WO2023017556A1 - コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
誘電体層(13)と電極層(11)とが積層された本体部(10)と、本体部の少なくとも一部に接続された外部電極(20)とを有するコンデンサ(1)であって、電極層(11)は、外部電極との接続部分(18)が内部電極部分(15)より厚くなったヘビーエッジ部(16)を含み、ヘビーエッジ部(16)の上に積層された金属製のエッジサポート層(12)を有するコンデンサ(1)を提供する。
Description
本発明は、コンデンサおよびその製造方法に関するものである。
日本国特開2021-19133号公報に記載の薄膜高分子積層コンデンサは、誘電体層と、誘電体層に第1金属が蒸着形成された第1金属層と前記第1金属層に第2金属が蒸着形成された第2金属層とを含む内部電極層とを交互に積層し接合したチップ状の積層体と、積層体における一端側と他端側とに各々形成された外部電極とを有しており、積層体は、誘電体層に第1金属が形成されて交互に積層された第1領域と、第1金属層のうちの前記一端側に接続される層と前記他端側に接続される層とに第2金属層が各々形成されて交互に積層されたエッジ領域とを有し、第1領域はコンデンサ機能領域を有しており、且つ、エッジ領域はヘビーエッジが形成されている。
フィルムコンデンサにおいては、自己回復性を高めるために、容量を形成する部分の内部電極を薄くする一方、両端面に設けられた外部電極と接続する部分の電極を厚くした、いわゆるヘビーエッジ構造が知られている。樹脂製の誘電体層と電極層との多層構造を含む薄膜高分子積層コンデンサにおいても、外部電極との良好な接続性と良好な耐電圧特性が得られるとともに、所望の静電容量を得るためにヘビーエッジ構造を採用することが知られている。
近年、耐電圧がさらに高く、ESRが低いコンデンサが要望されている。ヘビーエッジ構造を採用した場合でも、耐電圧を高めるためにコンデンサ部分の電極部分(内部電極部分)の表面抵抗率(シート抵抗率)が十分に高くなるように薄膜化すると接続部分も薄くなる。このため、接続部分の接続抵抗は高くなり、ESRを十分に小さくすることが難しい。一方、エッジ部分だけをさらに厚膜にしようとすると、薄膜の内部電極部分との膜厚差が大きくなりすぎるため、性能の安定したコンデンサを低コストで提供することが難しくなる。
本発明の一態様は、誘電体層と電極層とが積層された本体部と、本体部の少なくとも一部に接続された外部電極とを有するコンデンサである。電極層は、外部電極との接続部分が内部電極部分より厚くなったヘビーエッジ部を含む。コンデンサは、さらに、ヘビーエッジ部の上下の少なくともいずれかに積層された少なくとも一層の金属製のエッジサポート層を有する。
薄膜化された内部電極部分と、相対的に厚膜のヘビーエッジ部とを同時に蒸着、塗布あるいは印刷などの手法により同時に製造することは、それぞれの部分に付着させる量の相違などにより製造上の問題が発生することがある。例えば、薄膜の内部電極部分を製造するのと同時に膜厚が数倍になる可能性があるヘビーエッジ部を製造することは容易ではない。本発明のコンデンサは、内部電極部分と同時に形成され、一体化されたヘビーエッジ部を備えた電極層に加えて、ヘビーエッジ部の上下の少なくともいずれかに積層された金属製のエッジサポート層を有する。ヘビーエッジ部は、薄膜の内部電極部分と同じ条件で製造上の負荷が少ない範囲で製造することができ、エッジサポート層は、電極層とは異なる金属および/または方法によりエッジ部をさらに厚膜化することができる。このため、薄膜の内部電極部分に対して、数倍程度あるいはそれ以上の厚膜のエッジ部を含むコンデンサを、効率よく製造できる。また、エッジ部では、ヘビーエッジ部とエッジサポート層とが積層されることにより、所望の断面積が確保できるので、所望の接続性能を備えたコンデンサを低コストで提供できる。
電極層は第1の金属を含み、エッジサポート層は、第1の金属よりも融点および/または沸点が低い第2の金属を含んでもよい。蒸着または塗布でこれらの層を形成するのであれば、エッジサポート層を沸点または融点が低い金属を用いることにより、さらに低コストで製造できる。第1の金属および第2の金属は、アルミニウム、亜鉛、銅、金、銀、またはこれらを含む合金の少なくともいずれかを含んでもよく、第1の金属は、アルミニウムまたはその合金のいずれかを含み、第2の金属は、亜鉛またはその合金のいずれかを含んでもよい。電極層は第1の金属が誘電体層に蒸着された層であってもよく、エッジサポート層は、ヘビーエッジ部に第2の金属が蒸着された層であってもよい。また、本体部は、誘電体層を形成する樹脂蒸着層と、電極層を構成する第1の金属の蒸着層と、エッジサポート層を構成する第2の金属の蒸着層とが順番に繰り返し積層された部分を含んでもよい。
誘電体層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、誘電体層の厚みは0.1μmから1.5μmであってもよい。薄膜の内部電極部分の表面抵抗率は5Ω/□から80Ω/□であってもよい。厚膜となるヘビーエッジ部とエッジサポート層との合成表面抵抗率は1Ω/□から20Ω/□であってもよい。電極層は、内部電極部分から分離されたヘビーエッジ部を含み、エッジサポート層は、分離された、ダミーのヘビーエッジ部の上下の少なくともいずれかに積層された層を含んでもよい。コンデンサは、複数層のエッジサポート層を有していてもよい。
本発明の他の態様の1つは、誘電体層と電極層とが積層された本体部を有し、本体部の少なくとも一部が外部電極に接続されるコンデンサの製造方法である。製造方法は以下のステップを含む。
1.成膜された、またはフィルム状の誘電体層に重ねて電極層を成膜するとともに、外部電極との接続部分が内部電極部分より厚くなるヘビーエッジ部を形成すること。
2.ヘビーエッジ部に重ねて少なくとも一層のエッジサポート層を成膜すること。
1.成膜された、またはフィルム状の誘電体層に重ねて電極層を成膜するとともに、外部電極との接続部分が内部電極部分より厚くなるヘビーエッジ部を形成すること。
2.ヘビーエッジ部に重ねて少なくとも一層のエッジサポート層を成膜すること。
成膜する方法の一例は蒸着であり、誘電体層を成膜することは、減圧環境において、誘電体層を構成する樹脂材料を蒸着することを含んでもよく、電極層を成膜することは、誘電体層に重ねて電極層を構成する第1の金属を蒸着することを含んでもよく、エッジサポート層を成膜することは、第2の金属を蒸着することを含んでもよい。この製造方法は、樹脂材料を蒸着することに続いて、熱硬化性の樹脂材料を硬化させることを有してもよい。第1の金属を蒸着することは、第1のパターンのメタルマスクを使って蒸着することを含み、第2の金属を蒸着することは、第1のパターンと異なる第2のパターンのメタルマスクを使って蒸着することを含んでもよく、電極層とは異なる金属および/または方法によりエッジサポート層を成膜できる。
この製造方法は、電極層を成膜することの前に、誘電体層上に、内部電極部分から一方のヘビーエッジ部を分離するためのマージンをパターニングすることを含んでもよく、エッジサポート層を成膜することは、マージンで分離されたヘビーエッジ部およびマージンで分離されていないヘビーエッジ部のそれぞれに重ねてエッジサポート層を成膜することを含んでもよい。
本発明の他の態様の1つは、誘電体層と電極層とが積層された本体部を有し、本体部の少なくとも一部が外部電極に接続されるコンデンサを製造するためのシステム(装置)である。このシステムは、減圧環境を提供するチャンバと、チャンバ内で製造中の前記本体部のワークを移動する移動ユニットと、ワークに誘電体層を成膜する誘電体層成膜ユニットと、誘電体層に重ねて電極層を外部電極との接続部分が内部電極部分より厚くなるヘビーエッジ部と共に成膜する電極層成膜ユニットと、ヘビーエッジ部に重ねてエッジサポート層を成膜する、少なくとも1つのエッジサポート層成膜ユニットとを有し、誘電体層成膜ユニット、電極層成膜ユニットおよびエッジサポート層成膜ユニットはチャンバ内で移動ユニットに沿って配置されている。したがって、この製造装置においては、誘電体層と電極層とエッジサポート層とが減圧環境下で連続して積層される。
誘電体層成膜ユニットは、減圧環境において、誘電体層を構成する樹脂材料を蒸着するユニットを含んでもよく、電極層成膜ユニットは、減圧環境において、誘電体層に重ねて電極層を構成する第1の金属を蒸着するユニットを含んでもよく、エッジサポート層成膜ユニットは、減圧環境において、第2の金属を蒸着するユニットを含んでもよい。このシステムは、チャンバ内で移動ユニットに沿って配置された、熱硬化性の樹脂材料を硬化させるユニットをさらに含んでもよい。第1の金属を蒸着するユニットは、第1のパターンのメタルマスクを含み、第2の金属を蒸着するユニットは、第1のパターンと異なる第2のパターンのメタルマスクを含んでもよい。このシステムは、チャンバ内で移動ユニットに沿って誘電体層成膜ユニットと電極層成膜ユニットとの間に配置され、誘電体層上に、内部電極部分から一方のヘビーエッジ部を分離するためのマージンをパターニングするパターニングユニットをさらに有していてもよい。このシステムは、複数のエッジサポート層成膜ユニットを有していてもよい。
図1に、本発明に係るコンデンサの一例を示している。誘電体層と電極層とが積層されて一体となった本体部(コンデンサ本体、コンデンサコア、コア、本体、積層体)10と、本体10に接続された外部電極20とを有するコンデンサ(キャパシタ)1としては、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ(例えば、メタライズドフィルムコンデンサ)、薄膜高分子積層コンデンサなどが知られている。図1(a)に外観を示したコンデンサ1は、薄膜高分子積層コンデンサの一例である。図1(b)に断面図で示すように、本体部10は、厚み方向の中央に設けられた、容量を発現するアクティブ層(アクティブバルクレイヤ、コアレイヤ、アクティブ領域)7と、その上下に配置された容量を発現しないダミー層(ダミーバルクレイヤ、ダミー領域)8と、その上下に配置された保護層(保護領域)9とを含んでもよい。アクティブ層7およびダミー層8は、樹脂層(誘電体層)13と電極層11とが積層された構成であり、保護層9は樹脂のみにより構成されている。外部電極20は、アクティブ層7およびダミー層8の電極層11および樹脂層13と接合するように形成されており、内部のメタリコン層(メタリコン接続領域、例えば、真鍮メタリコン)21と、その周囲を覆う銅メッキ層22と、さらに外側を覆う錫メッキ層23とを含む。
図2に、本体部10のアクティブ層7の一部の断面を拡大して示している。本体部10のアクティブ層7は、誘電体層13と電極層11とが積層された部分であり、誘電体層13および電極層11の端部側(側面、エッジ部)18が外部電極20のメタリコン層21と接合し、電極層11は電気的にもメタリコン層21と接続されている。電極層11は、アクティブ層7の内部で誘電体層13と広く接し、容量を形成する薄膜状の内部電極部分15と、外部電極20(メタリコン層21)と接続する端部側(接続部分)18が内部電極部分15よりも厚くなったヘビーエッジ部16とを含む。アクティブ層7は、さらに、ヘビーエッジ部16の上に積層された金属製のエッジサポート層12を含む。
誘電体層13を構成する樹脂の一例は熱硬化性樹脂であり、アクリル系ポリマーを含む。薄膜高分子積層コンデンサ1に採用可能な樹脂の一例は、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートまたはトリシクロデカンジメタノールジアクリレートのいずれか一種以上が重合したものであるが、誘電体層13を構成する樹脂はこれに限定されない。小型で薄く、大容量のコンデンサを提供するために、誘電体層13が十分に薄く、十分な積層数を備えていてもよい。例えば、誘電体層13の厚みは0.1~1.5μmであってもよく、0.2~1.2μmであってもよく、積層数は1000あるいはそれ以上であってもよい。薄膜の誘電体層13は、熱硬化性樹脂を減圧環境下(真空中)でモノマとして蒸着し、電子線等を照射して硬化させることにより、所定の厚みの誘電体層13を得ることができる。熱硬化型の樹脂による誘電体層13を備えたコンデンサ1は、熱可塑性樹脂を備えたものと比較して耐熱温度が高く、リフローにも対応できるので、より表面実装に適した素子として提供できる。
電極層11は、導電性の金属、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、金、銀、またはこれらを含む合金の少なくともいずれかにより形成してもよい。高圧用のコンデンサ1としては、コンデンサとして機能する電極、すなわち内部電極部15の厚みを薄くすることで耐電圧を向上できる。例えば、耐電圧は400V以上であってもよく、内部電極部15の厚みは1~300nm程度であってもよく、3~100nm程度であってもよい。表面抵抗率を用いてもよく、内部電極部15の表面抵抗率は5~80Ω/□(Ω/sq.)であってもよく、15~80Ω/□であってもよく、20~80Ω/□であってもよい。
電極層11を薄膜にすると耐電圧は高くできるが、損失係数(tanδ)および等価直列抵抗分(ESR)が高くなり、コンデンサとしての性能が低下しやすい。このため、電極層11は、内部電極部15に対して、外部電極20との接続部分18が厚くなったヘビーエッジ部(ヘビーエッジ)16を含む。内部電極部分15が薄くても、外部電極20、本例においてはメタリコン21との接続部分18の厚みを十分に確保することにより、tanδおよびESRが低下し、周波数特性が向上し、高電流に対応可能となる。
さらに、本例のコンデンサ1は、ヘビーエッジ部16に重ねて成膜されたエッジサポート層12を有し、メタリコン21との接続部分18においては、ヘビーエッジ部16とエッジサポート層12とが一体となった構成で、すなわち、ヘビーエッジ部16とエッジサポート層12が協働で、外部電極であるメタリコン21との電気的および機械的な接合状態を制御できる。ヘビーエッジ部16およびエッジサポート層12の合計の厚みは、内部電極部15より厚く、15~200nmであってもよく、30~100nmであってもよい。ヘビーエッジ部16とエッジサポート層12との合成表面抵抗率は1~20Ω/□であってもよく、2~15Ω/□であってもよく、3~10Ω/□であってもよい。
このコンデンサ1においては、電極層11として薄膜状の内部電極部分(内部電極層)15と、それより厚いヘビーエッジ部16とが同一の金属、例えば、アルミニウムにより同一のプロセスで連続して成膜される。したがって、ヘビーエッジ部16と内部電極部分15との間に境界はなく、ヘビーエッジ部16と内部電極部分15と電気的および機械的に一体であり、ヘビーエッジ部16と内部電極部分15との境界が要因で抵抗が増加したり、強度が低下したりすることを防止できる。
一方、後に、エッジサポート層12を加えることにより外部電極との接続部分としての所望の厚みを確保できるので、内部電極部分15と一体で成膜するヘビーエッジ部16の厚みは、内部電極部分15と同じ条件およびプロセスで無理なく成膜できる程度に設定できる。このため、ヘビーエッジ部16の成膜のために製造速度を下げて多大な時間を要したり、内部電極部分15やヘビーエッジ部16の形状や厚みの管理が難しくなることを防止できる。
電極層11のヘビーエッジ部16に積層されるエッジサポート層12は、電極層11とは異なるタイミングおよびプロセスで成膜できる。したがって、エッジサポート層12は、電極層11と同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよく、成膜条件が変わってよく、成膜コストおよび時間を優先した条件でエッジサポート層12を成膜してもよい。電極層11を構成する第1の金属の一例は、アルミニウムまたはその合金のいずれかを含むものであり、エッジサポート層12を構成する第2の金属は、亜鉛またはその合金のいずれかを含むものであってもよい。
例えば、電極層11を構成する第1の金属に対して、エッジサポート層12を構成する第2の金属は、融点および/または沸点が低いものであってもよい。融点が低い金属は、塗布などにより成膜する場合に、より低コストで成膜できる。また、沸点が低い金属は、蒸着などにより成膜する場合、成膜装置の価格およびランニングコストを低減でき、また、製造速度を上げることができるので作業効率を向上できる。また、外部電極との接続部分18において、コンデンサとして機能する内部電極部15の電気的および機械的な性能は、内部電極部15と同一のプロセスで成膜されるヘビーエッジ部16により、比較的容易にある程度カバーされるので、エッジサポート層12を構成する第2の金属としては、成膜コスト、メタリコン21との接合条件などを優先して設定することが可能となる。また、エッジサポート層12は、すでに膜厚化されているヘビーエッジ部16に重ねるため、過度な厚膜化をする必要がなく、例えば、ヘビーエッジ部16の範囲内に成膜するように制御することが可能であり、厚膜化するエッジ部18の内部電極部15への影響を抑制しやすい。
コンデンサ1の一例は、電極層11は第1の金属が誘電体層13に蒸着された層であり、エッジサポート層12は、ヘビーエッジ部16に第2の金属が蒸着された層であるものである。したがって、本体部10は、誘電体層13を形成する樹脂蒸着層と、電極層11を構成する第1の金属の蒸着層と、エッジサポート層12を構成する第2の金属の蒸着層とが順番に繰り返し積層された部分(アクティブ層)7を含むものであってもよい。
コンデンサ1の電極層11は、さらに、内部電極部分15から間隙19により分離されたダミーのヘビーエッジ部17を含み、分離されたダミーのヘビーエッジ部17の上にもエッジサポート層12が積層されている。ダミーのヘビーエッジ部17は、内部電極部分15から分離されているのでコンデンサ1の容量としては寄与しない。しかしながら、外部電極20のメタリコン21との機械的な接続強度を得るためには有用であり、内部電極部分15と一体となったヘビーエッジ部16とメタリコン21との接続を維持あるいは強化する。したがって、ダミーのヘビーエッジ部17およびそれに重ねたエッジサポート層12を設けることにより、コンデンサ1のtanδおよびESRをさらに低下させることができ、周波数特性が良好で、高電流に対応可能なコンデンサを提供できる。なお、本例では、エッジサポート層12は、ヘビーエッジ部16および17の上側に積層されているが、下側に成膜されていてもよく、上下両面に成膜されていてもよい。
図3に、本例のコンデンサ1の本体10の積層部分であるアクティブ層7を、成膜システム(成膜装置、フィルムフォーミングシステム)を用いて製造する工程の一例をフローチャートにより示し、図4に各層が積層される様子を模式的に示している。図5に、コンデンサ1を製造するシステムとして用いられる成膜システム(成膜装置)50の概要を示している。成膜システム50は、真空チャンバ59と、真空チャンバ59内の減圧環境(真空環境)下で回転し、本体部10を製造するためのワーク40を搬送するドラム55とを有する。なお、本例ではドラム55を移動ユニット(搬送装置、移動装置)として、その上に連続的にワーク40が形成され、搬送される例を示しているが、複数のワーク40が断続的にドラム55により搬送されてもよい。蒸着方式による製造装置(製造システム)である成膜システム50は、さらに、ワーク40に誘電体層13を成膜する誘電体層成膜ユニット(誘電体層成膜装置)51と、誘電体層13に重ねて電極層11を外部電極20との接続部分18が内部電極部分15より厚くなるヘビーエッジ部16と共に成膜する電極層成膜ユニット(電極層成膜装置)56と、ヘビーエッジ部16に重ねてエッジサポート層12を成膜するエッジサポート層成膜ユニット(エッジサポート層成膜装置)57とを有する。誘電体層成膜ユニット51、電極層成膜ユニット56およびエッジサポート層成膜ユニット57は減圧環境を提供するチャンバ59内で製造中の本体部10のワーク40を移動する移動ユニットであるドラム55に沿って配置されている。したがって、成膜システム50においては、誘電体層13と電極層11とエッジサポート層12とが減圧環境下で連続して積層される。成膜システム50は、複数のエッジサポート層成膜ユニット57を含んでいてもよく、複数のエッジサポート層12を含むコンデンサを製造してもよい。
成膜システム50は、さらに、チャンバ59内でドラム55に沿って誘電体層成膜ユニット51と電極層成膜ユニット56との間に配置され、誘電体層13上に、内部電極部分15から一方のヘビーエッジ部16を分離するためのマージンをパターニングするパターニングユニット(パターニング装置)54を含む。具体的には、成膜システム50は、回転ドラム55に沿って順番に配置された、誘電体成膜ユニットとして樹脂材料43を蒸着するモノマ蒸着ユニット(モノマ蒸着装置)51と、電子線照射装置52と、プラズマ処理装置53と、パターニング装置54と、電極層成膜ユニットとして第1の金属41を蒸着する第1の蒸着ユニット(第1の蒸着装置)56と、エッジサポート層成膜ユニットとして第2の金属42を蒸着する第2の蒸着ユニット(第2の蒸着装置)57とを含む。
以下では、蒸着により積層部分であるアクティブ層7を製造する例により本発明を説明しているが、塗布または印刷などの他の方法で各層を成膜あるいは塗布してもよく、フィルムコンデンサなどのように誘電体層としてフィルムなどのすでに製造済みのものを使う場合は、誘電体層を成膜する工程はなくてもよく、電極層を成膜する工程とは別途行われてもよい。
まず、ステップ81において、誘電体層13を成膜する。具体的には、図4(a)に示すように、ドラム55の上に積層された下部の層の上に、モノマ蒸着ユニット51により、誘電体層13を成膜するための熱硬化樹脂43を蒸着により塗布する。塗布された熱硬化樹脂43は、電子線照射装置52により硬化されることにより誘電体層13として成膜され、さらにプラズマ処理装置53により誘電体層13の表面が次の工程のためにプラズマ処理される。したがって、誘電体層13を成膜するステップ81は、減圧環境において、誘電体層13を構成する樹脂材料(熱硬化樹脂)43を蒸着するステップ81aと、熱硬化性の樹脂43を硬化させるステップ81bとを含んでいてもよい。
次に、ステップ82において、図4(b)に示すように、電極層11を成膜する前に、パターニング装置54により、誘電体層13の上に、内部電極部分15から一方のヘビーエッジ部17を分離するためのマージン(オイルマージン)49をパターニングする。
次に、ステップ83において、誘電体層13に重ねて電極層11を成膜する。具体的には、図4(c)に示すように、第1の蒸着ユニット56により、第1のパターンのメタルマスク61を介して第1の金属41を誘電体層13の上に蒸着し、電極層11を成膜する。電極層11を成膜する際に同一の金属およびプロセスにより、内部電極部分15と共に、外部電極20との接続部分18が内部電極部分15より厚くなるヘビーエッジ部16および17を形成する。第1の金属41は、アルミニウムまたはその合金のいずれかを含んでいてもよい。アルミニウムまたはその合金は、金や銅に比較すると抵抗率(導電率)が若干高いが、低コストで、比較的沸点も低く、蒸着しやすいので内部電極部分15を構成する材料として好適なものの1つである。
続いて、ステップ84において、ヘビーエッジ部16および17に重ねてエッジサポート層12を成膜する。具体的には、図4(d)に示すように、第2の蒸着ユニット57により、第2のパターンのメタルマスク62を介して第2の金属42をヘビーエッジ部16および17に重なるように領域を限定して蒸着し、エッジサポート層12を成膜する。第2の金属42は、亜鉛またはその合金のいずれかを含んでいてもよい。亜鉛の沸点は907℃であり、アルミニウムの沸点2520℃より低い。したがって、アルミニウムの蒸着ユニットより低コストで設けることができ、ランニングコストも低減できる。また、抵抗率はアルミニウムより若干高いが十分に低く、外部電極20との接続部分(エッジ部分)18を構成する電極として採用できる。
図4(b)に示したオイルパターニング処理により、先の工程において、内部電極部分15から一方のヘビーエッジ部17がダミーエッジ部として分離されており、この工程においては、オイルマージン49により分離されたヘビーエッジ部17およびマージンで分離されていないヘビーエッジ部16のそれぞれに重ねてエッジサポート層12を成膜する。
ステップ85において、積層された層の数が所定の値に達するまで上記の工程を繰り返す。これにより、図4(e)に示すように、図4(a)~(d)の工程を繰り返すことにより、誘電体層13と電極層11とがエッジサポート層12を含めて積層された積層体を製造でき、適当な領域を切り出すことによりアクティブ層7として機能する部分を製造でき、ステップ86において、コンデンサ1を製造するための次のプロセスに移行する。
図6(a)に、ヘビーエッジ部16および17を含めて電極層11を成膜するための第1のパターン65を含むメタルマスク61の一例を示している。また、図6(b)に、ヘビーエッジ部16および17に重ねてエッジサポート層12を成膜するため第2のパターン66を含むメタルマスク62の一例を示している。メタルマスク61のパターン65は、内部電極部分15を成膜するように中央に横方向に延びた第1のスリット65aと、それに対し一定の間隔で直交する方向に延びた第2のスリット65bとを含む。第2のスリット65bにより、第1のスリット65aにより成膜される内部電極部分15に対して、エッジ部の蒸着量を増やすことができる。このため、内部電極部分15に対して厚膜のヘビーエッジ部16および17を同一のプロセスで同一の時間で成膜することができる。
一方、このタイプのパターン65を用いて内部電極部分15に対して、相対的に非常に厚膜のヘビーエッジ部を同時に成膜しようとすると、蒸着時間を長くするか、第1のスリット65aおよび第2のスリット65bの面積比を変える必要があり、いずれのケースでも内部電極部分15の膜厚管理が難しくなり、結果としてコンデンサとして機能する面積比率が低下したり、適正な膜厚にできなくなったりすることで、所望のコンデンサ性能が得られなくなる可能性がある。したがって、内部電極部分15と同時に、十分な精度で成膜できるヘビーエッジ部16および17の厚みは限定されてしまう。
エッジサポート層12を成膜するためのパターン66は、ヘビーエッジ部16および17の領域に限定して第2の金属42を積層するように、ヘビーエッジ部16および17に対応した箇所が直線状(スリット状)に開口したパターンであり、形状が簡易であり、エッジサポート層12の膜厚を制御しやすい。しかしながら、このパターン66のみで、エッジ部の条件を満足するだけの厚みを成膜しようとすると、エッジ部分の幅や厚みの制御が難しくなり、結果として所望のコンデンサ性能が得られなくなる可能性がある。本例においては、パターン65とパターン66との2つを組み合わせることにより、両方の長所を利用して接続部分18の厚みおよび形状を最適に制御することができる。エッジ部分を成膜するために組み合わされるパターン(マスク)は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
例えば、厚膜化が必要な接続部分(エッジ部)18を亜鉛のみで形成しようとすると、接続部分18の抵抗値を下げるために亜鉛金属の厚みを厚くする必要がある。接続部分18の亜鉛を厚くすると、適切に電極引き出しをすることができず、外部電極20との接続抵抗が大きくなってしまい、ESRなどの性能が劣化する。また、亜鉛を、接続部分18に限定して細く形成する場合、高速回転するドラム55の上で蒸着抵抗値を下げようとすると、蒸着量が多くなりその結果、マスクのスリットが詰まりやすくなってしまうという問題もある。すなわち、アルミニウムや亜鉛により、厚膜のヘビーエッジ部16を1箇所の蒸着により形成しようとすると蒸着量が増えるためマスクに蒸着金属が堆積しやすくなり、連続的に成膜を行うと、途中で開口面積が小さくなる(細くなる)可能性がある。さらに連続して製造しようとすると、マスクの開口やスリットが詰まる可能性もある。エッジサポート層12を成膜する工程を加えることにより、それぞれの蒸発源におけるヘビーエッジ部を厚膜化するための蒸着量を減らすことができるため、マスクの開口・スリットが詰まるリスクを抑制でき、製造効率と蒸着精度をさらに向上できる。
アクティブ用、すなわち、内部電極部分15のアルミニウムの蒸着源56とは別に、接続部分18の厚みを確保するためにアルミニウムの蒸着源を設置しようとすると、亜鉛の蒸着源57に対して製膜装置のコストが非常に高くなり装置が大きくなってしまう。また消費電力も大きくなりランニングコストが高くなる。内部電極部分15とともに、所定の厚みの接続部分18を同一のマスクで成膜しようとすると、上述したように、所望の形状と厚みとを備えた接続部分18を成膜することは容易ではない。
上述した本例の成膜装置50は、アクティブ用アルミ蒸着源56を利用したアルミニウム製のヘビーエッジ部16および17と、それとは別の亜鉛蒸着源57を利用した亜鉛製のエッジサポート層12とを併用して、所望の形状と厚みとを備えた接続部分18を設ける。これにより、所望の接続部分18のエッジ抵抗値が得られ、かつ外部電極との接続抵抗値を小さくすることが可能となる。また、アルミニウムの蒸着源を追加する必要がなく、製膜装置50のコストとランニングコストを大幅に抑えることが可能となる。また、エッジサポート層12を成膜する蒸着源57を複数用意することにより、エッジ部がさらに高精度に厚膜化したコンデンサを提供することも可能となる。
また、上記においては、本発明の特定の実施形態を説明したが、様々な他の実施形態および変形例は本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者が想到し得ることであり、そのような他の実施形態および変形は以下の請求の範囲の対象となり、本発明は以下の請求の範囲により規定されるものである。
Claims (24)
- 誘電体層と電極層とが積層された本体部と、前記本体部の少なくとも一部に接続された外部電極とを有するコンデンサであって、
前記電極層は、前記外部電極との接続部分が内部電極部分より厚くなったヘビーエッジ部を含み、
さらに、前記ヘビーエッジ部の上下の少なくともいずれかに積層された金属製の少なくとも一層のエッジサポート層を有する、コンデンサ。 - 請求項1において、
前記電極層は第1の金属を含み、前記エッジサポート層は、前記第1の金属よりも融点および/または沸点が低い第2の金属を含む、コンデンサ。 - 請求項2において、
前記第1の金属および前記第2の金属は、アルミニウム、亜鉛、銅、金、銀、またはこれらを含む合金の少なくともいずれかを含む、コンデンサ。 - 請求項2または3において、
前記第1の金属は、アルミニウムまたはその合金のいずれかを含み、
前記第2の金属は、亜鉛またはその合金のいずれかを含む、コンデンサ。 - 請求項2ないし4のいずれかにおいて、
前記電極層は前記第1の金属が前記誘電体層に蒸着された層であり、
前記エッジサポート層は、前記ヘビーエッジ部に前記第2の金属が蒸着された層である、コンデンサ。 - 請求項5において、
前記本体部は、前記誘電体層を形成する樹脂蒸着層と、前記電極層を構成する前記第1の金属の蒸着層と、前記エッジサポート層を構成する前記第2の金属の蒸着層とが順番に繰り返し積層された部分を含む、コンデンサ。 - 請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記誘電体層は熱硬化性樹脂を含む、コンデンサ。 - 請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記誘電体層の厚みは0.1μmから1.5μmである、コンデンサ。 - 請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記内部電極部分の表面抵抗率が5Ω/□から80Ω/□である、コンデンサ。 - 請求項1ないし9のいずれかにおいて、
前記ヘビーエッジ部と前記エッジサポート層との合成表面抵抗率が1Ω/□から20Ω/□である、コンデンサ。 - 請求項1ないし10のいずれかにおいて、
前記電極層は、前記内部電極部分から分離された前記ヘビーエッジ部を含み、
前記エッジサポート層は、前記分離されたヘビーエッジ部の上下の少なくともいずれかに積層された層を含む、コンデンサ。 - 請求項1ないし11のいずれかにおいて、
複数層の前記エッジサポート層を有する、コンデンサ。 - 誘電体層と電極層とが積層された本体部を有し、前記本体部の少なくとも一部が外部電極に接続されるコンデンサの製造方法であって、
前記誘電体層に重ねて電極層を成膜することを有し、
前記電極層を成膜することは、前記外部電極との接続部分が内部電極部分より厚くなるヘビーエッジ部を形成することを含み、さらに、
前記ヘビーエッジ部に重ねて少なくとも一層のエッジサポート層を成膜することを有する、製造方法。 - 請求項13において、
前記誘電体層を成膜することを有し、前記誘電体層を成膜することは、減圧環境において、前記誘電体層を構成する樹脂材料を蒸着することを含み、
前記電極層を成膜することは、前記誘電体層に重ねて電極層を構成する第1の金属を蒸着することを含み、
前記エッジサポート層を成膜することは、第2の金属を蒸着することを含む、製造方法。 - 請求項14において、
前記樹脂材料を蒸着することに続いて、熱硬化性の前記樹脂を硬化させることを有する、製造方法。 - 請求項14または15において、
前記第1の金属を蒸着することは、第1のパターンのメタルマスクを使って蒸着することを含み、
前記第2の金属を蒸着することは、前記第1のパターンと異なる第2のパターンのメタルマスクを使って蒸着することを含む、製造方法。 - 請求項14ないし16のいずれかにおいて、
前記第1の金属は、アルミニウムまたはその合金のいずれかを含み、
前記第2の金属は、亜鉛またはその合金のいずれかを含む、製造方法。 - 請求項13ないし17のいずれかにおいて、
前記電極層を成膜することの前に、前記誘電体層上に、前記内部電極部分から一方の前記ヘビーエッジ部を分離するためのマージンをパターニングすることを含み、
前記エッジサポート層を成膜することは、前記マージンで分離された前記ヘビーエッジ部および前記マージンで分離されていない前記ヘビーエッジ部のそれぞれに重ねて前記エッジサポート層を成膜することを含む、製造方法。 - 誘電体層と電極層とが積層された本体部を有し、前記本体部の少なくとも一部が外部電極に接続されるコンデンサを製造するためのシステムであって、
減圧環境を提供するチャンバと、
前記チャンバ内で製造中の前記本体部のワークを移動する移動ユニットと、
前記チャンバ内で前記移動ユニットに沿って配置された、前記ワークに前記誘電体層を成膜する誘電体層成膜ユニットおよび前記誘電体層に重ねて電極層を前記外部電極との接続部分が内部電極部分より厚くなるヘビーエッジ部と共に成膜する電極層成膜ユニットとを有し、さらに、
前記チャンバ内で前記移動ユニットに沿って配置され、前記ヘビーエッジ部に重ねてエッジサポート層を成膜する、少なくとも1つのエッジサポート層成膜ユニットを有する、システム。 - 請求項19において、
前記誘電体層成膜ユニットは、前記減圧環境において、前記誘電体層を構成する樹脂材料を蒸着するユニットを含み、
前記電極層成膜ユニットは、前記減圧環境において、前記誘電体層に重ねて電極層を構成する第1の金属を蒸着するユニットを含み、
前記エッジサポート層成膜ユニットは、前記減圧環境において、第2の金属を蒸着するユニットを含む、システム。 - 請求項20において、
前記チャンバ内で前記移動ユニットに沿って配置された、熱硬化性の前記樹脂材料を硬化させるユニットをさらに有する、システム。 - 請求項20または21において、
前記第1の金属を蒸着するユニットは、第1のパターンのメタルマスクを含み、
前記第2の金属を蒸着するユニットは、前記第1のパターンと異なる第2のパターンのメタルマスクを含む、システム。 - 請求項19ないし22のいずれかにおいて、
前記チャンバ内で前記移動ユニットに沿って前記誘電体層成膜ユニットと前記電極層成膜ユニットとの間に配置され、前記誘電体層上に、前記内部電極部分から一方の前記ヘビーエッジ部を分離するためのマージンをパターニングするパターニングユニットをさらに有する、システム。 - 請求項19ないし24のいずれかにおいて、
複数の前記エッジサポート層成膜ユニットを有する、システム。
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