WO2016031018A1 - 乗り物用シートスライド装置 - Google Patents

Abstract

　長手方向に垂直な断面において、乗り物の床（１３）に固定された底壁（２ｅ）、底壁の両端から立ち上がり形成された側壁（２ｂ）を備えた固定レール（２）と、固定レール（２）内に一部が配置され、固定レール（２）に沿って移動可能な可動レール（３）とを備える。底壁（２ｅ）には、床（１３）に固定可能な締結部材（１０）が挿入される貫通部（２ｆ）が設けられ、側壁（２ｂ）両方には、内表面から底壁（２ｅ）に平行に突出した庇部（２ｄ）が設けられ、底壁（２ｅ）と庇部（２ｄ）との間には、庇部（２ｄ）の先端間の間隙よりも幅が広い脱落防止手段（９、１２）が配置され、締結部材（１０）は、脱落防止手段（９、１２）から抜けないように仮止めされ、間隙を通して脱落防止手段（９、１２）及び貫通部（２ｆ）に挿入される。

Description

乗り物用シートスライド装置

　本発明は、乗り物、例えば自動車に搭載されるシートスライド装置に関する。

　特許文献１に、関連する乗り物用シートスライド装置が開示されている。この関連する乗り物用シートスライド装置は、スライドレール、固定部材、シートクッション、及びシートバックを備える。スライドレールは、前後に長尺な固定レール、及び固定レールに対して前後移動可能に装設された可動レールを備える。固定部材は、スライドレールの固定レールの前後に離間して固定され、且つ床に固定される。シートクッションは、可動レールに固定される。シートバックは、シートクッションに支持される。固定レールは、アルミニューム製であり、固定部材は鉄製である。

特開２０１２－０３０６３８号公報

　上記関連する乗り物用シートスライド装置にあっては、固定部材が鉄製であり、且つ複数存在するので重くなる。そのため、乗り物の燃費の上で改善が求められる。また、スライドシートを車体工場などに輸送途中、固定部材の締結用ボルトが脱落するおそれがある。車体へのスライドシートの取り付け作業時に、ボルト脱落があればボルトをいちいち持ち込まねばならず、作業員にとって作業効率を悪化させることになる。更に、固定部材の締結部が固定レールの両側方に突出している。そのため、乗り物内にスライドレールを搬入する際に乗り物の構造体に固定部材がぶつかるおそれがあり、搬入作業性の向上が求められる。

　本発明は、スライドレールの固定手段の軽量化を図り、且つ乗り物内への取り付け作業性の向上を図れる乗り物用シートスライド装置を提供することを目的とする。

　本発明のアスペクトは、長手方向に垂直な断面において、乗り物の床に固定される底壁、底壁の両端から立ち上がり形成された側壁、側壁の上端から内側に迫り出し、長手方向に延在する開口を有する頂壁を備えた固定レールと、固定レールの外側に配置されたシートクッションを支持し、開口を介して固定レール内に一部が配置され、固定レールに沿って移動可能な可動レールとを備え、底壁には、床に固定可能な締結部材が挿入される貫通部が設けられ、側壁両方には、側壁の内表面から底壁に平行に突出した庇部が設けられ、庇部の上面は、可動レールに固定されて回転可能なローラのローラ受け部であり、底壁と庇部との間には、庇部の先端間の間隙よりも幅が広い脱落防止手段が配置され、締結部材は、脱落防止手段から抜けないように仮止めされ、間隙を通して脱落防止手段及び貫通部に挿入されることを要旨とする。

　脱落防止手段は、締結部材が挿入可能な貫通穴を有する座金と、貫通穴に配設され、締結部材が抜けないように仮止めするゴム製のブッシュとを有することが望ましい。

　また、脱落防止手段は、締結部材が螺合可能な雌ねじ部が形成された貫通穴を有する座金であっても良い。

　また、脱落防止手段は、前記締結部材が挿入可能な貫通穴を有する座金と、前記貫通穴に配設され、前記締結部材が抜けないように仮止めする合成樹脂製のブッシュとを有するものでも良い。

　また、脱落防止手段は、締結部材が挿入可能な貫通穴を有する座金と、貫通穴に配設され、締結部材が抜けないように仮止めする紙製のブッシュとを有するものでも良い。

　上記構成によれば、固定レールは、床に締結可能な締結部材を挿入可能なる貫通部を有する底壁と、底壁の両端部より立ち上がり形成されてなる側壁と、側壁の上部より内側に迫り出し且つ可動レールが移動自在な開口を有する頂壁と、底壁及び締結部材の頭部との間に介在される脱落防止手段が脱落しないだけの突出量を有する庇部とを備える。庇部は、可動レールに固定されて回転可能な主ローラのローラ受け部と一体に形成されることで、固定部材が無い分、スライドレールの軽量化が図れる。また、締結部材が脱落防止手段から抜けないように仮止めされることで、乗り物内への固定レールの取り付け作業性の向上が図れる、という効果を有する。

図１は、本発明の一実施形態に係るスライドレールの斜め後ろ側から見た斜視図である。 図２は、図１のスライドレールの固定レールのみを斜め後ろ側から見た斜視図である。 図３は、図１のスライドレールの可動レールのみを斜め後ろ側から見た斜視図である。 図４は、図１のＳＡ－ＳＡ線に沿った断面図である。 図５は、図４の締結部材を挿入支持する前の脱落防止手段の形状を示す図４相当断面図である。

　スライドレールの固定手段の軽量化を図り且つ乗り物内への取り付け作業性の向上を図れる乗り物用シートスライド装置を提供する、という目的を、以下の構成により実現した。すなわち、長手方向に垂直な断面において、乗り物の床に固定される底壁、底壁の両端から立ち上がり形成された側壁、側壁の上端から内側に迫り出し、長手方向に延在する開口を有する頂壁を備えた固定レールと、固定レールの外側に配置されたシートクッションを支持し、開口を介して固定レール内に一部が配置され、固定レールに沿って移動可能な可動レールとを備え、底壁には、床に固定可能な締結部材が挿入される貫通部が設けられ、側壁両方には、側壁の内表面から底壁に平行に突出した庇部が設けられ、庇部の上面は、可動レールに固定されて回転可能なローラのローラ受け部であり、底壁と庇部との間には、庇部の先端間の間隙よりも幅が広い脱落防止手段が配置され、締結部材は、脱落防止手段から抜けないように仮止めされ、間隙を通して脱落防止手段及び貫通部に挿入される。

　以下、本発明の一実施形態に係る乗り物用シートスライド装置Ｓを図１～図５に基づいて説明する。乗り物用シートスライド装置Ｓは、固定レール２と可動レール３とを有するスライドレール１、図示しない周知のシートクッション、及び図示しない周知のシートバックを備える。アルミニューム製の固定レール２は、前後に長尺な形状を有する。アルミニューム製の可動レール３は、Ｔ字を逆さまにした断面を有し、且つ固定レール２内にＴ字部３ａが配置されることで前後移動可能に装設される。シートクッションは、可動レール３の上側ＵＰの支持部３ｄ、３ｇに固定される。シートバックは、シートクッションに支持される。固定レール２と可動レール３との間には、主ローラ５、５と図示しない副ローラとが介在される。

　固定レール２は、底壁２ｅ、側壁２ｂ、２ｂ、頂壁２ｃ、２ｃ、及び庇部２ｄ、２ｄを備える。底壁２ｅは、床１３の下面１３ａに固定されたナット１１に締結可能な締結部材であるボルト１０を挿脱可能とした貫通部２ｆを有する。側壁２ｂ、２ｂは、底壁２ｅの両端部より立ち上がり形成される。頂壁２ｃ、２ｃは、側壁２ｂ、２ｂの上端部より内側、即ち可動レール３側に迫り出し、且つ可動レール３が長手方向に移動自在な開口２ａ、２ａを有する。庇部２ｄ、２ｄは、側壁２ｂ、２ｂの内表面から、底壁２ｅに平行に突出している。庇部２ｄ、２ｄは、底壁２ｅ及びボルト１０の頭部１０ａとの間に介在される脱落防止手段（９、１２）が脱落しないだけの突出量を有する。庇部２ｄ、２ｄの突出した先端間の間隙は、ボルト１０の頭部１０ａより広く、且つ脱落防止手段（９、１２）の外径よりも狭い。庇部２ｄ、２ｄの上面には、ローラ受け部６、６が一体に形成される。ローラ受け部６、６では、可動レール３にピン７により回転可能に軸支された主ローラ５、５のローラ部５ａ、５ａが回転移動される。

　可動レール３は、固定レール２内に一部が配置されて固定レール２に沿って移動可能である。可動レール３のＴ字部３ａは、Ｔ字を逆さまにした断面を有する。Ｔ字部３ａの下側のフランジ部３ｃが固定レール２内に配置される。Ｔ字部３ａと、Ｔ字部３ａの下側ＬＷＲに形成されたブロック状の本体３ｂとが押し出し成形されている。

　可動レール３の本体３ｂ、フランジ部３ｃ、及び支持部３ｄ、３ｇの下側ＬＷＲの部分は、固定レール２内に配置されている。支持部３ｄ、３ｇの下側ＬＷＲの部分は、固定レール２の開口２ａ、２ａ内を固定レール２に沿って前側ＦＲ及び後側ＲＲに摺動自在となっている。本体３ｂには、支持部３ｄ、３ｇの下側ＬＷＲの延長位置に形成された柱部３ｅが、一体に形成されている。柱部３ｅの左右（可動レール３の短手方向）側面、つまり、右側ＲＨ及び左側ＬＨに肉抜き部３ｋ、３ｋを形成することで、軽量化を図っている。

  可動レール３の支持部３ｄ、３ｇの貫通穴３ｈには、シートクッションのフレームに固定されるボルトが挿入支持される。可動レール３の柱部３ｅの下側ＬＷＲには、薄肉部３ｆが形成されている。柱部３ｅの左右側部、つまり、右側ＲＨ及び左側ＬＨには、固定レール２の側壁２ｂと平行に形成された平面部３ｊ、３ｊが形成される。平面部３ｊ、３ｊの下側ＬＷＲには、薄肉部３ｆより下側ＬＷＲに突出した突起部３ｎ、３ｎが形成されている。

　主ローラ５、５は、可動レール３の長手方向の両端部、即ち、可動レール３の前側ＦＲ及び後側ＲＲの端部にピン７により回転可能に支持されている。より具体的には、主ローラ５、５は、可動レール３の前側ＦＲ及び後側ＲＲの端部に左右両側から組み込まれ、可動レール３の本体３ｂに形成された貫通孔３ｉ、３ｉに圧入したピン７を介して可動レール３に対して回転可能に軸支されている。主ローラ５、５は、図４に示すように、固定レール２の庇部２ｄ、２ｄの上面に形成されたローラ受け部６、６に接しており、可動レール３の移動によりローラ受け部６、６上を転動する。主ローラ５、５と平面部３ｊとの間には、図４に示すように、スプリングワッシャ８が介在されて、主ローラ５、５が一体になるよう押圧されている。

　脱落防止手段（９、１２）は、座金９、及びブッシュ１２を有する。例えば、座金９は、板厚３ミリメートルの平板状に形成されている鉄板で、図５に示すように、直径１２ミリメートルの貫通穴９ａが形成されている。貫通穴９ａには、上下面に断面４５度の面取り部９ｂ、９ｂが形成されている。貫通穴９ａには、直径が９ミリメートルの挿入穴１２ａを有する天然ゴム製のブッシュ１２が係合されている。

　ブッシュ１２は、板厚１．５ミリメートルのリング状で、外径は貫通穴９ａと同じ直径１２ミリメートルである。ボルト１０のねじ部１０ｂは、例えば外径が１０ミリメートルである。ねじ部１０ｂをブッシュ１２に挿入する前に、座金９の貫通穴９ａにブッシュ１２を挿入する。その後、貫通穴９ａに挿入されたブッシュ１２の挿入穴１２ａにボルト１０のねじ部１０ｂを挿入する。挿入穴１２ａの直径よりねじ部１０ｂの外径が大きいので、ボルト１０は脱落防止手段（９、１２）に抜け止めすることができる。

  本発明の実施形態によれば、スライドレール１の固定レール２は、底壁２ｅに設けられた貫通部２ｆを介して、ボルト１０を床１３に固定されたナット１１に締結して固定される。スライドレール１とは別部材の固定手段が不要なので、その分の軽量化が図れる。また、固定レール２から突出する固定手段が無いので、乗り物内への固定レール２の搬入作業性の向上が図れる、という効果を有する。

　また、本発明の実施形態では、スライドレールの輸送に際し、ボルト１０が脱落防止手段（９、１２）に装着される。座金９に支持されたブッシュ１２にボルト１０を差し込むと、ブッシュ１２の挿入穴１２ａにボルト１０のねじ部１０ｂが係合して面取り部９ｂ、９ｂに入り込んで撓み、ボルト１０が仮止めされる。固定レール２の底壁２ｅ上に配した脱落防止手段（９、１２）は、脱落しないだけの突出量を有する庇部２ｄによって保持される。したがって、スライドレール１の輸送途中でのボルト１０の脱落を防止することができる。その結果、固定レール２の締結が容易となり、作業性が向上する。

　例えば、自動車に加わる急制動などで、乗り物用シートへ一次衝突荷重、及び或いは二次衝突荷重が加わり、乗り物用シートが固定された支持部３ｄ、３ｇを有する可動レール３が上側ＵＰへ引っ張り上げられる。本発明の実施形態では、可動レール３のＴ字部３ａと本体３ｂとが、固定レール２内に配置される。したがって、可動レール３に上側ＵＰへ引っ張り上げる作用が働いても、可動レール３は、固定レール２から外れないようにすることができる。

　以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、ブッシュ１２の材料は天然ゴムに限らず、合成樹脂製、特に発泡性の合成樹脂材であってもよく、紙製のリングでも良い。何れも、ブッシュ１２の有する摩擦力でボルト１０が抜けないように仮止めされる。あるいは、座金９にボルト１０の螺合可能な雌ねじ部を形成しても良い。

Claims (5)

1. 　長手方向に垂直な断面において、乗り物の床に固定される底壁、該底壁の両端から立ち上がり形成された側壁、該側壁の上端から内側に迫り出し、前記長手方向に延在する開口を有する頂壁を備えた固定レールと、
   　前記固定レールの外側に配置されたシートクッションを支持し、前記開口を介して前記固定レール内に一部が配置され、前記固定レールに沿って移動可能な可動レール
   　とを備え、
   　前記底壁には、前記床に固定可能な締結部材が挿入される貫通部が設けられ、
   　前記側壁両方には、前記側壁の内表面から前記底壁に平行に突出した庇部が設けられ、
   　前記庇部の上面は、前記可動レールに固定されて回転可能なローラのローラ受け部であり、
   　前記底壁と前記庇部との間には、前記庇部の先端間の間隙よりも幅が広い脱落防止手段が配置され、
   　前記締結部材は、前記脱落防止手段から抜けないように仮止めされ、前記間隙を通して前記脱落防止手段及び前記貫通部に挿入されることを特徴とする乗り物用シートスライド装置。
2. 　前記脱落防止手段は、前記締結部材が挿入可能な貫通穴を有する座金と、前記貫通穴に配設され、前記締結部材が抜けないように仮止めする合成樹脂製のブッシュとを有することを特徴とする請求項１に記載の乗り物用シートスライド装置。
3. 　前記脱落防止手段は、前記締結部材が螺合可能な雌ねじ部が形成された貫通穴を有する座金であることを特徴とする請求項１に記載の乗り物用シートスライド装置。
4. 　前記脱落防止手段は、前記締結部材が挿入可能な貫通穴を有する座金と、前記貫通穴に配設され、前記締結部材が抜けないように仮止めするゴム製のブッシュとを有することを特徴とする請求項１に記載の乗り物用シートスライド装置。
5. 　前記脱落防止手段は、前記締結部材が挿入可能な貫通穴を有する座金と、前記貫通穴に配設され、前記締結部材が抜けないように仮止めする紙製のブッシュとを有することを特徴とする請求項１に記載の乗り物用シートスライド装置。

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