WO2023008166A1 - インクジェット記録装置 - Google Patents

Abstract

インクジェット記録装置は、処理液を吐出する処理液ヘッドと、インクを吐出するインクヘッドと、前記処理液ヘッドをワイピングする処理液ワイパと、前記インクヘッドをワイピングするインクワイパと、前記インクを受け入れる第１開口を備えたインク容器と、を備える。前記処理液ワイパの前記ワイピング時における移動範囲が、前記第１開口の直上を回避した位置に設定されている。

Description

インクジェット記録装置

　本開示は、処理液を吐出する処理液ヘッド及びインクを吐出するインクヘッドを備えたインクジェット記録装置に関する。

　インクジェット式プリンター等のインクジェット記録装置は、画像形成用のインクを記録媒体に向けて吐出するインクヘッドと、所定の処理液を吐出する処理液ヘッドとを含む。例えば、記録媒体が織物や編物等の繊維シートやプラスチックシートである場合、インクを記録媒体へ向けて吐出させる前・後に、当該記録媒体に対して前処理液・後処理液の施与が必要となる場合がある。前処理液は、例えば記録媒体へのインクの定着性やインク顔料の凝集性を向上させるための処理液である。後処理液は、例えば印刷された画像の堅牢性を高める処理液である。この場合、インクジェット記録装置には、インクヘッドに加えて、前処理液及び後処理液を吐出する処理液ヘッドが備えられる。

　一般にインクジェット記録装置は、印刷処理を行う印刷エリアに加えて、上記インクヘッド及び処理液ヘッドのためのメンテナンスエリアを備える（例えば特許文献１）。メンテナンスエリアでは、インク又は処理液を吐出するノズルの目詰まり解消や、ヘッドのノズル配列面の汚れ等を除去する処理が行われる。この処理のため、加圧液体をノズルから吐出させるパージ動作、ノズル配列面をブレード等の払拭部材を備えたワイパで払拭するワイピング動作などが行われる。

特開２００５－２６２５６１号公報

　本開示の一の局面に係るインクジェット記録装置は、処理液を吐出する処理液ヘッドと、インクを吐出するインクヘッドと、前記処理液ヘッドをワイピングする処理液ワイパと、前記インクヘッドをワイピングするインクワイパと、前記インクを受け入れる第１開口を備えたインク容器と、を備える。前記処理液ワイパの前記ワイピング時における移動範囲が、前記第１開口の直上を回避した位置に設定されている。なお、「直上を回避した位置」とは、前記第１開口の上方空間を外れた位置のほか、前記第１開口の一部領域と前記処理液ワイパとの間に他の部材が介在している位置を含む。

図１は、本開示の一実施形態に係るインクジェット式プリンターの全体構成を示す斜視図である。 図２は、図１のＩＩ－ＩＩ線の模式的な断面図である。 図３は、図１に示すキャリッジ及びメンテナンスユニットの拡大斜視図である。 図４は、キャリッジ及びメンテナンスユニットの模式的な断面図である。 図５は、インクジェット式プリンターの制御構成を示すブロック図である。 図６は、メンテナンスユニットの全体斜視図である。 図７は、図６に示すメンテナンスユニットから洗浄ユニットを取り除いた状態の斜視図である。 図８Ａは、図７の状態からさらにワイピングユニットを取り除いた状態の斜視図である。 図８Ｂは、図８Ａの処理液容器付近の拡大図である。 図９の上図は、ワイピングユニットの平面図、図９の下図は、キャリッジに搭載されたインクヘッドの配置を示す平面図である。 図１０は、ワイピングユニットが備えるワイパの一つの斜視図である。 図１１Ａは、図７とは斜視方向を異ならせたメンテナンスユニットの斜視図である。 図１１Ｂは、ワイピングユニットの駆動系部分の拡大図である。 図１２は、ワイピングユニットの移動方向を説明するための斜視図である。 図１３は、ワイピングユニットの移動経路を示す、メンテナンスユニットの上面図である。 図１４Ａは、インク容器の開口の直上を回避した、処理液容器の配置例を示す模式図であって、当該処理液容器の左右方向の断面図である。 図１４Ｂは、同じく処理液容器の配置例を示す左右方向の断面図である。 図１４Ｃは、同じく処理液容器の配置例を示す左右方向の断面図である。 図１４Ｄは、同じく処理液容器の配置例を示す上面図である。 図１５Ａは、処理液ワイパのワイピング時における移動範囲を説明するための模式図である。 図１５Ｂは、処理液ワイパのワイピング時における移動範囲を説明するための模式図である。 図１５Ｃは、処理液ワイパのワイピング時における移動範囲を説明するための模式図である。 図１６Ａは、インクワイパとその清掃部材を示す模式的な側面図である。 図１６Ｂは、前記清掃部材の配置を示すメンテナンスユニットの要部斜視図である。 図１７は、インクブレード及び処理液ブレードの傾き配置を示す平面図である。 図１８Ａは、傾きのないブレードによるヘッドのワイピング状況を示す図である。 図１８Ｂは、傾きを有する処理液ブレード及びインクブレードによるヘッドのワイピング状況を示す図である。 図１８Ｃは、傾きを有する処理液ブレード及びインクブレードによるヘッドのワイピング状況を示す図である。 図１９は、ワイパの傾き配置の他の例を示す平面図である。

　以下、図面を参照しつつ、本開示の一実施形態について説明する。本実施形態では、インクジェット記録装置の具体例として、広幅で長尺の記録媒体に画像形成用のインクを吐出するインクヘッドを備えたインクジェット式プリンターを例示する。本実施形態のインクジェット式プリンターは、織物や編物等の生地からなる記録媒体に、文字類や模様等の画像をインクジェット方式で印刷するデジタル捺染印刷に好適である。もちろん、本開示に係るインクジェット記録装置は、紙シートや樹脂シート等の記録媒体に各種のインクジェット画像を印刷する用途にも用いることができる。

　［インクジェット式プリンターの全体構成］
　図１は、本開示の一実施形態に係るインクジェット式プリンター１の全体構成を示す斜視図、図２は、図１のＩＩ－ＩＩ線の模式的な断面図である。インクジェット式プリンター１は、広幅且つ長尺のワークＷにインクジェット方式で画像を印刷するプリンターであって、装置フレーム１０と、この装置フレーム１０に組み込まれたワーク搬送部２０及びキャリッジ３とを含む。なお、本実施形態では、左右方向がワークＷに対する印刷の際の主走査方向、後方から前方に向かう方向が副走査方向であってワークＷの搬送方向Ｆである。

　装置フレーム１０は、インクジェット式プリンター１の各種構成部材を搭載するための骨組みを形成している。ワーク搬送部２０は、インクジェット印刷処理が行われる印刷領域をワークＷが、後方から前方に向かう搬送方向Ｆに進行するように、当該ワークＷを間欠送りする機構である。キャリッジ３は、インクヘッド４、前処理ヘッド５、後処理ヘッド６及び図略のサブタンクを搭載し、前記インクジェット印刷処理の際に左右方向に往復移動する。

　装置フレーム１０は、中央フレーム１１１、右フレーム１１２及び左フレーム１１３を含む。中央フレーム１１１は、インクジェット式プリンター１の各種構成部材を搭載するための骨組みを形成しており、ワーク搬送部２０に応じた左右幅を有している。右フレーム１１２は中央フレーム１１１の右隣に、左フレーム１１３は中央フレーム１１１の左隣に、それぞれ立設されている。右フレーム１１２と左フレーム１１３との間が、ワークＷに対して印刷処理が実行される印刷エリア１２である。

　右フレーム１１２は、メンテナンスエリア１３を形成する。メンテナンスエリア１３は、前記印刷処理が実行されないときキャリッジ３を退避させるエリアである。メンテナンスエリア１３には、メンテナンスユニット７が配置されている。メンテナンスユニット７は、退避したキャリッジ３の下方に位置している。メンテナンスユニット７は、インクヘッド４、前処理ヘッド５及び後処理ヘッド６の下面（ノズル配列面）を払拭するワイピング処理、ノズルのパージ処理を行うためのユニットである。メンテナンスユニット７は、上掲のヘッド４、５、６の休止時において、これらの乾燥を抑止するキャップとしての機能も果たす。左フレーム１１３は、キャリッジ３の折り返しエリア１４を形成する。折り返しエリア１４は、前記印刷処理において右方から左方へ印刷エリア１２をスキャンしたキャリッジ３が、逆方向のスキャンを行う前に一時的に入る領域である。

　装置フレーム１０の上方側には、キャリッジ３に左右方向の往復移動を行わせるためのキャリッジガイド１５が組み付けられている。キャリッジガイド１５は、左右方向に長い平板状の部材であり、ワーク搬送部２０の上方に配置されている。キャリッジガイド１５には、タイミングベルト１６が左右方向（主走査方向）に周回移動が可能に組み付けられている。タイミングベルト１６は、無端ベルトであって、図略の駆動源によって、左方向又は右方向に周回移動するよう駆動される。

　キャリッジガイド１５には、上下一対のガイドレール１７が、左右方向に平行に延在するように装備されている。キャリッジ３は、ガイドレール１７に対する係合部を有する。キャリッジ３は、タイミングベルト１６に固定されている。キャリッジ３は、タイミングベルト１６の左方向又は右方向の周回移動に伴って、ガイドレール１７に案内されつつ、キャリッジガイド１５に沿って左方向又は右方向に移動する。

　図２を主に参照して、ワーク搬送部２０は、印刷前のワークＷを繰り出す送り出しローラー２１と、印刷後のワークＷを巻き取る巻き取りローラー２２とを含む。送り出しローラー２１は、装置フレーム１０の後方下部に配置され、印刷前のワークＷの巻回体である送り出しロールＷＡの巻き取り軸である。巻き取りローラー２２は、装置フレーム１０の前方下部に配置され、印刷処理後のワークＷの巻回体である巻き取りロールＷＢの巻き取り軸である。巻き取りローラー２２には、当該巻き取りローラー２２を軸回りに回転駆動し、ワークＷの巻き取り動作を実行させる第１モーターＭ１が付設されている。

　送り出しローラー２１と巻き取りローラー２２との間であって印刷エリア１２を通る経路が、ワークＷの搬送経路となる。この搬送経路には、上流側から順に第１テンションローラー２３、ワークガイド２４、搬送ローラー２５及びピンチローラー２６、折り返しローラー２７、第２テンションローラー２８が配置されている。第１テンションローラー２３は、搬送ローラー２５の上流側において、ワークＷに所定の張力を付与する。ワークガイド２４は、ワークＷの搬送方向を上方向から前方向に変更し、ワークＷを印刷エリア１２へ搬入させる。

　搬送ローラー２５は、印刷エリア１２においてワークＷを間欠送りする搬送力を発生する。搬送ローラー２５は、第２モーターＭ２により軸回りに回転駆動される。搬送ローラー２５は、ワークＷがキャリッジ３に対向する印刷エリア１２を通過するように、ワークＷを前方向（搬送方向Ｆ）へ間欠的に搬送する。ピンチローラー２６は、搬送ローラー２５に対して上方から対向するように配置され、搬送ローラー２５と搬送ニップ部を形成している。折り返しローラー２７は、印刷エリア１２を通過したワークＷの搬送方向を前方向から下方向に変更し、印刷処理後のワークＷを巻き取りローラー２２へ導く。第２テンションローラー２８は、搬送ローラー２５の下流側において、ワークＷに所定の張力を付与する。印刷エリア１２においてワークＷの搬送経路の下方には、プラテン２９が配置されている。

　キャリッジ３は、ガイドレール１７に片持ち支持された状態で、搬送方向Ｆと交差する主走査方向（左右方向）に往復移動する。キャリッジ３は、キャリッジフレーム３０と、このキャリッジフレーム３０に搭載されるインクヘッド４、前処理ヘッド５、後処理ヘッド６及び図略のサブタンクとを備える。キャリッジフレーム３０は、ヘッド支持フレーム３１及びバックフレーム３２を含む。ヘッド支持フレーム３１は、上掲のヘッド４～６を保持する水平板である。バックフレーム３２は、ヘッド支持フレーム３１の後端縁から上方に延びる垂直板である。バックフレーム３２に対してタイミングベルト１６が固定され、ガイドレール１７が係合されている。

　［キャリッジの詳細］
　キャリッジ３について、さらに説明を加える。図３は、図１に示すキャリッジ３の拡大斜視図であり、メンテナンスユニット７も併記されている。図３には、ワークＷの搬送方向Ｆ（副走査方向）と、キャリッジ３の移動方向である主走査方向Ｓとが示されている。図３では、ワークＷに対して画像形成用のインクを吐出する複数のインクヘッド４と、非発色性の処理液を吐出する前処理ヘッド５及び後処理ヘッド６とが、キャリッジ３に搭載されている例を示している。実際のキャリッジ３には、これらヘッド４、５、６に前記インク及び前記処理液を供給する複数のサブタンクも搭載される。

　インクヘッド４の各々は、例えばピエゾ素子を用いたピエゾ方式、加熱素子を用いたサーマル方式等の吐出方式でインク滴を吐出する多数のノズルと、このノズルにインクを導くインク通路とを備える。インクとしては、例えば、水系の溶媒、顔料及び結着樹脂を含む水系顔料インクを用いることができる。本実施形態における複数のインクヘッド４は、互いに異なる８色のインクを各々吐出する第１～第８インクヘッド４Ａ～４Ｈを含む。

　各色のインクヘッド４Ａ～４Ｈは、主走査方向Ｓに並ぶように、キャリッジ３のヘッド支持フレーム３１に搭載されている。各色のインクヘッド４Ａ～４Ｈは、それぞれ２個のヘッドを有している。例えば第１インクヘッド４Ａは、搬送方向Ｆの上流側に配置された上流側ヘッド４Ａ１と、この上流側ヘッド４Ａ１よりも下流側であって、主走査方向Ｓの左方側にシフトした位置に配置された下流側ヘッド４Ａ２とで構成されている。他の色のインクヘッド４Ｂ～４Ｈも同様である。これらインクヘッド４Ｂ～４Ｈの各上流側ヘッドは、上流側ヘッド４Ａ１と搬送方向Ｆにおいて同位置で主走査方向Ｓに一列に並び、また各下流側ヘッドは、下流側ヘッド４Ａ２と搬送方向Ｆにおいて同位置で主走査方向Ｓに一列に並んでいる。

　前処理ヘッド５（処理液ヘッド）及び後処理ヘッド６は、搬送方向Ｆにおいてインクヘッド４とは異なる位置に配置されている。前処理ヘッド５は、インクヘッド４の搬送方向Ｆの上流側に配置されている。図３では、１個の前処理ヘッド５がインクヘッド４の配列体の左端付近に配置されている例を示している。これに対し、後処理ヘッド６は、インクヘッド４の搬送方向Ｆの下流側に配置されている。図３では、２個の後処理ヘッド６Ａ、６Ｂがインクヘッド４の配列体の右端付近において、主走査方向Ｓに並ぶように配置されている例を示している。

　前処理ヘッド５は、ワークＷに対して所定の前処理を施すための前処理液を吐出する。前処理液は、ワークＷの、まだインクヘッド４からインクが吐出されていない位置に、前処理ヘッド５から吐出される。前処理液は、ワークＷに付着しても発色しない非発色性の処理液であって、例えばワークＷへのインクの定着性やインク顔料の凝集性を高める機能等を発現する処理液である。このような前処理液としては、溶媒に結着性樹脂を配合した処理液、或いは、溶媒にプラス帯電するカチオン樹脂を配合した処理液等を用いることができる。

　後処理ヘッド６は、インクが付着したワークＷに対して所定の後処理を施すための後処理液を吐出する。後処理液は、ワークＷの、インクヘッド４からへインクが吐出された後の位置に、後処理ヘッド６から吐出される。後処理液は、同様にワークＷに付着しても発色しない非発色性の処理液であって、インクヘッド４によりワークＷ上に印画されたインク画像の定着性や堅牢性を高める機能を発現する処理液である。前記堅牢性は、擦れや削れに対する耐性を意味する。このような後処理液としては、シリコーン系の処理液等を用いることができる。

　ここで、非発色性の処理液とは、記録媒体に単独で印刷した場合に、人に肉眼では発色したと認識されないものを表す。ここでの色とは、黒、白及び灰色などの彩度が０のものも含める。非発色性の処理液は、基本的には、透明な液体であるが、例えば、１リットルの処理液を液体の状態で見ると、完全に透明ではなく、わずかに白色などに見えることもある。そのような色は、非常に薄いので、記録媒体に単独で印刷した場合に、人が肉眼で発色したとは認識できない。なお、処理液の種類によっては、記録媒体に単独で印刷した場合に、記録媒体に光沢が生じるなどの変化があることもあるが、そのような状態は、発色ではない。

　ヘッド支持フレーム３１のヘッドの配置箇所には、開口３１Ｈが設けられている。インクヘッド４Ａ～４Ｆ、前処理ヘッド５及び後処理ヘッド６は、各々の開口３１Ｈに嵌め込まれるように、ヘッド支持フレーム３１に組み付けられている。各開口３１Ｈからは、各ヘッド４、５、６の下端面に配置されているノズルが露出している。

　以上の通り、本実施形態に係るインクジェット式プリンター１は、インクヘッド４、前処理ヘッド５及び後処理ヘッド６の３種類のヘッドが、一つのキャリッジ３に搭載されたオールインワン型のプリンターである。このプリンター１によれば、例えばデジタル捺染印刷における、生地にインクジェット印刷を行う印捺工程において、前処理液の吐出工程及び後処理液の吐出工程を一体的に実行させることができる。従って、捺染工程の簡素化、捺染装置のコンパクト化を図ることができる。

　［メンテナンスユニットの概略構成］
　図４は、キャリッジ３及びメンテナンスユニット７の前後に沿った模式的な断面図である。メンテナンスユニット７は、容器ユニット７０、ワイピングユニット８及び洗浄ユニット９を含む。メンテナンスエリア１３（図１）は、ヘッド４、５、６のノズルの目詰まり解消や、ヘッド４、５、６のノズル配列面ＮＡの汚れ等を除去する処理を行うエリアである。この処理のためメンテナンスエリア１３では、パージ動作、ワイピング動作及び洗浄動作が実行される。

　パージ動作は、加圧されたインク、前処理液及び後処理液を、それぞれインクヘッド４、前処理ヘッド５及び後処理ヘッド６から強制的に吐出させる動作である。容器ユニット７０は、前記パージ動作の際にヘッド４、５、６から吐出されるインク、前処理液及び後処理液を回収する。ワイピング動作は、ノズル配列面ＮＡをブレード等の払拭部材を備えたワイパで払拭する動作である。ワイピングユニット８は、前記ワイピング動作を実行するユニットである。洗浄動作は、前記ワイピング動作の実行により汚濁したワイピングユニット８を洗浄する動作である。洗浄ユニット９は、前記洗浄動作を実行するユニットである。なお、容器ユニット７０は、前記洗浄動作で用いられる洗浄液も回収する。

　容器ユニット７０は、前処理液と、インク及び後処理液とを分別して回収する構造を備えている。本実施形態では、上述の通り前処理液として、インクの定着性やインク顔料の凝集性を高める処理液が用いられる。従って、前処理液とインクが混合すると、その混合液は凝集し、廃液タンクへの回収に支障を来すことがある。他方、本実施形態で用いる後処理液は、インクと混合させても凝集等が生じない。これが、容器ユニット７０における上記分別回収の理由である。

　容器ユニット７０は、インク容器７１、前処理液容器７２（処理液容器）及び洗浄液トレイ７３を備える。インク容器７１は、前記パージ動作において、インクヘッド４及び後処理ヘッド６から各々吐出されるインク及び後処理液を回収する容器である。インク容器７１は、その上面にインク及び後処理液を受け入れる第１開口７１Ｈを備えている。第１開口７１Ｈは、インクヘッド４及び後処理ヘッド６の少なくともノズル配列面ＮＡと上下方向に対向する位置において上方に開口している。インク容器７１は、前記ワイピング動作において、ノズル配列面ＮＡから払拭されるインク及び後処理液も回収する。

　前処理液容器７２は、第１開口７１Ｈの上方の一部を覆う位置に配置されている。前処理液容器７２は、前記パージ動作において、前処理ヘッド５から吐出される前処理液を回収する容器である。前処理液容器７２は、その上面に前処理液を受け入れる第２開口７２Ｈを備えている。第２開口７２Ｈは、前処理ヘッド５の少なくともノズル配列面ＮＡと上下方向に対向する位置において上方に開口している。前処理液容器７２は、前記ワイピング動作において、ノズル配列面ＮＡから払拭される前処理液も回収する。洗浄液トレイ７３は、前記洗浄動作で洗浄液洗浄ユニット９から噴射される洗浄液９Ａを回収する容器である。

　容器ユニット７０は、回収した液体の流通用に、オーバーフロー通路７４１、処理液通路７４２及び中継通路７４３を備えている。オーバーフロー通路７４１は、インク容器７１の底面に始端開口を有し、終端側が図略の廃液容器へ向かう通路である。処理液通路７４２は、前処理液容器７２の底面付近に始端開口を有し、終端側が前記廃液容器へ向かう通路である。中継通路７４３は、洗浄液トレイ７３の底面に始端開口を有し、インク容器７１の底面付近に終端開口を有する通路である。すなわち、洗浄液トレイ７３で回収された洗浄液９Ａは、一旦インク容器７１に導入された上で、オーバーフロー通路７４１を通して前記廃液容器に回収される。

　なお、ここで液体を「受け入れる」とは、上方から落下してくる液体を受け入れるということである。インク容器７１には、洗浄液トレイ７３から中継通路７４３を通じて液体が流れてくるが、これは前述の「受け入れる」には含まれない。洗浄液トレイ７３から流れてくる液体には、洗浄液以外に、少量のインク、前処理液及び後処理液が含まれる。しかし、前処理液の濃度は低いため、インク容器７１に入っても凝固することは実質的にない。なお、洗浄液トレイ７３に仕切りを設けて、前処理液を含まない液体のみをインク容器７１に流すようにしてもよい。

　容器ユニット７０の上面７０Ａにはキャップゴム７５が取り付けられている。キャップゴム７５は、インク容器７１の第１開口７１Ｈの周縁を取り囲むように配置されている。キャリッジ３は、図中の矢印Ａ１で示すように、上下方向に移動が可能である。キャリッジ３がメンテナンスエリア１３で待機モードとなるときや、プリンター１の休止時等には、キャリッジ３が下降され、ヘッド支持フレーム３１の下面３１１がキャップゴム７５に接面される。これにより、ヘッド４、５、６のノズル配列面ＮＡが密閉される。

　ワイピングユニット８は、ワイパ支持板８１（支持板）と、このワイパ支持板８１によって支持されるインクワイパ８２、前処理液ワイパ８３（処理液ワイパ）及び後処理液ワイパ８４とを備える。ワイピングユニット８は、図中の矢印Ａ２で示すように、前後方向に移動が可能である。ワイパ支持板８１は、平板状の部材であり、キャリッジ３及び洗浄ユニット９と、容器ユニット７０との間で前後方向に移動する。インクワイパ８２は、インクヘッド４のノズル配列面ＮＡに当接した状態で後方向に移動することで、ノズル配列面ＮＡをワイピングする。同様に、前処理液ワイパ８３及び後処理液ワイパ８４は、それぞれ前処理ヘッド５及び後処理ヘッド６のノズル配列面ＮＡをワイピングする。

　洗浄ユニット９は、ノズル保持板９１と、このノズル保持板９１で保持される複数の洗浄ノズル９２とを含む。ノズル保持板９１は、平板状の部材からなり、容器ユニット７０の洗浄液トレイ７３に対向するように固定的に配置される。複数の洗浄ノズル９２は、ワイパ支持板８１に装着されているインクワイパ８２、前処理液ワイパ８３及び後処理液ワイパ８４の各々に対応する位置に配置されている。つまり、ワイピングユニット８が洗浄ユニット９の直下の所定位置に移動したとき、ワイパ８２、８３、８４の各々に上方から対向する位置において、複数の洗浄ノズル９２は各々ノズル保持板９１に保持されている。洗浄ノズル９２は、洗浄液９Ａを扇形のスプレー状に放射する。洗浄ノズル９２には、図略の洗浄液タンクから洗浄液ホース９３を介して洗浄液９Ａが供給される。

　［制御構成］
　図５は、プリンター１の制御構成の一部を示すブロック図である。プリンター１は、コントローラ３３と、コントローラ３３により動作が制御されるキャリッジ駆動モーター３４、キャリッジ昇降モーター３５、ワイパ移動モーター３６、洗浄水供給ポンプ３７及びヘッド駆動部３８を含む。

　キャリッジ駆動モーター３４は、折り返しエリア１４、印刷エリア１２及びメンテナンスエリア１３（図１）の範囲でキャリッジ３を左右方向に移動させる駆動力を発生する。キャリッジ駆動モーター３４は、タイミングベルト１６（図１～図３）を駆動する。キャリッジ昇降モーター３５は、メンテナンスエリア１３において、キャリッジ３を上下方向に移動させる駆動力を発生する。ワイパ移動モーター３６は、ワイピングユニット８を前後方向に移動させる駆動力を発生する。洗浄水供給ポンプ３７は、洗浄液ホース９３に連結され、洗浄ノズル９２に所定圧で洗浄液９Ａを供給する。ヘッド駆動部３８は、各ヘッド４、５、６からのインク、前処理液、後処理液の吐出動作を実行する。

　前記パージ動作を実行させる際、コントローラ３３はワイパ移動モーター３６を制御して、ワイピングユニット８を洗浄ユニット９の下方の退避位置まで後方に移動させる。次いで、コントローラ３３は、ヘッド駆動部３８を制御して、各ヘッド４、５、６から高圧でインク、前処理液及び後処理液を各々吐出させ、ノズルを清浄化する。パージ動作で吐出されたインク及び後処理液はインク容器７１で、前処理液は前処理液容器７２で、それぞれ回収される。

　前記ワイピング動作を実行させる際、コントローラ３３はワイパ移動モーター３６を制御して、ワイピングユニット８を最も前方のワイピング開始位置まで移動させる。次いで、コントローラ３３は、キャリッジ昇降モーター３５を制御して、各ヘッド４、５、６のノズル配列面ＮＡが、ワイピングユニット８のワイパ８２、８３、８４に接する高さ位置まで下降させる。しかる後、コントローラ３３は、ワイピングユニット８を後方に向けて移動させる。インクワイパ８２及び後処理液ワイパ８４のワイピングによりノズル配列面ＮＡから払拭されたインク及び後処理液は、インク容器７１で回収される。また、前処理液ワイパ８３のワイピングによりノズル配列面ＮＡから払拭された前処理液は、前処理液容器７２で回収される。

　前記洗浄動作を実行させる際、コントローラ３３はワイパ移動モーター３６を制御して、ワイピングユニット８を洗浄ユニット９の下方の退避位置まで後方に移動させる。次いで、コントローラ３３は、洗浄水供給ポンプ３７を制御して、洗浄液ホース９３を介して洗浄ノズル９２に洗浄液９Ａを供給させる。これにより、ワイピングユニット８のワイパ８２、８３、８４の各々には洗浄液９Ａが吹き付けられ、ワイピングで付着した異物が除去される。洗浄液９Ａは洗浄液トレイ７３で回収される。

　［メンテナンスユニットの詳細構造］
　続いて、上述のメンテナンスユニット７の一つの具体的実施形態を例示し、その詳細構造について説明する。図６は、メンテナンスユニット７の全体斜視図、図７は、図６から洗浄ユニット９を取り除いた状態の斜視図、図８Ａは、図７の状態からさらにワイピングユニット８を取り除いた状態の斜視図、図８Ｂは、図８Ａの前処理液容器７２付近の拡大図である。図６及び図７では、ワイピング指令待ちの待機状態乃至は前記洗浄動作が実行される状態であって、ワイピングユニット８が最も後端側に移動されている状態を示している。

　既述の通りメンテナンスユニット７は、容器ユニット７０、ワイピングユニット８及び洗浄ユニット９を含む。容器ユニット７０は、メンテナンスエリア１３において前方へ引き出し可能に装置フレーム１０（図１）に装着される。ワイピングユニット８は、容器ユニット７０に対して前後方向に移動可能に組み付けられている。洗浄ユニット９は、装置フレーム１０に固定的に組み付けられる。

　＜容器ユニット＞
　容器ユニット７０は、前後方向にやや長い直方体の形状を有するフレーム構造体７００と、このフレーム構造体７００の前方側に配置されたインク容器７１及び前処理液容器７２と、フレーム構造体７００の後方側に配置された洗浄液トレイ７３とを含む。フレーム構造体７００は、前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム７０１と、これらサイドフレーム７０１の前端同士を繋ぐフロントフレーム７０２とを含む。

　フロントフレーム７０２には、容器ユニット７０の前方への引き出し用の取っ手７０３が取り付けられている。フロントフレーム７０２の下方からは、複数の廃液ホース７０４が引き出されている。廃液ホース７０４は、インク容器７１のキャビティと連通するオーバーフロー通路７４１、及び、前処理液容器７２のキャビティと連通する処理液通路７４２と、図略の廃液タンクとを接続する。一対のサイドフレーム７０１の外側面には、スライダ７０５が装着されている。スライダ７０５は、装置フレーム１０に固定されている図略のガイドレールと係合し、装置フレーム１０から容器ユニット７０の前方への引き出しを可能とする。フレーム構造体７００の下方には、電気ケーブルやホース類を収容するチェーンプロテクタ７０６が装備されている。容器ユニット７０の引き出しに応じて、チェーンプロテクタ７０６は変形する。

　インク容器７１は、左右方向に長い矩形の第１開口７１Ｈを上面に有する受け皿型の容器である。インク容器７１は、左右方向に長い矩形の底面７１１と、底面７１１の４つの端縁から各々上方に延びる４つのテーパ面７１２と、第１開口７１Ｈの周縁に形成された上端フランジ７０８とを含む。インク容器７１は、フレーム構造体７００とは別体物であって、フレーム構造体７００に嵌め込まれている。インク容器７１の上端フランジ７０８は、サイドフレーム７０１及びフロントフレーム７０２で支持されている。底面７１１からは、オーバーフロー通路７４１の始端開口が所定長だけ上向に突出している。左方側のテーパ面７１２の下端付近からは、中継通路７４３の終端開口が突出している。

　第１開口７１Ｈの左右方向のサイズは、一対のサイドフレーム７０１間の距離に略等しいサイズである。第１開口７１Ｈの前後方向のサイズは、容器ユニット７０の前後幅の半分よりもやや大きいサイズである。上端フランジ７０８の上面には、第１開口７１Ｈの周囲を取り囲むように配置されたキャップゴム７５が取り付けられている。なお、上端フランジ７０８は、図４の模式図に示した上面７０Ａに対応する部分である。キャリッジ３のヘッド支持フレーム３１は、キャップゴム７５が囲んでいる領域よりも大きいサイズを有している。一方、ヘッド支持フレーム３１に保持されているヘッド４、５、６の配列領域は、第１開口７１Ｈのサイズよりもやや小さいサイズである。キャップゴム７５は、ヘッド４、５、６の配列領域の外周において、ヘッド支持フレーム３１の下面３１１に当接し、ヘッド４、５、６のノズル配列面ＮＡをシールする。

　図８Ａ及び図８Ｂを参照して、前処理液容器７２は、インク容器７１の左後方の位置において、第１開口７１Ｈの一部を覆うように配置されている。この前処理液容器７２の配置位置は、ワイピング時にキャリッジ３に保持された前処理ヘッド５が正対する位置である。例えば前処理ヘッド５がヘッド支持フレーム３１の中央若しくは右端付近に配置されている場合ならば、前処理液容器７２もそれらに対応した位置に配置される。前処理液容器７２は、前処理ヘッド５のノズル配列面ＮＡの形状に対応するよう、前後方向に長い矩形の第２開口７２Ｈを上面に有している。本実施形態では、第２開口７２Ｈは、第１開口７１Ｈと同じ高さ位置にある。換言すると、本来の第１開口７１Ｈの領域の一部を第２開口７２Ｈが占有している関係である。

　前処理液容器７２は、前壁７２１、後壁７２２、右壁７２３及び左壁７２４によって形成されている。これらの壁のうち、後壁７２２はインク容器７１の後側テーパ面７１２の上端近傍部分を、左壁７２４は左側テーパ面７１２の上端近傍部分を利用している。前壁７２１は、左側テーパ面７１２の上端近傍であって、その前後方向の中央付近から右方に突出する壁である。右壁７２３は、前壁７２１及び後壁７２２の右端縁同士を繋ぐ壁である。右壁７２３は、右下へ傾斜している左側テーパ面７１２から略鉛直上方向に立設されている。

　洗浄液トレイ７３は、左右方向に長い矩形の上面開口を有する、インク容器７１に比べて浅い深さの容器である。洗浄液トレイ７３の底面は、傾斜面７３１と集液面７３２とを含む。傾斜面７３１は、洗浄液トレイ７３の右端側から左端側に向けて緩い勾配で下る面である。集液面７３２は、洗浄液トレイ７３の左端付近に位置し、前記底面において最深部を形成する平面である。傾斜面７３１の左端縁は集液面７３２の右端縁に連なっている。集液面７３２には、中継通路７４３の始端が開口している。

　＜ワイピングユニット＞
　図７に示すように、ワイピングユニット８は、ワイパ支持板８１、インクワイパ８２、前処理液ワイパ８３、後処理液ワイパ８４及びワイパ駆動部８５を含む。図９の上図は、ワイパ８２、８３、８４を保持したワイパ支持板８１の平面図、図９の下図は、キャリッジ３に搭載されたインクヘッド４、前処理ヘッド５及び後処理ヘッド６の配置を示す平面図であって、ワイパ８２、８３、８４との対応関係を示す図である。図９の下図に示すヘッド４、５、６の配置態様は、先に図３に例示した態様と同じである。

　ワイパ支持板８１は、薄肉の平板部材を打抜き加工して形成されてなり、短冊状の凸板８１１を複数備えている。複数の凸板８１１は、ワイピング時の移動方向である後方向に突出している。隣り合う凸板８１１の間には、前方側に窪んだ凹所８１２が形成されている。凸板８１１の端縁（後端）及び凹所８１２の端縁には、インクヘッド４のノズル配列面ＮＡをワイピングするインクワイパ８２が取り付けられている。凸板８１１の端縁に配置されたインクワイパ８２は、第１インクヘッド４Ａの上流側ヘッド４Ａ１用に配置されたインクワイパ８２Ａ１などの、各色のインクヘッド４の上流側ヘッドのワイピング用である。一方、凹所８１２の端縁に配置されたインクワイパ８２は、下流側ヘッド４Ａ２用に配置されたインクワイパ８２Ａ２などの、各色のインクヘッド４の下流側ヘッドのワイピング用である。

　ワイパ支持板８１において、前処理ヘッド５のノズル配列面ＮＡをワイピングする前処理液ワイパ８３を支持する支持領域は、ワイパ支持板８１の他の領域よりも、ワイピング時の移動方向において後方に突出した位置に配置されている。具体的には、最も左方に位置する凸板８１１の後端から、凸片８１４がさらに後方へ延出されている。前処理液ワイパ８３は、凸片８１４の端縁（後端）に取り付けられている。凸片８１４の前方側には、凹所８１２に対応する窓部８１５が設けられている。このように、前処理液ワイパ８３をワイパ支持板８１において最も前記移動方向に突出した箇所で支持させる配置とすることで、ワイピング時に前処理液ワイパ８３の払拭した前処理液がワイパ支持板８１の他の部分に付着し難くなる。

　図９の下図に示すように、本実施形態では、ワイピング時の移動方向（後方向）において、前処理ヘッド５と第１インクヘッド４Ａの下流側ヘッド４Ａ２とが互いに全体的に重なる位置に配置されている。つまり、前処理ヘッド５と下流側ヘッド４Ａ２とが、ヘッド支持フレーム３１の左右方向の同じ位置において、搬送方向Ｆの上流側と下流側とに並んで配置されている。このような配置とすれば、ワイピング領域から洗浄ユニット９へ向かう際にインクワイパ８２Ａ２が通過する経路は、前処理液ワイパ８３によって払拭された経路と重なる。従って、前処理液がインクワイパ８２Ａ２に滴下して凝集が生じるリスクを低減することができる。なお、前処理ヘッド５と下流側ヘッド４Ａ２とは、ワイピング時の移動方向において完全に重なる位置関係で配置されていることが望ましいが、両者が左右方向に僅かにズレて配置されていても良い。

　ワイパ支持板８１の右端側は、後処理ヘッド６のノズル配列面ＮＡをワイピングする後処理液ワイパ８４を支持する支持領域である。ヘッド支持フレーム３１の右端付近において、２個の後処理ヘッド６Ａ、６Ｂが主走査方向に並んで配置されている。左方側の後処理ヘッド６Ａは、第７インクヘッド４Ｇの上流側ヘッド４Ｇ１と、右方側の後処理ヘッド６Ｂは、第８インクヘッド４Ｈの上流側ヘッド４Ｈ１と、それぞれ搬送方向Ｆの上流側と下流側とに並んで配置されている。

　このようなヘッド配置に対応して、ワイパ支持板８１は、その右端付近に一対の保持片８１６及び窓部８１７を備えている。保持片８１６は、その後端縁で上流側ヘッド４Ｇ１、４Ｈ１をワイピングするインクワイパ８２Ｇ１、８２Ｈ１を支持している。各保持片８１６の左側に隣接する凹所８１２の端縁には、下流側ヘッド４Ｇ２、４Ｈ２をワイピングするインクワイパ８２Ｇ２、８２Ｈ２が支持されている。窓部８１７は、保持片８１６の前方に配置された開口である。窓部８１７の前側の開口縁において、後処理ヘッド６Ａ、６Ｂをワイピングする後処理液ワイパ８４（８４Ａ、８４Ｂ）が各々支持されている。

　ワイパ支持板８１は、上述のワイパ８２、８３、８４の各々に対応付けて配置された複数の凸部８１３を有している。凸部８１３は、凸板８１１の後端、凹所８１２の基端縁、凸片８１４の後端、及び窓部８１７の基端縁に各々連設されている。これら凸部８１３は、上面視の形状において、ワイピング時の移動方向に向けて突出する小突起である。ワイパ８２、８３、８４は、それぞれ対応付けられた凸部８１３に配置されている。このような配置とすることで、ワイパ８２、８３、８４に付着したインクや処理液がワイパ支持板８１に付着し難くすることができる。

　図１０は、インクワイパ８２の詳細構造を示す斜視図である。前処理液ワイパ８３及び後処理液ワイパ８４も、ここに示すインクワイパ８２と同様の構造を備えている。インクワイパ８２は、ワイパブレード８２１（インクブレード、若しくは処理液ブレード）、第１ホルダ８２２及び第２ホルダ８２３を含む。

　ワイパブレード８２１は、ノズル配列面ＮＡに実際に当接してワイピング動作を行う板材である。ワイパブレード８２１の上端は、ワイパ支持板８１の上面から上方に突出した位置にある。第１ホルダ８２２及び第２ホルダ８２３は、ワイパブレード８２１を挟み込む保持する部材である。第１ホルダ８２２は、凸部８１３に設けられた凹所に嵌合されると共にネジ止め固定され、ワイパブレード８２１の背面下部を支持している。第２ホルダ８２３は、ワイパブレード８２１の前面下部に添設されている。

　第２ホルダ８２３は、一対の開口８２４を備え、ワイパブレード８２１も開口８２４と同位置に貫通孔を備えている。一方、第１ホルダ８２２は一対の爪部８２５を備える。爪部８２５は、前記貫通孔及び開口８２４に挿通され、開口８２４の周縁において第２ホルダ８２３を係止している。この係止力によって、ワイパブレード８２１が第１ホルダ８２２と第２ホルダ８２３とによって挟持されている。ワイパブレード８２１は、凸部８１３の突出端面より更に突出した位置で保持されている。

　前処理液ワイパ８３及び後処理液ワイパ８４は、図１０に示すインクワイパ８２と同一の構造、形状及び材質にて構成されたものであっても良いが、これらを異にするものであっても良い。例えば、ワイパブレード８２１の形状や材質、ワイパブレード８２１の支持構造を、インクや処理液の性質に応じて、前処理液ワイパ８３及び／又は後処理液ワイパ８４についてインクワイパ８２と異なる態様としても良い。ワイパブレード８２１としては、所定の剛性を有するゴム又は樹脂材料からなるブレードが用いられる。例えば、前処理液の方がインクに比べて早く乾燥する性質があって、比較的払拭が難しい場合を想定する。この場合、前処理液ワイパ８３のワイパブレード８２１として、インクワイパ８２のものよりも剛性の高いブレードを用いたり、ワイパブレード８２１の突出高さを高くしたりして、その払拭力を高めることが望ましい。

　図１１Ａは、図７とは斜視方向を異ならせたメンテナンスユニット７の斜視図であって、ワイパ駆動部８５を説明するための図である。図１１Ｂは、図１１Ａにおいて点線で囲まれたＸＩＢ部分の拡大図である。ワイパ駆動部８５は、ワイパ８２、８３、８４を保持したワイパ支持板８１を前後方向に移動させる機構である。ワイパ駆動部８５は、サーボモーター８５１、ボールねじ８５２及びスライダ８５３を含む。なお、サーボモーター８５１は、図５に示すワイパ移動モーター３６に対応するモーターである。

　サーボモーター８５１は、ワイパ支持板８１を移動させる駆動力を発生する。サーボモーター８５１は、容器ユニット７０の後板７０７の右端に取り付けされている。ボールねじ８５２は、サーボモーター８５１によって軸回りに正回転又は逆回転駆動される。ボールねじ８５２は、右側のサイドフレーム７０１に沿うように前後方向に延びている。なお、左側のサイドフレーム７０１には、前後方向に延びる図略のガイドバーが添設されている。スライダ８５３は、ボールねじ８５２に螺合されるナット部材を内包している。ボールねじ８５２が正回転又は逆回転されると、スライダ８５３はボールねじ８５２に沿って前後方向に進退移動する。

　スライダ８５３はワイパ支持板８１に連結されている。スライダ８５３の上部には、細長い平板部材からなる連結板８１８が取り付けられている。この連結板８１８に、ワイパ支持板８１の右側の端部８１Ｅが載置されると共に、両者が固定ネジ８１９で締結されている。図示は省くが、ワイパ支持板８１の左側の端部も、連結板８１８及びスライダ８５３と同等の部材にて支持され、前記ガイドバーに沿ってガイドされる。

　ワイパ支持板８１の移動範囲は、容器ユニット７０の前端（ワイピングエリア）から後端（洗浄エリア）の間である。例えば、サーボモーター８５１がコントローラ３３により正回転駆動されると、スライダ８５３が前方向に送られ、スライダ８５３に固定されているワイパ支持板８１も前方向に移動する。一方、サーボモーター８５１が逆回転駆動されると、ワイパ支持板８１は後方向に移動する。

　＜洗浄ユニット＞
　図６を参照して、洗浄ユニット９は、ノズル保持板９１及び複数の洗浄ノズル９２を備える。ノズル保持板９１は、天板９１１及び左右一対の側板９１２を含むＵ字型のフレーム材である。天板９１１は、容器ユニット７０の左右幅よりもやや大きい幅を有する平板である。一対の側板９１２は、天板９１１の左端及び右端から垂下する平板であり、左右のサイドフレーム７０１と各々対峙する。

　ノズル保持板９１は、装置フレーム１０（図１）の適所に固定されている。容器ユニット７０が装置フレーム１０の所定位置に装填された状態では、ノズル保持板９１は容器ユニット７０の後方領域に対して上方から嵌め込まれるような位置関係となる。ノズル保持板９１が容器ユニット７０を覆っている部分が、インクワイパ８２、前処理液ワイパ８３及び後処理液ワイパ８４を洗浄するための洗浄エリアとなる。天板９１１は、容器ユニット７０の洗浄液トレイ７３と所定のギャップを置いて上下方向に対峙している。前記ギャップは、ワイピングユニット８を天板９１１と洗浄液トレイ７３との間に進入させ得る上下幅を有する。

　複数の洗浄ノズル９２は、ワイパ支持板８１へのワイパ８２、８３、８４の配置態様に合致するよう、天板９１１の適所に配設されている。複数の洗浄ノズル９２は、インクワイパ８２を洗浄するノズル９２Ａと、前処理液ワイパ８３を洗浄するノズル９２Ｂと、後処理液ワイパ８４を洗浄するノズル９２Ｃを含む。これらノズル９２Ａ、９２Ｂ、９２Ｃは、それぞれの下端面から扇形のスプレー状に洗浄液９Ａを吐出し（図４参照）、ワイパ８２、８３、８４を洗浄する。

　［ワイピング時の移動経路］
　続いて、ワイピングユニット８の周辺部材に対する位置関係を含めて、ワイピング時における移動経路について説明する。図１２は、ワイピングユニット８のワイピング時における初期位置を示す斜視図である。ワイピング時にワイピングユニット８は、洗浄ユニット９が配置されている洗浄エリアに向かうよう、前記初期位置から後方へ移動する。インク容器７１の第１開口７１Ｈ及び前処理液容器７２の第２開口７２Ｈの上方が、ワイパ８２、８３、８４がヘッド４、５、６の払拭を行うワイピングエリアとなる。

　メンテナンスユニット７の左隣には、インクヘッド４にインクを吐出させて画像を形成する印刷エリア１２（図１）が存在している。このためキャリッジ３は、メンテナンスエリア１３にピットインする際、メンテナンスユニット７の左側辺から進入する。図９に示す通り、前処理ヘッド５は、第１インクヘッド４Ａの下流側ヘッド４Ａ２と並んで最も左側の位置で、キャリッジ３にて支持されている。これに合わせて、前処理液ワイパ８３も、ワイパ支持板８１において最も左側の位置に配置されている。

　つまり、キャリッジ３が印刷エリア１２からワイピングエリアへ移動する移動方向において、印刷エリア１２に対して前処理液ワイパ８３が、下流側ヘッド４Ａ２用のインクワイパ８２Ａ２を除く他のインクワイパ８２よりも近い位置に配置されている。この配置によれば、自ずと前処理液容器７２は、インク容器７１の左端付近に配置されることになる。この場合、前記ピットインの際に、前処理ヘッド５がインク容器７１の第１開口７１Ｈを通過しない配置を実現することができる。このため、前処理ヘッド５に付着した前処理液がインク容器７１に滴下し難くすることができる。

　また、前処理液ワイパ８３は、ワイピングエリアから洗浄エリアへの移動方向において、ワイパ８２、８３、８４の中で最も洗浄エリアに近い位置でワイパ支持板８１にて支持されている。すなわち、図９の上図に示すように、前処理液ワイパ８３は、ワイパ支持板８１において上面視で最も後方に突出した凸片８１４の端縁に配置されている。このため、前処理液ワイパ８３を最も早く洗浄エリアへ導入して洗浄処理を施すことが可能である。例えば、前処理液が速乾性の性質を有しているような場合に、前処理液ワイパ８３を洗浄するノズル９２Ｂ（図６）を、ノズル保持板９１の最も前方側に配置すれば、直ちに前処理液ワイパ８３を洗浄することが可能となる。

　図１３は、ワイピング時におけるワイピングユニット８の移動経路ＭＷを示す、メンテナンスユニット７の上面図である。図中の点線で示す位置が、ワイピングユニット８及び前処理液ワイパ８３のワイピング時における初期位置である。図１３で、実線で示すワイピングユニット８の位置が、ワイピングの完了位置であってワイパ８２、８３、８４が洗浄される位置、並びに、ワイピング動作の実行指示を待つ待機位置である。

　本実施形態では、前処理液ワイパ８３のワイピング時における移動経路ＭＷ（移動範囲）が、インク容器７１の第１開口７１Ｈの直上を回避した位置に設定されている。具体的には、ワイピングエリアにおいて前処理液ワイパ８３がワイピング動作を行う際の移動範囲が、前処理液容器７２の第２開口７２Ｈの直上に設定されている。換言すると、前処理液ワイパ８３が前処理ヘッド５のノズル配列面ＮＡを払拭している領域の直下に第１開口７１Ｈは実質的に存在せず、前記領域の大部分乃至は全部が第２開口７２Ｈと上下方向に対峙する配置とされている。さらに別の表現をすれば、インク容器７１の第１開口７１Ｈは、上から見て、前処理液ワイパ８３がノズル配列面ＮＡを払拭している領域以外の位置に配置されている。この配置により、ワイピング時において前処理液ワイパ８３が拭った前処理液が、第１開口７１Ｈを通してインク容器７１へ混入する事象を低減することができる。従って、インクの凝集等の化学反応の発生を抑制することができる。

　移動経路ＭＷに沿う方向（前後方向）でインク容器７１及び前処理液容器７２を見た場合、第１開口７１Ｈの一部（左端前方部）と第２開口７２Ｈとが直列的に配置されていると言える（図１３参照）。つまり、第１開口７１Ｈの一部が前方側、第２開口７２Ｈが後方側となる配置である。そして、移動経路ＭＷの指向方向、つまり前処理液ワイパ８３の移動方向は、前方側から後方側である。換言すると、前処理液ワイパ８３の移動方向は、第１開口７１Ｈから離れる方向である。しかも、図８Ｂに示した通り、前処理液容器７２の後端縁（後壁７２２）は、インク容器７１の後端縁（後側のテーパ面７１２）と面一である。すなわち、移動経路ＭＷにおいて前処理液容器７２の後端縁と洗浄エリアとの間に第１開口７１Ｈは介在していない。従って、前処理液ワイパ８３が、前処理ヘッド５のワイピングを終えノズル配列面ＮＡから離間するときに飛散することのある前処理液が、インク容器７１へ入り込むことを低減できる。

　また、移動経路ＭＷの指向方向は、洗浄ユニット９の配置された洗浄エリアが位置する方向である。このような配置もまた、前処理液の飛散対策に貢献している。すなわち、前処理ヘッド５のノズル配列面ＮＡから前処理液ワイパ８３が離間する際、前処理液ワイパ８３に付着した前処理液が飛散しても、その飛散先は洗浄エリアとなる。洗浄エリアにおいて、飛散した前処理液は、比較的大量の洗浄液で希釈され、洗浄液トレイ７３にて回収される。従って、前処理液の飛沫がインク容器７１へ入り難いオペレーションを実現することができる。

　＜第１開口の直上を回避した位置について＞
　上記の「第１開口７１Ｈの直上を回避した位置」について、そのバリエーションを説明しておく。図１４Ａ～図１４Ｄは、インク容器７１の第１開口７１Ｈの直上を回避した、前処理液容器７２の各種配置例を示す模式図である。図１４Ａ～図１４Ｃはメンテナンスユニット７の左右方向の模式的な断面図、図１４Ｄは上面図である。「直上を回避した位置」とは、第１開口７１Ｈの上方空間を外れた位置にある場合のほか、第１開口７１Ｈの一部領域と前処理液ワイパ８３との間に他の部材が介在している位置を含む。

　図１４Ａは、前処理液容器７２が第１開口７１Ｈの一部を覆う位置に配置することで、前処理液ワイパ８３の移動範囲を、第１開口７１Ｈの直上を回避する位置に設定する例を示している。図１４Ａの例は、先掲の図８Ａに示した例と同様である。この例では、前処理液ワイパ８３の移動範囲を第１開口７１Ｈの上空に設定しつつも、その移動範囲の下方に前処理液容器７２の第２開口７２Ｈを配置することによって、「第１開口７１Ｈの直上を回避した位置」を達成している。

　図１４Ｂは、シンプルに、前処理液ワイパ８３の移動範囲を第１開口７１Ｈの上方空間から外れた位置に設定した例を示す。この例では、自ずと前処理液容器７２が第１開口７１Ｈとは上下方向に重ならない位置に配置されることになる。図１４Ｃは、第１開口７１Ｈと前処理液ワイパ８３との間に他の部材が介在している例である。前処理液容器７２はインク容器７１に隣接して配置されている。一方、前処理液ワイパ８３は、第１開口７１Ｈの上方に配置された前処理ヘッド５のワイピングのため、当該第１開口７１Ｈの上方に位置している。そして、前処理液ワイパ８３の下方にはガイド板７６が、第２開口７２Ｈに向かう方向に下り傾斜した態様で配置されている。前処理液ワイパ８３が前処理ヘッド５から払拭した前処理液は、ガイド板７６を通して第２開口７２Ｈへ導かれる。

　図１４Ｄは、インク容器７１の形状を工夫することで、「第１開口７１Ｈの直上を回避した位置」を達成する例を示している。インク容器７１は、前処理ヘッド５の配置領域の下方に対応した位置に、切り欠き部７１３を有している。それゆえ、前処理液ワイパ８３の移動範囲は、第１開口７１Ｈから外れている。切り欠き部７１３には、前処理液容器７２が配置される。

　＜移動範囲と第２開口との位置関係について＞
　次に、前処理液ワイパ８３の移動範囲と前処理液容器７２の第２開口７２Ｈとの位置関係について説明を加える。図１５Ａ～図１５Ｃは、前処理液ワイパ８３のワイピング動作時における移動範囲を説明するための模式図である。図１５Ａは、前処理液ワイパ８３が実質的にワイピング動作を行う実ワイピング範囲ｄ１を示している。実ワイピング範囲ｄ１は、前処理ヘッド５において前処理液を吐出する多数のノズルが配列されたノズル配列部５１の幅に相当する。つまりｄ１は、前処理液ワイパ８３の移動方向において、ノズル配列部５１の上流端（前端）から下流端（後端）までの長さである。ノズル配列部５１は、前処理液が現に付着する部分となる。従って、この実ワイピング範囲ｄ１を移動する間が、前処理液ワイパ８３（ワイパブレード８２１）が実質的に前処理液を払拭する仕事を行う区間となる。ワイピングが行われると、拭われた前処理液がワイパブレード８２１から第２ホルダ８２３（図１０参照）を伝って滴下する。滴下した前処理液は、前処理液容器７２で受け取られる。

　図１５Ａでは、実ワイピング範囲ｄ１と、その前後の前処理液ワイパ８３の厚み分とをカバーする前後幅を備えた第２開口７２Ｈを有する前処理液容器７２が、前処理ヘッド５の下方に配置されている例を示している。このような範囲に第２開口７２Ｈを配置すれば、少なくとも最も前処理液が滴下し易い領域をカバーできるので、前処理液がインク容器７１に混入する可能性を大幅に低減することができる。なお、図１５Ａの例に代えて、実ワイピング範囲ｄ１と同一又は僅かに大きいサイズ有する第２開口７２Ｈとしても良い。

　図１５Ｂは、前処理液ワイパ８３が実ワイピングの開始位置からワイピングエリアを抜けるまでの容器エリア範囲ｄ２を示している。実ワイピングの開始位置は、図１５Ａと同じく、ノズル配列部５１の上流端である。ワイピングエリアは、本実施形態ではインク容器７１の第１開口７１Ｈがカバーしている範囲であるので、ワイピングエリアを抜ける位置は、第１開口７１Ｈの後端縁となる。図１５Ｂでは、このような容器エリア範囲ｄ２をカバーする第２開口７２Ｈを有する前処理液容器７２Ａが、前処理ヘッド５の下方に配置されている例を示している。容器エリア範囲ｄ２に対応して第２開口７２Ｈを配置すれば、実ワイピングの完了後から洗浄エリアへ向かう間に前処理液ワイパ８３から滴下する前処理液を、前処理液容器７２Ａで回収することができる。

　図１５Ｃは、前処理液ワイパ８３がワイピングを実行するに際して移動する、予め定められた移動経路ＭＷ（図１３）の全体範囲ｄ３を示している。移動経路ＭＷの後端は、前処理液ワイパ８３の待機位置且つ動作完了位置である。移動経路ＭＷの前端は、一連のワイピング動作において最も前処理液ワイパ８３が前方に移動する位置である。つまり、前処理液ワイパ８３は、ワイピング動作時に、移動経路ＭＷの後端から前端まで進み移動し、キャリッジ３が下降してノズル配列面ＮＡが所定のワイピング高さとされた後、移動経路ＭＷの前端から後端まで戻り移動する。ここでは移動経路ＭＷの前端が、前処理ヘッド５よりも前側である例を示しているが、前処理ヘッド５の前端縁とノズル配列部５１の上流端との間を移動経路ＭＷの前端としても良い。

　図１５Ｃでは、全体範囲ｄ３をカバーする第２開口７２Ｈを有する前処理液容器７２Ｂが、前処理ヘッド５の下方に配置されている例を示している。この場合、移動経路ＭＷの全体が、第１開口７１Ｈの直上を回避した位置に設定されることになる。このような範囲ｄ３に対応して第２開口７２Ｈを配置すれば、より確実に前処理液を前処理液容器７２Ｂにて回収することができる。前処理液容器７２Ｂは、ワイピングエリアと洗浄エリアとの境界位置に、仕切り板７２５を備える。前処理液容器７２Ｂの後方部分は洗浄エリアに入り込むことになる。仕切り板７２５を設けることで、ワイピングエリアで回収される前処理液を隔離し、独立経路で回収することができる。

　＜インクワイパの除去部＞
　ワイピングユニット８が備える複数のインクワイパ８２のうち、最も左側に位置する下流側ヘッド４Ａ２用に配置されたインクワイパ８２Ａ２（図９）は、ワイピングユニット８が洗浄エリアに向かう際、前処理液容器７２の第２開口７２Ｈの上空を通過することになる。この通過の際、インクワイパ８２Ａ２に付着したインクが前処理液容器７２内に滴下して凝集等を惹起し得る。この不具合に対処する例を図１６Ａ及び図１６Ｂに示す。

　図１６Ａは、インクワイパ８２Ａ２の周辺を示す模式的な側面図である。インクワイパ８２Ａ２のワイパブレード８２１は、第１ホルダ８２２及び第２ホルダ８２３で保持された状態で、ワイパ支持板８１の凸部８１３で支持されている。インクワイパ８２Ａ２が第１インクヘッド４Ａの下流側ヘッド４Ａ２をワイピングすると、払拭されたインク等がインクワイパ８２Ａ２の下端から落下しきらない状態で、付着物Ｔとして残存することがある。この付着物Ｔを前処理液容器７２の第２開口７２Ｈの手前で減らすために、スポンジ７７（除去部）を配置することが望ましい。

　図１６Ｂは、スポンジ７７の配置を示す容器ユニット７０の要部斜視図である。本実施形態では、インクワイパ８２Ａ２の洗浄エリアへの移動方向において、第２開口７２Ｈが第１開口７１Ｈの下流側に配置されている。スポンジ７７は、インクワイパ８２Ａ２の下端面に接触する高さ位置であって、第２開口７２Ｈよりも上流側に配置されている。インク容器７１の左側テーパ面７１２の上端付近であって、第２開口７２Ｈの上流側には、支持板７８が突設されている。スポンジ７７の下端は、支持板７８の上面に固定されている。インクを含む付着物Ｔは、インクワイパ８２Ａ２が第２開口７２Ｈに至る前に、スポンジ７７によって除去される。従って、インクの前処理液容器７２への混入を抑制することができる。

　［ワイパの傾き配置について］
　続いて、インクワイパ８２及び前処理液ワイパ８３の好ましい配置例を示す。図１７は、インクワイパ８２及び前処理液ワイパ８３の傾き配置を示す平面図である。図１０に示したように、インクワイパ８２は、ワイピング時における移動方向（前後方向）に対して交差する方向（左右方向）に延びるワイパブレード８２１Ａ（インクブレード）を備えている。同様に、前処理液ワイパ８３も、左右方向に延びるワイパブレード８２１Ｂ（処理液ブレード）を有している。

　インクワイパ８２のワイパブレード８２１Ａは、当該インクワイパ８２のワイピング時の移動方向において、その左端部側が右端部側よりも突出するように、傾いて配置されている。前処理ヘッド５の右隣に位置する第１インクヘッド４Ａの上流側ヘッド４Ａ１をワイピングするインクワイパ８２Ａ１に注目する。図１８Ｃにも示している通り、インクワイパ８２Ａ１のワイパブレード８２１Ａは、処理液容器７２が存在する側の左端部８２Ｌ（第１端部）が、その反対側の右端部８２Ｒ（第２端部）よりも前記移動方向に突出するように、傾いて配置されている。後処理ヘッド６Ａ、６Ｂをワイピングする後処理液ワイパ８４Ａ、８４Ｂも、左端部が右端部よりもその移動方向に突出するように、傾いて配置されている。

　これに対し、前処理液ワイパ８３のワイパブレード８２１Ｂは、当該前処理液ワイパ８３の移動方向において、その右端部側が左端部側よりも突出するように、傾いて配置されている。図１８Ｂも参照して、前処理液ワイパ８３のワイパブレード８２１Ｂは、インク容器７１の第１開口７１Ｈが右隣に存在する側の右端部８３Ｒ（第３端部）が、その反対側の左端部８３Ｌ（第４端部）よりも前記移動方向に突出するように、傾いて配置されている。

　図１８Ａは、傾きのないワイパブレード８２１０によるヘッド４０のワイピング状況を示す図である。ヘッド４０には液体Ｌが付着している。ワイパブレード８２１０は、ワイピング方向と直交する方向に延びるように配置されている。このようなワイパブレード８２１０にてワイピングを行わせると、ヘッド４０から拭われた液体Ｌは、図中の矢印で示すように、ヘッド４０の左右から滴下する。例えば、当該ワイパブレード８２１０を前処理液ワイパ８３に適用した場合、前処理ヘッド５の右側から滴下する前処理液がインク容器７１に混入する怖れがある。また、当該ワイパブレード８２１０を第１インクヘッド４Ａの上流側ヘッド４Ａ１に適用した場合、上流側ヘッド４Ａ１の左側から滴下するインクが前処理液容器７２に混入する怖れがある。

　図１８Ｂは、傾きを持たせたワイパブレード８２１Ｂを有する前処理液ワイパ８３による前処理ヘッド５のワイピング状況を示す図である。ワイパブレード８２１Ｂは、右端部８３Ｒがワイピング方向に突出する傾きを有している。このため、前処理ヘッド５からワイパブレード８２１Ｂで拭われた前処理液Ｌ１は、専ら前処理ヘッド５の左側から滴下する。従って、前処理液Ｌ１が、前処理液容器７２の第２開口７２Ｈの右側に隣接するインク容器７１の第１開口７１Ｈに滴下する可能性を低減できる。

　図１８Ｃは、傾きを持たせたワイパブレード８２１Ａを有するインクワイパ８２によるインクヘッド４（上流側ヘッド４Ａ１）のワイピング状況を示す図である。ワイパブレード８２１Ａは、左端部８２Ｌがワイピング方向に突出する傾きを有している。このため、上流側ヘッド４Ａ１からワイパブレード８２１Ａで拭われたインクＬ２は、専ら上流側ヘッド４Ａ１の右側から滴下する。従って、ワイピング時にインクＬ２が、第２開口７２Ｈに滴下する可能性を低減することができる。

　図１７、図１８Ｂ、及び図１８Ｃに示す実施形態によれば、ワイパブレード８２１Ａ、８２１Ｂの傾き配置によって、ワイピングにより拭われた前処理液Ｌ１及びインクＬ２の滴下先をコントロールすることが可能となる。従って、前処理液Ｌ１とインクＬ２とが、インク容器７１又は前処理液容器７２において混合する可能性を低減することができる。なお、ワイパブレード８２１Ａ、８２１Ｂの傾き配置にて前処理液Ｌ１とインクＬ２との混合抑制が図れる場合は、前処理液ワイパ８３のワイピング時における移動範囲の一部又は全部が、第１開口７１Ｈの直上に設定されていても良い。

　図１９は、ワイパの傾き配置の他の例を示す平面図である。図１９では、インクヘッド４として、前側に配置された６つのインクヘッド４Ｆ１１、４Ｆ１２、４Ｆ１３、４Ｆ１４、４Ｆ１５、４Ｆ１６と、後側に配置された６つのインクヘッド４Ｒ１１、４Ｒ１２、４Ｒ１３、４Ｒ１４、４Ｒ１５、４Ｒ１６とが備えられている。また、１つの前処理ヘッド５がインクヘッド４群の上流側に、２つの後処理ヘッド６Ａ、６Ｂが下流側に、各々備えられている。また、容器ユニット７０Ｇとして、互いに区画されたインク容器７１Ａ、前処理液容器７２Ａ及び後処理液容器７２Ｂを有する容器ユニットが例示されている。各区画には、廃液排出口７４Ａが備えられている。

　前側のインクヘッド４Ｆ１１～４Ｆ１６に対して、それぞれワイピング用のインクワイパ８２Ｆ１、８２Ｆ２、８２Ｆ３、８２Ｆ４、８２Ｆ５、８２Ｆ６が配設されている。後側のインクヘッド４Ｒ１１～４Ｒ１６に対しても、それぞれワイピング用のインクワイパ８２Ｒ１、８２Ｒ２、８２Ｒ３、８２Ｒ４、８２Ｒ５、８２Ｒ６が配設されている。前処理ヘッド５に対しては前処理液ワイパ８３が、後処理ヘッド６Ａ、６Ｂに対しては後処理液ワイパ８４Ａ、８４Ｂが各々配設されている。

　図１９に示す実施形態の第１の特徴は、インク容器７１と前処理液容器７２Ａとの境界、並びに、インク容器７１Ａと後処理液容器７２Ｂとの境界において、各ワイパが拭き取った液体が互いに遠ざかる向きに傾斜して配置されている点である。具体的には、ワイピング時の移動方向（後方向）において、インク容器７１と前処理液容器７２Ａとの境界では、前処理液ワイパ８３は右端部側が左端部側よりも突出するように傾いて配置されている。また、インクヘッド４Ｆ１１、４Ｒ１１をワイピングするインクワイパ８２Ｆ１、８２Ｒ１は、逆に左端部が右端部よりも突出するように傾いて配置されている。この配置は、図１７の例と同様であり、前処理液とインクとを分離して回収し易くなる。すなわち、前処理液を左側に逃がして前処理液容器７２Ａで確実に回収させると共に、インクを右側に逃がして前処理液容器７２Ａに混入し難くすることができる。

　インク容器７１Ａと後処理液容器７２Ｂとの境界では、後処理液ワイパ８４Ａは、左端部が右端部よりも前記移動方向に突出するように傾いて配置されている。また、インクヘッド４Ｆ１６、４Ｒ１６をワイピングするインクワイパ８２Ｆ６、８２Ｒ６は、逆に右端部が左端部よりも前記移動方向に突出するように傾いて配置されている。この配置によって、後処理液とインクとを分離して回収し易くなる。すなわち、後処理液を右側に逃がして後処理液容器７２Ｂで確実に回収させると共に、インクを左側に逃がして後処理液容器７２Ｂに混入に難くすることができる。このような配置は、後処理液とインクとが反応して凝集等が生じる場合に有効である。

　図１９に示す実施形態の第２の特徴は、インクワイパ８２Ｆ１～Ｆ６、８２Ｒ１～Ｒ６において、隣り合うワイパのペアが、拭き取った液体が互いに遠ざかる方向に傾斜しているペアと、拭き取った液体が互いに近づく方向に傾斜しているペアとが存在している点である。例えば、前側のワイパ列において、インクワイパ８２Ｆ２、８２Ｆ３のペア、並びに、インクワイパ８２Ｆ４、８２Ｆ５のペアに注目すると、これらは拭き取った液体が互いに遠ざかる方向に傾斜している。後側のワイパ列では、インクワイパ８２Ｒ２、８２Ｒ３のペア及びインクワイパ８２Ｒ４、８２Ｒ５のペアが、拭き取った液体が互いに遠ざかる方向に傾斜しているペアである。このような配置を採用することで、互いに混合させたくないインク同士、例えば混合させると凝集が生じるインク同士である場合、両インクを分離して回収することが可能となる。例えば、インクワイパ８２Ｆ２、８２Ｆ３のペア間に相当する位置において、インク容器７１Ａに仕切り板等を配置することで、インクヘッド４Ｆ１２、４Ｆ１３から各々拭き取られるインクを分離して回収することができる。

　一方、前側のワイパ列において、インクワイパ８２Ｆ１、８２Ｆ２のペア、インクワイパ８２Ｆ３、８２Ｆ４のペア、並びに、インクワイパ８２Ｆ５、８２Ｆ６のペアに注目すると、これらは拭き取った液体が互いに近づく方向に傾斜している。後側のワイパ列では、インクワイパ８２Ｒ１、８２Ｒ２のペア、インクワイパ８２Ｒ３、８２Ｒ４のペア及びインクワイパ８２Ｒ５、８２Ｒ６のペアが、拭き取った液体が互いに遠ざかる方向に傾斜しているペアである。このような配置を採用すれば、混色しても差し支えないインクを、共通の容器部分で回収することが可能となる。混色しても差し支えないインクとは、例えばシアンとライトシアン、ブルーとシアン、グリーンとシアン、マゼンタとライトマゼンタ等である。このように、混色が許容できるインクを吐出するインクヘッドをワイピングするインクワイパのペアについては、拭き取った液体が互いに近づく方向に傾斜させ、混色が許容できないインクについてのインクワイパのペアについては、拭き取った液体が互いに遠ざかる方向に傾斜させるという配置を使い分けることで、インクの回収を効率良く行うことができる。

　１　インクジェット式プリンター（インクジェット記録装置）
　４　インクヘッド
　５　前処理ヘッド（処理液ヘッド）
　６　後処理ヘッド
　７　メンテナンスユニット
　７０　容器ユニット
　７１　インク容器
　７１Ｈ　第１開口
　７２　前処理液容器（処理液容器）
　７２Ｈ　第２開口
　７７　スポンジ（除去部）
　８　ワイピングユニット
　８１　ワイパ支持板（支持板）
　８１２　凹所
　８１３　凸部
　８２　インクワイパ
　８２１Ａ　ワイパブレード（インクブレード）
　８２１Ｂ　ワイパブレード（処理液ブレード）
　８２Ｌ、８２Ｒ　左端部、右端部（第１端部、第２端部）
　８３　前処理液ワイパ（処理液ワイパ）
　８３Ｒ、８３Ｌ　右端部、左端部（第３端部、第４端部）
　９　洗浄ユニット（洗浄エリア）
　ＭＷ　移動経路

Claims (15)

1. 　処理液を吐出する処理液ヘッドと、
   　インクを吐出するインクヘッドと、
   　前記処理液ヘッドをワイピングする処理液ワイパと、
   　前記インクヘッドをワイピングするインクワイパと、
   　前記インクを受け入れる第１開口を備えたインク容器と、を備え、
   　前記処理液ワイパの前記ワイピング時における移動範囲が、前記第１開口の直上を回避した位置に設定されている、インクジェット記録装置。
2. 　請求項１に記載のインクジェット記録装置において、
   　前記処理液を受け入れる第２開口を備えた処理液容器をさらに備え、
   　前記処理液容器は、前記第１開口の上方の一部を覆う位置に配置され、
   　前記処理液ワイパの前記ワイピング時における移動範囲が、前記第２開口の直上に設定されている、インクジェット記録装置。
3. 　請求項２に記載のインクジェット記録装置であって、前記処理液ワイパの前記ワイピング時における移動方向に沿う方向に前記第１開口と前記第２開口とが直列的に配置されている場合において、
   　前記処理液ワイパの前記移動方向が、前記第１開口から離れる方向に設定されている、インクジェット記録装置。
4. 　請求項１～３のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置において、
   　前記処理液ワイパは、前記ワイピングを実行するに際して予め定められた移動経路に沿って移動するものであり、
   　前記移動経路の全体が、前記第１開口の直上を回避した位置に設定されている、インクジェット記録装置。
5. 　請求項１～４のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置において、
   　前記処理液ワイパ及び前記インクワイパを洗浄するための洗浄エリアをさらに備え、
   　前記ワイピングが行われるエリアから前記洗浄エリアへの移動方向において、当該洗浄エリアに対して前記処理液ワイパが前記インクワイパよりも近い位置に配置されている、インクジェット記録装置。
6. 　請求項１～４のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置において、
   　前記処理液ワイパを洗浄するための洗浄エリアをさらに備え、
   　前記処理液ワイパの前記ワイピング時における移動方向が、前記洗浄エリアが位置する方向に設定されている、インクジェット記録装置。
7. 　請求項３に記載のインクジェット記録装置において、
   　前記インクワイパを洗浄するための洗浄エリアと、
   　前記インクワイパ又はその支持部材に付着したインクを除去する除去部と、をさらに備え、
   　前記インクワイパの前記洗浄エリアへの移動方向において、前記第２開口が前記第１開口の下流側に配置され、
   　前記除去部は、前記第２開口よりも上流側に配置されている、インクジェット記録装置。
8. 　請求項１～７のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置において、
   　前記インクヘッドにインクを吐出させて画像を形成する印刷エリアをさらに備え、
   　前記印刷エリアから前記ワイピングが行われるエリアへの移動方向において、当該印刷エリアに対して前記処理液ワイパが前記インクワイパよりも近い位置に配置されている、インクジェット記録装置。
9. 　請求項１～８のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置において、
   　前記処理液ワイパ及び前記インクワイパを支持する支持板をさらに備え、
   　前記支持板の上面視の形状において、前記支持板の前記処理液ワイパを支持する支持領域が、前記支持板の他の領域よりも前記ワイピング時の移動方向に突出している、インクジェット記録装置。
10. 　請求項１～８のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置において、
    　前記処理液ワイパ及び前記インクワイパを支持する支持板をさらに備え、
    　前記支持板の上面視の形状において、当該支持板は前記処理液ワイパ及び前記インクワイパの各々に対応付けられた複数の凸部を有し、
    　前記処理液ワイパ及び前記インクワイパは、それぞれ対応付けられた前記凸部に配置されている、インクジェット記録装置。
11. 　請求項１～８のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置において、
    　前記処理液ワイパ及び前記インクワイパを支持する支持板をさらに備え、
    　前記支持板の上面視の形状において、当該支持板は前記ワイピング時の移動方向に突出する複数の凸板と、これら凸板の間の凹所とを備え、
    　前記処理液ワイパ及び前記インクワイパは、前記凸板の端縁又は前記凹所の端縁にそれぞれ配置されている、インクジェット記録装置。
12. 　請求項１～１１のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置において、
    　前記処理液ワイパと前記インクワイパとは、その形状又は材質を異にしている、インクジェット記録装置。
13. 　請求項２又は３に記載のインクジェット記録装置において、
    　前記インクワイパは、前記ワイピング時における移動方向に対して交差する方向に延びるインクブレードからなり、
    　前記インクブレードは、前記処理液容器が存在する側の第１端部が、その反対側の第２端部よりも前記移動方向に突出するように、傾いて配置されている、インクジェット記録装置。
14. 　請求項１～１２のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置において、
    　前記処理液ワイパは、前記ワイピング時における移動方向に対して交差する方向に延びる処理液ブレードからなり、
    　前記処理液ブレードは、前記インク容器が存在する側の第３端部が、その反対側の第４端部よりも前記移動方向に突出するように、傾いて配置されている、インクジェット記録装置。
15. 　請求項１～１２のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置において、
    　前記ワイピング時における移動方向において、前記処理液ヘッドと前記インクヘッドとが互いに全体的に重なる位置に配置されている、インクジェット記録装置。

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