WO2018117120A1

WO2018117120A1 - 鋼製品の製造方法および鋼製品

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Publication number: WO2018117120A1
Application number: PCT/JP2017/045598
Authority: WO
Inventors: 隆一郎齋藤; 俊太本間; 将平崎山; 良二西島; 隆一関; 一臣富田; 雅樹宮下
Original assignee: 新日鐵住金株式会社
Priority date: 2016-12-19
Filing date: 2017-12-19
Publication date: 2018-06-28
Also published as: JP6687128B2; JPWO2018117120A1

Abstract

鋼製品の製造工程にて一貫してトレーサビリティを確保する。　鋼片識別コードが付された鋼片から、鋼片識別コードを読み取り、前記鋼片を加熱して圧延する熱間圧延工程、熱間圧延された前記鋼片を分割して鋼中間材を製造するに際し、該鋼中間材と、前記鋼片識別コードの情報、及び該鋼中間材が前記鋼片のどの位置に対応するかを示す位置情報とを対応づけて該鋼中間材を得る分割工程、前記鋼中間材を冷却床にて冷却するに際し、冷却床の入口から出口まで前記鋼中間材と前記鋼片識別コードの情報及び前記位置情報との対応づけを保ったまま前記鋼中間材を移動させる冷却工程、前記鋼中間材を所定の長さに切断して鋼製品を製造する切断工程、及び前記鋼製品に鋼製品管理コードをマークするマーキング工程を含み、前記鋼製品管理コードは、前記切断された鋼中間材に対応づけられていた前記鋼片識別コードの情報及び前記位置情報と対応づけられていることを特徴とする鋼製品の製造方法を用いて鋼製品を製造する。

Description

鋼製品の製造方法および鋼製品

　本発明は、鋼製品の製造過程において、鋼製品用の連続鋳造鋳片の鋳造から一貫してトレーサビリティを管理する鋼製品の製造方法に関する。

　機械構造用部品や自動車部品等の素材として有用な鋼材、例えば、棒鋼は、一般に、連続鋳造鋳片を圧延し切断して製造した鋼片に熱間圧延を施して長尺の棒鋼材とし、次いで、所定の長さに切断して製造される。その後、棒鋼は、同一ロット内で、所要本数が結束されて、表面疵や内質欠陥の検査工程へ搬送され、合格したものが出荷される。

　従来、棒鋼の製造においては、鋼片段階までトレーサビリティ（製造履歴情報）を確保し、品質の維持・安定化を図っているが、通常、長尺の棒鋼材を所定の長さの棒鋼に切断した後は、棒鋼１本単位で、個別に、最終製品段階までトレーサビリティを確保していない。それ故、結束した棒鋼の中に、表面疵や介在物などの内質欠陥を有する棒鋼が存在する場合、これら棒鋼の発生原因を鋳片段階まで遡って解明することはできない。

　また、連続鋳造においては、同じ鋼種又は異なる鋼種を連続して鋳造するが、湯混ざり部位（鋼種の継目）では成分組成が乱れ、この部位は、鋼製品製造用の鋼片として使用できないので、湯混ざり部位を含む鋼片は鋼片段階で排除される。

　この排除した鋼片には、部分的に、製品化が可能な部位が存在するが、鋼片段階で不良部を除去することは困難である。それ故、抜き取りが容易な最終製品段階で、不合格品を排除することが望ましいが、前述のように、最終製品段階までトレーサビリティが確保されていないため、不良部位を含む鋼片は、鋼片段階で排除せざるをえなかった。

　特許文献１には、作業順を示す連番ナンバーを示すバーコードシールを、結束する鋼材（棒鋼、鋼管等）に貼り付けて、束振替異鋼材（複数束を同時に解束し、作業後、解束時に取り外した工程ラベルを誤って取り付けた鋼材）の発生を防止する方法が開示されている。しかし、特許文献１の方法は、解束・再結束過程において、工程ラベルの取付けに誤りがないようにするものである。

　特許文献２には、鉄鋼製品にラベルとステンシルシートを貼り付け、ラベルとステンシルシートを読み取り、ラベルとステンシルシートが対応する場合に、ステンシルシートを用いて識別情報を含む別のバーコードを表示して鉄鋼製品を識別管理する方法が開示されている。しかし、特許文献２の方法は、出荷時、誤って、別の鉄鋼製品を出荷するのを防止するものである。

　結局、特許文献１及び２の方法は、最終製品段階での製品管理に誤りがないようにするものである。

特開２０１１－２０６８３１号公報特開２０１３－２１４２０５号公報

　前述したように、鋼製品として出荷する棒鋼を製造する場合、鋼片段階まで、トレーサビリティ（製造履歴情報）を確保し、品質の維持・安定化を図っているが、最終製品段階まで、トレーサビリティを確保していないので、結束した棒鋼（鋼製品）の中に、表面疵や介在物などの内質の欠陥を含む棒鋼が見つかっても、その発生原因を、鋳片段階まで遡って解明することはできない。

　即ち、従来の棒鋼の製造においては、棒鋼を、どの鋼片を用いて製造したのか、又は、鋼片のどの部位で製造したのかを把握できず、結局、欠陥棒鋼の発生原因を、棒鋼材の切断前の上工程に遡って解明することはできない。

　そこで、本発明は、棒鋼に限らず、表面疵や介在物などの内質の欠陥を有する鋼製品において、該欠陥の発生原因を、鋳片段階まで遡って解明するため、鋳造から鋼製品製造までの工程において、一貫して、トレーサビリティを確保して、品質の維持・安定化、歩留りの向上、操業の安定化を図ることを課題とし、該課題を解決する鋼製品の製造方法を提供することを目的とする。

　本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。その結果、最終の鋼製品の端面に、鋼製品管理コードを付与することで上記課題を解決できることを見出した。当該鋼製品管理コードは、当該鋼製品の材料となった鋼片を示す鋼片識別コード、および当該鋼片において対応する位置を示す位置情報と対応づけられていることが必要である。このようにすることで、鋳造から鋼製品製造までの工程において、一貫して、トレーサビリティを確保できることを見出した。この知見については後述する。

　本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。

　（１）鋼製品の製造方法であって、鋼片識別コードが付された鋼片から、鋼片識別コードを読み取り、前記鋼片を加熱して圧延する熱間圧延工程、前記圧延された前記鋼片を分割して鋼中間材を製造するに際し、該鋼中間材と、前記鋼片識別コードの情報、及び該鋼中間材が前記鋼片において対応する位置を示す位置情報とを対応づけて順に該鋼中間材を得る分割工程、前記鋼中間材を冷却床にて冷却するに際し、冷却床の入口から出口まで前記鋼中間材と前記鋼片識別コードの情報及び前記位置情報との対応づけを保ったまま前記鋼中間材を移動させる冷却工程、前記鋼中間材に鋼製品管理コードをマークするマーキング工程、前記鋼中間材を所定の長さに切断して鋼製品を製造する切断工程、及び前記鋼製品を結束する結束工程、を含み、前記鋼製品管理コードは、前記鋼中間材に対応づけられていた前記鋼片識別コードの情報及び前記位置情報と対応づけられていることを特徴とする鋼製品の製造方法。

　（２）鋼製品の製造方法であって、鋼片識別コードが付された鋼片から、鋼片識別コードを読み取り、前記鋼片を加熱して圧延する熱間圧延工程、前記圧延された前記鋼片を分割して鋼中間材を製造するに際し、該鋼中間材と、前記鋼片識別コードの情報、及び該鋼中間材が前記鋼片において対応する位置を示す位置情報とを対応づけて順に該鋼中間材を得る分割工程、前記鋼中間材を冷却床にて冷却するに際し、冷却床の入口から出口まで前記鋼中間材と前記鋼片識別コードの情報及び前記位置情報との対応づけを保ったまま前記鋼中間材を移動させる冷却工程、前記鋼中間材を所定の長さに切断して鋼製品を製造する切断工程、及び前記鋼製品に鋼製品管理コードをマークするマーキング工程、前記鋼製品を結束する結束工程、を含み、前記鋼製品管理コードは、前記鋼中間材に対応づけられていた前記鋼片識別コードの情報及び前記位置情報と対応づけられていることを特徴とする鋼製品の製造方法。

　（３）前記鋼製品コードは、さらに、前記切断工程において切断された前記鋼中間材における切断部分の位置を示す部分情報と対応付けられていることを特徴とする、前記（１）又は（２）の鋼製品の製造方法。

　（４）前記分割工程において前記鋼中間材が進行する方向と、前記切断工程において前記鋼製品が進行する方向とが互いに逆方向である、ことを特徴とする、前記（３）の鋼製品の製造方法。

　（５）前記冷却工程において、前記冷却床は複数の溝を備え、前記冷却床に配列した前記鋼中間材を、前記複数の溝を、配列を変えずに移動することを特徴とする前記（１）～（４）のいずれかの鋼製品の製造方法。

　（６）前記切断工程は、前記冷却床の溝情報に基づき前記鋼中間材を選択し、選択した前記鋼中間材を切断することを特徴とする前記（５）の鋼製品の製造方法。

　（７）前記鋼片は連続鋳造で製造され、その際に該鋼片に鋼片識別コードを付与することを特徴とする前記（１）～（６）のいずれかの鋼製品の製造方法。

　（８）前記マーキング工程において、前記鋼製品管理コードのマーキングは、前記鋼製品又は前記鋼中間材の端面に、切断順に行うことを特徴とする前記（１）～（７）のいずれかの鋼製品の製造方法。

　（９）前記鋼製品管理コードにより、前記鋼製品の元の鋼片の鋼片部位が湯混ざり部を含むことが判明した場合、前記鋼片から製造された複数の鋼製品のうち、当該鋼片部位から製造された鋼製品を破棄する工程を含む前記（１）～（８）のいずれかの鋼製品の製造方法。

　（１０）前記鋼製品は棒鋼であり、前記鋼中間材は該棒鋼と同径であることを特徴とする前記（１）～（９）のいずれかの鋼製品の製造方法。

　（１１）鋼製品管理コードが表示された鋼製品であって、前記鋼製品管理コードは、鋼中間材を切断して前記鋼製品を得たときに、切断された鋼中間材に対応づけられていた鋼片識別コードの情報、及び鋼中間材が元の鋼片において対応する位置を示す位置情報と対応づけられていることを特徴とする鋼製品。

　本発明によれば、連続鋳造鋳片から鋼製品を一貫して製造する製造プロセスにおいて、最終の鋼製品まで、一貫してトレーサビリティを確保しているので、検査結果の上工程へのフィードバック、内質欠陥を含む鋼製品の抜取り、異鋼種棒鋼の抜取り、客先への適切な製品情報の提供等が可能となり、一層の品質の維持・安定化と歩留りの向上、操業の安定化、客先への情報の充実化等を図ることができる。

一般的な棒鋼の製造工程を模式的に示す図である。棒鋼の製造工程における本発明の第１の実施態様を模式的に示す図である。棒鋼の製造工程における本発明の第２の実施態様を模式的に示す図である。棒鋼の製造工程における本発明の第３の実施態様を模式的に示す図である。棒鋼の製造工程における本発明の第４の実施態様を模式的に示す図である。棒鋼の製造工程における本発明の第５の実施態様を模式的に示す図である。（ａ）は、棒鋼に鋼製品管理コードをマークしない製造方法による棒鋼の検査・出荷を示し、（ｂ）は、本発明にかかる製造方法による棒鋼の検査・出荷を示す。

　本発明の鋼製品の製造方法は、鋼製品の製造過程において、一貫してトレーサビリティを確保して鋼製品の製造方法であって、
　鋼片識別コードが付された鋼片から鋼片識別コードを読み取り、鋼片を加熱して圧延し、
　熱間圧延された鋼片を分割して鋼中間材を製造するに際し、鋼中間材と、鋼片識別コードの情報、及び鋼中間材が鋼片において対応する位置を示す位置情報とを対応づけて鋼中間材を得、
　鋼中間材を冷却床にて冷却するに際し、冷却床の入口から出口まで鋼中間材と鋼片識別コードの示す情報及び位置情報との対応づけを保ったまま鋼中間材を移動させ、
　鋼中間材を所定の長さに切断して鋼製品を製造し、及び
　鋼製品に鋼製品管理コードをマークする
ことを特徴とする。

　ここで、鋼製品管理コードは、切断された鋼中間材に対応づけられていた鋼片識別コードの示す情報、及び位置情報と対応づけられている。

　本発明の鋼製品の製造方法においては、鋼中間材を冷却床にて冷却するに際し、冷却床の入口から出口まで鋼中間材と、鋼片識別コードの示す情報及び位置情報との対応づけを保ったまま鋼中間材を移動させることが必要である。たとえば、冷却床が、搬入される鋼中間材を、圧延順と分割順に配列できる複数の溝を有し、配列された鋼中間材を、冷却床上の配列のまま切断テーブルに搬出できる搬出手段を備え、切断テーブルが、冷却床から搬出される鋼中間材を、冷却床上の配列のまま収容できる複数の溝を備えている構成を例示できる。

　また、熱間圧延工程においては、鋼片識別コードを読み取り、鋼片の検査・手入れ情報を、鋼片識別コード毎に記憶する。

　そして、本発明の鋼製品は、当該鋼製品の材料となった鋼片を示す鋼片識別コード、及び分割された鋼中間材が鋼片において対応する位置を示す位置情報を含む鋼製品管理コードが表示されていることを特徴とする。

　以下、本発明の鋼製品の製造方法の一例について、鋼製品として棒鋼を例にとり、図面に基づいて説明する。

　まず、図１に、一般における棒鋼の製造工程を模式的に示す。一般的に棒鋼は、図１に示す各工程、すなわち熱間圧延工程Ｓ１１０、分割工程Ｓ１２０、冷却工程Ｓ１３０、切断工程Ｓ１４０、結束工程Ｓ１５０を経て、棒鋼が結束された状態で製品として出荷される。

　一般的に棒鋼は、連続鋳造などによって生成された鋼片から製造される。棒鋼の材料となる鋼片１０１は、棒鋼用連続鋳造鋳片（以下「連鋳片」という）を所要の長さで切断した鋳片部位を熱間圧延して製造した鋼片で、加熱炉に装入する前に、その鋼片に固有に対応付けられた鋼片情報を示す鋼片識別コードが、印字、ラベル貼付、打刻等の表示手段で表示されている。

　棒鋼の材料となる鋼片は、例えば、連続鋳造によって製造された鋳片を分塊圧延することによって得られる。連鋳片は、例えば、棒鋼用の成分組成の溶鋼を、通常の条件で連続鋳造した鋳片である。

　熱間圧延工程Ｓ１１０で、鋼片１０１は、加熱炉に装入されて加熱された後に、所定の径（すなわち最終製品である棒鋼とほぼ同径）となるまで圧延される。熱間圧延工程Ｓ１１０で所定の径まで圧延された後、分割工程Ｓ１２０で分割されることにより、鋼中間材１０２ａ～１０２ｄが製造される。

　鋼片１０１から製造された鋼中間材は、冷却床で冷却される（冷却工程Ｓ１３０）。冷却にあたっては、棒鋼製品の作りこみのため、その棒鋼に対して指定された速度で冷却される。

　次に、冷却床で冷却された鋼中間材は、切断床に搬出され、切断工程Ｓ１４０で切断される。

　その後、所定長さに切断された棒鋼は、結束床で、結束工程Ｓ１５０において、所要本数が番線やフープで結束されて、鋼製品束１０３ａ～１０３ｃ等となる。棒鋼は、結束された鋼製品束単位で販売及び輸送がなされる。

　棒鋼製品は、その性質が化学成分によって大きく変化する。そのため、生産された棒鋼と、そのもととなった鋼片との対応は非常に重要である。一般的には、結束された鋼製品束と、そのもととなった鋼片とは対応付けて管理されている。すなわち、鋼製品束から、そのもととなった鋼片を特定することが可能である。

　しかし、一般的になされる鋼製品の製造方法において、トレーサビリティ（製造履歴情報）の確保は、鋼片から鋼製品束までにとどまる。すなわち、棒鋼材（鋼中間材）を切断し、棒鋼（鋼製品）を束として結束した後では、個々の棒鋼（鋼製品）がどの鋼片から圧延されたのか、また、鋼片のどの部位であったのかという情報は失われている。

　特に冷却工程Ｓ１３０では、熱間圧延工程Ｓ１１０及び分割工程Ｓ１２０の直後の鋼中間材は高温になっており、標章を付することは難しい。また、棒鋼は所定の冷却速度で適切に冷却されることがその性質上必要であるため、棒鋼の元となる鋼中間材を個別容器に収納することも難しい。そのため、鋼中間材の配列が確保されない状態で冷却が行われていた。

　さらに、冷却工程Ｓ１３０及び切断工程Ｓ１４０は、複数の鋼中間材を並行して並べた状態で行われることが多く、その結果、異なる鋼中間材（たとえば、鋼中間材１０２ａ及び１０２ｂ）から切断された棒鋼が同一の鋼製品束に結束されることも多い。並行して処理される鋼中間材は同一の鋼片から製造されているため、この形態であっても、鋼製品束と鋼片との対応づけは確保されている。

　しかし、結束後の個々の棒鋼から、元となった鋼片だけでなく、鋼片における位置も特定可能であると、製品の管理性は大幅に改善する。具体的には、後の検査工程で検知した表面疵や内質欠陥等の検査結果を、圧延以前の工程条件に結び付けて、表面疵や内質欠陥等の発生原因を解明することが可能となる。欠陥の発生原因を特定し、その影響範囲を絞り込むことができれば、欠陥の発生した棒鋼と同一の鋼片から生産された棒鋼であっても、影響範囲外の棒鋼については良好な品質を担保することができる。本発明は、このような課題を解決したものである。

　図２に、本発明の鋼製品の製造方法の第１の実施態様を模式的に示す。

　本発明にかかる製造方法では、対象製品となる棒鋼に向けた成分組成を有する溶鋼を、通常の条件で連続鋳造した鋳片から、対象製品である棒鋼を製造する。本発明にかかる製造方法において対象とする鋳片は、異なる成分組成の溶鋼を連続して鋳造し、該溶鋼が混じり合って凝固した湯混ざり部を含んでいてもよい。

　図２に示す第１の実施態様においては、鋼片識別コードの付された鋼片１ａ～１ｃ等から、最終的に出荷される鋼製品束１１を製造する。最初に鋼片１ａから、鋼片識別コードを読み取り、加熱炉２にて熱間圧延向けの温度に加熱し、圧延する。この過程が、本発明における熱間圧延工程に該当する。

　熱間圧延工程で製造された棒鋼材４を、分割機６が、冷却床７の長さに対応する長さで分割することにより、棒鋼材４ａ～４ｃ（すなわち、鋼中間材）を製造する。この分割工程において、製造された鋼中間材は、切断される元となった鋼片１ａに付されていた鋼片識別コード、及び、鋼片１ａにおいて対応する位置を示す位置情報と対応付けられる。

　分割工程で分割された各鋼中間材（棒鋼材４ａ～４ｃ）は、冷却工程において、冷却床７で冷却される。冷却床７での冷却は、鋼製品である棒鋼の性質を実現するために必要な冷速で、所定の温度までなされる。本発明にかかる冷却工程では、分割工程で分割した棒鋼材４ａ～４ｃを、冷却床７に搬入した後、圧延順及び分割順に配列して冷却する。

　冷却床７は、冷却床７の入口から出口まで連続的に並行して設けられた複数の溝を備える。冷却床７に搬入された鋼中間材は、最初、最も入口に近い溝に格納される。鋼中間材は、冷却工程の間、格納されている溝から、その隣の溝へ移動を順に行いつつ、大気又は冷却水への放熱により冷却される。冷却方法は特に限定されず、大気放冷、水冷のいずれも可能である。大気放冷であっても、比較的早い冷速が必要であれば、送風することで衝風冷却（通常の空冷よりも冷速の早い冷却）を行ってもよい。

　さらに、特に遅い冷却速度が必要であれば、冷却床７の上面を保温カバーで覆うことにより、通常の空冷よりもさらに冷速の遅い緩冷却を実現してもよい。複数の溝の間を順に移動した鋼中間材は、もっとも出口に近い溝に格納された後、出口から排出される。本発明にかかる冷却工程では、このように、鋼中間材は、配列を変えずに複数の溝を順に移動することにより、鋼中間材と、鋼片識別コードの情報及び位置情報との対応付けを保ったまま移動する。

　冷却床７に設けられた溝機構は、鋼中間材の配列を維持できるものであればよく、特定の溝機構に限定されない。鋼中間材の配列を確実に維持できる点で、複数溝付きローラー又は複数溝付きウォーキングビームを有する溝機構が好ましい。

　冷却工程を終え、冷却床７の出口から排出された鋼中間材は、切断床８に格納される。切断床８は、棒鋼材を保持する溝８ａを、所要の本数、並列して備えていて、冷却床７から排出された棒鋼材３ａ～３ｃと棒鋼材４ａ～４ｃを、溝８ａにより、冷却床７上の配列を維持して受け取ることができる。

　図２に示す第１の実施態様では、棒鋼材を切断する前に、マーキング工程を行う。マーキング工程では、冷却床７上の配列通りに配列されている棒鋼材３ａ～３ｃと棒鋼材４ａ～４ｃの端面に、鋼製品管理コード表示器１３で、鋼製品管理コードを付与する。鋼製品管理コードは、切断対象である鋼中間材に、分割工程で対応付けられた鋼片識別コードの情報及び位置情報と対応づけられている。そのため、鋼製品管理コードに基づいて、鋼片識別コード及び位置情報を参照することができる。

　鋼製品管理コード表示器１３で鋼製品管理コードを付与する手段は、鋼製品に鋼製品管理コードを付与できる手段であればよい。例えば、印字、ラベル貼付、打刻、レーザ焼付等を用いてもよい。

　鋼片識別コードは、前述したように、当該鋼製品の材料となった鋼片を示す情報を示す識別コードである。鋼片識別コードには、当該鋼片の元の連続鋳造鋳片における鋳片部位を示す情報が含まれていてもよい。位置情報は、圧延後分割された鋼中間材が、圧延前の鋼片において対応する位置を示す情報である。

　棒鋼材３ａ～３ｃと棒鋼材４ａ～４ｃの端面に、鋼製品管理コードを表示した後、棒鋼材３ａ～３ｃと棒鋼材４ａ～４ｃを、切断工程により、切断機９で所定長さに切断する。切断工程では、棒鋼材を、マーキング工程で鋼製品管理コードを付された端面を有する一部（鋼製品部）と、他方の一部（残部）とに分離されるように切断する。切断工程では、鋼製品部が所定長さとなるように切断する。切断工程により、棒鋼材から切り出された鋼製品部が、そのまま鋼製品となる。これにより、鋼製品管理コードが表示された鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ’と棒鋼４ａ'～４ｃ'を製造する。

　鋼製品管理コードが表示された鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'は、結束工程で、搬送機（図示なし）で結束床１０へ搬送され、所要本数が番線やフープで結束されて、鋼製品束１１となる。鋼製品束１１には、異なる棒鋼材（棒鋼材３ａ～３ｃ及び棒鋼材４ａ～４ｃ）から切断された棒鋼（棒鋼３ａ'～３ｃ'及び棒鋼４ａ'～４ｃ'）が含まれるが、いずれの棒鋼にも鋼製品管理コードが付与されている。そのため、結束され、さらに需要家への出荷された後においても、棒鋼の鋼製品管理コードに基づいて、その棒鋼の元となった鋼片及び当該鋼片における位置を特定することができる。

　鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'の端面に、鋼製品管理コードが付与された後は、棒鋼の搬送順を守って搬送する必要はない。したがって、以降の工程における搬送機は、切断床８の溝８ａに対応する溝機構を備えていなくてもよい。

　分割工程によって切断された直後の鋼中間材は高熱であるため、鋼中間材の表面に標章や文字を付すことは難しい。また、次工程である冷却工程では、鋼中間材を、それぞれ対象製品である鋼製品（棒鋼）を製造するために定められた所定の冷却速度で冷却することが必要であるため、冷却を阻害しないために個別の格納容器に格納することも難しい。

　本発明では、入口から出口まで連続的に並行して設けられた複数の溝を備える冷却床７を用いて冷却することにより、分割工程で対応付けられた鋼中間材と、鋼片識別コードの情報及び位置情報との対応付けを保ったまま冷却工程を行う。そのため、鋼中間材そのものへの標章又は文字の付与、もしくは鋼中間材の識別容器への格納によらず、対応関係を維持できる。

　本発明によって製造された棒鋼材には、鋼片識別コード及び位置情報に対応付けられた鋼製品管理コードが付与されている。棒鋼材の鋼製品管理コードを参照することにより、当該棒鋼材の材料となった鋼片及び当該鋼片における位置を特定することができる。

　具体的には、棒鋼材から鋼製品管理コードを読み取り、当該鋼製品管理コードに対応付けられた鋼片識別コードの情報、及び位置情報を参照することにより、その棒鋼材がどの鋼片のどの位置から製造されたかを特定することができる。そのため、湯混ざり部を含む鋼片から製造された棒鋼材であっても、その棒鋼材が湯混ざり部に該当する位置から製造されたものであるか否かを判断することができる。

　なお、鋼製品管理コードが棒鋼に付与された後の対応付けの管理は、専用のシステムによってもよいし、あるいは帳簿などで管理してもよい。システムで管理する場合には、鋼製品管理コードと、鋼片識別コード及び位置情報との対応関係を記録したデータベースを備えたシステムにおいて、鋼製品管理コードに基づいて検索処理を行うことにより、当該鋼製品管理コードに対応付けられた鋼片識別コード及び位置情報を参照することができる。

　ここまで述べた第１の実施態様においては、棒鋼材には鋼製品管理コードが付与されており、鋼片識別コード、もしくは位置情報に対応付けられたコード等は必ずしも棒鋼材に付与されなくともよい。一方、棒鋼材に鋼製品管理コードを付与するマーキング工程に並行して、もしくはマーキング工程に前後して、棒鋼材に鋼片識別コードもしくは位置情報に対応付けられたコード等を付与してもよい。

　なお本発明は、図２に示したように、分割工程において鋼中間材が進行する方向と、切断工程において鋼製品が進行する方向とが互いに逆方向であってもよい。この場合であっても、鋼中間材と、鋼片識別コードの情報及び位置情報との対応付けが保たれる。

　さらに本発明においては、鋼製品管理コードは、切断工程において切断された鋼中間材における切断部分の位置を示す部分情報と対応付けられているものであってもよい。このようにすることで、製造された棒鋼材の、鋼片における位置がより具体的に特定できるようになる。特に、分割工程において鋼中間材が進行する方向と、切断工程において鋼製品が進行する方向とが互いに逆方向であった場合には、熱間圧延工程で先頭で圧延機５を通過した部分は、切断工程では終端末として最後に切断されて棒鋼材となる。このように、鋼中間材の搬送方向の入れ替わりがある場合であっても、棒鋼材に付与された鋼製品管理コードが示す情報に、鋼中間材における切断部分の位置を示す部分情報が対応付けられていると、当該棒鋼材が、鋼片における対応する位置を特定することが容易となる。

　ここまで示した第１の実施態様においては、マーキング工程が切断工程よりも先行する形態を示した。本発明はこれに限定されず、マーキング工程と切断工程とがほぼ並行して実行される態様であってもよい。すなわち、マーキング工程がなされている間に切断工程が実行される態様であってもよい。これを、本発明の第２の実施態様として以下に示す。

　図３に、棒鋼の製造工程における本発明の第２の実施態様を模式的に示す。図３中、図２と同じものは、同じ数字で示した。以下の図４～図６においても同様である。

　図３に示す第２の実施態様では、切断床８上に、冷却床７上の配列を維持して載置されている棒鋼材３ａ～３ｃと棒鋼材４ａ～４ｃを、切断機９で所定の長さに切断している間に、棒鋼材３ａ～３ｃと棒鋼材４ａ～４ｃの端面に、鋼製品管理コード表示器１３で鋼製品管理コードを表示する。切断終了後には、鋼製品管理コードが表示された鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'を得ることができる。

　鋼製品管理コードが表示された鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'は、搬送機（図示なし）で結束床１０へ搬送され、所要本数が番線やフープで結束されて、鋼製品束１１となる。鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'の端面には、既に、鋼製品管理コードが表示されているので、これら棒鋼を搬送する搬送機は、切断床８の溝８ａに対応する溝機構を備えていなくてもよい。

　ここまで示した第１及び第２の実施態様においては、マーキング工程において、鋼中間材に鋼製品管理コードが付与される形態を示した。本発明はこれに限定されず、切断工程により鋼製品が製造された後、マーキング工程で鋼製品に鋼製品管理コードが付与される態様であってもよい。これを、本発明の第３の実施態様として以下に示す。

　図４に、棒鋼の製造工程における本発明の第３の実施態様を模式的に示す。図４に示す実施態様では、切断床８上に、冷却床７上の配列を維持して載置されている棒鋼材３ａ～３ｃと棒鋼材４ａ～４ｃを、切断機９で所定の長さに切断し、棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'を得た直後に、棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'の端面に、鋼製品管理コード表示器１３で鋼製品管理コードを表示する。

　鋼製品管理コードが表示された鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'は、搬送機（図示なし）で結束床１０へ搬送され、所要本数が番線やフープで結束されて、鋼製品束１１となる。搬送機は、前述したように、切断床８の溝８ａに対応する溝機構を備えていなくてもよい。

　第３の実施態様においては、切断工程の直後にマーキング工程が設けられていた。本発明はこれに限定されず、切断工程がマーキング工程に先行する態様であってもよい。これを、本発明の第４及び第５の実施態様として以下に示す。

　図５に、棒鋼の製造工程における本発明の第４の実施態様を模式的に示す。図５に示す実施態様では、切断床８上に、冷却床７上の配列を維持して載置されている棒鋼材３ａ～３ｃと棒鋼材４ａ～４ｃを、切断機９で所定の長さに切断し、鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'とした後、切断床８の端部に搬送し、そこで、棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'の端面に、鋼製品管理コード表示器１３で鋼製品管理コードを表示する。

　図６に、棒鋼の製造工程における本発明の第５の実施態様を模式的に示す。図６に示す実施態様では、切断床８の溝８ａに、冷却床７上の配列通りに配列されている棒鋼材３ａ～４ｃを、切断機９で所定長さに切断し、鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'とする。

　鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'は、搬送機１２で結束床１０へ搬送されるが、搬送中又は搬送後、切断テーブル上の配列と切断順に、鋼製品の端面に、鋼製品管理コード表示器１３で鋼製品管理コードを表示する。

　図６には、鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'を結束床１０へ搬送する途中に、鋼製品管理コード表示器１３を配置する態様を示したが、鋼製品管理コード表示器１３は、鋼製品を搬送し、切断テーブル上の配列と切断順を維持している鋼製品を結束する直前の位置に配置してもよい。

　搬送機１２は、切断床上の配列を維持できるものであればよく、特定の溝機構に限定されないが、切断床上の配列を確実に維持できる点で、複数溝付きローラー及び／又は複数溝付きウォーキングビームを有する溝機構が好ましい。この溝機構により、鋼製品（棒鋼）の本数が多い場合でも、鋼製品（棒鋼）を、切断床上の配列を維持して、連続的に効率よく搬送することができる。

　鋼製品管理コード表示器１３により、（ａ）鋼製品の材料となった鋼片を示す鋼片識別コード、及び、（ｂ）鋼製品の元となった鋼中間材が鋼片において対応する位置を示す位置情報と対応づけられた鋼製品管理コードを鋼製品（棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'）の端面に表示する。

　鋼製品管理コードが表示された鋼製品の棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'、及び、鋼製品管理コードが表示された後続の鋼製品（棒鋼）は、結束床１０で、所要本数が番線やフープで結束されて、鋼製品束１１となる。鋼製品束１１をなす個々の鋼製品（棒鋼３ａ'～３ｃ'と棒鋼４ａ'～４ｃ'）には、鋼製品管理コードが表示されているので、個々の鋼製品のトレーサビリティは明確である。

　本発明の鋼製品の製造方法においては、全ての鋼製品に、元の鋼片およびその鋼片における位置と照合可能な鋼製品管理コードが表示されている。そのため、検査工程において、鋼製品束の中に、表面疵や介在物などの内質欠陥を含む鋼製品が見つかった場合、従来の製造方法と異なり、鋼製品管理コードで、鋼製品の履歴を鋳片段階まで遡って追跡することが可能となる。欠陥鋼製品の発生原因や混入原因を解明し、その影響範囲を絞り込むことにより、欠陥鋼製品を製品単位で破棄することが可能となる。この点が、本発明の鋼製品の製造方法の特徴である。

　従来、連鋳片の湯混ざり部を含む鋼片は、棒鋼の品質を所定レベルに維持するため、棒鋼製造用の鋼片として使用していなかった。本発明の鋼製品の製造方法によれば、連鋳片の湯混ざり部を含む鋼片を棒鋼製造用の鋼片として使用しても、鋼製品管理コードにより、棒鋼（鋼製品）の履歴を鋳片段階まで遡って追跡して、棒鋼（鋼製品）の品質を、棒鋼（鋼製品）毎に詳細に管理することができる。

　その結果、棒鋼（鋼製品）の出荷製品として許容される合格範囲を拡大することができるとともに、出荷不可の欠陥鋼製品を棒鋼（鋼製品）単位で破棄することができるので、棒鋼（鋼製品）の品質を、常に高水準に維持できるとともに、歩留りを大幅に高めることができる。

　次に、連続鋳造鋳片の鋳片部位を照合できる鋼片識別コード、及び、鋼製品の元の鋼中間材と、鋼中間材が鋼片のどの位置に対応するかを示す位置情報を含む鋼製品管理コードが表示されている本発明の鋼製品の検査・出荷を、鋼製品として棒鋼を例にとって説明する。

　図７を用いて、鋼製品の棒鋼に鋼製品管理コードを付与することの技術的意義を説明する。図７（ａ）に、鋼製品の棒鋼に鋼製品管理コードを付与しなかった場合の棒鋼の検査・出荷を示し、図７（ｂ）に、本発明の製造方法による棒鋼（鋼製品）の検査・出荷を示す。

　一般的に、鋼製品である棒鋼の検査を行うため、鋼製品束はいったん解束される。図７（ａ）に示すように、鋼製品束はいったん解束され、鋼製品の全てについて検査を行い、その後で出荷に向けて鋼製品は再度結束される。特に複数の鋼製品束（Ａ束およびＢ束）を並行して検査を行う場合、検査工程前にはＢ束に含まれていた鋼製品が、検査後にはＡ束に含まれること（鋼製品束間における鋼製品の移動）が起こりうる。従来は、これによる異鋼種混入を防ぐためには、ロットが異なる鋼製品束を分離して検査することが必要だった。また、同一ロットに含まれる鋼製品束については並行して検査を行うことができたが、この場合は検査によって鋼製品が鋼製品束の間を移動することを防止できず、また移動が起こった場合にそれを検知することができなかった。

　一方、鋼製品管理コード（連続鋳造鋳片の鋳片部位を照合できる鋼片識別コードと、鋼中間材が鋼片において対応する位置を示す位置情報を含む）が表示された棒鋼（鋼製品）の場合、再度結束した棒鋼束の中に、異鋼種棒鋼は混入しない。

　図７（ｂ）に示すように、表示工程で、鋼製品管理コードを表示したＡロットの棒鋼を結束したＡ束を解束して、全本数について鋼製品管理コードを読み取り、読取り履歴を保管し、再度、結束する際、再度の結束は、読取り履歴に基づいて行うので、再度結束したＡ束の中に、異鋼種棒鋼は混入しない。万が一、異鋼種棒鋼が混入した場合であっても混入を検知できるので、出荷を停止できる。

　このことは、Ａ束の検査に続いて、又は、並行してＢ束の検査を行っても、同様で、鋼製品管理コードにより、Ｂ束の中に、異鋼種棒鋼（例えば、Ａ束の棒鋼）は混入しない。また、検査工程に、本来給材すべきロット以外の束を誤って給材した場合、異常材として検知することが可能である。したがって、複数の鋼製品束を続いて、又は、並行して検査を行ったとしても、異鋼種棒鋼の混入を防止できる。すなわち本発明によれば、製品品質を保ちながら、検査工程の並行実施が可能となり、作業効率を上げることができる。

　万一、客先から、異鋼種棒鋼Ｘの混入の嫌疑を受けた場合には、鋼製品管理コードと、保管してある鋼製品管理コードの読取り履歴に基づいて、該嫌疑を解消することができる。また、鋼製品そのものに対する品質の指摘を受けた場合、その鋼製品に対応する鋼片を鋳造段階まで遡って、原因を解明し、品質の維持・向上や、操業の安定化を図ることができる。

　即ち、本発明の鋼製品の製造方法によれば、鋼製品管理コードを表示した鋼製品を、需要家に出荷することにより、需要家への情報提供及び需要家からの情報収集の充実化等を図ることができる。

　以上、図面を用いて本発明の鋼製品の製造方法の実施態様の例を説明したが、上述した具体的な構成は本発明の実施態様の一例であり、本発明は上述の態様に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。

　次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。

　（実施例１）
　連続鋳造鋳片から棒鋼を製造する際、本発明の鋼製品の製造方法に従って、棒鋼を製造した。その結果、表面疵を有する棒鋼（鋼製品）が一定の割合で発生した。棒鋼（鋼製品）に表示した鋼製品管理コードにより、表面疵の発生した棒鋼の元となった鋼片及び鋼片における位置を特定することにより、表面疵は、鋼片の特定部位に由来する棒鋼材（鋼中間材）の棒鋼（鋼製品）に多く発生することを解明することができた。

　（実施例２）
　連続鋳造鋳片から棒鋼を製造する際、本発明の鋼製品の製造方法に従って、棒鋼のを製造した。内質欠陥を有する棒鋼（鋼製品）が一定の割合で発生した。棒鋼（鋼製品）に表示した鋼製品管理コードにより表面疵の発生した棒鋼の元となった鋼片及び鋼片における位置を特定することによって、内部欠陥は、連続鋳造の操業指標に変動があった鋼片に由来する棒鋼材（鋼中間材）の棒鋼（鋼製品）に多く発生することを解明することができた。

　内部欠陥の発生原因が判明したので、操業指標が変動した鋼片を厳格に検査し、棒鋼（鋼製品）としての合格基準を厳しくして、需要家に供給する最終鋼製品における欠陥発生率を抑制することができた。

　（実施例３）
　棒鋼用の成分組成の溶鋼を、通常の条件で連続鋳造した際に発生した、湯混ざり部位を含む１６２ｍｍ×１６２ｍｍ×１０００ｍｍの鋼片から、本発明の鋼製品の製造方法に従って、６０φ×６０００ｍＬの棒鋼を製造し、棒鋼の端面に鋼製品管理コードを付与した。製造された鋼製品の鋼製品管理コードを読み取って、連鋳片の湯混ざり部位に由来する棒鋼を破棄した。その結果、同じ鋼片から製造された棒鋼であっても、湯混ざり部位に該当しない棒鋼については良好な品質を担保し、出荷することができた。

　前述したように、本発明の鋼製品の製造方法によれば、連続鋳造鋳片から鋼製品を一貫して製造する製造プロセスにおいて、連続鋳造鋳片が湯混ざり部を有していても、最終の鋼製品まで、一貫してトレーサビリティを確保しているので、検査結果の上工程へのフィードバック、内質欠陥を含む鋼製品の抜取り、異鋼種棒鋼の抜取り、客先への適切な製品情報の提供等が可能となり、一層の品質の維持・安定化と歩留りの向上、操業の安定化、客先への情報の充実化等を図ることができる。よって、本発明は、鋼製品製造産業及び鋼製品加工産業において利用可能性が高いものである。

　１ａ、１ｂ、１ｃ　　鋼片
　２　　加熱炉
　３ａ、３ｂ、３ｃ　　棒鋼材
　３ａ'、３ｂ'、３ｃ'　　棒鋼
　４　　棒鋼材
　４ａ、４ｂ、４ｃ　　棒鋼材
　４ａ'、４ｂ'、４ｃ'　　棒鋼
　５　　熱間圧延機
　６　　分割機
　７　　冷却床
　７ａ　　溝
　８　　切断床
　８ａ　　溝
　９　　切断機
　１０　　結束床
　１１　　鋼製品束
　１２　　搬送機
　１３　　鋼製品管理コード表示器

Claims

　鋼製品の製造方法であって、
　鋼片識別コードが付された鋼片から、鋼片識別コードを読み取り、前記鋼片を加熱して圧延する熱間圧延工程、
　前記圧延された前記鋼片を分割して鋼中間材を製造するに際し、該鋼中間材と、前記鋼片識別コードの情報、及び該鋼中間材が前記鋼片において対応する位置を示す位置情報とを対応づけて順に該鋼中間材を得る分割工程、
　前記鋼中間材を冷却床にて冷却するに際し、冷却床の入口から出口まで前記鋼中間材と前記鋼片識別コードの情報及び前記位置情報との対応づけを保ったまま前記鋼中間材を移動させる冷却工程、
　前記鋼中間材に鋼製品管理コードをマークするマーキング工程、
　前記鋼中間材を所定の長さに切断して鋼製品を製造する切断工程、及び
　前記鋼製品を結束する結束工程、
を含み、
　前記鋼製品管理コードは、前記鋼中間材に対応づけられていた前記鋼片識別コードの情報及び前記位置情報と対応づけられている
ことを特徴とする鋼製品の製造方法。
　鋼製品の製造方法であって、
　鋼片識別コードが付された鋼片から、鋼片識別コードを読み取り、前記鋼片を加熱して圧延する熱間圧延工程、
　前記圧延された前記鋼片を分割して鋼中間材を製造するに際し、該鋼中間材と、前記鋼片識別コードの情報、及び該鋼中間材が前記鋼片において対応する位置を示す位置情報とを対応づけて順に該鋼中間材を得る分割工程、
　前記鋼中間材を冷却床にて冷却するに際し、冷却床の入口から出口まで前記鋼中間材と前記鋼片識別コードの情報及び前記位置情報との対応づけを保ったまま前記鋼中間材を移動させる冷却工程、
　前記鋼中間材を所定の長さに切断して鋼製品を製造する切断工程、及び
　前記鋼製品に鋼製品管理コードをマークするマーキング工程、
　前記鋼製品を結束する結束工程、
を含み、
　前記鋼製品管理コードは、前記鋼中間材に対応づけられていた前記鋼片識別コードの情報及び前記位置情報と対応づけられている
ことを特徴とする鋼製品の製造方法。
　前記鋼製品コードは、さらに、前記切断工程において切断された前記鋼中間材における切断部分の位置を示す部分情報と対応付けられている
　ことを特徴とする、請求項１又は２に記載の鋼製品の製造方法。
　前記分割工程において前記鋼中間材が進行する方向と、
　前記切断工程において前記鋼製品が進行する方向とが互いに逆方向である、
　ことを特徴とする、請求項３に記載の鋼製品の製造方法。
　前記冷却工程において、前記冷却床は複数の溝を備え、前記冷却床に配列した前記鋼中間材を、前記複数の溝を、配列を変えずに移動することを特徴とする請求項１～４のいずれか１項に記載の鋼製品の製造方法。
　前記切断工程は、前記冷却床の溝情報に基づき前記鋼中間材を選択し、選択した前記鋼中間材を切断することを特徴とする請求項５に記載の鋼製品の製造方法。
　前記鋼片は連続鋳造で製造され、その際に該鋼片に鋼片識別コードを付与することを特徴とする請求項１～６のいずれか１項に記載の鋼製品の製造方法。
　前記マーキング工程において、前記鋼製品管理コードのマーキングは、前記鋼製品又は前記鋼中間材の端面に、切断順に行うことを特徴とする請求項１～７のいずれか１項に記載の鋼製品の製造方法。
　前記鋼製品管理コードにより、前記鋼製品の元の鋼片の鋼片部位が湯混ざり部を含むことが判明した場合、前記鋼片から製造された複数の鋼製品のうち、当該鋼片部位から製造された鋼製品を破棄する工程を含む請求項１～８のいずれか１項に記載の鋼製品の製造方法。
　前記鋼製品は棒鋼であり、前記鋼中間材は該棒鋼と同径であることを特徴とする請求項１～９のいずれか１項に記載の鋼製品の製造方法。
　鋼製品管理コードが表示された鋼製品であって、
　前記鋼製品管理コードは、鋼中間材を切断して前記鋼製品を得たときに、切断された鋼中間材に対応づけられていた鋼片識別コードの情報、及び鋼中間材が元の鋼片において対応する位置を示す位置情報と対応づけられていることを特徴とする鋼製品。