WO2016159092A1 - エピルビシンの製造方法およびその新規な製造中間体 - Google Patents

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Abstract

 本発明によれば、4'-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を新規な製造中間体として使用することにより、出発原料である4'-エピダウノルビシンに含まれうる代表的な不純物である13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4'-エピフュードマイシンを効率的に除去することができ、高純度エピルビシンを製造することができる。

Description

エピルビシンの製造方法およびその新規な製造中間体
 本発明はエピルビシンおよびその塩(例えば、医薬的に許容される塩)の製造方法ならびにその新規な製造中間体および該中間体の製造方法に関する。
 エピルビシンは、アントラサイクリン系の抗生物質であり、急性白血病、悪性リンパ腫、乳癌、卵巣癌、胃癌、肝癌、尿路上皮癌などの治療に用いられている。また、エピルビシンはその抗腫瘍活性と副作用低減の面で同じアントラサイクリン系の抗生物質であるダウノルビシンやドキソルビシンよりも優れており、臨床上、極めて有用な薬剤である。
 エピルビシンの製造方法としては、微生物発酵生産物であるダウノルビシンを出発原料として化学変換を経てエピルビシンを製造する方法が開示されている。例えば、メタノリシスでダウノルビシンをダウノマイシノンおよびダウノサミンに分割し、ダウノマイシノンの14位にアセトキシ基を導入してダウノマイシノンを14-アセトキシダウノマイシノンに変換し、ダウノサミンのアミノ糖部分の4’位水酸基を反転させてダウノサミンを4’-エピダウノサミンに変換し、4’-エピダウノサミンを14-アセトキシダウノマイシノンとカップリングし、得られた化合物をエピルビシンに変換することでエピルビシンを製造する方法が開示されている(特許文献1)。
 上記のエピルビシンの製造方法は、多段階の合成工程を必要とすることから煩雑であり、収率が低いという工業的製造法の観点での課題がある。
 一方、4’-エピダウノルビシンまたはその塩を出発原料とし、短工程でエピルビシンを製造する方法が開示されている(特許文献2)。
 しかし、該特許文献には、4’-エピダウノルビシン塩酸塩を出発原料とする例だけが開示されているだけで、その他の塩についての具体的な記載および例示はない。また、この方法によって得られるエピルビシンの純度に関する記述は無く、例示されている4’-エピダウノルビシン塩酸塩を出発原料として得られた、エピルビシン塩酸塩の純度については言及していない。
 エピルビシンは各国の医薬品規格、例えば、日本薬局方、欧州薬局方、米国薬局方などに既に記載されていることから、高純度のエピルビシンの製造技術の構築、すなわち、製造における不純物の管理も製造上の課題である。
 前述の課題を解決するために、高純度な出発原料を使用することは、エピルビシンの不純物を低減し、より高純度なエピルビシンの製造を可能とする。とりわけ、高純度な4’-エピダウノルビシンまたはその塩が調製可能であれば、高純度なエピルビシンが効率的に製造可能となり、工業的製造法の観点での課題も解決可能となる。
 4’-エピダウノルビシンは、例えば微生物の発酵培養、続く精製により製造される(特許文献3、非特許文献1)。発酵培養を起源として製造される4’-エピダウノルビシンには、代表的な不純物として13-ジヒドロエピダウノルビシン、4’-エピフュードマイシンが含まれることが知られている。また、4’-エピダウノルビシン塩酸塩化の方法(特許文献4、特許文献5および非特許文献2)および4’-エピダウノルビシン塩酸塩の結晶化の方法(特許文献6)が知られている。
米国特許5874550号公報 特開2007-261976号公報 特表2010-525828号公報 米国特許4112076号公報 米国特許4345068号公報 特表2013-503826号公報
Nature Biotechnology,16,69-74,1998 Carbohydrate Research,79,193-204,1980
 本発明者らは、高純度な4’-エピダウノルビシンを調製するため、発酵培養により製造された4’-エピダウノルビシンを、当業者に周知の精製方法、例えば、イオン交換樹脂および合成吸着剤の使用、分液、抽出等を実施したが、精製効果は低く、高純度な4’-エピダウノルビシンは得られなかった。
 また、本発明者らは、公知の方法、例えば、特許文献4、特許文献5および非特許文献2に開示されている4’-エピダウノルビシン塩酸塩化の方法に従い、発酵培養により製造された4’-エピダウノルビシンから4’-エピダウノルビシン塩酸塩を調製した。その結果、精製効果は低く、高純度な4’-エピダウノルビシン塩酸塩は得られなかった。
 一方、本発明者らは、特許文献6に開示されている4’-エピダウノルビシン塩酸塩を結晶化する方法を追試した結果、13-ジヒドロエピダウノルビシン、4’-エピフュードマイシンの低減が認められた。しかし、その効果は十分でなく、高純度の4’-エピダウノルビシン塩酸塩を得るためには結晶化を繰り返す必要がある。結晶化の繰り返しは、工業的製造法の観点(収率、操作性、製造コスト)から不向きである。
 そこで、本発明は、4’-エピダウノルビシンに含まれうる代表的な不純物である13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンが十分除去された新規な製造中間体、4’-エピダウノルビシンを出発原料とし、この中間体を効率的に製造する方法、並びに、この中間体を使用し、エピルビシンまたはその塩(例えば、医薬上許容しうる塩)を効率的かつ高純度に製造する方法を提供することを目的とする。
 本発明者らは、鋭意検討した結果、4’-エピダウノルビシンに含まれうる代表的な不純物である13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンが十分除去された新規な製造中間体である4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物と、4’-エピダウノルビシンを出発原料とし、この中間体を効率的に製造する方法を見出し、更にこの中間体を使用し、エピルビシンまたはその塩(例えば、医薬上許容しうる塩)を効率的かつ高純度に製造する方法を見出し、本発明を完成させたものである。
 すなわち、本発明は、
[1]下記式(1)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 で示される4’-エピダウノルビシンと、有機酸とを溶媒中で混合し、下記式(2)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を形成させる工程を含む、4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の製造方法、
[2]4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を形成させる工程が、4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の沈殿物を形成させる工程を含む[1]に記載の製造方法、
[3]4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を形成させる工程が、4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の結晶化工程を含む[1]に記載の製造方法、
[4]4’-エピダウノルビシンの有機酸塩がシュウ酸塩である[1]から[3]のいずれかに記載の製造方法、
[5]4’-エピダウノルビシンの有機酸塩がベンゼンスルホン酸塩である[1]から[3]のいずれかに記載の製造方法、
[6]4’-エピダウノルビシンの有機酸塩がp-トルエンスルホン酸塩である[1]から[3]のいずれかに記載の製造方法、
[7]上記[1]から[6]のいずれかに記載の製造方法により製造された4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を中間体として使用して、下記式(3)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
で示されるエピルビシンまたはその塩を製造する工程を含む、エピルビシンまたはその塩の製造方法、
[8]最終生成物がエピルビシン塩酸塩である[7]に記載の製造方法、
[9]下記式(4)で示される
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物、
[10]HPLC純度が90%以上である4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物、
[11]有機酸塩がシュウ酸塩である[10]に記載の4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物、
[12]有機酸塩がベンゼンスルホン酸塩である[10]に記載の4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物、
[13]有機酸塩がp-トルエンスルホン酸塩である[10]に記載の4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物、に関する。
 本発明の方法によれば、式(1)で示される4’-エピダウノルビシンを出発原料とし、そこに含まれうる代表的な不純物である13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンが十分除去された式(2)で示される新規な製造中間体である4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物が調製可能であり、更にこの中間体を使用し、エピルビシンまたはその塩(例えば、医薬上許容しうる塩)を効率的かつ高純度に製造することが可能となる。
 本発明の方法によれば、4’-エピダウノルビシン塩酸塩を使用する方法とは異なり、4’-エピダウノルビシンから4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を製造する過程において1回の沈殿化を行うことで、4’-エピダウノルビシンに含まれうる代表的な不純物である13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンを、効果的に除去することが可能である。加えて、得られた4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の沈殿物に対して1回の結晶化を行うことで、更に、これら不純物の除去ができる。従って、少ない精製回数(短い製造工程)で効果的に高純度なエピルビシンの製造に供する、式(2)の化合物またはその水和物もしくは溶媒和物を得ることが可能である利点を有している。
 また、式(2)の化合物またはその水和物もしくは溶媒和物の沈殿化ならびに結晶化は、安価な有機酸や汎用溶媒の組み合わせを使用して実施可能であり、本発明の方法は、煩雑な操作を組み合わせることなく式(2)の化合物またはその水和物もしくは溶媒和物を得ることができる点で効率的であり、製造コスト等の工業的な観点からも有用な方法である。
 更に、このようにして得られた高純度な式(2)の化合物またはその水和物もしくは溶媒和物の結晶は、例えば、特許文献2に記載の方法により、高純度なエピルビシンまたはその塩への誘導が可能である。
 本発明は、以下のスキームによって高純度なエピルビシン(3)を製造する方法および新規な製造中間体であるエピルビシンの有機酸塩(2)に関するものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 ここで使用される式(1)で示される4’-エピダウノルビシンとしては、例えば微生物の発酵培養およびそれに続く培養液の精製により製造された4’-エピダウノルビシン(特許文献3、非特許文献1)を使用することができる。
 または、発酵培養により製造されるダウノルビシンから化学合成変換を経て製造された4’-エピダウノルビシンも使用可能である。
 発酵培養により製造されるダウノルビシンに含まれる代表的な類縁物質として13-ジヒドロダウノルビシン、フュードマイシンなどが知られている。これら類縁物質が化学合成変換で4’位の水酸基の反転を受けて13-ジヒドロエピダウノルビシン、4’-エピフュードマイシンなどを与え、4’-エピダウノルビシン粗製物に不純物として含まれる。また、発酵培養により直接製造される4’-エピダウノルビシン粗製物にも13-ジヒドロエピダウノルビシン、4’-エピフュードマイシンなどが不純物として含まれる。
 本発明で使用される有機酸としては、水和物も使用することができる。有機酸の種類は特に限定されないが、好ましくはシュウ酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸である。
 本発明の式(2)で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物は、特に限定されないが、好ましくは4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物、4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物、および4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物である。
 本発明が提供する4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物は、具体的には以下の方法で製造することができる。
 4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物については、4’-エピダウノルビシンを溶媒Aに溶解させ、この溶液に、溶媒Bに溶かしたシュウ酸またはシュウ酸二水和物を加えて4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を沈殿させる。その後、沈殿物を濾取し、必要に応じて減圧乾燥させる。
 溶媒Aとしては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。溶媒Aとして使用可能な有機溶媒は、好ましくはハロゲン系溶媒、具体的にはジクロロメタン、クロロホルムなどであり、更に好ましくはジクロロメタンである。溶媒Aの使用量は4’-エピダウノルビシンが溶解し得る量であれば特に制限されないが、好ましくは4’-エピダウノルビシンに対し10~400倍容量である。
 溶媒Bとしては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。溶媒Bとして使用可能な有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、トルエン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどであり、好ましくはメタノールである。溶媒Bの使用量は、例えば、溶媒Aの0.1~1倍容量であり、好ましくは0.2~0.5倍容量である。シュウ酸またはシュウ酸二水和物の使用量は、例えば1~22当量、好ましくは2~12当量である。沈殿化温度は通常の製造工程で使用されている温度であり、例えば0~30℃であり、好ましくは15~25℃である。沈殿後は必要に応じて所定時間撹拌する。例えば1時間以上など、製造上許容される時間である。
 4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物は、別の製造方法、例えば、シュウ酸またはシュウ酸二水和物の水溶液に4’-エピダウノルビシンを添加して溶解させ、この溶液に任意の溶媒を加えて4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を沈殿させる方法でも調製可能である。
 この場合、任意の溶媒としては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。任意の溶媒として使用可能な有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどであり、好ましくはメタノール、2-プロパノールである。水の使用量は4’-エピダウノルビシンに対して、例えば5~50倍容量であり、好ましくは10~20倍容量である。任意の溶媒の使用量は、例えば、水の1~10倍容量であり、好ましくは1~5倍容量である。シュウ酸またはシュウ酸二水和物の使用量は、例えば1~10当量であり、好ましくは1~5当量である。4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の沈殿化温度は、通常の製造工程で使用されている温度、例えば0~60℃であり、好ましくは0~30℃である。沈殿後は必要に応じて所定時間撹拌する。例えば1時間以上など、製造上許容される時間である。
 4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物については、4’-エピダウノルビシンを溶媒Cに溶解させ、この溶液に、溶媒Dに溶かしたベンゼンスルホン酸一水和物を加えて4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を沈殿させる。その後、沈殿物を濾取し、必要に応じて減圧乾燥させる。
 溶媒Cとしては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。溶媒Cとして使用可能な有機溶媒は、好ましくはハロゲン系溶媒、具体的にはジクロロメタン、クロロホルムなどであり、更に好ましくはジクロロメタンである。溶媒Cの使用量は4’-エピダウノルビシンが溶解し得る量であれば特に制限されないが、好ましくは4’-エピダウノルビシンに対し10~400倍容量である。
 溶媒Dとしては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。溶媒Dとして使用可能な有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、トルエン、アセトニトリルなどであり、好ましくはメタノールである。溶媒Dの使用量は、例えば、溶媒Cの0.02~0.2倍容量であり、好ましくは0.05~0.1倍容量である。ベンゼンスルホン酸一水和物の使用量は、例えば1~5当量、好ましくは1~2当量である。沈殿化温度は通常の製造工程で使用されている温度であり、例えば0~30℃であり、好ましくは15~25℃である。沈殿後は必要に応じて所定時間撹拌する。例えば1時間以上など、製造上許容される時間である。
 4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物は、別の製造方法、例えば、ベンゼンスルホン酸一水和物の水溶液に4’-エピダウノルビシンを添加して溶解させ、この溶液に任意の溶媒を加えて4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を沈殿させる方法でも調製可能である。
 この場合、任意の溶媒としては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。任意の溶媒として使用可能な有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリルなどであり、好ましくはエタノール、およびアセトンである。水の使用量は4’-エピダウノルビシンに対して、例えば2.5~15倍容量であり、好ましくは5~10倍容量である。4’-エピダウノルビシンの溶解温度は通常の製造工程で使用されている温度、例えば20~60℃である。任意の溶媒の使用量は、例えば、水の1~10倍容量であり、好ましくは1~5倍容量である。ベンゼンスルホン酸一水和物の使用量は、例えば1~5当量、好ましくは1~2当量である。
 4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物については、4’-エピダウノルビシンを溶媒Eに溶解させ、この溶液に、溶媒Fに溶かしたp-トルエンスルホン酸一水和物を加えて4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を沈殿させる。その後、沈殿物を濾取し、必要に応じて減圧乾燥させる。
 溶媒Eとしては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。溶媒Eとして使用可能な有機溶媒は、好ましくはハロゲン系溶媒、アミド系溶媒、およびスルホキシド系溶媒、具体的にはジクロロメタン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどであり、更に好ましくはジクロロメタンである。溶媒Eの使用量は4’-エピダウノルビシンが溶解し得る量であれば特に制限されないが、好ましくは4’-エピダウノルビシンに対し10~400倍容量である。
 溶媒Fとしては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。溶媒Fとして使用可能な有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、トルエン、アセトニトリルなどであり、好ましくはメタノールである。溶媒Fの使用量は、例えば、溶媒Eの0.02~10倍容量であり、好ましくは0.05~5倍容量である。p-トルエンスルホン酸一水和物の使用量は1~2当量の範囲が好ましく、より好ましくは1~1.5当量である。沈殿化温度は通常の製造工程で使用されている温度であり、例えば0~30℃であり、好ましくは15~25℃である。沈殿後は必要に応じて所定時間撹拌する。例えば1時間以上など、製造上許容される時間である。
 上記で製造された4’-エピダウノルビシンの各種有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の沈殿物は、更に結晶化することが可能である。
 具体的には、4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を水に懸濁させ、これを通常の製造工程で使用されている温度、例えば20~60℃で溶解させる。続いて、この溶液に、任意の溶媒を加えて徐々に冷却させる。その温度は任意であるが、好ましくは0~30℃まで徐々に冷却させる。その後、析出物を濾取し、必要に応じて減圧乾燥させる。
 任意の溶媒としては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。任意の溶媒として使用可能な有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリルなどであり、好ましくはメタノール、および2-プロパノールである。水の使用量は4’-エピダウノルビシンに対して、例えば5~20倍容量であり、好ましくは10~15倍容量である。任意の溶媒の使用量は、例えば、水の1~10倍容量であり、好ましくは1~5倍容量である。
 4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物については、溶媒Gに懸濁させ、これを通常の製造工程で使用されている温度、例えば20~60℃で溶解させる。続いて、この溶液に、溶媒Hを加えて徐々に冷却させる。その温度は任意であるが、好ましくは0~30℃まで徐々に冷却させる。その後、析出物を濾取し、必要に応じて減圧乾燥させる。
 溶媒Gは、例えば、水、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどであり、好ましくは水である。溶媒Hとしては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。溶媒Hとして使用可能な有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリルなどであり、好ましくはエタノール、およびアセトンである。溶媒Gの使用量は4’-エピダウノルビシンに対して、例えば2.5~15倍容量であり、好ましくは5~10倍容量である。溶媒Hの使用量は、例えば、溶媒Gの1~10倍容量であり、好ましくは1~5倍容量である。
 4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物については、有機溶媒と水の混液に懸濁し、これを通常の製造工程で使用されている温度、例えば20~60℃で溶解させる。続いて、この溶液を徐々に冷却させる。その温度は任意であるが、好ましくは0~30℃まで徐々に冷却させる。その後、析出物を濾取し、必要に応じて減圧乾燥させる。
 有機溶媒としては、当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリルなどであり、好ましくはアセトンである。有機溶媒と水の割合は、例えば、1:1~5:1であり、好ましくは1:1~2:1である。混液の使用量は4’-エピダウノルビシンに対して、例えば、10~30倍容量であり、好ましくは10~20倍容量である。
 また、4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物は、以下の方法でも結晶化が可能である。
 4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を溶媒Iに懸濁させ、これを通常の製造工程で使用されている温度、例えば20~60℃で溶解させる。この溶液に、溶媒Jを加えて析出させ、必要であれば徐々に冷却させる。その後、析出物を濾取し、必要に応じて減圧乾燥させる。
 溶媒Iは、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどであり、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドである。溶媒Jとしては、水または当業者が汎用する有機溶媒を使用することができる。溶媒Jとして使用可能な有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、トルエンなどであり、好ましくはエタノールである。溶媒Iの使用量は、4’-エピダウノルビシンに対して、例えば2.5~15倍容量であり、好ましくは5~10倍容量である。溶媒Jの使用量は、例えば、溶媒Iの1~5倍容量であり、好ましくは2~2.5倍容量である。
 4’-エピダウノルビシンから4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を製造する過程において、1回の沈殿化を行うことによる、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率は、出発原料である式(1)で示される4’-エピダウノルビシンに含まれる量に対して、それぞれ25%以上、および37%以上である。また、沈殿物として得られた4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を1回結晶化することによる、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率は、沈殿物として得られた4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物に含まれる量に対して、それぞれ77%以上、および63%以上である。
 本発明により製造された式(2)で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の沈殿物に含まれる不純物の量(HPLC分析における有機酸ピークを除いたピーク面積の和に対する不純物ピーク面積の百分率)は、出発原料として用いる4’-エピダウノルビシンに含まれる不純物の量によって変わるため、一定しないが、1回の沈殿化により13-ジヒドロエピダウノルビシンは2.6%以下となり、4’-エピフュードマイシンは3.5%以下となる。また、さらに1回の結晶化を実施することにより、4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の結晶中の13-ジヒドロエピダウノルビシンは1.6%以下となり、4’-エピフュードマイシンは0.9%以下となる。これらの不純物の量は純度の高い出発原料を使用することにより、さらに低減させることが可能である。
 本発明により製造された式(2)で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の沈殿物のHPLC純度は90%以上である。また沈殿物として得られた4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物をさらに結晶化することにより、HPLC純度は95%以上に向上させることができる。
 本発明により製造された式(2)で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を用いて、例えば、特許文献2に記載の方法により高純度なエピルビシンまたはその塩(例えば、医薬上許容しうる塩)を製造することができる。例えば、エピルビシン塩酸塩を製造するには、初めに、4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を、ケタール剤存在下、臭素化剤と反応させて、ブロモケタール体を得る。次に、酸性条件下、ケトン系溶媒と処理してブロモケトン体を得る。更に、カルボン酸金属塩存在下、ブロモケトン体を加水分解し、エピルビシンを主成分として含有する溶液とする。エピルビシンを主成分として含有する溶液はイオン交換樹脂(塩化物イオン型)に通してエピルビシン塩酸塩の水溶液とし、更に吸着性樹脂により精製する。エピルビシン塩酸塩溶液の主分画を濃縮し、エピルビシン塩酸塩を得る。
 より具体的には、4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物に有機溶媒を加える。有機溶媒は当該反応が進行するものであれば特に制限されず、単一溶媒でも数種類の溶媒を混合してもよい。また、溶媒の混合比は任意の割合をとることができる。アルコール類、エーテル類およびこれらからなる任意の混合溶媒が好ましい。さらに好ましくはメタノールと1,4-ジオキサンの混合溶媒である。次に、4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物に、ケタール剤と臭素化剤を作用させ、ブロモケタール体とする。使用するケタール剤は、例えば、オルトギ酸アルキルであり、オルトギ酸アルキルとしては、例えば、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリプロピル、オルトギ酸トリブチルなどが使用可能である。ケタール剤は、好ましくはオルトギ酸トリメチルである。臭素化剤は好適には臭素である。反応終了後、反応液に存在する過剰な酸を除くため、酸捕捉剤、例えば酸化プロピレンを添加する。酸捕捉剤を添加した後、濃縮し、濃縮液に貧溶媒を添加してブロモケタール体を沈殿物として単離する。貧溶媒としてはエーテル類が使用可能である。貧溶媒は、好ましくはジイソプロピルエーテルである。
 ブロモケタール体の沈殿物は乾燥することなく次工程に使用することができる。湿状または乾燥ブロモケタール体を臭化水素酸の水溶液とケトン系溶媒に溶解して反応させる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが使用可能である。ケトン系溶媒は、好ましくはアセトンである。反応後は、ブロモケトン体を単離することなく、エピルビシンに変換することが可能である。即ち、ブロモケトン体の溶液にカルボン酸アルカリ金属塩を混合し、次いで、塩基でpHを調整することでエピルビシンを主成分として含有する溶液を得る。カルボン酸アルカリ金属塩としては、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ギ酸カリウム、酢酸カリウムなどが使用可能である。カルボン酸アルカリ金属塩は、好ましくはギ酸ナトリウムである。塩基としては、アルカリ金属水酸化物が使用可能である。塩基は、好ましくは水酸化ナトリウムである。pHは4.0~6.0に調整することが好ましく、4.5~5.5に調整することが更に好ましい。
 エピルビシンを主成分として含有する溶液からエピルビシンを塩酸塩として単離するため、溶液を水で希釈した後、塩酸を加えpHを調整する。pHは2.0~4.0に調整することが好ましく、2.5~3.5に調整することが更に好ましい。次に、調整液をイオン交換樹脂(塩化物イオン型)に通してエピルビシン塩酸塩の水溶液を得る。更にこの水溶液を吸着性樹脂に吸着させ、水、有機溶媒と水の混合溶液の順で通液し精製する。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトンなどが使用可能である。有機溶媒は、好ましくはメタノールである。エピルビシン塩酸塩の主分画は濃縮され、この濃縮液にエタノールを加えて更に濃縮し、これを濃縮乾固してエピルビシン塩酸塩を得る。
 以上に説明した通り、本発明は、4’-エピダウノルビシンに含まれうる代表的な不純物である13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンが十分除去された新規な製造中間体である4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物、4’-エピダウノルビシンを出発原料とし、この中間体を効率的に製造する方法、並びに、この中間体を使用し、エピルビシンまたはその塩(例えば、医薬上許容しうる塩)を効率的かつ高純度に製造する方法を提供するものである。
 以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は下記実施例に限定されない。
 4’-エピダウノルビシン、4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩、4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩、4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩、および4’-エピダウノルビシン塩酸塩のHPLC純度は、以下の条件でHPLC分析した際の4’-エピダウノルビシンのピーク面積比である。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率は、4’-エピダウノルビシンまたは4’-エピダウノルビシン塩を以下の条件でHPLC分析した際、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンのピーク面積を4’-エピダウノルビシンのピーク面積で除した値をそれぞれ13-ジヒドロエピダウノルビシンの含有量および4’-エピフュードマイシンの含有量とし、算出した。
HPLC条件
カラム:Kinetex 2.6u C18 100A、2.6μm、3.0×150mm(Phenomenex社製)
移動相A:5mmol/Lラウリル硫酸ナトリウム+10mmol/Lリン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)
移動相B:アセトニトリル
流量:0.5ml/min.
温度:40℃
測定波長:254nm
分析時間:13分
データ収集時間:2.0~13.0分
グラジェント条件:
時間(分)   移動相Aの%   移動相Bの%
0       75.0%    25.0%
10.00   35.0%    65.0%
10.01   75.0%    25.0%
13.00   75.0%    25.0%
 上記測定条件において、4’-エピダウノルビシンは約8.7分にピークが確認され、13-ジヒドロエピダウノルビシンは約8.1分、4’-エピフュードマイシンは約8.5分にピークが確認される。
 エピルビシン塩酸塩のHPLC純度は以下の条件でHPLC分析した際のエピルビシンのピーク面積比である。
HPLC条件
カラム:Senshu Pak ODS-1301S 4.6×300mm(センシュー科学社製)
移動相:(0.3(w/v)%ラウリル硫酸ナトリウム+0.14(v/v)%リン酸緩衝液)/アセトニトリル溶液=1/1
流量:1.1ml/min.
温度:25℃
測定波長:254nm
分析時間:30分
 上記測定条件において、エピルビシンは約11分にピークが確認される。
実施例1:
 4’-エピダウノルビシン150mg(HPLC純度79.9%)をジクロロメタン60mLに溶かし、シュウ酸299mgのメタノール15mL溶液を加え、15~25℃で22時間撹拌した。沈殿物を濾取後、減圧乾燥し、4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩150mg(4’-エピダウノルビシンとして129mg)を得た。収率は85.5%、HPLC純度は94.8%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ52%および51%であった。また、HPLC分析にて4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩中のシュウ酸ピークはシュウ酸(試薬特級品)の保持時間と完全に一致した。
H-NMR(400MHz,D2O)δ(ppm);7.55(1H,dd)、7.35(1H,d)、7.27(1H,d)、5.30(1H,d)、4.68(1H,m)、3.86(1H,m)、3.78(3H,s)、3.26(2H,m)、2.76(1H,d)、2.56(1H,d)、2.31(3H,d)、2.14(2H,m)、1.98(1H,dd)、1.81(1H,ddd)、1.22(3H,d)
MS(ESI,positive);m/z 528[M+H]+
実施例2:
 4’-エピダウノルビシン5.0g(HPLC純度76.8%)をジクロロメタン2000mLに溶かし、シュウ酸10gのメタノール400mL溶液を加え、15~25℃で22時間撹拌した。沈殿物を濾取後、減圧乾燥し、4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩5.1g(4’-エピダウノルビシンとして4.4g)を得た。収率は88.3%、HPLC純度は94.4%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ48%および48%であった。
実施例3:
 4’-エピダウノルビシン150mg(HPLC純度79.9%)をジクロロメタン60mLに溶かし、シュウ酸二水和物419mgのメタノール12mL溶液を加え、15~25℃で20時間撹拌した。沈殿物を濾取後、減圧乾燥し、4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩153mg(4’-エピダウノルビシンとして132mg)を得た。収率は88.1%、HPLC純度は95.3%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ56%および58%であった。
実施例4:
 4’-エピダウノルビシン150mg(HPLC純度79.9%)をシュウ酸51mgの水1.5mL溶液に溶かし、メタノール1.5mLを加え、15~25℃で22時間撹拌した。沈殿物を濾取後、減圧乾燥し、4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩135mg(4’-エピダウノルビシンとして109mg)を得た。収率は72.8%、HPLC純度は95.9%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ76%および61%であった。
実施例5:
 4’-エピダウノルビシン1.0g(HPLC純度75.8%)をジクロロメタン100mLに溶かし、ベンゼンスルホン酸一水和物334mgのメタノール5mL溶液を加え、15~25℃で19時間撹拌した。沈殿物を濾取後、減圧乾燥し、4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩1.12g(4’-エピダウノルビシンとして0.88g)を得た。収率は87.7%、HPLC純度は91.6%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ25%および37%であった。
H-NMR(400MHz,D2O)δ(ppm);7.74(2H,m,C SOH)、7.64(1H,dd)、7.50(3H,m,C SOH)、7.43(1H,d)7.36(1H,d)、5.39(1H,d)、4.76(1H,m)、3.99(1H,m)、3.88(3H,s)、3.36(2H,m)、2.86(1H,d)、2.65(1H,d)、2.40(3H,s)、2.22(2H,m)、2.06(1H,dd)、1.90(1H,ddd)、1.31(3H,d)
MS(ESI,positive);m/z 528[M+H]+
実施例6:
 4’-エピダウノルビシン1.0g(HPLC純度75.8%)をジクロロメタン100mLに溶かし、p-トルエンスルホン酸一水和物361mgのメタノール5mL溶液を加え、15~25℃で22時間撹拌した。沈殿物を濾取後、減圧乾燥し、4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩1.08g(4’-エピダウノルビシンとして0.84g)を得た。収率は83.8%、HPLC純度は92.8%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ37%および47%であった。
H-NMR(400MHz,D2O)δ(ppm);7.59(1H,d,p-MeC SOH)、7.58(1H,dd)、7.34(1H,d)、7.30(1H,d)、7.26(1H,d,p-MeC SOH)、5.38(1H,d)、4.74(1H,m)、3.98(1H,m)、3.83(3H,s)、3.36(2H,m)、2.82(1H,d)、2.62(1H,d)、2.40(3H,s)、2.30(3H,s,p-MeSOH)、2.23(2H,m)、2.03(1H,dd)、1.91(1H,ddd)、1.32(3H,d)
MS(ESI,positive);m/z 528[M+H]+
比較例1:
 4’-エピダウノルビシン150mg(HPLC純度79.9%)を用い、特許文献5の実施例2の塩酸塩化の方法に従い、4’-エピダウノルビシン塩酸塩を得た。収率は77.0%、HPLC純度は84.3%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ0%および6%であった。
比較例2:
 4’-エピダウノルビシン150mg(HPLC純度79.9%)を用い、非特許文献2の塩酸塩化の方法に従い、4’-エピダウノルビシン塩酸塩を得た。収率は80.8%、HPLC純度は77.0%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ3%および9%であった。
比較例3:
 4’-エピダウノルビシン150mg(HPLC純度79.9%)を用い、特許文献4の実施例9に従い、4’-エピダウノルビシン塩酸塩を得た。収率は92.1%、HPLC純度は80.2%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ0%および4%であった。
 13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率、HPLC純度、ならびに収率を下記表1に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
 実施例1~6で得られた式(2)で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩、および比較例1~3で得られた4’-エピダウノルビシン塩酸塩の13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率を比較した結果、式(2)で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩でこれら不純物が効率的に除去された。
実施例7:
 4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩2.65g(4’-エピダウノルビシンとして2.00g)(HPLC純度92.9%)を水20mLに懸濁し、60℃で加温溶解した。この溶液にメタノール20mLを加え、25℃まで徐々に冷却した。析出物を濾取後、減圧乾燥し、4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩1.83g(4’-エピダウノルビシンとして1.70g)を得た。収率は85.1%、HPLC純度は99.2%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ92%および89%であった。また、得られた4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩は偏光が認められた。
実施例8:
 4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩262mg(4’-エピダウノルビシンとして200mg)(HPLC純度92.9%)を水2.0mLに懸濁し、60℃で加温溶解した。この溶液に2-プロパノール2.0mLを加え、25℃まで徐々に冷却した。析出物を濾取後、減圧乾燥し、4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩197mg(4’-エピダウノルビシンとして178mg)を得た。収率は89.1%、HPLC純度は98.6%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ90%および89%であった。また、得られた4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩は偏光が認められた。
実施例9:
 4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩64mg(4’-エピダウノルビシンとして50mg)(HPLC純度91.6%)を水250μLに懸濁し、45℃で加温溶解した。この溶液にエタノール250μLを加え、25℃まで徐々に冷却した。析出物を濾取し、4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩31mg(4’-エピダウノルビシンとして27mg)を得た。収率は53.3%、HPLC純度は98.7%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ91%および80%であった。また、得られた4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩は偏光が認められた。
実施例10:
 4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩64mg(4’-エピダウノルビシンとして50mg)(HPLC純度91.6%)を水250μLに懸濁し、45℃で加温溶解した。この溶液にアセトン250μLを加え、25℃まで徐々に冷却した。析出物を濾取し、4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩41mg(4’-エピダウノルビシンとして35mg)を得た。収率は69.2%、HPLC純度は98.1%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ83%および77%であった。また、得られた4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩は偏光が認められた。
実施例11:
 4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩61mg(4’-エピダウノルビシンとして50mg)(HPLC純度92.8%)を水250μLおよびアセトン375μLの混液に懸濁し、45℃で加温溶解した。続いて、この溶液を0~5℃まで徐々に冷却した。析出物を濾取後、減圧乾燥し、4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩31mg(4’-エピダウノルビシンとして27mg)を得た。収率は53.6%、HPLC純度は98.4%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ83%および63%であった。また、得られた4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩は偏光が認められた。
実施例12:
 4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩658mg(4’-エピダウノルビシンとして500mg)(HPLC純度91.0%)をN,N-ジメチルホルムアミド5mLを加え、30℃で溶解した。この溶液にエタノール12.5mLを加え撹拌した。析出物を濾取後、減圧乾燥し、4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩447mg(4’-エピダウノルビシンとして365mg)を得た。収率は73.0%、HPLC純度は97.4%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ77%および68%であった。また、得られた4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩は偏光が認められた。
比較例4:
 比較例3の方法により得た4’-エピダウノルビシン塩酸塩8.7g(HPLC純度84.3%)を用い、特許文献6の実施例2に従い、結晶性4’-エピダウノルビシン塩酸塩を得た。収率は76.6%、HPLC純度は94.0%であった。また、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率はそれぞれ75%および55%であった。
 13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率、HPLC純度、ならびに収率を下記表2に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
 実施例7~12で得られた式(2)で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩と、比較例4で得られた結晶性4’-エピダウノルビシン塩酸塩との間で、13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンの除去率を比較した。その結果、4’-エピダウノルビシン塩酸塩の結晶化でも13-ジヒドロエピダウノルビシン、4’-エピフュードマイシンに対する精製効果が認められた。しかし、その効果は4’-エピダウノルビシンの有機酸塩と比べ十分でなく、高純度の4’-エピダウノルビシン塩酸塩を得るためには結晶化を繰り返す必要があることが判明した。結晶化の繰り返しは、工業的製造法の観点(収率、操作性、製造コスト)から不向きである。
実施例13:
 実施例7の方法で製造された4’-エピダウノルビシンシュウ酸塩(4’-エピダウノルビシンとして6.27g、HPLC純度99.2%)、メタノール67mL、1,4-ジオキサン67mL、オルトギ酸トリメチル12mLを混合した後、臭素1.1mLを加えた。室温で4時間撹拌した後、酸化プロピレン3.2mLを加えて更に0.5時間撹拌した。この液を60mLまで濃縮し、濃縮液をジイソプロピルエーテル740mLに添加してブロモケタール体を沈殿化させた。生じた沈殿物を濾取し、乾燥することなく、水142mLとアセトン146mLの混合溶媒に加えた。混合液に臭化水素酸4.2mLを加えて、室温で21時間撹拌した。続いて、この反応液に予め調製したギ酸ナトリウム10gと水42mLの混合溶液を加えた。室温で24時間撹拌した後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを5に調整し、更に24時間撹拌した。この液を塩酸でpH3に調整し、濃縮した。得られた濃縮液を水で2000mLに調整し、イオン交換樹脂(塩化物イオン型)に通液し、続いて水を通液してエピルビシン塩酸塩を含む溶液を得た。更に、この溶液を吸着性樹脂に吸着させ、水、水/メタノール=80/20(v/v)、水/メタノール=70/30(v/v)の順で、エピルビシン塩酸塩溶液を溶離した。主分画を濃縮し、エタノールを加えて更に濃縮した。得られた残渣を減圧乾燥し、エピルビシン塩酸塩3.29g(エピルビシンとして2.99g)を得た。収率は46.6%、HPLC純度は99.2%であった。
実施例14:
 実施例9の方法で製造された式(2)で示される4’-エピダウノルビシンベンゼンスルホン酸塩(4’-エピダウノルビシンとして6.27g、HPLC純度98.7%)を用い、実施例13と同様の方法でエピルビシン塩酸塩2.48g(エピルビシンとして2.22g)を得た。収率は34.3%、HPLC純度は97.9%であった。
実施例15:
 実施例11の方法で製造された式(2)で示される4’-エピダウノルビシンp-トルエンスルホン酸塩(4’-エピダウノルビシンとして6.27g、HPLC純度98.7%)を用い、実施例13と同様の方法でエピルビシン塩酸塩2.50g(エピルビシンとして2.26g)を得た。収率は35.0%、HPLC純度は98.1%であった。
比較例5:
 比較例4の方法で製造された4’-エピダウノルビシン塩酸塩(4’-エピダウノルビシンとして6.27g、HPLC純度93.1%)を用い、実施例13と同様の方法でエピルビシン塩酸塩4.02g(エピルビシンとして3.41g)を得た。収率は52.8%、HPLC純度は93.7%であった。
 実施例13~15、および比較例5で得られたエピルビシン塩酸塩についてHPLC純度を比較した。その結果、式(2)で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩を使用して製造されたエピルビシン塩酸塩のHPLC純度は、4’-エピダウノルビシン塩酸塩を使用して製造されたエピルビシン塩酸塩よりも高純度であった。
 本発明の方法により、高純度な式(2)で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を新規な製造中間体として使用することで高純度なエピルビシンまたは塩を製造することが可能である。また、本発明の方法によれば、4’-エピダウノルビシン塩酸塩を使用する方法とは異なり、4’-エピダウノルビシンから4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を製造する過程において1回の沈殿化を行うことで4’-エピダウノルビシンに含まれうる代表的な不純物である13-ジヒドロエピダウノルビシンおよび4’-エピフュードマイシンを、効果的に除去することが可能である。加えて、得られた4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の沈殿物に対して、1回の結晶化を行うことで、更に、これら不純物の除去ができる。
 従って、従来の4’-エピダウノルビシン塩酸塩に比べて、少ない精製回数(短い製造工程)で効果的に高純度なエピルビシンまたはその塩の製造に供する、式(2)の化合物を得ることが可能であることから、エピルビシンの工業的な製造の分野において大変有用である。

Claims (13)

  1.  下記式(1)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    で示される4’-エピダウノルビシンと、有機酸とを溶媒中で混合し、下記式(2)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
    で示される4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を形成させる工程を含む、4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の製造方法。
  2.  4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を形成させる工程が、4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の沈殿物を形成させる工程を含む請求項1に記載の製造方法。
  3.  4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を形成させる工程が、4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物の結晶化工程を含む請求項1に記載の製造方法。
  4.  4’-エピダウノルビシンの有機酸塩がシュウ酸塩である請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5.  4’-エピダウノルビシンの有機酸塩がベンゼンスルホン酸塩である請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
  6.  4’-エピダウノルビシンの有機酸塩がp-トルエンスルホン酸塩である請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
  7.  請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法により製造された4’-エピダウノルビシンの有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を中間体として使用して、下記式(3)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
    で示されるエピルビシンまたはその塩を製造する工程を含む、エピルビシンまたはその塩の製造方法。
  8.  最終生成物がエピルビシン塩酸塩である請求項7に記載の製造方法。
  9.  下記式(4)で示される
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
    4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物。
  10.  HPLC純度が90%以上である4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物。
  11.  有機酸塩がシュウ酸塩である請求項10に記載の4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物。
  12.  有機酸塩がベンゼンスルホン酸塩である請求項10に記載の4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物。
  13.  有機酸塩がp-トルエンスルホン酸塩である請求項10に記載の4’-エピダウノルビシン有機酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物。
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