WO2022185888A1

WO2022185888A1 - 車輪ロックシステムおよび搬送体

Info

Publication number: WO2022185888A1
Application number: PCT/JP2022/005650
Authority: WO
Inventors: 英樹吉本
Original assignee: 朝日インテック株式会社
Priority date: 2021-03-01
Filing date: 2022-02-14
Publication date: 2022-09-09
Also published as: EP4303034A1; CN116940473A; JP2022132765A; US20240017570A1

Abstract

車輪のロック解除に支障が生じることを回避し、車輪のロックに要する力を小さくし、かつ、車輪のロックに要する時間を短くする。車輪ロックシステムは、ボディと、回転軸廻りに回転可能にボディに支持され、回転軸廻りの外周面の少なくとも一部に凹部が形成された軸部材と、軸部材に固定されて軸部材と共に回転する車輪と、車輪の回転を許容するロック解除状態と、車輪の回転を規制するロック状態と、の間で切り替わるロック機構とを備える。ロック機構は、凸部を有する線状体を有し、線状体は、軸部材の凹部が形成された外周面に凸部を押圧可能に配置されている。ロック機構は、凸部が凹部に嵌合していないロック解除状態から、線状体が軸部材の回転軸に直交する方向へ移動することに伴って凸部が凹部に嵌合することにより、ロック状態に遷移するように構成されている。

Description

車輪ロックシステムおよび搬送体

　本明細書に開示される技術は、車輪ロックシステムおよび搬送体に関する。

　スーツケースの底部には、車輪を有するキャスターが取り付けられている。スーツケースの意図しない移動防止等のため、キャスターの車輪の回転を規制する（ロックする）ことが可能な車輪ロックシステムが種々提案されている。例えば、車輪ロックシステムとして、利用者が所定の操作を行うと、ワイヤの先端に取り付けられたロックピンが、車輪の回転軸に平行な方向に突出することによって車輪に設けられたロック孔に挿入され、その結果、回転軸廻りの車輪の回転が規制されるシステムが知られている（例えば、特許文献１参照）。

米国特許第６５１０９２７号明細書特開２０１２－２５３３１号公報米国特許第８５２２３９７号明細書

　上記従来の車輪ロックシステムでは、例えばロック孔内に異物が侵入した場合に、ロックピンがロック孔内に固着されてロック解除に支障が生じるおそれがある、という課題がある。また、上記従来の車輪ロックシステムでは、車輪をロックする際に、ロックピンをロック孔内に移動させることが必要であり、かつ、車輪のロックを解除する際に、ロックピンをロック孔から完全に抜き去ることが必要であるため、ロックピンの移動量が大きく、車輪のロック／ロック解除に要する力が大きく、かつ、ロック／ロック解除に要する時間が長い、という課題がある。なお、このような課題は、スーツケースのキャスターを構成する車輪のロック／ロック解除のための車輪ロックシステムに限らず、車輪一般を対象とした車輪ロックシステムに共通の課題である。

　本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。

　本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。

（１）本明細書に開示される車輪ロックシステムは、ボディと、回転軸廻りに回転可能に前記ボディに支持され、前記回転軸廻りの外周面の少なくとも一部に凹部が形成された軸部材と、前記軸部材に固定されて前記軸部材と共に回転する車輪と、前記車輪の回転を許容するロック解除状態と、前記車輪の回転を規制するロック状態と、の間で切り替わるロック機構とを備える。前記ロック機構は、凸部を有する線状体を有する。前記線状体は、前記軸部材の前記凹部が形成された前記外周面に前記凸部を押圧可能に配置されている。前記ロック機構は、前記凸部が前記凹部に嵌合していない前記ロック解除状態から、前記線状体が前記軸部材の前記回転軸に直交する方向へ移動することに伴って前記凸部が前記凹部に嵌合することにより、前記ロック状態に遷移するように構成されている。本車輪ロックシステムでは、ロック解除状態から、凸部が凹部に嵌合することによりロック状態に遷移するように構成されているため、従来の車輪ロックシステムのようにロックピンがロック孔に挿入されることにより車輪の回転が規制される構成と比較して、凸部が凹部に固着されるおそれを低減することができ、ロック解除に支障が生じることを回避することができる。また、本車輪ロックシステムでは、ロック解除状態から、線状体が軸部材の回転軸に直交する方向へ移動することに伴って凸部が凹部に嵌合することによりロック状態に遷移するように構成されているため、従来の車輪ロックシステムのようにロックピンが車輪の回転軸に平行な方向に突出することによってロック孔に挿入されることにより車輪の回転が規制される構成と比較して、車輪のロックを行う際の凸部の移動量を小さくすることができ、車輪のロックに要する力を小さくし、かつ、車輪のロックに要する時間を短くすることができる。

（２）上記車輪ロックシステムにおいて、前記ロック機構は、前記凸部が前記凹部に嵌合している前記ロック状態から、前記線状体が前記軸部材の前記回転軸に直交する方向へ移動することに伴って前記凸部が前記凹部に嵌合しなくなることにより、前記ロック解除状態に遷移するように構成されている構成としてもよい。本車輪ロックシステムによれば、車輪のロック解除を行う際の凸部の移動量を小さくすることができ、車輪のロック解除に要する力を小さくし、かつ、車輪のロック解除に要する時間を短くすることができる。

（３）上記車輪ロックシステムにおいて、前記軸部材の前記外周面の少なくとも一部には、複数の前記凹部が形成されており、前記線状体は、複数の前記凹部のそれぞれに嵌合可能な複数の前記凸部を有する構成としてもよい。本車輪ロックシステムによれば、より確実な車輪のロックを実現することができる。

（４）上記車輪ロックシステムにおいて、前記線状体は、コアワイヤと、前記コアワイヤの外周に巻かれ、前記凸部として機能する外周ワイヤと、を有する構成としてもよい。本車輪ロックシステムによれば、比較的シンプルな構成によって、凸部と凹部との嵌合／嵌合解除による車輪のロック／ロック解除を実現することができ、車輪ロックシステムの製造の容易化や耐久性の向上を実現することができる。

（５）上記車輪ロックシステムにおいて、前記外周ワイヤは、前記コアワイヤの外周に螺旋状に巻き回しされている構成としてもよい。本車輪ロックシステムによれば、さらにシンプルな構成によって、凸部と凹部との嵌合／嵌合解除による車輪のロック／ロック解除を実現することができ、車輪ロックシステムの製造のさらなる容易化や耐久性のさらなる向上を実現することができる。

（６）上記車輪ロックシステムにおいて、前記線状体は、コアワイヤと、前記コアワイヤ上に形成され、前記凸部として機能する球状体と、を有する構成としてもよい。本車輪ロックシステムによれば、比較的シンプルな構成によって、凸部と凹部との嵌合／嵌合解除による車輪のロック／ロック解除を実現することができ、車輪ロックシステムの製造の容易化や耐久性の向上を実現することができる。

（７）上記車輪ロックシステムにおいて、前記線状体は、コアワイヤと、前記コアワイヤの端部に接合され、前記凸部として機能する複数の歯が形成されたラック部材と、を有する構成としてもよい。本車輪ロックシステムによれば、比較的シンプルな構成によって、凸部と凹部との嵌合／嵌合解除による車輪のロック／ロック解除を実現することができ、車輪ロックシステムの製造の容易化や耐久性の向上を実現することができる。

（８）本明細書に開示される搬送体は、上記車輪ロックシステムと、底部に前記車輪ロックシステムの前記ボディが取り付けられた本体部と、を備える。本搬送体によれば、搬送体を支持しつつ床面に沿って移動させる車輪について、車輪のロック解除に支障が生じることを回避することができると共に、車輪のロックを行う際の凸部の移動量を小さくすることができ、車輪のロックに要する力を小さくし、かつ、車輪のロックに要する時間を短くすることができる。

　なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、車輪ロックシステム、車輪ロックシステムを備える搬送体（例えば、スーツケース、台車、ストレッチャー等）、それらの製造方法等の形態で実現することができる。

第１実施形態におけるスーツケース１００の構成を概略的に示す説明図第１実施形態における車輪ロックシステム１０の詳細構成を示す斜視図第１実施形態における車輪ロックシステム１０の詳細構成を示す斜視図第１実施形態における車輪ロックシステム１０の詳細構成を示す斜視図第１実施形態におけるロック解除状態の車輪ロックシステム１０の一部の構成を示す側面図第１実施形態におけるロック状態の車輪ロックシステム１０の一部の構成を示す側面図操作部１２６およびその周辺の外観構成を示す斜視図操作部１２６およびその周辺の内部構成を示す分解斜視図操作部１２６およびその周辺の内部構成を示す分解斜視図操作部１２６の動作を示す説明図第１実施形態の変形例における操作部１２６の外観構成を示す説明図第１実施形態の他の変形例における操作部１２６の外観構成を示す説明図第１実施形態の他の変形例における軸部材１３２周辺の構成を示す説明図第２実施形態における車輪ロックシステム１０ａの詳細構成を示す斜視図第２実施形態における車輪ロックシステム１０ａの詳細構成を示す斜視図第２実施形態における車輪ロックシステム１０ａの詳細構成を示す斜視図第２実施形態におけるロック解除状態の車輪ロックシステム１０ａの一部の構成を示す側面図第２実施形態におけるロック状態の車輪ロックシステム１０ａの一部の構成を示す側面図第２実施形態の変形例における車輪ロックシステム１０ａの構成を示す説明図第３実施形態における車輪ロックシステム１０ｂの詳細構成を示す斜視図第３実施形態における車輪ロックシステム１０ｂの詳細構成を示す斜視図第３実施形態における車輪ロックシステム１０ｂの詳細構成を示す斜視図第３実施形態におけるロック解除状態の車輪ロックシステム１０ｂの一部の構成を示す側面図第３実施形態におけるロック状態の車輪ロックシステム１０ｂの一部の構成を示す側面図本明細書に開示される車輪ロックシステム１０を適用した台車２００の構成を示す説明図本明細書に開示される車輪ロックシステム１０を適用した台車２００のハンドル部２２０周辺の構成を示す説明図本明細書に開示される車輪ロックシステム１０を適用したストレッチャー３００の構成を示す説明図

Ａ．第１実施形態：
Ａ－１．スーツケース１００の構成：
　図１は、第１実施形態におけるスーツケース１００の構成を概略的に示す説明図である。図１のＡ欄には、後述するハンドル部１２０を引き出した状態のスーツケース１００の外観構成が示されており、図１のＢ欄には、ハンドル部１２０を収納した状態のスーツケース１００の外観構成が示されている。なお、図１では、説明の便宜上、スーツケース１００の外観に表れない一部の構成についても図示している。

　スーツケース１００は、床面に沿って搬送される搬送体であり、本体部１１０と、ハンドル部１２０と、キャスター部１３０と、ロック機構１４０とを備える。キャスター部１３０とロック機構１４０とは、車輪ロックシステム１０を構成する。なお、以下では、スーツケース１００の姿勢が、キャスター部１３０が本体部１１０の下方に位置する姿勢であるものとして説明する。ただし、スーツケース１００は、他の姿勢を取り得る。

　本体部１１０は、荷物を収容する箱体であり、例えば略直方体形状の部材である。ハンドル部１２０は、スーツケース１００を持ち上げたり床面に沿って搬送したりする際に把持される部分である。ハンドル部１２０は、２本のポール部１２４と、グリップ部１２２とを有する。各ポール部１２４は、例えば略四角柱状の部材であり、上下方向に延伸する姿勢で本体部１１０に取り付けられている。グリップ部１２２は、例えば略円柱状の部材であり、２本のポール部１２４の上端に差し渡されるように取り付けられている。グリップ部１２２には、ロック機構１４０の操作のための、後述する操作部１２６が設けられている。ハンドル部１２０は、２本のポール部１２４を本体部１１０の上面から上方に延伸させた延伸状態（図１のＡ欄参照）と、２本のポール部１２４を本体部１１０の内部または本体部１１０の側面に設けられた収納スペース内に収納した収納状態（図１のＢ欄参照）との間で切り替え可能に構成されている。

Ａ－２．車輪ロックシステム１０の構成および動作：
　上述したように、車輪ロックシステム１０は、キャスター部１３０とロック機構１４０とを備えている。キャスター部１３０は、本体部１１０の底部に取り付けられており、車輪１３１を有する。キャスター部１３０は、本体部１１０を支持しつつ、車輪１３１が回転することによってスーツケース１００を床面に沿って円滑に移動させる。本実施形態では、本体部１１０の底部の四隅のそれぞれに、キャスター部１３０が設けられている。

　また、ロック機構１４０は、各キャスター部１３０の車輪１３１の回転を許容するロック解除状態と、各キャスター部１３０の車輪１３１の回転を規制するロック状態と、の間で切り替わる機構である。ロック機構１４０がロック解除状態にあるときには、スーツケース１００を床面に沿って円滑に移動させることができ、ロック機構１４０がロック状態にあるときには、スーツケース１００の意図しない移動を防止することができる。

　図２から図４は、第１実施形態における車輪ロックシステム１０の詳細構成を示す斜視図である。図２から図４では、車輪ロックシステム１０（キャスター部１３０およびロック機構１４０）の構成をわかりやすく示すために、一部の構成を透過させて示したり、一部の構成の図示を省略したりしている。なお、図２および図３には、ロック機構１４０がロック解除状態にあるときの状態が示されており、図４には、ロック機構１４０がロック状態にあるときの状態が示されている。

　図２から図４に示すように、キャスター部１３０は、ボディ１３８と、２つの車輪１３１と、軸部材１３２とを備える。キャスター部１３０を構成する各部材は、例えば樹脂や金属により形成されている。

　ボディ１３８は、鉛直方向に延びる支軸１３９を介して、本体部１１０の底部に、水平方向に旋回可能に取り付けられている。軸部材１３２は、略円柱状の中心軸部材１３３と、中心軸部材１３３の外周面の一部を覆うように配置された略円筒状の外周軸部材１３４とを有する。外周軸部材１３４は、中心軸部材１３３と同心に配置された状態で、中心軸部材１３３に固定されている。軸部材１３２（の中心軸部材１３３）は、水平方向の回転軸廻りに回転可能にボディ１３８に支持されている。外周軸部材１３４の外周面には、複数の凹部１３５が形成されている。すなわち、本実施形態では、軸部材１３２の回転軸廻りの外周面の少なくとも一部に、凹部１３５が形成されている。なお、本実施形態では、外周軸部材１３４の外周面に、螺旋状の溝が形成されており、該溝の各部分が複数の凹部１３５を構成している。

　各車輪１３１は、略円板状の部材であり、軸部材１３２の中心軸部材１３３の両端に、軸部材１３２と同心になるように固定されている。そのため、各車輪１３１は、軸部材１３２の回転軸廻りの回転に伴い、同軸廻りに回転する。本実施形態では、各車輪１３１は、内側車輪１３１ｉと、内側車輪１３１ｉの外周を覆うように内側車輪１３１ｉに固定された外側車輪１３１ｏとを有し、内側車輪１３１ｉが中心軸部材１３３に固定されている。

　ロック機構１４０は、線状体１４１と、付勢部材１４４とを有する。線状体１４１は、コアワイヤ１４２と、コアワイヤ１４２の外周に螺旋状に巻き回しされた外周ワイヤ１４３とを有する。外周ワイヤ１４３は、コアワイヤ１４２における先端側（下端側）の一部分に巻き回しされており、両端を略球状の係止部材１４５によってコアワイヤ１４２に固定されている。外周ワイヤ１４３の径やピッチは、外周軸部材１３４の外周面に形成された凹部１３５の幅やピッチに合わせて設定されている。すなわち、外周ワイヤ１４３の各部は、外周軸部材１３４の外周面に形成された各凹部１３５に嵌合可能な凸部として機能する。コアワイヤ１４２および外周ワイヤ１４３は、例えば金属や樹脂により形成されている。

　線状体１４１の先端部（外周ワイヤ１４３が配置された部分）は、外周軸部材１３４の外周面に対向するように略円弧状に曲げられており、該外周面に外周ワイヤ１４３を押圧可能に配置されている。線状体１４１の残りの部分は、所定の箇所で折り曲げられて上方に延伸し、ボディ１３８および支軸１３９を貫通して本体部１１０の内部に至り（図２参照）、さらにハンドル部１２０のポール部１２４およびグリップ部１２２の内部を通って、グリップ部１２２に設けられた操作部１２６に至っている（図１参照）。また、付勢部材１４４は、例えば板バネにより構成されており、線状体１４１の先端部に接合されて、該先端部を外周軸部材１３４の外周面から離間させる方向に付勢している。

　ロック機構１４０は、線状体１４１の凸部として機能する外周ワイヤ１４３が、軸部材１３２の外周軸部材１３４の外周面に形成された凹部１３５に嵌合していない状態、すなわち、軸部材１３２（および軸部材１３２に固定された車輪１３１）の回転が許容された状態（上述したロック解除状態）と、線状体１４１の凸部として機能する外周ワイヤ１４３が、該凹部１３５に嵌合している状態、すなわち、軸部材１３２（および軸部材１３２に固定された車輪１３１）の回転が線状体１４１によって規制された状態（上述したロック状態）との間で切り替わるように構成されている。

　図５は、第１実施形態におけるロック解除状態の車輪ロックシステム１０の一部の構成を示す側面図であり、図６は、第１実施形態におけるロック状態の車輪ロックシステム１０の一部の構成を示す側面図である。ロック解除状態（図３および図５）において、線状体１４１を構成するコアワイヤ１４２が、操作部１２６の後述する動作に伴い引張荷重を受けると、図４および図６に示すように、線状体１４１の先端部（外周ワイヤ１４３が配置された部分）が付勢部材１４４による付勢力に抗って軸部材１３２の外周軸部材１３４の外周面に接近する。その結果、凸部としての外周ワイヤ１４３が外周軸部材１３４の外周面に形成された凹部１３５に嵌合してロック状態となる。すなわち、ロック機構１４０は、凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に嵌合していないロック解除状態から、線状体１４１が軸部材１３２の回転軸に直交する方向（図５および図６の紙面内方向）へ移動することに伴って凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に嵌合することにより、ロック状態に遷移するように構成されている。なお、このときの線状体１４１の移動方向は、おおよそ外周軸部材１３４の外周面の接線方向に一致する。

　反対に、ロック状態（図４および図６）において、線状体１４１を構成するコアワイヤ１４２が、操作部１２６の後述する動作に伴い引張荷重を受けなくなると、図３および図５に示すように、線状体１４１の先端部（外周ワイヤ１４３が配置された部分）が付勢部材１４４による付勢力によって軸部材１３２の外周軸部材１３４の外周面から離間する。その結果、凸部としての外周ワイヤ１４３が外周軸部材１３４の外周面に形成された凹部１３５に嵌合していないロック解除状態となる。すなわち、ロック機構１４０は、凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に嵌合しているロック状態から、線状体１４１が軸部材１３２の回転軸に直交する方向（図５および図６の紙面内方向）へ移動することに伴って凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に嵌合しなくなることにより、ロック解除状態に遷移するように構成されている。

Ａ－３．操作部１２６の構成および動作：
　図７は、操作部１２６およびその周辺の外観構成を示す斜視図であり、図８および図９は、操作部１２６およびその周辺の内部構成を示す分解斜視図である。上述したように、操作部１２６は、ハンドル部１２０のグリップ部１２２に設けられている。より詳細には、図８および図９に示すように、ハンドル部１２０のグリップ部１２２は、グリップ部１２２の上側半分を構成する上部グリップ部１２２Ｕと、グリップ部１２２の下側半分を構成する下部グリップ部１２２Ｌとから構成されており、上部グリップ部１２２Ｕおよび／または下部グリップ部１２２Ｌに形成された凹部により構成されるグリップ部１２２の内部空間内に、操作部１２６が収容されている。

　図９に示すように、操作部１２６は、筐体２１と、蓋体２２と、ダイアル２３と、ピニオン２４と、ラック２５と、位置決め部材２６とを備える。筐体２１は、略直方体形状の箱体であり、天面および１つの側面が開口している。蓋体２２は、筐体２１の天面を開閉する部材である。位置決め部材２６は、筐体２１の内部に収容され、ダイアル２３等の位置決めを行うと共に、ダイアル２３等が動くための空間を確保する。ダイアル２３は、略円板状の部材であり、一部が筐体２１の側面の開口から露出するように、筐体２１内に回転可能に収容されている。ダイアル２３における筐体２１から露出する部分の外周面には、滑り止めのための加工（例えば、溝加工）が施されている。ピニオン２４は、略円板状の部材であり、外周面に複数の歯が形成されている。ピニオン２４は、ダイアル２３の内部空間に収容されて固定されており、ダイアル２３の回転に伴い回転する。ラック２５は、可撓性を有する長尺状の部材であり、一側面に複数の歯が形成されている。ラック２５の各歯は、ピニオン２４の各歯と噛み合っており、ピニオン２４が回転すると、ラック２５が軸方向に摺動する。ラック２５の端部には、ロック機構１４０の線状体１４１を構成するコアワイヤ１４２が固定されている。

　図１０は、操作部１２６の動作を示す説明図である。図１０の各欄には、操作部１２６の動作時における各部分の上面視での位置関係が示されている。図１０では、操作部１２６の一部の構成を透過させて示したり、図示を省略したりしている。図１０のＡ欄に示すように、筐体２１の底面には、上方に延びる２つの突起部２１Ｘ，２１Ｙが形成されている。また、ダイアル２３には、２つの孔２３Ｘ，２３Ｙが形成されている。ダイアル２３の一方の孔２３Ｘは、上面視で、ダイアル２３の回転軸を中心とした円弧状部分（図１０のＡ欄に示す状態では、１２時の位置から３時の位置まで延びる部分）と、該円弧状部分の両端部から外周側に延びる爪部分とから構成されている。また、ダイアル２３の他方の孔２３Ｙは、上面視で、ダイアル２３の回転軸を中心とした円弧状部分（図１０のＡ欄に示す状態では、６時の位置から９時の位置まで延びる部分）と、該円弧状部分の両端部から内周側に延びる爪部分とから構成されている。筐体２１に形成された一方の突起部２１Ｘは、ダイアル２３に形成された一方の孔２３Ｘに挿入されており、筐体２１に形成された他方の突起部２１Ｙは、ダイアル２３に形成された他方の孔２３Ｙに挿入されている。

　ダイアル２３は、図示しない付勢部材（例えばバネ）によって所定の方向（図１０においては、紙面の上から下に向かう方向）に付勢されている。そのため、図１０のＡ欄およびＦ欄に示すように、筐体２１に形成された各突起部２１Ｘ，２１Ｙがダイアル２３に形成された各孔２３Ｘ，２３Ｙの端部に位置する状態では、各突起部２１Ｘ，２１Ｙが各孔２３Ｘ，２３Ｙの爪部分に嵌まり込み、ダイアル２３の回転が規制される。

　図１０のＡ欄には、ロック機構１４０が上述したロック解除状態にあるときの操作部１２６の状態が示されている。この状態において、ダイアル２３を紙面の上方向に押し込むと、図１０のＢ欄に示すように、筐体２１に形成された各突起部２１Ｘ，２１Ｙがダイアル２３に形成された各孔２３Ｘ，２３Ｙの爪部分から抜け出して円弧状部分に移動し、ダイアル２３の回転が許容された状態となる。この状態で、図１０のＣ欄からＥ欄に示すように、ダイアル２３を反時計回りに回転させると、ダイアル２３の回転に伴ってピニオン２４が反時計回りに回転し、これに伴ってラック２５がコアワイヤ１４２を引っ張る方向に移動する。この結果、ラック２５に接合されたコアワイヤ１４２に引張荷重が作用し、ロック機構１４０が上述したロック状態となる。なお、図１０のＥ欄に示す状態において、ダイアル２３から手を離すと、図示しない付勢部材によってダイアル２３が紙面の下方向に押し出され、ダイアル２３の回転が規制された状態（図１０のＦ欄に示す状態）となる。ロック状態からロック解除状態への移行は、上述した動作と反対の動作によって実現される。

Ａ－４．第１実施形態の効果：
　以上説明したように、本実施形態のスーツケース１００に適用される車輪ロックシステム１０は、ボディ１３８と、回転軸廻りに回転可能にボディ１３８に支持され、回転軸廻りの外周面の少なくとも一部に凹部１３５が形成された軸部材１３２と、軸部材１３２に固定されて軸部材１３２と共に回転する車輪１３１と、車輪１３１の回転を許容するロック解除状態と、車輪１３１の回転を規制するロック状態と、の間で切り替わるロック機構１４０とを備える。ロック機構１４０は、凸部として機能する外周ワイヤ１４３を有する線状体１４１を備える。線状体１４１は、軸部材１３２の凹部１３５が形成された外周面に凸部（外周ワイヤ１４３）を押圧可能に配置されている。ロック機構１４０は、凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に嵌合していないロック解除状態から、線状体１４１が軸部材１３２の回転軸に直交する方向へ移動することに伴って凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に嵌合することにより、ロック状態に遷移するように構成されている。

　このように、本実施形態の車輪ロックシステム１０では、ロック解除状態から、凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に嵌合することによりロック状態に遷移するように構成されているため、従来の車輪ロックシステムのようにロックピンがロック孔に挿入されることにより車輪の回転が規制される構成と比較して、凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に固着されるおそれを低減することができ、ロック解除に支障が生じることを回避することができる。また、本実施形態の車輪ロックシステム１０では、ロック解除状態から、線状体１４１が軸部材１３２の回転軸に直交する方向へ移動することに伴って凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に嵌合することによりロック状態に遷移するように構成されているため、従来の車輪ロックシステムのようにロックピンが車輪の回転軸に平行な方向に突出することによってロック孔に挿入されることにより車輪の回転が規制される構成と比較して、車輪１３１のロックを行う際の凸部（外周ワイヤ１４３）の移動量を小さくすることができ、車輪１３１のロックに要する力を小さくし、かつ、車輪１３１のロックに要する時間を短くすることができる。

　また、本実施形態の車輪ロックシステム１０では、ロック機構１４０が、凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に嵌合しているロック状態から、線状体１４１が軸部材１３２の回転軸に直交する方向へ移動することに伴って凸部（外周ワイヤ１４３）が凹部１３５に嵌合しなくなることにより、ロック解除状態に遷移するように構成されている。そのため、本実施形態の車輪ロックシステム１０では、車輪１３１のロック解除を行う際の凸部（外周ワイヤ１４３）の移動量を小さくすることができ、車輪１３１のロック解除に要する力を小さくし、かつ、車輪１３１のロック解除に要する時間を短くすることができる。

　また、本実施形態の車輪ロックシステム１０では、ロック機構１４０の線状体１４１は、コアワイヤ１４２と、コアワイヤ１４２の外周に巻かれ、凸部として機能する外周ワイヤ１４３とを有する。そのため、本実施形態の車輪ロックシステム１０によれば、比較的シンプルな構成によって、凸部（外周ワイヤ１４３）と凹部１３５との嵌合／嵌合解除による車輪１３１のロック／ロック解除を実現することができ、車輪ロックシステム１０の製造の容易化や耐久性の向上を実現することができる。特に、本実施形態の車輪ロックシステム１０では、外周ワイヤ１４３が、コアワイヤ１４２の外周に螺旋状に巻き回しされた構成であるため、車輪ロックシステム１０の製造のさらなる容易化や耐久性のさらなる向上を実現することができる。

　また、本実施形態の車輪ロックシステム１０では、軸部材１３２の外周面の少なくとも一部に複数の凹部１３５が形成されており、線状体１４１は、複数の凹部１３５のそれぞれに嵌合可能な複数の凸部（外周ワイヤ１４３の複数の部分）を有する。そのため、本実施形態の車輪ロックシステム１０によれば、より確実な車輪１３１のロックを実現することができる。

Ａ－５．第１実施形態の変形例：
　図１１は、第１実施形態の変形例における操作部１２６の外観構成を示す説明図である。図１１に示す変形例では、操作部１２６が、ダイアル式ではなく、スライドスイッチ式となっている。この変形例では、スライドスイッチをスライドさせる動作に伴い、ロック機構１４０の線状体１４１を構成するコアワイヤ１４２への引張荷重の印加／解除が切り替えられ、その結果、車輪１３１のロック状態／ロック解除状態が切り替えられる。

　図１２は、第１実施形態の他の変形例における操作部１２６の外観構成を示す説明図である。図１２に示す変形例では、操作部１２６が、ダイアル式ではなく、レバー式となっている。この変形例では、レバーを握る／離す動作に伴い、ロック機構１４０の線状体１４１を構成するコアワイヤ１４２への引張荷重の印加／解除が切り替えられ、その結果、車輪１３１のロック状態／ロック解除状態が切り替えられる。

　図１３は、第１実施形態の他の変形例における軸部材１３２周辺の構成を示す説明図である。図１３に示す変形例では、上述した車輪１３１のロック状態においても、車輪１３１の一方の回転方向（図１３の方向Ｒ２）の回転は規制されるが、車輪１３１の他方の回転方向（図１３の方向Ｒ１）の回転は許容される。この変形例では、軸部材１３２の中心軸部材１３３に、外周軸部材１３４（以下、この変形例において「第１の外周軸部材１３４」という。）に加えて、第２の外周軸部材３４が嵌合している。第２の外周軸部材３４は、第１の外周軸部材１３４と略同径であり、第２の外周軸部材３４の外周面には、第１の外周軸部材１３４の外周面と同様に、螺旋状の溝が形成されている。第１の外周軸部材１３４は、中心軸部材１３３に固定されており、中心軸部材１３３と共に回転する。一方、第２の外周軸部材３４は、片方向ベアリングを介して中心軸部材１３３に支持されており、中心軸部材１３３に対して図１３の方向Ｒ１には自由に回転するが、方向Ｒ２には中心軸部材１３３と共にしか回転できない。なお、図示しないが、中心軸部材１３３の両端には、車輪１３１が固定されている。

　図１３のＡ欄は、線状体１４１の凸部として機能する外周ワイヤ１４３が、第１の外周軸部材１３４の外周面に形成された溝（凹部１３５）に嵌合し、中心軸部材１３３（および中心軸部材１３３に固定された車輪１３１）の回転が線状体１４１によって規制されたロック状態である。この状態において、車輪１３１（および車輪１３１に固定された中心軸部材１３３）に方向Ｒ１の回転力が加えられると、図１３のＢ欄に示すように、線状体１４１の凸部（外周ワイヤ１４３）が第１の外周軸部材１３４および第２の外周軸部材３４の溝内を摺動し、線状体１４１が第１の外周軸部材１３４に対向する位置から第２の外周軸部材３４に対向する位置に移動する。この状態では、第２の外周軸部材３４は中心軸部材１３３に対して方向Ｒ１に自由に回転するため、図１３のＣ欄に示すように、上記回転力によって中心軸部材１３３および車輪１３１が回転する。

　また、図１３のＣ欄に示す状態において、車輪１３１（および車輪１３１に固定された中心軸部材１３３）に少しでも方向Ｒ２の回転力が加えられると、第２の外周軸部材３４は中心軸部材１３３と共に回転しようとするため、図１３のＤ欄に示すように、線状体１４１の凸部（外周ワイヤ１４３）が第２の外周軸部材３４および第１の外周軸部材１３４の溝内を摺動し、線状体１４１が第２の外周軸部材３４に対向する位置から第１の外周軸部材１３４に対向する位置に移動する。これにより、方向Ｒ２の車輪１３１の回転が規制される。

　このように、図１３に示す変形例では、車輪１３１のロック状態においても、車輪１３１の一方の回転方向の回転を規制しつつ、車輪１３１の他方の回転方向の回転を許容することができ、車輪ロックシステム１０による車輪１３１のロック態様のバリエーションを増加させることができる。

Ｂ．第２実施形態：
　図１４から図１６は、第２実施形態における車輪ロックシステム１０ａ（キャスター部１３０ａおよびロック機構１４０ａ）の詳細構成を示す斜視図である。以下では、第２実施形態の車輪ロックシステム１０ａの構成のうち、上述した第１実施形態の車輪ロックシステム１０と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。

　第２実施形態におけるキャスター部１３０ａは、第１実施形態と同様に、ボディ１３８と、２つの車輪１３１と、軸部材１３２ａとを備える。軸部材１３２ａは、略円柱状の中心軸部材１３３と、中心軸部材１３３の外周面の一部を覆うように配置された略円筒状の外周軸部材１３４ａとを有する。外周軸部材１３４ａの外周面には、複数の凹部１３５ａが形成されている。ただし、第２実施形態では、外周軸部材１３４ａの外周面に形成された各凹部１３５ａは、ボウル状に形成されている。

　また、第２実施形態にけるロック機構１４０ａは、第１実施形態と同様に、線状体１４１ａと、付勢部材１４４ａとを有する。ただし、第２実施形態では、線状体１４１ａは、コアワイヤ１４２と、コアワイヤ１４２上に形成された球状体１４６とを有する。球状体１４６は、コアワイヤ１４２の先端に接合されている。球状体１４６の径は、外周軸部材１３４ａの外周面に形成された凹部１３５ａの径に合わせて設定されている。すなわち、球状体１４６は、外周軸部材１３４ａの外周面に形成された凹部１３５ａに嵌合可能な凸部として機能する。

　線状体１４１ａの先端部（球状体１４６が配置された部分）は、外周軸部材１３４ａの外周面に対向するようにして、該外周面に球状体１４６を押圧可能に配置されている。また、付勢部材１４４ａは、線状体１４１ａの先端部に接合されて、該先端部を外周軸部材１３４ａの外周面から離間させる方向に付勢している。

　ロック機構１４０ａは、線状体１４１ａの凸部として機能する球状体１４６が、軸部材１３２ａの外周軸部材１３４ａの外周面に形成された凹部１３５ａに嵌合していない状態、すなわち、軸部材１３２ａ（および軸部材１３２ａに固定された車輪１３１）の回転が許容された状態（ロック解除状態）と、線状体１４１ａの凸部として機能する球状体１４６が、該凹部１３５ａに嵌合している状態、すなわち、軸部材１３２ａ（および軸部材１３２ａに固定された車輪１３１）の回転が線状体１４１ａによって規制された状態（ロック状態）との間で切り替わるように構成されている。

　図１７は、第２実施形態におけるロック解除状態の車輪ロックシステム１０ａの一部の構成を示す側面図であり、図１８は、第２実施形態におけるロック状態の車輪ロックシステム１０ａの一部の構成を示す側面図である。ロック解除状態（図１５および図１７）において、線状体１４１ａを構成するコアワイヤ１４２が、第１実施形態と同様の操作部１２６の動作に伴い引張荷重を受けると、図１６および図１８に示すように、線状体１４１ａの先端部（球状体１４６が配置された部分）が付勢部材１４４ａによる付勢力に抗って軸部材１３２ａの外周軸部材１３４ａの外周面に接近する。その結果、凸部としての球状体１４６が外周軸部材１３４ａの外周面に形成された凹部１３５ａに嵌合してロック状態となる。すなわち、ロック機構１４０ａは、凸部（球状体１４６）が凹部１３５ａに嵌合していないロック解除状態から、線状体１４１ａが軸部材１３２ａの回転軸に直交する方向（図１７および図１８の紙面内方向）へ移動することに伴って凸部（球状体１４６）が凹部１３５ａに嵌合することにより、ロック状態に遷移するように構成されている。なお、このときの線状体１４１ａの移動方向は、おおよそ外周軸部材１３４ａの外周面の接線方向に一致する。

　反対に、ロック状態（図１６および図１８）において、線状体１４１ａを構成するコアワイヤ１４２が、第１実施形態と同様の操作部１２６の動作に伴い引張荷重を受けなくなると、図１５および図１７に示すように、線状体１４１ａの先端部（球状体１４６が配置された部分）が付勢部材１４４ａによる付勢力によって軸部材１３２ａの外周軸部材１３４ａの外周面から離間する。その結果、凸部としての球状体１４６が外周軸部材１３４ａの外周面に形成された凹部１３５ａに嵌合していないロック解除状態となる。すなわち、ロック機構１４０ａは、凸部（球状体１４６）が凹部１３５ａに嵌合しているロック状態から、線状体１４１ａが軸部材１３２ａの回転軸に直交する方向（図１７および図１８の紙面内方向）へ移動することに伴って凸部（球状体１４６）が凹部１３５ａに嵌合しなくなることにより、ロック解除状態に遷移するように構成されている。

　以上説明したように、第２実施形態の車輪ロックシステム１０ａは、第１実施形態の車輪ロックシステム１０と同様に、ロック機構１４０ａが、凸部（球状体１４６）が凹部１３５ａに嵌合していないロック解除状態から、線状体１４１ａが軸部材１３２ａの回転軸に直交する方向へ移動することに伴って凸部（球状体１４６）が凹部１３５ａに嵌合することにより、ロック状態に遷移するように構成されているため、凸部（球状体１４６）が凹部１３５ａに固着されるおそれを低減することができ、ロック解除に支障が生じることを回避することができる。また、車輪１３１のロックを行う際の凸部（球状体１４６）の移動量を小さくすることができ、車輪１３１のロックに要する力を小さくし、かつ、車輪１３１のロックに要する時間を短くすることができる。

　また、第２実施形態の車輪ロックシステム１０ａでは、ロック機構１４０ａの線状体１４１ａは、コアワイヤ１４２と、コアワイヤ１４２上に形成され、凸部として機能する球状体１４６とを有する。そのため、第２実施形態の車輪ロックシステム１０ａによれば、比較的シンプルな構成によって、凸部（球状体１４６）と凹部１３５ａとの嵌合／嵌合解除による車輪１３１のロック／ロック解除を実現することができ、車輪ロックシステム１０ａの製造の容易化や耐久性の向上を実現することができる。

　図１９は、第２実施形態の変形例における車輪ロックシステム１０ａの構成を示す説明図である。図１９に示す変形例では、線状体１４１ａが、コアワイヤ１４２上に形成された複数の（図１９の例では３個の）球状体１４６を有する。各球状体１４６のピッチは、外周軸部材１３４ａの外周面に形成された凹部１３５ａのピッチに合わせて設定されている。すなわち、複数の球状体１４６のそれぞれは、外周軸部材１３４ａの外周面に形成された複数の凹部１３５ａのそれぞれに嵌合可能な凸部として機能する。図１９に示す変形例では、軸部材１３２ａの外周面の少なくとも一部に複数の凹部１３５ａが形成されており、線状体１４１ａは、複数の凹部１３５ａのそれぞれに嵌合可能な複数の凸部（複数の球状体１４６）を有するため、より確実な車輪１３１のロックを実現することができる。

Ｃ．第３実施形態：
　図２０から図２２は、第３実施形態における車輪ロックシステム１０ｂ（キャスター部１３０ｂおよびロック機構１４０ｂ）の詳細構成を示す斜視図である。以下では、第３実施形態の車輪ロックシステム１０ｂの構成のうち、上述した第１実施形態の車輪ロックシステム１０と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。

　第３実施形態におけるキャスター部１３０ｂは、第１実施形態と同様に、ボディ１３８と、２つの車輪１３１と、軸部材１３２ｂとを備える。軸部材１３２ｂは、略円柱状の中心軸部材１３３と、中心軸部材１３３の外周面の一部を覆うように配置された略円筒状の外周軸部材１３４ｂとを有する。外周軸部材１３４ｂの外周面には、複数の凹部１３５ｂが形成されている。ただし、第３実施形態では、外周軸部材１３４ｂの外周面の全周にわたって複数の歯が形成されており、その結果、外周軸部材１３４ｂの外周面の全周にわたって複数の凹部１３５ｂが形成されている。

　また、第３実施形態にけるロック機構１４０ｂは、線状体１４１ｂを有する。ただし、第３実施形態では、線状体１４１ｂは、コアワイヤ１４２と、コアワイヤ１４２の端部に接合されたラック部材１４８とを有する。ラック部材１４８の一側面には、外周軸部材１３４ｂの外周面と噛み合う複数の歯１４９が形成されている。すなわち、ラック部材１４８の歯１４９は、外周軸部材１３４ｂの外周面に形成された凹部１３５ｂに嵌合可能な凸部として機能する。

　線状体１４１ｂの先端部（ラック部材１４８が配置された部分）は、外周軸部材１３４ｂの外周面に対向するようにして、該外周面にラック部材１４８の上記一側面を押圧可能に配置されている。すなわち、ラック部材１４８は可撓性を有しており、コアワイヤ１４２に引張荷重が作用していないときには、ラック部材１４８は外周軸部材１３４ｂの外周面から離間しているが、コアワイヤ１４２に引張荷重が作用すると、ラック部材１４８が弾性変形してラック部材１４８の歯１４９と外周軸部材１３４ｂの凹部１３５ｂとが嵌合するように構成されている。なお、ラック部材１４８は可撓性を有することから、ラック部材１４８の歯１４９の歯形や複数の歯１４９間の位置関係は、ラック部材１４８の変形に応じて変化し得る。そのため、本実施形態では、外周軸部材１３４ｂの外周面の歯形は、一般的なインボリュート曲線を用いた歯形ではなく、ラック部材１４８の変形後の歯１４９に合わせて設計した歯形としている。また、ラック部材１４８の歯１４９や外周軸部材１３４ｂの外周面の歯の角部に、Ｒを設けてもよい。

　ロック機構１４０ｂは、線状体１４１ｂの凸部として機能するラック部材１４８の歯１４９が、軸部材１３２ｂの外周軸部材１３４ｂの外周面に形成された凹部１３５ｂに嵌合していない状態、すなわち、軸部材１３２ｂ（および軸部材１３２ｂに固定された車輪１３１）の回転が許容された状態（ロック解除状態）と、線状体１４１ｂの凸部として機能するラック部材１４８の歯１４９が、該凹部１３５ｂに嵌合している状態、すなわち、軸部材１３２ｂ（および軸部材１３２ｂに固定された車輪１３１）の回転が線状体１４１ｂによって規制された状態（ロック状態）との間で切り替わるように構成されている。

　図２３は、第３実施形態におけるロック解除状態の車輪ロックシステム１０ｂの一部の構成を示す側面図であり、図２４は、第３実施形態におけるロック状態の車輪ロックシステム１０ｂの一部の構成を示す側面図である。ロック解除状態（図２１および図２３）において、線状体１４１ｂを構成するコアワイヤ１４２が、第１実施形態と同様の操作部１２６の動作に伴い引張荷重を受けると、図２２および図２４に示すように、線状体１４１ｂの先端部（ラック部材１４８が配置された部分）が弾性変形して軸部材１３２ｂの外周軸部材１３４ｂの外周面に接近する。その結果、凸部としてのラック部材１４８の歯１４９が外周軸部材１３４ｂの外周面に形成された凹部１３５ｂに嵌合してロック状態となる。すなわち、ロック機構１４０ｂは、凸部（ラック部材１４８の歯１４９）が凹部１３５ｂに嵌合していないロック解除状態から、線状体１４１ｂが軸部材１３２ｂの回転軸に直交する方向（図２３および図２４の紙面内方向）へ移動することに伴って凸部（ラック部材１４８の歯１４９）が凹部１３５ｂに嵌合することにより、ロック状態に遷移するように構成されている。なお、このときの線状体１４１ｂの移動方向は、おおよそ外周軸部材１３４ｂの外周面の接線方向に一致する。

　反対に、ロック状態（図２２および図２４）において、線状体１４１ｂを構成するコアワイヤ１４２が、第１実施形態と同様の操作部１２６の動作に伴い引張荷重を受けなくなると、図２１および図２３に示すように、線状体１４１ｂの先端部（ラック部材１４８が配置された部分）が初期状態に戻るように変形して軸部材１３２ｂの外周軸部材１３４ｂの外周面から離間する。その結果、凸部としてのラック部材１４８の歯１４９が外周軸部材１３４ｂの外周面に形成された凹部１３５ｂに嵌合していないロック解除状態となる。すなわち、ロック機構１４０ｂは、凸部（ラック部材１４８の歯１４９）が凹部１３５ｂに嵌合しているロック状態から、線状体１４１ｂが軸部材１３２ｂの回転軸に直交する方向（図２３および図２４の紙面内方向）へ移動することに伴って凸部（ラック部材１４８の歯１４９）が凹部１３５ｂに嵌合しなくなることにより、ロック解除状態に遷移するように構成されている。

　以上説明したように、第３実施形態の車輪ロックシステム１０ｂは、第１実施形態の車輪ロックシステム１０と同様に、ロック機構１４０ｂが、凸部（ラック部材１４８の歯１４９）が凹部１３５ｂに嵌合していないロック解除状態から、線状体１４１ｂが軸部材１３２ｂの回転軸に直交する方向へ移動することに伴って凸部（ラック部材１４８の歯１４９）が凹部１３５ｂに嵌合することにより、ロック状態に遷移するように構成されているため、凸部（ラック部材１４８の歯１４９）が凹部１３５ｂに固着されるおそれを低減することができ、ロック解除に支障が生じることを回避することができる。また、車輪１３１のロックを行う際の凸部（ラック部材１４８の歯１４９）の移動量を小さくすることができ、車輪１３１のロックに要する力を小さくし、かつ、車輪１３１のロックに要する時間を短くすることができる。

　また、第３実施形態の車輪ロックシステム１０ｂでは、ロック機構１４０ｂの線状体１４１ｂは、コアワイヤ１４２と、コアワイヤ１４２の端部に接合され、凸部として機能する複数の歯１４９が形成されたラック部材１４８とを有する。そのため、第３実施形態の車輪ロックシステム１０ｂによれば、比較的シンプルな構成によって、凸部（ラック部材１４８の歯１４９）と凹部１３５ｂとの嵌合／嵌合解除による車輪１３１のロック／ロック解除を実現することができ、車輪ロックシステム１０ｂの製造の容易化や耐久性の向上を実現することができる。

　また、第３実施形態の車輪ロックシステム１０ｂでは、軸部材１３２ｂの外周面の少なくとも一部に複数の凹部１３５ｂが形成されており、線状体１４１ｂは、複数の凹部１３５ｂのそれぞれに嵌合可能な複数の凸部（ラック部材１４８の歯１４９）を有するため、より確実な車輪１３１のロックを実現することができる。

Ｄ．変形例：
　本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。

　上記実施形態におけるスーツケース１００の構成や、スーツケース１００が備える車輪ロックシステム１０の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、スーツケース１００に４つのキャスター部１３０が取り付けられているが、スーツケース１００に取り付けられるキャスター部１３０の個数は、３つ以下であってもよいし、５つ以上であってもよい。また、上記実施形態では、各キャスター部１３０が２つの車輪１３１を備えているが、各キャスター部１３０が備える車輪１３１の個数は、１つであってもよいし、３つ以上であってもよい。

　上記実施形態では、操作部１２６がハンドル部１２０に設置されているが、操作部１２６の設置位置は他の位置でもよい。操作部１２６の設置位置に応じて、ロック機構１４０を構成する線状体１４１（コアワイヤ１４２）の設置位置も変更され得る。

　上記第１実施形態では、線状体１４１は、コアワイヤ１４２と、コアワイヤ１４２の外周に螺旋状に巻き回しされた外周ワイヤ１４３とから構成されているが、線状体１４１が、コアワイヤ１４２と、コアワイヤ１４２の外周に螺旋状以外の巻き方で巻かれた１本または複数本の外周ワイヤとから構成されていてもよい。

　上記第１実施形態の変形例（図１３）は、ロック機構１４０による車輪１３１のロック状態においても、車輪１３１の一方の回転方向の回転を規制しつつ、車輪１３１の他方の回転方向の回転を許容することができる構成を有しているが、該構成が、ロック機構１４０から独立して単独で利用されてもよい。すなわち、該変形例において車輪１３１のロック状態とされる状態に固定され（ロック解除状態へ切り替える構成を有さず）、車輪１３１の一方の回転方向の回転を規制しつつ、車輪１３１の他方の回転方向の回転を許容することができる構成として、単独で利用することが可能である。

　上記実施形態では、車輪ロックシステム１０をスーツケース１００に適用した例について説明したが、本明細書に開示される車輪ロックシステム１０は、他の搬送体にも適用可能である。図２５は、本明細書に開示される車輪ロックシステム１０を適用した台車２００の構成を示す説明図である。台車２００は、床面に沿って搬送される搬送体であり、本体部２１０と、ハンドル部２２０と、車輪ロックシステム１０（キャスター部１３０およびロック機構１４０）とを備える。台車２００に設けられた車輪ロックシステム１０の構成は、上記実施形態の車輪ロックシステム１０の構成と同様である。なお、図２６に示すように、台車２００のハンドル部２２０には、上記実施形態と同様の構成の操作部１２６が取り付けられている。

　また、図２７は、本明細書に開示される車輪ロックシステム１０を適用したストレッチャー３００の構成を示す説明図である。ストレッチャー３００は、床面に沿って搬送される搬送体であり、本体部３１０と、ハンドル部３２０と、車輪ロックシステム１０（キャスター部１３０およびロック機構１４０）とを備える。ストレッチャー３００に設けられた車輪ロックシステム１０の構成は、上記実施形態の車輪ロックシステム１０の構成と同様である。なお、ストレッチャー３００のハンドル部３２０には、上記実施形態と同様の構成の操作部１２６が取り付けられている。

１０：車輪ロックシステム　２１：筐体　２１Ｘ，２１Ｙ：突起部　２２：蓋体　２３：ダイアル　２３Ｘ，２３Ｙ：孔　２４：ピニオン　２５：ラック　２６：位置決め部材　３４：第２の外周軸部材　１００：スーツケース　１１０：本体部　１２０：ハンドル部　１２２：グリップ部　１２２Ｌ：下部グリップ部　１２２Ｕ：上部グリップ部　１２４：ポール部　１２６：操作部　１３０：キャスター部　１３１：車輪　１３１ｉ：内側車輪　１３１ｏ：外側車輪　１３２：軸部材　１３３：中心軸部材　１３４：外周軸部材　１３５：凹部　１３８：ボディ　１３９：支軸　１４０：ロック機構　１４１：線状体　１４２：コアワイヤ　１４３：外周ワイヤ　１４４：付勢部材　１４５：係止部材　１４６：球状体　１４８：ラック部材　１４９：歯　２００：台車　２１０：本体部　２２０：ハンドル部　３００：ストレッチャー　３１０：本体部　３２０：ハンドル部

Claims

　車輪ロックシステムであって、
　ボディと、
　回転軸廻りに回転可能に前記ボディに支持され、前記回転軸廻りの外周面の少なくとも一部に凹部が形成された軸部材と、
　前記軸部材に固定されて前記軸部材と共に回転する車輪と、
　前記車輪の回転を許容するロック解除状態と、前記車輪の回転を規制するロック状態と、の間で切り替わるロック機構と、
を備え、
　前記ロック機構は、凸部を有する線状体を有し、前記線状体は、前記軸部材の前記凹部が形成された前記外周面に前記凸部を押圧可能に配置され、前記凸部が前記凹部に嵌合していない前記ロック解除状態から、前記線状体が前記軸部材の前記回転軸に直交する方向へ移動することに伴って前記凸部が前記凹部に嵌合することにより、前記ロック状態に遷移するように構成されている、車輪ロックシステム。
　請求項１に記載の車輪ロックシステムであって、
　前記ロック機構は、前記凸部が前記凹部に嵌合している前記ロック状態から、前記線状体が前記軸部材の前記回転軸に直交する方向へ移動することに伴って前記凸部が前記凹部に嵌合しなくなることにより、前記ロック解除状態に遷移するように構成されている、車輪ロックシステム。
　請求項１または請求項２に記載の車輪ロックシステムであって、
　前記軸部材の前記外周面の少なくとも一部には、複数の前記凹部が形成されており、
　前記線状体は、複数の前記凹部のそれぞれに嵌合可能な複数の前記凸部を有する、車輪ロックシステム。
　請求項１から請求項３までのいずれか一項に記載の車輪ロックシステムであって、
　前記線状体は、
　　コアワイヤと、
　　前記コアワイヤの外周に巻かれ、前記凸部として機能する外周ワイヤと、
を有する、車輪ロックシステム。
　請求項４に記載の車輪ロックシステムであって、
　前記外周ワイヤは、前記コアワイヤの外周に螺旋状に巻き回しされている、車輪ロックシステム。
　請求項１から請求項３までのいずれか一項に記載の車輪ロックシステムであって、
　前記線状体は、
　　コアワイヤと、
　　前記コアワイヤ上に形成され、前記凸部として機能する球状体と、
を有する、車輪ロックシステム。
　請求項１から請求項３までのいずれか一項に記載の車輪ロックシステムであって、
　前記線状体は、
　　コアワイヤと、
　　前記コアワイヤの端部に接合され、前記凸部として機能する複数の歯が形成されたラック部材と、
を有する、車輪ロックシステム。
　請求項１から請求項７までのいずれか一項に記載の車輪ロックシステムと、
　底部に前記車輪ロックシステムの前記ボディが取り付けられた本体部と、
を備える、搬送体。