WO2019193931A1 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
タイヤサイド部Sのタイヤサイド面Saに沿ってタイヤ周方向またはタイヤ径方向に交差して長手状に延在し、かつタイヤ周方向に間隔を空けて複数設けられた凸部9を備え、凸部9は、長手方向(L)に沿う断面形状においてタイヤサイド面Saから突出する外郭9Pが、曲率の異なる複数の主外郭部9P1と、各主外郭部9P1の間を接続する接続部9P2と、を含み形成されている。これにより、リフト低減性能を向上する。
Description
本発明は、空気入りタイヤに関する。
従来、例えば、特許文献1は、車両装着時に車両の幅方向内側となるタイヤサイド部(タイヤ外側面)に、タイヤ径方向に延びる多数の凸部(突部)を互いにタイヤ周方向に所定間隔をおいて設けた空気入りタイヤが開示されている。この空気入りタイヤでは、走行時にタイヤ周囲の空気の流れを促進することができるので、高速走行時の空気抵抗を効果的に低減することができる。
また、従来、例えば、特許文献2は、曲線突出部が形成されるサイドウォールを備える車両用タイヤが開示されている。この特許文献2では、サイドウォールに入る空気の流れは、サイドウォールを自然に通らず、車のホイールハウスの内側に移動し、タイヤのトレッド上端を押し下げるダウンフォースを発生させることが示されている。なお、ダウンフォースが発生すると、車両が上方に持ち上げられる力であるリフトが低減される。
特許文献1に示されているように、タイヤサイド部に凸部を設けることで、走行時の空気抵抗を低減することが知られているが、車両の性能向上に伴い、さらなる空気抵抗の低減効果が望まれている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、空気抵抗の低減効果をより向上することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空気入りタイヤは、タイヤサイド部のタイヤサイド面に沿ってタイヤ周方向またはタイヤ径方向に交差して長手状に延在し、かつタイヤ周方向に間隔を空けて複数設けられた凸部を備え、前記凸部は、長手方向に沿う断面形状においてタイヤサイド面から突出する外郭が、曲率の異なる複数の主外郭部と、各前記主外郭部の間を接続する接続部と、を含み形成されている。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記外郭は、前記凸部の稜線に沿って形成されていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記外郭は、前記凸部の面に沿って形成されていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記外郭は、前記凸部の長手方向の寸法Lに対し、前記長手方向の各端から(L×0.05)の範囲を除外した範囲に前記主外郭部および前記接続部が形成されていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記外郭は、前記凸部の長手方向の寸法Lに対し、(L×0.7)以上(L×0.9)以下の範囲に前記主外郭部が形成され、(L×0)以上(L×0.3)以下の範囲で前記接続部が形成されていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、正規リムに組み込んで、正規内圧を充填し、正規荷重を加えて水平面をなす路面に接地し、前記路面上を転動するとき、前記タイヤサイド部と前記路面との相対速度UをU[m/s]=V×r/Qであらわし、レイノルズ数ReをRe=U×Q/νであらわし、Vが空気入りタイヤの転動方向に対向する主流速度[m/s]であり、rが前記路面から回転軸に向かう距離[m]であり、Qが前記路面から前記回転軸に至る距離[m]であり、νが空気の動粘性度[m2/s]であって、主流速度V[m/s]が27.8の場合、前記レイノルズ数Reが、2000<Re<4×105の範囲となる位置に前記凸部が設けられていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記レイノルズ数Reの範囲において、前記凸部の総体積Voが1000[mm3]≦Vo≦50000[mm3]の範囲を満たすことが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記凸部は、突出高さの最大位置が前記タイヤサイド面から2mm以上10mm以下であることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、タイヤ周方向に1degあたりの各前記凸部の突出高さのタイヤ周方向での変動量が1mm/deg以下であることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、タイヤ周方向に1degあたりの各前記凸部の質量のタイヤ周方向での変動量が0.1g/deg以下であることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、各前記凸部のタイヤ周方向における間隔が不均一であることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、車両装着時での車両内外の向きが指定されており、少なくとも車両外側となるタイヤサイド部に前記凸部が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、凸部の外郭が、曲率の異なる複数の主外郭部と、各主外郭部の間を接続する接続部と、を含み形成されていることで、異なる曲率の各主外郭部に沿う空気の流れが接続部の位置で衝突し接続部を基点として渦流を生じることで凸部による乱流境界層の発生を助勢する。このため、空気入りタイヤにおける空気の流れがより促進されて、タイヤハウスの外側で車両から離れる空気の広がりがより抑えられ、車両に生じる空気抵抗の低減効果を向上することができる。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸P(図2など参照)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸Pに向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸Pから離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸Pを中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸Pと平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸Pに直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なストレート主溝である複数(本実施形態では4本)の主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。また、図には明示しないが、トレッド面21は、各陸部23において、主溝22に交差するラグ溝が設けられている。陸部23は、ラグ溝によってタイヤ周方向で複数に分割されている。また、ラグ溝は、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側でタイヤ幅方向外側に開口して形成されている。なお、ラグ溝は、主溝22に連通している形態、または主溝22に連通していない形態の何れであってもよい。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20°~30°)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行(±5°)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、あるいは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤの側面図である。図3~図8は、凸部の長手方向に沿った断面図である。図9~図14は、凸部の短手方向の断面図である。
以下の説明において、タイヤサイド部Sとは、図1に示すように、トレッド部2の接地端Tからタイヤ幅方向外側であってリムチェックラインRからタイヤ径方向外側の範囲で一様に連続する面をいう。また、接地端Tとは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面21が路面(水平面)と接地する領域において、タイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。また、リムチェックラインRとは、タイヤのリム組みが正常に行われているか否かを確認するためのラインであり、一般には、ビード部5の表側面において、リムフランジよりもタイヤ径方向外側であってリムフランジ近傍となる部分に沿ってタイヤ周方向に連続する環状の凸線として示されている。
なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、図1および図2に示すように、少なくとも一方のタイヤサイド部Sにおいて、当該タイヤサイド部Sの表面のプロファイルであるタイヤサイド面Saよりタイヤの外側に突出する凸部9が設けられている。凸部9は、ゴム材(タイヤサイド部Sを構成するゴム材であっても、当該ゴム材とは異なるゴム材であってもよい)からなり、タイヤサイド部Sのタイヤサイド面Saに沿ってタイヤ周方向またはタイヤ径方向に交差して長手状に延在する突条として形成されている。延在方向(長手方向)は、図2に示すように、各端9Dを結ぶ直線Lとする。凸部9は、直線Lであらわす延在方向(長手方向)が図2に示すようにタイヤ周方向およびタイヤ径方向に交差して形成されているが、図には明示しないがタイヤ周方向に沿う接線としてタイヤ径方向にのみ交差していたり、タイヤ径方向に沿ってタイヤ周方向にのみ交差していたりしていてもよい。この凸部9は、タイヤ周方向に複数配置されている。
本実施形態において、凸部9は、例えば、図2に示すように、空気入りタイヤ1の側面視で延在方向(長手方向)に延在しつつC字状に湾曲して形成されている。凸部9は、湾曲に限らず、空気入りタイヤ1の側面視で延在方向(長手方向)に沿って直線状に形成されていても、くの字に屈曲して形成されていても、S字状に形成されていても、蛇行して構成されていても、ジグザグ状に形成されていてもよい。そして、どの構成においても延在方向(長手方向)は各端9Dを結ぶ直線Lとする。
凸部9は、図3~図8に示す長手方向に沿った断面形状において、タイヤサイド面Saからタイヤ外側に突出する外郭9Pが、各端9Dの間で、外郭を主に形成するように曲率の異なる複数の主外郭部9P1と、各主外郭部9P1の間を接続する接続部9P2と、を含み形成されている。なお、図3~図8は概略図であって、タイヤサイド面Saを平面で示し、外郭9Pは、2つの主外郭部9P1と、その間を接続する接続部9P2と、を有する構成として示している。本実施形態の空気入りタイヤ1では、図には明示しないが、外郭9Pは、主外郭部9P1が3つ以上で、各主外郭部9P1の間を接続する2つ以上の接続部9P2を有する構成であることも含む。
主外郭部9P1は、任意の曲率を有する曲率円に沿って形成されている。また、主外郭部9P1は、曲率0である直線を含む。主外郭部9P1は、図3に示すように、タイヤサイド面Saよりもタイヤ内側に曲率円の中心が配置されてタイヤ外側に向けて膨出する曲率円をなす。また、主外郭部9P1は、図4に示すように、接続部9P2を間におく長手方向の少なくとも一方の主外郭部9P1がタイヤサイド面Saよりもタイヤ外側に曲率円の中心が配置されてタイヤ内側に向けて凹む曲率円をなしていてもよい。
接続部9P2は、各主外郭部9P1の間を接続するもので、各主外郭部9P1と変曲点を介して接続される。接続部9P2は、図3、図4および図8に示すように、各主外郭部9P1と接続される各変曲点が一致するように点で形成されていても、図5~図7に示すように各主外郭部9P1と接続される各変曲点の間において長手方向で所定間隔を有していてもよい。接続部9P2は、長手方向で所定間隔を有している場合、図5に示すようにタイヤサイド面Saよりもタイヤ外側に離れるように凸状に形成されていても、図6に示すように、直線状に形成されていても、図7に示すようにタイヤサイド面Saに対してタイヤ内側に近づくように凹状に形成されていてもよい。この接続部9P2は、それ自体を各主外郭部9P1の間に存在する角とすると、二つの主外郭部9P1がある角度で出合った角がタイヤサイド面Saよりもタイヤ外側に出る出角として形成されている。すなわち、接続部9P2は、それ自体を角とした場合にタイヤサイド面Saよりもタイヤ内側に凹む入角として形成された場合の構成を含まない。
また、凸部9の延在方向(直線L)に直交する短手方向の断面形状について説明する。図9に示す凸部9は、短手方向の断面形状が四角形状とされている。図10に示す凸部9は、短手方向の断面形状が三角形状とされている。図11に示す凸部9は、短手方向の断面形状が台形状とされている。図9~図11に限らず、図には明示しないが、凸部9は、短手方向の断面形状が多角形状とされていてもよい。また、凸部9は、図9~図11では、短手方向の断面形状が角部として示されているが、当該角部がC面やR面で面取処理されていてもよい。また、図12に示す凸部9は、短手方向の断面形状が半円形状とされている。図12に限らず、図には明示しないが、凸部9は、短手方向の断面形状が、例えば、半楕円形状であったり、半長円形状であったりする様々な円弧に基づく形状であってもよい。また、図9~図12に示す凸部9は、タイヤサイド面Saから直接立ち上がって形成されているが、図13に示すように、立ち上がり部分が円弧部で滑らかに形成されていたり、図14に示すように、立ち上がり部分が段部を介して形成されていたりしてもよい。なお、凸部9の短手方向の断面形状は、図9~図14に示すような図の左右で対称な形状ではなく、非対称な形状であってもよい。
そして、凸部9は、上述した図3~図8に示す長手方向に沿った断面形状の外郭9Pが、図9~図11、図13、図14に示す上述した短手方向の断面形状において、角部(面取処理含む)が長手方向で連続する稜線に沿って形成されている。すなわち、図3~図8に示す長手方向に沿った断面は、図9~図11、図13、図14において角部が長手方向で連続する稜線に沿って切断したものである。また、凸部9は、上述した図3~図8に示す長手方向に沿った断面形状の外郭9Pが、図9~図14に示す上述した短手方向の断面形状において、辺が長手方向で連続する面に沿って形成されている。すなわち、図3~図8に示す長手方向に沿った断面は、図9~図14において辺が長手方向で連続する面に沿って切断したものである。
このように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、タイヤサイド部Sのタイヤサイド面Saに沿ってタイヤ周方向またはタイヤ径方向に交差して長手状に延在し、かつタイヤ周方向に間隔を空けて複数設けられた凸部9を備え、凸部9は、長手方向に沿う断面形状においてタイヤサイド面Saから突出する外郭9Pが、曲率の異なる複数の主外郭部9P1と、各主外郭部9P1の間を接続する接続部9P2と、を含み形成されている。
空気入りタイヤ1の作用について説明する。図15および図16は、従来の空気入りタイヤの作用の説明図である。図17~図19は、本実施形態に係る空気入りタイヤの作用の説明図である。
凸部9を有さない従来の空気入りタイヤ11は、図15に示すように、リム50に組み込んで車両100に装着することで車両100のタイヤハウス101内に配置される。この状態において、空気入りタイヤ11が回転方向Y1で回転すると、車両100は方向Y2に向かって走行する。この車両100の走行時に、空気入りタイヤ11の周辺において空気の流れがよどむことになる。そして、図16に示すように、このよどみを避けるように、タイヤハウス101の外側で車両100の側面102から離れる空気の広がりが生じることで、空気抵抗となる。
このような現象に対し、本実施形態の空気入りタイヤ1は、図17に示すように、同様にリム50に組み込んで車両100に装着することで車両100のタイヤハウス101内に配置される。この状態において、空気入りタイヤ1が回転方向Y1で回転すると、車両100は方向Y2に向かって走行する。この車両100の走行時に、回転方向Y1に回転移動する凸部9が、その周辺の空気を乱流化させて上述した空気の流れのよどみを改善する。具体的に、空気入りタイヤ1の回転時の上部(回転軸Pより上側)では、乱流境界層が発生し、空気入りタイヤ1における空気の流れが促進される。この結果、図18に示すように、タイヤハウス101の外側で車両100の側面102から離れる空気の広がりが抑えられ、車両100に生じる空気抵抗を低減することができる。この空気抵抗の低減は、車両100の燃費の向上に寄与する。
特に、本実施形態の空気入りタイヤ1では、凸部9の外郭9Pが、曲率の異なる複数の主外郭部9P1と、各主外郭部9P1の間を接続する接続部9P2と、を含み形成されていることで、異なる曲率の各主外郭部9P1に沿う空気の流れが接続部9P2の位置で衝突し接続部9P2を基点として渦流を生じることで乱流境界層の発生を助勢する。このため、空気入りタイヤ1における空気の流れがより促進されて、タイヤハウス101の外側で車両100の側面102から離れる空気の広がりがより抑えられ、車両100に生じる空気抵抗の低減効果を向上することができる。
上述した接続部9P2を基点とした渦流は、凸部9の外郭9Pが凸部9の稜線(図9~図11、図13、図14の短手方向の断面形状における角部)に沿って形成されていることで生じる。従って、外郭9Pは、凸部9の稜線に沿って長手方向に形成されていることが好ましい。
また、上述した接続部9P2を基点とした渦流は、凸部9の外郭9Pが凸部9の面(図9~図14の短手方向の断面形状における辺)に沿って形成されていることで生じる。従って、外郭9Pは、凸部9の面に沿って長手方向に形成されていることが好ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、外郭9Pは、図3~図8に示すように、凸部9の長手方向の寸法Lに対し、長手方向の各端9Dから(L×0.05)の範囲L0を除外した範囲に主外郭部9P1および接続部9P2が形成されていることが好ましい。
凸部9の長手方向の各端9Dから(L×0.05)の範囲L0は、主外郭部9P1の範囲が小さく主外郭部9P1沿う空気の流れが接続部9P2の位置で衝突しても接続部9P2を基点とした渦流が生じ難い。従って、凸部9の長手方向の各端9Dから(L×0.05)の範囲L0除外した範囲に主外郭部9P1および接続部9P2が形成されていることで、接続部9P2を基点とした渦流を適宜生じさせ、車両100に生じる空気抵抗の低減効果を顕著に得ることができる。範囲L0においては、タイヤサイド面Saに近く、空気の粘性の影響でタイヤサイド面Saに付着した気流となっており、接続部9P2を基点とした渦流が生じ難いので、範囲L0を除外することで、接続部9P2を基点とした渦流を適宜生じさせ、空気抵抗の低減効果を得ることができる。このことから、図8に示すように、凸部9の長手方向の各端9Dから範囲L0内に接続部9P2に類似する構成をなす段部が設けられていても、当該段部は渦流を生じ難いため、本実施形態において当該段部は接続部9P2を形成するものとはしない。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、外郭9Pは、凸部9の長手方向の寸法Lに対し、(L×0.7)以上(L×0.9)以下の範囲L1に主外郭部9P1が形成され、(L×0)以上(L×0.3)以下の範囲L2に接続部9P2が形成されていることが好ましい。ここでの主外郭部9P1の範囲L1は、全ての主外郭部9P1の範囲L1を足したものであり、接続部9P2の範囲L2も複数ある場合は全ての接続部9P2の範囲L2を足したものである。
主外郭部9P1が凸部9の長手方向の寸法Lに対して(L×0.7)以上の範囲L1に形成されていることで、当該主外郭部9P1に沿う空気の流れを接続部9P2の位置で衝突させて接続部9P2を基点とした渦流を十分に生じさせることができる。一方、主外郭部9P1が凸部9の長手方向の寸法Lに対して(L×0.9)以下の範囲L1に形成されていることで、接続部9P2を間に置く他の主外郭部9P1の範囲L1を確保し、これにより接続部9P2を間に置く両主外郭部9P1に沿う空気の流れを接続部9P2の位置で衝突させて接続部9P2を基点とした渦流を十分に生じさせることができる。範囲L1においては、タイヤサイド面Saからタイヤ外側に離れた位置に、接続部9P2を設定することになり、空気の粘性によりタイヤサイド面Sa付近に付着した気流から離れた位置に範囲L1を設定することにより、接続部9P2を基点とした渦流を適宜生じさせ、空気抵抗の低減効果を得ることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図2において、正規リムに組み込んで、正規内圧を充填し、正規荷重を加えて水平面をなす路面Gに接地し(図2では荷重0(無負荷)の状態で示している)、路面G上を回転方向Yで回転して図2中の左方向に転動するとき、タイヤサイド部Sと路面Gとの相対速度UをU[m/s]=V×r/Qであらわし、レイノルズ数ReをRe=U×Q/νであらわし、Vが空気入りタイヤ1の転動方向に対向する主流速度(車両走行速度に相当する)[m/s]であり、Qが路面Gから回転軸Pに至る距離[m]であり、rが路面Gから回転軸Pに向かう距離[m]であり、νが空気入りタイヤ1に接触する空気の動粘性度[m2/s]であって、主流速度V[m/s]が27.8の場合、レイノルズ数Reが、2000<Re<4×105の範囲となる位置に凸部9が設けられている。
すなわち、本実施形態の空気入りタイヤ1は、主流速度V[m/s]において、レイノルズ数Reが、2000<Re<4×105の範囲となるような距離r[m]の位置に凸部9が設けられている。
この構成の空気入りタイヤ1の作用について説明する。凸部9を有さない従来の空気入りタイヤ11は、図15に示すように、回転方向Y1で回転し、車両100が方向Y2に向かって走行するとき、空気入りタイヤ11の周辺において空気の流れが変化する。すると、図16に示すように、この空気の流れより空気入りタイヤ11の接地部において前端からタイヤサイド部Sへ回り込む空気量が少なく、路面Gと車両底面との空間の圧力が増加し、車両100が上方に持ち上げられる力であるリフトが発生する。
このような現象に対し、本実施形態の空気入りタイヤ1は、図17に示すように、回転方向Y1で回転し、車両100が方向Y2に向かって走行するとき、回転方向Y1に回転移動する凸部9により、凸部9の周辺の空気のガイド効果(排斥効果)が大きくなり、路面と車両底面との空間の圧力を低減する。具体的に、空気入りタイヤ1の回転時の下部である接地部(レイノルズ数Reが、2000<Re<4×105の範囲となるような距離r[m]の位置)では、凸部9による空気のガイド効果(排斥効果)が大きく、図18に示すように、空気入りタイヤ1の接地部において前端からタイヤサイド部Sへ回り込む空気量が増え、路面と車両底面との空間の圧力が低下し、車両100が上方に持ち上げられる力であるリフトが低減される。
リフトの低減(リフト低減性能)は、ダウンフォースを増加させることになり、空気入りタイヤ1の接地性を向上させ、車両100の走行性能である操縦安定性能の向上に寄与する。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、上述したレイノルズ数Reの範囲において、凸部9の総体積Voが1000[mm3]≦Vo≦50000[mm3]の範囲を満たすことが好ましい。すなわち、上述したレイノルズ数Reの範囲における凸部9の総体積Voを規定することで、凸部9によるガイド効果(排斥効果)が大きくなり、空気入りタイヤ1の接地部において前端からタイヤサイド部Sへ回り込む空気量がより増えるため、路面と車両底面との空間の圧力がより低下し、リフトをより低減することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両装着時の回転方向が指定されており、上述したレイノルズ数Reの範囲において、図2に示すように、凸部9の少なくとも1つは、回転方向Yに沿う始端から終端への延在方向がタイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に向けて傾斜していることが好ましい。ここで、回転方向の指定は、図には明示しないが、例えば、トレッド部2のタイヤ幅方向外側であって、タイヤの側面にあらわれるサイドウォール部4に設けられた指標(例えば、車両前進時に向く矢印)により示される。すなわち、この構成により、空気入りタイヤ1の接地部において前端上方から下方に向けて空気を案内するため、凸部9によるガイド効果(排斥効果)が大きくなり、空気入りタイヤ1の接地部において前端からタイヤサイド部Sへ回り込む空気量がより増えるため、路面と車両底面との空間の圧力がより低下し、リフトをより低減することができる。
なお、凸部9は、図20の凸部を空気入りタイヤの側面から視た拡大図、および図21の凸部の側面図に示すように、延在方向における中間部9A、および中間部9Aの延在方向の両側に連続して設けられた各先端部9Bで構成されている。中間部9Aは、凸部9の延在方向の長さLの中央9Cから延在方向の両側に長さLの25%(L×0.25)の範囲の部分である。先端部9Bは、中間部9Aの延在方向の両側にさらに延在して設けられ、延在方向の各端9Dから凸部9の延在方向の長さLの5%(L×0.05)を除く範囲の部分である。凸部9の延在方向の長さLは、凸部9の各端9D間の最短距離とする。
そして、中間部9Aは、タイヤサイド面Saからの突出高さhの最大位置hHを含む。また、先端部9Bは、タイヤサイド面Saからの突出高さhの最小位置hLを含む。図21では、凸部9の延在方向の突出高さhは、一方の端9Dから中央9Cに向かって徐々に高くなり、中央9Cから他方の端9Dに向かって徐々に低くなっている。この場合、突出高さhの最大位置hHは中央9Cに一致し、最小位置hLは端9Dから長さLの5%の位置であって先端部9Bの端に一致する。なお、図21において、凸部9の延在方向の突出高さhは、便宜上円弧状に変化して示しているが、上述したように、長手方向に沿った断面形状において、外郭9Pが複数の主外郭部9P1と接続部9P2とを含み稜線や面に形成されている。また、最大位置hHは、中間部9A全体であってもよく、この場合に先端部9Bは中間部9Aから徐々に突出高さhが低くなる。
このように、本実施形態の空気入りタイヤ1では、凸部9は、延在方向における中間部9Aがタイヤサイド面Saからの突出高さhの最大位置hHを含み、かつ中間部9Aの延在方向の両端側に設けられた各先端部9Bがタイヤサイド面Saからの突出高さhの最小位置hLを含んでいる。この空気入りタイヤ1によれば、先端部9Bにおいて凸部9の質量が少なくなる。この結果、凸部9の先端部9B付近においてタイヤサイド面Sa側との急激な質量変化が抑えられるので、凸部9の耐久性を向上することができ、かつタイヤ周方向の均一性が向上するため、ユニフォミティを向上することができる。
凸部9の配置について、図2、および図22~図29の空気入りタイヤの側面図に示す。図2、図22および図23に示す空気入りタイヤ1は、凸部9がタイヤ最大幅Hの位置(図24~図29参照)に配置されている。ここで、タイヤ最大幅Hの位置は、最もタイヤ幅方向の大きい位置であり、空気入りタイヤを正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填した無負荷状態のときに、最もタイヤ幅方向の大きいタイヤ総幅からタイヤ側面の模様・文字などを除いた幅である。なお、リムを保護するリムプロテクトバー(タイヤ周方向に沿って設けられてタイヤ幅方向外側に突出するもの)が設けられたタイヤにおいては、当該リムプロテクトバーが最もタイヤ幅方向の大きい部分となるが、本実施形態で定義するタイヤ最大幅Hは、リムプロテクトバーを除外する。図24~図29に示す空気入りタイヤ1は、凸部9がタイヤ最大幅Hの位置に配置されていない。図24および図25に示す空気入りタイヤ1は、凸部9がタイヤ最大幅Hよりもタイヤ径方向外側に配置されている。図26および図27に示す空気入りタイヤ1は、凸部9がタイヤ最大幅Hよりもタイヤ径方向内側に配置されている。図28および図29に示す空気入りタイヤ1は、凸部9がタイヤ最大幅Hよりもタイヤ径方向外側とタイヤ径方向内側に配置されている。
図2、図23、図25~図27、図28のタイヤ径方向内側、図29では、各凸部9がタイヤ周方向で間隔をおいて設けられている。図22、図24、図28のタイヤ径方向外側では、タイヤ周方向で隣接する凸部9がタイヤ径方向で一部重複して設けられている。各凸部9がタイヤ径方向で一部重複して設けられている場合、重複部位は、中間部9Aを除く部位であって先端部9Bや先端部9Bの端(端9Dから長さLの5%の範囲)とする。図2、図22、図24、図26、図28では、タイヤ周方向で隣接する凸部9のタイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する延在方向の傾きが同じである。図23、図25、図27、図29では、に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向で隣接する凸部9のタイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する延在方向の傾きが異なる。なお、凸部9の配置は、図2、および図22~図29に示すものに限定されない。
なお、図9~図14に示したような凸部9の短手方向の断面形状において、本実施形態では、中間部9Aにおける突出高さhの最大位置hHで断面積が最も大きく、先端部9Bにおける突出高さhの最小位置hLで断面積が小さい。そして、短手方向の幅Wは、突出高さhの変化に合わせて最大位置hHで最も大きく、最小位置hLで小さくなるように変化しても、変化しなくてもよい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、凸部9は、中間部9Aの突出高さh(突出高さhの最大位置)が2mm以上10mm以下であることが好ましい。
中間部9Aの突出高さhが2mm未満であると、周辺の空気を案内する作用が得難くなる。一方、中間部9Aの突出高さhが10mmを超えると、凸部9に衝突する空気の流れが増加することで空気抵抗が増加する傾向となる。このため、中間部9Aの突出高さhを2mm以上10mm以下とすることが好ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、外郭9Pは、図9~図14に示すように、突出高さhに対し、タイヤサイド面Saから(h×0.05)の範囲h0を除外した範囲に主外郭部9P1および接続部9P2が形成されていることが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤサイド面Saから(h×0.05)の範囲h0は、タイヤサイド面Saに沿う空気の流れが凸部9に掛かり変化し始める部分であり、接続部9P2を基点とした渦流が生じ難い。従って、タイヤサイド面Saから(h×0.05)の範囲h0を除外した範囲に主外郭部9P1および接続部9P2が形成されていることで、接続部9P2を基点とした渦流を適宜生じさせ、車両100に生じる空気抵抗の低減効果を顕著に得ることができる。範囲h0においては、タイヤサイド面Saに近く、空気の粘性の影響でタイヤサイド面Saに付着した気流となっており、接続部9P2を基点とした渦流が生じ難いので、範囲h0を除外することで、接続部9P2を基点とした渦流を適宜生じさせ、空気抵抗の低減効果を得ることができる。なお、タイヤサイド面Saからの立ち上がり部分の円弧部(図13参照)や段部(図14参照)は、外郭9Pの作用に影響を及ぼすおそれがあるため、外郭9Pの作用に寄与が小さい範囲h0に設けることが好ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図2に示すように、回転軸Pからタイヤ径方向に切断したタイヤ周方向に1degあたりの各凸部9の突出高さhのタイヤ周方向での変動量が1mm/deg以下であることが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、凸部9のタイヤ周方向での突出高さhの変動を規定することで凸部9の形状変動によって発生する風切音を抑制することができ、この風切音により凸部9から発生する騒音を低減することができる。しかも、この空気入りタイヤ1によれば、凸部9を含むタイヤ周方向での突出高さhの変動を規定することでタイヤ周方向の均一性が向上するため、ユニフォミティを向上する効果を顕著に得ることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図2に示すように、回転軸Pからタイヤ径方向に切断したタイヤ周方向に1degあたりの凸部9の質量のタイヤ周方向での変動量が0.1g/deg以下であることが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、凸部9のタイヤ周方向での質量変動を規定することで凸部9の質量変動を抑え、空気入りタイヤ1の回転に伴う振動を抑制することができ、この振動により凸部9から発生する騒音を低減することができる。しかも、この空気入りタイヤ1によれば、凸部9を含むタイヤ周方向での質量の変動を規定することでタイヤ周方向の均一性が向上するため、ユニフォミティを向上する効果を顕著に得ることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、各凸部9のタイヤ周方向における間隔が不均一であることが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤサイド部Sのタイヤサイド面Saに沿う空気流に対して各凸部9のタイヤ周方向の周期性を打ち消すことから、各凸部9から発生する音圧が周波数の違いにより互いに分散されたり打ち消されたりするため、空気入りタイヤ1が生じる騒音(音圧レベル)を低減することができる。
なお、凸部9の間隔とは、空気入りタイヤ1の側面視において、凸部9の端9Dからタイヤ径方向に補助線(図示せず)を引き、各凸部9での補助線間の回転軸Pを中心とする角度として示される。そして、各凸部9の間隔を不均一にするには、凸部9の形状(突出高さhや、幅Wや、延在方向の長さL)やタイヤ周方向やタイヤ径方向に交差する傾きを同じくしてタイヤ周方向のピッチを変えること、形状(突出高さhや、幅Wや、延在方向の長さL)を変えること、タイヤ周方向やタイヤ径方向に交差する傾きを変えること、などにより実施することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両装着時での車両内外の向きが指定されており、少なくとも車両外側となるタイヤサイド部Sに凸部9が形成されていることが好ましい。
すなわち、本実施形態の空気入りタイヤ1は、車両100(図17参照)に装着した場合、タイヤ幅方向において、車両100の内側および外側に対する向きが指定されている。向きの指定は、図には明示しないが、例えば、サイドウォール部4に設けられた指標により示される。このため、車両100に装着した場合に車両100の内側に向く側が車両内側となり、車両100の外側に向く側が車両外側となる。なお、車両内側および車両外側の指定は、車両100に装着した場合に限らない。例えば、リム組みした場合に、タイヤ幅方向において、車両100の内側および外側に対するリム50(図17参照)の向きが決まっている。このため、空気入りタイヤ1は、リム組みした場合、タイヤ幅方向において、車両内側および車両外側に対する向きが指定される。
車両外側のタイヤサイド部Sは、車両100への装着時にタイヤハウス101から外側に現れるため、この車両外側のタイヤサイド部Sに凸部9を設けることで、空気の流れを車両外側に押し出すことができるので、空気入りタイヤ1の進行方向の後側において、タイヤハウス101から発生する渦流を細分化する作用を顕著に得ることができる。
なお、上述した実施形態の空気入りタイヤ1において、図9~図14に示す凸部9の短手方向の幅Wは、0.5mm以上10.0mm以下とされていることが好ましい。凸部9の短手方向の幅Wが上記範囲未満であると、凸部9が空気の流れに接触する範囲が小さいことから、凸部9による周辺の空気を案内する効果が得難くなる。一方、凸部9の短手方向の幅Wが上記範囲を超えると、凸部9が空気の流れに接触する範囲が大きいことから、凸部9が空気抵抗の増加の原因となったり、タイヤ重量の増加の原因になったりし得る。従って、凸部9の短手方向の幅Wを適正化することで、凸部9による周辺の空気を案内する効果を顕著に得ることができる。
なお、凸部9は、タイヤ周方向でのピッチが、トレッド部2のラグ溝のタイヤ周方向でのピッチに対して等ピッチでも、異なるピッチでもよい。凸部9のタイヤ周方向でのピッチを、トレッド部2のラグ溝のタイヤ周方向でのピッチに対して異ならせると、凸部9から発生する音圧と、ラグ溝による音圧とが周波数の違いにより互いに分散や打ち消しされるため、ラグ溝により発生するパターンノイズを低減することができる。なお、凸部9のタイヤ周方向でのピッチを異ならせるラグ溝は、複数の主溝22によりタイヤ幅方向に複数区画形成されたリブ状の陸部23における全てのラグ溝を含む。ただし、ラグ溝により発生するパターンノイズを低減する効果を顕著に得るには、凸部9に最も近くに配置されるタイヤ幅方向最外側のラグ溝のピッチに対して凸部9のタイヤ周方向でのピッチを異ならせることが好ましい。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、空気抵抗低減性能およびリフト低減性能に関する試験が行われた(図30参照)。
リフト低減性能および空気抵抗低減性能の試験は、モータアシスト付き乗用車のボディモデルに195/65R15のタイヤサイズのタイヤモデルを装着した車両モデルのシミュレーションにおいて、走行速度100km/h相当で走行した場合の風洞試験を行い、その空力抵抗係数により格子ボルツマン法による流体解析ソフトウェアを用いて空力特性(空気抵抗低減性能およびリフト低減性能)を算出し、算出結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。これらの指数評価は、数値が大きいほど空気抵抗低減性能やリフト低減性能が優れていることを示している。
図30において、従来例、実施例1~実施例17の空気入りタイヤは、タイヤサイド部のタイヤサイド面に凸部を有している。凸部は、図2に示す配置で車両外側および車両内側に設けられ、図10に示す短手方向断面で図21に参照する側面形状とされている。そして、従来例の空気入りタイヤは、凸部の外郭が主外郭部と接続部とを含まず、かつ凸部の配置が規定のレイノルズ数Reの範囲外である。
一方、実施例1~実施例17の空気入りタイヤは、凸部の外郭が2つの主外郭部と1つの接続部とを含んでいる。また、実施例1~実施例8の空気入りタイヤは、凸部の配置が規定のレイノルズ数Reの範囲外である。また、実施例9~実施例17の空気入りタイヤは、凸部の配置が規定のレイノルズ数Reの範囲内である。長手方向の各端からの範囲yは、主外郭部および接続部が外れる範囲であり、上述した実施形態における各範囲L0を示す。主外郭部の範囲zは、全ての主外郭部を足した範囲であり、上述した実施形態における各範囲L1を全て足した範囲である。接続部の範囲vは、本実施例では点で形成されており0である。
そして、図30の試験結果に示すように、各実施例の空気入りタイヤは、空気抵抗低減性能が改善していることが分かる。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
21 トレッド面
22 主溝
23 陸部
3 ショルダー部
4 サイドウォール部
5 ビード部
50 リム
51 ビードコア
52 ビードフィラー
6 カーカス層
7 ベルト層
71,72 ベルト
8 ベルト補強層
9 凸部
9P 外郭
9P1 主外郭部
9P2 接続部
9A 中間部
9B 先端部
9C 中央
9D 端
100 車両
101 タイヤハウス
CL タイヤ赤道面
G 路面
L 凸部の長手方向寸法
L0 凸部の長手方向の端から主外郭部および接続部を除外する範囲
L1 主外郭部の範囲
L2 接続部の範囲
h0 タイヤサイド面から高さ方向の主外郭部および接続部を除外する範囲
P 回転軸
R リムチェックライン
S タイヤサイド部
Sa タイヤサイド面
T 接地端
W 凸部の幅
h 凸部の突出高さ
2 トレッド部
21 トレッド面
22 主溝
23 陸部
3 ショルダー部
4 サイドウォール部
5 ビード部
50 リム
51 ビードコア
52 ビードフィラー
6 カーカス層
7 ベルト層
71,72 ベルト
8 ベルト補強層
9 凸部
9P 外郭
9P1 主外郭部
9P2 接続部
9A 中間部
9B 先端部
9C 中央
9D 端
100 車両
101 タイヤハウス
CL タイヤ赤道面
G 路面
L 凸部の長手方向寸法
L0 凸部の長手方向の端から主外郭部および接続部を除外する範囲
L1 主外郭部の範囲
L2 接続部の範囲
h0 タイヤサイド面から高さ方向の主外郭部および接続部を除外する範囲
P 回転軸
R リムチェックライン
S タイヤサイド部
Sa タイヤサイド面
T 接地端
W 凸部の幅
h 凸部の突出高さ
Claims (12)
- タイヤサイド部のタイヤサイド面に沿ってタイヤ周方向またはタイヤ径方向に交差して長手状に延在し、かつタイヤ周方向に間隔を空けて複数設けられた凸部を備え、
前記凸部は、長手方向に沿う断面形状においてタイヤサイド面から突出する外郭が、曲率の異なる複数の主外郭部と、各前記主外郭部の間を接続する接続部と、を含み形成されている空気入りタイヤ。 - 前記外郭は、前記凸部の稜線に沿って形成されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記外郭は、前記凸部の面に沿って形成されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記外郭は、前記凸部の長手方向の寸法Lに対し、前記長手方向の各端から(L×0.05)の範囲を除外した範囲に前記主外郭部および前記接続部が形成されている請求項1~3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 前記外郭は、前記凸部の長手方向の寸法Lに対し、(L×0.7)以上(L×0.9)以下の範囲に前記主外郭部が形成され、(L×0)以上(L×0.3)以下の範囲で前記接続部が形成されている請求項1~4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 正規リムに組み込んで、正規内圧を充填し、正規荷重を加えて水平面をなす路面に接地し、前記路面上を転動するとき、前記タイヤサイド部と前記路面との相対速度UをU[m/s]=V×r/Qであらわし、レイノルズ数ReをRe=U×Q/νであらわし、Vが空気入りタイヤの転動方向に対向する主流速度[m/s]であり、rが前記路面から回転軸に向かう距離[m]であり、Qが前記路面から前記回転軸に至る距離[m]であり、νが空気の動粘性度[m2/s]であって、主流速度V[m/s]が27.8の場合、前記レイノルズ数Reが、2000<Re<4×105の範囲となる位置に前記凸部が設けられている請求項1~5のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 前記レイノルズ数Reの範囲において、前記凸部の総体積Voが1000[mm3]≦Vo≦50000[mm3]の範囲を満たす請求項6に記載の空気入りタイヤ。
- 前記凸部は、突出高さの最大位置が前記タイヤサイド面から2mm以上10mm以下である請求項1~7のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ周方向に1degあたりの各前記凸部の突出高さのタイヤ周方向での変動量が1mm/deg以下である請求項1~8のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ周方向に1degあたりの各前記凸部の質量のタイヤ周方向での変動量が0.1g/deg以下である請求項1~9のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 各前記凸部のタイヤ周方向における間隔が不均一である請求項1~10のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 車両装着時での車両内外の向きが指定されており、少なくとも車両外側となるタイヤサイド部に前記凸部が形成されている請求項1~11のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
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