WO2018164189A1 - タンパク質成形体及びこれを製造する方法、並びにタンパク質溶液 - Google Patents
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Abstract
タンパク質及び反応性化合物とこれらが溶解している溶媒とを含有するタンパク質溶液であって、反応性化合物が第1の官能基及び第2の官能基を有する化合物であり、第1の官能基がタンパク質との反応によってタンパク質と反応性化合物とを結合させ得る基で、第2の官能基が2以上の第2の官能基の反応によって2以上の反応性化合物を互いに結合させ得る基である、タンパク質溶液を準備する工程と、タンパク質溶液を成形用原液として用いた成形によって、タンパク質を含有する成形体を得る工程と、成形体を2以上の反応性化合物を互いに結合させるための後処理に供する工程と、を備える、タンパク質成形体を製造する方法が開示される。
Description
本発明は、タンパク質成形体及びこれを製造する方法、並びにタンパク質溶液に関する。
繊維及びフィルム等のタンパク質成形体は、収縮し易い特性を有することがある。タンパク質成形体の収縮が、その製造工程又は使用時に様々な問題を発生させ得る。タンパク質成形体の収縮を抑える方法として、成形によって得られた成形体に架橋剤を付与し、成形体中でタンパク質を架橋する方法がいくつか提案されている(特許文献1~3)。
タンパク質成形体の収縮は、出来るだけ小さく抑制されることが望ましい。特に、タンパク質成形体は、製造後の最初の水分との接触によって比較的大きく収縮し、その後の乾燥によって更に収縮する性質を有することが多く、これらの収縮を抑制することが望まれる。
そこで、本発明の一側面の目的は、タンパク質成形体に関して、製造直後の水分との接触による収縮、及びその後の乾燥にともなう収縮を抑制することにある。
本発明の一側面は、タンパク質成形体を製造する方法を提供する。この方法は、
タンパク質及び反応性化合物とこれらが溶解している溶媒とを含有するタンパク質溶液であって、反応性化合物が第1の官能基及び該第1の官能基とは異なる第2の官能基を有する化合物であり、第1の官能基がタンパク質との反応によってタンパク質と反応性化合物とを結合させ得る基で、第2の官能基が2以上の第2の官能基の反応によって2以上の反応性化合物を互いに結合させ得る基である、タンパク質溶液を準備する工程と、
タンパク質溶液を成形用原液として用いた成形によって、タンパク質を含有する成形体を得る工程と、
成形体を、2以上の前記第2の官能基の反応によって2以上の反応性化合物を互いに結合させるための後処理に供する工程と、を備える。
タンパク質及び反応性化合物とこれらが溶解している溶媒とを含有するタンパク質溶液であって、反応性化合物が第1の官能基及び該第1の官能基とは異なる第2の官能基を有する化合物であり、第1の官能基がタンパク質との反応によってタンパク質と反応性化合物とを結合させ得る基で、第2の官能基が2以上の第2の官能基の反応によって2以上の反応性化合物を互いに結合させ得る基である、タンパク質溶液を準備する工程と、
タンパク質溶液を成形用原液として用いた成形によって、タンパク質を含有する成形体を得る工程と、
成形体を、2以上の前記第2の官能基の反応によって2以上の反応性化合物を互いに結合させるための後処理に供する工程と、を備える。
この方法によれば、成形直後の水分との接触による成形体の収縮、及びその後の乾燥にともなう成形体の収縮を抑制することができる。
本発明の別の側面は、反応性化合物によって架橋されたタンパク質を含有するタンパク質成形体を提供する。反応性化合物は第1の官能基及び該第1の官能基とは異なる第2の官能基を有する化合物である。第1の官能基とタンパク質との反応によりタンパク質と反応性化合物とが結合し、2以上の第2の官能基の反応により2以上の反応性化合物が互いに結合し、それによってタンパク質が架橋されている。
このタンパク質成形体は、製造直後の水分との接触による収縮、及びその後の乾燥にともなう収縮を生じ難い。
本発明の更に別の側面は、タンパク質及び反応性化合物とこれらが溶解している溶媒とを含有する、タンパク質溶液を提供する。反応性化合物は、第1の官能基及び該第1の官能基とは異なる第2の官能基を有する化合物である。第1の官能基はタンパク質との反応によってタンパク質と反応性化合物とを結合させ得る基で、第2の官能基は2以上の第2の官能基の反応によって2以上の反応性化合物を互いに結合させ得る基である。
このタンパク質溶液を成形用原液として用いることにより、製造直後の水分との接触による成形体の収縮、及びその後の乾燥にともなう成形体の収縮を抑制することができる。
本発明の一側面に係る方法によれば、製造直後の水分との接触によるタンパク質成形体の収縮、及びその後の乾燥にともなうタンパク質成形体の収縮を抑制することができる。
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
タンパク質成形体を製造する方法の一実施形態は、タンパク質及び反応性化合物とこれらが溶解している溶媒とを含有するタンパク質溶液を準備する工程と、タンパク質溶液を成形用原液として用いた成形によって、タンパク質を含有する成形体を得る工程と、成形体を加熱処理等の後処理に供する工程とを含み得る。
反応性化合物は、反応性化合物とタンパク質とを結合させ得る第1の官能基、及び、反応性化合物同士を結合させ得る第2の官能基を有する化合物であってもよい。この場合、後処理は、2以上の第2の官能基の反応によって2以上の反応性化合物を互いに結合させるための処理であることができる。
<タンパク質>
タンパク質成形体を構成するタンパク質は、特に限定されるものではなく、遺伝子組換え技術により微生物等で製造したものであってもよいし、合成により製造されたものであってもよい。あるいは、タンパク質は、天然由来のタンパク質を精製したものであってもよい。
タンパク質成形体を構成するタンパク質は、特に限定されるものではなく、遺伝子組換え技術により微生物等で製造したものであってもよいし、合成により製造されたものであってもよい。あるいは、タンパク質は、天然由来のタンパク質を精製したものであってもよい。
タンパク質は、例えば、構造タンパク質を含んでいてもよい。構造タンパク質とは、生体内で構造及び形態等を形成又は保持するタンパク質を意味する。構造タンパク質は、天然の構造タンパク質に由来する人造構造タンパク質であってもよい。構造タンパク質としては、例えば、フィブロイン、ケラチン、コラ-ゲン、エラスチン及びレシリンを挙げることができる。
構造タンパク質は、フィブロインであってもよい。フィブロインは、例えば、絹フィブロイン、クモ糸フィブロイン、及びホーネットシルクフィブロインからなる群より選択される1種以上であってよい。特に、構造タンパク質は、絹フィブロイン、クモ糸フィブロイン又はこれらの組み合わせであってもよい。絹フィブロインとクモ糸フィブロインとを併用する場合、絹フィブロインの割合は、例えば、クモ糸フィブロイン100質量部に対して、40質量部以下、30質量部以下、又は10質量部以下であってよい。
絹糸は、カイコガ(Bombyx mori)の幼虫である蚕の作る繭から得られる繊維(繭糸)である。一般に、1本の繭糸は、2本の絹フィブロインと、これらを外側から覆うニカワ質(セリシン)とから構成される。絹フィブロインは、多数のフィブリルで構成される。絹フィブロインは、4層のセリシンで覆われる。実用的には、精錬により外側のセリシンを溶解してこれを取り除くことにより得られる絹フィラメントが、衣料用途に使用されている。一般的な絹糸は、1.33の比重、平均3.3decitexの繊度、及び1300~1500m程度の繊維長を有する。絹フィブロインは、天然若しくは家蚕の繭、又は中古若しくは廃棄のシルク生地を原料として得られる。
絹フィブロインは、セリシン除去絹フィブロイン、セリシン未除去絹フィブロイン、又はこれらの組み合わせであってもよい。セリシン除去絹フィブロインは、絹フィブロインを覆うセリシン、及びその他の脂肪分などを除去して精製したものである。このようにして精製した絹フィブロインは、凍結乾燥粉末であってもよい。セリシン未除去絹フィブロインは、セリシンなどが除去されていない未精製の絹フィブロインである。
クモ糸フィブロインは、天然クモ糸タンパク質、及び天然クモ糸タンパク質に由来するポリペプチド(人造クモ糸タンパク質)からなる群より選ばれる1種以上のクモ糸ポリペプチドを含有していてもよい。
天然クモ糸タンパク質としては、例えば、大吐糸管しおり糸タンパク質、横糸タンパク質、及び小瓶状腺タンパク質が挙げられる。大吐糸管しおり糸は、結晶領域と非晶領域(無定形領域ともいう。)からなる繰り返し領域を持つため、高い応力と伸縮性を併せ持つ。クモ糸の横糸は、結晶領域を持たず、非晶領域からなる繰り返し領域を持つという特徴を有する。横糸は、大吐糸管しおり糸に比べると応力は劣るが、高い伸縮性を持つ。
大吐糸管しおり糸タンパク質は、クモの大瓶状線で産生され、強靭性に優れるという特徴を有する。大吐糸管しおり糸タンパク質としては、例えば、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する大瓶状腺スピドロインMaSp1及びMaSp2、並びに二ワオニグモ(Araneus diadematus)に由来するADF3及びADF4が挙げられる。ADF3は、ニワオニグモの2つの主要なしおり糸タンパク質の一つである。天然クモ糸タンパク質に由来するポリペプチドは、これらのしおり糸タンパク質に由来するポリペプチドであってもよい。ADF3に由来するポリペプチドは、比較的合成し易く、また、強伸度及びタフネスの点で優れた特性を有する。
横糸タンパク質は、クモの鞭毛状腺(flagelliform gland)で産生される。横糸タンパク質としては、例えばアメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する鞭毛状絹タンパク質(flagelliform silk protein)が挙げられる。
天然クモ糸タンパク質に由来するポリペプチドは、組換えクモ糸タンパク質であってよい。組換えクモ糸タンパク質としては、天然型クモ糸タンパク質の変異体、類似体又は誘導体等が挙げられる。このようなポリペプチドの一例は、大吐糸管しおり糸タンパク質の組換えクモ糸タンパク質(「大吐糸管しおり糸タンパク質に由来するポリペプチド」ともいう。)である。
フィブロイン様タンパク質である大吐糸管しおり糸由来のタンパク質あるいはカイコシルク由来のタンパク質としては、例えば、式1:[(A)nモチーフ-REP]m、又は式2:[(A)nモチーフ-REP]m-(A)nモチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質が挙げられる。ここで、(A)nモチーフは、主としてアラニン残基を含むアミノ酸配列であり、nは2~27の整数である。nは、2~20、4~27、4~20、8~20、10~20、4~16、8~16、又は10~16の整数であってよい。(A)nモチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は、40%以上、60%以上、70%以上、80%以上、83%以上、85%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%((A)nモチーフがアラニン残基のみで構成されることを意味する。)であってもよい。式1又は2で表されるドメイン配列中に複数存在する(A)nモチーフのうち少なくとも7つが、アラニン残基のみで構成されてもよい。REPは2~200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。REPは、10~200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列であってもよい。mは2~300の整数を示し、10~300の整数であってもよい。式1又は2で表されるドメイン配列中に複数存在する(A)nモチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。式1又は2で表されるドメイン配列中に複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。大吐糸管しおり糸由来のタンパク質の具体例としては、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。
クモの大瓶状腺で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質に由来する改変フィブロインは、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるアミノ酸配列(ドメイン配列)の単位を含み、C末端配列として、配列番号14、15若しくは16のいずれかで示されるアミノ酸配列、又は配列番号14、15若しくは16のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する、ポリペプチドであってもよい。
配列番号14に示されるアミノ酸配列は、ADF3(GI:1263287、NCBI)のアミノ酸配列のC末端の50残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列と同一である。配列番号15で示されるアミノ酸配列は、配列番号14で示されるアミノ酸配列のC末端から20残基取り除いたアミノ酸配列と同一である。配列番号16で示されるアミノ酸配列は、配列番号14で示されるアミノ酸配列のC末端から29残基取り除いたアミノ酸配列と同一である。
クモの大瓶状腺で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質に由来する改変フィブロインのより具体的な例として、(1-i)配列番号17で示されるアミノ酸配列、又は(1-ii)配列番号17で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。ここでの配列同一性は、95%以上であってもよい。
配列番号17で示されるアミノ酸配列は、N末端に開始コドン、His10タグ及びHRV3Cプロテアーゼ(Human rhinovirus 3Cプロテアーゼ)認識サイトからなるアミノ酸配列(配列番号18)を付加したADF3のアミノ酸配列を、第1~13番目の反復領域をおよそ2倍まで増やすとともに、翻訳が第1154番目のアミノ酸残基で終止するように変異させた配列に相当する。配列番号17で示されるアミノ酸配列のC末端のアミノ酸配列は、配列番号16で示されるアミノ酸配列と同一である。
(1-i)の改変フィブロインは、配列番号17で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインは、そのドメイン配列において、天然由来のフィブロインと比較してグリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。当該改変フィブロインは、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたものに相当するアミノ酸配列を有することができる。
グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中のGGX及びGPGXX(但し、Gはグリシン残基、Pはプロリン残基、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)から選ばれる少なくとも一つのモチーフ配列において、少なくとも1又は複数の当該モチーフ配列中の1つのグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたものに相当するアミノ酸配列であってもよい。
グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインにおいて、上述のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上であってもよい。
グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインが、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるドメイン配列を含み、式1で表されるドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)nモチーフから当該ドメイン配列のC末端までの部分以外の配列において、全REPに含まれるXGX(但し、Gはグリシン残基、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数がzで、総アミノ酸残基数がwであるときに、wに対するzの割合(z/w、%)が30%以上、40%以上、50%以上又は50.9%以上であってもよい。(A)nモチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は83%以上、86%以上、90%以上、又は95%以上であってもよい。該割合が100%((A)nモチーフがアラニン残基のみで構成されることを意味する)であってもよい。
グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインは、GGXモチーフの1つのグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換することにより。XGXからなるアミノ酸配列の含有割合を高めたものであってもよい。グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインにおいて、ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合が30%以下、20%以下、10%以下、6%以下、4%以下、又は2%以下であってもよい。ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合は、XGXからなるアミノ酸配列の含有割合(z/w)の算出方法と同様の方法で算出することができる。
z/wの算出方法を更に詳細に説明する。まず、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるドメイン配列を含むフィブロイン(改変フィブロイン又は天然由来のフィブロイン)において、ドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)nモチーフからドメイン配列のC末端までの部分以外の配列に含まれる全てのREPから、XGXからなるアミノ酸配列を抽出する。抽出されたXGXを構成するアミノ酸残基の総数がzである。例えば、XGXからなるアミノ酸配列が重複なく50個抽出された場合、zは50×3=150と算出される。例えば、XGXGXからなるアミノ酸配列における中央のXのように、2つのXGXに含まれるXが存在する場合、重複しているXの数が控除される。すなわち、XGXGXは、XGXを構成するアミノ酸残基を5つ含む配列とみなされる。wは、ドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)nモチーフからドメイン配列のC末端までの部分以外の配列に含まれる総アミノ酸残基数である。例えば、図1に示したドメイン配列の場合、wは4+50+4+100+4+10+4+20+4+30=230と計算される。この計算において、最もC末端側に位置する(A)nモチーフにおけるアミノ酸残基数の4は除かれている。z及びwから、wに対するzの割合(z/w、%)が算出される。
グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインにおいて、z/wは、50.9%以上、56.1%以上、58.7%以上、70%以上、又は80%以上であってもよい。z/wの上限に特に制限はないが、例えば、95%以下であってもよい。
グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列から、グリシン残基をコードする塩基配列の少なくとも一部を、別のアミノ酸残基をコードするように改変することにより得ることができる。このとき、改変するグリシン残基として、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフにおける1つのグリシン残基を選択してもよいし、z/wが50.9%以上になるように、グリシン残基をコードする塩基配列を置換してもよい。例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から上記態様を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより、グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインを得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中のグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
上記の別のアミノ酸残基は、グリシン残基以外のアミノ酸残基であれば特に制限はないが、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基、メチオニン(M)残基、プロリン(P)残基、フェニルアラニン(F)残基及びトリプトファン(W)残基等の疎水性アミノ酸残基、又は、グルタミン(Q)残基、アスパラギン(N)残基、セリン(S)残基、リシン(K)残基及びグルタミン酸(E)残基等の親水性アミノ酸残基であってもよく、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基又はグルタミン(Q)残基であってもよく、グルタミン(Q)残基であってもよい。
グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインのより具体的な例として、(2-i)配列番号3、配列番号4、配列番号10若しくは配列番号12で示されるアミノ酸配列、又は(2-ii)配列番号3、配列番号4、配列番号10若しくは配列番号12で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(2-i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号3で示されるアミノ酸配列は、天然由来のフィブロインに相当する配列番号1で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。配列番号4で示されるアミノ酸配列は、配列番号3で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)nモチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)nモチーフ-REP]を1つ挿入したものである。配列番号10で示されるアミノ酸配列は、配列番号4で示されるアミノ酸配列の各(A)nモチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、配列番号4の分子量とほぼ同じとなるようにN末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号12で示されるアミノ酸配列は、配列番号9で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を4回繰り返した配列のC末端にHisタグが付加されたものである。
配列番号1で示されるアミノ酸配列(天然由来のフィブロインに相当)におけるz/wの値は、46.8%である。配列番号3で示されるアミノ酸配列、配列番号4で示されるアミノ酸配列、配列番号10で示されるアミノ酸配列、及び配列番号12で示されるアミノ酸配列におけるz/wの値は、それぞれ58.7%、70.1%、66.1%及び70.0%である。配列番号1、3、4、10及び12でそれぞれ示されるアミノ酸配列のギザ比率1:1.8~11.3におけるx/yの値は、それぞれ15.0%、15.0%、93.4%、92.7%及び89.3%である。ギザ比率及びx/yの詳細については後述される。
(2-i)の改変フィブロインは、配列番号3、配列番号4、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(2-ii)の改変フィブロインは、配列番号3、配列番号4、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(2-ii)の改変フィブロインも、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であってもよい。
(2-ii)の改変フィブロインは、配列番号3、配列番号4、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつREP中に含まれるXGX(但し、Gはグリシン残基、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数がzで、式1で表されるドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数がwであるときに、wに対するzの割合(z/w、%)が50.9%以上であってもよい。
上述の改変フィブロインは、N末端又はC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、改変フィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列として、例えば、他の分子との特異的親和性(結合性、アフィニティ)を利用したアフィニティタグを挙げることができる。アフィニティタグの具体例として、ヒスチジンタグ(Hisタグ)を挙げることができる。Hisタグは、ヒスチジン残基が4から10個程度並んだ短いペプチドで、ニッケル等の金属イオンと特異的に結合する性質があるため、金属キレートクロマトグラフィー(chelating metal chromatography)による改変フィブロインの単離に利用することができる。タグ配列の具体例として、例えば、配列番号5で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含むアミノ酸配列)が挙げられる。
グルタチオンに特異的に結合するグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースに特異的に結合するマルトース結合タンパク質(MBP)等のタグ配列を利用することもできる。
抗原抗体反応を利用した「エピトープタグ」を利用することもできる。抗原性を示すペプチド(エピトープ)をタグ配列として付加することにより、当該エピトープに対する抗体を結合させることができる。エピトープタグの例として、HA(インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのペプチド配列)タグ、mycタグ、及びFLAGタグを挙げることができる。エピトープタグを利用することにより、高い特異性で容易に改変フィブロインを精製することができる。
タグ配列を特定のプロテアーゼで切り離せる配列も使用することができる。当該タグ配列を介して吸着したタンパク質をプロテアーゼ処理することにより、タグ配列を切り離した改変フィブロインを回収することもできる。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(2-iii)配列番号8、配列番号9、配列番号11若しく配列番号13で示されるアミノ酸配列、又は(2-iv)配列番号8、配列番号9、配列番号11若しく配列番号13で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号6、7、8、9、11及び13で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1、2、3、4、10及び12でそれぞれ示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(2-iii)の改変フィブロインは、配列番号8、配列番号9、配列番号11又は配列番号13で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(2-iv)の改変フィブロインは、配列番号8、配列番号9、配列番号11又は配列番号13で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(2-iv)の改変フィブロインも、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であってもよい。
(2-iv)の改変フィブロインは、配列番号8、配列番号9、配列番号11又は配列番号13で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつREP中に含まれるXGX(但し、Gはグリシン残基、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数がzで、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数がwであるときに、wに対するzの割合(z/w、%)が50.9%以上であってもよい。
上述の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、(A)nモチーフの含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。当該改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)nモチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有することができる。
(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインは、天然由来のフィブロインから(A)nモチーフを10~40%欠失させたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともN末端側からC末端側に向かって1~3つの(A)nモチーフ毎に1つの(A)nモチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列であってもよい。
(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともN末端側からC末端側に向かって2つ連続した(A)nモチーフの欠失、及び1つの(A)nモチーフの欠失がこの順に繰り返されたことに相当するアミノ酸配列であってもよい。
(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインのドメイン配列が、少なくともN末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)nモチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列であってもよい。
(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインが、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるドメイン配列を含んでいてもよい。その場合に、N末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)nモチーフ-REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8~11.3となるような隣合う2つの[(A)nモチーフ-REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値がxで、式1で表されるドメイン配列の総アミノ酸残基数がyであるときに、yに対するxの割合(x/y、%)が20%以上、30%以上、40%以上又は50%以上であってもよい。(A)nモチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は83%以上、86%以上、90%以上、又は95%以上であってもよく、100%((A)nモチーフがアラニン残基のみで構成されることを意味する)であってもよい。
x/yの算出方法を図1を参照しながら更に詳細に説明する。図1には、改変フィブロインからN末端配列及びC末端配列を除いたドメイン配列を示す。当該ドメイン配列は、N末端側(左側)から(A)nモチーフ-第1のREP(50アミノ酸残基)-(A)nモチーフ-第2のREP(100アミノ酸残基)-(A)nモチーフ-第3のREP(10アミノ酸残基)-(A)nモチーフ-第4のREP(20アミノ酸残基)-(A)nモチーフ-第5のREP(30アミノ酸残基)-(A)nモチーフという配列を有する。
隣合う2つの[(A)nモチーフ-REP]ユニットは、重複がないように、N末端側からC末端側に向かって、順次選択する。このとき、選択されない[(A)nモチーフ-REP]ユニットが存在してもよい。図1には、パターン1(第1のREPと第2のREPの比較、及び第3のREPと第4のREPの比較)、パターン2(第1のREPと第2のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン3(第2のREPと第3のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン4(第1のREPと第2のREPの比較)を示した。選択方法はこれらに限られない。
次に各パターンについて、選択した隣合う2つの[(A)nモチーフ-REP]ユニット中の各REPのアミノ酸残基数を比較し、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときの、他方のアミノ酸残基数の比を求める。例えば、第1のREP(50アミノ酸残基)と第2のREP(100アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第1のREPを1としたとき、第2のREPのアミノ酸残基数の比は、100/50=2と算出される。同様に、第4のREP(20アミノ酸残基)と第5のREP(30アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第4のREPを1としたとき、第5のREPのアミノ酸残基数の比は、30/20=1.5と算出される。
図1中、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比(以下、「ギザ比率」ということがある。)が、1.8~11.3となるような[(A)nモチーフ-REP]ユニットの組を実線で示した。ギザ比率が1.8未満又は11.3超となる[(A)nモチーフ-REP]ユニットの組は破線で示した。
各パターンにおいて、実線で示した隣合う2つの[(A)nモチーフ-REP]ユニットの全てのアミノ酸残基数((A)nモチーフのアミノ酸残基数も含む)を足し合わせる。各パターンにおいて足し合わせたアミノ酸残基数の合計値を比較して、当該合計値が最大となるパターンにおける足し合わせたアミノ酸残基数の合計値(合計値の最大値)をxとする。図1に示した例では、パターン1の合計値が最大である。
xをドメイン配列の総アミノ酸残基数yで除すことによって、yに対するxの割合(x/y、%)を算出することができる。
(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインにおいて、x/yは、50%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、又は80%以上であってもよい。x/yの上限に特に制限はなく、例えば、100%以下であってよい。ギザ比率が1:1.9~11.3で、x/yが89.6%以上であってもよく、ギザ比率が1:1.8~3.4で、x/yが77.1%以上であってもよく、ギザ比率が1:1.9~8.4で、x/yが75.9%以上であってもよく、ギザ比率が1:1.9~4.1で、x/yが64.2%以上であってもよい。
(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインにおいて、ドメイン配列中に存在する少なくとも7つの(A)nモチーフがアラニン残基のみで構成される場合、x/yは、46.4%以上、50%以上、55%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であってもよい。x/yの上限に特に制限はなく、100%以下であってもよい。
(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列から、x/yが64.2%以上になるように(A)nモチーフをコードする配列の1又は複数を欠失させることにより得ることができる。例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、x/yが64.2%以上になるように1又は複数の(A)nモチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより、(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインを得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から(A)nモチーフが欠失したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインのより具体的な例として、(3-i)配列番号2、配列番号4、配列番号10若しくは配列番号12で示されるアミノ酸配列、又は(3-ii)配列番号2、配列番号4、配列番号10若しくは配列番号12で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(3-i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号2で示されるアミノ酸配列は、天然由来のフィブロインに相当する配列番号1で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)nモチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)nモチーフ-REP]を1つ挿入したものである。配列番号4で示されるアミノ酸配列は、配列番号2で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。配列番号10で示されるアミノ酸配列は、配列番号4で示されるアミノ酸配列の各(A)nモチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、配列番号4の分子量とほぼ同じとなるようにN末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号12で示されるアミノ酸配列は、配列番号で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を4回繰り返した配列のC末端にHisタグが付加されたものである。
配列番号1で示されるアミノ酸配列(天然由来のフィブロインに相当)のギザ比率1:1.8~11.3におけるx/yの値は15.0%である。配列番号2で示されるアミノ酸配列、及び配列番号4で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、いずれも93.4%である。配列番号10で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、92.7%である。配列番号12で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、89.3%である。配列番号1、2、4、10及び12で示されるアミノ酸配列におけるz/wの値は、それぞれ46.8%、56.2%、70.1%、66.1%及び70.0%である。
(3-i)の改変フィブロインは、配列番号2、配列番号4、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(3-ii)の改変フィブロインは、配列番号2、配列番号4、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(3-ii)の改変フィブロインも、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であってもよい。
(3-ii)の改変フィブロインは、配列番号2、配列番号4、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、ギザ比率が1:1.8~11.3となるような隣合う2つの[(A)nモチーフ-REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値がxで、ドメイン配列の総アミノ酸残基数がyであるときに、yに対するxの割合(x/y、%)が64.2%以上であってもよい。
上述の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方に上述したタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(3-iii)配列番号7、配列番号9、配列番号11若しく配列番号13で示されるアミノ酸配列、又は(2-iv)配列番号7、配列番号9、配列番号11若しく配列番号13で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号6、7、8、9、11及び13で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1、2、3、4、10及び12で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含む)を付加したものである。
(3-iii)の改変フィブロインは、配列番号7、配列番号9、配列番号11又は配列番号13で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(3-iv)の改変フィブロインは、配列番号7、配列番号9、配列番号11又は配列番号13で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(3-iv)の改変フィブロインも、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であってもよい。
(3-iv)の改変フィブロインは、配列番号7、配列番号9、配列番号11又は配列番号13で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、ギザ比率が1.8~11.3となるような隣合う2つの[(A)nモチーフ-REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値がxで、ドメイン配列の総アミノ酸残基数がyであるときに、yに対するxの割合(x/y、%)が64.2%以上であってもよい。
上述の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
グリシン残基の含有量、及び(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、(A)nモチーフの含有量が低減されたことに加え、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有するものである。当該改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)nモチーフが欠失したことに加え、更に少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有する。この改変フィブロインは、上述したグリシン残基の含有量が低減された改変フィブロインと、(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインの特徴を併せ持つ改変フィブロインである。具体的な態様等は、グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロイン、及び、(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインで説明したとおりである。
グリシン残基の含有量、及び(A)nモチーフの含有量が低減された改変フィブロインのより具体的な例として、(4-i)配列番号4、配列番号10若しくは配列番号12で示されるアミノ酸配列、(4-ii)配列番号4、配列番号10若しくは配列番号12で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。配列番号4、配列番号10若しくは配列番号12で示されるアミノ酸配列を含む改変フィブロインの具体的な態様は上述のとおりである。
他の実施形態に係る改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列を有していてもよい。
局所的に疎水性指標の大きい領域は、連続する2~4アミノ酸残基で構成されていてもよい。
上述の疎水性指標の大きいアミノ酸残基は、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基であってもよい。
本実施形態に係る改変フィブロインにおいて、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、更に、天然由来のフィブロインと比較して、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変があってもよい。
本実施形態に係る改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより得ることができる。例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基を疎水性アミノ酸残基に置換したこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより改変フィブロインを得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基を疎水性アミノ酸残基に置換したこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
さらに他の実施形態に係る改変フィブロインは、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるドメイン配列を含み、該ドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)nモチーフからドメイン配列のC末端までの部分以外の配列において、全てのREPにおける連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数がpで、アミノ酸残基の総数がqであるときに、qに対するpの割合(p/q)が6.2%以上であってもよい。
アミノ酸残基の疎水性指標については、公知の指標(Hydropathy index:Kyte J,&Doolittle R(1982)“A simple method for displaying the hydropathic character of a protein”,J.Mol.Biol.,157,pp.105-132)を使用する。具体的には、各アミノ酸の疎水性指標(ハイドロパシー・インデックス、以下「HI」とも記す。)は、下記表1に示すとおりである。
p/qの算出方法を更に詳細に説明する。算出には、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)nモチーフからドメイン配列のC末端までの部分以外の配列(以下、「配列A」という。)を用いる。まず、配列Aに含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値を算出する。疎水性指標の平均値は、連続する4アミノ酸残基に含まれる各アミノ酸残基のHIの総和を4(アミノ酸残基数)で除して求める。疎水性指標の平均値は、全ての連続する4アミノ酸残基について求める。各アミノ酸残基は、1~4回平均値の算出に用いられる。次いで、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域を特定する。あるアミノ酸残基が、複数の「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」に該当する場合であっても、領域中には1アミノ酸残基として含まれることになる。そして、当該領域に含まれるアミノ酸残基の総数がpである。配列Aに含まれるアミノ酸残基の総数がqである。
例えば、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が重複なく20カ所抽出された場合、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、連続する4アミノ酸残基(重複はなし)が20含まれることになる。pは20×4=80と算出される。例えば、2つの「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が1アミノ酸残基だけ重複して存在する場合、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、7アミノ酸残基含まれることになる(p=2×4-1=7。「-1」は重複分の控除である。)。例えば、図2に示したドメイン配列の場合、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が重複せずに7つ存在するため、pは7×4=28と算出される。図2に示したドメイン配列の場合、qは4+50+4+40+4+10+4+20+4+30=170と算出される。この計算において、C末端側の最後に存在する(A)nモチーフにおけるアミノ酸残基数は含まれない。pをqで除すことによって、qに対するpの割合(p/q、%)を算出することができる。図2の場合、p/qは28/170=16.47%と算出される。
本実施形態に係る改変フィブロインにおいて、p/qは、6.2%以上、7%以上、10%以上、20%以上、又は30%以上であってもよい。p/qの上限は、特に制限されないが、例えば、45%以下であってもよい。
本実施形態に係る改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインのアミノ酸配列を、上記のp/qの条件を満たすように、REP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列に改変することにより得ることができる。例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から上記のp/qの条件を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより改変フィブロインを得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当する改変を行ってもよい。
疎水性指標の大きいアミノ酸残基は、特に制限はないが、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基であってもよく、バリン(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)から選ばれるアミノ酸残基であってもよい。
改変フィブロインの別の具体的な例として、(5-i)配列番号19、配列番号21若しくは配列番号22で示されるアミノ酸配列、又は(5-ii)配列番号19、配列番号21若しくは配列番号22で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(5-i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号4で示されるアミノ酸配列は、天然由来のフィブロインの(A)nモチーフ中のアラニン残基が連続するアミノ酸配列をアラニン残基が連続する数を5つになるよう欠失したものである。配列番号19で示されるアミノ酸配列は、配列番号4で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を2カ所挿入し、かつ配列番号4で示されるアミノ酸配列の分子量とほぼ同じとなるようにC末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号20で示されるアミノ酸配列は、配列番号19で示されるアミノ酸配列に対し、各(A)nモチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、かつ配列番号4で示されるアミノ酸配列の分子量とほぼ同じとなるようにC末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号21で示されるアミノ酸配列は、配列番号20で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を1カ所挿入したものである。配列番号22で示されるアミノ酸配列は、配列番号20で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を2カ所挿入したものである。
(5-i)の改変フィブロインは、配列番号19、配列番号21又は配列番号22で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(5-ii)の改変フィブロインは、配列番号19、配列番号21又は配列番号22で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(5-ii)の改変フィブロインも、式1:[(A)nモチーフ-REP]mで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であってもよい。
(5-ii)の改変フィブロインは、配列番号19、配列番号21又は配列番号22で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ、ドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)nモチーフからドメイン配列のC末端までの部分以外の配列に関して、全てREPにおいて連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数がpで、アミノ酸残基の総数がqであるときに、qに対するpの割合(p/q、%)が6.2%以上であってもよい。
上述の改変フィブロインは、N末端又はC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(5-iii)配列番号23、配列番号24若しくは配列番号25で示されるアミノ酸配列、又は(5-iv)配列番号23、配列番号24若しくは配列番号25で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号23、24及び25で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号19、21及び22で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(5-iii)の改変フィブロインは、配列番号23、配列番号24若しくは配列番号25で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(5-iv)の改変フィブロインは、配列番号23、配列番号24若しくは配列番号25で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(5-iv)の改変フィブロインも、式1:[(A)nモチーフ-REP]m表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であってもよい。
(5-iv)の改変フィブロインは、配列番号23、配列番号24若しくは配列番号25で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、ドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)nモチーフからドメイン配列のC末端までの部分以外の配列において、全てのREPにおける連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数がpで、アミノ酸残基の総数がqであるときに、qに対するpの割合(p/q、%)が6.2%以上であってもよい。
上述の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
横糸タンパク質に由来するタンパク質としては、例えば、式3:[REP2]oで表されるドメイン配列を含むタンパク質(式3中、REP2はGly-Pro-Gly-Gly-Xから構成されるアミノ酸配列を示し、Xはアラニン(Ala)、セリン(Ser)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群から選ばれる一つのアミノ酸を示す。oは8~300の整数を示す。)を挙げることができる。横糸タンパク質に由来するタンパク質の具体例としては、配列番号26で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号26で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したアメリカジョロウグモの鞭毛状絹タンパク質の部分的な配列(NCBIアクセッション番号:AAF36090、GI:7106224)のリピート部分及びモチーフに該当するN末端から1220残基目から1659残基目までのアミノ酸配列(PR1配列と記す。)と、NCBIデータベースから入手したアメリカジョロウグモの鞭毛状絹タンパク質の部分配列(NCBIアクセッション番号:AAC38847、GI:2833649)のC末端から816残基目から907残基目までのC末端アミノ酸配列を結合し、結合した配列のN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
コラーゲン由来のタンパク質として、例えば、式4:[REP3]pで表されるドメイン配列を含むタンパク質(式4中、pは5~300の整数を示す。REP3は、Gly一X一Yから構成されるアミノ酸配列を示し、X及びYはGly以外の任意のアミノ酸残基を示す。複数存在するREP3は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。コラーゲン由来のタンパク質の具体例としては、配列番号27で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号27で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したヒトのコラーゲンタイプ4の部分的な配列(NCBIのGenBankのアクセッション番号:CAA56335.1、GI:3702452)のリピート部分及びモチーフに該当する301残基目から540残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
レシリン由来のタンパク質として、例えば、式5:[REP4]qで表されるドメイン配列を含むタンパク質(式5中、qは4~300の整数を示す。REP4はSer一J一J一Tyr一Gly一U-Proから構成されるアミノ酸配列を示す。Jは任意のアミノ酸残基を示し、特にAsp、Ser及びThrからなる群から選ばれるアミノ酸残基であってもよい。Uは任意のアミノ酸残基を示し、特にPro、Ala、Thr及びSerからなる群から選ばれるアミノ酸残基であってもよい。複数存在するREP4は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。レシリン由来のタンパク質の具体例としては、配列番号28で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号28で示されるアミノ酸配列は、レシリン(NCBIのGenBankのアクセッション番号NP 611157、Gl:24654243)のアミノ酸配列において、87残基目のThrをSerに置換し、かつ95残基目のAsnをAspに置換した配列の19残基目から321残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
エラスチン由来のタンパク質として、例えば、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395(ヒト)、I47076(ヒツジ)、NP786966(ウシ)等のアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。エラスチン由来のタンパク質の具体例としては、配列番号29で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号5で示されるアミノ酸配列は、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395のアミノ酸配列の121残基目から390残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
以上説明した構造タンパク質及び当該構造タンパク質に由来するタンパク質は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
タンパク質溶液及びタンパク質成形体に含まれるタンパク質は、例えば、当該タンパク質をコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主により、当該核酸を発現させることにより生産することができる。
タンパク質をコードする核酸の製造方法は、特に制限されない。例えば、天然の構造タンパク質をコードする遺伝子を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などで増幅しクローニングする方法、又は、化学的に合成する方法によって、当該核酸を製造することができる。核酸の化学的な合成方法も特に制限されず、例えば、NCBIのウェブデータベースなどより入手した構造タンパク質のアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)などで自動合成したオリゴヌクレオチドをPCRなどで連結する方法によって遺伝子を化学的に合成することができる。この際に、タンパク質の精製及び/又は確認を容易にするため、上記のアミノ酸配列のN末端に開始コドン及びHis10タグからなるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸を合成してもよい。
調節配列は、宿主における組換えタンパク質の発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとして、宿主細胞中で機能し、目的とするタンパク質を発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いてもよい。誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
発現ベクターの種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターは、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主の染色体中への組込みが可能で、目的とするタンパク質をコードする核酸を転写できる位置にプロモーターを含有していてもよい。
宿主として、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも用いることができる。
原核生物の宿主の例として、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属又はシュードモナス属に属する細菌を挙げることができる。エシェリヒア属に属する微生物として、例えば、エシェリヒア・コリを挙げることができる。ブレビバチルス属に属する微生物として、例えば、ブレビバチルス・アグリを挙げることができる。セラチア属に属する微生物として、例えば、セラチア・リクエファシエンスを挙げることができる。バチルス属に属する微生物として、例えば、バチルス・サチラスを挙げることができる。ミクロバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラムを挙げることができる。ブレビバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ブレビバクテリウム・ディバリカタムを挙げることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物として、例えば、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスを挙げることができる。シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物として、例えば、シュードモナス・プチダを挙げることができる。
原核生物を宿主とする場合、目的タンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、pBTrp2(ベーリンガーマンハイム社製)、pGEX(Pharmacia社製)、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold、pUB110、pNCO2(特開2002-238569号公報)を挙げることができる。
真核生物の宿主としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属等に属する酵母を挙げることができる。糸状真菌としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ(Trichoderma)属等に属する糸状真菌を挙げることができる。
真核生物を宿主とする場合、目的タンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)等を挙げることができる。宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110(1972)〕、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、コンピテント法を挙げることができる。
発現ベクターで形質転換された宿主による核酸の発現方法としては、直接発現のほか、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
タンパク質は、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主を培養培地中で培養し、培養培地中に当該タンパク質を生成蓄積させ、該培養培地から採取することにより製造することができる。宿主を培養培地中で培養する方法は、宿主の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
宿主が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、培養培地として、宿主が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、宿主の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、形質転換微生物が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15~40℃である。培養時間は、通常16時間~7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0~9.0に保持されてもよい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
培養中、必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
発現させたタンパク質の単離、精製は通常用いられている方法で行うことができる。例えば、当該タンパク質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、宿主細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により宿主細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、タンパク質の単離精製に通常用いられている方法、すなわち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)-セファロース、DIAION HPA-75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の方法を単独又は組み合わせて使用し、精製標品を得ることができる。
タンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に宿主細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分としてタンパク質の不溶体を回収する。回収したタンパク質の不溶体はタンパク質変性剤で可溶化することができる。該操作の後、上記と同様の単離精製法によりタンパク質の精製標品を得ることができる。当該タンパク質が細胞外に分泌された場合には、培養上清から当該タンパク質を回収することができる。すなわち、培養物を遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、その培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
<反応性化合物>
一実施形態に係る反応性化合物は、反応性化合物とタンパク質とを結合させ得る第1の官能基、及び、反応性化合物同士を結合させ得る第2の官能基を有する化合物であってもよい。この反応性化合物は、第1の官能基及び第2の官能基の反応によって、タンパク質の分子鎖を架橋する架橋剤として機能し得る。
一実施形態に係る反応性化合物は、反応性化合物とタンパク質とを結合させ得る第1の官能基、及び、反応性化合物同士を結合させ得る第2の官能基を有する化合物であってもよい。この反応性化合物は、第1の官能基及び第2の官能基の反応によって、タンパク質の分子鎖を架橋する架橋剤として機能し得る。
反応性化合物が有する第1の官能基は、タンパク質が有する、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基等の官能基と反応して結合を生じ得る官能基であればよい。第1の官能基は、例えば、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、チオール基、アルデヒド基、エステル基、エポキシ基、アジリジン基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、カルボン酸無水物基、クロロホルミル基、N-ヒドロキシフタルイミド基、N-ヒドロキシコハク酸イミド基、マレイミド基、及び塩化シアヌル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であってもよい。反応性化合物が有する第1の官能基の数は、1個であっても、2個以上であってもよい。
反応性化合物が有する第2の官能基は、第2の官能基同士の反応によって結合を生じ得る官能基であればよく、通常、第1の官能基とは異なる。第2の官能基は、ビニル基(例えばアクリロイル基、メタクリロイル基)、及びアルキニル基(例えばエチニル基)等のラジカル重合性不飽和基であってもよい。反応性化合物が有する第1の官能基の数は、1個であっても、2個以上であってもよい。
反応性化合物の具体例としては、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(BEI)、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、及び2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート(AOI)が挙げられる。BEIは、第1の官能基としての1個のイソシアネート基と、第2の官能基としての2個のアクリロイル基とを有する。MOI及びAOIは、第1の官能基としての1個のイソシアネート基と、第2の官能基としての1個の(メタ)アクリロイル基とを有する。
第1段階として、タンパク質及び反応性化合物を含有するタンパク質溶液中で、少なくとも一部の反応性化合物が、第1の官能基とタンパク質中の官能基との反応により、タンパク質と結合してもよい。例えば、第1の官能基としてのイソシアネート基とタンパク質中のヒドロキシ基との反応によりウレタン結合が生成し、それによって反応性化合物がタンパク質と結合してもよい。その後、第2段階として、タンパク質溶液を成形用原液として用いた成形により得られた成形体を後処理(架橋処理)に供したときに、タンパク質に結合した反応性化合物のうち少なくとも一部が、第2の官能基同士の反応によって互いに結合すると考えられる。例えば、第2の官能基としてのラジカル重合性不飽和基の重合反応によって、反応性化合物同士が結合し得る。その結果、タンパク質の分子鎖が反応性化合物によって架橋すると考えられる。ただし、成形に供される前のタンパク質溶液中等、後処理の工程の前の段階で第2の官能基の一部が反応していることもあり得る。また、後処理の工程の段階で、第2の官能基同士が反応するとともに、第1の官能基がタンパク質と反応することもあり得る。
このように、2種以上の官能基を有する反応性化合物を用いて、タンパク質の架橋を段階的に進める方法によれば、反応性化合物が成形体内部に深く侵入できるため、例えば、成形後に成形体の表面に架橋剤を付与してタンパク質を架橋する方法と比較して、タンパク質同士の架橋が、成形体内部までより確実且つ効率的に進行すると考えられる。この段階的な架橋により、成形体内部に特異的な架橋構造が形成されると考えられるが、その構造を定量的に特定することは、多くの試行錯誤を重ねることが必要であり、実際的ではない。しかし、段階的な架橋を経て形成される架橋構造が、成形直後のタンパク質成形体の水分との接触による収縮だけでなく、その後の乾燥にともなう収縮も顕著に抑制される一因であると推察される。
<タンパク質溶液>
一実施形態に係るタンパク質溶液は、タンパク質及び反応性化合物とこれらが溶解している溶媒とを含有する。
一実施形態に係るタンパク質溶液は、タンパク質及び反応性化合物とこれらが溶解している溶媒とを含有する。
タンパク質溶液におけるタンパク質の濃度は、特に限定されず、例えば、タンパク質溶液の質量を基準として、10~30質量%であってもよい。
タンパク質溶液に含まれる反応性化合物の量は、特に限定されず、反応性化合物の種類等に応じて適宜に決定される。例えば、反応性化合物の量は、タンパク質1当量に対して100当量以上、200当量以上、又は300当量以上であってもよい。これによって、より優れた防縮効果が得られる。反応性化合物の量の上限は特に制限されないが、通常、300当量以下程度で十分である。ここで、反応性化合物の当量は、タンパク質1当量(1モル)に対する反応性化合物の量(モル)の比率を意味する。
タンパク質溶液を構成する溶媒の種類は、特に限定されず、タンパク質の種類等によって適宜に決定される。溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサフルオロイソプロノール(HFIP)、ギ酸又はこれらの組み合わせであってもよい。これら溶媒は、例えばクモ糸フィブロインを溶解するために適している。
タンパク質溶液は、無機塩を更に含有してもよい。無機塩は、タンパク質の溶解促進剤として機能し得る。無機塩としては、例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩、及びチオシアン酸塩が挙げられる。無機塩の具体例としては、リン酸アルミニウム、炭酸リチウム、炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、酢酸第二鉄、酢酸アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化第一鉄、水酸化マンガン、水酸化クロム、水酸化第二鉄、水酸化アルミニウム、塩化ニッケル、塩化コバルト、塩化亜鉛、塩化第一鉄、塩化マンガン、塩化クロム、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硝酸リチウム、硝酸ストロンチウム、硝酸ニッケル、硝酸カルシウム、硝酸コバルト、硝酸亜鉛、硝酸マグネシウム、硝酸第一鉄、硝酸マンガン、硝酸クロム、硝酸第二鉄、硝酸アルミニウム、臭化リチウム、臭化バリウム、臭化ストロンチウム、臭化ニッケル、臭化カルシウム、臭化コバルト、臭化亜鉛、臭化マグネシウム、臭化第一鉄、臭化マンガン、臭化クロム、臭化第二鉄、臭化アルミニウム、塩素酸バリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸ニッケル、塩素酸カルシウム、塩素酸コバルト、塩素酸亜鉛、塩素酸マグネシウム、塩素酸第一鉄、塩素酸マンガン、塩素酸クロム、塩素酸第二鉄、塩素酸アルミニウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化銅、ヨウ化リチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化ニッケル、ヨウ化カルシウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化亜鉛、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化第一鉄、ヨウ化マンガン、ヨウ化クロム、ヨウ化第二鉄、ヨウ化アルミニウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸鉛、過塩素酸銅、過塩素酸リチウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸ニッケル、過塩素酸カルシウム、過塩素酸コバルト、過塩素酸亜鉛、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸第一鉄、過塩素酸マンガン、過塩素酸クロム、過塩素酸第二鉄、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸鉛、チオシアン酸銅、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸ストロンチウム、チオシアン酸ニッケル、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸コバルト、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸第一鉄、チオシアン酸マンガン、チオシアン酸クロム、チオシアン酸第二鉄、チオシアン酸アルミニウム、シアン酸アンモニウム、シアン酸セシウム、シアン酸ルビジウム、シアン酸カリウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸鉛、シアン酸銅、シアン酸リチウム、シアン酸バリウム、シアン酸ストロンチウム、シアン酸ニッケル、シアン酸カルシウム、シアン酸コバルト、シアン酸亜鉛、シアン酸マグネシウム、シアン酸第一鉄、シアン酸マンガン、シアン酸クロム、シアン酸第二鉄、及びシアン酸アルミニウムが挙げられる。これらのうちの少なくとも1種類の無機塩を溶媒に添加してもよい。
タンパク質溶液に含まれる無機塩の量は、特に限定されず、無機塩の種類、タンパク質の量等に応じて適宜に決定される。無機塩の量は、例えば、タンパク質の全量100質量部に対して、1.0質量部以上、5.0質量部以上、9.0質量部以上、15質量部以上、20質量部以上であってもよい。無機塩の量は、例えば、タンパク質の全量100質量部に対して、40質量部以下、35質量部以下、30質量部以下であってもよい。
タンパク質溶液は、タンパク質、反応性化合物、及び必要によりその他の成分を溶媒に溶解させることを含む方法により、作製される。タンパク質溶液中で、反応性化合物の第1の官能基とタンパク質との反応が進行するように、タンパク質溶液を、ある程度の時間、撹拌又は振とうしてもよい。その際、タンパク質溶液は必要により加熱してもよい。例えば、タンパク質溶液を50℃以上、90℃以上、又は120℃以上に加熱してもよい。加熱温度の上限は特に制限されないが、通常、130℃以下、又は85℃程度で十分である。
<タンパク質成形体>
一実施形態に係る方法によって製造されるタンパク質成形体は、タンパク質溶液を用いた成形によって得られるものであれば特に限定されないが、例えば繊維(タンパク質繊維)又はフィルム(タンパク質フィルム)であってもよい。タンパク質繊維は、例えば、タンパク質溶液を紡糸原液として用いた湿式紡糸、乾式紡糸、又は乾湿式紡糸によって得ることができる。タンパク質フィルムは、例えば、タンパク質溶液をキャスト液として用いたキャスト成形によって得ることができる。
一実施形態に係る方法によって製造されるタンパク質成形体は、タンパク質溶液を用いた成形によって得られるものであれば特に限定されないが、例えば繊維(タンパク質繊維)又はフィルム(タンパク質フィルム)であってもよい。タンパク質繊維は、例えば、タンパク質溶液を紡糸原液として用いた湿式紡糸、乾式紡糸、又は乾湿式紡糸によって得ることができる。タンパク質フィルムは、例えば、タンパク質溶液をキャスト液として用いたキャスト成形によって得ることができる。
成形によって得られたタンパク質成形体を、後処理の前に延伸してもよい。タンパク質繊維を製造する場合、紡糸によって形成されたタンパク質繊維を、巻き取ることなくそのまま連続的に延伸してもよい。延伸によって成形体内に歪みが生じ、これが収縮の原因となる場合があるが、延伸後の成形体を後処理に供することで、延伸によって生じた歪みに起因する収縮を効果的に低減することができる。これは、後処理によって生じ得るタンパク質の架橋構造が、歪みを含む状態でタンパク質分子を固定化するためであると考えられる。延伸倍率は、特に限定されないが、例えば3~10倍であってもよい。
成形によって得られたタンパク質成形体を、後処理の前に乾燥してもよい。この乾燥は、例えば、第2の官能基の反応が実質的に進行しない温度に加熱することによって行われる。具体的には、乾燥のための加熱温度は、60~90℃であってもよい。あるいは、より高温での加熱によって、乾燥及び後処理を同時並行的に行ってもよい。
成形によって得られたタンパク質成形体は、タンパク質に結合している2以上の反応性化合物を互いに結合させるための後処理に供される。この後処理によって第2の官能基の反応が進行し、その結果、成形体中のタンパク質分子が反応性化合物を介して架橋されると考えられる。後処理の手段は、第2の官能基の種類等によって適宜に決定される。例えば、後処理は、加熱処理、UV照射、放射線照射、架橋促進剤の添加、又はこれらの組み合わせであることができる。例えば、第2の官能基としてのラジカル重合性不飽和基は、後処理としての加熱処理、UV照射、又は放射線照射によって、特に効率的に反応することができる。
後処理としての加熱処理は、乾熱処理であってもよい。乾熱処理によれば、水分との接触による成形体の収縮が、より有利に回避され得る。加熱処理のための加熱温度及び加熱時間は、特に限定されないが、例えば、加熱温度が140℃を超える温度であってもよく、加熱時間が30秒以上であってもよい。これによって、最終的に得られる後処理後の成形体の防縮効果がより一層高められ得る。同様の観点から、後処理のための加熱温度は200℃以上、又は240℃以上であってもよく、後処理のための加熱時間は30秒以上、又は120秒以上であってもよい。加熱温度の上限は、特に制限されないが、例えば280℃以下であってもよい。加熱時間の上限は、特に制限されないが、例えば130秒以下であってもよい。
タンパク質成形体としてのタンパク質繊維を、後処理としての加熱処理を経て製造する方法の一例について、以下に説明する。
図3は、タンパク質繊維を製造するための紡糸装置の一例を示す概略図である。図3に示す紡糸装置10は、乾湿式紡糸用の紡糸装置の一例であり、押出し装置1と、凝固浴槽20を有する凝固装置2と、洗浄浴槽21を有する洗浄装置3と、加熱装置17を有する乾燥装置4とを上流側から順に有している。
押出し装置1は貯槽7を有しており、ここに紡糸原液6が貯留される。紡糸原液6として、上述の実施形態に係るタンパク質溶液が用いられる。凝固浴槽20に凝固液11(例えば、メタノール)が貯留される。紡糸原液6は、貯槽7の下端部に取り付けられたギヤポンプ8により、凝固液11との間にエアギャップ19を開けて設けられたノズル9から押し出される。押し出された紡糸原液6は、エアギャップ19を経て凝固液11内に供給される。凝固液11内で紡糸原液6から溶媒が除去されてタンパク質が凝固し、タンパク質繊維が形成される。形成されたタンパク質繊維は、糸ガイド18a、18b、18c及び18dを経て洗浄浴槽21に導かれ、洗浄浴槽21内の洗浄液12により洗浄される。洗浄されたタンパク質繊維は、洗浄浴槽21内に設置された第一ニップローラ13と第二ニップローラ14により送られ、糸ガイド18e、18f及び18gを経て加熱装置17へと導入される。このとき、例えば、第二ニップローラ14の回転速度を第一ニップローラ13の回転速度よりも速く設定すると、回転速度比に応じた倍率で延伸された、成形体としてのタンパク質繊維36が得られる。洗浄液12中で延伸されたタンパク質繊維36は、洗浄浴槽21を離脱してから、加熱装置17内の経路22を通過する際に乾燥され、その後、ワインダー23にて巻き取られる。このようにして、タンパク質繊維36が、紡糸装置10により、最終的にワインダー23に巻き取られた巻回物5として得られる。
凝固液は、紡糸原液を脱溶媒できる溶液であればよい。凝固液としては、例えば、メタノール、エタノール及び2-プロパノール等の炭素数1~5の低級アルコール、並びにアセトンを挙げることができる。凝固液は、水を含んでいてもよい。凝固液の温度は、0~30℃であってもよい。凝固液槽の長さは、脱溶媒が効率的に行える長さであればよく、例えば、200~500mmである。凝固によって形成されたたタンパク質繊維の凝固液中の滞留時間は、例えば、0.01~3分であってよく、0.05~0.15分であってもよい。タンパク質繊維を凝固液中で延伸(又は前延伸)してもよい。前延伸によって前延伸糸が形成される。
タンパク質繊維の延伸は、洗浄浴槽21内で洗浄液を加温しながら行う。洗浄液は、例えば、水、又は、水と有機溶剤との混合溶媒でっあてもよい。加温した洗浄液(又は溶媒)中で行う延伸は、湿熱延伸と当業者に称されることがある。湿熱延伸の温度(洗浄液の温度)は、例えば、50~90℃、又は75~85℃であってもよい。湿熱延伸では、未延伸糸(又は前延伸糸)を、例えば、1倍~10倍、又は2~8倍に延伸してもよい。
タンパク質繊維の最終的な延伸倍率の下限値は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、又は9倍のうちの何れかであってもよい。タンパク質繊維の最終的な延伸倍率の上限値は、40倍、30倍、20倍、15倍、14倍、13倍、12倍、11倍、又は10倍のうちの何れかであってもよい。
図4は、上述のようにして得られたタンパク質繊維を、後処理としての加熱処理に供するための加熱装置の一例を示す概略図である。図4に示す加熱装置62は、フィードローラ42及びワインダー44と、これらの間に設けられた乾熱板64とを有している。乾熱板64は、フィードローラ42からワインダー44に向かう方向に延在する乾熱面66を有する。
タンパク質繊維36がフィードローラ42から連続的に送り出され、送り出されたタンパク質繊維36が乾熱面66に沿って移動しながら加熱される。この加熱処理の条件は、タンパク質繊維36内で、反応性化合物の第2の官能基の反応が進行するように設定される。これにより、架橋されたタンパク質を含有する後処理後のタンパク質繊維38が形成される。図3の紡糸装置10と図4の加熱装置62とを組み合わせて、タンパク質溶液から後処理後のタンパク質繊維を連続的に製造することも可能である。この場合、紡糸後のタンパク質繊維をワインダーに巻き取らず、そのまま加熱処理に供してもよく、また、紡糸後のタンパク質繊維36に対して、乾燥を経ることなく、そのまま加熱による後処理を行ってもよい。
タンパク質成形体を製造する方法は、後処理の工程の後、タンパク質繊維を水に浸漬し、浸漬後のタンパク質繊維を乾燥する工程を更に有していてもよい。これにより、より高い寸法安定性を有する成形体が製造され得る。
1.クモ糸タンパク質(クモ糸フィブロイン:PRT799)の製造
(クモ糸タンパク質をコードする遺伝子の合成、及び発現ベクターの構築)
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号13で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(以下、「PRT799」ともいう。)を設計した。
(クモ糸タンパク質をコードする遺伝子の合成、及び発現ベクターの構築)
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号13で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(以下、「PRT799」ともいう。)を設計した。
配列番号13で示されるアミノ酸配列は、ネフィラ・クラビペス由来のフィブロインのアミノ酸配列に対して、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施したアミノ酸配列と、そのN末端に付加された配列番号5で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)とを有する。
設計したPRT799をコードする核酸を合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト及び終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。当該核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、タンパク質発現ベクターpET-22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。
得られたpET22b(+)発現ベクターによって、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。当該形質転換大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液を、アンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表2)にOD600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD600が5になるまで約15時間、フラスコ培養を行って、シード培養液を得た。
当該シード培養液を500mlの生産培地(表3)を添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して形質転換大腸菌を培養した。培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持した。
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して形質転換大腸菌を培養した。培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持しながら、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるように添加し、PRT799を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS-PAGEを行い、IPTG添加に依存したPRT799に相当するサイズのバンドの出現により、PRT799の発現を確認した。
(クモ糸フィブロインの精製)
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris-HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8M グアニジン塩酸塩、10mM リン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris-HCl、pH7.0)中に懸濁し、懸濁液を60℃で30分間、スターラーで撹拌して、沈殿物を溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質(PRT799)を遠心分離により回収した。回収した凝集タンパク質から凍結乾燥機で水分を除き、PRT799の凍結乾燥粉末を得た。
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris-HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8M グアニジン塩酸塩、10mM リン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris-HCl、pH7.0)中に懸濁し、懸濁液を60℃で30分間、スターラーで撹拌して、沈殿物を溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質(PRT799)を遠心分離により回収した。回収した凝集タンパク質から凍結乾燥機で水分を除き、PRT799の凍結乾燥粉末を得た。
2.タンパク質繊維の製造
実施例1
<タンパク質溶液の調製>
LiClを、溶媒としてのジメチルスルホキシド(DMSO)に濃度4.0質量%となるように溶解させた。得られた溶液に、クモ糸フィブロイン(PRT799)の乾燥粉末を、濃度24質量%となるように添加した。続いて、反応性化合物としての1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(BEI)を新たに加え、シェーカーで均一になるように撹拌した。BEIの量は、クモ糸フィブロイン(PRT799)の1当量(1モル)に対して300当量(300モル)とした。得られた混合物を、メカニカルスターラーを使用して5時間撹拌して、タンパク質を溶媒に溶解させるとともに、タンパク質をBEIと反応させた。その後、不溶物と泡を取り除き、タンパク質溶液を得た。タンパク質溶液の粘度は90℃において11000cP(センチポアズ)であった。
実施例1
<タンパク質溶液の調製>
LiClを、溶媒としてのジメチルスルホキシド(DMSO)に濃度4.0質量%となるように溶解させた。得られた溶液に、クモ糸フィブロイン(PRT799)の乾燥粉末を、濃度24質量%となるように添加した。続いて、反応性化合物としての1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(BEI)を新たに加え、シェーカーで均一になるように撹拌した。BEIの量は、クモ糸フィブロイン(PRT799)の1当量(1モル)に対して300当量(300モル)とした。得られた混合物を、メカニカルスターラーを使用して5時間撹拌して、タンパク質を溶媒に溶解させるとともに、タンパク質をBEIと反応させた。その後、不溶物と泡を取り除き、タンパク質溶液を得た。タンパク質溶液の粘度は90℃において11000cP(センチポアズ)であった。
<紡糸>
得られたタンパク質溶液を紡糸原液とし、図3に示される紡糸装置10を用いた乾湿式紡糸によって、紡糸及び延伸されたタンパク質繊維を形成させた。形成されたタンパク質繊維を乾燥してから巻き取った。乾湿式紡糸の条件は以下のとおりである。
押出しノズル直径:0.2mm
凝固液(メタノール)の温度:5℃
水洗浄浴延伸倍率:5倍
乾燥温度:60℃
得られたタンパク質溶液を紡糸原液とし、図3に示される紡糸装置10を用いた乾湿式紡糸によって、紡糸及び延伸されたタンパク質繊維を形成させた。形成されたタンパク質繊維を乾燥してから巻き取った。乾湿式紡糸の条件は以下のとおりである。
押出しノズル直径:0.2mm
凝固液(メタノール)の温度:5℃
水洗浄浴延伸倍率:5倍
乾燥温度:60℃
(乾熱処理)
得られたタンパク質繊維を、図4に示される加熱装置62を用いて後処理としての乾熱処理に供し、乾熱処理後のタンパク質繊維を巻き取った。乾熱処理の条件は以下のとおりである。
送り出し速度:25cm/min
巻取り速度:25cm/min
乾熱板長さ:50cm
乾熱板温度:240℃
得られたタンパク質繊維を、図4に示される加熱装置62を用いて後処理としての乾熱処理に供し、乾熱処理後のタンパク質繊維を巻き取った。乾熱処理の条件は以下のとおりである。
送り出し速度:25cm/min
巻取り速度:25cm/min
乾熱板長さ:50cm
乾熱板温度:240℃
比較例1
紡糸及び延伸後のタンパク質繊維を、乾熱処理に供することなく、比較例1のタンパク質繊維として評価した。
紡糸及び延伸後のタンパク質繊維を、乾熱処理に供することなく、比較例1のタンパク質繊維として評価した。
比較例2
タンパク質溶液にBEIを加えなかったこと以外は実施例1と同様にして、タンパク質溶液を作製した。得られたタンパク質溶液を紡糸原液として、実施例1と同様の紡糸及び延伸によってタンパク質繊維を得た。これを乾熱処理に供することなく、比較例2のタンパク質繊維として評価した。
タンパク質溶液にBEIを加えなかったこと以外は実施例1と同様にして、タンパク質溶液を作製した。得られたタンパク質溶液を紡糸原液として、実施例1と同様の紡糸及び延伸によってタンパク質繊維を得た。これを乾熱処理に供することなく、比較例2のタンパク質繊維として評価した。
3.収縮性評価
実施例及び比較例の各タンパク質繊維について、製造直後の水分との接触による収縮(「一次収縮」ということがある)と、その後の乾燥にともなう収縮(「二次収縮」ということがある)の程度を評価した。
実施例及び比較例の各タンパク質繊維について、製造直後の水分との接触による収縮(「一次収縮」ということがある)と、その後の乾燥にともなう収縮(「二次収縮」ということがある)の程度を評価した。
<一次収縮>
実施例及び比較例のタンパク質繊維の巻回物から、それぞれ、長さ30cmの複数本の試験用のタンパク質繊維を切り出した。それら複数本のタンパク質繊維を束ねて、繊度150デニールのタンパク質繊維束を得た。各タンパク質繊維束に0.8gの鉛錘を取り付け、その状態で各タンパク質繊維束を室温の水に15時間以上、浸漬した。その後、水中で各タンパク質繊維束の長さを測定した。水中でのタンパク質繊維の長さ測定は、タンパク質繊維の湯中での縮れを無くすために、タンパク質繊維に0.8gの鉛錘を取り付けたまま実施した。次いで、各タンパク質繊維束の水への浸漬時の収縮率(%、一次収縮率)を、下記式Iに従って算出した。式I中、L0は浸漬前のタンパク質繊維束の初期長さ(ここでは30cm)を示し、Lw1は浸漬後のタンパク質繊維束の長さを示す。一次収縮率は、製造後、最初の水分との接触にともなうタンパク質繊維の長さの変化に相当する。
一次収縮率={(L0-Lw1)/Lw1}×100 ・・・(式I)
実施例及び比較例のタンパク質繊維の巻回物から、それぞれ、長さ30cmの複数本の試験用のタンパク質繊維を切り出した。それら複数本のタンパク質繊維を束ねて、繊度150デニールのタンパク質繊維束を得た。各タンパク質繊維束に0.8gの鉛錘を取り付け、その状態で各タンパク質繊維束を室温の水に15時間以上、浸漬した。その後、水中で各タンパク質繊維束の長さを測定した。水中でのタンパク質繊維の長さ測定は、タンパク質繊維の湯中での縮れを無くすために、タンパク質繊維に0.8gの鉛錘を取り付けたまま実施した。次いで、各タンパク質繊維束の水への浸漬時の収縮率(%、一次収縮率)を、下記式Iに従って算出した。式I中、L0は浸漬前のタンパク質繊維束の初期長さ(ここでは30cm)を示し、Lw1は浸漬後のタンパク質繊維束の長さを示す。一次収縮率は、製造後、最初の水分との接触にともなうタンパク質繊維の長さの変化に相当する。
一次収縮率={(L0-Lw1)/Lw1}×100 ・・・(式I)
<二次収縮>
一次収縮の評価のための1回目の浸漬の後、タンパク質繊維束を水中から取り出した。取り出したタンパク質繊維束を、0.8gの鉛錘を取り付けたまま、室温で5時間以上の加熱により乾燥させた(1回目の乾燥)。乾燥後、各タンパク質繊維束の長さを測定した。その後、各タンパク質繊維束を再び、室温の水中に15時間以上、浸漬し、水中で各タンパク質繊維束の長さを測定した。これらの浸漬及び乾燥の操作を、浸漬3回、乾燥3回となるまで繰り返した。そして、タンパク質繊維束の、水への浸漬後の乾燥にともなう二次収縮の収縮率(%、二次収縮率)を、下記式II、III及びIVに従って算出した。これら式中、nは浸漬又は乾燥の回数を示し、Lwnはn回目の浸漬後のタンパク質繊維束の長さを示し、Ldnはn回目の乾燥後のタンパク質繊維束の長さを示す。ここではnは3である。二次収縮率は、製造後、水分との接触により収縮した後、乾燥した後のタンパク質繊維の可逆的な長さの変化に相当する。
Lwet=(Lw1+Lw2+・・・+Lwn)/n ・・・(式II)
Ldry=(Ld1+Ld2+・・・+Ldn)/n ・・・(式III)
二次収縮率={(Lwet-Ldry)/Lwet}×100 ・・・(式IV)
一次収縮の評価のための1回目の浸漬の後、タンパク質繊維束を水中から取り出した。取り出したタンパク質繊維束を、0.8gの鉛錘を取り付けたまま、室温で5時間以上の加熱により乾燥させた(1回目の乾燥)。乾燥後、各タンパク質繊維束の長さを測定した。その後、各タンパク質繊維束を再び、室温の水中に15時間以上、浸漬し、水中で各タンパク質繊維束の長さを測定した。これらの浸漬及び乾燥の操作を、浸漬3回、乾燥3回となるまで繰り返した。そして、タンパク質繊維束の、水への浸漬後の乾燥にともなう二次収縮の収縮率(%、二次収縮率)を、下記式II、III及びIVに従って算出した。これら式中、nは浸漬又は乾燥の回数を示し、Lwnはn回目の浸漬後のタンパク質繊維束の長さを示し、Ldnはn回目の乾燥後のタンパク質繊維束の長さを示す。ここではnは3である。二次収縮率は、製造後、水分との接触により収縮した後、乾燥した後のタンパク質繊維の可逆的な長さの変化に相当する。
Lwet=(Lw1+Lw2+・・・+Lwn)/n ・・・(式II)
Ldry=(Ld1+Ld2+・・・+Ldn)/n ・・・(式III)
二次収縮率={(Lwet-Ldry)/Lwet}×100 ・・・(式IV)
表4に示されるように、実施例1のタンパク質繊維は、水への浸漬時の一次収縮率が8.1%、浸漬後の乾燥にともなう二次収縮率が7%で、両者とも十分に低かった。実施例1のタンパク質繊維の浸漬後の外観を目視により確認したところ、縮れは認められなかった。これに対して、比較例1、2のタンパク質繊維は、一次収縮率及び二次収縮率ともに大きい値を示した。
これらの実験結果からも、本発明に係る方法によって製造されたタンパク質繊維は、製造後の最初の水分との接触にともなう収縮、及び、その後の乾燥にともなう収縮が極めて効果的に抑制され得ることが確認された。
熱処理による繊維の溶解性変化
LiClを4.0質量%の濃度で含む2mLのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に、熱処理後のタンパク質繊維をごく少量加えた。DMSO溶液を90℃で24時間加熱した後、内容物の状態を確認したところ、本来、クモ糸フィブロイン(PRT799)はDMSOに可溶であるが、タンパク質繊維が溶解せず繊維形状を保ったまま残っていた。これは、熱処理によって第二の官能基同士が反応し、タンパク質の架橋が進行して、その結果タンパク質繊維の溶解性が低下したためであると考えられる。
LiClを4.0質量%の濃度で含む2mLのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に、熱処理後のタンパク質繊維をごく少量加えた。DMSO溶液を90℃で24時間加熱した後、内容物の状態を確認したところ、本来、クモ糸フィブロイン(PRT799)はDMSOに可溶であるが、タンパク質繊維が溶解せず繊維形状を保ったまま残っていた。これは、熱処理によって第二の官能基同士が反応し、タンパク質の架橋が進行して、その結果タンパク質繊維の溶解性が低下したためであると考えられる。
4.クモ糸フィブロインとBEIの反応確認
4-1.クモ糸タンパク質(クモ糸フィブロイン:PRT410)の製造
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号9で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(以下、「PRT410」ともいう。)を設計した。PRT799と同様の方法で、PRT410の凍結乾燥粉末を得た。
4-1.クモ糸タンパク質(クモ糸フィブロイン:PRT410)の製造
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号9で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(以下、「PRT410」ともいう。)を設計した。PRT799と同様の方法で、PRT410の凍結乾燥粉末を得た。
4-2.クモ糸タンパク質のBEI溶液による処理
PRT410の凍結乾燥粉末を、5.0質量%のLiClを含むDMSOに濃度24質量%となるよう添加した。そこに反応性化合物としてのBEIとを加えた。BEIの量は、PRT410の1当量(1モル)に対して100当量(100モル)とした。得られた混合物を、マグネティックスターラーを使用して5時間撹拌し、LiCl及びBEIをDMSOに溶解させた。その後、エタノールを加え白色沈殿を析出させた。この析出物を粉砕しながら水中で3回洗浄した後、凍結乾燥させた。得られた白色凍結乾燥粉末をSDS-PAGEによって分析した。その結果、PRT410に相当するバンドのやや上部に新たなバンドが出現したことが確認された。このバンドは、PRT410とBEIの反応に由来する成分であると考えられる。
PRT410の凍結乾燥粉末を、5.0質量%のLiClを含むDMSOに濃度24質量%となるよう添加した。そこに反応性化合物としてのBEIとを加えた。BEIの量は、PRT410の1当量(1モル)に対して100当量(100モル)とした。得られた混合物を、マグネティックスターラーを使用して5時間撹拌し、LiCl及びBEIをDMSOに溶解させた。その後、エタノールを加え白色沈殿を析出させた。この析出物を粉砕しながら水中で3回洗浄した後、凍結乾燥させた。得られた白色凍結乾燥粉末をSDS-PAGEによって分析した。その結果、PRT410に相当するバンドのやや上部に新たなバンドが出現したことが確認された。このバンドは、PRT410とBEIの反応に由来する成分であると考えられる。
4-3.NMRによる分析
上記の方法でBEI溶液によって処理されたクモ糸フィブロインの凍結乾燥粉末を重DMSOに溶解させ、NMR測定用試料を得た。得られた試料の1H NMRを、核磁気共鳴装置(400MHz、JEOL社製)で測定した。図5は、BEI溶液による処理後のクモ糸フィブロインの1H NMRスペクトルである。図5の1H NMRスペクトルと、未処理のPRT410の凍結乾燥粉末又はBEIの重DMSO溶液を用いて得られた1H NMRスペクトルとを比較した。その結果、BEI溶液による処理後、クモ糸フィブロイン(PRT410)に由来するブロードなシグナルの他に、5.89~6.42ppm付近にBEIに由来する特徴的なシグナルが出現したことが確認された。このことから、測定用サンプルがクモ糸フィブロインとBEIの両方を含んでることが確認された。
上記の方法でBEI溶液によって処理されたクモ糸フィブロインの凍結乾燥粉末を重DMSOに溶解させ、NMR測定用試料を得た。得られた試料の1H NMRを、核磁気共鳴装置(400MHz、JEOL社製)で測定した。図5は、BEI溶液による処理後のクモ糸フィブロインの1H NMRスペクトルである。図5の1H NMRスペクトルと、未処理のPRT410の凍結乾燥粉末又はBEIの重DMSO溶液を用いて得られた1H NMRスペクトルとを比較した。その結果、BEI溶液による処理後、クモ糸フィブロイン(PRT410)に由来するブロードなシグナルの他に、5.89~6.42ppm付近にBEIに由来する特徴的なシグナルが出現したことが確認された。このことから、測定用サンプルがクモ糸フィブロインとBEIの両方を含んでることが確認された。
4-4.DOSY
「4-3.NMRによる分析」で準備した試料を、DOSY法による1H NMRによって分析した。図6は、BEI溶液によって処理されたクモ糸フィブロインのDOSY法による1H NMRスペクトルである。図6において、(a)が磁場勾配の印加無し、(b)磁場勾配の印加有りのスペクトルである。図7は、図6の領域Bを示す拡大図である。図中の領域Aに観測される水(3.35ppm)及びDMSO(2.49ppm)のシグナルが消失するまで磁場勾配を印加した。この状態で、領域BにおけるBEIのシグナルの減衰挙動は、PRT410のシグナルと同程度であった。仮にBEIがPRT410と反応せず低分子量の状態で存在していたとすると、そのシグナルは低分子量成分である水及びDMSOに近い減衰挙動を示し、消失するはずである。したがって、PRT410のシグナルと同程度に減衰したBEIのシグナルの減衰挙動から、BEIが高分子量のPRT410と反応して結合していることが強く示唆される。
「4-3.NMRによる分析」で準備した試料を、DOSY法による1H NMRによって分析した。図6は、BEI溶液によって処理されたクモ糸フィブロインのDOSY法による1H NMRスペクトルである。図6において、(a)が磁場勾配の印加無し、(b)磁場勾配の印加有りのスペクトルである。図7は、図6の領域Bを示す拡大図である。図中の領域Aに観測される水(3.35ppm)及びDMSO(2.49ppm)のシグナルが消失するまで磁場勾配を印加した。この状態で、領域BにおけるBEIのシグナルの減衰挙動は、PRT410のシグナルと同程度であった。仮にBEIがPRT410と反応せず低分子量の状態で存在していたとすると、そのシグナルは低分子量成分である水及びDMSOに近い減衰挙動を示し、消失するはずである。したがって、PRT410のシグナルと同程度に減衰したBEIのシグナルの減衰挙動から、BEIが高分子量のPRT410と反応して結合していることが強く示唆される。
1…押出し装置、2…凝固装置、3…洗浄装置、4…乾燥装置、6…紡糸原液、10…紡糸装置、12…洗浄液、13…第一ニップローラ、14…第二ニップローラ、19…エアギャップ、20…凝固浴槽、64…乾熱板、36…タンパク質繊維、42…フィードローラ、44…ワインダー、62…加熱装置。
Claims (20)
- タンパク質及び反応性化合物とこれらが溶解している溶媒とを含有するタンパク質溶液であって、前記反応性化合物が第1の官能基及び該第1の官能基とは異なる第2の官能基を有する化合物であり、前記第1の官能基が前記タンパク質との反応によって前記タンパク質と前記反応性化合物とを結合させ得る基で、前記第2の官能基が2以上の前記第2の官能基の反応によって2以上の前記反応性化合物を互いに結合させ得る基である、タンパク質溶液を準備する工程と、
前記タンパク質溶液を成形用原液として用いた成形によって、前記タンパク質を含有する成形体を得る工程と、
前記成形体を、2以上の前記第2の官能基の反応によって2以上の前記反応性化合物を互いに結合させるための後処理に供する工程と、
を備える、タンパク質成形体を製造する方法。 - 前記成形体を前記後処理に供する工程の前に、前記成形体を延伸する工程を更に備える、請求項1に記載の方法。
- 前記成形体がタンパク質繊維である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記タンパク質が構造タンパク質を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記構造タンパク質がクモ糸フィブロインである、請求項4に記載の方法。
- 前記第1の官能基がイソシアネート基で、前記第2の官能基がラジカル重合性不飽和基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記後処理が、前記成形体の加熱処理である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記加熱処理が、前記成形体を140℃を超える温度に加熱することである、請求項7に記載の方法。
- 前記成形体が前記加熱処理に供される時間が30秒以上である、請求項7又は8に記載の方法。
- 前記タンパク質溶液における前記反応性化合物の量が、前記タンパク質1当量に対して100当量以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
- 反応性化合物によって架橋されたタンパク質を含有するタンパク質成形体であって、
前記反応性化合物が第1の官能基及び該第1の官能基とは異なる第2の官能基を有する化合物であり、前記第1の官能基と前記タンパク質との反応により前記タンパク質と前記反応性化合物とが結合し、2以上の前記第2の官能基の反応により2以上の前記反応性化合物が互いに結合し、それによって前記タンパク質が架橋されている、タンパク質成形体。 - タンパク質繊維である、請求項11に記載のタンパク質成形体。
- 前記タンパク質が構造タンパク質を含む、請求項11又は12に記載のタンパク質成形体。
- 前記構造タンパク質がクモ糸フィブロインである、請求項13に記載のタンパク質成形体。
- 前記第1の官能基がイソシアネート基で、前記第2の官能基がラジカル重合性不飽和基である、請求項11~14のいずれか一項に記載のタンパク質成形体。
- タンパク質及び反応性化合物とこれらが溶解している溶媒とを含有するタンパク質溶液であって、
前記反応性化合物が第1の官能基及び該第1の官能基とは異なる第2の官能基を有する化合物であり、前記第1の官能基が前記タンパク質との反応によって前記タンパク質と前記反応性化合物とを結合させ得る基で、前記第2の官能基が2以上の前記第2の官能基の反応によって2以上の前記反応性化合物を互いに結合させ得る基である、タンパク質溶液。 - タンパク質繊維を紡糸するための紡糸原液である、請求項16に記載のタンパク質溶液。
- 前記タンパク質が構造タンパク質を含む、請求項16又は17に記載のタンパク質溶液。
- 前記構造タンパク質がクモ糸フィブロインである、請求項18に記載のタンパク質溶液。
- 前記第1の官能基がイソシアネート基で、前記第2の官能基がラジカル重合性不飽和である、請求項16~19のいずれか一項に記載のタンパク質溶液。
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