WO2015083642A1 - エアゾールハウジング機構およびこのエアゾールハウジング機構を備えたエアゾール式製品 - Google Patents

Abstract

外側筒状部２ａ，中央上筒状部２ｂ，環天井部２ｃおよび中央下筒状部２ｄからなる拡大ハウジング２は、プラスチック製の一体成形物である。外側筒状部２ａと中央上筒状部２ｂとの間には強度アップ用の縦板リブ状部２ｈが同じく一体成形される。内容物の上方向への内側通路域Ｂが中央筒状部２ｂに設定されている。拡大ハウジング２の下側を囲む形で設けたハウジングカバー２８は、拡大ハウジング２の外周面との間に、内側袋状容器１ｇの上端側内部空間域から下方向に内側通路域Ｂまで続く外側通路域Ａを形成する。また、すり鉢状片部２８ｋが、縦板リブ状部２ｈの隣同士間に設定される個々の上端側内部空間域に入り込んで外側通路域Ａの入口部分として作用するので、縦板リブ状部間の残留空気が確実に排出される。

Description

エアゾールハウジング機構およびこのエアゾールハウジング機構を備えたエアゾール式製品

　本発明は、放出対象内容物および噴射用ガスを収容するエアゾール容器の上端開口側に配設されて、内容物のシール作用や噴射作用などを示すステムおよびステムガスケットを収容する収容部をそなえており、その全体が一体成型されたプラスチック製のエアゾールハウジング機構に関する。

　特に、従前の、エアゾール容器本体の開口側に取り付けられるマウンティングカップと、これに保持されてステム下側部分などを収容するハウジングと、の計二個のパーツをプラスチック製の一体成形品としたエアゾールハウジング機構である。

　なお、本明細書においては、このマウンティングカップおよびハウジングの全体を一体成形したものを、必要に応じて「拡大ハウジング」と記す。

　本発明は、この拡大ハウジングからなるエアゾールハウジング機構の強度を確保しつつ、拡大ハウジング成形用の合成樹脂使用量を減らすようにしたものである。

　なお、本明細書ではエアゾール容器（外容器＋内容器，外容器＋内側袋状容器）それぞれの開口側を「上」、当該開口側とは長手方向反対の底面側を「下」とする。この上下縦方向と直交する側を「横」と記す。

　上述の拡大ハウジングを用いたエアゾールハウジング機構は提案済みである（後述の特許文献１，特許文献２参照）。

　この提案済みの拡大ハウジングは、マウンティングカップとハウジングとを個々に作成して双方を一体化するといった作業工程の手間を省き、また、この一体化の際にハウジングが変形したり、破損したりすることを阻止できるといった利点を備えたものである。

　その一方で、拡大ハウジングの成形に必要な合成樹脂量を極力減らしつつ、エアゾールハウジング機構としての強度を維持するといった点で改善の余地を残している。

　また、本件出願人は、内外二重エアゾール容器の内側袋状容器の上端側空間域に生じる上記空気が、原液注入後のバルブユニット装填工程における当該内側袋状容器の上端側首部分の変形作用により排出される、袋状容器構造を提案ずみである（特許文献３参照）。

　このように上端側首部分が変形可能な内側袋状容器はその上端側空間域に生じる上記空気を外部空間域に排出できるといった、利点を備えたものである。

　その一方で、内側袋状容器の上端側首部分の形状を変形可能な特定形状に設定する必要があるといった点で改善の余地を残している。

実開昭６２－３４７６号公報 特開平８－１６９４８２号公報 特開２０１１－１３６７４７号公報

　本発明では、上述の改善の余地に対応すべく、
(11)拡大ハウジングを構成する外側筒状部と中央筒状部との間に、強度アップ用のリブ状部を一体成形し、
(12)リブ状部を、外側筒状部および中央筒状部それぞれの径方向に形成し、
(13)中央筒状部の、内容物通過用の縦溝状部が設けられていない内周面部分の外周面側に縦凹状部を形成して、当該中央筒状部自体の厚みを小さくし、
(14)リブ状部を、外側筒状部の内周面と、中央筒状部内周面の縦溝状部の裏側外周面部分（＝縦凹状部が形成されず、当該縦凹状部よりも外側筒状部内周面に近い部分）との間に、すなわち外側筒状部内周面と中央筒状部外周面との間でより短い部分を選んで形成し、
(15)外側筒状部と中央筒状部との間の環天井部に、ステムガスケットの上面に配設されたプラスチック製で二重シール用の中間カバー体を保持し、
(16)外側筒状部の外周面を、外容器および内容器・内側袋状容器それぞれの上端サイドの環状部と、拡大ハウジングの環天井部などに対するカバーキャップの外側環状垂下部の三層部材により保護し、
(17)内外二重エアゾール容器のハウジング中央筒状部の周回部分に、内容物流入用のスリット状部を付加的に設ける、すなわち通常の中央筒状部底部分に形成された縦方向孔部とは別に設ける、
(18)内外二重エアゾール容器の内側袋状容器形状を特にかえることなく、ハウジングカバー体の設定により、ハウジング外周面側に、その上端側からハウジング内部への内容物放出迂回ルートを設けて、初期放出操作のときに当該上端側の残留空気を排出する、
といった各構成態様を用いている。

　このような構成態様を含む本発明は、先ず、拡大ハウジングの変形や割れを阻止しつつ、拡大ハウジング成形用の合成樹脂使用量の減少化を図ることを目的とする。

　また、ステムガスケット上面部分に設けられる環状のプラスチック製カバーを設けることでステムガスケットから内容物が浸透、透過し、金属のカバーに接触することに対しての十全化を図ることを目的とする。

　また、ハウジング中央筒状部の周回部分に内外連通用のスリット状部を設けることにより、内側袋状容器がその内容物減少にともなって中央筒状部下側に当接した場合にもその上方空間域における残留内容物のハウジング流入動作の確実化を図ることを目的とする。

　また、拡大ハウジングの内外筒状部間の鍔状部分（環天井部）の下面径方向に複数形成した補強用の縦板リブ状部の間に、外側通路域の入口部分（流入部）を設定して、この縦板リブ状部間の残留空気の排出の確実化を図ることを目的とする。

　また、ハウジングカバーを用いた、拡大ハウジングの外側通路域からなる新たな内容物放出迂回ルートの設定により、内外二重エアゾール容器の放出機構における内側袋状容器上端側の内部空間域の残留空気排出についての技術の豊富化を図ることを目的とする。

　また、内容物流入用のディップチューブが取付け可能な汎用形状の拡大ハウジングを用いた上記残留空気の排出処理により、内外二重エアゾール容器の放出機構における拡大ハウジングの有効利用化や製品コストの削減化を図ることを目的とする。

　さらには、プラスチック製の（中央筒状部に配設されるステム付勢用の）コイルスプリング，内容器，内側袋状容器および二重シール用の中間カバー体を用いることにより、放出対象内容物が触れる範囲全体の金属レス化を図ることを目的とする。

　本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
（１）放出対象内容物および噴射用ガスを収容する容器本体（例えば後述のエアゾール容器１）の開口側（例えば後述の上端環状部１ｂ）に取り付けられる外側筒状部（例えば後述の外側筒状部２ａ，１０ａ）と、
前記外側筒状部の内側に形成されて、内容物放出操作に連動するステム（例えば後述のステム３）の少なくとも下側部分を収容する中央筒状部（例えば後述の中央上筒状部２ｂ，１０ｂ，中央下筒状部２ｄ，１０ｄ）と、
前記外側筒状部および前記中央筒状部それぞれの上端部分同士の間に形成された環天井部（例えば後述の環天井部２ｃ，１０ｃ）と、
前記外側筒状部と前記中央筒状部との間に構造強度を高めるため形成されたリブ状部（例えば後述の縦板リブ状部２ｈ，１０ｈ）と、からなり、
前記外側筒状部，前記中央筒状部，前記環天井部および前記リブ状部の全体が合成樹脂により一体成形された、
構成態様のエアゾールハウジング機構を用いる。
（２）上記（１）において、
前記リブ状部は、
前記中央筒状部から前記外側筒状部にかけて放射状に複数形成された、
構成態様のものを用いる。
（３）上記（１）～（２）において、
前記中央筒状部は、
その内周面の一部に内容物通過用の縦溝状部（例えば後述の縦溝状部２ｆ，１０ｆ）が形成され、
その外周面の一部であって当該縦溝状部が設けられていない内周面部分の裏側に、縦凹状部（例えば後述の縦凹状部２ｇ，１０ｇ）が形成された、
構成態様のものを用いる。
（４）上記（３）において、
前記リブ状部は、
前記外側筒状部の内周面と、前記中央筒状部の外周面の一部であって前記縦溝状部の裏側に相当する外周面部分と、の間に形成された、
構成態様のものを用いる。
（５）上記（１）～（４）において、
前記環天井部は、
その内端側に形成されて、前記ステムとの間の弁作用を呈するステムガスケット（例えば後述のステムガスケット５）の外周縁部分を保持する環状の下段部（例えば後述の下内側段部２ｋ，１０ｋ）と、
当該下段部の上側に形成されて、当該ステムガスケットの上面部分に設けられる内容物漏れ防止用で環状のプラスチック製カバー体（例えば後述の中間カバー体７）の外周縁部分を保持する、環状の上段部（例えば後述の上外側段部２ｍ，１０ｍ）と、
を備えた、
構成態様のものを用いる。
（６）上記（１）～（５）において、
前記外側筒状部は、
その外周面が、
前記環天井部を覆う環状の金属製カバー体（例えば後述のカバーキャップ８）の外端側の筒状垂下部（例えば後述の環状垂下部８ｂ）と、
外容器（例えば後述の外容器１ａ）の一部であって、当該筒状垂下部の内側に配設された上端中間環状部（例えば後述の上端環状部１ｂ）と、
当該外容器の内部空間域に設けられた内容器（例えば後述の内容器１ｄ，内側袋状容器１ｇ）の一部であって、当該上端中間環状部の内側に配設された上端内側環状部（例えば後述の上端内側環状部１ｅ，１ｈ）と、
の三層状態で保護された、
構成態様のものを用いる。
（７）上記（１）～（６）において、
前記中央筒状部は、
内容物流入用のチューブが取り付けられ得る下側筒状部（例えば後述の中央下筒状部２ｄ，１０ｄ）を備えた、
（８）上記（１）～（７）において、
前記中央筒状部の下側を囲む形で設けられて、当該中央筒状部の外周面との間に、前記容器本体の内部空間域上端側から下方向に前記中央筒状部の内部の内側通路域（例えば後述の内側通路域Ｂ）まで続く外側通路域（例えば後述の外側通路域Ａ）を形成する、上開口のハウジングカバー（例えば後述のハウジングカバー２５～２９）を備え、
外部空間域に放出される前記放出対象内容物は、
前記外側通路域を前記上端側から下方向に移動した後、その下流側の前記内側通路域を上方向に移動する、
構成態様のものを用いる。
（９）上記（８）において、
前記ハウジングカバー（例えば後述のハウジングカバー２７，２８，２９：図８～図１２）は、
前記リブ状部の隣同士間に設定される個々の上端側内部空間域に入り込んで前記外側通路域の入口部分として作用する上端側片部（例えば後述の径方向階段状片部２７ｇ，すり鉢状片部２８ｋ，２９ｋ）を備えた、
構成態様のものを用いる。

　本発明の対象は、このような構成からなるエアゾールハウジング機構、およびこのエアゾールハウジング機構を備えて後述の各種の放出対象内容物，噴射用ガスを収容したエアゾール式製品である。

　本発明は以上の課題解決手段により、
(21)拡大ハウジングの変形や割れを阻止しつつ、拡大ハウジング成形用の合成樹脂使用量の減少化を図り、
(22) ステムガスケット上面部分に設けられる環状のプラスチック製カバーを設けることでステムガスケットから内容物が浸透、透過し、金属のカバーに接触することに対しての十全化を図り、
(23)放出対象内容物が触れる範囲全体の金属レス化を図り、
(24)内側袋状容器がその内容物減少にともなって中央筒状部下側に当接した場合にもその上方空間域における残留内容物のハウジング流入動作の確実化を図り、
(25)拡大ハウジングの鍔状部分（環天井部）の補強用縦板リブ状部間における残留空気の排出の確実化を図り、
(26)当該残留空気を排出する内外二重エアゾール容器の放出機構における拡大ハウジングの有効利用化や製品コストの削減化などを図り、
(27)内外二重エアゾール容器の放出機構における内側袋状容器上端側の内部空間域の残留空気排出についての技術の豊富化を図る、
ことができる。

拡大ハウジング２からなるハウジング機構を取り付けたエアゾール式製品を示す説明図である。 拡大ハウジング２からなるハウジング機構を取り付けた内外二重エアゾール式製品を示す説明図である。 図１および図２の拡大ハウジング２を上方側からみたときの斜視状態を示す説明図である。 図１および図２の拡大ハウジング２を下方側からみたときの斜視状態を示す説明図である。 図２の拡大ハウジング２の中央上筒状部周回部分に内容物流入用で縦方向のスリット状部１０ｐを形成した拡大ハウジング１０に、このスリット状部の流入口面積設定用の流量調整部材１１を中央筒状部に取り付けた状態を示す説明図である。 汎用のディップチューブが取付け可能な拡大ハウジング２の外面下側部分に、幅広環鍔状部２５ｅからなるハウジングカバー２５を装着した形のハウジング機構を取り付けた内外二重エアゾール式製品を示す説明図である。 図６と同一形状の拡大ハウジング２の外面下側部分に、幅狭環鍔状部２６ｆからなるハウジングカバー２６を装着した形のハウジング機構を取り付けた内外二重エアゾール式製品を示す説明図である。 図６と同一形状の拡大ハウジング２の外面下側部分に、段付き径方向階段状片部２７ｇからなるハウジングカバー２７を装着した形のハウジング機構を取り付けた内外二重エアゾール式製品を示す説明図である。 図８のハウジングカバー２７の斜視状態を示す説明図である。 図６と同一形状の拡大ハウジング２の外面下側部分に、すり鉢状片部２８ｋからなるハウジングカバー２８を装着した形のハウジング機構を取り付けた内外二重エアゾール式製品である。 図１０のハウジングカバー２８の斜視状態を示す説明図である。 図１０，図１１のハウジングカバー２８のバリエーションであるハウジングカバー２９の斜視状態を示す説明図である。

　図１～図１２を用いて本発明を実施するための形態を説明する。ここで、本発明のエアゾールハウジング機構は、ハウジングカバーなしの機構（図１～図５）と、ハウジングカバーありの機構（図６～図１２）とに大別される。

　なお、以下のアルファベット付き参照番号の構成要素（例えば外容器１ａ）は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素（例えばエアゾール容器１）の一部であることを示している。

　図１乃至図１２のエアゾールハウジング機構において、
１は放出対象内容物や噴射用ガスが収容（充填）される、周知のエアゾール容器，
１ａは上開口で硬性状の外容器，
１ｂは外容器１ａの上端側であって、後述の拡大ハウジング２，１０などが配設される上端環状部，
１ｃは上端環状部１ｂの下端連続部分に初期形成され、上端環状部１ｂに後述のカバーキャップ８をセットした状態で、その環状垂下部８ｂの下端側を内方に向けて周知のクリンプ加工により塑性変形させて固定するための、外容器１ａの環へこみ状部，
１ｄは外容器１ａの内側に配設されて、例えば自らの内部空間域に放出対象内容物（原液）および噴射用ガスを収容する上開口で軟性の内容器（図１参照），
１ｅは内容器１ｄの上端側であって、外容器１ａの上端環状部１ｂと後述の外側筒状部２ａ，１０ａとの間に配設保持される上端内側環状部，
１ｆは自らのブロー成型のときに形成されて、外容器１ａの環へこみ状部１ｃの内側に配設される内容器１ｄの内側環へこみ状部， 
１ｇは外容器１ａの内側に配設されて、その外側の容器内面１ａとの間に噴射用ガスを収容し、かつ、その内部空間域に放出対象内容物（原液）を収容する内容器としての、上開口で軟性の内側袋状容器（図２，図５～図８，図１０参照），
１ｈは内側袋状容器１ｇの上端側であって、外容器１ａの上端環状部１ｂと後述の外側筒状部２ａ，１０ａとの間に配設保持される上端内側環状部（内側袋状容器の上端側内周面），
１ｊは外容器１ａの環へこみ状部１ｃの内側の対向部分に配設され、当該内側袋状容器のブロー成型の際に上端内側環状部１ｈの下端側に形成された内側袋状容器１ｇの内側環へこみ状部（内側袋状容器の上端側内周面），
１ｋは内側袋状容器１ｇの上側部分に形成されて、内容物収容済みの当該内側袋状容器が取り付けられた後述のハウジング機構をエアゾール容器１に固定する前の自然長の伸状態では、上端環状部１ｂの上端と上端内側環状部１ｈとの間からそれに続く内部空間域に噴射用ガスを充填でき、かつ、噴射用ガスを充填した直後のカバーキャップ８の押し下げに伴って、当該内側袋状容器の内側環へこみ状部１ｊが、図２，図５～図８，図１０に示すように当該カバーキャップのクリンプ加工位置の対応部分まで収縮する、上下方向の伸縮機能を備えた蛇腹状部，
１ｍは外容器１ａの内部空間域側の容器内面，
１ｎは外容器１ａと内側袋状容器１ｇとの間の環状周回部分および底側部分からなり、噴射用ガスが充填された与圧空間域，
をそれぞれ示している。

　また、
２ａ，１０は従前のマウンティングカップの機能も併せ備えてその全体がプラスチック素材により一体成形されたものであり、外容器１ａの上端環状部１ｂ（開口部分）に配設されて、中央筒状部分には後述のステム３，コイルスプリング４およびステムガスケット５などの周知のバルブ機構が収容保持される拡大ハウジング，
２ａ，１０ａは自外周面に、その外方に向かって、内容器１ｄ，内側袋状容器１ｇの上端内側環状部１ｅ，１ｈと、外容器１ａの上端環状部１ｂと、後述のカバーキャップ８の環状垂下部８ｂとが、いわば三層状態で配設される外側筒状部，
２ｂ，１０ｂは外側筒状部２ａ，１０ａと同一の上下方向中心軸を持ち、後述のステム３の下側部分およびコイルスプリング４を収容保持する大径の中央上筒状部，
２ｃ，１０ｃは外側筒状部２ａ，１０ａと中央上筒状部２ｂ，１０ｂとの間のいわば天板部分として作用する環天井部，
２ｄ，１０ｄは中央上筒状部２ｂ，１０ｂから下方に連続形成されて、後述のパイプ９を取り付けるための小径の中央下筒状部，
２ｅ，１０ｅは外側筒状部２ａ，１０ａの上端側外周面に形成されて、後述のハウジングガスケット６の内周面を保持する外側環凹状部，
２ｆ，１０ｆは中央上筒状部２ｂ，１０ｂの内周面に等間隔で飛び飛びに形成された計六個の内容物通過用の縦溝状部，
２ｇ，１０ｇは中央上筒状部２ｂ，１０ｂの外周面であって、縦溝状部２ｆ，１０ｆが設けられていない内周面部分の裏側に等間隔で飛び飛びに形成された計六個の成形樹脂量低減用の縦凹状部，
２ｈ，１０ｈは外側筒状部２ａ，１０ａの内周面と、中央上筒状部２ｂ，１０ｂの外周面における縦溝状部２ｆ，１０ｆの裏側部分（＝縦凹状部２ｇ，１０ｇが形成されていない部分）との間の当該外側筒状部および当該中央上筒状部の径方向に、環天井部２ｃ，１０ｃまで続く上下平板態様で等間隔の飛び飛びに形成された計六個の強度アップ用の縦板リブ状部，
２ｊ，１０ｊは中央上筒状部２ｂ，１０ｂと中央下筒状部２ｄ，１０ｄとの境界部分に形成された内容物通過用の縦方向孔部，
２ｋ，１０ｋは環天井部２ｃ，１０ｃの最内側部分に形成されて後述のステムガスケット５を保持する環状の下内側段部，
２ｍ，１０ｍは下内側段部２ｋ，１０ｋの外方直上部分に形成されて、後述の中間カバー体７を保持する環状の上外側段部，
２ｎ，１０ｎは環天井部２ｃ，１０ｃの外端側の、外側筒状部２ａ，１０ａから外方に飛び出した部分であって、後述のハウジングガスケット６の上端面を保持する環鍔状部，
２ｐは中央下筒状部２ｄの上端部分と中央上筒状部２ｂの下端部分との間に連続形成された環状の下向き段部，
１０ｐは中央上筒状部１０ｂの縦凹状部１０ｇ（および縦溝状部１０ｆが形成されていない内周面縦方向部分）に形成されて、当該中央上筒状部の内外間の内容物移動用開口部として作用する縦スリット状部（図５参照），
１１は中央上筒状部１０ｂの外周面の縦凹状部１０ｇに下から嵌められていく縦方向凸状部と、その両隣で、縦溝状部１０ｆが形成されていない部分の裏側外周面に対応した縦方向凹状部とが、内周面に交互に形成された部材であり、当該縦凹状部などに取り付けられた状態で縦スリット状部１０ｐの下側部分を塞ぐことにより、当該縦スリット状部の内容物移動用の開口実面積を調整する筒状の流量調整部材（図５参照），
１１ａは流量調整部材１１の内周面下側部分に形成されて、中央上筒状部１０ｂの環状下面と係合する環状段部（図５参照），
をそれぞれ示している。

　また、
３は操作ボタン（図示省略）に取り付けられて上下方向に連動し、後述のステムガスケット５との間で弁作用を呈する周知のステム，
３ａはステム内部空間域であって放出対象内容物（原液）や噴射用ガスの通過用の内部通路域，
３ｂは作動モードにおいて内部通路域３ａと中央上筒状部２ｂ，１０ｂの内側空間域とを連通させる一対のステム孔部（バルブ作用部），
３ｃはステム孔部３ｂを含む形のステム外周面周方向に形成されて、後述のステムガスケット５との間の弁作用を呈する内側環凹状部，
をそれぞれ示している。

　また、
４は中央上筒状部２ｂ，１０ｂの底面部分とステム３との間に配設されて、当該ステムを上方向に付勢する周知のコイルスプリング，
５は拡大ハウジング２，１０の下内側段部２ｋ，１０ｋおよびステム３の内側環凹状部３ｃに保持されて、ステム孔部３ｂへの弁作用および中央上筒状部２ｂ，１０ｂの内部空間域のシール作用を呈する環状のステムガスケット（バルブ作用部），
６は外容器１ａ，内容器１ｄ，内側袋状容器１ｇそれぞれの上端環状部および拡大ハウジング２，１０の外側環凹状部２ｅ，１０ｅ，環鍔状部２ｎ，１０ｎに密接してシール作用を呈する環状のハウジングガスケット，
７はステムガスケット５の内端側を除く上面部分を覆う形で拡大ハウジング２，１０の上外側段部２ｍ，１０ｍに保持されて、当該ステムガスケットと拡大ハウジング２，１０（下内側段部２ｋ，１０ｋ）との間でのシール漏れ分への、いわば二重シール作用を呈する環状の中間カバー体，
をそれぞれ示している。
また、拡大ハウジング２をエアゾール容器１に取り付ける際にばらけないようにカバーキャップ８内に拡大ハウジング２を挿入し、環顎状部２ｎの下端に係合するようにカバーキャップの上部外周を半径方向内側に変形させてもよい。

　また、
８はステム移動用の中心開口部を持つ天面およびその側面からなって、中間カバー体７を押圧保持し、かつ、ハウジングガスケット６などをいわば内部に組み込んだ状態で、クリンプ加工により、外容器１ａおよび内容器１ｄ（または内側袋状容器１ｇ）の上端環状部１ｂ，上端内側環状部１ｅ，１ｈそれぞれの下端側を内側に変形させて、エアゾール容器側と拡大ハウジング２，１０とを密に一体化する例えばアルミ製のカバーキャップ，
８ａは当該カバーキャップの上面内端側に設定されて中間カバー体７を押圧保持する上側環凹状部，
８ｂは当該カバーキャップの天面外端側に形成された環状垂下部，
８ｃは上記クリンプ加工により環状垂下部８ｂの下端側に形成された外側環へこみ状部，
９は内容器１ｄを用いるタイプのエアゾール式製品において、拡大ハウジング２，１０の中央下筒状部２ｄ，１０ｄに取り付けられた内容物流入用のパイプ（図１参照），
をそれぞれ示している。

　ここで、内容器１ｄ，内側袋状容器１ｇ，拡大ハウジング２，１０，ステム３，中間カバー体７，パイプ９および流量調整部材１１などはポリプロピレン，ポリエチレン，ポリアセタール，ナイロン，ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。

　また、外容器１ａはアルミやブリキ、コイルスプリング４はステンレス、およびカバーキャップ８はアルミなどの金属製のものであり、ステムガスケット５およびハウジングガスケット６はプラスチック製，ゴム製のものである。

　なお、金属製のコイルスプリング４に代えて、プラスッチク製のコイルスプリングまたは板ばねを用いるようにしてもよい。このプラスチック製のコイルスプリングなどを用いる場合には上記の金属レス化を図ることができる。

　図１～図１２のエアゾールハウジング機構に共通する基本的特徴は、
(31)拡大ハウジング２，１０を構成する、外側筒状部２ａ，１０ａ，中央上筒状部２ｂ，１０ｂ，環天井部２ｃ，１０ｃおよび中央下筒状部２ｄ，１０ｄの全体が、プラスチック製の一体成形物であることを前提とし、
(32)外側筒状部２ａ，１０ａと中央上筒状部２ｂ，１０ｂとの間に強度アップ用の縦板リブ状部２ｈ，１０ｈを同じく一体成形している、
(33)縦板リブ状部２ｈ，１０ｈの形成方向が、外側筒状部２ａ，１０ａおよび中央上筒状部２ｂ，１０ｂそれぞれの径方向であり、
(34)中央上筒状部２ｂ，１０ｂの、縦溝状部２ｆ，１０ｆが設けられていない部分それぞれの外周面側に縦凹状部２ｇ，１０ｇを形成して、その分、当該中央上筒状部自体の厚みを小さくし、
(35)縦板リブ状部２ｈ，１０ｈを、外側筒状部２ａ，１０ａの内周面と、中央上筒状部２ｂ，１０ｂの縦溝状部２ｆ，１０ｆの裏側外周面部分（＝縦凹状部２ｇ，１０ｇが形成されず、当該縦凹状部よりも外側筒状部内周面に近い部分）と、の間に形成し、
(36)環天井部２ｃ，１０ｃの中央上筒状部側に形成した上外側段部２ｍ，１０ｍで、ステムガスケット５の上面に配設されたプラスチック製で二重シール用の中間カバー体７を保持し、
(37)外側筒状部２ａ，１０ａの外周面を、上端内側環状部１ｅ，１ｈ，上端環状部１ｂおよび環状垂下部８ｂの三層部材により保護した、
ことである。

　図１～図５のハウジングカバーなしの機構において、図５のエアゾールハウジング機構のさらなる特徴は、
(38)内側袋状容器１ｇを備えた内外二重エアゾール容器において、その中央上筒状部１０ｂの周回部分に内外連通用の縦スリット状部１０ｐを設け、また、この縦スリット状部の内外連通用の実面積を調整するための流量調整部材１１を配設した、
ことなどである。

　上記(31)，(32)，(33)のように、外側筒状部２ａ，１０ａと中央上筒状部２ｂ，１０ｂとの間に縦板リブ状部２ｈ，１０ｈを配設する態様で拡大ハウジング全体を一体成形することより、従前のいわゆるマウンティングカップ機能も併せ備えた拡大ハウジング２，１０の強度を高めている。

　そして縦板リブ状部２ｈ，１０ｈの強度アップ作用により、拡大ハウジング２，１０のその他の部分（外側筒状部２ａ，１０ａ，中央上筒状部２ｂ，１０ｂおよび環天井部２ｃ，１０ｃなど）の厚みを少しでも小さくして、当該拡大ハウジングの一体成形に必要な合計樹脂量の削減化を図っている。

　また、上記(34)～(35)のように、中央上筒状部２ｂ，１０ｂの縦溝状部２ｆ，１０ｆが存在しない部分の厚みを小さくしたり、縦板リブ状部２ｈ，１０ｈのいわゆる径方向の長さを短くしたりすることによっても、同様に、拡大ハウジングの一体成形に必要な合計樹脂量の削減化を図っている。

　また、上記(36)のように、ステムガスケット５の上面の、プラスチック製の中間カバー体７を拡大ハウジング２，１０の上外側段部２ｍ，１０ｍで保持し、かつ、仮にコイルスプリング４としてプラスチック製のものを用いる場合には、内容器１ｄや内側袋状容器１ｇに収容された放出対象容物（原液）が接触しえる部分全体の金属レス化を図りえる。

　ここでこの中間カバー体７を省略した場合、拡大ハウジング２，１０の下内側段部２ｋ，１０ｋとステムガスケット５との当接部分のシール漏れや、内容物自体の浸透性や噴射用ガスの圧力により内容物がステムガスケット５を浸透・透過することにより、容器内の放出対象容物が金属製のカバーキャップ８に接触して、その劣化，変形や当該内容物自体の変性などが生じえる。

　なお、容器内部の放出対象内容物の接触部分は、内容器１ｄ，内側袋状容器１ｇ，拡大ハウジング２，１０，ステム３，コイルスプリング４，ステムガスケット５，ハウジングガスケット６，中間カバー体７およびパイプ９である。図２，図５の内側袋状容器１ｇを用いるタイプではパイプ９が省略される。

　また、上記(37)のように、外側筒状部２ａ，１０ａの側面（外周面）の周りを、上端内側環状部１ｅ，１ｈ，上端環状部１ｂおよび環状垂下部８ｂの三層態様で覆い、これにより、縦板リブ状部２ｈ，１０ｈの補強作用とあいまって例えば当該環状垂下部への衝撃（カバーキャップの環状垂下部８ｂの下端側をクリンプしてハウジング機構をエアゾール容器に固定する際に加わる垂直下方に押し付けられる力やクリンプにより内側方向に加えられる力）に対する拡大ハウジング２，１０の変形・破損防止化を図っている。

　また、上記(38)のように、内側袋状容器１ｇを備えた内外二重エアゾール容器の場合に、その中央上筒状部１０ｂに内外連通用の縦スリット状部１０ｐを設け、また、この縦スリット状部の内外連通用の実面積を調整している。

　これにより、多数回の内容物放出操作で内容物の量が少なくなった当該内側袋状容器が縮んで、その一部が中央下筒状部１０ｄにいわば絡み、縦方向孔部１０ｊへの内容物流入作用が阻害されたときの、当該内側袋状容器の上方空間域の残留内容物に対するハウジング内部（中央上筒状部１０ｂの内部）への内容物通路の確保化を図っている。

　さらには、縦スリット状部１０ｐの内外連通用の実面積調整により、縦方向孔部１０ｊへ内容物が正常に流入するときの、この流入量と、当該縦スリット状部からの内容物流入量とのバランスの最適化を図っている。

　図１，図２および図５は、ともに利用者が周知の操作ボタン（図示省略）に対する内容物放出操作をしていない、すなわちステム３がコイルスプリング４の弾性力により上方向に移動しきった状態の、静止モードを示している。

　このとき、ステムガスケット５は略水平状態で、内容器１ｄ，内側袋状容器１ｇおよび中央上筒状部２ｂ，１０ｂそれぞれの内部空間域と、ステム３の内部通路域３ａおよびステム孔部３ｂと、の間を遮断している。

　すなわち、ステムガスケット５は、その内周面上部分がステム３の内側環凹状部３ｃの上底面部分に密接し、その下面内側部分が当該内側環凹状部の下側段部に密接している。

　そのため、容器側（内容器１ｄ，内側袋状容器１ｇ，中央上筒状部２ｂ，１０ｂなど）に収容されている内容物がステム３の内部通路域３ａに流入することはない。

　利用者が、操作ボタンで、容器側の内容物が放出される作動モードの設定操作をおこなうと、ステム３がコイルスプリング４の上方向への付勢力に抗しながら下動する。それにともないステムガスケット５の内側部分（ステム３に当接している側の部分）がいわば「おじぎ」のように変形する。

　このステム３の下動およびステムガスケット５の変形により、それまでの当該ステムガスケットの下面内側部分と内側環凹状部３ｃの下側段部との密接状態が解除される。

　この密接状態解除により、拡大ハウジング２，１０の中央上筒状部２ｂ，１０ｂおよび内容器１ｄ，内側袋状容器１ｇそれぞれの内部空間域と、ステム３の内部通路域３ａとが連通する。

　その結果、内容器１ｄ，内側袋状容器１ｇそれぞれの収容内容物が、噴射用ガスの作用により、「（パイプ９－）縦方向孔部２ｊ，１０ｊ－中央上筒状部２ｂ，１０ｂ－ステム孔部３ｂ－内部通路域３ａ」を経て周知の出力孔部（図示省略）から外部空間域に放出される。

　なお、図１のエアゾール式製品の製造の手順自体は、概略、
(41)外容器１ａの内部に内容器１ｄをその初期高さ形状を維持する形で組み込み、その開口上端部分から当該内容器に放出対象内容物（原液）を入れ、
(42)次に、エアゾールバルブ（拡大ハウジング２、ステム３、スプリング４、ステムガスケット５、ハウジングガスケット６、中間カバー体７、カバーキャップ８、パイプ９）を、外容器１ａおよび内容器１ｄの上端周回部分の内外両側に上方から装着して、拡大ハウジング２の外周面と当該内側袋状容器の上端側内周面とが係合し、
(43)次に、周知のクリンパーにより、カバーキャップ８の環状垂下部８ｂの下端側を内方にクリンプ加工し外容器１ａに取り付け、
(44)次に、周知のガス充填装置により、ステム３から噴射用ガスを充填して製造される。

　利用者が操作ボタンに対する作動モード設定操作を解除すると、それまで下動位置にあったステム３がコイルスプリング４の弾性付勢力により上動して、エアゾール式製品は図１、図２および図５の静止モードの状態に復帰する。

　図６乃至図１２はハウジングカバーありのエアゾールハウジング機構を示している。

　ここで新たに用いる参照番号は以下のＡ，Ｂおよび２５～２９である。その他の参照番号は図１～図５と同じ番号を適宜用いている。

　図６乃至図１２において、
Ａは内側袋状容器１ｇの内部空間域上端側部分から後述の中央下筒状部２ｄの流入開口部分までの、「後述の縦凹状部２ｇ－後述の下向き段部２ｐと上向き段部２５ｄ～２９ｄとの離間部分－当該中央下筒状部の外周面と後述の有底筒状部２５ａ～２９ａの内周面との離間部分」などからなる外側通路域（上流側通路域），
Ｂはこの流入開口部分から「後述の中央下筒状部２ｄの内部空間－後述の縦方向孔部２ｊ－後述の中央上筒状部２ｂの内部空間－後述のステム孔部３ｂ」を経て内部通路域３ａにいたる内側通路域（下流側通路域），
をそれぞれ示している。

　また、
２５～２９はそれぞれ拡大ハウジング２の中央上筒状部２ｂの外周面に嵌合して、内側袋状容器１ｇの上端側内部空間域から中央下筒状部２ｄの流入開口部までの外側通路域Ａを設定する鞘状のハウジングカバー（２５は図６で使用，２６は図７で使用，２７は図８および図９で使用，２８は図１０および図１１で使用，２９は図１２で使用），
２５ａ～２９ａはそれぞれ当該ハウジングカバーの下側部分からなり、中央下筒状部２ｄの外側に離間する形で設定された小径の有底筒状部，
２５ｂ～２９ｂはそれぞれ有底筒状部２５ａ～２９ａの底面中央に形成された膨らみ部分，
２５ｃ～２９ｃはそれぞれ当該ハウジングカバーの上側部分からなり、中央上筒状部２ｂの外周面に嵌合する形で設定された大径のカバー上筒状部，
２５ｄ～２９ｄはそれぞれ有底筒状部２５ａ～２９ａの内側上端部分とカバー上筒状部２５ｃ～２９ｃの内側下端部分との間に連続形成された環状の上向き段部，
２５ｅはカバー上筒状部２５ｃの上端部分から横平面外方に連続形成されて拡大ハウジング２の縦板リブ状部２ｈの下端面に当接した幅広環鍔状部（図６参照），
２６ｆはカバー上筒状部２６ｃの上端部分から横平面外方に連続形成されて拡大ハウジング２の縦板リブ状部２ｈの下端面に当接した幅狭環鍔状部（図７参照），
２７ｇはカバー上筒状部２７ｃの上端部分から横平面外方（径方向）への昇り階段の態様、かつ、拡大ハウジング２の隣同士の縦板リブ状部２ｈの間に配設される態様で周方向飛び飛びに形成された計六個の径方向階段状片部（周方向の上端側片部：図８，図９参照），
２７ｈは径方向階段状片部２７ｇの下内側部分からなる計六個の下面環状部，
２７ｊは径方向階段状片部２７ｇの上外側部分からなる計六個の上面環状部，
２８ｋ，２９ｋはそれぞれカバー上筒状部２８ｃ，２９ｃの上端部分から上方へ広がるすり鉢状の態様、かつ、拡大ハウジング２の隣同士の縦板リブ状部２ｈの間に配設される態様で周方向飛び飛びに形成された計六個のすり鉢状片部（周方向の上端側片部：図１０～図１２参照），
２７ｍ，２８ｍ，２９ｍはそれぞれ隣同士の径方向階段状片部２７ｇ，すり鉢状片部２８ｋ，２９ｋの隙間部分からカバー上筒状部２７ｃ，２８ｃ，２９ｃの上下方向に連続する形に設定され、ハウジングカバー２７，２８，２９を拡大ハウジング２に取り付ける際に縦板リブ状部２ｈへの進入空間域として作用する計六個の縦切欠状部、
２７ｎ，２８ｎ，２９ｎはそれぞれハウジングカバー２７，２８，２９を拡大ハウジング２に取り付けた状態で縦板リブ状部２ｈの下端面と当接する縦切欠状部底面，
２９ｐはハウジングカバー２８の縦切欠状部２８ｍの周方向入口側を拡大するように略４５度の面取り態様で設けられ、縦板リブ状部２ｈを案内してその当該縦切欠状部の下側部分への進入を容易にするためのテーパー状案内部（図１２参照），
をそれぞれ示している。

　ここで、ハウジングカバー２５～２９はポリプロピレン，ポリエチレン，ポリアセタール，ナイロン，ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。

　ここで、図６～図１２のハウジングカバーありのエアゾールハウジング機構に特徴的な構成要素はハウジングカバー２５～２９であり、その他の構成要素は図２～図４と同じものである。

　内側袋状容器１ｇの上端側内部空間域から内部通路域３ａにいたる内容物放出経路は、拡大ハウジング２およびハウジングカバー２５～２９の間の下方向への外側通路域Ａと、その下流側で当該ハウジング内部の上方向への内側通路域Ｂと、からなっている。

　拡大ハウジング２，ハウジングカバー２５～２９，バルブ機構（３，４，５），ハウジングガスケット６，中間カバー体７およびカバーキャップ８の各構成要素は、その全体を一体化した形のバルブユニットVU態様（エアゾールバルブ）で外容器１ａおよび内側袋状容器１ｇに組み込まれる。

　この組込み前のバルブユニットVUにおけるカバーキャップ８の環状垂下部８ｂはまだクリンプ加工されていない。

　図２，図５～図８，図１０のエアゾール式製品の組立て製造の手順自体は、概略、
(41)外容器１ａの内部に内側袋状容器１ｇをその初期高さ形状を維持する形で組み込み、その開口上端部分から当該内側袋状容器に放出対象内容物（原液）を入れ、
(42)次に、バルブユニットVUを、外容器１ａおよび内側袋状容器１ｇの上端周回部分の内外両側に上方から装着して、拡大ハウジング２の外周面と当該内側袋状容器の上端側内周面とが係合し、かつ、当該バルブユニットの全体が外容器１ａから少し上方に離間した状態に設定し、
(43)次に、周知のガス充填装置により、外容器１ａの上端側外周面とカバーキャップ８の環状垂下部内周面との隙間部分から、未シール状態のハウジングガスケット６の下側部分およびその先の外容器１ａ，内側袋状容器１ｇの隙間部分へ、噴射用ガスを充填し、
(44)同じく周知のガス充填装置により、バルブユニットVUを押し下げ、かつ、カバーキャップ８の環状垂下部８ｂの下端側を内方にクリンプ加工する、
といった作業手順になる。

　上記(41)の工程で外容器１ａに組み込まれた内側袋状容器１ｇは、その蛇腹状部１ｋが初期長さのままで上下方向に収縮せずに、かつ、その下端部分が外容器１ａの底面に当接した起立状態に保持されている。このとき、内側袋状容器１ｇの上端部分は、外容器１ａのそれよりも上方に位置して当該外容器から少し突出した状態になっている。

　また、上記(44)の工程でバルブユニットVUが押し下げられるとき、内側袋状容器１ｇの蛇腹状部１ｋは上記(41)の初期状態から上下方向に縮み、当該内側袋状容器の上端部分も外容器１ａの中に入り込んだ形（図２，図５～図８，図１０）に移行する。

　このように、内側袋状容器１ｇに放出対象内容物（原液）を収容し、次に与圧空間域２３に噴射用ガスを充填して、バルブユニットVUと内側袋状容器１ｇとの一体物を下方に押しながら環状垂下部８ｂの下端側をクリンプ加工することにより、最終的なエアゾール式製品が製造される。

　図６～図１２のハウジングカバーありのエアゾールハウジング機構としてのさらなる特徴は、
(51)放出対象内容物が中央下筒状部２ｄの下開口側から流入して上方の内部通路域３ａへと移動する内側通路域Ｂを備え、当該中央下筒状部には周知の内容物流入用のディップチューブ（図示省略）の取付けも可能な、汎用構造の拡大ハウジング２をそのまま使い、
(52)この汎用構造の拡大ハウジング２をその下方から鞘状のハウジングカバー２５～２９で囲むことにより、ハウジング外周面とハウジングカバー内周面との間に内側袋状容器１ｇの上端側内部空間域から下方向に内側通路域Ｂまで続く外側通路域Ａを形成した、
ことである。

　すなわち、内側袋状容器１ｇの上端側内部空間域を外側通路域Ａの流入部として設定することにより、エアゾール式製品の出荷前などに初期放出操作を一回～数回おこなえば、この上端側内部空間域の残留空気が外部空間域へ放出されるようにしている。

　ここでハウジングカバー２５～２９のいずれを用いても、内側袋状容器１ｇの上端側内部空間域の残留空気が外部空間域へ放出されるのは勿論である。

　図２，図５～図８，図１１のような内外二重エアゾール容器を備えたエアゾール式製品の場合、上記(42)のバルブユニットVUの内側袋状容器１ｇへの装着作業終了後における当該内側袋状容器の上端側内部空間域には、いわば当該バルブユニットの内部空間域に対応した分の空気が必然的に残留する。

　この残留空気層は、放出操作により内容物（原液）とともに外部空間域に圧縮状態で放出されて、噴射内容物の飛び散りの原因となっている。

　図６～図１２のハウジングカバーありのエアゾールハウジング機構は、内側袋状容器１ｇの上端側内部空間域への存在がいわば不可避で悪性の残留空気を、製品完成後の初期放出操作で外側通路域Ａに確実に流入させ、外部空間域に排出する機能を備えている。

　図６～図８および図１０は、それぞれ静止モードの操作ボタン（図示省略）を例えば押下げ操作したときのいわゆる作動モードを示している。

　これら作動モードでは、与圧空間域２３の噴射用ガスの作用で収縮するように付勢されている内側袋状容器１ｇの中の放出対象内容物（原液）が、「外側通路域Ａ－内側通路域Ｂ（縦方向孔部２ｊ－中央上筒状部２ｂ内部）－ステム孔部３ｂ－内部通路域３ａ－操作ボタン通路部（図示省略）」を経て外部空間域へと放出される。

　図２における作動モードとの違いは、内側袋状容器１ｇの中の内容物が最初に外側通路域Ａを経ることである。

　図６～図８および図１０の内外二重エアゾール容器の放出機構のそれぞれで相違する部分はハウジングカバー２５，２６，２７，２８の形状である。

　すなわち、各ハウジングカバーを、拡大ハウジング２の中央上筒状部２ｂの外周面に嵌合させて取り付けた状態で、
(61)図６のハウジングカバー２５は，その幅広環鍔状部２５ｅが拡大ハウジング２の六個の縦板リブ状部２ｈそれぞれの下端面に当接し、
(62)図７のハウジングカバー２６は，その幅狭環鍔状部２６ｆが拡大ハウジング２の六個の縦板リブ状部２ｈそれぞれの下端面に当接し、
(63)図８，図９のハウジングカバー２７は，その径方向階段状片部２７ｇが、個々に、拡大ハウジング２の縦板リブ状部２ｈの隣同士の上端側空間域（内側袋状容器１ｇの上端側内部空間域）まで入り込み、かつ、その縦切欠状部底面２７ｎが縦板リブ状部２ｈの下端面と当接し、
(64)図１０，図１１のハウジングカバー２８は，そのすり鉢状片部２８ｋが、個々に、拡大ハウジング２の縦板リブ状部２ｈの隣同士の上端側空間域（内側袋状容器１ｇの上端側内部空間域）まで入り込み、かつ、その縦切欠状部底面２８ｎが縦板リブ状部２ｈの下端面と当接する、
態様にそれぞれ設定されている。

　これらのハウジングカバー２５，２６，２７，２８の中では、ハウジングカバー２７，２８を用いた場合の外側通路域Ａの入口部分（流入部）が、内側袋状容器１ｇおよび拡大ハウジング２からなる上端側内部空間域であって隣同士の縦板リブ状部２ｈの間ごとに設定される。

　このようにハウジングカバー２７，２８の場合、その外側通路域Ａの入口部分を構成する径方向階段状片部２７ｇまたはすり鉢状片部２８ｋ，２９ｋが隣同士の縦板リブ状部２ｈの間に個々に設定される。

　そのため、放出対象内容物（原液）の注入後の内側袋状容器１ｇにバルブユニットVUを装着したときに縦板リブ状部２ｈの隣同士間の上端側内部空間域それぞれで生じる空気層が、より確実に外側通路域Ａへと流入する。

　すなわち、ハウジングカバー２７，２８の場合、バルブユニットVUの取付け後の内側袋状容器１ｇの縦板リブ状部間に存在する空気は、そこを個々の流入部（入口）とする外側通路域Ａから内側通路域Ｂおよび内部通路域３ａを経て外部空間域へと、より確実に放出される。

　図１２のハウジングカバー２９は、図１０，図１１のハウジングカバー２８の縦切欠状部２８ｍの入口側に、縦板リブ状部２ｈを案内してその進入を容易にするためのテーパー状案内部２９ｐを設けたものである。ハウジングカバー２９を拡大ハウジング２に装着する際に、縦板リブ状部２ｈと縦切欠状部２９ｍの周方向中央部分とが大きくずれていても、テーパー状案内部２９ｐが縦板リブ状部２ｈを当該周方向中央部分に案内して位置合わせするので、容易に装着することができる。テーパー状案内部２９ｐを大きく設けると、縦板リブ状部２ｈとの間に隙間ができて外側通路域Ａの流入部（入口）が下がってしまうので、テーパー状案内部２９ｐの高さは当該テーパー状案内部を含む縦切欠状部２９ｍの全体深さの１／２～１／３程度とするのが望ましい。

　なお、内側袋状容器１ｇに収容した放出対象内容物の接触部分は、ハウジングカバー２５～２９のほか、図２と同様に内側袋状容器１ｇ，拡大ハウジング２，ステム３，コイルスプリング４，ステムガスケット５，ハウジングガスケット６および中間カバー体７である。

　なお、本発明が図１～図１２の内容に限定されないことは勿論であり例えば、
(71)ステム３を駆動する操作部として押下げタイプ，傾動タイプ（スパウトタイプ）などの各種操作ボタンを用いる、
(72)縦板リブ状部２ｈ，１０ｈの個数や厚み，形状などを任意に設定する、
(73)エアゾール容器１の内容器１ｄや内側袋状容器１ｇを省略する、
(74)縦スリット状部１０ｐを、中央上筒状部１０ｂの縦溝状部１０ｆおよびその裏側の凸状外周面であって、縦板リブ状部１０ｈの内側端面と重ならない部分に形成する、
(75)ハウジングカバー２７の縦切欠状部２７ｍの上側部分にハウジングカバー２９のテーパー状案内部２９ｐと同様のテーパー状案内部を設ける、
ようにしてもよい。

　放出対象内容物としては、液状，発泡性（泡状），クリーム状，ペースト状，ジェル状，粉状などの各種性状のものがある。

　本発明が適用されるエアゾール式製品としては、染毛剤，ヘアスタイリング剤，ヘアトリートメント剤，育毛剤などのヘアケア製品，日焼け止め，化粧水，クレンジング，制汗剤，シェービングフォーム，害虫忌避剤などのスキンケア製品，化粧品，洗浄剤，清掃剤，冷却剤，筋肉消炎剤，食品，液滴状のもの（ビタミンなど），医薬品，医薬部外品，塗料，園芸用剤，殺虫剤，クリーナー，消臭剤，洗濯のり，ウレタンフォーム，消火器，接着剤，潤滑剤などの各種用途のものがある。

　容器本体に収容される放出対象内容物は、例えば、粉状物，油成分，アルコール類，界面活性剤，高分子化合物，各用途に応じた有効成分などである。

　粉状物としては、金属塩類粉末，無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク，カオリン，アルミニウムヒドロキシクロライド（アルミ塩），アルギン酸カルシウム，金粉，銀粉，雲母，炭酸塩，塩化マグネシウム，シリカ，酸化亜鉛，酸化チタン，ゼオライト，ナイロンパウダー，硫酸バリウム，セルロース，これらの混合物などを用いる。

　油成分としては、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン油，ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油，パーム油，ユーカリ油，ツバキ油，オリーブ油，ホホバ油などの油脂，流動パラフィン（パラフィン油）などの炭化水素油，ミリスチン酸，パルミチン酸，ステアリン酸，リノール酸，リノレン酸などの脂肪酸，などを用いる。

　アルコール類としては、エタノールなどの１価の低級アルコール，ラウリルアルコールやセタノールなどの１価の高級アルコール，エチレングリコール，１，３－ブチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールなどを用いる。

　界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤，ポリオキシエチレンオレイルエーテルやポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤，ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤，塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。

　高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース，メチルセルロース，ゼラチン，デンプン，カゼインなどを用いる。

　各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル，インドメタシンなどの消炎鎮痛剤，安息香酸ナトリウム，クレゾールなどの除菌剤，ピレスロイド，ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤，パラフェノールスルホン酸亜鉛などの制汗剤，カンフル，メントールなどの清涼剤，エフェドリン，アドレナリンなどの抗喘息薬，スクラロース，アスパルテームなどの甘味料，エポキシ樹脂，ウレタンなどの接着剤や塗料，パラフェニレンジアミン，アミノフェノールなどの染料，過酸化水素水などの酸化剤，アクリル系樹脂やワックスなどのセット剤，パラメトキシケイ皮酸２－エチルヘキシルなどの紫外線吸収剤，レチノールやｄｌ－α－ト コフェロールなどのビタミン，ヒアルロン酸などの保湿剤，リン酸二水素アンモニウム，炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。

　さらに、上記内容物以外の、懸濁剤，乳化剤，酸化防止剤，金属イオン封鎖剤なども用いることができる。

　噴射用ガスとしては、炭酸ガス，窒素ガス，圧縮空気，酸素ガス，亜酸化窒素，希ガス，これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス，ジメチルエーテル，ハイドロフルオロオレフィン，フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。

１：エアゾール容器
１ａ：外容器
１ｂ：上端環状部
１ｃ：環へこみ状部
１ｄ：内容器（図１）
１ｅ：上端内側環状部（図１）
１ｆ：内側環へこみ状部（図１）
１ｇ：内側袋状容器（図２，図５～図８，図１０）
１ｈ：上端内側環状部（図２，図５～図８，図１０）
１ｊ：内側環へこみ状部（図２，図５～図８，図１０）
１ｋ：蛇腹状部（図２，図５～図８，図１０）
１ｍ：容器内面
１ｎ：与圧空間域
２，１０：拡大ハウジング
２ａ，１０ａ：外側筒状部
２ｂ，１０ｂ：中央上筒状部
２ｃ，１０ｃ：環天井部
２ｄ，１０ｄ：中央下筒状部
２ｅ，１０ｅ：外側環凹状部
２ｆ，１０ｆ：縦溝状部
２ｇ，１０ｇ：縦凹状部
２ｈ，１０ｈ：縦板リブ状部
２ｊ，１０ｊ：縦方向孔部
２ｋ，１０ｋ：下内側段部
２ｍ，１０ｍ：上外側段部
２ｎ，１０ｎ：環鍔状部
２ｐ：環状の下向き段部
１０ｐ：スリット状部（図５）
１１：流量調整部材（図５）
１１ａ：環状段部（図５）
３：ステム
３ａ：内部通路域
３ｂ：ステム孔部
３ｃ：内側環凹状部
４：コイルスプリング
５：ステムガスケット
６：ハウジングガスケット
７：中間カバー体
８：カバーキャップ
８ａ：上側環凹状部
８ｂ：環状垂下部
８ｃ：クリンプ加工部
９：パイプ（図１）

（図６～図１２のみで使用）
Ａ：外側通路域（上流側通路域）
Ｂ：内側通路域（下流側通路域）
２５：ハウジングカバー（図６）
２６：ハウジングカバー（図７）
２７：ハウジングカバー（図８，図９）
２８：ハウジングカバー（図１０，図１１）
２９：ハウジングカバー（図１２）
２５ａ～２９ａ：小径の有底筒状部
２５ｂ～２９ｂ：膨らみ部分
２５ｃ～２９ｃ：大径のカバー上筒状部
２５ｄ～２９ｄ：環状の上向き段部
２５ｅ：幅広環鍔状部（図６）
２６ｆ：幅狭環鍔状部（図７）
２７ｇ：径方向階段状片部（図８，図９）
２７ｈ：下面環状部（図９）
２７ｊ：上面環状部（図９）
２８ｋ，２９ｋ：すり鉢状片部（図１０～図１２）
２７ｍ，２８ｍ，２９ｍ：縦切欠状部（図８～図１２）
２７ｎ，２８ｎ，２９ｎ：縦切欠状部底面（図８～図１２）
２９ｐ：テーパー状案内部（図１２）

Claims (10)

1. 　放出対象内容物および噴射用ガスを収容する容器本体の開口側に取り付けられる外側筒状部と、
   　前記外側筒状部の内側に形成されて、内容物放出操作に連動するステムの少なくとも下側部分を収容する中央筒状部と、
   　前記外側筒状部および前記中央筒状部それぞれの上端部分同士の間に形成された環天井部と、
   　前記外側筒状部と前記中央筒状部との間に構造強度を高めるため形成されたリブ状部と、からなり、
   　前記外側筒状部，前記中央筒状部，前記環天井部および前記リブ状部の全体が合成樹脂により一体成形されたものである、
   　ことを特徴とするエアゾールハウジング機構。
2. 　前記リブ状部は、
   前記中央筒状部から前記外側筒状部にかけて放射状に複数形成されている、
   　ことを特徴とする請求項１記載のエアゾールハウジング機構。
3. 　前記中央筒状部は、
   その内周面の一部に内容物通過用の縦溝状部が形成され、
   その外周面の一部であって当該縦溝状部が設けられていない内周面部分の裏側に、縦凹状部が形成されている、
   　ことを特徴とする請求項１乃至２のいずれかに記載のエアゾールハウジング機構。
4. 　前記リブ状部は、
   前記外側筒状部の内周面と、前記中央筒状部の前記縦溝状部の裏側外周面部分との間に形成されている、
   　ことを特徴とする請求項３記載のエアゾールハウジング機構。
5. 　前記環天井部は、
   内端側に形成されて、前記ステムとの間の弁作用を呈するステムガスケットの外周縁部分を保持する環状の下段部と、
   当該下段部の上側に形成されて、当該ステムガスケットの上面部分に設けられる環状のプラスチック製カバー体の外周縁部分を保持する、環状の上段部と、
   を備えている、
   　ことを特徴とする請求項１乃至４のいずれかに記載のエアゾールハウジング機構。
6. 　前記外側筒状部は、
   その外周面が、
   前記環天井部を覆う環状の金属製カバー体の外端側の筒状垂下部と、
   外容器の一部であって、当該筒状垂下部の内側に配設された上端中間環状部と、
   当該外容器の内部空間域に設けられた内容器の一部であって、当該上端中間環状部の内側に配設された上端内側環状部と、
   の三層状態で保護されている、
   　ことを特徴とする請求項１乃至５のいずれかに記載のエアゾールハウジング機構。
7. 　前記中央筒状部は、
   内容物流入用のチューブが取り付けられ得る下側筒状部を備えている、
   　ことを特徴とする請求項１乃至６のいずれかに記載のエアゾールハウジング機構。
8. 　前記中央筒状部の下側を囲む形で設けられて、当該中央筒状部の外周面との間に、前記容器本体の内部空間域上端側から下方向に前記中央筒状部の内部の内側通路域まで続く外側通路域を形成する、上開口のハウジングカバーを備え、
   　外部空間域に噴射される前記放出対象内容物は、
   前記外側通路域を前記上端側から下方向に移動した後、その下流側の前記内側通路域を上方向に移動する、
   　ことを特徴とする請求項１乃至７記載のいずれかに記載のエアゾールハウジング機構。
9. 　前記ハウジングカバーは、
   前記リブ状部の隣同士間に設定される個々の上端側内部空間域に入り込んで前記外側通路域の入口部分として作用する上端側片部を備えた、
   　ことを特徴とする請求項１乃至８記載のいずれかに記載のエアゾールハウジング機構。
10. 　請求項１乃至９のいずれかに記載のエアゾールハウジング機構を備えて、前記容器本体に前記放出対象内容物および前記噴射用ガスを収容した、
    　ことを特徴とするエアゾール式製品。

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