JP5371624B2 - プラズマ発光分析方法およびその装置 - Google Patents

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Description

この発明は、有機ハロゲン自動測定装置などのハロゲン元素の定量分析等に用いられるプラズマ発光分析方法およびその装置に関する。
一般廃棄物等の燃焼排ガス中のダイオキシン類濃度を簡便に推定する方法として、ダイオキシン類の前駆体物質であるジクロロベンゼン、ジクロロフェノールなどの有機ハロゲン類が代替指標物質として注目され、この有機ハロゲン類の濃度を測定することで、ダイオキシン類濃度を推定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
この測定方法は、図7に示すように、吸着筒1内の吸着剤に吸着された排ガス中の有機ハロゲン類をヒータ2によりヘリウム気流下で加熱して脱着させ、脱着ガスを放電管3に導入する。放電管3には高周波高圧電源4からの高周波高圧電力が印加されバリア放電が生じるようになっている。
このバリア放電により有機ハロゲン類がプラズマ状態となって解離し、ハロゲン元素に特有の波長の光が発光する。
この光はレンズ群5で集光され、光ファイバ6を介して分光光度計7に送り込まれるようになっている。分光光度計7ではその光を分光し、測光して、ハロゲン元素量を定量し、この値から有機ハロゲン類濃度を算出し、さらに排ガス中のダイオキシン類濃度を推定するものである。
さらに、この測定技術を応用して、排ガス中の有機ハロゲン類濃度を自動測定する装置が開発されている(非特許文献1参照)。
この自動測定装置にあっては、図8に示すように、排ガスをフィルタ11に通して除塵し、冷却器12で冷却して水分を除去する。ついで、金属銀などの無機ハロゲン除去剤が充填された無機ハロゲン除去筒13に送り込んで排ガス中の塩化水素などの無機ハロゲン化合物を除去する。
ついで、この排ガスは第1の切替弁14を介して第1の吸着筒15または第2の吸着筒16に送られる。第1の切替弁14は、排ガスの流路を切り替えて第1の吸着筒15または第2の吸着筒16に排ガスを流すとともに、後述する脱着用ガス(ヘリウムキャリアガス)の流路を切り替えて第1の吸着筒15または第2の吸着筒16に流すためのものである。
第1の吸着筒15または第2の吸着筒16には、表面積(BET法による)が10〜240m/gのグラファイト系吸着剤が充填されている。
排ガスは第1の吸着筒15に導入され、温度50〜200℃で吸着される。第1の吸着筒15が破過する前に第1および第2の切替弁14、17を切り替えて第2の吸着筒16に排ガスを流し、第1の吸着筒15には脱着用ガス源18からのヘリウムガスを第1の切替弁14を介して送り込み、ここに吸着されている有機ハロゲン類を温度400〜450℃で脱着する。
脱着された有機ハロゲン類を含むガスは、ついで放電管3に送り込まれ、図7に示した上述の測定装置と同様の分析操作が行われて排ガス中の有機ハロゲン類濃度が測定されるものである。なお、図中の符号19で示したものは、検量線作成用の有機ハロゲン標準ガスが充填された標準ガス源である。
ところで、図7に示したようなプラズマ発光分析技術にあっては、装置の設置環境の変化、被測定ガスによる放電管の汚染、キャリアガスであるヘリウムガスの温度、流量などの条件変化などの種々の不確定要素に起因してプラズマ発光が不安定になる現象が生じる。このため、プラズマ点灯不良、分析感度の変動が生じ、測定装置の安定運転と測定値の信頼性に影響を与える不都合があった。
特許第3383859号公報
名久井ら、「一般廃棄物焼却施設における低揮発性有機塩素のオンライン測定について」 廃棄物学会 研究発表会講演論文集、576〜578頁、2008年11月20日
よって、本発明における課題は、プラズマ発光分析方法あるいはプラズマ発光分析装置において、プラズマの短時間で確実な点灯を可能とし、ヘリウム光強度が一定となり、ハロゲン元素など被測定元素の分析定量の際の分析感度の安定化が行えるようにすることにある。
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、放電管内に被測定ガスとヘリウムキャリアガスを導入してバリア放電を生じさせ、被測定ガス中の被測定元素の特有の発光を観測するプラズマ発光分析方法であって、
放電管内にヒータを設け、このヒータの温度を50〜500℃の範囲に調節して放電管内に導入するヘリウムキャリアガスを加熱するとともに、放電管内に導入するヘリウムキャリアガスの流量を調整することにより、ヘリウムに起因する発光の光強度が10000〜30000カウント内のいずれかの値で時間的に一定となるように常時制御することを特徴とするプラズマ発光分析方法である。
請求項2にかかる発明は、放電管内に被測定ガスとヘリウムキャリアガスを導入してバリア放電を生じさせ、被測定ガス中の被測定元素の特有の発光を観測するプラズマ発光分析装置であって、
被測定ガスとヘリウムキャリアガスを導入する放電管と、この放電管に交流電圧を印加してバリア放電を生じさせる高周波電源と、前記放電管に導入されるヘリウムキャリアガスを加熱するヒータと、このヒータの温度を50〜500℃に制御する温度制御部と、前記放電管に導入されるヘリウムキャリアガスの流量を、ヘリウムに起因する発光の光強度を10000〜30000カウント内のいずれかの値で時間的に一定となるように常時制御する流量制御部を備えたことを特徴とするプラズマ発光分析装置である。
本発明によれば、キャリアガスであるヘリウムを加熱した状態で放電管内に送り込むことで、放電管内の雰囲気温度が高くなり、プラズマの点灯が交流電圧印加直後に確実に行われる。
また、ヘリウムの放電管内への導入流量を制御することで、プラズマ状態が安定化し、これによりハロゲン元素などの被測定元素に起因する発光も安定してその濃度の測定値のバラツキがなくなり、測定値の信頼性が高くなる。
したがって、放電管内の雰囲気を高温としかつヘリウムの流量を適切に制御することで、プラズマ点灯不良や分析感度の変動が生じることがなく、測定装置の安定運転が行え、測定値の信頼性が高いものとなる。
ヘリウム光強度とハロゲン元素分析感度との関係を示すグラフである。 ヘリウムの流量を変化させた際のヘリウム光強度の時間的変化を示したグラフである。 ヘリウムの温度を変化させた際のヘリウム光強度の時間的変化を示したグラフである。 本発明のプラズマ発光分析装置を利用した有機ハロゲン類濃度自動測定装置の例を示す概略構成図である。 実験例の結果を示すグラフである。 従来例の結果を示すグラフである。 従来のプラズマ発光分析装置を示す概略構成図である。 従来の有機ハロゲン類濃度自動測定装置を示す概略構成図である。
プラズマ発光分析方法では、放電管に導入されるキャリアガスであるヘリウムとこれに随伴される有機ハロゲン類などのハロゲン化合物とは、プラズマ状態でともに励起され、ヘリウムに特有の波長の光とハロゲン元素に特有の波長の光とが発生する。
これらの光は、分光器によって分光されたのち、CCDなどの受光素子で受光されその光強度がカウント数として求められる。このような光強度がカウント数で表示される分光光度計としては、「USB4000」(商品名、オーシャンオプティクス社製)などがある。
そして、ヘリウムに起因する光の強度(以下、ヘリウム光強度と言うことがある。)とハロゲン元素分析感度(ハロゲン元素の単位質量あたりのハロゲン元素に起因する光の強度(以下、ハロゲン光強度と言うことがある。)のカウント数として表される)との間には、図1に示すような高い相関性が存在することが判明している。図1では、ハロゲン元素が塩素である場合を示している。
この相関関係に着目してハロゲン元素分析感度を一定とするために、ヘリウム光強度を常時一定となるように制御することが考えられる。
一般的に、プラズマ発光分析において、ヘリウム光強度を一定に制御する方法としては、放電管に印加する高周波電力の周波数、電圧を制御する方法が知られているが、この方法ではヘリウム光強度を一定とすることはできなかった。
そこで、本発明者は、放電管に導入するヘリウムガスの温度および流量とこれがヘリウム光強度に与える影響について検討を行った。
図2は、常温のヘリウムガスを放電管内に導入し、その時のヘリウムガスの流量を50〜500ml/分に徐々に増加させた場合のヘリウム光強度の時間的変化を示したグラフである。このグラフの横軸は経過時間を示す時刻を目盛ってある。
この結果から、ヘリウムガスの流量をある範囲に制御することによって、ヘリウム光強度を時間的に一定にできる可能性があることが判明した。また、ヘリウムガスの流量が少ない場合にはプラズマの初期点灯が難しいこともわかった。
図3は、一定流量のヘリウムガスを放電管内に導入し、その時のヘリウムガスの温度を500℃から50℃に徐々に降下させた場合のヘリウム光強度の時間的変化を示したグラフである。このグラフの横軸も経過時間を示す時刻を目盛ってある。
この結果から、放電管内に導入するヘリウムガスの温度をある範囲に制御することで、ヘリウム光強度を時間的に一定にできる可能性があることが判明した。また、高温のヘリウムガスを導入するとプラズマの初期点灯が確実に行われることがわかった。
これらの結果から、放電管内に導入するヘリウムガスの温度および流量を制御してそれぞれを適切な範囲とすることで、プラズマの初期点灯が安定して行われ、かつヘリウム光強度を時間的に一定とすることができ、ハロゲン光強度の測定に必要な時間、通常10〜15分程度の間はヘリウム光強度を一定とすることができることがわかった。
これにより有機ハロゲン類の安定した定量分析が行え、その自動測定が可能になった。
図4は、この発明のプラズマ発光分析装置を組み込んだ有機ハロゲン測定装置の一例を示すもので、図8に示した従来の測定装置と同一構成部分には同一符号を付してある。この例の装置では自動測定が可能となるものである。
被測定ガスである燃焼排ガスは、図8に示した従来の測定装置と同様に、図示略のフィルタに通されて除塵され、冷却器にて冷却されて水分が除去され、さらに無機ハロゲン除去筒に通されて塩化水素などの無機ハロゲン化合物が除去されたのち、第1の切替弁14に送られ、第1の切替弁14を介して第1の吸着筒15または第2の吸着筒16に送られる。
第1の切替弁14は、排ガスの流路を切り替えて第1の吸着筒15または第2の吸着筒16に排ガスを流すとともに、後述する脱着用ガス(ヘリウムキャリアガス)の流路を切り替えて第1の吸着筒15または第2の吸着筒16に流すためのものである。
第1の吸着筒15または第2の吸着筒16には、表面積(BET法による)が10〜240m/gのグラファイト系吸着剤が充填されている。
排ガスは第1の吸着筒15に導入され、温度50〜200℃で吸着される。この吸着操作により排ガス中の沸点が100℃以上の高沸点有機ハロゲン類が選択的に吸着され、沸点が100℃未満の低沸点有機ハロゲン類は吸着されず、第2の切替弁17を経て系外に排出される。
第1の吸着筒15が破過する前に第1および第2の切替弁14、17を切り替えて第2の吸着筒16に排ガスを流し、第1の吸着筒15には脱着用ガス源18からのキャリアガスとなるヘリウムガスを流量調整弁20を介して第1の切替弁14を介して送り込み、ここに吸着されている有機ハロゲン類を温度400〜450℃で脱着する。
第2の吸着筒16では同様の吸着操作がなされ、破過前に流路が切り替えられて同様の脱着操作が行われ、以下、タイマーなどにより自動的にこの操作が交互に所定時間毎に繰り返される。
この吸脱着操作により被測定ガス中の沸点が100℃以上の高沸点有機ハロゲン類が分離されて後段のプラズマ発光分析装置に連続的に送られることになる。
脱着された高沸点有機ハロゲン類を含むヘリウムガスは、ついでプラズマ発光分析装置に送られる。このプラズマ発光分析装置では、その放電管3の入口側に円筒状のヒータ21が設けられており、放電管3に送り込まれる高沸点有機ハロゲン類を含むヘリウムガスがこのヒータ21の内部を通過する際に加熱されるようになっている。
そして、ヒータ21の温度は温度制御部22からのプログラム制御信号に基づいて、50〜500℃に調節されるようになっており、ヒータ21を出たガスの温度もほぼこの温度範囲に調節されるようになっている。
放電管3は、セラミックス、石英ガラスなどの誘電体からなる円筒状の本体パイプ31とこの本体パイプ31の外周に互いに離間して設けられた金属箔などからなる2個の円筒状の電極32、32とから構成され、これら電極32、32には高周波高圧電源4からの周波数10〜100Hz、電圧2〜6kVの高周波電力が印加され、放電管3内部でバリア放電が生じるようになっており、放電管3内に送り込まれた高沸点有機ハロゲン類とヘリウムガスとが励起され、プラズマ状態となって、これら化合物を構成する構成元素に特有の波長の光が発光する。
この光はレンズ群5で集光され、光ファイバ6を介して分光光度計(「USB4000」(商品名、オーシャンオプティクス社製)など)7に送り込まれるようになっている。分光光度計7ではその光を分光器により分光し、CCDなどの受光素子で測光して、構成元素に特有の波長の強度を計測して、それらの光強度をカウント数として測定する。
この測定装置では、計測対象となるハロゲン光強度以外にヘリウム光強度を常時測定し、このヘリウム光強度を流量制御部23に送り、流量制御部23において、このヘリウム光強度に基づいてヘリウムの流量を算出し、この流量値を流量調整弁20に送り、ヘリウム流量を常時制御するようになっている。
ヘリウムの流量制御範囲は、通常50ml/分〜500ml/分程度とされるが、ヘリウム光強度が常時10000〜30000カウント、好ましくは15000〜20000カウントとなるように流量制御部23において制御される。
このようにして、放電管3内に送り込まれるガスの温度を50〜500℃として放電管3内の雰囲気温度を50〜500℃にすること、およびヘリウムガスの流量をヘリウム光強度が10000〜30000カウントとなるように流量調整することで、放電管3に高周波電圧を印加した直後から安定してプラズマが点灯し、かつヘリウム光強度が一定となって、これによりハロゲン元素分析感度が一定となって有機ハロゲン類濃度の測定が安定して行え、その値も信頼性の高いものとなる。
実際の有機ハロゲン類濃度の定量操作にあっては、初めにヘリウムガスのみをその流量が500ml/分となるように初期設定し、さらにヒータ21の温度を500℃に初期設定して加熱して放電管3内に流し、高周波電圧を印加してプラズマを点灯させる。
ついで、ヒータ温度を50〜200℃、好ましくは100〜160℃とし、ヘリウム光強度が10000〜30000カウント、好ましくは15000〜20000カウントとなるようにヘリウムガスの流量調整を行い、この状態で第1または第2の吸着筒15、16から脱着した高沸点有機ハロゲン類を導入する方法が採用される。
このようにして、分光光度計7で計測されるハロゲン光強度は、装置自体に由来する変動が抑えられたものとなって、そのハロゲン元素濃度に正確に比例するものとなる、このため、ハロゲン元素の分析感度が一定に保たれる。
そして、分光光度計7で計測されたハロゲン光強度から被測定ガス中の高沸点有機ハロゲン類の濃度を算出し、この高沸点有機ハロゲン類濃度から被測定ガス中のダイオキシン類濃度を推定する。
排ガス中の有機ハロゲン類のうち、沸点が100℃以上の高沸点有機ハロゲン類の濃度が該排ガス中のダイオキシン類の濃度と極めて高い相関性を示すことが、既に本発明者らによって知見されている(非特許文献1参照)。
(実験例)
図4に示した装置において、ヘリウムガスのみを流し、排ガスを流さない状態でプラズマ初期点灯およびヘリウム光強度変化について検討した。
高周波高圧電源4の初期設定を周波数43kHz、電圧4.2kVとし、点灯後の電源電圧の変動は成り行きにまかせた。ヒータ21を500℃に加熱し、ヘリウムガスを流量500ml/分として放電管3に送り込んだ。
その結果、高周波電力印加後数秒でプラズマが点灯した。
プラズマ点灯後、ヘリウム光強度が18000カウントとなるように流量制御部23においてヘリウムの流量を制御し、同時にヒータ21の温度を制御した。
電力印加後の経過時間とヘリウム光強度との関係を図5のグラフに示す。このグラフから、電力印加後1分以内にヘリウム光強度が一定となることがわかる。
図6に示したグラフは、従来の測定装置によるヘリウム光強度の変化を示すもので、常温のヘリウムを流量200ml/分で流し続けたときのもので、ヘリウム光強度が時間の経過とともに徐々に高くなっていることがわかる。
3・・放電管、4・・・高周波電源、7・・・分光光度計、20・・・流量調整弁、21・・・ヒータ、22・・・温度制御部、23・・・流量制御部

Claims (2)

  1. 放電管内に被測定ガスとヘリウムキャリアガスを導入してバリア放電を生じさせ、被測定ガス中の被測定元素の特有の発光を観測するプラズマ発光分析方法であって、
    放電管内にヒータを設け、このヒータの温度を50〜500℃の範囲に調節して放電管内に導入するヘリウムキャリアガスを加熱するとともに、放電管内に導入するヘリウムキャリアガスの流量を調整することにより、ヘリウムに起因する発光の光強度が10000〜30000カウント内のいずれかの値で時間的に一定となるように常時制御することを特徴とするプラズマ発光分析方法。
  2. 放電管内に被測定ガスとヘリウムキャリアガスを導入してバリア放電を生じさせ、被測定ガス中の被測定元素の特有の発光を観測するプラズマ発光分析装置であって、
    被測定ガスとヘリウムキャリアガスを導入する放電管と、この放電管に交流電圧を印加してバリア放電を生じさせる高周波電源と、前記放電管に導入されるヘリウムキャリアガスを加熱するヒータと、このヒータの温度を50〜500℃に制御する温度制御部と、前記放電管に導入されるヘリウムキャリアガスの流量を、ヘリウムに起因する発光の光強度を10000〜30000カウント内のいずれかの値で時間的に一定となるように常時制御する流量制御部を備えたことを特徴とするプラズマ発光分析装置。
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