JP2022107111A - 気分障害の予防又は治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】うつ病等の気分障害に対する副作用のない新たな予防又は治療剤を提供することである。【解決手段】ガーデンアンゼリカ抽出物を有効成分として含む、気分障害の予防又は治療剤を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、気分障害の予防又は治療剤、気分障害の予防又は治療用医薬組成物、及び気分障害の予防又は治療用食品組成物に関する。
うつ病は、抑うつ気分、興味・関心の喪失、不安、睡眠障害、食欲異常(拒食又は過食)、自殺企図等を症状とする精神疾患である。
厚生労働省による1996年から2014年までの統計調査では、うつ病は認知症と並んで増加率の高い精神疾患である。日本におけるうつ病の有病率は1~2%であるが、生涯有病率は3~7%にも及ぶ。近年では働き盛りの中高年での発症頻度が高くなっており、うつ病による社会的損失は大きい。そのため、うつ病の予防及び治療法の開発は重要な課題となっている。
うつ病は、心理的ストレス等の慢性的ストレス、脳内変化、又は本人の有する発症脆弱性等を要因として発症することが知られている。うつ病の発症機序としては、酸化酵素阻害薬と三環系抗うつ薬の抗うつ作用が偶然に発見されてから、セロトニンやノルアドレナリン伝達機能の低下が原因であるとする仮説(モノアミン仮説)が提唱されている。また、ストレスによって活性化する視床下部-下垂体-副腎皮質軸の制御系が破綻し、グルココルチコイド(ストレスホルモン)の過剰分泌や脳由来神経栄養因子(BDNF)の枯渇によってうつ病が発症するという仮説も提唱されている。しかしながら、他の精神疾患と同様に、うつ病も複数の遺伝子が関わる多因子疾患である。そのため、責任遺伝子の特定は困難であり、うつ病の発症機序には不明な点が多い。
こうした中、モノアミン仮説に基づく抗うつ薬が数多く開発されてきた。現在、副作用の比較的少ない選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、及びノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬(NaSSA)が第三世代の抗うつ薬として主流となっている(非特許文献1)。
しかしながら、第三世代を含む従来の抗うつ薬は効果に個人差があることに加えて、副作用が伴うことも知られている。例えばSSRIやSNRIでは、飲み始めは中枢神経が刺激されることによって、不安や焦燥感、イライラが急に高まってしまう、いわゆる賦活症候群が知られている。また、薬剤標的であるセロトニンやノルアドレナリンの作用過多による不眠・性機能障害、動悸等の神経症状に加えて、悪心嘔吐・食欲の減退・便秘下痢等の消化器系症状等の副作用も知られている。さらに、NaSSAでは、抗ヒスタミン作用による眠気や体重増加が伴う場合がある。また、服用を中止する際には、めまい・発汗・不眠・吐き気等の離脱症候群に注意が必要となっている。
したがって、うつ病等の気分障害に対するより安全性の高い薬物療法の開発が望まれている。
蜂須貢, 貝谷久宜, 昭和大学薬学雑誌, 2010, 1(1), 17-28.
本発明の目的は、うつ病等の気分障害に対する副作用のない新たな予防又は治療剤を提供することである。
ガーデンアンゼリカ抽出物及びフェルラ酸を含有する栄養補助食品であるフェルガード(登録商標)は、アルツハイマー病の進行抑制を目的として使用されている。本発明者らは、コルチコステロンの慢性投与によって得られるうつ病モデルマウスにフェルガードを投与し、うつ病モデルマウスが示す不安様行動に対する効果を検討した。その結果、オープンフィールドテスト及び明暗箱往来テストのいずれにおいても、うつ病モデルマウスの不安様行動がフェルガード投与によって著しく改善されることを見出した。さらに、うつ病モデルマウスの不安様行動は、フェルガードの有効成分であるガーデンアンゼリカ抽出物又はフェルラ酸のいずれか単独の投与によっても改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、上記研究成果に基づくものであって、以下を提供する。
(1)ガーデンアンゼリカ抽出物を有効成分として含む、気分障害の予防又は治療剤。
(2)フェルラ酸又はその薬学的に許容される塩を有効成分としてさらに含む、(1)に記載の予防又は治療剤。
(3)フェルラ酸又はその薬学的に許容される塩が米ぬかに由来する、(2)に記載の予防又は治療剤。
(4)ガーデンアンゼリカ抽出物とフェルラ酸又はその薬学的に許容される塩との重量比が5:100~200:100である、(2)又は(3)に記載の予防又は治療剤。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の予防又は治療剤を含む、気分障害の予防又は治療用医薬組成物。
(6)環状オリゴ糖をさらに含む、(5)に記載の予防又は治療用医薬組成物。
(7)経口投与用である、(5)又は(6)に記載の予防又は治療用医薬組成物。
(8)前記気分障害がうつ病である、(5)~(7)のいずれかに記載の予防又は治療用医薬組成物。
(9)(1)~(4)のいずれかに記載の予防又は治療剤を含む、気分障害の予防又は治療用食品組成物。
(10)気分障害を治療する薬物の製造における、ガーデンアンゼリカ抽出物及びフェルラ酸又はその薬学的に許容される塩の使用。
(11)前記気分障害がうつ病である、(10)に記載の使用。
本発明によれば、うつ病等の気分障害に対する副作用のない、又は極めて小さい新たな予防又は治療剤を提供することができる。
コルチコステロンの慢性投与によって得られるうつ病モデルマウスを示す図である。(A)通常の飲料水で飼育したマウスを示す。拡大した写真は、マウスの体毛の毛艶が良好である様子を示す。(B)コルチコステロンの慢性投与によって得られたうつ病モデルマウスを示す。拡大した写真は、マウスの体毛の毛艶が悪化している様子を示す。 フェルガードの主要成分であるガーデンアンゼリカ及びフェルラ酸を示す図である。(A)ガーデンアンゼリカを示す。(B)米ぬかに含まれるフェルラ酸とその構造式を示す。 実施例1で比較した3つのマウス群(VHCL群、CORT群、及びCORT+FERG群)の実験スケジュールを示す図である。 オープンフィールドテストの実験方法を示す図である。(A)オープンフィールドテストに使用する行動実験装置を示す。(B)対照マウスの軌跡を示す。中央に示す枠は、中央領域の位置を示す。(C)うつ病モデルマウスの軌跡を示す。うつ病モデルマウスでは、中央領域に滞在する時間が短い。 明暗箱往来テストの実験方法を示す図である。(A)明箱と暗箱の写真を示す。(B)暗箱に入れられたマウスが、一定時間後に初めて明箱に進入する様子を示す。 実施例1の行動テスト[1]におけるオープンフィールドテストの結果を示す図である。(A)VHCL群、CORT群、及びCORT+FERG群の総移動距離を示す。(B)VHCL群、CORT群、及びCORT+FERG群の中央域滞在割合を示す。 実施例1の行動テスト[1]における明暗箱往来テストの結果を示す図である。(A)VHCL群、CORT群、及びCORT+FERG群の明暗往来回数を示す。(B)VHCL群、CORT群、及びCORT+FERG群の明箱滞在時間を示す。 実施例1の行動テスト[2]におけるオープンフィールドテストの結果を示す図である。(A)VHCL群、CORT群、及びCORT+FERG群の総移動距離を示す。(B)VHCL群、CORT群、及びCORT+FERG群の中央域滞在割合を示す。 実施例1の行動テスト[2]における明暗箱往来テストの結果を示す図である。(A)VHCL群、CORT群、及びCORT+FERG群の明暗往来回数を示す。(B)VHCL群、CORT群、及びCORT+FERG群の明箱滞在時間を示す。 実施例2で比較した4つのマウス群(VHCL群、CORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群)の実験スケジュールを示す図である。 実施例2の行動テスト[1]におけるオープンフィールドテストの結果を示す図である。(A)VHCL群、並びにCORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群の総移動距離を示す。(B)VHCL群、並びにCORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群の中央域滞在割合を示す。 実施例2の行動テスト[1]における明暗箱往来テストの結果を示す図である。(A)VHCL群、並びにCORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群の潜時(明箱に進入するまでに要する時間)を示す。(B)VHCL群、並びにCORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群の明箱滞在時間を示す。 実施例2の行動テスト[2]におけるオープンフィールドテストの結果を示す図である。(A)VHCL群、CORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群の総移動距離を示す。(B)VHCL群、CORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群の中央域滞在割合を示す。 実施例2の行動テスト[2]における明暗箱往来テストの結果を示す図である。(A)VHCL群、CORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群の明暗往来回数を示す。(B)VHCL群、CORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群の明箱滞在時間を示す。
1.予防又は治療剤
1-1.概要
本発明の第1の態様は、気分障害の予防又は治療剤である。本態様の気分障害の予防又は治療剤は、ガーデンアンゼリカ抽出物を有効成分として含む。本態様の気分障害の予防又は治療剤は、うつ病等の気分障害を予防又は治療することができる。
1-2.定義
本明細書で頻用する以下の用語について定義する。
「ガーデンアンゼリカ(Angelica archangelica)」は、セリ科(Apiaceae)シシウド属(Angelica)の二年草又は多年草であり、セイヨウトウキ(西洋当帰)とも呼ばれる。ガーデンアンゼリカにはarchangelica及びlitoralisの2つの亜種が知られているが、本明細書ではいずれの亜種も包含する。ガーデンアンゼリカは、精油、クマリン、テルペン、ラクトン、フラボノイド、有機酸、ステロイド、サポニン、アルカロイド、糖、及び脂肪等を含有する。特に、ガーデンアンゼリカの根部、種子、実等からは、テルペノイド炭化水素(モノ-、セスキ-、及びジテルペン化合物を含む)、非テルペノイド炭化水素、及びそれらの酸化誘導体等、様々な成分を含む精油が得られる。
本明細書において「ガーデンアンゼリカ抽出物」とは、ガーデンアンゼリカの全部又は一部から抽出される抽出物である。ガーデンアンゼリカの「全部」とは、生きている植物体を構成する全領域をいう。また、ガーデンアンゼリカの「一部」とは、ガーデンアンゼリカの生きている植物体を構成する一部領域、例えば、根部、茎部、葉部、花部、表皮、実、種子、又はそれらの組み合わせ等をいう。ガーデンアンゼリカ抽出物は、ガーデンアンゼリカの全部又は一部から常法に従って抽出することができる。例えば、超臨界流体抽出法(例えば、超臨界二酸化炭素抽出)、蒸留、水蒸気蒸留、又は溶媒抽出(例えば、有機溶媒抽出)によって抽出することができる。ガーデンアンゼリカ抽出物に含まれ得る成分の例としては、モノテルペン、セスキテルペン、及びジテルペン等のテルペン類、フラノクマリン類を含むクマリン類、並びにラクトン等が挙げられる。モノテルペンの例としては、α-ピネン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、3-カレン、リモネン、及びサビネン等が挙げられる。セスキテルペンの例としては、α-フムレン、α-コパエン、及びゲルマクレンD等が挙げられる。ラクトンの例としては、13-トリデカノリド、及び15-ペンタデカノリド等が挙げられる。クマリンは30種類以上が同定されており、その例としては、アンゲリシン、アルカンゲリシン、キサントトキシン、ベルガプテン、フェロプテリン、インペラトリン、及びオストール等が挙げられる。上記の他、ガーデンアンゼリカ抽出物にはミルセン等も含まれ得る。
「フェルラ酸」は、植物の細胞壁等に含まれるポリフェノールの一種である。フェルラ酸は、フェルラ酸を含有する植物からの抽出によって、又は化学合成によって得ることができる。フェルラ酸を含有する植物としては、例えば、トウモロコシ、大麦、小麦、米、コーヒー、タマネギ、ダイコン、レモン、センキュウ、トウキ、マツ、オウレン、アギ、カンショ等が挙げられる。米の場合には、フェルラ酸は米ぬかに豊富に含まれており、米ぬかから米油を製造する際の廃棄物や副産物である廃油、アルカリ油滓、又は粗脂肪酸を原料として、これらをアルカリ加水分解して安価にフェルラ酸を得ることも可能である。フェルラ酸の化学合成の例としては、バニリンとマロン酸の縮合脱炭酸によってフェルラ酸を製造することができる。
本明細書において「環状オリゴ糖」とは、環状構造を有するオリゴ糖の総称である。環状オリゴ糖としては、グルコースが6個環状に結合したα-デキストリン、グルコースが7個環状に結合したβ-デキストリン、及びグルコースが8個環状に結合したγ-デキストリン等が挙げられる。環状オリゴ糖を使用すれば、フェルラ酸を包接体とすることによって、体内におけるフェルラ酸の代謝時間を延長することができる。
「気分障害」とは、気分の浮き沈みにより、日常生活に支障をきたす疾患の総称である。気分障害には、うつ病及び双極性障害が例示される。
「発達障害」とは、学習、言語、注意、対人関係、又は行動制御等に関係する脳機能の障害である。発達障害には、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉症、及びアスペルガー症候群が例示される。
1-3.構成
1-3-1.有効成分
(1)ガーデンアンゼリカ抽出物
本発明の予防又は治療剤は、有効成分としてガーデンアンゼリカ抽出物を包含する。ガーデンアンゼリカ抽出物は、本発明の予防又は治療剤の必須の構成成分である。
本発明の予防又は治療剤が包含するガーデンアンゼリカ抽出物は、ガーデンアンゼリカの全部又は一部から抽出される。例えば、ガーデンアンゼリカ抽出物は、根部、茎部、葉部、花部、表皮、実、若しくは種子から抽出された抽出物であってもよい。
本発明の予防又は治療剤が包含するガーデンアンゼリカ抽出物の抽出方法は、特に限定せず、公知の抽出方法によって抽出することができる。例えば、超臨界流体抽出法(例えば、超臨界二酸化炭素抽出)、蒸留、水蒸気蒸留、又は溶媒抽出(例えば、有機溶媒抽出)によって抽出された抽出物であってもよい。溶媒抽出の場合には、抽出溶媒としては、例えばメタノール若しくはエタノール等の低級アルコール、又は低級アルコールと水との混合溶媒を使用することができる。
(2)フェルラ酸
一実施形態において、本発明の予防又は治療剤は、ガーデンアンゼリカ抽出物に加えて、フェルラ酸を有効成分としてさらに含んでもよい。フェルラ酸は、薬学的に許容される塩の形で用いることにより水溶性を向上させ、有効性を増大させることもできる。このような塩形成用の塩基物質としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;水酸化アンモニウム等の無機塩基;アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基を用いることができるが、特にアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物が好ましい。
本発明の予防又は治療剤が包含するフェルラ酸又はその薬学的に許容される塩は、天然由来のもの、化学合成によって得られるもの、又はその組み合わせのいずれであってもよい。本発明の予防又は治療剤が包含するフェルラ酸又はその薬学的に許容される塩が天然由来である場合、フェルラ酸を含有する任意の植物、例えば米、トウモロコシ、大麦等に含まれるフェルラ酸を使用することができる。米を原料とする場合は、玄米又は米ぬかに含まれるフェルラ酸を使用することができる。本発明の予防又は治療剤が包含するフェルラ酸の原料からの抽出方法、精製方法については特に限定しない。
(3)ガーデンアンゼリカ抽出物とフェルラ酸又はその薬学的に許容される塩の比率
本発明の予防又は治療剤がガーデンアンゼリカ抽出物及びフェルラ酸又はその薬学的に許容される塩を含む場合、両者の含有比率は限定しない。ガーデンアンゼリカ抽出物とフェルラ酸又はその薬学的に許容される塩との重量比は、例えば、5:100~200:100、10:100~100:100、又は20:100~50:100の範囲内であってもよく、例えば、10:100、20:100、又は100:100であってもよい。一実施形態において、ガーデンアンゼリカ抽出物とフェルラ酸又はその薬学的に許容される塩との重量比は、20:100(すなわち1:5)であってもよい。
1-3-2.剤形
本発明の予防又は治療剤の剤形は、有効成分であるガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩を不活化させないか、させにくく、かつ投与後に生体内でその薬理効果を十分に発揮し得る剤形であれば特に限定しない。
剤形は、その形態により液体剤形又は固体剤形(ゲルのような半固体剤形を含む)に分類できるが、本発明の予防又は治療剤は、そのいずれであってもよい。また剤形は投与方法により経口剤形と非経口剤形とに大別できるが、これに関してもいずれであってもよい。
具体的な剤形としては、経口剤形であれば、例えば、懸濁剤、乳剤、及びシロップ剤のような液体剤形、散剤(粉剤、粉末剤を含む)、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、舌下剤、及びトローチ剤等の固体剤形が挙げられる。また、非経口剤形であれば、例えば、注射剤、懸濁剤、乳剤等の液体剤形が挙げられる。好ましい剤形は、経口剤形である。
1-3-3.投与方法
本発明の予防又は治療剤は、気分障害を予防又は治療するために、有効成分であるガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩を生体に有効量投与することができる方法であれば、当該分野で公知のあらゆる方法を適用することができる。
本明細書において「有効量」とは、有効成分がその機能を発揮する上で必要な量、すなわち、本発明では、予防又は治療剤が、気分障害を予防又は治療する上で必要な量であって、かつそれを適用する生体に対して有害な副作用をほとんど又は全く付与しない量をいう。この有効量は、対象者の情報、投与経路、及び投与回数等の条件によって変化し得る。
前記「対象者」とは、本態様の気分障害の予防若しくは治療剤、又は第2態様若しくは第3態様の組成物の適用対象となる個体、特にヒト個体をいう。
本発明の予防若しくは治療剤、又は組成物の適用対象となる対象者は、気分障害、例えばうつ病又は双極性障害に罹患している、又は今後罹患することが予想される個体である。好ましくはうつ病患者である。
「対象者の情報」とは、対象者の様々な個体情報であって、例えば、対象者の年齢、体重、性別、全身の健康状態、薬剤感受性、服用中の医薬品の有無等を含む。有効量、及びそれに基づいて算出される投与量は、個々の対象者の情報等に応じて決定される。気分障害の予防又は治療の十分な効果を得る上で、本発明の予防又は治療剤を大量投与する必要がある場合、対象に対する負担軽減のために、数回に分割して投与することもできる。
本発明の予防又は治療剤の投与方法は、全身投与又は局所的投与のいずれであってもよい。全身投与の例としては、経口投与や静脈注射等の血管内注射等が挙げられる。
本発明の予防又は治療剤は、限定はしないが、例えば1日に1~4回投与される。或いは、本発明の予防又は治療剤は、毎日、隔日、1週間に1回、隔週、1ヶ月に1回等の様々な投与頻度で投与してもよい。
具体的な投与量の一例として、有効成分であるガーデンアンゼリカ抽出物が1日あたり0.1mg/kg~100g/kg、1mg/kg~10g/kg、又は10mg/kg~1g/kg、好ましくは10~100mg/kgとなるように投与され、かつ/又は有効成分であるフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩が1日あたり0.1mg/kg~100g/kg、1mg/kg~10g/kg、又は10mg/kg~1g/kg、好ましくは100~200mg/kgとなるように投与される。なお、必要に応じて、上記の範囲外の量を用いることもでき、これらの投与量に制限されるものではない。
1-4.効果
本発明の予防又は治療剤によれば、気分障害(うつ病又は双極性障害)を強い副作用なしに予防又は治療することができる。
本発明の予防又は治療剤は、発達障害(注意欠陥・多動性障害(ADHD)又は自閉症)の予防又は治療剤として使用することもできる。
本発明によれば、気分障害を治療する薬物の製造における、ガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩の使用もまた提供される。当該使用の一実施形態では、気分障害はうつ病又は双極性障害であってもよい。
また、本発明によれば、発達障害を治療する薬物の製造における、ガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩の使用もまた提供される。当該使用の一実施形態では、発達障害は注意欠陥・多動性障害(ADHD)又は自閉症であってもよい。
2.気分障害の予防又は治療用医薬組成物
2-1.概要
本発明の第2の態様は、気分障害の予防又は治療用医薬組成物である。本態様の医薬組成物は、有効成分としてガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩を含む。
2-2.構成
本態様の医薬組成物は、必須の構成成分として有効成分を、また選択成分として薬学的に許容可能な担体、又は他の薬剤を包含する。
2-2-1.構成成分
以下、各構成成分について具体的に説明をする。
(1)有効成分
本発明の医薬組成物における有効成分は、第1態様に記載の気分障害の予防又は治療剤である。より具体的には、ガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩である。ガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩の構成については、第1態様で既に詳述していることから、ここではその具体的な説明を省略する。
本発明の医薬組成物における、ガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩の含量は特に限定しない。例えば、本発明の医薬組成物は、有効成分として0.001~99重量%、0.01~10重量%、又は0.1~10重量%のガーデンアンゼリカ抽出物、例えば90重量%、50重量%、10重量%、5重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.1重量%、又は0.01重量%のガーデンアンゼリカ抽出物を含んでもよい。また、本発明の医薬組成物は、有効成分として0.001~99重量%、0.01~10重量%、又は0.1~10重量%のフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩、例えば90重量%、50重量%、10重量%、5重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.1重量%、又は0.01重量%のフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩を含んでもよい。
(2)薬学的に許容可能な担体
「薬学的に許容可能な担体」とは、製剤技術分野において通常使用し得る溶媒及び/又は添加剤であって、生体に対して有害性がほとんどないか又は全くないものをいう。
薬学的に許容可能な溶媒には、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
また、薬学的に許容可能な添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、充填剤、乳化剤、流動添加調節剤、滑沢剤等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、単糖、二糖類、シクロデキストリン及び多糖類のような糖(より具体的には、限定はしないが、グルコース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン及びセルロースを含む)、金属塩(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム若しくはリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、クエン酸、酒石酸、グリシン、低、中又は高分子量のポリエチレングリコール(PEG)、プルロニック、カオリン、ケイ酸、或いはそれらの組み合わせが挙げられる。
結合剤としては、例えば、トウモロコシ、コムギ、コメ、若しくはジャガイモのデンプンを用いたデンプン糊、単シロップ、グルコース液、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セラック及び/又はポリビニルピロリドン等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、前記デンプンや、乳糖、カルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、アルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド又はそれらの塩が挙げられる。
充填剤としては、例えば、前記糖及び/又はリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウム、若しくはリン酸水素カルシウム)が挙げられる。
乳化剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。
流動添加調節剤及び滑沢剤としては、例えば、ケイ酸塩、タルク、ステアリン酸塩又はポリエチレングリコールが挙げられる。
上記の添加剤の他、必要に応じて矯味矯臭剤、溶解補助剤(可溶化剤)、懸濁剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤、吸収促進剤(例えば、第4級アンモニウム塩類、ラウリル硫酸ナトリウム)、増量剤、保湿剤(例えば、グリセリン、澱粉)、吸着剤(例えば、澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸)、崩壊抑制剤(例えば、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油)、コーティング剤、着色剤、防腐剤、保存剤、抗酸化剤、香料、風味剤、甘味剤、緩衝剤等を含むこともできる。
薬学的に許容可能な担体は、ガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩の体内動態を向上させるために、ガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩を封入する生体適合性粒子の成分であってもよい。生体適合性粒子は、例えばポリマーから製造することができる。当該ポリマーとしては、生体への刺激や毒性が低く、かつ投与後分解して代謝される生体適合性を備える生体適合性ポリマーが好ましい。好ましくは、生体適合性ポリマーとして、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸/グリコール酸共重合体、又は乳酸/アスパラギン酸共重合体が用いられる。好適には、生体適合性粒子は、生体適合性ポリマーとして、ポリラクチドグリコライド共重合体(PLGA)又はポリエチレングリコール/キトサン修飾‐PLGA(PEG/CS‐PLGA)を含む。
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、環状オリゴ糖を含む。本発明の医薬組成物に含まれる環状オリゴ糖は、例えば、α-デキストリン、β-デキストリン、又はγ-デキストリンであってもよい。
2-2-2.剤形
本発明の医薬組成物の剤形は、「1.気分障害の予防又は治療剤」の「1-3-2.剤形」に記載の剤形に準じる。
2-2-3.投与方法
本発明の医薬組成物の投与方法は、「1.気分障害の予防又は治療剤」の「1-3-3.投与方法」に記載の方法に準じる。
一実施形態において、本発明の医薬組成物の対象となる気分障害はうつ病である。
一実施形態において、本発明の医薬組成物は経口投与用である。
2-3.効果
本発明の医薬組成物を投与した対象では、気分障害(うつ病又は双極性障害)を強い副作用なしに予防又は治療することができる。
本発明の医薬組成物において、フェルラ酸又はその薬学的に許容される塩と共にγ-デキストリン等の環状オリゴ糖を使用すれば、フェルラ酸を包接体とすることによって、体内での代謝時間を延長し、フェルラ酸の効果をより長期に亘って持続させることができる。
本発明の医薬組成物は、発達障害(注意欠陥・多動性障害(ADHD)又は自閉症)の予防又は治療用医薬組成物として使用することもできる。
3.気分障害の予防又は治療用食品組成物
3-1.概要
本発明の第3の態様は、気分障害の予防又は治療用食品組成物である。本態様の食品組成物は、有効成分としてガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩を含む。本発明の食品組成物は、例えば、機能性食品、機能性表示食品、特定保健用食品及び栄養機能性食品等として摂取(飲食)される。
3-2.構成
3-2-1.有効成分
本発明の食品組成物における有効成分は、第1態様に記載の気分障害の予防又は治療剤である。より具体的には、ガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩である。ガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩の構成については、第1態様で既に詳述していることから、ここではその具体的な説明を省略する。
3-2-2.食品組成物
本発明の「食品組成物」は、特に限定しないが、食品、飲料、機能性食品等を包含する。本発明に係る食品組成物の種類は、特に限定しないが、食品としては、例えば、キャンデー、クッキー、錠菓、チューインガム及びゼリー等の菓子、麺、パン、米飯及びビスケット等の穀類加工品、ソーセージ、ハム及びかまぼこ等の練り製品、バター及びヨーグルト等の乳製品、インスタント食品、並びに調味料等が挙げられる。また、飲料としては、例えば、茶系飲料(緑茶、紅茶、烏龍茶等)、果物又は野菜系飲料、アルコール性飲料、経口補水液、炭酸飲料、清涼飲料、栄養ドリンク、水等が挙げられる。
本発明の食品組成物は、機能性食品であってもよい。本発明の「機能性食品」は、生体に対する機能性を有する食品を意味する。例えば、特定保健用食品及び栄養機能食品を含む保健機能食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、液体、粉末、タブレット又はカプセル等)、美容食品、ダイエット食品等の、いわゆる健康食品全般が包含される。また、本発明の食品組成物の包装、添付文書又は販売パンフレット等に、うつ病等の気分障害を予防又は治療することを目的として摂取される旨が記載されていてもよい。
本発明の機能性食品は、固形製剤(例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤等)、液体製剤(例えば、液剤、懸濁剤、シロップ剤等)、又はジェル剤やペースト剤等であってもよいし、通常の飲食品の形状(例えば、飲料、菓子等)であってもよい。
本発明の食品組成物へのガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩の配合方法は、特に限定しない。ガーデンアンゼリカ抽出物は、ガーデンアンゼリカから完全若しくは部分的に抽出された状態で配合されてもよく、或いはガーデンアンゼリカが未抽出の状態で配合されてもよい。また、フェルラ酸又はその薬学的に許容される塩は、フェルラ酸を含有する任意の原料(例えば、米ぬか)から完全若しくは部分的に抽出された状態で配合されてもよく、或いは当該原料(例えば、米ぬか)に含有された未抽出の状態で配合されてもよい。一実施形態では、本発明の食品組成物は、ガーデンアンゼリカ及び/又は米ぬかを加工して得られる食品や、ガーデンアンゼリカ及び/又は米ぬかが配合された食品であってもよい。
本発明の食品組成物へのガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩の配合量は、特に限定しない。ガーデンアンゼリカ抽出物及び/又はフェルラ酸若しくはその薬学的に許容される塩の具体的な配合量は、食品組成物の種類や求める味や食感を考慮して、当業者が適宜定めることができる。通常は、ガーデンアンゼリカ抽出物の配合量は、食品の総重量に対して0.001~99重量%、0.01~10重量%、又は0.1~10重量%、例えば90重量%、50重量%、10重量%、5重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.1重量%、又は0.01重量%である。また、通常は、フェルラ酸又はその薬学的に許容される塩の配合量は、食品の総重量に対して0.001~99重量%、0.01~10重量%、又は0.1~10重量%、例えば90重量%、50重量%、10重量%、5重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.1重量%、又は0.01重量%である。
本発明の食品組成物は、任意の食品成分をさらに含んでもよい。本発明の食品組成物は、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を含んでもよい。また、本発明の食品組成物は、甘味料、香料、及び着色料等の添加物を含んでもよい。
一実施形態において、本発明の食品組成物は、環状オリゴ糖を含む。本発明の食品組成物に含まれる環状オリゴ糖は、例えば、α-デキストリン、β-デキストリン、又はγ-デキストリンであってもよい。
3-2-3.摂取方法
本発明の食品組成物の対象者、摂取回数、摂取量、摂取時期は、「1-3-3.投与方法」に記載の対象者、投与回数、投与量に準じる。
一実施形態において、本発明の食品組成物の対象となる気分障害はうつ病である。
3-3.効果
本発明の食品組成物を摂取した対象において、安全に気分障害(うつ病又は双極性障害)を予防又は治療することができる。
本発明の食品組成物において、フェルラ酸又はその薬学的に許容される塩と共にγ-デキストリン等の環状オリゴ糖を使用すれば、フェルラ酸を包接体とすることによって、体内での代謝時間を延長し、フェルラ酸の効果をより長期に亘って持続させることができる。
本発明の食品組成物は、発達障害(注意欠陥・多動性障害(ADHD)又は自閉症)の予防又は治療用食品組成物として使用することもできる。
<実施例1:うつ病モデルマウスの不安様行動に対するフェルガードの効果>
(目的)
動物がストレスに曝されると、それに対抗し細胞の糖代謝を高める作用を有する糖質コルチコイドが分泌される。げっ歯類の場合には、ストレスに応じて主にコルチコステロン(以下、「CORT」と表記する)が分泌される。
CORTの放出は、通常、視床下部-下垂体前葉-副腎皮質軸(HPA軸)によって制御されており、CORTは自身が過剰に分泌されないように、視床下部や下垂体の働きをネガティブフィードバック機構によって抑制することが知られている。しかし、過度又は長期に亘るストレスにより、HPA軸の制御系が破綻すると、CORTが過剰に分泌されてしまう。CORTの作用はベル型で、高濃度では逆に細胞毒性を生ずることから、脳神経細胞が高濃度のCORTに曝露されることがうつ病の原因であるとする「HPA軸仮説」が提唱されている。CORT慢性投与モデルは、慢性ストレスの代わりにCORTを慢性的に投与して高CORT血症とすることで、うつ病脳の状態を再現するというものである。
本実施例では、ストレスホルモンを慢性的に投与することによって得られるうつ病モデルマウス(図1B)に対して、ガーデンアンゼリカ抽出物及びフェルラ酸の混合物であるフェルガード(登録商標)を投与して、その効果を検証する。フェルガード(登録商標)(株式会社グロービア)は、ガーデンアンゼリカ抽出物、及び米ぬかから抽出されたフェルラ酸を1:5の重量比で含む栄養補助食品である(図2)。以下の実験で使用したフェルガードは株式会社グロービアから供与された製品を使用し、DMSO又はβシクロデキストリンで溶解したものを使用した。
(方法)
(1)実験スケジュール
実験には雄のC57BL/6Nマウス(日本チャールズリバーより8週齢で購入)を使用した。マウスは1ケージ内に5頭ずつ入れ、室温23±1℃、照度100lux、12時間/日の点灯時間(6時点灯-18時消灯)にて飼育した。1週間の通常飼育の後、餌(MRストック、日本農産工業)及び水を自由に摂取できる環境下で飼育した、以下の3つの群のマウスについて行動を評価した(図3)。
(i)VHCL群
4.5mg/mL βシクロデキストリン(富士フィルム和光純薬、030-08342、JAN 4987481396623)を含む水で7週間飼育した。第4週に行動テスト[1]を、第7週に行動テスト[2]を行った。
(ii)CORT群
35μg/mLコルチコステロン(富士フィルム和光純薬、035-17584、JAN 4987481381964)及び4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で4週間(第1週から第4週まで)飼育した。第4週の1週間内に行動テスト[1]を行った。続いて、35μg/mLコルチコステロン及び4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で3週間(第5週から第7週まで)飼育した。第7週の1週間内に行動テスト[2]を行った。
(iii)CORT+FERG群
35μg/mLコルチコステロン及び4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で4週間(第1週から第4週まで)飼育した。第4週の1週間内に行動テスト[1]を行った。続いて、35μg/mL CORT、0.5mg/mLフェルガード(登録商標)(以下、「FERG」と表記する)、及び4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で3週間(第5週から第7週まで)飼育した。第7週の1週間内に行動テスト[2]を行った。
(2)行動実験
上記(1)の実験スケジュールにおいて、異なる2つの時点(行動テスト[1]及び[2])の各々において、オープンフィールドテスト及び明暗箱往来テストにより不安様行動を検討した。
(i)オープンフィールドテスト
防音箱内に設置した新規環境となる実験箱(40cm幅×40cm奥行×30cm高、図4A)にマウスを入れ、10分間の行動をCCDカメラにより記録した。取り込んだ画像を行動解析ソフト(Times OF、小原医科産業)で解析し、総移動距離、及び10分間における中央領域滞在時間の割合(中央域滞在割合)を定量することによって、新規環境下での不安様行動を評価した。不安様行動が強い場合には、総移動距離が短くなる傾向があり、中央域滞在割合が低くなる傾向がある。
(ii)明暗箱往来テスト
明箱と暗箱の間のしきり板にマウスが通り抜けられる程度の穴が開いた明暗箱を用いる(図5)。暗箱に入れられたマウスは、しばらくすると新奇な明箱(400luxの照度に設定)に進入する。明箱に進入するまでに要する時間(潜時)を測定する。不安様行動が強い場合には、潜時が長くなる傾向がある。また、その後明箱と暗箱を往来する回数(明暗往来回数)と、明箱での滞在時間を測定する。不安様行動が強い場合には、明暗往来回数が少なくなる傾向があり、明箱での滞在時間が短くなる傾向がある。
(結果)
(1)行動テスト[1]
行動テスト[1]におけるオープンフィールドテストの結果を図6に示す。
第1週~第4週の4週間に亘ってCORT投与を受けたCORT群及びCORT+FERG群では、CORT投与を受けていないVHCL群と比較して、10分間の総移動距離がやや小さい傾向を示した(図6A)。また、CORT群及びCORT+FERG群では、VHCL群と比較して、中央域滞在割合が有意に減少した(図6B)。この結果から、4週間のCORT投与によって不安様行動が亢進することが示された。
行動テスト[1]における明暗箱往来テストの結果を図7に示す。
CORT群及びCORT+FERG群では、VHCL群と比較して、10分間の明暗往来回数がやや少ない傾向を示した(図7A)。また、CORT群及びCORT+FERG群では、VHCL群と比較して、明箱滞在時間は有意に短かった(図7B)。
以上の結果から、4週間のCORT投与によって不安様行動が亢進し、うつ病モデルが作製されたことが示された。
(2)行動テスト[2]
行動テスト[2]におけるオープンフィールドテストの結果を図8に示す。
第5週~第7週の3週間に亘ってCORT投与を受けたCORT群では、CORT投与を受けていないVHCL群と比較して、10分間の総移動距離が有意に小さかった(図8A)。これに対して、FERG投与を受けたCORT+FERG群では、10分間の総移動距離がVHCL群と同程度であった(図8A)。同様に、中央域滞在割合については、CORT群はVHCL群と比較して有意に小さかったの対して、CORT+FERG群ではVHCL群と同程度であった(図8B)。
行動テスト[2]における明暗箱往来テストの結果を図9に示す。
CORT群では、VHCL群と比較して、10分間の明暗往来回数が少ない傾向を示した(図9A)。これに対して、CORT+FERG群では、10分間の明暗往来回数がVHCL群と同程度であった(図9A)。明箱滞在時間については、CORT群がVHCL群と比較して短い傾向を示したが、CORT+FERG群ではVHCL群と同程度であった(図9B)。
以上の結果から、うつ病モデルマウスにみられる不安様行動が、ガーデンアンゼリカ抽出物及びフェルラ酸の混合物であるフェルガードの投与で改善することが示された。
<実施例2:うつ病モデルマウスにおけるガーデンアンゼリカ抽出物又はフェルラ酸の単独投与の効果>
(目的)
フェルガードを構成する2つの主要成分であるガーデンアンゼリカ抽出物及びフェルラ酸の各々を単独で投与した場合の効果を検討する。
(方法)
フェルガードの代わりにガーデンアンゼリカ抽出物又はフェルラ酸を用いた点以外は、実施例1と同様に実験を行った。以下の4つの群のマウスについて、行動を評価した(図10)。なお、以下の実験で使用したフェルラ酸及びガーデンアンゼリカ抽出物は共に株式会社グロービアから供与された製品を使用した。
(i)VHCL群
4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で7週間飼育した。第4週に行動テスト[1]を、第7週に行動テスト[2]を行った。
(ii)CORT群
35μg/mLコルチコステロン及び4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で4週間(第1週から第4週まで)飼育した。第4週の1週間内に行動テスト[1]を行った。続いて、35μg/mL CORT及び4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で3週間(第5週から第7週まで)飼育した。第7週の1週間内に行動テスト[2]を行った。
(iii)CORT+FA群
35μg/mLコルチコステロン及び4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で4週間(第1週から第4週まで)飼育した。第4週の1週間内に行動テスト[1]を行った。続いて、35μg/mL CORT、0.4 mg/mLフェルラ酸(以下、「FA」と表記する)、及び4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で3週間(第5週から第7週まで)飼育した。第7週の1週間内に行動テスト[2]を行った。
(iv)CORT+GA群
35μg/mLコルチコステロン及び4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で4週間(第1週から第4週まで)飼育した。第4週の1週間内に行動テスト[1]を行った。続いて、35μg/mL CORT、0.1 mg/mLガーデンアンゼリカ抽出物(以下、「GA」と表記する)、及び4.5mg/mL βシクロデキストリンを含む水道水で3週間(第5週から第7週まで)飼育した。第7週の1週間内に行動テスト[2]を行った。
(結果)
(1)行動テスト[1]
行動テスト[1]におけるオープンフィールドテストの結果を図11に示す。
第1週~第4週の4週間に亘ってCORT投与を受けたCORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群では、CORT投与を受けていないVHCL群と比較して、10分間の総移動距離がやや少ない傾向を示した(図11A)。また、CORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群では、VHCL群と比較して、中央域滞在割合が有意に減少した(図11B)。この結果から、4週間のCORT投与によって不安様行動が亢進することが示された。
行動テスト[1]における明暗箱往来テストの結果を図12に示す。
CORT群、CORT+FA群、及びCORT+GA群では、VHCL群と比較して、明箱に進入するまでに要する時間(潜時)が長い傾向を示した(図12A)。
以上の結果から、4週間のCORT投与によって不安様行動が亢進し、うつ病モデルが作製されたことが示された。
(2)行動テスト[2]
行動テスト[2]におけるオープンフィールドテストの結果を図13に示す。
第5週~第7週の3週間に亘ってCORT投与を受けたCORT群では、CORT投与を受けていないVHCL群と比較して、10分間の総移動距離が有意に小さかった(図13A)。これに対して、GA投与を受けたCORT+GA群、及びFA投与を受けたCORT+FA群では、10分間の総移動距離がCORT群と比較して顕著な回復を示した(図13A)。同様に、中央域滞在割合については、CORT群はVHCL群と比較して有意に小さかったの対して、CORT+GA群及びCORT+FA群ではCORT群と比較して顕著な回復を示した(図13B)。
行動テスト[2]における明暗箱往来テストの結果を図14に示す。
CORT群では、VHCL群と比較して、10分間の明暗往来回数が有意に低下した(図14A)。これに対して、CORT+GA群及びCORT+FA群では、10分間の明暗往来回数がCORT群と比較して高い傾向を示した(図14A)。明箱滞在時間については、CORT群がVHCL群と比較して短い傾向を示したが、CORT+GA群及びCORT+FA群ではCORT群と比較して高い傾向を示した(図14B)。
本実施例で得られたフェルラ酸の効果は、フェルラ酸(富士フィルム和光純薬;MP Biomedicals, Inc., 製品番号101685)を用いた場合でも同様に得られた。
以上の結果から、うつ病モデルマウスにみられる不安様行動が、ガーデンアンゼリカ抽出物又はフェルラ酸の単独の投与によって改善することが示された。

Claims (11)

  1. ガーデンアンゼリカ抽出物を有効成分として含む、気分障害の予防又は治療剤。
  2. フェルラ酸又はその薬学的に許容される塩を有効成分としてさらに含む、請求項1に記載の予防又は治療剤。
  3. フェルラ酸又はその薬学的に許容される塩が米ぬかに由来する、請求項2に記載の予防又は治療剤。
  4. ガーデンアンゼリカ抽出物とフェルラ酸又はその薬学的に許容される塩との重量比が5:100~200:100である、請求項2又は3に記載の予防又は治療剤。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の予防又は治療剤を含む、気分障害の予防又は治療用医薬組成物。
  6. 環状オリゴ糖をさらに含む、請求項5に記載の予防又は治療用医薬組成物。
  7. 経口投与用である、請求項5又は6に記載の予防又は治療用医薬組成物。
  8. 前記気分障害がうつ病である、請求項5~7のいずれか一項に記載の予防又は治療用医薬組成物。
  9. 請求項1~4のいずれか一項に記載の予防又は治療剤を含む、気分障害の予防又は治療用食品組成物。
  10. 気分障害を治療する薬物の製造における、ガーデンアンゼリカ抽出物及びフェルラ酸又はその薬学的に許容される塩の使用。
  11. 前記気分障害がうつ病である、請求項10に記載の使用。
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