JP2018025554A - 炎症性疾患のマーカー - Google Patents

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智徳 石井
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匡範 乾
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Abstract

【課題】感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を判定する方法及びキットを提供する。
【解決手段】被験体由来の試料中のLILRB4を測定すること、及びLILRB4の測定値を参照値と比較することを含む、被験体における感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を判定する方法。疾患の判定は、疾患の有無の判定、疾患の発症の危険性の評価、疾患の重症度の判定、疾患の治療方法の選択、疾患の治療効果の評価、疾患の再発の有無、又は疾患の再発の危険性の評価である、炎症性疾患を判定する方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、炎症性疾患を判定する方法及びキットに関する。
感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患は、持続性の炎症と、炎症反応によって産生されたサイトカイン等の炎症性物質による症状の悪化、それに伴い血中に遊離された患者自身の細胞や組織成分に対する免疫細胞の過剰反応を繰り返す難病である。
感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の一つである全身性エリテマトーデス(SLE)では、免疫制御の細胞性不全がT細胞とB細胞で起こると考えられている。特に、脱制御されたB細胞及び抗体を産生する形質細胞は重要な標的と考えられている。SLE並びに皮膚筋炎(DM)を初めとする他の感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患のより有効な治療法を開発するために、B細胞の脱制御の基礎にあるメカニズムを解明すると共に、自己抗体産生形質細胞の前駆細胞を排除し得るか又は病原性B細胞の活動を下方制御し得る特異的標的分子を見出すことが重要である。
従来、SLEや皮膚筋炎の治療は、ステロイド投与による全身性免疫抑制、及び特異抗体療法としては汎B細胞マーカーCD20(リツキシマブ)若しくは活性化B細胞の活性化因子Blys(ベリムマブ)(非特許文献1)、APRIL(シファリムマブ、ロンタリズマブ)、並びにI型インターフェロン(非特許文献2)を標的にしており、いずれも病原性細胞への特異性は高くなく、抗体産生B細胞が減少するために感染症に罹患し易くなる等の副作用があり、病原性自己抗体を産生するB細胞に特化した治療法が望まれている。
川崎病(KD)も感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の一つであるが、乳幼児で最も頻発する急性の全身性血管炎症候群である。この疾患の重度の心血管損傷の危険性は、疾患経過の初期の高用量の静脈内免疫グロブリン治療の導入(IVIG)により有意に減少する。川崎病の原因は未だ不明であるが、その病理は、患者の血管炎組織における活性化された単核細胞の蓄積による免疫系の活性化である。川崎病のより有効な治療法を開発するために、その急性期の病理学的変化の基礎にあるメカニズムを解明することが重要である。
一方で、最近、本願発明者らは未知のリガンドに対する受容体であるLILRB4(白血球Ig様受容体(Leukocyte Ig-like receptor)B4、以下B4とも称する)が、健常ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)中の、形質細胞の循環性の前駆細胞であるCD19+CD27hiCD43hi形質芽細胞の表面では異所的に固有に発現しているが、CD19+CD27-ナイーブB細胞やCD19+CD27+メモリーB細胞には発現していないことを報告した(非特許文献3)。
J. Clin. Invest. 2009; 119(5)1066-1073 PLOS ONE 2013; 8(6) e67003 Int.Immunol.2015;27(7)345-355
本発明の目的は、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を判定する方法及びキットを提供することにある。
本発明者らは、LILRB4に関する上記の知見を拡張するために、全身性エリテマトーデスを初めとする感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の患者の末梢血を調べたところ、単核細胞中の形質芽細胞(プラズマブラスト)表面上に免疫系受容体タンパク質LILRB4がB細胞系列としては特異的かつ高発現し、これが病原性自己抗体を多量に産生していることを発見した。LILRB4は、かかる疾患を判定するためのマーカーとして有用である。
本発明によれば、以下の態様が提供される。
[1]被験体由来の試料中のLILRB4を測定すること、及び前記LILRB4の測定値を参照値と比較することを含む、被験体における感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を判定する方法。
[2]前記疾患の判定は、前記疾患の有無の判定、前記疾患の発症の危険性の評価、前記疾患の重症度の判定、前記疾患の治療方法の選択、前記疾患の治療効果の評価、前記疾患の再発の有無、又は前記疾患の再発の危険性の評価である[1]に記載の方法。
[3]前記参照値よりも高い前記LILRB4の測定値が、前記疾患の存在又は前記疾患を発症する危険性の増大を示す[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記試料がLILRB4を測定することが、形質芽細胞が発現しているLILRB4を測定することを含む[1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]前記疾患が全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、川崎病、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、血管炎症候群、シェーグレン症候群、ベーチェット病、バセドウ病、橋本病、心筋炎、大動脈炎症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、糸球体腎炎、ANCA関連腎炎、アミロイドーシス、TINU症候群、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、及びサルコイドーシスから選択される疾患である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]前記疾患が全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎及び川崎病から成る群から選択される[1]〜[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]形質芽細胞における抗 dsDNA IgGを測定することをさらに含む[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]total IgG及び抗 dsDNA IgGのシグナル強度を測定し、抗 dsDNA IgGのtotal IgGに対する比の増大は、疾患の存在又は前記疾患を発症する危険性の増大を示す[1]〜[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]被験体由来の試料中のLILRB4を測定できる試薬を備える、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を判定するためのキット。
[10]前記疾患の判定は、前記疾患の有無の判定、前記疾患の発症の危険性の評価、前記疾患の重症度の判定、前記疾患の治療方法の選択、前記疾患の治療効果の評価、前記疾患の再発の有無、又は前記疾患の再発の危険性の評価である[9]に記載のキット。
[11]前記疾患が全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、川崎病、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、血管炎症候群、シェーグレン症候群、ベーチェット病、バセドウ病、橋本病、心筋炎、大動脈炎症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、糸球体腎炎、ANCA関連腎炎、アミロイドーシス、TINU症候群、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、及びサルコイドーシスから選択される疾患である[9]または[10]に記載のキット。
[12]被験体由来の試料中のLILRB4を測定できる試薬を備える、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を診断するためのキット。
[13]感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の有無又は前記疾患の発症の危険性を診断するための診断薬を製造するためのLILRB4の使用。
本発明によれば、被験体由来の試料中のLILRB4の測定値を参照値と比較することにより、被験体における感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患をより正確に判定することができる。また、該疾患の有無の判定、該疾患の発症の危険性の評価、該疾患の重症度の判定のみならず、治療方法の選択、治療後の治療効果の評価、該疾患の再発の有無、又は該疾患の再発の危険性の判定もより正確に行うことができる。
LILRB4(B4)発現は急性期SLEの形質芽細胞で上昇する。(A)SLE患者及び健常ドナーのPBMC中の各B細胞サブセットのフローサイトメトリー分析。リンパ球についてゲートし(左図)、次にCD3-CD19+細胞についてゲートし(左から2番目の図)、CD19+細胞をCD27発現(左から3番目の図)について分析した。ナイーブB細胞、メモリーB細胞及び形質芽細胞をそれぞれCD19+CD27-細胞、CD19+CD27+細胞、及びCD19+CD27high細胞として定義した (左から3番目と一番右の図)。(B)急性期SLE患者のナイーブB細胞、メモリーB細胞及び形質芽細胞についてのB4発現のフローサイトメトリーのヒストグラムの例。アイソタイプ対照(マウスIgG1)の染色は灰色の実線で示される。(C)急性期(上から2列目) SLE患者、回復期(上から3列目)SLE患者、及び健常ドナー(一番下)のPBMC中の形質芽細胞についてのB4発現のフローサイトメトリーのヒストグラムの例。B4hi、B4int、B4lo及びB4-についてのゲーティングを示す。(D,E) 急性期SLE患者(Acute)、回復期SLE患者(Conv.)、及び健常ドナー(HC)の全形質芽細胞中のB4+細胞の平均蛍光強度(MFI) (D)及び頻度(E)としてのB4の発現レベル。急性DM患者のB4発現データも示す。水平方向のバーは平均値を示す。**P<0.01、***P<0.001である。(SLEに対してはDunns 多重比較検定を用いたKruskal-Wallis検定、皮膚筋炎患者(DM)に対してはMann-Whitney検定)。 SLE患者におけるB4発現と血清抗dsDNA IgGとの相関。SLE患者における形質芽細胞でのB4発現レベルと、血清total IgG(上図)又は抗dsDNA IgG(下図)濃度との相関試験。B4レベルと、抗dsDNA IgGは有意ではないが弱い相関を示す。白抜き菱形は急性期患者のデータ、黒色菱形は回復期患者のデータである。相関r値はSpearmanノンパラメトリック分析で得た。P値を図に示す(Spearmanランク相関)。 B4hi集団はB4int及びB4-集団よりも高い頻度で抗dsDNA IgG VH 転写物を含む。(A)急性期(Acute, 左側のパネル)及び回復期(Conv.,右側のパネル)のSLE患者のB4+及びB4-形質芽細胞中のtotal IgG産生細胞及び抗dsDNA IgG産生細胞を検出するためのELISpotアッセイ。ウェルに播種した細胞数を図面の下に示す。各パネルで陽性細胞計測数を示す。(B)total IgG産生細胞における抗dsDNA IgG産生細胞の頻度を、急性SLE患者由来のPBMCサンプルから選別したB4hi及びB4-集団(右)と、回復期患者のB4hi及びB4-集団(左)について示す。水平方向のバーは平均値を表す。P値を示す(Bonferroniの多重比較 post検定を用いて二元配置反復測定分散分析(2-way RM ANOVA)。各ELISpotの強度を、B4hi、B4int、及びB4-集団に対するtotal IgGスポット(中央)と抗dsDNAスポット(右)の画像分析により測定した。(C) 急性期(n=3)及び回復期(n=7)のSLE患者から選別した形質芽細胞集団から調製したVHセグメントPCR産物についての、ランダムに選択したクローンにおけるVH4-34配列の頻度。* P<0.05、**P<0.01(カイ二乗検定)。(D) B4hi、B4int、及びB4-形質芽細胞から得られたVH4-34配列の定性的性質。変異したアミノ酸の数、CDR3の長さ、推定CDR3電荷、及びNヌクレオチド挿入数を比較している。**P <0.01(Welch検定) 急性SLE患者のB4+及びB4-形質芽細胞から得られたVH4-34配列。VH 4-34生殖系列配列(一番上)と、B4-細胞及びB4hi細胞から選択したそれぞれ4個及び21個のクローンの配列を、FR1〜FR3、CDR1〜CDR3について示す。ダッシュは生殖系列から変化がないことを示す。 急性皮膚筋炎(DM)患者におけるB4hi-int形質芽細胞の細胞サイクルの増強の特徴。(A)急性皮膚筋炎(DM) PBMCからのB細胞サブセットのフローサイトメトリー分析リンパ球(左)及びCD3-CD19+細胞(左から2番目)のゲーティングによりCD27-ナイーブB細胞、CD27+メモリーB細胞、及び及びCD27hi形質芽細胞(右)が得られた。(B)ナイーブB細胞とメモリーB細胞、並びに急性期DM患者由来の形質芽細胞におけるB4発現のヒストグラム。(C)RNA-seqにより分析し、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)により機能的にアノテーションされた、DM患者におけるB4-と比較したB4hi-int形質芽細胞のアップレギュレート(上図)及びダウンレギュレート(下図)されたシグナル伝達経路。統計的有意差を表の右側の行で示す。(D)〜(F)DM患者のPBMCから選別したメモリーB細胞(Mem)、B4-及びB4hi-int(B4+)形質芽細胞でそれぞれに発現している増殖制御のための遺伝子(D)、サイトカイン及びそれらの受容体(E)、B細胞及び形質細胞制御の転写因子(F)のヒートマップ。FCはB4hi-intとB4- の発現レベルの比を示し、FPKMは100万の読み取り値当たりの1キロ塩基のエキソン当たりの断片を示す。 健常者のナイーブB細胞及びメモリーB細胞におけるB4発現を誘導するサイトカインの同定。(A)選別精製したナイーブB細胞を、CpGの存在下、IL-2、IL-6及びIFN-αの種々の組み合わせで培養した。4日後に、B4とCD38の発現をフローサイトメトリーにより調べた。細胞の割合(%)を各四分画中に示す。(B)選別精製したメモリーB細胞を、IL-2、IL-10及びIL-15の存在下、CpG及び抗CD40で4日間培養し、IL-2、IL-10、IL-15及びIL-6の図に示した種々の組み合わせの存在下でさらに3日間培養した。細胞の割合(%)を各四分画中に示す。 B4hi、B4int及びB4lo形質芽細胞の生成の略図。急性期SLE患者におけるB4hi病原性形質芽細胞は、IL-2、IFN-αによりメモリーB細胞、胚中心B細胞(GCB)又はナイーブB細胞が活性化されて生成することが提案される。急性期SLE患者のB4hi病原性形質芽細胞は、回復期のSLE患者のB4int形質芽細胞よりも抗dsDNA IgGを十分に多く産生する。 CD4+,CD8+細胞及びCD19+B細胞サブセットのフローサイトメトリーによる分析。急性期のKD患者由来のPBMC調製物には多数の顆粒球が混在しているため、まず、ゲーティングによりPBMCから顆粒球を除去し、次にリンパ球及び単球をゲートした。次に、FSC-W対FSC-Hでゲートすることによりダブレット細胞を除去し、CD4+、CD8+、CD4-CD8-CD19+について分析した。次に、CD19+細胞をCD27-ナイーブB細胞、CD27+ メモリーB細胞、及びCD19+CD27high 形質芽細胞について分析した。 末梢血単核球のプロファイル。(A)血液1mlあたりのPBMC数。回復期におけるPBMC数の増大、**P<0.01、****P<0.0001。(B)血液1mlあたりのPBMC中におけるCD4+T細胞、CD8+T細胞、ナイーブB細胞、メモリーB細胞、形質芽細胞、及び単球の各細胞数。回復期におけるCD4+T細胞数、CD8+T細胞数、ナイーブB細胞数、メモリーB細胞数の増大。**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001(C)CD4+T細胞、CD8+T細胞、ナイーブB細胞、メモリーB細胞、形質芽細胞、及び単球のPBMC中の頻度。回復期におけるCD8+T細胞、ナイーブB細胞の増大、形質芽細胞の減少。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(D)CD4+T細胞/CD8+T細胞比、***P<0.001(E)CD19+B細胞サブセットの頻度。回復期におけるCD19+B細胞中のナイーブB細胞頻度の増大、形質芽細胞頻度の減少。*P<0.05、**P<0.01、****P<0.0001。図9(A)〜(E)において、バーのあるアスタリスクは、バーでつながれた実験群間(急性期と回復期)の2群間の有意差を示し、バーのない各群のアスタリスクは対象群と実験群(急性期または回復期)の2群間の有意差を示す。 KD患者のB細胞サブセットにおけるLILRBアイソフォームの発現(A)LILRB1は3つすべてのB細胞サブセットで発現したが、LILRB4は形質芽細胞で固有に発現していた。(B)B細胞のLILRB1のB細胞の発現レベルは急性期及び回復期で同等であったが、LILRB4レベルは回復期に減少した。***P<0.001。(C)LILRB4+形質芽細胞は回復期に減少した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。図10(B)及び(C)において、バーのあるアスタリスクは、バーでつながれた実験群(急性期と回復期)の2群間の有意差を示し、バーのない各群のアスタリスクは対象群と実験群(急性期または回復期)の2群間の有意差を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、LILRB4を、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の判定又は診断のためのマーカーとして使用することを特徴とする。
本発明は、被験体由来の試料中のLILRB4を測定すること、及び該LILRB4の測定値を参照値と比較することを含む被験者における感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を判定する方法を包含する。
なお、本明細書において「LILRB4を測定」するとは、LILRB4の濃度、量、及び/又はシグナル強度を測定することを指す。
LILRB4の塩基配列及びアミノ酸配列は、米国生物工学情報センター(NCBI)により提供されているデータベースから知ることができる。ヒト(Homo sapiens)LILRB4の場合、例えばEntrez GeneIDは11006(2016年6月15日時点)、RefSeq ProteinIDはNP_001265355.2、NP_001265356.2、NP_001265357.2、NP_001265358.2、NP_001265359.2(アイソフォーム1〜5に相当)が挙げられる。マウス(Mus musculus) LILRB4としては、GeneIDは14728(2016年6月24日時点)、NP_038560.1が挙げられ、ラット(Rattus norvegicus)LILRB4としては、GeneIDは292594(2016年5月26日時点)RefSeq ProteinIDはNP_001013916が挙げられ、他の動物もLILRB4を有することが知られている。上記のLILRB4には限定されず、他のLILRB4も本発明におけるLILRB4に含まれる。
被験者には、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患に罹患している患者のみならず、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患に罹患していると疑われる患者も含まれる。「感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患に罹患していると疑われる被験者」は、被験者本人が主観的に疑いを抱く者(何らかの自覚症状がある者に限らず、単に予防検診の受診を希望する者を含む)であっても、何らかの客観的な根拠に基づく者(例えば、従来公知の臨床検査(例、心拍、血圧、血液又は尿検査)及び/又は診察の結果、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の合理的な罹患可能性があると医師が判断した者)であってもよい。
被験体由来の試料は特に限定されないが、例えば血液、唾液、尿、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、涙液、眼房水、硝子体液及びリンパ液からなる群より選択される体液が挙げられる。血液であることが好ましく、特異性の目的から血液中の形質芽細胞であることがより好ましい。
本明細書において、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患は、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、川崎病、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、血管炎症候群、シェーグレン症候群、ベーチェット病、バセドウ病、橋本病、心筋炎、大動脈炎症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、糸球体腎炎、ANCA関連腎炎、アミロイドーシス、TINU症候群、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、及びサルコイドーシスから選択される疾患を含むが、これらに限定されるものではない。
感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患は、好ましくは全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、及び川崎病から成る群から選択される。また、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患は急性疾患であっても慢性疾患であってもよいが、疾患の早期判定又は診断のためには、急性期の疾患であることが好ましい。例えば全身性エリテマトーデスは急性期全身性エリテマトーデスであることが好ましく、皮膚筋炎は急性期皮膚筋炎であることが好ましく、川崎病は急性期川崎病であることが好ましい。
前記疾患の判定には、前記疾患の有無の判定、前記疾患の発症の危険性の評価、前記疾患の重症度の判定、前記疾患の治療方法の選択、前記疾患の治療効果の評価、前記疾患の再発の有無、及び前記疾患の再発の危険性の評価が含まれる。
本明細書において、「LILRB4を測定する」ことは、LILRB4の濃度、LILRB4の量、又はLILRB4のシグナル強度を測定することを指す。 本発明における被験体としては、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を発症しうる被験体であれば特に限定されるものではなく、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどの哺乳動物が挙げられる。
被験体由来の試料中のLILRB4の測定は、LILRB4に親和性のある物質を用いて行うことができる。該親和性物質は、LILRB4に結合能を有する物質であれば特に制限されず、LILRB4に特異的に結合するタンパク質及び抗LILRB4抗体等が挙げられる。中でも、抗LILRB4抗体が好ましい。
抗LILRB4抗体としては、血清から精製したLILRB4と反応する抗体であれば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれでも良いが、モノクローナル抗体が好ましく用いられる。当該抗体の作製は周知の方法にて作製することができる。例えば、ポリクローナル抗体の作製には、免疫する動物としてマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリなどが用いられる。抗血清は、抗原を動物の皮下、皮内、腹腔などに一回又は複数回投与した後、血清から得ることができる。タンパク質、ペプチドを抗原として用いる時は、免疫賦活効果を有する補液との混合物の免疫がより好ましい。
また、モノクローナル抗体の作製には、公知のモノクローナル抗体作製方法、例えば、長宗香明、寺田弘共著、「単クローン抗体」廣川書店(1990年)や、Jame W.Golding,“Monoclonal Antibody”,3rd edition,Academic Press,1996年に従い作製することができる。また、DNA免疫法によりモノクローナル抗体を作製することもでき、Nature 1992 Mar12;356 152−154やJ.Immunol Methods Mar 1;249 147−154を参考に作製することができる。
抗体作製に用いられる抗原としては、LILRB4タンパク質、又はその一部断片(ペプチド)、或いはLILRB4タンパクをコードするcDNAを組み込んだベクターを用いることができる。LILRB4の高次構造を認識するモノクローナル抗体を得るために、ヒトLILRB4全長遺伝子が入った構築物である全長LILRB4ベクターが最適な免疫用抗原遺伝子となるが、そのほか、LILRB4配列の一部領域が挿入された構築物も、免疫用抗原遺伝子として使用できる。DNA免疫法は、上記遺伝子構築物を単独又は混合して、免疫動物に対して様々な遺伝子導入法(例えば筋肉注射、エレクトロポレーション、遺伝子銃など)のいずれかを用いて、動物(マウス、又はラット等)の皮下に注入し、細胞内に取り込ませることにより実施できる。
当該モノクローナル抗体は、常法に従い作成したハイブリドーマを培養し、培養上清から分離する方法、該ハイブリドーマをこれと適合性のある哺乳類動物に投与し、腹水として回収する方法により製造できる。
抗体は、必要に応じてそれをより精製して使用することができる。抗体を精製・単離する手法としては、従来公知の方法、例えば、硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィ法、プロテインAカラムなどによるアフィニティ精製法などがある。
被験体由来の試料中のLILRB4の測定方法は、特に限定されないが、抗LILRB4抗体を用いた免疫学的方法、LILRB4と親和性のある生理的リガンドを利用する方法、並びにそれらを組み合わせた方法により測定することが望ましい。免疫学的方法としては、例えば免疫染色(ウエスタンブロット)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、サンドイッチELISA、免疫沈降法、免疫比濁法(TIAやLTIA)、エンザイムイムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、フローサイトメトリー法等に供し、LILRB4タンパク質の分子量と一致するバンド若しくはスポット、又はピークを検出することにより行うことができるが、これらに限定されない。
尚、LILRB4の測定において、LILRB4の定量値を得るためには、基準値と比較することが好ましい。この場合、基準値としては、既知の濃度又は量のLILRB4、変化しない対照物質又はマーカー物質の値等であることが好ましい。
なお被験体由来の試料中のLILRB4の測定は、生体試料を各種の分子量測定法、例えば、ゲル電気泳動や、各種の分離精製法(例:イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなど)、表面プラズモン共鳴法、イオン化法(例:電子衝撃イオン化法、フィールドディソープション法、二次イオン化法、高速原子衝突法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化法など)、および質量分析計(例:二重収束質量分析計、四重極型分析計、飛行時間型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオンサイクロトロン質量分析計、免疫質量分析計、安定同位体を内部標準にした質量分析計、免疫顕微鏡計など)を組み合わせる方法等に供し、該LILRB4又はその分解物であるペプチドの分子量と一致するバンドもしくはスポット、あるいはピークを検出することにより行うこともできるが、これらに限定されない。 次に、得られた測定値を参照値と比較する。
参照値は、健常者群のLILRB4測定値であることが好ましい。健常者群のLILRB4測定値は、被験体由来の試料の場合と同様の方法で、予め測定しておくのが好ましい。比較には、健常者群のLILRB4測定値を統計学的に処理して求めた値を参照値として使用するのが好ましい。参照値は、対象疾患毎に統計学的に求めることが好ましい。
感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患が存在している場合、重篤化している場合、疾患を発症する危険性が増大している場合、及び再発の危険性がある場合には、被験体由来の試料のLILRB4の測定値は、後述の実施例に記載するように、健常者群のLILRB4測定値である参照値よりも有意に高い。従って、被験体由来の試料のLILRB4の測定値と、この参照値との対比により、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の有無、該疾患の発症の危険性、該疾患の重症度、該疾患の治療方法の選択、該疾患の治療効果、該疾患の再発の有無、又は該疾患の再発の危険性を判定することができる。
炎症性疾患の有無及び該疾患の発症の危険性については、被験体由来の試料のLILRB4の測定値が健常者の参照値と比較して有意に高い場合に、疾患及び疾患の発症の危険性が高いと評価することができる。
疾患の重症度とは、該疾患がどの程度進行しているかの指標になるものである。本発明において、「感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の存在、重症度を判定する」とは、各疾患の医学的分類に疾患を区分することを含む。被験体由来の試料のLILRB4の測定値が大きい程、疾患の重症度が高いと考えられる。疾患の重症度を判定する場合、患者の重症度毎のLILRB4の測定値を予め測定しておき、健常者のLILRB4の測定値を第1の参照値とするのみならず、予め測定しておいた重症度毎のLILRB4の測定値も第2、第3・・・の参照値とし、被験体由来の試料のLILRB4の測定値をこれらの参照値と比較することにより、被験体の重症度を判定することができる。
治療方法の選択又は治療効果の判定は、治療前後のLILRB4の測定値の変化を測定することで評価することができる。この場合、健常者のLILRB4の測定値を参照値として、治療後のLILRB4の測定値が健常者のLILRB4の測定値を参照値以下であるかどうかを判定してもよいし、治療前の被験者のLILRB4の測定値を参照値とし、治療後のLILRB4の測定値が治療前の被験者のLILRB4の測定値よりも有意に低下しているかどうかを判定してもよい。
再発の有無については、間欠期や治療による寛解の後に、LILRB4の濃度が上昇し始めた場合に、疾患を再び発症している恐れが高いと評価することができる。この場合、健常者のLILRB4の測定値を参照値としてもよいし、治療による寛解時の同じ被験者のLILRB4の測定値を参照値としてもよい。
再発の危険性については、治療によりLILRB4の濃度が参照値まで下がらない場合に再発の危険性が高いと判断することができる。この場合、健常者のLILRB4の測定値を参照値としてもよいし、再発の危険性を示す予め決定した所定値を参照値としてもよい。
また、前記の感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の存在等を判定するにあたっては、LILRB4の測定値だけでなく、各疾患の特異的マーカーとして知られている他の公知のマーカーと組み合せて判断するのが好ましい。公知のマーカーとしては、血中補体濃度,CRP濃度,dsDNA抗体価,IgGレベル,リンパ球数,単核球数,好中球数等が挙げられる。
本発明の判定方法では、判定精度を高めるために、被験者の形質芽細胞中の抗dsDNA IgG自己抗体産生細胞数、特には被験者の形質芽細胞中のtotal IgG産生細胞に対する抗dsDNA IgG産生細胞数の割合をさらに測定してもよい。上記疾患に罹患している患者では抗二本鎖自己抗体の産生が高いため、抗dsDNA IgG抗体も疾患の判定の指標として使用することができる。
また、本発明の判定方法では、被験者の形質芽細胞中の抗dsDNA IgGをコードするIgG重鎖の可変領域の発現をさらに測定してもよい。上記疾患に罹患している患者では形質芽細胞におけるIgG抗体の重鎖の全可変領域の配列に対する抗dsDNA IgG抗体をコードするIgG重鎖の可変領域の頻度が高いため、抗dsDNA IgG抗体をコードするIgG重鎖の可変領域も疾患の判定の指標として使用することができる。
本発明はまた、被験体由来の試料中のLILRB4を測定できる試薬を備える、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を判定又は診断するためのキットを包含する。
感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患については上述した通りである。
また、前記疾患の判定は、前記疾患の有無、前記疾患の発症の危険性の評価、前記疾患の重症度の判定、前記疾患の治療方法の選択、前記疾患の治療効果の評価、前記疾患の再発の有無、又は前記疾患の再発の危険性の評価を含む。これらの詳細については上述した通りである。
LILRB4を測定できる試薬としては、LILRB4と親和性を有する物質、例えば抗LILRB4抗体又はLILRB4と親和性を有するリガンドタンパク質を含む試薬が好ましく挙げられるが、それらに限定されない。
キットは、LILRB4の検出に必要な他の構成要素、例えば、反応緩衝液や反応容器を含むことができる。
さらに本発明のキットには、前記の健常者群のLILRB4測定値のデータ、該データとの比較のためのプロトコールを含むことができる。
本発明は、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を診断するための診断薬を製造するためのLILRB4の使用も包含する。特には、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の有無又は該疾患を発症する危険性を診断するための診断薬を製造するためのLILRB4の使用も包含する。
本明細書中に引用されているすべての特許出願及び文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1 全身性エリテマトーデス(SLE)患者及び皮膚筋炎(DM)におけるLILRB4の測定
(1)方法
1.ドナー及び末梢血サンプル
東北大学病院の外来患者(男性6名、女性29名、年齢17-70歳)から書面にてインフォームドコンセントを得て血液サンプルを収集した。患者はSLEの1997年改訂米国リウマチ学会(ACR)分類基準に従ってSLEと診断された。患者は全員、病気の活動期であり 、サンプルを得たときに血清中の抗DNA抗体レベルは上昇していた。患者を免疫抑制剤を受けたことのない急性期の患者(n=8)と、グルココルチコイド処理の履歴がある非急性の回復期の患者(n=27)とに分類した。
皮膚筋炎(DM)の患者も東北大学病院にて診断した。5名の健康なドナー(男性2名、女性3名、年齢25-40歳)を発明者らの研究室及び東北大学病院から募集し、書面にてインフォームドコンセントを得た。
血液サンプル(10-40ml /毎回)はVenoject II真空採血管(テルモ株式会社、日本国、東京)を使用して、静脈穿刺により得た。
2.試薬及び抗体
末梢血単核細胞の精製のためにFicoll-Paque PREMIUMをGEヘルスケアバイオサイエンスAB(スウェーデン国、ウプサラ)から得た。FITC標識マウス抗ヒトCD43(クローン1G10)及びFITC標識マウス抗ヒトIgM(G20-127)をBDバイオサイエンス(アメリカ合衆国、カリフォルニア州サンホセ)から購入した。PerCP-Cy5.5標識マウス抗ヒトマウスCD19(HIB19)、APC標識マウス抗ヒトCD27(0323)、パシフィックブルー標識マウス抗ヒトCD3(HIT3a)、FITC標識マウス抗ヒトCD38(HIT2)、及びブリリアントバイオレット421標識マウス抗ヒトCD38(HIT2)をBioLegend社(カリフォルニア州サンディエゴ)から得た。PE標識マウス抗ヒトCD85k(ILT3/LILRB4)(ZM4.1)をeBioscience社(カリフォルニア州サンディエゴ))から得た。
3.細胞分離
単核細胞はFicoll-Paque PREMIUM を用いて密度勾配分離により得た。新鮮血サンプルに等量のPBSを加え、15ml遠心分離チューブ(コーニング社、アメリカ合衆国、ニューヨーク州コーニング)中の3mlのPancollの上に4mlの増分で当該希釈血液を積層し、次に、室温で430×g 、40分間遠心分離した。得られた単核細胞層を収集し、PBSで2回洗浄した。
4.フローサイトメトリー分析及び細胞選別
末梢血単核細胞を免疫蛍光染色し、FACSAria(BDバイオサイエンス社)で選別精製した。データは、FACS Diva (BDバイオサイエンス社)及びFlowJoソフトウェア(Tree Star社 、アメリカ合衆国、オレゴン州アシュランド)で分析した。ダブレットの細胞を、製造業者の指示書に従って前方散乱(FSC)−幅(FSC-W)対FSC−高さ(FSC-H)でゲートすることにより除去した。
5.B細胞の培養及び刺激
インビトロでのB細胞の形質芽細胞への発達を誘導するために、選別精製したメモリーB細胞を、10%FCS、5×10-5 M 2-メルカプトエタノール、2mM glutamax(Life Technologies社、カリフォルニア州カールスバッド)、50μg/mlトランスフェリン、及び5μg/mlインシュリンを補充したIscove改変ダルベッコ培地に懸濁し、24ウェルプレートに1.5×105細胞/mlの濃度で播種し、次に10g/ml CpG-ODN、50ng/ml ヒスチジンタグ付CD40L(R&D社、ミネソタ州ミネアポリス)、5μg/ml 抗ポリヒスチジンモノクローナル抗体 (R&D社)、20U/ml IL-2(アフィメトリックス社、カリフォルニア州サンディエゴ)、50ng/ml IL-10(PeproTech社、ニュージャージー州ロッキーヒル)及び10ng/ml IL-15(PeproTech社)を加えて培養した。
培養4日目に、細胞を洗浄し、Blood.2009;114(25):5173-5181に記載したように、20U/ml IL-2、50ng/ml IL-10、10ng/ml IL-15及び50ng/ml IL-6(PeproTech社)を加えて3日間培養した。別の一連の実験では、選別精製したナイーブB細胞及び4日間培養した形質芽細胞を本実施例で記載した種々のサイトカインの組み合わせにより刺激した。
6.ELISA及びELISpotアッセイ
Total IgG及びdsDNA IgGを測定するために、製造業者の指示書に従ってHuman IgG ELISAキット及びHuman dsDNA IgG ELISAキットを用いてELISAを行った。Total IgGの分泌する細胞を検出するために、ヤギ抗ヒトIgG-Fcコーティング抗体15μg/ml(BethylLab社)でコートし、10% FCSのRPMI1640でブロッキングした。MultiScreen-IP プレート(Millipore、マサチューセッツ州ビルリカ)を用いてELISpotアッセイにより決定した。
1×103の選別精製した形質芽細胞を200μlのRPMI培地にて37℃で12時間培養し、その後プレートをHRP標識ヤギ抗ヒトIgG検出抗体で処理し、3-アミノ-9-エチルカルバゾール (AEC)で発色させた。抗dsDNA抗体を分泌する細胞を検出するために、プレートを0.1% メチル化BSA(シグマ社)でプレコーティングし、子ウシ胸腺(シグマ社)由来の10μg/ml dsDNAをコーティングし、1% BSA(シグマ社)含有PBSでブロッキングした。1×104個の選別精製された形質芽細胞を200μlのRPMI培地にて37℃で12時間培養し、その後、プレートをHRP標識ヤギ抗ヒトIgG検出抗体で処理し、AECで発色させた。スポットを顕微鏡下 で調べ、ImageJ 1.49vソフトウェア(Rasband W、米国国立精神衛生研究所、メリーランド州ベテスダ、 http://rsb.info.nih.gov/ij/download.html)を用いて分析した。
7.抗体重鎖可変領域(VH)配列分析
7名の回復期患者又は3名のSLEの急性期患者から、NucleoSpin (登録商標)RNA XSキット(Macherey-Nagel社、ドイツ国デューレン)を使用してtotalRNAをB4-又はB4+形質芽細胞から単離し、ReverTra Ace(登録商標) (東洋紡株式会社、日本国大阪)でc DNA合成に供した。VH遺伝子転写物はnested PCRにより増幅した。第一ラウンドのPCRのサイクリングプログラムは94℃1分とし、次に94℃30秒、58℃30秒、及び72℃30秒を20サイクルとした。nestedのサイクリング・プログラムは、94℃1分、次に94℃30秒、62℃30秒、及び72℃30秒を20サイクルとした。VH遺伝子のPCR増幅に使用されるプライマーはVH遺伝子の配列に基づいて作製した。PCR産物をpMD20Tベクター(タカラバイオ株式会社、日本国大津)にサブクローニングし、ABI PRISM 3100遺伝分析装置 (Applied Biosystems社、英国ウォリントン)で配列決定した。Ig重鎖の可変部領域遺伝子の使用についてはIMGT/V-QUEST(http://www.imgt.org)を使用して決定した。
8.RNA-Seq分析
RNAはNucreospin(登録商標)RNA XS(タカラバイオ)を用いて単離した。cDNAライブラリは、Illumina多重配列決定 (Agilent Technologies社)用のSureSelectストランド特異的RNAライブラリPrepにより合成し、49-bpシングルエンド読み取りモードでHiSeq 1500シークエンサー(Illumina社)で配列決定した。配列の読み取り値をマッピングした後、100万の読み取り値当たりの1キロ塩基のエキソン当たりの断片(FPKM)として表わされるデータを、さらに詳しい分析であるIngenuity Pathway Analysis (IPA, Qiagen社)に使用した。IPAは2つの生物群で異なるネットワーク及び経路を決定するためのコア分析法である(http://www.ingeniuity.com)。
9.統計分析
統計分析は、図面の説明に記載するように、少なくとも3つの独立した実験に基づき、Mac 2011ソフトウェアバージョン用のマイクロソフトエクセル (マイクロソフト社、アメリカ合衆国、ワシントン州シアトル)とGraphPad Prism(GraphPad Software社、アメリカ合衆国、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して行なった。また、適切な場合、データは平均±標準偏差で表わした。データの統計的有意差は、図面の説明に記載するように、各種検定を用いて比較した。P<0.05は統計的に有意とみなした。
(2)結果
本願発明者らの、健常ドナーの形質芽細胞上にLILRB4(以下、単にB4と称する)が異所的に発現しているという以前の知見を拡張するためにSLE患者由来のPBMCサンプルでフローサイトメトリーを行ったところ、図1(A)に示すように、CD3-CD19+細胞リンパ球からCD19+CD27- ナイーブB細胞、CD19+CD27+ メモリB細胞、及びCD19+CD27high 形質芽細胞がゲートされた。図1(B)に示すように、B4はSLE患者のナイーブB細胞及びメモリーB細胞では発現せず、形質芽細胞にのみ明確に発現していた。図1(C)に示すように、SLE患者の形質芽細胞も健常者の形質芽細胞も見かけ上2つの集団から構成されており、急性期のSLE患者では大きな集団は、健常対照(B4lo集団として定義する。図1(C)の一番下の図)と比較して有意に高いB4発現を示した(B4hi集団として定義する。図1(C)の上から2番目の図)。何らかの免疫抑制剤を受けた回復期のSLE患者では、B4陽性集団は中間レベルのB4発現を示した(B4int集団として定義する。図1(C)の上から3番目の図)。SLEに似た全身性の自己免疫疾患である急性皮膚筋炎(DM)の患者の形質芽細胞でも、高いB4発現を示した(図1(D)及び図4参照)。DMでは、B4発現レベル(B4hi-intとして定義する)はB4hi とB4intの中間であった。急性期SLE、回復期SLE、及び健常者ではB4陰性細胞(B4-集団として定義する)も種々の集団サイズで観察された(図1(C))。
形質芽細胞のB4レベルの増加と平行して、CD19+ B細胞中のB4+細胞の割合(%)は、急性期SLE患者では回復期SLE患者及び健常対照のそれよりも有意に高かった(図1(E))。
次に、前述のSLE患者におけるB4発現と疾患の重症度との相関に鑑みて、SLE患者におけるB4発現と、血清中の抗dsDNAIgGレベルとの相関について検討した。
図2に示すように、SLE患者におけるB4の発現レベルと抗dsDNA IgG(抗二本鎖DNA IgG)濃度との間には有意な相関があったが、total IgGとは相関が見られなかった。
まとめると、この結果は逆説的にも、形質芽細胞における免疫寛容原性B4の発現レベル及びB4+集団のサイズと、SLE患者における病原性抗dsDNAの血清レベルとが正の相関にあることを示している。
次に、SLE患者のB4hi形質芽細胞集団における抗dsDNA IgG自己抗体産生細胞が増大しているかどうかを調べた。
急性期SLE患者のtotal IgG産生細胞における抗dsDNA IgG(自己抗体)産生細胞の割合は6%以下に相当し、有意でないものの、B4hi集団ではB4-集団よりも抗dsDNA IgG産生細胞の頻度が高かった(図3(A)左及び図3(B)左)。回復期のSLEにおけるB4int集団とB4-集団では抗dsDNA IgG産生細胞の頻度が同等であったが、B4hi集団よりも低い傾向にあった((図3(A)右及び図3(B)左)。
B4hi集団における抗dsDNA IgG産生細胞の増大が、細胞ごとに産生される抗dsDNA IgGの量が高くなっていることに起因しているかどうかを確かめるために、ELISpotアッセイで各スポットのシグナル強度をtotal IgG又は抗dsDNA IgGについて測定し、B4hi、B4int、及びB4-集団の形質芽細胞間で比較した。その結果、total IgGのスポットに関しては、3つの集団では強度がほぼ同等であったが(図3(B)中央の図)、抗dsDNA 特異的IgGスポットは、B4hiのシグナル強度が急性期SLEのB4-及びB4intのシグナル強度よりも高い傾向があった(図3(B)右)。これは、集団における病原性細胞の頻度が増大しているというよりも、B4hi集団では抗dsDNA IgGの産生がB4-及びB4int集団よりも高いことを示唆している。
次に、急性期及び回復期のSLE患者のB4hi、B4int、及びB4-の形質芽細胞のPCR分析により、抗dsDNA IgGをコードするIgG重鎖の可変領域(VH)の発現について調べた。VH配列のために増幅されたランダムに選択されたcDNAを調べたところ、total VH配列中の抗dsDNA IgGをコードするVH4-34の頻度がB4hi集団ではB4int及びB4-集団よりも有意に高くなっていた(図3(C))。これはVH4-34がB4hi集団ではB4int及びB4-集団よりも活発に転写されたことを示している。
急性SLEのB4hi集団とB4-集団で、抗dsDNA VHにおける変異アミノ酸の数、CDR3の長さ、推定CDR3電荷が同等であった(図3(D))。
なお、VH4-34のFR1〜FR3及びCDR1〜CDR3の配列を図4に示す。
これらの結果は、病原性Ig遺伝子の転写が活発になるために、抗dsDNA IgG産生がB4hi細胞ではB4int及びB4-細胞よりも高いことを示した。
次に、急性皮膚筋炎(DM)患者のB4hi及びB4- 形質芽細胞を用いて、RNA発現プロファイルを調べた(図5(A),(B))。DM患者の抗dsDNAレベルは有意に低かった(データ非図示)。
RNA-seqをIngenity Pathway Analysis(IPA)と組み合わせると、B4-形質芽細胞と比較して、B4hi-int形質芽細胞ではATシグナリング、細胞周期G2/M DNA損傷チェックポイント制御、Sonic Hedgehogシグナリング、サイクリン及び細胞周期制御に関与するアップレギュレートされた遺伝子が示されると共に(図5(C)上図)、CD40シグナリングやB細胞受容体シグナリング等のMAPキナーゼ関連経路に関与するダウンレギュレートされた遺伝子が示された(図5(C)下図)。
細胞周期及びサイトカインのシグナリングに関与する遺伝子を項目別にヒートマップにすると、B4hiでアップレギュレートされているCCNB2及びCDC2(図5(D))やB4hi-intでダウンレギュレートされているIL-6及びIL-10(図5(E))のような増殖関連遺伝子が同定された。転写因子のヒートマップではBACH2やPAX5等のB細胞転写因子及びPRDM-1, XBP1及びIRF4等の形質細胞特異的転写因子がB4hi-intとB4-で同等に発現しており、これらの転写因子がB細胞から形質細胞への分化経路においてB4細胞間で等価であることを示唆した。まとめると、DMのB4hi-int形質芽細胞は分化上はB4-と等価であるが、B4-よりも細胞周期が高まっている特徴が示された。
最後に、B4発現をどのサイトカインが誘導するかを調べた。
図6(A)は、健常者から得たナイーブB細胞をIL-2、IL-6及びIFN-α(各サイトカインは単独又は組み合わせ)の存在下で4日後CpGで刺激し、その後、B4とCD38の発現をフローサイトメトリーにより調べた結果を示す。
図6(B)は、健常者から得たメモリーB細胞を、IL-2、IL-10及びIL-15(各サイトカインは単独又は組み合わせ)の存在下で4日間、CpG及び抗CD40で刺激し、さらに3日間IL-2、IL-10、IL-15及びIL-6の図に示した種々の組み合わせの存在下で培養し、B4とCD38の発現をフローサイトメトリーにより調べた結果を示す。
その結果、IL-2 及びIFN-αによるナイーブB細胞の刺激はB4及びCD38の誘導に有効であり、IL-2 及びIL-15によるメモリーB細胞の刺激はCD38+B4+細胞の生成に有効であるが、IL-10はCD38+B4+細胞の生成に阻害性であることが判明した。
以上の研究から、B4が急性期のSLE患者のPBMCの形質芽細胞で異所的に高レベル発現していることが判明した。B4hi形質芽細胞集団は病原性抗dsDNA IgGの活性生産体であり、図7に示すように病原性の活性化の履歴を有する細胞を表わしている。
実施例2 川崎病 (KD)患者におけるLILRB4の測定
(1)方法
1.川崎病患者由来の末梢血サンプル
国立病院機構 仙台医療センターで診断ガイドラインに従って急性期川崎病と診断された外来患者(男性7名、女性11名、年齢0.5-5歳)から書面にてインフォームドコンセントを得て、静脈穿刺により得た。
血液サンプルを収集した。静脈内免疫グロブリン治療の導入(IVIG)の治療前に0.5〜2mlの末梢血サンプルを得た。
高用量のIVIG処理(2g/kg)を一度受けた4-12日後の同じ患者からも血液サンプルを得た(回復期KD患者)。
2.試薬及び抗体
末梢血単核細胞の精製のためにFicoll-Paque PREMIUMをGEヘルスケアバイオサイエンスAB(スウェーデン国、ウプサラ)から得た。PE標識マウス抗ヒトCD85j(ILT3/LILRB1)(GHI/75) 抗体をBDバイオサイエンス(アメリカ合衆国、カリフォルニア州サンホセ)から購入した。PerCP-Cy5.5標識マウス抗ヒトマウスCD19(HIB19) 抗体アロフィコシアニン(APC)標識マウス抗ヒトCD27(0323) 抗体、パシフィックブルー標識マウス抗ヒトCD8(RPA-T8) 抗体、FITC標識マウス抗ヒトCD4(RPA-T4) 抗体、PE標識ラット抗ヒトCD85d(ILT4/LILRB2)(42D1) 抗体、及びPE標識ラット抗ヒトCD85a(ILT5/LILRB3)(MKT5.1) 抗体をBioLegend社(カリフォルニア州サンディエゴ)から得た。PE標識マウス抗ヒトCD85k(ILT3/LILRB4)(ZM4.1) 抗体をeBioscience社(カリフォルニア州サンディエゴ)から得た。
3.細胞分離
単核細胞はFicoll-Paque PREMIUMを用いて密度勾配分離により得た。新鮮血サンプルに総量4mlになるようにPBSを加え、15ml遠心分離チューブ(コーニング社、アメリカ合衆国、ニューヨーク州コーニング)中の3mlのFicollの上に4mlの当該希釈血液を積層し、次に、室温で430×g 、40分間遠心分離した。得られた単核細胞層を収集し、PBSで2回洗浄した。
4.フローサイトメトリー分析及び細胞選別
末梢血単核細胞(PBMC)を免疫蛍光染色し、FACSCanto (BDバイオサイエンス社)及びFACSAria(BDバイオサイエンス社)で選別精製した。データは、FACS Diva (BDバイオサイエンス社)及びFlowJoソフトウェア(Tree Star社)で分析した。ダブレット細胞を、前方散乱(FSC)−幅(FSC-W)対FSC−高さ(FSC-H)でゲートすることにより除去した。
5.統計分析
統計分析は、GraphPad Prism(GraphPad Software社、アメリカ合衆国、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して行った。また、適切な場合、データは中央値で表わした。データの統計的有意差は、一元配置分散分析にKruskal-Wallis検定をし、ポストホック検定にDunns多重比較検定を用いて、対照と急性期及び回復期とを比較した。また、急性期と回復期の比較にはWilcoxon符号付き順位検定を用いた。P<0.05は統計的に有意とみなした。
(2)結果
KD患者のPBMCにおけるB細胞サブセット及びそのILT/LILR免疫制御受容体を調べるために、末梢血中PBMCのリンパ球と単球をフローサイトメトリーにより解析した(図8参照)。この段階で、PBMC中のT細胞サブセット及びB細胞サブセットの頻度が不正確に概算されるのを避けるため、特に急性期KD患者からのPBMC調製物が混在した多くの顆粒球をゲートアウトした(図8の左から2番目の図)。単球ゲートの細胞をそのILT/LILR発現について直接調べた。リンパ球サブセットを正確に調べるため、リンパ球ゲートの細胞をダブレット除去した(図8の左から3番目の図)。シングレットになったリンパ球をCD4+CD8+細胞及びCD4-CD8-細胞についてさらにゲートし、その後、3つの主要なB細胞サブセットであるCD19+CD27-ナイーブB細胞、CD19+CD27+メモリーB細胞、及びCD19+CD27high 形質芽細胞についてゲートした(図8の右の図)。
急性期KD患者では有意なPBMC数の減少が観察され、回復期では対照群と比較してPBMC数の回復が観察された(図9(A))。回復は、CD4+T細胞並びにCD8+T細胞、ナイーブB細胞並びにメモリB細胞、及び単球で観察された(図9(B))。PBMCにおけるCD8+T細胞の頻度並びにナイーブB細胞頻度(図9(C))、CD4+T細胞/CD8+T細胞比(図9(D))においても回復が観察された。PBMCにおけるCD4+T細胞並びにメモリーB細胞の頻度(図9(C))及びCD19+B細胞におけるメモリーB細胞の頻度(図9(E))は急性期KDと回復期KDで有意に変化しなかったが、回復期のPBMCにおける形質芽細胞(図9(C))及びCD19+B細胞中のナイーブB細胞並びに形質芽細胞の頻度(図9(E))に有意な差が見出され、回復期におけるCD19+B細胞中の形質芽細胞の頻度は対照群のそれと同等であった。これらの結果に基づくと、急性期におけるCD19+B細胞の形質芽細胞区画の拡大と回復期におけるその減少はKD病理に関連する可能性があると推測される。
次に、B細胞サブセット及び陽性対照としての単球のLILRB1-B4(ILT2/CD85j, ILT4/CD85d, ILT5/CD85a及びILT3/CD85k)の発現プロファイルをフローサイトメトリーで測定した。初期の研究から予想されるように(Blood 2010;115:3278-3286, J.Exp.Med.1997; 186:1809, J. Exp.Med.1997; 185:1743)、LILRの4つすべての阻害性アイソフォームは単球で確実に発現しており、ILT2/LILRB1はすべてのB細胞サブセットに発現していたが、ILT4/LILRB2及びILT5/LILRB3のB細胞サブセット上での発現は急性期でも回復期でも最小であった。興味深いことに、ILT3/LILRB4は形質芽細胞に固有かつ確実に発現しており、急性期における形質芽細胞でのレベルは単球でのそれよりも低かった(図10(A))。比較分析によると、LILRB1レベルはナイーブB細胞並びにメモリーB細胞及び単球で急性期でも回復期でも顕著な変化はなかったが(図10(B)上)、LILRB4は回復期では形質芽細胞で有意に減少した(図10(B)下)。形質芽細胞におけるLILRB4発現レベルの減少と同時に、形質芽細胞サブセット中のLILRB4+頻度は有意に減少した(図10(C))。対照サンプルにおける形質芽細胞のLILRB4レベルとLILRB4+頻度を測定したところ、それらは回復期のサンプルのそれらと有意差はなかったが、急性期のものとは有意差があった(図10(B),(C))。これらの結果は、形質芽細胞におけるILT3/LILRB4レベル及びILT3/LILRB4集団の出現がKDの病理に関連することを示唆している。

Claims (9)

  1. 被験体由来の試料中のLILRB4を測定すること、及び
    前記LILRB4の測定値を参照値と比較すること
    を含む、被験体における感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を判定する方法。
  2. 前記疾患の判定は、前記疾患の有無の判定、前記疾患の発症の危険性の評価、前記疾患の重症度の判定、前記疾患の治療方法の選択、前記疾患の治療効果の評価、前記疾患の再発の有無、又は前記疾患の再発の危険性の評価である請求項1に記載の方法。
  3. 前記参照値よりも高い前記LILRB4の測定値が、前記疾患の存在又は前記疾患を発症する危険性の増大を示す請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記試料がLILRB4を測定することが、形質芽細胞が発現しているLILRB4を測定することを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記疾患が全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎及び川崎病から成る群から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 被験体由来の試料中のLILRB4を測定できる試薬を備える、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を判定するためのキット。
  7. 前記疾患の判定は、前記疾患の有無の判定、前記疾患の発症の危険性の評価、前記疾患の重症度の判定、前記疾患の治療方法の選択、前記疾患の治療効果の評価、前記疾患の再発の有無、又は前記疾患の再発の危険性の評価である請求項6に記載のキット。
  8. 被験体由来の試料中のLILRB4を測定できる試薬を備える、感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患を診断するためのキット。
  9. 感染又は自己免疫に由来する炎症性疾患の有無又は前記疾患の発症の危険性を診断するための診断薬を製造するためのLILRB4の使用。
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