脂、高分子ＷＡＸを含むＷＡＸ類を挙げることができ、より具体的には、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、スチレンブタジエン共重合樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルゴム、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、石油樹脂、ロジン酸エステル樹脂、アルキッドメラミン樹脂、ブチル化メラミンなどのアルキル化メラミン樹脂、アミド樹脂、マイクロスタリンＷＡＸ、パラフィンＷＡＸ、ポリエチレンＷＡＸ、ポリプロピレンＷＡＸ、カルナバＷＡＸ、クリスタリンＷＡＸ等を挙げることができ、これらを何れか１種用いること又は２種以上組み合わせて用いることもできる。但し、これらに限るものではない。

　(b) 本発明の変色材料においては、その全固着剤中に、溶解度パラメーター（δ）が１２以下である親油性固着剤を８０重量％以上含有することが好ましい。

　全固着剤中に、溶解度パラメーター（δ）が１２以下である親油性固着剤の含有量が８０重量％未満である場合、すなわち、例えば溶解度パラメーター（δ）が１２以上の親水性固着剤を２０重量％を超えて含有する場合、当該変色材料は、水または水を含む液体との接触前に残色としての着色を呈することや、経時的に強い残色が生じることなどの問題が生ずる恐れがある。

　(c) 但し、本発明の変色材料において、溶解度パラメーター（δ）が１２以上の親水性固着剤（親水性化剤としても作用する固着剤）を、全固着剤中に２０重量％以下含有する範囲で併用することについては、水または水を含む液体による当該変色材料の変色（インジケーター機能）の速度向上効果を生じ得る。溶解度パラメーター（δ）が１２以上の親水性固着剤の全固着剤中の含有量は、残色を生じる悪影響を回避しつつ変色速度を向上させる上で、好ましくは１０重量％以下、より好ましくは５重量％以下である。

　このように用いる溶解度パラメーター（δ）が１２以上の親水性固着剤としては、合成樹脂や高分子ＷＡＸ類の高分子骨格に親水基としての官能基（水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基等）を所要量導入して親水性を付与し、溶解度パラメーター（δ）を１２以上としたもの、或いは、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチラール樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、エポキシ樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂等を挙げることができ、本発明の変色材料における親油性固着剤との相溶性に優れる物を選択することが好ましい。

　(7) 変色材料

　本発明の変色材料は、上記３成分及び定着用材料を含有するか、又は、上記変色性着色剤及び定着用材料を含有し、水又は水を含有する液体によって変色し得るものであり、水又は水を含有する液体についてのインジケーターとして機能し得る。上記３成分及び定着用材料を含有する変色材料は、例えば　電子供与性呈色性有機化合物を０．１乃至２重量％、電子受容性化合物を１乃至１０重量％、呈色調整剤を５乃至３０重量％、定着用材料を８０重量％以下含有し、必要に応じ各種添加剤や揮発性有機溶剤等を残部として含有するものとすることができる。また、上記変色性着色剤及び定着用材料を含有する変色材料は、例えば電子供与性呈色性有機化合物を０．１乃至２重量％、電子受容性化合物を１乃至１０重量％、呈色調整剤を１乃至３０重量％、所定微小体を５乃至３０重量％、定着用材料を８０重量％以下含有し、必要に応じ各種添加剤や揮発性有機溶剤等を残部として含有するものとすることができる。

　本発明の変色材料は、上記３成分又は変色性着色剤及び定着用材料以外に（或いは及び定着用材料中に）、例えば、全固着剤中の含有量として２０重量％以下（好ましくは１０重量％以下、より好ましくは５重量％以下）の前記のような親水性固着剤；親水性化剤（例えば、尿素、水溶性糊料、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、親水性油剤等）；非変色性の着色剤（例えば、何れも非変色性の、有機顔料、染料、無機顔料等の１種又は２種以上）；酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、体質顔料、可塑剤等の各種添加剤を含有するものとすることができる。

　変色材料の例としては、ホットメルト型印刷インク、有機溶剤蒸発乾燥型印刷インク、熱硬化型ドライオフセットインク、インクジェットインク（ホットメルトインクジェットインクを含む）、筆記具用インク、クレヨン、オイルパステル、静電潜像現像用トナー、（液状）塗料、粉体塗料、プラスチック成形材料を挙げることができるが、これらに限るものではない。

　非変色性の着色剤を含有する場合の本発明の変色材料は、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受による呈色が前記呈色調整剤の作用により妨げられた状態においても、また、水又は水を含有する液体によって前記作用が抑えられ、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の間の電子の授受により呈色した状態においても、前記非変色性の着色剤による色が加わった状態となる。この点において、よりデザイン性や視認性に優れた変色材料とすることもできる。

　前記非変色性の顔料は、無機顔料でも有機顔料でもよく、例えば、黒色顔料としてのカーボンブラック顔料、酸化鉄顔料等；赤色顔料としてのアゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、クロモフタル系顔料、アンスラキノン系顔料等；黄色顔料としてのアゾ系顔料、イミダゾロン系顔料、チタン系顔料等；オレンジ顔料としてのインダンスレン系顔料、アゾ系顔料等；青色又は緑色顔料としてのフタロシアニン系顔料等；紫色顔料としてのジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料等を用いることができるが、これらに限るものではない。

　前記非変色性の染料としては、分散染料、酸性染料、カチオン染料等を用いることができるが、これらに限るものではない。

　前記非変色性の顔料又は染料は、前記組成物を構成する呈色調整剤に予め分散又は溶解させた状態で用いることが好ましい。

　また、前記非変色性の顔料又は染料の使用量は、本発明の変色材料の水又は水を含有する液体による変色の視認性を阻害しない範囲とすることが好ましい。具体的には、上記３成分の合計量１００部に対し概ね０．０００１乃至１部の範囲で配合するのが好ましい。

　以下、変色材料を数例挙げて説明する。

　(7-1) ホットメルト型印刷インク

　(a) 本発明の変色材料としてのホットメルト型印刷インクは、親油性固着剤と、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するものの３成分（若しくは、これら３成分を含み、水若しくは水を含有する液体によって変色し得る変色性組成物）を主とする成分が混合したもの、又は、親油性固着剤と上記変色性着色剤を主とする成分が混合したものとして得ることができる。

　前記親油性固着剤と、前記３成分（若しくは変色性組成物）又は前記変色性着色剤を主とする成分の混合は、例えば、加熱溶融混合により、又は、加熱溶融混合と加熱三本ロールミルなどの分散機による分散処理を併用することにより行うことができる。

　(b) 本発明のホットメルト型印刷インクは、前記親油性固着剤と、前記３成分（若しくは変色性組成物）又は前記変色性着色剤以外の成分として、例えば、前記のような親水性固着剤、親水性化剤、非変色性の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、体質顔料、可塑剤等の各種添加剤を含有するものとすることができる。

　(c) 本発明のホットメルト型印刷インクは、所要の対象物に対し適用するための印刷機や塗工機等の適用機器類に応じて、粘度（粘性率）や乾燥速度等の物性が適切に調整されたものとすることが好ましい。そのような物性の調整は、前記主成分の選択に加えて、増粘剤、粘性調整剤、消泡剤成分等の主成分以外の成分の選択及び配合量の増減等により行い得る。

　(d) 本発明のホットメルト型印刷インクの種類としては、例えば、熱溶融型スクリーン印刷インク、熱溶融型グラビア印刷インク、熱溶融型タンポ印刷インク、熱溶融型ナイフコーターインク、熱溶融型ロールコーターインク、Ｔダイインク等を挙げることができるが、これらに限るものではない。

　印刷に供する加熱時の温度帯における粘性率の範囲は、例えば、熱溶融型スクリーン印刷インクの場合は概ね５０００乃至５００００ｍＰａ・ｓ（ミリパスカル秒）となるように調整したものとすることができ、熱溶融型グラビア印刷インクの場合は概ね１００乃至５００ｍＰａ・ｓとなるように調整したものとすることができる。本発明の他のホットメルト型印刷インクについても、印刷機や塗工機等の適用機器類に応じて印刷に供する加熱時の温度帯における粘性率の範囲を調整したものとすることができる。

　(e) 本発明のホットメルト型印刷インクの軟化点は、ホットメルト型印刷における適正温度、粘度、インクの安定性等を考慮すると概ね５０℃乃至１４０℃程度であることが好ましく、本発明のホットメルト型印刷インク中の親油性固着剤としては、軟化点が概ね５０℃乃至１４０℃程度のものを用いることが好ましい。

　(f) 本発明のホットメルト型印刷インクは、印刷機や塗工機等の適用機器において当該インクを加熱溶融して印刷等に供するものとすることができる。その加熱溶融温度の例としては、概ね５０℃乃至１４０℃程度、より好ましくは８０℃乃至１２０℃の範囲を挙げることができる。

　ホットメルト型印刷インクを対象物に適用するための機器類としては、
電熱での加熱が可能なスクリーン版を用いて印刷する熱溶融型スクリーン印刷機、
機上のインクパン（インク溜め容器）とグラビアロール版を加熱して印刷する熱溶融型グラビア印刷機、
機上の金属版とシリコンパッドを加熱して印刷する熱溶融型タンポ印刷機、
機上の塗工ロールとインクを加熱して塗工に供する熱溶融型ナイフ（コンマ）コーター塗工機、及び、熱溶融型ロールコーター塗工機、
インク溜めとインクを加熱して一定の隙間からカーテン状にインクを落下させながら塗工するＴダイ塗工機等を挙げることができるが、これらに限るものではない。

　このような機器類を用いて対象物（基材）に対し、ホットメルト型印刷インクを適用することにより、水又は水を含有する液体によって変色し得る変色材料が定着した（すなわちインジケーター機能を有する）印刷物、塗工物等を得ることができる。

　(7-2) 有機溶剤蒸発乾燥型印刷インク

　(a) 本発明の変色材料としての有機溶剤蒸発乾燥型インクは、揮発性親油性有機溶剤等の揮発性有機溶剤に親油性固着剤が溶解又は溶解及び分散（例えば溶解及び一部分散）したビヒクル（定着用材料）と、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するものの３成分（若しくは、これら３成分を含み、水若しくは水を含有する液体によって変色し得る変色性組成物）を主とする成分が混合したもの、又は、前記ビヒクル（定着用材料）と上記変色性着色剤を主とする成分が混合したものとして得ることができる。

　前記ビヒクルと、前記３成分（若しくは変色性組成物）又は前記変色性着色剤を主とする成分の混合は、例えば、ディスパ型ミキサー、ホモミキサーなどを用いた撹拌混合や、ダイノーミル、アトライターミル、三本ロール、サンドミル、ボールミルなどを用いた分散処理等により行い得る。

　(b) 本発明の有機溶剤蒸発乾燥型インクにおける揮発性親油性有機溶剤等の揮発性有機溶剤としては、溶解度パラメーター（δ）が１２以下であるものとすることが好ましい。揮発性親油性有機溶剤等の揮発性有機溶剤の溶解度パラメーター（δ）は、より好ましくは１１以下、更に好ましくは１０以下である。

　揮発性親油性有機溶剤等の揮発性有機溶剤としては、印刷や塗工等により本発明の有機溶剤蒸発乾燥型印刷インクが対象物に適用された場合において、対象物に定着した変色材料が水または水を含む液体との接触により変色することの経時的安定を確保する上で、或いは、水または水を含む液体との接触前に残色としての着色を呈することを防ぐ上で、水との溶解性の低い有機溶剤、好ましくは非水溶性の有機溶剤であることが好ましい。

　また、揮発性親油性有機溶剤等の揮発性有機溶剤の沸点は、２００℃以下であることが好ましく、より好ましくは１８０℃以下、更に好ましくは１５０℃以下である。印刷等により本発明の有機溶剤蒸発乾燥型印刷インクが対象物に適用された場合において、対象物に定着した変色材料に有機溶剤が残留することは、その変色材料が水若しくは水を含有する液体により変色することを阻害するおそれがあるので好ましくない。尤も、印刷等により本発明の有機溶剤蒸発乾燥型印刷インクが対象物に適用された後に、強制的な加熱乾燥装置の作動等により有機溶剤の残留が確実に防がれる場合は、揮発性親油性有機溶剤等の揮発性有機溶剤の沸点がある程度高くても差し支えない。

　前記親油性固着剤は、有機溶剤蒸発乾燥型インクの用途に適したものを選択することができ、前記揮発性親油性有機溶剤等の揮発性有機溶剤は、その親油性固着剤を溶解又は溶解及び分散させる上で適したものを選択することができる。その場合において、前記ビヒクル（定着用材料）は、含有する全揮発性有機溶剤中に、前記沸点が２００℃以下の揮発性有機溶剤であって溶解度パラメーター（δ）が１２以下であるものを、８０重量％以上含有するものとすることが好ましい。より好ましい含有量は、９０重量％以上、更に好ましくは９５重量％以上である。

　溶解度パラメーター（δ）が１２以下且つ沸点２００℃以下の揮発性親油性有機溶剤等の揮発性有機溶剤の例としては、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類などが挙げられ、具体的には、ｎ－ペンタン、ｎ－ヘプタン、ｎ－ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、キシレン、トルエン、ベンゼン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールアセテート、メチルイソブチルケトン、イソフォロン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ソルフィット［商標］（３－メトキシ－３－メチル－１－ブタノール）などを挙げることができ、これらを何れか１種用いること又は２種以上組み合わせて用いることもできる。但し、これらに限るものではない。

　(c) 本発明の有機溶剤蒸発乾燥型インクにおいて、全揮発性有機溶剤中に、溶解度パラメーター（δ）が１２以上の揮発性親水性有機溶剤を２０重量％を超えて含有する場合、当該有機溶剤蒸発乾燥型インクは、水または水を含む液体との接触前に残色としての着色を呈することや、経時的に強い残色が生じること、水または水を含む液体との接触による変色に色相等の変化が生じることなどの問題が発生する恐れがあり、好ましくない。

　但し、本発明の有機溶剤蒸発乾燥型インクを印刷等により適用する対象物（基材）の有機溶剤耐性等において、有機溶剤の悪影響を防ぐ上で、揮発性親油性有機溶剤と揮発性親水性有機溶剤の併用を必要とする場合、全有機溶剤中に、好ましくは２０重量％以内（より好ましくは１０重量％以内、更に好ましくは５重量％以内）の揮発性親水性有機溶剤を含有することもできる。

　また、本発明の有機溶剤蒸発乾燥型印刷インクにおいて、全有機溶剤は揮発性を有するものであることが、対象物に定着等した変色材料に有機溶剤が残留することを防ぎ、水または水を含む液体との接触前に残色としての着色を呈することや、経時的に強い残色が生じること、水または水を含む液体との接触による変色に色相等の変化が生じること、或いは、変色（発色）後の退色が生じることなどの問題が生じないようにする上で望まれる。その点において、揮発性有機溶剤の沸点は２００℃以下であることや、印刷等により本発明の有機溶剤蒸発乾燥型印刷インクが対象物に適用された後に、強制的な加熱乾燥装置の作動等により揮発性親油性有機溶剤等の揮発性有機溶剤の残留が確実に防がれることが好ましい。

　(d) 本発明の有機溶剤蒸発乾燥型インクは、前記ビヒクル中の揮発性親油性有機溶剤等の揮発性有機溶剤及び親油性固着剤と、前記３成分（若しくは変色性組成物）又は前記変色性着色剤以外の成分として、例えば、前記のような親水性固着剤、親水性化剤、揮発性親水性有機溶剤、或いは、非変色性の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、体質顔料、可塑剤等の各種添加剤を含有するものとすることができる。

　本発明の有機溶剤蒸発乾燥型インクが、非揮発性有機化合物（例えば可塑剤や分散剤等）を含有する場合は、印刷により対象物に適用された場合において、対象物に定着した変色材料の水若しくは水を含有する液体による変色の減少（発色濃度の低下等）や変色後の経時的な退色等を防ぐ上で、全揮発性有機溶剤に対する非揮発性有機化合物の含有量は１０重量％以下（より好ましくは５重量％以下）であることが好ましい。

　(e) 本発明の有機溶剤蒸発乾燥型インクは、所要の対象物に対し適用するための印刷機や塗工機等の適用機器類に応じて、粘度（粘性率）や乾燥速度等の物性が適切に調整されたものとすることが好ましい。そのような物性の調整は、前記主成分の選択に加えて、増粘剤、粘性調整剤、消泡剤成分等の主成分以外の成分の選択及び配合量の増減等により行い得る。

　(f) 本発明の有機溶剤蒸発乾燥型インクの種類としては、例えば、スクリーン印刷インク、グラビア印刷インク、フレキソ印刷インク、タンポ印刷インク、インクジェットインク、ナイフコーターインク、リバースコーターインク、ロールコーターインク、カーテンコーターインク、パディングインク、スプレーインク等を挙げることができるが、これらに限るものではない。

　インクの粘性率の範囲は、例えば、スクリーン印刷インクの場合は概ね５０００乃至５００００ｍＰａ・ｓ（ミリパスカル秒）となるように調整したものとすることができ、グラビア印刷インクの場合は概ね１００乃至５００ｍＰａ・ｓとなるように調整したものとすることができ、フレキソ印刷インクの場合は概ね１５０乃至１０００ｍＰａ・ｓとなるように調整したものとすることができ、他のインクについても、印刷機器類に応じて粘性率の範囲を調整したものとすることができる。

　なお、一般的フレキソインクは、溶解度パラメーター（δ）が１２以上の親水性有機溶剤（及び、必要な場合は水）を含有する親水性インクであるが、本発明の有機溶剤蒸発乾燥型インクをフレキソ印刷インクとする場合は、親水性インクビヒクルとの接触において発色（変色）することを避ける上で、溶解度パラメーター（δ）が１２以下の揮発性親油性有機溶剤を８０重量％以上含むフレキソ印刷インクとすることが好ましく、更に、溶解度パラメーター（δ）が１１以下の（より好ましくは１０以下の）揮発性親油性有機溶剤を８０重量％以上含むフレキソ印刷インクとすることがより好ましいが、その場合の印刷に用いるフレキソ版は、その親油性フレキソ印刷インクに耐性を有するものを用いることが望まれる。

　(g) 本発明の有機溶剤蒸発乾燥型インクは、既存の印刷機や塗工機等の適用機器を用いて印刷等に供するものとすることができる。

　使用し得る印刷機や塗工機の例としては、既存のスクリーン印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、タンポ印刷機、インクジェット印刷機、ナイフコーター塗工機、リバースコーター塗工機、ロールコーター塗工機、カーテンコーター塗工機、パディング機、スプレー塗工機等を挙げることができるが、これらに限るものではない。

　このような機器類を用いて対象物（基材）に対し、有機溶剤蒸発乾燥型インクを適用することにより、水又は水を含有する液体によって変色し得る変色材料が定着した（すなわちインジケーター機能を有する）印刷物、塗工物等を得ることができる。

　(7-3) 熱硬化型ドライオフセットインク

　本発明の変色材料としての熱硬化型ドライオフセットインクは、例えば、溶解度パラメーター（δ）１２以下の、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アルキル化メラミン樹脂、アミノ樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、亜麻仁油などの植物油脂成分、芳香族炭化水素溶剤などの複数の成分を組み合わせたビヒクルに、上記変色性着色剤を混合したものについて、ミル機などにより分散処理を行うことにより得ることができる。このようにして得られたインクは、金属シート印刷のための３ピースハンダ缶、２ピースＤＲ缶、金属曲面印刷のための２ピースＤＩ缶に印刷適用することができ、同インクを金属缶上に印刷後、２５０℃乃至３００℃で熱処理を行うことにより、水又は水を含有する液体により変色し得る機能を備えた印刷層を金属表面に有する印刷物が得られる。

　(7-4) 静電潜像現像用トナー

　本発明の変色材料としての静電潜像現像用トナー（微粉）は、例えば、親油性固着剤と、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するものの３成分（若しくは、これら３成分を含み、水若しくは水を含有する液体によって変色し得る変色性組成物）を微粉中に混合含有するもの（例えば、それらを加熱溶融混合後に微粉砕したもの）、又は、親油性固着剤と上記変色性着色剤を微粉中に混合含有するものとして得ることができる。

　本発明の静電潜像現像用トナー（微粉）は、前記親油性固着剤（バインダー樹脂等）と、前記３成分（若しくは変色性組成物）又は前記変色性着色剤以外の成分として、例えば、電荷制御剤、前記のような親水性固着剤、親水性化剤、非変色性の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の各種添加剤を含有するものとすることができる。

　(7-5) クレヨン又はオイルパステル

　本発明の変色材料としてのクレヨン又はオイルパステルは、例えば、ＷＡＸやパラフィン類（親油性固着剤）と、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するものの３成分を加熱溶融後成形して得ることができる。

　(8) 変色材料の用途

　本発明の変色材料は、水又は水を含有する液体によって変色し得るものであって、水又は水を含有する液体についてのインジケーターとして機能し得るので、印刷、塗工、その他の手段により様々な対象物に定着させること等により、様々な用途において、的確に水分を検知して速やかで適切な対応に利用し得る。

　そのような用途の例としては、

　i) 幼児用及び大人用の紙おむつの所要範囲に設けて、変色による水分検知によって排尿・排便による交換時期等を示す、
生理用品などの所要範囲に設けて、変色による水分検知によって交換時期等を示す
等の、水分検知により交換時期等を示す用途；

　ii) 冷凍食品の包装材の所要範囲又は冷凍食品に対する貼着材（ステッカー、ラベル、シール等）若しくはシュリンクラベル等の装着材に設けて、冷凍食品の保管中又は移送中の解凍や再冷凍によって表面に生じる結露の水分を変色によって検知し、食品の品質変化を示す、
食品や飲料の包装材（金属缶、プラスチック容器、ガラス容器を含む）の所要範囲又は食品若しくは食品・飲料の包装材に対する貼着材（ステッカー、ラベル、シール等）若しくはシュリンクラベル等の装着材に設けて、変色によって気温変化や湿度変化による食品又は食品・飲料の包装材の結露や水分接触を検知することにより、食品や飲料の品質変化を示す、
医薬品の包装材（ブリスターパック等を含む）や容器の所要範囲又はそれらに対する貼着材（ステッカー、シール等）若しくはシュリンクラベル等の装着材に設けて、医薬品の保管中又は移送中の変色による水分検知によって品質変化等の可能性を示す
等の、水分検知により品質変化を示す用途；

　iii) 電化製品、電気・電子部品、精密機器を始めとする各種製品の所要箇所に印刷等により設けたり、それらの包装材（ブリスターパック等を含む）の所要範囲又はそれらに対する貼着材（ステッカー、ラベル、シール、養生テープ［主に弱粘着性のもの］等）若しくはシュリンクラベル等の装着材に設けて、変色によって気温変化や湿度変化による製品の結露や水没を検知することにより、接触不良や漏電事故を含む製品トラブル等を未然に又は早期に示すインジケーター用途；

　iv) 包装材、ステッカー、容器等の所要範囲に設けて、変色による水分検知を示す水分管理や吸湿管理等の用途；

　v) 水又は水を含有する液体によって変色して文言や絵柄等が表れる、セキュリティ機能を有する証明書又は証明物品や各種紙製品等（例えば、印鑑証明書、住民票、証券類、年賀状、暑中見舞いはがき等への印刷）の用途；

　vi) 神社仏閣等において供され、水又は水を含有する液体によって変色して文言や絵柄等が表れる水おみくじ、水又は水を含有する液体によって変色して文言や絵柄等が表れるおもちゃ類（例えば、擬似的排尿を模した人形、水鉄砲の的等）としての用途
等を挙げることができるが、これらに限るものではない。

　以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の説明中、部及び％はそれぞれ重量部及び重量％を意味する。　

　［変色性組成物Ａの作成］

　容量１リットルの耐熱性ガラス容器内で
３－（４－ジエチルアミノフェノール）－３－（１－エチル－２－メチルインドール－３イル）フタリド［電子供与性呈色性有機化合物：青色ロイコ色素］　４部、
４，４’－（１，３－ジメチルブチリデン）ビスフェノール［電子受容性化合物：溶解度パラメーターδ１＝１１．８８］　１６部、
ポリエチレングリコール４００［呈色調整剤：溶解度パラメーターδ２＝１１．１、蒸気圧９×１０^－５ｍｍＨｇ［100℃］、水に対する溶解度＝∞］　３６部
を混合した後、１００℃に加熱して更に混合することにより、液状である、水又は水を含有する液体によって変色し得る変色性組成物Ａを得た（δ１－δ２＝０．７８）。

　［変色性着色剤Ｂの作成］

　容量１リットルの耐熱性ガラス容器内で
３－（４－ジエチルアミノフェノール）－３－（１－エチル－２－メチルインドール－３イル）フタリド［電子供与性呈色性有機化合物：青色ロイコ色素］　４部、
４，４’－（１，３－ジメチルブチリデン）ビスフェノール［電子受容性化合物：溶解度パラメーターδ１＝１１．８８］　１６部、
ポリエチレングリコール４００［呈色調整剤：溶解度パラメーターδ２＝１１．１、蒸気圧９×１０^－５ｍｍＨｇ［100℃］、水に対する溶解度＝∞］　３６部
を混合した後、１００℃に加熱して更に混合することにより液状の組成物を作成した（δ１－δ２＝０．７８）。

　次いで、別の容量２リットルの耐熱性ガラス容器に
SIPERNAT 820A［商品名（"SIPERNAT"は商標）］（粉末状の白色の多孔性物質：EVONIK社製のSiO₂AL₂O₃、pH：8.7、細孔容積＝0.47ｃｍ^３/ｇ、平均細孔径＝200オングストローム）　４４部
を計量し、この粉末状の多孔性物質を１１０℃に加熱してミキサー撹拌しながら、この粉末状の多孔性物質に対し、前記１００℃の液状の組成物を徐々に投入し且つ十分に攪拌することによって、前記組成物が多孔性物質に担持された白色の粉体を得た。

　かくして得られた白色の粉体は、水（液体）を供給すると、瞬時に白色から濃い青色に変色する粉末着色剤（変色性着色剤Ｂ）であることが確認された。

　［実施例１］

　ダイヤナールBR-115［商品名（"ダイヤナール"は商標）］（三菱ケミカル(株)製、アクリル樹脂、溶解度パラメーターδ９．８０）　２０部、
トルエン（溶解度パラメーターδ９．１３、沸点110.6℃）　４０部、
メチルシクロヘキサン（溶解度パラメーターδ５．２７、沸点101℃）　１９．５部、
ダッポーSN-510［商品名（"ダッポー"は商標）］（サンノプコ(株)製、消泡剤）　０．５部、
変色性着色剤Ｂ　２０部
を攪拌機で均一に混合後、アトライター型ミル機で分散処理することにより、粘度460ｍＰａ・ｓのグラビアインクを得た。

　得られたグラビアインクを、150線/inch、深度30μｍの全面版を用いて、厚み50μｍの乳白色ポリエステルフィルム上に印刷した。

　かくして得られた印刷物の色は、元の乳白色のポリエステルフィルムの色と特に変わらないものであったが、当該フィルムの前記グラビアインク印刷層上に水滴を一滴垂らすと鮮やかな青色を呈し、水分インジケーターとして視認性に優れたものであった。

　［実施例２］

　実施例１における、ダイヤナールBR-115を２５部、トルエンを３８．５部とし、「変色性着色剤Ｂ　２０部」を「変色性組成物Ａ　１６．５部」に替えること以外は、実施例１と同様に処理することにより、粘度370ｍＰａ・ｓのグラビアインクを得たが、このグラビアインクは、やや経時的にインクが分離し安定性が良好とは言えないものであった。

　得られたグラビアインクを実施例１と同様に印刷して得られた印刷物は、元の乳白色のポリエステルフィルム色に対し、残色として僅かに青みがついたものであったが、当該フィルムの前記グラビアインク印刷層上に水滴を一滴垂らすと鮮やかな青色を呈し、実施例１に比べ水による呈色前後の濃度差は劣るが、水分インジケーターとしての機能は示した。

　［実施例３］

　ダイヤナールBR-115（アクリル樹脂、溶解度パラメーターδ９．８０）　２０部、
メチルシクロヘキサン（溶解度パラメーターδ５．２７、沸点101℃）　２０部、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート（沸点146℃、溶解度パラメーターδ８．７３）　２９．５部、
ダッポーSN-510（消泡剤）　０．５部、
変色性着色剤Ｂ　３０部
を攪拌機で均一に混合後、アトライター型ミル機で分散処理することにより、粘度820ｍＰａ・ｓのフレキソインクを得た。

　得られたフレキソインクを、300線/inchのアニロックスロールを用いて、厚み15μｍの乳白色ポリエチレンフィルム上に全面版を用いて印刷した。

　かくして得られた印刷物の色は、残色がなく、元の乳白色のポリエチレンフィルムの色と特に変わらないものであったが、当該フィルムの前記フレキソインク印刷層上に水滴を一滴垂らすと鮮やかな青色を呈し、水分インジケーターとして視認性に優れたものであった。

　［実施例４］

　実施例１における、変色性着色剤Ｂを２７部とし、「尿素（親水性化剤）　３部」を加えること以外は、実施例３と同様に処理することにより、粘度790ｍＰａ・ｓのフレキソインクを得た。

　得られた印刷物の色は、残色がなく、元の乳白色のポリエチレンフィルムの色と特に変わらないものであったが、当該フィルムの前記フレキソインク印刷層上に水滴を一滴垂らすと実施例１及び実施例３の何れよりも速やかに鮮やかな青色を呈し、水分インジケーターとして視認性及び発色速度に優れたものであった。

　［実施例５］

　タフテックＭ１９１３［商品名（"タフテック"は商標）］（旭化成(株)製、スチレンブタジエン樹脂、溶解度パラメーターδ９．２０）　２部、
YSレジンTO-85［商品名］（ヤスハラケミカル(株)製、テルペン樹脂、溶解度パラメーターδ１０．０）　１０部、
トルエン（溶解度パラメーターδ９．１３、沸点110.6℃）　５７．５部、
ダッポーSN-510（消泡剤）　０．５部、
変色性着色剤Ｂ　３０部
を攪拌機で均一に混合後、アトライター型ミル機で分散処理することにより、粘度290ｍＰａ・ｓのフレキソインクを得た。

　得られたフレキソインクを、耐溶剤性の300線/inchのアニロックスロールと全面版を使用して、厚み15μｍの乳白色ポリエチレンフィルム上に水玉柄の版を用いて印刷した。

　かくして得られた印刷物の色は、残色がなく、元の乳白色のポリエチレンフィルムの色と特に変わらないものであったが、当該フィルムの前記フレキソインク印刷層上に水滴を一滴垂らすと鮮やかな青色の水玉柄を呈し、水分インジケーターとして視認性に優れたものであった。

　更に、得られたフィルムを紙おむつの外側のフィルムとして適用したところ、排尿により青色の水玉柄を呈し、フレキソインクに、印刷層が柔軟なものとなる固着剤（タフテックＭ１９１３及びYSレジンTO-85）を用いたことにより、紙おむつに用いられた前記フィルムに、不都合な反りやカールも認められず、紙おむつ用の水分インジケーターとして非常に適したものであった。

　［実施例６］

　実施例５において得られたフレキソインクを、300線/inchのアニロックロールを用いて、水玉柄のフレキソ版によって厚み15μｍの乳白色ポリエステル製シュリンクフィルム上に印刷した。

　得られた印刷物は、当該インクの残色がなく、乳白色フィルム上に印刷された水玉柄は殆ど視認できない状態であった。

　そのフィルムを、飲料ボトルに巻いて熱シュリンク処理を行うことにより、表面側に当該印刷インクが施されたフィルムが巻き付け固定された飲料ボトルが得られた。

　この飲料ボトルを、冷蔵庫で冷却し、その後、常温下に戻すと、飲料ボトル表面（当該フィルムの表面側）に結露水が発生し、その結露水により、飲料ボトル上の乳白色フィルムの前記フレキソインク印刷層上に青色の水玉柄が浮かび上がり、当該フィルムは水分インジケーターとしての機能を呈した。

　［実施例７］

　バイロン200［商品名（"バイロン"は商標）］（東洋紡(株)製、溶解度パラメーターδ１０．５、飽和ポリエステル樹脂）　２５部、
Ｃ－１００［商品名］（コスモ油化(株)製、沸点150℃、溶解度パラメーターδ９．０７、芳香族炭化水素）　３０部、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート（沸点146℃、溶解度パラメーターδ８．７３）　２４部、
シリコーンTSE 350［商品名］（モメンティブ社製、シリコーン系消泡剤）　１部、
変色性着色剤Ｂ　２０部
をミキサー混合した後、三本ロールミルで分散処理を行うことにより、粘度7400ｍＰａ・ｓのスクリーンインクを得た。

　得られたスクリーンインクを、水おみくじの文字及び絵柄の150Meshのスクリーン版を使用して白色紙上にスクリーン印刷した。

　かくして得られた印刷物は、印刷インクの残色がなく、水おみくじの文字及び絵柄が殆ど視認されないものであったが、その印刷物を水に浮かべたところ、鮮明な青色の水おみくじの文字及び絵柄が浮かび上がった。

　［実施例８］

　バイロン200（溶解度パラメーターδ１０．５、飽和ポリエステル樹脂）　２５部、
Ｃ－１００（沸点150℃、溶解度パラメーターδ９．０７、芳香族炭化水素）　３０部、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート（沸点146℃、溶解度パラメーターδ８．７３）　２４部、
シリコーンTSE 350（シリコーン系消泡剤）　１部、
SIPERNAT 820A（粉末状の白色の多孔性物質：SiO₂AL₂O₃、pH：8.7、細孔容積＝0.47ｃｍ^３/ｇ、平均細孔径＝200オングストローム）　５部
からなるアンダーコートインクを、予め白色紙上の全面にスクリーン印刷した。

　そのアンダーコートインクが乾燥した後、当該アンダーコートインク層上に、実施例７において得られたスクリーンインクを、実施例７と同様にスクリーン印刷した。

　而も、この印刷物は、実施例７において得られた印刷物に比し、保管中の紙（白色紙）の吸湿による水分による悪影響（例えば、水に浮かべる前に水おみくじの文字及び絵柄の形跡をやや視認可能となること）が防がれ、より安定性に優れていた。

　［実施例９］

　YSレジンTO-85（テルペン樹脂、溶解度パラメーターδ１０．０）　３２．８部、
パラフィンWax-115［商品名］（日本精蝋(株)製、溶解度パラメーターδ８．８、パラフィンWAX）４５部、
UNITHOX 450［商品名（"UNITHOX"は商標）］（ペトロライト社製、親水性化剤）２部、
KS-7716［商品名］（シリコーン系消泡剤）　０．２部、
変色性着色剤Ｂ２０部
を、100℃に加熱して溶解させた状態において、混合し、ミル機で均一に分散処理することにより、粘度600ｍＰａ・ｓ（70℃）のホットメルト型インクを得た。

　得られたホットメルト型インクを、厚み15μｍの乳白色のポリエチレン製フィルム上に、120線/inch、深度40μｍの水玉柄のホットメルト型インク印刷機を用いてグラビア印刷した。

　かくして得られた印刷物は、乳白色のポリエチレンフィルム上に水玉柄が殆ど視認されないものであったが、当該フィルムの前記ホットメルト型インク印刷層上に水を垂らすと青色の水玉柄が速やかに浮かび上がり、水変色性のインジケーター機能を有するものであった。

　また、得られた印刷物を、印刷面を吸水層側に位置させて紙おむつの最外側フィルム層として適用したところ、排尿によって青色水玉柄が表れるインジケーター機能を有する紙おむつが得られた。

　［実施例１０］

　実施例９において得られたホットメルト型インクにより、紙おむつ製造機に設けられているホットメルト型熱アプリケーターを用いて、厚み15μｍの乳白色のポリエチレン製フィルム上に、５ｍｍ幅のライン柄をインラインで印刷した。

　かくして得られた印刷物は、印刷層を吸水層側に配置して紙おむつの最外側フィルム層として適用され、排尿によって最外側の乳白色フィルムの内側に青色ライン柄が表れる水分インジケーター機能を有するものであった。

　［実施例１１］

　実施例９におけるホットメルト型インク１００部に食用色素赤色102号０．１部を加えて得られたホットメルト型インクにより、実施例９と同様に厚み15μｍの乳白色のポリエチレン製フィルム上にグラビア印刷を行った。

　かくして得られた印刷物は、乳白色のポリエチレンフィルム上にピンク色の水玉柄が印刷されたものであったが、当該フィルムの前記ホットメルト型インク印刷層上に水を垂らすと、ピンク色の水玉柄が速やかに紫色に変色する水変色性のインジケーター機能を有するものであった。

　［比較例１］

　次いで、別の容量２リットルの耐熱性ガラス容器に
サイリシア３５０［商品名（"サイリシア"は商標）］（粉末状の白色の多孔性物質：富士シリシア化学(株)製のSiO₂、pH：5.96、細孔容積＝1.6ｃｍ^３/ｇ、平均細孔径＝210オングストローム）　４４部
を計量し、この粉末状の多孔性物質を１１０℃に加熱してミキサー撹拌しながら、この粉末状の多孔性物質に対し、前記１００℃の液状の組成物を徐々に投入し且つ十分に攪拌することによって、前記組成物が多孔性物質に担持された粉体を得たが、この粉体は既に青色に着色していた。

　［比較例２］

　ニューマイド846［商品名（"ニューマイド"は商標）］（ハリマ化成(株)製、ポリアミド樹脂、溶解度パラメーターδ１２．２）　１０部、
プロピレングリコールメチルエーテル（溶解度パラメーターδ１１．２７、沸点121℃）　５０部、
プロピルアルコール（溶解度パラメーターδ１１．５８、沸点97℃）　９．５部、
ダッポーSN-510（消泡剤）　０．５部、
変色性着色剤Ｂ　３０部
を攪拌機で均一に混合後、アトライター型ミル機で分散処理することにより、粘度520ｍＰａ・ｓのフレキソインクを得た。

　得られたフレキソインクを、300線/inchのアニロックスロールを使用して厚み15μｍの乳白色ポリエチレンフィルム上に全面版を用いて印刷した。

　かくして得られた印刷物は、やや残色の青色が発生したが、当該フィルムの前記フレキソインク印刷層上に水滴を一滴垂らすと鮮やかな青色を呈し、その後、青色の発色は経時的に退色した。すなわち、この印刷物は、水分インジケーターとしての視認性を備えたものであったが、発色の経時的維持性において劣るものであった。

　［比較例３］

　ニューマイド846（ポリアミド樹脂、溶解度パラメーターδ１２．２）　１０部、
エタノール（溶解度パラメーターδ１２．５７、沸点78.4℃）　５０部、
プロピルアルコール（溶解度パラメーターδ１１．５８、沸点97℃）　９．５部、
ダッポーSN-510（消泡剤）　０．５部、
変色性着色剤Ｂ　３０部
を攪拌機で均一に混合後、アトライター型ミル機で分散処理することにより、外観が青色を呈する粘度490ｍＰａ・ｓのフレキソインクを得た。

　得られたフレキソインクを、300線/inchのアニロックスロールを使用して厚み15μｍの乳白色ポリエチレンフィルム上に全面版を用いて印刷したところ、得られた印刷物は、残色が強く、乳白色のポリエチレンフィルム上に青色の全面模様が印刷されたものとなった。

　当該フィルムの前記フレキソインク印刷層上に水滴を一滴垂らすと更に青色が濃くなったが、水分インジケーターとしての視認性は不十分であった。

　［比較例４］

　バイロン200（溶解度パラメーターδ１０．５、飽和ポリエステル樹脂）　２５部、
N-メチルピロリドン（沸点202℃、溶解度パラメーターδ１１．２）　３０部、
N、N-ジメチルホルムアミド（沸点153℃、溶解度パラメーターδ１２．１）　２４部、
シリコーンTSE 350（シリコーン系消泡剤）　１部、
変色性着色剤Ｂ　２０部
をミキサー混合した後、三本ロールミルで分散処理を行うことにより、外観が青色の粘度8200ｍＰａ・ｓのスクリーンインクを得た。

　そのスクリーンインクを、水おみくじの文字及び絵柄の150Meshのスクリーン版を使用して白色紙上にスクリーン印刷したところ、得られた印刷物は、残色としての青色を呈するものであった。

　その印刷物を水に浮かべたところ、更に濃い青色を呈したが、水分インジケーターとしての視認性は不十分であり、その青色の発色は経時的に消色した。

Claims

　電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するもの、並びに対象物への定着のための親油性固着剤を含む定着用材料を含有する組成物であって、
水又は水を含有する液体によって変色し得るものであることを特徴とする変色材料。
　上記対象物に定着した状態において、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである請求項１記載の変色材料。
　上記呈色調整剤の溶解度パラメーター（δ）が１０以上であり、
上記電子受容性化合物と前記呈色調整剤の溶解度パラメーター（δ）の差がプラスマイナス３以内である請求項１又は２記載の変色材料。
　上記親油性固着剤の溶解度パラメーター（δ）が１２以下である請求項１乃至３の何れか１項に記載の変色材料。
　上記定着用材料が含有する全固着剤中に、溶解度パラメーター（δ）が１２以下である親油性固着剤を、８０重量％以上含有し、
上記前記電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び呈色調整剤と前記全固着剤が均一状に混合した請求項１乃至４の何れか１項に記載の変色材料。
　上記の溶解度パラメーター（δ）が１２以下である親油性固着剤が、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンブタジエン共重合樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジン酸エステル、マイクロスタリンＷＡＸ、パラフィンＷＡＸ、及び、ポリエチレンＷＡＸからなる群から選ばれた１種又は２種以上である請求項５記載の変色材料。
　上記親油性固着剤を含む定着用材料が、当該親油性固着剤が揮発性有機溶剤に溶解又は溶解及び分散してなるビヒクルである請求項１乃至６の何れか１項に記載の変色材料。
　上記親油性固着剤の溶解度パラメーター（δ）及び上記揮発性有機溶剤の溶解度パラメーター（δ）が、何れも１２以下である請求項７記載の変色材料。
　上記定着用材料中の全固着剤が、沸点が２００℃以下の揮発性有機溶剤に溶解し又は溶解及び分散しており、
前記定着用材料が含有する全揮発性有機溶剤中に、前記沸点が２００℃以下の揮発性有機溶剤であって溶解度パラメーター（δ）が１２以下であるものを、８０重量％以上含有する請求項７又は８記載の変色材料。
　ホットメルト型印刷インク、有機溶剤蒸発乾燥型印刷インク、熱硬化型ドライオフセットインク、又は静電潜像現像用トナーである請求項１乃至９の何れか１項に記載の変色材料。
　少なくとも電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による呈色を妨げる作用を有する呈色調整剤であって親水性を有するものからなり、水又は水を含有する液体によって変色し得る変色性組成物が、
所定微小体に保持又は担持されてなり、水又は水を含有する液体によって変色し得るものであることを特徴とする変色性着色剤。
　上記所定微小体は、上記保持又は担持している変色性組成物に水又は水を含有する液体が接し得るものである請求項１１記載の変色性着色剤。
　上記所定微小体のうち、少なくとも上記変色性組成物を保持又は担持する部分が、塩基性又は中性を呈する請求項１１又は１２記載の変色性着色剤。
　上記所定微小体が多孔性物質である請求項１１乃至１３の何れか１項に記載の変色性着色剤。
　上記多孔性物質の細孔容積が０．３ｃｍ^３/ｇ以上である請求項１４記載の変色性着色剤。
　上記多孔性物質の平均細孔径が２０オングストローム以上である請求項１４又は１５記載の変色性着色剤。
　請求項１１乃至１６の何れか１項に記載の変色性着色剤と、対象物への定着のための親油性固着剤を含む定着用材料を含有し、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである変色材料。
　上記対象物に定着した状態において、水又は水を含有する液体によって変色し得るものである請求項１７記載の変色材料。
　ホットメルト型印刷インク、有機溶剤蒸発乾燥型印刷インク、熱硬化型ドライオフセットインク、又は静電潜像現像用トナーである請求項１７又は１８記載の変色材料。
　請求項１乃至９並びに１７及び１８の何れか１項に記載の水又は水を含有する液体によって変色し得る変色材料が定着してなる物品。