WO2022044566A1

WO2022044566A1 - 水溶性金属加工油剤

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Publication number: WO2022044566A1
Application number: PCT/JP2021/025922
Authority: WO
Inventors: 知晃岡野; 友彦北村; 秀人上村
Original assignee: 出光興産株式会社
Priority date: 2020-08-31
Filing date: 2021-07-09
Publication date: 2022-03-03
Also published as: CN115989312A; US20230357663A1; JPWO2022044566A1

Abstract

油溶性ポリアルキレングリコール（Ａ１）を含む基油（Ａ）を含有し、水溶性ポリアルキレングリコール及びメトキシポリエチレングリコールの合計含有量が、水を除く全量基準で６０質量％未満である、水溶性金属加工油剤を提供する。

Description

水溶性金属加工油剤

　本発明は、水溶性金属加工油剤、当該水溶性金属加工油剤に希釈水を配合してなる金属加工液、及び、金属加工液を適用して金属からなる被加工材を加工する金属加工方法に関する。

　切削加工や研削加工等の金属加工分野では、被加工材の加工性を向上させると共に、加工工具の磨耗抑制を目的として、金属加工液が使用される。
　金属加工液には、鉱油、合成油、動植物油等の油分を主成分した油性金属加工液と、油分に界面活性を有する化合物を配合して水溶性を付与した水溶性金属加工液がある。近年では、火災の危険性が低い等の安全性の理由から、水溶性金属加工液が用いられるようになってきている。

　例えば、特許文献１には、水溶性ポリアルキレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、及びそれらの２種以上の組み合わせからなる群から選択される６０～９０重量％の基油と、５～２０重量％のグリコールエーテルと、０．０１～５重量％の油溶性ポリアルキレングリコールと、０．２～６重量％の添加剤とを含む、濃縮金属加工流体に関する発明が開示されている。
　また、特許文献２には、メチルジシクロヘキシルアミンを配合してなる水溶性加工油剤に関する発明が開示されている。

国際公開第２０１４／０８９７６６号国際公開第２０１０／１１３５９４号

　このような状況下、例えば、エマルション型やソルブル型の油剤としても、従来に比べて、金属加工により適用し易くなるよう各種性能を改善させた新規な水溶性金属加工油剤が求められている。

　本発明は、基油として、油溶性ポリアルキレングリコールを含み、水溶性ポリアルキレングリコール及びメトキシポリエチレングリコールの含有量を所定量以下とした水溶性金属加工油剤を提供する。具体的には、本発明は、例えば、下記態様［１］～［１６］を提供する。
［１］油溶性ポリアルキレングリコール（Ａ１）を含む基油（Ａ）を含有し、
　水溶性ポリアルキレングリコール及びメトキシポリエチレングリコールの合計含有量が、水を除く全量基準で６０質量％未満である、水溶性金属加工油剤。
［２］水溶性ポリアルキレングリコール及びメトキシポリエチレングリコールの合計含有量が、成分（Ａ１）の全量１００質量部に対して、１０質量部未満である、上記［１］に記載の水溶性金属加工油剤。
［３］硫黄系極圧剤を実質的に含有しない、上記［１］又は［２］に記載の水溶性金属加工油剤。
［４］さらに水（Ｂ）を含有する、上記［１］～［３］のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
［５］成分（Ａ）中の成分（Ａ１）の含有割合が、前記水溶性金属加工油剤に含まれる成分（Ａ）の全量基準で、１０～１００質量％である、上記［１］～［４］のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
［６］成分（Ａ１）の含有量が、前記水溶性金属加工油剤の水を除く全量基準で、０．０１質量％以上である、上記［１］～［５］のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
［７］さらにアミン系化合物（Ｃ）を含有する、上記［１］～［６］のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
［８］さらに脂肪酸類（Ｄ）を含有する、上記［１］～［７］のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
［９］さらに非イオン性界面活性剤（Ｅ）を含有する、上記［１］～［８］のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
［１０］ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定するＡ１種に分類されるエマルション型の油剤である、上記［１］～［９］のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
［１１］ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定するＡ２種に分類されるソルブル型の油剤である、上記［１］～［９］のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
［１２］油溶性ポリアルキレングリコール（Ａ１）を含む基油（Ａ）を含有し、
　水溶性ポリアルキレングリコール及びメトキシポリエチレングリコールの合計含有量が、成分（Ａ）の全量１００質量部に対して、１０質量部未満である、水溶性金属加工油剤。
［１３］上記［１］～［１２］のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤に、希釈水を配合してなる、金属加工液。
［１４］上記［１３］に記載の金属加工液を適用して、金属からなる被加工材を加工する、金属加工方法。
［１５］前記被加工材が、鉄又はアルミニウムを少なくとも含む部材を有する、上記［１４］に記載の金属加工方法。
［１６］前記被加工材の加工に用いる加工機を構成する銅を含む部材の腐食を抑制する、上記［１４］又は［１５］に記載の金属加工方法。

　本発明の好適な一態様の水溶性金属加工油剤は、希釈水で希釈することで、加工性等の各種特性に優れた金属加工液に調製可能である。

　本明細書に記載された数値範囲については、上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは３０～１００、より好ましくは４０～８０」と記載されている場合、「３０～８０」との範囲や「４０～１００」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。また、例えば、数値範囲として「好ましくは３０以上、より好ましくは４０以上であり、また、好ましくは１００以下、より好ましくは８０以下である」と記載されている場合、「３０～８０」との範囲や「４０～１００」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。
　加えて、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「６０～１００」との記載は、「６０以上、１００以下」という範囲であることを意味する。

　本明細書において、「金属加工油剤」は、希釈水で希釈して金属加工液とする前の金属加工液の原液であって、金属加工に用いる前の輸送時や保管時には好適な形態である。また、「金属加工液」は、原液である金属加工油剤に希釈水を加えて希釈したものであって、金属加工に使用する際に好適な形態である。
　「金属加工油剤」と「金属加工液」とは、例えば、以下のように、水の含有量によって区別することもできる。
・「金属加工油剤」：水の含有量が、水以外の成分の全量１００質量部に対して０質量部以上４００質量部以下である。
・「金属加工液」：水の含有量が、水以外の成分の全量１００質量部に対して、４００質量部超である。

〔水溶性金属加工油剤の構成〕
　本発明の水溶性金属加工油剤は、油溶性ポリアルキレングリコール（以下、「油溶性ＰＡＧ」ともいう）（Ａ１）を含む基油（Ａ）を含有し、水溶性ポリアルキレングリコール（以下、「水溶性ＰＡＧ」ともいう）及びメトキシポリエチレングリコール（以下、「ＭＰＥＧ」ともいう）の合計含有量を所定の含有量になるように調整した油剤である。
　なお、本明細書において、「水溶性」とは、２５℃の水１００ｇへの溶解量が２０ｇ以上であって、２５℃の水１００ｇに対象物質を２０ｇ添加して調製した２５℃の溶液の全光線透過率が９０％以上である成分を意味する。
　なお、本明細書の以下の記載において、「水溶性」と記載された成分は、上記の特性を有する成分である。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、水溶性ＰＡＧ及びＭＰＥＧの合計含有量は、水を除く全量（１００質量％）基準で、６０質量％未満、５０質量％未満、４０質量％未満、３０質量％未満、２０質量％未満、１０質量％未満、５質量％未満、１質量％未満、又は０．１質量％未満としてもよい。

　また、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、水溶性ＰＡＧ及びＭＰＥＧの合計含有量は、成分（Ａ１）の全量１００質量部に対して、１０質量部未満、５質量部未満、１質量部未満、０．１質量部未満、０．０１質量部未満、又は０．００１質量部未満としてもよい。

　上述の本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、さらに水（Ｂ）を含有してもよい。水（Ｂ）の含有量を調整することで、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ１種に分類されるエマルション型の油剤、もしくは、Ａ２種に分類されるソルブル型の油剤に調製することができる。

　また、上述の本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、アミン系化合物（Ｃ）、脂肪酸類（Ｄ）、及び非イオン性界面活性剤（Ｅ）から選ばれる１種以上を含有することが好ましく、少なくとも成分（Ｃ）及び（Ｄ）を含有することがより好ましく、成分（Ｃ）、（Ｄ）及び（Ｅ）のすべてを含有することが更に好ましい。
　なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分（Ａ）～（Ｅ）以外の他の成分を含有してもよい。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ａ）及び（Ｂ）の合計含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、好ましくは２０質量％以上、より好ましくは３０質量％以上、更に好ましくは４０質量％以上、より更に好ましくは４５質量％以上、特に好ましくは５０質量％以上であり、また、１００質量％以下、９５質量％以下、９０質量％以下、８５質量％以下、８０質量％以下、７５質量％以下、７０質量％以下、６５質量％以下、又は６０質量％以下としてもよい。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ａ）～（Ｄ）の合計含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、好ましくは３０質量％以上、より好ましくは４０質量％以上、より好ましくは５０質量％以上、更に好ましくは６０質量％以上、より更に好ましくは７０質量％以上、特に好ましくは８０質量％以上であり、また、１００質量％以下、９８質量％以下、９５質量％以下、９３質量％以下、又は９０質量％以下としてもよい。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ａ）～（Ｅ）の合計含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、好ましく３５質量％以上、より好ましくは４５質量％以上、より好ましくは５５質量％以上、更に好ましくは６５質量％以上、より更に好ましくは７５質量％以上、特に好ましくは８５質量％以上であり、また、１００質量％以下、９８質量％以下、９６質量％以下、又は９４質量％以下としてもよい。
　以下、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤に含まれる各成分について説明する。

＜成分（Ａ）：基油＞
　本発明の水溶性金属加工油剤は、油溶性ＰＡＧ（Ａ１）を含む基油（Ａ）を含有する。
　本発明の水溶性金属加工油剤は、基油として油溶性ＰＡＧを含むため、当該水溶性金属加工油剤に希釈水を配合してなる金属加工液の加工性を向上させることができる。
　なお、一般的に加工性（特に、鉄を含む被加工材の加工性）に優れた金属加工液とするためには、その原液である水溶性金属加工油剤は硫黄系極圧剤を含有する。しかしながら、硫黄性極圧剤は、被加工材の金属加工の際に用いる加工機を構成する銅を含む部材の腐食を引き起こす要因となる。一方で、本発明の水溶性金属加工油剤は、成分（Ａ１）を含有することで、硫黄系極圧剤を実質的に含有しなくても、優れた加工性を有する金属加工液に調製可能であり、また銅部材の腐食の問題も回避できる。

　なお、本発明の一態様で用いる成分（Ａ）は、成分（Ａ１）以外の他の基油（Ａ２）を含有してもよい。
　ただし、加工性に優れた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ａ）中の成分（Ａ１）の含有割合は、当該水溶性金属加工油剤に含まれる成分（Ａ）の全量（１００質量％）基準で、１０～１００質量％、２０～１００質量％、３０～１００質量％、４０～１００質量％、５０～１００質量％、６０～１００質量％、７０～１００質量％、７５～１００質量％、８０～１００質量％、８５～１００質量％、９０～１００質量％、９５～１００質量％、又は９８～１００質量％としてもよい。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ａ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、加工性に優れた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、好ましくは０．０１質量％以上、より好ましくは０．０５質量％以上、より好ましくは０．１質量％以上、より好ましくは０．５質量％以上、より好ましくは１．０質量％以上、更に好ましくは１．５質量％以上、更に好ましくは２．０質量％以上、更に好ましくは２．５質量％以上、更に好ましくは３．０質量％以上、より更に好ましくは４．０質量％以上、より更に好ましくは５．０質量％以上、より更に好ましくは６．０質量％以上、より更に好ましくは７．０質量％以上、より更に好ましくは８．０質量％以上、特に好ましくは９．０質量％以上であり、さらに、９．５質量％以上、１０．０質量％以上、１１．０質量％以上、又は１２．０質量％以上としてもよく、また、１００質量％以下、９９質量％以下、９５質量％以下、９０質量％以下、８５質量％以下、８０質量％以下、７５質量％以下、又は７０質量％以下としてもよい。

　なお、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ１種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分（Ａ）の含有量は、当該油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、１０質量％以上、１５質量％以上、２０質量％以上、３０質量％以上、４０質量％以上、４５質量％以上、又は５０質量％以上としてもよく、また、上限は上記のとおりである。

　ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ２種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分（Ａ）の含有量は、当該油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、６０質量％以下、５０質量％以下、４０質量％以下、３０質量％以下、２５質量％以下、又は２０質量％以下としてもよく、また、下限は上記のとおりである。

　また、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ａ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、加工性に優れた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、好ましくは０．０１質量％以上、より好ましくは０．０５質量％以上、より好ましくは０．１質量％以上、より好ましくは０．３質量％以上、より好ましくは０．５質量％以上、更に好ましくは０．７質量％以上、更に好ましくは１．０質量％以上、更に好ましくは１．５質量％以上、更に好ましくは２．０質量％以上、より更に好ましくは２．５質量％以上、より更に好ましくは３．０質量％以上、より更に好ましくは３．５質量％以上、特に好ましくは４．０質量％以上であり、さらに、４．５質量％以上、５．０質量％以上、５．５質量％以上、６．０質量％以上、６．５質量％以上、又は７．０質量％以上としてもよく、また、１００質量％以下であるが、他成分の含有量を考慮すると、９９質量％以下、９５質量％以下、９０質量％以下、８５質量％以下、８０質量％以下、７５質量％以下、７０質量％以下、６５質量％以下、又は６０質量％以下としてもよい。

　なお、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ１種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分（Ａ）の含有量は、当該油剤の全量（１００質量％）基準で、１０質量％以上、１５質量％以上、２０質量％以上、３０質量％以上、４０質量％以上、４５質量％以上、又は５０質量％以上としてもよく、また、上限は上記のとおりである。

　ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ２種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分（Ａ）の含有量は、当該油剤の全量（１００質量％）基準で、６０質量％以下、５０質量％以下、４０質量％以下、３０質量％以下、２５質量％以下、２０質量％以下、１５質量％以下、又は１０質量％以下としてもよく、また、下限は上記のとおりである。

≪成分（Ａ１）：油溶性ポリアルキレングリコール（油溶性ＰＡＧ）≫
　本発明の一態様で用いる成分（Ａ１）としては、アルキレンオキシドに由来する構成単位を有し、油溶性を示すポリアルキレングリコール（ＰＡＧ）であれば特に制限はない。
　なお、本明細書において、対象となるＰＡＧが油溶性か否かの判断は、ＡＰＩ（米国石油協会）基油カテゴリーのグループ１に分類される鉱油に対する混和性により判断される。具体的には、対照となるＰＡＧと前記グループ１に分類される鉱油の含有量比〔ＰＡＧ／鉱油〕が、質量比で、１０／９０又は９０／１０となるサンプルを調製し、サンプル及び標準試料の２５℃での全光線透過率を測定して、以下の基準（ｉ）及び（ii）を満たす場合に、油溶性ＰＡＧであると判断する。
・（ｉ）含有量比〔ＰＡＧ／鉱油〕＝１０／９０のサンプルの場合、［当該サンプルの全光線透過率（％）］－［前記鉱油のみの全光線透過率（％）］≦２０％である。
・（ii）含有量比〔ＰＡＧ／鉱油〕＝９０／１０のサンプルの場合、［当該サンプルの全光線透過率（％）］－［前記ＰＡＧの全光線透過率（％）］≦２０％である。
　なお、本明細書の以下の記載において、「油溶性」と記載された成分は、特に断りが無い限り、上記の基準（ｉ）及び（ii）を満たす成分である。

　本発明の一態様で用いる成分（Ａ１）としては、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドの少なくとも一方に由来する構成単位を有するポリマーが挙げられ、プロピレンオキシドホモポリマー、ブチレンオキシドホモポリマー、及びプロピレンオキシド・ブチレンオキシドコポリマー等が挙げられる。
　なお、成分（Ａ１）は、単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。

　本発明の一態様で用いる成分（Ａ１）の４０℃における動粘度は、加工性に優れた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、好ましくは９～８００ｍｍ^２／ｓ、より好ましくは１５～３５０ｍｍ^２／ｓ、より好ましくは２０～２５０ｍｍ^２／ｓ、更に好ましくは２３～１８０ｍｍ^２／ｓ、より更に好ましくは２５～１００ｍｍ^２／ｓ、より更に好ましくは２８．８～９０ｍｍ^２／ｓ、特に好ましくは４０～８０ｍｍ^２／ｓである。

　また、加工性に優れた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、本発明の一態様で用いる成分（Ａ１）のＩＳＯ　３４４８で規定の粘度グレードは、ＶＧ１０、ＶＧ１５、ＶＧ２２、ＶＧ３２、ＶＧ４６、ＶＧ６８、ＶＧ１００、ＶＧ１５０、ＶＧ２２０、ＶＧ３２０、ＶＧ４６０、又はＶＧ６８０であることが好ましく、ＶＧ２２、ＶＧ３２、ＶＧ４６、ＶＧ６８、又はＶＧ１００であることがより好ましく、ＶＧ３２、ＶＧ４６、又はＶＧ６８であることが更に好ましく、ＶＧ４６又はＶＧ６８であることがより更に好ましく、ＶＧ６８であることが特に好ましい。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ａ１）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、加工性に優れた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、好ましくは０．０１質量％以上、より好ましくは０．０５質量％以上、より好ましくは０．１質量％以上、より好ましくは０．５質量％以上、より好ましくは１．０質量％以上、更に好ましくは１．５質量％以上、更に好ましくは２．０質量％以上、更に好ましくは２．５質量％以上、更に好ましくは３．０質量％以上、より更に好ましくは４．０質量％以上、より更に好ましくは５．０質量％以上、より更に好ましくは６．０質量％以上、より更に好ましくは７．０質量％以上、より更に好ましくは８．０質量％以上、特に好ましくは９．０質量％以上であり、さらに、９．５質量％以上、１０．０質量％以上、１１．０質量％以上、又は１２．０質量％以上としてもよく、また、１００質量％以下であるが、他成分の含有量を考慮すると、９５質量％以下、９０質量％以下、８５質量％以下、８０質量％以下、７５質量％以下、７０質量％以下、又は６５質量％以下としてもよい。

　なお、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ１種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分（Ａ１）の含有量は、当該油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、１０質量％以上、１５質量％以上、２０質量％以上、３０質量％以上、４０質量％以上、４５質量％以上、又は５０質量％以上としてもよく、また、上限は上記のとおりである。

　ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ２種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分（Ａ１）の含有量は、当該油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、６０質量％以下、５０質量％以下、４０質量％以下、３０質量％以下、２５質量％以下、又は２０質量％以下としてもよく、また、下限は上記のとおりである。

≪成分（Ａ２）：成分（Ａ１）以外の基油≫
　本発明の一態様で用いる成分（Ａ１）以外の基油（Ａ２）としては、油溶性ＰＡＧ以外の、鉱油及び合成油から選ばれる少なくとも１種が挙げられる。
　なお、本明細書において、上述の水溶性ポリアルキレングリコール（水溶性ＰＡＧ）及びメトキシポリエチレングリコール（ＭＰＥＧ）も成分（Ａ２）に含まれるが、水溶性ＰＡＧ及びＭＰＥＧの合計含有量は、上述のとおり調整される。

　鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油；これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油；当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を１つ以上施して得られる精製油；等が挙げられる。

　合成油としては、例えば、α－オレフィン単独重合体、又はα－オレフィン共重合体（例えば、エチレン－α－オレフィン共重合体等の炭素数８～１４のα－オレフィン共重合体）等のポリα－オレフィン；イソパラフィン；ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等のエステル系油；ポリフェニルエーテル等のエーテル系油；アルキルベンゼン；アルキルナフタレン；天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス（ＧＴＬワックス（Gas To Liquids WAX））を異性化することで得られる合成油（ＧＴＬ）等が挙げられる。

　本発明の一態様で用いる成分（Ａ２）の４０℃における動粘度は、加工性に優れた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、好ましくは２．０～１５０ｍｍ^２／ｓ、より好ましくは３．０～１２０ｍｍ^２／ｓ、更に好ましくは５．０～１００ｍｍ^２／ｓ、より更に好ましくは６．０～９０ｍｍ^２／ｓ、特に好ましくは７．０～８０ｍｍ^２／ｓである。
　また、本発明の一態様で用いる成分（Ａ２）の粘度指数は、好ましくは７０以上、より好ましくは８０以上、更に好ましくは９０以上、より更に好ましくは１００以上、特に好ましくは１０５以上である。

＜成分（Ｂ）：水＞
　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、さらに水（Ｂ）を含有してもよい。水を含有する水溶性金属加工油剤とすることで、難燃性を付与して非危険物とし、保管時の取扱性を良好とすることができる。
　本発明の一態様で用いる成分（Ｂ）である水としては、特に限定されず、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等のいずれであってもよい。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｂ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤中の水以外の成分の全量１００質量部に対して、４００質量部以下であるが、好ましくは１～３５０質量部、より好ましくは２～３００質量部、更に好ましくは３～２５０質量部、より更に好ましくは５～２００質量部である。
　なお、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ１種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分（Ｂ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤中の水以外の成分の全量１００質量部に対して、１５０質量部以下、１００質量部以下、７０質量部以下、５０質量部以下、４０質量部以下、３０質量部以下、２０質量部以下、又は１５質量部以下としてもよく、また、下限は上記のとおりである。
　また、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ２種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分（Ｂ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤中の水以外の成分の全量１００質量部に対して、１０質量部以上、３０質量部以上、５０質量部以上、６０質量部以上、７０質量部以上、８０質量部以上、９０質量部以上、又は１００質量部以上としてもよく、また、上限は上記のとおりである。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｂ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、好ましくは１～９９質量％、より好ましくは２～９０質量％、更に好ましくは３～８５質量％、より更に好ましくは５～８０質量％である。
　なお、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ１種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分（Ｂ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、７０質量％以下、６０質量％以下、５０質量％以下、４０質量％以下、３０質量％以下、２５質量％以下、２０質量％以下、又は１５質量％以下としてもよく、また、下限は上記のとおりである。
　また、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ２種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分（Ｂ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、１０質量％以上、１５質量％以上、２０質量％以上、２５質量部以上、３０質量％以上、３５質量％以上、４０質量％以上、４５質量部以上、又は５０質量％以上としてもよく、また、上限は上記のとおりである。

＜成分（Ｃ）：アミン系化合物＞
　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、さらにアミン系化合物（Ｃ）を含有することが好ましい。成分（Ｃ）を含有する水溶性金属加工油剤は、希釈水を配合して金属加工液とした際に、乳化状態を良好とし、抗菌性、防錆性、及び加工性等をより向上させた金属加工液となり得る。
　なお、成分（Ｃ）は、単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。

　上記と同様の観点から、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｃ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、好ましくは３～７０質量％、より好ましくは５～６０質量％、更に好ましくは７～５０質量％、より更に好ましくは１０～４５質量％、特に好ましくは１２～４０質量％であり、さらに、１５質量％以上、１７質量％以上、２０質量％以上、２２質量％以上、又は２４質量％以上としてもよく、また、３７質量％以下、３５質量％以下、３３質量％以下、３１質量％以下、２７質量％以下、又は２５質量％以下としてもよい。

　また、上記と同様の観点から、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｃ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、好ましくは２～４０質量％、より好ましくは４～３５質量％、更に好ましくは６～３０質量％、より更に好ましくは８～２５質量％、特に好ましくは１０～２０質量％であり、さらに、１１質量％以上、又は１２質量％以上としてもよく、また、１８質量％以下、又は１６質量％以下としてもよい。

　さらに、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｃ）と成分（Ａ１）との含有量比〔（Ｃ）／（Ａ１）〕は、質量比で、好ましくは０．０１～３０、より好ましくは０．０５～２５、更に好ましくは０．１０～２０、より更に好ましくは０．２０～１５、特に好ましくは０．２５～９．０であり、さらに、０．２８以上、０．３０以上、０．４０以上、０．５０以上、０．６０以上、０．７０以上、０．８０以上、０．９０以上、１．００以上、１．２０以上、１．４０以上、又は１．６０以上としてもよく、また、８．０以下、７．０以下、６．０以下、５．０以下、４．５以下、４．０以下、３．５以下、３．０以下、２．９以下、２．８以下、２．７以下、２．６以下、２．５以下、又は２．４以下としてもよい。

　本発明の一態様で用いる成分（Ｃ）は、一分子中にアミノ窒素原子を１つ有するモノアミン、一分子中にアミノ窒素原子を２つ有するジアミン、及び、一分子中にアミノ窒素原子を３つ以上有するポリアミンのいずれであってもよい。
　ただし、抗菌性、防錆性、及び加工性等をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、本発明の一態様で用いる成分（Ｃ）は、モノアミンを含むことが好ましい。
　モノアミンの含有割合は、水溶性金属加工油剤に含まれる成分（Ｃ）の全量（１００質量％）基準で、好ましくは５０～１００質量％、より好ましくは６０～１００質量％、より好ましくは７０～１００質量％、より好ましくは７５～１００質量％、更に好ましくは８０～１００質量％、更に好ましくは８５～１００質量％、より更に好ましくは９０～１００質量％、より更に好ましくは９５～１００質量％、特に好ましくは９８～１００質量％である。

　本発明の一態様で成分（Ｃ）として用いるモノアミンとしては、置換基Ｒの個数によって、下記式（ｉ）で表される第１級モノアミン、下記式（ii）で表される第２級モノアミン、及び下記式（iii）で表される第３級モノアミンに分類される。
　なお、希釈水を配合して金属加工液とした際に、乳化状態を良好とし、抗菌性、防錆性、及び加工性等をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、本発明の一態様で用いる成分（Ｃ）は、少なくとも第３級モノアミンを含むことが好ましく、第１級モノアミン及び第２級モノアミンの少なくとも一方と第３級モノアミンを含むことがより好ましく、少なくとも第２級モノアミン及び第３級モノアミンを含むことが更に好ましい。

　上記式中、Ｒは、それぞれ独立して、置換基を示す。複数のＲは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。該置換基としては、アルキル基、水酸基を有するアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニル基、及びベンジル基等が挙げられる。

　置換基Ｒとして選択し得る、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基（ｎ－プロピル基、ｉ－プロピル基）、ブチル基（ｎ－ブチル基、ｉ－ブチル基、ｓ－ブチル基、ｔ－ブチル基）、ペンチル基（ｎ－ペンチル基、ｉ－ペンチル基、ネオペンチル基）、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、２－エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
　当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
　また、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは１～３０、より好ましくは１～２０、更に好ましくは１～１０、より更に好ましくは１～６、特に好ましくは１～４である。

　置換基Ｒとして選択し得る、前記水酸基を有するアルキル基としては、上述のアルキル基の少なくとも１つの水素原子が水酸基に置換された基が挙げられる。
　当該基を構成するアルキル基も、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
　前記水酸基を有するアルキル基の炭素数は、好ましくは１～３０、より好ましくは１～２０、更に好ましくは１～１０、より更に好ましくは１～６、特に好ましくは２～４である。

　置換基Ｒとして選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基（ビニル基）、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
　当該アルケニル基は、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
　また、当該アルケニル基の炭素数は、好ましくは１～３０、より好ましくは１～２０、更に好ましくは１～１０、より更に好ましくは１～６、特に好ましくは１～３である。

　置換基Ｒとして選択し得る、前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。

　本発明の一態様で用いる成分（Ｃ）は、希釈水を配合して金属加工液とした際に、乳化状態を良好とし、抗菌性、防錆性、及び加工性等をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、水酸基を有するアルキル基を少なくとも１つ有するアルカノールアミンを含むことが好ましい。
　アルカノールアミンとしては、前記式（ｉ）中のＲが水酸基を有するアルキル基である第１級アルカノールアミン、前記式（ii）中のＲの少なくとも１つが水酸基を有するアルキル基である第２級アルカノールアミン、及び、前記式（iii）中のＲの少なくとも１つが水酸基を有するアルキル基である第３級アルカノールアミンが挙げられる。

　第１級アルカノールアミンとしては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、２－アミノ－２－メチル－１－プロパノール等が挙げられる。

　第２級アルカノールアミンとしては、例えば、Ｎ－メチルエタノールアミン、Ｎ－エチルエタノールアミン、Ｎ－プロピルエタノールアミン、Ｎ－ブチルエタノールアミン、Ｎ－オクチルエタノールアミン、Ｎ－ステアリルエタノールアミン、Ｎ－オレイルエタノールアミン、Ｎ－シクロヘキシルエタノールアミン、Ｎ－フェニルエタノールアミン、Ｎ－ベンジルエタノールアミン等のモノエタノールアミン；Ｎ－メチルプロパノールアミン、Ｎ－エチルプロパノールアミン、Ｎ－プロピルプロパノールアミン、Ｎ－ブチルプロパノールアミン、Ｎ－オクチルプロパノールアミン、Ｎ－ステアリルプロパノールアミン、Ｎ－オレイルプロパノールアミン、Ｎ－シクロヘキシルプロパノールアミン、Ｎ－フェニルプロパノールアミン、Ｎ－ベンジルプロパノールアミン等のモノプロパノールアミン；ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等が挙げられる。

　第３級アルカノールアミンとしては、例えば、Ｎ－ジメチルエタノールアミン、Ｎ－ジエチルエタノールアミン、Ｎ－ジプロピルエタノールアミン、Ｎ－ジブチルエタノールアミン、Ｎ－ジオクチルエタノールアミン、Ｎ－ジステアリルエタノールアミン、Ｎ－ジオレイルエタノールアミン、Ｎ－ジシクロヘキシルエタノールアミン、Ｎ－ジフェニルエタノールアミン、Ｎ－ジベンジルエタノールアミン等のモノエタノールアミン；Ｎ－ジメチルプロパノールアミン、Ｎ－ジエチルプロパノールアミン、Ｎ－ジプロピルプロパノールアミン、Ｎ－ジブチルプロパノールアミン、Ｎ－ジオクチルプロパノールアミン、Ｎ－ジステアリルプロパノールアミン、Ｎ－ジオレイルプロパノールアミン、Ｎ－ジシクロヘキシルプロパノールアミン、Ｎ－ジフェニルプロパノールアミン、Ｎ－ジベンジルプロパノールアミン等のモノプロパノールアミン；Ｎ－メチルジエタノールアミン、Ｎ－エチルジエタノールアミン、Ｎ－プロピルジエタノールアミン、Ｎ－ブチルジエタノールアミン、Ｎ－オクチルジエタノールアミン、Ｎ－ステアリルジエタノールアミン、Ｎ－オレイルジエタノールアミン、Ｎ－シクロヘキシルジエタノールアミン、Ｎ－フェニルジエタノールアミン、Ｎ－ベンジルジエタノールアミン等のジエタノールアミン；Ｎ－メチルジプロパノールアミン、Ｎ－エチルジプロパノールアミン、Ｎ－プロピルジプロパノールアミン、Ｎ－ブチルジプロパノールアミン、Ｎ－オクチルジプロパノールアミン、Ｎ－ステアリルジプロパノールアミン、Ｎ－オレイルジプロパノールアミン、Ｎ－シクロヘキシルジプロパノールアミン、Ｎ－フェニルジプロパノールアミン、Ｎ－ベンジルジプロパノールアミン等のジプロパノールアミン；トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン（トリイソプロパノールアミン等）等が挙げられる。

　これらの中でも、希釈水を配合して金属加工液とした際に、乳化状態を良好とし、抗菌性、防錆性、及び加工性等をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、本発明の一態様で用いる成分（Ｃ）は、少なくとも第３級アルカノールアミンを含むことが好ましく、第１級アルカノールアミン及び第２級アルカノールアミンの少なくとも一方と第３級アルカノールアミンを含むことがより好ましく、少なくとも第２級アルカノールアミン及び第３級アルカノールアミンを含むことが更に好ましい。

　アルカノールアミンの含有割合は、水溶性金属加工油剤に含まれる成分（Ｃ）の全量（１００質量％）基準で、好ましくは５質量％以上、より好ましくは１０質量％以上、より好ましくは２０質量％以上、更に好ましくは３０質量％以上、より更に好ましくは３５質量％以上、特に好ましくは４０質量％以上であり、さらに、４５質量％以上、５０質量％以上、又は５５質量％以上としてもよく、また、１００質量％以下、９５質量％以下、９０質量％以下、８５質量％以下、８０質量％以下、７５質量％以下、７０質量％以下、又は６５質量％以下としてもよい。

　本発明の一態様で用いる成分（Ｃ）は、脂環式アミンを含むことが好ましい。
　脂環式アミンとしては、前記式（ｉ）中のＲがシクロアルキル基である第１級脂環式アミン、前記式（ii）中のＲの少なくとも１つがシクロアルキル基である第２級脂環式アミン、及び、前記式（iii）中のＲの少なくとも１つがシクロアルキル基である第３級脂環式アミンが挙げられる。

　第１級脂環式アミンとしては、例えば、Ｎ－シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
　第２級脂環式アミンとしては、例えば、Ｎ－メチルシクロヘキシルアミン、Ｎ－エチルシクロヘキシルアミン、Ｎ－プロピルシクロヘキシルアミン、Ｎ－オレイルシクロヘキシルアミン等のモノシクロヘキシルアミン；Ｎ－シクロヘキシルエタノールアミン、Ｎ－シクロヘキシルプロパノールアミン等のモノシクロヘキシルアルカノールアミン；Ｎ－ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
　第３級脂環式アミンとしては、例えば、Ｎ－ジメチルシクロヘキシルアミン、Ｎ－ジエチルシクロヘキシルアミン、Ｎ－ジプロピルシクロヘキシルアミン、Ｎ－ジオレイルシクロヘキシルアミン、Ｎ－ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルモノシクロヘキシルアミン；Ｎ－シクロヘキシルジエタノールアミン、Ｎ－シクロヘキシルジプロパノールアミン等のモノシクロヘキシルジアルカノールアミン；Ｎ－メチルジシクロヘキシルアミン、Ｎ－エチルジシクロヘキシルアミン、Ｎ－プロピルジシクロヘキシルアミン、Ｎ－オレイルジシクロヘキシルアミン等のモノアルキルジシクロヘキシルアミン；Ｎ－ジシクロヘキシルエタノールアミン、Ｎ－ジシクロヘキシルプロパノールアミン等のジシクロヘキシルアルカノールアミン；トリシクロヘキシルアミン等が挙げられる。

　なお、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ１種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分（Ｃ）は、ジアルキルモノシクロヘキシルアミン及びモノアルキルジシクロヘキシルアミンから選ばれる１種以上を含むことが好ましく、モノアルキルジシクロヘキシルアミンを含むことがより好ましい。
　また、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ２種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分（Ｃ）は、モノシクロヘキシルジアルカノールアミン、及びジシクロヘキシルアルカノールアミンから選ばれる１種以上を含むことが好ましく、モノシクロヘキシルジアルカノールアミンを含むことがより好ましい。

　脂環式アミンの含有割合は、水溶性金属加工油剤に含まれる成分（Ｃ）の全量（１００質量％）基準で、好ましくは１０質量％以上、より好ましくは２０質量％以上、更に好ましくは２５質量％以上、より更に好ましくは３０質量％以上、特に好ましくは３５質量％以上であり、さらに、３７質量％以上、又は４０質量％以上としてもよく、また、１００質量％以下、９５質量％以下、９０質量％以下、８５質量％以下、８０質量％以下、７５質量％以下、７０質量％以下、６５質量％以下、６０質量％以下、５５質量％以下、又は５０質量％以下としてもよい。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、成分（Ｃ）として、アルカノールアミン及び脂環式アミン以外の他のアミン（ジアミンやポリアミンも含む）を含有してもよい。
　他のアミンの含有量は、前記水溶性金属加工油剤に含まれる成分（Ｃ）の全量（１００質量％）基準で、０～５０質量％、０～４０質量％、０～３０質量％、０～２０質量％、０～１０質量％、０～５．０質量％、０～２．０質量％、０～１．０質量％、０～０．１０質量％、０～０．０１質量％、０～０．００１質量％、０～０．０００１質量％、又は０～０．００００１質量％としてもよい。

＜成分（Ｄ）：脂肪酸類＞
　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、さらに脂肪酸類（Ｄ）を含有することが好ましい。
　成分（Ｄ）を含有することで、乳化安定性、防錆性、及び加工性等をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とすることができる。
　なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｄ）は、単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。

　上記と同様の観点から、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｄ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、好ましくは５～７０質量％、より好ましくは７～６０質量％、更に好ましくは１０～５０質量％、より更に好ましくは１３～４５質量％、特に好ましくは１６～４０質量％であり、さらに、１８質量％以上、２０質量％以上、２２質量％以上、又は２５質量％以上としてもよく、また、３８質量％以下、３５質量％以下、又は３２質量％以下としてもよい。

　また、上記と同様の観点から、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｄ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、好ましくは２～６０質量％、より好ましくは３～５０質量％、更に好ましくは５～４０質量％、より更に好ましくは７～３０質量％、特に好ましくは９～２５質量％であり、さらに、１０質量％以上、１２質量％以上、又は１４質量％以上としてもよく、また、２２質量％以下、２０質量％以下、又は１８質量％以下としてもよい。

　さらに、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｄ）と成分（Ａ１）との含有量比〔（Ｄ）／（Ａ１）〕は、質量比で、好ましくは０．０１～３０、より好ましくは０．０５～２５、より好ましくは０．１０～２０、更に好ましくは０．２０～１５、より更に好ましくは０．２５～１２．０、特に好ましくは０．３０～８．０であり、さらに、０．３２以上、０．３５以上、０．５０以上、０．７０以上、０．９０以上、１．００以上、１．２０以上、１．４０以上、又は１．５０以上としてもよく、また、７．０以下、６．０以下、５．０以下、４．５以下、４．０以下、３．８以下、３．６以下、３．４以下、３．２以下、３．０以下、２．８以下、２．６以下、又は２．４以下としてもよい。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、油剤の原液安定性を良好とし、加工性をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、成分（Ｃ）と成分（Ｄ）との含有量比〔（Ｃ）／（Ｄ）〕は、質量比で、好ましくは０．０１～５．０、より好ましくは０．０５～４．０、より好ましくは０．１～３．０、更に好ましくは０．２～２．５、より更に好ましくは０．３～２．０、特に好ましくは０．５～１．５であり、さらに、０．６以上、０．６５以上、０．７以上、０．７５以上、又は０．８以上としてもよく、また、１．４以下、１．３以下、１．２以下、又は１．１５以下としてもよい。

　本発明の一態様で用いる成分（Ｄ）としては、例えば、脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪酸のダイマー酸、及びヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸等が挙げられる。

　前記脂肪酸としては、例えば、オクタン酸、２－エチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸、及び、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、γ－リノレン酸、アラキドン酸、α－リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
　また、不飽和脂肪酸の混合物である、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、パーム油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、米糠油脂肪酸、綿実油脂肪酸等を用いてもよい。
　前記脂肪酸の炭素数としては、好ましくは８～３０、より好ましくは１０～２５、更に好ましくは１０～２０である。

　前記ヒドロキシ脂肪酸としては、ヒドロキシラウリル酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシアラキン酸、ヒドロキシベヘン酸、ヒドロキシオクタデセン酸等が挙げられる。
　前記ヒドロキシ脂肪酸の炭素数としては、好ましくは８～３０、より好ましくは１０～２５、更に好ましくは１０～２０である。

　前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、ドデシルコハク酸、ラウリルコハク酸、ステアリルコハク酸、イソステアリルコハク酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
　前記脂肪族ジカルボン酸の炭素数としては、好ましくは８～３０、より好ましくは１０～２５、更に好ましくは１０～２０である。

　前記ヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸を構成するヒドロキシ不飽和脂肪酸としては、リシノール酸（１２－ヒドロキシオクタデカ－９－エノン酸）等が挙げられる。また、ひまし油等のリシノール酸を含む脂肪酸混合物を用いてもよい。
　そして、前記ヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸としては、ヒドロキシ不飽和脂肪酸の脱水重縮合物である縮合脂肪酸（例えば、リシノール酸を主成分とする脂肪酸混合物の脱水縮合物であるひまし油重合脂肪酸）や、ヒドロキシ不飽和脂肪酸の脱水重縮合物である縮合脂肪酸のアルコール性水酸基とモノカルボン酸とを脱水縮合した縮合脂肪酸等が挙げられる。

　本発明の一態様で用いる成分（Ｄ）は、不飽和脂肪族モノカルボン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸、及びヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸から選ばれる１種以上（好ましくは２種以上、より好ましくは３種以上）を含むことが好ましく、少なくとも不飽和脂肪族モノカルボン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸、及びヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸をすべて含むことがより好ましい。

　成分（Ｄ）の酸価としては、加工性をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、通常０ｍｇＫＯＨ／ｇ以上であり、好ましくは１０～１００ｍｇＫＯＨ／ｇ、より好ましくは２０～９０ｍｇＫＯＨ／ｇ、更に好ましくは３０～８０ｍｇＫＯＨ／ｇである。
　成分（Ｄ）の水酸基価としては、好ましくは０～８０ｍｇＫＯＨ／ｇ、より好ましくは０～６０ｍｇＫＯＨ／ｇ、更に好ましくは０～４０ｍｇＫＯＨ／ｇである。
　成分（Ｄ）の酸価と水酸基価との比〔酸価／水酸基価〕は、上記観点から、好ましくは１．５～１５、より好ましくは２．０～１０、更に好ましくは２．５～９．５である。
　成分（Ｄ）のけん化価は、好ましくは１８０～２２０ｍｇＫＯＨ／ｇ、より好ましくは１９０～２１０ｍｇＫＯＨ／ｇ、更に好ましくは１９５～２０５ｍｇＫＯＨ／ｇである。
　なお、本明細書において、酸価は、ＪＩＳ　Ｋ２５０１：２００３（指示薬光度滴定法）に準拠して測定した値を意味し、水酸基価は、ＪＩＳ　Ｋ００７０：１９９２に準拠して測定した値を意味し、けん化価は、ＪＩＳ　Ｋ２５０３：１９９６に基づいて測定した値を意味する。

＜非イオン界面活性剤（Ｅ）＞
　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、さらに非イオン界面活性剤（Ｅ）を含有することが好ましい。成分（Ｅ）を含有することで、乳化安定性及び加工性をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とすることができる。
　なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｅ）は、単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。

　上記観点から、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｅ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、好ましくは０．５～３５．０質量％、より好ましくは１．０～３０．０質量％、更に好ましくは１．２～２５．０質量％、より更に好ましくは１．５～２０．０質量％、特に好ましくは１．７～１６．０質量％である。
　なお、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ１種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分（Ｅ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、１５．０質量％以下、１２．０質量％以下、１０．０質量％以下、８．０質量％以下、６．０質量％以下、５．０質量％以下、４．０質量％以下、又は３．５質量％以下としてもよく、また、下限は上記のとおりである。
　ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ２種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分（Ｅ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、２．０質量％以上、３．０質量％以上、４．０質量％以上、５．０質量％以上、６．０質量％以上、７．０質量％以上、８．０質量％以上、９．０質量％以上、又は１０．０質量％以上としてもよく、また、上限は上記のとおりである。

　上記観点から、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分（Ｅ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、好ましくは０．１～１５．０質量％、より好ましくは０．２～１２．０質量％、更に好ましくは０．３～１０．０質量％、より更に好ましくは０．５～８．０質量％、特に好ましくは０．７～６．０質量％である。
　なお、ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ１種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分（Ｅ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、５．０質量％以下、４．５質量％以下、４．０質量％以下、３．５質量％以下、３．０質量％以下、又は２．５質量％以下としてもよく、また、下限は上記のとおりである。
　ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定する、Ａ２種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分（Ｅ）の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、１．０質量％以上、１．２質量％以上、１．５質量％以上、２．０質量％以上、２．５質量％以上、３．０質量％以上、３．５質量％以上、又は４．０質量％以上としてもよく、また、上限は上記のとおりである。

　本発明の一態様で用いる成分（Ｅ）のＨＬＢは、乳化安定性及び加工性をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、好ましくは６．０以上、より好ましくは７．０以上、更に好ましくは８．０以上、より更に好ましくは９．０以上、特に好ましくは１０．０以上であり、また、１８．０以下であり、好ましくは１７．０以下、より好ましくは１６．０以下、更に好ましくは１５．０以下、より更に好ましくは１４．５以下である。
　なお、本明細書において、ＨＬＢは、グリフィン法により算出された値を意味する。

　本発明の一態様で用いる成分（Ｅ）としては、例えば、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン（ココアミンアルキレンオキサイド付加物）、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのポリオキシアルキレン付加物の脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。

　これらの中でも、乳化安定性及び加工性をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、本発明の一態様で用いる成分（Ｅ）は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルアミンから選ばれる１種以上を含むことが好ましい。
　ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルアミンの合計含有割合は、水溶性金属加工油剤に含まれる成分（Ｅ）の全量（１００質量％）基準で、好ましくは５０～１００質量％、より好ましくは７０～１００質量％、更に好ましくは８０～１００質量％、より更に好ましくは９０～１００質量％、特に好ましくは９５～１００質量％である。

＜硫黄系極圧剤＞
　本発明の水溶性金属加工油剤は、基油（Ａ）として油溶性ＰＡＧ（Ａ１）を含むため、銅を含む部材の腐食を引き起こす要因となる硫黄系極圧剤を含有しなくても、優れた加工性を有する金属加工液を調製することができる。そのため、銅を含む部材の腐食を抑制効果が高い金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、硫黄系極圧剤を実質的に含有しないことが好ましい。
　なお、硫黄系極圧剤としては、例えば、硫化オレフィン、硫化ラード、アルキルポリサルファイド、硫化脂肪酸等が挙げられる。

　また、本明細書において、「硫黄系極圧剤を実質的に含有しない」とは、所定の目的をもって、硫黄系極圧剤を含有させる態様を否定する規定であって、他成分の不純物として意図せずに硫黄系極圧剤が混入して含まれる態様までを否定する規定ではない。ただし、このように意図せずに硫黄系極圧剤が混入してしまう態様を考慮しても、銅を含む部材の腐食を抑制効果が高い金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、硫黄系極圧剤の含有量は、極力少ない程好ましい。
　具体的な硫黄系極圧剤の含有量は、前記水溶性金属加工油剤に含まれる成分（Ａ１）の全量１００質量部に対して、好ましくは１０質量部未満、より好ましくは１質量部未満、更に好ましくは０．１質量部未満、より更に好ましくは０．０１質量部未満、特に好ましくは０．００１質量部未満である。

＜他の各種添加剤＞
　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記成分（Ａ）～（Ｅ）以外の他の各種添加剤をさらに含有してもよい。
　そのような他の各種添加剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、石油スルホネート、硫黄系以外の極圧剤、金属不活性化剤、乳化助剤、抗菌剤、消泡剤、酸化防止剤、油性剤等が挙げられる。
　なお、これらの各種添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。

　なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、これらの各種添加剤のそれぞれの含有量としては、各成分の種類及び機能によって適宜設定されるが、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量（１００質量％）基準で、好ましくは０．００１～５０質量％、より好ましくは０．０１～４０質量％、更に好ましくは０．０７～３０質量％、より更に好ましくは０．１～２０質量％である。

　なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、これらの各種添加剤のそれぞれの含有量としては、各成分の種類及び機能によって適宜設定されるが、当該水溶性金属加工油剤の全量（１００質量％）基準で、好ましくは０．００１～２５質量％、より好ましくは０．０１～２０質量％、更に好ましくは０．０３～１５質量％、より更に好ましくは０．０５～１０質量％である。

　アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、α－オレフィンスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。
　なお、アニオン性界面活性剤の酸価は、好ましくは２０～２５０ｍｇＫＯＨ／ｇ、より好ましくは３０～２００ｍｇＫＯＨ／ｇ、更に好ましくは４０～１９０ｍｇＫＯＨ／ｇ、より更に好ましくは５０～１８０ｍｇＫＯＨ／ｇである。
　カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。

　石油スルホネートとしては、例えば、カルシウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、マグネシウムスルホネート等が挙げられる。

　硫黄系以外の極圧剤としては、例えば、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸、塩素化脂肪油等の塩素系極圧剤；リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステル、及びこれらの塩、ホスフィン系、リン酸トリクレジル等のリン系極圧剤；等が挙げられる。

　金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、及びチアジアゾール等が挙げられる。

　乳化助剤としては、例えば、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル等の不飽和脂肪酸エステル；２－フェノキシエタノール、２－フェニルエチルアルコールの芳香族アルコール；等が挙げられる。

　抗菌剤としては、例えば、イソチアゾリン系化合物、トリアジン系化合物、アルキルベンゾイミダゾール系化合物、金属ピリチオン塩等が挙げられる。

　消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、フルオロシリコーン系消泡剤、ポリアクリレート等が挙げられる。

　酸化防止剤としては、例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、アルキル化フェニルナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤；２、６－ジ－ｔ－ブチルフェノール、４，４’－メチレンビス（２，６ージーｔーブチルフェノール）、イソオクチル－３－（３，５－ジ－ｔ－ブチル－４－ヒドロキシフェニル）プロピオネート、ｎ－オクタデシル－３－（３，５－ジ－ｔ－ブチル－４－ヒドロキシフェニル）プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤；等が挙げられる。

　油性剤としては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類が挙げられる。

＜水溶性金属加工油剤の製造方法＞
　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤の製造方法としては、特に制限はなく、上述の成分（Ａ）、必要に応じて、成分（Ｂ）～（Ｅ）及び他の各種添加剤を配合する工程を有する、方法であることが好ましい。各成分の配合の順序は適宜設定することができる。

〔水溶性金属加工油剤の性状〕
　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤の酸価は、好ましくは１０～７０ｍｇＫＯＨ／ｇ、より好ましくは１５～６０ｍｇＫＯＨ／ｇ、更に好ましくは２０～５０ｍｇＫＯＨ／ｇ、より更に好ましくは２５～４０ｍｇＫＯＨ／ｇである。
　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤の塩基価は、好ましくは１０～１００ｍｇＫＯＨ／ｇ、より好ましくは２０～９０ｍｇＫＯＨ／ｇ、更に好ましくは３０～８０ｍｇＫＯＨ／ｇ、より更に好ましくは４０～７０ｍｇＫＯＨ／ｇである。
　なお、本明細書において、塩基価は、ＪＩＳ　Ｋ２５０１：２００３（塩酸法）に準拠して測定した値を意味する。

　本発明の一態様の水溶性金属加工油剤の塩基価と酸価との比〔塩基価／酸価〕は、好ましくは１．０～４．０、より好ましくは１．１～３．５、更に好ましくは１．３～３．２、より更に好ましくは１．５～３．０、特に好ましくは１．７～２．８である。
　当該比が１．０以上であれば、耐腐敗性が良好な水溶性金属加工油剤とすることができる。一方、当該比が４．０以下であれば、人体の皮膚への刺激性を小さくすることができ、取扱性の点で好ましい。

〔金属加工液の形態〕
　本発明の金属加工液は、上述の本発明の一態様の金属加工油剤を原液とし、当該金属加工油剤に希釈水を配合してなるものである。
　希釈水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等のいずれであってもよい。

　金属加工液を調製する際の希釈水の配合量は、前記水溶性金属加工油剤の水以外の成分の全量１００質量部に対して、４００質量部超であるが、所望の希釈濃度となるように適宜調整することが好ましい。
　本発明の一態様の金属加工液の希釈濃度としては、好ましくは１～５０体積％、より好ましくは３～４０体積％、更に好ましくは５～２０体積％である。
　なお、本明細書において、上記の「金属加工液の希釈濃度」は、下記式から算出された値を意味する。
・「金属加工液の希釈濃度（体積％）」＝〔希釈前の金属加工油剤としての体積〕／［〔希釈前の金属加工油剤としての体積〕＋〔希釈水の体積〕］×１００

〔金属加工液の用途、金属加工方法〕
　本発明の好適な一態様の金属加工液は、従来の金属加工液に比べて、加工性に優れており、金属加工に好適に使用し得る。また、本発明の好適な一態様の金属加工液は、硫黄系極圧剤を含有せずとも、優れた加工性を発現させることができる。そのため、硫黄系極圧剤が要因となる、加工機を構成する銅を含む部材の腐食を効果的に抑制することができる。

　本発明の一態様の金属加工液を用いて加工する被加工材としては、特に制限は無いが、鉄、チタン、アルミニウム、チタン合金、合金鋼、ニッケル基合金、ニオブ合金、タンタル合金、モリブデン合金、タングステン合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金、及び高マンガン鋼からなる群より選ばれる金属からなる被加工材に特に好適である。これらの中でも、特に、鉄又はアルミニウムを少なくとも含む部材を有する被加工材に適している。

　そのため、本発明は、下記〔１〕及び〔２〕も提供し得る。
〔１〕上述の本発明の一態様の金属加工液を金属からなる被加工材の加工に適用する、使用方法。
〔２〕上述の本発明の一態様の金属加工液を適用して、金属からなる被加工材を加工する、金属加工方法。

　上記〔１〕及び〔２〕に記載の被加工材は、上述のとおりであるが、鉄又はアルミニウムを少なくとも含む部材を有する被加工材が好適である。
　また、上記〔１〕及び〔２〕に記載の方法によれば、前記被加工材の加工に用いる加工機を構成する銅を含む部材の腐食を抑制ことができる。

　上記〔１〕及び〔２〕において、被加工材の加工としては、例えば、切削加工、研削加工、打抜き加工、研摩、絞り加工、抽伸加工、圧延加工等が挙げられる。
　なお、上記〔１〕の使用方法、及び、上記〔２〕の金属加工方法において、金属加工液は、上述の本発明の一態様の水溶性金属加工油剤に希釈水を配合した上で、被加工材に供給して、被加工材に接触させて使用される。金属加工液は、被加工材と加工具との間を潤滑する。更には、切り屑の除去、被加工材の錆止め、工具及び被加工材の冷却等のためにも使用される。

　次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
　なお、以下の実施例において、下記の物性値の測定方法及び算出方法は以下に示すとおりである。
（１）動粘度、粘度指数
　ＪＩＳ　Ｋ２２８３：２０００に準拠して測定及び算出した。
（２）ＨＬＢ
　グリフィン法に基づいて算出した。
（３）酸価（指示薬光度滴定法）
　ＪＩＳ　Ｋ２５０１：２００３（指示薬光度滴定法）に準拠して測定した。
（４）塩基価（塩酸法）
　ＪＩＳ　Ｋ２５０１：２００３（塩酸法）に準拠して測定した。

実施例１～８、比較例１～４
　表２及び表３に示す種類の各種成分を、表２及び表３に示す配合量にて添加して混合して、水溶性金属加工油剤をそれぞれ調製した。当該水溶性金属加工油剤の調製に使用した、各成分の詳細は以下のとおりである。

＜成分（Ａ１）＞
・油溶性ＰＡＧ（ａ－１）：ＩＳＯ　３４４８で規定の粘度グレードのＶＧ３２に適合する油溶性ポリアルキレングリコール。
・油溶性ＰＡＧ（ａ－２）：ＩＳＯ　３４４８で規定の粘度グレードのＶＧ４６に適合する油溶性ポリアルキレングリコール。
・油溶性ＰＡＧ（ａ－３）：ＩＳＯ　３４４８で規定の粘度グレードのＶＧ６８に適合する油溶性ポリアルキレングリコール。
＜成分（Ａ２）＞
・パラフィン系鉱油：４０℃動粘度＝７．１１７ｍｍ^２／ｓ、粘度指数＝１０９のパラフィン系鉱油。
＜成分（Ｂ）＞
・水：イオン交換水
＜成分（Ｃ）＞
・アミン（ｃ－１）：Ｎ－メチルエタノールアミン、第２級モノアミン
・アミン（ｃ－２）：Ｎ－シクロヘキシルジエタノールアミン、第３級モノアミン
・アミン（ｃ－３）：Ｎ－メチルジエタノールアミン、第３級モノアミン
・アミン（ｃ－４）：トリイソプロパノールアミン、第３級モノアミン
・アミン（ｃ－５）：Ｎ－メチルジシクロヘキシルアミン、第３級モノアミン
＜成分（Ｄ）＞
・脂肪酸類（ｄ－１）：ネオデカン酸
・脂肪酸類（ｄ－２）：トール油脂肪酸
・脂肪酸類（ｄ－３）：ドデカン二酸
・脂肪酸類（ｄ－４）：ひまし油重合脂肪酸（リシノレイン酸６量体、酸価：３１．６ｍｇＫＯＨ／ｇ、水酸基価：９．４ｍｇＫＯＨ／ｇ、酸価／水酸基価＝３．３６）
＜成分（Ｅ）＞
・非イオン性界面活性剤（ｅ－１）：ココアミンエチレンオキサイド２モル付加物、ＨＬＢ＝６．３
・非イオン性界面活性剤（ｅ－２）：ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ＨＬＢ＝１２．７
＜硫黄系極圧剤＞
・ジオクチルポリスルフィド
＜他の成分＞
・アニオン性界面活性剤：ポリオキシエチレンオレイルエーテルカルボン酸、酸価＝６９．３ｍｇＫＯＨ／ｇ。
・金属不活性化剤：ベンゾトリアゾール
・乳化助剤：２－フェノキシエタノール
・抗菌剤：１，２－ベンゾイソチアゾリン－３－オン
・消泡剤：シリコーン系消泡剤

　調製した水溶性金属加工油剤の酸価、塩基価、及び塩基価／酸価の比を測定及び算出すると共に、当該水溶性金属加工油剤を用いて、以下の評価を行った。これらの結果を表２及び表３に示す。
（１）油剤タイプの分類
　ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７の規定に準拠して、同規定のＡ１種のエマルション型油剤もしくはＡ２種のソルブル型油剤に分類した。なお、表２及び表３においては、Ａ１種のエマルション型油剤に分類された場合は「Ｅ」、Ａ２種のソルブル型油剤に分類された場合は「Ｓ」と記載した。

（２）銅板腐食試験
　ＪＩＳ　Ｋ２５１３に準拠した試験方法にて、油温５０℃で４８時間の条件で試験を行い、銅板の変色度合いを観察し、下記表１に示すＪＩＳ　Ｋ２５１３の「表１　銅板腐食標準による腐食の分類」に基づいて、銅板の腐食の程度を評価した。なお、表２及び３においては、「変色番号（細分記号）」で記載しており、変色番号は、１～４の数値で銅板の腐食の程度を示しており、数値が大きいほど腐食が進行していることを示す。

（３）加工性の評価
　水溶性金属加工油剤にイオン交換水を加えて希釈し、希釈濃度５体積％の金属加工液を調製した。調製した金属加工液を用いて、以下の条件で下穴ドリル加工を行った後、タッピングトルク試験を行い、加工時の最大タップトルクを測定した。測定は３回行い、その結果の平均値及び最大値を表２及び表３に記載した。
　当該平均値及び最大値が小さいほど、用いた金属加工液の金属加工性が優れているといえる。
＜下穴加工条件＞
・使用機械：タッピングセンターＭＴＶ－Ｔ３５０（株式会社メクトロン製）
・ドリル：ＳＧ－ＥＳＳ（株式会社不二越製）、ドリル径：５．５６ｍｍ
　　・切削速度：３１ｍ／ｍｉｎ
　　・回転速度：１７９８ｍｉｎ^－１
　　・送り速度：２６０ｍｍ／ｍｉｎ
　　・一回転あたりの送り量：０．１４５ｍｍ／ｒｅｖ
　　・深さ：１５ｍｍ
＜タッピングトルク試験＞
・使用試験機：Ｍｅｇａｔａｐ　II（micro-electronische Gerate GmbH）
・タップ：ニューロールタップ　ＶＰ－ＮＲＴ　Ｂ　Ｍ６×１（オーエスジー株式会社製）
　　・切削速度：１０ｍ／ｍｉｎ
　　・送り量：１．０ｍｍ／ｒｅｖ
　　・深さ：１２ｍｍ
　　・加工ｎ数：３
・被削材：ＳＣＭ４４０（ＪＩＳ規格）（クロムモリブデン鋼）

　表２及び表３から、実施例１～８の水溶性金属加工油剤を希釈して調製した金属加工液は、ソルブル型及びエマルション型のいずれにおいても、銅板腐食が抑制されており、加工性も良好であった。一方で、比較例１～４の水溶性金属加工油剤を希釈して調製した金属加工液は、銅板腐食の抑制効果及び加工性の少なくとも一方で劣る結果となった。

Claims

　油溶性ポリアルキレングリコール（Ａ１）を含む基油（Ａ）を含有し、
　水溶性ポリアルキレングリコール及びメトキシポリエチレングリコールの合計含有量が、水を除く全量基準で６０質量％未満である、水溶性金属加工油剤。
　水溶性ポリアルキレングリコール及びメトキシポリエチレングリコールの合計含有量が、成分（Ａ１）の全量１００質量部に対して、１０質量部未満である、請求項１に記載の水溶性金属加工油剤。
　硫黄系極圧剤を実質的に含有しない、請求項１又は２に記載の水溶性金属加工油剤。
　さらに水（Ｂ）を含有する、請求項１～３のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
　成分（Ａ）中の成分（Ａ１）の含有割合が、前記水溶性金属加工油剤に含まれる成分（Ａ）の全量基準で、１０～１００質量％である、請求項１～４のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
　成分（Ａ１）の含有量が、前記水溶性金属加工油剤の水を除く全量基準で、０．０１質量％以上である、請求項１～５のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
　さらにアミン系化合物（Ｃ）を含有する、請求項１～６のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
　さらに脂肪酸類（Ｄ）を含有する、請求項１～７のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
　さらに非イオン性界面活性剤（Ｅ）を含有する、請求項１～８のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
　ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定するＡ１種に分類されるエマルション型の油剤である、請求項１～９のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
　ＪＩＳ　Ｋ２２４１：２０１７で規定するＡ２種に分類されるソルブル型の油剤である、請求項１～９のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
　油溶性ポリアルキレングリコール（Ａ１）を含む基油（Ａ）を含有し、
　水溶性ポリアルキレングリコール及びメトキシポリエチレングリコールの合計含有量が、成分（Ａ）の全量１００質量部に対して、１０質量部未満である、水溶性金属加工油剤。
　請求項１～１２のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤に、希釈水を配合してなる、金属加工液。
　請求項１３に記載の金属加工液を適用して、金属からなる被加工材を加工する、金属加工方法。
　前記被加工材が、鉄又はアルミニウムを少なくとも含む部材を有する、請求項１４に記載の金属加工方法。
　前記被加工材の加工に用いる加工機を構成する銅を含む部材の腐食を抑制する、請求項１４又は１５に記載の金属加工方法。