WO2015033374A1 - 車体後部構造 - Google Patents

Abstract

【課題】床下に格納されるスペアタイヤを車体後方から目立ち難くし、車体後部の外観を改善すること。 【解決手段】キャリア支持部材４３をリヤクロスメンバ１８より前側に配置されたガセット４０に取り付け、フック固定座部材４６をリヤエンドクロスメンバ２０より前側に取り付る。

Description

車体後部構造

　本発明は、自動車等の車両の車体後部構造に関し、更に詳細には、リヤフロアパネルの下方（床下）にスペアタイヤを格納する型式の車体後部構造に関する。

　自動車等の車両の車体後部構造として、車体後部の床下にスペアタイヤを格納するものが知られている（例えば、特許文献１、２）。

　この車体後部構造は、棒材等を折曲してなる籠状の吊りキャリア（スペアタイヤキャリア）を床下に有する。吊りキャリアは、車体下面に取り付けられたヒンジによって前部を回動支点として、略水平な姿勢で車体下面との間にスペアタイヤを挟み込むようにしてスペアタイヤを格納するスペアタイヤ収容位置と、後下がり傾斜してスペアタイヤの出入が可能なスペアタイヤ出入位置との間で回動移動であり、車体側より吊り下げられフック部材が当該吊りキャリアの後部に係脱可能に係合することにより、スペアタイヤ収容位置に保持される。

　ヒンジおよびフック部材はスペアタイヤと吊りキャリアとの荷重を受け持つから、これらの取付位置は高い強度を有する部位でなくてはならない。このため、従来、ヒンジおよびフック部材の取付位置は、クロスメンバやテールゲート下部フレームやサイドフレーム等の高強度の車体骨格部材に限られている。

特開２００４－３２２９７４号公報 特開２０１１－２０６５２号公報

　ヒンジおよびフック部材の取付位置が車体骨格部材に限られるため、特に、フック部材の取付位置がリヤエンドクロスメンバやテールゲート下部フレーム等の車体後端部材であることにより、吊りキャリアによるスペアタイヤの格納位置が車体後側になる。このため、床下に格納されているスペアタイヤが車体後方から目立ち、車体後部の外観が悪いものになる。

　本発明が解決しようとする課題は、床下に格納されるスペアタイヤを車体後方から目立ち難くし、車体後部の外観を改善することである。

　本発明による車体後部構造は、前側にリヤフロア凹部（１０Ｄ）を有するリヤフロアパネル（１０）と、前記リヤフロアパネル（１０）の下面側において車体前後方向に延在する左右のリヤサイドフレーム（１２）と、前記リヤフロアパネル（１０）の下面側にあって前記リヤフロアパネル（１０）の後縁部と前記リヤサイドフレーム（１２）の後端部とに接合されて車体幅方向に延在するリヤエンドクロスメンバ（２０）と、前記リヤフロアパネル（１０）の下面側にあって車体幅方向に延在し、前記リヤフロア凹部（１０Ｄ）より後側において両端部を対応する側の前記リヤサイドフレーム（１２）に接合されてリヤクロスメンバ（１８）と、前記リヤフロアパネル（１０）の下面側にあって車体前後方向に延在し、前端部（２２Ａ）を前記リヤクロスメンバ（１８）の車体幅方向の中間部に接合され且つ後端部（２２Ｂ）を前記リヤエンドクロスメンバ（２０）の車体幅方向の中間部に接合されたリヤセンタフレーム（２２）と、前記リヤセンタフレーム（２２）の車体幅方向両側にあって前記リヤクロスメンバ（１８）と前記リヤフロア凹部（１０Ｄ）の下面とに接合されて前記リヤクロスメンバ（１８）および前記リヤフロアパネル（１０）と協働して各々個別の箱形状をなす左右のガセット（４０）と、左右のガセット（４０）の各々に取り付けられた左右の吊りキャリア支持部（４３）と、左右の前端部（４４Ａ）を各々前記左右の吊りキャリア支持部（４３）に上下方向に回動可能に連結され、前記リヤクロスメンバ（１８）および前記リヤセンタフレーム（２２）に対応する車体前後方向位置においてスペアタイヤ（１００）を下側から支持し、上側のスペアタイヤ収容位置と下側のスペアタイヤ出入位置との間に移動可能な吊りキャリア（４４）と、前記リヤセンタフレーム（２２）の側部に接合されたフック固定座部材（４６）と、前記フック固定座部材（４６）に取り付けられて前記吊りキャリア（４４）の後部に係脱可能に係合して前記吊りキャリア（４４）を前記スペアタイヤ収容位置に保持するフック部材（５２）とを有する。

　この構成によれば、吊りキャリア（４４）によるスペアタイヤ（１００）の格納位置を従来のものより車体前側にできるので、床下に格納されるスペアタイヤ（１００）が車体後方から目立ち難くなり、車体後部の外観を改善することができる。ガセット（４０）は、リヤクロスメンバ（１８）とリヤフロア凹部（１０Ｄ）の下面とに接合されてリヤクロスメンバ（１８）およびリヤフロアパネル（１０）と協働して箱形状をなすから、高い剛性、強度が得られ、スペアタイヤ（１００）と吊りキャリア（４４）との荷重を十分に受け持つ強度を確保することができる。

　本発明による車体後部構造は、好ましくは、前記リヤセンタフレーム（２２）の下底面（２２Ａ）は前記リヤクロスメンバ（１８）の下底面（１８Ａ）より上位にあり、前記吊りキャリア（４４）は前記スペアタイヤ（１００）を後上がりの傾斜姿勢で保持する。

　この構成によれば、床下に格納されているスペアタイヤ（１００）が車体後方から更に目立ち難くなり、車体後部の外観を改善することができる。

　本発明による車体後部構造は、好ましくは、前記ガセット（４０）の下底面は、前記リヤクロスメンバ（１８）の下底面（１８Ａ）に連続し、且つ前下りに傾斜している。

　この構成によれば、後突時にスペアタイヤ（１００）が前側に押された際に、ガセット（４０）の下底面を案内面として吊りキャリア（４４）と共にスペアタイヤ（１００）を前側下方に円滑に落下させることができる。

　本発明による車体後部構造は、好ましくは、前記吊りキャリア（４４）によるスペアタイヤ（１００）の保持位置は、車体幅方向の中央位置に対して車体幅方向の一方の側にオフセットした位置に設定され、前記左右のガゼット（４０）及び吊りキャリア支持部（４３）は車体幅方向の中央位置に対して左右対称の位置に配置されている。

　この構成によれば、吊りキャリア（４４）によるスペアタイヤ（１００）の保持位置が車体幅方向の中央位置に対して車体幅方向の一方の側にオフセットした位置に設定されていても、左右のガセット（４０）及び吊りキャリア支持部材（４３）は車体幅方向の中央位置に対して左右対称の位置に配置されているから、ガセット（４０）によるリヤフロアパネル（１０）の強度向上が左右対称に行われ、一方の側に片寄ることがない。

　本発明による車体後部構造は、好ましくは、前記吊りキャリア（４４）によるスペアタイヤ（１００）の保持位置の車体幅方向の一方の側に車載の内燃機関の排気系消音器（３６）が配置されており、前記吊りキャリア（４４）の排気系消音器配置側には排気消音器（３６）から前記スペアタイヤ（１００）への熱伝達を遮断する遮熱板（５２）が取り付けられている。

　この構成によれば、排気系消音器（４４）からスペアタイヤ（１００）への熱伝達が遮断され、スペアタイヤ（１００）が排気熱によって劣化することが回避される。

　本発明による車体後部構造は、好ましくは、前記フック固定座部材（４６）は前記リヤセンタフレーム（２２）の後端と前記リヤエンドクロスメンバ（２０）とがなす隅角部にあって前記リヤセンタフレーム（２２）と前記リヤエンドクロスメンバ（２０）との双方に接合されている。

　この構成によれば、フック固定座部材（４６）の取付強度が高く、フック部材（５２）の吊り下げ強度を、スペアタイヤ（１００）と吊りキャリア（４４）との荷重を十分に受け持つ強度に設定することができる。

　本発明による車体後部構造は、好ましくは、前記リヤフロア凹部（１０Ｄ）より前方の前記リヤフロアパネル（１０）の底部に燃料タンク（３２）が配置されている。

　この構成によれば、スペアタイヤ（１００）と燃料タンク（３２）との車体前後方向のストロークを大きく取ることができ、後突によってスペアタイヤ（１００）が燃料タンク（３２）に衝突する可能性を低減することができる。

　本発明による車体後部構造は、好ましくは、車体前後方向で見て前記吊りキャリア（４４）によるスペアタイヤ（１００）の保持位置に対応する位置の上方に後部座席（５６）が配置される。

　この構成によれば、後部座席（５６）の配置位置がリヤフロア凹部（１０Ｄ）より後側になり、リヤフロア凹部（１０Ｄ）を足置き場に有効に利用することができる。

　本発明による車体後部構造は、好ましくは、前記リヤサイドフレーム（１２）を接合される部分の前記リヤフロアパネル（１０）に当該リヤフロアパネル（１０）を上側から見て凹部になるビード部（１１）が前記リヤサイドフレーム（１２）を接合される部分に沿って車体前後方向に延在している。

　この構成によれば、リヤフロアパネル（１０）の曲げに対する剛性が向上し、後突時に大きい反力を発生し、後突の衝突荷重を受け持つことができる。また、ビード部（１１）は、リヤフロアパネル（１０）を上側から見て凹部になるビード部であるから、ビード部（１１）をワイヤハーネス等の配置部として有効に利用することができ、室内空間の拡大に寄与することができる。

　本発明による車体後部構造によれば、吊りキャリアによるスペアタイヤの格納位置を従来のものより車体前側にできるので、床下に格納されているスペアタイヤを車体後方から目立ち難くなり、車体後部の外観を改善することができる。

本発明による車体後部構造の１つの実施形態を示す下底面図。 本実施形態による車体後部構造の車体前後方向の断面図（図１のII－II断面相当）。 本実施形態による車体後部構造の車体幅方向の断面図（図１のIII－III断面相当）。 本実施形態による車体後部構造のガゼット配置部を下から見上げた斜視図。 本実施形態による車体後部構造の吊りキャリア配置部を下から見上げた斜視図。

　以下に、本発明による車体後部構造の１つの実施形態を、図１～図５を参照して説明する。なお、以下の説明において、「接合」は、特にことわりがない限り、スポット溶接等の溶接による接合である。各部材は、一般鋼板製で、必要に応じて一部の部材が高張力鋼板製であってよい。「ハット形断面形状」は、溝形断面形状部を含み、溝形断面形状部の両側片に、外方に延出したフランジ片（溶接代）を有するものの横断面形状である。また、以下に云う各部の下面および下底面は床下から見た面である。

　車体後部構造は、図１、図２に示されているように、車室後部の床面をなすリヤフロアパネル１０を有する。リヤフロアパネル１０の下面の左右両側には、各々、車体前後方向に延在する左右のリヤサイドフレーム１２が接合されている。リヤフロアパネル１０とリヤサイドフレーム１２とは同様の前下がり後上がりのキックアップ構造になっている。リヤフロアパネル１０について説明すれば、図２によく示されているように、前側に略水平な下位部１０Ａを、後側に略水平な上位部１０Ｂを有し、下位部１０Ａと上位部１０Ｂとが傾斜部１０Ｃによって接続されている。

　リヤフロアパネル１０の上位部１０Ｂの前側には、車室内側（上側）から見て凹部となるリヤフロア凹部１０Ｄが車幅方向の大部分の領域に亘って形成されている。リヤフロア凹部１０Ｄは、前側を傾斜部１０Ｃの上下方向の途中に向けて開放され、後側がリヤフロア凹部１０Ｄの略水平な底部と上位部１０Ｂとを接続する傾斜部１０Ｅになっている。

　左右のリヤサイドフレーム１２は、上方開口のハット形断面形状をしていて各々リヤフロアパネル１０の下面に接合されることにより、リヤフロアパネル１０と協働して箱形断面形状を構成している。左右のリヤサイドフレーム１２の前側部分１２Ａは、キックアップ構造により各々前側において下方に折曲していると共に車幅方向外方に折曲し、前端部を対応する左右のサイドシル１４の後端近傍部に接合されている。この前端部はサイドシル１４の車幅方向内方にあってサイドシル１４と互いに平行に重複する部分１２Ｂを含む。左右のリヤサイドフレーム１２がリヤフロアパネル１０の上位部１０Ｂに対応する後側部分１２Ｃは、各々車体前後方向に一直線上に互いに平行に延在している。

　リヤサイドフレーム１２を接合される部分のリヤフロアパネル１０には、図３に示されているように、リヤフロアパネル１０を上側から見て凹部になるビード部１１が折曲形成されている。ビード部１１は、リヤサイドフレーム１２を接合される部分に沿って車体前後方向に延在し、車体前後方向に長い４個の折曲稜線ａ、ｂ、ｃ、ｄを形成する。

　左右のサイドシル１４は、各々リヤフロアパネル１０の下位部１０Ａの左右の縁部に沿って車体前後方向に延在し、下位部１０Ａの対応する左右の縁部に接合されている。

　左右のサイドシル１４の後端近傍部はミドルクロスメンバ１６によって互いに連結されている。ミドルクロスメンバ１６は、上方開口のハット形断面形状をしていてリヤフロアパネル１０の下位部１０Ａの下面に接合されて車幅方向に延在し、リヤサイドフレーム１２の前端部を接合される位置にて左右両端部を対応する側のサイドシル１４に接合されている。

　左右のリヤサイドフレーム１２の後側部分１２Ｃはリヤクロスメンバ１８によって互いに連結されている。リヤクロスメンバ１８は、上方開口のハット形断面形状をしていてリヤフロアパネル１０の上位部１０Ｂの前側近傍部の下面、換言するとリヤフロア凹部１０Ｄの後側近傍部の上位部１０Ｂの下面に接合されて車幅方向に延在し、左右両端を対応する側のリヤサイドフレーム１２に接合されている。

　左右のリヤサイドフレーム１２の後端部はリヤエンドクロスメンバ２０によって互いに連結されている。リヤエンドクロスメンバ２０は、上方開口のハット形断面形状をしていてリヤフロアパネル１０の上位部１０Ｂの下面に接合されて車幅方向に延在し、左右両端を対応する側のリヤサイドフレーム１２に接合されている。なお、リヤエンドクロスメンバ２０はテールゲート下部フレームと同等の部材である。

　リヤクロスメンバ１８とリヤエンドクロスメンバ２０との断面形状寸法を比較すると、図２によく示されているように、リヤクロスメンバ１８のほうがリヤエンドクロスメンバ２０より大きく、リヤクロスメンバ１８の下底面（下面）１８Ａはリヤエンドクロスメンバ２０の下底面（下面）２０Ａより下位にある。

　リヤクロスメンバ１８とリヤエンドクロスメンバ２０とは車体幅方向の中間部をリヤセンタフレーム２２によって互いに連結されている。リヤセンタフレーム２２は、上方開口のハット形断面形状をしていてリヤフロアパネル１０の上位部１０Ｂの下面に接合されて車体前後方向に延在し、前端部２２Ａをリヤクロスメンバ１８の後面１８Ｂの高さ方向の中間部に接合され、後端部２２Ｂをリヤエンドクロスメンバ２０の下底面２０Ａに接合されている。この接合によってリヤセンタフレーム２２の下底面（下面）２２Ｃは、図２によく示されているように、後側の一部を除く大部分が車体前後方向に長い水平面になっていて、リヤクロスメンバ１８の下底面１８Ａより上位にある。

　左右のリヤサイドフレーム１２の前端近傍部には、図２に示されているように、ブラケット部２４によって左右のトレーリングアーム２６の前部が水平軸線周りに枢動可能に取り付けられている。左右のトレーリングアーム２６は、各々ブラケット部２４による支持部より後方に延在し、後部にて対応する左右の後輪２８を支持している。左右のトレーリングアーム２６は車幅方向に延在するリヤサスペンションビーム３０によって互いに連結されている。後輪２８の懸架装置は、トレーリングアーム式サスペンションと呼ばれている公知のものであるので、その詳細な説明および図示を省略する。

　リヤフロアパネル１０の底部、つまり後部床下に配置される機器としては、図２に示されているように、燃料タンク３２及び車載された内燃機関（図示省略）の排気管３４、排気管３４に接続された消音器３６等がある。燃料タンク３２は、リヤフロア凹部１０Ｄより前方のリヤフロアパネル１０の下位部１０Ａの底部より吊り下げられている。更に詳細には、燃料タンク３２は、左右のリヤサイドフレーム１２とミドルクロスメンバ１６とリヤサスペンションビーム３０とにより囲まれた部位に配置される。排気管３４および消音器３６は、車体幅方向の中央線ＣＬより一方の側（図１で見て左側）にオフセットした位置にリヤフロアパネル１０より吊り下げられている。消音器３６の配置位置は、リヤフロアパネル１０の下位部１０Ａの下方で、一方の側のリヤサイドフレーム１２の車体幅方向内方に極く接近した位置であってよい。なお、リヤフロアパネル１０の下面には、消音器３６の上半分とリヤフロアパネル１０の下位部１０Ａとの間に位置する略半円筒形状の遮熱板３８が取り付けられている。遮熱板３８は消音器３６よりリヤフロアパネル１０への熱伝達を遮断する。

　リヤセンタフレーム２２の車体幅方向両側には、車体幅方向の中央線ＣＬを対称線とした左右対称位置に左右のガセット４０が配置されている。ガセット４０は、板材を折曲したプレス成形品であり、図２、図４に示されているように、名左右の側壁部４０Ａと、左右の側壁部４０Ａを接続する底壁部４０Ｂとを有する上下反転の門形断面形状をしていて、リヤフロア凹部１０Ｄの傾斜部１０Ｅとリヤクロスメンバ１８とリヤフロアパネル１０の上位部１０Ｂとに囲まれた空間を埋める側面形状をしている。この側面形状は、側壁部４０Ａの形状によって決まり、略台形である。

　ガセット４０は、側壁部４０Ａより折曲形成されてリヤクロスメンバ１８の前面１８Ｃに接合される左右の接合片４０Ｃと、側壁部４０Ａより折曲形成されてスチフナプレート４２を挟んでリヤフロア凹部１０Ｄの傾斜部１０Ｅの後面に接合される接合片４０Ｄと、底壁部４０Ｂより後側に延出してリヤクロスメンバ１８の下底面１８Ａに接合される接合片４０Ｄと、底壁部４０Ｂより前側に延出してリヤフロア凹部１０Ｄの下面に接合される接合片４０Ｅとをする。

　ガセット４０は、各接合片４０Ｃ～４０Ｆを対応する各部に接合されることにより、リヤクロスメンバ１８およびリヤフロアパネル１０と協働して各々個別の剛固な箱形状（閉構造）をなす。なお、本実施形態では、リヤフロア凹部１０Ｄ及び傾斜部１０Ｅの部分のリヤフロアパネル１０の下面（ガセット４０の接合部）に、当該部分の補強部材としてスチフナプレート４２が接合されている。

　左右のガセット４０の底壁部４０Ｂがなす下底面は、リヤクロスメンバ１８の下底面１８Ａに連続し、下底面１８Ａよりリヤフロア凹部１０Ｄ下面が下位にあることにより、前下りに傾斜している。

　左右のガセット４０の底壁部４０Ｂには左右の吊りキャリア支持部材４３が取り付けられている。左右の吊りキャリア支持部材４３には、吊りキャリア４４の左右の前端部４４Ａが上下方向に、換言すると、車幅方向の水平な軸線周りに回動可能に連結されている。

　吊りキャリア４４は、図１、図２、図５に示されているように、複数本の金属製棒材（線材）を折曲し接合して籠状に形成されており、スペアタイヤ１００を下側から支持する。吊りキャリア４４は、スペアタイヤ１００の底部を支持する底部４４Ｂと、スペアタイヤ１００の左右両側に位置する左右起立部４４Ｃと、スペアタイヤ１００の前側に位置する前起立部４４Ｄと、スペアタイヤ１００の後側に位置する後起立部４４Ｅとを有し、これらによってスペアタイヤ１００を前後左右に拘束状態で保持する。

　消音器３６が配置される側の左右起立部４４Ｃには遮熱板５４が取り付けられている。遮熱板５４は、吊りキャリア４４によって支持されているスペアタイヤ１００と消音器３６との間に起立した配置されており、消音器３６からスペアタイヤ１００への熱伝達を遮断する。

　吊りキャリア４４によるスペアタイヤ１００の支持位置はリヤクロスメンバ１８の底部およびリヤセンタフレーム２２の底部に対応する車体前後方向位置であり、吊りキャリア４４は、リヤセンタフレーム２２の下底面２２Ｃとリヤクロスメンバ１８の下底面１８Ａとの高低差により、図２によく示されているように、スペアタイヤ１００を後上がりの傾斜姿勢で保持する。

　吊りキャリア４４は、図２に示されている少し前下がりに傾斜した上側のスペアタイヤ収容位置と、スペアタイヤ収容位置より吊りキャリア支持部材４３による車幅方向の水平な軸線を回動中心として図２で見て時計廻り方向に回動して後部が接地する後下がりに傾斜した下側のスペアタイヤ出入位置との間に移動可能である。

　吊りキャリア４４は、図１によく示されているように、左右の前端部４４Ａの車幅方向の折曲オフセット量が互いに異なっていることにより、左右の吊りキャリア支持部材４３が車体幅方向の中央位置（中央線ＣＬ）に対して左右対称の位置に配置されているのに対して、車体幅方向の中央位置に対して車体幅方向の一方の側（消音器３６の反対側）にオフセットした位置に設定されている。この車体幅方向のオフセット配置によって消音器３６の車体幅方向の配置スペースが確保される。

　リヤセンタフレーム２２の消音器配置側とは反対側の側部後端とリヤエンドクロスメンバ２０の前部とがなす隅角部にはフック固定座部材４６が取り付けられている。フック固定座部材４６は略矩形のフランジ部４６Ａを有し、フランジ部４６Ａをリヤフロアパネル１０の下面に接合されていると共に、２辺をリヤセンタフレーム２２とリヤエンドクロスメンバ２０とに双方に接合されている。フック固定座部材４６は頭付きのフック操作ねじ棒４８を吊り下げ支持している。フック操作ねじ棒４８はフック固定座部材４６より床下の下方に突出しており、突出部分にはナット５０がねじ係合している。ナット５０にはフック部材５２が固定されている。

　フック部材５２は、フック操作ねじ棒４８の回転によってナット５０と共に上下移動し、上昇位置にて吊りキャリア４４の後部、本実施形態では後起立部４４Ｅの延長部に形成されたフック係合部４４Ｆに係合して吊りキャリア４４をスペアタイヤ収容位置に保持し、降下位置にてフック係合部４４Ｆの係合より離脱し、吊りキャリア４４がスペアタイヤ収容位置よりスペアタイヤ出入位置へ移動することを許す。フック操作ねじ棒４８の頭部は、リヤフロアパネル１０がフック固定座部材４６の配置位置に対応する部分に形成された不図示の開口よりリヤフロアパネル１０上、つまり車室内に露呈しているので、車室内においてフック操作ねじ棒４８を回転させることができる。

　リヤフロアパネル１０の上位部１０Ｂ上には、図２に示されているように、後部座席６０が配置されている。後部座席６０の配置位置は、車体前後方向で見て吊りキャリア４４によるスペアタイヤ１００の保持位置の上方である。

　上述したように、キャリア支持部材４３がリヤクロスメンバ１８より前側に配置されたガセット４０に取り付けられていると共に、フック固定座部材４６がリヤエンドクロスメンバ２０より前側に取り付けられていることによりフック部材４２もリヤエンドクロスメンバ２０より前側に配置されるから、吊りキャリア４４によるスペアタイヤ１００の格納位置が従来のものより車体前側になる。このことにより、床下に格納されているスペアタイヤ１００が車体後方から目立ち難くなり、車体後部の外観が改善される。

　このことは、リヤセンタフレーム２２の下底面２２Ｃがリヤクロスメンバ１８の下底面１８Ａより上位にあることにより、吊りキャリア４４はスペアタイヤ１００を後上がりの傾斜姿勢で保持するから、より顕著なものになる。

　ガセット４０は、リヤクロスメンバ１８とリヤフロア凹部１０Ｄの下面とに接合されてリヤクロスメンバ１８およびリヤフロアパネル１０と協働して箱形状をなすから、高い剛性、強度が得られ、キャリア支持部材４３の取付部がリヤクロスメンバ１８等の高強度の部位でなくても、スペアタイヤ１００と吊りキャリア４４との荷重を十分に受け持つ強度を確保することができる。

　フック固定座部材４６がリヤセンタフレーム２２の側部に接合されているので、更にはリヤセンタフレーム２２の後端とリヤエンドクロスメンバ２０とがなす隅角部にあってリヤセンタフレーム２２とリヤエンドクロスメンバ２０との双方に接合されているので、フック固定座部材４６の取付強度が高く、フック部材５２の吊り下げ強度を、スペアタイヤ１００と吊りキャリア４４との荷重を十分に受け持つ強度を確保することができる。

　ガセット４０の底壁部４０Ｂがなす下底面が前下りに傾斜していることにより、後突時に衝突荷重によってキャリア支持部材４３あるいは吊りキャリア４４をガセット４０から破断させ、ガセット４０の底壁部４０Ｂがなす下底面を案内面として吊りキャリア４４と共にスペアタイヤ１００を前側下方に円滑に落下させることができる。

　ガセット４０はリヤクロスメンバ１８とリヤフロア凹部１０Ｄとの間の部分のリヤフロアパネル１０の強度を向上することにも寄与する。このことは、消音器３６の配置スペースの確保のために、吊りキャリア４４によるスペアタイヤ１００の保持位置が車体幅方向の中央位置に対して車体幅方向の一方の側にオフセットした位置に設定されていても、左右のガセット４０及び吊りキャリア支持部材４３は車体幅方向の中央位置に対して左右対称の位置に配置されているから、ガセット４０によるリヤフロアパネル１０の強度及び剛性の向上が左右対称に行われ、一方の側に片寄ることがない。

　吊りキャリア４４の消音器４４配置側には遮熱板５２が取り付けられているから、消音器４４からスペアタイヤ１００への熱伝達が遮断され、スペアタイヤ１００が排気熱によって劣化することが回避される。特に、ペアタイヤ１００が吊りキャリア４４に長期間に亘って保持されていても、スペアタイヤ１００が排気熱によって劣化することが回避される。

　リヤフロア凹部１０Ｄより前方のリヤフロアパネル１０の底部に燃料タンク３２が配置されているから、スペアタイヤ１００と燃料タンク３２との車体前後方向のストロークを大きく取ることができ、後突によってスペアタイヤ１００が燃料タンク３２に衝突する可能性が低減する。

　車体前後方向で見て吊りキャリア４４によるスペアタイヤ１００の保持位置に対応する位置の上方に後部座席５６が配置されていることにより、後部座席５６の配置位置はリヤフロア凹部１０Ｄより後側になり、リヤフロア凹部１０Ｄを足置き場に有効に利用することができる。

　リヤサイドフレーム１２を接合される部分のリヤフロアパネル１０にリヤフロアパネル１０を上側から見て凹部になるビード部１１がリヤサイドフレーム１２を接合される部分に沿って車体前後方向に延在しているから、リヤフロアパネル１０の曲げに対する剛性が向上し、後突時に大きい反力を発生し、後突の衝突荷重を受け持つことができる。このことは、ビード部１１が車体前後方向に長い４個の折曲稜線ａ、ｂ、ｃ、ｄを有する形状であることにより、顕著なものになる。また、ビード部１１は、リヤフロアパネル１０を上側から見て凹部になるビード部であるから、ビード部１１をワイヤハーネス等の配置部として有効に利用することができ、室内空間の拡大に寄与することができる。

　以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。

　１０　　リヤフロアパネル
　１０Ａ　下位部
　１０Ｂ　上位部
　１０Ｄ　リヤフロア凹部
　１１　　ビード部
　１２　　リヤサイドフレーム
　１４　　サイドシル
　１６　　ミドルクロスメンバ
　１８　　リヤクロスメンバ
　２０　　リヤエンドクロスメンバ
　２２　　リヤセンタフレーム
　２６　　トレーリングアーム
　２８　　後輪
　３０　　リヤサスペンションビーム
　３２　　燃料タンク
　３６　　消音器
　３８　　遮熱板
　４０　　ガセット
　４３　　キャリア支持部材
　４４　　吊りキャリア
　４４Ｆ　フック係合部
　４６　　フック固定座部材
　４８　　フック操作ねじ棒
　５０　　ナット
　５２　　フック部材
　５４　　遮熱板
　６０　　後部座席
　１００　スペアタイヤ

Claims (9)

1. 　前側にリヤフロア凹部を有するリヤフロアパネルと、
   　前記リヤフロアパネルの下面に接合されて車体前後方向に延在する左右のリヤサイドフレームと、
   　前記リヤフロアパネルの下面側にあって前記リヤフロアパネルの後縁部と前記リヤサイドフレームの後端部とに接合されて車体幅方向に延在するリヤエンドクロスメンバと、
   　前記リヤフロアパネルの下面側にあって前記リヤフロア凹部より後側において車体幅方向に延在し、両端部を対応する側の前記リヤサイドフレームに接合された車体幅方向に延在するリヤクロスメンバと、
   　前記リヤフロアパネルの下面側にあって車体前後方向に延在し、前端部を前記リヤクロスメンバの車体幅方向の中間部に接合され且つ後端部を前記リヤエンドクロスメンバの車体幅方向の中間部に接合されたリヤセンタフレームと、
   　前記リヤセンタフレームの車体幅方向両側にあって前記リヤクロスメンバと前記リヤフロア凹部の下面とに接合されて前記リヤクロスメンバおよび前記リヤフロアパネルと協働して各々個別の箱形状をなす左右のガセットと、
   　左右のガセットの各々に取り付けられた左右の吊りキャリア支持部と、
   　左右の前端部を各々前記左右の吊りキャリア支持部に上下方向に回動可能に連結され、前記リヤクロスメンバおよび前記リヤセンタフレームに対応する車体前後方向位置においてスペアタイヤを下側から支持し、上側のスペアタイヤ収容位置と下側のスペアタイヤ出入位置との間に移動可能な吊りキャリアと、
   　前記リヤセンタフレームの側部に接合されたフック固定座部材と、
   　前記フック固定座部材に取り付けられて前記吊りキャリアの後部に係脱可能に係合して前記吊りキャリアを前記スペアタイヤ収容位置に保持するフック部材とを有する車体後部構造。
2. 　前記リヤセンタフレームの下底面は前記リヤクロスメンバの下底面より上位にあり、前記吊りキャリアは前記スペアタイヤを後上がりの傾斜姿勢で保持する請求項１に記載の車体後部構造。
3. 　前記ガセットの下底面は、前記リヤクロスメンバの下底面に連続し、且つ前下りに傾斜している請求項１または２に記載の車体後部構造。
4. 　前記吊りキャリアによるスペアタイヤの保持位置は、車体幅方向の中央位置に対して車体幅方向の一方の側にオフセットした位置に設定され、前記左右のガセット及び前記吊りキャリア支持部は車体幅方向の中央位置に対して左右対称の位置に配置されている請求項１～３のいずれか一項に記載の車体後部構造。
5. 　前記吊りキャリアによるスペアタイヤの保持位置の車体幅方向の一方の側に車載の内燃機関の排気系消音器が配置されており、前記吊りキャリアの排気系消音器配置側には排気消音器から前記スペアタイヤへの熱伝達を遮断する遮熱板が取り付けられている請求項１～４のいずれか一項に記載の車体後部構造。
6. 　前記フック固定座部材は前記リヤセンタフレームの後端と前記リヤエンドクロスメンバとがなす隅角部にあって前記リヤセンタフレームと前記リヤエンドクロスメンバとの双方に接合されている請求項１～５のいずれか一項に記載の車体後部構造。
7. 　前記リヤフロア凹部より前方の前記リヤフロアパネルの底部に燃料タンクが配置されている請求項１～６のいずれか一項に記載の車体後部構造。
8. 　車体前後方向で見て前記吊りキャリアによるスペアタイヤの保持位置の上方に座席が配置される請求項１～７のいずれか一項に記載の車体後部構造。
9. 　前記リヤサイドフレームを接合される部分の前記リヤフロアパネルに当該リヤフロアパネルを上側から見て凹部になるビード部が前記リヤサイドフレームを接合される部分に沿って車体前後方向に延在している請求項１～８の何れか一項に記載の車体後部構造。

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