WO2022202492A1

WO2022202492A1 - 熱可塑性樹脂の製造方法、及び化合物

Info

Publication number: WO2022202492A1
Application number: PCT/JP2022/011631
Authority: WO
Inventors: 将平富田; 敏樹門田; 貢悦伊藤; ツンワン; バンミュアーズマーティン; ブンインテイ
Original assignee: 三菱ケミカル株式会社; エージェンシーフォーサイエンス，テクノロジーアンドリサーチ
Priority date: 2021-03-23
Filing date: 2022-03-15
Publication date: 2022-09-29
Also published as: CN117120509A; US20240199804A1; JPWO2022202492A1

Abstract

ジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとを、下記式（１）で表される化合物及び／又は下記式（２）で表される化合物から選ばれるエステル交換触媒の存在下に溶融重縮合させる工程を含む、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。（１）（Ｒ１～Ｒ２４は水素原子、炭素数１～１０のアルキル基、又はシクロアルキル基であり、一部の炭素原子がヘテロ原子に置き換わっていてもよく、Ｒ１～Ｒ２４のうち、同一のＮ原子に置換しているアルキル基同士等が結合して環を形成していてもよい。ａ～ｄは０または１。Ｘ－は１価のアニオン。）（２）（Ａｒ１～Ａｒ１２は置換若しくは無置換のアリール基。Ｍ－は１価のアニオン。）

Description

熱可塑性樹脂の製造方法、及び化合物

　本発明は、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法に関する。より詳しくは、少量添加でも優れた反応性を示し、特定の副生成物量が少ないエステル交換触媒を用いたポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法に関する。本発明はまた、このポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造に用いるエステル交換触媒として有用な化合物に関する。

　ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法として、いくつかの方法が知られている。中でも、ジヒドロキシ化合物（例えば、ビスフェノールＡ）と、エステル形成性化合物（例えば、ジアリールカーボネートやジカルボン酸エステル）とを、エステル交換触媒の存在下に、溶融エステル交換法により反応させてポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂を製造するプロセスが、環境に影響を与える溶媒を使用しない；製造に必要なエネルギーが小さい；生成物中の夾雑塩素などの不純物が少ない；といったいくつかのメリットを有するため商業的プロセスとして好ましい。

　上記エステル交換触媒としては、従来、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属等の金属系触媒を用いる方法が知られている。
　ホスホニウム塩やアンモニウム塩などの第４級オニウム塩を用いる方法（特許文献１参照）、含窒素塩基性化合物などの有機系塩基触媒を用いる方法（例えば、特許文献２～４参照）、上記金属系触媒と有機系塩基触媒を組み合わせる方法（例えば特許文献５～７参照）も提案されている。
　特許文献８や９にはイミダゾール構造を有する触媒を用いる方法が開示されている。
　特許文献１０にはホスファゼン構造を有する触媒を用いる方法が開示されている。

特表２００４－５２６８３９号公報特開平７－８２３６３号公報特開２０１６－１８３２８７号公報特開平２－１２４９３４号公報特開平５－１１４５号公報特開平７－１０９３４６号公報特開２０１４－１０１４８７号公報中国特許出願公開第１０７５７３４９７号明細書特開２０２０－１３２７６７号公報特開平７－３３０８８６号公報

　エステル交換法によるポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造プロセスでは、ジヒドロキシ化合物とエステル形成性化合物とを溶融状態とし、エステル交換触媒を添加して高真空条件下でモノヒドロキシ化合物（フェノール等）を留去しながら重縮合を行う。この方法では、高温条件のために副反応を引き起こし、着色成分、或いは耐候性や流動性に悪影響を及ぼす特定の副生成物が生成するという課題がある。

　エステル交換触媒として金属系触媒を使用した場合は、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の色調が低下しやすく、特に副生成物が生成しやすいという課題がある。加えて、得られたポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂樹脂の熱安定性、特に溶融滞留時の色調安定性や、高温時の耐加水分解性も劣るという欠点もある。

　有機系触媒を用いて製造されたポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂は、金属系触媒によって得られるポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂よりも副生成物が少ない傾向にあるが、未だ満足のいくレベルではなかった。
　有機系触媒は、金属触媒と比較して熱安定性が悪いため、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂が目的の分子量に到達するまでにかかる時間が長くなる、すなわち反応活性が低い。
　有機系触媒は、反応活性が低く、重合時間が長くなるために、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂が熱による老化を受け、色調が悪くなりやすい。

　過剰量の有機系触媒を用いて重合した場合、重合時間の改善はみられるものの、副生成物の生成が抑えられず、さらにはポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の色調の悪化を引き起こす。

　金属系触媒と有機系触媒を組み合わせる手法もまた、金属系触媒の配合量に応じて副生成物が増加し、さらには色調が悪化する。このため、やはり重合活性と品質のバランスをとることができない。

　本発明は、特定の構造を持つ有機系触媒を用いることで、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂が目的の分子量に到達するまでにかかる時間が短く、特定の副生成物量が少ないポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂を製造する方法と、この特定の構造を持つ有機系触媒として用いる化合物を提供することを目的とする。

　本発明者は、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂製造の際の反応性や副反応抑制、エステル交換触媒の熱安定性や分子構造の関係性に注目して検討を重ねた結果、下記式（１）で表される化合物及び／又は下記式（２）で表される化合物を使用することにより、少量の添加でも優れた反応性を示し、副生成物量が少ない生成物を得ることができることを見出した。

　本発明は以下を要旨とする。

［１］　ジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとを、下記式（１）で表される化合物及び／又は下記式（２）で表される化合物から選ばれるエステル交換触媒の存在下に溶融重縮合させる工程を含む、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

（式（１）中、Ｒ^１～Ｒ^２４はそれぞれ独立に水素原子、炭素数１～１０のアルキル基、又はシクロアルキル基であり、該アルキル基及びシクロアルキル基の一部の炭素原子がヘテロ原子に置き換わっていてもよく、Ｒ^１～Ｒ^２４のうち、同一のＮ原子に置換しているアルキル基同士が結合して環を形成していてもよい。Ｒ^２とＲ^３、Ｒ^４とＲ^５、Ｒ^６とＲ^７、Ｒ^８とＲ^１はそれぞれ結合して環を形成していてもよい。Ｒ^９またはＲ^１０と、Ｒ^１またはＲ^２と、Ｒ^１１またはＲ^１２がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^１３またはＲ^１４と、Ｒ^３またはＲ^４と、Ｒ^１５またはＲ^１６がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^１７またはＲ^１８と、Ｒ^５またはＲ^６と、Ｒ^１９またはＲ^２０がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^２１またはＲ^２２と、Ｒ^７またはＲ^８と、Ｒ^２３またはＲ^２４がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。Ｒ^１またはＲ^２と、Ｒ^３またはＲ^４と、Ｒ^５またはＲ^６がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^３またはＲ^４と、Ｒ^５またはＲ^６と、Ｒ^８またはＲ^７がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^５またはＲ^６と、Ｒ^８またはＲ^７と、Ｒ^１またはＲ^２がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^７またはＲ^８と、Ｒ^１またはＲ^２と、Ｒ^３またはＲ^４がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。ａ～ｄはそれぞれ独立に、０または１である。Ｘ^－は１価のアニオンを表す。）

（式（２）中、Ａｒ^１～Ａｒ^１２はそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリール基を表す。Ｍ^－は１価のアニオンを表す。）

［２］　前記ジヒドロキシ化合物がビスフェノールＡである［１］に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［３］　前記ジアリールカーボネートがジフェニルカーボネートである［１］または［２］に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［４］　前記ジカルボン酸エステルが、テレフタル酸ジフェニル及び／またはイソフタル酸ジフェニルである［１］～［３］のいずれかに記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［５］　芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとを前記エステル交換触媒の存在下に溶融重縮合させる工程を含む［１］～［４］のいずれかに記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［６］　前記エステル交換触媒が、前記式（１）で表される化合物である［１］～［５］のいずれかに記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［７］　前記式（１）が、下記式（１Ｂ）で表される［６］に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

（式（１Ｂ）中、Ｒ^２９～Ｒ^５２はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数１～１０のアルキル基である。Ｒ^２９～Ｒ^５２のうち、同一のＮ原子に置換しているアルキル基同士が結合して環を形成していてもよい。Ｒ^３０とＲ^３１、Ｒ^３２とＲ^３３、Ｒ^３４とＲ^３５、Ｒ^３６とＲ^２９はそれぞれ結合して環を形成していてもよい。ｉ～ｌはそれぞれ独立に、０または１である。Ｙ^－は１価のアニオンを表す。）

［８］　前記式（１）中、Ｘ^－が、塩化物イオン、臭化物イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノラートイオン、下記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び下記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である［６］または［７］に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［９］　前記式（１）中、Ｘ^－が、フェノラートイオン、前記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び前記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である［８］に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［１０］　前記式（１）が、下記式（１ａ）～（１ｅ）のいずれかで表される［６］～［９］のいずれかに記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

（式（１ａ）～（１ｅ）中、Ｚ^１－～Ｚ^５－はそれぞれ独立に、１価のアニオンを表す。Ｍｅはメチル基を表す。）

［１１］　前記エステル交換触媒が、前記式（２）で表される化合物である［１］～［５］のいずれかに記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［１２］　前記式（２）中、Ａｒ^１～Ａｒ^１２がフェニル基である［１１］に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［１３］　前記式（２）中、Ｍ^－が塩化物イオン、臭化物イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノラートイオン、下記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、並びに、下記式（３ｂ），（３ｃ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である［１１］または［１２］に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［１４］　前記式（２）中、Ｍ^－が、フェノラートイオン、前記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、並びに、前記式（３ｂ），（３ｃ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である［１３］に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［１５］　前記ジヒドロキシ化合物の１ｍｏｌに対して、前記エステル交換触媒０．０１～１０００μｍｏｌの存在下に前記溶融重縮合を行う［１］～［１４］のいずれかに記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［１６］　前記溶融重縮合反応時の温度が２００～３５０℃である［１］～［１５］のいずれかに記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［１７］　製造された前記ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の粘度平均分子量［Ｍｖ］が５，０００～４０，０００である［１］～［１６］のいずれかに記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

［１８］　ジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとを溶融重縮合させて、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂を生成するためのエステル交換触媒であって、下記式（１）で表される化合物及び下記式（２）で表される化合物群から選ばれるいずれか１つを含むエステル交換触媒。

［１９］　下記式（１ａ’）～（１ｅ’）のいずれかで表される化合物。

（式（１ａ’）、（１ｂ’）中、Ｌ^１－、Ｌ^２－は、フェノラートイオン、下記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び下記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である。前記式（１ｃ’）～（１ｅ’）中、Ｌ^３－～Ｌ^５－は１価のアニオンを表す。Ｍｅはメチル基を表す。）

［２０］　下記式（２）で表される化合物。

［２１］　［１］～［１７］のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法により製造されたポリカーボネートであって、前記ポリカーボネートの粘度平均分子量が、１４，０００以上、３０，０００以下であり、該ポリカーボネートの加水分解物について測定される下記式（Ａ）～（Ｅ）で表される化合物の総量が、該ポリカーボネート樹脂に対して３００質量ｐｐｍ以上、５５０質量ｐｐｍ以下であることを特徴とするポリカーボネート。

（式（Ａ）～（Ｄ）中、Ｒ^ａ～Ｒ^ｆはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。式（Ａ）～（Ｅ）中のベンゼン環において、ベンゼン環に結合する１つ以上の水素原子は、置換基によって置換さていてもよい。）

［２２］　前記ポリカーボネートの末端水酸基濃度が、４００質量ｐｐｍ以上、１０００質量ｐｐｍ以下である［２１］に記載のポリカーボネート。

　本発明によれば、溶融重縮合反応のエステル交換触媒として、前記式（１）で表される化合物及び／又は前記式（２）で表される化合物を用いることにより、少ない添加量で、高い反応活性を維持した上で副反応を抑制することができ、副生成物量が少なくなるために、耐候性のよい、すなわち、長時間紫外線や可視光に曝露される場所で使用した際の、色相や透明性、機械的強度の悪化が抑制され、且つ色調が良好なポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂を製造することができる。

　本発明により製造されたポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂は、自動車材料、電気電子機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等として、当該熱可塑性樹脂単体で、または他の樹脂や添加剤をコンパウンドした組成物として好適に用いることができる。

　本発明の化合物は熱安定性が高く、エステル交換触媒として様々な熱可塑性樹脂の製造に好適に用いることができる。

　以下、本発明について実施形態および例示物等を示して詳細に説明する。本発明は以下に示す実施形態および例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
　本明細書において、「～」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。

［１．概要］
　本発明のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法（以下、「本発明の熱可塑性樹脂の製造方法」と称す場合がある。）は、ジヒドロキシ化合物とエステル形成性化合物であるジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとを、前記式（１）で表される化合物（以下、「化合物（１）」と称す場合がある。）及び／又は前記式（２）で表される化合物（以下、「化合物（２）」と称す場合がある。）から選ばれるエステル交換触媒の存在下に溶融重縮合して、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂（以下、「本発明の熱可塑性樹脂」と称す場合がある。）を製造する方法である。

　本発明の熱可塑性樹脂の製造方法でエステル交換触媒として用いる化合物（１）及び化合物（２）は、重縮合最終段階まで分解ないし揮発することなく重縮合活性を発揮し、かつ分子サイズが大きいために副反応を効率的に抑制することができる。

［２．熱可塑性樹脂・反応原料］
［２－１．熱可塑性樹脂］
　本発明の熱可塑性樹脂は、ジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとをエステル交換触媒の存在下に溶融重縮合させる工程を経て得られる熱可塑性樹脂である。具体例としては、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエステルが挙げられる。本発明の熱可塑性樹脂には制限はないが、特にポリカーボネートが好適であり、とりわけ芳香族ジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネートとを前記エステル交換触媒の存在下に溶融重縮合させて得られる芳香族ポリカーボネートが好ましい。

［２－２．ジヒドロキシ化合物］
　本発明の熱可塑性樹脂の製造方法においては、原料として、ジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとを用いる。
　ジヒドロキシ化合物としては、特に制限はなく、例えば以下のようなものが挙げられるが、何ら以下のものに限定されるものではない。

　２，５－ジヒドロキシビフェニル、　２，２’－ジヒドロキシビフェニル、４，４’－ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類；
　２，２’－ジヒドロキシジフェニルエーテル、３，３’－ジヒドロキシジフェニルエーテル、４，４’－ジヒドロキシジフェニルエーテル、４，４’－ジヒドロキシ－３，３’－ジメチルジフェニルエーテル、１，４－ビス（３－ヒドロキシフェノキシ）ベンゼン、１，３－ビス（４－ヒドロキシフェノキシ）ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類；
　２，２－ビス（４－ヒドロキシフェニル）プロパン（以下、「ＢＰＡ」と略記することがある）、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）プロパン、２，２－ビス（３－メトキシ－４－ヒドロキシフェニル）プロパン、２－（４－ヒドロキシフェニル）－２－（３－メトキシ－４－ヒドロキシフェニル）プロパン、１，１－ビス（３－ｔｅｒｔ－ブチル－４－ヒドロキシフェニル）プロパン、２，２－ビス（４－ヒドロキシ－３，５－ジメチルフェニル）プロパン、２，２－ビス（３－シクロヘキシル－４－ヒドロキシフェニル）プロパン、２－（４－ヒドロキシフェニル）－２－（３－シクロヘキシル－４－ヒドロキシフェニル）プロパン、α，α’－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－１，４－ジイソプロピルベンゼン、１，３－ビス［２－（４－ヒドロキシフェニル）－２－プロピル］ベンゼン、ビス（４－ヒドロキシフェニル）メタン、ビス（４－ヒドロキシフェニル）シクロヘキシルメタン、ビス（４－ヒドロキシフェニル）フェニルメタン、ビス（４－ヒドロキシフェニル）（４－プロペニルフェニル）メタン、ビス（４－ヒドロキシフェニル）ジフェニルメタン、ビス（４－ヒドロキシフェニル）ナフチルメタン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）エタン、２－ビス（４－ヒドロキシフェニル）エタン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－１－フェニルエタン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－１－ナフチルエタン、１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ブタン、２－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ブタン、２，２－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ペンタン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ヘキサン、２，２－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ヘキサン、１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）オクタン、２－ビス（４－ヒドロキシフェニル）オクタン、１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ヘキサン、２－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ヘキサン、４，４－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ヘプタン、２，２－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ノナン、１０－ビス（４－ヒドロキシフェニル）デカン、１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）ドデカン、等のビス（ヒドロキシアリール）アルカン類；
　１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）シクロペンタン、１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）シクロヘキサン、４－ビス（４－ヒドロキシフェニル）シクロヘキサン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－３，３－ジメチルシクロヘキサン、１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－３，４－ジメチルシクロヘキサン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－３，５－ジメチルシクロヘキサン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－３，３，５－トリメチルシクロヘキサン、１，１－ビス（４－ヒドロキシ－３，５－ジメチルフェニル）－３，３，５－トリメチルシクロヘキサン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－３－プロピル－５－メチルシクロヘキサン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－３－ｔｅｒｔ－ブチル－シクロヘキサン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－３－ｔｅｒｔ－ブチル－シクロヘキサン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－３－フェニルシクロヘキサン、１，１－ビス（４－ヒドロキシフェニル）－４－フェニルシクロヘキサン、等のビス（ヒドロキシアリール）シクロアルカン類；９，９－ビス（４－ヒドロキシフェニル）フルオレン、９，９－ビス（４－ヒドロキシ－３－メチルフェニル）フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類；
　４，４’－ジヒドロキシジフェニルスルフィド、４，４’－ジヒドロキシ－３，３’－ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類；４，４’－ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、４，４’－ジヒドロキシ－３，３’－ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類；４，４’－ジヒドロキシジフェニルスルホン、４，４’－ジヒドロキシ－３，３’－ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類；
　イソソルビド、１，４－シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール等の脂肪族ジオール類：

　これらのうち、ジヒドロキシ化合物としては、特に、ビスフェノールＡを用いると、化合物（１）及び／又は化合物（２）から選ばれるエステル交換触媒の存在下に、ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルと溶融重縮合させた場合に、得られる熱可塑性樹脂の特定副生成物含有量を少なくすることができるため好ましい。

［２－３．ジアリールカーボネート、ジカルボン酸エステル］
　本発明の熱可塑性樹脂の製造方法においては、原料として、ジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとを用いる。

　ジアリールカーボネートとしては、好ましくは下記式（４）で表される化合物が挙げられる。

（式（４）中、Ｒ^５３及びＲ^５４は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数１～２０のアルキル基、炭素数１～２０のアルコキシカルボニル基、炭素数４～２０のシクロアルキル基、または炭素数６～２０のアリール基を表し、ｐ及びｑはそれぞれ独立に０～５の整数を表す。）

　ジアリールカーボネートとしては、具体的にはジフェニルカーボネート（以下、「ＤＰＣ」と称する場合がある。）、ビス（４－メチルフェニル）カーボネート、ビス（４－クロロフェニル）カーボネート、ビス（４－フルオロフェニル）カーボネート、ビス（２－クロロフェニル）カーボネート、ビス（２，４－ジフルオロフェニル）カーボネート、ビス（４－ニトロフェニル）カーボネート、ビス（２－ニトロフェニル）カーボネート、ビス（メチルサリチルフェニル）カーボネート、ジトリルカーボネート等の（置換）ジアリールカーボネートが挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。これらのジアリールカーボネートは、単独で又は２種以上を混合して用いることができる。

　ジカルボン酸エステルとしては、特に制限されないが、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニルが好適に用いられる。

　ジアリールカーボネートとジカルボン酸エステルを併用する場合、ジアリールカーボネートとジカルボン酸エステルの比率には特に制限はない。好ましくは、ジカルボン酸エステルがジアリールカーボネートに対して、５０モル％以下、さらに好ましくは３０モル％以下である。

［２－４．ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとの比率］
　原料ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとの比率は所望の本発明の熱可塑性樹脂が得られる限り任意である。ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルは、ジヒドロキシ化合物と重縮合させる際に、原料ジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いることが好ましい。ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルの使用量は、ジヒドロキシ化合物に対して、１．０１倍量（モル比）以上であることが好ましく、１．０２倍量以上であることがより好ましい。モル比を上記下限以上とすることで、得られる本発明の熱可塑性樹脂の熱安定性が良好なものとなる。ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルの使用量は、ジヒドロキシ化合物に対して、１．３０倍量（モル比）以下であることが好ましく、１．２０倍量以下であることがより好ましい。モル比を上記上限以下とすることで、反応性が向上し、所望の分子量を有する本発明の熱可塑性樹脂の生産性が良好なものとなり、また、樹脂中の残存カーボネートエステル量が少なくなることにより、成形加工時や成形品としたとき、臭気の発生を抑制することができる。

［３．エステル交換触媒］
　本発明の熱可塑性樹脂の製造方法では、エステル交換触媒として、下記式（１）で表される特定の構造を有する化合物（１）及び／又は下記式（２）で表される特定の構造を有する化合物（２）よりなる触媒を用いることを特徴とする。
　エステル交換触媒として、化合物（１）は１種のみを用いてもよく、２種以上を混合して用いてもよい。化合物（２）についても、１種のみを用いてもよく、２種以上を混合して用いてもよい。また、化合物（１）の１種又は２種以上と化合物（２）の１種又は２種以上を混合して用いてもよい。

［３－１．化合物（１）］
　化合物（１）は下記式（１）で表される。

　前記式（１）は、下記式（１Ｂ）で表される構造であることがより好ましい。下記式（１Ｂ）において、Ｙ^－は、前記式（１）におけるＸ^－と同義である。

　前記式（１）中、Ｘ^－は１価のアニオンであれば特に制限はないが、塩化物イオン、臭化物イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノラートイオン、下記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び下記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種であることが好ましい。

　特に好ましくは、Ｘ^－は、フェノラートイオン、上記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び上記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である。

　化合物（１）の好ましい例としては、下記式（１ａ）～（１ｅ）で表される化合物（以下、「化合物（１Ａ）」と称す場合がある。）が挙げられる。下記式（１ａ）～（１ｅ）において、Ｚ^－は前記式（１）におけるＸ^－と同義である。

　化合物（１）の特に好ましい具体例としては、本発明の化合物（１Ａ）である下記式（１ａ’）～（１ｅ’）で表される化合物が挙げられる。

（式（１ａ’）、（１ｂ’）中、Ｌ^１－、Ｌ^２－は、フェノラートイオン、前記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び前記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である。式（１ｃ’）～（１ｅ’）中、Ｌ^３－～Ｌ^５－は１価のアニオンを表す。該１価のアニオンは式（１）におけるＸ^－と同義であり、好ましいものも同様である。Ｍｅはメチル基を表す。）

　化合物（１）は、例えば、以下の方法で入手または製造することができる。但し、化合物（１）の製造方法は以下の方法に限定されない。

（ｉ）　市販の前記式（１）以外の構造の有機試薬を原料に使用して、化合物（１）を製造する。
（ii）　式（１）のアニオン（Ｘ^－）と異なるアニオンを有する化合物のアニオンを、前記式（１）のアニオン（Ｘ^－）に変換して使用する。
（iii）　市販の化合物（１）をそのまま使用する。

［３－２．化合物（２）］
　化合物（２）は下記式（２）で表される。

　前記式（２）中、Ａｒ^１～Ａｒ^１２のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、Ａｒ^１～Ａｒ^１２のアリール基が有していてもよい置換基としては、炭素数１～炭素数２０のアルキル基等の１種又は２種以上が挙げられる。該アリール基はこれらの置換基を１つのみ有するものであってもよく、２つ以上有するものであってもよい。熱安定性の観点から、Ａｒ^１～Ａｒ^１２はそれぞれ独立に無置換のアリール基であることが好ましく、特に無置換のフェニル基であることが好ましい。

　前記式（２）中、Ｍ^－は、１価のアニオンであれば特に制限はないが、塩化物イオン、臭化物イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノラートイオン、下記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、並びに、下記式（３ｂ），（３ｃ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種であることが好ましく、フェノラートイオン、下記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び下記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種であることが好ましい。

　化合物（２）の特に好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。

　化合物（２）は、例えば、以下の方法で入手または製造することができる。但し、化合物（２）の製造方法は以下の方法に限定されない。
　市販の有機試薬を原料に使用して、実施例等に記載の方法により化合物（２）を製造する。

［３－３．エステル交換触媒の使用量］
　本発明の熱可塑性樹脂の製造方法において、溶融重縮合工程におけるエステル交換触媒としての化合物（１）及び／又は化合物（２）の使用量は、特に制限されないが、ジヒドロキシ化合物１ｍｏｌに対して、０．０１μｍｏｌ以上であることが好ましく、より好ましくは０．１μｍｏｌ以上であり、更により好ましくは１μｍｏｌ以上である。上記下限以上とすることで、重合活性が得られ、目的とする所定の高い分子量の本発明の熱可塑性樹脂を得ることができる。一方、化合物（１）及び／又は化合物（２）の使用量は、ジヒドロキシ化合物の１ｍｏｌに対して、１０００μｍｏｌ以下であることが好ましく、より好ましくは１００μｍｏｌ以下、更により好ましくは５０μｍｏｌ以下、特に好ましくは１０μｍｏｌ以下、最も好ましくは５μｍｏｌ以下である。上記上限以下とすることで、副生成物の生成を抑制することができる。

［３－４．その他の触媒成分］
　本発明の熱可塑性樹脂の製造方法においては、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、エステル交換触媒として化合物（１）及び／又は化合物（２）に加えて、化合物（１）及び／又は化合物（２）以外の化合物を更に触媒成分として用いてもよい。具体的には、化合物（１）及び／又は化合物（２）とは異なる塩基性化合物をさらに追加してもよい。このような化合物としては、周期表第１族元素（水素を除く）の化合物、周期表第２族元素の化合物、および塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも１種以上の化合物が挙げられる。

　前記の第１族元素（水素を除く）の化合物としては、第１族元素（水素を除く）の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機化合物；第１族元素（水素を除く）のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等の有機化合物等が挙げられる。第１族元素（水素を除く）としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。これらの第１族元素（水素を除く）の化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。

　前記の第２族元素の化合物としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の水酸化物、炭酸塩等の無機化合物；これらのアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等が挙げられる。

　塩基性ホウ素化合物としては、ホウ素化合物のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられる。ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等が挙げられる。

　塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ－ｎ－プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ－ｎ－ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ－ｔ－ブチルフェニルホスフィン等の３価のリン化合物等が挙げられる。

　本発明の熱可塑性樹脂の製造方法において、触媒の成分として含んでもよい化合物（１）及び／又は化合物（２）以外の他の触媒化合物の使用割合は、化合物（１）及び／又は化合物（２）：他の触媒化合物（モル比率）で、通常１００００：１～３：１の範囲、好ましくは５０００：１～５：１の範囲、より好ましくは１０００：１～１０：１の範囲である。上記範囲とすることで、副生成物の生成を抑制することができるため好ましい。

［３－５．エステル交換触媒の添加方法］
　本発明の熱可塑性樹脂の製造方法において、上記エステル交換触媒の添加方法は任意の方法を用いることができる。エステル交換触媒は、原料であるジヒドロキシ化合物やエステル形成性化合物に直接混合してもよいし、予め溶媒に溶解させ、希釈溶液として用いてもよい。希釈溶液として用いることでフィード精度や原料への分散性を向上させることができる。使用する溶媒や触媒濃度については特に限定されず、溶解性に応じて適宜選択すればよい。溶媒としては、例えば水、フェノール、アセトン、アルコール、トルエン、エーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。溶媒に水を使用する場合の水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されない。通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
　エステル交換触媒は重合中に追加で加えても構わない。

［４．熱可塑性樹脂の製造方法］
　本発明の熱可塑性樹脂の製造方法は、原料である前記ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとを混合し、この原料混合物を、前記エステル交換触媒の存在下、重縮合反応装置で重縮合反応をさせることによって行われる。この重縮合工程の反応方式は、バッチ式、連続式、これらの組合せ等を用いることができる。重縮合工程後、反応を停止させ重合反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程、熱安定剤、離型剤等を添加する工程、必要に応じて所定の粒径のペレットに形成する工程等を経て、本発明の熱可塑性樹脂が製造される。

　重縮合工程は、通常２段階以上、好ましくは３段～７段の多段方式で連続的に行われる。具体的な反応条件としては、通常、温度：１５０℃～３５０℃、圧力：常圧～０．０１Ｔｏｒｒ（１．３Ｐａ）、平均滞留時間：５分～１５０分の範囲である。

　多段方式においては、重縮合反応装置で、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に系外に除去するために、前記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。
　得られる本発明の熱可塑性樹脂の色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましい。このような観点から反応温度は１５０℃～３２０℃とすることが好ましい。

　重縮合工程を多段方式で行う場合は、通常、竪型反応器を含む複数基の反応器を設けて、本発明の熱可塑性樹脂の平均分子量を増大させる。反応器は通常３基～６基、好ましくは４基～５基設置される。

　反応器としては、例えば、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等が用いられる。

　竪型反応器の攪拌翼の形式としては、例えば、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼（神鋼パンテック（株）製）、サンメラー翼（三菱重工業（株）製）、マックスブレンド翼（住友重機械工業（株）製）、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼（日立製作所（株）製）等が挙げられる。

　横型反応器とは、攪拌翼の回転軸が横型（水平方向）であるものをいう。横型反応器の攪拌翼としては、例えば、円板型、パドル型等の一軸タイプの攪拌翼やＨＶＲ、ＳＣＲ、Ｎ－ＳＣＲ（三菱重工業（株）製）、バイボラック（住友重機械工業（株）製）、あるいはメガネ翼、格子翼（日立製作所（株）製）等の二軸タイプの攪拌翼が挙げられる。

［５．熱可塑性樹脂の物性］
　本発明の熱可塑性樹脂の製造方法で得られる本発明の熱可塑性樹脂の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよい。本発明の熱可塑性樹脂の溶液粘度から換算した粘度平均分子量［Ｍｖ］は、通常５，０００以上であり、好ましくは１０，０００以上、より好ましくは１５，０００以上で、通常４０，０００以下であり、好ましくは３０，０００以下、より好ましくは２４，０００以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより本発明の熱可塑性樹脂の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより本発明の熱可塑性樹脂の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。

　粘度平均分子量［Ｍｖ］とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度２０℃での極限粘度［η］（単位ｄｌ／ｇ）を求め、Ｓｃｈｎｅｌｌの粘度式、すなわち、η＝１．２３×１０^－４Ｍｖ^０．８３、から算出される値を意味する。極限粘度［η］とは、各溶液濃度［Ｃ］（ｇ／ｄｌ）での比粘度［η_ｓｐ］を測定し、下記式により算出した値である。

　本発明の熱可塑性樹脂の末端水酸基濃度は、特に限定されないが、１５００ｐｐｍ以下が好ましく、より好ましくは１０００ｐｐｍ以下、更に好ましくは８００ｐｐｍ以下、特に好ましくは６００ｐｐｍ以下である。末端水酸基濃度が低くなるにつれて、本発明の熱可塑性樹脂の滞留熱安定性がより向上する傾向にある。本発明の熱可塑性樹脂の末端水酸基濃度は、５０ｐｐｍ以上が好ましく、より好ましくは１００ｐｐｍ以上、更に好ましくは１５０ｐｐｍ以上、特に好ましくは２００ｐｐｍ以上である。末端水酸基濃度が高くなるにつれて、色調が改善される傾向にある。

　末端水酸基濃度の単位は、本発明の熱可塑性樹脂の重量に対する、末端水酸基の重量をｐｐｍで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン／酢酸法による比色定量（Ｍａｃｒｏｍｏｌ．Ｃｈｅｍ．８８　２１５（１９６５）に記載の方法）である。

　原料ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールＡを用いた場合、得られる本発明の熱可塑性樹脂を加水分解した際に、例えば、下記式（Ａ）～（Ｅ）に示されるような副生成物を含有することがある。これらの副生成物の存在は、得られる熱可塑性樹脂の構造単位の中にビスフェノールＡに由来する異種結合構造単位を含むことを意味している。

　式（Ａ）～（Ｄ）中、Ｒ^ａ～Ｒ^ｆは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。式（Ａ）～（Ｅ）中のベンゼン環において、ベンゼン環に結合する１つ以上の水素原子は、炭素数１～５のアルキル基、炭素数１～１０のアルコキシ基、フェニル基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等の置換基によって置換さていてもよい。

　これらの副生成物は、本発明の熱可塑性樹脂を加水分解した後に分析することにより、含有量を測定することができる。上記式（Ａ）～（Ｅ）で表される副生成物の合計量が、加水分解する前の得られた熱可塑性樹脂全体に対して１０００ｐｐｍ以下であることが好ましく、８００ｐｐｍ以下であることがより好ましく、６００ｐｐｍ以下であることがさらに好ましい。この副生成物の含有量の総量を上記範囲内とすることで、本発明の熱可塑性樹脂の色調や耐光性が良好となる。一方、上記式（Ａ）～（Ｅ）で表される副生成物の合計量は０ｐｐｍであることが好ましいが、極端に減らそうとした場合、重合活性を低くし、長時間反応させる必要があり、その結果、色調が悪化するという不具合がある。このため、製品色調の観点から、通常１００ｐｐｍ以上とすることが好ましい。

　本発明の熱可塑性樹脂は、色調が良好である特徴を有しているが具体的には、ペレットＹＩで、通常１５以下、好ましくは１０以下、さらに好ましくは８以下である。このようなペレットＹＩの熱可塑性樹脂とすることで、着色した際の発色性や明度が向上し、製品デザインの自由度が向上する。

　ペレットＹＩはＡＳＴＭ　Ｄ１９２５に準拠して、熱可塑性樹脂のペレットの反射光におけるＹＩ値（イエローインデックス値）を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計ＣＭ－５を用い、測定条件は測定径３０ｍｍ、ＳＣＥを選択した。シャーレ測定用校正ガラスＣＭ－Ａ２１２を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスＣＭ－Ａ１２４をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。白色校正板ＣＭ－Ａ２１０を用いて測定を行い、Ｌ＊が９９．４０±０．０５、ａ＊が０．０３±０．０１、ｂ＊が－０．４３±０．０１、ＹＩが－０．５８±０．０１となることを確認した。ペレットの測定は、内径３０ｍｍ、高さ５０ｍｍの円柱ガラス容器にペレットを４０ｍｍ程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を２回繰り返し、計３回の測定値の平均値を用いた。
　ＹＩ値が小さいほど樹脂の黄色味が少なく、色調に優れることを意味する。

［６．熱可塑性樹脂組成物］
　本発明の熱可塑性樹脂は、必要に応じて、本発明の熱可塑性樹脂、即ち、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法により製造されたポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂以外の、ポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂、またはその他の樹脂や、各種樹脂添加剤などのその他の成分を配合して熱可塑性樹脂組成物として用いてもよい。前記その他の成分は１種または２種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。

　その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂；ポリアミド樹脂；ポリイミド樹脂；ポリエーテルイミド樹脂；ポリウレタン樹脂；ポリフェニレンエーテル樹脂；ポリフェニレンサルファイド樹脂；ポリスルホン樹脂；ポリメタクリレート樹脂等が挙げられる。

　その他の樹脂は、１種が含有されていてもよく、２種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。

　樹脂添加剤としては、例えば、熱安定性、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、衝撃改良材、難燃剤、ガラス繊維、炭素繊維などの強化材、タルク、マイカ、シリカなどの充填材などが挙げられる。樹脂添加剤は１種が含有されていてもよく、２種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。

［７．本発明の化合物］
［７－１．本発明の化合物（１Ａ）］
　本発明の化合物（１Ａ）は、下記式（１ａ’）～（１ｅ’）のいずれかで表されるものである。

（式（１ａ’）、（１ｂ’）中、Ｌ^１－、Ｌ^２－は、フェノラートイオン、下記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び下記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である。式（１ｃ’）～（１ｅ’）中、Ｌ^３－～Ｌ^５－は１価のアニオンを表す。該１価のアニオンは式（１）におけるＸ^－と同義であり、好ましいものも同様である。Ｍｅはメチル基を表す。）

　式（１ｃ’）において、Ｌ^３－としては、塩化物イオン、臭化物イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノラートイオン、式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種であることが好ましく、フェノラートイオン、式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種であることがより好ましい。
　式（１ｄ’）において、Ｌ^４－としては塩化物イオン、臭化物イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノラートイオン、式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種であることが好ましく、フェノラートイオン、式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種であることがより好ましい。
　式（１ｅ’）において、Ｌ^５－としては塩化物イオン、臭化物イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノラートイオン、式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種であることが好ましく、フェノラートイオン、式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種であることがより好ましい。

　式（１ａ’）～（１ｅ’）で表される本発明の化合物（１Ａ）は、特に本発明の熱可塑性樹脂の製造方法におけるエステル交換触媒、即ち本発明のエステル交換触媒として有用である。

［７－２．本発明の化合物（２）］
　本発明の化合物（２）は、下記式（２）で表される前述の化合物（２）である。

（前記式（２）中、Ａｒ^１～Ａｒ^１２はそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリール基を表す。Ｍ^－は１価のアニオンを表す。）

　式（２）で表される本発明の化合物（２）の具体例は、前述の化合物（２）の具体例として挙げたものが挙げられる。

　式（２）で表される本発明の化合物（２）は、特に本発明の熱可塑性樹脂の製造方法におけるエステル交換触媒、即ち本発明のエステル交換触媒として有用である。

［８．ポリカーボネート］
　本発明のポリカーボネートは、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法により製造されたポリカーボネートであって、前述の通り定義された粘度平均分子量［Ｍｖ］が、１４，０００以上、３０，０００以下であり、該ポリカーボネートの加水分解物について測定される下記式（Ａ）～（Ｅ）で表される化合物（以下、「特定化合物」と称す場合がある。）の総量が、該ポリカーボネート樹脂に対して３００質量ｐｐｍ以上、５５０質量ｐｐｍ以下であることを特徴とする。

　本発明のポリカーボネートの溶液粘度の粘度平均分子量［Ｍｖ］は、好ましくは１５，０００以上、より好ましくは１８，０００以上で、好ましくは２９，０００以下、より好ましくは２３，０００以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより本発明のポリカーボネートの機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより本発明のポリカーボネートの流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。

　式（Ａ）～（Ｄ）中、Ｒ^ａ～Ｒ^ｆは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。式（Ａ）～（Ｅ）中のベンゼン環において、ベンゼン環に結合する１つ以上の水素原子は、炭素数１～５のアルキル基、炭素数１～１０のアルコキシ基、フェニル基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等の置換基によって置換さていてもよい。
アノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等の置換基によって置換さていてもよい。

　前述の通り、これらの特定化合物は、本発明のポリカーボネートを加水分解した後に分析することにより、含有量を測定することができる。特定化合物の合計量は、加水分解する前の得られたポリカーボネート全体に対して５００ｐｐｍ以下であることがより好ましい。特定化合物の含有量の総量を上記範囲内とすることで、本発明のポリカーボネートの色調や耐光性が良好となる。一方、特定化合物の合計量は０ｐｐｍであることが好ましいが、極端に減らそうとした場合、重合活性を低くし、長時間反応させる必要があり、その結果、色調が悪化するという不具合がある。このため、製品色調の観点から、特定化合物の含有量は、通常１００ｐｐｍ以上とすることが好ましい。

　本発明のポリカーボネートの末端水酸基濃度は、特に限定されないが、１０００ｐｐｍ以下が好ましく、より好ましくは８００ｐｐｍ以下、更に好ましくは７００ｐｐｍ以下、特に好ましくは６００ｐｐｍ以下である。末端水酸基濃度が低くなるにつれて、本発明のポリカーボネートの滞留熱安定性がより向上する傾向にある。本発明のポリカーボネートの末端水酸基濃度は、２５０ｐｐｍ以上が好ましく、より好ましくは３００ｐｐｍ以上、更に好ましくは３５０ｐｐｍ以上、特に好ましくは４００ｐｐｍ以上である。末端水酸基濃度が高くなるにつれて、色調が改善される傾向にある。

　以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。

［評価方法］
　まず、各評価の測定方法について、説明する。

（１）触媒化合物の熱安定性試験
　１０ｍｇの触媒と３０ｍｇのＤＰＣを混合し、Ｊ．ＹＯＵＮＧバルブ付きＮＭＲ試料管に加え、アルゴン雰囲気下で密閉した。次に、Ｊ．ＹＯＵＮＧバルブ付きＮＭＲ試料管をオイルバス内で２２０℃で１０５分間、２２０℃から２９０℃で２０分間、次に２９０℃で１時間加熱を行ったた。次に、熱処理したサンプルを室温まで冷却し、ＤＭＳＯ－ｄ６に溶解した。^３１Ｐ　ＮＭＲを積算回数５１２回で測定し、得られたスペクトルの積分値に基づいて触媒の分解率を、加熱処前の触媒の質量１００％に対して、加熱後に減少した触媒の質量％として計算した。

（２）熱可塑性樹脂の粘度平均分子量（Ｍｖ）
　熱可塑性樹脂を塩化メチレンに溶解し（濃度６．０ｇ／Ｌ）、ウベローデ粘度管（森友理化工業社製）を用いて、２０℃における固有粘度（極限粘度）［η］（単位ｄＬ／ｇ）を求め、Ｓｃｈｎｅｌｌの粘度式（下記式）から粘度平均分子量（Ｍｖ）を算出した。
　　　η＝１．２３×１０^－４Ｍｖ^０．８３

（３）熱可塑性樹脂の末端水酸基量
　熱可塑性樹脂の末端水酸基量は、以下に記載の手法により四塩化チタン／酢酸を用いた比色定量法により測定した。
（ａ）５ｖ／ｖ％酢酸溶液の調製
　１０００ｍＬメスフラスコに酢酸５０ｍＬを加え、塩化メチレンでメスアップし混合することで、５ｖ／ｖ％酢酸溶液を調製した。
（ｂ）四塩化チタン溶液の調製
　３００ｍＬのフラスコに塩化メチレンをメスシリンダーで９０ｍＬ入れ、５ｖ／ｖ％酢酸溶液をメスシリンダーで１０ｍＬ添加し、攪拌子を入れてマグネチックスターラーで攪拌しながら、５ｍＬのメスピペットで四塩化チタン溶液を２．５ｍＬ、メタノールを２．０ｍＬ、ゆっくりと添加することで、四塩化チタン溶液を調製した。
（ｃ）検量線試料の調製
　原料ジヒドロキシ化合物の末端水酸基量が１０重量ｐｐｍになるように塩化メチレン溶液を調製し、２５ｍＬのメスフラスコにそれぞれ、０、３、５ｍＬずつ加えた。続いて、５ｖ／ｖ％酢酸を５ｍＬずつ、四塩化チタン溶液１０ｍＬずつ加えた。それぞれ、塩化メチレンでメスアップしてよく混合した。
（ｄ）検量線の作成
　作成した検量試料の吸光度をそれぞれ検出波長５４６ｎｍで測定した。得られた吸光度を、検量線試料の濃度に対してプロットした。この傾きの逆数をファクターとした。
（ｅ）測定試料の調製と吸光度測定
　熱可塑性樹脂０．２ｇと、５ｍＬの塩化メチレンを、２５ｍＬメスフラスコに加えて溶解させた。つぎに、５ｖ／ｖ％酢酸溶液５ｍＬ、四塩化チタン溶液１０ｍＬを加え、塩化メチレンでメスアップしよく混合した。このように調製した溶液の吸光度を検出波長５４６ｎｍで測定した。
（ｆ）末端水酸基量の算出
　測定した吸光度とファクターの積を、測定試料の濃度で除することで、熱可塑性樹脂中の末端水酸基量を算出した。

（４）熱可塑性樹脂に含まれる式（Ａ）～（Ｅ）で表される副生成物（特定化合物）含有量
　熱可塑性樹脂０．５ｇを塩化メチレン５ｍＬに溶解した後、メタノール４５ｍＬおよび２５重量％水酸化ナトリウム水溶液５ｍＬを加え、７０℃で３０分間攪拌して加水分解した（塩化メチレン溶液）。その後、この塩化メチレン溶液に６規定の塩酸を加え、溶液のｐＨを２程度とし、純水にて１００ｍＬとなるように調整した。
　次に、調整した塩化メチレン溶液２０μｌを液体クロマトグラフィーに注入し、前記式（Ａ）～（Ｅ）で表される化合物の含有量を測定し（単位：ｐｐｍ）、副生成物である特定化合物含有量とした。
　液体クロマトグラフィーおよび測定条件は以下の通りである。
　　液体クロマトグラフィー：株式会社島津製作所製ＬＣ－１０ＡＤ
　　カラム：ＹＭＣ　ＰＡＣＫ　ＯＤＳ－ＡＭ　Ｍ－３０７－３
　　　　　　４．６ｍｍＩＤ×７５ｍｍＬ
　　検出器：ＵＶ２８０ｎｍ
　　溶離液：（Ａ）０．０５％トリフルオロ酢酸水溶液（Ｂ）メタノール
　　グラジェント条件：０分（Ｂ＝４０％）、２５分（Ｂ－９５％）
　式（Ａ）～（Ｅ）で表される特定化合物の含有量は、ビスフェノールＡにより作成した検量線に基づき、各々のピーク面積より算出した。

［略号の説明］
　以下において、用いた原料や化合物中の置換基等の略号は以下の通りである。
　ＢＰＡ：ビスフェノールＡ（三菱ケミカル社製）
　ＤＰＣ：ジフェニルカーボネート（三菱ケミカル社製）
　ＴＨＦ：テトラヒドロフラン
　ＤＣＭ：ジクロロメタン
　Ｐｈ：フェニル
　Ａｄ：アダマンチル
　ｉｍｙ：イミダゾール
　Ｅｔ：エチル
　Ｍｅ：メチル
　Ｍｅｓ：メシチル
　Ｐｒ：プロピル
　ＢＰＡ_２：前記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物

［触媒化合物の合成］
＜合成例１：ＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物の調製＞
　対応する化合物を最小量のＴＨＦおよびメタノール混合溶媒（ｖ／ｖ＝４：１）に溶解させ、化合物溶液を得た。
　別に、カリウムｔｅｒｔ－ブトキシド（シグマアルドリッチ社製）とビスフェノールＡをＴＨＦおよびメタノール混合溶媒（ｖ／ｖ＝４：１）に加えることでＫ－ＢＰＡ_２を合成した（ｉｎ　ｓｉｔｕ）。
　このＫ－ＢＰＡ_２を前記化合物溶液に室温下で滴下した。反応液を２時間攪拌後、濾過して沈殿した無機塩を除去した。濾液中の溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物をイソプロパノールから再結晶して、純粋な生成物を得た。

＜実施例１：触媒Ａの合成＞
　テトラキス［トリス（ジメチルアミノ）ホスホラニリデンアミノ］ホスホニウムクロリド（以下、Ｐ５－Ｃｌと略記することがある）（シグマアルドリッチ社製）３８８ｍｇ（０．５０ｍｍｏｌ）を、合成例１に従って処理することで、下記構造式で表される触媒Ａ（以下、Ｐ５－ＢＰＡ_２と略記することがある）を収率５３％で得た。

　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ６．８２，６．４８（各ｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝７．６Ｈｚ，各８Ｈ，ＢＰＡ－Ｈ），２．５７（ｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｐ＝１２．０Ｈｚ，７２Ｈ，Ｎ－ＣＨ_３），１．４７（ｓ，１２Ｈ，ＢＰＡ－ＣＨ_３）．
　^１３Ｃ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ１５８．４，１３８．３，１２６．９，１１５．３，４０．５，３６．６，３１．３．
　^３１Ｐ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１６２ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ６．７（ｄ，^２Ｊ_Ｐ－Ｐ＝５１．８Ｈｚ），－３４．１（ｑｕｉｎｔｅｔ，^２Ｊ_Ｐ－Ｐ＝５１．８Ｈｚ）
　元素分析結果は、計算値がＣ_５４Ｈ_１０３Ｎ_１６Ｏ_４Ｐ_５：Ｃ５４．２６，Ｈ８．６９，Ｎ１８．７５に対し、実測値がＣ５４．１３，Ｈ８．７２，Ｎ１８．６４であった。
　得られた化合物の熱安定性試験の結果を表１に示す。

＜実施例２：触媒Ｂの合成＞
　Ｐ５－Ｃｌ（０．４２ｇ、０．５４ｍｍｏｌ）を５ｍＬのＴＨＦに溶解させた。次に、アルゴン雰囲気下で、ナトリウムフェノキシド（０．０６３ｇ、０．５４ｍｍｏｌ）を加え、反応混合物を室温で３時間攪拌した後、濾過により沈殿を除去した。次に、濾液中の溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。残留物をエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させることで下記構造式で表される触媒Ｂ（以下、Ｐ５－ＯＰｈと略記することがある）を定量的に得た。

　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ６．８３（ｔ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝８．０Ｈｚ，２Ｈ，Ｐｈ－Ｈ）６．３７（ｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝８．０Ｈｚ，２Ｈ，Ｐｈ－Ｈ），６．１６（ｔ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝８．０Ｈｚ，１Ｈ，Ｐｈ－Ｈ），２．５８（ｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｐ＝１２．０Ｈｚ，７２Ｈ，Ｎ－ＣＨ_３）．
　^１３Ｃ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ１２８．６，１１７．４，３６．６．
　^３１Ｐ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１６２ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ６．７（ｄ，^２Ｊ_Ｐ－Ｐ＝５３．４Ｈｚ），－３４．１（ｑｕｉｎｔｅｔ，^２Ｊ_Ｐ－Ｐ＝５３．４Ｈｚ）
　元素分析結果は、計算値がＣ_３０Ｈ_７７Ｎ_１６ＯＰ_５：Ｃ４３．２６，Ｈ９．３２，Ｎ２６．９１であるのに対し、実測値はＣ４２．７９，Ｈ９．１３，Ｎ２６．９７であった。
　得られた化合物の熱安定性試験の結果を表１に示す。

＜実施例３：触媒Ｃの合成＞
　Ｐ５－Ｃｌ０．３１ｇ（０．４１ｍｍｏｌ）（シグマアルドリッチ社製）を５ｍＬのジクロロメタンに溶解し、次に、テトラフェニルホウ酸ナトリウム（シグマアルドリッチ社製）０．１４ｇ（０．４１ｍｍｏｌ）を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌後、濾過により、形成された塩化ナトリウムを除去した。次に、濾液中のジクロロメタンをロータリーエバポレーターで除去した。残留物を１０ｍＬのエタノール中で３０分間加熱還流させた。室温まで冷却した後、沈殿した白色結晶を濾過により単離し、真空下で乾燥させることで、下記構造式で表される触媒Ｃ（以下、Ｐ５－ＢＰｈ_４と略記することがある）を収率９９％で得た。

　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２）δ７．３１（ｍ，８Ｈ，Ｐｈ－Ｈ）７．０３（ｔ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝７．６Ｈｚ，８Ｈ，Ｐｈ－Ｈ），６．８８（ｔ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝７．６Ｈｚ，４Ｈ，Ｐｈ－Ｈ），２．６１（ｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｐ＝８．０Ｈｚ，７２Ｈ，Ｎ－ＣＨ_３）．
　^１３Ｃ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２）δ１６４．５（ｍ），１３６．３（ｄ），１２６．０（ｍ），１２２．１，３７．２（ｄ）．
　^３１Ｐ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１６２ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２）δ６．３（ｄ，^２Ｊ_Ｐ－Ｐ＝５５．０Ｈｚ），－３４．７（ｑｕｉｎｔｅｔ，^２Ｊ_Ｐ－Ｐ＝５５．０Ｈｚ）
　元素分析結果は、計算値がＣ_４８Ｈ_９２ＢＮ_１６Ｐ_５：Ｃ５４．４４，Ｈ８．７６であるのに対し、実測値がＣ５４．３１，Ｈ８．６７，Ｎ２１．２７であった。

＜実施例４：触媒Ｄの合成＞
　ビス［トリス（ジメチルアミノ）ホスホラニリデン］アンモニウム　テトラフロオロボレート（以下、Ｐ２－ＢＦ_４と略記することがある）（シグマアルドリッチ社製）０．４３ｇ（１．０ｍｍｏｌ）を、合成例１に従って処理することで、下記構造式で表される触媒Ｄ（以下、Ｐ２－ＢＰＡ_２と略記することがある）を収率９４％で得た。

　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ６．８２，６．４９（ｅａｃｈｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝７．６Ｈｚｅａｃｈ８Ｈ，ＢＰＡ－Ｈ），２．６０（ｍ，３６Ｈ，Ｎ－ＣＨ_３），１．４８（ｓ，１２Ｈ，ＢＰＡ－ＣＨ_３）．
　^１３Ｃ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ１５８．５，１３８．３，１２６．９，１１５．３，４０．５，３６．２，３１．１．
　^３１Ｐ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１６２ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ１７．５
　元素分析結果は、理論計算値がＣ_４２Ｈ_６７Ｎ_７Ｏ_４Ｐ_２：Ｃ６３．３８，Ｈ８．４８，Ｎ１２．３２であるのに対して、実測値はＣ６３．２１，Ｈ８．３５，Ｎ１２．４６であった。
　得られた化合物の熱安定性試験の結果を表１に示す。

＜実施例５：触媒Ｅの合成＞
　テトラキス［（トリ－１－ピロリジニルホスホラニリデン）アミノ］ホスホニウム　テトラフロオロボレート（以下、Ｐ５（ｐｙｒ）－ＢＦ_４と略記することがある）（Ｃｈｅｍ．Ｅｕｒ．Ｊ．２００６，１２，４２９－４３７に基づいて合成）１．１４ｇ（１．０ｍｍｏｌ）を、合成例１に従って処理することで、下記構造式で表される触媒Ｅ（以下、Ｐ５（ｐｙｒ）－ＢＰＡ_２と略記することがある）を収率８３％で得た。

＜実施例６：触媒Ｆの合成＞
（ステップ１：トリクロロ［（トリクロロホスホラニリデン）アミノ］リン（Ｖ）ヘキサクロロホスフェート（以下、［Ｃｌ_３Ｐ＝Ｎ＝ＰＣｌ_３］［ＰＣｌ_６］と略記することがある）の合成）
　五塩化リン（アクロスオーガニクス社製）６．２４ｇ（３０ｍｍｏｌ）を１５ｍＬのジクロロメタンに懸濁させた。次に、水浴冷却をしながら、１０ｍＬのジクロロメタンに溶解させたトリス（トリメチルシリル）アミン（シグマアルドリッチ社製）（２．３３ｇ、１０ｍｍｏｌ）を滴下した。室温でさらに２時間攪拌した。沈殿した生成物を濾過により単離し、真空下で乾燥させて、淡黄色の固体を５．０８ｇ得た。収率は９５％であった。
　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^３１Ｐ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１６２ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２）δ２１．８，－２９６．６．

（ステップ２：１，１，１，３，３，３－ヘキサキス（シクロヘキシルアミノ）－１λ^５，３λ^５－ジホスファゼニウムテトラフルオロボレート（以下、Ｐ２（ＣｙＮＨ）－ＢＦ_４と略記することがある）の合成）
　２．３９ｇの［Ｃｌ_３Ｐ＝Ｎ＝ＰＣｌ_３］［ＰＣｌ_６］（４．５ｍｍｏｌ）を、アルゴン雰囲気下で１５ｍＬの無水クロロベンゼンに懸濁し、次にシクロヘキシルアミン（シグマアルドリッチ社製）１０．７ｇ（１０８ｍｍｏｌ）を氷浴で冷却しながら滴下した。次に、得られた反応混合物を１３０℃に加熱し、この温度で１時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、２０ｍＬの水中のテトラフルオロホウ酸ナトリウム（０．４９ｇ、４．５ｍｍｏｌ）を加え、混合物を１時間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾液中のクロロベンゼンの相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。クロロベンゼンをエバポレーターで留去し、残留物に３０ｍＬのエーテルを加え、沈殿した生成物を濾過により単離した。空気中で乾燥させることで２．４３ｇの白色固体を得た。収率は７２％であった。
　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤＣｌ_３）δ２．９２（ｍ，６Ｈ，ＮＣＨ），２．８０（ｍ，６Ｈ，ＮＨ），１．８６（ｍ，１２Ｈ，Ｃｙ－Ｈ），１．７３（ｍ，１２Ｈ，Ｃｙ－Ｈ），１．５７（ｍ，６Ｈ，Ｃｙ－Ｈ），１．２４（ｍ，３０Ｈ，Ｃｙ－Ｈ）．
　^１３Ｃ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２）δ５３．７，３５．４，２３．７．
　^３１Ｐ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１６２ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤＣｌ_３）δ５．４．

（ステップ３：１，１，１，３，３，３－ヘキサキス（シクロヘキシル（メチル）アミノ）－１λ^５，３λ^５－ジホスファゼニウムテトラフルオロボレート（以下、Ｐ２（ＣｙＮＭｅ）－ＢＦ_４と略記することがある）の合成）
　Ｐ２（ＣｙＮＨ）－ＢＦ_４（１．３３ｇ、１．７７ｍｍｏｌ）を１０ｍＬのクロロベンゼンに溶解した。次に、５０％水酸化ナトリウム水溶液１０ｍＬ、および硫酸ジメチル（メルク社製）（１．６１ｇ、１２．７ｍｍｏｌ）を順番に加えた。混合物を室温で一晩攪拌した後、沈殿した硫酸ナトリウムを溶解するために１０ｍＬの水を加えた。クロロベンゼン相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、クロロベンゼンをエバポレーターで留去した。残留物に２０ｍＬのエーテルを加え、沈殿した生成物を濾過により単離し、空気中で乾燥させることで、１．１０ｇの白色固体を収率７４％で得た。
　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤＣｌ_３）δ３．１７（ｍ，６Ｈ，ＮＣＨ），２．４９（ｍ，１８Ｈ，Ｎ－ＣＨ_３），１．８６（ｍ，１２Ｈ，Ｃｙ－Ｈ），１．６０（ｍ，３０Ｈ，Ｃｙ－Ｈ），１．２３（ｍ，１２Ｈ，Ｃｙ－Ｈ），１．０７（ｍ，６Ｈ，Ｃｙ－Ｈ）．
　^１３Ｃ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤＣｌ_２）δ５５．７，３３．１，２８．１，２６．１，２５．２．
　^３１Ｐ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１６２ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤＣｌ_３）δ１４．１．

（ステップ４：１，１，１，３，３，３－ヘキサキス（シクロヘキシル（メチル）アミノ）－１λ^５，３λ^５－ジホスファゼニウム４－（２－（４－ヒドロキシフェニル）プロパン－２－イル）フェノラートイオンＢＰＡ付加物（以下、（Ｐ２（ＣｙＮＭｅ）－ＢＰＡ_２と略記することがある）の合成）
　０．８４ｇ（１．０ｍｍｏｌ）のＰ２（ＣｙＮＭｅ）－ＢＦ_４を、合成例１に従って処理することで、下記構造式で表される触媒Ｆ（以下、Ｐ２（ＣｙＮＭｅ）－ＢＰＡ_２と略記することがある）を収率８６％で得た。

　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ６．８２，６．４６（ｅａｃｈｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝７．６Ｈｚ，ｅａｃｈ８Ｈ，ＢＰＡ－Ｈ），３．１３（ｍ，６Ｈ，ＮＣＨ），２．４５（ｍ，１８Ｈ，Ｎ－ＣＨ_３），１．７８（ｍ，１２Ｈ，Ｃｙ－Ｈ），１．６７－１．５１（ｍ，３０Ｈ，Ｃｙ－Ｈ），１．４７（ｓ，１２Ｈ，ＢＰＡ－ＣＨ_３），１．２０（ｍ，１２Ｈ，Ｃｙ－Ｈ），１．０４（ｍ，６Ｈ，Ｃｙ－Ｈ）．
　^１３Ｃ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ１５７．６，１３９．１，１２７．０，１１５．１，５４．９，４０．６，３０．９，３０．３，２７．５，２５．５，２４．７．
　^３１Ｐ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１６２ＭＨｚ，２９８Ｋ，ｄ_６－ＤＭＳＯ）δ１３．９．
　元素分析は、理論計算値がＣ_７２Ｈ_１１５Ｎ_７Ｏ_４Ｐ_２：Ｃ７１．７８，Ｈ９．６２，Ｎ８．１４であるのに対して、実測値がＣ７１．７０，Ｈ９．６７，Ｎ８．２７であった。
　得られた化合物の熱安定性試験の結果を表１に示す。

＜実施例１５：触媒Ｇの合成＞
（ステップ１：テトラキス［（トリフェニルホスホラニリデン）アミノ］ホスホニウムテトラフルオロボレート（以下、Ｐ５（Ｐｈ）－ＢＦ_４と略記することがある）の合成）
文献（Ｍ．Ｔａｉｌｌｅｆｅｒ，Ｎ．Ｒａｈｉｅｒ，Ａ．Ｈａｍｅａｕ　ａｎｄ　Ｊ．－Ｎ．Ｖｏｌｌｅ，Ｃｈｅｍ．Ｃｏｍｍｕｎ．２００６，３２３８－３２３９；Ｍ．Ｇ．Ｄａｖｉｄｓｏｎ，Ａ．Ｅ．Ｇｏｅｔａ，Ｊ．Ａ．Ｋ．Ｈｏｗａｒｄ，Ｃ．Ｗ．Ｌｅｈｍａｎｎ，Ｇ．Ｍ．ＭｃＩｎｔｙｒｅ　ａｎｄ　Ｒ．Ｄ．Ｐｒｉｃｅ，Ｊ．Ｏｒｇａｎｏｍｅｔ．Ｃｈｅｍ．１９９８，５５０，４４９－４５２）記載の手法により得たＰｈ_３Ｐ＝ＮＨ（３．４８ｇ，１２．５ｍｍｏｌ）を、２０ｍＬの無水クロロベンゼンに溶解し、氷水浴で冷却した。アルゴン雰囲気下で五塩化リン（０．２９ｇ、１．４０ｍｍｏｌ）を加えた。反応混合物をゆっくりとオイルバスで１６０℃に加熱し、この温度で２０時間維持した。得られた懸濁液を熱時濾過し、残った白色の固体を熱した１０ｍＬのクロロベンゼンで洗浄した。ろ液中のすべての揮発性物質をロータリーエバポレーターで除去した。残留物を１０ｍＬのエーテルで処理し、沈殿した固体を濾過により単離した。得られた固体を１０ｍＬのＤＣＭに溶解し、５ｍＬの水中のＮａＢＦ_４（０．２０ｇ、１．８ｍｍｏｌ）で処理した。ＤＣＭ層を分離し、Ｎａ_２ＳＯ_４で乾燥させた。ＤＣＭを除去した後、残った固体を１０ｍＬのエーテルで処理し、濾過し、空気中で乾燥させたところ、白色生成物としてＰ５（Ｐｈ）－ＢＦ_４を０．９８ｇ得た。収率は５７％であった。

　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２）δ７．６０（ｍ，１２Ｈ），７．２４（ｍ，２４Ｈ），７．１０（ｍ，２４Ｈ）．
　^１３Ｃ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２）δ１３２．９（ｄ），１３１．６，１３１．３（ｄｄ），１２８．３（ｄ）．
　^３１Ｐ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１６２ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２）δ２．７（ｄ，^２Ｊ_Ｐ－Ｐ＝４．８Ｈｚ），－１０．１（ｑｕｉｎｔｅｔ，^２Ｊ_Ｐ－Ｐ＝４．８Ｈｚ）．
　元素分析は、理論計算値がＣ_７２Ｈ_７７ＮＯ_６Ｐ_２：Ｃ７０．７１，Ｈ４．９５，Ｎ４．５８であるのに対して、実測値がＣ７０．１２，Ｈ４．８０，Ｎ４．４５であった。
　ＥＳＩ－ＭＳスペクトルは、理論計算値がｍ／ｚ：１１３５．３５であるのに対して、実測値がｍ／ｚ：１１３５．３５であった。

（ステップ２：テトラキス［（トリフェニルホスホラニリデン）アミノ］ホスホニウム４－（２－（４－ヒドロキシフェニル）プロパン－２－イル）フェノラートＢＰＡ付加物（以下、Ｐ５（Ｐｈ）－ＢＰＡ_１．６７と略記することがある）の合成）
　５ｍＬのメタノールに溶解させたＰ５（Ｐｈ）－ＢＦ_４（０．７４ｇ、０．６１ｍｍｏｌ）に、Ｋ－ＢＰＡ_２（５ｍＬのメタノール中に、カリウムｔｅｒｔ－ブトキシド（６８ｍｇ、０．６１ｍｍｏｌ）とＢＰＡ（２７８ｍｇ、１．２２ｍｍｏｌ）を加えることでｉｎ　ｓｉｔｕで調製）を加えた。混合物を室温で１時間攪拌した。１０ｍＬのＤＣＭを加え、混合物を濾過した。すべての溶媒をエバポレーターで留去した。残った固体を１０ｍＬのメタノールで還流し、次に室温まで冷却した。沈殿した白色の固体を濾過により単離し、空気中で乾燥させることにより、触媒Ｇ（Ｐ５（Ｐｈ）－ＢＰＡ_１．６７）を収率８１％で０．７８ｇ得た。^１Ｈ　ＮＭＲの分析結果は、生成物が１．６７当量のＢＰＡを含むことを示した。

　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２／ＣＤ_３ＯＤ＝１：４）δ７．６０（ｍ，１２Ｈ），７．２４（ｍ，２４Ｈ），７．１０（ｍ，２４Ｈ），６．９８，６．６２（ｅａｃｈｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝７．６Ｈｚｅａｃｈ６．６Ｈ，ＢＰＡ－Ｈ），１．５６（ｓ，１０Ｈ，ＢＰＡ－ＣＨ_３）．
　^１３Ｃ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１００ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２／ＣＤ_３ＯＤ＝１：４）δ１５７．０，１４０．９，１３２．９（ｄ），１３１．６，１３１．３（ｄｄ），１２８．３（ｄ），１２７．５，１１５．３，４１．２，３０．９．
　^３１Ｐ｛Ｈ｝ＮＭＲ（１６２ＭＨｚ，２９８Ｋ，ＣＤ_２Ｃｌ_２）δ２．７（ｄ，^２Ｊ_Ｐ－Ｐ＝４．８Ｈｚ），‒１０．２（ｑｕｉｎｔｅｔ，^２Ｊ_Ｐ－Ｐ＝４．８Ｈｚ）．
　ＥＳＩ－ＭＳスペクトルは、理論計算値がｍ／ｚ：１１３５．３５であるのに対して、実測値がｍ／ｚ：１１３５．３５であった。
　得られた化合物の熱安定性試験の結果を表１に示す。

＜比較例１：触媒Ｈの合成＞
　２－Ｅｔ－１，４－Ａｄ_２－ｉｍｉｄａｚｏｌｉｕｍ　ｂｒｏｍｉｄｅ０．８ｇをＴＨＦ５ｍＬに溶解した。次に、カリウムｔｅｒｔ－ブトキシド（シグマアルドリッチ製）１８８ｍｇをＴＨＦ２ｍＬに溶解した溶液に２－Ｅｔ－１，４－Ａｄ_２－ｉｍｉｄａｚｏｌｉｕｍ　ｂｒｏｍｉｄｅを含む溶液に加えた。混合物は１４時間、室温で攪拌した。ろ過物を回収し、ロータリーエバポレーターで残留溶媒を除去すると黄色い固形物（２－Ｅｔ－１，４－Ａｄ_２－ｉｍｉｄａｚｏｌｅ）が５８０ｍｇ得られた。
　次に、２－Ｅｔ－１，４－Ａｄ_２－ｉｍｉｄａｚｏｌｅ４００ｍｇをヨードメタン３ｍＬに溶解させて４５℃で１４時間攪拌した。ロータリーエバポレーターでヨードメタンを除去後、ジエチルエーテル１０ｍＬを加えて固形物をろ過、乾燥させると青みがかった黄色い結晶が５５２ｍｇ得られた（２－Ｅｔ－１，４－Ａｄ_２－３－Ｍｅ－ｉｍｙ－Ｉ）。
　次に、２－Ｅｔ－１，４－Ａｄ_２－３－Ｍｅ－ｉｍｙ－Ｉ６５３ｍｇをＴＨＦ３ｍＬとエタノール１ｍＬに溶解した。また、２５２ｍｇのＡｇＢＦ_４をＴＨＦ３ｍＬとエタノール１ｍＬに溶解した。ＡｇＢＦ_４を含む溶液を２－Ｅｔ－１，４－Ａｄ_２－３－Ｍｅ－ｉｍｙ－Ｉを含む溶液に滴下した。次に、ＢＰＡ２９４ｍｇとカリウム　ターシャリーブトキシド（シグマアルドリッチ製）１４５ｍｇをＴＨＦ３ｍＬとエタノール１ｍＬに溶解した。この溶液を２－Ｅｔ－１，４－Ａｄ_２－３－Ｍｅ－ｉｍｙ－Ｉを含む溶液と混合し、室温で４時間攪拌し、ろ過物を回収した。ろ過物中の残存溶媒はロータリーエバポレーターで除去し、固形物をＤＣＭで抽出した。溶液中のＤＣＭをロータリーエバポレーターで除去して下記構造式で表される触媒Ｈ（２－Ｅｔ－１，４－Ａｄ_２－３－Ｍｅ－ｉｍｙ－ＢＰＡと略記することがある。純度８５％）を６７０ｍｇ得た。

　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ）：δ７．２０（ｓ，１Ｈ，５－Ｈ），６．７０，６．３２（ｅａｃｈ　ｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝８．６Ｈｚ，ｅａｃｈ　４Ｈ，ＢＰＡ－Ｈ），３．８６（ｓ，３Ｈ，Ｎ－ＣＨ_３），３．２２（ｑ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝７．４Ｈｚ，２Ｈ，ＣＨ_２ＣＨ_３），２．１８（９Ｈ，Ａｄ－Ｈ），２．０４（３Ｈ，Ａｄ－Ｈ），１．９６（６Ｈ，Ａｄ－Ｈ），１．７６－１．６６（１２Ｈ，Ａｄ－Ｈ），１．４４（ｓ，６Ｈ，ＢＰＡ－Ｈ），１．２０（ｔ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝７．４Ｈｚ，３Ｈ，ＣＨ_２ＣＨ_３）

＜比較例２：触媒Ｉの合成＞
　３－ｈｙｄｒｏｘｙｂｕｔａｎ－２－ｏｎｅを１３．２ｇとメシチルアミン１３．５ｇとトルエン１５０ｍＬと塩化水素０．０５ｍＬを混合し、窒素雰囲気下で３時間、還流した。得られた黄色い溶液を室温まで冷却後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、３－（ｍｅｓｉｔｙｌａｍｉｎｏ）ｂｕｔａｎ－２－ｏｎｅを１５．４ｇ得た。
　次に、３－（ｍｅｓｉｔｙｌａｍｉｎｏ）ｂｕｔａｎ－２－ｏｎｅ　４．１ｇと、トリエチルアミン５．６ｍＬ、アセチルクロライド７．９ｇ、ＤＣＭ３０ｍＬを０℃で混合し、室温で１４時間攪拌した。析出したアンモニウム塩をフィルターで除去した。溶液からＤＣＭを留去し、得られた溶液をシリカゲルカラムで分離した。生成物をヘキサンおよび酢酸エチル混合液（重量比４：１）で溶離させて青みがかった黄色い液体を３．２ｇ得た。次に、得られた液体２．５ｇを無水酢酸１０．３ｇと混合し、３７％塩化水素水溶液０．８４ｍＬを添加した。混合物を室温で１４時間攪拌し、５０ｍＬのジエチルエーテルを添加した。有機溶液層を回収しジエチルエーテル２ｍＬで２回洗浄した。得られた油状の物質をトルエン２０ｍＬ、メシチルアミン２．０ｇと混合し室温で３時間攪拌した。無水ジエチルエーテル５０ｍＬで洗浄し、無水酢酸６ｍＬ、トルエン２０ｍＬ、３７％塩化水素水溶液１．３ｍＬを混合し１１０℃で１４時間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去すると白色の２，４，５－Ｍｅ_３－１，３－Ｍｅｓ_２－ｉｍｙ－Ｃｌを１．４ｇ得た。

　次に、２，４，５－Ｍｅ_３－１，３－Ｍｅｓ_２－ｉｍｙ－Ｃｌ５００ｍｇをＴＨＦ　２ｍＬとエタノール０．５ｍＬに溶解させた。次に、ＢＰＡ２２８ｍｇとカリウムｔｅｒｔ－ブトキシド１１２ｍｇをＴＨＦ２ｍＬとエタノール０．５ｍＬに溶解させた。２，４，５－Ｍｅ_３－１，３－Ｍｅｓ_２－ｉｍｙ－Ｃｌを含む溶液とＢＰＡを含む溶液を６０℃で１時間攪拌した後、ろ過物を回収した。ろ過物中の溶媒をロータリーエバポレーターで除去した後、ＤＣＭ　５ｍＬと混合した。ＤＣＭをロータリーエバポレーターで除去し、下記構造式で表される触媒Ｉ（以下、Ｍｅｓ_２－２，４，５－Ｍｅ_３－ｉｍｙ－ＢＰＡと略記することがある。純度８６％）を４９５ｍｇ得た。

　ＮＭＲ（核磁気共鳴）による構造同定は以下の通りであった。
　^１Ｈ　ＮＭＲ（４００ＭＨｚ，２９８Ｋ）：δ７．２３（ｓ，４Ｈ，Ａｒ－Ｈ），６．６８（ｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝８．６Ｈｚ，４Ｈ，Ａｒ－Ｈ），６．３０（ｄ，^３Ｊ_Ｈ－Ｈ＝８．６Ｈｚ，４Ｈ，Ａｒ－Ｈ），２．３６（ｓ，６Ｈ，Ｃ４，５－ＣＨ_３），２．１０（ｓ，３Ｈ，Ｃ２－ＣＨ_３），２．０２（ｓ，１２Ｈ，Ａｒ－ＣＨ_３），２．０１（ｓ，６Ｈ，Ａｒ－ＣＨ_３），１．４３（ｓ，６Ｈ，ＢＰＡ－ＣＨ_３）

＜比較例３：触媒Ｊの合成＞
　１，３－Ｂｉｓ（１－ａｄａｍａｎｔｙｌ）ｉｍｉｄａｚｏｌ－２－ｙｌｉｄｅｎｅ（Ｓｔｒｅｍ　Ｃｈｅｍｉｃａｌｓ製）１５．７ｍｇとＴＨＦ７．６ｍＬとＢＰＡ１０．６ｍｇを混合し、１．５ｍＬメタノールを添加して、下記構造式で表される触媒Ｊ（以下、Ａｄ_２－ｉｍｙ－ＢＰＡと略記することがある）を含む溶液を得た。
　得られた化合物の熱安定性試験の結果を表１に示す。

＜比較例４：触媒Ｌの合成＞
　ナトリウムフェノキサイド１１６ｍｇとＴＨＦ１ｍＬとｉＰｒ_２－ｉｍｙ－Ｃｌ（Ｓｔｒｅｍ　Ｃｈｅｍｉｃａｌｓ製、９７％）１８９ｍｇを混合し、室温で１４時間攪拌した。固形物をろ過して除去し、溶液中のＴＨＦをロータリーエバポレーターで留去して、下記構造式で表される触媒Ｌ（以下、ｉＰｒ_２－ｉｍｙ－ＯＰｈと略記することがある）２３１ｍｇを得た。

＜触媒Ｍ＞
　触媒Ｍとしては、下記構造式で表される、２－ｔｅｒｔ－ブチルイミノ－２－ジエチルアミノ－１，３－ジメチルペルヒドロ－１，３，２－ジアザホスホリン（以下、ＢＥＭＰと略記することがある）（シグマアルドリッチ製）を使用した。

＜触媒Ｋ＞
　触媒Ｋとしては、下記構造式で表される水酸化テトラメチルアンモニウム（以下、ＴＭＡＨと略記することがある）（９７％、シグマアルドリッチ製）を使用した。

［熱可塑性樹脂の製造］
＜実施例７＞
　反応器攪拌機、反応器加熱装置、反応器圧力調整装置を付帯した内容量１５０ｍＬのガラス製反応器に、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１７．９５（約０．５５ｍｏｌ）を投入しエステル交換触媒として触媒ＡをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、３μｍｏｌとなるように添加して混合物を調製した。

　次に、ガラス製反応器内を約１００Ｐａ（０．７５Ｔｏｒｒ）に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を３回繰り返し、反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、反応器外部温度を２２０℃にし、反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、１００ｒｐｍで攪拌機を回転させた。そして、反応器の内部で行われるＢＰＡとＤＰＣのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、４０分間かけて反応器内の圧力を絶対圧で１０１．３ｋＰａ（７６０Ｔｏｒｒ）から１３．３ｋＰａ（１００Ｔｏｒｒ）まで減圧した。

　続いて、反応器内の圧力を１３．３ｋＰａに保持し、フェノールをさらに留去させながら、８０分間、エステル交換反応を行った。その後、反応器外部温度を２９０℃に昇温、４０分間かけて反応器内圧力を絶対圧で１３．３ｋＰａ（１００Ｔｏｒｒ）から３９９Ｐａ（３Ｔｏｒｒ）まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに反応器内の絶対圧を３０Ｐａ（約０．２Ｔｏｒｒ）まで減圧し、重縮合反応を行った。反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。
　なお、反応開始から、反応終了までの反応時間を計測し、表２中に重合時間（単位：分）として記載した。

　次いで、反応器内を、窒素により絶対圧で１０１．３ｋＰａに復圧の上、ゲージ圧で０．２ＭＰａまで昇圧し、反応器の槽底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜き出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た後、回転式カッターを使用してペレット化した。
　得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜実施例８＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１７．７３ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、触媒ＡをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、２μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜実施例９＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１６．８５ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、触媒ＡをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、１μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜実施例１０＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１８．２８ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、エステル交換触媒ＢをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、２．５μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。　

＜実施例１１＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１８．２８ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、エステル交換触媒として触媒Ａの代りに触媒ＣをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、２．５μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜実施例１２＞
　実施例７において、エステル交換触媒として触媒Ａの代わりに触媒Ｄを、ＢＰＡ１ｍｏｌに対し３μｍｏｌ使用した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜実施例１３＞
　実施例７において、エステル交換触媒として触媒Ａの代わりに触媒Ｅを、ＢＰＡ１ｍｏｌに対し３μｍｏｌ使用した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜実施例１４＞
　実施例７において、エステル交換触媒として触媒Ａの代わりに触媒Ｆを、ＢＰＡ１ｍｏｌに対し３μｍｏｌ使用した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜実施例１６＞
　実施例７において、エステル交換触媒として触媒Ａの代わりに触媒ＧをＢＰＡ１ｍｏｌに対し３μｍｏｌ使用した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜比較例５＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１７．７３ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、エステル交換触媒として触媒Ａの代りに触媒ＨをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、７．７μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜比較例６＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１７．７３ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、エステル交換触媒として触媒Ａの代りに触媒ＩをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、７μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜比較例７＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１８．８３ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、エステル交換触媒として触媒Ａの代りに触媒ＩをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、５μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜比較例８＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１７．８４ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、エステル交換触媒として触媒Ａの代りに触媒ＪをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、７μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜比較例９＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１７．７３ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、エステル交換触媒として触媒Ａの代りに触媒ＪをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、２０μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜比較例１０＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１８．８３ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、エステル交換触媒として触媒Ａの代りに触媒ＫをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、５μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜比較例１１＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１８．８３ｇ（約０．５５ｍｏｌ）を投入し、エステル交換触媒として触媒Ａの代りに触媒ＬをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、５μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

＜比較例１２＞
　実施例７において、ＢＰＡ１１６．７１ｇ（約０．５１ｍｏｌ）、ＤＰＣ１１５．４３ｇ（約０．５４ｍｏｌ）を投入し、エステル交換触媒として触媒Ａの代りに触媒ＭをＢＰＡ１ｍｏｌに対し、１０μｍｏｌとなるように添加した以外は、実施例７と同様にして、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。重合時間と得られたポリカーボネート樹脂の評価結果を表２に示す。

［考察］
　表１より、実施例１、２、４～６、１５で得られた本発明の触媒化合物は、分解率が低く、熱安定性に優れていることが分かる。
　これに対して、比較例３、１２の触媒Ｊ，Ｍは分解率が高く、熱安定性に劣る。

　表２より明らかなように、本発明にかかるエステル交換触媒を用いた実施例７～１４、１６では、３μｍｏｌ以下と少ない触媒量でも重合時間が２４５分以下と短いため、反応性に優れており、特定副生成物含有量も５５０ｐｐｍ以下と少なく、良好である。
　これに対して、比較例５は７．７μｍｏｌの触媒を用いているが、実施例と同等以上の反応時間を要しており、また特定副生成物含有量も実施例より多い。
　比較例６は、７μｍｏｌの触媒を用いているが、実施例と同等以上の反応時間を要しており、また特定副生成物含有量も実施例より多い。
　比較例７では、比較例６と同じ触媒を、比較例６よりも少ない５μｍｏｌ用いており、特定副生成物含有量は比較例６よりも改善傾向であるが、重合時間が長い。
　比較例８は、特定副生成物が実施例同等レベルで少ないが、重合時間が長い。
　比較例９では、比較例８と同じ触媒を、比較例８よりも多い２０μｍｏｌ用いたが、反応性の改善は見られず、さらに特定副生成物含有量も増える傾向であった。
　比較例１０，１１，１２は、実施例よりも用いた触媒量が多いが、反応時間は長く、また特定副生成物含有量も多い。

　本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
　本出願は、２０２１年３月２３日付で出願された日本特許出願２０２１－０４８２６４に基づいており、その全体が引用により援用される。

Claims

　ジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとを、下記式（１）で表される化合物及び／又は下記式（２）で表される化合物から選ばれるエステル交換触媒の存在下に溶融重縮合させる工程を含む、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

（式（１）中、Ｒ^１～Ｒ^２４はそれぞれ独立に水素原子、炭素数１～１０のアルキル基、又はシクロアルキル基であり、該アルキル基及びシクロアルキル基の一部の炭素原子がヘテロ原子に置き換わっていてもよく、Ｒ^１～Ｒ^２４のうち、同一のＮ原子に置換しているアルキル基同士が結合して環を形成していてもよい。Ｒ^２とＲ^３、Ｒ^４とＲ^５、Ｒ^６とＲ^７、Ｒ^８とＲ^１はそれぞれ結合して環を形成していてもよい。Ｒ^９またはＲ^１０と、Ｒ^１またはＲ^２と、Ｒ^１１またはＲ^１２がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^１３またはＲ^１４と、Ｒ^３またはＲ^４と、Ｒ^１５またはＲ^１６がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^１７またはＲ^１８と、Ｒ^５またはＲ^６と、Ｒ^１９またはＲ^２０がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^２１またはＲ^２２と、Ｒ^７またはＲ^８と、Ｒ^２３またはＲ^２４がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。Ｒ^１またはＲ^２と、Ｒ^３またはＲ^４と、Ｒ^５またはＲ^６がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^３またはＲ^４と、Ｒ^５またはＲ^６と、Ｒ^８またはＲ^７がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^５またはＲ^６と、Ｒ^８またはＲ^７と、Ｒ^１またはＲ^２がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^７またはＲ^８と、Ｒ^１またはＲ^２と、Ｒ^３またはＲ^４がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。ａ～ｄはそれぞれ独立に、０または１である。Ｘ^－は１価のアニオンを表す。）

（式（２）中、Ａｒ^１～Ａｒ^１２はそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリール基を表す。Ｍ^－は１価のアニオンを表す。）
　前記ジヒドロキシ化合物がビスフェノールＡである請求項１に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記ジアリールカーボネートがジフェニルカーボネートである請求項１または２に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記ジカルボン酸エステルが、テレフタル酸ジフェニル及び／またはイソフタル酸ジフェニルである請求項１～３のいずれか１項に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとを前記エステル交換触媒の存在下に溶融重縮合させる工程を含む請求項１～４のいずれか１項に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記エステル交換触媒が、前記式（１）で表される化合物である請求項１～５のいずれか１項に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記式（１）が、下記式（１Ｂ）で表される請求項６に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

（式（１Ｂ）中、Ｒ^２９～Ｒ^５２はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数１～１０のアルキル基である。Ｒ^２９～Ｒ^５２のうち、同一のＮ原子に置換しているアルキル基同士が結合して環を形成していてもよい。Ｒ^３０とＲ^３１、Ｒ^３２とＲ^３３、Ｒ^３４とＲ^３５、Ｒ^３６とＲ^２９はそれぞれ結合して環を形成していてもよい。ｉ～ｌはそれぞれ独立に、０または１である。Ｙ^－は１価のアニオンを表す。）
　前記式（１）中、Ｘ^－が、塩化物イオン、臭化物イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノラートイオン、下記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び下記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である請求項６または７に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記式（１）中、Ｘ^－が、フェノラートイオン、前記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び前記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である請求項８に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記式（１）が、下記式（１ａ）～（１ｅ）のいずれかで表される請求項６～９のいずれか１項に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。

（式（１ａ）～（１ｅ）中、Ｚ^１－～Ｚ^５－はそれぞれ独立に、１価のアニオンを表す。Ｍｅはメチル基を表す。）
　前記エステル交換触媒が、前記式（２）で表される化合物である請求項１～５のいずれか１項に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記式（２）中、Ａｒ^１～Ａｒ^１２がフェニル基である請求項１１に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記式（２）中、Ｍ^－が塩化物イオン、臭化物イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノラートイオン、下記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、並びに、下記式（３ｂ），（３ｃ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である請求項１１または１２に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記式（２）中、Ｍ^－が、フェノラートイオン、前記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、並びに、前記式（３ｂ），（３ｃ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である請求項１３に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記ジヒドロキシ化合物の１ｍｏｌに対して、前記エステル交換触媒０．０１～１０００μｍｏｌの存在下に前記溶融重縮合を行う請求項１～１４のいずれか１項に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　前記溶融重縮合反応時の温度が２００～３５０℃である請求項１～１５のいずれか１項に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　製造された前記ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の粘度平均分子量［Ｍｖ］が５，０００～４０，０００である請求項１～１６のいずれか１項に記載のポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂の製造方法。
　ジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネート及び／又はジカルボン酸エステルとを溶融重縮合させて、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも１種の熱可塑性樹脂を生成するためのエステル交換触媒であって、下記式（１）で表される化合物及び下記式（２）で表される化合物群から選ばれるいずれか１つを含むエステル交換触媒。

（式（１）中、Ｒ^１～Ｒ^２４はそれぞれ独立に水素原子、炭素数１～１０のアルキル基、又はシクロアルキル基であり、該アルキル基及びシクロアルキル基の一部の炭素原子がヘテロ原子に置き換わっていてもよく、Ｒ^１～Ｒ^２４のうち、同一のＮ原子に置換しているアルキル基同士が結合して環を形成していてもよい。Ｒ^２とＲ^３、Ｒ^４とＲ^５、Ｒ^６とＲ^７、Ｒ^８とＲ^１はそれぞれ結合して環を形成していてもよい。Ｒ^９またはＲ^１０と、Ｒ^１またはＲ^２と、Ｒ^１１またはＲ^１２がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^１３またはＲ^１４と、Ｒ^３またはＲ^４と、Ｒ^１５またはＲ^１６がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^１７またはＲ^１８と、Ｒ^５またはＲ^６と、Ｒ^１９またはＲ^２０がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^２１またはＲ^２２と、Ｒ^７またはＲ^８と、Ｒ^２３またはＲ^２４がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。Ｒ^１またはＲ^２と、Ｒ^３またはＲ^４と、Ｒ^５またはＲ^６がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^３またはＲ^４と、Ｒ^５またはＲ^６と、Ｒ^８またはＲ^７がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^５またはＲ^６と、Ｒ^８またはＲ^７と、Ｒ^１またはＲ^２がそれぞれ結合して環を形成していてもよく、Ｒ^７またはＲ^８と、Ｒ^１またはＲ^２と、Ｒ^３またはＲ^４がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。ａ～ｄはそれぞれ独立に、０または１である。Ｘ^－は１価のアニオンを表す。）

（式（２）中、Ａｒ^１～Ａｒ^１２はそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリール基を表す。Ｍ^－は１価のアニオンを表す。）
　下記式（１ａ’）～（１ｅ’）のいずれかで表される化合物。

（式（１ａ’）、（１ｂ’）中、Ｌ^１－、Ｌ^２－は、フェノラートイオン、下記式（３ａ）で表されるＢＰＡモノアニオン、及び下記式（３ｂ）で表されるＢＰＡモノアニオンＢＰＡ付加物から選ばれる少なくとも１種である。前記式（１ｃ’）～（１ｅ’）中、Ｌ^３－～Ｌ^５－は１価のアニオンを表す。Ｍｅはメチル基を表す。）
　下記式（２）で表される化合物。

（式（２）中、Ａｒ^１～Ａｒ^１２はそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリール基を表す。Ｍ^－は１価のアニオンを表す。）
　請求項１～１７のいずれか１項に記載の熱可塑性樹脂の製造方法により製造されたポリカーボネートであって、
　前記ポリカーボネートの粘度平均分子量が、１４，０００以上、３０，０００以下であり、
　該ポリカーボネートの加水分解物について測定される下記式（Ａ）～（Ｅ）で表される化合物の総量が、該ポリカーボネート樹脂に対して３００質量ｐｐｍ以上、５５０質量ｐｐｍ以下であることを特徴とするポリカーボネート。

（式（Ａ）～（Ｄ）中、Ｒ^ａ～Ｒ^ｆはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。式（Ａ）～（Ｅ）中のベンゼン環において、ベンゼン環に結合する１つ以上の水素原子は、置換基によって置換さていてもよい。）
　前記ポリカーボネートの末端水酸基濃度が、４００質量ｐｐｍ以上、１０００質量ｐｐｍ以下である請求項２１に記載のポリカーボネート。