WO2018124005A1 - 被験物質の免疫原性を評価する方法 - Google Patents

被験物質の免疫原性を評価する方法 Download PDF

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Abstract

被験物質で刺激されたT細胞集団(好ましくはCD4+T細胞集団)におけるIL-2分泌初期のタイムポイント(好ましくは被験物質による刺激後24時間~72時間)でのIL-2分泌細胞の割合を当該被験物質の免疫原性の指標とすることで、被験物質の免疫原性を短期間で評価できることを見出した。

Description

被験物質の免疫原性を評価する方法
 本発明は、IL-2分泌細胞におけるIL-2の検出時期および検出方法を特徴とする、免疫原性の評価方法に関する。さらに、本発明は、被験物質の免疫原性を評価することを特徴とする、医薬品候補物質のスクリーニング方法に関する。
 今日、タンパク質などの複雑な構造をした医薬品は数多く上市されている。人体は、体内に異物が入ると免疫応答を引き起こすが、医薬品の分野でも、有効成分がタンパク質に由来するものは、免疫応答の中で異質なタンパク質とみなされ、その医薬品が抗原として作用し、抗薬物抗体(ADA)が産生される可能性はある。ADAが産生されると、医薬品による治療効果が低下するなどの好ましくない影響が出ることや、場合によっては生命の危機につながりかねない免疫応答が惹起され得る。
 このため、有効成分がタンパク質由来の医薬品開発においては、開発の早い段階から多数の被験物質の免疫原性を評価する必要があり、スクリーニングによって免疫原性のより低い被験物質を候補物質として選択する方法の研究が行われている。ひとつのアプローチとして、被験物質でヒト組織由来の細胞を刺激し、免疫応答によるT細胞の増殖や細胞増殖が活発なタイミングでのIL-2などのサイトカインの産生細胞数を評価指標とするアッセイ方法が知られている。(例えば、特許文献1、および非特許文献1参照)。
 T細胞の活性化については、IL-2産生およびIL-2受容体α(CD25)発現の役割が報告されている。(例えば、非特許文献2参照)。この報告において、免疫原性が非常に強いことが知られているマルトース結合タンパク質(MBP)由来ペプチドで刺激した樹状細胞とT細胞を共培養すると、IL-2産生及びT細胞の増殖が誘導されるが、共培養しない場合や抗IL-2受容体α(CD25)抗体を樹状細胞に添加して共培養した場合は当該ペプチドで刺激してもIL-2産生及び増殖はほとんど検出されていない。また、タンパク質製剤(例えば抗体製剤)のように免疫原性がそれほど高くない物質で刺激しても、それに反応するT細胞は極めて少ないことが報告されている(非特許文献3、4)。実際、T細胞が活発に増殖する前の段階ではタンパク質製剤の刺激によってサイトカインを産生するドナーは殆ど認められないこと、当該刺激に応答した特異的なT細胞増殖の程度や増殖に伴ってサイトカインを産生するドナーの頻度は刺激に用いたタンパク質製剤によって異なること、が報告されている(非特許文献1)。このように、被験物質の免疫原性を評価するための指標としては、被験物質に対する免疫応答によるT細胞の増殖や細胞増殖が活発なタイミングでのサイトカインの産生が注目されている。
 本明細書において引用される参考文献は以下のとおりである。これらの文献に記載される内容はすべて本明細書に参照として取り込まれる。なお、これらの文献のいずれかが、本明細書に対する先行技術であると認めるものではない。
特表2009-528044号公報
PLoS One. 2016 Aug 5;11(8):e0159328. Nat Med. 2011 May; 17(5): 604-609. FASEB J. 2011 Jun;25(6):2040-2048. Clin Immunol. 2013 Dec;149(3):534-555.
 しかしながら、従来の方法は、T細胞の免疫応答を利用して被験物質の免疫原性を評価する、または被験物質の中から医薬品候補物質をスクリーニングする際に、T細胞の増殖が活発になっている時点(被験物質の存在下での培養開始後5~7日間以降)で評価またはスクリーニングする方法であるため、T細胞の増殖をタンパク質レベルで検出できるようになるまでに一定以上の時間がかかる。そのため、従来の方法は医薬品に適する候補物質を選択するプロセスとしては効率性の面から十分ではない。本願発明は、被験物質の存在下での培養開始後短時間で免疫原性を評価することを課題とする。
 そこで、本発明者らは、免疫原性の評価、ひいては医薬品候補物質のスクリーニングに有用な早期マーカーを同定するために鋭意研究を行った。すなわち、本発明は、T細胞の免疫応答においてT細胞増殖が活発になる前(被験物質の存在下での培養開始後5日未満)の段階で被験物質の免疫原性を評価または医薬品候補物質をスクリーニングするのに適した指標を提供することを目的とする。また本発明は、T細胞の免疫応答において、被験物質の免疫原性の評価、または医薬品候補物質のスクリーニングを短時間で実施する方法を提供することを目的とする。さらに、被験物質の免疫原性評価や医薬品候補物質のスクリーニングに要する1サイクルの時間を短縮し、試行錯誤をより多く行えることにより、被験物質の中から効率的かつ低コストで候補物質を選択する方法を提供する。
 本発明者らは、上記課題を解決するために、免疫原性の評価にかかる時間を短縮するために有用な指標、その指標を検出可能な時期ならびに検出方法、および効率的な候補物質のスクリーニング方法について鋭意検討した結果、意外にもT細胞増殖が活発になる前の初期反応段階(被験物質の存在下での培養開始後5日間未満)で分泌されるIL-2が免疫原性評価指標として有用であること、その段階では極めて少数しか存在しないIL-2分泌細胞を検出する方法、および評価系全体を短時間で実施することにより効率的かつ低コストで候補物質をスクリーニングする方法を見出し、本発明を完成させた。
 すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。
[1]以下の工程を含む、被験物質の免疫原性を評価する方法:
 (a)血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団を被験物質とともに培養する工程、
 (b)工程(a)で培養された細胞集団におけるIL-2を分泌するT細胞を、そのIL-2分泌初期のタイムポイントで検出する工程、
 (c)工程(b)で検出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を算出する工程。
[2]血液に由来する前記細胞集団が、末梢血単核球細胞(PBMC)に由来する細胞集団である、[1]の方法。
[3]前記血液がヒト由来である、[1]または[2]の方法。
[4]前記IL-2分泌初期のタイムポイントが、前記T細胞の増殖が活発になる前である、[1]~[3]のいずれかの方法。
[5]前記IL-2分泌初期のタイムポイントが、前記培養開始後24時間~72時間の間である、[1]~[4]のいずれかの方法。
[6]前記被験物質がタンパク質、ペプチド、核酸、糖質、脂質、ワクチン、およびそれらのうち二つ以上のコンジュゲート、ならびにそれらのうち二つ以上の組み合わせを含む混合物からなる群より選択される、[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]前記被験物質がタンパク質である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[8]前記被験物質が抗体である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[9]前記IL-2分泌T細胞が占める割合の算出が、フローサイトメトリーで当該細胞数を測定することである、[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法。
 本発明は、以下の発明も提供する。
[10]工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルと同等またはそれより低い場合に前記被験物質の免疫原性が低いと決定する工程をさらに含む、[1]~[9]のいずれかの方法。
[11]前記対照レベルが、免疫原性が低いことがわかっている物質の存在下で培養した場合に工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合(低免疫原性対照レベル)である、[10]の方法。
[12]工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルと同等またはそれより高い場合に前記被験物質の免疫原性が高いと決定する工程をさらに含む、[1]~[9]のいずれかの方法。
[13]前記対照レベルが、免疫原性が高いことがわかっている物質の存在下で培養した場合に工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合(高免疫原性対照レベル)である、[12]の方法。
[14]前記対照レベルが、工程(a)の細胞集団を被験物質の非存在下で培養した場合に工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合(陰性対照レベル)である、[10]または[12]の方法。
[15]工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルより低い場合に前記被験物質を医薬品の候補物質として選択する工程をさらに含む、[1]~[9]のいずれかの方法。
[16]工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルより高い場合に、ドナー(血液由来の細胞集団を得た対象)において前記被験物質による免疫療法に対する応答性が高いと決定する工程をさらに含む、[1]~[9]のいずれかの方法。
[17]工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルより高い割合のIL-2分泌T細胞が検出されたドナーを陽性ドナーとし、同一試験中の総ドナー数における陽性ドナーの割合を免疫原性の評価指標とする工程をさらに含む、[1]~[9]のいずれかの方法。
[18]被験物質の免疫原性を評価するための、IL-2分泌T細胞の使用。
[19]被験物質の免疫原性の評価において使用するためのIL-2分泌T細胞。
[20]IL-2分泌T細胞の割合を指標とする、免疫原性を評価する方法。
[21][1]~[9]のいずれかの方法において免疫原性が低いと評価された被験物質を医薬品の候補物質として選択することを特徴とする、医薬品の候補物質をスクリーニングする方法。
[22]以下の工程を含む、被験物質の免疫原性を評価するための、被験物質と共に培養された細胞集団におけるIL-2分泌CD4+T細胞が占める割合を測定する方法:
 (a)血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団を被験物質とともに培養する工程、
 (b)工程(a)で培養された細胞集団におけるIL-2を分泌するT細胞を、そのIL-2分泌初期のタイムポイントで検出する工程、
 (c)工程(b)で検出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を算出する工程。
[23]以下の工程を含む、免疫原性が低減された物質(改変体)を選択するための方法、または改変体の免疫原性が低減されているか評価する方法:
 (a)血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団を改変体または非改変体とともに培養する工程、
 (b)工程(a)で培養された細胞集団におけるIL-2を分泌するT細胞を、そのIL-2分泌初期のタイムポイントで検出する工程、
 (c)工程(b)で検出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を算出する工程、
 (d)改変体とともに培養した場合に工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が、非改変体とともに培養した場合の前記割合よりも低い場合に、前記改変体の免疫原性が低減されていると判定する工程。
[24]以下の工程を含む、医薬品の候補物質をスクリーニングする方法:
 (a)血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団を被験物質とともに培養する工程、
 (b)工程(a)で培養された細胞集団におけるIL-2を分泌するT細胞を、そのIL-2分泌初期のタイムポイントで検出する工程、
 (c)工程(b)で検出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を算出する工程、
 (d)工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルより低い場合に医薬品の候補物質として選択する工程。
[25]以下の工程を含む、対象の被験物質による免疫療法に対する応答を予測する方法:
 (a)対象から得られた血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団を被験物質とともに培養する工程、
 (b)工程(a)で培養された細胞集団におけるIL-2を分泌するT細胞を、そのIL-2分泌初期のタイムポイントで検出する工程、
 (c)工程(b)で検出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を算出する工程、
 (d)工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルより高い場合に前記対象の前記被験物質による免疫療法に対する応答性が高いと決定する工程。
[26]IL-2検出試薬および免疫原性の高さがわかっている対照物質を含む、被験物質の免疫原性を評価するためのキット。
 本発明によれば、T細胞の免疫応答において、被験物質の免疫原性の評価にかかる時間、あるいは医薬品候補物質のスクリーニングにかかる時間を短縮する方法を提供することができる。
 さらに、本発明によれば、被験物質の免疫原性の評価や医薬品候補物質のスクリーニングに要する1サイクルの時間を短縮し、試行錯誤をより多く行えることにより、被験物質の中から効率的かつ低コストで候補物質を選択する方法を提供することができる。
KLH(Keyhole limpet hemocyanin)(100μg/mL/well)の存在下または非存在下で67時間培養したCD8-CD25lowPBMCにおけるIL-2分泌CD4+T細胞の割合をフローサイトメトリーにより分析した結果を示す図である。NA(No Ag:抗原無し)は被験物質の非存在下で培養した陰性対照の結果を示す。 各種被験物質(100μg/mL/well)の存在下で24~72時間培養したCD8-CD25lowPBMCにおけるIL-2分泌CD4+T細胞の割合の最大値を示す図である。データは、用いたPBMCが由来するドナーごとの結果を示している。NA(No Ag:抗原無し)は被験物質の非存在下で培養した陰性対照の結果を示す。 各種被験物質(100μg/mL/well)の存在下で67時間培養したCD8-CD25lowPBMCにおけるIL-2分泌CD4+T細胞の割合の最大値を示す図である。データは、用いたPBMCが由来するドナーごとの結果を示している。NA(No Ag:抗原無し)は被験物質の非存在下で培養した陰性対照の結果を示す。 各種被験物質(100μg/mL/well)の存在下で67時間培養したCD8-CD25lowPBMCにおけるIL-2分泌CD4+T細胞の割合の最大値を示す図である。データは、用いたPBMCが由来するドナーごとのIL-2分泌CD4+T細胞の割合の最大値を示している。NA(No Ag:抗原無し)は被験物質の非存在下で培養した陰性対照の結果を示す。 インフルエンザHAワクチン(A)、抗体単独もしくは抗原抗体複合体(B)、LPSもしくはFactor VIII(C)、またはHAペプチドもしくはIgGペプチド(D)の存在下で24~67時間培養したCD8-CD25lowPBMCにおけるIL-2分泌CD4+T細胞の割合の最大値を示す図である。データは、用いたPBMCが由来するドナーごとの結果を示している。NA(No Ag:抗原無し)は被験物質の非存在下で培養した陰性対照の結果を示す。
 本発明は、IL-2分泌T細胞の割合に基づく免疫原性の評価方法に関する。より具体的には、本発明は、被験物質と共に培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合、好ましくはIL-2分泌初期のタイムポイントにおけるIL-2分泌T細胞の割合、より好ましくはT細胞の増殖が活発な時より前(被験物質の存在下での培養開始後5日間未満、好ましくは培養開始後24~72時間、例えば、培養開始後24~67時間、24~62時間、24~48時間、24~42時間、42~72時間、42~67時間、42~62時間、42~48時間、48~72時間、48~67時間、48~62時間、62~72時間、62~67時間、67~72時間等)のIL-2分泌T細胞の割合、さらにより好ましくは被験物質の存在下での培養開始後約42時間~約72時間、特に好ましくは被験物質の存在下での培養開始後約48時間~約67時間、におけるIL-2分泌T細胞の割合を指標として被験物質の免疫原性を評価する方法に関する。
 本発明との関連において、「T細胞の増殖が活発な時」は、例えば、抗原特異的なT細胞が抗原非依存的に増殖できる時期、あるいはT細胞が機能発現に向けて分化した時期と表現することもできる。
 本発明との関連において、「被験物質」は、免疫原性の評価対象となる物質であれば特に限定されないが、例えば、タンパク質(例えば、抗体またはワクチン)、非タンパク質(例えば、ペプチド、核酸、糖質、脂質、またはワクチンを含む、タンパク質以外の高分子化合物または低分子化合物)、タンパク質と非タンパク質とのコンジュゲート(例えば、糖鎖修飾抗体)、非タンパク質と非タンパク質とのコンジュゲート(例えば、糖脂質またはペプチド核酸コンジュゲート)、ならびにそれらから二つ以上組み合わされる混合物を挙げることができる。二つ以上の組み合わせは、同一カテゴリーに属するものでもよく、異なるカテゴリーに属するものでもよく、限定されない。本発明における被験物質の例として、抗体、ペプチド、ワクチン、免疫複合体、アジュバント、血液成分、製剤に混入しうるエンドトキシン等の不純物を挙げることができる。本発明の特定の態様において、被験物質は抗体である。
 本発明との関連において、被験物質と共に培養する細胞集団は、血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞(細胞障害性T細胞)およびCD25+T細胞(CD25陽性の活性化T細胞および/または制御性T細胞)を実質的に含まない細胞集団であり、好ましくは例えば末梢血単核球細胞(PBMC)に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+細胞およびCD25+細胞を実質的に含まない細胞集団である。前記血液は好ましくは哺乳動物由来であり、特に好ましくはヒト由来である。したがって検出されるIL-2は好ましくは哺乳動物のIL-2であり、特に好ましくはヒトIL-2である。前記血液は、新鮮血液であってもよいし、保存血液、例えば凍結された血液であってもよい。好ましくは、入手の容易さの観点から保存血液であり、特に好ましくは凍結血液である。
 血液に由来する細胞集団からCD8+T細胞およびCD25+T細胞を除去する方法は当業者に公知であり、例えば、本明細書の実施例の項に記載されているように抗CD8抗体および抗CD25抗体を利用して実施することができる。一方、血液から予めCD8+T細胞およびCD25+T細胞が除去された細胞集団を本発明の方法に利用することもできる。あるいは、血液に由来する細胞集団であってCD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団に、CD4+CD25-T細胞を加えたものを利用することもできる。したがって、本発明の方法は、血液に由来する細胞集団からCD8+T細胞およびCD25+T細胞を除去する工程を含んでもよいし、血液に由来する、CD8+T細胞およびCD25+T細胞が除去された細胞集団を用意する工程を含んでもよいし、あるいはCD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団に、CD4+CD25-T細胞を加えたものを用意する工程を含んでもよい。
 本発明において、前記細胞集団の培養は、当業者に公知の方法によって実施することができ、例えば、本明細書の実施例の項に記載された方法によって実施することができるが、当該方法に限定されるものではない。好ましくは、細胞集団はOpTmizer CTS T-cell Expansion SFM (gibco)で1x106/mlに調製し、1ml/wellで平底の24well plateに播種し37℃、5%CO2インキュベーター内で1時間前培養する。その後被験物質を加え、評価に適切なタイムポイントまで培養する。適切なタイムポイントになったらIL-2 catch reagent (IL-2 secretion assay kit, Miltenyi Biotec) を10μl/wellで添加し、更に1時間培養する。
 本発明において、ドナーとは、血液由来の細胞集団を得た対象をいう。
 本発明において、免疫原性の評価指標とするIL-2分泌T細胞の割合は、被験物質と共に培養した全細胞におけるIL-2分泌T細胞の割合であり、例えばIL-2分泌CD4+T細胞を検出するタイミングでの培養系に含まれる全てのCD4+T細胞(分母)におけるIL-2分泌CD4+T細胞(分子)の割合である。
 本発明において、免疫原性の評価指標とするIL-2分泌T細胞の割合は、好ましくはIL-2分泌初期のタイムポイントにおけるIL-2分泌T細胞の割合であり、より好ましくはT細胞の増殖が活発になる前(被験物質の存在下での培養開始後5日間未満)のIL-2分泌T細胞の割合であり、特に好ましくは被験物質の存在下での培養開始後約24時間~約72時間におけるIL-2分泌T細胞の割合であり、最も好ましくは被験物質の存在下での培養開始後約48時間~約67時間におけるIL-2分泌CD4+T細胞の割合である。
 本発明において、抗体とは最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限りは、これらに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含む、種々の抗体構造を包含する。
 また、抗体断片とは、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
 本発明において、IL-2分泌T細胞の検出は、当業者に公知の方法によって実施することができ、例えば、本明細書の実施例の項に記載されているように、市販のIL-2検出試薬により標識されたIL-2陽性細胞をフローサイトメトリーを利用して検出することができる。
 本発明において、算出されたIL-2分泌T細胞の割合を適切な対照レベルと比較することによって被験物質の免疫原性を評価することができる。本発明との関連において、「対照レベル」とは、対照値、参照値、基準値と呼ぶこともでき、例えば、適切な参照物質(対照物質)の存在下で前記の細胞集団を培養して検出したIL-2分泌T細胞の割合の平均値、中央値、またはそれらの値の前後の所定の範囲(例えば、平均値+/-標準偏差)を対照レベルとすることができる。対照レベルは、被験物質についてアッセイする際に共に測定された値、または予め測定された値に基づいて設定することができる。予め測定された値に基づいて対照レベルを設定する場合、被験物質についてのアッセイと同じまたは同等の条件で予め測定された値に基づいて対照レベルを設定することが好ましい。
 本発明の一態様において、他の免疫原性評価方法により免疫原性が低いことがわかっている物質(例えば、臨床試験における抗薬物抗体の発現率が低い薬物、あるいはCD4+T細胞増殖誘導能が低い物質)の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合を免疫原性の評価における対照レベルとすることができ、当該対照レベルは「低免疫原性対照レベル」と称することができる。その場合、被験物質の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合が低免疫原性対照レベルと同等またはより低い場合に、当該被験物質の免疫原性は低いと評価することができ、また、前記割合が低免疫原性対照レベルと比較して高い場合に、当該被験物質の免疫原性は高いと評価することができる。
 本発明の別の態様において、他の免疫原性評価方法により免疫原性が高いことがわかっている物質(例えば、臨床試験における抗薬物抗体の発現率が高い薬物、あるいはCD4+T細胞増殖誘導能が高い物質)の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合を免疫原性の評価における対照レベルとすることができ、当該対照レベルは「高免疫原性対照レベル」と称することができる。その場合、被験物質の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合が高免疫原性対照レベルと同等またはより高い場合に、当該被験物質の免疫原性は高いと評価することができ、また、前記割合が高免疫原性対照レベルと比較して低い場合に、当該被験物質の免疫原性は高くないと評価することができる。
 本発明との関連において、免疫原性が低いことがわかっている物質および免疫原性が高いことがわかっている物質は、本発明の評価方法によって予め免疫原性が評価されている物質であってもよいし、公知の免疫原性指標である、臨床試験における抗薬物抗体の発現率(clinical ADA incidence)やCD4+T細胞増殖誘導能に基づいて免疫原性の高低がわかっている物質であってもよい。免疫原性が低いことがわかっている物質の例として(これに限定されないが)、タンパク質製剤のエンブレル(登録商標)が挙げられる。また、免疫原性が高いことがわかっている物質の例として(これに限定されないが)、KLHが挙げられる。これらの指標も本発明の指標(IL-2分泌T細胞の割合)と同様に相対的な指標であり、当業者であれば免疫原性の高低(強弱)の基準を目的に応じて適宜設定することができる。例えば、臨床試験における抗薬物抗体の発現率(出現頻度)が10%未満、好ましくは5%未満である場合に当該発現率が低い(免疫原性が低い)と評価することができる。また、例えば、当該発現率が約30%以上である場合に当該発現率が高い(免疫原性が高い)と評価することができる。
 本発明のさらに別の態様において、被験物質の非存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合を免疫原性の評価における対照レベルとすることもでき、当該対照レベルは「陰性対照レベル」と称することができる。本発明の特定の態様において、被験物質の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合が、陰性対照レベルと比較して同等またはそれより低い場合に被験物質の免疫原性は低いと評価することができ、陰性対照レベルと比較して高い場合に被験物質の免疫原性は低くないと評価することができる。
 当業者であれば、目的に応じて適切な対照レベルを設定し、それと比較することによって被験物質の免疫原性の有無や高低(強弱)を評価することができる。また、本発明の方法において算出されるIL-2分泌T細胞の割合を上記の複数の対照レベルと比較することによって被験物質の免疫原性を評価してもよい。目的によっては、被験物質同士の複数の測定値に基づいて相対的に免疫原性を評価してもよい。その場合も、被験物質の存在下での培養およびIL-2検出の条件と同等の条件で測定された対照レベルを用いることが好ましい。
 本発明において、被験物質の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞の割合が対照レベルから例えば150%、200%、250%、またはそれ以上高い場合に、当該被験物質の免疫原性が高いと評価することができる。また、被験物質の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞の割合が対照レベルから例えば100%、75%、50%、またはそれ以上低い場合に、当該被験物質の免疫原性が低いと評価することができる。これらの評価基準については、用いる対照レベルの種類によって、あるいは実施するスクリーニングの目的によって、適宜設定することができる。
 本発明者らは、被験物質の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合は、公知の免疫原性指標(臨床試験における抗薬物抗体の発現率)と相関することを明らかにした(表1)。したがって、被験物質の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合は、免疫原性の評価における「相対的な」評価指標として利用することができる。例えば、抗体医薬品候補の最適化プロセスにおいて、異なる複数種の改変抗体の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合を相互に比較し、当該割合が相対的に低い、すなわち免疫原性が相対的に低い改変抗体を抗体医薬品開発の候補として選択することができる。
 本発明のスクリーニング方法において、被験物質の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合が所定の対照レベル(閾値)より低い場合に、当該被験物質を免疫原性が低い医薬品の候補物質として選択することができる。前記対照レベルはスクリーニングの目的に応じて設定され得るが、IL-2分泌T細胞を検出するタイミング等の条件が同等の場合の値または範囲を対照レベルとすることが好ましい。医薬品の候補物質のスクリーニング方法においては、被験物質についてのIL-2分泌T細胞割合を、免疫原性が低いことがわかっている物質の存在下で培養した細胞集団についてのIL-2分泌T細胞の割合である低免疫原性対照レベルと比較することができる。抗体医薬品候補の最適化プロセスにおける免疫原性の低い改変抗体のスクリーニング方法においては、改変抗体の存在下で培養した細胞集団におけるIL-2分泌T細胞が占める割合が改変前の抗体における当該割合(対照レベル)より低い場合に当該物質を抗体医薬品開発の候補として選択することができる。また、多検体の測定結果の中央値、上位1/3の値、下位1/3の値などの目的に応じた適切な値を対照レベルとして設定し、多数の被験物質の中から候補物質の絞り込みを行うこともできる。
 前記対照レベルは、被験物質の存在下での培養およびIL-2検出の条件によって適宜設定することが好ましい。また、前記対照レベルより高い割合のIL-2分泌T細胞が検出された細胞集団が得られたドナーを陽性ドナーとし、試験された総ドナー数における陽性ドナー数の割合を免疫原性の評価指標とすることもできる。したがって、本発明の方法は、IL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルより高い割合のIL-2分泌T細胞が検出されたドナーを陽性ドナーとし、同一試験中の総ドナー数における陽性ドナーの割合を免疫原性の評価指標とする工程を含んでもよい。
 本発明の免疫原性評価方法は、具体的には以下の工程を含む:
 (a)血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団を被験物質とともに培養する工程、
 (b)工程(a)で培養された細胞集団におけるIL-2を分泌するT細胞を、そのIL-2分泌初期のタイムポイントで検出する工程、
 (c)工程(b)で検出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を算出する工程。
 本発明はまた、被験物質の免疫原性を評価するためのIL-2分泌T細胞の使用、および被験物質の免疫原性の評価において使用するためのIL-2分泌T細胞にも関する。これらの発明において、IL-2分泌T細胞は、好ましくはIL-2分泌初期のタイムポイントにおけるIL-2分泌T細胞であり、より好ましくはT細胞の増殖が活発になる前のIL-2分泌T細胞であり、さらに好ましくは被験物質の存在下での培養開始後24時間~72時間のIL-2分泌T細胞である。
 本発明において、「抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含む細胞集団」とは、実質的に抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含む細胞集団ということもでき、あるいは免疫応答が惹起される割合で抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含む細胞集団ということもできる。
 本発明において、「CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団」とは、当該細胞集団におけるCD8+T細胞およびCD25+T細胞の合計が全体に占める割合が10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは1%以下である細胞集団を意味する。
 一態様において、本発明の免疫原性評価方法は、工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を対照レベルと比較する工程であって、該割合が対照レベルと同等またはそれより低い場合に被験物質の免疫原性が低いことを示す、工程をさらに含む。別の態様において、本発明の免疫原性評価方法は、工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルと同等またはそれより低い場合に被験物質の免疫原性が低いと決定する工程をさらに含む。
 一態様において、本発明の免疫原性評価方法は、工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を対照レベルと比較する工程であって、該割合が対照レベルと同等またはそれより高い場合に被験物質の免疫原性が高いことを示す、工程をさらに含む。別の態様において、本発明の免疫原性評価方法は、工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルと同等またはそれより高い場合に被験物質の免疫原性が高いと決定する工程をさらに含む。また別の態様において、本発明の免疫原性評価方法は、工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が、工程(a)の培養工程を被験物質の非存在下で実施した場合の該割合(陰性対照レベル)より有意に高い場合に被験物質の免疫原性が高いと決定する工程をさらに含む。さらに別の態様において、本発明の免疫原性評価方法は、工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が、工程(a)の培養工程を免疫原性が高いことがわかっている物質の存在下で実施した場合の該割合(高免疫原性対照レベル)と同等以上である場合に被験物質の免疫原性が高いと決定する工程をさらに含む。他の態様において、本発明の免疫原性評価方法は、工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が、工程(a)の培養工程を免疫原性が低いことがわかっている物質の存在下で実施した場合の該割合(低免疫原性対照レベル)と同等以下である場合に被験物質の免疫原性が低いと決定する工程をさらに含む。
 本発明はまた、被験物質の免疫原性を評価するための、被験物質に対するヘルパーT細胞(Th細胞)応答を測定する方法に関する。より具体的には、本発明は、被験物質の免疫原性を評価するための、被験物質と共に培養された細胞集団におけるIL-2分泌CD4+T細胞が占める割合を測定する方法に関する。本発明の測定方法の一態様において、前記細胞集団は、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない血液由来の細胞集団である。本発明の測定方法の一態様において、前記割合は、前記細胞集団におけるIL-2分泌初期のタイムポイントでのIL-2分泌CD4+T細胞の割合である。前記タイムポイントは、好ましくは前記細胞集団におけるCD4+T細胞の増殖が活発になる前のタイミングであり、特に好ましくは、前記培養開始後24時間~72時間の間である。
 本発明は、免疫原性が低減された物質(改変体)を選択するための方法、または改変体の免疫原性が低減されているか評価する方法にも関する。一態様において、当該方法は以下の工程を含む:
 (a)血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団を改変体または非改変体とともに培養する工程、
 (b)工程(a)で培養された細胞集団におけるIL-2を分泌するT細胞を、そのIL-2分泌初期のタイムポイントで検出する工程、
 (c)工程(b)で検出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を算出する工程、
 (d)改変体とともに培養した場合に工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が、非改変体とともに培養した場合の前記割合よりも低い場合に、前記改変体の免疫原性が低減されていると判定する工程。
 前記方法の別の態様において、改変体同士を比較して免疫原性がより低減された改変体を選択することができる。このような態様においては、前記工程(d)は、ある改変体とともに培養した場合に工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が、別の改変体とともに培養した場合の前記割合よりも低い場合に、前記改変体の免疫原性が前記別の改変体と比べて低減されていると判定する工程である。
 本発明は、医薬品の候補物質(リード化合物)をスクリーニングする方法にも関する。一態様において、当該方法は以下の工程を含む:
 (a)血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団を被験物質とともに培養する工程、
 (b)工程(a)で培養された細胞集団におけるIL-2を分泌するT細胞を、そのIL-2分泌初期のタイムポイントで検出する工程、
 (c)工程(b)で検出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を算出する工程、
 (d)工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルより低い場合に医薬品の候補物質として選択する工程。
 工程(d)において、工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合の比較対象とする対照レベルは、スクリーニングの目的に応じて適宜設定することができる。例えば、医薬品候補の最適化プロセスにおいて、他の被験物質と比べて相対的に前記IL-2分泌T細胞割合が低いものを候補物質として選択することができる。あるいは、予め設定された対照レベルと比べて相対的に前記IL-2分泌T細胞割合が低いものを候補物質として選択することもできる。
 本発明は、対象の被験物質による免疫療法に対する応答を予測する方法にも関する。一態様において、当該方法は以下の工程を含む:
 (a)対象から得られた血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団を被験物質とともに培養する工程、
 (b)工程(a)で培養された細胞集団におけるIL-2を分泌するT細胞を、そのIL-2分泌初期のタイムポイントで検出する工程、
 (c)工程(b)で検出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を算出する工程、
 (d)工程(c)で算出されたIL-2分泌T細胞が占める割合が対照レベルより高い場合に前記対象の前記被験物質による免疫療法に対する応答性が高いと決定する工程。
 本発明は、被験物質の免疫原性を評価するためのキットにも関する。当該キットはIL-2検出試薬の他に、任意で免疫原性の高さがわかっている対照物質を含む。本発明のキットは、免疫原性が高いことがわかっている高免疫原性対照物質および免疫原性が低いことがわかっている低免疫原性対照物質を含むことができる。本発明のキットは、被験物質の存在下で培養される細胞集団におけるIL-2分泌T細胞の検出に適したタイミング等を記した添付文書を含むことができる。
 以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。
〔材料と方法〕
〔凍結PBMCの融解〕
 凍結PBMC(Lonza社)を37℃で融解し、室温の培地で洗浄して細胞懸濁液からDMSOを除去した。洗浄後の細胞をカウントして1×107個/mLの細胞懸濁液を調製した。
〔CD8-PBMCのソーティング〕
 1×107個/mLのPBMC懸濁液に必要量(25μL/107個のPBMC)のDynabeads(登録商標) CD8を加えた。転倒混和により細胞とビーズを均一にした後、振とうさせながら4℃、遮光下で30分間反応させた。反応終了後、ビーズを除去してCD8-PBMC懸濁液を回収し、遠心分離して上清を除去した細胞をカウントして2.5×107個/mLの細胞懸濁液を調製した。
〔CD8-CD25low PBMCのソーティング〕
 2.5×107個/mLのCD8-PBMC懸濁液に必要量(25μL/2.5×107個のCD8-PBMC)のDynabeads(登録商標) CD25を加えた。転倒混和により細胞とビーズを均一にした後、振とうさせながら4℃、遮光下で30分間反応させた。反応終了後、ビーズを除去してCD8-CD25lowPBMC懸濁液を回収し、遠心分離して上清を除去した細胞をカウントして1×106個/mLの細胞懸濁液を調製した。当該細胞懸濁液を1 mL/wellで24well平底プレートに播種し、被験物質または陽性対照物質添加前に37℃、5% CO2インキュベーターで約1時間の前培養を行った。
〔被験物質の添加と細胞培養〕
 前培養後の細胞に被験物質または陽性対照物質を添加し、37℃、5% CO2インキュベーターで種々の時間、細胞培養を行った。
〔IL-2分泌アッセイ〕
 被験物質または陽性対照物質の存在下または非存在下での培養後、IL-2 catch reagent(IL-2 secretion assay kit、Miltenyi Biotec)を各wellに10μL添加し、37℃、5% CO2インキュベーターで1時間インキュベートした。続いて、細胞懸濁液を回収し、4℃での遠心分離により培養液の除去と洗浄を行った。洗浄後の細胞は氷上で4℃のフローサイトメトリー洗浄・染色液を用いて150 μLの細胞懸濁液として96well丸底プレートにて抗体混合液(抗CD3抗体(BD)、抗CD4抗体(BD)、抗CD14抗体(BD)、IL-2 Detection Antibody(IL-2 secretion assay kit、Miltenyi Biotec))と混合し、遮光下で30min、4℃で染色した。続いて、未反応の抗体の除去と洗浄を行い、洗浄後の細胞を7AAD(7-Amino-Actinomycin D)を用いて遮光下で3分間、室温で核染色を行った。
 染色後の細胞を、リンパ球ゲートで最大測定数200000の条件でのフローサイトメトリー測定に供した。
〔臨床試験における抗薬物抗体の発現率の測定〕
 各被験物質に対する抗薬物抗体(ADA)の発現を以下の方法により測定し、ADAの発現が検出されたドナーの頻度(発現率)を算出した。
抗体A:ECL法、Enbrel、Reopro:ELISA法、hA33:Biacore法
〔免疫原性の評価に適した早期マーカーの探索〕
〔1-1.活発な抗原特異的な増殖を示す前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合の分析〕
 免疫刺激物質で種々の時間刺激したCD8-CD25lowPBMCの集団におけるIL-2分泌CD4+T細胞サブセットの割合を分析した。具体的には、KLHの存在下で24~72時間培養したCD8-CD25lowPBMCの集団におけるIL-2分泌CD4+T細胞をIL-2 catch reagent及びIL-2 Detection Antibody(IL-2 secretion assay kit, Miltenyi Biotec)を用いて検出し、CD8-CD25lowPBMCの集団におけるIL-2分泌CD4+T細胞の割合をフローサイトメトリーにより分析した。図1および図2に示されているように、KLHの存在下で42、48、67、72時間培養した場合、免疫刺激物質の非存在下(NA)で同時間培養した場合と比べて高い割合のIL-2分泌T細胞が検出された。中でも、KLHの存在下で67時間培養した場合に特に高い割合のIL-2分泌T細胞が検出され、免疫原性が比較的高いことが知られている抗hA33抗体の存在下で培養した場合も同様であった。なお、抗hA33抗体は、当業者であれば、例えばWO1994/013805の記載を参照することにより作製することができる。一方、これらのタイムポイントにおいても、免疫原性が低いことが知られている市販医薬品Enbrel(エンブレル(登録商標))の存在下で培養した場合に検出されたIL-2分泌T細胞の割合は、免疫刺激物質の非存在下(NA)で同時間培養した場合と同程度であった。これらの結果は、被験物質による刺激後、活発な増殖を示す前のタイムポイントにおけるIL-2分泌CD4+T細胞の割合を、被験物質の免疫原性を評価するための早期マーカーとして利用できることを示している。
〔免疫応答による活発な抗原特異的な増殖を示す前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合とADA発現率との比較〕
〔2-1.活発な抗原特異的な増殖を示す前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合を指標としたタンパク質製剤の免疫原性の評価〕
 市販の医薬品を含む種々のタンパク質製剤を免疫刺激物質とした場合の活発な増殖を示す前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合を分析した。具体的には、LONZA社より購入した16~31人のドナー(HLA-DRB1 coverage: Caucasian 70%、Japanese 60%)に由来する凍結PBMCからCD8-CD25lowPBMCをOpTmizer CTS T-cell Expansion SFM (gibco)で1x106/mlに調製し、1ml/wellで平底の24ウェルプレートに播種し37℃、5%CO2インキュベーター内で1時間前培養した。その後、種々の被験物質を添加し67時間培養した。培養した細胞集団におけるIL-2分泌細胞を、培地中にMiltenyi Biotec社のIL-2 catch reagent (IL-2 secretion assay kit, Miltenyi Biotec) を10μl/wellで添加し更に1時間培養することで標識した。続いて、培養後のCD8-CD25lowPBMCを室温で回収後、4℃で遠心分離し、上清を除去した。氷上で細胞を4℃のフローサイトメトリー用洗浄・染色液に懸濁し、丸底の96ウェルプレートに移し、洗浄した。細胞を抗CD3抗体(BD)、抗CD4抗体(BD)、抗CD14抗体(BD)並びにIL-2 Detection Antibody (IL-2 secretion assay kit, Miltenyi Biotec)で染色後、洗浄した。7AADを添加後、フローサイトメトリーに供し、IL-2分泌CD4+T細胞の割合を測定した。結果を図3に示す。
 図3に示されているように、免疫原性が比較的高いことが知られている抗hA33抗体の存在下で培養した場合は、多くのドナー由来のPBMCについて高い割合のIL-2分泌CD4+T細胞が検出された。次いで、市販医薬品であるReopro(レオプロ(登録商標))の存在下で培養した場合にも複数のドナー由来のPBMCについて高い割合のIL-2分泌CD4+T細胞が検出された。一方、免疫原性が低いことが知られている前述の市販医薬品Enbrel(エンブレル(登録商標))の存在下で培養した場合は、被験物質の非存在下で培養した陰性対照(NA)と比べて高い割合のIL-2分泌CD4+T細胞が検出された例はわずかであった。これらの結果を、従来の免疫原性評価方法である臨床試験における抗薬物抗体(ADA)の発現率と共に表1に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1には、ADA発現率が低かった被験物質から順に結果を示している。この順は、図3に示されているIL-2分泌CD4+T細胞割合の順と一致していた。具体的には、図3において高いIL-2分泌CD4+T細胞割合を示したReopro(レオプロ(登録商標))、抗hA33抗体については、当該割合と相関して臨床試験におけるADA発現率が高く、一方、IL-2分泌CD4+T細胞割合が低かったEnbrel(エンブレル(登録商標))についてはADA発現率が低かった。
 表1には、無刺激の陰性対照(NA)よりも高いIL-2分泌CD4+T細胞割合を0.07%以上に設定した場合に陽性と評価されるPBMCのドナーの数およびその割合も示した。この割合を評価指標としてt検定により評価した結果、抗hA33抗体について、EnbrelおよびReoproと比べて有意に多くのIL-2分泌CD4+T細胞が検出されたと評価された。例えば、IL-2分泌CD4+T細胞割合を0.07%以上に設定した場合のReoproの陽性ドナー頻度と抗hA33抗体の陽性ドナー頻度の間である約20~60%、約20~50%、約20~40%、約20~30%等を対照レベルとして、医薬品の候補物質のスクリーニングを行うことができる。
〔2-2.活発な抗原特異的な増殖を示す前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合を指標とした改変抗体の免疫原性の評価〕
 次に、結合標的が共通の異なる複数種の改変抗体の免疫原性を、活発な増殖を示す前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合を指標として評価した。具体的には、10人のドナーに由来する凍結PBMCからCD8-CD25lowPBMCを調製し、抗体Aおよびその改変体である抗体A2~A6、ならびに免疫原性が高いことが公知の抗hA33抗体の存在下で67時間培養した。培養した細胞集団におけるIL-2分泌細胞の割合を、実施例2-1と同様に測定した結果を図4に示す。
 図4に示されているように、結合標的を共通とする一連の改変体群であっても、活発な増殖を示す前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合は改変体によって異なる結果が検出された。これらの結果について、抗体Aよりも高いIL-2分泌CD4+T細胞割合を0.07%以上に設定した場合に陽性と評価されるPBMCのドナーの割合を表2に示した。この割合に基づいて評価した場合、抗体A2~A6についての陽性ドナーの頻度は、抗体Aの場合と比べるとわずかに高かったが、抗hA33抗体の場合と比べると十分低かった。したがって、活発な増殖前のIL-2分泌CD4+T細胞割合を指標として、種々の改変体の中から免疫原性の高くないものを医薬品の候補物質を選択することができる。このような評価系を利用することにより、例えば抗体医薬品候補の最適化プロセスにおける免疫原性に基づく篩い分けを、短いスパンで実施することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 表1および表2の結果より、(1)活発な増殖を示す前のIL-2分泌CD4+T細胞割合を指標とすることによって、ADA発現率を指標とした場合と同等の評価結果が得られること;(2)評価系の条件(例えば、被験物質による刺激後のIL-2分泌CD4+T細胞検出のタイミング)に応じて設定される適切な対照レベルが、免疫原性の低い被験物質を医薬品の開発候補物質として選択するスクリーニングに有用であることが示された。
〔活発な増殖前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合を指標とした種々の被験物質の免疫原性の評価〕
 実施例2において公知の免疫原性評価指標であるADA発現率と同等の評価結果が得られることがわかった本発明の評価指標(T細胞の活発な増殖前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合)を用いて、種々の被験物質の免疫原性の評価を行った。具体的には、ワクチン(インフルエンザHAワクチン:図5A)、抗体Bもしくは抗体Bとその抗原との複合体(図5B)、またはタンパク質製剤に混入しうる不純物(エンドトキシン(LPS):図5C)を被験物質とし、実施例2と同様に活発な増殖前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合を測定した。結果を図5に示す。
 図5Aに示されているように、免疫原性が極めて高いことが知られているインフルエンザHAワクチンの存在下で細胞培養を行った場合は、ワクチン濃度0.003μg/mlから明確なIL-2分泌CD4+T細胞が検出された。
 また、免疫感作の際のキャリアタンパク質として用いられる高免疫原性のKLHの存在下で細胞培養を行った場合も明確なIL-2分泌CD4+T細胞が検出されたが、低免疫原性タンパク質製剤として用いられうる抗体単独を被験物質とした場合にはIL-2分泌CD4+T細胞はほとんど検出されず、当該抗体と抗原との複合体を被験物質とした場合はIL-2分泌CD4+T細胞が検出された(図5B)。
 タンパク質製剤に混入しうる不純物の例として種々の濃度のエンドトキシン(LPS)の存在下で細胞培養を行った場合、LPS濃度が0.1 ng/ml以上で明確なIL-2分泌CD4+T細胞が検出された(図5C)。一方、血液成分の例として血液凝固第VIII因子(Factor VIII)を被験物質とした場合は、Factor VIII濃度が10μg/mlであっても明確なIL-2分泌CD4+T細胞は検出されなかった(図5C)。
 タンパク質より分子量の小さいペプチドを被験物質とした場合は、図5Dに示されているように、検出されたIL-2分泌CD4+T細胞はごくわずかであった。
 したがって、本発明の免疫原性評価方法は、タンパク質に限定しない種々の被験物質について適用可能であることが明らかとなった。
 本発明の免疫原性評価方法は、IL-2分泌初期のタイムポイントで検出されたIL-2分泌CD4+T細胞の割合を評価指標とすることを特徴とする。より具体的には、被験物質による刺激に応答してCD4+T細胞の増殖が活発になる前のタイムポイントで検出されたIL-2分泌CD4+T細胞の割合を評価指標とすることを特徴とする。一般的に抗体医薬品に特異的に反応するpre-existing T細胞レパトアの割合は106個のCD4+T細胞当たり平均値範囲0.01~0.3個と極めて低いため、被験物質による増殖誘導の弱い時期(被験物質存在下での培養開始後5日間未満、好ましくは24~72時間)のタイムポイントでの免疫原性の評価は細胞の活性化又は増殖をタンパク質レベルで殆ど検出できず困難と考えられており、免疫応答による増殖が活発になった以後のタイムポイントでのサイトカイン分泌や、臨床試験における抗薬物抗体(ADA)の発現頻度を免疫原性の評価指標とするのが技術常識であった。実際、免疫原性が比較的高いことが知られていた抗hA33抗体による刺激であっても、増殖が活発になる前のIL-2分泌CD4+T細胞の割合は高くても0.25%であった(図3)。一般的に、このような低い陽性頻度での評価系は安定性に乏しいことが多い。しかし、驚いたことに、従来の評価指標である臨床試験での抗薬物抗体(ADA)の発現頻度において抗hA33抗体よりも免疫原性が低いという結果が得られた被験物質について、活発な増殖前のIL-2分泌CD4+T細胞割合についても安定して抗hA33抗体より低い結果が得られ、しかも従来の評価指標による評価結果とよく相関していた(表1)。これは、被験物質とともに培養する細胞集団にCD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まないこと(細胞集団からCD8+T細胞およびCD25+T細胞を予め除いておいてもよい)、培養方法(細胞数、培地の種類)の工夫によりノイズを低減すること、IL-2 catch reagent及びIL-2 Detection Antibodyの使用方法の工夫によって活性が高いT細胞を残存させること、等の評価系の工夫によりIL-2分泌初期のタイムポイントにおける低い陽性頻度でも安定したデータを得ることができたと考えられる。
 このように、本発明の免疫原性評価方法は、タンパク質製剤(例えば抗体医薬品)などの被験物質の免疫原性を、これまでに知られていたより短時間で評価することができる点で有用である。このような優位性を有する本発明の方法を利用することにより、医薬品の候補物質のスクリーニングにおいて高いスループット性を実現することができ、医薬品開発の加速に貢献することができる。

Claims (9)

  1.  以下の工程を含む、被験物質の免疫原性を評価する方法:
     (a)血液に由来する、抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞を含み、CD8+T細胞およびCD25+T細胞を実質的に含まない細胞集団を被験物質とともに培養する工程、
     (b)工程(a)で培養された細胞集団におけるIL-2を分泌するT細胞を、そのIL-2分泌初期のタイムポイントで検出する工程、
     (c)工程(b)で検出されたIL-2分泌T細胞が占める割合を算出する工程。
  2.  血液に由来する前記細胞集団が、末梢血単核球細胞(PBMC)に由来する細胞集団である、請求項1に記載の方法。
  3.  前記血液がヒト由来である、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4.  前記IL-2分泌初期のタイムポイントが、前記T細胞の増殖が活発になる前である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5.  前記IL-2分泌初期のタイムポイントが、前記培養開始後24時間~72時間の間である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6.  前記被験物質が、タンパク質、ペプチド、核酸、糖質、脂質、ワクチン、およびそれらのうち二つ以上のコンジュゲート、ならびにそれらのうち二つ以上の組み合わせを含む混合物からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7.  前記被験物質がタンパク質である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  8.  前記被験物質が抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  9.  前記IL-2分泌T細胞が占める割合の算出が、フローサイトメトリーで当該細胞数を測定することである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
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