WO2018025453A1

WO2018025453A1 - 農作物用展着剤組成物

Info

Publication number: WO2018025453A1
Application number: PCT/JP2017/015166
Authority: WO
Inventors: 山崎　孝; 憲史山口
Original assignee: シーバイエス株式会社
Priority date: 2015-10-29
Filing date: 2017-04-13
Publication date: 2018-02-08
Also published as: JP2017081897A

Abstract

特定の脂肪酸エステルを特定の割合で配合することにより、次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液に添加しても、その有効塩素の失活がなく、また、殺菌対象物並びに病害、虫害対象物への湿潤性、付着性に優れるだけでなく、低泡性に優れ、更には人体に対して安全な農作物用展着剤組成物を提供するため、下記（Ａ１）～（Ａ５）からなる群から選ばれた少なくとも１種の脂肪酸エステル（Ａ）と、プロピレングリコール、グリセリンおよびエタノールからなる群から選ばれた少なくとも１種の水溶性溶剤（Ｂ）と、水（Ｃ）とを含有し、次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液に添加して使用される農作物用展着剤組成物とする。（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステル。（Ａ２）ソルビタン脂肪酸エステル。（Ａ３）グリセリン脂肪酸エステル。（Ａ４）ショ糖脂肪酸エステル。（Ａ５）プロピレングリコール脂肪酸エステル。

Description

農作物用展着剤組成物

　本発明は、次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液に加える補助剤の一つであり、次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液の湿潤性（濡れ性）や付着性を高めることにより、当該次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液の効果を高める、あるいはこれらの効果を安定させる展着剤組成物に関する。

　従来、農業分野において、農作物の害虫駆除のために農薬が散布されている。散布された農薬は、植物あるいは害虫等に吸収されて初めてその効果を発揮することができる。しかし、植物の表面には、ロウリポイド類が分泌されていたり、羽毛状の繊維が密生していたり、微細な凹凸があることが多く、また、害虫の表面にもケラチン質と同様の層があり、いずれも散布された農薬（農薬水溶液）をはじく性質を有している。このため、農薬を散布した場合においても、所望の効果が得られないという問題が生じる。

　そこで、この問題を解決するために、農薬の湿潤性（濡れ性）および付着性を高めることを主な目的とした展着剤が、主に乳剤、水和剤として農業分野において広く用いられている。このような展着剤を農薬に添加することにより、展着剤の主成分である界面活性剤の働きにより被散布対象物（植物、害虫等）の表面張力を低下させることができるため、農薬に湿潤性および付着性を与えることができる。

　このような農薬に用いる展着剤としては、ポリオキシエチレンアルキル（又はアリール）エーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、リグニンスルホン酸塩、ポリナフチルスルホン酸塩などの陰イオン界面活性剤、あるいはポリアクリル酸塩などの高分子化合物で構成される組成物が市販されており、これらは農薬に添加して使用される。

　一方、電解水生成装置で生成された酸性電解水の用途開発において、植物の病害、虫害等を防止するために、酸性電解水を散布する方法が考案されている。

　例えば、特許文献１では、植物の病害又は細菌汚染を防除できるものとして、ナトリウムイオン濃度が２００ｐｐｍ以下であり、ｐＨが４．５～６．８の範囲の酸性電解水からなる植物散布水が提案されている。

　さらに、電解水生成装置で生成された酸性電解水に植物や害虫への湿潤性および付着性を向上させ、酸性電解水が持つ殺菌、病害予防または害虫防除の効力を増強するための展着剤を添加した殺菌剤組成物あるいは病害予防剤またはその散布方法も考案されている。

　例えば、特許文献２には、流水電解生成によって得られる酸性水あるいはこの酸性水を希釈し、木酢あるいはポリオキシエチレンへキシタン脂肪酸エステルを展着剤として添加した、食用果実、食用野菜等に対するうどん粉病予防剤が開示されている。

　また、特許文献３には、塩化ナトリウムおよび／または塩化カリウムを添加した水を電気分解することにより生成される次亜塩素酸を含有し、特定の有効塩素濃度と特定のｐＨに調整したものにアニオン界面活性剤またはノニオン界面活性剤を展着剤として添加した水溶液を散布する農作物病害の防除方法が開示されている。

　さらに、特許文献４には、次亜塩素酸およびポリエーテル変性シリコーンとアセチレングリコールのエチレンオキサイド／プロピレンオキサイド付加物を展着剤として含有する微酸性の農業用殺菌剤組成物が開示されている。

特開２０００―１６９０３号公報特開平７―１８７９３１号公報特開２００３－４０７１５号公報特開２００６―１７６４７５号公報

　しかしながら、特許文献１のものは、酸性電解水を農作物に散布した場合に、酸性電解水自体が湿潤性を持たないことから、殺菌対象物、または、病害、虫害対象物への湿潤性および付着性が不充分な場合が多く、本来の効果が得られないという欠点があった。

　また、特許文献２、特許文献３、および特許文献４のものは、いずれも殺菌対象物または病害、虫害対象物への湿潤性および付着性については改善されているものの、人体への安全性が充分とは言えず、しかも、これらに使用される展着剤を酸性電解水に添加して使用した場合、殺菌、病害予防または害虫防除に効果を示す酸性電解水の有効塩素の安定性が不充分なため、上記展着剤を添加後、急激に酸性電解水の有効塩素濃度が低下し、農作物の殺菌および病害予防、さらには、害虫駆除が充分に得られないという欠点があった。

　本発明者らは、これらの課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の脂肪酸エステルを特定の割合で配合することにより、次亜塩素酸水またはその塩の水溶液に添加しても、その有効塩素の失活がなく、また、殺菌対象物並びに病害、虫害対象物への湿潤性（濡れ性）および付着性に優れるだけでなく、低泡性に優れ、更には人体に対して安全な展着剤組成物を提供できることを見出した。

　上記の目的を達成するため、本発明は、下記（Ａ１）～（Ａ５）からなる群から選ばれた少なくとも１種の脂肪酸エステル（Ａ）と、プロピレングリコール、グリセリンおよびエタノールからなる群から選ばれた少なくとも１種の水溶性溶剤（Ｂ）と、水（Ｃ）と、を含有する展着剤組成物であって、次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液に添加して使用される農作物用展着剤組成物を第１の要旨とする。
（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステル。
（Ａ２）ソルビタン脂肪酸エステル。
（Ａ３）グリセリン脂肪酸エステル。
（Ａ４）ショ糖脂肪酸エステル。
（Ａ５）プロピレングリコール脂肪酸エステル。

　また、上記脂肪酸エステル（Ａ）の含有量が、展着剤組成物全体の１～７０質量％の範囲である農作物用展着剤組成物を第２の要旨とする。

　さらに、上記脂肪酸エステル（Ａ）として、（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステルと（Ａ２）ソルビタン脂肪酸エステルとを併用する農作物用展着剤組成物を第３の要旨とする。

　また、上記（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が展着剤組成物全体の１～３０質量％の範囲に設定され、且つ、上記（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステルと上記（Ａ２）ソルビタン脂肪酸エステルとの質量比［（Ａ１）：（Ａ２）］が２：１～１：２４の範囲に設定されている農作物用展着剤組成物を第４の要旨とする。

　さらに、上記次亜塩素酸水が、電解水生成装置で生成された酸性電解水である農作物用展着剤組成物を第５の要旨とする。

　また、第５の要旨の農作物用展着剤組成物のうち、酸性電解水が、下記（Ｉ）および（II）の少なくとも一方であるものを第６の要旨とする。
（Ｉ）０．２質量％以下の塩化カリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電気分解し、陽極側から得られた水溶液であって、ｐＨ６．５以下であり、有効塩素１０～６０ｍｇ／ｋｇである酸性電解水。
（II）２～６質量％の塩酸を無隔膜電解槽内で電気分解し、水で希釈して得られた水溶液であって、ｐＨ６．５以下であり、有効塩素１０～６０ｍｇ／ｋｇである酸性電解水。

　なお、本発明において、「０．２質量％以下の塩化カリウム水溶液」は、通常、９９質量％以上の塩化カリウムと飲用可能な水から得られるものを意味する。また、「有隔膜電解槽」とは、隔膜で隔てられた陽極および陰極を備える電解槽をいい、「無隔膜電解槽」とは、隔膜で隔てられていない陽極および陰極を備える電解槽をいう。

　すなわち、本発明の農作物用展着剤組成物は、次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液、特に、電解水生成装置で生成された酸性電解水に添加して使用されることで、その有効塩素の安定性を損なうことない。また、本発明の展着剤組成物は、低泡性を示すにもかかわらず、殺菌対象物並びに病害、虫害対象物への湿潤性（濡れ性）および付着性に優れ、その結果として、優れた農作物の殺菌、病害防止および駆虫効果を発揮することができる。さらに、本発明の農作物用展着剤組成物は、人体に対して安全性の高いものとなっている。

　つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。

　本発明の農作物用展着剤組成物（以下「展着剤組成物」とする）は、特定の脂肪酸エステルと特定の水溶性溶剤および水を混合して得られるものである。

　本発明の展着剤組成物は、下記（Ａ１）～（Ａ５）からなる群から選ばれた少なくとも１種の脂肪酸エステル（Ａ）と、プロピレングリコール、グリセリンおよびエタノールからなる群から選ばれた少なくとも１種の水溶性溶剤（Ｂ）と、水（Ｃ）と、を含有している。
（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステル。
（Ａ２）ソルビタン脂肪酸エステル。
（Ａ３）グリセリン脂肪酸エステル。
（Ａ４）ショ糖脂肪酸エステル。
（Ａ５）プロピレングリコール脂肪酸エステル。

　上記脂肪酸エステル（Ａ）のうち、（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が８～１６であり、グリセリンの重合度は３～１２であるものが好適に用いられる。特に、脂肪酸の炭素数が８～１２、グリセリンの重合度が６～１０であり、モノまたはジエステルの構造を持つものであると、貯蔵安定性、湿潤性、および低泡性のバランスがとれて有利である。

　また、（Ａ２）ソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が８～１６のものが好適に用いられる。特に、脂肪酸の炭素が数８～１２であり、モノまたはジエステルの構造を持つものであると、貯蔵安定性および低泡性のバランスがとれて有利である。

　さらに、（Ａ３）グリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が８～１６のものが好適に用いられる。特に、脂肪酸の炭素数が８～１２であり、モノまたはジエステルの構造を持つものであると、貯蔵安定性、湿潤性、および、低泡性のバランスがとれて有利である。

　また、（Ａ４）ショ糖脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が８～１６のものが好適に用いられる。特に、炭素数８～１２であり、モノまたはジエステルの構造を持つものであると、貯蔵安定性、湿潤性および低泡性のバランスがとれて有利である。

　さらに、（Ａ５）プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が８～１６のものが好適に用いられる。特に、炭素数８～１２であり、モノまたはジエステルの構造を持つものであると、貯蔵安定性、湿潤性および低泡性のバランスがとれて有利である。

　上記展着剤組成物に含まれる上記（Ａ）成分の脂肪酸エステルは、貯蔵安定性の点から、１～７０質量％の範囲に設定されることが好ましく、より好ましくは５～６０質量％の範囲である。

　さらには、上記展着剤組成物中に含まれる上記（Ａ）成分の脂肪酸エステルの中でも、特に、（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステルと（Ａ２）ソルビタン脂肪酸エステルの双方を用いることが、殺菌対象物並びに病害、虫害対象物への湿潤性、付着性および低泡性の観点から好ましい。本発明の展着剤組成物に低泡性が求められる理由としては、次亜塩素酸またはその塩の水溶液に本発明の展着剤組成物が添加され、農作物に散布される際、泡立ちが大きいと、殺菌対象物並びに病害、虫害対象物との接触面積が低下することから、散布液を大量に必要とし、経済的にも好ましくなく、さらには、泡の重みで散布液が殺菌対象物並びに病害、虫害対象物から離脱しやすくなり、本来の効果を充分に発揮できなくなるからである。

　上記（Ａ１）成分であるポリグリセリン脂肪酸エステルの量が展着剤組成物全体中において１～３０質量％の範囲内に設定することが好適である。すなわち、１質量％未満の配合量では、所望の貯蔵安定性、可溶化性能および希釈安定性、湿潤性、付着性が低下するおそれがあり、また、３０質量％を超えると、全体としてのバランスが悪くなり、貯蔵安定性が低下するとともに、低泡性能が不充分になるおそれがあるからである。好ましい範囲は、３～２５質量％である。

　さらに、上記（Ａ１）成分のポリグリセリン脂肪酸エステルと（Ａ２）成分のソルビタン脂肪酸エステルの質量比が２：１～１：２４の範囲であることが望ましい。すなわち、（Ａ１）成分が２：１より少ないほうが低泡性の点で好ましく、貯蔵安定性の点で（Ａ２）成分が１：２４より少ないほうが好ましい。より好ましい範囲は、１：１～１：１５である。

　つぎに、上記展着剤組成物に含まれる上記（Ｂ）成分の水溶性溶剤としては、プロピレングリコール、グリセリンおよびエタノールの中から選定することができ、上記プロピレングリコールおよびグリセリンは食品添加物として指定されているものが好ましく、上記エタノールは飲用として認可されているものが好ましい。すなわち、（Ｂ）成分の水溶性溶剤として、これらの中から選定されたものを用いることで、人の健康を損なうおそれが極めて少ないものとなる。

　そして、上記展着剤組成物に含まれる上記（Ｃ）成分の水は、例えば、水道水、軟水、イオン交換水、純水、精製水があげられ、好ましくは、軟水、イオン交換水、純水である。これらは単独でもしくは２種以上併せて用いることができる。なお、本発明の展着剤組成物が含有する水の量は、配合される各成分に由来の結晶水や水溶液の形で含まれる水と外から加えられる水との総和であり、これらは展着剤組成物全体が１００質量％となるよう配合される。

　そして、本発明の展着剤組成物は、次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液に０．００１～３．０質量％の範囲で添加して使用されることが好ましく、０．０５～１．０質量％の範囲で添加して使用されることがより好ましい。すなわち、展着剤組成物の添加量が少なすぎると、展着剤としての所望の効果（対象物に対し、湿潤性、付着性等を高める）が得られず、また、添加量が多すぎると、展着剤としての効果が頭打ちとなり、添加量に見合うだけの効果が得られないためである。

　一方、本発明の展着剤組成物を添加する対象である次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液は、どのような方法で製造されたものであってもよく、市販されている電解水生成装置で生成された酸性電解水を使用することもできる。

　上記電解水生成装置で生成される酸性電解水は、ｐＨ２．７以下の強酸性電解水（強酸性次亜塩素酸水ともいう。）、ｐＨ２．７～５．０の範囲にある弱酸性電解水（弱酸性次亜塩素酸水ともいう。）およびｐＨ５．０～６．５の範囲にある微酸性電解水（微酸性次亜塩素酸水ともいう。）に大別されるが、これらはいずれも本発明の展着剤組成物を添加する対象となり得る。

　とりわけ、上記強酸性次亜塩素酸水、上記弱酸性次亜塩素酸水および上記微酸性次亜塩素酸水が、それぞれ以下に示すものである場合には、最終食品の完成前に除去するという使用基準のもとで食品添加物として認可されており、人体に対し安全性が確保されている。しかも、これらはいずれも、高い殺菌力を示すことが知られているため、使用できる用途がより一層広がる。
・強酸性次亜塩素酸水：０．２質量％以下の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して、陽極側から得られる有効塩素濃度が２０～６０ｍｇ／ｋｇの範囲にあるもの。
・弱酸性次亜塩素酸水：０．２質量％以下の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して、陽極側から得られる有効塩素濃度が１０～６０ｍｇ／ｋｇの範囲にあるもの。
・微酸性次亜塩素酸水：３質量％以下の塩酸および５質量％以下の塩化ナトリウムを含む水溶液を無隔膜電解槽内で電解して、得られる有効塩素濃度が５０～８０ｍｇ／ｋｇの範囲にあるもの。

　また、次亜塩素酸水が以下に示すものである場合には、特定農薬（その原材料に照らし農作物等、人畜および水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬）として認定されているため、使用できる用途がより一層広がる。
・０．２％以下の塩化カリウム水溶液（９９％以上の塩化カリウムと飲用適の水で作成したもの）を有隔膜電解槽（隔膜で隔てられた陽極及び陰極により構成されたものをいう。）内で電気分解して、陽極側から得られる水溶液であり、ｐＨ６．５以下、有効塩素１０～６０ｍｇ／ｋｇのもの。
・２～６％の塩酸を無隔膜電解槽（隔膜で隔てられていない陽極及び陰極により構成されたものをいう。）内で電気分解し、飲用適の水で希釈して得られる水溶液であり、ｐＨ６．５以下、有効塩素１０～６０ｍｇ／ｋｇのもの。

　次亜塩素酸塩の水溶液としては、例えば、市販の次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を水道水等で希釈したものを用いることができる。次亜塩素酸塩の水溶液は、有効塩素濃度として１０～１００ｍｇ／ｋｇの範囲に調整したものが好ましい。

　本発明の展着剤組成物を添加した次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液を散布する対象である農作物は、農耕による生産物であればいかなるものでも良く、例えば、ゴルフ場等で使用される芝類の他、トマト、キュウリ、ネギ、ワサビ等の野菜類、その他イチゴ、メロン等の果菜類、バラ等の花卉類等があげられる。

　とりわけ、葉菜への散布には好適である。その理由は、葉菜は、専ら葉の部分を生食用に供するものであるから、細菌等に汚染されることが特に望ましくないためである。すなわち、本発明の展着剤組成物を添加した次亜塩素酸または次亜塩素酸塩の水溶液を葉菜に散布すれば、葉菜が細菌に汚染されることを効果的に防止でき、しかもそれ自体も人体に対して安全性が極めて高いため、葉菜の生食用食品としての安全性を確保することができる。このような葉菜としては、例えば、貝割れ大根、ミツバ、サラダ菜、リ－フレタス、ホウレン草等があげられる。

　そして、本発明の展着剤組成物には、上記（Ａ）～（Ｃ）成分とともに、任意成分として、ｐＨ調整剤、有機酸およびその塩、染料、香料、金属腐食抑制剤、殺菌剤、消臭剤、帯電防止剤等を用いることができる。

　つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。

　まず、展着剤組成物を調整するために、下記のとおり、各成分（Ａ）～（Ｃ）を準備した。

［Ａ成分］
　下記［ｎ］はグリセリンの重合度を表し、［Ｃ］は脂肪酸の炭素数を表す。
　（Ａ１）－１：　デカ（ｎ＝１０)グリセリンラウリン酸（Ｃ＝１２）モノエステル（試作品、純度１００質量％)
　（Ａ１）－２：　ヘキサ（ｎ＝６)グリセリンカプリル酸（Ｃ＝８）モノエステル（試作品、純度１００質量％）
　（Ａ１）－３：　ペンタ（ｎ＝５)グリセリンカプリル酸（Ｃ＝８）モノエステル（試作品、純度１００質量％）
　（Ａ２）－１：　ソルビタンカプリル酸（Ｃ＝８）モノエステル（試作品、純度１００質量％）
　（Ａ２）－２：　ソルビタンラウリン酸（Ｃ＝１２）モノエステル（製品名：エマゾールＬ１０Ｖ、花王社製　純度１００質量％）
　（Ａ３）－１：　グリセリンカプリル酸（Ｃ＝８）モノエステル（試作品、純度１００質量％）
　（Ａ４）－１：　ショ糖ラウリン酸（Ｃ＝１２）モノエステル（製品名：ＬＷＡ－１５７０、三菱ケミカルフーズ社製、純分４０質量％）
　（Ａ５）－１：　プロピレングリコールラウリン酸（Ｃ＝１２）モノエステル（製品名：リケマールＰＬ－１００、理研ビタミン社製、純分１００質量％）

［Ｂ成分］
　（Ｂ－１）プロピレングリコール
　　　製品名：プロピレングリコール（食品添加物）（旭硝子社製、純分１００質量％）
　（Ｂ－２）グリセリン
　　　製品名：食品添加物グリセリン（ミヨシ油脂社製、純分１００質量％）
　（Ｂ－３）エタノール
　　　製品名：トレーサブル９５　１級（日本アルコール産業社製、純分９５質量％）

［Ｃ成分］
　総硬度５０ｐｐｍの水道水

[Ａ成分以外の界面活性剤]
　下記［Ｅ．Ｏ．］はエチレンオキサイドの平均付加モル数を表す。
・ポリオキシエチレン（９Ｅ．Ｏ．）ラウリルエーテル
　　製品名：ペグノールＬ－９Ａ（東邦化学工業社製、純分１００質量％）
・ポリオキシエチレン（９Ｅ．Ｏ）オクチルフェニルエーテル
　　製品名：ノナール１０９（東邦化学工業社製、純分１００質量％）
・ポリオキシエチレン（１０Ｅ．Ｏ．）ノニルフェニルエーテル
　　製品名：ノナール２１０（東邦化学工業社製、純分１００質量％）
・ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル
　　製品名：ニューコール８２（日本乳化剤社製、純分９９質量％以上）
・ポリオキシエチレン（１５Ｅ．Ｏ．）モノオレイン酸エステル
　　製品名：ノイゲンＥＳ１４９（第一工業製薬社製、純分１００質量％）
・ポリナフチルメタンスルホン酸ナトリウム
　　製品名：デモールＴ（花王社製、純分９２．５質量％）
・リグニンスルホン酸カルシウム
　　製品名：サンエキスＰ２０２（日本製紙社製、純分１００質量％）
・ラウリルジメチルアミンオキサイド
　　製品名：ゲナミノックスＫ－１２（クラリアントジャパン社製、純分３２質量％）

[Ｂ成分以外の水溶性溶剤]
・イソプロピルアルコール
　　製品名：２－プロパノール（試薬特級）（ナカライテスク社製）
・メタノール
　　製品名：メタノール（試薬特級）（ナカライテスク社製）
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル
　　製品名：ブチセノール２０（ＫＨネオケム社製、純分１００質量％）
・ブタノール
　　製品名：１－ブタノール（試薬特級）（ナカライテスク社製）

［実施例１～２１、比較例１～１０］
　つぎに、上記成分を用い、後記の表１～表８に示す組成の展着剤組成物を調整し、（１）貯蔵安定性、（２）有効塩素濃度の安定性、（３）湿潤性および（４）低泡性の４項目について評価した。評価結果を後記の表１～表８に併せて示す。なお、表中の数値は、有り姿で示したものである。また、上記項目の試験方法および評価方法は以下に示すとおりである。

　なお、有効塩素濃度の安定性については、下記の方法で調製した次亜塩素酸水（酸性電解水）および次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に供試の展着剤組成物を添加し評価した。

　また、湿潤性および低泡性については、下記の方法で調製した酸性電解水に供試の展着剤組成物を添加し評価した。

[次亜塩素酸水（酸性電解水）の調製]
　＜次亜塩素酸水１＞
　ホシザキ電機株式会社製の電解水生成装置（ＲＯＸ－１０ＷＢ３）を用いて０．１５質量％塩化ナトリウム溶液を電気分解することにより生成した有効塩素濃度４５ｐｐｍ、ｐＨ２．８の弱酸性電解水
　＜次亜塩素酸水２＞
　ホシザキ電機株式会社製の電解水生成装置（ＲＯＸ－１０ＷＢ３）を用いて０．１５質量％塩化カリウム溶液を電気分解することにより生成した有効塩素濃度４５ｐｐｍ、ｐＨ２．５の強酸性電解水

[次亜塩素酸ナトリウム水溶液の調製]
　１２質量％次亜塩素酸ナトリウムを水道水で希釈し有効塩素濃度を５０ｐｐｍに調製した次亜塩素酸ナトリウムの水溶液

（１）［貯蔵安定性試験］
・試験方法
　供試の展着剤組成物を、室温（約２５℃）、低温（－５℃～５℃；２４時間サイクル）、高温（４０℃）の３つの保管条件にて、それぞれ１ケ月間配置した。そして、以下の基準で評価した。
・評価基準
◎（とても良い）：分離、沈殿、変色が認められない。
○（良い）：分離、沈殿は認められないが、わずかな白濁が認められる（実用性に問題なし）。
×（悪い）：分離、沈殿又は変色が認められる（実用性に問題あり）。

（２）[有効塩素濃度の安定性]
・試験方法
　上記次亜塩素酸水１、及び、次亜塩素酸水２および有効塩素濃度５０ｐｐｍに調製した次亜塩素酸ナトリウム水溶液１００gにそれぞれ、供試の展着剤組成物０．１ｇを添加して、充分に溶解後、２５℃にて５時間放置し、残存する有効酸素濃度を下記の方法で測定した。そして、供試の展着剤組成物を添加する前の有効塩素量を１００（％）として、その比率を、有効塩素の残存率（％）として求め、有効塩素濃度の安定性を下記の評価基準に基づいて評価した。
・評価基準
　◎：残存率が７０％以上。
　○：残存率が５０％以上、７０％未満。
　△：残存率が３０％以上、５０％未満。
　×：残存率が３０％未満。

・有効塩素測定法
　供試の展着剤組成物３ｇを２００ｍｌ三角フラスコに取り、それに１０質量％ヨウ化カリウム溶液１５ｍｌ、（１＋１）硫酸１０ｍｌを添加し、冷暗所に３分間静置してヨウ素を遊離させ、次に０．１Ｎチオ硫酸ナトリウム規定液でヨウ素の黄色が消失するまで滴定し、下記の式（１）に基づいて算出する。
　　有効塩素（％、Ｃｌとして）＝０．３５４５×Ａ／Ｓ・・・（１）
　　Ａ＝０．１Ｎチオ硫酸ナトリウム規定液の敵定量（ｍｌ）
　　Ｓ＝サンプリング量（ｇ）

（３）[湿潤性]
・試験方法
　上記次亜塩素酸水１および次亜塩素酸水２に、それぞれ濃度が０．１質量％になるように供試の展着剤組成物を添加した。接触角計（ＣＡ－Ｘ型、協和界面科学社製）を用い、上記の通り調製した供試溶液と板状ポリプロピレン製テストピースとの接触角を接触３分後に測定した。そして、展着剤組成物未添加の、次亜塩素酸水１および次亜塩素酸水２の接触３分後の接触角をそれぞれ１００としたとき、展着剤組成物未添加物に対する展着剤組成物添加物の比率を、接触角低減率（％）としてそれぞれ求め、下記の評価基準に基づいて評価した。
・評価基準
◎：接触角の低減率が７０％以上。
○：接触角の低減率が５０％以上、７０％未満。
×：接触角の低減率が５０％未満。

（４）[低泡性]
・試験方法
　上記次亜塩素酸水１および次亜塩素酸水２に、それぞれ濃度が０．１質量％になるように供試の展着剤組成物を添加した供試品５０ｍｌを、２００ｍｌ栓付メスシリンダーに入れ、液温を２５℃に調整した後、２０回上下が逆さになるように振とうしたのち静置し、生起した泡の量を観察し、下記の基準に基づいて評価した。
・評価基準
◎：２０ｍｌ以下。
○：２０ｍｌを超え６０ｍｌ以下。
△：６０ｍｌを超え１００ｍｌ以下。
×：１００ｍｌを超える。

　上記表１～８の評価結果から、実施例１～２１品は、貯蔵安定性、有効塩素濃度の安定性、湿潤性、低泡性のいずれの項目においてもほぼ良好な結果が得られていることがわかる。これに対し、比較例１～１１品は、少なくとも幾つかの項目において、実用上の問題があることがわかる。

　上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。

産業上の利用の可能性

　本発明の展着剤組成物を次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液に添加して農作物に散布することにより、殺菌対象物並びに病害、虫害対象物への湿潤性、付着性等に優れる結果として、優れた農作物の殺菌、病害防止および駆虫効果を得ることができる。また、万一、本発明の展着剤組成物が残留した野菜や果物などの農作物を食べても、人体に対して非常に安全性が高い。

Claims

　下記（Ａ１）～（Ａ５）からなる群から選ばれた少なくとも１種の脂肪酸エステル（Ａ）と、プロピレングリコール、グリセリンおよびエタノールからなる群から選ばれた少なくとも１種の水溶性溶剤（Ｂ）と、水（Ｃ）と、を含有する展着剤組成物であって、次亜塩素酸水または次亜塩素酸塩の水溶液に添加して使用される農作物用展着剤組成物。
（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステル。
（Ａ２）ソルビタン脂肪酸エステル。
（Ａ３）グリセリン脂肪酸エステル。
（Ａ４）ショ糖脂肪酸エステル。
（Ａ５）プロピレングリコール脂肪酸エステル。
　上記脂肪酸エステル（Ａ）の含有量が、展着剤組成物全体の１～７０質量％の範囲である請求項１記載の農作物用展着剤組成物。
　上記脂肪酸エステル（Ａ）として、（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステルと（Ａ２）ソルビタン脂肪酸エステルとを併用する請求項１または２記載の農作物用展着剤組成物。
　上記（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が展着剤組成物全体の１～３０質量％の範囲に設定され、且つ、上記（Ａ１）ポリグリセリン脂肪酸エステルと上記（Ａ２）ソルビタン脂肪酸エステルとの質量比［（Ａ１）：（Ａ２）］が、２：１～１：２４の範囲に設定されている請求項３記載の農作物用展着剤組成物。
　上記次亜塩素酸水が、電解水生成装置で生成された酸性電解水である請求項１～４のいずれか一項に記載の農作物用展着剤組成物。
　上記酸性電解水が、下記（Ｉ）および（II）の少なくとも一方である請求項５記載の農作物用展着剤組成物。
（Ｉ）０．２質量％以下の塩化カリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電気分解し、その陽極側から得られた水溶液であって、ｐＨが６．５以下であり、有効塩素１０～６０ｍｇ／ｋｇである酸性電解水。
（II）２～６質量％の塩酸を無隔膜電解槽内で電気分解し、水で希釈して得られた水溶液であって、ｐＨ６．５以下であり、有効塩素１０～６０ｍｇ／ｋｇである酸性電解水。