WO2022024896A1 - 有機機能膜付き基板の製造方法 - Google Patents

有機機能膜付き基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

基板と、この基板上に開口部を規定する隔壁と、この隔壁内に有機機能膜とを有する有機機能膜付き基板の製造方法であって、有機機能材料と、低揮発性高粘度溶媒を含む溶媒とを含む有機機能インクを隔壁内にインクジェット法で塗布する工程と、減圧することで、隔壁内に塗布された有機機能インクから溶媒を除去して有機機能膜を形成する工程とを備え、低揮発性高粘度溶媒の25℃における粘度が200mPa・s以上で、低揮発性高粘度溶媒を150℃で加熱しながら、常圧から140Paまで1分間で減圧した場合に、当該低揮発性高粘度溶媒の残存率が80質量%以上であり、上記溶媒中の低揮発性高粘度溶媒の含有量が2.5質量%以上である製造方法。これによれば、インク塗布のタイミングの相違に起因する有機機能層の形状のばらつきを抑制でき、平坦性の良好な有機機能膜を有する有機機能膜付き基板を製造することができる。

Description

有機機能膜付き基板の製造方法
 本発明は、有機機能膜付き基板の製造方法に関する。
 有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子には、発光層や電荷注入層として、有機化合物からなる有機機能膜が用いられる。特に、正孔注入層は、陽極と、正孔輸送層あるいは発光層との電荷の授受を担い、有機EL素子の低電圧駆動および高輝度を達成するために重要な機能を果たす。
 正孔注入層の形成方法は、蒸着法に代表されるドライプロセスと、スピンコート法に代表されるウェットプロセスとに大別され、これら各プロセスを比べると、ウェットプロセスの方が大面積に平坦性の高い薄膜を効率的に製造できる。それゆえ、有機ELディスプレイの大面積化が進められている現在、ウェットプロセスで形成可能な正孔注入層が望まれており、ウェットプロセスで成膜可能な正孔注入層に関する技術の報告がなされている(特許文献1)。
 ところで、有機ELディスプレイの製造において、インクジェット法等のウェットプロセスで正孔注入層やその他の有機機能層を形成する場合、一般的に、層の形成領域を取り囲むように隔壁(バンク)を設け、その隔壁の開口部内に有機機能インクが塗布される。この際、有機機能膜の不均一性に関する問題が発生することがあり、これは、得られる有機EL素子の発光ムラの原因となり得る。
 また、有機ELディスプレイの製造においては、基板上に設けられた上記隔壁の開口部内に有機機能インクを順次塗布した後に、加熱や減圧によって有機溶媒を除去する工程等を経て、有機機能層を形成する。
 この場合、基板上に塗布した順番にインクの乾燥が順次始まるため、複数の隔壁内において、インク塗布のタイミングの相違に起因した、有機機能層の形状にばらつきが生じる(特許文献2)。この問題は、用いる基板がより大きいほど顕著になるが、昨今のディスプレイの大型化に伴い、このようなばらつきの抑制に関する技術への要求もさらに高まっている。
国際公開第2008/032616号 特許第5595102号公報
 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インク塗布のタイミングの相違に起因する有機機能層の形状のばらつきを抑制でき、平坦性の良好な有機機能膜を有する有機機能膜付き基板の製造方法を提供することを目的とする。
 上記特許文献2の技術は、インクジェットノズルから吐出される液体の温度を制御することで、基板に着弾した液体の乾燥速度を均一な状態に近づけて上記課題を解決するものであるが、特殊な装置を必要とするもので汎用性に欠ける。そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために、有機機能インクを構成する溶媒の揮発性および粘度という観点から鋭意検討を重ねた結果、有機機能インクの溶媒として所定の揮発特性と所定の粘度特性を有する低揮発性高粘度溶媒を用いることで、当該インクをインクジェット塗布にて隔壁内に塗布した場合に、インク塗布のタイミングの相違に起因する有機機能層の形状のばらつきを抑制でき、平坦性の良好な有機機能膜を有する有機機能膜付き基板を作製できることを見出し、本発明を完成させた。
 すなわち、本発明は、
1. 基板と、この基板上に開口部を規定する隔壁と、この隔壁内に有機機能膜とを有する有機機能膜付き基板の製造方法であって、
 有機機能材料と、低揮発性高粘度溶媒を含む溶媒とを含む有機機能インクを前記隔壁内にインクジェット法で塗布する工程と、
 減圧することで、前記隔壁内に塗布された有機機能インクから溶媒を除去して有機機能膜を形成する工程と、を備え、
 前記低揮発性高粘度溶媒の25℃における粘度が、200mPa・s以上であり、
 前記低揮発性高粘度溶媒を150℃で加熱しながら、常圧から140Paまで1分間で減圧した場合に、当該低揮発性高粘度溶媒の残存率が、80質量%以上であり、
 前記溶媒中の前記低揮発性高粘度溶媒の含有量が、2.5質量%以上であることを特徴とする有機機能膜付き基板の製造方法、
2. 前記低揮発性高粘度有機溶媒が、下記式(S1)で表される化合物である1の有機機能膜付き基板の製造方法、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
(式中、Rは、水酸基または炭素数1~10のアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、R’は、2価炭化水素基を表す。)
3. 前記Rが、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基を表し、前記R’が、炭素数1~5のアルキレン基を表す2の有機機能膜付き基板の製造方法、
4. 前記低揮発性高粘度溶媒が、2-アセドアミドエタノールおよびN-(2-ヒドロキシエチル)ラクトアミドから選ばれる少なくとも1種である1~3のいずれかの有機機能膜付き基板の製造方法、
5. 前記溶媒中の前記低揮発性高粘度溶媒の含有量が、5.0質量%以上である1~4のいずれかの有機機能膜付き基板の製造方法、
6. 前記溶媒が、前記低揮発性高粘度溶媒以外の溶媒として、沸点180℃以上で、前記低揮発性高粘度溶媒よりも高揮発性かつ低粘度の溶媒のみを含む1~5のいずれかの有機機能膜付き基板の製造方法、
7. 前記低揮発性高粘度溶媒以外の溶媒が、親水性グリコール系溶媒を15~40質量%の割合で含む6の有機機能膜付き基板の製造方法、
8. 前記低揮発性高粘度溶媒以外の溶媒が、25℃における表面張力が40mN/m以下の溶媒を30~50質量%の割合で含む6の有機機能膜付き基板の製造方法、
9. 前記低揮発性高粘度溶媒以外の溶媒が、25℃における粘度が10mPa・s以下の溶媒を60~85質量%含む6の有機機能膜付き基板の製造方法、
10. 前記有機機能材料が、アリールアミン誘導体またはポリチオフェン誘導体である1~9のいずれかの有機機能膜付き基板の製造方法、
11. 1~10のいずれかの製造方法によって得られた有機機能膜付き基板の上に、さらに有機機能層を作製する工程を含む電子素子の製造方法、
12. 基板と、この基板上に開口部を規定する隔壁と、この隔壁内に有機機能膜とを有する有機機能膜付き基板を製造する際に、前記隔壁内にインクジェット法で塗布されるインクジェット法用インクであって、
 有機機能材料と、低揮発性高粘度溶媒を含む溶媒とを含み、
 前記低揮発性高粘度溶媒の25℃における粘度が、200mPa・s以上であり、
 前記低揮発性高粘度溶媒を150℃で加熱しながら、常圧から140Paまで1分間で減圧した場合に、当該低揮発性高粘度溶媒の残存率が、80質量%以上であり、
 前記溶媒中の前記低揮発性高粘度溶媒の含有量が、2.5質量%以上であることを特徴とするインクジェット法用インク、
13. 前記低揮発性高粘度有機溶媒が、下記式(S1)で表される化合物であるインクジェット法用インク、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
(式中、Rは、水酸基または炭素数1~10のアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、R’は、2価炭化水素基を表す。)
14. 前記Rが、水酸基で置換されている炭素数1~5のアルキル基を表し、前記R’が、炭素数1~5のアルキレン基を表す13のインクジェット法用インク
を提供する。
 本発明の有機機能膜付き基板の製造方法によれば、複数の隔壁内において、インク塗布のタイミングの相違に起因する有機機能層の形状のばらつきを抑制でき、平坦性の良好な有機機能膜を有する有機機能膜付き基板を効率的に作製することができる。
 すなわち、本発明の製造方法に用いられるインクは、所定の低揮発性高粘度溶媒を含んでいることから、塗布後に一定時間放置しても、得られる塗膜の形状が変化しにくく、例えば、最初の隔壁内に塗布されたインク(塗膜)の形状と最後の隔壁内に塗布されたインク(塗膜)の形状との間に大きな変化がなく、安定して平坦性の良好な有機機能膜を作製することができる。
 以下、本発明についてさらに詳しく説明する。なお、本発明においては、有機機能インクに関する「固形分」とは、当該インクに含まれる溶媒以外の成分を意味する。また、電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性と同義である。
 本発明に係る有機機能膜付き基板の製造方法は、基板と、この基板上に開口部を規定する隔壁と、この隔壁内に有機機能膜とを有する有機機能膜付き基板の製造方法であって、有機機能材料と、低揮発性高粘度溶媒を含む溶媒とを含む有機機能インクを隔壁内にインクジェット法で塗布する工程と、減圧することで、隔壁内に塗布された有機機能インクから溶媒を除去して有機機能膜を形成する工程と、を備えるもので、上記溶媒として、低揮発性高粘度溶媒の含有量が2.5質量%以上のものを用いるとともに、上記低揮発性高粘度溶媒として、25℃における粘度が、200mPa・s以上で、150℃で加熱しながら、常圧から140Paまで1分間で減圧した場合の残存率が、80質量%以上のものを用いることを特徴とする。
 本発明は、有機機能インクの溶媒(以下、インク溶媒ともいう)として、25℃における粘度が200mPa・s以上であり、150℃で加熱しながら、常圧から140Paまで1分間で減圧した場合の残存率が80質量%以上の低揮発性高粘度有機溶媒を2.5質量%以上の割合で含む溶媒を用いる。
 このような溶媒を用いることで、隔壁内において、インク塗布のタイミングの相違に起因する有機機能層の形状のばらつきを抑制でき、隔壁内における膜の均一性(平坦性)が良好な有機機能膜を有する有機機能膜付き基板を効率的に作製することができる。
 上記残存率は、80質量%以上であれば特に限定されるものではないが、インク塗布のタイミングの相違に起因する有機機能層の形状のばらつき抑止効果をより高めることを考慮すると、85質量%以上が好ましく、88質量%以上がより好ましい。
 なお、具体的には、上記残存率は、例えば、次の方法で求めることができる。
 約0.04gの有機溶媒をアルミパン(φ5×5、Cat.No.8579、(株)リガク製)に量り取り、アルミパンとともに有機溶媒の重さを量る(質量Wt(B))。そして、このアルミパンを、加熱減圧装置(例えば、柴田科学(株)製 ベルジャー型バキュームオーブン BV-001型)内のヒーター上に置いた後、直ちに装置のガラス蓋をして真空ポンプで内部を減圧することによって、1分間の加熱減圧処理を行う。この際、減圧に用いる真空ポンプの減圧度は、例えば、10秒後は1000Pa、20秒後は450Pa、30秒後は300Pa、40秒後は210Pa、50秒後は150Pa、60秒後140Paである。また、例えば、加熱減圧装置内のヒーターは、150℃に設定する。
 1分間の加熱減圧処理の後、直ちにアルミパンを取り出して放冷し、アルミパンとともに有機溶媒の重さを量る(質量Wt(A))。
 上記の方法で求めた質量Wt(B)および質量Wt(A)を用い、[質量Wt(A)/質量Wt(B)]×100の式に従って溶媒残存率(%)を算出する。
 上述のとおり、インク溶媒中における低揮発性高粘度有機溶媒の含有量は2.5質量%以上であるが、上記隔壁内における膜の均一性を再現性よく高めるという観点から、3.0質量%以上が好ましく、3.5質量%以上がより好ましく、4.0質量%以上がより一層好ましく、4.5質量%以上がさらに好ましく、5.0質量%以上がさらに一層好ましい。また、インク溶媒中における低揮発性高粘度有機溶媒の含有量の上限は、膜の均一性が良好となる限り特に制限はないが、隔壁内において塗布されたインクの這い上がり現象の抑制、有機機能材料の溶解性向上、隔壁内におけるインクの濡れ広がり性の向上、インク粘度を適正範囲に保つなどの点を考慮すると、通常50質量%、好ましくは40質量%、より好ましくは30質量%、より一層好ましくは20質量%、さらに好ましくは15質量%である。
 また、低揮発性高粘度有機溶媒の25℃における粘度は、200mPa・s以上であれば特に制限はないが、上記隔壁内における膜の均一性を再現性よく高めるという観点から、210mPa・s以上が好ましく220mPa・s以上がより好ましい。なお、粘度の上限は、有機機能インクとして使用可能な粘度に調整可能であれば制限はないが、2000mPa・s以下が好ましい。
 インク溶媒に用いられる低揮発性高粘度有機溶媒は、上記残存率の特性を満たす化合物であれば、特に限定されるものではないが、本発明においては、特に、下記式(S1)で表される化合物が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 式(S1)において、Rは、水酸基(ヒドロキシ基)、炭素数1~10のアルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい、炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、R’は、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい、炭素数1~10の2価炭化水素基を表す。
 上記Rの1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等の炭素数1~10のアルキル基;ビニル、n-1-プロペニル、n-2-プロペニル、1-メチルビニル、n-1-ブテニル、n-2-ブテニル、n-3-ブテニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-エチルビニル、1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、n-1-ペンテニル、n-1-デセニル基等の炭素数2~10のアルケニル基;フェニル、トリル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
 なお、これらの1価炭化水素基は、その水素原子の1つ以上が水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
 炭素数1~10のアルコキシ基は、その中のアルキル基が、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、シクロペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
 上記R’の2価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デシレン基等のアルキレン基;1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,5-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,7-ナフチレン、2,6-ナフチレン基等のアリーレン基などが挙げられる。
 これらの中でも、Rとしては、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基、2-ヒドロキシプロピル基がより一層好ましい。
 また、R’としては、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、炭素数1~3のアルキレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基がより一層好ましい。
 したがって、RおよびR’の組み合わせとしては、Rが水酸基で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基、R’が、炭素数1~5のアルキレン基の組み合わせが好ましく、Rが水酸基で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基、R’が、炭素数1~3のアルキレン基の組み合わせがより好ましく、Rが、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基、R’が、エチレン基の組み合わせがより一層好ましい。
 上述した残存率の特性および粘度の特性を満足する、上記式(S1)で表される低揮発性高粘度溶媒の具体例としては、2-アセドアミドエタノール(粘度220mPa・s)、N-(2-ヒドロキシエチル)ラクトアミド(粘度1633mPa・s)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明における粘度は、例えば、東機産業(株)製、TVE-25形粘度計により測定することができる(以下、同様)。
 なお、低揮発性高粘度溶媒は、上述した溶媒中での含有量の条件を満たす限り、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
 なお、低揮発性高粘度溶媒は、上述した溶媒中での含有率を満たす限り、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
 本発明で用いるインク溶媒は、上述した低揮発性高粘度溶媒を2.5質量%以上含むものであれば特に限定されるものではなく、残余(97.5質量%以下)の溶媒成分(低揮発性高粘度溶媒以外の溶媒成分)としては、有機機能インクに用いられる溶媒から適宜選択して用いることができるが、隔壁内でのインクの這い上がりを再現性よく抑制するという観点から、大気圧(1.013×105Pa)下において、沸点180℃以上で、低揮発性高粘度溶媒よりも高揮発性かつ低粘度の溶媒を用いることが好ましい。
 このような溶媒の具体例としては、
 エチレングリコール(沸点197℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、ジエチレングリコール(沸点244℃)、ジプロピレングリコール(沸点232℃)、トリエチレングリコール(沸点287℃)、トリプロピレングリコール(沸点273℃)、ヘキシレングリコール(沸点197℃)、1,2-ブタンジオール(沸点193℃)、2,3-ブタンジオール(沸点182℃)、1,3-ブタンジオール(沸点207℃)、1,4-ブタンジオール(沸点228℃)、1,5-ペンタンジオール(沸点239℃)等の親水性グリコール系溶媒;
 エチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点208℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点196℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点229℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(沸点230℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルカルビトール)、2-エチルヘキシルカルビトール(沸点272℃)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点210℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点243℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点193℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点274℃)、2-フェノキシエタノール(沸点245℃)等のグリコールモノエーテル溶媒;
 エチレングリコールジブチルエーテル(沸点202℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点188℃)、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(沸点203℃)、ジプロピレングリコールジエチルエーテル(沸点221℃)、ジプロピレングリコールジブチルエーテル(沸点296℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点216℃)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点261℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点276℃)等のグリコールジエーテル溶媒;
 エチレンカーボネート(沸点238℃)、プロピレンカーボネート(沸点242℃)等の環状カーボネート溶媒などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
 特に、後述する有機機能材料のインク中での溶解性を確保するという観点、上記隔壁内における膜の均一性を再現性よく高めるという観点、バンク際のパイルアップ現象を抑制する観点等から、本発明で用いられるインク溶媒は、親水性グリコール系溶媒を15~40質量%含むことが好ましく、20~35質量%含むことがより好ましい。
 この親水性グリコール系溶媒としては、上記沸点180℃以上で、低揮発性高粘度溶媒よりも高揮発性かつ低粘度の溶媒で例示したグリコール系溶媒と同様のものが挙げられる。
 なお、パイルアップ現象とは、開口部内に塗布されたインクが隔壁の側面を這い上がり、隔壁の側面と接触する塗膜周縁部の厚みが塗膜中央部よりも厚くなる、いわゆる這い上がり現象である。
 また、隔壁内でのインクの濡れ広がり性を確保するという観点から、本発明で用いるインク溶媒は、25℃における表面張力が40mN/m以下の溶媒を30~50質量%含むことが好ましく、30~40質量%含むことがより好ましい。
 このような溶媒の具体例としては、プロピレングリコール(表面張力36.2mN/m)等の親水性グリコール系溶媒;
 エチレングリコールモノヘキシルエーテル(表面張力27.7mN/m)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(表面張力26.3mN/m)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(表面張力31.3mN/m)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(表面張力31.3mN/m)、エチレングリコールモノブチルエーテル(表面張力29.1mN/m)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(表面張力30.2mN/m)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(表面張力28.4mN/m)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(表面張力27.9mN/m)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)(表面張力29.9mN/m)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルカルビトール)、2-エチルヘキシルカルビトール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(表面張力27.6mN/m)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(表面張力30.0mN/m)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(表面張力34.3mN/m)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(表面張力29.7mN/m)等のグリコールモノエーテル溶媒などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
 なお、本発明における表面張力は、例えば、協和界面科学(株)製、自動表面張力計CBVP-Z型により測定することができる。(以下、同様)。
 さらに、インクの粘度を適正範囲内に調節するという観点から、本発明で用いるインク溶媒には、25℃における粘度が10mPa・s(cP)以下の溶媒を60~85質量%含むことが好ましく、60~80質量%含むことがより好ましく、60~70質量%含むことがより一層好ましい。
 このような溶媒の具体例としては、プロピレンカーボネート(粘度2.7mPa・s)等のカーボネート溶媒;
 エチレングリコールモノヘキシルエーテル(粘度5.2mPa・s)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(粘度2.9mPa・s)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(粘度3.9mPa・s)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(粘度4.9mPa・s)、エチレングリコールモノブチルエーテル(粘度3.1mPa・s)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(粘度4.8mPa・s)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(粘度5.3mPa・s)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(粘度3.6mPa・s)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルカルビトール)、2-エチルヘキシルカルビトール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(粘度4.0mPa・s)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(粘度5.3cP)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(粘度3.5mPa・s)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(粘度6.8cP)、2-フェノキシエタノール(粘度20.4mPa・s)等のグリコールモノエーテル溶媒などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
 本発明で用いるインク溶媒では、低揮発性高粘度溶媒、親水性グリコール系溶媒、表面張力が40mN/m以下の溶媒および粘度が10mPa・s以下の溶媒を併用することが好ましく、この場合の各溶媒の配合比率は、上述した各溶媒の含有量(配合量)から合計100質量%となるように調整すればよい。
 ただし、インク溶媒に含まれるある溶媒が、「低揮発性高粘度溶媒」、「親水性グリコール系溶媒」、「表面張力が40mN/m以下の溶媒」および「粘度が10mPa・s以下の溶媒」という4つのカテゴリのうちの複数のカテゴリに含まれる場合、当該溶媒は、含まれるすべてのカテゴリの溶媒の配合量として考慮する。
 例えば、インク溶媒中にプロピレングリコールが10質量%含まれる場合、この配合量は、親水性グリコール系溶媒15~40質量%のうちの10質量%を構成するとともに、表面張力が40mN/m以下の溶媒30~50質量%のうちの10質量%をも構成する。
 本発明で用いるインク溶媒には、本発明の作用効果を阻害しない限り、上述した各種溶媒に加え、粘度や表面張力の調整等を目的として、インク溶媒として用いられるその他の溶媒が含まれていてもよい。
 その他の溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノプロピルエーテル(沸点151℃)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点149℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃)等のグリコールモノエーテル溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル(沸点84℃)、エチレングリコールジエチルエーテル(沸点121℃)、プロピレングリコールジメチルエーテル(沸点97℃)、プロピレングリコールジエチルエーテル(沸点124℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)等のグリコールジエーテル溶媒;ビニレンカーボネート(沸点162℃)等の環状カーボネート溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄溶媒;テトラメチルウレア、N,N’-ジメチルプロピレンウレア等のウレア溶媒;N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド溶媒;ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、フマル酸ジエチル、安息香酸ブチル等のエステル溶媒;炭酸ジメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等のカーボネート溶媒;アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、3-エトキシプロピオニトリル等のニトリル溶媒;アセトン、アセトニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソブテニルケトン、2-ヘキサノン、2-ペンタノン、アセトフェノン、エチルフェニルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン溶媒;メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、2-(ベンジルオキシ)エタノール等のアルコール溶媒;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、メチルアニソール、ジメチルアニソール、エチルアニソール、ブチルフェニルエーテル、ブチルアニソール、ペンチルアニソール、ヘキシルアニソール、ヘプチルアニソール、オクチルアニソール、フェノキシトルエン等のエーテル溶媒;トルエン、キシレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素溶媒などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
 その他の溶媒を用いる場合、インク溶媒中におけるその総含有量は、通常10質量%未満であり、隔壁内における膜の均一性をより高めるという観点から、好ましく5質量%未満である(ただし、使用する全ての溶媒種の合計は100質量%である)。
 本発明で用いるインク溶媒の好適な組成としては、低揮発性高粘度溶媒、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレンカーボネート、およびジエチレングリコールモノイソブチルエーテルの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 特に、インク溶媒の組成としては、低揮発性高粘度溶媒2.5~15質量%、プロピレングリコール5~20質量%、トリプロピレングリコール10~35質量%、プロピレンカーボネート35~70質量%、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル10~25質量%(ただし、合計100質量%、かつ、プロピレングリコールとトリプロピレングリコールとの合計15~40質量%、プロピレングリコールとジエチレングリコールモノイソブチルエーテルとの合計30~50質量%、およびジエチレングリコールモノイソブチルエーテルとプロピレンカーボネートとの合計60~85質量%)が好ましく、
 低揮発性高粘度溶媒3~10質量%、プロピレングリコール10~15質量%、トリプロピレングリコール15~30質量%、プロピレンカーボネート35~60質量%、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル15~25質量%(ただし、合計100質量%、かつ、プロピレングリコールとトリプロピレングリコールとの合計15~40質量%、プロピレングリコールとジエチレングリコールモノイソブチルエーテルとの合計30~50質量%、およびジエチレングリコールモノイソブチルエーテルとプロピレンカーボネートとの合計60~85質量%)がより好ましく、
 2-アセトアミドエタノールおよびN-(ヒドロキシエチル)ラクトアミドの少なくとも1種5~10質量%、プロピレングリコール10~15質量%、トリプロピレングリコール15~25質量%、プロピレンカーボネート35~55質量%、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル15~25質量%(ただし、合計100質量%、かつ、プロピレングリコールとトリプロピレングリコールとの合計15~40質量%、プロピレングリコールとジエチレングリコールモノイソブチルエーテルとの合計30~50質量%、およびジエチレングリコールモノイソブチルエーテルとプロピレンカーボネートとの合計60~85質量%)がより一層好ましい。
 本発明においては、インク塗布のタイミングの相違に起因する有機機能層の形状のばらつきを抑制し、平坦性の良好な有機機能膜を有する有機機能膜付き基板を再現性よく得る観点から、インク溶媒は、溶媒としての水を含まないことが好ましいが、使用する有機溶媒に含まれる微量の水や固形分に含まれる水の存在までもが否定される訳ではない。
 上述のとおり、本発明は、低揮発性高粘度溶媒を所定割合で含むインク溶媒を用いることに特徴があるため、有機機能材料、有機機能材料が塗布される隔壁付基板、インクジェット装置等については、各種材料および各種装置から適宜選択して用いればよい。
 有機機能材料としては、電子素子の機能材料として用いられるものであればよく、その具体例としては、電荷輸送性物質が挙げられる。
 電荷輸送性物質としては、特に限定されるものではなく、例えば、有機ELの分野等で用いられる電荷輸送性化合物、電荷輸送性オリゴマー、電荷輸送性ポリマー等から適宜選択して用いることができる。
 その具体例としては、オリゴアニリン誘導体、N,N’-ジアリールベンジジン誘導体、N,N,N’,N’-テトラアリールベンジジン誘導体等のアリールアミン誘導体;オリゴチオフェン誘導体、チエノチオフェン誘導体、チエノベンゾチオフェン誘導体等のチオフェン誘導体;オリゴピロール等のピロール誘導体などの各種電荷輸送性化合物や、電荷輸送性オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体等の電荷輸送性ポリマー等が挙げられ、これらの中でも、ポリチオフェン誘導体、アリールアミン誘導体が好ましい。
 また、例えば、後述する式(A1)または(A2)で表される3級アリールアミン化合物のような電荷輸送性化合物(低分子化合物)または電荷輸送性オリゴマーは、平坦性の高い薄膜を作製するという観点から、単分散である(すなわち、分子量分布が1である)ことが好ましい。この場合、電荷輸送性物質の分子量は、平坦性の高い薄膜を与える均一なインクを調製する観点から、通常200~9,000程度であるが、より電荷輸送性に優れる薄膜を得る観点から、300以上が好ましく、400以上がより好ましく、平坦性の高い薄膜をより再現性よく与える均一なインクを調製する観点から、8,000以下が好ましく、7,000以下がより好ましく、6,000以下がより一層好ましく、5,000以下がさらに好ましい。
 電荷輸送性物質としては、例えば、特開2002-151272号公報、国際公開第2004/105446号、国際公開第2005/043962号、国際公開第2008/032617号、国際公開第2008/032616号、国際公開第2013/042623号、国際公開第2014/141998号、国際公開第2014/185208号、国際公開第2015/050253号、国際公開第2015/137391号、国際公開第2015/137395号、国際公開第2015/146912号、国際公開第2015/146965号、国際公開第2016/190326号、国際公開第2016/136544号、国際公開第2016/204079号等に開示されたものが挙げられる。
 好ましい一態様においては、上記電荷輸送性物質は、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、炭素数1~40のフルオロアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、-O-[Z-O]h-Re、もしくはスルホン酸基であり、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yは、エーテル結合を含んでいてもよく、スルホン酸基で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、Zは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、pは、1以上の整数であり、Reは、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。
 炭素数1~40のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、n-エイコサニル、ベヘニル、トリアコンチル、テトラコンチル基等が挙げられる。本発明においては、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。
 炭素数1~40のフルオロアルキル基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~40のアルキル基であれば特に限定されるものではなく、その具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、パーフルオロメチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、1,1-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、1,1,2-トリフルオロエチル、1,2,2-トリフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、1,2,2,2-テトラフルオロエチル、パーフルオロエチル、1-フルオロプロピル、2-フルオロプロピル、3-フルオロプロピル、1,1-ジフルオロプロピル、1,2-ジフルオロプロピル、1,3-ジフルオロプロピル、2,2-ジフルオロプロピル、2,3-ジフルオロプロピル、3,3-ジフルオロプロピル、1,1,2-トリフルオロプロピル、1,1,3-トリフルオロプロピル、1,2,3-トリフルオロプロピル、1,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3-トリフルオロプロピル、2,3,3-トリフルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、1,1,2,2-テトラフルオロプロピル、1,1,2,3-テトラフルオロプロピル、1,2,2,3-テトラフルオロプロピル、1,3,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,3,3,3-テトラフルオロプロピル、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロピル、1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロピル、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロヘプチル、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
 炭素数1~40のアルコキシ基としては、その中のアルキル基が直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、c-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、n-ヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、n-ノニルオキシ、n-デシルオキシ、n-ウンデシルオキシ、n-ドデシルオキシ、n-トリデシルオキシ、n-テトラデシルオキシ、n-ペンタデシルオキシ、n-ヘキサデシルオキシ、n-ヘプタデシルオキシ、n-オクタデシルオキシ、n-ノナデシルオキシ、n-エイコサニルオキシ基が挙げられる。
 炭素数1~40のフルオロアルコキシ基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~40のアルコキシ基であれば特に限定されるものではなく、その具体例としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、パーフルオロメトキシ、1-フルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、1,2-ジフルオロエトキシ、1,1-ジフルオロエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、1,1,2-トリフルオロエトキシ、1,2,2-トリフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ、1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ、パーフルオロエトキシ、1-フルオロプロポキシ、2-フルオロプロポキシ、3-フルオロプロポキシ、1,1-ジフルオロプロポキシ、1,2-ジフルオロプロポキシ、1,3-ジフルオロプロポキシ、2,2-ジフルオロプロポキシ、2,3-ジフルオロプロポキシ、3,3-ジフルオロプロポキシ、1,1,2-トリフルオロプロポキシ、1,1,3-トリフルオロプロポキシ、1,2,3-トリフルオロプロポキシ、1,3,3-トリフルオロプロポキシ、2,2,3-トリフルオロプロポキシ、2,3,3-トリフルオロプロポキシ、3,3,3-トリフルオロプロポキシ、1,1,2,2-テトラフルオロプロポキシ、1,1,2,3-テトラフルオロプロポキシ、1,2,2,3-テトラフルオロプロポキシ、1,3,3,3-テトラフルオロプロポキシ、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ、2,3,3,3-テトラフルオロプロポキシ、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロポキシ、1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロポキシ、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ、パーフルオロプロポキシ基等が挙げられる。
 炭素数1~40のアルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレン、オクタデシレン、ノナデシレン、エイコサニレン基等が挙げられる。
 炭素数6~20のアリール基の具体例としては、フェニル、トリル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基、ナフチル基が好ましい。
 炭素数6~20のアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ、アントラセノキシ、ナフトキシ、フェナントレノキシ、フルオレノキシ基等が挙げられる。
 ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
 上記式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、-O[C(Rab)-C(Rcd)-O]h-Re、-ORf、もしくはスルホン酸基であるか、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-が好ましい。
 Ra~Rdは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基を表し、これらの基の具体例としては上記で挙げた基と同様のものが挙げられる。
 中でも、Ra~Rdは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、またはフェニル基が好ましい。
 Reは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、またはフェニル基であるが、水素原子、メチル基、プロピル基、またはブチル基が好ましい。
 hは、1~5が好ましく、1、2または3がより好ましい。
 Rfは、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基または炭素数6~20のアリール基であるが、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、またはフェニル基が好ましく、-CH2CF3がより好ましい。
 上記R1は、好ましくは水素原子またはスルホン酸基、より好ましくはスルホン酸基であり、かつ、R2は、好ましくは炭素数1~40のアルコキシ基または-O-[Z-O]h-Re、より好ましくは-O[C(Rab)-C(Rcd)-O]h-Reまたは-ORf、より一層好ましくは-O[C(Rab)-C(Rcd)-O]h-Re、-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH3、-O-CH2CH2-O-CH2CH2-OHまたは-O-CH2CH2-OHであるか、または、R1およびR2が互いに結合して形成される-O-Y-O-である。
 例えば、本発明の好ましい態様に係る上記ポリチオフェン誘導体は、R1が、スルホン酸基であり、R2が、スルホン酸基以外である繰り返し単位を含むか、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-である繰り返し単位を含む。
 好ましくは、上記ポリチオフェン誘導体は、R1が、スルホン酸基であり、R2が、炭素数1~40のアルコキシ基もしくは-O-[Z-O]h-Reである繰り返し単位を含むか、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-である繰り返し単位を含む。
 より好ましくは、上記ポリチオフェン誘導体は、R1が、スルホン酸基であり、R2が、-O[C(Rab)-C(Rcd)-O]h-Reまたは-ORfである繰り返し単位を含む。
 より一層好ましくは、上記ポリチオフェン誘導体は、R1が、スルホン酸基であり、R2が、-O[C(Rab)-C(Rcd)-O]h-Reである繰り返し単位を含むか、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-である繰り返し単位を含む。
 さらに好ましくは、上記ポリチオフェン誘導体は、R1が、スルホン酸基であり、R2が、-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH3、-O-CH2CH2-O-CH2CH2-OH、もしくは-O-CH2CH2-OHである繰り返し単位を含むか、またはR1およびR2が互いに結合して、下記式(Y1)および(Y2)で表される基である繰り返し単位を含む。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 上記ポリチオフェン誘導体の好ましい具体例としては、例えば、下記式(1-1)~(1-5)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含むポリチオフェンが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 また、上記ポリチオフェン誘導体の好適な構造としては、例えば、下記式(1a)で表される構造を有するポリチオフェン誘導体が挙げられる。なお、下記式において、各単位はランダムに結合していても、ブロック重合体として結合していてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 式中、a~dは、各単位のモル比を表し、0≦a≦1、0≦b≦1、0<a+b≦1、0≦c<1、0≦d<1、a+b+c+d=1を満足する。
 さらに、上記ポリチオフェン誘導体は、ホモポリマーまたはコポリマー(統計的、ランダム、勾配、およびブロックコポリマーを含む)であってもよい。モノマーAおよびモノマーBを含むポリマーとしては、ブロックコポリマーは、例えば、A-Bジブロックコポリマー、A-B-Aトリブロックコポリマー、および(AB)k-マルチブロックコポリマーを含む。ポリチオフェンは、その他のタイプのモノマー(例えば、チエノチオフェン、セレノフェン、ピロール、フラン、テルロフェン、アニリン、アリールアミン、およびアリーレン(例えば、フェニレン、フェニレンビニレン、およびフルオレン等)等)から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
 上記ポリチオフェン誘導体における式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリチオフェン誘導体に含まれる全繰り返し単位中、50モル%超が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がより一層好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、100モル%が最も好ましい。
 上記ポリチオフェン誘導体は、重合に使用される出発モノマーの純度に応じて、不純物から誘導される繰り返し単位を含有してもよい。上記の「ホモポリマー」という用語は、1つのタイプのモノマーから誘導される繰り返し単位を含むポリマーを意味するものであるが、不純物から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。上記ポリチオフェン誘導体は、基本的に全ての繰り返し単位が、上記式(1)で表される繰り返し単位であるポリマーであることが好ましく、上記式(1-1)~(1-5)で表される繰り返し単位の少なくとも1つを含むポリマーであることがより好ましい。
 上記ポリチオフェン誘導体が、スルホン酸基を有する繰り返し単位を含む場合、有機溶媒に対する溶解性や分散性をより向上させる観点から、当該ポリチオフェン誘導体は、それに含まれるスルホン酸基の少なくとも一部にアミン化合物が付加したアミン付加体が好ましい。
 アミン付加体の形成に使用できるアミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、s-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、n-ウンデシルアミン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-ノナデシルアミン、n-エイコサニルアミン等のモノアルキルアミン化合物;アニリン、トリルアミン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、1-アントリルアミン、2-アントリルアミン、9-アントリルアミン、1-フェナントリルアミン、2-フェナントリルアミン、3-フェナントリルアミン、4-フェナントリルアミン、9-フェナントリルアミン等のモノアリールアミン化合物等の一級アミン化合物;N-エチルメチルアミン、N-メチル-n-プロピルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、N-メチル-n-ブチルアミン、N-メチル-s-ブチルアミン、N-メチル-t-ブチルアミン、N-メチルイソブチルアミン、ジエチルアミン、N-エチル-n-プロピルアミン、N-エチルイソプロピルアミン、N-エチル-n-ブチルアミン、N-エチル-s-ブチルアミン、N-エチル-t-ブチルアミン、ジプロピルアミン、N-n-プロピルイソプロピルアミン、N-n-プロピル-n-ブチルアミン、N-n-ブロピル-s-ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、N-n-ブチルイソプロピルアミン、N-t-ブチルイソプロピルアミン、ジ(n-ブチル)アミン、ジ(s-ブチル)アミン、ジイソブチルアミン、アジリジン(エチレンイミン)、2-メチルアジリジン(プロピレンイミン)、2,2-ジメチルアジリジン、アゼチジン(トリメチレンイミン)、2-メチルアゼチジン、ピロリジン、2-メチルピロリジン、3-メチルピロリジン、2,5-ジメチルピロリジン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン,2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、オクタメチレンイミン等のジアルキルアミン化合物;ジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、1,1’-ジナフチルアミン、2,2’-ジナフチルアミン、1,2’-ジナフチルアミン、カルバゾール、7H-ベンゾ[c]カルバゾール、11H-ベンゾ[a]カルバゾール、7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール、13H-ジベンゾ[a,i]カルバゾール等のジアリールアミン化合物;N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-n-プロピルアニリン、N-イソプロピルアニリン、N-n-ブチルアニリン、N-s-ブチルアニリン、N-イソブチルアニリン、N-メチル-1-ナフチルアミン、N-エチル-1-ナフチルアミン、N-n-プロピル-1-ナフチルアミン、インドリン、イソインドリン、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン等のアルキルアリールアミン化合物等の二級アミン化合物;N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチル-n-プロピルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン、N,N-ジメチル-n-ブチルアミン、N,N-ジメチル-s-ブチルアミン、N,N-ジメチル-t-ブチルアミン、N,N-ジメチルイソブチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、N-メチルジ(n-プロピル)アミン、N-メチルジイソプロピルアミン、N-メチルジ(n-ブチル)アミン、N-メチルジイソブチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジエチル-n-ブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジ(n-ブチル)エチルアミン、トリ(n-プロピル)アミン、トリ(i-プロピル)アミン、トリ(n-ブチル)アミン、トリ(i-ブチル)アミン、1-メチルアセチジン、1-メチルピロリジン、1-メチルピペリジン等のトリアルキルアミン化合物;トリフェニルアミン等のトリアリールアミン化合物;N-メチルジフェニルアミン、N-エチルジフェニルアミン、9-メチルカルバゾール、9-エチルカルバゾール等のアルキルジアリールアミン化合物;N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ(n-プロピル)アニリン、N,N-ジ(i-プロピル)アニリン、N,N-ジ(n-ブチル)アニリン等のジアルキルアリールアミン化合物等の三級アミン化合物が挙げられるが、アミン付加体の溶解性、得られる有機機能膜の電荷輸送性等のバランスを考慮すると、三級アミン化合物が好ましく、トリアルキルアミン化合物がより好ましく、トリエチルアミンがより一層好ましい。
 アミン付加体は、アミン自体またはその溶液にポリチオフェン誘導体を投入し、よく撹拌することで得ることができる。
 また、上記のポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体は、還元剤で処理したものを用いてもよい。
 ポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体では、それらを構成する繰り返し単位の一部において、その化学構造が「キノイド構造」と呼ばれる酸化型の構造となっている場合がある。用語「キノイド構造」は、用語「ベンゼノイド構造」に対して用いられるもので、芳香環を含む構造である後者に対し、前者は、その芳香環内の二重結合が環外に移動し(その結果、芳香環は消失する)、環内に残る他の二重結合と共役する2つの環外二重結合が形成された構造を意味する。当業者にとって、これらの両構造の関係は、ベンゾキノンとヒドロキノンの構造の関係から容易に理解できるものである。種々の共役ポリマーの繰り返し単位についてのキノイド構造は、当業者にとって周知である。一例として、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体の繰り返し単位に対応するキノイド構造を、下記式(1’)に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
(式中、R1およびR2は、上記式(1)において定義されたとおりである。)
 このキノイド構造は、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体がドーパントにより酸化反応を受けるプロセス、いわゆるドーピング反応によって生じ、ポリチオフェン誘導体に電荷輸送性を付与する「ポーラロン構造」および「バイポーラロン構造」と称される構造の一部を成すものである。これらの構造は公知である。有機EL素子の作製において、「ポーラロン構造」および/または「バイポーラロン構造」の導入は必須であり、実際、有機EL素子作製時、電荷輸送性ワニス(有機機能インク)から形成された薄膜を焼成処理するときに、上記のドーピング反応を意図的に起こさせて、これを達成している。このドーピング反応を起こさせる前のポリチオフェン誘導体にキノイド構造が含まれているのは、ポリチオフェン誘導体が、その製造過程(特に、その中のスルホン化工程)において、ドーピング反応と同等の、意図しない酸化反応を起こしたためと考えられる。
 上記ポリチオフェン誘導体に含まれるキノイド構造の量と、ポリチオフェン誘導体の有機溶媒に対する溶解性や分散性の間には相関があり、キノイド構造の量が多くなると、その溶解性や分散性は低下する傾向にある。このため、電荷輸送性ワニス(有機機能インク)から薄膜が形成された後でのキノイド構造の導入は問題を生じないが、上記の意図しない酸化反応により、ポリチオフェン誘導体にキノイド構造が過剰に導入されていると、電荷輸送性ワニス(有機機能インク)の製造に支障をきたす場合がある。ポリチオフェン誘導体においては、有機溶媒に対する溶解性や分散性にばらつきがあることが知られているが、その原因の1つは、上記の意図しない酸化反応によりポリチオフェンに導入されたキノイド構造の量が、各々のポリチオフェン誘導体の製造条件の差に応じて変動することであると考えられる。
 そこで、上記ポリチオフェン誘導体を、還元剤を用いる還元処理に付すと、ポリチオフェン誘導体にキノイド構造が過剰に導入されていても、還元によりキノイド構造が減少し、ポリチオフェン誘導体の有機溶媒に対する溶解性や分散性が向上するため、均質性に優れた薄膜を与える良好な電荷輸送性ワニス(有機機能インク)を、安定的に製造することが可能になる。
 還元処理の条件は、上記キノイド構造を還元して非酸化型の構造、すなわち、上記ベンゼノイド構造に適切に変換する(例えば、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体においては、上記式(1’)で表されるキノイド構造を、上記式(1)で表される構造に変換する)ことができるものである限り特に制限はないが、例えば、適当な溶媒の存在下または非存在下、単にポリチオフェン誘導体やアミン付加体を還元剤と接触させることにより、この処理を行うことができる。
 このような還元剤も還元が適切にされる限り特に制限はないが、例えば、市販品で入手が容易であるアンモニア水、ヒドラジン等が適当である。
 また、還元剤の量は、用いる還元剤の量に応じて異なるため一概に規定できないが、処理すべきポリチオフェン誘導体やアミン付加体100質量部に対し、通常、還元が適切にされる観点から、0.1質量部以上であり、過剰な還元剤が残存しないようにする観点から、10質量部以下である。
 還元処理の具体的な方法の一例としては、ポリチオフェン誘導体やアミン付加体を28%アンモニア水中で、室温にて終夜撹拌する。このような比較的温和な条件下での還元処理により、ポリチオフェン誘導体やアミン付加体の有機溶媒に対する溶解性や分散性は十分に向上する。
 本発明で用いる有機機能インクにおいて、ポリチオフェン誘導体のアミン付加体を使用する場合、上記還元処理は、アミン付加体を形成する前に行っても、アミン付加体を形成した後に行ってもよい。
 なお、この還元処理によりポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体の溶媒に対する溶解性や分散性が変化する結果、処理の開始時には反応系に溶解していなかったポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体が、処理の完了時には溶解している場合がある。そのような場合には、ポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体と非相溶性の有機溶媒(スルホン化ポリチオフェンの場合、アセトン、イソプロピルアルコール等)を反応系に添加して、ポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体の沈殿を生じさせ、ろ過する等の方法により、ポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体を回収することができる。
 式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体の重量平均分子量は、約1,000~1,000,000が好ましく、約5,000~100,000がより好ましく、約10,000~約50,000がより一層好ましい。重量平均分子量を下限以上とすることで、良好な導電性が再現性よく得られ、上限以下とすることで、溶媒に対する溶解性が向上する。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値である。
 本発明で用いる有機機能インクに含まれるポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体は、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
 また、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体は、市販品を用いても、チオフェン誘導体などを出発原料とした公知の方法によって重合したものを用いてもよいが、いずれの場合も再沈殿やイオン交換等の方法により精製されたものを用いることが好ましい。精製したものを用いることで、本発明で用いる有機機能インクから得られる薄膜を備えた有機EL素子の特性をより高めることができる。
 なお、共役ポリマーのスルホン化およびスルホン化共役ポリマー(スルホン化ポリチオフェンを含む)は、Seshadriらの米国特許第8,017,241号に記載されている。また、スルホン化ポリチオフェンについては、国際公開第2008/073149号および国際公開第2016/171935号に記載されている。
 なお、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体の少なくとも一部は、上述したいインク溶媒に溶解している。
 本発明では、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体を用いる場合、電荷輸送性物質として、当該ポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体と、それ以外の電荷輸送性化合物からなる電荷輸送性物質を併用してよいが、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体のみが含まれることが好ましい。
 式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体またはそのアミン付加体を用いる場合、電荷輸送性ワニス(有機機能インク)中の電荷輸送性物質の含有量は、通常、所望の膜厚やワニス(インク)の粘度等を勘案し、固形分中、0.05~40質量%、好ましくは0.1~35質量%の範囲で適宜決定される。
 電荷輸送性物質の好ましいその他の一態様としては、少なくとも1つの窒素原子を有し、かつ全ての窒素原子が3級アリールアミン構造を有する3級アリールアミン化合物が挙げられる。すなわち、この3級アリールアミン化合物は、少なくとも1つの窒素原子を有し、全ての窒素原子に3つの芳香族基が結合した構造を有するものである。上記3級アリールアミン化合物中、窒素原子は、2つ以上あることが好ましい。
 3級アリールアミン化合物の好適な例としては、下記式(A1)または(A2)で表される化合物等が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
 式(A2)中、R1’およびR2’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。
 ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
 炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等の炭素数1~20の直鎖状または分岐状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロブチル、ビシクロペンチル、ビシクロヘキシル、ビシクロヘプチル、ビシクロオクチル、ビシクロノニル、ビシクロデシル基等の炭素数3~20の環状アルキル基等が挙げられる。
 炭素数2~20のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、ビニル、n-1-プロペニル、n-2-プロペニル、1-メチルビニル、n-1-ブテニル、n-2-ブテニル、n-3-ブテニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-エチルビニル、1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、n-1-ペンテニル、n-1-デセニル、n-1-エイコセニル基等が挙げられる。
 炭素数2~20のアルキニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチニル、n-1-プロピニル、n-2-プロピニル、n-1-ブチニル、n-2-ブチニル、n-3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、n-1-ペンチニル、n-2-ペンチニル、n-3-ペンチニル、n-4-ペンチニル、1-メチル-n-ブチニル、2-メチル-n-ブチニル、3-メチル-n-ブチニル、1,1-ジメチル-n-プロピニル、n-1-ヘキシニル、n-1-デシニル、n-1-ペンタデシニル、n-1-エイコシニル基等が挙げられる。
 炭素数6~20のアリール基としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル基等が挙げられる。
 炭素数2~20のヘテロアリール基としては、2-チエニル、3-チエニル、2-フラニル、3-フラニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル基等が挙げられる。
 これらのうち、R1’およびR2’としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子またはフッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
 式(A1)および(A2)中、Ph1は、式(P1)で表される基である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
 式(P1)中、破線は、結合手である。R3~R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。これらの具体例としては、R1’およびR2’の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。
 特に、R3~R6としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子またはフッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
 Ph1として好適な基としては、1,4-フェニレン基が挙げられるが、これに限定されない。
 式(A1)中、Ar1は、それぞれ独立に、下記式(Ar1-1)~(Ar1-11)のいずれかで表される基であるが、特に下記式(Ar1-1')~(Ar1-11')のいずれかで表される基が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
 式(Ar1-1)~(Ar1-11)および式(Ar1-1')~(Ar1-11')中、破線は、結合手である。R7~R27、R30~R51およびR53~R154は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい、ジフェニルアミノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。R28およびR29は、それぞれ独立に、Z1で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基または炭素数2~20のヘテロアリール基である。R52は、Z1で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。
 Z1は、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基、またはZ2で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基もしくは炭素数2~20のアルキニル基である。Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基、またはZ3で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。Z3は、ハロゲン原子、ニトロ基またはシアノ基である。
 特に、R7~R27、R30~R51およびR53~R154としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいジフェニルアミノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子またはフッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
 R28およびR29としては、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基が好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいナフチル基がより好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
 R52としては、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基が好ましく、水素原子、Z1で置換されていてもよいフェニル基、またはZ1で置換されてもよいナフチル基がより好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
 式(Ar1-10)、(Ar1-11)、(Ar1-10')および(Ar1-11')中、Ar4は、それぞれ独立に、各々のアリール基が炭素数6~20のアリール基であるジアリールアミノ基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基である。炭素数6~20のアリール基の具体例としては、上記R1’およびR2’で説明したものと同様のものが挙げられる。上記ジアリールアミノ基の具体例としては、ジフェニルアミノ基、1-ナフチルフェニルアミノ基、ジ(1-ナフチル)アミノ基、1-ナフチル-2-ナフチルアミノ基、ジ(2-ナフチル)アミノ基等が挙げられる。
 Ar4としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリ、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、p-(ジフェニルアミノ)フェニル、p-(1-ナフチルフェニルアミノ)フェニル、p-(ジ(1-ナフチル)アミノ)フェニル基、p-(1-ナフチル-2-ナフチルアミノ)フェニル、p-[ジ(2-ナフチル)アミノ]フェニル基等が好ましく、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基がより好ましい。
 式(A1)中、Ar2は、それぞれ独立に、式(Ar2-1)~(Ar2-18)のいずれかで表される基であるが、特に式(Ar2-1'-1)~(Ar2-18'-2)のいずれかで表される基が好ましい。なお、下記式中、Ar4は上記と同じ意味を表し、DPAはジフェニルアミノ基であり、破線は結合手である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
 式(Ar2-16)、(Ar2-16'-1)および(Ar2-16'-2)中、R155は、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、またはZ1で置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基である。アリール基およびヘテロアリール基としては、R1’およびR2’の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。これらのうち、R155としては、水素原子、Z1で置換されていてもよいフェニル基、Z1で置換されていてもよい1-ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2-ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2-ピリジル基、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい3-ピリジル基、またはZ1で置換されていてもよい4-ピリジル基が好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基または(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)基がさらに好ましい。
 式(Ar2-17)、(Ar2-17'-1)および(Ar2-17'-2)中、R156およびR157は、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基である。これらアリール基およびヘテロアリール基としては、R1’およびR2’の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。これらのうち、R156およびR157としては、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基が好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよいフェニル基、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい1-ナフチル基、またはZ1で置換されていてもよい2-ナフチル基がより好ましい。
 式(A2)中、Ar3は、式(Ar3-1)~(Ar3-8)のいずれかで表される基であるが、特に式(Ar3-1')~(Ar3-8')のいずれかで表される基が好ましい。なお、下記式中、DPAは上記と同じ意味を表し、破線は結合手である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
 式(A1)中、pは、1~10の整数であるが、化合物の有機溶媒に対する溶解性を高める観点から、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1または2がより一層好ましく、1が最適である。式(A2)中、qは、1または2である。
 式(A1)で表されるアニリン誘導体および式(A2)で表されるアニリン誘導体は、例えば、国際公開第2015/050253号に記載の方法に従って製造することができる。
 上記3級アリールアミン化合物の他の好適な例としては、例えば、下記式(A3)で表される化合物が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
 式(A3)中、rは、2~4の整数である。Ar11は、置換されていてもよい炭素数6~20のr価の芳香族基である。この芳香族基は、炭素数6~20の芳香族化合物の芳香環上からr個の水素原子を取り除いて得られる基であり、特に、下記式(A3-1)~(A3-8)のいずれかで表される化合物から誘導される基が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
 式(A3-3)および(A3-4)中、L1~L3は、それぞれ独立に、単結合、-(CR201202s-、-C(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-またはNR203-である。sは、1~6の整数である。式(A3-5)~(A3-8)中、L4~L13は、それぞれ独立に、単結合、-CR201202-、-C(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-または-NR203-である。R201およびR202は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~20の1価炭化水素基であり、R201およびR202は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。なお、-(CR201202s-において、sが2以上のとき、各R201およびR202は、互いに同一でも異なっていてもよい。R203は、水素原子、または炭素数1~20の1価炭化水素基である。
 また、上記芳香族基は、その水素原子の一部または全部が、さらに置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシ基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、1価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホ基等が挙げられるが、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、または炭素数1~20の1価炭化水素基が好ましい。
 Ar11としては、置換されていてもよい、1,4-フェニレン、フルオレン-2,7-ジイル、9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジイル基等が好ましく、置換されていてもよい、1,4-フェニレン基、ビフェニル-4,4'-ジイル基がより好ましい。
 式(A3)中、Ar12およびAr13は、それぞれ独立に、Z11で置換されていてもよい炭素数6~20の1価芳香族基であり、Ar12とAr13とが、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。また、各Ar12およびAr13は、互いに同一でも異なっていてもよい。Z11は、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基、もしくはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基もしくは1価芳香族基、または重合性基である。
 上記1価芳香族基としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル基等のアリール基などが挙げられる。
 上記1価脂肪族炭化水素は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基などが挙げられる
 上記重合性基としては、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
(式中、破線は、結合手である。)
 Rgは、水素原子またはメチル基である。RhおよびRiは、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~6のアルキル基であるが、メチル基、エチル基が好ましい。Rj、RkおよびRlは、それぞれ独立に、単結合、または酸素原子、硫黄原子もしくは窒素原子を含んでいてもよい炭素数1~8のアルキレン基である。Rm、RnおよびRoは、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基、エチル基、n-プロピル等の炭素数1~10のアルキル基である。
 YaおよびYbは、それぞれ独立に、単結合、または炭素数6~20の2価芳香族基である。この2価芳香族基としては、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,5-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,7-ナフチレン、2,6-ナフチレン、4,4'-ビフェニリレン基等が挙げられる。これらのうち、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基が好ましい。
 Araは、置換基を有していてもよい炭素数6~20の1価芳香族基であり、この1価芳香族基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
 Z11としては、メチル基、エチル基、下記式で表される重合性基等が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
(式中、破線は、結合手である。)
 Ar12およびAr13としては、フェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2-エチルフェニル、3-エチルフェニル、4-エチルフェニル、2-ビニルフェニル、3-ビニルフェニル、4-ビニルフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル基等が好ましい。
 式(A3)で表される化合物は、公知の方法で合成することができ、また、市販品を使用することもできる。
 上記3級アリールアミン化合物のその他の好適な例としては、例えば、下記式(A4)で表されるものが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000023
 式(A4)中、Ar21~Ar23は、それぞれ独立に、炭素数6~20の2価芳香族基であり、この2価芳香族基としては、前述した式(A3-1)、(A3-3)または(A3-4)で表される化合物から誘導される2価の基が好ましい。
 これらのうち、Ar21~Ar23としては、1,4-フェニレン、ビフェニル-4,4'-ジイル、ターフェニル-4,4''-ジイル基等が好ましく、1,4-フェニレン基、ビフェニル-4,4'-ジイル基がより好ましい。
 式(A4)中、Ar24~Ar29は、それぞれ独立に、Z21で置換されていてもよい炭素数6~20の1価芳香族基であり、その具体例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル基等のアリール基などが挙げられる。
 Z21は、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-N(Ar30)(Ar31)、または重合性基である。
 上記炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基などが挙げられる。上記重合性基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
 Ar30およびAr31は、それぞれ独立に、Z22で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基であり、これらは互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。Z22は、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基、もしくはハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。
 上記炭素数6~20のアリール基および炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
 Ar30およびAr31としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-ビフェニリル基等が好ましく、フェニル基、1-ビフェニリル基等がより好ましい。
 特に、-N(Ar30)(Ar31)としては、ジフェニルアミノ基、フェニル(4-ビフェニリル)アミノ基、ビス(4-ビフェニリル)アミノ基、N-カルバゾリル基等が好ましい。
 Z21としては、炭素数1~10のアルキル基、-N(Ar30)(Ar31)等が好ましい。
 Ar24~Ar29としては、フェニル、4-ビフェニリル、4-ジフェニルアミノフェニル、4-フェニル(4-ビフェニリル)アミノフェニル、ビス(4-ビフェニリル)アミノフェニル、4'-ジフェニルアミノ-4-ビフェニリル、4-フェニル(4-ビフェニリル)アミノ-4-ビフェニリル、4'-ビス(4-ビフェニリル)アミノ-4-ビフェニリル、N-カルバゾリルフェニル、4'-N-カルバゾリル-4-ビフェニリル基等が好ましい。
 式(A4)で表される化合物は、公知の方法で合成することができ、また、市販品を使用することもできる。
 上記3級アリールアミン化合物のその他の好適な例としては、例えば、下記式(A5)で表されるものが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
 式(A5)中、Ar41およびAr42は、それぞれ独立に、フェニル基、1-ナフチル基または2-ナフチル基である。R301およびR302は、それぞれ独立に、水素原子、各アリール基が炭素数6~20のアリール基であるジアリールアミノフェニル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。上記アリール基としては、式(A2)中のR1’およびR2’の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。L21は、プロパン-2,2-ジイル基または1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基を含む2価の連結基である。xは、1~10の整数である。
 式(A5)で表される化合物は、公知の方法で合成することができ、また、市販品を使用することもできる。
 上記3級アリールアミン化合物は、少なくとも1つの窒素原子を有し、全ての窒素原子が3級アリールアミン構造を有するものであれば、前述したものに限定されない。本発明において使用可能なその他の3級アリールアミン化合物としては、例えば、国際公開第2005/094133号に記載されたアリールアミン化合物、特許第5287455号公報に記載されたトリアリールアミン部分構造と重合性基とを有する重合性化合物、特許第5602191号公報に記載されたトリアリールアミン化合物、特許第6177771号公報の段落[0054]に記載された化合物等が挙げられる。
 上記3級アリールアミン化合物として好ましくは、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000025
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000026
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000027
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000028
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000029
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000030
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000031
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000032
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000033
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000034
 本発明で用いる有機機能インクには、得られる機能膜の用途に応じ、上述した電荷輸送性物質等の有機機能材料に加え、その電荷輸送能の向上等を目的としてドーパント物質を含んでいてもよい。
 ドーパント物質としては、有機機能インクに使用する少なくとも1種の溶媒に溶解するものであれば特に限定されず、無機系のドーパント物質、有機系のドーパント物質のいずれも使用できる。
 また、無機系および有機系のドーパント物質は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
 さらに、ドーパント物質は、インクから固体膜である有機機能膜を得る過程で、例えば焼成時の加熱といった外部からの刺激によって、例えば分子内の一部が外れることによってドーパント物質としての機能が初めて発現または向上するようになる物質、例えばスルホン酸基が脱離しやすい基で保護されたアリールスルホン酸エステル化合物であってもよい。
 アリールスルホン酸化合物、アリールスルホン酸エステル化合物等の有機系ドーパントの分子量は、特に限定されるものではないが、電荷輸送性物質とともに用いた場合における有機溶媒への溶解性を考慮すると、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、より一層好ましくは2000以下である。
 特に、本発明においては、無機系のドーパント物質としては、ヘテロポリ酸が好ましい。
 ヘテロポリ酸とは、代表的に式(H1)で表されるKeggin型あるいは式(H2)で表されるDawson型の化学構造で示される、ヘテロ原子が分子の中心に位置する構造を有し、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の酸素酸であるイソポリ酸と、異種元素の酸素酸とが縮合してなるポリ酸である。このような異種元素の酸素酸としては、主にケイ素(Si)、リン(P)、ヒ素(As)の酸素酸が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000035
 ヘテロポリ酸の具体例としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングストモリブデン酸等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、これらのヘテロポリ酸は、市販品として入手可能であり、また、公知の方法により合成することもできる。
 特に、1種類のヘテロポリ酸を用いる場合、その1種類のヘテロポリ酸は、リンタングステン酸またはリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸が最適である。また、2種類以上のヘテロポリ酸を用いる場合、その2種類以上のヘテロポリ酸の1つは、リンタングステン酸またはリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸がより好ましい。
 なお、ヘテロポリ酸は、元素分析等の定量分析において、一般式で示される構造から元素の数が多いもの、または少ないものであっても、それが市販品として入手したもの、あるいは、公知の合成方法にしたがって適切に合成したものである限り、本発明において用いることができる。
 すなわち、例えば、一般的には、リンタングステン酸は化学式H3(PW1240)・nH2Oで、リンモリブデン酸は化学式H3(PMo1240)・nH2Oでそれぞれ示されるが、定量分析において、この式中のP(リン)、O(酸素)またはW(タングステン)もしくはMo(モリブデン)の数が多いもの、または少ないものであっても、それが市販品として入手したもの、あるいは、公知の合成方法にしたがって適切に合成したものである限り、本発明において用いることができる。この場合、本発明に規定されるヘテロポリ酸の質量とは、合成物や市販品中における純粋なリンタングステン酸の質量(リンタングステン酸含量)ではなく、市販品として入手可能な形態および公知の合成法にて単離可能な形態において、水和水やその他の不純物等を含んだ状態での全質量を意味する。
 ヘテロポリ酸の使用量は、質量比で、ポリチオフェン誘導体やアリールアミン誘導体等の電荷輸送性物質1に対して0.001~50.0程度とすることができるが、好ましくは0.01~20.0程度、より好ましくは0.1~10.0程度である。
 一方、有機系のドーパント物質としては、テトラシアノキノジメタン誘導体やベンゾキノン誘導体を用いることができる。
 テトラシアノキノジメタン誘導体の具体例としては、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)や、式(H3)で表されるハロテトラシアノキノジメタンなどが挙げられる。
 また、ベンゾキノン誘導体の具体例としては、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)、テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン(クロラニル)、トリフルオロ-1,4-ベンゾキノン、テトラフルオロ-1,4-ベンゾキノン、テトラブロモ-1,4-ベンゾキノン、テトラシアノ-1,4-ベンゾキノン等が挙げられる。これらのうち、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン、トリフルオロベンゾキノン、テトラフルオロベンゾキノン、テトラシアノベンゾキノンが好ましく、DDQ、クロラニル、テトラフルオロ-1,4-ベンゾキノン、テトラシアノ-1,4-ベンゾキノンがより好ましく、DDQがより一層好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000036
 式中、R500~R503は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表すが、少なくとも1つはハロゲン原子であり、少なくとも2つがハロゲン原子であることが好ましく、少なくとも3つがハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であることが最も好ましい。
 ハロゲン原子としては上記と同じものが挙げられるが、フッ素原子または塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
 このようなハロテトラシアノキノジメタンの具体例としては、2-フルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,5-ジフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、テトラクロロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2-フルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2-クロロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,5-ジフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,5-ジクロロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン等が挙げられるが、F4TCNQが好ましい。
 テトラシアノキノジメタン誘導体およびベンゾキノン誘導体の使用量は、ポリチオフェン誘導体やアリールアミン誘導体等の有機機能材料に対して、好ましくは0.0001~100当量、より好ましくは0.01~50当量、より一層好ましくは1~20当量である。
 アリールスルホン酸化合物の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、p-スチレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5-スルホサリチル酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、ジヘキシルベンゼンスルホン酸、2,5-ジヘキシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、6,7-ジブチル-2-ナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、3-ドデシル-2-ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、4-ヘキシル-1-ナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、2-オクチル-1-ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、7-へキシル-1-ナフタレンスルホン酸、6-ヘキシル-2-ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、2,7-ジノニル-4-ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、2,7-ジノニル-4,5-ナフタレンジスルホン酸、国際公開第2005/000832号記載の1,4-ベンゾジオキサンジスルホン酸化合物、国際公開第2006/025342号記載のアリールスルホン酸化合物、国際公開第2009/096352号記載のアリールスルホン酸化合物等が挙げられる。
 好ましいアリールスルホン酸化合物の例としては、式(H4)または(H5)で表されるアリールスルホン酸化合物が挙がられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000037
 D1は、OまたはSを表すが、Oが好ましい。
 D2は、ナフタレン環またはアントラセン環を表すが、ナフタレン環が好ましい。
 D3は、2~4価のパーフルオロビフェニル基を表し、sは、D1とD3との結合数を示し、2≦s≦4を満たす整数であるが、D3がパーフルオロビフェニルジイル基、好ましくはパーフルオロビフェニル-4,4’-ジイル基であり、かつ、sが2であることが好ましい。
 tは、D2に結合するスルホン酸基数を表し、1≦t≦4を満たす整数であるが、2が最適である。
 D4~D8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、または炭素数2~20のハロゲン化アルケニル基を表すが、D4~D8のうち少なくとも3つは、ハロゲン原子である。
 炭素数1~20のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
 炭素数2~20のハロゲン化アルケニル基としては、パーフルオロビニル、パーフルオロプロペニル(パーフルオロアリル)、パーフルオロブテニル基等が挙げられる。
 その他、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基の例としては上記と同様のものが挙げられるが、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
 これらの中でも、D4~D8は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、または炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基であり、かつ、D4~D8のうち少なくとも3つは、フッ素原子であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のフッ化アルキル基、または炭素数2~5のフッ化アルケニル基であり、かつ、D4~D8のうち少なくとも3つはフッ素原子であることがより好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、または炭素数1~5のパーフルオロアルケニル基であり、かつ、D4、D5およびD8がフッ素原子であることがより一層好ましい。
 なお、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基であり、パーフルオロアルケニル基とは、アルケニル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基である。
 uは、ナフタレン環に結合するスルホン酸基数を表し、1≦u≦4を満たす整数であるが、2~4が好ましく、2が最適である。
 以下、好適なアリールスルホン酸化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000038
 アリールスルホン酸化合物の使用量は、物質量(モル)比で、ポリチオフェン誘導体やアリールアミン誘導体等の有機機能材料1に対して、好ましくは0.01~20.0程度、より好ましくは0.4~5.0程度である。
 アリールスルホン酸化合物は市販品を用いてもよいが、国際公開第2006/025342号、国際公開第2009/096352号等に記載の公知の方法で合成することもできる。
 アリールスルホン酸エステル化合物は、芳香環上にスルホン酸エステル基が結合したものであれば特に限定されない。本発明の好ましい一態様において、上記アリールスルホン酸エステル化合物の分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上であり、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、より一層好ましくは3,000以下、さらに好ましくは2,000以下である。本発明の好ましい一態様において、上記アリールスルホン酸エステル化合物が有するスルホン酸エステル基の数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。本発明の好ましい一態様において、上記アリールスルホン酸エステル化合物は、好ましくはフッ素で置換された芳香環を含む。
 アリールスルホン酸エステル化合物としては、下記式(B1)または(B1')で表されるものが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000039
 式(B1)および(B1')中、A1は、置換基を有していてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基、または下記式(B1a)もしくは(B1b)で表される化合物から誘導されるm価の基(すなわち、下記式(B1a)または(B1b)で表される化合物の芳香環上のm個の水素原子を取り除いて得られる基)である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000040
(式中、W1およびW2は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-S(O)-もしくは-S(O2)-、または置換基を有していてもよい-N-、-Si-、-P-もしくは-P(O)-である。)
 1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基は、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素からm個の水素原子を取り除いて得られる基である。上記1つ以上の芳香環を含む炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。これらのうち、m価炭化水素基としては、ベンゼン、ビフェニル等から誘導される基が好ましい。
 上記炭化水素基は、その水素原子の一部または全部が、さらに置換基で置換されていてもよい。この置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、シラノール、チオール、カルボキシ、スルホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、エステル、チオエステル、アミド、1価炭化水素、オルガノオキシ、オルガノアミノ、オルガノシリル、オルガノチオ、アシル、スルホ基等が挙げられる。
 ここで、上記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等の炭素数1~10のアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニ基、ヘキセニル基等の炭素数2~10のアルケニル基;フェニル、キシリル、トリル、1-ナフチル、2-ナフチル基等の炭素数6~20のアリール基;ベンジル、フェニルエチル基等の炭素数7~20のアラルキル基等が挙げられる。
 上記オルガノオキシ基の具体例としては、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ基等が挙げられる。これらに含まれるアルキル基、アルケニル基およびアリール基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
 上記オルガノアミノ基の具体例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、シクロヘキシルアミノ、ヘプチルアミノ、オクチルアミノ、ノニルアミノ、デシルアミノ、ドデシルアミノ基等の炭素数1~12のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、ジヘプチルアミノ、ジオクチルアミノ、ジノニルアミノ、ジデシルアミノ基等の各アルキル基が炭素数1~12のアルキル基であるジアルキルアミノ基;モルホリノ基等が挙げられる。
 上記オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリペンチルシリル、トリヘキシルシリル、ペンチルジメチルシリル、ヘキシルジメチルシリル、オクチルジメチルシリル、デシルジメチルシリル基等の各アルキル基が炭素数1~10のアルキル基であるトリアルキルシリル基が挙げられる。
 上記オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ基等の炭素数1~12のアルキルチオ基が挙げられる。
 上記アシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ベンゾイル基等の炭素数1~10のアシル基が挙げられる。
 なお、これら1価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基およびアシル基の炭素数は、1~8が好ましい。
 これら各置換基の中でも、フッ素原子、スルホン酸基、アルキル基、オルガノオキシ基、オルガノシリル基がより好ましい。
 式(B1)中、A2は、-O-、-S-または-NH-である。これらのうち、合成が容易であることから、-O-が好ましい。
 式(B1)中、A3は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基である。(n+1)価の芳香族基は、炭素数6~20の芳香族化合物から芳香環上の(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。なお、本発明において芳香族化合物は、芳香族炭化水素および芳香族複素環式化合物を意味する。
 上記芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられるが、これらのうち、A3で表される芳香族基としては、ナフタレンまたはアントラセンから誘導される基が好ましい。
 式(B1)および(B1')中、X1は、炭素数2~5のアルキレン基であり、また、このアルキレン基は、その炭素原子(炭素-炭素結合)間に、-O-、-S-またはカルボニル基が介在していてもよく、その水素原子の一部または全部が、さらに炭素数1~20のアルキル基で置換されていてもよい。
 X1としては、エチレン、トリメチレン、メチレンオキシメチレン、メチレンチオメチレン基等が好ましく、これらの基の水素原子の一部または全部が、さらに炭素数1~20のアルキル基で置換されていてもよい。このアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、ビシクロヘキシル基等が挙げられる。
 式(B1)および(B1')中、X2は、単結合、-O-、-S-またはNR-である。Rは、水素原子または炭素数1~10の1価炭化水素基である。この1価炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル基等のアルキル基が好ましい。
 X2としては、単結合、-O-または-S-が好ましく、単結合または-O-がより好ましい。
 式(B1)および(B1')中、X3は、置換されていてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。この1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、ビシクロヘキシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基;フェニル、キシリル、トリル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル基等の炭素数6~20のアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルシクロヘキシル基等の炭素数7~20のアラルキル基等が挙げられる。また、上記1価炭化水素基の水素原子の一部または全部は、さらに置換基で置換されていてもよい。この置換基としては、A1の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。X3としては、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~20のアリール基が好ましい。
 式(B1)および(B1')中、mは、1≦m≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。
 式(B1)および(B1')で表されるアリールスルホン酸エステル化合物は、低極性溶媒を含む広範囲の溶媒に対して高溶解性を示すため、多種多様な溶媒を使用して溶液の物性を調製することが可能であり、塗布特性が高い。そのため、スルホン酸エステルの状態で塗布し、塗膜の乾燥時または焼成時にスルホン酸を発生させることが好ましい。スルホン酸エステルからスルホン酸が発生する温度は、室温で安定、かつ焼成温度以下であることが好ましいため、40~260℃がよい。さらに、ワニス内での高い安定性と焼成時の脱離の容易性を考慮すると、80~230℃が好ましく、120~180℃がより好ましい。
 式(B1)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物としては、下記式(B1-1)~(B1-3)のいずれかで表されるものが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000041
 式(B1-1)中、A11は、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基(すなわち、パーフルオロビフェニルからm個のフッ素原子を取り除いて得られる基)である。A12は、-O-または-S-であるが、-O-が好ましい。A13は、ナフタレンまたはアントラセンから誘導される(n+1)価の基(すなわち、ナフタレンまたはアントラセンから(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基)であるが、ナフタレンから誘導される基が好ましい。
 式(B1-1)中、Rs1~Rs4は、それぞれ独立に、水素原子、または直鎖状もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基であり、Rs5は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。
 上記直鎖状または分岐状の炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
 上記炭素数2~20の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル基等のアルキル基;フェニル、ナフチル、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。
 Rs1~Rs4のうち、Rs1またはRs3が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。さらに、Rs1が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、Rs2~Rs4が水素原子であることが好ましい。上記炭素数1~3の直鎖アルキル基としては、メチル基が好ましい。また、Rs5としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基またはフェニル基が好ましい。
 式(B1-1)中、mは、1≦m≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。
 式(B1-2)中、A14は、置換されていてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基である。m価の炭化水素基は、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素からm個の水素原子を取り除いて得られる基である。炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。
 また、上記炭化水素基は、その水素原子の一部または全部が、さらに置換基で置換されていてもよく、このような置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、シラノール、チオール、カルボキシ、スルホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、エステル、チオエステル、アミド、1価炭化水素、オルガノオキシ、オルガノアミノ、オルガノシリル、オルガノチオ、アシル、スルホ基等が挙げられる。これらのうち、A14としては、ベンゼン、ビフェニル等から誘導される基が好ましい。
 式(B1-2)中、A15は、-O-または-S-であるが、-O-が好ましい。
 式(B1-2)中、A16は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基である。(n+1)価の芳香族炭化水素基は、炭素数6~20の芳香族炭化水素化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。この芳香族炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。これらのうち、A16としては、ナフタレンまたはアントラセンから誘導される基が好ましく、ナフタレンから誘導される基がより好ましい。
 式(B1-2)中、Rs6およびRs7は、それぞれ独立に、水素原子、または直鎖状もしくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基である。Rs8は、直鎖状または分岐状の1価脂肪族炭化水素基である。ただし、Rs6、Rs7およびRs8の炭素数の合計は6以上である。Rs6、Rs7およびRs8の炭素数の合計の上限は、特に限定されないが、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
 上記直鎖状または分岐状の1価脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、デシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる。
 Rs6としては水素原子が好ましく、Rs7およびRs8としては炭素数1~6のアルキル基が好ましい。この場合、Rs7およびRs8は、同一であっても異なっていてもよい。
 式(B1-2)中、mは、1≦m≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。
 式(B1-3)中、Rs9~Rs13は、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、または炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基である。
 上記炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等が挙げられる。
 上記炭素数1~10のハロゲン化アルキル基は、炭素数1~10のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されない。ハロゲン化アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
 上記炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されない。その具体例としては、パーフルオロビニル、パーフルオロ-1-プロペニル、パーフルオロ-2-プロペニル、パーフルオロ-1-ブテニル、パーフルオロ-2-ブテニル、パーフルオロ-3-ブテニル基等が挙げられる。
 これらのうち、Rs9としては、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基等が好ましく、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数2~4のハロゲン化アルケニル基等がより好ましく、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロペニル基等がより一層好ましい。また、Rs10~Rs13としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
 式(B1-3)中、A17は、-O-、-S-または-NH-であるが、-O-が好ましい。
 式(B1-3)中、A18は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基である。(n+1)価の芳香族炭化水素基は、炭素数6~20の芳香族炭化水素化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。上記芳香族炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。これらのうち、A18としては、ナフタレンまたはアントラセンから誘導される基が好ましく、ナフタレンから誘導される基がより好ましい。
 式(B1-3)中、Rs14~Rs17は、それぞれ独立に、水素原子、または直鎖状もしくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。上記1価脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより一層好ましい。
 式(B1-3)中、Rs18は、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、またはORs19である。Rs19は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。
 Rs18で表される直鎖状または分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基としては、Rs14~Rs17の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。Rs18が1価脂肪族炭化水素基である場合、Rs18としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより一層好ましい。
 Rs19で表される炭素数2~20の1価炭化水素基としては、前述した1価脂肪族炭化水素基のうちメチル基以外のもののほか、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。これらのうち、Rs19としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基またはフェニル基が好ましい。なお、上記1価炭化水素基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、炭素数1~4のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
 式(B1-3)中、nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。
 式(B1-3)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物としては、特に、下記式(B1-3-1)または(B1-3-2)で表されるものが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000042
 式(B1-3-1)および(B1-3-2)中、A17、A18、Rs9~Rs17、Rs19およびnは、上記と同じ意味を表す。Rs20は、直鎖状または分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基であり、その具体例としては、Rs18の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。
 式(B1-3-1)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物においては、Rs14~Rs17のうち、Rs14またはRs16が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。さらに、Rs14が、炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、Rs15~Rs17が水素原子であることが好ましい。この炭素数1~3の直鎖アルキル基としては、メチル基が好ましい。また、Rs19としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基またはフェニル基が好ましい。
 式(B1-3-2)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物においては、Rs14、Rs16およびRs20の炭素数の合計は6以上が好ましい。Rs14、Rs16およびRs20の炭素数の合計の上限は、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。この場合、Rs14としては、水素原子が好ましく、Rs16およびRs20としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。また、Rs16およびRs20は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
 式(B1)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 好適なアリールスルホン酸エステル化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000043
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000044
 式(B1)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物は、例えば、下記スキームAに示すように、式(B1A)で表されるスルホン酸塩化合物とハロゲン化剤とを反応させて、下記式(B1B)で表されるスルホニルハライド化合物を合成し(以下、工程1ともいう。)、このスルホニルハライド化合物と式(B1C)で表される化合物とを反応させる(以下、工程2ともいう。)ことで合成することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000045
(式中、A1~A3、X1~X3、mおよびnは、上記と同じ意味を表す。M+は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、4級アンモニウムイオン等の1価のカチオンである。Halは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子である。)
 式(B1A)で表されるスルホン酸塩化合物は、公知の方法に従って合成することができる。
 工程1において使用するハロゲン化剤としては、塩化チオニル、塩化オキサリル、オキシ塩化リン、塩化リン(V)等のハロゲン化剤が挙げられるが、塩化チオニルが好適である。ハロゲン化剤の使用量は、スルホン酸塩化合物に対して1倍モル以上であれば限定されないが、スルホン酸塩化合物に対して質量比で2~10倍量用いることが好ましい。
 工程1において使用される反応溶媒としては、ハロゲン化剤と反応しない溶媒が好ましく、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、ヘキサン、ヘプタン等を挙げることができる。また、無溶媒でも反応を行うことができ、この場合、反応終了時には均一系溶液となる量以上でハロゲン化剤を用いることが好ましい。また、反応を促進させるため、N,N-ジメチルホルムアミド等の触媒を使用してもよい。反応温度は0~150℃程度とすることができるが、20~100℃、かつ、使用するハロゲン化剤の沸点以下が好ましい。反応終了後、一般的には、減圧濃縮等により得た粗生成物を次工程に用いる。
 式(B1C)で表される化合物としては、例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等のグリコールエーテル類;2-エチル-1-ヘキサノール、2-ブチル-1-オクタノール、1-オクタノール、3-ノナノール等のアルコール類等が挙げられる。
 工程2においては、塩基を併用してもよい。使用可能な塩基としては、水素化ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられるが、水素化ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミンが好適である。塩基の使用量は、スルホニルハライド化合物に対して1倍モル~溶媒量が好適である。
 工程2において使用される反応溶媒としては、各種有機溶媒を用いることができるが、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン、クロロホルム、ピリジンが好適である。反応温度は特に限定されないが、0~80℃が好適である。反応終了後、減圧濃縮、分液抽出、水洗、再沈殿、再結晶、クロマトグラフィー等の常法を用いて後処理、精製し、純粋なアリールスルホン酸エステル化合物を得ることができる。なお、得られた純粋なアリールスルホン酸エステル化合物に熱処理等を施すことで、高純度のスルホン酸化合物に導くこともできる。
 また、式(B1)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物は、下記スキームBに示すように、式(B1D)で表されるスルホン酸化合物から合成することもできる。なお、下記スキームBにおいて、1段目および2段目の反応で使用するハロゲン化剤、式(B1C)で表される化合物、反応溶媒およびその他の成分は、スキームAにおける工程1および2と同様のものを使用することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000046
(式中、A1~A3、X1~X3、Hal、mおよびnは、上記と同じ意味を表す。)
 式(B1D)で表されるスルホン酸化合物は、公知の方法に従って合成することができる。
 式(B1')で表されるアリールスルホン酸エステル化合物は、従来公知の方法、例えば、特許第5136795号公報に記載された方法に従って合成することができる。
 アリールスルホン酸エステル化合物の使用量は、物質量(モル)比で、ポリチオフェン誘導体やアリールアミン誘導愛等の有機機能材料1に対して、好ましくは0.01~20.0程度、より好ましくは0.05~15程度である。
 特に、本発明において、電荷輸送性物質がポリチオフェン誘導体の場合、有機機能インクをインクジェット法にて基板に形成された隔壁内に塗布する場合の膜の平坦性等を高めることを考慮すると、ドーパント物質として、アリールスルホン酸化合物、アリールスルホン酸エステル化合物の少なくとも1種を用いることが好ましく、アリールスルホン酸化合物を用いることがより好ましい。
 また、電荷輸送性物質が、上記式(A1)または(A2)で表される3級アリールアミン化合物のような単分散の電荷輸送性有機化合物の場合、上記と同様の観点から、ドーパント物質としては、アリールスルホン酸エステル化合物と、ハロゲン化テトラシアノキノジメタンまたはハロゲン化もしくくはシアノ化ベンゾキノンとを含むものを用いることが好ましい。
 この場合、アリールスルホン酸エステル化合物の含有量は、ハロゲン化テトラシアノキノジメタン、またはハロゲン化もしくはシアノ化ベンゾキノンに対し、モル比で、通常0.01~50程度となる量であり、好ましくは0.1~20程度となる量であり、より好ましくは1.0~10程度となる量である。また、ドーパント物質の合計の含有量は、電荷輸送性物質に対するドーパントの含有量の比(D/H)が、モル比で、通常0.01~50程度となる量であり、好ましくは0.1~10程度となる量であり、より好ましくは1.0~5.0程度となる量である。
 さらに、本発明で用いる有機機能インクには、1種以上の金属酸化物ナノ粒子を含んでいてもよい。ナノ粒子とは、一次粒子についての平均粒子径がナノメートルのオーダー(典型的には500nm以下)である微粒子を意味する。金属酸化物ナノ粒子とは、ナノ粒子に成形された金属酸化物を意味する。
 金属酸化物ナノ粒子の一次粒子径は、ナノサイズであれば特に限定されるものではないが、2~150nmが好ましく、3~100nmがより好ましく、5~50nmがより一層好ましい。なお、粒子径は、BET法による窒素吸着等温線を用いた測定値である。
 上記金属酸化物ナノ粒子を構成する金属は、通常の意味での金属に加え、半金属も包含する。
 通常の意味での金属としては、特に限定されるものではないが、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)およびW(タングステン)からなる群より選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
 一方、半金属とは、化学的および/または物理的性質が金属と非金属の中間である元素を意味する。半金属の普遍的な定義は確立されていないが、本発明では、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)およびテルル(Te)の計6元素を半金属とする。これらの半金属は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また通常の意味での金属と組み合わせて用いてもよい。
 特に、金属酸化物ナノ粒子は、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)およびW(タングステン)から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物を含むことが好ましい。なお、金属が2種以上の組み合わせである場合、金属酸化物は、個々の単独の金属の酸化物の混合物であってもよく、複数の金属を含む複合酸化物であってもよい。
 金属酸化物の具体例としては、B23、B2O、SiO2、SiO、GeO2、GeO、As24、As23、As25、Sb23、Sb25、TeO2、SnO2、ZrO2、Al23、ZnO等が挙げられるが、B23、B2O、SiO2、SiO、GeO2、GeO、As24、As23、As25、SnO2、SnO、Sb23、TeO2、およびこれらの混合物が好ましく、SiO2がより好ましい。
 金属酸化物ナノ粒子の量は、特に限定されるものではないが、得られる薄膜の透明性を向上させる観点、膜の均一性を高める観点等から、固形分中、その下限値は、通常50質量%、好ましくは60質量%、より好ましくは65質量%であり、その上限値は、通常95質量%、好ましくは90質量%である。
 特に、本発明においては、金属酸化物ナノ粒子として、SiO2ナノ粒子が分散媒に分散したシリカゾルを用いることが好適である。
 シリカゾルとしては、特に限定されるものではなく、公知のシリカゾルから適宜選択して用いることができる。
 市販のシリカゾルは通常、分散液の形態にある。市販のシリカゾルとしては、SiO2ナノ粒子が種々の溶媒、例えば、水、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、イソプロパノール、メタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸エチル、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等に分散したものが挙げられる。
 市販のシリカゾルの具体例としては日産化学(株)製のスノーテックス(登録商標)ST-O、ST-OS、ST-O-40、ST-OL、日本化学工業(株)製のシリカドール20、30、40等の水分散シリカゾル;日産化学(株)製のメタノールシリカゾル、MA-ST-M、MA-ST-L、IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、EG-ST等のオルガノシリカゾルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 また、シリカゾルの固形分濃度も特に限定されるものではないが、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~30質量%がより一層好ましい。
 なお、インク塗布のタイミングの相違に起因する有機機能層の形状のばらつきを抑制する効果をより高めるために、必要に応じて、シリカゾルの溶媒を、プロピレングリコール等のインク溶媒に好適な性質を有する溶媒で置換して用いることが好ましい。
 用いるシリカゾルの量は、最終的にインクに含まれるシリカの量が、上述の金属酸化物ナノ粒子の配合量となるように、その濃度を考慮して適宜決定される。
 また、本発明で用いる有機機能インクには、得られる薄膜の膜物性の調整等の目的で、有機シラン化合物を含んでもよい。有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物またはテトラアルコキシシラン化合物が挙げられる。とりわけ、有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物またはトリアルコキシシラン化合物が好ましく、トリアルコキシシラン化合物がより好ましい。有機シラン化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 有機シラン化合物を用いる場合、その使用量は、固形分中、通常0.1~50質量%程度であるが、得られる薄膜の平坦性の向上や電荷輸送性等の所望の性質の低下の抑制等のバランスを考慮すると、好ましくは0.5~40質量%程度、より好ましくは0.8~30質量%程度、より一層好ましくは1~20質量%程度である。
 本発明で用いる有機機能インクの固形分濃度は、通常、0.1~20.0質量%程度であり、インクの塗布性を向上させることを考慮すると、好ましくは0.5~10.0質量%程度、より好ましくは1.0~5.0質量%程度である。固形分濃度は、作製する機能膜の厚み等を勘案して適宜設定する。
 有機機能インクの粘度は、インクジェット法で滴下する液滴の量等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常、25℃で15cP(mPa・s)以下であり、好ましくは10cP(mPa・s)以下である。
 また、有機機能インクの表面張力は、通常25℃で20~50mN/mであるが、好ましくは25~45mN/m、より好ましくは37~42mN/mである。
 有機機能インクの粘度と表面張力は、所望の膜厚等の各種要素を考慮して、上述したインク溶媒の種類やそれらの比率、固形分濃度等を変更することで調整可能である。
 本発明において、有機機能インクの調製法としては、特に限定されるものではないが、例えば、上述したポリチオフェン誘導体やアリールアミン誘導体等の有機機能材料を、低揮発性高粘度溶媒を含むインク溶媒(混合溶媒)に溶解させる手法や、インク溶媒を構成するいずれかの溶媒に有機機能材料を溶解させた後、それ以外の溶媒を混合する手法などが挙げられる。
 また、ドーパント物質等のその他の成分を用いる場合、その添加順序も任意である。
 なお、有機機能インクの調製の際に、より平坦性の高い薄膜を再現性よく得る観点から、有機機能材料、ドーパント物質等を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いて濾過することが望ましい。
 上述した有機機能インクが塗布される隔壁付基板としては、公知のフォトレジスト法等によって所定のパターンが形成された基板であれば特に限定されるものではない。なお、通常、基板上において、隔壁によって規定される開口部は複数存在する。
 通常、開口部の大きさは、長辺100~250μm、短辺40~100μmであり、バンクテーパー角度は20~80°である。
 基板の材質としては、特に限定されるものではないが、本発明では、電子素子の陽極材料として用いられるインジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極材料;アルミニウム、金、銀、銅、インジウム等に代表される金属、またはこれらの合金等から構成される金属陽極材料;高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体等のポリマー陽極材料などが挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。
 上述した有機機能インクを、隔壁付基板の隔壁内にインクジェット装置によってインクジェット法で塗布した後、減圧し、さらに必要に応じて加熱することで、隔壁内に塗布された有機機能インクから溶媒を除去して有機機能膜を作製して有機機能膜付き基板を製造することができ、さらには、この有機機能膜上にその他の機能膜を積層することで、有機EL素子等の電子素子を製造することができる。
 この際、インクジェット塗布時および塗布後の加熱・焼成雰囲気は特に限定されるものではなく、大気雰囲気、窒素等の不活性ガス雰囲気、減圧下のいずれでもよいが、ポリチオフェン誘導体やアリールアミン誘導体等の有機機能材料とともに用いるドーパント物質の種類によっては、大気雰囲気下で加熱・焼成することで、良好な特性を有する機能膜が再現性よく得られる場合がある。
 減圧時の減圧度(真空度)は、インク溶媒が蒸発する限り特に制限はないが、本発明では、通常1,000Pa以下であり、好ましくは100Pa以下、より好ましくは50Pa以下、より一層好ましくは25Pa以下、さらに好ましくは10Pa以下である。
 減圧時間も、溶媒が蒸発する限り特に制限はないが、通常、0.1~60分程度であり、1~30分程度が好ましい。
 また、加熱・焼成する場合、その温度は、得られる機能膜の用途、溶媒の種類や沸点等を勘案して、100~260℃程度の範囲内で適宜設定されるものではあるが、有機機能材料として上述したポリチオフェン誘導体アリールアミン誘導体を用い、得られた機能膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、当該機能膜の電荷輸送性を高めるという観点から、140~250℃程度が好ましく、145~240℃程度がより好ましい。
 なお、加熱・焼成の際、より高い均一成膜性を発現させたり、基板上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよい。加熱は、例えば、ホットプレートやオーブン等、適当な機器を用いて行えばよい。
 本発明で作製する有機機能膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔注入輸送層等の陽極と発光層との間に設けられる機能層として用いる場合、5~300nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、有機機能インク中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上のインク量を変化させたりする等の方法がある。
 本発明で作製される電子素子は、上述のとおり、隔壁付基板の隔壁内に、有機機能材料と、低揮発性高粘度溶媒を所定割合で含むインク溶媒とを含む有機機能インクをインクジェット法で塗布し、これを減圧して溶媒を除去して作製された有機機能膜付き基板を備えるものであり、その具体例としては、一対の電極を有し、その少なくとも一方の電極の表面に所定パターンの隔壁が形成され、その隔壁内部に、上記有機機能インクをインクジェット法で塗布等して作製された有機機能膜付き基板およびその上に形成された各種機能膜を備えるものが挙げられる。
 特に、本発明で作製される電子素子は、上記隔壁が形成された電極が陽極であり、上記有機機能膜がこの陽極上に形成される正孔注入層や正孔注入輸送層である、以下(a)~(f)の構成を有する有機EL素子が好適であるが、これらに限定されるわけではない。
 上述したポリチオフェン誘導体やアリールアミン誘導体を含む有機機能インクから作製された有機機能膜は、有機EL素子において、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入輸送層として用い得るが、本発明では、陽極上に形成された隔壁内にインクジェット法によって塗布されるため、正孔注入層または正孔注入輸送層として用いられ、特に、正孔注入層として好適に用いられる。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
 なお、上記各構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間にホール(正孔)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層あるいは電子注入輸送層がホール(正孔)ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。さらに、本発明では、陽極と正孔注入層または正孔注入輸送層との間以外において、必要に応じて各層間に任意の機能層を設けることも可能である。
 「正孔注入層」、「正孔輸送層」および「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものであり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入(輸送)層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、正孔輸送(発光)層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
 「電子注入層」、「電子輸送層」および「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものであり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
 「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料を含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
 上述したポリチオフェン誘導体やアリールアミン誘導体を含む有機機能インクを用いて有機EL素子を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 上記有機機能インクから得られる薄膜からなる正孔注入層を有するOLED素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。なお、電極は、電極に悪影響を与えない範囲で、アルコール、純水等による洗浄や、UVオゾン処理、酸素-プラズマ処理等による表面処理を予め行うことが好ましい。
 予め所定パターンの隔壁が形成された陽極基板上に、上記の方法により、上記有機機能インクを用いて正孔注入層を形成する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/ホールブロック層、電子注入層、陰極金属を順次蒸着する。あるいは、当該方法において蒸着で正孔輸送層と発光層を形成する代わりに、正孔輸送性高分子を含む正孔輸送層形成用組成物と発光性高分子を含む発光層形成用組成物を用いてウェットプロセスによってこれらの層を形成する。なお、必要に応じて、発光層と正孔輸送層との間に電子ブロック層を設けてよい。
 陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属、またはこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
 なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、金、銀、銅、インジウムやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
 正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(α-NPD)、4,4’,4”-トリス[3-メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4’,4”-トリス[1-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1-TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5”-ビス-{4-[ビス(4-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-2,2’:5’,2”-ターチオフェン(BMA-3T)等のオリゴチオフェン類などが挙げられる。
 発光層を形成する材料としては、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、ビススチリルベンゼン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体、シロール誘導体等の低分子発光材料;ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリビニルカルバゾール等の高分子化合物に発光材料と電子移動材料を混合した系等が挙げられる。
 また、蒸着で発光層を形成する場合、発光性ドーパントと共蒸着してもよく、発光性ドーパントとしては、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)等の金属錯体や、ルブレン等のナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の縮合多環芳香族環等が挙げられる。
 電子輸送層/ホールブロック層を形成する材料としては、オキシジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、フェニルキノキサリン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ピリミジン誘導体等が挙げられる。
 電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al23)等の金属酸化物、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)の金属フッ化物などが挙げられる。
 陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金等が挙げられる。
 電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられる。
 正孔輸送性高分子としては、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,1’-ビフェニレン-4,4-ジアミン)]、ポリ[(9,9-ビス{1’-ペンテン-5’-イル}フルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン]-エンドキャップド ウィズ ポリシルシスキノキサン、ポリ[(9,9-ジジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
 発光性高分子としては、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキソキシ)-1,4-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
 陽極と陰極およびこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムエミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料選択する。
 通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出されることから、例えば陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAl/Nd等の反射陽極を、それぞれ用いる。
 なお、有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤などとともに封止してもよい。
 以上説明した本発明によれば、所定の低揮発性高粘度溶媒を含んでいる有機機能インクを用いていることから、塗布後に一定時間放置しても、より具体的には、通常、最大30分間程度放置しても、好ましい態様においては、最大40分間程度放置しても、より好ましい態様においては、最大50分間程度放置しても、より一層好ましい態様においては、最大1時間程度放置しても、さらに好ましい態様においては、最大2時間程度放置しても、さらに一層好ましい態様においては、最大3時間程度放置しても、得られる塗膜の形状が変化しにくく、隔壁内おいて、インク塗布のタイミングの相違に起因する有機機能層の形状のばらつきを抑制でき、平坦性の良好な有機機能膜を有する有機機能膜付き基板を効率的に作製できる。
 さらに、このような特徴のため、例えば量産工程において、パネルへの全てのインク塗布が完了した後、インクが乾燥されるまでの待機時間が長い場合や、当該待機時間がパネル間で異なる場合等、全てのインク塗布が完了した後の経時や、インク塗布が完了したパネル間におけるインク乾燥までの待機時間の相違に起因する有機機能層の形状のばらつきも抑制できる。
 本発明においては、上述のとおり、平坦性の良好な有機機能膜を作製することが可能であり、平坦性指数として、通常33%以下、好ましい態様においては、25%以下、より好ましい態様においては、19%以下、より一層好ましい態様においては、13%以下、さらに好ましい態様においては、10%以下、さらに好ましい態様においては、6%以下という優れた均一性を実現できる。
 なお、平坦性指数は、隔壁際(バンク)の膜厚をA(μm)とし、開口部中央の膜厚をB(μm)とした場合における|A-B|/B×100(%)との式で算出できる。
 本発明においては、上述のとおり、塗布後に一定時間放置しても、得られる塗膜の形状が変化しにくく、安定して平坦性の良好な有機機能膜を作製することが可能であり、引き置き安定指数として、通常0.130、好ましい態様においては、0.110、より好ましい態様においては、0.090、より一層好ましい態様においては、0.070、さらに好ましい態様においては、0.050、さらに一層好ましい態様においては、0.030という高い引き置き安定性を実現できる。
 なお、引き置き安定性指数は、塗膜の放置がされた電荷輸送性薄膜と塗膜の放置がされていない電荷輸送性薄膜について、隔壁の開口部中央の膜厚をB(μm)とし、隔壁の開口部最端と開口部中央との中央の膜厚をC(μm)とした場合におけるC/Bをそれぞれ算出し、両者の差の絶対値として算出できる。
 本発明の有機機能膜付き基板および電子素子の製造方法は、上述したとおり正孔注入層または正孔注入輸送層をインクジェット法で形成する電子素子の製造に好適に用いられるが、その他にも有機光電変換素子、有機薄膜太陽電池、有機ぺロブスカイト光電変換素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子、発光電子化学電池、量子ドット発光ダイオード、量子レーザー、有機レーザーダイオードおよび有機プラスモン発光素子等の電子素子の製造時に、電荷輸送性薄膜をインクジェット法にて形成する場合にも利用することができる。
 以下、合成例、製造例、調製例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
 本実施例において、使用した装置は、以下のとおりである。
(1)加熱減圧装置:柴田科学(株)製 ベルジャー型バキュームオーブン BV-001型
(2)インクジェット装置:クラスターテクノロジー(株)製 専用ドライバWAVE BUILDER(型番:PIJD-1)、カメラ付き観測装置inkjetlado、自動ステージInkjet Designerおよびインクジェットヘッド PIJ-25NSET
(3)膜厚測定および表面形状測定:(株)小坂研究所製 微細形状測定機 サーフコーダET-4000A
 本実施例において、使用した試薬は、以下のとおりである。
MMA:メチルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート
HPMA-QD:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート1molと1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリド1.1molとの縮合反応によって合成した化合物
CHMI:N-シクロヘキシルマレイミド
PFHMA:2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
AIBN:α,α'-アゾビスイソブチロニトリル
QD1:α,α,α'-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン1molと1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリド1.5molとの縮合反応によって合成した化合物
GT-401:ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(商品名:エポリードGT-401、(株)ダイセル製)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CHN:シクロヘキサノン
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
[1]隔壁(バンク)付基板の作製
(1)アクリル重合体の合成
[合成例1]
 MMA10.0g、HEMA12.5g、CHMI20.0g、HPMA2.50g、MAA5.00g、およびAIBN3.20gをPGME79.8gに溶解し、60~100℃にて20時間反応させることにより、アクリル重合体P1溶液(固形分濃度40質量%)を得た。得られたアクリル重合体P1のMnは3,700、Mwは6,100であった。
[合成例2]
 HPMA-QD2.50g、PFHMA7.84g、MAA0.70g、CHMI1.46g、およびAIBN0.33gをCHN51.3gに溶解し、110℃にて20時間反応させることにより、アクリル重合体P2溶液(固形分濃度20質量%)を得た。得られたアクリル重合体P2のMnは4,300、Mwは6,300であった。
 なお、アクリル重合体P1およびP2の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
・クロマトグラフ:(株)島津製作所製GPC装置LC-20AD
・カラム:Shodex KF-804L、803L(いずれも昭和電工(株)製)およびTSK-GEL(東ソー(株)製)を直列接続
・カラム温度:40℃
・検出器:UV検出器(254nm)およびRI検出器
・溶離液:テトラヒドロフラン
・カラム流速:1mL/分
(2)ポジ型感光性樹脂組成物の製造
[製造例1]
 合成例1で得られたアクリル重合体P1溶液5.04g、合成例2で得られたアクリル重合体P2溶液0.05g、QD1 0.40g、GT-401 0.09gおよびPGMEA6.42gを混合し、室温で3時間撹拌して均一な溶液とし、ポジ型感光性樹脂組成物を得た。
(3)隔壁(バンク)付基板の作製
[製造例2]
 (株)テクノビジョン製UV-312を用いて10分間オゾン洗浄したITO-ガラス基板上に、スピンコーターを用いて、製造例1で得られたポジ型感光性樹脂組成物を塗布した後、塗膜付き基板をホットプレート上でプリベーク(100℃、120秒間)し、膜厚1.2μmの薄膜を形成した。この薄膜に、長辺200μm、短辺100μmの長方形が多数描かれたパターンのマスクを介して、キヤノン(株)製紫外線照射装置PLA-600FAにより、波長365nmの紫外線を用いて175mJ/cm2で露光した。次いで、薄膜を1.0質量%TMAH水溶液に120秒間浸漬して現像を行った後、超純水を用いて薄膜の流水洗浄を20秒間行った。次いで、この長方形パターン(開口部)が形成された薄膜をポストベーク(230℃、30分間)して硬化させ、隔壁付基板を作製した。
[2]化合物の合成
[製造例3-1]
 繰り返し単位が上記式(1a)で表される繰り返し単位を含むポリマーであるポリチオフェン誘導体の水分散液(固形分濃度0.6質量%)500gをトリエチルアミン0.9gと混合し、得られた混合物を回転蒸発により乾固した。そして、得られた乾燥物を真空オーブン中、50℃で一晩さらに乾燥し、スルホン酸基にアミンが付加したポリチオフェン誘導体Aを4g得た。
[製造例3-2]
 製造例3-1で得られたポリチオフェン誘導体A2.00gを、28%アンモニア水(純正化学(株)製)100mLに溶解させ、得られた溶液を室温にて終夜撹拌した。得られた反応混合物を、アセトン1,500mLによる再沈殿処理に付し、析出物をろ過にて回収した。得られた析出物を、水20mLおよびトリエチルアミン(東京化成工業(株)製)7.59gに再度溶解させ、60℃で1時間撹拌した。得られた反応混合物を冷却後、イソプロピルアルコール1,000mLとアセトン500mLの混合溶媒による再沈殿処理を行い、析出物をろ過にて回収した。得られた析出物を、減圧下、50℃にて1時間減圧乾燥し、アミン処理がされたポリチオフェン誘導体アミン付加体1.30gを得た。
[製造例3-3]
 国際公開第2006/025342号の記載の方法に従って、式(b-1)で表されるアリールスルホン酸化合物Bを合成した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000047
[3]有機機能インク用組成物の調製
[調製例1]
 アリールスルホン酸化合物Bが20質量%含まれるプロピレングリコール溶液を調製した。この溶液は、アリールスルホン酸化合物Bをプロピレングリコールに入れ、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて50℃で2時間撹拌することによって、調製した。
[調製例2]
 日産化学(株)製のスノーテックス(登録商標)OS(平均一次粒径8~11nmのシリカ水分散ゾル)の分散媒である水を、トリプロピレングリコールで置換し、分散媒をトリプロピレングリコールとするシリカ濃度21.5質量のシリカ分散液を得た。
[4]溶媒の揮発性試験
 用いた有機溶媒の溶媒残存率を、以下の方法で算出した。
 約0.04gの有機溶媒をアルミパン(φ5×5、Cat.No.8579、(株)リガク製)に量り取り、アルミパンとともに有機溶媒の重さを量った(質量Wt(B))。そして、このアルミパンを、加熱減圧装置内のヒーター上に置いた後、直ちに装置のガラス蓋をして真空ポンプで内部を減圧することによって、1分間の加熱減圧処理を行った。なお、減圧に用いた真空ポンプの減圧度は、10秒後は1000Pa、20秒後は450Pa、30秒後は300Pa、40秒後は210Pa、50秒後は150Pa、60秒後は140Paであった。また、加熱減圧装置内のヒーターは、150℃に設定した。
 1分間の加熱減圧処理の後、直ちにアルミパンを取り出して放冷し、アルミパンとともに有機溶媒の重さを量った(質量Wt(A))。
 上記の方法で求めた質量Wt(B)および質量Wt(A)を用い、[質量Wt(A)/質量Wt(B)]×100の式に従って溶媒残存率(%)を算出した。結果を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000048
 表1における粘度は、25℃において、東機産業(株)製、TVE-25形粘度計により測定した値である。
[5]有機機能インク(電荷輸送性ワニス)の調製
[実施例1-1]
 製造例3-2で得られたアミン処理がされたポリチオフェン誘導体アミン付加体0.030gを、プロピレングリコール0.92gおよび2-エチルヘキシルアミン0.048gに入れ、ホットスターラーを用いて80℃で3時間撹拌した。
 得られた混合物に、トリプロピレングリコール1.07g、プロピレンカーボネート4.25g、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル1.93gおよび2-アセトアミドエタノール0.49gを加え、スターラーを用いて室温で10分間撹拌した。
 得られた混合物に、調製例1で得られた溶液0.30gおよび調製例2で得られたシリカ分散液0.98gを加えて室温でさらに撹拌した後、孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスを得た。なお、ワニスを構成する溶媒中における低揮発性高粘度溶媒である2-アセトアミドエタノールの含有割当は5.0質量%である。
[実施例1-2]
 2-アセトアミドエタノールの代わりに、N-(ヒドロキシエチル)ラクトアミドを用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを得た。なお、ワニスを構成する溶媒中における低揮発性高粘度溶媒であるN-(ヒドロキシエチル)ラクトアミドの含有割当は5.0質量%である。
[実施例1-3]
 アミン処理がされたポリチオフェン誘導体アミン付加体の使用量を0.030g、プロピレングリコールの使用量を0.86g、トリプロピレングリコールの使用量を0.97g、プロピレンカーボネートの使用量を4.02g、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルの使用量を1.83gおよび2-アセトアミドエタノールの使用量を0.97gとした以外は、実施例1-1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを得た。なお、ワニスを構成する溶媒中における低揮発性高粘度溶媒である2-アセトアミドエタノールの含有割当は10.0質量%である。
[比較例1-1~1-4]
 2-アセトアミドエタノールの代わりに、それぞれ、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール(比較例1-1)、グリセリン(比較例1-2)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(比較例1-3)、または2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(比較例1-4)を用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを得た。
[比較例1-5]
 製造例3-2で得られたアミン処理がされたポリチオフェン誘導体アミン付加体0.030gを、プロピレングリコール0.98gおよび2-エチルヘキシルアミン0.048gに入れ、ホットスターラーを用いて80℃で3時間撹拌した。
 得られた混合物に、トリプロピレングリコール1.16g、プロピレンカーボネート4.47gおよびジエチレングリコールモノイソブチルエーテル2.03gを加え、スターラーを用いて室温で10分間撹拌した。
 得られた混合物に、調製例1で得られた溶液0.30gおよび調製例2で得られたシリカ分散液0.98gを加えて室温でさらに撹拌した後、孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスを得た。
[6]インクジェット塗布による有機機能膜(電荷輸送性薄膜)付き基板の作製と平坦性指数の算出
 製造例2で得られた隔壁付基板上の長方形の開口部(膜形成領域)に、インクジェット装置を用いて、開口部中央の電荷輸送性薄膜のターゲット膜厚を60nmに設定し、それぞれ、実施例1-1~1~3および比較例1-1~1-5で得られた電荷輸送性ワニスを吐出し、得られた塗膜を、10Pa以下の減圧度(真空度)で15分間減圧乾燥した後、ホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、電荷輸送性薄膜を形成した。
 得られた各電荷輸送性薄膜の断面の形状と膜厚を観察し、隔壁内における膜の均一性の度合い、すなわち平坦性指数を求めた。結果を表2に示す。
 なお、平坦性指数は、開口部隔壁際(バンク)の膜厚をA(μm)とし、開口部中央の膜厚をB(μm)とした場合における|A-B|/B×100(%)として求めた。この数値が大きいほど、平坦性が乏しいということになる。表2の値は、長軸に関するものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000049
 表2に示されるように、低揮発性高粘度溶媒である2-アセトアミドエタノールおよびN-(ヒドロキシエチル)ラクトアミドを所定割合で含むインク溶媒を含む有機機能インクを用いてインクジェット塗布によって隔壁内に作製された有機機能膜では、比較例の有機機能膜よりも平坦性指数が低く、平坦性の良好な電荷輸送性薄膜が得られていることがわかる。
[7]引き置きを伴うインクジェット塗布による有機機能膜(電荷輸送性薄膜)付き基板の作製と引き置き安定性の確認
[実施例3-1~3-2および比較例3-1]
 製造例2で得られた隔壁付基板上の長方形の開口部(膜形成領域)に、インクジェット装置を用いて、開口部中央の電荷輸送性薄膜のターゲット膜厚を60nmに設定し、それぞれ、実施例1-1、実施例1-3および比較例1-5で得られた電荷輸送性ワニスを吐出し、得られた塗膜を20分間放置した。放置した塗膜を、10Pa以下の減圧度(真空度)で15分間減圧乾燥した後、ホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、電荷輸送性薄膜を形成した。
 得られた各電荷輸送性薄膜の断面の形状と膜厚を観察し、塗膜の放置をしない場合(実施例2-1、実施例2-3および比較例2-5)と比較して、膜形状の変化の度合い、すなわち引き置き安定性指数を求めた。結果を表3に示す。
 なお、引き置き安定性指数は、塗膜の放置がされた電荷輸送性薄膜と塗膜の放置がされていない電荷輸送性薄膜について、開口部中央の膜厚をB(μm)とし、開口部最端と開口部中央との中央の膜厚をC(μm)とした場合におけるC/Bをそれぞれ算出し、両者の差の絶対値として求めた。この数値が大きいほど、引き置き安定性が乏しいということになる。表3の値は、長軸に関するものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000050
 表3に示されるように、低揮発性高粘度溶媒である2-アセトアミドエタノールおよびN-(ヒドロキシエチル)ラクトアミドを所定割合で含むインク溶媒を含む有機機能インクを用いてインクジェット塗布によって隔壁内に作製された有機機能膜では、所定時間塗膜を放置した場合でも、引き置き安定性が良好であり、膜形状の経時変化が少ないことがわかる。

Claims (14)

  1.  基板と、この基板上に開口部を規定する隔壁と、この隔壁内に有機機能膜とを有する有機機能膜付き基板の製造方法であって、
     有機機能材料と、低揮発性高粘度溶媒を含む溶媒とを含む有機機能インクを前記隔壁内にインクジェット法で塗布する工程と、
     減圧することで、前記隔壁内に塗布された有機機能インクから溶媒を除去して有機機能膜を形成する工程と、を備え、
     前記低揮発性高粘度溶媒の25℃における粘度が、200mPa・s以上であり、
     前記低揮発性高粘度溶媒を150℃で加熱しながら、常圧から140Paまで1分間で減圧した場合に、当該低揮発性高粘度溶媒の残存率が、80質量%以上であり、
     前記溶媒中の前記低揮発性高粘度溶媒の含有量が、2.5質量%以上であることを特徴とする有機機能膜付き基板の製造方法。
  2.  前記低揮発性高粘度有機溶媒が、下記式(S1)で表される化合物である請求項1記載の有機機能膜付き基板の製造方法。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    (式中、Rは、水酸基または炭素数1~10のアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、R’は、2価炭化水素基を表す。)
  3.  前記Rが、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基を表し、前記R’が、炭素数1~5のアルキレン基を表す請求項2記載の有機機能膜付き基板の製造方法。
  4.  前記低揮発性高粘度溶媒が、2-アセドアミドエタノールおよびN-(2-ヒドロキシエチル)ラクトアミドから選ばれる少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項記載の有機機能膜付き基板の製造方法。
  5.  前記溶媒中の前記低揮発性高粘度溶媒の含有量が、5.0質量%以上である請求項1~4のいずれか1項記載の有機機能膜付き基板の製造方法。
  6.  前記溶媒が、前記低揮発性高粘度溶媒以外の溶媒として、沸点180℃以上で、前記低揮発性高粘度溶媒よりも高揮発性かつ低粘度の溶媒のみを含む請求項1~5のいずれか1項記載の有機機能膜付き基板の製造方法。
  7.  前記低揮発性高粘度溶媒以外の溶媒が、親水性グリコール系溶媒を15~40質量%の割合で含む請求項6記載の有機機能膜付き基板の製造方法。
  8.  前記低揮発性高粘度溶媒以外の溶媒が、25℃における表面張力が40mN/m以下の溶媒を30~50質量%の割合で含む請求項6記載の有機機能膜付き基板の製造方法。
  9.  前記低揮発性高粘度溶媒以外の溶媒が、25℃における粘度が10mPa・s以下の溶媒を60~85質量%含む請求項6記載の有機機能膜付き基板の製造方法。
  10.  前記有機機能材料が、アリールアミン誘導体またはポリチオフェン誘導体である請求項1~9のいずれか1項記載の有機機能膜付き基板の製造方法。
  11.  請求項1~10のいずれか1項記載の製造方法によって得られた有機機能膜付き基板の上に、さらに有機機能層を作製する工程を含む電子素子の製造方法。
  12.  基板と、この基板上に開口部を規定する隔壁と、この隔壁内に有機機能膜とを有する有機機能膜付き基板を製造する際に、前記隔壁内にインクジェット法で塗布されるインクジェット法用インクであって、
     有機機能材料と、低揮発性高粘度溶媒を含む溶媒とを含み、
     前記低揮発性高粘度溶媒の25℃における粘度が、200mPa・s以上であり、
     前記低揮発性高粘度溶媒を150℃で加熱しながら、常圧から140Paまで1分間で減圧した場合に、当該低揮発性高粘度溶媒の残存率が、80質量%以上であり、
     前記溶媒中の前記低揮発性高粘度溶媒の含有量が、2.5質量%以上であることを特徴とするインクジェット法用インク。
  13.  前記低揮発性高粘度有機溶媒が、下記式(S1)で表される化合物であるインクジェット法用インク。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
    (式中、Rは、水酸基または炭素数1~10のアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、R’は、2価炭化水素基を表す。)
  14.  前記Rが、水酸基で置換されている炭素数1~5のアルキル基を表し、前記R’が、炭素数1~5のアルキレン基を表す請求項13記載のインクジェット法用インク。
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