事前分離ユニットを有するシステム
本発明は、ガス成分を分析するモニタリングユニットの上流に事前分離ユニットを有するシステムに関するものである。
特表2009-526199号公報には、凍結乾燥、即ち、凍結し、乾燥するための装置及び方法が記載されている。凍結工程中、凍結すべき材料又は溶液を最初にその凍結温度に近いか又はそれより低い温度に持って行き、然る後、凍結乾燥室内の圧力を低下して材料の核生成を誘発させる。材料は、生物薬剤材料、薬剤材料、化学的材料、生物学的材料、食品、又はそれらの組合せを含む。また、圧力を低下する工程を、室中で、加圧ガス雰囲気中で行うことが記載されており、室中のガス雰囲気が、アルゴン、窒素、ヘリウム、空気、水蒸気、酸素、二酸化炭素、ネオン、キセノン、クリプトン、水素、又はそれらの混合物を含むことが記載されている。
凍結乾燥室内の水蒸気量などの、プロセス中の雰囲気の変化を、センサーを用いてモニタリングすることが提案されている。センサーの一例は質量分析器であり、イオン移動度センサー、ガスクロマトグラフィ、ラマンあるいは近赤外線などを用いた分光分析センサーなどの、ガス中の組成をスペクトルで出力する種々のタイプのセンサーであってもよい。
本発明の一態様は、センサーにより、第1の成分を含む可能性がある第1のガスの成分を分析するモニタリングユニットと、モニタリングユニットの上流に配置される事前分離ユニットとを有するシステムである。事前分離ユニットは、第1のガスをモニタリングユニットに供給する第1の供給ラインと、第1のガスから第1のセパレータにより第1の成分を除いた成分を含む第2のガスをモニタリングユニットに供給する第2の供給ラインと、第1の供給ラインと第2の供給ラインとを定期的に切り替えて第1のガスおよび第2のガスを交互にモニタリングユニットに供給する自動バルブステーションとを有する。
測定対象のガス(第1のガス)を直にセンサーで測定することと、測定対象のガスから特定の成分(第1の成分)を除去した状態をセンサーで測定することとを定期的に繰り返すことは重要である。測定対象のガスを全体として測定できるとともに、特定の成分を除去することにより、残りの成分の測定に、より適した状態にセンサーを設定できる。例えば、測定対象のガスに高濃度で含まれる成分を除くことにより、他の微量成分の測定が容易となる一方、測定対象のガスを直に測定することにより測定対象のガスに含まれる高濃度の成分も含めた全成分を測定することができる。
このシステムの好適な例は、センサーを汚染する成分を含む可能性があるガスを測定する監視用のシステムである。例えば、凍結乾燥室内からのガスに含まれる成分によりセンサーが汚染され、継続したモニタリングが不可能になる可能性がある。
センサーを汚染する可能性がある物質の一例は、有機系の高分子、有機ケイ素化合物などであり、例えば、有機系オイルや、シリコンオイルなどがある。これらの物質は、真空系のポンプに付着していたり、凍結乾燥する対象物(材料、製品)の製造過程で使用される機器を介して対象物に付着していたりする。シリコンオイルなどがセンサーに侵入すると、センサー内部やセンサー周りの配管を汚染する。シリコンオイルは、通常、熱酸化に対して非常に安定していると評価されているが、センサー内の高温部、例えば1000℃以上になるイオン化ユニットまたはその近傍においては、シリコンオイルがゲル化し、その後、酸化シリコンの層が形成されてシリカコーティングしてしまう可能性がある。これによりイオン化性能が低下し、シリカコーティングの除去が難しいためセンサーを交換したりイオン化ユニットを交換したりする必要が発生する。
したがって、自動バルブステーションは、モニタリングユニットが、センサーを汚染する成分を含む第1の成分を検出すると第1の供給ラインを短時間でシャットオフする第1のバルブを含むことが望ましい。このシステムにおいては、事前分離ユニットによりモニタリングユニットに対しては汚染の要因となる第1の成分を含む第1のガスと、第1の成分を含まないモニタリング対象の成分を含む第2のガスとが自動バルブステーションにより切り替えて供給される。したがって、通常のモニタリングは第2のガスにより安全に行われる。一方、第1のガスをセンサーに断続的に送り、例えば短時間で、第1のガスをセンサーで分析することにより第1のガスの全容を解析できる。それとともに、第1のガスに第1の成分が含まれていると第1の供給ラインをシャットオフすることによりセンサーを保護できる。したがって、センサーが汚染されるリスクを少なくしながら、モニタリング対象の成分を連続的にモニタリングでき、さらに、モニタリング対象以外の成分も定期的にモニタリングできる。
第1の供給ラインと第2の供給ラインとの切替に合わせてセンサー側の測定範囲および/または測定条件を、第2のガスのモニタリングに適した、限定された範囲の測定条件に設定したり、第1のガスのモニタリングに適した広範囲をカバーする測定条件に設定したりしてもよい。モニタリングユニットは分析対象のガスをイオン化するユニットを含んでもよく、システムは、第1の供給ラインと第2の供給ラインの切り替えと連動してイオン化するユニットのイオン化電圧を変える制御ユニットをさらに有していてもよい。制御ユニットは、自動バルブステーションにより第1の供給ラインを介して供給された第1のガスを第1のイオン化電圧で測定する第1のモードと、第2の供給ラインを介して供給された第2のガスを第1のモードよりも長時間にわたり、第1のイオン化電圧よりも低い第2のイオン化電圧で測定する第2のモードとを定期的に切り替える第1の機能を含んでもよい。
制御ユニットは、自動バルブステーションにより、モニタリングユニットが第1の成分を検出すると第1の供給ラインを緊急遮断する第2の機能を含んでもよい。自動バルブステーションは、第1の供給ラインおよび第2の供給ラインのそれぞれのライン緊急遮断するバルブを含んでもよく、第2の機能は、それぞれのラインを緊急遮断するバルブを制御および/または操作してもよい。
第1のセパレータは、第1のガスが一方の面に沿って流れる多孔質のフィルターと、フィルターの他方の面を覆い、フィルターを通過した第2のガスを収集するシェルとを含み、さらに、システムは、モニタリングユニットを介して排気する第1の排気系と、第1のセパレータを介して前記第1のガスを排気する第2の排気系とを含んでいてもよい。典型的なフィルターは第1のガスが内側を流れる筒型で多孔性のフィルターであり、シェルは、フィルターの外側を覆う筒状である。フィルターは、有機系高分子および有機ケイ素化合物の少なくともいずれかを含む第1の成分が非透過のフィルターであってもよい。フィルターは、ハイブリッドシリカ膜および分子インプリントポリマー膜のいずれかを含むものであってもよい。
システムは、さらに、第1の供給ラインと第2の供給ラインとを220℃以下で保温するヒーターを有してもよい。
システムは、さらに、製品を凍結乾燥するチェンバー(凍結乾燥室)と、チェンバーを負圧にするユニットと、チェンバーへ加圧用の第3のガスを供給するユニットと、チェンバーからの排気を第1のガスとして事前分離ユニットへ供給するラインとを有する凍結乾燥システムであってもよい。事前分離ユニットは、第3のガスの成分を含む第2のガスをモニタリングユニットに供給する。凍結乾燥を行うシステムのチェンバー内の状態を、センサーを汚染する成分を含むことがある環境でありながら、センサーを介して安全にモニタリングできる。モニタリングユニットのモニタリング結果によりチェンバー内で製品を凍結乾燥する過程を制御するコントロールユニットをさらに有してもよい。
本発明の他の態様の1つは、センサーにより、第1の成分を含む可能性がある第1のガスの成分を分析するモニタリングユニットと、モニタリングユニットの上流に配置される事前分離ユニットとを有するシステムの制御方法である。当該制御方法は、自動バルブステーションが第1の供給ラインと第2の供給ラインとを定期的に切り替えて第1のガスおよび第2のガスを交互に供給し、モニタリングユニットにより第1のガスと第2のガスとに含まれる成分を交互に測定することを含む。
制御方法は、モニタリングユニットが、センサーを汚染する第1の成分を検出すると、事前分離ユニットの自動バルブステーションが第1の供給ラインを短時間でシャットオフすることを含んでもよい。測定することは、自動バルブステーションにより第1の供給ラインを介して供給された第1のガスを第1のイオン化電圧で短時間だけ測定する第1のモードと、第2の供給ラインを介して供給された第2のガスを第1のモードよりも長時間にわたり、第1のイオン化電圧よりも低い第2のイオン化電圧で測定する第2のモードと含んでもよい。
製品を凍結乾燥するチェンバーと、チェンバーを負圧にするユニットと、チェンバーへ加圧用の第3のガスを供給するユニットとを有する凍結乾燥システムの制御方法であってもよく、この制御方法は、さらに、第3のガスを含む第2のガスのモニタリングユニットのモニタリング結果によりチェンバー内で製品を凍結乾燥する過程を制御することを含んでもよい。
凍結乾燥システムを示すブロック図。
事前分離ユニットおよびモニタリングユニットを含む監視システムを示すブロック図。
事前分離ユニットを用いた制御方法の概要を示すフローチャート。
疑似凍結乾燥チェンバーを示すブロック図。
測定結果の一例。
シリコンオイルを示す測定結果の一例。
水分を示す測定結果の一例。
各成分のモル%を示す一例。
水分の測定結果を示す一例。
凍結乾燥システムのモニタリングの一例。
監視システムの異なる例。
発明の実施の形態
図1に、凍結乾燥システムの概要を示している。この凍結乾燥システム1は、凍結乾燥ユニット10と、乾燥状態を監視する監視システム5とを含む。監視システム5は、凍結乾燥ユニット10からサンプリングライン20を介して供給されるガス22を分析対象のガス(サンプリングガス、第1のガス)35として定常的にモニタリングするユニット(モニタリングユニット、モニター)50と、その上流で、凍結乾燥ユニット10との間に位置する事前分離ユニット(プリセパレーションユニット、プリセパレータユニット、プリセパレータ)30とを含む。
凍結乾燥ユニット10は、凍結乾燥する対象物(製品)12を収納するチェンバー(凍結乾燥室)13と、コンデンサ14を介してチェンバー13の内部の圧力(負圧)を制御する真空ユニット15と、チェンバー13の内部の温度を制御する温度制御ユニット17と、チェンバー13にマスフローコントローラー18を介して加圧用の気体、本例ではチェンバー13を加圧する乾燥窒素(第3のガス)23を供給する窒素供給ユニット16とを含む。温度制御ユニット17は、例えば、不図示の冷却用の液体窒素を用いた熱交換ユニットと、加温用のヒーターとを有し、チェンバー13の内部の温度を、室温から液体窒素温度まで制御する。このシステム1は、さらに、真空ユニット15、温度制御ユニット17、窒素供給ユニット16などを制御することにより、製品12の凍結乾燥過程を制御するコントローラ(システムコントローラ)19を含む。
モニタリングユニット50は、本願出願人が供給するAMSシステムであり、ガス中の成分を検出するセンサー51(具体的には四重極タイプの質量センサー、ウィーンフィルタを用いた質量センサー、質量分析ユニットなど)と、制御ユニット(コントロールモジュール)52とを含む。
モニタリングユニット50の上流で、凍結乾燥ユニット10との間に配置された事前分離ユニット30は、チェンバー13からコンデンサ14への排気の一部を、サンプリングライン20を介してサンプリングし、分析用のガス(第1のガス)35としてモニタリングユニット50へ供給する第1の供給ライン(供給管)31と、第1のガス35から、本件においてシリコンオイル(第1の成分)などの高分子を除いた分子量の小さな成分を分離するセパレータ(第1のセパレータ)40と、セパレータ40により分離された成分を含む分析用のガス(第2のガス)36をモニタリングユニット50へ供給する第2の供給ライン(供給管)32と、これらのライン31および32を定期的に切り替えて第1のガス35および第2のガス36を交互にモニタリングユニット50へ供給する自動バルブステーション38と、比例弁39とを含む。
自動バルブステーション38は、第1の供給ライン31を遮断する自動弁(シャットオフバルブ)、例えばソレノイドバルブ(第1のバルブ)33と、第2の供給ライン32を遮断するソレノイドバルブ34とを含み、これらは、比例弁39も含めてモニタリングユニット50により制御される。比例弁39は、オリフィス(2mmφ)を含み、フロー係数の一例は1.6リットル/分である。ソレノイドバルブ33および34は、第1の供給ライン31と第2の供給ライン32とを切り替える機能と、これらの供給ライン31および32を緊急遮断する機能とを含む。
図2に、監視システム5を抜き出して示している。本例の監視システム(測定システム、分析システム)5は、モニタリングユニット50と事前分離ユニット30とを含む。モニタリングユニット50は、測定用のガス35または36が流入する真空チェンバー58aと、真空チェンバー58a内を負圧に維持する第1の排気系59と真空チェンバー58a内の圧力をモニターする圧力ゲージ58bと、真空チェンバー58aに取り付けられた質量分析センサー、例えば、四重極質量センサー51と、センサー51を駆動するとともに出力を解析するコントロールモジュール52とを含む。第1の排気系59は、ターボポンプ59aおよび粗引きポンプ59bとを含む。センサー51は、イオン化ユニット51aと、磁場によりイオン化された分子をフィルタリングするフィルタリングユニット51bと、ディテクタ51cとを含む。
事前分離ユニット30のセパレータ40は、第1のガス35が内側を流れる筒型で多孔性のフィルター42と、フィルター42の外側(他方の面)を覆い、フィルター42を通過した(フィルター42を介して拡散した)成分を含む第2のガス36を収集(採取)する筒状のシェル44と、フィルター42の内面に沿って流れた第1のガス35を排出する第2の排気系49とを含む。フィルター42の一端は、第1の供給ライン31に繋がり、他端は第2の排気系49の粗引きポンプ49aに繋がり、第1の供給ライン31により供給される第1のガス35が第1のセパレータ40を介して(フィルター42の内部を通って)外界に放出される。フィルター42を覆う筒型のシェル44には長手方向に沿った二か所にノズル45aおよび45bが設けられており、それらのノズル45aおよび45bを介してフィルター42により第1のガス35から分離された第2のガス36を第2の供給ライン32に回収する。
フィルター42の一例は、セラミックタイプのメンブレンフィルタ(膜フィルタ)であり、膜の一例は多孔性(多孔質)のハイブリッド膜であり、特に、ハイブリッドシリカ膜が適している。ハイブリッドシリカ膜は、平均細孔径が0.1ないし0.6nmで、数種類の媒体内で少なくとも200℃まで熱水的に安定であるシリカをベースとする微孔質有機-無機ハイブリッド膜であり、短鎖架橋シランのゾル-ゲル処理を使用して製造することができる。ハイブリッドシリカ膜は、親水性で、気体の分離ならびに低分子量アルコールなどの様々な有機化合物からの水および他の小分子化合物の分離に適していることが報告されている。さらに、本明細書で明らかにするように、水の透過性(拡散性)の速度を利用して濃縮を兼ねた用途に適している。
フィルター42の他の好適な例は、分子インプリントポリマー膜である。フィルター42の材質および平均細孔径は、セパレータ40で分離する成分(第1の成分)により変えることができる。すなわち、用途により、所定の成分が非透過のフィルター42を選択することにより、第1の供給ライン31によりモニタリングユニット50に供給される第1のガス35に対し、所定(所望)の成分を除いた第2のガス36を第2の供給ライン32によりモニタリングユニット50に供給できる。このため、第1の供給ライン31と第2の供給ライン32とを切り替えることにより、それらのライン31および32に共通のモニタリングユニット50により、それぞれのガス35および32の成分を測定および解析することができる。この事前分離ユニット30においては、材質または孔径の異なるフィルター42を含む複数のセパレータ40を自動バルブステーション38で切り替えて、複数の成分を段階的に分離した複数種類の測定対象のガスを、モニタリングユニット50に順番に供給することも可能である。
この事前分離ユニット30においては、フィルター42の内部の圧力は第2の排気系49により制御され、フィルター42の外側の圧力は、モニタリングユニット50の第1の排気系59により制御される。したがって、フィルター42の前後の差圧はこれらの排気系49および59により制御することが可能であり、監視対象の第1のガス35に対するフィルター42の第1の成分の除去能力、すなわち、第1のガス35からこれらのモニタリング対象の成分を分離して第2のガス36としてモニタリングユニット50へ供給する分離能力を適宜制御できる。
凍結乾燥システム1の監視用途として好適なフィルター42の一例は、PERVATECH社製のハイブリッドシリカ膜(Hybrid Silica AR)である。凍結乾燥システム1の監視用途におけるプリフィルタリング用のフィルター42としては、その他の多孔性の膜であって、平均孔径が0.3~0.5nmの膜であり、水より大きなサイズの分子を分離できる、すなわち透過あるいは拡散させない膜であってもよい。フィルター42で分離させたい、すなわち、フィルター42を透過しない第1の成分は、シリコンオイルなどの有機系高分子および有機ケイ素化合物であり、これらは、センサー51のイオン化ユニット51aにより高温になるとセンサー51をコーティングしてしまいセンサー51が使用不能になる可能性がある。
一方、凍結乾燥システム1では、凍結乾燥ユニット10において、凍結乾燥により除去する成分である水(水分、H2O)と、除去した水分分圧を補うように注入される窒素(乾燥窒素、N2)と、酸素(O2)とがモニタリング対象の成分(第2の成分)であり、フィルター42は、第1のガス35からこれらのモニタリング対象の成分を分離して第2のガス36としてモニタリングユニット50へ供給する。
監視システム5は、さらに、第1の供給ライン31の配管を加熱(保温)する第1のヒーター47aと、第2の供給ライン32の配管およびセパレータ40を加熱(保温する)第2のヒーター47bと、これらのヒーター47aおよび47bの温度制御を行いヒーター制御ユニット46とを含む。第1の供給ライン31および第2の供給ライン32は、これらのヒーター47aおよび47bにより同一の温度に加温されてもよく、異なる温度に加温されてもよいが、220℃を上限とすることが好ましい。これらの供給ライン31および32を、セパレータ40を含めて加温することにより以下のような不具合を未然に防止できる。
第1に、水分やその他の成分(コンタミネーション)が配管に付着してしまい、凍結乾燥プロセスの終了点(エンドポイント)の測定に支障がでることを抑制できる。第2に、フィルター42のメンブレン(薄膜)の透過率を一定に保つことができ、さらに、応答時間を短縮することによりエンドポイントの測定精度を向上できる。第3に、フィルター42の薄膜のメモリ効果を抑制できる。フィルター42の薄膜は、一時的に成分を保持する機能を備えており、濃縮効果を得ることも可能であるが、遅延にもつながるので、温度を上げることにより遅延を抑制できる。第4に、シリコンオイルが配管に付着するのを防止し、シリコンオイルの測定感度あるいは検出感度を向上できる。それぞれの供給ライン31および32の配管を220℃程度あるいはそれ以下に保温することにより、これらの効果を得ることができ、ヒーター47aおよび47bの消費電力も抑制でき経済的である。さらに、温度を上げすぎるとフィルター42の薄膜の耐久性および性能が劣化する可能性があり、220℃を超えることは好ましくない。
モニタリングユニット50のコントロールモジュール52は、供給ライン31および32を切り替える第1のバルブ制御機能(第1の機能、第1の機能ユニット、アプリケーション)52aと、供給ライン31を緊急遮断する第2のバルブ制御機能(第2の機能)52bとを含む。本例の事前分離ユニット30は、両方の供給ライン31および32を緊急遮断できるバルブ33および34を含み、第2のバルブ制御ユニット52bは両方の供給ライン31および32を緊急遮断する。
第1の機能52aは、所定の時間の割合、例えばmsオーダーで、バルブ33および34を相互に開閉する。例えば、第1の機能52aは、30msだけバルブ33を閉じてバルブ34を開けて第2の供給ライン32を介して第2のガス36をモニタリングユニット50へ供給して第2のガス36を分析する。次に、第1の機能52aは、7msだけバルブ33を開けてバルブ34を閉め、第1の供給ライン31を介して第1のガス35をモニタリングユニット50へ供給して第1のガス35を分析する。その際、センサー51に対して汚染物質となるシリコンオイルを検出すると、第2の機能52bは、即座にバルブ(第1のバルブ)33を閉めて、第1の供給ライン31をセンサー51から分離する。
また、第1の機能52aは、供給ライン31および32の切り替えと同期して、または連動して、センサー51の測定条件を制御してもよい。本例の第1の機能52aは、自動バルブステーション38により、第1の供給ライン31を介して供給された第1のガス35を第1のイオン化電圧V1で短時間に限定して測定する第1のモード52cと、第2の供給ライン32を介して供給された第2のガス36を第1のモード52cよりも長時間にわたり、第1のイオン化電圧V1よりも低い第2のイオン化電圧V2で測定する第2のモード52dとを定期的に切り替える。第2のガス36は事前分離ユニット30により所定の成分が除かれているので、モニタリングユニット50においては、限られた成分の測定にフォーカスすることが可能であり、イオン化電圧を変えて質量分析センサー(マススペクトロメータ)51のイオン化ユニット51aの能力を切り替えることにより、第2のガス36に含まれる成分の測定により適した条件で測定できる。
第1のイオン化電圧V1の一例は70eVであり、より広範囲の質量電荷比(m/z)を短時間でサーチできる。第2のイオン化電圧V2の一例は43eVである。凍結乾燥システム1においてモニタリングする対象となる水(水分)の質量電荷比のピークは(m/z=18)である。一方、空気中などに含まれるアルゴンのアイソトープの二重荷電(36Ar++)のピークも(m/z=18)に現れ、(m/z=18)のピークで水分量を精度よく測定することが難しい。第1のイオン化電圧V1は、質量分析センサー51において通常使われる値であり、アルゴンのアイソトープの二重荷電が生成される。しかしながら、第2のイオン化電圧V2では、アルゴンのアイソトープの二重荷電の生成が抑制される。このため、(m/z=18)のピークは、モニタリング対象の水分の値(濃度)を精度よく反映する。このため、シリコンオイルの存在を検出する第1のモード52cにおいては、より高い第1のイオン化電圧V1を用いて測定することが適しており、凍結乾燥プロセスの終了(エンドポイント)を測定する第2のモード52dにおいては、より低い第2のイオン化電圧V2を用いて測定することが適している。
図3に、事前分離ユニット30およびモニタリングユニット50を含む監視システム5の制御方法の概要を示している。この制御方法は、プログラム(ファームウェア、プログラム製品)として提供することが可能であり、モニタリングユニット(AMS、質量分析ユニット)50のコントロールモジュール52に実装することにより実現される制御機能52aおよび52bが行ってもよく、凍結乾燥システム1の全体の制御の一環としてシステムコントローラ19が行ってもよい。なお、以下において、第1のモード52cと第2のモード52dとは繰り返しセットされ、いずれのモードからスタートしてもよい。
この例では、ステップ61において、コントロールモジュール52の第1の機能52aが第2のモード52dをセットする。第2のモード52dにおいては、自動バルブステーション38が、第1の供給ライン31のバルブ(バルブA)33を閉め、第2の供給ライン32のバルブ(バルブB)34を開け、サンプリングガス(第1のガス)35からフィルター42により事前分離された測定用のガス(第2のガス、セカンダリーガス)36をモニタリングユニット50に供給し、センサー51により第2のガス36を分析する。この際、センサー51のイオン化ユニット51aの電圧は低電圧の第2の値V2にセットされ、比例弁39はフィルター42による差圧を確保するためにほぼ全開にセットされる。
この条件で、ステップ62において、モニタリングユニット50は、所定の時間、継続して第2のガス36の成分を解析する。具体的には、数10msから数秒程度、あるいは測定精度が十分に得られる間にN回連続してセンサー51から出力されるスペクトルを、モニタリングユニット50のコントロールモジュール52で分析してもよい。スペクトルを、システムコントローラ19や外部のパーソナルコンピュータに供給し、分析を繰り返してもよい。
このステップ62においては、フィルター42を通過した結果である第2のガス36に含まれる、水、窒素、酸素を主なモニタリング対象の成分としてセンサー51を介して測定する。したがって、センサー51が出力するスペクトルの範囲を、これらのモニタリング対象の成分を検出するのに適した範囲内、例えば、質量電荷比(m/z)が50以下となるように限定して、モニタリングの頻度を高めたり、速度を向上したりすることも可能である。
次に、ステップ63において、コントロールモジュール52の第1の機能52aが第1のモード52cをセットする。第1のモード52cにおいては、自動バルブステーション38が第1の供給ライン31のバルブ(バルブA)33を開け、第2の供給ライン32のバルブ(バルブB)34を閉め、比例弁39で流量調整したサンプリングガス(第1のガス、プライマリガス)35をモニタリングユニット50に供給し、センサー51により第2のガス36を分析する。この際、センサー51のイオン化ユニット51aの電圧は高電圧の第1の値V1にセットされる。
この第1のモード52cにおいては、第1のガス35に含まれる汚染物質(第1の成分)であるシリコンオイルの有無を検出する。シリコンオイルは、シリコンが炭素、水素および酸素などと結合した有機系高分子および有機ケイ素化合物であり、シリコングリース、シリコンラバー、シリコン樹脂およびシリコンコーキングなどとして製造用その他のプロセス装置には多用されている様々な部材から放出される可能性がある。シリコンオイルは微量でも、センサー51に入ると、上述したようにセンサー内部をコーディングしてしまい除去は容易ではない。
第1のモード52cでは、センサー51が出力するスペクトルの範囲を、シリコンオイルの検出に適した範囲、例えば、質量電荷比(m/z)が50~100に限定して、シリコンオイルのモニタリングの速度を向上することも可能である。第1のガス35中へのシリコンオイルのリークを一刻も早く見つけることにより、センサー51や、配管内部がシリコンオイルに汚染される程度を低くすることができる。また、ステップ63において、比例バルブ39の開度を低くして、センサー51に供給される第1のガス35の量を減らして、センサー51などの汚染のリスクを低減することも可能である。
ステップ64においてシリコンオイルが見つかると、コントロールモジュール52の第2の機能52bが自動バルブステーション38を制御し、または信号(指示)を送り、ステップ66において、第1の供給ライン31のバルブ(バルブA、第1のバルブ)33を短時間で閉めて(緊急遮断して)第1の供給ライン31をモニタリングユニット50に対しシャットオフする。同様に、第2の機能52bは、自動バルブステーション38の第2の供給ライン32のバルブ(バルブB)34を閉める。さらに、第2の機能52bは、センサー51のイオン化ユニット51aのフィラメントをオフし、センサー51がシリコンオイルに汚染される程度をできる限り低くする。
シリコンオイルが見つからない場合は、ステップ65において、短時間繰り返して第1のガス35の成分を解析する。具体的には、数msから数10msの間に、ある程度の精度で測定結果が得られるように、M回連続してセンサー51から出力されるスペクトルを、モニタリングユニット50のコントロールモジュール52で分析する。短時間、繰り返して測定した後に、シリコンオイルの有無を判断してもよい。すなわち、ステップ64と65とは逆転してもよい。
シリコンオイルが発見されない場合は、第1の機能52aは、ステップ61に戻り、第2のモード52dをセットして第2のガス36をN回測定し、第1のモード52cをセットして第1のガス35をM回測定する処理を繰り返す。モニタリング対象の成分を安全に測定できる第2のガス36の測定回数Nの方が、センサー51が汚染されるリスクがある第1のガス35の測定回数Mに対して大きいことが望ましく、NとMとの比は、例えば、10対1程度である。この比は、プログラマブルであってもよい。
図4に、凍結乾燥システム1における監視システム5の性能を確認する実験を行うために用意した疑似凍結乾燥チェンバー(疑似チェンバー)70の構成を示している。疑似チェンバー70は、水分を生成する蒸発器71と、生成された水分をトラップすることにより水分量を制御するコールドトラップ72と、トラップされた水分を排出するためのニードルバルブ73と、流量制御用のオリフィス74と、シリコンオイルの発生装置75aを置いてガスにシリコンオイルをリーク(混合)させるヘッドスペースチェンバー75と、圧力モニター75pとを含み、ヘッドスペースチェンバー75から疑似的に生成された第1のガス35が出力される。シリコンオイルの発生装置75aは、シリコンオイル75cが入った小瓶75bと、シリコンオイルを蒸発させるために小瓶57bに差し込まれた数本のキャピラリ75dとを含む。
図5に、監視システム5の事前分離ユニット30とモニタリングユニット50とにより疑似チェンバー70から得られた第1のガス35を測定した結果の一例を示している。モニタリングユニット50としては、AMSと呼ばれる本願出願人が開発中のコンパクトタイプの質量分析装置を用いた。以降においてはモニタリングユニット50をAMSと呼び変えることがある。
棒グラフ76は、疑似チェンバー70にシリコンオイルを0.17mg/分のレートで拡散させたときの第1のガス35を第1の供給路31を介して直にAMS50で測定した結果(ケース1、CASE1)である。棒グラフ77は、シリコンオイルに加え、加湿器で疑似チェンバー70に水分を0.06mg/分のレートで拡散させたときの第1のガス35を第1の供給路31を介して直にAMS50で測定した結果(ケース2、CASE2)である。棒グラフ78は、疑似チェンバー70にシリコンオイルを0.17mg/分のレートで拡散させたときの第1のガス35をセパレータ40により分離した第2のガス36を第2の供給路32を介してAMS50で測定した結果(ケース3、CASE3)である。棒グラフ79は、シリコンオイルに加え、加湿器で疑似チェンバー70に水分を0.06mg/分のレートで拡散させたときの第1のガス35をセパレータ40により分離した第2のガス36を第2の供給路32を介してAMS50で測定した結果(ケース4、CASE4)である。
測定では、水(分子量18)、窒素(分子量28)、酸素(分子量32)、アルゴン(分子量40)、およびシリコンオイル(分子量58、74)を示すピークを含むスペクトルが得られている。
図6に、シリコンオイルを示す質量電荷比が50以上、具体的には50~84の領域を拡大して示している。シリコンオイルの存在を示す質量電荷比58および74を中心とした領域では、ケース1およびケース2を示す棒グラフ76および77が大きく表れているが、ケース3およびケース4を示す棒グラフ78および79はほとんど現れていない。したがって、第2のガス36にはほとんどシリコンオイルが混入しておらず、セパレータ40のフィルター42をシリコンオイルがほとんど透過していないことが確認できた。
図7に、水を示す質量電荷比が17~19の領域を拡大して示している。水については、ケース1~4を示す棒グラフ76~79が表れており、第1のガス35および第2のガス36に水(水分)が含まれていることが分かる。したがって、水はセパレータ40を通過し、第1のガス35から第2のガス36に移動(拡散)していることが分かる。それとともに、ケース1の棒グラフ76に対してケース2の棒グラフ77が大きく、同様に、ケース3の棒グラフ78に対してケース4の棒グラフ79が大きい。したがって、セパレータ40により分離生成された第2のガス36に、第1のガス35に含まれる水分量が反映されていることが分かる。
窒素、酸素およびアルゴンにおいても、図5に示すように、ケース1~4を示す棒グラフ76~79が表れており、これらの成分(分子)がセパレータ40を通過し、第1のガス35から第2のガス36に移動(拡散)していることが分かる。また、それぞれの棒グラフの高さは、ケース1~4でほとんど変わりがなく、これらの分子は、セパレータ40をほとんど通過し、セパレータ40により分離生成された第2のガス36に、第1のガス35に含まれる量が反映されていることが分かる。
これらの測定結果より、事前分離ユニット30とAMS50とを含む監視システム5により、凍結乾燥システム1のモニタリング対象の水、窒素、酸素、さらにアルゴンを、シリコンオイルにAMS50のセンサー51が汚染されることなく、安全に測定することができることが分かった。また、自動バルブステーション38を用いて供給ライン31および32を切り替えることにより、シリコンオイルのリークも監視することができる。
図8に、これらの測定結果よりそれぞれのケースでガス中に存在する各成分のモル%を推定した結果を示している。なお、この結果には、相対的イオン化確率、伝達効率は考慮されていない。また、表中の「*1」は、オリジナルの空気に含まれている水分を示している。まず、第2のガス36を測定したケース3および4では、第1のガス35にシリコンオイルが含まれていても第2のガス36では検出されていないことは上述した通りである。その他の成分においては、第1のガス35を直にAMS50で測定したケース1および2の結果よりも、第2のガス36をAMS50で測定したケース3および4の結果の方が値は大きく、特に、水のモル%が増加している。これは、セパレータ40において採用されている膜タイプのフィルター42による蓄積あるいは濃縮効果であると考えられる。例えば、筒状に延びたフィルター42を第1のガス35が通過する時間によりフィルター42を透過または拡散する成分がシェル44の内部に積分され、それが濃縮という効果で表れていると考えられる。フィルター42による濃縮の効果は、微量成分に対して大きく、さらに、透過可能な分子のサイズであって、そのサイズが大きいほど透過または分散に時間を要し、その時間が蓄積および濃縮能力を拡大していると考えられる。
図9に、疑似チェンバー70内の水分量を段階的に変えたときに第1のガス35および第2のガスで測定される水分比(窒素、酸素および水の強度の和に対する水単独の強度比)を示している。破線は疑似チェンバー70における水分量を示し、実線は第1のガス35の水分比を示し、一点鎖線は第2のガス36の水分比を示している。各段階において、第2のガス36の方が水分比は大きく、セパレータ40を通すことにより、AMS50における水分の検出感度が増加していることが分かる。
本例の凍結乾燥システム1においては、凍結乾燥チェンバー13の内部の水分量は、AMS50により、チェンバー13を加圧する第3のガスである窒素のマスフローコントローラー18の流量測定結果との比率で、精度よくモニターできる。凍結乾燥システム1においては、凍結乾燥する対象物(製品)12により、段階的に維持する温度および時間などを含む凍結乾燥する過程(プログラム)が定められている。本例のシステム1においては、汚染されるリスクなく、ASM50により水分量を継続して測定でき、凍結乾燥する過程を連続してモニタリングすることが可能となる。したがって、AMS50によるモニタリング結果により、凍結乾燥の各段階におけるチェンバー13内の水分量の経時変化を判断し、より精度よく、安定的に、また条件によっては凍結乾燥に要する時間を短縮するように凍結乾燥する過程を制御することが可能となる。例えば、システム制御ユニット19は、AMS50の測定結果を単にモニタリングするだけではなく、測定結果に基づいて、所定の温度で維持する時間を動的に変える制御を行うことも可能となる。
図10に、凍結乾燥システム1において、監視システム5により測定された各成分の時間変化を示している。実線81は、凍結乾燥ユニット10の凍結乾燥チェンバー13の内圧(ピラニーゲージ、mbar)を示し、破線82は、第2の供給ライン32により供給された第2のガス36をAMS50で測定したときの水(m/z=18)のイオン電流(A)を示し、一点鎖線83は、第2の供給ライン32により供給された第2のガス36をAMS50で測定したときの窒素(m/z=28)のイオン電流(A)を示し、二点鎖線85は、凍結乾燥チェンバー13の温度を示す。監視システム5により、サンプリングされた測定対象のガス35に含まれる分析対象となる水分(水)と、流量の参照値となる窒素との濃度(強度比)を精度よく測定できる。したがって、凍結乾燥システム1において、凍結後の1次乾燥により水分が減少し、その後の2次乾燥において水分が徐々に減少している様子が鮮明に捉えられており、所定の水分に到達したことを監視システム5により明確に判断できる。したがって、最短の乾燥時間で、所望の乾燥状態に達した製品12を確実に製造することが可能となる。
図11に、事前分離ユニット30とモニタリングユニット50とを含む監視システム5の異なる例を示している。事前分離ユニット30は、第1のガス35をモニタリングユニット50に供給する第1の供給ライン31と、第1のガス35から第1のセパレータ40により第1の成分を除いた成分を含む第2のガス36をモニタリングユニット50に供給する第2の供給ライン32と、第1の供給ライン31と第2の供給ライン32とを定期的に切り替えて第1のガス35および第2のガス36を交互にモニタリングユニット50に供給する自動バルブステーション38とを有する。本例の自動バルブステーション38は、第1の供給ライン31に取り付けられた比例弁39により構成されており、コンパクトで供給ラインの圧力損失が少ないシステムとなっている。
自動バルブステーション38の比例弁39はモニタリングユニット50のコントロールモジュール52の第1の機能52aおよび第2の機能52bにより制御され、第1の供給ライン31と第2の供給ライン32とを切り替える機能と、第1の供給ライン31を緊急遮断する第1のバルブ(緊急遮断弁)33としての機能を備えている。比例弁39としては、差圧が、比例弁39の開度が低い場合でも、セパレータ40のフィルター42により発生する差圧より低いものが採用されている。したがって、第1の機能52aが、比例弁39を開くと第1の供給ライン31を介して第1のガス35がモニタリングユニット50に流入し、第1の機能52aが比例弁39を閉じると第2の供給ライン32を介して第2のガス36がモニタリングユニット50に流入するようになっている。
この事前分離ユニット30は簡易な構成で、ラインの途中に配置されるバルブが省略されているので全体として圧力損失が小さく、凍結乾燥ユニット10との接続ライン20が細く、サンプリングガス22の流量が少ない場合であっても十分な精度でガスの成分を測定できる。また、第1の供給ライン31から供給される第1のガス35にシリコンオイルの混入が検出されたときは、第2の機能52bが比例弁39により第1の供給ライン31を緊急遮断することにより、シリコンオイルによる汚染を防止できる。
この事前分離ユニット30も、第1の供給ライン31および第2の供給ライン32を、セパレータ40を含めて加温するヒーター47aおよび47bを備えており、本例においてはそれぞれのラインを約120℃まで加温している。また、セパレータ40を介して第1のガス35を排気する第2の排気系49は、手動の遮断弁49dと、その前後に設置された圧力計49cおよび49eと、ターボポンプ49tと、粗びきポンプ49aとを含み、十分な排気能力が得られるようにしている。
以上に説明したように、事前分離ユニット30をモニタリングユニットであるAMS50の上流に設けることにより、AMS50を汚染する可能性があるシリコンオイルの影響を避けて、凍結乾燥ユニット10においてモニタリングの対象としたい水、窒素、酸素などをAMS50で精度よく測定できる。凍結乾燥ユニット10に限らず、シリコンオイルは製造現場において頻繁に使われる物質であり、事前分離ユニット30を設けることにより質量分析センサーあるいは、他の分析対象をイオン化するユニットを含むセンサー(分析ユニット)に対するシリコンオイルの影響を避けて、ガス分析を行うことが可能である。シリコンオイルと同様に、有機系高分子は、センサーあるいはセンサーに付属する配管などに侵入すると内部を汚染したり、センサー内部などが高温になると炭化により表面に付着してコーティングしてしまう可能性がある。ハイブリッドシリカなどのサブnm程度の径の多孔性の膜、特にハイブリッド膜を用いることにより、これらの高分子の影響を受けずに、測定対象(モニタリング対象)のガス成分(低分子成分)を精度よく、安定して長時間にわたり定常的に測定できる。
事前分離ユニット30で分離してモニタリングする対象の成分は、水、窒素、酸素等に限定されない。凍結乾燥システムにおいては、加圧するガスは、製品によって窒素以外であってもよく、乾燥空気、二酸化炭素、あるいはアルゴン、ヘリウムなどの不活性気体であってもよく、その場合は、窒素以外の成分も同様に測定できる。また、モニタリング対象のシステムは凍結乾燥システムに限定されず、例えば、薬品や石油化学製品の製造過程や検査、食品の異物検出、麻薬、爆発物などの危険物検出であってもよく、様々なアプリケーションに対して、事前分離ユニットを用いたモニタリングシステムおよび方法を適用できる。さらに、事前分離ユニットにより、汚染物質以外の特定の物質を一段階または多段階に分離して、質量分析ユニットに導入することも可能であり、ほぼリアルタイムに、高分子を含めた成分の測定を行うシステムを提供できる。