WO2021049534A1 - 受動喫煙に起因する小児肥満の予防又は治療剤 - Google Patents

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充生 島袋
山崎 聡
絵美 尾形
士毅 岡本
裕章 益崎
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    • A61P3/04Anorexiants; Antiobesity agents

Definitions

  • the present invention it is possible to provide a prophylactic or therapeutic agent for obesity caused by nicotine exposure in the fetal period and / or childhood of 14 years or younger, and a composition for preventing or treating obesity.
  • Passive smoking means that another person secondarily inhales the smoke generated by the smoker's smoking. Specifically, it means that another person inhales the smoke rising from the cigarette smoked by the smoker or the smoke contained in the smoker's exhaled breath. Therefore, even non-smokers can be subject to second-hand smoke.
  • fetal period and / or childhood may be either fetal period and childhood, or fetal period or childhood.
  • fetal and / or childhood includes any of the fetal-only period, the childhood-only period, or a period that includes both fetal and childhood.
  • the age and the like of the subject at the time of nicotine exposure is the fetal period and / or the childhood of 14 years or younger.
  • Subject information is various individual information of the subject, including, for example, the subject's age, weight, gender, general health condition, drug sensitivity, presence or absence of medicines being taken, and the like.
  • the effective amount and the dose calculated based on the effective amount are determined according to the information of each subject and the like.
  • it may be administered in several divided doses in order to reduce the burden on the subject.
  • the prophylactic or therapeutic agent of the present invention is, for example, administered 1 to 4 times a day without limitation.
  • the prophylactic or therapeutic agent of the present invention may be administered at various administration frequencies such as daily, every other day, once a week, every other week, and once a month.
  • the prophylactic or therapeutic agent of the present invention it is possible to suppress overeating caused by nicotine exposure in fetal and / or childhood (except for the reduction of preference for a high-fat diet). It can prevent and / or treat obesity.
  • Active ingredient The active ingredient in the pharmaceutical composition for the prevention or treatment of obesity of the present invention is ⁇ -oryzanol. Since the configuration of ⁇ -oryzanol has already been described in detail in the first aspect, the specific description thereof will be omitted here.
  • disintegrant examples include the starch, lactose, carboxymethyl starch, crosslinked polyvinylpyrrolidone, agar, laminarin powder, sodium hydrogen carbonate, calcium carbonate, alginate or sodium alginate, polyoxyethylene sorbitan fatty acid ester, sodium lauryl sulfate, and stearic acid. Acid monoglycerides or salts thereof can be mentioned.
  • ⁇ Example 2 Effect of ⁇ -oryzanol on binge eating and obesity caused by nicotine exposure in adolescents> (Purpose) The efficacy of ⁇ -oryzanol on binge eating and obesity caused by nicotine exposure in early life will be examined using nicotine-exposed binge eating and obesity model mice.
  • ⁇ -oryzanol has an inhibitory effect on overeating and obesity caused by nicotine exposure in fetal and / or juveniles.

Abstract

胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露、特に受動喫煙に起因する肥満の予防又は治療剤、及び予防又は治療用組成物を提供する。 γ‐オリザノールを有効成分として含む、胎児期及び/又は14歳以下の小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制する、肥満の予防又は治療剤、及び予防又は治療用組成物を提供する。

Description

受動喫煙に起因する小児肥満の予防又は治療剤
 本発明は、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露、特に受動喫煙に起因する肥満の予防又は治療剤に関する。
 近年、喫煙者自身の健康被害に加えて、受動喫煙による健康上の影響が知られるようになり、公共施設や飲食店等での禁煙や分煙が一般化されつつある。
 しかし、家庭内喫煙では、第三者の目が届きにくく、受動喫煙対策は不十分になりやすい。特に小児の受動喫煙では、喫煙者と近接し、接触時間が長いことから、受動喫煙の量及び時間が大きくなりやすく、重大な健康被害をもたらし得る。
 実際、日本の平成29年厚労省特別報告(非特許文献1)では、家庭における親の喫煙及び子供の受動喫煙の状況と、子供の過体重及び肥満率との関係が報告されている。この報告では、対象児の生後6か月時点における親の喫煙状況の、対象児の2歳半~13歳までにおける過体重及び肥満率への影響が調査されている。ここでは、親の喫煙状況は、父親及び母親の喫煙の有無と喫煙する場所(室内で喫煙するか否か)に基づいて、「非喫煙群」、「喫煙群(子の受動喫煙なし)」、「喫煙群(子の受動喫煙あり)」の3群に分類されている。調査の結果、男児の過体重及び肥満率については、「喫煙群(子の受動喫煙なし)」は「非喫煙群」と比べて5歳6か月以降で約20~30%高く、「喫煙群(子の受動喫煙あり)」は「非喫煙群」と比べて4歳6か月以降で約20~60%高かった。また、女児の過体重及び肥満率は、「喫煙群(子の受動喫煙なし)」は「非喫煙群」と比べて5歳6か月以降で約20~30%高く、「喫煙群(子の受動喫煙あり)」は「非喫煙群」と比べて2歳6か月以降で約20~70%高かった。したがって、男児、女児ともに、過体重及び肥満率は「喫煙群(子の受動喫煙あり)」で最も高く、次いで「喫煙群(子の受動喫煙なし)」が高く、「非喫煙群」が最も低いことが明らかにされている。
 また、胎児期におけるニコチン曝露(妊娠中の母体のニコチン曝露を通じた胎児のニコチン曝露)によっても肥満が引き起こされることが知られている。母親の妊娠中の喫煙は子供の過体重及び肥満と関連しており、特に母親の妊娠中の喫煙による小児期の過体重及び肥満に対する効果は、父親の喫煙と比較して効果が大きいことが報告されている(非特許文献2)。
 一方、成人後の受動喫煙では肥満者が増加しないことが知られている(非特許文献3)。したがって、受動喫煙に起因する肥満は、胎児期及び小児期における受動喫煙に特有の効果と考えられている。
 肥満は、糖尿病、高脂血症、高血圧のほか11種の肥満関連合併症を引き起こすために(非特許文献4)、その対策は、医学的、医療経済的に最重要課題の一つとなっている。それ故、胎児期及び小児期における受動喫煙に起因する肥満に対して、有効な対策が求められている。
 しかしながら、胎児期及び小児期における受動喫煙や能動喫煙が、小児肥満や成人以降の肥満を増やす機序は、これまで全く明らかにされていない。また、これらを予防又は軽減する成分や薬剤も一切知られていない。したがって、胎児期及び小児期における受動喫煙に起因する肥満の予防又は治療薬の開発が望まれている。
厚生労働省、21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)特別報告(平成29年) Riedel C, et al., Int J Epidemiol., 2014, 43(5):1593-1606. 厚生労働省、喫煙と健康‐喫煙の健康影響に関する検討会報告書(平成28年) 日本肥満学会、肥満症診療ガイドライン2016
 本発明の目的は、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露、特に受動喫煙に起因する肥満の予防又は治療剤、及び予防又は治療用組成物を提供することである。
 本発明者らは最近、生理活性物質であるγ‐オリザノールが、分泌タンパク質の折り畳みを促進する分子シャペロンとして機能し、脳においてERストレスを低下させる効果を有すること、及び高脂肪食への嗜好性を軽減させる効果を有することを見出していた(特開2013-144656;益崎ら、Glycative Stress Research 2017; 4(1): 058-066)。γ‐オリザノールは、フェルラ酸と不飽和トリテルペンアルコール又は植物ステロールとのエステルであり、米糠等に含まれていることが知られている(谷口ら、日本食品科学工学会誌、第59巻、第7号、2012年)。
 本発明者は、γ‐オリザノールのさらなる活性について鋭意研究を行った結果、γ‐オリザノールが、ニコチンに継続的に曝露された小児に生じ得る過食及び肥満の予防や治療に有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、上記研究成果に基づくものであって、以下を提供する。
(1)γ‐オリザノールを有効成分として含む、胎児期及び/又は14歳以下の小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制する、肥満の予防又は治療剤。
(2)前記ニコチン曝露が受動喫煙である、(1)に記載の肥満の予防又は治療剤。
(3)γ‐オリザノールを有効成分として含む、胎児期及び/又は14歳以下の小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制する、肥満の予防又は治療用医薬組成物。
(4)γ‐オリザノールを有効成分として含む、胎児期及び/又は14歳以下の小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制する、肥満の予防又は治療用食品組成物。
 本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2019-165406号の開示内容を包含する。
 本発明によれば、胎児期及び/又は14歳以下の小児期におけるニコチン曝露に起因する肥満の予防又は治療剤、及び予防又は治療用組成物を提供することができる。
4~5週齢の若年期に生理食塩水又はニコチンを投与したマウス群(それぞれ「生理食塩水群」又は「ニコチン群」と表記する)の、10週齢以降の成獣期における体重の推移(A)と14週齢時の体重(B)である。図は、各群についてn=5のマウスの平均値を表し、エラーバーは標準誤差を示す。*はP<0.05(t検定)を示す。 4~5週齢の若年期に生理食塩水又はニコチンを投与したマウス群(それぞれ生理食塩水群又はニコチン群)の、10週齢以降の成獣期における1日摂餌量の推移(A)と、各週齢における平均1日摂餌量(B)を示す図である。図は、各群についてn=5のマウスの平均値を表し、エラーバーは標準誤差を示す。*はP<0.05(t検定)を示す。 4~5週齢の若年期に生理食塩水又はニコチンを投与したマウス群(それぞれ生理食塩水群又はニコチン群)、4~5週齢の若年期にニコチン及びメカミラミンを共投与したマウス群(「ニコチン・メカミラミン群」と表記する)、並びに4~5週齢の若年期にニコチンを投与し、さらに10週齢から28日間に亘ってγ‐オリザノールを投与したマウス群(「ニコチン+γ-オリザノール群」と表記する)の、10週齢以降の成獣期における体重の推移(A)と14週齢時の体重(B)を示す図である。図は、各群についてn=5のマウスの平均値を表し、エラーバーは標準誤差を示す。*はP<0.05(t検定)を示す。 4~5週齢の若年期に生理食塩水又はニコチンを投与したマウス群(それぞれ生理食塩水群又はニコチン群)、4~5週齢の若年期にニコチン及びメカミラミンを共投与したマウス群(ニコチン・メカミラミン群)、並びに4~5週齢の若年期にニコチンを投与し、さらに10週齢から28日間に亘ってγ‐オリザノールを投与したマウス群(ニコチン+γ-オリザノール群)の、10週齢以降の成獣期における1日摂餌量の推移(A)と、その各週齢における1日摂餌量の平均値(B)を示す図である。図は、各群についてn=5のマウスの平均値を表し、エラーバーは標準誤差を示す。*はP<0.05(t検定)を示す。 8~9週齢の成獣期に生理食塩水又はニコチンを投与したマウス群(それぞれ生理食塩水群又はニコチン群)の、14週齢以降における体重の推移(A)と18週齢時の体重の平均値(B)を示す図である。図は、各群についてn=5のマウスの平均値を表す。 8~9週齢の成獣期に生理食塩水又はニコチンを投与したマウス群(それぞれ生理食塩水群又はニコチン群)の、14週齢以降における1日摂餌量の推移(A)と、各週齢における平均1日摂餌量(B)を示す図である。図は、各群についてn=5のマウスの平均値を表す。
1.予防又は治療剤
1-1.概要
 本発明の第1の態様は、肥満の予防又は治療剤である。
 本態様の肥満の予防又は治療剤は、γ‐オリザノールを有効成分として含む。本態様の肥満の予防又は治療剤は、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食に対して抑制効果を有し、肥満を予防又は治療することができる。
1-2.定義
 本明細書で頻用する以下の用語について定義する。
 本明細書において「ニコチン曝露」とは、任意の経路や行為に基づく生体のニコチンへの接触をいう。例えば、能動喫煙、受動喫煙、又は三次喫煙によるニコチン曝露、妊娠中のニコチン曝露による胎児のニコチン曝露、授乳中のニコチン曝露による母乳を介した乳児のニコチン曝露等が挙げられる。ニコチン曝露は、体内へのニコチン摂取をもたらし得る。
 「受動喫煙」とは、喫煙者の喫煙により発生した煙を他者が二次的に吸引することを意味する。具体的には、喫煙者が吸った煙草から立ち上る煙、又は喫煙者の呼気に含まれる煙を他者が吸引することを意味する。したがって、非喫煙者であっても受動喫煙の対象となり得る。
 「三次喫煙」とは、残留受動喫煙とも呼ばれ、煙草の煙に曝露された物質に付着した煙の残留物から有害物質を吸入することを指す。例えば喫煙室で衣服に付着した煙の残留物が喫煙室外で放出され、それを他者が吸引する場合等が挙げられる。本明細書においては、三次喫煙は受動喫煙に含まれるものとする。
 本明細書において「煙草」とは、受動喫煙や三次喫煙によって有害物質の摂取が生じ得る限り、いかなる種類の煙草をも含むものとし、紙巻き煙草、葉巻き煙草、水煙草、電子煙草、加熱式煙草、噛み煙草、嗅ぎ煙草等を含む。
 一般に、煙草の煙には、ニコチン、タール、一酸化炭素等、非常に多くの種類の有害物質が含まれている。「ニコチン」は、タバコを含むナス科植物において天然に産生されるアルカロイドである。煙草の煙から体内に摂取されたニコチンは、神経系等のニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)に結合してこれを活性化し、興奮作用、鎮静作用等、様々な作用をもたらす。ニコチンは生体に対して強い依存性を有し、ニコチン依存症を引き起こす。
 「ニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)」とは、神経伝達物質アセチルコリンに応答する受容体(アセチルコリン受容体)の一種である。ニコチン性アセチルコリン受容体は、アセチルコリンに加えてニコチンにも応答するイオンチャネル型受容体である。ニコチン性アセチルコリン受容体は、中枢神経系、末梢神経系、筋肉等に分布している。ニコチン性アセチルコリン受容体に対するアンタゴニストとして、メカミラミン等が知られている。
 煙草の煙に含まれる「タール」は、煙草の煙のうち一酸化炭素やガス状成分を除いた粒子状の成分をいう。タールには発がん性物質等の有害物質が数多く含まれている。タールにはニコチンも含まれている。
 「γ‐オリザノール(γ-oryzanol)」とは、フェルラ酸と不飽和トリテルペンアルコール又は植物ステロールとのエステルの総称である。一般に、γ‐オリザノールは複数成分、例えば10種類程度の分子種から構成されている混合物の総称である。その主要成分には、例えば、以下の化学式(I)で示されるシクロアルテニルフェルラ酸、化学式(II)で示される24-メチレンシクロアルタニルフェルラ酸、化学式(III)で示されるカンペステリルフェルラ酸、及び化学式(IV)で示されるβ-シトステリルフェルラ酸等が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
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 γ‐オリザノールは、一般に玄米(米糠)の中に高濃度に含まれる他、トウモロコシや大麦等のイネ科植物の種子にも存在することが知られている。
 γ‐オリザノールは、様々な生理活性を有することが知られている。例えば、心身症候(不安、緊張、鬱)の抑制、アルツハイマー病の予防、高脂肪食への嗜好性の軽減等の効果がこれまで報告されている。
 「過食」とは、標準的な食事量の範囲を超える過度の摂食をいう。本明細書においては、肥満をもたらし得る過度の摂食を意味し、一般に言われる極度の過食を伴う摂食障害、例えば神経性過食症等に限定されないものとする。
 「肥満」とは、健常体群における身長と体重に基づいて算出される平均的な相関値と比べて体重が大きい状態、又は体脂肪が過剰に蓄積した状態をいう。本明細書において具体的な肥満の定義は、18歳以上と18歳未満で異なる。18歳以上の成人における肥満度の判定には、身長と体重に基づく体格指数(BMI=体重(kg)/身長(m)2)が用いられ、BMI≧25.0の場合に肥満に分類される。一方、18歳未満では、身長と体重に基づいて体格指数(BMI=体重(kg)/身長(m)2)が求められ、国際肥満タスクフォース(International Obesity Task Force)が生後24か月以上について作成した18歳時BMI=25.0kg/m2に相当する性別及び月齢別カットオフ値(Cole et al., BMJ 2000;320(7244):1240-3)を用いて肥満が定義される。
 本明細書において「小児期」とは、出生後から15歳未満の期間をいい、新生児期、乳児期、幼児期を含む期間をいう。ただし、本明細書では、小児期には胎児期は含まれない。
 本明細書において「胎児期」は、出生前の期間であれば限定しない。特に、胎生期のうち受精後8週目までの期間(胎芽期)を含まない、受精後9週目から出生までの期間であってもよい。
 本明細書において「胎児期及び/又は小児期」とは、胎児期及び小児期、或いは胎児期又は小児期のいずれであってもよい。したがって、「胎児期及び/又は小児期」には、胎児期のみの期間、小児期のみの期間、又は胎児期及び小児期の両方を含む期間のいずれも包含される。
1-3.構成
1-3-1.γ‐オリザノール
 本発明の予防又は治療剤は、有効成分としてγ‐オリザノールを包含する。γ‐オリザノールは、本発明の予防又は治療剤の必須の構成成分である。
 本発明の予防又は治療剤が包含するγ‐オリザノールの具体的な成分は限定しない。任意のγ‐オリザノール成分を使用することができる。限定しないが、例えば前述のシクロアルテニルフェルラ酸、24-メチレンシクロアルタニルフェルラ酸、カンペステリルフェルラ酸、β-シトステリルフェルラ酸等の任意のγ‐オリザノール成分から選択される、1種類又は複数種類の成分であってもよい。
 本発明の予防又は治療剤が包含するγ‐オリザノールは、天然由来のもの、合成して得られたもの、又はその組み合わせのいずれであってもよい。本発明の予防又は治療剤が包含するγ‐オリザノールが天然由来である場合、γ‐オリザノールを含有する任意の植物、例えば、米、トウモロコシ、大麦等に含まれるγ‐オリザノールを使用することができる。例えば、米に含まれるγ‐オリザノールとして、玄米、米糠又は胚芽に含まれるγ‐オリザノール、より具体的には米糠油又は米胚芽油に含まれるγ‐オリザノールを使用することができる。本発明の予防又は治療剤が包含するγ‐オリザノールの、原料からの抽出方法、精製方法については特に限定しない。本発明の予防又は治療剤が包含するγ‐オリザノールは、好ましくは、玄米由来の抽出物である。
1-3-2.剤形
 本発明の予防又は治療剤の剤形は、有効成分であるγ‐オリザノールを不活化させないか、させにくく、かつ投与後に生体内でその薬理効果を十分に発揮し得る剤形であれば特に限定しない。
 剤形は、その形態により液体剤形又は固体剤形(ゲルのような半固体剤形を含む)に分類できるが、本発明の予防又は治療剤は、そのいずれであってもよい。また剤形は投与方法により経口剤形と非経口剤形とに大別できるが、これに関してもいずれであってもよい。
 具体的な剤形としては、経口剤形であれば、例えば、懸濁剤、乳剤、及びシロップ剤のような液体剤形、散剤(粉剤、粉末剤を含む)、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、舌下剤、及びトローチ剤等の固体剤形が挙げられる。また、非経口剤形であれば、例えば、注射剤、懸濁剤、乳剤等の液体剤形が挙げられる。好ましい剤形は、経口剤形である。
1-3-3.投与方法
 本発明の予防又は治療剤は、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制し、肥満を予防又は治療するために、有効成分であるγ‐オリザノールを生体に有効量投与することができる方法であれば、当該分野で公知のあらゆる方法を適用することができる。
 本明細書において「有効量」とは、有効成分がその機能を発揮する上で必要な量、すなわち、本発明では、肥満の予防又は治療剤が、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制し、肥満を予防又は治療する上で必要な量であって、かつそれを適用する生体に対して有害な副作用をほとんど又は全く付与しない量をいう。この有効量は、対象者の情報、投与経路、及び投与回数等の条件によって変化し得る。
 前記「対象者」とは、本態様の肥満の予防若しくは治療剤、第2態様の医薬組成物、又は第3態様の食品組成物の適用対象となる個体、特にヒト個体をいう。
 本発明の予防若しくは治療剤、又は組成物の適用対象となる対象者は、胎児期及び/又は小児期においてニコチンに、今後曝露され得る、現在曝露されている、及び/又は過去に曝露された個体である。ニコチン曝露時における対象者の年齢等は、15歳以下、14歳以下、13歳以下、12歳以下、11歳以下、10歳以下、9歳以下、8歳以下、7歳以下、6歳以下、5歳以下、4歳以下、3歳以下、2歳以下、若しくは1歳以下、かつ/若しくは0歳以上、1歳以上、2歳以上、3歳以上、4歳以上、5歳以上、6歳以上、7歳以上、8歳以上、9歳以上、10歳以上、11歳以上、12歳以上、13歳以上、若しくは14歳以上の小児期、並びに/又は妊娠36週以下、妊娠31週以下、妊娠23週以下、妊娠15週以下、若しくは妊娠7週以下、かつ/若しくは妊娠0週以上、妊娠8週以上、妊娠16週以上、妊娠24週以上、若しくは妊娠32週以上の胎児期である。好ましくは、ニコチン曝露時における対象者の年齢等は胎児期及び/又は14歳以下の小児期である。
 一方、本発明の予防若しくは治療剤又は組成物の適用時(以下、「適用時」という)における対象者の年齢等は、ニコチン曝露時の年齢とは異なり、限定しない。例えば、適用時の年齢等は、胎児期、小児期、及び/又は成人期のいずれであってもよい。また、適用時は、ニコチン曝露の前、ニコチン曝露の間、及び/又はニコチン曝露の後のいずれであってもよい。具体的な例を挙げれば、胎児期及び/又は14歳以下の小児期にニコチンに曝露されている個体に対して、本発明の予防若しくは治療剤又は組成物を胎児期及び/又は14歳以下の小児期に適用してもよい。或いは、胎児期及び/又は14歳以下の小児期にニコチンに曝露された個体に対して、本発明の予防若しくは治療剤又は組成物を小児期及び/又は成人期に適用してもよい。
 ここでいう「ニコチン曝露」とは、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって過食を惹起し得るものであれば、その曝露時間、曝露頻度、及び曝露によってもたらされるニコチン摂取量等は限定しない。また、本態様におけるニコチン曝露は、体内へのニコチン摂取をもたらし得るものであれば特に限定せず、例えば、能動喫煙、受動喫煙、及び三次喫煙によるニコチン曝露、妊娠中のニコチン曝露による胎児のニコチン曝露、授乳中のニコチン曝露による母乳を介した乳児のニコチン曝露等が含まれる。ニコチン曝露は継続的な曝露であることが好ましい。ここでいう「継続的な曝露」とは、限定しないが、例えば、1か月以上、2か月以上、4か月以上、6か月以上、1年以上、2年以上、3年以上、4年以上、5年以上、6年以上、7年以上、8年以上、10年以上、又は12年以上に亘って、平均して1日当たり10分以上、20分以上、30分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、又は4時間以上の曝露をいう。
 「対象者の情報」とは、対象者の様々な個体情報であって、例えば、対象者の年齢、体重、性別、全身の健康状態、薬剤感受性、服用中の医薬品の有無等を含む。有効量、及びそれに基づいて算出される投与量は、個々の対象者の情報等に応じて決定される。肥満の予防又は治療の十分な効果を得る上で、本発明の予防又は治療剤を大量投与する必要がある場合、対象に対する負担軽減のために、数回に分割して投与することもできる。
 本発明の予防又は治療剤の投与方法は、全身投与又は局所的投与のいずれであってもよい。全身投与の例としては、経口投与や静脈注射等の血管内注射等が挙げられる。胎児に対しては、上記いずれかの方法により母体に投与することによって間接的に投与することが可能である。また、乳児に対しては、上記いずれかの方法による乳児に対する直接的な投与の他、上記いずれかの方法により母体に投与することによって、母乳を介して間接的に投与することも可能である。
 本発明の予防又は治療剤は、限定はしないが、例えば1日に1~4回投与される。或いは、本発明の予防又は治療剤は、毎日、隔日、1週間に1回、隔週、1か月に1回等の様々な投与頻度で投与してもよい。
 具体的な投与量の一例として、有効成分であるγ-オリザノールが1日あたり1mg~100g、例えば1mg~10g、1mg~1g、1mg~300mg、1mg~100mg、又は10mg~50mg、好ましくは300mg、又は10mg~50mgとなるように投与される。なお、必要に応じて、上記の範囲外の量を用いることもでき、これらの投与量に制限されるものではない。
 本発明の予防又は治療剤の投与時期は、特に限定はしない。本発明の予防又は治療剤は、ニコチン曝露によって惹起される過食を予防及び/又は治療するために、ニコチン曝露前、ニコチン曝露中、及び/又はニコチン曝露後に投与してもよい。例えば、ニコチン曝露によって過食及び/又はそれに起因する肥満が成立した後に投与してもよい。
1-4.効果
 本発明の予防又は治療剤によれば、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制することができ、それによって肥満を予防及び/又は治療することができる。胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露は、小児期の間、及び/又は小児期以降、例えば成人以降に過食を引き起こし得る。本発明の予防又は治療剤を過食成立前に投与すれば、過食を抑制することで肥満を予防することができる。或いは、過食成立後に投与すれば、過食を抑制することで肥満を治療することができる。
 本態様の肥満の予防又は治療剤によれば、本態様の肥満の予防又は治療剤を対象に投与する工程を含む、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制することにより肥満を予防又は治療する方法も提供される。ここで、投与工程は上記「1-3-3.投与方法」に記載の投与方法に準じる。
 本態様の肥満の予防又は治療剤によれば、過食抑制剤もまた提供される。本発明の過食抑制剤は、過食抑制を目的として投与される点を除いて、その構成は上述の本態様の予防又は治療剤の構成に準じる。本発明の過食抑制剤によれば、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制することができる。
 また、本発明の予防又は治療剤によれば、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制すること(ただし、高脂肪食への嗜好性の軽減によるものを除く)ができ、それによって肥満を予防及び/又は治療することができる。
 γ‐オリザノールは、玄米として人類が長く摂取してきた歴史があり安全性においても優れている。それ故、本発明の予防又は治療剤は高い安全性を有していると言える。
2.肥満の予防又は治療用医薬組成物
2-1.概要
 本発明の第2の態様は、肥満の予防又は治療用医薬組成物である。本態様の肥満の予防又は治療用医薬組成物は、有効成分としてγ‐オリザノールを含む。
2-2.構成
 本態様の肥満の予防又は治療用医薬組成物は、必須の構成成分として有効成分を、また選択成分として薬学的に許容可能な担体、又は他の薬剤を包含する。
2-2-1.構成成分
 以下、各構成成分について具体的に説明をする。
(1)有効成分
 本発明の肥満の予防又は治療用医薬組成物における有効成分は、γ‐オリザノールである。γ‐オリザノールの構成については、第1態様で既に詳述していることから、ここではその具体的な説明を省略する。
 本発明の医薬組成物におけるγ‐オリザノールの含量は特に限定しない。例えば、本発明の医薬組成物は、有効成分として0.001~99重量%、0.01~10重量%、又は0.1~10重量%のγ-オリザノール、例えば90重量%、50重量%、10重量%、5重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.1重量%、又は0.01重量%のγ-オリザノールを含んでもよい。
(2)薬学的に許容可能な担体
 「薬学的に許容可能な担体」とは、製剤技術分野において通常使用し得る溶媒及び/又は添加剤であって、生体に対して有害性がほとんどないか又は全くないものをいう。
 薬学的に許容可能な溶媒には、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
 また、薬学的に許容可能な添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、充填剤、乳化剤、流動添加調節剤、滑沢剤等が挙げられる。
 賦形剤としては、例えば、単糖、二糖類、シクロデキストリン及び多糖類のような糖(より具体的には、限定はしないが、グルコース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン及びセルロースを含む)、金属塩(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム若しくはリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、クエン酸、酒石酸、グリシン、低、中又は高分子量のポリエチレングリコール(PEG)、プルロニック(登録商標)、カオリン、ケイ酸、或いはそれらの組み合わせが挙げられる。
 結合剤としては、例えば、トウモロコシ、コムギ、コメ、若しくはジャガイモのデンプンを用いたデンプン糊、単シロップ、グルコース液、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セラック及び/又はポリビニルピロリドン等が挙げられる。
 崩壊剤としては、例えば、前記デンプンや、乳糖、カルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、アルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド又はそれらの塩が挙げられる。
 充填剤としては、例えば、前記糖及び/又はリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウム、若しくはリン酸水素カルシウム)が挙げられる。
 乳化剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。
 流動添加調節剤及び滑沢剤としては、例えば、ケイ酸塩、タルク、ステアリン酸塩又はポリエチレングリコールが挙げられる。
 上記の添加剤の他、必要に応じて矯味矯臭剤、溶解補助剤(可溶化剤)、懸濁剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤、吸収促進剤(例えば、第4級アンモニウム塩類、ラウリル硫酸ナトリウム)、増量剤、保湿剤(例えば、グリセリン、澱粉)、吸着剤(例えば、澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸)、崩壊抑制剤(例えば、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油)、コーティング剤、着色剤、防腐剤、保存剤、抗酸化剤、香料、風味剤、甘味剤、緩衝剤等を含むこともできる。
 薬学的に許容可能な担体は、γ-オリザノールの体内動態を向上させるために、γ-オリザノールを封入する生体適合性粒子の成分であってもよい。生体適合性粒子は、例えばポリマーから製造することができる。当該ポリマーとしては、生体への刺激や毒性が低く、かつ投与後分解して代謝される生体適合性を備える生体適合性ポリマーが好ましい。好ましくは、生体適合性ポリマーとして、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸/グリコール酸共重合体、又は乳酸/アスパラギン酸共重合体が用いられる。好適には、生体適合性粒子は、生体適合性ポリマーとして、ポリラクチドグリコライド共重合体(PLGA)又はポリエチレングリコール/キトサン修飾‐PLGA(PEG/CS‐PLGA)を含む。
2-2-2.剤形
 本発明の肥満の予防又は治療用医薬組成物の剤形は、「1.肥満の予防又は治療剤」の「1-3-2.剤形」に記載の剤形に準じる。
2-2-3.投与方法
 また、本発明の肥満の予防又は治療用医薬組成物の投与方法は、「1.肥満の予防又は治療剤」の「1-3-3.投与方法」に記載の方法に準じる。
2-3.効果
 本発明の肥満の予防又は治療用医薬組成物を投与した対象では、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制することができ、それによって肥満を予防及び/又は治療することができる。
 また、本発明の肥満の予防又は治療用医薬組成物によれば、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制すること(ただし、高脂肪食への嗜好性の軽減によるものを除く)ができ、それによって肥満を予防及び/又は治療することができる。
 本態様の肥満の予防又は治療用医薬組成物によれば、本態様の肥満の予防又は治療用医薬組成物を対象に投与する工程を含む、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制することにより肥満を予防又は治療する方法も提供される。ここで、投与工程は上記「1-3-3.投与方法」に記載の投与方法に準じる。
 また、本態様の肥満の予防又は治療用医薬組成物によれば、過食抑制用医薬組成物も提供される。本発明の過食抑制用医薬組成物は、過食抑制を目的として投与される点を除いて、その構成は上述の本態様の肥満の予防又は治療用医薬組成物の構成に準じる。
3.肥満の予防又は治療用食品組成物
3-1.概要
 本発明の第3の態様は、肥満の予防又は治療用食品組成物である。
 本態様の肥満の予防又は治療用食品組成物は、有効成分としてγ‐オリザノールを含む。本発明の食品組成物は、例えば、機能性食品、機能性表示食品、特定保健用食品及び栄養機能性食品等として摂取(飲食)される。
3-2.構成
3-2-1.有効成分
 本発明の肥満の予防又は治療用食品組成物における有効成分は、γ‐オリザノールである。γ‐オリザノールの構成については、第1態様で既に詳述していることから、ここではその具体的な説明を省略する。
3-2-2.食品組成物
 本発明の「食品組成物」は、特に限定しないが、食品、飲料、機能性食品等を包含する。本発明に係る食品組成物の種類は、特に限定しないが、食品としては、例えば、キャンデー、クッキー、錠菓、チューインガム及びゼリー等の菓子、麺、パン、米飯及びビスケット等の穀類加工品、ソーセージ、ハム及びかまぼこ等の練り製品、バター及びヨーグルト等の乳製品、インスタント食品、ふりかけ並びに調味料等が挙げられる。また、飲料としては、例えば、茶系飲料(緑茶、紅茶、烏龍茶等)、果物又は野菜系飲料、アルコール性飲料、経口補水液、炭酸飲料、清涼飲料、栄養ドリンク、水等が挙げられる。
 本発明の食品組成物は、機能性食品であってもよい。本発明の「機能性食品」は、生体に対する機能性を有する食品を意味する。例えば、特定保健用食品及び栄養機能食品を含む保健機能食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、液体、粉末、タブレット又はカプセル等)、美容食品、ダイエット食品等の、いわゆる健康食品全般が包含される。また、本発明の食品組成物の包装、添付文書又は販売パンフレット等に、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制し、肥満を予防又は治療することを目的として摂取される旨が記載されていてもよい。
 本発明の機能性食品は、固形製剤(例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤等)、液体製剤(例えば、液剤、懸濁剤、シロップ剤等)、又はジェル剤やペースト剤等であってもよいし、通常の飲食品の形状(例えば、飲料、菓子等)であってもよい。
 本発明の食品組成物へのγ‐オリザノールの配合方法は、特に限定しない。γ‐オリザノールは、γ‐オリザノールを含有する任意の原料(例えば、玄米)から完全若しくは部分的に抽出された状態で配合されてもよく、或いは当該原料(例えば、玄米)に含有された未抽出の状態で配合されてもよい。一実施形態では、本発明の食品組成物は、玄米を除く食品組成物であるが、玄米を加工して得られる食品や玄米が配合された食品であってもよい。
 本発明の食品組成物へのγ‐オリザノールの配合量は、特に限定しない。γ‐オリザノールの具体的な配合量は、食品組成物の種類や求める味や食感を考慮して、当業者が適宜定めることができる。通常は、γ‐オリザノールの配合量は、食品の総重量に対して0.001~99重量%、0.01~10重量%、又は0.1~10重量%、例えば90重量%、50重量%、10重量%、5重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.1重量%、又は0.01重量%である。
 本発明の食品組成物は、任意の食品成分をさらに含んでもよい。本発明の食品組成物は、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を含んでもよい。また、本発明の食品組成物は、甘味料、香料及び着色料等の添加物を含んでもよい。
3-2-3.摂取方法
 本発明の食品組成物の対象者、摂取回数、摂取量、摂取時期は、「1.肥満の予防又は治療剤」の「1-3-3.投与方法」に記載の対象者、投与回数、投与量、投与時期に準じる。
3-3.効果
 本発明の肥満の予防又は治療用食品組成物を摂取した対象では、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制することができ、それによって肥満を予防及び/又は治療することができる。
 また、本発明の肥満の予防又は治療用食品組成物によれば、胎児期及び/又は小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制すること(ただし、高脂肪食への嗜好性の軽減によるものを除く)ができ、それによって肥満を予防及び/又は治療することができる。
 本態様の肥満の予防又は治療用食品組成物によれば、過食抑制用食品組成物もまた提供される。本発明の過食抑制用食品組成物は、過食抑制を目的として摂取される点を除いて、その構成は上述の本態様の肥満の予防又は治療用食品組成物の構成と同一である。
<実施例1:若年期ニコチン曝露による肥満/過食モデルの作製>
(目的)
 胎児期及び/又は小児期の受動喫煙に起因するヒトにおける肥満と同様に、マウスにおいても若年期におけるニコチン曝露が肥満及び/又は過食を惹起するか否かを検証する。
(方法)
 実験に用いるマウスには、C57BL/6Jマウス(日本SLC株式会社)の雄を使用した。特に記載がない場合には齧歯類用飼料D10001(Research Diets社)をマウスの餌として使用し、24℃、12時間明暗サイクル下でマウスを飼育した。なお、齧歯類用飼料D10001(Research Diets社)は、通常食であり、高脂肪食には該当しない。
 若年期におけるニコチンの持続投与は、0.9%生理食塩水(大塚製薬)に溶解したニコチン(Sigma-Aldrich、N3876)溶液を充填したマイクロ浸透圧ポンプ(alzet社、PUMP MODEL 1002)を4週齢のマウスの皮下に埋め込み、その後2週間に亘って0.75mg/kg/日量で持続投与を行った(ニコチン群)。対照群として、0.9%生理食塩水(大塚製薬)を充填したマイクロ浸透圧ポンプを皮下に埋め込んだマウスを使用した(生理食塩水群)。ニコチン群及び生理食塩水群のマウスについて、10週齢以降の成獣期において、体重及び1日摂餌量を毎日モニターした。1日摂餌量は、餌の投与量から残餌量を差し引いて測定した。 実験に使用した個体数は、ニコチン群、生理食塩水群の各々について5匹であった。
(結果)
 ニコチン群のマウスは、生理食塩水群と比較して、11週齢以降の体重及び1日摂餌量が有意に高かった(図1A及びB、図2A)。特に、11~13週齢の各週齢において、ニコチン群のマウスは、生理食塩水群と比較して、平均1日摂餌量が有意に高かった(図2B)。
 この結果から、胎児期及び/又は小児期の受動喫煙に起因するヒトにおける肥満と同様に、マウスにおいても若年期におけるニコチン曝露によって肥満及び過食が惹起され得ることが示された。さらに、当該実験系が胎児期及び/又は小児期の受動喫煙に起因する肥満のモデルとなり得ることが分かった。
<実施例2:若年期におけるニコチン曝露によって惹起される過食及び肥満に対するγ‐オリザノールの効果>
(目的)
 若年期におけるニコチン曝露によって惹起される過食及び肥満に対するγ‐オリザノールの有効性を、ニコチン曝露による過食及び肥満モデルマウスを用いて検証する。
(方法)
 若年期におけるニコチン曝露によって惹起される過食及び肥満に対するγ‐オリザノールの有効性を検討するために、実施例1に基づいて以下の4つのマウス群:4週齢から2週間に亘って生理食塩水を投与したマウス群(「生理食塩水群」と表記する)、4週齢から2週間に亘ってニコチンを投与したマウス群(「ニコチン群」と表記する)、4週齢から2週間に亘ってニコチン及びメカミラミンを共投与したマウス群(「ニコチン・メカミラミン群」と表記する)、4週齢から2週間に亘ってニコチンを投与し、さらに10週齢から28日間に亘ってγ‐オリザノールを投与したマウス群(「ニコチン+γ-オリザノール群」と表記する)を作製し、その後、各群について10週齢以降における体重及び1日摂餌量を毎日モニターすることで、過食及び肥満に対する効果を解析した。
 メカミラミンは、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)のアンタゴニストであり、ニコチンの効果を遮断する。
 各群におけるニコチン又は生理食塩水の投与は、実施例1と同様に、皮下に埋め込んだマイクロ浸透圧ポンプを用いて行った。ニコチン・メカミラミン群におけるメカミラミンの投与は、メカミラミン(Sigma-Aldrich、M9020)を0.9%生理食塩水に溶解したものを用いて、1mg/kg量で1日1回皮下注射により行った。ニコチン+γ-オリザノール群では、10週齢から28日間のマウスの餌として、1%γ-オリザノール(富士フイルム和光純薬、生化学用、製品コード152-01272)含有餌(D10001と同組成の固形飼料を調製)を用いた。 実験に使用した個体数は、4つの群の各々について5匹であった。
(結果)
 ニコチン群のマウスは生理食塩水群と比較して、11週齢以降で体重及び1日摂餌量が高い傾向を示した(図3A、図4A)。一方、ニコチン・メカミラミン群及びニコチン+γ-オリザノール群と、生理食塩水群との間では、いずれの週齢においても、体重及び1日摂餌量に差がみられなかった。特に、14週齢における体重(図3B)、及び11~13週齢の各週齢における平均1日摂餌量(図4B)については、ニコチン群は生理食塩水群に比べて有意に高かったのに対して、ニコチン・メカミラミン群及びニコチン+γ-オリザノール群は、生理食塩水群に対して有意な差はなく、ニコチン群と比べて有意に低かった。
 上記結果から、γ‐オリザノールは、胎児期及び/又は若年期におけるニコチン曝露によって惹起される過食及び肥満に対して抑制効果を有することが示された。
<実施例3:成獣期におけるニコチン曝露の体重及び摂餌量への影響の検討>
(目的)
 実施例1において観察された肥満及び過食の誘導効果が、成獣期におけるニコチン曝露によっても引き起こされるか否かを検証する。
(方法)
 ニコチン(Sigma-Aldrich)を充填したマイクロ浸透圧ポンプ(alzet社)を8週齢のマウスの皮下に埋め込み、2週間に亘って0.75mg/kg/日量で持続投与を行った(ニコチン群)。対照群として、0.9%生理食塩水(大塚製薬)を充填したマイクロ浸透圧ポンプを皮下に埋め込んだマウスを使用した(生理食塩水群)。ニコチン群及び生理食塩水群のマウスについて、体重及び1日摂餌量を14週齢以降毎日モニターした。
 実験に使用した個体数は、ニコチン群、生理食塩水群の各々について5匹であった。
(結果)
 成獣期における曝露では、体重及び1日摂餌量について、ニコチン群と生理食塩水群との間に有意な差が認められなかった(図5A、図6A)。特に、18週齢の体重(図5B)、14~17週齢の各週齢における平均1日摂餌量(図6B)のいずれについても、ニコチン群と生理食塩水群との間に有意な差は認められなかった。
 実施例1において若年期におけるニコチン曝露が肥満及び過食を惹起したのとは異なり、本実施例において成獣期におけるニコチン曝露は肥満及び過食を惹起しなかった。この結果から、ニコチン曝露による肥満及び過食の惹起は、胎児期及び/又は若年期における曝露に特有の現象であることが示された。
 本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (4)

  1.  γ‐オリザノールを有効成分として含む、胎児期及び/又は14歳以下の小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制する、肥満の予防又は治療剤。
  2.  前記ニコチン曝露が受動喫煙である、請求項1に記載の肥満の予防又は治療剤。
  3.  γ‐オリザノールを有効成分として含む、胎児期及び/又は14歳以下の小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制する、肥満の予防又は治療用医薬組成物。
  4.  γ‐オリザノールを有効成分として含む、胎児期及び/又は14歳以下の小児期におけるニコチン曝露によって惹起される過食を抑制する、肥満の予防又は治療用食品組成物。
PCT/JP2020/034134 2019-09-11 2020-09-09 受動喫煙に起因する小児肥満の予防又は治療剤 WO2021049534A1 (ja)

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