WO2020008781A1 - ガラス物品の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
状態調整槽7で状態の調整が成された溶融ガラスGmを成形体8に供給して、ガラスリボンGrを成形するに際して、状態調整槽7の流出口7eに接続管12の第一曲げ部13を接続し、成形体8の流入口8cに接続管12の第二曲げ部14を接続すると共に、状態調整槽7の内部に流入する際の溶融ガラスGmの流れ方向を基準流れ方向d0としたとき、第一曲げ部13を、状態調整槽7の流出口7eと同じ向きから、第一曲げ部13を平面視した状態で基準流れ方向d0と同じ向きの第一の方向d1に曲げ、かつ第二曲げ部14を、第一の方向d1から、第二曲げ部14を平面視した状態で基準流れ方向d0に対して左右何れかの向きの第二の方向d2に曲げる。
Description
本発明は、ガラス物品の製造方法及び製造装置に関し、特に成形体に至る溶融ガラスの搬送経路を改良することで、製造ラインのレイアウトの自由度を高めるための技術に関する。
周知のように、ガラスロールや板ガラスの製造ラインは、溶融ガラスが流れる溶融ラインと、ガラスリボンが流れる加工ラインとからなる。この場合、溶融ラインは、例えば、上流側から順に、溶解槽と、清澄槽と、撹拌槽などの均質化槽と、状態調整槽と、成形体とを備えると共に、これら各槽と成形体とが溶融ガラスの供給管で接続された構成をなす(例えば特許文献1を参照)。また、ガラスロールの製造ラインにおいて、ガラスリボンの搬送方向は縦方向から横方向に転換される(例えば特許文献2を参照)。このため、加工ラインは、製造ラインを平面視した状態で、溶融ラインの終端(成形体)から溶融ラインに直交する向きに延伸している。
このように、ガラスロールの製造ラインにおいては、溶融ラインと加工ラインとが直交する向きに配置される。この場合、ガラスロールの製造ラインを並列に配置すると、加工ラインの分だけ溶融ライン間の距離を開けなくてはならず、設置スペース上の無駄が生じる。また、溶融ラインと加工ラインとが直交する位置関係しか採れないようだと、製造ラインのレイアウトが制限され、レイアウトを柔軟に変更することも難しい。
上記問題を解決するための対策として、例えば図8及び図9に示すレイアウトが考えられる。このレイアウトにおいては、状態調整槽101は、図示しない均質化槽の下流側に位置し、成形体102は、状態調整槽101の下流側に位置している(図8を参照)。そして、均質化槽と状態調整槽101とが所定形状の接続管103(図9を参照)で接続されると共に、状態調整槽101と成形体102とが、所定の向きに曲がった形状をなす接続管104(図8を参照)で接続されている。この場合、状態調整槽101の流出口101aは下方を向いており(図8を参照)、この流出口101aに接続される接続管104が、この接続管104を平面視した状態で、状態調整槽101内への溶融ガラスGmの流入方向d0に対して直交する向きへと曲げられている(図9を参照)。このように、接続管104を曲げた構成とすることで、ガラスリボンGrの送り方向D0と、溶融ガラスGmの流れ方向(状態調整槽101内部への溶融ガラスGmの流入方向d0)とが平行になるので、溶融ラインと加工ラインとを平行に配置することが可能となる。なお、図8及び図9中、符号101bは状態調整槽101の流入口、符号102aは成形体102の流入口、符号Gr1,Gr2は成形されるガラスリボンGrの幅方向両端部を示している。
ところで、上述した溶融ラインを備えた製造ラインを稼働した場合、成形体102に至るまでの各槽(例えば図10に示す均質化槽105や状態調整槽101)内に溶融ガラスGmの停滞領域R1,R2が生じることがある。これら停滞領域R1,R2内の溶融ガラスGm1’,Gm2’は、停滞領域R1,R2を通過することなく成形体102に至った溶融ガラスGmと、異なる温度履歴を経ているため、異質となり易い。従来構成の溶融ラインであれば、図11に示すように、停滞領域R1,R2内の溶融ガラスGm1’,Gm2’は、状態調整槽101の下方から接続管106を流れて、成形体102の流入口102aの上部又は下部を通過し、ガラスリボンGrの幅方向両端部Gr1,Gr2となる。ガラスリボンGrの幅方向両端部Gr1,Gr2は、通常、その後の加工ラインにおいて切断等により除去されるため、異質な溶融ガラスGm1’,Gm2’が最終製品内に残ることもなく特に問題はない。これに対して、上記提案の溶融ライン(図8及び図9を参照)の場合、接続管104を、下方から、状態調整槽101への溶融ガラスGmの流入方向d0に対して直交する向きへと曲げているため、図10及び図12に示すように、停滞領域R1,R2の溶融ガラスGm1’,Gm2’は、接続管104のうち従来構成の溶融ラインにおいて流れる部分(図11)とは異なる部分を流れ、成形体102の流入口102aのうち上下方向の中間部を通過し、成形体8内に流入する。そのため、これら停滞領域R1,R2の溶融ガラスGm1’,Gm2’は、図12に示すように、ガラスリボンGrの幅方向両端部Gr1,Gr2の間に位置する製品部分に混入し、加工後のガラスリボンGr(すなわち、製品としてのガラスロールやガラス板)に異質な溶融ガラスGm1’,Gm2’が残り、製品不良を発生させる。
以上の事情に鑑み、本明細書では、溶融ラインで生じ得る異質な溶融ガラスがガラスリボンの製品部分に残る事態を防止しつつ、ガラス物品の製造ラインのレイアウトに関する自由度を高めることを、解決すべき技術課題とする。
前記課題の解決は、本発明に係るガラス物品の製造方法により達成される。すなわち、この製造方法は、溶融ガラス生成装置で溶融ガラスを生成する生成工程と、生成した溶融ガラスの状態を状態調整槽で調整する状態調整工程と、状態の調整が成された溶融ガラスを成形体に供給してガラスリボンを成形する成形工程とを備える、ガラス物品の製造方法において、状態調整槽の流出口と成形体の流入口とが、第一曲げ部と第二曲げ部とを有する接続管で接続され、状態調整槽の流出口と第一曲げ部とが接続され、第二曲げ部と成形体の流入口とが接続され、溶融ガラス生成装置の側から状態調整槽の内部に流入する際の溶融ガラスの流れ方向を基準流れ方向としたとき、第一曲げ部は、状態調整槽の流出口と同じ向きから、第一曲げ部を平面視した状態で基準流れ方向と同じ向きの第一の方向に曲がっており、かつ第二曲げ部は、第一の方向から、第二曲げ部を平面視した状態で基準流れ方向に対して左右何れかの向きの第二の方向に曲がっている点をもって特徴付けられる。
このように、本発明に係る製造方法では、状態調整槽の流出口と接続される第一曲げ部の曲げ方向を、第一曲げ部を平面視した状態で基準流れ方向と同じ向きに設定した。これにより、詳細は後述するが、従来構成の溶融ラインの場合と同様に、停滞領域の溶融ガラスは、成形体の流入口の上部又は下部を通過することになる。従って、停滞領域の溶融ガラスは成形体により成形されるガラスリボンの幅方向両端部に到達する。また、上述のように接続管を曲げることにより、成形体の流入口の向きを、第二曲げ部の曲げ方向(第二の方向)によって適宜設定することができる。以上より、本発明によれば、異質な溶融ガラスが加工後のガラスリボンに残って、製品の品質低下を招く事態を可及的に防止しつつ、製造ラインのレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
また、本発明に係る製造方法においては、第一の方向及び第二の方向はともに水平方向であってもよい。
このように、第一の方向及び第二の方向をともに水平方向とすることで、第一曲げ部の下流端における溶融ガラスの流れ方向を水平方向にすると共に、第二曲げ部による溶融ガラスの流れ方向変換を水平面上で行うことができる。よって、例えば成形体の流入口が水平方向を向くように配置した場合、停滞領域の溶融ガラスが接続管(第一曲げ部、第二曲げ部)に流入した際の位置関係を成形体に到達するまで維持して、これら好ましくない溶融ガラスがガラスリボンの製品部分に混入する事態を確実に防止することが可能となる。
また、本発明に係る製造方法においては、成形体は、オーバーフロー溝から溢れ出た溶融ガラスを両側面に沿って流下させることでガラスリボンを成形するもので、成形体の流入口は、両側面に対して直交する向きに設けられ、かつ第一の方向と第二の方向とがなす角度が90°に設定されていてもよい。また、本発明に係る製造方法においては、ガラス物品は、ガラスリボンをロール状に巻き取ってなるガラスロールであってもよい。
上述のように構成した成形体に、上述のように曲げた形態をなす第二曲げ部を接続することによって、基準流れ方向と、成形体により成形されるガラスリボンの主表面の向きとを一致させることができる。ガラスロールの製造工程では、成形されたガラスリボンは、下方に引き出された後、カテナリを介して水平方向に方向転換して搬送されるので、上記構成によれば、溶融ラインと加工ラインとを平行に配置することができる。これにより、ガラスロールの製造ラインをその幅方向(溶融ラインにおいてはその長手方向に直交する向きをいい、加工ラインにおいてはガラスリボンの幅方向をいう。以下、本明細書において同じ。)に狭めることができるので、ガラスロールの製造ラインを並列に複数配置する場合に好適である。
また、前記課題の解決は、本発明に係るガラス物品の製造装置によっても達成される。すなわち、この製造装置は、溶融ガラスを生成する溶融ガラス生成装置と、生成した溶融ガラスの状態を調整する状態調整槽と、状態の調整が成された溶融ガラスをガラスリボンに成形する成形体とを備えるガラス物品の製造装置において、状態調整槽の流出口と成形体の流入口とが、第一曲げ部と第二曲げ部とを有する接続管で接続され、状態調整槽の流出口と第一曲げ部とが接続され、第二曲げ部と成形体の流入口とが接続され、溶融ガラス生成装置の側から状態調整槽の内部に流入する際の溶融ガラスの流れ方向を基準流れ方向としたとき、第一曲げ部は、状態調整槽の流出口と同じ向きから、第一曲げ部を平面視した状態で基準流れ方向と同じ向きの第一の方向に曲がっており、かつ第二曲げ部は、第一の方向から、第二曲げ部を平面視した状態で基準流れ方向に対して左右何れかの向きの第二の方向に曲がっている点をもって特徴付けられる。
このように、本発明に係る製造装置においても、状態調整槽の流出口と接続される第一曲げ部の曲げ方向を、第一曲げ部を平面視した状態で基準流れ方向と同じ向きに設定することにより、停滞領域の溶融ガラスは、成形体の流入口の上部又は下部を通過することになる。従って、停滞領域の溶融ガラスは成形体により成形されるガラスリボンの幅方向両端部に到達する。また、上述のように接続管を曲げることにより、成形体の流入口の向きを、第二曲げ部の曲げ方向(第二の方向)によって適宜設定することができる。以上より、本発明によれば、異質な溶融ガラスがガラスリボンの幅方向両端部の間に位置する製品部分に混入するのを防止できるため、製品の品質低下を招く事態を可及的に防止しつつ、製造ラインのレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
本発明によれば、溶融ラインで生じ得る異質な溶融ガラスがガラスリボンの製品部分に残る事態を防止しつつ、ガラス物品の製造ラインのレイアウトに関する自由度を高めることが可能となる。
以下、本発明の一実施形態を図1~図7に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るガラス物品の製造装置1を正面から見た図、図2は、同じガラス物品の製造装置1を平面視した図である。これらの図に示すように、この製造装置1は、大別して溶融ガラスGmが流れる溶融ライン2と、成形されたガラスリボンGrの加工ライン3とを備える。このうち、溶融ライン2は、最上流域に配置された溶融ガラス生成装置としての溶解槽4と、溶解槽4の下流側に配設される清澄槽5と、清澄槽5の下流側に配設される均質化槽6と、均質化槽6の下流側に配設される状態調整槽7と、状態調整槽7のさらに下流側に配設される成形体8と、各槽4~7、及び成形体8の間を接続する接続管9~12とを備える。
また、ガラスリボンGrの加工ライン3は、例えば、何れも図示は省略するが、成形体8の下方に位置し、成形体8で成形したガラスリボンGrに徐冷処理を施す徐冷処理部と、徐冷処理が施されたガラスリボンGrを所定の温度、例えば室温付近にまで冷却する冷却部と、冷却後のガラスリボンGrの送り方向を縦方向から横方向に転換する方向転換部と、横方向に搬送されるガラスリボンGrの幅方向両端部(耳部ともいう)をガラスリボンGr本体から切り離す第一切断部と、幅方向両端部が除去されたガラスリボンGrを幅方向に沿って切断する第二切断部と、第二切断部を通過したガラスリボンGrをロール状に巻取る巻取り部とを備える。もちろん、上述の構成は一例にすぎず、上述した構成要素の一部を変更、省略してもよく、あるいは上記以外の構成要素を必要に応じて追加してもよい。以下、溶融ライン2について、状態調整槽7と成形体8との接続態様を中心に説明する。
溶解槽4は、投入されたガラス原料を溶解して、溶融ガラスGmを生成する生成工程を行うための容器である。溶解槽4は、第一の接続管9によって清澄槽5に接続されている。
清澄槽5は、第一の接続管9を介して溶解槽4から供給された溶融ガラスGmを清澄剤等の働きにより清澄する清澄工程を行うための容器である。清澄槽5は、第二の接続管10によって均質化槽6に接続されている。
均質化槽6は、清澄された溶融ガラスGmを撹拌し、均一化する均質化工程を行うための容器である。均質化槽6は、第三の接続管11によって状態調整槽7に接続されている。なお、均質化槽6は、図示のように一つであってもよいし、二つ以上並べて配設してもよい。
状態調整槽7は、溶融ガラスGmを成形に適した状態に調整する状態調整工程を行うための容器であり、例えば成形体8に供給する溶融ガラスGmの流量を調整する。状態調整槽7は、本実施形態では、第三の接続管11が接続され、第三の接続管11から溶融ガラスGmが流入する上部7aと、状態の調整が成された溶融ガラスGmが流出する下部7bと、上部7aと下部7bとを繋ぐ中間部7cとを備える。上部7aの側面には、溶融ガラスGmを流入させるための流入口7dが設けられる。また、下部7bの下端には、溶融ガラスGmの流出口7eが設けられている。上記構成の状態調整槽7は、第四の接続管12によって成形体8に接続されている。
成形体8は、溶融ガラスGmを所望の形状に成形する。本実施形態では、成形体8は、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGmを帯状に成形する。詳細には、成形体8は、断面形状が略楔形状をなし、その上部にオーバーフロー溝8aを有すると共に、オーバーフロー溝8aから溢れ出た溶融ガラスGmを流下させる両側面8b,8bとを有する。上記構成に係る成形体8は、両側面8b,8bに沿って流下させた溶融ガラスGmを両側面8b,8bの下頂部で融合させ、帯状のガラスリボンGrに成形可能としている。成形されたガラスリボンGrは、例えば、厚みが0.01~2mm(好ましくは0.3mm以下)であって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの基板や保護カバーに利用される。なお、成形体8は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
第一の接続管9~第四の接続管12は、例えば白金又は白金合金からなる円筒管で構成されており、溶解槽4から溶融ガラスGmを下流側に隣接する各槽5~7、並びに成形体8に順次移送する。
図3は、状態調整槽7と成形体8とを接続する第四の接続管12及びその周辺部を斜め上方から見た図(斜視図)である。図3に示すように、第四の接続管12は、第一曲げ部13と第二曲げ部14とを有する。このうち第一曲げ部13の上流端は状態調整槽7と接続されており、第二曲げ部14の下流端は成形体8と接続されている。第一曲げ部13の下流端と第二曲げ部14の上流端とは直接接続されている。ここで、第一曲げ部13と第二曲げ部14とは互いに異なる仮想平面上でそれぞれ曲げられている。例えば鉛直方向をZ方向、図4の如く状態調整槽7をZ方向(鉛直上方)から見たときの、流入口7dを介して状態調整槽7の内部に流入する溶融ガラスGmの流れ方向をY方向、この流れ方向(Y方向)に直交する方向をX方向としたとき、第一曲げ部13は、YZ平面上で曲げられ、第二曲げ部14は、XY平面上で曲げられている。
また、状態調整槽7に至る溶融ガラスGmの流れ方向との関係でいえば、第一曲げ部13は、状態調整槽7の流出口7eと同じ向きから、図4に示すように、第一曲げ部13を平面視した(鉛直上方から見た)状態で基準流れ方向d0と同じ向きの第一の方向d1に曲がっている。ここで、基準流れ方向d0は、均質化槽6の側から流入口7dを介して状態調整槽7の内部に流入する際の溶融ガラスGmの流れ方向をいう。よって、基準流れ方向d0は、図8及び図9中の符号d0で示す状態調整槽7内への溶融ガラスGmの流入方向と同じである。本実施形態では、X方向及びY方向は水平方向、Z方向は鉛直方向であり、基準流れ方向d0と第一の方向d1は、図4に示すように、鉛直上方から見た場合には、ともにY方向を向いている。また、図5に示すように、水平方向から見た場合、基準流れ方向d0はY方向よりもやや斜め上方を向いており、第一の方向d1はY方向を向いている。本実施形態のように、状態調整槽7の流出口7eが鉛直下方を向いている場合、第一曲げ部13は、Z方向(鉛直方向)からY方向(水平方向)へと90°曲がっている。
同様に、状態調整槽7に至る溶融ガラスGmの流れ方向との関係でいえば、第二曲げ部14は、第一の方向d1から、図4に示すように、第二曲げ部14を平面視した状態で基準流れ方向d0に対して左右何れかの向きの第二の方向d2に曲がっている。本実施形態では、基準流れ方向d0は、図4に示すように、鉛直上方から見た場合にはY方向を向いているのに対し、第二の方向d2はX方向(の正の方向)を向いている。基準流れ方向d0と第二の方向d2とがなす角度は90°である。よって、第一の方向d1と第二の方向d2とがなす角度も90°である。この場合、第二曲げ部14はY方向(水平方向)からX方向(水平方向)へと90°曲がっている。
次に、上記構成の製造装置1を用いたガラス物品の製造方法の一例を、特に状態調整槽7から成形体8に至る溶融ガラスGmの流れ態様を中心に説明する。
上記構成をなす製造装置1を用いてガラス物品を製造するに際しては、図1及び図2に示すように、まずガラス原料を溶融ライン2の最上流域に位置する溶解槽4に投入して、ガラス原料を溶解することで、溶融ガラスGmを生成する。次いで溶融ガラスGmを第一の接続管9を介して清澄槽5に供給し、清澄槽5で清澄した溶融ガラスGmを第二の接続管10を介して均質化槽6に供給する。均質化槽6に供給された溶融ガラスGmは撹拌等により均質化された後、第三の接続管11を通って状態調整槽7に供給される。状態調整槽7内で例えば流量を調整した溶融ガラスGmが第四の接続管12を通って成形体8に供給される。成形体8では、例えばオーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGmを帯状のガラスリボンGrに成形する。成形されたガラスリボンGrは、溶融ライン2と平行に延在する加工ライン3上を搬送され、切断など上述した適宜の加工ないし処理を施すことにより、例えばガラスロールが得られる。このようにして、ガラス物品の製造が連続的に実施される。
ところで、上記構成の製造装置1でガラス物品を連続的に製造する場合、例えば図6に示すように、均質化槽6の底部に溶融ガラスGmの停滞領域R1が生じることがある。この場合、停滞領域R1の溶融ガラスGm1’は第三の接続管11の下部を通って状態調整槽7内に流入し、流出口7eの均質化槽6に近い側(XYZ座標系でいえば-Y方向の側)を通って第四の接続管12に至る。あるいは、同じく図6に示すように、状態調整槽7の頂部(上部7aのうち流入口7dよりも上方の領域)に溶融ガラスGmの停滞領域R2が生じることがある。この場合、停滞領域R2の溶融ガラスGm2’は流出口7eの成形体8に近い側(XYZ座標系でいえば+Y方向の側)を通って第四の接続管12に至る。
ここで、本発明では、状態調整槽7と成形体8とを接続する第四の接続管12について、第四の接続管12に第一曲げ部13と第二曲げ部14とを設け(図3を参照)、かつ状態調整槽7の流出口7eと接続される第一曲げ部13の曲げ方向(第一の方向d1)を、第一曲げ部13を平面視した状態で基準流れ方向d0と同じ向きに設定した(図4を参照)。このように第一曲げ部13の曲げ方向を設定することにより、停滞領域R1の溶融ガラスGm1’は、第一曲げ部13の外側領域13aを通って第二曲げ部14の下部14aに至る。あるいは、停滞領域R2の溶融ガラスGm2’は、第一曲げ部13の内側領域13bを通って第二曲げ部14の上部14bに至る(何れも図6を参照)。ここで、第二曲げ部14は、図4に示すように、第一の方向d1から、第二曲げ部14を平面視した状態で基準流れ方向d0に対して左右何れかの向き(本実施形態では左向き)に曲げられるので、停滞領域R1の溶融ガラスGm1’は、引き続き第四の接続管12(第二曲げ部14)の下部14aを流れて成形体8の流入口8cの下部に至る。あるいは、停滞領域R2の溶融ガラスGm2’は、引き続き第四の接続管12(第二曲げ部14)の上部14bを通って成形体8の流入口8cの上部に至る(ともに図7を参照)。成形体8の内部に流入した各停滞領域R1,R2の溶融ガラスGm1’,Gm2’は、ガラスリボンGrの幅方向両端部Gr1,Gr2となる。
このように、本発明によれば、第四の接続管12内に流入した際の停滞領域R1,R2の溶融ガラスGm1’,Gm2’の位置を第四の接続管12の上部又は下部で可及的に維持して、成形体8に供給することができるので、これら異質な溶融ガラスGm1’,Gm2’が加工後のガラスリボンGrに残って、製品の品質が低下する事態を可及的に防止することが可能となる。また、第二曲げ部14の曲げ方向については、第二曲げ部14を平面視した状態で基準流れ方向d0に対して左右何れかの向きであればよいため、曲げ後の方向、すなわち第二の方向d2を上記範囲内で適宜設定することにより、成形体8の向き、ひいては成形体8で成形されるガラスリボンGrの加工ライン3の向きを比較的自由に設定することが可能となる。
また、本実施形態では、成形体8の流入口8cを、上部のオーバーフロー溝8aから溢れ出た溶融ガラスGmを流下させる両側面8b,8bに対して直交する向きに設けると共に、第二曲げ部14の曲げる前の方向である第一の方向と、曲げた後の方向である第二の方向d2とがなす角度を90°に設定した。このように第二曲げ部14の曲げ角度とその姿勢を成形体8の流入口8cとの関係で定めることによって、基準流れ方向d0と、成形体8により成形されるガラスリボンGrの主表面の向きとを一致させることができる。成形されたガラスリボンGrは、下方に引き出された後、カテナリを介して水平方向に方向転換して搬送されるので、上記構成によれば、溶融ライン2と加工ライン3とを一直線上に配置することができる(図2を参照)。これにより、ガラスロールの製造ラインをその幅方向に狭めることができるので、例えばガラスロールの製造装置1(製造ライン)を並列に複数配置する場合に好適である。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係るガラス物品の製造方法及び製造装置は、上記実施形態には限定されることなく、本発明の範囲内で種々の形態を採ることが可能である。
例えば、上記実施形態では、第一曲げ部13及び第二曲げ部14の曲げ方向を規定する際の基準となる基準流れ方向d0(流入口7dを介して状態調整槽7内部に流入する際の溶融ガラスGmの流れ方向)を水平方向よりもやや斜め上方とした場合を例示したが、基準流れ方向d0は例えば水平方向であってもよく、それ以外であってもよい。同様に、基準流れ方向d0と第一の方向d1とがXYZ座標系において平行でなくてもよく、上述の通り、鉛直上方から見た状態(平面視した状態)で、基準流れ方向d0と第一の方向d1とが同じ向きであればよい。また、第二の方向d2も水平方向には限られない。鉛直上方から見た状態で、基準流れ方向d0に対して第二の方向d2が所定の角度をなす(同じ向きでない)関係であればよい。また、以上のことから、第一曲げ部13における曲げ角度(状態調整槽7の流出口7eの向きと第一の方向d1とがなす角度)は90°に限らない。同様に、第二曲げ部14における曲げ角度(第一の方向d1と第二の方向d2とがなす角度)も90°に限らず、上述した条件を満たす範囲内において任意の角度を採り得る。
また、上記実施形態では、外径寸法が一定の第三の接続管11を状態調整槽7に接続した場合を例示したが(図5を参照)、もちろんこれ以外の接続形態をとることも可能である。図13は、その一例(本発明の他の実施形態)に係る第三の接続管11と状態調整槽7との接続部分を正面から拡大視した図である。図13に示すように、第三の接続管11は、本体部11aと、本体部11aと状態調整槽7側の間に位置し、本体部11a側から状態調整槽7側に向けて横断面積(長手方向と垂直な断面における面積、以下、単に「断面積」ともいう)が漸次変化する断面積変化部11bとを有する。これにより、第三の接続管11の本体部11aと状態調整槽7とが、断面積変化部11bを介して接続される。
本実施形態では、第三の接続管11の本体部11aの断面積をS1、状態調整槽7の上部7aの断面積をS2とすると、本体部11aの断面積S1は上部7aの断面積S2と異なり、より具体的には、本体部11aの断面積S1は上部7aの断面積S2より小さい。この場合、断面積変化部11bの断面積が、本体部11a側から状態調整槽7側に向けて漸次増大するよう、断面積変化部11bの内面11cの形状が設定されている。具体的には、断面積変化部11bの内面11cの、縦断面(長手方向に沿う断面)の形状が円弧状である。このため、断面積変化部11bの内面11cは、筒状であり、本体部11a側から状態調整槽7側に向けて拡径している。
本体部11aの断面積S1は、上部7aの断面積S2の0.75倍以上でかつ1.25倍以下に設定するのがよい。本実施形態のように、本体部11aの断面積S1を上部7aの断面積S2より小さくする場合には、本体部11aの断面積S1を、上部7aの断面積S2の0.75倍以上でかつ0.96倍以下に設定するのがよい。例えば、本体部11aの内径は150mm以上でかつ300mm以下に設定することができ、断面積変化部11bの内面11cの曲率半径は、10mm以上でかつ50mm以下に設定することができ、好ましくは20mm以上でかつ40mm以下に設定することが好ましい。
状態調整槽7の下部7bと、第一曲げ部13の上流端13cとは、縁切りされた状態で(状態調整槽7の下部7bと第一曲げ部13の上流端13cが接触しない状態で)、溶融ガラスGmを状態調整槽7側から第一曲げ部13側へ供給可能としている。具体的には、図13に示すように、下部7bを第一曲げ部13の上流端13c内周に挿入した状態で、状態調整槽7で状態の調整が成された溶融ガラスGmを、第一曲げ部13及び第二曲げ部14(第四の接続管12)を通じて成形体8に供給可能としている。
ここで、状態調整槽7の下部7bの断面積をS3、第一曲げ部13の上流端13cの断面積をS4とした場合、下部7bの断面積S3を、上流端13cの断面積S4の0.75倍以上でかつ0.96倍以下に設定するのがよい。
また、第三の接続管11が上記構成をなす場合、本体部11aと状態調整槽7との間の断面積変化部11bを通過する溶融ガラスGmの粘度は、好ましくは800Pa・s以上に設定され、より好ましくは1000Pa・s以上に設定される。一方、失透を抑制する観点から、断面積変化部11bを通過する溶融ガラスGmの粘度は、50000Pa・s以下に設定されることが好ましい。
このように、本実施形態では、第三の接続管11が、本体部11aと状態調整槽7の間に、本体部11a側から状態調整槽7側に向けて断面積が漸次変化する断面積変化部11bを有するようにした。この構成によれば、第三の接続管11から状態調整槽7内部に流入した溶融ガラスGmに剥離流が発生する事態を可及的に防止して、均質化槽6の底部に停滞する溶融ガラスGm1’(図6を参照)を、第一曲げ部13の外側領域13a、及び第二曲げ部14の下部14aを通って、成形体8のうちガラスリボンGrの幅方向一端部Gr2(図7を参照)となる領域に確実に流れ込ませることができる。また、状態調整槽7の上部7aに停滞する溶融ガラスGm2’を、第一曲げ部13の内側領域13b、及び第二曲げ部14の上部14bを通って、成形体8のうちガラスリボンGrの幅方向他端部Gr1(図7を参照)となる領域に確実に流れ込ませることができる。以上より、本実施形態に係るガラス物品の製造方法及び製造装置によれば、成形不良の原因となる異質な溶融ガラスGm1’(Gm2’)が加工後のガラスリボンGrに残って、製品としてのガラス物品の品質低下を招く事態を可及的に防止することが可能となる。
なお、上記実施形態では、状態調整槽7の下部7bを、第一曲げ部13の上流端13c内周に挿入した状態で、状態調整槽7で状態の調整が成された溶融ガラスGmを、第一曲げ部13及び第二曲げ部14(第四の接続管12)を通じて成形体8に供給可能とした場合を例示したが、もちろん、第一曲げ部13の上流端13cを状態調整槽7の下部(流出口7e)に直接接続してもよい。また、第四の接続管12(第一曲げ部13、第二曲げ部14)と、状態調整槽7及び成形体8との接続形態は上記例示の形態には限らず、例えば図示は省略するが、直線状に伸びる円筒状の接続管を介して、状態調整槽7の流出口7eと第一曲げ部13とを接続してもよいし、上述した円筒状の接続管を介して、成形体8の流入口8cと第二曲げ部14とを接続してもよい。また、上述した円筒状の接続管を介して、第一曲げ部13と第二曲げ部14とを接続してもよい。
また、上記実施形態では、加工ライン3でガラスリボンGrからガラスロールを得る場合を例示したが、加工ライン3で帯状のガラスリボンGrからガラス板を得てもよい。この場合、加工ライン3は、前述の徐冷処理部及び冷却部に加え、ガラスリボンGrを所定の長さ毎に幅方向に沿って切断することにより、ガラスリボンGrからガラス板を順次切り出す第一切断部と、切断によってガラス板の幅方向両端部を除去する第二切断部とを備える。
Claims (5)
- 溶融ガラス生成装置で溶融ガラスを生成する生成工程と、生成した前記溶融ガラスの状態を状態調整槽で調整する状態調整工程と、状態の調整が成された前記溶融ガラスを成形体に供給してガラスリボンを成形する成形工程とを備える、ガラス物品の製造方法において、
前記状態調整槽の流出口と前記成形体の流入口とが、第一曲げ部と第二曲げ部とを有する接続管で接続され、
前記状態調整槽の流出口と前記第一曲げ部とが接続され、前記第二曲げ部と前記成形体の流入口とが接続され、
前記溶融ガラス生成装置の側から前記状態調整槽の内部に流入する際の前記溶融ガラスの流れ方向を基準流れ方向としたとき、
前記第一曲げ部は、前記状態調整槽の流出口と同じ向きから、前記第一曲げ部を平面視した状態で前記基準流れ方向と同じ向きの第一の方向に曲がっており、かつ
前記第二曲げ部は、前記第一の方向から、前記第二曲げ部を平面視した状態で前記基準流れ方向に対して左右何れかの向きの第二の方向に曲がっていることを特徴とするガラス物品の製造方法。 - 前記第一の方向及び前記第二の方向はともに水平方向である請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
- 前記成形体は、オーバーフロー溝から溢れ出た前記溶融ガラスを両側面に沿って流下させることで前記ガラスリボンを成形するもので、
前記成形体の流入口は、前記両側面の向きに対して直交する向きに設けられ、かつ
前記第一の方向と前記第二の方向とがなす角度が90°に設定される請求項1又は2に記載のガラス物品の製造方法。 - 前記ガラス物品は、前記ガラスリボンをロール状に巻き取ってなるガラスロールである請求項3に記載のガラス物品の製造方法。
- 溶融ガラスを生成する溶融ガラス生成装置と、生成した前記溶融ガラスの状態を調整する状態調整槽と、状態の調整が成された前記溶融ガラスを流下させて前記ガラスリボンを成形する成形体とを備えるガラス物品の製造装置において、
前記状態調整槽の流出口と前記成形体の流入口とが、第一曲げ部と第二曲げ部とを有する接続管で接続され、
前記状態調整槽の流出口と前記第一曲げ部とが接続され、前記第二曲げ部と前記成形体の流入口とが接続され、
前記溶融ガラス生成装置の側から前記状態調整槽の内部に流入する際の前記溶融ガラスの流れ方向を基準流れ方向としたとき、
前記第一曲げ部は、前記状態調整槽の流出口と同じ向きから、前記第一曲げ部を平面視した状態で前記基準流れ方向と同じ向きの第一の方向に曲がっており、かつ
前記第二曲げ部は、前記第一の方向から、前記第二曲げ部を平面視した状態で前記基準流れ方向に対して左右何れかの向きの第二の方向に曲がっていることを特徴とするガラス物品の製造装置。
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