JP2013540425A - インフルエンザ感染の治療および制限のうち少なくとも一方を行うためのポリペプチド - Google Patents

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Abstract

本発明は、本明細書中に開示される一般式のポリペプチドであって、インフルエンザA型ヘマグルチニンを認識し、かつ該ヘマグルチニンに対する強力な結合剤であり、例えば、インフルエンザ感染の治療および発症の制限のうち少なくとも一方を行うために使用されうるポリペプチドを提供する。本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸、適切な制御配列に作動可能なように連結された本発明のポリペプチドをコードする核酸を含む組換え発現ベクター、および本発明の組換え発現ベクターを含む組換え宿主細胞をさらに提供する。本発明はさらに、本発明のポリペプチドに選択的に結合する抗体、および1つ以上の本発明のポリペプチドと薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物も提供する。加えて、本発明は、インフルエンザ感染の治療および制限のうち少なくとも一方を行う方法、インフルエンザ感染を診断するか、またはインフルエンザ感染の進行を監視する方法、インフルエンザワクチン候補を同定する方法、および、インフルエンザ感染の治療、制限および診断のうち少なくともいずれかを行うための候補化合物を同定する方法を提供する。

Description

本発明は、インフルエンザ感染の治療および制限のうち少なくとも一方を行うためのポリペプチドに関する。
政府支援について
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与された助成番号第5P41RR011823‐15号および米国国防総省国防高等研究事業局(Defense Advanced Research Projects Agency)により授与された助成番号第HR0011‐08‐0085号および米国国防脅威削減局(Defense Threat Reduction Agency)により授与された助成番号第HDTRA1‐10‐1‐0040号のもとで政府支援を受けて行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
背景
インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科に属している。インフルエンザウイルスにはA、BおよびC型で示される3つのサブタイプがある。インフルエンザのビリオンは、数あるタンパク質の中でも特にヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)をコードしている分節マイナス鎖RNAゲノムを包含している。インフルエンザウイルス感染は、シアル酸を含有する細胞レセプター(糖タンパク質および糖脂質)へのビリオン表面HAタンパク質の付着によって開始される。NAタンパク質は該シアル酸レセプターのプロセシングを仲介し、細胞内へのウイルス侵入は、HA依存性のレセプターを介したエンドサイトーシスに依存する。インフルエンザビリオンを包含している内在化エンドソームの酸性領域において、HA2タンパク質は立体配座変化を生じ、その結果としてウイルス膜および細胞膜の融合ならびにウイルスの脱外被およびヌクレオカプシドと会合したリボ核タンパク質(RNP)からのM1タンパク質のM2を介した放出がもたらされ、RNPはウイルスRNA合成のために細胞核へ移動する。HAタンパク質に対する抗体は、ウイルスの感染性を中和することによりウイルス感染を防止する。
インフルエンザは重大な公衆衛生上の課題を提示しており、既存の抗ウイルス薬に抵抗性であるかまたは免疫系による中和を回避するウイルスと戦うために新たな治療法が必要とされている。
第1の態様では、本発明は、一般式I
R1‐R2‐Phe‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐R10‐R11‐R12‐R13‐R14‐R15‐R16(配列番号(SEQ ID NO:)1)
のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供し、上記式中、
R1は、Ser、Ala、Phe、His、Lys、Met、Asn、Gln、Thr、Val、Tyr、およびAspからなる群から選択され;
R2は任意のアミノ酸であってよく;
R3は、Asp、Ala、Glu、Gly、Asn、Pro、Ser、およびTyrからなる群から選択され;
R4はLeuおよびPheからなる群から選択され;
R5は任意のアミノ酸であってよく;
R6は、Met、Phe、His、Ile、Leu、Gln、およびThrからなる群から選択され;
R7は、Arg、Gly、Lys、Gln、およびThrからなる群から選択され;
R8は、Ile、Asn、Gln、Val、およびTrpからなる群から選択され;
R9は、Met、Gly、Ile、Lys、Leu、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、His、およびTyrからなる群から選択され;
R10はTrpおよびPheからなる群から選択され;
R11は、Ile、Phe、Ser、Thr、およびValからなる群から選択され;
R12は、Tyr、Cys、Asp、Phe、His、Asn、およびSerからなる群から選択され;
R13は、Val、Ala、Phe、Ile、Leu、Asn、Gln、Thr、およびTyrからなる群から選択され;
R14は、Phe、Glu、およびLeuからなる群から選択され;
R15は、Ala、Gly、Lys、Arg、およびSerからなる群から選択され;
R16は、Phe、Cys、His、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Thr、Val、Trp、およびTyrからなる群から選択される。
一実施形態では、ポリペプチドは、
R1‐R2‐Phe‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐R10‐R11‐R12‐R13‐R14‐R15‐R16‐X1‐R17(SEQ ID NO:2)
を含むかまたは上記式で構成され、上記式中、
X1は4〜8アミノ酸の長さであり、各部位は任意のアミノ酸であってよく;
R17はPheまたはTyrである。
別の態様では、本発明は、一般式II
R1‐R2‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐Ala‐R10‐R11‐Phe(SEQ ID NO:83)
のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供し、上記式中、
R1はPheおよびValからなる群から選択され;
R2は、Ser、Ala、Phe、Gly、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr、およびValからなる群から選択され;
R3はGluおよびAspからなる群から選択され;
R4は、Asn、His、Ile、Lys、Leu、Met、Arg、Ser、およびThrからなる群から選択され;
R5は、Leu、Phe、Ile、Met、Asn、Gln、およびValからなる群から選択され;
R6は、Ala、Asp、Lys、Met、Asn、Gln、Arg、Glu、およびValからなる群から選択され;
R7は、Phe、Asp、Asn、およびTyrからなる群から選択され;
R8は、Glu、Ala、Asp、Gly、His、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、およびTrpからなる群から選択され;
R9は、Leu、Phe、Ile、Met、およびValからなる群から選択され;
R10は、Leu、Ile、Met、およびTyrからなる群から選択され;
R11は、Ser、Ala、Gly、およびTyrからなる群から選択される。
一実施形態では、一般式IIのポリペプチドは、
R1‐R2‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐Ala‐R10‐R11‐Phe‐X1‐R12‐R13‐X2‐R14(SEQ ID NO:84)
を含むかまたは上記式で構成され、上記式中、
X1は5〜15アミノ酸の長さであり、各部位は任意のアミノ酸であってよく;
R12は、Gln、Tyr、Phe、Met、Arg、Lys、およびGlyからなる群から選択され;
R13は、Tyr、Asp、Met、Asn、およびSerからなる群から選択され;
X2は任意のアミノ酸であり;
R14は、Ser、Arg、およびLysからなる群から選択される。
別の態様では、本発明は、
からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
第3の態様では、本発明は、本発明の任意の実施形態のポリペプチドをコードする単離核酸を提供する。第4の態様では、本発明は、適切な制御配列に作動可能なように連結された、本発明の第3の態様の核酸を含む組換え発現ベクターを提供する。第5の態様では、本発明は、本発明の第4の態様の組換え発現ベクターを含む組換え宿主細胞を提供する。第6の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドに選択的に結合する抗体を提供する。
第7の態様では、本発明は、本発明による1つ以上のポリペプチドと薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
第8の態様では、本発明は、インフルエンザ感染の治療および制限のうち少なくとも一方を行う方法であって、インフルエンザ感染の治療および制限のうち少なくとも一方を行うために、投与を必要とする対象者に、治療上有効な量の1つ以上の本発明のポリペプチド、該ポリペプチドの塩、該ポリペプチドのコンジュゲート、または該ポリペプチドの医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
第9の態様では、本発明は、インフルエンザ感染を診断するか、またはインフルエンザ感染の進行を監視する方法であって、
(a)インフルエンザに感染している疑いのある対象者由来の生体試料を、診断上有効な量の1つ以上の本発明のポリペプチドと、該試料中に存在するウイルスHAタンパク質への該ポリペプチドの結合に適した条件下において接触させるステップと;
(b)ポリペプチド‐ウイルスHA結合複合体を検出するステップと
からなり、
そのような結合複合体の存在は、該対象者がインフルエンザに感染していることを示すか、またはインフルエンザ感染の進行の程度(a measure progression)を提示する方法を提供する。
第10の態様では、本発明は、インフルエンザワクチン候補を同定する方法であって、
(a)試験化合物を、本発明のポリペプチドと、ポリペプチドの結合に適した条件下において接触させるステップと;
(b)結合していない試験化合物を除去するステップと;
(c)本発明のポリペプチドに結合する試験化合物を同定するステップであって、そのような試験化合物はインフルエンザワクチン候補である、ステップと
からなる方法を提供する。
第11の態様では、本発明は、インフルエンザ感染の治療、制限、および診断のうち少なくともいずれかを行うための候補化合物を同定する方法であって、
(a)インフルエンザHAタンパク質を、(i)試験化合物および(ii)本発明のポリペプチドと、HAタンパク質の本発明のポリペプチドへの結合に適した条件下において接触させるステップと;
(b)HAタンパク質への結合に関してポリペプチドより優れた試験化合物を同定するステップであって、そのような試験化合物はインフルエンザ感染の治療、制限、および診断のうち少なくともいずれかを行うための候補化合物である、ステップと
からなる方法を提供する。
設計過程の大要を示す図。このフローチャートは、新規な結合タンパク質の設計過程における重要なステップについて、1918 HAの基部を標的とする結合剤の作出の各ステップを例証するサムネイルとともに示している。 1918 HAの基部を標的とするHB36およびHB80の設計を示す図。(A)1918年パンデミックウイルス由来の三量体HA構造(PDB 3R2X)の表面表示。広域中和抗体CR6261は、ウイルス膜(底部)の近くで基部領域内の高度に保存されたエピトープに結合する。(B)CR6261接触残基をスティック表示した、CR6261エピトープの拡大図。HA上のこの標的部位は、内側が多数の疎水性残基によって覆われた溝を包含している。この疎水性の溝のいずれの側(上方および下方)のループも、この領域への接近を抑制している。HA2上の重要な残基が一文字記号で表記されている。(CおよびD)HB36(C)およびHB80(D)と、HA上の標的部位との間の設計された相互作用を示す正面図。HAは図2Aに関してほぼ60°回転されている。HB36およびHB80の残基はスティック表示され、ホットスポット残基(HB36についてはF49およびM53、HB80についてはL21、F25およびY40)が表記されている。明瞭にするために、該設計物からは非接触領域が省略されている。(EおよびF)HB36(E)およびHB80(F)の1918/H1 HAとの設計された相互作用をさらに詳細に示す図。 HB36設計物についての初期結合データ(親和性成熟前)。1μMの1918 HAとともにインキュベートされると、この設計タンパク質をディスプレイ(提示)する酵母は、1918 HAが存在しない場合と比較して蛍光フィコエリトリンシグナル(X軸)の増大を示す。 HB80設計物についての初期結合データ(親和性成熟前)。1μMの1918 HAとともにインキュベートされると、この設計タンパク質をディスプレイ(提示)する酵母は、1918 HAが存在しない場合と比較して蛍光フィコエリトリンシグナル(X軸)の増大を示す。 親和性成熟について示す図。初期設計物の親和性を増大させる置換は、(AおよびB)反発相互作用HB36 Ala60Val(A)、HB80 Met26Thr(B);(CおよびD)静電作用HB36 Asn64Lys(C)、HB80 Asn36Lys(D);(EおよびF)ならびに溶媒和作用HB36 Asp47Ser(E)、HB80 Asp12Gly(F)、のモデル化に際して欠陥として分類される可能性がある。 酵母表面ディスプレイによって測定されたSC1918/H1 HAへのHB36.4の結合滴定。丸印は親和性成熟がなされた設計物を、四角は該設計物の由来元であるスカフォールド(足場)タンパク質を表し、バツ印は750nMの抑制性CR6261 Fabの存在下における該設計物を表す。 酵母表面ディスプレイによって測定されたHB80.3の結合滴定。丸印は親和性成熟がなされた設計物を、四角は該設計物の由来元であるスカフォールドタンパク質を表し、バツ印は750nMの抑制性CR6261 Fabの存在下における該設計物を表す。 HB36.3‐SC1918/H1複合体の結晶構造によるコンピュータ設計の精度の検証を示す図。(A)HB36.3‐SC1918/H1複合体の結晶構造とコンピュータ設計物との重ね合せから、主要な認識ヘリックスの配置状態における十分な一致と、タンパク質ドメインの残り部分にわずかな回転を伴うこととが明らかである。重ね合せはHA2サブユニットを使用して行なわれた。明瞭にするために、ここでは結晶構造からのHAのみが示されている(設計物の重ね合せに使用されたHA(結晶構造とほとんど同一)は省略された)。(B)SC1918 HA‐HB36.3境界面の拡大図であり、設計物と結晶構造との間がほぼ一致していることが強調されている。主要な認識ヘリックスは(A)とほぼ同じように配向されている。(C)HB36.3の主要な認識ヘリックスについての、バイアスなしの2Fo‐Fc(灰色メッシュ、1σでの等高面)およびFo‐Fc(暗色メッシュ、3σでの等高面)電子密度マップ。該ヘリックスは(B)のように配向され、この図中のヘリックスの左面の重要な接触残基が表記されている(右側表面はHB36.3タンパク質のコアと直面かつ相互作用する)。F49、M53、W57、F61およびF69(この図では見えていない)を含む、HAとの境界面におけるほとんどの大きな側鎖について著明な密度が観察された。ここでは側鎖は実験上の電子密度との一致を例証するために示されているが、マップは、以下の側鎖すなわちF49、M53、M56、W57、F61およびF69のアラニンへの短縮を用いたHA‐HB36.3モデルの最初の精密化の後で計算された(現存の側鎖を用いた事前の精密化なし)。 HB80.3は多数のHAサブタイプに結合かつ抑制することを示す図。(A)16個のインフルエンザA型ヘマグルチニンサブタイプの関連性を示す進化系統樹。これらのサブタイプは2つの主要な系統(グループ1および2)に分けられる。CR6261はグループ1ウイルスに対する幅広い活性を有する。HB80.3は同様の交差反応性プロファイルを有し、H1およびH5を含む多数のグループ1サブタイプに結合する。(B)一群のHAに対するHB80.3およびCR6261 Fabの結合データ。「+」、「++」および「+++」は相対的な結合の程度を示し(それぞれおよそ10−7、10−8、および10−9M)、一方「−」は試験された最も高い濃度(100nM)でも検出可能な結合がないことを示す。(C)HB80.3は、膜融合を促進するpH誘導型の立体配座変化を抑制する。低いpHへの曝露は1918H1 HA(トップパネル)およびViet04H5 HAをプロテアーゼ感受性状態に変換し(レーン1)、中性pHに維持されたHAはトリプシンに対して高度に抵抗性である(レーン3)。HB80.3をH1およびH5とともにプレインキュベートするとpH誘導型の立体配座変化が妨げられ、HAはプロテアーゼ抵抗性の融合前の状態に保持される(レーン2)。 酵母表面ディスプレイにより測定されたSC1918/H1 HAへのHB36の結合滴定。丸印はコンピュータ設計物を表し、四角は該設計物の由来元であるスカフォールドタンパク質を表し、×印は1.5μMの抑制性CR6261 Fabの存在下における設計物を表す。 HB80設計物についてのフィコエリトリン(PE)強度ヒストグラムを示す図。破線は1μM H1 HAの非存在下、暗色線は存在下における、設計物をディスプレイする酵母細胞の集団を表す。 HB80設計物の由来元であるスカフォールド(PDBコード2CJJ)についてのフィコエリトリン(PE)強度ヒストグラムを示す図。破線は1μM H1 HAの非存在下、暗色線は存在下における、設計物をディスプレイする酵母細胞の集団を表す。 HB80 M26T N36Kの部位54の後ろで切端化すると平均表面ディスプレイが増大することを示す図。(a.)HB80 M26T N36Kおよび(b.)HB80 M26T N36KΔ54‐95のFITC強度ヒストグラム。いずれの場合においても、灰色の線は非標識細胞を表し、黒色の線は抗cmyc FITCで標識された細胞を表す。 HB80 M26T N36Kの部位54の後ろで切端化すると平均表面ディスプレイが増大することを示す図。(a.)HB80 M26T N36Kおよび(b.)HB80 M26T N36KΔ54‐95のFITC強度ヒストグラム。いずれの場合においても、灰色の線は非標識細胞を表し、黒色の線は抗cmyc FITCで標識された細胞を表す。 HB36.3の設計境界面における、結合を完全に解消する重要残基のアラニンスキャニング変異導入を示す図。結合は酵母表面ディスプレイ滴定法によって測定された。 およびHB80.1の設計境界面における、結合を完全に解消する重要残基のアラニンスキャニング変異導入を示す図。結合は酵母表面ディスプレイ滴定法によって測定された。 H1およびH5 HAサブタイプへの設計物の酵母ディスプレイ滴定により、HB36.4設計バリアントのヘテロサブタイプ型の結合が示されることを示す図。丸印はSC/1918/H1 HAの結合滴定、四角はVN/2004/H5 HAについての滴定データである。 H1およびH5 HAサブタイプへの設計物の酵母ディスプレイ滴定により、HB80.3設計バリアントのヘテロサブタイプ型の結合が示されることを示す図。丸印はSC/1918/H1 HAの結合滴定、四角はVN/2004/H5 HAについての滴定データである。 SC1918/H1 HAに対するHB36.3についてのプロテアーゼ感受性‐阻害アッセイ。(A)上側パネルは、SC1918 HA単独に対する様々なpH処理およびトリプシン消化の効果を示す。ほとんどのHAは、pH〜6.0‐6.5より下方においてプロテアーゼ感受性の融合後の立体配座に変換される。下側パネルは、HB36.3‐SC1918複合体(HB36.3で飽和し、ゲルろ過で精製してから実験;HB36.3とHAとのモル比はおよそ1:1)についての同一アッセイを示す。反応物中の予め結合したHB36.3の存在は、HAのプロテアーゼ抵抗性状態への変換を阻止することができない。(B)図5Cに示されたHB80.3について使用されたのと同一の条件下で行われたアッセイ(HB36.3とHAとのモル比はおよそ10:1)。HB36.3はこれらの条件下では保護効果を有していない。
発明の詳細な説明
引用される参照文献はすべて、参照によりその全体が本願に組み込まれる。本願においては、別途記載のない限り、利用される技術はいくつかのよく知られた参照文献、例えば:サムブルック(Sambrook)ら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、(コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年)、D.ゲッデル(D. Goeddel)編、「酵素学実験法(Methods in Enzymology)」第185巻、「遺伝子発現技術(Gene Expression Technology)」(カリフォルニア州サンディエゴ、アカデミックプレス(Academic Press)、1991年)、M.P.ドイツァー(M.P. Deutshcer)編、「酵素学実験法(Methods in Enzymology)」の「タンパク質精製の手引き(Guide to Protein Purification)」(アカデミックプレス社(Academic Press, Inc.)、1990年);イニス(Innis)ら、「PCRプロトコール:方法および応用の手引き(PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications)」(カリフォルニア州サンディエゴ、アカデミックプレス(Academic Press)、1990年)、R.I.フレシュニー(R.I. Freshney)、「動物細胞の培養:基本技術マニュアル(Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique)」、第2版、ニューヨーク州ニューヨーク、リス社(Liss, Inc.)、1987年)、E.J.マレー(E.J. Murray)編、「遺伝子の導入および発現プロトコール(Gene Transfer and Expression Protocols)、ニュージャージー州クリフトン、ヒューマナ出版社(The Humana Press Inc.)、第109〜128ページ、ならびにアンビオン(Ambion)1998年カタログ(テキサス州オースティン、アンビオン)、のうちいずれかに見られるものである。
本明細書中で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを述べていない限り、複数の指示物を含む。本明細書中で使用される「および、ならびに(and)」は、明示的にそうでないことが定められた場合を除き、「または、もしくは(or)」と互換的に使用される。
本発明の任意の態様のすべての実施形態は、文脈が明らかにそうでないことを述べていない限り、組み合わせて使用されうる。
第1の態様では、本発明は、一般式I
R1‐R2‐Phe‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐R10‐R11‐R12‐R13‐R14‐R15‐R16(SEQ ID NO:1)
のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供し、上記式中、
R1は、Ser、Ala、Phe、His、Lys、Met、Asn、Gln、Thr、Val、Tyr、およびAspからなる群から選択され;
R2は任意のアミノ酸であってよく;
R3は、Asp、Ala、Glu、Gly、Asn、Pro、Ser、およびTyrからなる群から選択され;
R4はLeuおよびPheからなる群から選択され;
R5は任意のアミノ酸であってよく;
R6は、Met、Phe、His、Ile、Leu、Gln、およびThrからなる群から選択され;
R7は、Arg、Gly、Lys、Gln、およびThrからなる群から選択され;
R8は、Ile、Asn、Gln、Val、およびTrpからなる群から選択され;
R9は、Met、Gly、Ile、Lys、Leu、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、His、およびTyrからなる群から選択され;
R10はTrpおよびPheからなる群から選択され;
R11は、Ile、Phe、Ser、Thr、およびValからなる群から選択され;
R12は、Tyr、Cys、Asp、Phe、His、Asn、およびSerからなる群から選択され;
R13は、Val、Ala、Phe、Ile、Leu、Asn、Gln、Thr、およびTyrからなる群から選択され;
R14は、Phe、Glu、およびLeuからなる群から選択され;
R15は、Ala、Gly、Lys、Arg、およびSerからなる群から選択され;
R16は、Phe、Cys、His、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Thr、Val、Trp、およびTyrからなる群から選択される。
一実施形態では、一般式Iは、R1‐R2‐Phe‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐R10‐R11‐R12‐R13‐R14‐R15‐R16‐X1‐R17(SEQ ID NO:2)であり、前記式中、
X1は4〜8アミノ酸の長さであり、各部位は任意のアミノ酸であってよく;
R17はPheまたはTyrである。
様々な実施形態において、X1は4、5、6、7、または8アミノ酸の長さである。別の実施形態では、X1はアミノ酸配列Z1‐Arg‐Z2‐Ile‐Pro(SEQ ID NO:3)を含み、前記配列中、Z1はLysまたはAsnであり、Z2はLys、Pro、およびThrからなる群から選択される。
本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることが可能な別の実施形態では、一般式Iは、A1‐R1‐R2‐Phe‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐R10‐R11‐R12‐R13‐R14‐R15‐R16‐X1‐R17‐B1(SEQ ID NO:4)であり、前記式中、R1〜R17およびX1は上記に定義された通りであり、A1およびB1のうち少なくとも一方は任意選択で存在し、
A1は、アミノ酸配列:
MSNAMDGQQLNRLLLEWIGAWDPFGLGKDAYD(D/V/Y)EA(A/D)(A/K/R)VL(Q/K)AVY(E/A)T(N/D)(SEQ ID NO:5)を含み、
B1は、アミノ酸配列
(L/A/V)HA(Q/P)KLARRLLELK(Q/L)AASSPLP(SEQ ID NO:6)を含む。本発明者らは、一般式Iのアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列で構成されたポリペプチド(添付文書により詳細に記載されているように、HB36.4に由来する)が、系統発生上のグループIのインフルエンザウイルス、好ましくはH1またはH5サブタイプのHAを含むA型インフルエンザウイルスのような、インフルエンザA型ヘマグルチニン(「HA」)を認識し、かつ該HAへの強力な結合剤であるヘリックスを形成することを発見した。したがって、該ポリペプチドは例えば、インフルエンザ感染の治療および発症の制限のうち少なくとも一方を行うために使用されうる。
一実施形態では、該ポリペプチドは、ポリペプチド
SAFDLAMRIMWIYVFAF(SEQ ID NO:7)、SAFDLAMRIMWIYVFAFKRPIPF(SEQ ID NO:8)、または、一般式Iの任意の実施形態に従う、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上の変位部位を備えたバリアントまたはSEQ ID NO:7もしくは8を含む。他の実例となる実施形態では、ポリペプチドは、以下(括弧内の記載に由来するスカフォールド)すなわち:
からなる群から選択されたポリペプチドを含むかまたは該ポリペプチドで構成される。
様々な好ましい実施形態において、HB36.4(SAFDLAMRIMWIYVFAF(SEQ ID NO:7))は、下記すなわち:R1はHisであること;R7はLysであること;R9はTyr、Asn、またはHisであること;R13はPhe、Leu、Thr、またはAsnであること;R16はTrpであること、のうち1つ以上が真であるように改変される。別の実施形態では、R10はTrpである。さらなる実施形態では、R2およびR5のうち少なくともいずれか一方はAlaである。さらなる実施形態では、R17はPheである。
当業者には当然のことであるが、これらは特許請求の範囲に含まれる実例となるポリペプチドにすぎない。下記の表はHB36.4スカフォールドにおける許容可能な置換を部位ごとに提示している。
HB36.4:
(1)中央のヘリックス認識モチーフであるセリン47‐フェニルアラニン63(SAFDLAMRIMWIYVFAF(SEQ ID NO:7));
さらにその認識モチーフの外側のPhe69
(2)許容可能な部位は、大規模な配列決定と合わせたSC1918/H1 HAに対するHB36.4バリアントの酵母ディスプレイ選択から決定された(さらなる詳細については添付文書を参照のこと)。閾値は、FACSによる2回の選択ソート後の、選択ライブラリ内の所与の突然変異の頻度の最大80%減少であった。太字フォントで記入された部位は、HA表面と接触する部位を示す。
下記の表は、HB36.4(SAFDLAMRIMWIYVFAF(SEQ ID NO:7))からの単一の点突然変異が結合親和性の増大をもたらすことが示される場所を示している。したがって、他の実施形態では、ポリペプチドは、以下のようなHB36.4に関するアミノ酸置換を(単独で、または組み合わせて)含む:
これらの実施形態はすべて、文脈が明らかにそうでないことを述べていない限り、任意の他の実施形態と組み合わせうる。
第2の態様では、本発明は、一般式II
R1‐R2‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐Ala‐R10‐R11‐Phe(SEQ ID NO:83)のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供し、上記式中、
R1はPheおよびValからなる群から選択され;
R2は、Ser、Ala、Phe、Gly、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr、およびValからなる群から選択され;
R3はGluおよびAspからなる群から選択され;
R4は、Asn、His、Ile、Lys、Leu、Met、Arg、Ser、およびThrからなる群から選択され;
R5は、Leu、Phe、Ile、Met、Asn、Gln、およびValからなる群から選択され;
R6は、Ala、Asp、Lys、Met、Asn、Gln、Arg、Glu、およびValからなる群から選択され;
R7は、Phe、Asp、Asn、およびTyrからなる群から選択され;
R8は、Glu、Ala、Asp、Gly、His、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、およびTrpからなる群から選択され;
R9は、Leu、Phe、Ile、Met、およびValからなる群から選択され;
R10は、Leu、Ile、Met、およびTyrからなる群から選択され;
R11は、Ser、Ala、Gly、およびTyrからなる群から選択される。
一実施形態では、一般式IIは、R1‐R2‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐Ala‐R10‐R11‐Phe‐X1‐R12‐R13‐X2‐R14(SEQ ID NO:84)であり、前記式中、R1〜R11は上記に定義された通りであり、
X1は5〜15アミノ酸の長さであり、各部位は任意のアミノ酸であってよく;
R12は、Gln、Tyr、Phe、Met、Arg、Lys、およびGlyからなる群から選択され;
R13は、Tyr、Asp、Met、Asn、およびSerからなる群から選択され;
X2は任意のアミノ酸であり;
R14は、Ser、Arg、およびLysからなる群から選択される。
様々な実施形態において、X1は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15アミノ酸の長さである。別の実施形態では、X1はアミノ酸配列TNKDTPDRW‐Z1‐KVA(SEQ ID NO:85)を含み、前記配列中のZ1はAla、Lys、Arg、Gly、またはThrである。
本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることが可能な別の実施形態において、一般式IIはA1‐R1‐R2‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐Ala‐R10‐R11‐Phe‐X1‐R12‐R13‐X2‐R14‐B1(SEQ ID NO:86)であり、前記式中、R1〜R14およびX1は上記に定義された通りであり、A1およびB1のうち少なくともいずれか一方は任意選択で存在し:
A1はアミノ酸配列Z1‐ASTRGSGRPW‐Z2(SEQ ID NO:87)を含み、前記式中のZ1は存在しないかまたはMetであり、Z2は、Gly、Arg、Lys、Aspからなる群から選択され、
B1はアミノ酸配列G‐Z1‐TPEEVKKHYE(SEQ ID NO:88)を含み、前記式中のZ1はRまたはKである。
本発明者らは、一般式IIのアミノ酸配列を含むポリペプチド(添付文書により詳細に記載されているように、HB80.3に由来する)が、インフルエンザA型ヘマグルチニンを認識し、かつ該ヘマグルチニンへの強力な結合剤であるヘリックスを形成することを発見した。したがって、該ポリペプチドは例えば、インフルエンザ感染の治療および発症の制限のうち少なくとも一方を行うために使用されうる。
一実施形態において、該ポリペプチドは、ペプチドFSENLAFELALSF(SEQ ID NO:89)、または一般式IIに従うFSENLAFELALSF(SEQ ID NO:89)のうち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の変位部位を含むバリアントを含む。他の実施形態では、該ポリペプチドは、HB80.3に関して以下のようなアミノ酸置換を(単独で、または組み合わせて)含む。
部位 HB80.3残基 親和性増大
12 R−1 Gly Lys/Arg
14 R2 Ser Lys/Arg
17 R5 Leu Val/Ile
18 R6 Ala Thr/Lys
21 R9 Leu Ile
24 R12 Ser Tyr
39 Gln Arg/Tyr
42 Ser Lys/Arg
その他の実例となる実施形態では、ポリペプチドは
からなる群から選択されたポリペプチドを含むかまたは該ポリペプチドで構成される。
当業者には当然のことであるが、これらは特許請求の範囲に含まれる実例となるポリペプチドにすぎない。下記の表はHB80.3スカフォールドにおける許容可能な置換を部位ごとに提示している。
(1)中央のヘリックス認識モチーフであるフェニルアラニン13‐フェニルアラニン25;さらには該認識モチーフの外側のチロシン40。
許容可能な部位は、大規模な配列決定と合わせたSC1918/H1 HAに対するHB80.3バリアントの酵母ディスプレイ選択から決定された(さらなる詳細については添付文書を参照のこと)。閾値は、FACSによる2回の選択ソート後の、選択ライブラリ内の所与の突然変異の頻度の最大80%減少であった。太字フォントで記入された部位は、HA表面と接触する部位を示す。
下記の表は、HB80.3からの単一の点突然変異が結合親和性の増大をもたらすことが示される場所を示している。したがって、他の実施形態では、ポリペプチドは、以下のようなHB80.3に関するアミノ酸置換を(単独で、または組み合わせて)含む。
様々な好ましい実施形態において、HB80.3(FSENLAFELALSF(SEQ ID NO:89))は、下記すなわち:R2は、Ala、Gly、Ile、Lys、Arg、Thr、またはValであること;R5はIleまたはValであること;R6はLysまたはArgであること;R8はSerであること;R9はIleであること;R11はTyrであること;のうち1つ以上が真であるように改変される。
これらの実施形態はすべて、文脈が明らかにそうでないことを述べていない限り、任意の他の実施形態と組み合わせうる。
第3の態様では、本発明は、
からなる群から選択されたポリペプチドを含むかまたは該ポリペプチドで構成されるポリペプチドを提供する。
上記ポリペプチドはそれぞれ、インフルエンザA型ヘマグルチニンを認識し、かつ該ヘマグルチニンへの強力な結合剤であるヘリックスを形成する。したがって、該ポリペプチドは例えば、インフルエンザ感染の治療および発症の制限のうち少なくとも一方を行うために使用されうる。
第4の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドによって認識されるHAエピトープにドッキングかつ結合するペプチドまたはタンパク質由来の任意のヘリックスを含むかまたは該ヘリックスで構成されているポリペプチドを提供する。一実施形態では、該ヘリックスは、上記に開示されたHB36.4およびHB80.3のヘリックスと同様に、15〜17残基の長さである。
本願の全体にわたって使用されるように、用語「ポリペプチド」は、一続きのアミノ酸サブユニットを指す該用語の最も広い意味で使用される。本発明のポリペプチドは、L‐アミノ酸、D‐アミノ酸(in vivoのL‐アミノ酸特異的プロテアーゼに抵抗性である)、またはD‐アミノ酸とL‐アミノ酸との組み合わせを含むことができる。本明細書中に記載されるポリペプチドは、化学合成されてもよいし、組換え発現されてもよい。該ポリペプチドは、例えばPEG化、HESylation(登録商標)、PASylation(登録商標)、グリコシル化によって、in vivoでの半減期延長を促進するために他の化合物に連結されてもよいし、Fc融合体として、または脱免疫化(deimmunized)バリアント内で、生産されてもよい。当業者には理解されるように、そのような連結は共有結合であってもよいし、非共有結合であってもよい。
さらなる実施形態では、本発明の任意の態様の任意の実施形態のポリペプチドは、検出可能な部分または治療薬のようなタグをさらに含むことができる。タグは、共有結合形成、例えば、限定するものではないが、ジスルフィド結合形成、水素結合形成、静電気結合形成、組換え融合および立体配座的結合形成により、ポリペプチドに連結されうる。別例として、タグは、1つ以上の連結化合物によりポリペプチドに連結されてもよい。ポリペプチドにタグをコンジュゲートするための技術は当業者には周知である。検出可能なタグを含むポリペプチドは、診断的に、例えば、対象者がインフルエンザウイルスに感染したかどうかを評価するために、または、例えば所与の治療レジメンの有効性を判断するための臨床試験手順の一部としてインフルエンザウイルス感染の発症もしくは進行を監視するために、使用可能である。しかしながら、タグは、その他の検出、および分析的もしくは診断的目的のうち少なくともいずれかのためにも使用されうる。任意の適切な検出タグ、例えば、限定するものではないが、酵素、補欠分子族団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが使用されうる。使用されるタグは、使用される特定の検出/分析/診断の技術かつ/または方法、例えば(組織)試料の免疫組織化学的染色、フローサイトメトリー検出、レーザー走査型サイトメトリー検出、蛍光免疫測定法、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、バイオアッセイ(例えば中和アッセイ)、ウェスタンブロッティングの適用などに応じて変化することになろう。組織試料の免疫組織化学的染色については、好ましいタグは検出可能な生成物の生産および局所堆積を触媒する酵素である。ポリペプチドの免疫組織化学的視覚化を可能にするために該ポリペプチドに一般的にコンジュゲートされる酵素はよく知られており、例えば、限定するものではないが、アセチルコリンエステラーゼ、アルカリホスファターゼ、β‐ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、およびウレアーゼが挙げられる。視覚的に検出可能な生成物の生産および堆積のための一般的な基質も当業者にはよく知られている。ポリペプチドは、コロイド金を使用して標識されてもよいし、33P、32P、35S、H、および125Iのような放射性同位元素で標識されてもよい。本発明のポリペプチドは、当分野でよく知られた方法によってキレート剤を介して直接または間接的に放射性核種に取り付けられてもよい。
本発明のポリペプチドが、フローサイトメトリー検出、レーザー走査型サイトメトリー検出、または蛍光免疫測定法に使用される場合、タグは例えば発蛍光団を含むことができる。本発明のポリペプチドを蛍光標識するために有用な種々様々の発蛍光団は、当業者には周知である。ポリペプチドがin vivoでの診断用途に使用される場合、タグは、例えば、ガドリニウムジエチレントリアミン五酢酸のような磁気共鳴撮像(MRI)造影剤、超音波造影剤、もしくはX線造影剤を含むこともできるし、または放射性同位体標識によってもよい。
本発明のポリペプチドは固体支持体に取り付けられてもよく、固体支持体はインフルエンザウイルスまたはHAタンパク質のin vitroアッセイまたは精製に特に有用である。そのような固体支持体は、多孔性でも非多孔性でも、平面状でも非平面状であることも考えられ、限定するものではないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンの支持体が挙げられる。該ポリペプチドはさらに、例えば、親和性クロマトグラフィー用のNHS活性化セファロースまたはCNBr活性化セファロースのような濾過媒体に、有用なようにコンジュゲートされてもよい。さらに該ポリペプチドは、一般的にはビオチン‐ストレプトアビジン相互作用によって、常磁性ミクロスフェアに有用なように取り付けられてもよい。該ミクロスフェアは、インフルエンザウイルスまたはHAタンパク質を含有する試料からのインフルエンザウイルスまたはHAタンパク質の単離に使用されうる。別の実施例として、本発明のポリペプチドは、ELISA用の微量定量プレートの表面に有用なように取り付けられてもよい。
本発明のポリペプチドは、精製を容易にするためにマーカー配列に融合されてもよい。例としては、限定するものではないが、ヘキサヒスチジンタグ、mycタグまたはフラグタグが挙げられる。
本発明のポリペプチドは、該ポリペプチドが投与される対象者の免疫系によって認識される抗原にコンジュゲートされてもよい。該抗原とポリペプチドとを接続するためのコンジュゲート法は当分野においてよく知られており、限定するものではないが、架橋剤の使用が挙げられる。該ポリペプチドはインフルエンザウイルスHAタンパク質に結合し、該抗原は、インフルエンザウイルスの破壊を促進する、該コンジュゲートに対するT細胞の攻撃を開始させることになる。
本明細書中の任意の態様の別の実施形態では、本発明は本発明のポリペプチドに対応するレトロインバルソ型ポリペプチドを提供する。本発明のレトロインバルソ型ポリペプチドは、上記に開示されたポリペプチドのL‐配列型のポリペプチドとは逆の順序に組み立てられたD‐アミノ酸を含むかまたは該D‐アミノ酸で構成され、その結果として該ポリペプチドの全体的なトポロジーを維持し、かつHAへの結合を維持する。
第5の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸を提供する。該単離核酸配列はRNAまたはDNAを含むことができる。本明細書中で使用されるように、「単離核酸」とは、ゲノム配列中またはcDNA配列中において正常時にその周囲にある核酸配列から取り出されている核酸である。そのような単離核酸配列は、コードされたタンパク質の発現および精製のうち少なくともいずれか一方を容易にするのに有用な追加の配列、例えば、限定するものではないが、polyA配列、修飾コザック配列、ならびに、エピトープタグ、移出シグナル、および分泌シグナル、核局在シグナル、および原形質膜局在シグナルをコードする配列、を含むことができる。本明細書中の教示に基づけば、どの核酸配列が本発明のポリペプチドをコードすることになるかは当業者には明白であろう。
第6の態様では、本発明は、適切な制御配列に作動可能なように連結された本発明の任意の態様の単離核酸を含む組換え発現ベクターを提供する。「組換え発現ベクター」には、核酸コード領域または遺伝子を該遺伝子産物の発現を達成することができる任意の制御配列に作動可能なように連結するベクターが含まれる。本発明の核酸配列に作動可能なように連結される「制御配列」は、核酸分子の発現を達成することができる核酸配列である。制御配列は、該制御配列が核酸配列の発現を導くように機能する限り、該核酸配列に隣接している必要はない。したがって、例えば、翻訳されないが転写される介在配列がプロモータ配列と核酸配列との間に存在することが可能であり、その場合も該プロモータ配列はコード配列に「作動可能なように連結された」とみなすことができる。他のそのような制御配列には、限定するものではないが、ポリアデニル化シグナル、終結シグナル、およびリボソーム結合部位が挙げられる。そのような発現ベクターは当分野において既知の任意の種類のものであってよく、例えば、限定するものではないが、プラスミドおよびウイルス系の発現ベクターが挙げられる。開示された核酸配列の発現を哺乳類の系において駆動するために使用される制御配列は、構成的(様々なプロモータのうち任意のもの、例えば、限定するものではないが、CMV、SV40、RSV、アクチン、EFプロモータによって駆動される)であってもよいし、誘導型(例えばいくつかの誘導プロモータのうち任意のもの、例えば、限定するものではないが、テトラサイクリン、エクジソン、ステロイド応答性のプロモータによって駆動される)であってもよい。原核細胞のトランスフェクションに使用される発現ベクターの構築は当分野においてよく知られており、よって標準的技法により達成可能である。(例えば、サムブルック(Sambrook)、フリッチェ(Fritsch)およびマニアティス(Maniatis)、「分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年;E.J.マレー(E.J. Murray)編、「遺伝子の導入および発現プロトコール(Gene Transfer and Expression Protocols)」、ニュージャージー州クリフトン、ヒューマナ出版社(The Humana Press Inc.)、第109〜128ページ、ならびにアンビオン(Ambion)1998年カタログ(テキサス州オースティン、アンビオン)を参照)。発現ベクターは、エピソームとして、または宿主染色体DNAへの組込みにより、宿主生物体内において複製可能でなければならない。好ましい実施形態では、発現ベクターはプラスミドを含む。しかしながら、本発明は、ウイルスベクターのような同等の機能を果たす他の発現ベクターを含むことも意図されている。
第7の態様では、本発明は、本明細書中に開示された組換え発現ベクターでトランスフェクションされた宿主細胞を提供し、該宿主細胞は原核細胞であってもよいし真核細胞であってもよい。細胞は、一過性に、または安定的に、トランスフェクションされうる。原核細胞および真核細胞への発現ベクターのそのようなトランスフェクションは、当分野で既知の任意の技術、例えば、限定するものではないが、標準的な細菌形質転換、リン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション、またはリポソーム介在型、DEAEデキストラン介在型、ポリカチオン介在型、もしくはウイルス介在型のトランスフェクションによって行うことができる。(例えば、サムブルック(Sambrook)ら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年;R.I.フレシュニー(R.I. Freshney)、「動物細胞の培養:基本技術マニュアル(Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique)」、第2版、ニューヨーク州ニューヨーク、リス社(Liss, Inc.)、1987年を参照のこと)。本発明のポリペプチドを生産する方法は本発明の補足部分である。該方法は、(a)本発明のこの態様の宿主を該ポリペプチドの発現の助けになる条件下で培養するステップと、(b)任意選択で、発現されたポリペプチドを回収するステップとを含む。発現されたポリペプチドは、無細胞抽出物から回収可能であるが、培地から回収されることが好ましい。無細胞抽出物または培地からポリペプチドを回収する方法は、当業者にはよく知られている。
第8の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドに選択的に結合する抗体を提供する。該抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、およびこれらのフラグメントであってよく、当業者に既知の技術を使用して作製可能である。本明細書中で使用されるように、「選択的に結合する」とは、当業者には十分に理解されるように、該抗体が、1つ以上の他の生体分子、構造物、細胞、組織などにではなく本発明のポリペプチドに優先的に結合することを意味する。
第9の態様では、本発明は、本発明の1つ以上のポリペプチドと薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、例えば、下記に記載された本発明の方法において使用されうる。該医薬組成物は、本発明のポリペプチドに加えて、(a)リオプロテクタント;(b)界面活性剤;(c)増量剤:(d)等張化剤;(e)安定化剤;(f)防腐剤および(g)バッファーのうち少なくともいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のバッファーは、トリスバッファー、ヒスチジンバッファー、リン酸バッファー、クエン酸バッファーまたは酢酸バッファーである。医薬組成物は、リオプロテクタント、例えばスクロース、ソルビトールまたはトレハロースを含むこともできる。ある実施形態では、該医薬組成物は、防腐剤、例えば塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、フェノール、m‐クレゾール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、o‐クレゾール、p‐クレゾール、クロロクレゾール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、安息香酸、およびこれらの様々な混合物を含む。他の実施形態では、該医薬組成物は、グリシンのような増量剤を含む。さらに他の実施形態では、該医薬組成物は、界面活性剤、例えばポリソルベート‐20、ポリソルベート‐40、ポリソルベート‐60、ポリソルベート‐65、ポリソルベート‐80、ポリソルベート‐85、ポロキサマー‐188、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミタート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレアート、またはこれらの組み合わせを含む。医薬組成物はさらに、等張化剤、例えば調合物をヒト血液とほぼ等張または等浸透圧にする化合物も含むことができる。典型的な等張化剤には、スクロース、ソルビトール、グリシン、メチオニン、マンニトール、デキストロース、イノシトール、塩化ナトリウム、アルギニンおよび塩酸アルギニンが挙げられる。他の実施形態では、医薬組成物はさらに、安定化剤、例えば、対象とするタンパク質と組み合わされたときに、凍結乾燥形態または液体形態における該対象タンパク質の化学的かつ/または物理的不安定性を実質的に防止または低減する分子を含む。典型的な安定化剤にはスクロース、ソルビトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニンおよび塩酸アルギニンが挙げられる。
ポリペプチドは医薬組成物中の唯一の活性物質であってもよいし、該組成物が、用途に適した1つ以上の他の活性物質、例えば、限定するものではないが抗HA抗体および抗NA抗体をさらに含むこともできる。
第10の態様では、本発明は、インフルエンザ感染の治療および制限のうち少なくとも一方を行う方法であって、インフルエンザ感染の治療および制限のうち少なくとも一方を行うために、投与を必要とする対象者に、治療上有効な量の本発明の1つ以上のポリペプチド、該ポリペプチドの塩、該ポリペプチドのコンジュゲート、または該ポリペプチドの医薬組成物を投与することを含む方法、を提供する。該方法がインフルエンザ感染を治療することからなる場合、1つ以上のポリペプチドは、インフルエンザウイルスに既に感染している対象者、および/またはインフルエンザウイルスに感染しているであろうことを示す症状(例えば、限定するものではないが、悪寒、発熱、咽喉痛、筋痛、咳嗽、衰弱、倦怠、および全身不快感など)を患っている対象者に投与される。本明細書中で使用されるように、「治療」または「治療する」とは、下記すなわち:(a)対象者におけるインフルエンザウイルス力価の低減;(b)対象者におけるインフルエンザウイルス力価の何らかの増大の制限;(c)インフルエンザ症状の重症度の低減;(d)感染後のインフルエンザ症状の発症の制限または予防;(e)インフルエンザ症状の悪化の抑制;(f)以前にインフルエンザ感染の症状を示した対象者におけるインフルエンザ症状の再発の制限、のうち1つ以上を達成することを意味する。
該方法がインフルエンザ感染を制限することからなる場合、1つ以上のポリペプチドは、感染しているかどうか不明であるがインフルエンザウイルスに曝露したリスクを有しうる対象者に予防的に投与される。本明細書中で使用されるように、「制限(すること)」とは、インフルエンザ感染のリスクを有する対象者のインフルエンザ感染を制限することを意味する。季節性インフルエンザの大発生という性質を前提とすれば、事実上すべての対象者が少なくとも年間の一定時期において曝露のリスクを有する。特に高いリスクを有するグループは、18歳未満の小児、65歳を超える成人、および喘息、糖尿病、心臓病または任意の種類の免疫不全のうち1つ以上に罹患している人を含む。
本発明の方法は、インフルエンザウイルス、例えば、限定するものではないが、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、およびC型インフルエンザウイルスに感染した人を治療するために使用することができる。該方法は、系統発生的グループIのA型インフルエンザウイルス、特にH1またはH5サブタイプのHAを含むものによって引き起こされたA型インフルエンザウイルス感染を治療するために使用されることが好ましい。
本明細書中で使用されるように、「治療上有効な量」とはインフルエンザ感染の治療および制限のうち少なくともいずれか一方を行うために有効なポリペプチドの量を指す。ポリペプチドは、一般的には上記に開示されたもののような医薬組成物として製剤化され、任意の適切な経路を介して、例えば経口的に、parentally、吸入スプレーにより、経直腸的に、または局所的に、従来の薬学的に許容可能な担体、補助剤および賦形剤を含有する投与単位で投与されうる。本明細書中で使用される非経口という用語には、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、胸骨内、腱内、脊髄内、頭蓋内、胸内、点滴技法または腹腔内が含まれる。投与レジメンは最適の望ましい応答(例えば治療的応答または予防的応答)を提供するために調節されうる。適切な用量域は、例えば、体重1kgあたり0.1μg〜100mgであってよく;別例として、適切な用量域は体重1kgあたり0.5μg〜50mg;1μg〜25mg、または5μg〜10mgであってよい。ポリペプチドは単回のボーラス投与で送達されてもよいし、主治医の決定により2回以上(例えば2、3、4、5回またはそれ以上)投与されてもよい。
ある実施形態では、本発明のポリペプチドはインフルエンザウイルスの感染力を中和する。いかなる作用機序にも限定されるものではないが、中和活性は、インフルエンザウイルスと標的細胞の細胞膜、例えばエンドソームのような細胞内区画の細胞膜などとの融合を阻害することにより達成されうる。本発明のポリペプチドは、HAの立体配座変化後にはみられないHAエピトープを標的とするように設計された。HAタンパク質の立体配座変化はウイルスと細胞膜との融合をもたらすので、融合前の形態のHAタンパク質へのポリペプチドの結合は、融合を防止する可能性がある。様々な実施形態において、本発明のポリペプチドは、該ポリペプチドの非存在下でのインフルエンザウイルスによる宿主細胞の感染と比較して、インフルエンザウイルスが宿主細胞に感染するのを少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも20%、または少なくとも10%防止する。中和は、例えば、F.‐X.メスリン(F. -X. Meslin)、M.M.カプラン(M. M. Kaplan)およびH.コプロウスキー(H. Koprowski)編、「インフルエンザの実験技法(Laboratory techniques in influenza)」、第4版、スイス国ジュネーブ、世界保健機関、1996年、15〜17章に記載されているようにして測定されうる。
本発明によるポリペプチドは、治療的または予防的な利点を提供する任意の適切な親和定数(K値)でHAタンパク質に結合することができる。様々な実施形態において、該K値は、0.2×10−4M、1.0×10−5M、1.0×10−6M、1.0×10−7M、1.0×10−8M、1.0×10−9M、1.0×10−10M、1.0×10−11M、または1.0×10−12M未満である。親和定数は、例えば、表面プラズモン共鳴、すなわちバイオセンサマトリクス内のタンパク質濃度変化の検出によりリアルタイムの生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を使用して、例えばBIACOREシステム(スウェーデン国ウプサラのファルマシア・バイオセンサ社(Pharmacia Biosensor AB))を使用して、測定されうる。
第11の態様では、本発明は、インフルエンザ感染の診断、またはインフルエンザ感染の進行の監視のための方法を提供し、該方法は、
(a)インフルエンザに感染している疑いのある対象者由来の生体試料を、診断上有効な量の本発明の1つ以上のポリペプチドと、該ポリペプチドが該試料中に存在するウイルスHAタンパク質に結合するのに適した条件下において接触させるステップと;
(b)結合していないポリペプチドおよび試料のうち少なくともいずれか一方を除去するステップと;
(c)ポリペプチド‐ウイルスHA結合複合体を検出するステップと
を含み、そのような結合複合体の存在は、該対象者がインフルエンザに感染していることを示すか、またはインフルエンザ感染の進行の程度を提供する。
本発明のこの態様の方法は、インフルエンザ感染に罹患している可能性のある患者をより正確に同定するために、また、したがってより十分な情報に基づいた介護担当者による治療選択肢の決定をもたらすために、使用することができる。インフルエンザ感染のリスクを有する人は上記に記載のとおりである。該方法はインフルエンザ感染の進行を監視するために使用することも可能であり;この実施形態では、対象者は感染していることが分かっており、該方法は、例えば、介護担当者がノイラミニダーゼまたはM2タンパク質阻害剤を用いた治療など特定の治療を開始、修正、または継続するべきかどうかを決定するためのデータポイントとして、使用されうる。
生体試料は、感染のリスクを有する対象者由来の、任意の適切な生体試料、例えば、限定するものではないが、血液、血清、鼻分泌物、組織またはその他の生体物質であってよい。
試料は、該試料を検出方法により適したものにするために最初に処置が施されてもよい。「処置」には、限定するものではないが、試料中の全てのインフルエンザウイルスが崩壊してタンパク質、ポリペプチドまたは他の抗原性フラグメントのような抗原成分になるような方法で該試料を処理することが含まれる。本発明のポリペプチドは、該ヒトポリペプチドと試料中に存在しうるインフルエンザウイルスまたはその抗原成分との間の複合体の形成を可能にする条件下で該試料と接触させる。そのような複合体の形成(存在する場合は試料中のインフルエンザウイルスの存在を示す)は、その後、適切な手段により検出および測定される。そのような方法には、限定するものではないが、ホモジニアスおよびヘテロジニアスな結合免疫測定法、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、免疫蛍光法、免疫組織化学法、FACS、BIACOREおよびウエスタンブロット解析が含まれる。本発明の1つ以上のポリペプチドへの試験化合物の結合を促進する適切な条件は、本明細書中の教示に基づいて、当業者により決定されうる。
この態様で使用される本発明のポリペプチドは、所与のアッセイに適した任意の検出技法に有用なタグを提供するために、上記に開示されるようなコンジュゲートからなることもできる。使用されるタグは、使用される特定の検出/分析/診断の技法および/または方法に応じて変化することになろう。該方法は溶液中で行われてもよいし、本発明のポリペプチドは、担体または基材、例えば微量定量プレート(例えばELISA用)、メンブレンおよびビーズなどに結合または付着させてもよい。担体または基材は、ガラス、プラスチック(例えばポリスチレン)、多糖類、ナイロン、ニトロセルロース、またはテフロンなどで作製されうる。そのような支持体の表面は、一面に均質であっても、多孔性であってもよく、かつ任意の便利な形状のものであってよい。1つの実施形態では、条件は、0.2×10−4M、1.0×10−5M、1.0×10−6M、1.0×10−7M、1.0×10−8M、1.0×10−9M、1.0×10−10M、1.0×10−11M、または1.0×10−12M未満のK値で本発明のポリペプチドに結合する試験化合物を同定するために選択される。
第12の態様では、本発明は、インフルエンザワクチン候補を同定する方法であって、
(a)試験化合物を、本発明のポリペプチドと、ポリペプチドの結合に適した条件下において接触させるステップと;
(b)本発明のポリペプチドに結合する試験化合物を同定するステップであって、そのような試験化合物はインフルエンザワクチン候補である、ステップと
からなる方法を提供する。
上記に議論されるように、本発明のポリペプチドは、HAの立体配座変化後にはみられないHAエピトープを標的とするように設計された。したがって、本発明のポリペプチドは、特異的エピトープに結合する抗体と同様の、HAエピトープへの特異的結合剤として見ることができる。ワクチン剤は、例えば、ウイルスエピトープに特異的な抗体に結合する小分子(すなわちミモトープ)を選択することにより生産されうる。したがって、本方法は、インフルエンザワクチン候補を同定するためのそのようなアッセイにおいて抗体の代わりに本発明の1つ以上のポリペプチドを用いることを伴う。
本発明の1つ以上のポリペプチドへの試験化合物の結合を促進する適切な条件は、本明細書中の教示に基づいて、当業者によって決定されうる。この態様で使用される本発明のポリペプチドは、所与のアッセイに適した任意の検出技法に有用なタグを提供するために、上記に開示されるようなコンジュゲートからなることができる。使用されるタグは、上記に議論されたように、使用される特定の検出/分析/診断の技法および/または方法に応じて変化することになろう。該方法は溶液中で行われてもよいし、本発明のポリペプチドは、上記に議論されたように担体または基材に結合または付着させてもよい。本明細書中の教示に基づけば、本発明のこの態様に開示された様々な種類の診断アッセイのための特定の条件を決定することは、当分野の技術の範囲内にある。一実施形態では、条件は、0.2×10−4M、1.0×10−5M、1.0×10−6M、1.0×10−7M、1.0×10−8M、1.0×10−9M、1.0×10−10M、1.0×10−11M、または1.0×10−12M未満のK値で本発明のポリペプチドに結合する試験化合物を同定するために選択される。
試験化合物がポリペプチド配列を含む場合、そのようなポリペプチドは化学合成されてもよいし、組換え発現されてもよい。組換え発現は、上記に開示されるように、当分野における標準的な方法を使用して行われうる。そのような発現ベクターは細菌またはウイルスの発現ベクターを含むことが可能であり、そのような宿主細胞は原核細胞であっても真核細胞であってもよい。固相、液相、もしくはペプチド縮合の技法のうちよく知られた技法、またはこれらの任意の組み合わせを使用して調製された合成ポリペプチドは、天然または非天然のアミノ酸を含むことができる。ペプチド合成に使用されるアミノ酸は、標準的な脱保護、中和、カップリングおよび洗浄のプロトコールを用いる標準的Boc(Nα‐アミノ基保護化Nα‐t‐ブチルオキシカルボニル)アミノ酸樹脂、または標準的な塩基に不安定なNα‐アミノ基保護化9‐フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸であってよい。FmocおよびBocいずれのNα‐アミノ基保護化アミノ酸も、シグマ(Sigma)、ケンブリッジ・リサーチ・バイオケミカル(Cambridge Research Biochemical)、または当業者によく知られたその他の化学企業から入手可能である。さらに、ポリペプチドは、当業者によく知られたその他のNα保護基を用いて合成されてもよい。固相ペプチド合成は当業者によく知られた技法により達成可能であり、自動合成機の使用などにより提供されうる。
試験化合物が抗体を含む場合、そのような抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。該抗体は、抗体のヒト化型、完全なヒト型、またはネズミ科動物型であってよい。そのような抗体は、よく知られた方法、例えばハーロー(Harlow)およびレーン(Lane)、「抗体;実験マニュアル(A Laboratory Manual)」、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー、コールド・スプリング・ハーバー研究所、1988年に記載の方法により作製されうる。
試験化合物が核酸配列を含む場合、そのような核酸は、化学合成のような任意の適切な方法によって生産されうる。核酸はDNAでもRNAでもよく、一本鎖でも二本鎖であってもよい。同様に、そのような核酸は、当分野の標準的な技法を使用して、手動による反応または自動化反応により化学的または酵素的に合成されうる。化学的に、またはin vitroの酵素的合成により合成された場合、核酸は細胞内への導入に先立って精製されうる。例えば、核酸は、溶媒もしくは樹脂を用いた抽出、沈澱反応、電気泳動、クロマトグラフィー、またはこれらの組み合わせによって、混合物から精製可能である。別例として、核酸は、試料の処理過程に起因する損失を回避するために、精製せずに、または最低限の精製を用いて使用されてもよい。
試験化合物がポリペプチド、抗体、または核酸以外の化合物を含む場合、そのような化合物は、有機化学合成を行なうための当分野における様々な方法のうちのいずれかによって作製されうる。
第13の態様では、本発明は、インフルエンザ感染の治療、制限、および診断のうち少なくともいずれかを行うための候補化合物を同定する方法であって、
(a)インフルエンザHAタンパク質を、(i)試験化合物および(ii)本発明のポリペプチドと、本発明のポリペプチドへのHAタンパク質の結合に適した条件下において接触させるステップと;
(b)HAタンパク質への結合に関して該ポリペプチドより優れた試験化合物を同定するステップであって、そのような試験化合物はインフルエンザ感染の治療、制限、および診断のうち少なくともいずれかを行うための候補化合物である、ステップと
を含む方法を提供する。
この態様では、該方法は、HAへの結合に関して本発明のポリペプチドと競合する試験化合物を同定し、したがって、そのような候補化合物は、本明細書中に開示された本発明の他の方法のいずれにおいても有用となりうる。本発明の第11の態様において上記に議論されるように、任意の適切な試験化合物が使用されうる。
一般に、競合的阻害はアッセイによって測定され、該アッセイにおいてHA組成物は本発明のポリペプチドおよびスクリーニングされる試験化合物と混合される。一実施形態では、スクリーニングされる試験化合物は過剰量で存在する。ELISAに基づいたプロトコールは、そのような競合試験に使用するのに適している。ある実施形態では、本発明のポリペプチドを様々な量のスクリーニングされるべき試験化合物と(例えば1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90または1:100に)一定期間予め混合してからHA組成物に適用することができる。他の実施形態では、本発明のポリペプチドおよび様々な量のスクリーニングされるべき試験化合物は、HA組成物に曝露される間に混合される。任意の適切な検出手段が結合に使用されうる。一実施形態では、上記に議論されるように、本発明のポリペプチドが検出のためにタグ付けされる。この実施形態では、検出可能な標識は競合的試験化合物の存在下において減少することになる。試験化合物の非存在下における本発明の(標識された)ポリペプチドの反応性は、1つの適切な対照としての役割を果たすことも考えられる。好ましくは、競合的試験化合物は、過剰量で存在する場合、HAへの本発明のポリペプチドの特異的結合を、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%〜90%またはさらにそれ以上抑制するであろう。
HA結合試験のための例示の条件は、以下の実施例において開示されるように実行されうる。
本明細書中に開示された以上の態様/実施形態はすべて、文脈が明らかにそうでないことを述べていない限り、任意の他の態様/実施形態と組み合わせることができる。
実施例1.インフルエンザヘマグルチニンに結合するタンパク質の設計
要約
本発明者らは、標的巨大分子上の対象とする表面区画に結合するタンパク質を設計するための一般的なコンピュータ計算方法について述べる。実体のない(disembodied)アミノ酸残基と標的表面との間の良好な相互作用が同定され、新たに(de novo)設計された境界面を固定するために使用される。該方法は、1918年H1N1パンデミックウイルス由来のインフルエンザヘマグルチニン(HA)の基部上の保存された表面区画に結合するタンパク質を設計するために使用された。親和性成熟の後、設計されたタンパク質のうちの2つであるHB36およびHB80は、H1およびH5のHAに低nMの親和性で結合する。さらに、HB80は低pHで誘導されるHAの融合誘導性の立体配座変化を阻害する。1918/H1 HAとの複合体におけるHB36の結晶構造から、実際の結合境界面がコンピュータ設計モデルにおける結合境界面とほとんど同一であることが明らかになった。そのような設計タンパク質は、診断薬および治療薬の両方に有用となりうる。
序論
分子認識は生物学の中核をなすものであり、抗体のような高親和性結合タンパク質は診断および治療のいずれにとっても非常に貴重である(1)。対象とするタンパク質に結合する抗体およびその他のタンパク質を生産するための現行の方法には、免疫系またはライブラリ構築により生成された多数のバリアントのスクリーニングを伴う(2)。高親和性結合タンパク質のコンピュータを用いた設計は、分子認識の物理・化学的基礎についての現時点での理解の基本的試験であり、成功すれば、タンパク質表面上の特定区画の標的化が可能となるので、現行のライブラリを用いるスクリーニング方法を強力に補完するものとなろう。タンパク質相互作用のコンピュータ設計における近年の進歩は、相互作用特異性の切替え(3)、適度な親和性の複合体を生成する方法(4、5)、新規なタンパク質境界面の二面設計(6)、および無関係なタンパク質スカフォールド上に既知の重要残基をグラフトすることによる高親和性相互作用の設計(7)をもたらした。しかしながら、任意に選択されたタンパク質表面を標的とする能力は捉えがたいままであった。
インフルエンザは重大な公衆衛生上の課題を提示しており、既存の抗ウイルス薬(8)に抵抗性であるかまたは免疫系による中和を回避するウイルスと戦うために新たな治療法が必要とされている。ヘマグルチニン(HA)は、気道の内側を覆う細胞へのウイルスの侵入において大きな役割を果たすことから、薬剤開発の第1の候補である。ほとんどの抗体はHAの急速に変化する頭部に結合するが、最近、すべてのグループ1インフルエンザ株において保存されている(11)HA基部の領域に結合する2つの抗体CR6261およびF10が、構造的に特徴解析された(9、10)。本明細書では、本発明者らは、タンパク質間相互作用をde novo設計するためのコンピュータ計算方法について述べ、該方法をインフルエンザHAの保存された基部領域への高親和性結合剤を設計するために使用する。
コンピュータ計算による設計法
コンピュータ計算による設計戦略を考案するにあたり、本発明者らは解離可能なタンパク質複合体に共通の特徴を考慮した。タンパク質複合体の形成時、タンパク質は、溶媒に曝露される表面積の平均〜1,600Åを埋没させる(12)。境界面は、典型的には、パートナータンパク質との高度に最適化されたファンデルワールス相互作用、水素結合相互作用および静電相互作用をなすいくつかの残基を含有し、これらの相互作用ホットスポットは結合エネルギーの大部分をもたらす(13)。
したがって本発明者らの戦略は、高い形状相補性と高度に最適化されたホットスポット様の残基相互作用のコア領域との両方を有する境界面の設計に重点を置いている。本発明者らは、スカフォールドタンパク質に設計改変を施して、高親和性相互作用および高い形状相補性を、2ステップ(図1を参照)すなわち:(i)実体のないアミノ酸残基を標的表面に対してコンピュータ上でドッキングまたは位置決めし、該標的表面とのエネルギー的に好ましい配位を同定するステップ、および(ii)重要な残基を組み込むスカフォールドタンパク質の形状相補的な配位を計算するステップ、において付与した。
HA結合性タンパク質の設計
中和抗体によって認識されるHA基部上の表面は、エピトープへの結合に厳格な立体障害を設ける2つのループが側方に位置する、疎水性の溝で構成されている(図2A−B)(14)。本発明者らの設計プロトコール(図1)の第1のステップにおいて、コンピュータ上のドッキングにより見出される実体のない残基は3つの領域内に分かれる(HS1、HS2およびHS3;図1)。HS1では、Phe側鎖は、HA第2鎖(HA2)のTrp21とともにエネルギー的に好ましい芳香族スタッキング相互作用を形成する(HA残基の番号付けはH3サブタイプの配列番号付けの慣例に対応する)。HS2では、非極性残基のIle、Leu、Met、Phe、およびValが、疎水性の溝およびHS1の両方とともに有利なファンデルワールス相互作用を生じる(図1)。HS3では、Tyr側鎖が、HA2のAsp18との水素結合およびHA2のAヘリックスとのファンデルワールス相互作用を形成する。HS3のTyrは、HAとCR6261 Fabとの複合体の構造において抗体上に観察されるTyr残基の立体配座に類似しているが;HS1およびHS2の相互作用は該抗体構造には見出されない(9、10、15)。
第2のステップでは、本発明者らは、実体のないホットスポット残基および基部領域に相補的な形状を支持することが可能なスカフォールド用に、実験的操作が容易であるように選択された一連の865個のタンパク質構造を探索した(16)。各スカフォールドタンパク質は、フィーチャマッチングアルゴリズムPatchDock(商標)(17)を使用して基部領域に対してドッキングされ、各スカフォールドについて何百もの適合する結合モードが同定された(合計で260,000)。その後、これらの粗視化(coarse-grained)結合モードは、スカフォールドタンパク質の主鎖と可能な限り多くのホットスポット残基との両立性を最大限にする配位を支持するポテンシャル関数を用いて、RosettaDock(商標)(18)を使用して精密化された。次に、ホットスポット残基ライブラリからの残基がスカフォールドに組込まれた。最初に、HS1の各Phe立体配座については、ホットスポット残基の4Å以内に主鎖の原子を備えたスカフォールド残基が同定された。これらの候補部位の各々について、スカフォールドタンパク質はホットスポットの主鎖と同一空間を占めるように配置され、残基は明示的にモデル化され、剛体(rigid-body)の配向は最小化された。立体化学的衝突が観察されず、かつPheがHA2のTrp21およびThr41と接触した場合(図2B)、第1のホットスポットの配置は成功と考えられ;そうでない場合は、別のHS1 Phe立体配座が選択されて該処理過程が繰り返された。HS1を用いた各成功例について、スカフォールドタンパク質中の部位であって該部位からHS2相互作用が実現されうる部位に非極性残基が組み込まれ、スカフォールドタンパク質表面の残り部分は次いでRosettaDesign(商標)(19)を使用して再設計された。
さらにHS3相互作用を含めてタンパク質を設計することは、考慮されるべき残基配置の多数の組み合わせにより、さらに困難であった。3つのホットスポット領域すべてを含む設計物を生成するために、本発明者らは、HS3のTyr残基の主鎖上にスカフォールドタンパク質を重ね合わせることから出発した(上記のPhe HS1残基と同様)。本発明者らは次に、HS1およびHS2の残基に最も近く、かつ該残基に対して最もよく整列される、スカフォールドタンパク質上の2つの部位を探索した。次いでこれらの部位は、HS1の場合のPhe、およびHS2の場合の非極性残基に対して同時に設計された。その後、RosettaDesign(商標)(19)が使用されてスカフォールドタンパク質上の境界面の残り部分が再設計され、HAから10Åの距離範囲内の配列変更が可能となった。
実験的かつ構造的特徴解析
2つのホットスポット残基の概念を使用する合計51個の設計物、および3つの残基の概念を使用する37個の設計物が、試験のために選択された。該設計物は79個の異なるタンパク質スカフォールドに由来し、平均11個の突然変異によりスカフォールドとは異なっている。該設計物をコードする遺伝子が合成され、酵母ディスプレイベクター内にクローニングされ、酵母菌株EBY100の形質転換に用いられた(20、21)。誘導すると、設計タンパク質は、Aga2p酵母タンパク質の付着サブユニットとC末端c‐mycタグとの間の融合物として細胞表面にディスプレイされる。設計物を発現する細胞は、1μMのビオチン化されたSC1918/H1(A/サウスカロライナ/1/1918(H1N1))HAエクトドメインとともにインキュベートされ、洗浄され、フィコエリトリンとコンジュゲートされたストレプトアビジンおよびフルオレセインとコンジュゲートされた抗c‐myc抗体で二重標識された。結合は、HAへの結合および設計物の表面ディスプレイの同時的調査を可能にする2つの蛍光タグを用いたフローサイトメトリーによって、測定された。
73個の設計物が表面ディスプレイされ、2個がHA基部領域について再現性のある結合活性を示した(22)(モデルに関しては図2C−Fを参照)。一方の設計物であるHA結合剤(inder)36(HB36)は、2残基ホットスポットを用いたものであり、200nMの見かけの解離定数(K)でHAに結合した(23)(図2G、図6)。出発物質のスカフォールドである、構造ゲノミクス標的APC36109は、バチルス・ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)由来の機能未知のタンパク質(PDBエントリー番号1U84)であって、HAには結合せず(図6)、このことは結合がHB36の設計表面を介していることを示している。第2の設計物であるHB80は、3残基ホットスポットを用いたものであり、HAにごく弱く結合した(図2H)。この設計物の由来元のスカフォールドである、キンギョソウ(A. Majus)由来のRAD転写因子MYBドメイン(PDBコード:2CJJ)(24)も、HAに結合しなかった(図7)。
該2つの設計物のコンピュータ計算モデル(図2C‐F)において、ホットスポット残基は、天然のタンパク質‐タンパク質境界面で観察されることの多い、極性かつ荷電した残基の外輪を備えた疎水性残基の同心配置構成により強化されている。いずれの設計物も、HAの疎水性の溝の中に嵌合するヘリックス上に一列の疎水性残基を呈する。該複合体はそれぞれ、ほぼ1,550Åの表面積(合計)を埋没させるが、これは解離可能なタンパク質相互作用の平均値に近く(12)、かつ2つの中和抗体の各々によって埋没する総表面積(9、10)よりわずかに大きい。これらの設計物のヘリックス結合モードは、抗体が結合した構造物で観察されるループを基にした結合とは非常に異なっている。
親和性成熟
コンピュータ設計のプロトコールは完全とはほど遠く、設計物を導くエネルギー関数は多数の近似を含み(25)、立体配座のサンプリングは不完全である。本発明者らは、設計プロトコール中の欠点を特定するために親和性成熟を使用した。HB36およびHB80バリアントのライブラリが、境界面の単一部位の飽和突然変異誘発によって、またはエラープローンPCR(epPCR)によって生成され、酵母表面ディスプレイを使用したHAへの結合に関する2回の選択に供された(21、24)。
いずれの設計結合剤についても、選択は、親和性を増大させ、かつ基礎をなすエネルギー関数をいかに改善するかについての洞察を提供する、少数の置換に収束した。巨大分子相互作用のエネルギー学への重要な寄与には、原子の重なり合いに起因する短距離の反発相互作用、荷電原子および極性原子の間の静電相互作用、ならびに溶媒との良好な相互作用の排除(脱溶媒和)がある。親和性を増大させる置換は、初期設計の計算において上記の寄与の各々をいかにしてより良好にモデル化するかを指し示している。
反発相互作用:HB36について、等価体Thr/Valを用いたAla60の置換が見かけの結合親和性を25倍高めた(すべての設計バリアントについての見かけのKは表5に記載されている)。
これらの置換は、設計タンパク質とHA表面との間の空間を満たすが、HB36内部の立体化学的衝突によって不利になるため初期設計物には含まれなかった(図3A)。しかしながら、主鎖の最小化により上記衝突は容易に軽減され、その結果該置換についてより高い親和性が予測された。HB80については、Met26Thr突然変異が出発設計物と比較して結合を顕著に高めた。モデル化から、Met26はTyrホットスポット残基の立体配座に不利であることが示されたが、このことはより小さな残基への置換に合理的説明を与える(図3B)。設計アルゴリズムに主鎖の最小化をより直接的に組み込むことにより、最初からそのような有利な相互作用を同定することが可能になるはずである一方、ホットスポット残基が設計物中で完全に緩んだ状態にあることを確実にすれば不利な相互作用は排除されるであろう。
静電作用:HB36では、64位におけるLysへの置換が、HAの保存された基部領域付近の酸性ポケットに隣接して相補的な電荷を設け(図3C);HB80では、Asn36Lys置換が、HA2の陰性のAsp18から6.5Åに陽電荷を位置づける(図3D)。これらの置換はすべて、複合体中の静電気的相補性を増強する。リジンは、水素結合形成の範囲の外側の原子間の表面‐静電相互作用の規模が大きく低減されるので、設計計算においては選択されなかった。静電作用モデルの改善は、より親和性の高い結合剤の設計を最初から可能にするであろう。
脱溶媒和:HB36では、Asp47における8つの異なる置換が、初期設計物と比較して見かけの親和性を1桁以上増大させ(表6)、親和性の最も高い置換は結合親和性をおよそ40倍増大させたAsp47Serであった。この部位における不利な荷電基の設計は、恐らくはHA2の脂肪族のIle18によるAsp47の脱溶媒和のエネルギーコストの過小評価に由来し(図3E)、置換体は、このAspを、結合時に脱溶媒和するためにさほどコストのかからない残基に置き換えることにより、上記の誤りを改善する。HB80では、Asp12Gly置換が、近隣にあるHA2のIle56による脱溶媒和を軽減する(図3F)。溶媒和モデルにおける改善を用いれば、有害なAsp残基は出発設計物中には存在しないであろう。
有利な置換が組み合わされ、該タンパク質は大腸菌においてHisタグを備えて発現され、ニッケル親和性およびサイズ排除クロマトグラフィーにより精製された。Asp47SerおよびAla60Val置換を組み込んだバリアントHB36.3は、表面プラズモン共鳴(SPR;)、ELISA、およびサイズ排除カラムでの同時溶出(データは示さない)によって確認されるように、SC1918/H1 HAに結合した。Asp47Ser、Ala60ValおよびAsn64Lysを組み込んだHB36.4バリアントは、SPRにより測定された22nMの解離定数および7・10−3−1の解離速度(off-rate)でSC1918/H1 HAに結合した(表7)。過剰量のCR6261 FabとともにコインキュベートすることによりHAへの結合は消失したが(図3G)、これはHB36.4がHA上の同じ基部エピトープのすぐ近くに結合することと一致している。HB80の設計については、親和性を増大する突然変異の組み合わせは酵母での表面発現を低減し、安定性に乏しいことが示された。したがって、本発明者らはC末端伸長部を削除し(Δ54‐95)、結合親和性の著しい損失を伴わずに該設計物の表面発現を大きく押し上げた(図8)。この短縮化のほかにAsp12Gly、Ala24Ser、Met26ThrおよびAsn36Lys置換を組み込んだHB80.3は、SPRによれば4・10−2−1の解離速度を備えたK=38nMを有する。HB36.4と同様に、CR6261 Fabを伴ったHAとのコインキュベートによりHB80.3への結合は消失し(図3H)、これは設計された結合モードと一致する。
親和性成熟がなされた設計物上のいくつかのコア部位の部位特異的アラニン突然変異導入はHA結合を部分的または完全にノックアウトし(表8、図9)、このことは設計された境界面のコンピュータ計算モデルを支持している(26)。更に、より高い親和性についての選択の間に、設計された結合モードと一致しない突然変異は見出されなかった。
HB36.3‐SC1918 HA複合体の結晶構造
SC1918 HAエクトドメインとの複合体におけるHB36.3の結晶構造は3.1Å分解能まで決定された。探索モデルとして1918/H1 HA構造のみを使用した分子置換(結晶の非対称単位でタンパク質質量のおよそ86%)の後、HB36.3がその領域内に配置されることは疑いないと考えられるHA基部領域の標的表面付近にHB36.3について明瞭な電子密度が観察された。配向は、HA上の疎水性の溝の中にパッキングされる主要な認識ヘリックスの改変表面と共に、設計された結合モードとほとんど同一であった(図4A)。設計された側鎖についてバイアスなしの密度を得るために、HB36.3の由来元の天然構造(PDBエントリー:1U86)が手作業で電子密度マップにフィッティングされ、接触側鎖はそのβ‐炭素まで切り詰め処理がなされた。結晶学的精密化の後、HB36.3上のほとんどの接触残基の側鎖について電子密度が明らかとなり、Phe49、Trp57、Phe61およびPhe69について有力な回転異性体の割り当てが可能となった。このバイアスなしの密度は、上記4つの疎水性側鎖がすべて、設計されたモデルにおけるように位置決めされうることを明白に示している(図4B)。Met53側鎖は設計モデルと一致しているが(図4C)、他の回転異性体が該マップにフィッティングされることも考えられる。Met56については、非常に弱い側鎖密度しか観察されなかった。全体として、該結晶構造は、いずれの接触部位においても著しい偏りを伴うことなく、設計された境界面と非常に良く一致している。
かなり低い(73個の表面ディスプレイタンパク質のうち2個)設計成功率および出発時の親和性を考えると、設計されたHB36.3‐SC1918 HA複合体と実験的に決定された該複合体との間の原子レベルの一致は、非常に有望であるとともに、現行のエネルギー関数および設計方法論がその欠点にもかかわらずタンパク質間相互作用の基本的な特徴を捕らえていることを示唆している。
交差反応性および阻害活性
HB36.3が接触する表面は、接近可能でありかつほとんどのグループ1インフルエンザウイルスのHAにおいて高度に保存されており、他のH1 HAだけでなく他のHAサブタイプにも結合する能力を有する可能性があることが示唆される。実際、HB36.3によるA/サウスカロライナ/1/1918(H1N1)およびA/WSN/1933(H1N1)への結合はゲル濾過(データは示さない)により溶液中で、加えてHB36.4によるA/ベトナム/1203/2004 H5サブタイプへの高親和性結合は酵母ディスプレイにより、容易に検出可能である(図10)。
HAとの複合体におけるHB80の結晶構造は得られていない一方、突然変異のデータおよび抗体との競合の結果は、HB80も、HB36およびCR6261と重複する、意図された標的表面に結合することを示唆している。従って、HB80.3も高い交差反応性を有すると予想され、かつ、A/ベトナム/1203/2004 H5 HAに(図10)、ならびにバイオレイヤー干渉法によればH1、H2、H5およびH6サブタイプに(図5A、B)、高い親和性で結合する。全般に、HB80の結合パターンはCR6261の結合パターンに酷似しており、試験されたほとんどのグループ1のHAに結合するとともに、グループ2のHAへの検出可能な結合は伴わない。
抗体CR6261は、宿主細胞のエンドソーム膜とのウイルスエンベロープの融合を推進するpH誘発性のHAリフォールディングを阻止することにより、インフルエンザウイルスの複製を阻害する。HB80.3およびCR6261の結合部位の間の広範囲な重複、ならびにSC1918 HAに対するその高親和性を考えると、HB80.3もこの立体配座変化を阻止するであろうことは妥当であるように思われた。実際、HB80.3はH1およびH5のHA両方においてpH誘発性の立体配座変化を阻害し(図5Cおよび図11)(10)、この設計物が複数のインフルエンザサブタイプに対するウイルス中和活性を有する可能性が示唆される(27)。
実施例1に関する参照文献および注記
1. H. Ledford, Nature 455, 437 (2008).
2. R. A. Lerner, Angew Chem Int Ed Engl 45, 8106 (2006).
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4. R. K. Jha et al., J Mol Biol 400, 257 (2010).
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6. J. Karanicolas et al., Mol. Cell in press, (2011).
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10. D. C. Ekiert et al., Science 324, 246 (2009).
11. グループ1は、16個のHAサブタイプのうち10個:H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13およびH16を含む。グループ2は残り6個のサブタイプ:H3、H4、H7、H10、H14およびH15を含む。
12. L. Lo Conte, C. Chothia, J. Janin, J Mol Biol 285, 2177 (1999).
13. T. Clackson, J. A. Wells, Science 267, 383 (1995).
14. M. G. Rossmann, J Biol Chem 264, 14587 (1989).
15. 他のホットスポット残基(HS1およびHS2)は、その立体配座または同一性において、結晶構造中に観察された側鎖とは異なっていた。ホットスポット残基はそれぞれ、あらゆる立体配座を構築することによりさらに多様化され、該立体配座の末端原子は上記にモデル化されたものと一致した。例えば、HS3については、これらは芳香環および水素結合の位置を一致させたあらゆるTyr立体配座で構成された。この多様化ステップは、ホットスポットライブラリ内の各残基について主鎖部位の「ファン(fan)」を生じた。
16. スカフォールドセット内のタンパク質はジスルフィドを含有せず、大腸菌で発現され、モノマーを形成することが予想された(補足情報を参照)。
17. D. Schneidman-Duhovny, Y. Inbar, R. Nussinov, H. J. Wolfson, Nucleic Acids Res 33, W363 (2005).
18. J. J. Gray et al., J Mol Biol 331, 281 (2003).
19. B. Kuhlman et al., Science 302, 1364 (2003).
20. J. Chen, J. J. Skehel, D. C. Wiley, Proc Natl Acad Sci USA 96, 8967 (1999).
21. G. Chao et al., Nat Protoc 1, 755 (2006).
22. 第3の設計物HB35は低μΜのみかけの親和性でHAに結合した;しかしながら、結合は、CR6261 Fabを伴ったHAとのコインキュベートでは部分的にしか消失せず、HAの基部領域上の標的表面と最大でも部分的にしか接触しないことが示唆され、よってこの設計物はさらなる検討から除外された。少数の他の設計物は、弱く、かつ再現性が不完全ではあるがHAに結合した。
23. 本発明者らは2つの主要な方法を使用して、すなわち:酵母表面にディスプレイされた設計物に対するHAの滴定により、また、表面プラズモン共鳴を使用する速度論的測定値および平衡測定値の両方のフィッティングにより、解離定数を記録した。Kdの決定において該方法の間に相違があるので、酵母表面ディスプレイ滴定に由来する測定値がみかけのKdとして記録されており、該測定値は定性的に考察されるべきである。
24. C. E. Stevenson et al., Proteins 65, 1041 (2006).
25. R. Das, D. Baker, Annu Rev Biochem 77, 363 (2008).
26. アラニンスキャン突然変異は以下すなわち:HB36.3についてはPhe49、Met53およびTrp57;HB80.1についてはPhe13、Phe25およびTyr40(表S4および補足結果)であった。
27. HB36.4およびHB80.3はpH7.5において非常に類似した解離定数および速度論的解離速度(kinetic off-rate)を有しているにもかかわらず、HB36.4は同一のアッセイ条件下でH1 HAのpH誘発性の立体配座変化を阻止することができなかった(図11)。
28. コンピュータ設計物は、ロゼッタ@ホーム(Rosetta@Home)およびアルゴンヌ国立リーダーシップコンピューティング施設(Argonne National Leadership Computing Facility)の参加者によって惜しみなく提供された資料について生成された。X線回折データセットは、スタンフォード・シンクロトロン放射光源(Stanford Synchrotron Radiation Lightsource)ビームライン9‐2、および新型光子源(Advanced Photon Source)ビームライン23ID‐B(GM/CA‐CAT)で収集された。座標および構造因子はエントリー番号3R2Xとしてプロテインデータバンク(PDB)に寄託された。
添付資料
コンピュータ設計の方法論
図1は、該手法のフローチャート式全体図を提供する。この方法は、相互作用するタンパク質対の両側設計のために近年述べられた手法の一般化である(S1)。該方法では、アンキリン反復タンパク質および標的タンパク質の表面が、周辺の両立可能な相互作用により強化されたホットスポット領域を導入するために同時に突然変異導入された。該方法におけるホットスポット領域は、分子間水素結合を形成する芳香族残基を含むものであった。本発明者らの手法は、ホットスポットまたはスカフォールドタンパク質の性質に関する仮説を立てない。本発明者らは、あらゆる種類の高親和性相互作用をなす残基で構成されるホットスポット領域を生成し、該領域を様々なスカフォールドタンパク質に組み入れる。これらの一般化により、潜在的にはあらゆるタンパク質表面の結合剤を設計することが可能となる。
ホットスポット残基の生成
個々の残基は、抗体フラグメント(Fab)CR6261に結合したインフルエンザA/SC/1918/H1ヘマグルチニン(以後HAと呼ばれる)の構造(S3)を出発点として、RosettaDock(商標)(S2)を使用してHAの標的表面に対してドッキングされた。本発明者らは、HAの表面に対し、HA2のTrp21(プロテインデータバンク(PDB)エントリー番号3GBNのようなH3 HAの配列番号付け)の近傍に疎水性残基Leu、Val、Ile、Phe、Trp、Met、およびTyrを位置付けた。Pheの立体配座だけが該表面との十分な接触を形成することが可能であり、他の残基は左側に小さな空隙を残すかまたは極性原子を埋没させるかのうちいずれかであった。芳香環の中心に関して互いにおよそ60°回転されたPheの有力な2つの立体配座がホットスポット残基1(HS1)として選択された(図1)。
第2のホットスポット残基(HS2)の部位を計算するために、本発明者らは、選択される残基が、HAとともに、加えてHS1とともに、エネルギー的に有利な相互作用を形成することが確実であるように、配置されたHS1由来の2つの主要なPhe立体配座を伴って、同じ疎水性残基セットをHA表面に対してドッキングした。この探索により、HS2についてLeu、Val、Ile、Phe、およびMetの低エネルギーの配置が得られた。
第3に、Tyr、AsnおよびGln残基が、この場合もPhe HS1残基を含めてThr41にかかるHA2のAヘリックス領域(図1)に対してドッキングされた。本発明者らは、ドッキングされた各残基について、HA2のAsp19の主鎖カルボニルへの水素結合を形成することを必須とした。単一の有力なTyrの配向のみが必要な水素結合を形成し、境界面で極性基を埋没させず、かつAヘリックス(図1)との有利なファンデルワールス接点を形成するものと同定された。
RosettaDock(商標)によって同定されたすべての立体配座は、HA表面に最も近い側鎖原子から始めて逆の回転異性体を生成することにより多様化された。これらの逆の回転異性体は、Rosetta(商標)コマンドラインフラグ−ex1 −ex2を用いてダンブラック(Dunbrack)ライブラリ(S4)のベースの回転異性体から1標準偏差離れた回転異性体を含むように拡張された。
一連のスカフォールドタンパク質
本発明者らは以下の基準すなわち:ジスルフィド、RNAもしくはDNA分子を含まないこと、2.5Åより高い分解能でX線結晶解析により解明されたこと、大腸菌で発現されたことが報告されていること、タンパク質四次構造サーバ(Protein Quaternary Structure server)(S5)によりモノマーであると予測されること、80〜250アミノ酸の単一ポリペプチド鎖を含むこと、に従って、2009年3月にPDBから一連の865個のタンパク質を選択した。該リストは70%の配列同一性で除外処理がなされた。各構造は十分な側鎖の再パッキングおよび最小化によりRosetta(商標)力場の中で精密化された。
標的エピトープに対するスカフォールドタンパク質の低分解能ドッキング
HAに関して形状相補性の高い配位のスカフォールドタンパク質を得るために、本発明者らはPatchDock(商標)のフィーチャ・マッチング・アルゴリズム(S6)を使用した。各スカフォールドタンパク質の、HA2のTrp21およびThr41と相互作用しない立体配座を除外するために、制約が使用された。残った立体配座は、4Åの平均二乗偏差(RMSD)でクラスター分けされた。PatchDock(商標)は初期設定パラメータを用いて実行された。
主鎖の制約
ホットスポット残基ライブラリは、HAに対するスカフォールドタンパク質の配位であってこれらのホットスポット残基の配置に対応することが可能なものを同定するために使用される。ライブラリ内のコンピュータ計算された各ホットスポット残基は、スカフォールドタンパク質上の部位に関する近似位置、ならびにCα‐CβおよびC‐Nベクトルの配向を包含する。各ホットスポット残基hおよび各スカフォールド部位iについて、本発明者らは、立体配座サンプリングをホットスポット残基の配置に有利に働くであろう配位にバイアスするために、スコアリング制約R を公式化する:
上記式中、ΔGはホットスポット残基hに関して計算された結合エネルギーであって、常にマイナスであり、かつすべての設計軌道において−3であるように選択され;β、α、C、およびNは、Cβ、Cα、C、およびN原子の座標であり;k(ばね定数)は便宜的に0.5に設定され;minは制約がマイナスまたはゼロであることを確実にするミニマム関数であり;角括弧内の量は関連するベクトルの点乗積であり;
は規格化定数である。
この形式の制約関数(restraint function)は、ホットスポット残基のCβとスカフォールド上の部位との間の距離が0であり、かつCα‐CβベクトルおよびC‐Nベクトルが一致する場合に、最小になる。したがって、所与の制約は、スカフォールド上の潜在的なグラフト部位があらかじめ計算されたホットスポット残基と完全に整列するときに最もよく満たされる。ホットスポットhに関する部位iの2つのベクトルのうちどちらかの配向が90°を上回る場合、R は0に設定される。n個のホットスポット残基のライブラリはこのようにn個の制約を包含する。その後、残基iはそれぞれ上記n個の制約の中で最も小さなものを割り当てられる:
(式2) R’=min(R
式2は次に、スカフォールド上の各アミノ酸部位iに最小の制約を割り当て、その結果、各スカフォールド部位は立体配座探索の間のいかなる時点でも最も適切なホットスポット制約によってのみ影響を受ける。
式2の値を求める際に必要とされるのはCβおよび主鎖原子の位置のみであるので、制約は、低分解能のモンテカルロ法に基づいたHA表面に関するスカフォールドタンパク質のドッキングにより効率的に計算されうる。重要なことには、制約は、式1が容易に微分可能であるので最小化の際に使用されうる。
ホットスポット残基の配置
本発明者らは、計算されたホットスポットを組み込むスカフォールドを設計するために2つの異なるプロトコールを使用した。より限定的な設計戦略は、3つのホットスポット残基(HS3にTyr、HS1にPhe、およびHS2に非極性残基)を組み込み、あまり限定的でない設計戦略は2つ(HS1にPhe、およびHS2に非極性残基)を組み込んだ。本発明者らは、設計の様々な段階で使用するための、ホットスポット残基を配置する3つの方法を開発した。各方法は、ホットスポット残基に導かれたドッキングおよびホットスポット残基ライブラリのうちの1つを用いた最小化から得られたスカフォールドタンパク質の配位を始点とする。Gly、Pro、およびジスルフィドで連結されたシステインを除いて、標的タンパク質から10Å以内にあるスカフォールドタンパク質上の境界面の残基は、ホットスポット残基を提供する機会を増大させるためにアラニンに縮小された。
方法1:理想的なホットスポット残基上へのスカフォールドの配置
ホットスポット残基ライブラリ内の残基は、ホットスポット相互作用の実現に最適な配位を規定する。所与の境界面スカフォールド部位について、本発明者らは、ライブラリ内の近隣のホットスポット残基の各々を順に処理し、スカフォールドタンパク質を回転かつ並進して該タンパク質をホットスポット残基の回転異性体と完全に一直線に並ぶようにする。Cβ原子が関連するホットスポット残基から4.0Åより遠いか、またはC‐NもしくはCα‐Cβベクトルがホットスポット残基との間で60°を上回る位置ずれを生じるスカフォールド部位について、この2つのパートナーの初期の形状相補性の高い配位を損ねないように優先順位付けがなされる。次に、本発明者らは、単にファンデルワールス衝突および回転異性体エネルギーについての懲罰的な(punitive)エネルギー項を考慮するにすぎない縮小された力場における、剛体の配向および配置されたホットスポット残基の側鎖自由度を、最小化する。配置されたホットスポット残基のエネルギーが1.0ロゼッタエネルギーユニット(R.e.u.)より大きい場合、この配置を廃棄する。
2残基ホットスポット設計物においては、本発明者らは、スカフォールドタンパク質にホットスポット残基Phe(HS1)を配置するためにこの戦略を使用した。3残基設計物の場合には、本発明者らはTyr(HS3)を配置するためにこの戦略を使用した。
方法2:スカフォールド部位へのホットスポット残基の配置
個々の境界面スカフォールド部位について、本発明者らは、ホットスポット残基に由来する単一の制約(式1)に即してスカフォールドタンパク質の配位を標的に関して最小化する。他のすべてのパラメータおよびカットオフは前セクションのとおりである。本発明者らは、2残基ホットスポット設計物にHS2を配置するためにこの戦略を使用した。
方法3:多数のホットスポット残基の同時配置
各ホットスポット残基ライブラリについて、本発明者らは、残りのホットスポット残基ライブラリと比較して、式1によって定義されるような最も有利な制約スコアを生じるスカフォールドタンパク質上の部位を同定する。次に、そのようなスカフォールド部位はそれぞれ適切なホットスポット残基ライブラリに結び付けられる。すべてのホットスポット残基ライブラリが異なるスカフォールド部位にマッチングしない場合、その標的に関する該スカフォールドの配位は廃棄される。成功すれば、本発明者らは同時に、関連するスカフォールド部位を、マッチングしたホットスポット残基ライブラリに含まれる該部位のアミノ酸に再設計する。ごく一握りの部位がこのスキームで設計され、かつ設計される残基が何であるかは関連するホットスポット残基ライブラリに基づいて制限されるので、設計ステップへの回転異性体以外の(off-rotameric)立体配座の追加はコンピュータ上で無理なく行うことができる。本発明者らは、3残基ホットスポット設計物においてHS1およびHS2を配置するためにこのスキームを使用した。
3残基ホットスポットを組み込むスカフォールドの設計における立体配座探索の強化
3残基配置手法(HS1〜3の組み込み)を使用する予備的試行から、この組み合わせの残基は、スカフォールドタンパク質に対する、スカフォールドセット内のタンパク質によって極めてまれにしか満たされない制約を含むことが明らかとなった。3残基ホットスポットを組み込むことが可能なスカフォールドを同定する機会を高めるために、本発明者らは、スカフォールドタンパク質の主鎖の立体配座およびその剛体の配向の両方の点で探索を強化するプロトコールを使用した。この強化は、同時配置法によって提供される計算効率の上昇により可能となった。
各スカフォールドについて、Tyr HS3残基に対するスカフォールドの配置が試行され、この配置はTyrホットスポット残基のエネルギーが1R.e.uを越えず、かつTyrがAsp19の主鎖カルボニルとの水素結合を形成した場合に成功と認められた。本発明者らは次に、4回の剛体ドッキング試行およびその後の(HS1〜2の)同時配置を行った。ホットスポット残基の同時配置の際に、主鎖の最小化およびバックラブ(backrub)(S7)が行われて配置成功の機会が高められた。後になってみると、主鎖の再モデル化は、この再設計タンパク質の主鎖が出発時の野生型構造との有意差を示さないように、HB80上へのホットスポット残基の配置成功にはほとんど貢献していなかったようである。
ホットスポットの外側の残基の再設計
すべてのホットスポット残基ライブラリからの残基の配置成功に続いて、標的タンパク質から最大でも10Åにあるスカフォールド部位がRosettaDesign(8)を使用して再設計される一方、標的タンパク質側鎖は再パッケージが可能である。Gly、Proおよびジスルフィドで連結されたシステインは、野生型配列のまま残される。再設計および最小化の3回反復が使用されて、軟反発ポテンシャルから始めて徐々に反発項を増加させながら、より高い親和性の相互作用が見出される可能性が高められた。最後の設計ステップは、設計される残基が高エネルギーの立体配座を仮定しないことを確実にするために、立体化学的衝突および回転異性体の変形に大きく重み付けした初期設定の全原子力場を使用する。
これらの設計シミュレーションの際、配置されるホットスポット残基の側鎖には、ホットスポット残基ライブラリ内に存在するような理想化されたホットスポット残基の座標に向かってバイアスがかけられる(参照文献(S9)の実装に類似)。このバイアスは、調和座標の制約として、典型的には側鎖の官能基を規定する3つの原子について実装され、実際には配置されたホットスポット残基の官能基を標的タンパク質に関する該官能基の理想化された部位へ向かって引き寄せる。例えば、これらの原子は、TyrおよびPheの芳香環の根幹(root)の3つの炭素原子になるであろう。配置される残基がスカフォールド上での該残基の部位において安定であることを確実にするために、全ての制約はシミュレーション中に徐々に取り除かれ、最後のパッキングおよび最小化のステップは制約のない状態で行なわれる。
得られるモデルはそれぞれ、計算された結合エネルギー(S10)、埋没表面積、および形状相補性(S11)に従って自動的にフィルタにかけられる。−15R.e.uを上回る結合エネルギー、1000Å未満の表面積、または0.65未満の形状相補性スコアを有することが予測された複合体は排除された。この段階では、設計物は手作業で再検討され、さらに厳しい評価のためにサブセットが選択された。その後既述された設計物中の修飾の後、該設計物のうち一部は上記フィルタに不合格の統計データを有していた。HB36(結合エネルギー=−24、Sc=0.66、埋没表面積=1620Å)およびHB80(結合エネルギー=−19、Sc=0.72、埋没表面積=1580Å)はいずれも上記フィルタを通過したが、同等の統計データを備えた他の設計物は通過しなかった。
境界面における残基変更数の最小化
上述のフィルタを通過した各設計物については、境界面における各アミノ酸置換の寄与は、残基をその野生型に一つずつ復帰させ、該復帰の計算上の結合エネルギーに対する影響を試験することにより判定される。設計された残基と復帰させた残基との間の結合エネルギーの差が、設計物に有利な0.5R.e.u未満である場合、該部位をその野生型に復帰させる。
すべての残基変更の報告が作成され、各案は手作業で再検討された。手作業による再検討のこの段階で、追加の変異が導入された。これらは典型的には、HAの荷電表面をより十分に補足するための周辺電荷の導入または除去を伴い、1設計物あたり5個を超える置換を通常は伴うことはなかった。
オリジナルのスカフォールドの配列の変更を最小限にするさらなる方法は、設計の全段階に配列制約を導入することで構成された。簡潔に述べると、野生型配列からの突然変異には、BLOSUM62マトリクス(S12)における該突然変異の距離に従ってペナルティが課せられた。これらの配列制約への重み付けは0.2に設定された。
結合エネルギー計算
参考文献(S10)を踏まえ、結合エネルギーは、結合状態および非結合状態における系全体のエネルギーの間の差異として定義された。各状態において、境界面の残基は再パッキングが許された。数値を安定にするため、結合エネルギー計算は3回繰り返されて平均がとられた。
形状相補性
形状相補性は、scプログラムを使用するCCP4パッケージv.6.0.2(S13)を使用して計算された。
実験による特徴解析
BirAの発現および精製
大腸菌ビオチンリガーゼ(BirA酵素)は、既報(S14)に類似の方法で、ただしN末端Hisタグを用いて発現および精製された。birA遺伝子は、プライマーDE389(5’‐agtcactaggtcatatgcatcaccatcaccatcacaaggataacaccgtgccactg‐3’(SEQ ID NO:195))およびDE390(5’‐agtcactaggtaagcttttatttttctgcactacgcagggatatttc‐3’(SEQ ID NO: 197))を使用して、大腸菌コロニー(野生型菌株MG1655)から増幅された。PCR産物はNdeIおよびHindIIIで消化され、同様に消化されたpET21aに連結されて、pDCE095が得られた。このベクターは、タンパク質発現のためにBL21(DE3)細胞の形質転換に用いられた。
BL21(DE3)/pDCE095細胞を、振盪フラスコにおいて低塩濃度LB培地中37℃でOD(600nm)約0.7まで増殖させ、次いで23℃に移行して終濃度1mMのIPTG(イソプロピル‐β‐D‐チオガラクトピラノシド)の添加により誘導させた。該培養物を誘導後23℃で約16時間インキュベートし、次いで遠心分離(3000g、10分)により収集した。1L培養物からのペレットは50〜100mLの溶解バッファー(50mMトリスpH8.0、300mM塩化カリウム、10mMイミダゾールpH8.0、ロッシュ(Roche)のEDTA非含有プロテアーゼ阻害剤カクテルタブレットを含む)に再懸濁され、細胞は溶解されてEmulsiFlex(商標)C‐3細胞破砕機(約100MPa(15kPSI))を2回通過させることによりホモジナイズされた。遠心分離(25,000g、約1時間)により溶解産物を清澄化した後、上清はNiNTA樹脂(キアゲン(Qiagen))とともにインキュベートされ、過剰量の溶解バッファーで洗浄され、結合したタンパク質が溶出された(50mMトリスpH8.0、300mM塩化カリウム、250mMイミダゾールpH8.0を使用)。濃縮および50mMリン酸カリウムpH6.5、5%グリセロール、0.1mMジチオスレイトール(DTT)へのバッファー交換の後、BirAはMonoQ(登録商標)カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare))に装荷され、0〜1M塩化カリウムの直線濃度勾配で溶出された。BirAを含有するフラクションが集め合わされ、濃縮され、ゲル濾過に供された。BirAタンパク質の最終的な収率はおよそ10mg/Lであり、SDS‐PAGEによる見積りでは>95%の純度であった。精製されたBirAタンパク質は、50mMトリスpH7.5、200mM塩化カリウム、5%グリセロール中5mg/mLに濃縮され、アリコートに小分けされ、液体窒素中で急速凍結され、−80℃で保管された。
ヘマグルチニンのクローニング、発現および精製
H3の番号付けに基づき、インフルエンザA型ヘマグルチニン(HA)の残基11〜329(HA1)および1〜176(HA2)に対応するcDNAが、基本的に既述(S3)のようにして、オーバーラップPCR法によりN末端側のgp67シグナルペプチド(アミノ酸配列:MVLVNQSHQGFNKEHTSKMVSAIVLYVLLAAAAHSAFA(SEQ ID NO:212))ならびにC末端側の三量体化ドメインおよびHisタグに融合された。三量体化ドメインおよびHisタグはトロンビン切断部位によってHAエクトドメインから隔てられた。ビオチン化HAについては、BirA標的ビオチン化部位(アミノ酸配列:GGGLNDIFEAQKIEWHE(SEQ ID NO:213))がHAとトロンビン部位との間に挿入された。得られたPCR産物はSfiIで消化され、独自のバキュロウィルストランスファーベクターpDCE198に挿入された。Bac‐to‐Bac(登録商標)システム(インビトロジェン(Invitrogen))を使用して組換えバクミド(bacmid)が生成され、ウイルスは、Cellfectin(登録商標)II(インビトロジェン)を使用して精製バクミドDNAをSf9細胞にトランスフェクトすることによりレスキューされた。HAタンパク質は、5〜10MOIの組換えバキュロウイルスを用いてHi5細胞(インビトロジェン)の懸濁培養物を感染させ、110RPMで振盪しながら28℃でインキュベートすることにより生産された。72時間後、培養物は4℃で2000gおよび10,000gの2回の遠心分離処理により清澄化された。分泌された可溶性HAを含有する上清は濃縮されて1×PBS(pH7.4)にバッファー交換された。Ni‐NTA樹脂を使用する金属親和性クロマトグラフィーの後、HAは特定の目的の必要に応じてさらに修飾および精製された(次のセクションを参照されたい)。この段階では、収率はHA単離物にもよるが典型的には1〜10mg/Lであった。
親和性成熟および結合試験のためのHAのビオチン化および精製
Ni‐NTA精製の後、C末端ビオチン化タグを備えたHAは総タンパク量約2〜5mg/mLまで濃縮された。該HAは、次の組成すなわち:100mMトリスpH8.0、10mM ATP、10mM MgOAc、50μMビオチンであって50mM未満のNaClを含有するバッファー中で、総タンパク質1mgあたり25μgのBirA酵素を添加することによってビオチン化された。ビオチン化反応物は37℃で1〜2時間インキュベートされた。この時点で、一部のHAはトリプシンで消化され(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs)、HA1mgあたり5mUトリプシン、17℃で16時間)、融合能を有するHA1/HA2形態を生じたが、大多数はHA0として未消化のままであった。ビオチン化HAはサイズ排除クロマトグラフィーによって精製され、約5〜20mg/mLまで濃縮された。
CR6261 Fabの発現および精製
CR6261の重鎖および軽鎖のFab領域をコードする遺伝子が合成され(ミスタージーン社(Mr. Gene))、オーバーラップPCR法によりgp67シグナルペプチドおよびC末端Hisタグに融合され、バキュロウイルス中で発現するためにpFastBacDual(インビトロジェン)にクローニングされた。ウイルス産生方法、High5細胞でのタンパク質発現、収集、およびNi‐NTA精製は、基本的にHAについて上述されたとおりであった。CR6261 Fabは、プロテインG親和性クロマトグラフィー(グリシンバッファーpH2.7で溶出);陽イオン交換クロマトグラフィー(MonoS(登録商標)樹脂、酢酸ナトリウムpH5.0、0〜500mM NaClの直線濃度勾配を使用);およびゲルろ過(10mMトリスpH8.0、150mM NaCl)よってさらに精製された。最終収率はおよそ15mg/Lであった。
結合剤スクリーニングの方法論
設計された結合タンパク質は、酵母表面ディスプレイ(S15)を使用して結合について試験された。酵母のコドンに最適化された、設計物をコードする遺伝子は、ジェンスクリプト社(Genscript)(ニュージャージー州ピスカタウェイ)に特別注文され、pETCON(商標)という名称の自家製酵母ディスプレイプラスミドのNdeI/XhoI部位間にサブクローニングされた。pETCON(商標)は、オリジナルの酵母ディスプレイプラスミドpCTCON(S16)に以下の修飾すなわち:(a)CD20コード領域のフレームシフト突然変異;(b)NheI部位のすぐ下流のNdel制限酵素切断部位;および(c)BamHI制限酵素切断部位のすぐ上流のXhoI‐Glyスペーサー配列、を備えたものである。完全長配列は請求により入手可能である。結合試験は、1μΜのビオチン化SC/1918/H1 HA1‐2エクトドメインを使用して、特記される場合を除いて基本的に既述(S15)のとおりに行われた。二次標識は、設計物の表面発現を観察するためには抗cmyc FITC(ミルテニーバイオテク(Miltenyi Biotec)、カリフォルニア州オーバーン)、ビオチン化抗原の結合を観察するためにはストレプトアビジン‐フィコエリトリン(インビトロジェン、カリフォルニア州カールスバッド)であった。結合シグナルは、サイトペイア社(Cytopeia)のinFlux(登録商標)セルソータまたはAccuri C6フローサイトメータのいずれかを使用して、励起用に488nmレーザーおよび発光用に575nmバンドパスフィルタ(適切に補正)を用い、ディスプレイしている細胞集団の平均フィコエリトリン蛍光として定量化された。
結合の陽性対照はCR6261 scFv Phe54Alaとした。CR6261 scFvは、鋳型としてCR6261 FabをコードするDNA(S17)を使用して、重鎖の可変領域を軽鎖可変領域に接合する(GlySer)リンカーにより構築された。scFvはpETCONのNdeI/XhoI制限酵素切断部位間に組込むための組換え部位を含めるためにさらに増幅された。Phe54Alaおよび他のすべての点突然変異はキュンケル(Kunkel)の方法(S18)で導入された。
親和性成熟
HB36の1回目:第一世代ライブラリは、設計されたHB36の遺伝子から、アミノ酸をコードするセグメント全体についてのエラープローンPCR(epPCR)により、またはHAから10Å以内にあるものとしてモデル化される27残基中22残基についての単一の部位飽和突然変異誘発により構築された。本例および他の場合において、epPCRは、ストラタジーン(Stratagene)のGeneMorph(商標)IIランダム変異誘発キット(アジレント(Agilent)、カリフォルニア州)を使用して、また部位飽和突然変異誘発はキュンケルの方法(S19)により行われた。ライブラリ全体の大きさは3e5であった。本発明者らは、これらのライブラリを酵母ディスプレイ選択の2回のソートに供し、ソート1については50nM、ソート2については10nMのHA1‐2で細胞を標識した。親和性を>10倍に改善したAsp47XおよびAla60Val/Thr突然変異が回収された。最良の組み合わせが2回目の開始に使用され、該組み合わせはHB36 Asp47Ser Ala60Val(HB36.3)であった。
HB36の2回目:第二世代ライブラリは、HB36.3の遺伝子から、epPCRを使用して1遺伝子当たり2±1個の突然変異で構築された。合計4回の酵母ディスプレイソートが5.4e6の大きさのライブラリについて行われた。第1のソートについては、細胞は5nMのHA1‐2で標識されてゲーティングされ、該集団の上位5%が収集された。第2および第3のソートについては、細胞は10nMのHA1‐2で標識され、次いで1mg/mLのフラクションVウシ血清アルブミン(シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス)を含んだリン酸緩衝生理食塩水で徹底的に洗浄された。その後、細胞は1μΜの可溶性HB36.3とともに22℃で40分間インキュベートされた。第4のソートは60分間の解離速度(off-rate)インキュベーションとともに行われた。この回で選択されたクローンはすべて突然変異Asn64Lysを備えていた。
HB80の1回目:第一世代ライブラリは、設計されたHB80の遺伝子から、1遺伝子当たり突然変異2±1個の突然変異荷重を使用するepPCRにより構築された。形質転換体1.6e6個のライブラリが、1μΜ HA1‐2の標識濃度および全3回のソートを使用して選択に供された。本発明者らは突然変異体Met26Val/ThrおよびAsn36Lysを回収し、その各々は親和性を>10倍改善した。これらの突然変異HB80 Met26Thr Asn36Lysと54位以降の切端との組み合わせ(HB80.2と命名)をコードする遺伝子は、次回の選択の出発配列であった。
HB80の2回目:HB80.2遺伝子を出発点として、1遺伝子当たり突然変異2±1個の突然変異荷重を備えたepPCRライブラリが酵母の形質転換に用いられ、2e4個の形質転換体が得られた。細胞は、3nM(ソート1)および5nM(ソート2&3)のHA1‐2で標識されてゲーティングされ、細胞の上位4〜5%が収集された。選択されたクローンはすべてAsp12GlyまたはAla24Ser突然変異を有していた。
タンパク質設計物の発現および精製
設計物をコードする遺伝子はpET29b発現ベクター(EMD、ニュージャージー州ギブズタウン)にサブクローニングされ(NdeI/XhoI)、大腸菌のRosetta(商標)(DE3)ケミカルコンピテントセルの形質転換に用いられた。タンパク質発現は、スタディア(Studier)の自己誘導法(S20)を使用して誘導された。18℃で24時間の発現の後、細胞はペレット化され、HBSバッファー(20mM Hepes、150mM NaCl(pH7.4))に再懸濁され、超音波処理されて細胞溶解物を放出した。遠心分離による清澄化に続き、上清は精製用のニッケルカラムにアプライされた。タンパク質はHBS中250mMのイミダゾールにおけるステップ溶出により溶出された。Superdex(登録商標)75カラムでのサイズ排除クロマトグラフィーがHBSバッファー中への最終精製ステップとして使用された。
表面プラズモン共鳴(SPR)データおよび分析
SPRデータはすべてビアコア社(Biacore)のモデル2000(ビアコア(Biacore)、スウェーデン国ウプサラ)で記録された。ストレプトアビジン(SA)でコーティングされたチップ(ビアコア)は、200または400レスポンスユニット(RU)のビオチン化SC/1918/H1 HA1‐2エクトドメインでコーティングされた。ブランクのフローセルおよび200RUのビオチン化リゾチームでコーティングされたフローセルが陰性対照として使用された。流速50μL/分で解離時間900秒とした150μLの設計タンパク質が、全体を通して使用された。少なくとも8通りのタンパク質濃度が使用されて速度論的かつ平衡論的フィッティングが決定された。結合反応速度論は1:1ラングミュア結合モデルを使用して評価された。タンパク質は、SAチップ上への非特異的吸着を最小限にするために、0.1%(v/v)のP20界面活性剤および0.5mg/mLのカルボキシメチルデキストランナトリウム塩(ビアコア、スウェーデン国ウプサラ)を含んだHBSバッファー中に含められた。標準的なダブルバックグラウンド減算値を使用してデータを大域的にフィッティングするために、Scrubber2ソフトウェア(ウェブサイトcores.utah.edu/interaction/を参照)が使用された。
バイオレイヤー干渉法による結合剤交差反応性試験
一連の代表的なHA単離物に対するHB80.3およびCR6261 Fabの結合は、Octet Red(商標)測定器(フォルテバイオ社(ForteBio, Inc.))を使用してバイオレイヤー干渉法によりアッセイされた。バイオレイヤー干渉法は、概念的には、対象とするタンパク質が表面上に固定化され、次いで溶液中の潜在的結合パートナーに曝露される、表面プラズモン共鳴実験に類似している。固定化タンパク質への分析物の結合は該バイオセンサの光学的性質を変化させ、結合表面から反射される光の波長の変化をもたらす。この波長の変化はリアルタイムで測定可能であり、会合速度および解離速度、ならびにしたがってKの測定を可能とする。上述のようにして精製されたビオチン化HAがこれらの測定に使用された。1×カイネティクスバッファー(1×PBS(pH7.4)、0.01%BSA、および0.002%Tween(登録商標)20)中約10〜50μg/mLのHAは、ストレプトアビジンでコーティングされたバイオセンサ上に装荷され、様々な濃度のHB80.3またはCR6261 Fab溶液とともにインキュベートされた。結合データはすべて25℃で収集された。該実験には、5つのステップすなわち:1.ベースラインの取得(60秒);2.センサへのHAの装荷(180秒);3.第2のベースラインの取得(180秒);4.konの測定のための設計結合剤の会合(180秒);および5.koffの測定のための結合剤の解離(180秒)、が含まれた。各結合剤について4〜6通りの濃度が、100nMを最高濃度として使用された。ベースラインおよび解離のステップはバッファーのみの中で行なわれた。本実験で使用されるすべてのタンパク質の配列は、以下の表10としてFASTA形式で入手可能である。
結晶化のためのHB36.3の発現および精製
pET29a‐HB36.3構築物を担持するRosetta(商標)2(BL21/DE3)細胞を、振盪フラスコにおいて低塩濃度LB培地中37℃でOD600約0.7まで増殖させ、次いで18℃に移行して1mM IPTGの添加により誘導させた。培養物は、タンパク質発現のために18℃で一晩インキュベートされ、次いで遠心分離(3000g、10分)により収集した。1L培養物からのペレットは50〜100mLの溶解バッファー(50mMトリスpH8.0、300mM NaCl、10mMイミダゾールpH8.0、ロッシュ(Roche)のEDTA非含有プロテアーゼ阻害剤カクテルタブレットを含む)に再懸濁され、細胞は溶解されてEmulsiFlex(商標)C‐3細胞破砕機(約100MPa(15kPSI))を2回通過させることによりホモジナイズされた。遠心分離(25,000g、約1時間)により溶解産物を清澄化した後、上清はNiNTA樹脂(キアゲン(Qiagen))とともにインキュベートされ、過剰量の溶解バッファーで洗浄され、結合したタンパク質が溶出された(50mMトリスpH8.0、300mM NaCl、250mMイミダゾールpH8.0を使用)。溶出物質は10mMトリスpH8.0、50mM NaClにバッファー交換され、MonoQ(商標)陰イオン交換カラムに装荷され、50〜500mM NaClの直線濃度勾配で溶出された。HB36.3を含有するピークフラクションが集め合わされてゲル濾過に供された。HB36.3は高濃度(約10mg/mL)で装荷された時は明らかなダイマーとして溶出されたが、より低い濃度(<1mg/mL)で装荷された時はモノマーとして溶出され、該2つの形態は速やかに平衡化した。HB36.3を含有するフラクションは集め合わされて約5mg/mLに濃縮された。
結晶化のためのHB36.3‐SC1918/H1 HA複合体の単離
Ni‐NTA精製に続き、SC1918 HAはトリプシンで消化(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs)、1mgのHAあたり5mUトリプシン、17℃で16時間)されて一様に開裂された(HA1/HA2)を生じ、かつ三量体化ドメインおよびHisタグが除去された。2mM PMSFを用いて消化を停止させた後、消化された物質は、陰イオン交換クロマトグラフィー(10mMトリス、pH8.0、50〜1M NaCl)およびサイズ排除クロマトグラフィー(10mMトリス、pH8.0、150mM NaCl)によって精製された。結晶化用のHB36.3/SC1918複合体を調製するために、過剰量のHB36.3(HA三量体当たりおよそ5分子のHB36.3)が10mMトリスpH8.0、150mM NaCl中約2mg/mLの精製SC1918 HAと混合された。該混合物は錯体形成しうるように4℃で一晩インキュベートされた。その後、飽和した複合体は、ゲル濾過により結合していないHB36.3から精製された。
HB36.3‐SC1918/H1複合体の結晶化および構造決定
HB36.3‐SC1918/H1 HA複合体を含有するゲル濾過フラクションは、10mMトリス、pH8.0および50mM NaCl中で約10mg/mLまで濃縮された。最初の結晶化試行は、構造ゲノミクス共同センター(Joint Center for Structural Genomics)(ウェブサイトJCSG.org)において自動Rigaku Crystalmation(商標)ロボットシステムを使用して準備された。いくつかの成功例が得られ、最も有望な候補は約10%PEG8000中でpH7付近にて成長させた。これらの条件の最適化により回折品質の結晶が得られた。データ収集に使用された結晶は、10%PEG8000、200mM塩化マグネシウムおよび100mMトリスpH7.0を含有するリザーバ溶液(100μL)を用いたシッティングドロップ、蒸気拡散法によって成長させた。100nLタンパク質+100nL沈殿剤で構成されているドロップが4℃で準備され、結晶が7〜14日以内に現われた。得られた結晶は、終濃度25%まで濃度を漸増させた(1ステップで5%、5分/ステップ)エチレングリコールを補足したウェル溶液中に浸漬させることにより凍結防止され、次いで急速冷却されてデータ収集まで液体窒素中に保管された。
HB36.3‐SC1918/H1複合体の回折データは、米国アルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)の先端放射光施設(Advanced Photon Source)(APS)の総合内科/がん研究所共同アクセスチーム(General Medicine/Cancer Institutes-Collaborative Access Team)(GM/CA‐CAT)ビームライン23ID‐Dにおいて収集された。該データはR32に指数付けされ、HKL2000(HKLリサーチ社(HKL Research))を使用して積分され、Xprep(商標)(ブルカー(Bruker))を使用してスケーリングされた。構造は、Phaser(商標)(S21)を使用して分子置換法により分解能3.10Åまで解が得られた。未公表の、1918HAの分解能1.8Åの構造が初期探索モデルとして使用され、非対称単位内に単一のプロトマーが見出された。この段階におけるマップの検討から、HB36.3の予測された位置および配向と一致するHAの膜先端部辺りの明瞭な陽電子密度が明らかとなった。Phaser(商標)を使用して分子置換法によりHB36.3を配置する試みは失敗した(PDBコード1U84由来の様々な探索モデルを使用)。しかしながら、HA(非対称単位内の質量の約85%)のみを使用する位相決定から、重要な側鎖の特徴を含む、HB36.3についての連続した密度を備えたマップが得られた。この位相決定モデルにより、HB36.3をマップ内に手動で一義的にフィッティングさせることが可能となった。剛体および制約条件下の精密化(HA1について1グループ、HA2について1グループ、およびHB36.3について1グループとしたTLS精密化など)は、Phenix(商標)で実行された(S22)。繰り返される精密化の間に、Coot(商標)を使用してモデルが構築かつ調整された(S23)。タンパク質発現に使用された昆虫細胞は完全にグリコシル化されたHAを生産し、また、追加の電子密度が、HA上の5個の予測グリコシル化部位(NX(S/T)モチーフ)すべてにおいてグリカンについて観察された。合計5個の糖残基が上記部位のうち2つにおいて構築された(残る3部位においては、正確なモデル構築を可能にするには密度が弱すぎるかまたは不明瞭であった)。比較的弱いデータが非常に冗長であることは、この中程度の分解能で、みかけのRsymおよびB値が高いにもかかわらず特にHB36.1‐HA境界面(図4C参照)の周辺において容易に解釈可能な比較的良質な電子密度マップを得るのに有用であった(S24)。
構造解析
HB36.3とSC1918/H1 HAとの間の水素結合およびファンデルワールス接点は、それぞれHBPLUS(商標)(S25)およびCONTACSYM(商標)(S26)を使用して計算された。表面積埋没はRosetta(商標)で分析された(S27)。MacPyMol(商標)(デラノ・サイエンティフィック (DeLano Scientific))(S28)は、構造図を描画するために、また一般的な操作のために、使用された。最終座標は、MolProbity(商標)(S29)を備えたJCSG品質管理サーバ(v2.7)を使用して検証された。
プロテアーゼ感受性アッセイ
各反応には約2.5μgのHAまたは約5μgの結合剤‐HA複合体および1%ドデシルマルトシド(融合後のHAの凝集を防止するため)を含めた。反応物は室温で準備され、pHは対照以外のすべての試料に100mMのバッファーを添加することにより低下させた。pH範囲4.9〜6.1には酢酸ナトリウム、pH6.2〜7.4にはPIPESバッファー、pH7.5以上にはトリスが使用された。反応液は徹底的に混合され、>12,000gで30秒間遠心分離され、37℃で1時間インキュベートされた。インキュベートの後、反応物は室温に平衡化され、pHは200mMトリス、pH8.5の添加によって中和された。トリプシンは、SC1918/H1の反応物用には最終比1:25、およびViet04/H5反応物用には1:50として対照以外のすべての試料に添加された。SC1918/H1およびViet04/H5試料はそれぞれ37℃および17℃で一晩(18時間)消化された。反応物は非還元型SDSバッファーの添加によって停止処理され、約2分間煮沸された。試料はSDS‐PAGEによって分析された。
初期の結合スクリーンの限界;その他の潜在的結合剤
本発明者らの設計物セットから有効な結合剤を回収するにあたり重要な1つの構成要素は、スクリーニング系の選択である。本発明者らは酵母表面ディスプレイアッセイを本発明者らのスクリーンとして選択したが、これは該システムが多数の設計物の迅速な試験を可能とし、酵母表面上へのビオチン化ヘマグルチニン(1μΜ)の非特異的吸着が最小限であり(低バックグラウンド)、かつ該スクリーンはより高親和性のバリアントを選択するために容易に再構成可能であるからである。結合解離定数は酵母ディスプレイ滴定とin vitroの測定との間でほぼ等価であることは報告されているが(S30)、本発明者らは、in vitroのSPR測定値については酵母表面ディスプレイ滴定と比較しておよそ10倍弱い親和性であることに気づいた。測定値間の矛盾には多くの理由(例えば局所的HA濃度を上昇させる非特異的なレクチン吸着)がありうるが、本発明者らは、酵母上への親和性増大に主に寄与するのは結合試験に使用されるヘマグルチニンの三量体エクトドメインと表面にディスプレイされる何千個もの設計物のコピーとの間の結合力効果ではないかと考えている。1μΜのHAという試験濃度を考えると、本発明者らは、酵母の表面にディスプレイされたin vitroのK<25μΜの設計物について、結合を検出することが可能であったと推定する。
有効な設計物の回収を阻止する別の重要なパラメータは、HA‐設計物複合体の解離速度である。HB36およびHB80設計物の親和性成熟の際、本発明者らは、いくつかのバリアントについての、該設計物バリアントの平均表面ディスプレイを支配している、結合飽和における平均フィコエリトリン蛍光(PE)シグナルの著しい増大に注目した(データは示さない)。このPEシグナルの増大は、in vitroの解離速度が遅いことと関連していた。解離速度からPEシグナルによる結合検出の限界を推測すると、本発明者らは、酵母ディスプレイシステムがkoff<10s−1の結合剤を検出可能であると推定する。
よって本発明者らの酵母ディスプレイスクリーンは、本発明者らの設計物セットから、in vitroのK<25μMおよびkoff<10s−1を備えて表面ディスプレイをなす全ての結合剤を回収することができる。いくつかの設計物はこのスクリーンにおいて弱い結合活性を示し;該設計物にはHB3、HB54およびHB78が含まれる(アミノ酸配列は以下の表9において入手可能である)。
特定の結合剤の生成におけるde novo設計の有用性について
タンパク質相互作用のde novo設計には数多くの利用法が見出されうるので、本明細書中で報告されたHA結合剤を単離するのに必要とされた努力に注目することは有益である。多くの技術の進歩、例えば、高度並列計算を利用可能であること、結合タンパク質の高速のスクリーニングおよび親和性成熟のツールとして酵母細胞表面ディスプレイを利用可能であること、低価格遺伝子合成、ならびに商業的供給源のプラスミドを特別注文する能力が、本研究を促進するために融合した。典型的なde novo設計目標については、本発明者らは、実験的試験のための数十の候補物を生成するのには10万CPU時間で十分であろうと推定する。本明細書中で使用された酵母ディスプレイ方式は、各設計物の精製に必要な面倒なステップを取り除き、高速のスクリーニングおよび親和性成熟を可能にする。
本例では抗体に結合した2つの構造物が利用可能であったが、該方法は、抗体上の残基と一致するHB80中の単一のホットスポット残基(HS3のTyr)だけを用い、これらの抗体に含まれる情報の利用を最小限にした。H1 HAの構造のみが設計過程にとって不可欠であった。ヘマグルチニン標的表面はまさに無極性であり、高親和性相互作用の設計を可能にしている。より極性の強いタンパク質表面を標的とするためにこの方法を用いることができるかどうかは今のところ不明である。
de novo設計のための多様なタンパク質スカフォールドセットの重要性
多様なタンパク質折り畳み構造の使用は設計法の成功において重大な要素であった。HA上の疎水性の標的部位への結合は、側方に位置する極性かつ荷電したループおよび残基により高度に制約される(図1)。HB36およびHB80いずれの主鎖も、HAの無極性表面との相互作用からその主鎖の極性基を隔離するヘリックスを備えたこの部位に見事に適合する一方、残りの再設計されたタンパク質はこの側方に位置するHA領域との相互作用を全くではないとしてもほとんど形成しない(図1および2)。したがって、PDBにおいて入手可能なタンパク質スカフォールドの多様性はこの設計手順の鍵であった。スカフォールドセット中のタンパク質のほぼ40%はNIH NIGMSのタンパク質構造イニシアチブ(Protein Structure Initiative)(PSI;ウェブサイトはnigms.nih.gov/Initiatives/PSI/)の一部として解明され、HB36は、機能未知のPSI標的タンパク質に由来するものであった(B.ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)由来のAPC36109、PDBエントリー1U84)。場合により機能未知の比較的小さな細菌タンパク質の構造の分子生物学への有用性が、一部には盛んに議論されてきたが(S31‐33)、本発明者らは、これらの構造の以前には予期されなかった有益性とは該構造が新しいタンパク質機能の設計への道を開く可能性があるということである、と述べる。
融合後HAを用いた設計タンパク質の比較
興味深いことに、融合後ヘマグルチニンの構造(S34)から、HB36およびHB80において観察される主要な認識ヘリックスを連想させるが重要な細部において異なる方法で基部の疎水性領域に結合したヘリックスが明らかとなった。融合後の構造は融合前の形態と比較して標的エピトープの重要な再構成を示し、疎水性表面の両側に位置する2つのループは離れ、該表面への接近は妨害されなくなる。この表面に対して、HA2由来のヘリックス状セグメントがドッキングし、基部領域上の疎水性表面を埋没させる。このHA2ヘリックス由来のいくつかの疎水性化学基は2つの設計された結合剤の同様の基の上に重なるが、HA2ヘリックスの角度方向、その長さ、および他の残基が何であるかにより、融合前の形態に対する結合剤を生成する鋳型としての使用は妨げられる。しかしながら本発明者らは、この粗い類似性が、進化的に無関係なタンパク質がある標的エピトープに結合する類似の化学基を提示する構造的擬態という現象(S35)の興味深い暗示であると考える。
補足資料(Supplemental material)に関する参照文献
実施例2
酵母にディスプレイされた設計物はHAがpH誘発性の立体配座変化を生じないように防御する
SC1918/H1 HAは既報に従って生産され、変性ゲル電気泳動を使用してHA1およびHA2に開裂されることが確認された。H1 HAは、10倍モル過剰量のスルフォ‐NHS‐LCビオチン(ピアス(Pierce))を使用して、PBS(pH7.4)中で室温にて30分間化学的にビオチン化され、その後、該タンパク質は脱塩用スピンカラム(サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific))を使用して脱塩されて10mMトリス、150mM NaCl(pH8.0)中に含められ、4℃に保管された。
H1 HAが設計物の防御効果の非存在下で不可逆的な立体配座変化を生じうるかどうかを判断するために、80nMのH1 HAが、BBSFバッファー(20mM BTP、150のmM NaCl、1mg/mLのフラクションV BSA、pH7.4)またはpHBSFバッファー(100mM酢酸ナトリウム、150mM NaCl、1mg/mLのフラクションV BSA、pH5.2)のいずれかにおいて最終体積100μLとして37℃で1時間インキュベートされ、その後反応物は20μLの1Mトリス‐HCl(pH8.0)を用いて中和された。反応混合物は渦流混合され、20,000×gで5分間遠心処理され、10倍希釈の上清が、CR6261 scFvまたは親和性成熟させた設計物のいずれかのディスプレイがなされる酵母細胞を標識するために使用された。細胞はバッファー中22℃で30分間標識処理され、洗浄され、抗cmyc FITC(ミルテニーバイオテク、カリフォルニア州オーバーン)およびストレプトアビジン‐フィコエリトリン(インビトロジェン、カリフォルニア州カールスバード)を用いて氷上で10分間二次標識された。洗浄後、細胞はBBSFバッファー中に再懸濁され、20,000個の細胞の蛍光がAccuri C6フローサイトメータを使用して定量された。CR6261 scFvおよび設計された結合剤はいずれも、融合後の立体配座変化においては存在しないHA上のエピトープを標的とする。pH5.2で1時間処理されたH1 HAは、3つの表面ディスプレイされたHA結合剤すべてについて対照と比較して有意に低い蛍光を有し、H1 HAがこれらの処理条件下において融合後の状態への不可逆的な立体配座変化を生じうることが示された(データは示さない)。
酵母にディスプレイされた設計物がH1 HAのpH誘発性の立体配座変化に対する防御となりうるかどうかを判断するために、8nMのH1 HAが、CR6261 scFvまたは親和性成熟させた設計物のいずれかがディスプレイされた酵母細胞を標識するために使用された。2e6個の細胞が1mLのBBSFバッファー中22℃で30分間標識処理され、1回洗浄され、BBSFまたはpHBSFバッファーのいずれかに再懸濁され、37℃で1〜24時間インキュベートされた。定期的に、試料が体積100μLとして採取され、20μLの1Mトリス‐HCl(pH8.0)で中和された。細胞はペレットにされ、洗浄され、上記の通り正確に一連の処理がなされた。この一連の処理の24時間までの連続時点が評価された。顕著には、CR6261 scFvまたはHB80.3設計物のいずれかをディスプレイする酵母細胞は、低pHまたは中性pHのバッファーでインキュベートされた細胞間の結合シグナルにおいて有意差を示さず、これらの設計物がH1 HAの低pH誘発性の立体配座変化に対して防御をなすようであることを示している。HB36.4設計物をディスプレイする酵母細胞は、低pHバッファーおよび中性pHバッファーのインキュベーションの間の結合シグナルの差を24時間時点までは示さず、24時間時点では低pHインキュベーションにおける結合シグナルのわずかな減少が見られた。
実施例3.次世代DNA塩基配列決定法と併せた選択を用いる設計物の配列特異的な結合決定因子のプロファイリング
方法
ライブラリの作成
HB36.4およびHB80.3のための単一部位飽和突然変異誘発ライブラリは、ジーンウィズ(Genewhiz)により合成DNAから構築された。親配列は、突然変異誘発領域を赤色で強調して表11に挙げられている。酵母EBY100細胞は、確立されたプロトコールを使用してライブラリDNAおよび直鎖状pETCON(サイエンス誌、2011年)で形質転換され、それぞれHB36.4およびHB80.3のssmライブラリについて1.4e6個および3.3e6個の形質転換体を生じた。形質転換後、細胞をSDCAA培地中で30mL培養として30℃で一晩増殖させ、1回継代し、20mM HEPES 150mM NaCl pH7.5、20%(w/v)グリセロール中で1e7のアリコートとして−80℃で保管した。
酵母ディスプレイ選択
細胞アリコートは氷上で融解され、13,000rpmで30秒間遠心分離され、SDCAA培地1mLにつき細胞1e7個となるように再懸濁され、30℃で6時間増殖させた。その後、細胞は13,000rpmで遠心分離されてSGCAA培地1mLにつき細胞1e7個となるように再懸濁され、22℃で16〜24時間インキュベートされた。細胞はビオチン化Viet/2004/H5 HAまたはSC/1918/H1 HAのいずれかで標識され、洗浄され、SAPE(インビトロジェン)および抗cmyc FITC(ミルテニーバイオテク)を用いて二次標識され、表12に略述されるような蛍光ゲートによってソートされた。細胞が一晩回収されて、SDCAA培地1mLにつき収集された細胞が2.5e5個になるとすぐに、少なくとも1e7個の細胞が13,000rpmで1分間遠沈され、大規模な塩基配列決定のためのライブラリ調製まで−80℃で細胞ペレットとして保管された。
ライブラリ調製および塩基配列決定
1‐4e7個の酵母細胞は、25Uのザイモラーゼ(zymolase)を含んだSolution I(ザイモリサーチ(Zymo Research)酵母プラスミドミニプレップIIキット)に再懸濁され、37℃で4時間インキュベートされた。次に細胞はドライアイス/エタノール槽および42℃のインキュベータを使用して凍結/融解された。その後、プラスミドは、ザイモリサーチ酵母プラスミドミニプレップIIキット(ザイモリサーチ、カリフォルニア州アーバイン)を使用して回収されて最終体積30μLの10mMトリス‐HCl(pH8.0)に含められた。混入ゲノムDNAは(20μL反応物につき)2μLのExoIエキソヌクレアーゼ(NEB)、1μLのラムダ・エキソヌクレアーゼ(NEB)および2μLのラムダ・バッファーを使用して30℃で90分間処理された後、80℃、20分間で酵素の熱不活性化が行われた。プラスミドDNAは、キアゲンPCR精製キット(キアゲン(Qiagen))を使用して反応混合物から分離された。次に、Phusion(登録商標)高忠実度ポリメラーゼ(NEB、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用した18サイクルのPCR(98℃ 10秒、68℃ 30秒、72℃ 10秒)を用いて、テンプレートの増幅およびIllumina(登録商標)アダプタ部分の付加が行われた。使用されたプライマーは試料に特異的なものであり、表13に列挙されている。PCR反応物は、Agencourt AMPure(商標)XPキット(アジェンコート(Agencourt)、マサチューセッツ州ダンヴァーズ)を使用して、製造業者の説明書に従って精製された。試料は、Qubit(登録商標)dsDNA HSキット(インビトロジェン)を使用して定量されて最終収率1〜4ng/μLであった。試料は等モル比で組み合わされ、この混合物から0.4fmolの全DNAが2つの別個のレーンに装荷され、適切なシークエンスプライマー(表13)を用いてゲノムアナライザIIx(Genome Analyzer IIx)(イルミナ社(Illumina))を使用して塩基配列決定された。
配列解析
未加工のイルミナのリードからのシークエンスデータのアラインメントおよびクオリティフィルタリングは、基本的に既述のようにして処理された。各シークエンスリードは、固有の8bpバーコード識別子(表13)に基づいて適正なプールに割り当てられた。プールはすべて、配列解析およびクオリティフィルタリングにおいて同一に処理された。カスタムスクリプトが使用されて、両方のリードの平均Phredクオリティスコアが20以上のペアエンドリードがすべてアラインされた。ペアエンドリードは大域的なニードルマン‐ブンシュ・アルゴリズムを使用してアラインされ、ギャップを伴わないリードは単一配列にマージされ、配列間の差異は該リードについて高いほうのクオリティスコアを使用して解消された。ナイーブライブラリの配列決定技術上の再現は、ライブラリ調製および配列決定についての計数誤差(enumeration error)がポアソン分布に従うことを示し、したがって、誤差解析の信頼区間を評価するためにブートストラッピングが使用された。記録されたすべての誤差は95%信頼区間にある。
親和性成熟および特異性
SC1918/H1 HAに対するより高い親和性をもたらすと予測された有益な変異が組み合わされて単一ライブラリとされた。各設計物のDNAライブラリは可変領域をコードする一本鎖オリゴを使用してSOE PCRから構築された。プライマーおよび配列は表13に記載されており、ライブラリのDNA塩基配列は表14に記載されている。ライブラリは酵母EBY100の形質転換に使用され、ビオチン化SC1918 H1/HAに対するストリンジェンシーを変化させた4回のソートに供された。
HB36.4上位ライブラリについては、4回のソート後に有力な系列に収束することはなかった(表15)。有望な構築物はpET29b(ノバジェン(Novagen))大腸菌発現プラスミドにサブクローニングされた(NdeI/XhoI)。HB80.4上位ライブラリについては、4回ソート後のクローンは、各々が出発時のHB80.3配列から少なくとも5アミノ酸の突然変異を備えた2つの有力な系列に収束した(表16)。有望な構築物は、N末端FLAGタグおよびC末端Hisタグとともに特注のpETプラスミド(NdeI/XhoI)にサブクローニングされ、溶解性スクリーニングに供された。
溶解性スクリーニング
親和性成熟ライブラリから選択されたHB80.3クローンは、ドットブロットアッセイを使用して大腸菌発現系における溶解性によってスクリーニングされた。細胞は、コロニーから深型ウェルプレート中で一晩増殖させ、深型ウェルプレート中で25倍希釈して37℃で3時間の後、IPTG誘導(1mM)が37℃で4時間行った。誘導後、細胞は3,000×g、4℃で15分間の遠心分離により使用済み培地から分離され、−20℃で一晩ペレットとして保管された。翌朝、プレートは氷上で少なくとも15分間かけて融解され、各ウェルに200μLの結合バッファー(200mM HEPES、150mM NaCl、pH7.5)が添加された。該プレートは、超音波プロセッサ96ウェルソニケータを使用して70%のパルス出力で3分間超音波処理され、溶解産物は4000rpm、4℃で30分間遠心分離された。100倍希釈の上清をドットブロット用マニホールドMinifold(商標)I(ワットマン(Whatman))に移し、ニトロセルロースメンブレン上で5分間乾燥させた。その後、メンブレンは抗FLAGマウス抗体HRPコンジュゲート(シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス)で標識され、DAB基質(ピアス(Pierce))で視覚化された。
表17はHB36.4スカフォールド上の部位ごとの許容可能な置換を提供している。
HB36.4:セリン47‐フェニルアラニン63の中央のヘリックス認識モチーフ(SAFDLAMRIMWIYVFAF)(SEQ ID NO:7);さらには該認識モチーフの外側のPhe69(MSNAMDGQQLNRLLLEWIGAWDPFGLGKDAYDVEAEAVLQAVYETESAFDLAMRIMWIYVFAFKRPIPFPHAQKLARRLLELKQAASSPLPLE(SEQ ID NO:65))
(2)許容可能な部位は、大規模な塩基配列決定と併せたHB36.4バリアントのSC1918/H1 HAに対する酵母ディスプレイ選択から決定された(さらなる詳細については添付文書を参照のこと)。閾値は、FACSによる2回の選択ソート後の、選択ライブラリ内の所与の突然変異の頻度の最大80%減少であった。太字フォントで記載された部位はHA表面と接触する部位を示す。
以下の表は、HB36.4(SAFDLAMRIMWIYVFAF(SEQ ID NO:7))からの単一の点突然変異が結合親和性の増大をもたらすことが示される場所を示している。
以下の表はHB80.3スカフォールド上の部位ごとの許容可能な置換を提供している。(フェニルアラニン13‐フェニルアラニン25の1つの中央のヘリックス認識モチーフ;さらには該認識モチーフの外側のチロシン40)。
許容可能な部位は、大規模な塩基配列決定と併せたHB80.3バリアントのSC1918/H1 HAに対する酵母ディスプレイ選択から決定された(さらなる詳細については添付文書を参照のこと)。閾値は、FACSによる2回の選択ソート後の、選択ライブラリ内の所与の突然変異の頻度の最大80%減少であった。太字フォントで記載された部位はHA表面と接触する部位を示す。
以下の表は、HB80.3からの単一の点突然変異が結合親和性の増大をもたらすことが示される場所を示している。

Claims (15)

  1. 一般式I
    R1‐R2‐Phe‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐R10‐R11‐R12‐R13‐R14‐R15‐R16(配列番号1)
    のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、上記式中、
    R1は、Ser、Ala、Phe、His、Lys、Met、Asn、Gln、Thr、Val、Tyr、およびAspからなる群から選択され;
    R2は任意のアミノ酸であってよく;
    R3は、Asp、Ala、Glu、Gly、Asn、Pro、Ser、およびTyrからなる群から選択され;
    R4はLeuおよびPheからなる群から選択され;
    R5は任意のアミノ酸であってよく;
    R6は、Met、Phe、His、Ile、Leu、Gln、およびThrからなる群から選択され;
    R7は、Arg、Gly、Lys、Gln、およびThrからなる群から選択され;
    R8は、Ile、Asn、Gln、Val、およびTrpからなる群から選択され;
    R9は、Met、Gly、Ile、Lys、Leu、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、His、およびTyrからなる群から選択され;
    R10はTrpおよびPheからなる群から選択され;
    R11は、Ile、Phe、Ser、Thr、およびValからなる群から選択され;
    R12は、Tyr、Cys、Asp、Phe、His、Asn、およびSerからなる群から選択され;
    R13は、Val、Ala、Phe、Ile、Leu、Asn、Gln、Thr、およびTyrからなる群から選択され;
    R14は、Phe、Glu、およびLeuからなる群から選択され;
    R15は、Ala、Gly、Lys、Arg、およびSerからなる群から選択され;
    R16は、Phe、Cys、His、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Thr、Val、Trp、およびTyrからなる群から選択される、ポリペプチド。
  2. 一般式Iは、
    R1‐R2‐Phe‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐R10‐R11‐R12‐R13‐R14‐R15‐R16‐X1‐R17(配列番号2)
    であり、上記式中、
    X1は4〜8アミノ酸の長さであり、各部位は任意のアミノ酸であってよく;
    R17はPheまたはTyrである、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 一般式II
    R1‐R2‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐Ala‐R10‐R11‐Phe(配列番号83)
    のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、上記式中、
    R1はPheおよびValからなる群から選択され;
    R2は、Ser、Ala、Phe、Gly、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr、およびValからなる群から選択され;
    R3はGluおよびAspからなる群から選択され;
    R4は、Asn、His、Ile、Lys、Leu、Met、Arg、Ser、およびThrからなる群から選択され;
    R5は、Leu、Phe、Ile、Met、Asn、Gln、およびValからなる群から選択され;
    R6は、Ala、Asp、Lys、Met、Asn、Gln、Arg、Glu、およびValからなる群から選択され;
    R7は、Phe、Asp、Asn、およびTyrからなる群から選択され;
    R8は、Glu、Ala、Asp、Gly、His、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、およびTrpからなる群から選択され;
    R9は、Leu、Phe、Ile、Met、およびValからなる群から選択され;
    R10は、Leu、Ile、Met、およびTyrからなる群から選択され;
    R11は、Ser、Ala、Gly、およびTyrからなる群から選択される、ポリペプチド。
  4. 一般式IIは、
    R1‐R2‐R3‐R4‐R5‐R6‐R7‐R8‐R9‐Ala‐R10‐R11‐Phe‐X1‐R12‐R13‐X2‐R14(配列番号84)
    であり、上記式中、
    X1は5〜15アミノ酸の長さであり、各部位は任意のアミノ酸であってよく;
    R12は、Gln、Tyr、Phe、Met、Arg、Lys、およびGlyからなる群から選択され;
    R13は、Tyr、Asp、Met、Asn、およびSerからなる群から選択され;
    X2は任意のアミノ酸であり;
    R14は、Ser、Arg、およびLysからなる群から選択される、請求項3に記載のポリペプチド。
  5. (d)MADTLLILGDSLSAGYQMLAEFAWPFLLNKKWSKTSVVNASISGDTSQQGLARLPALLKQHQPRWVLVELGGNDGLEGFQPQQTEQTLRQILQDVKAANAEPLLMQIRPPANYGRRYNEAFSAIYPKLAKEFDVPLLPFFMEEVYLKPQWMQDDGIHPNYEAQPFIADWMAKQLQPLVNH(配列番号155);
    (e)MAETKNFTDLVEATKWGNSLIKSAKYSSKDKMAIYNYTKNSSPINTPLRSANGDVNKLSENIQEQVRQLDSTISKSVTPDSVYVYRLLNLDYLSSITGFTREDLHMLQQTNEGQYNSKLVLWLDFLMSNRIYRENGYSSTQLVSGAALAGRPIELKLELPKGTKAAYIDSKELTAYPGQQEVLLPRGTEYAVGTVELSKSSQKIIITAVVFKK(配列番号140);および
    (f)MFTGVIIKQGCLLKQGHTRKNWSVRKFILREDPAYLHYYYPLGYFSPLGAIHLRGCVVTSVESEENLFEIITADEVHYFLQAATPKERTEWIKAIQMASR(配列番号211)
    からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
  6. 検出可能なタグを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする単離核酸。
  8. 適切な制御配列に作動可能なように連結された、請求項7に記載の核酸を含む組換え発現ベクター。
  9. 請求項8に記載の組換え発現ベクターを含む組換え宿主細胞。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドに選択的に結合する抗体。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の1つ以上のポリペプチドと薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
  12. インフルエンザ感染の治療および制限のうち少なくとも一方を行う方法であって、インフルエンザ感染の治療および制限のうち少なくとも一方を行うために、投与を必要とする対象者に、治療上有効な量の1つ以上の本発明のポリペプチド、前記ポリペプチドの塩、前記ポリペプチドのコンジュゲート、または前記ポリペプチドの医薬組成物を投与することを含む方法。
  13. インフルエンザ感染を診断するか、またはインフルエンザ感染の進行を監視する方法であって、
    (a)インフルエンザに感染している疑いのある対象者由来の生体試料を、診断上有効な量の1つ以上の本発明のポリペプチドと、前記試料中に存在するウイルスHAタンパク質への前記ポリペプチドの結合に適した条件下において接触させるステップと;
    (b)ポリペプチド‐ウイルスHA結合複合体を検出するステップと
    からなり、
    そのような結合複合体の存在は、前記対象者がインフルエンザに感染していることを示すか、またはインフルエンザ感染の進行の程度を提供する、方法。
  14. インフルエンザワクチン候補を同定する方法であって、
    (a)試験化合物を、本発明のポリペプチドと、前記ポリペプチドの結合に適した条件下において接触させるステップと;
    (b)結合していない試験化合物を除去するステップと;
    (c)本発明のポリペプチドに結合する試験化合物を同定するステップであって、そのような試験化合物はインフルエンザワクチン候補である、ステップと
    からなる方法。
  15. インフルエンザ感染の治療、制限、および診断のうち少なくともいずれかを行うための候補化合物を同定する方法であって、
    (a)インフルエンザHAタンパク質を、(i)試験化合物および(ii)本発明のポリペプチドと、HAタンパク質の本発明のポリペプチドへの結合に適した条件下において接触させるステップと;
    (b)HAタンパク質への結合に関して前記ポリペプチドより優れた試験化合物を同定するステップであって、そのような試験化合物はインフルエンザ感染の治療、制限、および診断のうち少なくともいずれかを行うための候補化合物である、ステップと
    からなる方法。
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