WO2016063969A1 - ヘマグルチニン結合ペプチド - Google Patents

ヘマグルチニン結合ペプチド Download PDF

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Abstract

 本発明は、既存のペプチドのよりも高い抗インフルエンザウイルス効果が得られるヘマグルチニン結合ペプチドを提供することを課題とする。本発明は、以下の(i)から(iv)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むヘマグルチニン結合ペプチド等を提供する: (i) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:1); (ii) Arg-Val-Ser-MePhe-Thr-Tyr-MePhe-MeSer-Tyr-Thr-Pro-Ser(配列番号:2); (iii) 配列番号:1又は2において、1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;及び (iv) 配列番号:1又は2と90%以上配列同一性を有するアミノ酸配列。

Description

ヘマグルチニン結合ペプチド
 本出願は、2014年10月24日に出願された日本国特許出願第2014-217582号に基づく優先権を主張するものであり、その内容はここに参照として組み込まれる。
 本発明は、抗インフルエンザウイルス活性を有するヘマグルチニン結合ペプチド等に関する。
 新型インフルエンザウイルスの発生と拡大は歴史的に人類に大きな被害をもたらしており、現在においても高病原性鳥インフルエンザなどはヒトからヒトに感染するウイルスに変異した場合に大きな脅威となることが予想されている。
 インフルエンザウイルスは、エンベロープをもつRNAウイルスであり、核タンパク質(NP)及びマトリックスタンパク質(M)の抗原性により、A、B、C型に分類される。ヒトでの流行は主にA型及びB型である。
 A、B、Cといった型が同じであっても、エンベロープ表面上の分子であるヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)の抗原性の違いから、さらに複数の亜型に分類され、H1N1、H5N1等と表される。
 既存の抗インフルエンザ薬として、ザナミビル(リレンザ(登録商標))(例えば特許文献1)やオセルタミビル(タミフル(登録商標))(例えば、特許文献2)が広く用いられている。
 ザナミビルやオセルタミビルは、インフルエンザウイルスが感染細胞から他の細胞に感染する際に必要となるノイラミニダーゼの活性を抑えることで作用する。さらに他の作用機序を持つ抗インフルエンザ薬としてマトリックスタンパク質2(M2タンパク質)を標的とするアマンタジン、リマンタジンがあり、細胞感染後のウイルスの脱殻を阻害する。
 ノイラミニダーゼあるいはM2タンパク質の機能を阻害するこれらの薬剤は、酵素やイオンチャネルを標的とする他の薬剤と同様に、基質からの誘導体化や立体構造に基づく分子設計、あるいは既存化合物からの機能の発見などの過程を経て開発されている。すなわち生体に存在する分子の類縁体あるいは化学的に調製された低分子に属する。
 しかしながら、M2タンパク質阻害薬は、A型インフルエンザにしか有効でなく、ノイラミニダーゼ阻害剤は、ノイラミニダーゼを有しないC型インフルエンザには奏功しない。
 また、抗ウイルス薬は変異によるウイルスの薬剤耐性の獲得により効力に限界が生じるのが一般的であり、ザナミビル、オセルタミビル、アマンタジンなど投与実績の多い抗インフルエンザウイルス薬においても耐性ウイルスの出現が認められている。ウイルスの薬剤耐性の獲得は標的分子の変異による薬剤の親和性の低下によるものの他に、異なる分子の変異による増殖力の回復という間接的な機構によるものもあり、長期にわたって耐性の獲得を完全に回避できる薬剤を創製することは困難である。
 本発明者らは、これまでに、ヘマグルチニンに結合することにより、インフルエンザウイルスに対する阻害活性を示すペプチドを見出した(特許文献3)。
米国特許第5360817号 米国特許第5763483号 特開2013-071904号公報
 これまで、ヘマグルチニンを標的とする抗インフルエンザウイルス薬は汎用されていないため、かかるペプチド薬は、ノイラミニダーゼ阻害剤やM2タンパク質阻害剤に耐性を有するインフルエンザウイルスにも抗ウイルス効果を示すと考えられる。しかしながら、さらに抗インフルエンザウイルス効果が高いヘマグルチニン結合ペプチドが求められている。
 また、これまでの抗インフルエンザウイルス薬は、感染初期に服用しなければ効果が得られないものが多く、感染から数日後に服用しても効果が得られる医薬が求められている。
 このような背景のもと、本発明は、高い抗インフルエンザウイルス効果が得られるヘマグルチニン結合ペプチドを提供することを課題とする。
 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、抗インフルエンザウイルス効果が著しく高いペプチドを見出した。そして、これらのペプチドの中に、感染から一定時間経過後に投与しても十分な抗インフルエンザウイルス効果が得られるものがあることを確認し、本発明を完成するに至った。
 即ち、本発明は、
〔1〕以下の(i)から(iv)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むヘマグルチニン結合ペプチド:
 (i) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:1);
 (ii) Arg-Val-Ser-MePhe-Thr-Tyr-MePhe-MeSer-Tyr-Thr-Pro-Ser(配列番号:2);
 (iii) 配列番号:1又は2において、1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;及び
 (iv) 配列番号:1又は2と90%以上配列同一性を有するアミノ酸配列;
〔2〕〔1〕に記載のヘマグルチニン結合ペプチドであって、以下の(v)から(vii)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むヘマグルチニン結合ペプチド:
 (v) 配列番号:1において、3位、6位、12位及び13位から選択されるアミノ酸のうち1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;
 (vi) 配列番号:1において、3位、6位、及び13位から選択されるアミノ酸のうち1又は数個のアミノ酸が置換されているアミノ酸配列;及び
 (vii) 配列番号:1において、13位のアミノ酸が置換されているアミノ酸配列;
〔3〕
 以下の(viii)から(xviii)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むヘマグルチニン結合ペプチド:
 (viii) Thr-MeGly-Lys-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:36);
 (ix) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ala-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:37);
 (x) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Lys-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:38);
 (xi) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Glu-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:39);
 (xii) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Hyp-Arg(配列番号:40);
 (xiii) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Ala(配列番号:41);
 (xiv) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Glu(配列番号:42);
 (xv) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Lys(配列番号:43);
 (xvi) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Dap(配列番号:44);
 (xvii) 配列番号:36~44のいずれかにおいて、1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;及び
 (xviii) 配列番号:36~44のいずれかと90%以上配列同一性を有するアミノ酸配列;
〔4〕下記式(I)のアミノ酸配列を含むヘマグルチニン結合ペプチド:
 (i) Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13(配列番号:3)(I)
 (式中、
 Xaa1は、Ser又はThrであり、
 Xaa2は、N-メチルアミノ酸であり、
 Xaa3は、任意のアミノ酸であり、
 Xaa4は、塩基性アミノ酸であり、
 Xaa5は、Valであり、
 Xaa6は、塩基性アミノ酸であり、
 Xaa7は、Tyrであり
 Xaa8は、Ser又はThrであり、
 Xaa9は、Valであり、
 Xaa10は、MePheであり、
 Xaa11は、Asnであり、
 Xaa12は、MeAlaであり、
 Xaa13は、Val又はSerである。);
〔5〕Xaa2は、MePhe又はMeGlyであり、
 Xaa3は、MeGly又はThrであり、
 Xaa4は、Hisであり、
 Xaa6は、His又はArgである、上記〔4〕に記載のヘマグルチニン結合ペプチド;
〔6〕Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13が、
 Ser-MePhe-MeGly-His-Val-His-Tyr-Ser-Val-MePhe-Asn-MeAla-Val、又は、
 Thr-MeGly-Thr-His-Val-Arg-Tyr-Thr-Val-MePhe-Asn-MeAla-Ser
である、上記〔4〕又は〔5〕に記載のヘマグルチニン結合ペプチド;
〔7〕環状化している、上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載のヘマグルチニン結合ペプチド;
〔8〕N末端から3アミノ酸以内にクロロアセチル化アミノ酸を有し、C末端から3アミノ酸以内にシステインを有する、上記〔7〕に記載のヘマグルチニン結合ペプチド;
〔9〕N末端にクロロアセチル-Trpを含み、C末端にCysを含み、これらのチオエーテル結合により環状化している、上記〔7〕に記載のヘマグルチニン結合ペプチド;
〔10-1〕上記〔1〕から〔9〕のいずれか1項に記載のヘマグルチニン結合ペプチドを含む、インフルエンザの予防又は治療のための医薬組成物;
〔10-2〕有効量の上記〔1〕から〔9〕のいずれか1項に記載のヘマグルチニン結合ペプチドを投与することを含む、インフルエンザの予防又は治療方法;
〔11〕上記〔1〕から〔9〕のいずれか1項に記載のヘマグルチニン結合ペプチドを含む、インフルエンザウイルス検出薬;
〔12〕上記〔11〕に記載のインフルエンザ検出薬を含む、インフルエンザウイルス検出用キット、
に関する。
 本発明のペプチドは、ヘマグルチニンに結合することによりインフルエンザウイルスに対する高い阻害活性を示すので、ノイラミニダーゼ阻害剤やM2タンパク質阻害剤に耐性を有するインフルエンザウイルスに対しても抗ウイルス効果を有する。
 また、本発明のペプチドを、ノイラミニダーゼやM2タンパク質等を標的とする薬剤と組み合わせることにより、薬剤耐性変異体が出現する確率をより低くすることができるものと考えられる。
 さらに、本発明に係るペプチドは、感染から一定時間経過後に投与しても十分な抗インフルエンザウイルス効果が得られるので、インフルエンザの治療薬として有用性が高い。
図1は、インフルエンザウイルスH5N1-Vac3に対する、本発明のペプチドによる増殖阻害試験の結果を示すプレートの写真である(実施例2)。 図2は、高病原性トリインフルエンザウイルスA/ws/Hokkaido/1/08 (clade 2.3)、A/ws/Mongolia/3/05(clade 2.2)、A/Vietnam/UT3040/04(clade 1)に対する、本発明のペプチドによる増殖阻害試験の結果を示すプレートの写真である(実施例2)。 図3は、インフルエンザウイルスH1N1-pdm2619に対する、本発明のペプチドによる増殖阻害試験の結果を示すプレートの写真である(実施例2)。 図4は、インフルエンザウイルスH2N2-Adachiに対する、本発明のペプチドによる増殖阻害試験の結果を示すプレートの写真である(実施例2)。 図5は、特殊環状ペプチドiHA-100とZanamivirの治療効果を判定するための実験概要である(実施例3)。 図6は、本発明のペプチドによる高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1 A/whooper swan/Hokkaido/1/08 (5x MLD50)に対する治療効果である(実施例3)。 図7は、Zanamivirによる高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1 A/whooper swan/Hokkaido/1/08 (5x MLD50)に対する治療効果を示す(実施例3)。 インフルエンザウイルスH5N1-Vac3に対する、本発明のペプチドによる増殖阻害試験の結果を示すプレートの写真である(実施例5)。
(ペプチド)
 本発明に係るヘマグルチニン結合ペプチドの一態様は、以下の(i)~(iv)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。
 (i) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:1);
 (ii) Arg-Val-Ser-MePhe-Thr-Tyr-MePhe-MeSer-Tyr-Thr-Pro-Ser(配列番号:2);
 (iii) 配列番号:1又は2において、1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;及び
 (iv) 配列番号:1又は2と90%以上配列同一性を有するアミノ酸配列。
 本発明に係るヘマグルチニン結合ペプチドの一態様は、以下の(v)から(xviii)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドも含む。
 (v) 配列番号:1において、3位、6位、12位及び13位から選択されるアミノ酸のうち1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;
 (vi) 配列番号:1において、3位、6位、及び13位から選択されるアミノ酸のうち1又は数個のアミノ酸が置換されているアミノ酸配列;
 (vii) 配列番号:1において、13位のアミノ酸が置換されているアミノ酸配列;
 (viii) Thr-MeGly-Lys-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:36);
 (ix) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ala-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:37);
 (x) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Lys-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:38);
 (xi) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Glu-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:39);
 (xii) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Hyp-Arg(配列番号:40);
 (xiii) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Ala(配列番号:41);
 (xiv) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Glu(配列番号:42);
 (xv) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Lys(配列番号:43);
 (xvi) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Dap(配列番号:44);
 (xvii) 配列番号:36~44のいずれかにおいて、1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;及び
 (xviii) 配列番号:36~44のいずれかと90%以上配列同一性を有するアミノ酸配列。
 式中、MeGlyはN-メチルグリシン、MePheはN-メチルフェニルアラニン、MeSerはN-メチルセリン、Dapは、2,3-ジアミノプロピオン酸を表す。
 一態様において、本発明に係るヘマグルチニン結合ペプチドは、インフルエンザウイルスの増殖に対する中和活性及び阻害活性が高いという観点から、配列番号41、42又は44において1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;或いは配列番号41、42又は44のいずれかと90%以上配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むことが好ましく、配列番号41、42又は44を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むことがより好ましい。
 本明細書においてポリペプチドは、2以上のアミノ酸がペプチド結合で結合しているものをいい、例えば、8-30アミノ酸がペプチド結合したものとすることができ、直鎖状であっても環状であってもよい。
 本明細書において「アミノ酸」は、その最も広い意味で用いられ、天然アミノ酸に加え、その誘導体や人工のアミノ酸を含む。誘導体としては、例えば、タンパク質を構成する天然アミノ酸が修飾されたアミノ酸も含む。そのようなアミノ酸の例としては、ヒドロキシル基が導入されたアミノ酸であるヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン等、アミノ基が導入されたアミノ酸であるジアミノプロピオン酸等が挙げられる。
 本明細書においてアミノ酸としては、天然タンパク性L-アミノ酸;非天然アミノ酸;アミノ酸の特徴である当業界で公知の特性を有する化学的に合成された化合物などが挙げられる。非天然アミノ酸の例として、主鎖の構造が天然型と異なる、α,α-二置換アミノ酸(α-メチルアラニンなど)、N-アルキル-α-アミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸、α-ヒドロキシ酸や、側鎖の構造が天然型と異なるアミノ酸(ノルロイシン、ホモヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸、ホモフェニルアラニン、ホモヒスチジンなど)及び側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸など)が挙げられるがこれに限定されない。
 本明細書においては、生細胞におけるリボソーム上で翻訳合成に用いられる20種類の天然型アミノ酸以外のアミノ酸、即ち、以下の(1)~(3)に該当するアミノ酸を「特殊アミノ酸」と呼ぶ場合がある。
 (1)翻訳合成された後に修飾を受けたポリペプチド上のアミノ酸残基に相当するアミノ酸(例えば、リン酸化チロシン、アセチル化リジン、ファルネシル化システイン)
 (2)リボソーム上での翻訳合成には用いられないが天然に存在するアミノ酸
 (3)天然に存在しない人工アミノ酸(非天然型アミノ酸)
 特殊アミノ酸の例を下表に示すが、これらに限定されない。なお、表中DBEとCMEは、特殊アミノ酸をフレキシザイムでtRNAに結合させるときのエステルの種類であり、DBEは、3,5-dinitrobenzyl esterを意味し、CMEは、cyanomethyl esterを意味する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 上記(iii)及び(xvii)のペプチドは、配列番号1、2及び36~44のいずれかに記載のペプチドのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているペプチドであって、ヘマグルチニンと結合可能である限り、どのようなペプチドであってもよい。ヘマグルチニンと結合可能であるか否かは、当業者が公知の方法に従って確認することができる。
 本明細書において、「1又は数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換されているペプチド」という場合、欠失、付加、又は置換されるアミノ酸の個数は、そのペプチドが、ヘマグルチニンに対する結合能を維持する限り特に限定されないが、例えば、1~5個、1~3個、又は1~2個とすることができる。欠失、付加、置換される場所は、ペプチドの末端であっても、中間であってもよく、1ヶ所であっても2ヶ所以上であってもよい。
 上記(iv)及び(xviii)のペプチドは、配列番号:1、2及び36~44のいずれかと90%以上配列同一性を有し、ヘマグルチニンと結合可能である限りどのようなペプチドであってもよい。配列同一性は、95%以上又は98%以上であってもよい。
 本発明に係るヘマグルチニン結合ペプチドの一態様は、上記(v)から(vii)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。そのようなポリペプチドの具体例としては、例えば:
 配列番号:1において、12位のアミノ酸がヒドロキシアミノ酸で置換されているアミノ酸配列からなるポリペプチド;
 配列番号:1において、13位のアミノ酸が、塩基性アミノ酸で置換されているアミノ酸配列からなるポリペプチド;
 配列番号:1において、13位のアミノ酸が、アルギニンより小さいアミノ酸で置換されているアミノ酸配列からなるポリペプチド;
等が挙げられる。
 ヒドロキシアミノ酸としては、例えば、セリン、トレオニン、チロシン、ヒドロキリプロリン、ヒドロキシリジン等が挙げられ、一態様において、例えばヒドロキシプロリンを置換に用いることができる。
 塩基性アミノ酸としては、例えば、アルギニン、リジン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ヒスチジン、ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸等が挙げられ、一態様において、例えば、リジン又はジアミノプロピオンを置換に用いることができる。
 アルギニンより小さいアミノ酸は、置換後の側鎖がアルギニンより短いアミノ酸であれば特に限定されず、例えば、アラニン、グルタミン酸及び2,3-ジアミノプロピオン酸から選択されるアミノ酸を置換に用いることができる。
 本発明に係るヘマグルチニン結合ペプチドの別の一態様は、下記式(I)アミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。
 Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13(配列番号:3)(I)
 式中、
 Xaa1は、Ser又はThrであり、
 Xaa2は、N-メチルアミノ酸であり、
 Xaa3は、任意のアミノ酸であり、
 Xaa4は、塩基性アミノ酸であり、
 Xaa5は、Valであり、
 Xaa6は、塩基性アミノ酸であり、
 Xaa7は、Tyrであり
 Xaa8は、Ser又はThrであり、
 Xaa9は、Valであり、
 Xaa10は、MePheであり、
 Xaa11は、Asnであり、
 Xaa12は、MeAlaであり、
 Xaa13は、Val又はSerを表す。
 Xaa2は、MePhe又はMeGlyであってもよく、
 Xaa3は、MeGly又はThrであってもよく、
 Xaa4は、Hisであってもよく、
 Xaa6は、His又はArgであってもよい。
 さらに、式(I)で表されるポリペプチドは、
 Ser-MePhe-MeGly-His-Val-His-Tyr-Ser-Val-MePhe-Asn-MeAla-Val(配列番号:4)、又は、
 Thr-MeGly-Thr-His-Val-Arg-Tyr-Thr-Val-MePhe-Asn-MeAla-Ser(配列番号:5)
であってもよい。
 式中、MeAlaは、N-メチルアラニンを示す。
 本発明に係るヘマグルチニン結合ペプチドは、(i)から(xviii)のいずれかのアミノ酸配列のみ、又は式(I)のアミノ酸配列のみからなるぺプチドであってもよく、その少なくとも一端に1以上のアミノ酸が結合しているポリペプチドであってもよい。本発明に係るヘマグルチニン結合ペプチドの全長は、例えば30アミノ酸以下、20アミノ酸以下、又は15アミノ酸以下とすることができる。
 本発明のペプチドは、本発明の課題を解決するものである限り、その種々の誘導体も包含する。かかる誘導体としては、例えば、そのC末端がアミド、エステル、カルボキシル基になっているもの、投与したときに細胞内に導入されるよう、膜透過性ペプチド(cell-penetrating peptide, CPP)と融合させたものが挙げられる。CPPは、細胞膜への親和性、細胞内への移行性を有するペプチドの総称であり、HIV-1ウイルスが発現するTrans-activator of transcription protein(TATタンパク質)の11個のアミノ酸からなるドメインであるprotein-transduction domain(PTD)や、ショウジョウバエのAntennapedia、ヘルペスウイルス由来のVP22、オリゴアルギニン、ペネトラチンなどが知られている。一般に、CPPはアルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸の含有率が高いものが多い。
 また、本発明のペプチドの誘導体としては、リン酸化、メチル化、アセチル化、アデニリル化、ADPリボシル化、糖鎖付加などの修飾が加えられたもの、他のペプチドやタンパク質との融合ペプチドも挙げられる。これらの誘導体は、公知の方法又はそれに準ずる方法で当業者が調製することができる。
 また、本発明に係るヘマグルチニン結合ペプチドは、本発明の課題を解決するものである限り、その塩も包含する。ペプチドの塩としては、生理学的に許容される塩基や酸との塩が用いられ、例えば、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等)の付加塩、有機酸(p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、カルボン酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸等)の付加塩、無機塩基(水酸化アンモニウム又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等)、アミノ酸の付加塩等が挙げられる。
 また、本発明に係るヘマグルチニン結合ペプチドは、環状化(大環状化)されていてもよい。本明細書において環状化とは、1つのペプチド内において、1アミノ酸以上離れた2つのアミノ酸が直接に、又はリンカー等を介して間接的に結合し、分子内に環状の構造を作ることを意味する。
 環状化は、ジスルフィド結合、ペプチド結合、アルキル結合、アルケニル結合、エステル結合、チオエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ホスホネートエーテル結合、アゾ結合、C-S-C結合、C-N-C結合、C=N-C結合、アミド結合、ラクタム架橋、カルバモイル結合、尿素結合、チオ尿素結合、アミン結合、チオアミド結合などによることができるが、これらに限定されない。
 ペプチドを環状化することにより、ペプチドの構造を安定化させ、標的への親和性を高めることができる場合がある。
 大環状化のためのアミノ酸は、例えば、以下の官能基1を有するアミノ酸と、対応する官能基2を有するアミノ酸とすることができる。官能基1と官能基2は、どちらがN末端側にきてもよい。官能基1を有するアミノ酸と官能基2を有するアミノ酸は、それぞれN末端又はC末端アミノ酸であってもよいし、非末端アミノ酸であってもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 式中、X1はCl、Br又はIであり、Arは置換基を有していてもよい芳香環である。
 (A-1)のアミノ酸としては、例えば、クロロアセチル化したアミノ酸を用いることができる。クロロアセチル化アミノ酸としては、N-chloroacetyl-L-alanine、N-chloroacetyl-L-phenylalanine、N-chloroacetyl-L-tyrosine、N-chloroacetyl-L-tryptophan、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-phenylalanine、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-tyrosine、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-tryptophane、β-N-chloroacetyl-L-diaminopropanoic acid、γ-N-chloroacetyl-L-diaminobutyric acid、σ-N-chloroacetyl-L-ornithine、ε-N-chloroacetyl-L-lysine、N-3-chloromethylbenzoyl-L-tyrosine、N-3-chloromethylbenzoyl-L-tryptophane、及びこれらに対応するD-アミノ酸誘導体(例えば、N-Chloroacetyl-D-alanine、N-Chloroacetyl-D-phenylalanine、N-Chloroacetyl-D-tyrosine、N-Chloroacetyl-D-tryptophan)などが挙げられる。
 (A-2)のアミノ酸としては、例えばcysteine、homocysteine、mercaptonorvaline、mercaptonorleucine、2-amino-7-mercaptoheptanoic acid、2-amino-8- mercaptooctanoic acid、及びこれらのアミノ酸のSH基をいったん保護しておいた後に保護基を脱保護したアミノ酸、及びこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。
 環状化方法は、例えば、Kawakami, T. et al., Nature Chemical Biology 5, 888-890 (2009);Yamagishi, Y. et al., ChemBioChem 10, 1469-1472 (2009);Sako, Y. et al., Journal of American Chemical Society 130, 7932-7934 (2008);Goto, Y. et al., ACS Chemical Biology 3, 120-129 (2008);Kawakami T. et al, Chemistry & Biology 15, 32-42 (2008)、WO2008/117833に記載された方法に従って行うことができる。
 (B-1)のアミノ酸としては、例えば、propargylglycine、homopropargylglycine、2-amino-6-heptynoic acid、2-amino-7-octynoic acid、2-amino-8-nonynoic acidを用いることができる。また、4-pentynoyl化や5-hexynoyl化したアミノ酸を用いることもできる。4-pentynoyl化アミノ酸としては、N-(4-pentenoyl)-L-alanine、N-(4-pentenoyl)-L-phenylalanine、N-(4-pentenoyl)-L-tyrosine、N-(4-pentenoyl)-L-tryptophan、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-phenylalanine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tyrosine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tryptophane、β-N-(4-pentenoyl)-L-diaminopropanoic acid、γ-N-(4-pentenoyl)-L-diaminobutyric acid、σ-N-(4-pentenoyl)-L-ornithine、ε-N-(4-pentenoyl)-L-lysine、及びこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。
 (B-2)のアミノ酸としては、例えば、azidoalanine、2-amino-4-azidobutanoic acid、azidoptonorvaline、 azidonorleucine、2-amino-7-azidoheptanoic acid、2-amino-8-azidooctanoic acidを用いることができる。また、azidoacetyl化や3-azidopentanoyl化したアミノ酸を用いることもできる。azidoacetyl化アミノ酸としては、N-azidoacetyl-L-alanine、N-azidoacetyl-L-phenylalanine、N-azidoacetyl-L-tyrosine、N-azidoacetyl-L-tryptophan、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-phenylalanine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tyrosine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tryptophane、β-N-azidoacetyl-L-diaminopropanoic acid、γ-N-azidoacetyl-L-diaminobutyric acid、σ-N-azidoacetyl-L-ornithine、ε-N-azidoacetyl-L-lysine、及びこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。
 環状化方法は、例えば、Sako, Y. et al., Journal of American Chemical Society 130, 7932-7934 (2008)、WO2008/117833に記載された方法に従って行うことができる。
 (C-1)のアミノ酸としては、N-(4-aminomethyl-benzoyl)-phenylalanine (AMBF)、4-3-aminomethyltyrosineが挙げられる。
 (C-2)のアミノ酸としては、5-hydroxytryptophan (WOH)が挙げられる。
 環状化方法は、例えば、Yamagishi, Y. et al., ChemBioChem 10, 1469-1472 (2009)、WO2008/117833に記載された方法に従って行うことができる。
 (D-1)のアミノ酸としては、例えば、2-amino-6-chloro-hexynoic acid、2-amino-7-chloro-heptynoic acid、2-amino-8-chloro-octynoic acid、などが挙げられる。
 (D-2)のアミノ酸としては、例えばcysteine、homocysteine、mercaptonorvaline、mercaptonorleucine、2-amino-7-mercaptoheptanoic acid、2-amino-8- mercaptooctanoic acid、及びこれらのアミノ酸のSH基をいったん保護しておいた後に保護基を脱保護したアミノ酸、及びこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。
 環状化方法は、例えば、WO2012/074129に記載された方法に従って行うことができる。
 (E-1)のアミノ酸としては、例えば、N-3-chloromethylbenzoyl-L-phenylalanine、N-3-chloromethylbenzoyl-L-tyrosine、N-3-chloromethylbenzoyl-L-tryptophane、が挙げられる。
 (E-2)のアミノ酸としては、例えばcysteine、homocysteine、mercaptonorvaline、mercaptonorleucine、2-amino-7-mercaptoheptanoic acid、2-amino-8- mercaptooctanoic acid、及びこれらのアミノ酸のSH基をいったん保護しておいた後に保護基を脱保護したアミノ酸、及びこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。
 (A-1)から(E-2)のアミノ酸は、後述する化学合成によっても、翻訳合成によっても、公知の方法にしたがって、ヘマグルチニン結合ペプチドに導入することができる。
 本発明の一態様において、上記(A-1)から(E-2)のアミノ酸のうち、(A-1)と(A-2)のアミノ酸を用いて官能化を行うことが好ましい。
 例えば、本発明のヘマグルチニン結合ペプチドは、以下のアミノ酸配列からなる環状ペプチドを含むことができる。
 (I) Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys)-amide(配列番号:10);
 (II) 配列番号:10において、4位及び7位、13位及び14位から選択されるアミノ酸のうち1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;
 (III) 配列番号:10において、4位、7位及び14位から選択されるアミノ酸のうち1又は数個のアミノ酸が置換されているアミノ酸配列;
 (IV) 配列番号:10において、14位のアミノ酸が置換されているアミノ酸配列;及び
 (V)配列番号26から35のいずれかのアミノ酸配列。
 本明細書において、ヘマグルチニンとは、インフルエンザウイルスをはじめとする多くの細菌やウイルスの表面に存在する抗原性糖タンパク質をいい、「HA」と表される。ヘマグルチニンは、ウイルスによる宿主細胞への接着過程に関与する。具体的には、ウイルス表面のヘマグルチニンが標的とする宿主細胞表面にあるシアル酸と結合すると、ウイルスは細胞膜に包みこまれ、ウイルスを含むエンドソームの形で細胞内に取り込まれる。続いて、エンドソーム膜とウイルス膜が融合し、ウイルスゲノムが細胞内に挿入され、増殖が開始される。
 ヘマグルチニンには、サブタイプが少なくとも16種類存在し、H1~H16と呼ばれる。インフルエンザの亜型名のHはヘマグルチニンを示す。
 本発明のペプチドは、液相法、固相法、液相法と固相法を組み合わせたハイブリッド法等の化学合成法;遺伝子組み換え法等、公知のペプチドの製造方法によって製造することができる。
 固相法は、例えば、水酸基を有するレジンの水酸基と、α-アミノ基が保護基で保護された第一のアミノ酸(通常、目的とするペプチドのC末端アミノ酸)のカルボキシ基をエステル化反応させる。エステル化触媒としては、1-メシチレンスルホニル-3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール(MSNT)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)等の公知の脱水縮合剤を用いることができる。
 次に、第一アミノ酸のα-アミノ基の保護基を脱離させるとともに、主鎖のカルボキシ基以外のすべての官能基が保護された第二のアミノ酸を加え、当該カルボキシ基を活性化させて、第一及び第二のアミノ酸を結合させる。さらに、第二のアミノ酸のα-アミノ基を脱保護し、主鎖のカルボキシ基以外のすべての官能基が保護された第三のアミノ酸を加え、当該カルボキシ基を活性化させて、第二及び第三のアミノ酸を結合させる。これを繰り返して、目的とする長さのペプチドが合成されたら、すべての官能基を脱保護する。
 固相合成のレジンとしては、Merrifield resin、MBHA resin、Cl-Trt resin、SASRIN resin、Wang resin、Rink amide resin、HMFS resin、Amino-PEGA resin(メルク社)、HMPA-PEGA resin(メルク社)等が挙げられる。これらのレジンは、溶剤(ジメチルホルムアミド(DMF)、2-プロパノール、塩化メチレン等)で洗浄してから用いることができる。
 α-アミノ基の保護基としては、ベンジルオキシカルボニル(Cbz又はZ)基、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジル基、アリル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基等が挙げられる。
Cbz基はフッ化水素酸、水素化等によって脱保護でき、Boc基はトリフルオロ酢酸(TFA)により脱保護でき、Fmoc基はピペリジンによる処理で脱保護できる。
 α-カルボキシ基の保護は、メチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル、tert-ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等を用いることができる。
 アミノ酸のその他の官能基として、セリンやトレオニンのヒドロキシ基はベンジル基やtert-ブチル基で保護することができ、チロシンのヒドロキシ基は2-ブロモベンジルオキシカルボニル希やtert-ブチル基で保護する。リジン側鎖のアミノ基、グルタミン酸やアスパラギン酸のカルボキシ基は、α-アミノ基、α-カルボキシ基と同様に保護することができる。
 カルボキシ基の活性化は、縮合剤を用いて行うことができる。縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCあるいはWSC)、(1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチル]-1H-ベンゾトリアゾリウム-3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)等が挙げられる。
 レジンからのペプチド鎖の切断は、TFA、フッ化水素(HF)等の酸で処理することによって行うことができる。
 遺伝子組み換え法(翻訳合成系)によるペプチドの製造は、本発明のペプチドをコードする核酸を用いて行うことができる。本発明のペプチドをコードする核酸は、DNAであってもRNAであってもよい。
 本発明のペプチドをコードする核酸は、公知の方法又はそれに準ずる方法で調製することができる。例えば、自動合成装置によって合成することができる。得られたDNAをベクターに挿入するために制限酵素認識部位を加えたり、できたペプチド鎖を酵素などで切り出すためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を組み込んでもよい。
 上述のとおり、本発明のペプチドを膜透過性ペプチド等と融合させる場合、上記核酸は、膜透過性ペプチドをコードする核酸も含む。
 宿主由来のプロテアーゼによる分解を抑制するため、目的のペプチドを他のペプチドとのキメラペプチドとして発現させるキメラタンパク質発現法を用いることもできる。この場合、上記核酸としては、目的とするペプチドと、これに結合するペプチドとをコードする核酸が用いられる。
 続いて、本発明のペプチドをコードする核酸を用いて発現ベクターを調製する。核酸はそのまま、又は制限酵素で消化し、又はリンカーを付加する等して、発現ベクターのプロモータの下流に挿入することができる。ベクターとしては、大腸菌由来プラスミド(pBR322、pBR325、pUC12、pUC13、pUC18、pUC19、pUC118、pBluescript II等)、枯草菌由来プラスミド(pUB110、pTP5、pC1912、pTP4、pE194、pC194等)、酵母由来プラスミド(pSH19、pSH15、YEp、YRp、YIp、YAC等)、バクテリオファージ(eファージ、M13ファージ等)、ウイルス(レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、カリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、バキュロウイルス等)、コスミド等が挙げられる。
 プロモータは、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。宿主が動物細胞である場合は、例えば、SV40(simian virus 40)由来プロモータ、CMV(cytomegalovirus)由来プロモータを用いることができる。宿主が大腸菌である場合は、trpプロモータ、T7プロモータ、lacプロモータ等を用いることができる。
 発現ベクターには、DNA複製開始点(ori)、選択マーカー(抗生物質抵抗性、栄養要求性等)、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、タグ(FLAG、HA、GST、GFPなど)をコードする核酸等を組み込むこともできる。
 次に、上記発現ベクターで適当な宿主細胞を形質転換する。宿主は、ベクターとの関係で適宜選択することができ、例えば、大腸菌、枯草菌、バチルス属菌)、酵母、昆虫又は昆虫細胞、動物細胞等が用いられる。動物細胞として、例えば、HEK293T細胞、CHO細胞、COS細胞、ミエローマ細胞、HeLa細胞、Vero細胞を用いることができる。形質転換は、宿主の種類に応じ、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法等、公知の方法に従って行うことができる。形質転換体を常法に従って培養することにより、目的とするペプチドが発現する。
 形質転換体の培養物からのペプチドの精製は、培養細胞を回収し、適当な緩衝液に懸濁してから超音波処理、凍結融解などの方法により細胞を破壊し、遠心分離やろ過によって粗抽出液を得る。培養液中にペプチドが分泌される場合には、上清を回収する。
 粗抽出液又は培養上清からの精製も公知の方法又はそれに準ずる方法(例えば、塩析、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、SDS-PAGE法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー等)で行うことができる。
 得られたペプチドは、公知の方法又はそれに準ずる方法で遊離体から塩に、又は塩から遊離体に変換してもよい。
 翻訳合成系は、無細胞翻訳系としてもよい。無細胞翻訳系は、例えば、リボソームタンパク質、アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)、リボソームRNA、アミノ酸、rRNA、GTP、ATP、翻訳開始因子(IF)伸長因子(EF)、終結因子(RF)、及びリボソーム再生因子(RRF)、並びに翻訳に必要なその他の因子を含む。発現効率を高くするために大腸菌抽出液や小麦胚芽抽出液加えてもよい。他に、ウサギ赤血球抽出液や昆虫細胞抽出液を加えてもよい。
 これらを含む系に、透析を用いて連続的にエネルギーを供給することで、数100μgから数mg/mLのタンパク質を生産することができる。遺伝子DNAからの転写を併せて行うためにRNAポリメラーゼを含む系としてもよい。市販されている無細胞翻訳系として、大腸菌由来の系としてはロシュ・ダイアグノスティックス社のRTS-100(登録商標)、PGI社のPURESYSTEM(登録商標)等、小麦胚芽抽出液を用いた系としてはゾイジーン社やセルフリーサイエンス社のもの等を使用できる。
 無細胞翻訳系によれば、発現産物を精製することなく純度の高い形で得ることができる。
 無細胞翻訳系においては、天然のアミノアシルtRNA合成酵素に合成されるアミノアシルtRNAに代えて、所望のアミノ酸又はヒドロキシ酸をtRNAに連結(アシル化)した人工のアミノアシルtRNAを用いてもよい。かかるアミノアシルtRNAは、人工のリボザイムを用いて合成することができる。
 かかるリボザイムとしては、フレキシザイム(flexizyme)(H. Murakami, H. Saito, and H. Suga, (2003), Chemistry & Biology, Vol. 10, 655-662; H. Murakami, D. Kourouklis, and H. Suga, (2003), Chemistry & Biology, Vol. 10, 1077-1084; H. Murakami, A. Ohta, H. Ashigai, H. Suga (2006) Nature Methods 3, 357-359 "The flexizyme system: a highly flexible tRNA aminoacylation tool for the synthesis of nonnatural peptides";N. Niwa, Y. Yamagishi, H. Murakami, H. Suga (2009) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 19, 3892-3894 "A flexizyme that selectively charges amino acids activated by a water-friendly leaving group";及びWO2007/066627等)が挙げられる。フレキシザイムは、原型のフレキシザイム(Fx)、及び、これから改変されたジニトロベンジルフレキシザイム(dFx)、エンハンスドフレキシザイム(eFx)、アミノフレキシザイム(aFx)等の呼称でも知られる。
 フレキシザイムによって生成された、所望のアミノ酸又はヒドロキシ酸が連結されたtRNAを用いることにより、所望のコドンを、所望のアミノ酸又はヒドロキシ酸と関連付けて翻訳することができる。所望のアミノ酸としては、特殊アミノ酸を用いてもよい。例えば、上述した環状化に必要な非天然アミノ酸もこの方法により、ヘマグルチニン結合ペプチドに導入することができる。
(医薬組成物及び治療方法)
 後述する実施例に示されるとおり、本発明のペプチドは、インフルエンザウイルス表面のヘマグルチニンに結合することにより、抗インフルエンザウイルス効果を示す。従って、本発明のペプチドを含む組成物は、インフルエンザの予防又は治療剤として有用であり、同様に、本発明のペプチドは、インフルエンザの予防又は治療方法において有用である。
 本明細書において、インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによる急性感染症をいう。感染すると、ヒトにおいては高熱、筋肉痛などを伴う風邪様の症状があらわれる。腹痛、嘔吐、下痢などの胃腸症状を伴う場合もあり、合併症として肺炎とインフルエンザ脳症がある。
 本明細書において感染とは、ウイルスが皮膚や粘膜を介して生体に侵入する過程、又は、ウイルスが膜融合により細胞内に侵入する過程のいずれかを指す用語として用いられる。また、本明細書においてウイルス感染とは、症状の有無にかかわらずウイルスが生体内に侵入している状態をいう。
 本明細書においてインフルエンザの治療又は予防とは、その最も広い意味で用いられ、例えば、インフルエンザウイルスの感染と関連する一つ又は複数の症状の緩和若しくは悪化の阻止、感染後の症状の発生の抑制、生体内におけるウイルスの細胞への感染の阻止(遅延又は停止)、生体内におけるウイルスの増殖の阻止(遅延又は停止)、生体内におけるウイルス数の減少等を生じさせることをいう。これらのうち少なくとも一つの効果を示すとき、インフルエンザの治療又は予防に有用であると判断される。
 また、後述する実施例に示されるとおり、本発明のペプチドは、ヘマグルチニンに対する中和活性を有するので、インフルエンザワクチンと同様の効果を得られうるものと理解される。
 本明細書において、医薬組成物の投与形態は特に限定されず、経口的投与でも非経口的投与でもよい。非経口投与としては、例えば、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射等の注射投与、経皮投与、経粘膜投与(経鼻、経口腔、経眼、経肺、経膣、経直腸)投与等が上げられる。
 上記医薬組成物は、ポリペプチドが代謝及び排泄されやすい性質に鑑みて、各種の修飾を行うことができる。例えば、ポリペプチドにポリエチレングリコール(PEG)や糖鎖を付加して血中滞留時間を長くし、抗原性を低下させることができる。また、ポリ乳酸・グリコール(PLGA)などの生体内分解性の高分子化合、多孔性ヒドロキシアパタイト、リポソーム、表面修飾リポソーム、不飽和脂肪酸で調製したエマルジョン、ナノパーティクル、ナノスフェア等を徐放化基剤として用い、これにポリペプチドを内包させてもよい。経皮投与する場合、弱い電流を皮膚表面に流して角質層を透過させることもできる(イオントフォレシス法)。
 上記医薬組成物は、有効成分をそのまま用いてもよいし、薬学的に許容できる担体、賦形剤、添加剤等を加えて製剤化してもよい。剤形としては、例えば、液剤(例えば注射剤)、分散剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、坐剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤等が挙げられる。
 製剤化は、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解剤、溶解補助剤、着色剤、矯味矯臭剤、安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤などを適宜使用し、常法により行うことができる。
 製剤化に用いられる成分の例としては、精製水、食塩水、リン酸緩衝液、デキストロース、グリセロール、エタノール等薬学的に許容される有機溶剤、動植物油、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ソルビトール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、コーンスターチ、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ぺクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガント、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、高級アルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、等が挙げられるがこれらに限定されない。
 上記医薬組成物は、ペプチドが経粘膜吸収されにくいことに鑑みて、難吸収性薬物の吸収を改善する吸収促進剤を含むことができる。かかる吸収促進剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル類、ラウリル硫酸ナトリウム、サポニン等の界面活性剤;グリココール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸等の胆汁酸塩;EDTA、サリチル酸類等のキレート剤;カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、混合ミセル等の脂肪酸類;エナミン誘導体、N-アシルコラーゲンペプチド、N-アシルアミノ酸、シクロデキストリン類、キトサン類、一酸化窒素供与体等を用いることができる。
 丸剤又は錠剤は、糖衣、胃溶性、腸溶性物質で被覆することもできる。
 注射剤は、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、アルコール類等を含むことができる。さらに、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解剤、溶解補助剤、防腐剤等を加えることができる。
 本発明の医薬組成物を哺乳類(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ウマ、サル、ブタ等)、特にヒトに投与する場合の投与量は、症状、患者の年齢、性別、体重、感受性差、投与方法、投与間隔、有効成分の種類、製剤の種類によって異なり、特に限定されないが、例えば、30μg~100g、100μg~500mg、100μg~100mgを1回又は数回に分けて投与することができる。注射投与の場合、患者の体重により、1μg/kg~3000μg/kg、3μg/kg~1000μg/kgを1回又は数回に分けて投与してもよい。
 本発明のペプチドを用いたインフルエンザの予防又は治療方法は、上記医薬組成物にかかる記載を参照して実施することができる。
(インフルエンザウイルス検出薬及び検出用キット)
 本発明は、本発明のペプチドを含むインフルエンザウイルス検出薬も包含する。本発明のペプチドは、インフルエンザウイルス表面のヘマグルチニンに特異的に結合する。従って、例えば、ELISA法等のイムノアッセイにおける抗インフルエンザ抗体に代えて、本発明のペプチドを用いて試料中のインフルエンザウイルスを検出することができる。
 検出薬として用いる場合、本発明のペプチドは、検出可能に標識してもよい。ペプチドの標識は、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素、125I、131I、35S、3H等の放射性物質、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、近赤外蛍光材料等の蛍光物質、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクオリン等の発光物質で標識した抗体が用いられる。その他、金コロイド、量子ドットなどのナノ粒子で標識した抗体を検出することもできる。
 また、イムノアッセイでは、本発明のペプチドをビオチンで標識し、酵素等で標識したアビジン又はストレプトアビジンを結合させて検出することもできる。
 イムノアッセイの中でも、酵素標識を用いるELISA法は、簡便且つ迅速に抗原を測定することができて好ましい。例えば、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン以外の部分を特異的に認識する抗体を固相担体に固定し、サンプルを添加して反応させた後、標識した本発明のペプチドを添加して反応させる。洗浄後、酵素基質と反応、発色させ、吸光度を測定することにより、インフルエンザウイルスを検出することができる。固相担体に固定した抗体と試料を反応させた後、標識していない本発明のペプチドを添加し、本発明のペプチドに対する抗体を酵素標識してさらに添加してもよい。
 酵素基質は、酵素がペルオキシダーゼの場合、3,3'-diaminobenzidine(DAB)、3,3',5,5'-tetramethylbenzidine(TMB)、o-phenylenediamine(OPD)等を用いることができ、アルカリホスファターゼの場合、p-nitropheny phosphate(NPP)等を用いることができる。
 本明細書において「固相担体」は、抗体を固定できる担体であれば特に限定されず、ガラス製、金属性、樹脂製等のマイクロタイタープレート、基板、ビーズ、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン、PVDFメンブレン等が挙げられ、標的物質は、これらの固相担体に公知の方法に従って固定することができる。
 本発明に係る検査用キットは、上記検出に必要な試薬及び器具(本発明のペプチド、抗体、固相担体、緩衝液、酵素反応停止液、マイクロプレートリーダー等を含むが、これらに限定されない)を含む。
以下に示す実施例は、単なる例示であって、上述した実施形態と共に本発明を詳細に説明することのみを意図しており、本発明を限定するものではない。
[実施例1]
[ヘマグルチニンに結合する特殊環状ペプチドの化学合成1]
 特許文献3と同様のスクリーニング方法で、ヘマグルチニン結合ペプチドを同定した。当該ペプチドが実際にヘマグルチニンに対する結合活性を持つかどうか、インフルエンザウイルスの増殖に対する阻害活性を持つかどうかを確認する目的で、化学合成した。
 ペプチド合成は、自動合成機SyroI(Biotage Japan社)を用い、9-フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)をαアミノ基の保護基として用いる一般的な固相合成法に従って行った。
 Rink Amide AM resin(Novabiochem社)の3μmol相当を合成用チップに加え、2-(1H-benzotriazole-1-yl)-1,1,3,3-tetramethyluronium hexafluorophosphate(HBTU)、及びFmoc基で保護したアミノ酸(いずれもNovabiochem社)を順次反応させた。
 N末端のトリプトファンを連結してFmocを外したのち、1-methyl-2-pyrrolidinone(NMP;Nacalai Tesuque社)に溶解したN-ヒドロキシコハク酸クロロアセチルを6当量加えて1時間静置した。
 得られたペプチドレジンを、N,N-dimethylformamide(DMF;Nacalai Tesuque社)と塩化メチレンで3回洗浄して乾燥し、トリフルオロ酢酸-水-トリイソプロピルシランの混合物(体積比で90:5:5)を加えて室温で2時間攪拌した。
 エーテル沈殿により切断された粗ペプチドを回収し、ジエチルエーテルで2回洗浄して乾燥したのち、終濃度が10mMとなるように125mMのトリスヒドロキシメチルアミノメタンを含む80%DMSO水溶液を加えて、室温で1時間攪拌した。
 環状ペプチド溶液を酸性にして濾過し、C4カラム(Cosmosil AR300 5C4(10×250mm、Nacalai Tesuque社)を用いた逆相高速液体クロマトグラフィーで目的物を精製した。移動相として0.1%トリフルオロ酢酸を含む水-アセトニトリルを用いた。生成したペプチドは、Autoflex II(Bruker Daltonics社)を用いてMALDI-TOF-MSにより同定した。
 以下の4種類のペプチドを合成した。
 iHA-100
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys-amide(配列番号:6);
 iHA-101
ClAc-Trp-Arg-Val-Ser-MePhe-Thr-Tyr-MePhe-MeSer-Tyr-Thr-Pro-Ser-Cys-amide(配列番号:7);
 iHA-102
ClAc-Trp-Ser-MePhe-MeGly-His-Val-His-Tyr-Ser-Val-MePhe-Asn-MeAla-Val-Cys-amide(配列番号:8)、又は、
 iHA-103
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Thr-His-Val-Arg-Tyr-Thr-Val-MePhe-Asn-MeAla-Ser-Cys-amide(配列番号:9)
 上記4種のペプチドが環状化された以下のペプチドをインフルエンザウイルスの増殖阻害試験に用いた。
 iHA-100
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys)-amide(配列番号:10);
 iHA-101
Cyclo(Ac-Trp-Arg-Val-Ser-MePhe-Thr-Tyr-MePhe-MeSer-Tyr-Thr-Pro-Ser-Cys)-amide(配列番号:11);
 iHA-102
Cyclo(Ac-Trp-Ser-MePhe-MeGly-His-Val-His-Tyr-Ser-Val-MePhe-Asn-MeAla-Val-Cys)-amide(配列番号:12)、又は、
 iHA-103
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Thr-His-Val-Arg-Tyr-Thr-Val-MePhe-Asn-MeAla-Ser-Cys)-amide(配列番号:13)
 ポジティブコントロールとして、以下のiHA-24環状ペプチド(特許文献3)を用いた。
 iHA-24(直鎖)
ClAc-Trp-Trp-Leu-Asp-Pro-Tyr-Trp-Leu-Thr-Trp-Tyr-Thr-Cys-Gly-amide(配列番号:14)
 iHA-24(環状)
Cyclo(Ac-Trp-Trp-Leu-Asp-Pro-Tyr-Trp-Leu-Thr-Trp-Tyr-Thr-Cys)-Gly-amide(配列番号:15)
[実施例2]
[インフルエンザウイルスに対するペプチドの活性の評価]
1.中和活性
 インフルエンザウイルスに対するペプチドの中和活性を確認するため、ペプチドとインフルエンザウイルスをまず混合し、その後、この混合液と細胞を接触させる試験を行った。具体的な試験方法を以下に示す。
1) アッセイ3日前にMDCK細胞を6wellプレートへ2×105cells/wellで播いた。
2) インフルエンザウイルス感染前日に各ペプチド0.01μM、0.1μM、1μMを含有する細胞培養培地に交換して細胞を前処理した。
3) 各ペプチド0.01μM、0.1μM、1μMを含有する細胞培養培地110μlに55PFUのウイルス溶液110μlを混合し、CO2インキュベータにおいて37℃で1時間インキュベートした。
4) ペプチドとインキュベートしたウイルス液0.2mlを各wellに加え、全体に行き渡らせた。
5) 37℃又は34℃で1時間吸着させ、15分おきにプレートを揺らした。
6) ウイルス液を取り除き、BSA(-)/MEMで1回洗浄した。
7) 0.8%アガロースを加えた1%BSA/MEM 2mlを各wellに重層した。
8) アガロース凝固後、プレートの上下を反転させ、CO2インキュベータへ入れた。
9) 37℃又は34℃で2~3日培養した。
10) 10%ホルマリンを加えた。室温で1時間固定した。
11) ホルマリンとアガロース培地を取り除き、水洗した。
12) 1%クリスタルバイオレットで1時間染色した。
13) 水洗、乾燥後にプラーク数を判定した。
2.中和+阻害活性
 上述の方法で中和活性を評価すると共に、アガロースゲル中に、ペプチド又は抗インフルエンザ薬を加えて、増殖阻害活性も評価した。具体的な試験方法を以下に示す。
1) アッセイ3日前にMDCK細胞を6wellプレートへ2×105cells/wellで播いた。
2) インフルエンザウイルス感染前日に各ペプチド0.01μM、0.1μM、1μMを含有する細胞培養培地に交換して細胞を前処理した。
3) 各ペプチド0.01μM、0.1μM、1μMを含有する細胞培養培地110μlに55PFUのウイルス溶液110μlを混合し、CO2インキュベータにおいて37℃で1時間インキュベートした。
4) ペプチドとインキュベートしたウイルス液0.2mlを各wellに加え、全体に行き渡らせた。
5) 37℃又は34℃で1時間吸着させ、15分おきにプレートを揺らした。
6) ウイルス液を取り除き、BSA(-)/MEMで1回洗浄した。
7) ペプチド0.01μM、0.1μM、1μM、10μg/mlアセチルトリプシン、0.8%アガロースを加えた1%BSA/MEM 2mlを各wellに重層した。又は、オセルタミビル(商品名タミフル)若しくはザナミビル(商品名リレンザ)を0.01μM、0.1μM、1μM含むアガロース培地を重層した。
8) アガロース凝固後、プレートの上下を反転させ、CO2インキュベータへ入れた。
9) 37℃又は34℃で2~3日培養した。
10) 10%ホルマリンを加えた。室温,1時間固定した。
11) ホルマリンとアガロース培地を取り除き、水洗した。
12) 1%クリスタルバイオレットで1時間染色した。
13) 水洗、乾燥後にプラーク数を判定した。
3.結果
3-1.インフルエンザウイルスH5N1 Vac-3に対するペプチドの活性評価結果
 インフルエンザウイルスとしてH5N1 Vac-3を用い、ペプチドの中和活性、及び中和+増殖阻害活性を評価した結果を図1に示す。iHA-100~103のいずれにおいても、用量依存的にプラーク数が減少した。iHA-100、102及び103は、ポジティブコントロールのiHA-24よりも著しく高く、ザナミビル(商品名リレンザ)に匹敵する抗ウイルス効果が見られた。
 なお、使用したウイルスの量をBack-titrationを行って確認したが(図中Back)、所定のウイルス量であった。
3-2.高病原性H5N1株に対するペプチドの活性評価結果
 高病原性トリインフルエンザウイルスとして、以下の3つを使用し、ペプチドの中和活性、及び中和+増殖阻害活性を評価した結果を図2に示す。
 A/ws/Hokkaido/1/08 (clade 2.3)
 A/ws/Mongolia/3/05(clade 2.2)
 A/Vietnam/UT3040/04(clade 1)
 iHA-100は、高病原性トリインフルエンザウイルス株に対しても、iHA-24よりはるかに高く、ザナミビルと同等の抗ウイルス効果を示した。
 なお、使用したウイルスの量をBack-titrationを行って確認したが所定のウイルス量であった。
3-3.インフルエンザウイルスH1N1-pdm2009の分離株の一つであるH1N1-pdm2619株に対するペプチドの活性評価結果
 インフルエンザウイルスとして、H1N1-pdm2619に対するペプチドの中和活性、及び中和+増殖阻害活性を評価した結果を図3に示す。
 iHA-100~103のいずれにおいても、iHA-24と同等かそれ以上に、用量依存的にプラーク数が減少し、特にiHA-100では、ザナミビル(商品名リレンザ)に匹敵する抗ウイルス効果が見られた。
3-4.インフルエンザウイルスH2N2-Adachi株に対する阻害及び中和活性
 同様に、インフルエンザウイルスH2N2-Adachi株に対するペプチドの中和活性、及び中和+増殖阻害活性を評価した結果を図4に示す。
 iHA-100において、iHA-24に比較して、用量依存的にプラーク数が減少し、ザナミビル(商品名リレンザ)に匹敵する抗ウイルス効果が見られた。
[実施例3]
[特殊環状ペプチドiHA-100とZanamivirの治療効果の比較]
 図5に示される手順で、マウスにiHA-100環状ペプチドとザナミビルを投与し、ウイルス感染による致死率を調べた。
 結果を図6及び7に示す。iHA-100(図6)は、感染から6日後に投与を開始した群(iHA-100 6-10dpi)でも、致死率が低下した。一方、ザナミビル投与群(図7)は、感染から2日後に投与を開始しても死亡個体が認められ,4日目以降では全く治療効果を得られなかった(図7)。
[実施例4]
[ヘマグルチニンに結合する特殊環状ペプチドの化学合成2]
 実施例1と同様の手法を用いて、iHA-100(配列番号6)を改変した以下のペプチドを合成した。
 iHA-100-D4K
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Lys-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys-amide(配列番号:16);
 iHA-100-S7A
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ala-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys-amide(配列番号:17);
 iHA-100-S7K
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Lys-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys-amide(配列番号:18);
 iHA-100-S7E
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Glu-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys-amide(配列番号:19);
 iHA-100-P13hyP
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Hyp-Arg-Cys-amide(配列番号:20);
 iHA-100-R14A
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Ala-Cys-amide(配列番号:21);
 iHA-100-R14E
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Glu-Cys-amide(配列番号:22);
 iHA-100-R14K
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Lys-Cys-amide(配列番号:23);
 iHA-100-R14Dap
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Dap-Cys-amide(配列番号:24);
 iHA-100-COOH
ClAc-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys-COOH(配列番号:25);
 なお、上記ペプチド中、Dapは、2,3-ジアミノプロピオン酸であり、Hypは4-ヒドロキシプロリンである。
 さらに、上記ペプチドがそれぞれ環状化された以下のペプチドを合成した。
 iHA-100-D4K
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Lys-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys)-amide(配列番号:26);
 iHA-100-S7A
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ala-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys)-amide(配列番号:27);
 iHA-100-S7K
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Lys-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys)-amide(配列番号:28);
 iHA-100-S7E
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Glu-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys)-amide(配列番号:29);
 iHA-100-P13hyP
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Hyp-Arg-Cys)-amide(配列番号:30);
 iHA-100-R14A
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Ala-Cys)-amide(配列番号:31);
 iHA-100-R14E
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Glu-Cys)-amide(配列番号:32);
 iHA-100-R14K
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Lys -Cys)-amide(配列番号:33);
 iHA-100-R14Dap
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Dap -Cys)-amide(配列番号:34);
 iHA-100-COOH
Cyclo(Ac-Trp-Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg-Cys)-COOH(配列番号:35)。
[実施例6]
[インフルエンザウイルスに対するペプチドの活性の評価2]
 実施例4で合成したiHA-100、iHA-100-D4K、iHA-100-S7A、iHA-100-S7K、iHA-100-S7E、iHA-100-R14A、iHA-100-R14E、iHA-100-R14K、iHA-100-R14Dap及びiHA-100-COOHの環状ペプチドを用い、プラークアッセイ法により、インフルエンザウイルスに対する各ペプチドの増殖阻害活性を評価した。各ペプチドの含有量としては、0.03μM、0.01μM、0.003μM、0.001μM、0.0003μM及び0.0001μMの含有量でも試験を行った。
 結果を図9に示す。いずれのペプチドの場合も、用量依存的にプラーク数が減少した。iHA-100-R14A、iHA-100-R14E及びiHA-100-R14Dapでは、高い抗ウイルス効果が見られ、特に、iHA-100-R14A及びiHA-100-R14Dapは、低濃度の場合でも高い抗ウイルス効果が見られた。

Claims (12)

  1.  以下の(i)から(iv)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むヘマグルチニン結合ペプチド:
     (i) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:1);
     (ii) Arg-Val-Ser-MePhe-Thr-Tyr-MePhe-MeSer-Tyr-Thr-Pro-Ser(配列番号:2);
     (iii) 配列番号:1又は2において、1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;及び
     (iv) 配列番号:1又は2と90%以上配列同一性を有するアミノ酸配列。
  2.  請求項1に記載のヘマグルチニン結合ペプチドであって、以下の(v)から(vii)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むヘマグルチニン結合ペプチド:
     (v) 配列番号:1において、3位、6位、12位及び13位から選択されるアミノ酸のうち1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;
     (vi) 配列番号:1において、3位、6位、及び13位から選択されるアミノ酸のうち1又は数個のアミノ酸が置換されているアミノ酸配列;及び
     (vii) 配列番号:1において、13位のアミノ酸がアミノ酸で置換されているアミノ酸配列。
  3.  以下の(viii)から(xviii)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むヘマグルチニン結合ペプチド:
     (viii) Thr-MeGly-Lys-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:36);
     (ix) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ala-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:37);
     (x) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Lys-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:38);
     (xi) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Glu-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Arg(配列番号:39);
     (xii) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Hyp-Arg(配列番号:40);
     (xiii) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Ala(配列番号:41);
     (xiv) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Glu(配列番号:42);
     (xv) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Lys(配列番号:43);
     (xvi) Thr-MeGly-Asp-MePhe-MePhe-Ser-MeSer-His-Tyr-Thr-Val-Pro-Dap(配列番号:44);
     (xvii) 配列番号:36~44のいずれかにおいて、1又は数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列;及び
     (xviii) 配列番号:36~44のいずれかと90%以上配列同一性を有するアミノ酸配列。
  4.  下記式(I)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むヘマグルチニン結合ペプチド:
     Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13(配列番号:3)(I)
     (式中、
     Xaa1は、Ser又はThrであり、
     Xaa2は、N-メチルアミノ酸であり、
     Xaa3は、任意のアミノ酸であり、
     Xaa4は、塩基性アミノ酸であり、
     Xaa5は、Valであり、
     Xaa6は、塩基性アミノ酸であり、
     Xaa7は、Tyrであり
     Xaa8は、Ser又はThrであり、
     Xaa9は、Valであり、
     Xaa10は、MePheであり、
     Xaa11は、Asnであり、
     Xaa12は、MeAlaであり、
     Xaa13は、Val又はSerである。)。
  5.  Xaa2は、MePhe又はMeGlyであり、
     Xaa3は、MeGly又はThrであり、
     Xaa4は、Hisであり、
     Xaa6は、His又はArgである、請求項4に記載のヘマグルチニン結合ペプチド。
  6.  Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13が、
     Ser-MePhe-MeGly-His-Val-His-Tyr-Ser-Val-MePhe-Asn-MeAla-Val(配列番号:4)、又は、
     Thr-MeGly-Thr-His-Val-Arg-Tyr-Thr-Val-MePhe-Asn-MeAla-Ser(配列番号:5)
    である、請求項4又は5に記載のヘマグルチニン結合ペプチド。
  7.  環状化している、請求項1から6のいずれか1項に記載のヘマグルチニン結合ペプチド。
  8.  N末端から3アミノ酸以内にクロロアセチル化アミノ酸を有し、C末端から3アミノ酸以内にシステインを有する、請求項7に記載のヘマグルチニン結合ペプチド。
  9.  N末端にクロロアセチル-Trpを含み、C末端にCysを含み、これらのチオエーテル結合により環状化している、請求項7に記載のヘマグルチニン結合ペプチド。
  10.  請求項1から9のいずれか1項に記載のヘマグルチニン結合ペプチドを含む、インフルエンザの予防又は治療のための医薬組成物。
  11.  請求項1から9のいずれか1項に記載のヘマグルチニン結合ペプチドを含む、インフルエンザウイルス検出薬。
  12.  請求項11に記載のインフルエンザ検出薬を含む、インフルエンザウイルス検出用キット。
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