WO2022085528A1 - ワイヤハーネス及びワイヤハーネス一体モジュール - Google Patents

Abstract

本開示の一態様は、取付作業の簡易化を可能にしたワイヤハーネス及びワイヤハーネス一体モジュールを提供する。本開示の一態様に従うワイヤハーネスの電線（５）は、複数の固定部（９）を介して取付対象（３）に取り付け固定されている。固定部（９）は、電線（５）を取付対象（３）に取り付ける前の隣同士の間隔である第１寸法（Ｗ１）よりも、電線（５）を取付対象（３）に取り付けた後の隣同士の間隔である第２寸法（Ｗ２）の方が小さくなる配置をとるように、電線（５）を取付対象（３）に固定する。経路規制部（１８）は、取付対象（３）に取り付けられた際の電線（５）の形状を撓み形状とするように、電線（５）の撓みの経路を規制する。

Description

ワイヤハーネス及びワイヤハーネス一体モジュール

　本開示は、ワイヤハーネス及びワイヤハーネス一体モジュールに関する。

　従来、車両には、種々の電装品が搭載され、これら電装品がワイヤハーネスによって電気接続されている。この種のワイヤハーネスは、例えば、複数のクランプ部材を介して車体に取り付けられている（特許文献１等参照）。特許文献１では、ワイヤハーネスは、ワイヤハーネス配策経路の曲げ形状に対応して折り曲げた状態で車体に取り付けられている。曲げられたワイヤハーネスは、曲げ剛性によって形状を維持する。

特開２０１２－１１５０２３号公報

　しかし、ワイヤハーネスを曲げて車体に取り付ける場合、作業者が自らワイヤハーネスを折り曲げなくてはならないので、取付作業が面倒であった。
　本発明の目的は、取付作業の簡易化を可能にしたワイヤハーネス及びワイヤハーネス一体モジュールを提供することにある。

　本開示の一態様に従うワイヤハーネスは、電線を取付対象に取り付ける前の隣同士の間隔である第１寸法よりも、前記電線を前記取付対象に取り付けた後の隣同士の間隔である第２寸法の方が小さくなる配置をとるように、前記電線を前記取付対象に固定する複数の固定部と、前記取付対象に取り付けられた際の前記電線の形状を撓み形状とするように、前記電線の撓みの経路を規制する経路規制部とを備えた。

　本開示の一態様に従うワイヤハーネス一体モジュールは、ボディに設けられたインナーライニングに配策される電線と、前記インナーライニングにおける前記電線の取付箇所として設けられ、前記電線が取り付けられた際の前記電線の形状を撓み形状とするように、前記電線の撓みの経路を規制する複数の経路規制部と、前記電線を前記経路規制部に取り付け固定する固定部とを備えた。

　本発明によれば、電線の取付作業を簡易化できる。

図１は、第１実施形態のワイヤハーネスの配策例を示す模式図である。 図２は、固定部の斜視図である。 図３は、固定部の断面図である。 図４（ａ）～図４（ｆ）は、経路規制部の形成パターンを示す例示図である。 図５は、固定部が取り付けられたワイヤハーネスの概要図である。 図６は、取付対象に取り付けられたワイヤハーネスの概要図である。 図７は、ワイヤハーネスに荷重が加わった際の作用図である。 図８は、ワイヤハーネスに振動が発生した際の作用図である。 図９は、第２実施形態のドアモジュールの模式図である。 図１０は、ドアモジュールの部分断面図である。 図１１は、電線の固定方法の一例を示す正面図である。 図１２は、電線の固定方法の一例を示す正面図である。 図１３は、電線の固定方法の一例を示す説明図である。 図１４は、電線の固定方法の一例を示す部分断面図である。 図１５は、電線の固定方法の一例を示す説明図である。 図１６は、電線の固定方法の一例を示す説明図である。 図１７は、電線の固定方法の一例を示す説明図である。 図１８は、電線の固定方法の一例を示す説明図である。 図１９（ａ）、図１９（ｂ）は、電線の固定方法の一例を示す説明図である。 図２０（ａ）、図２０（ｂ）は、電線の固定方法の一例を示す説明図である。

　最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
　［１］本開示のワイヤハーネスは、電線を取付対象に取り付ける前の隣同士の間隔である第１寸法よりも、前記電線を前記取付対象に取り付けた後の隣同士の間隔である第２寸法の方が小さくなる配置をとるように、前記電線を前記取付対象に固定する複数の固定部と、前記取付対象に取り付けられた際の前記電線の形状を撓み形状とするように、前記電線の撓みの経路を規制する経路規制部とを備えた。

　本例の構成によれば、電線を複数の固定部によって取付対象に取り付ける場合、固定部の隣同士の間隔、及び、経路規制部の形状によって、電線が自ら撓み形状をとる状態で取付対象に組み付く。このため、取付対象への電線の取り付けにおいて電線を撓み形状とするにあたり、作業者が自ら手作業で曲げる作業を必要としない。よって、取付作業を簡易化することが可能となる。

　［２］前記撓み形状は、前記取付対象から離間する方向に飛び出した形状であることが好ましい。この構成によれば、電線を取付対象に取り付けたとき、電線を取付対象から離した状態としておくことが可能となる。よって、電線及び取付対象の接触が少なく抑えられるので、外傷等の発生を生じ難くすることが可能となる。

　［３］前記撓み形状は、円弧状のアーチ形状であることが好ましい。この構成によれば、撓み形状をバランスのよい形状とすることが可能となるので、電線に付与される振動を効率よく抑制することが可能となる。

　［４］前記固定部は、前記電線を保持する保持部と、前記取付対象に係合される係合部とを有することが好ましい。この構成によれば、固定部の形状を、保持部で電線をしっかりと保持しつつ、係合部を取付対象に係合する形状とすることが可能となる。

　［５］前記経路規制部は、前記固定部において前記電線を保持する保持部の両側に配置されることによって少なくとも２つ設けられていることが好ましい。この構成によれば、固定部の両側に配設された経路規制部によって、固定部の両側で電線の経路を規定することが可能となる。よって、電線の配策の経路を所望のパターンに設定し易くすることが可能となる。

　［６］前記経路規制部は、前記固定部に一体に形成されていることが好ましい。この構成によれば、固定部及び経路規制部を別々に管理する必要がないので、部品の取り扱いをし易くすることが可能となる。

　［７］前記経路規制部は、前記固定部とは別体に形成されていることが好ましい。この構成によれば、部品の設計自由度が増す。
　［８］本開示のワイヤハーネス一体モジュールは、ボディに設けられたインナーライニングに配策される電線と、前記インナーライニングにおける前記電線の取付箇所として設けられ、前記電線が取り付けられた際の前記電線の形状を撓み形状とするように、前記電線の撓みの経路を規制する複数の経路規制部と、前記電線を前記経路規制部に取り付け固定する固定部とを備えた。

　本例の構成によれば、電線を複数の固定部によってインナーライニングに取り付ける場合、経路規制部の隣同士の間隔、及び、経路規制部の形状によって、電線が自ら撓み形状をとる状態でインナーライニングに組み付く。このため、インナーライニングへの電線の取り付けにおいて電線を撓み形状とするにあたり、作業者が自ら手作業で曲げる作業を必要としない。よって、取付作業を簡易化することが可能となる。

　［９］前記経路規制部は、前記インナーライニングの一部分に設けられた凹部であることが好ましい。この構成によれば、経路規制部の形状を単なる凹状の簡素な形状とすることが可能となる。

　［本開示の実施形態の詳細］
　本開示のワイヤハーネス及びワイヤハーネス一体モジュールの具体例であるドアモジュールを、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。

　（第１実施形態）
　図１に示すように、車両の電装品１を電源やＥＣＵ（Electronic Control Unit）に電気接続するワイヤハーネス２は、車両に設けられた取付対象３に取り付け固定されている。取付対象３は、例えば、車両ドア４である。ワイヤハーネス２は、電気を通す単数又は複数の電線５を備えている。電線５は、ハーネス途中で分岐された配線構造をとっている。電線５は、取付対象３に設けられたコネクタ６を介して電装品１に電気接続されている。電装品１は、例えば、ドアロック装置、各種モータ、スピーカ等である。

　ワイヤハーネス２は、電線５を取付対象３に取り付け固定する複数の固定部９を備えている。このように、本例の電線５は、複数の固定部９を介して取付対象３に取り付け固定されている。固定部９は、例えば、弾性体であることが好ましい。弾性体は、例えば、ゴム材である。弾性体の固定部９は、例えば、取付対象３への組み付けにおいて、多少の形状変更を許容する。

　図２に示すように、固定部９は、電線５を保持する保持部１０と、電線５の取付け先である取付対象３に係合される係合部１１と、保持部１０及び係合部１１を連結する連結部１２とを備えている。保持部１０は、例えば、筒部、クランプ、又は、タイバンドなどである。保持部１０は、１又は複数の電線５を保持する。

　係合部１１は、本体部１３と、本体部１３から突出した突部１４とを備えている。突部１４は、先端に向かうに従って先細りとなる形状であって、例えば、略円錐状をなしている。突部１４の側面には、複数（本例は２つ）の突起１５が設けられている。突起１５は、２つ設けられる場合、突部１４の径方向において対向する位置に配置されている。

　連結部１２は、固定部９の平面方向（図２のＸ－Ｚ軸平面）において保持部１０及び係合部１１よりも小さい形状となっている。また、連結部１２は、固定部９の高さ方向（図２のＺ軸方向）において保持部１０及び係合部１１の各々よりも小さい形状となっている。

　図２及び図３に示すように、ワイヤハーネス２は、電線５を固定部９によって取付対象３に取り付けた際の電線５の配策経路を規制して電線５を特定方向に向ける経路規制部１８を備えている。経路規制部１８は、例えば、固定部９と一体に設けられている。経路規制部１８は、取付対象３に取り付けられた際の電線５の形状を撓み形状とするように、電線５の撓みの経路を規制する。経路規制部１８は、例えば、固定部９において電線５を保持する保持部１０の両側に配置されることによって２つ設けられている。本例の場合、一方の経路規制部１８を第１経路規制部１８ａとし、他方の経路規制部１８を第２経路規制部１８ｂとする。

　図４に、経路規制部１８の形成パターンを図示する。経路規制部１８は、第１経路規制部１８ａ及び第２経路規制部１８ｂの配置パターンとして、例えば、図４（ａ）～図４（ｆ）の６種類が挙げられる。なお、ここでは、保持部１０への電線５の挿込方向を「挿し込み方向Ａ」とする。また、挿し込み方向Ａに対して直交する方向において、一方の方向を第１方向Ｂ１とし、他方の方向を第２方向Ｂ２とする。

　図４（ａ）の例は、第１経路規制部１８ａ及び第２経路規制部１８ｂの両方が挿し込み方向Ａに沿って延びる形状となっている。図４（ｂ）の例は、第１経路規制部１８ａ及び第２経路規制部１８ｂの両方が第１方向Ｂ１に傾く形状となっている。図４（ｃ）の例は、第１経路規制部１８ａが第１方向Ｂ１に傾き、第２経路規制部１８ｂが挿し込み方向Ａに沿って延びる形状となっている。図４（ｄ）の例は、第１経路規制部１８ａが挿し込み方向Ａに沿って延び、第２経路規制部１８ｂが第２方向Ｂ２に傾く形状となっている。図４（ｅ）の例は、第１経路規制部１８ａが第２方向Ｂ２に傾き、第２経路規制部１８ｂが挿し込み方向Ａに沿って延びる形状となっている。図４（ｆ）の例は、第１経路規制部１８ａ及び第２経路規制部１８ｂの両方が第２方向Ｂ２に傾く形状となっている。

　固定部９は、図４（ａ）～図４（ｆ）のうち、電線５の配策方向に応じた形状のものが適宜選択されて使用される。なお、図１の例では、図４（ｂ）の固定部９が２つ、図４（ｄ）の固定部９が１つ使用されて、電線５が取付対象３に固定されている。

　図５に示すように、電線５が固定部９の保持部１０に通された際、電線５は、経路規制部１８によって配策方向が規定される。図５の場合、電線５は、経路規制部１８の延設方向（同図の矢印Ｃ方向）に経路が案内されて規定される。

　図５及び図６に示すように、固定部９は、電線５を取付対象３に取り付ける前の隣同士の間隔である第１寸法Ｗ１（図５参照）よりも、電線５を取付対象３に取り付けた後の隣同士の間隔である第２寸法Ｗ２（図６参照）の方が小さくなる配置をとっている。第１寸法Ｗ１は、電線５が固定部９を介して取付対象３に取り付け固定された際に、電線５が所望の高さの撓み形状（アーチ形状）をとることが可能な値に設定されている。すなわち、固定部９の配置間隔は、電線５に持たせたい所望の撓み形状の高さに応じて適宜設定される。

　図６に示すように、電線５は、固定部９によって取付対象３の孔１９に取り付けられた際、経路規制部１８によって配策が案内されて撓み形状をとる。撓み形状は、取付対象３から離間する方向に飛び出した形状である。本例の場合、撓み形状は、円弧状のアーチ形状である。電線５は、固定部９によって取付対象３の孔１９に取り付けられる際、固定部９が取付対象３に嵌め込まれる際に、自然に撓み形状（アーチ形状）をとる。

　次に、本実施形態のワイヤハーネス２の作用について説明する。
　図７に示すように、例えば、電線５に上から荷重が加えられた例を挙げる。本例の場合、電線５は、撓み形状をとるように取付対象３に取り付け固定されているので、曲げ剛性が加わった状態で取付対象３に固定されていることになる。すなわち、曲げ剛性によって形状が維持されるように電線５が取付対象３に取り付けられる。このため、電線５に上から荷重が加えられたとしても、曲げの剛性力Ｆの上方向成分Ｆ１によって、振動が抑制される。よって、電線５に振動を生じ難くすることが可能となる。

　図８に、例えば、電線５に振動が付与された例を挙げる。本例の場合、電線５が撓み形状をとっているので、電線５に曲げ剛性が働き、変形が生じ難くなっている。このため、電線５に振動が付与されても、撓み形状をとっている電線５の曲げ剛性が利いて、上側方向及び下側方向への変形は生じ難くなる。また、電線５の振動時には、固定部９からの反力が利くので、下側方向への振動を少なく抑えることも可能となる。

　上記実施形態のワイヤハーネス２によれば、以下のような効果を得ることができる。
　（１）ワイヤハーネス２の複数の固定部９は、電線５を取付対象３に取り付ける前の隣同士の間隔である第１寸法Ｗ１よりも、電線５を取付対象３に取り付けた後の隣同士の間隔である第２寸法Ｗ２の方が小さくなる配置をとるように、電線５を取付対象３に固定する。ワイヤハーネス２の経路規制部１８は、取付対象３に取り付けられた際の電線５の形状を撓み形状とするように、電線５の撓みの経路を規制する。

　本例の構成によれば、電線５を複数の固定部９によって取付対象３に取り付け固定する場合、固定部９の隣同士の間隔、及び、経路規制部１８の形状によって、電線５が自ら撓み形状をとる状態で取付対象３に組み付く。このため、取付対象３への電線５の取り付けにおいて電線５を撓み形状とするにあたり、作業者が自ら手作業で曲げる作業を必要としない。よって、取り付け作業を簡易化することができる。

　（２）撓み形状は、取付対象３から離間する方向に飛び出した形状である。この構成によれば、電線５を取付対象３に取り付けたとき、電線５を取付対象３から離した状態としておくことが可能となる。よって、取付対象３及び電線５の接触が少なく抑えられるので、外傷や屈曲などの発生を生じ難くすることが可能となる。

　（３）電線５を取付対象３に接触し難くした場合、外傷や屈曲のおそれが軽減されるため、外装部材のないワイヤハーネス２を使用することもできる。よって、電線５ひいてはワイヤハーネス２の部品コストを低く抑えることに繋がる。

　（４）耐振動性の高いワイヤハーネス２となるので、固定部９の数を減らすことに繋がる。また、固定部９の数が少なく済めば、固定部９の取り付けに要する作業が減るので、取り付け作業の簡易化に一層寄与する。

　（５）電線５の撓み形状を、取付対象３から離間する方向に飛び出した形状とした場合、電線５を取付対象３に近づけて配置することが可能となる。よって、取付対象３から電線５までの厚みを小さく抑えることができる。

　（６）撓み形状は、円弧状のアーチ形状である。この構成によれば、撓み形状をバランスのよい形状とすることが可能となるので、電線５に付与される振動を効率よく抑制することができる。

　（７）固定部９は、電線５を保持する保持部１０と、取付対象３に係合される係合部１１とを有する。この構成によれば、固定部９の形状を、保持部１０で電線５をしっかり保持しつつ、係合部１１を取付対象３に強く係合する形状とすることができる。

　（８）経路規制部１８は、固定部９において電線５を保持する保持部１０の両側に配置されることによって少なくとも２つ設けられている。この構成によれば、固定部９の両側に配置された経路規制部１８によって、固定部９の両側で電線５の経路を規定することが可能となる。よって、電線５の配策の経路を所望のパターンに設定し易くすることができる。

　（９）経路規制部１８は、固定部９に一体に形成されている。この構成によれば、固定部９及び経路規制部１８を別々に管理する必要がないので、部品の取り扱いをし易くすることができる。

　（第２実施形態）
　次に、第２実施形態を説明する。なお、第２実施形態は、第１実施形態に記載の電線５の固定方法を変更した実施例である。よって、第１実施形態と同一部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。

　図９及び図１０に示すように、車両ドア４は、ワイヤハーネス２を有するドアモジュール２３を備えている。図１０に示すように、ドアモジュール２３は、車両ドア４の本体部分となるドアボディ２４と、車両ドア４の内装品である１又は複数のドアインナートリム２５とを備えている。ドアインナートリム２５は、ドアボディ２４の内壁面に取り付け固定されている。なお、ドアモジュール２３がワイヤハーネス一体モジュールに相当し、ドアボディ２４がボディに相当し、ドアインナートリム２５がインナーライニングに相当する。

　ドアモジュール２３は、ドアボディ２４に設けられたドアインナートリム２５に配策される電線５と、電線５の撓みの経路を規制する複数の経路規制部２８と、電線５を経路規制部２８に取り付け固定する固定部２９とを備えている。経路規制部２８は、電線５の取付箇所として設けられ、電線５が取り付けられた際の電線５の形状を撓み形状とするように、電線５の撓みの経路を規制する。本例の場合、経路規制部２８は、例えば、ドアインナートリム２５の一部分に設けられた凹部である。

　図１１及び図１２に、経路規制部２８の具体的な形状を図示する。図１１に示すように、経路規制部２８の一例は、ドアインナートリム２５に形成された丸穴状凹部２８ａである。また、図１２に示すように、経路規制部２８の他の一例は、ドアインナートリム２５に形成された多角穴状凹部２８ｂである。なお、以降の説明では、経路規制部２８を丸穴状凹部２８ａとした例で説明する。

　図１３～図２０に、電線５を経路規制部２８に固定する方法（固定部２９）の具体例を図示する。図１３の固定方法は、固定部２９としてタイバンド３０を使用した一例である。この場合、経路規制部２８の底壁３１には、タイバンド３０を通す２つの孔３２が形成されている。電線５をドアインナートリム２５に取り付ける場合、まず電線５を経路規制部２８に位置決めする。そして、一方の孔３２の表からタイバンド３０を通し、他方の孔３２の裏からタイバンド３０を引き出して、タイバンド３０を締め付ける。これにより、電線５が経路規制部２８に固定される。

　図１４及び図１５の固定方法は、固定部２９としてクリップ３３を使用した一例である。クリップ３３は、例えば、バンドクリップである。クリップ３３は、電線５を束ねるバンド３４と、経路規制部２８に係合される突起３５とを備えている。また、経路規制部２８の底壁３１には、突起３５を係合する孔３６が形成されている。図１５に示すように、電線５をドアインナートリム２５に取り付ける場合、バンド３４に電線５を固定し、突起３５を孔３６に挿し込むことにより、電線５を経路規制部２８に固定する。

　図１６及び図１７の固定方法は、固定部２９として押さえ板３９を使用した一例である。押さえ板３９は、本体部４０と、本体部４０の両端に形成されたバネ部４１とを備えている。また、経路規制部２８の底壁３１には、押さえ板３９のバネ部４１を挿し込む孔４２が設けられている。図１７に示すように、電線５をドアインナートリム２５に取り付ける場合、経路規制部２８の底壁３１に電線５を並べて位置決めした状態で、押さえ板３９のバネ部４１を孔４２に挿し込み、押さえ板３９を孔４２に留める。これにより、電線５が経路規制部２８に固定される。

　図１８の固定方法は、固定部２９としてマジックテープ（登録商標）４３を使用した一例である。マジックテープ４３は、電線５に取り付けられた第１マジックテープ４３ａと、経路規制部２８の少なくとも底壁３１に取り付けられた第２マジックテープ４３ｂとを備えている。電線５をドアインナートリム２５に取り付ける場合、第１マジックテープ４３ａ及び第２マジックテープ４３ｂを貼り合わせることにより、電線５を経路規制部２８に固定する。

　図１９（ａ）、（ｂ）は、固定部２９として両面テープ４４を使用した一例である。なお、図１９（ａ）は、両面テープ４４を縦向きに配置した実施例である。図１９（ｂ）は、両面テープ４４を横向きに配置した実施例である。電線５をドアインナートリム２５に取り付ける場合、経路規制部２８の少なくとも底壁３１に両面テープ４４を貼り付けておき、両面テープ４４の表面の剥離紙４４ａを剥がして、露出した接着面４４ｂに電線５を取り付ける。これにより、電線５が経路規制部２８に固定される。

　図２０（ａ）、（ｂ）は、固定部２９として単なるテープ４５を使用した一例である。なお、図２０（ａ）は、テープ４５を横向きに貼り付けた実施例である。図２０（ｂ）は、テープ４５を縦向きに貼り付けた実施例である。電線５をドアインナートリム２５に取り付ける場合、電線５を経路規制部２８の底壁３１に位置合わせし、その上からテープ４５を貼り付ける。これにより、電線５が経路規制部２８に固定される。

　本例の場合、ドアインナートリム２５に凹状の経路規制部２８を設け、この経路規制部２８を電線５の取付箇所として使用する。このため、ドアインナートリム２５を電線５の取付箇所として有効利用することが可能となる。また、電線５をテープ等の汎用的な部品によってドアインナートリム２５に取り付けることも可能となるので、部品コストの削減にも寄与する。

　上記実施形態のドアモジュール２３によれば、以下のような効果を得ることができる。
　（１０）ドアモジュール２３は、電線５、経路規制部２８、及び、固定部２９を備えている。電線５は、ドアボディ２４に設けられたドアインナートリム２５に配策される。経路規制部２８は、ドアインナートリム２５における電線５の取付箇所として設けられ、電線５が取り付けられた際の電線５の形状を撓み形状とするように、電線５の撓みの経路を規制する。固定部２９は、電線５を経路規制部２８に取り付け固定する。

　本例の構成によれば、電線５を複数の固定部２９によってドアインナートリム２５に取り付ける場合、経路規制部２８の隣同士の間隔、及び、経路規制部２８の形状によって、電線５が自ら撓み形状をとる状態でドアインナートリム２５に組み付く。このため、ドアインナートリム２５への電線５の取り付けにおいて電線５を撓み形状とするにあたり、作業者が自ら手作業で曲げる作業を必要としない。よって、取付作業を簡易化することができる。

　（１１）経路規制部２８は、ドアインナートリム２５の一部分に設けられた凹部である。この構成によれば、経路規制部２８の形状を単なる凹状の簡素な形状とすることができる。

　なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
　・第１実施形態において、経路規制部１８は、固定部９とは別体に形成されてもよい。この構成によれば、部品の設計自由度が増す。

　・第１実施形態において、固定部９と経路規制部１８とを別体とした場合、これらを離した位置に配置してもよい。
　・第１実施形態において、固定部９は、弾性体であることに限定されず、樹脂製であればよい。

　・第１実施形態において、固定部９は、例えば、係合部１１のみ弾性体であってもよい。
　・第１実施形態において、取付対象３は、車両ドア４に限定されず、車体を構成する部材であればよい。

　・第１実施形態において、取付対象３は、例えば、鋼板などであることが好ましい。
　・第１実施形態において、保持部１０は、電線５を保持可能な形状をとっていればよい。

　・第１実施形態において、両側に配置された経路規制部１８を各々異なる形状としてもよい。
　・第１実施形態において、経路規制部１８は、保持部１０の片側にのみ設けられてもよい。

　・第１実施形態において、経路規制部１８は、例えば、両側の各々に複数設けてもよい。
　・第２実施形態において、開示した電線５の種々の固定方法を適宜組み合わせてもよい。

　・第２実施形態において、電線５が取り付けられるドアインナートリム２５は、複数の部材から構成されてもよい。
　・各実施形態において、撓み形状は、アーチ形状に限定されず、例えば屈曲形状などの他の形状としてもよい。

　・各実施形態において、電線５は、外表面が外装部材で覆われていてもよい。
　・各実施形態において、電線５の固定方法は、例えば、第１実施形態及び第２実施形態の構造を組み合わせたものとしてもよい。

　・各実施形態において、ワイヤハーネス一体モジュールは、ドアに使用されることに限定されず、例えばフロアやシートなどに適用してもよい。
　・各実施形態において、本例の電線５の固定方法は、車両に使用されることに限定されず、種々の機器や装置に適用できる。

　図２および図３に示すように、経路規制部１８は、下半分のみの半円筒状であってよい。
　・実施形態の取付対象３とインナーライニング２５は、電線５を取り付けるための取付面として参照することがある。実施形態の孔１９と経路規制部２８は、取付面の固定位置として参照することがある。実施形態の固定部９は、電線クランプとして参照することがある。実施形態の固定部９の保持部１０と経路規制部１８ａ，１８ｂと、経路規制部２８は、電線５を受け取って電線５を緩く曲げるように構成された電線受け面として参照することがある。実施形態の第１寸法Ｗ１と第２寸法Ｗ２との差を余長として参照することがある。

　実施形態の電線５が取付対象３またはインナーライニング２５に配策されたときに、電線５の第１の長さ位置及び第２の長さ位置は、取付対象３またはインナーライニング２５の２つの固定位置に固定的に位置決めされてよく、電線５の第１の長さ位置と第２の長さ位置との間の中間長さ部分は、取付対象３またはインナーライニング２５の２つの固定位置を、余長をもって架橋するように構成されてよい。図６に示すように、電線５の第１の長さ位置及び第２の長さ位置が２つの孔１９に位置決めされたとき、電線５は、それら２つの孔１９の間で、サギングのないフローティング状態で延在してよい。

　［付記１］図５および図６に示すように、本開示のいくつかの態様では、ワイヤハーネス（２）は、電線（５）と、複数の固定部（９）と、前記電線（５）を取付対象（３）に取り付けるように構成された経路規制部（１８）と、を備えてよく、
　複数の前記固定部（９）は、前記電線（５）を前記取付対象（３）に取り付けた後の隣り合う前記固定部（９）同士の間隔である第２寸法（Ｗ２）が、前記電線（５）を前記取付対象（３）に取り付ける前の隣り合う前記固定部（９）同士の間隔である第１寸法（Ｗ１）よりも小さくなるように、前記電線（５）に対して配置されてよく、
　前記経路規制部（１８）は、前記取付対象（３）に取り付けられた際の前記電線（５）の形状を撓み形状とするように、前記電線（５）の経路を規制するように構成されてよい。

　［付記２］図２，５，６に示すように、本開示のいくつかの態様では、前記経路規制部（１８）は、前記電線（５）が前記固定部（９）によって前記取付対象（３）に取り付けられた状態において、前記電線（５）が前記取付対象（３）から離間する方向に撓むように、前記固定部（９）から離れるほど前記取付対象（３）から離間するように傾斜してよい。

　［付記３］図９および図１０に示すように、本開示のいくつかの態様では、ワイヤハーネス一体モジュール（２３）は、
　ボディ（２４）に設けられたインナーライニング（２５）に配策される電線（５）と、
　前記インナーライニング（２５）における前記電線（５）の取付箇所として設けられ、前記電線（５）が取り付けられた際の前記電線（５）の形状を撓み形状とするように、前記電線（５）の経路を規制する複数の経路規制部（２８）と、
　前記電線（５）を前記経路規制部（２８）に取り付け固定する固定部（２９）と
を備えてよい。

　［付記４］図９および図１０に示すように、本開示のいくつかの態様では、前記経路規制部（２８）は、前記インナーライニング（２５）の一部分に設けられた凹部であってよく、
　前記凹部は、前記電線（５）の形状を撓み形状とするように、前記電線（５）と接触して前記電線（５）の経路を規制する傾斜面を有してよい。

　・各実施形態において、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。

　１　電装品
　２　ワイヤハーネス
　３　取付対象
　５　電線
　９　固定部
　１０　保持部
　１１　係合部
　１８　経路規制部
　２３　ワイヤハーネス一体モジュールとしてのドアモジュール
　２４　ボディとしてのドアボディ
　２５　インナーライニングとしてのドアインナートリム
　２８　経路規制部
　２９　固定部
　Ｗ１　第１寸法
　Ｗ２　第２寸法

Claims (16)

1. 　電線を取付対象に取り付ける前の隣同士の間隔である第１寸法よりも、前記電線を前記取付対象に取り付けた後の隣同士の間隔である第２寸法の方が小さくなる配置をとるように、前記電線を前記取付対象に固定する複数の固定部と、
   　前記取付対象に取り付けられた際の前記電線の形状を撓み形状とするように、前記電線の撓みの経路を規制する経路規制部と
   を備えたワイヤハーネス。
2. 　前記撓み形状は、前記取付対象から離間する方向に飛び出した形状である
   請求項１に記載のワイヤハーネス。
3. 　前記撓み形状は、円弧状のアーチ形状である
   請求項１又は請求項２に記載のワイヤハーネス。
4. 　前記固定部は、前記電線を保持する保持部と、前記取付対象に係合される係合部とを有する
   請求項１から請求項３のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
5. 　前記経路規制部は、前記固定部において前記電線を保持する保持部の両側に配置されることによって少なくとも２つ設けられている
   請求項１から請求項４のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
6. 　前記経路規制部は、前記固定部に一体に形成されている
   請求項１から請求項５のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
7. 　前記経路規制部は、前記固定部と別体に形成されている
   請求項１から請求項５のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
8. 　ボディに設けられたインナーライニングに配策される電線と、
   　前記インナーライニングにおける前記電線の取付箇所として設けられ、前記電線が取り付けられた際の前記電線の形状を撓み形状とするように、前記電線の撓みの経路を規制する複数の経路規制部と、
   　前記電線を前記経路規制部に取り付け固定する固定部と
   を備えたワイヤハーネス一体モジュール。
9. 　前記経路規制部は、前記インナーライニングの一部分に設けられた凹部である
   請求項８に記載のワイヤハーネス一体モジュール。
10. 　電線と、前記電線を取り付けるための取付面とを備える電線配索構造であって、
    　前記電線は、第１の長さ位置と、前記第１の長さ位置とは異なる第２の長さ位置と、前記第１の長さ位置と前記第２の長さ位置との間の中間長さ部分とを含み、
    　前記取付面は、前記電線の前記第１の長さ位置と前記第２の長さ位置をそれぞれ固定的に位置決めするための第１の固定位置及び第２の固定位置を含み、
    　前記電線の前記第１の長さ位置と前記第２の長さ位置が前記取付面の前記第１の固定位置及び前記第２の固定位置にそれぞれ固定的に位置決めされたとき、前記電線の前記中間長さ部分は、前記取付面の前記第１の固定位置と前記第２の固定位置とを、フローティング状態で余長をもって架橋する、
    電線配索構造。
11. 　前記電線の前記第１の長さ位置と前記第２の長さ位置が前記取付面の前記第１の固定位置及び前記第２の固定位置にそれぞれ固定的に位置決めされたとき、前記電線の前記中間長さ部分は、前記取付面の前記第１の固定位置と前記第２の固定位置との間で、サギングのないフローティング状態で延在する、
    請求項１０に記載の電線配索構造。
12. 　前記電線の前記第１の長さ位置と前記第２の長さ位置が前記取付面の前記第１の固定位置及び前記第２の固定位置にそれぞれ固定的に位置決めされたとき、前記電線の前記中間長さ部分は、前記取付面の前記第１の固定位置と前記第２の固定位置とを架橋するアーチを形成する、請求項１０に記載の電線配索構造。
13. 　前記取付面は、前記第１の固定位置と前記第２の固定位置との間に非固定位置を有しており、
    　前記電線の前記中間長さ部分は、前記取付面の前記非固定位置と接触せず、前記中間長さ部分と前記非固定位置とはそれらの間に隙間を形成する、請求項１０から１２のいずれか一項に記載の電線配索構造。
14. 　前記電線の前記第１の長さ位置と前記第２の長さ位置にそれぞれ直接接触し、前記取付面の前記第１の固定位置及び前記第２の固定位置にそれぞれ後付けされる第１及び第２の電線クランプをさらに備え、
    　前記第１の電線クランプは、前記電線の前記第１の長さ位置を受け取り、前記電線の前記第１の長さ位置をＵ字にまたは鈍角Ｖ字に曲げるように構成された第１の電線受け面を有しており、
    　前記第２の電線クランプは、前記電線の前記第２の長さ位置を受け取り前記電線の前記第２の長さ位置をＵ字にまたは鈍角Ｖ字に曲げるように構成された第２の電線受け面を有している、
    請求項１０から１３のいずれか一項に記載の電線配索構造。
15. 　前記取付面は第１凹部及び第２凹部を含むパネルであり、
    　前記パネルは、前記取付面の前記第１の固定位置及び前記第２の固定位置である第１凹部の底及び第２凹部の底と、前記第１凹部と前記第２凹部との間に広がる非凹面とを有しており、
    　前記第１凹部及び前記第２凹部は、前記電線の前記第１の長さ位置と前記第２の長さ位置をそれぞれ受け取る電線受け面を有しており、
    　前記第１凹部の前記電線受け面及び前記第２凹部の前記電線受け面は、前記電線の前記第１の長さ位置及び前記第２の長さ位置をＵ字にまたは鈍角Ｖ字に曲げるように構成されている、
    請求項１０から１３のいずれか一項に記載の電線配索構造。
16. 　前記電線の前記第１の長さ位置と前記第２の長さ位置とに直接接触して、前記電線の前記第１の長さ位置と前記第２の長さ位置を、前記第１凹部及び前記第２凹部にそれぞれ固定するためのタイバンドをさらに備える
    請求項１５に記載の電線配索構造。

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