WO2014088010A1 - 液面上での微細藻類の培養方法において、液面上の微細藻類から種藻を採取し、別の培養容器で培養を行う方法 - Google Patents

液面上での微細藻類の培養方法において、液面上の微細藻類から種藻を採取し、別の培養容器で培養を行う方法 Download PDF

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Abstract

 微細藻類由来のバイオマスの製造コストを低減させることが可能な微細藻類の培養方法を提供すること。 純菌化工程を経て得られた微細藻類を、第一の培養容器内の培養液中で培養することによって、前記培養液の液面上に微細藻類からなるフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを形成させる第一段目の培養と、 前記培養液の液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの少なくとも一部を種藻として用いることで、前記微細藻類を液面上で培養する第二段目の培養とを含む、微細藻類の培養方法。

Description

液面上での微細藻類の培養方法において、液面上の微細藻類から種藻を採取し、別の培養容器で培養を行う方法
 本発明は、液面上での微細藻類の培養方法において、液面上の微細藻類から種藻を採取し、別の培養容器で培養を行う方法に関する。より具体的には、上記微細藻類の培養方法、該培養方法により液面上に形成されたバイオフィルム、該バイオフィルムから得られるバイオマス及びオイル、並びに、微細藻類由来のバイオマスの製造方法に関する。本発明に係る微細藻類の培養方法は、液面上にバイオフィルムを形成し、エネルギー分野において有用である。
 近年、産業活動の発達などに伴って、大量の化石燃料を使用することによる燃料価格の高騰や、化石燃料を使用することによって大気中に放出された二酸化炭素による温室効果で地球温暖化が進展することや化石燃料の枯渇などが問題となっている。このような問題を解決するための手段として、光エネルギーにより二酸化炭素を固定化し、炭化水素化合物やバイオディーゼル(トリグリセリド)等に変換する能力を有する微細藻類の利用に対する期待が高まっている。例えば、炭化水素化合物を産生する微細藻類を培養することで、光エネルギーを用いて二酸化炭素を固定化し、バイオディーゼルや炭化水素化合物などのバイオマスを産生させる様々な研究が既に行われている。
 ところで、微細藻類などの微生物の存在形態には、例えば外的攻撃から身を守るために、粘性のある分泌物を生産して、高次構造体、いわゆるバイオフィルム(biofilm)(微生物集合体)を形成する存在形態があり、昨今、医療、環境などの分野において大きな注目を集めている。バイオフィルムを形成すると、微生物は個々の性質とは異なる挙動を示し、集合体としての性質を示すようになることが知られている。例えば、バイオフィルムは物理的なバリアを形成しているため、捕食生物からの捕食が、微生物が個々で存在する場合よりもされにくくなるとともに、他の微生物により容易には置き換えられにくくなる。
 微細藻類を用いてのバイオマスの生産には、種々の問題点があり、効率的な微細藻類の培養方法、微細藻類の回収方法、更にはオイル等のバイオマスの抽出方法が開発されておらず、コストが高いため、商業規模での生産は行われていない。その最大の原因の一つが、微細藻類の効率的な回収方法がないことである。具体的には、微細藻類は通常、液中に浮遊しながら生育させるため、微細藻類をバイオマスとして利用するためには、微細藻類を大量の液中から回収しなければならない。加えて、微細藻類の生育のためには光エネルギーが必要であるため、十分な光の照射を確保するためには液中に存在する微細藻類の濃度を過度に高くすることが出来ない。結果として、液中に浮遊する微細藻類を回収するには、多量の水をろ過する必要があった。また、微細藻類のサイズは一般的に小さく、ろ過も容易ではなかった。このような問題を解決するための回収方法の検討として、沈殿剤を用いる方法、遠心分離機を用いる方法、微細藻類をより大型の生物の餌とした後に、該大型の生物を回収する方法などが試みられたものの、いずれの方法も根本的な解決には至らなかった。
 上記のような理由から、微細藻類を効率的、簡便かつ低コストで回収するために、微細藻類を液面上に生育させることが望まれている。
 微細藻類の液面上での生育については、自然に発生するアオコ、ボツリオコッカス(botryococcus)のブルーミング(大量繁殖)や、海洋で発生する赤潮などがある。しかし、これらはいずれも自然界で発生する現象であるので、液面上に発生する微細藻類は多種、多量の不純物と共に入り混じっており、微細藻類が純粋に液面上で生育しているかについては定かではない。なおアオコとは、純菌化を行っていない微細藻類、すなわち、多種の微細藻類から構成され、液面上に浮き、青粉の表記のごとく、粉状になった微細藻類を主とする凝集物のことを言い、本発明に係るバイオフィルムとは異なるものである。
 更に、アオコや赤潮は、有毒化合物を含むことや、その臭いが原因で、養殖業者などが飼育している魚介類などに対して被害を与えている。アオコや赤潮の発生を抑制する研究・開発が行われ、また、発生した場合には、効率よく液面上から取り除く方法に関する研究・開発が行われているが、いずれも効果的な方法がない。特に、アオコや赤潮が発生した場合には、液面上に現れた場合のアオコや赤潮は、液面のみに局在化して存在しているのではなく、液面に最も多く存在し、水深が増すに従って徐々に減少することで存在している(非特許文献1)。従って、アオコや赤潮は、粉状であるが故の回収の困難さと、液面以外にも多くの藻体が存在していることから、効率的な回収法がない。更に、遠心分離機などの高価な装置と大量の電気エネルギーを使用して回収できたとしても、回収物中の含水率は約90%以上と非常に高い(非特許文献2)。
 ボツリオコッカスの培養に関しては、非特許文献3及び4に、ボツリオコッカスがオイルを蓄積した時に、液面上への浮遊性があることが示されている。また、特許文献1には、ボツリオコッカスが液面上に浮くことが要約書に記述されている。しかし、特許文献1では、二酸化炭素と藻とが直接接触することによって、炭化水素化合物の蓄積速度が向上するという現象に基づいて、吸湿性の布の表面上にボツリオコッカスを培養するものであり、液面上に直接ボツリオコッカスが浮いている実施例の記載はない。
 非特許文献5は、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)として、Botryococcus sp. UTEX-2629株を開示しているが、これはボツリオコッカス ブラウニー(Botryococcus Braunii)よりも比重が重く、また、液面上に浮くことに関する記述もない。
 以上のように、従来の技術にはボツリオコッカスが液面上に浮くことについて示唆はあるものの、実際にボツリオコッカスを液面上に浮かせた具体的な態様についての記載はなく、ましてや液面上にバイオフィルムを形成することについての記載はない。
米国特許出願公開第2009/0087889号明細書
エバラ時報 pp.32 No.217(2007-10) NEDOプレスリリース2010年3月17日、アオコから緑の原油の抽出に成功、農業土木学会誌 pp.45, Vol.56, 1988 The Ecology of Cyanobacteria. Their Diversity in Time and Space, B.A. Whitton & M. Potts, Eds, Kluwer Academic (1999), pp. 160 Oceanological Studies, 1998, 第27巻、第1号, 出版社: Index Copernicus p17 Melis et al., J apply Phycol (2010)
 本発明者らは、微細藻類を懸濁処理することによって均一な微細藻類の懸濁溶液を調製し、この状態で培養を開始する培養法を提案してきた。この培養法では、一旦、底面に微細藻類が沈み、培養を継続して数日後に液面上に微細藻類由来のフィルム状の構造物又は三次元状の構造物を形成する。一般的に、微細藻類の培養は、培養規模を数段階に大きくしながら行われることが多い。本発明は、培養規模がある程度大きくなり、微細藻類の懸濁処理の効率が低下する課題を克服するための提案である。本発明は、微細藻類由来のバイオマスの製造コストを低減させることが可能な微細藻類の培養方法を提供することを課題とする。
 微細藻類などの微生物を培養し、培養した微生物からバイオディーゼルや炭化水素化合物などのバイオマスを取り出すことは非常に注目されているが、未だ商業規模での生産は行われてはいない。その理由の一つが、油田などから得られた化石由来エネルギー資源と比較して、まだ製造コストが高すぎることである。この製造コスト高の主要な原因は、液中に分散したサイズの小さな微細藻類を液中から回収するための回収コストが高いこと、一般的にバイオマスを生産するためには広大な面積が必要であり、この広大な面積に対して、二酸化炭素を均一かつ低コストで導入する方法がないこと、二酸化炭素供給のための配管が非常に長距離になりその設置コストが高いこと、受光面あたりの藻類バイオマスの生産量が低いこと、並びに藻類が分散した液体培地を攪拌するための装置及び作動コストが高いこと、回収物の含水率が高く、続くオイル抽出工程時の脱水工程にエネルギーが必要であること、大量の液体培地のハンドリングが困難かつ高エネルギー要求工程であることなどである。
 また本発明の別の目的は、本発明に係る培養方法により液面上に形成されたバイオフィルム、該バイオフィルムから得られるバイオマス及びオイル、並びに、微細藻類由来のバイオマスの製造方法を提供することである。
 これまで、本発明者らは、微細藻類を懸濁処理し、微細藻類を含む溶液を均一にした後に培養液に導入し、一旦、微細藻類を培養容器中の培養液の底面に沈降させた後に、数日間継続して培養を行うことによって、液面上に微細藻類から構成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを形成させてきた。この方法では、少なくとも培養初期において、懸濁処理により均一な微細藻類からなるフィルム状の構造物を形成することは可能であったが、培養容器底面への微細藻類の移動、及び、培養容器底面から液面上への藻の移動にある一定の時間が必然的に費やされてしまった。
 また、一般的には、微細藻類の培養は、広大な面積を一回の培養で培養することはなく、培養容器(培養池)の大きさを順次大きくしながら培養を行っている。培養容器が小さい段階での培養では、液面上の微細藻類を回収した後、微細藻類を懸濁処理し、より大きな培養容器の培地と均一な微細藻類溶液を調製後、培養をスタートさせることは可能である。しかし、培養容器が大きくなってくると、懸濁処理に要する時間やそのための装置の導入、メンテナンス、装置の製造及び作動のためのエネルギー量が無視できなくなる。更に、次の培養を行う培養溶液との大量かつ均一な混合が必要である。これら両者とも、工程増加による煩わしさ及び投入エネルギー量に対して獲得エネルギー量の比が小さくなることが予想される。
 本発明は上述の課題を解決するための知見に基づいて完成したものであり、以下の構成を有する。
〔1〕
 純菌化工程を経て得られた微細藻類を、第一の培養容器内の培養液中で培養することによって、前記培養液の液面上に微細藻類からなるフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを形成させる第一段目の培養と、
 前記培養液の液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの少なくとも一部を種藻として用いることで、前記微細藻類を液面上で培養する第二段目の培養とを含む、微細藻類の培養方法。
〔2〕
 前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部又は全てを、前記第一の培養容器から回収し、該回収したバイオフィルムを第二の培養容器中へと移して、該第二の培養容器内の培養液中で種藻として用いることで、前記第二段目の培養を行う、〔1〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔3〕
 前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部を、基板を用いて複数回回収し、該回収したバイオフィルムを複数個の第二の培養容器中へと移して、該複数個の第二の培養容器それぞれの内の培養液中で種藻として用いることで、前記第二段目の培養を行う、〔1〕又は〔2〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔4〕
 前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部を、前記第一の培養容器から回収し、前記第一の培養容器内の培養液中で、前記第一の培養容器内に残ったバイオフィルムを種藻として用いることで、前記第二段目の培養を行う、〔1〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔5〕
 前記第一段目の培養と前記第二段目の培養との間に、前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを分割する分割処理を行うことを更に含む、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔6〕
 バイオフィルムが実質的に存在する領域と、実質的に存在しない領域とが共存している液面に対して分割処理を行う、〔5〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔7〕
 前記分割処理により、バイオフィルムが実質的に存在しない領域に、分割されたバイオフィルムを移動させる、〔6〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔8〕
 前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを、複数個のバイオフィルム回収部位を持つ一枚の基板を用いて回収する、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔9〕
 前記第二の培養容器の面積が、前記第一の培養容器の面積より大きい、〔2〕、〔3〕及び〔5〕~〔8〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔10〕
 前記第一段目の培養後に、液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを有する前記第一の培養容器を、前記第二の培養容器に沈めることによって、前記バイオフィルムを前記第二の培養容器の液面上に浮かせて前記第二の培養容器へと移す、〔9〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔11〕
 前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部を前記第一の培養容器から回収する際に、液面の面積の25%以上75%以下の面積のバイオフィルムを回収する、〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔12〕
 前記第一段目の培養及び第二段目の培養が共に静置培養である、〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔13〕
 前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを、基板の表面に転写又は堆積させることで回収する、〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔14〕
 前記微細藻類が緑藻である、〔1〕~〔13〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔15〕
 前記微細藻類がオイルを含む微生物である、〔1〕~〔14〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔16〕
 前記微細藻類が、ボツリオコッカス属(Botryococcus sp.)である、〔1〕~〔15〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔17〕
 前記微細藻類が、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)である、〔16〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔18〕
  前記微細藻類が、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus) AVFF007株(受託番号FERM BP-11420)である、〔17〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔19〕
 〔1〕~〔18〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法により、液面上に形成されたバイオフィルム。
〔20〕
 〔19〕に記載のバイオフィルムから得られるバイオマス。
〔21〕
 〔19〕に記載のバイオフィルムから得られるオイル。
〔22〕
 〔1〕~〔18〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法を含む、微細藻類由来のバイオマスの製造方法。
 本発明に係る微細藻類の培養方法によれば、微細藻類の懸濁溶液を調製することなく、次の培養を行うことができる。更に、微細藻類の懸濁溶液を次の培養容器内に導入し、培養容器内に存在している培地全体を攪拌処理する必要がなく、実質的に液面上の微細藻類バイオフィルムのみを液面上で攪拌又は分散することが可能となり、効率的な培養を行うことができる。更に、液面上でのバイオフィルムの形成が可能となり、従来の浮遊培養と比較して、微細藻類の回収が極めて容易になる。即ち、本発明では、微細藻類を回収する段階では、微細藻類の集合体から構成されたバイオフィルムが液面上に浮かんでおり、そのバイオフィルムを回収対象としているため、従来のように大量の培地から微細藻類を回収する必要がなく、液面上のバイオフィルム及びバイオフィルムに含まれている水分のみを回収対象としている。そのため、微細藻類の回収コストを大幅に低下できる。また、大量の液体培地をハンドリングする必要が無く、大量の水を使用する必要が無い。
本発明の培養方法の基本的な構成を示す図である。 本発明の培養方法における、液面上のバイオフィルムの部分的な回収の様子を示す図である。 第一段目の培養で得られたバイオフィルムの、第二段目の培養における培地の液面上への導入法の一例を示す図である。 液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを異なる培養容器に移動させる方法の一例を示す図である。 液面上に形成した、微細藻類から構成されたバイオフィルム(図5においてはフィルム状の構造物)を、第二の基板(ガラス基板)を用いて回収している様子である。 図5の液面上に形成したバイオフィルムを回収した後に、第二の基板(ガラス基板)上に堆積したバイオフィルムの様子である。 CSiFF03培地の組成である。 CSiFF01培地の組成である。 実施例1における第二段目の培養日数と、液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を示す図である。 第二段目の培養を開始してから21日後の、実施例1及び参考例1において液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量の結果と、第二段目の培養を開始してから0日後の乾燥藻体量の結果とを示す図である。 CSi培地の組成である。 実施例2における第二段目の培養開始から0日後、4日後、7日後、11日後及び13日後の液面上の微細藻類の写真を示す図である。 CSiFF04培地の組成である。 第二段目の培養における水深と、第二段目の培養を14日間行った後の液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を示す図である。 第一段目の培養後に液面上に残したバイオフィルムの割合と、第二段目の培養後に液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量及び微細藻類の増殖倍率との関係を示す図である。 実施例5で調製した“部分収穫なし”、“親”及び“子1”~“子3”と表記した培養容器について、第二段目の培養の開始から4日後及び12日後に液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量の結果を示す図である。 C培地の組成である。 AVFF007株の顕微鏡写真(倍率40倍)を示す図である。 BLAST解析に使用したAVFF007株の塩基配列(配列番号1)である。 微細藻類ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus) AVFF007株の系統図である。 培養開始から収穫までの培養における“親”と“子”の関係を示す図である。
 以下、本発明の微細藻類の培養方法の実施の形態について詳細に説明する。
 本発明の微細藻類の培養方法は、純菌化工程を経て得られた微細藻類を、第一の培養容器内の培養液中で培養することによって、培養液の液面上に微細藻類からなるフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを形成させる第一段目の培養と、上記培養液の液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの少なくとも一部を種藻として用いることで、微細藻類を液面上で培養する第二段目の培養とを含む。
 本発明の微細藻類の培養方法は、液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、少なくとも部分的にバイオフィルムの構造を保持したまま、新しい液面上に移動又は元々存在していた液面上に維持し、その液面上でバイオフィルムを再度育成させるように培養するものである。
 本発明によれば、微細藻類の懸濁溶液を調製することなく、次の培養を行うことができる。更に、微細藻類の懸濁溶液を次の培養容器内に導入し、培養容器内の培地全体を攪拌処理する必要がなく、液面上の微細藻類バイオフィルムのみを攪拌又は分散することが可能となり、効率的な培養を行うことができる。更に、従来の様に液体培地中に分散しているサイズの非常に小さな微細藻類を回収するのではなく、液面上に形成されたバイオフィルムを回収対象にしていることから、回収が容易になる。更に、従来の液体培地中での浮遊培養の場合には、微細藻類を回収した後にも大量の水分が残存しており、それらの水分を除去するために遠心操作や蒸発操作などのエネルギー効率の低い操作を行う必要があったが、本発明の方法では、微細藻類が高密度に集合した形態であるバイオフィルムを回収対象としているため、前記の方法と比較して低含水率の回収物を得ることができる。
 また、本発明の方法では、気液界面上での培養であることから、藻体の乾燥による死滅が少ない。
 本発明の微細藻類の培養方法は、第一の形態として、上記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部又は全てを、第一の培養容器から回収し、該回収したバイオフィルムを第二の培養容器中へと移して、該第二の培養容器内の培養液中で種藻として用いることで、第二段目の培養を行うことが好ましい。
 上記第一の形態において、第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部を、基板を用いて複数回回収し、該回収したバイオフィルムを複数個の第二の培養容器中へと移して、該複数個の第二の培養容器それぞれの内の培養液中で種藻として用いることで、第二段目の培養を行うことがより好ましい。
 上記第一の形態において、第二の培養容器の面積が、第一の培養容器の面積より大きいことが好ましい。
 更に、第一段目の培養後に、液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを有する第一の培養容器を、第二の培養容器に沈めることによって、上記バイオフィルムを第二の培養容器の液面上に浮かせて第二の培養容器へと移すことが好ましい。具体的には後述の図3に示した方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
 また本発明の微細藻類の培養方法は、第二の形態として、上記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部を、第一の培養容器から回収し、第一の培養容器内の培養液中で、第一の培養容器内に残ったバイオフィルムを種藻として用いることで、第二段目の培養を行うことも好ましい。
 本発明の微細藻類の培養方法は更に、第一段目の培養と第二段目の培養との間に、上記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを分割する分割処理を行うことを含むことが好ましい。
 以下、本発明の微細藻類の培養方法の詳細について説明する。
[微細藻類]
 本発明における微細藻類は、典型的には液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類であり、液面上においてバイオフィルム形成能を有する微細藻類である。
 本発明で言う微細藻類とは、人の肉眼では、その個々の存在が識別できないような微小な藻類を指す。微細藻類の分類としては、液面上においてバイオフィルム形成能を有するものであれば特に制限はなく、原核生物及び真核生物のいずれであってもよい。
 前記微細藻類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、藍色植物門、灰色植物門、紅色植物門、緑色植物門、クリプト植物門、ハプト植物門、不等毛植物門、渦鞭毛植物門、ユーグレナ植物門、クロララクニオン植物門などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記微細藻類としては、緑色植物門が好ましく、緑藻であることがより好ましい。バイオマスを産生する点で、前記微細藻類としては、オイルを含む微生物であることが好ましく、ボトリオコッカス属(Botryococcus sp.)がより好ましい。
 前記微細藻類を入手する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自然界より採取する方法、市販品を用いる方法、保存機関や寄託機関から入手する方法などが挙げられる。
 本発明で言うバイオフィルムとは、微生物から構成されているフィルム状の構造物又は後述する立体的な三次元状の構造物のことを言い、通常、岩やプラスチック表面に付着している微生物構造体(微生物集合体又は微生物膜)のことを言うが、本発明では、これらに加えて、液面のような流動性のある表面に対して、存在している微生物から構成されたフィルム状の構造物又は後述する立体的な三次元状の構造物のこともバイオフィルムというものとする。なお、一般的には、特に、自然界でのバイオフィルムには、微生物以外に、ゴミや植物の破片などを含んでいるが、本発明でもこれらを含んでいてもよいものとする。但し、例えば、屋外の様なオープンな環境では、前記の目的微生物以外の混入の回避は不可能であるために、本発明では意図的にこれらを含ませた試料を対象としていない。しかし、微細藻類の回収の効率の観点から、バイオフィルムはゴミや植物の破片などの不純物を含まないことが好ましく、理想的には、本発明に係る微細藻類と該微細藻類の増殖時に分泌される細胞間マトリックスなどのような物質のみから構成されていることがより好ましい。また、本発明では、バイオフィルムは、個々の微細藻類同士が直接又は細胞間マトリックスのような物質を介して付着しあっている構造であることが好ましい。
 本発明における液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類は、微細藻類ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)が好ましい。本発明に係る微細藻類の18S rRNAの遺伝子領域をコードする塩基配列のうち、一部の領域の、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)に相当する塩基配列との相同性が95.0%以上99.9%以下であることがより好ましい。なお、ここで言う「一部の領域」とは、1000塩基配列以上の領域を意味する。相同性を試験するにあたっては、全塩基配列を用いての相同性の試験が最も信頼性が高いが、全塩基配列を決定することは極少数の生物種を除いて技術的にもコスト的にも困難であり、またボツリオコッカス スデティクスの塩基配列も特定の一部(具体的には、後述する比較対象としたAVFF007株の塩基配列に対応する塩基配列の近傍)しか公開されていない。更に、一般的には1000塩基配列程度読めば帰属は可能といわれている。以上のことから、本発明では「一部の領域」の塩基配列の比較により相同性を試験したが、その信頼性は十分に高いものと考えられる。
 また本発明にかかる微細藻類は、液面上における増殖速度が大きいことが好ましく、具体的には、液面上の微細藻類の対数増殖期における増殖速度(すなわち、対数増殖期の期間における一日あたりの平均増殖速度)が、乾燥重量で0.1g/m/day以上であることが好ましく、1g/m/day以上であることがより好ましく、5g/m/day以上であることが更に好ましく、10g/m/day以上であることが最も好ましい。液面上の微細藻類の対数増殖期における増殖速度は、乾燥重量で一般的に1000g/m/day以下である。
 特に、液面上での培養及び液面からの回収が良好であること、高い増殖速度を持つこと、オイルを高い含有率で含有していること、少なくとも培養中は臭いが殆どなく、有毒物質の発生も確認されていないことなどの観点から、本発明にかかる微細藻類は、微細藻類ボツリオコッカス スデティクス AVFF007株(以下、AVFF007株と略称する。)であることがより好ましい。
 本明細書の実施例で使用した微細藻類、AVFF007株は、受託番号FERM BP-11420として、2011年(平成23年)9月28日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)[国際寄託時は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1 中央第6)]にブタベスト条約の下で国際寄託されている。
 AVFF007株は、本発明者らが京都府の池から単離したボツリオコッカス属スデティクス種に属する淡水微細藻類の新規株である。
 以下に、該微細藻類の単離方法(以下、純菌化ともいう)及び該微細藻類のAVFF007株を新規株と判定するに至った経緯を説明する。
(微細藻類AVFF007株の純菌化)
 京都府の池から自然淡水を5mLのホモジナイズ用チューブ(株式会社トミー精工、TM-655S)に入れることで採取した。図17に示すC培地と、図11に示すCSi培地との1:1混合(体積比)培地を1.9mL入れた24穴プレート(アズワン株式会社、微生物培養プレート1-8355-02)に、採取してきた自然淡水を100μL加え、プラントバイオシェルフ組織培養用(株式会社池田理化、AV152261-12-2)に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約1ヵ月後、24穴プレートのウェル内に黄色い凝集物が生じたので、光学顕微鏡で観察したところ、多数の微生物の存在を確認した。
 アガロース(inviterogen, UltraPureTM Agarose)を1g秤量し、200mLのC培地とCSi培地との1:1混合(体積比)培地を500mL三角フラスコに入れた。これを121℃で10分間オートクレーブ処理し、クリーンベンチ内でアズノールシャーレ(アズワン株式会社、1-8549-04)の中に、冷えて固まる前に約20mLずつ入れることで、アガロースゲルを作製した。
 24穴プレート内の微細藻類を含む溶液を希釈し、ディスポスティック(アズワン株式会社、1-4633-12)のループ部分に溶液を付着させ、前記にて準備したアガロースゲル上に塗ることで、アガロースゲル上に微細藻類を塗布したシャーレを調製した。
 このシャーレを、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約2週間後、緑色のコロニーが、アガロースゲル上に現れたので、滅菌竹串(アズワン株式会社、1-5980-01)を用いて、コロニーをその先端に付着させ、C培地とCSi培地との1:1混合(体積比)培地を2mL入れた24穴プレートのウェル内に懸濁させた。この様にして調製した微細藻類を含む24穴プレートをプラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約2週間後、ウェル内の水溶液が緑色を呈してくるので、すべてのウェルから少量の溶液を採取し、光学顕微鏡を用いて微細藻類を観察し、単一の微細藻類しか存在していないと考えられるウェルを見つけ出すことで、純菌化を行った。
 なお、C培地及びCSi培地の組成は、図17及び図11に示す通りで、いずれも、900mLの蒸留水を121℃、10分間のオートクレーブ処理をし、10倍濃度のC培地又はCSi培地を100mL調製後、ポアサイズ0.45μmのフィルターで滅菌を行った溶液と混合することで調製した。
 また、AVFF007株の40倍での顕微鏡写真を示す図を、図18に示した。
(形態的性質)
・分散処理を行った後にしばらく時間を置くと、底面に沈む。
・しばらく培養を行うと、液面上に浮くものが現れる。従って、底面に沈んでいるものと液面に浮いているものとに分かれる。更に培養を継続すると、液面上にフィルム状の構造物が現れる。更に培養を行うと、三次元状の構造物が現れる。
・液面のもの、及び、底面のもの、いずれも形態は球状であり、それぞれサイズは一定ではなく分布を持つ。
・凝集性があり、巨大なコロニーを形成する
・色は緑色であり、培養の進行に伴って、黄色く変色する。
・培養中及び回収物の臭いはほとんどないが、生野菜のような臭いを感じることがある。回収物中から溶媒を除去したものは、硫黄のような臭いがする。
(培養的性質)
・淡水中で成育し、海水中での増殖は極端に遅くなる。海水が数%混入するだけでも増殖速度に影響を及ぼす。
・細胞増殖時には、遊走子によって増殖する。1個の細胞から、遊走子は数個から十数個発生する。
・光合成による光独立栄養培養が可能である。
・増殖には、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、マンガン、鉄が必須である。他に、亜鉛、コバルト、モリブデン、ホウ素が入っていると好適に増殖する。ビタミン類の添加も増殖を促す。
(生理学的性質)
・生育温度は、37℃以下である。温度が高いほど増殖性は良い。
・40℃ではほとんど増殖しないが、40℃環境下でも少なくとも数時間は耐える。
・生育pHは、5以上9以下である。培地の種類に依存して、生育後のpHは8以上、例えばpHが10.5になる場合がある。
・光や熱を与えると、カロテノイドを生成しやすくなる。
・菌体内にオイルを蓄積し、乾燥重量比で10wt%から30wt%蓄積する。
・液面に浮いている藻体は、底面に沈んでいる藻体よりもオイル含有量が高い。
・オイルは、炭化水素化合物と脂肪酸が主成分。脂肪酸は、C16:0,C16:1,C18:1,C18:2が主である。炭化水素化合物は、C17,C21が主である。
・Nile red染色したAVFF007株を蛍光顕微鏡で観察すると、蛍光視野中の藻体において、明るい蛍光発色の領域としてNile redで発色したオイルの存在が確認される。該オイルは藻体細胞内の広い領域に蓄積されうる。
・スライドガラス上にAVFF007株を含む培養液を滴下し、カバーガラスをかけて顕微鏡下観察すると、AVFF007株からオイル状の油滴が放出される。
・液面に浮いている藻体は、底面に沈んでいる藻体よりも比重が軽いが、水よりも重い。
・光量は、200~800μmol/m/sが好適に増殖できる光量であるが、40μmol/m/s程度でも、1500μmol/m/s程度でも好適光量の半分程度の増殖速度で増殖は可能である。
 更に以下の方法に従って、AVFF007株の同定を行った。
(微細藻類AVFF007株の同定)
 AVFF007株の培養法は、100mL容量の三角フラスコに50mLのCSi培地を導入し、1000×10個/mLのAVFF007株溶液を0.5mL添加し、25℃、光照射下で振盪培養を14日間行った。
 AVFF007株の乾燥粉末を得るために、前記によって得られたAVFF007株を含む培地40mLを遠心機(MX-300(トミー精工製)を用いて、6000×g、4℃下、10分間遠心操作を行った。上清を除去した後、固形物を容器ごと液体窒素を使用して凍結し、これを予め液体窒素によって冷やしておいた乳鉢に全量移し、予め液体窒素にて冷やしておいた乳棒を用いて粉砕した。
 微細藻類からのDNAの抽出は、DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen製) を用いて、記載されているマニュアルに従って抽出を行った。抽出後のDNAは、e-spect (malcom製)を用いて、純度、量を測定した。抽出後のDNAは、精製度の指標であるA260nm/A280nm=1.8以上を達成しており、約5ng/μLのDNAが取得されたことを確認した。
 抽出後のDNAの純度は問題なかったことから、超純水を用いて10倍に希釈することで、PCR用の試料を準備した。PCR用の試料としては、18S rRNAの遺伝子領域(rDNA領域)を使用した。PCRは、GeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems製)を用いて、98℃10秒間、60℃50秒間、72℃10秒間のサイクルを30回行った。なお、使用した酵素は、Prime Star Max (タカラバイオ製)である。得られたPCR産物は1%アガロース電気泳動により、単一バンドであることを確認した。
 PCR生成物の精製は、PCR purification kit (Qiagen製)を用いて行った。方法は、マニュアルに記載の方法に従って行った。PCR反応が十分にできたかどうか、また、精製度を確認するために、e-spectを用いて、純度、量を測定し、A260nm/A280nm=1.8以上であったことから、問題ないと判断した。
 次に、精製物を鋳型とし、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing kit (Applied Biosystems製)を用いて、サイクルシークエンスを行った。条件は、マニュアルに従った。得られた反応物をABI PRISM 3100-Avant Genetic Analyzer(Applied Biosystems製)を用いて、塩基配列の解読を行った。
 これをBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)による相同解析を行った。方法は、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)のデータ上の全塩基配列情報に対し、上記配列をBLAST検索し、最も相同性の高い生物種をAVFF007株の近縁種とした。比較対象とした塩基配列(1111塩基、配列番号1)についてのみ、図19に示した。具体的には、解読した塩基配列の両端の数塩基は、BLAST解析によって比較対象とされなかったので、図19には示さなかった。なお、図19に示した塩基配列の左上が5’末端であり、右下が3’末端である。
 相同解析の結果、Botryococcus sp. UTEX2629株と、Botryococcus sp. UTEX2629株側の1118塩基中、AVFF007株側の1109塩基に相同性(すなわち、99%の相同性)があった。従って、AVFF007株は、Botryococcus sp. UTEX2629株に近縁の微細藻類であると分類した。
 以上の解析の結果得られた系統図を図20に示す。AVFF007株は、Characiopodium sp. Mary 9/21 T-3wとも近縁の微生物であり、AVFF007株は、今後、Characiopodium 属に名称が変更される可能性もあり、本発明では、ボツリオコッカス スデティクスの名称が変更された場合には、AVFF007株も同様に名称が変更されるものとする。また、Characiopodium属以外の名称に変更された場合にも同様の処置が行えるものとする。
(微細藻類AVFF007株の密度測定)
 10mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA, Ethylenediamine-N,N,N’,N’-tetraacetic acid)、5mM HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid) KOH (pH 7.5)の溶液に塩化セシウムを溶解させることで、塩化セシウム濃度10%ごとに塩化セシウム濃度が35~105%(w/v)の溶液を調製し、Polyallomer tube (日立工機製)内にtube先端部から液面部に向かって濃度が薄くなるように濃度勾配を作成した。
 このチューブの上面に5×10個/mLのAVFF007株をアプライし、遠心機を用いて、20000×g、4℃、30分間の遠心処理を行った。
 液面上に浮遊している藻体の細胞密度は1.26g/mLであり、非特許化文献3に記載のBotryococcus sp. UTEX-2629株の細胞密度、1.34 g/mLよりも軽かった。
 以上から、密度の観点からもBotryococcus sp. UTEX-2629株と完全に同一のものではなく、Botryococcus sp. UTEX-2629株に近い微細藻類であると判断した。
 更に、Botryococcus sp. UTEX-2629株と近縁の微細藻類であることは、非特許化文献5の図3と、図18に示したAVFF007株の顕微鏡写真を示す図とを見比べると、それらがほぼ同一の形態であることからもわかる。
 なお本発明の培養方法によれば、上記AVFF007株以外の微細藻類でも、培養条件を好適な条件とすることにより、液面上でのバイオフィルムの形成が可能になると考えられる。
 [本発明の方法]
 本発明の培養方法の基本的な構成を図1に示した。なお、本模式図は、本発明を説明するためのものであることから、簡略化して表記されている部分がある。
 まず第一段目の培養について説明する。図1の(a)に示した様に、液面浮遊培養によって、液面上に微細藻類のフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを形成させる。形成方法は、微細藻類の懸濁溶液又は分散溶液を調製し、静置状態にすることで、微細藻類の種類に応じて、数秒から数十分で微細藻類を底面に沈む。この状態で、微細藻類をしばらく培養することで、液面上に微細藻類から構成されたバイオフィルムが形成される。第一段目の培養で使用する微細藻類はこのようにして調製しても良いし、後述する様に、図1の(g)の状態又は図1の(j)の状態から調製しても良い。すなわち、液面上に浮遊させた微細藻類バイオフィルムから調製しても良い。
 本発明の微細藻類の培養方法においては、上述の第一段目の培養により液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの少なくとも一部を回収し、回収したバイオフィルム又は回収後に残ったバイオフィルムの少なくとも一方を種藻として用いて、第二段目の培養を行う。
 基板を用いた液面上のバイオフィルムとしての微細藻類の回収方法は、第一の基板を用いた方法と第二の基板を用いた方法の二種がある。
 第一の基板を用いた液面上の微細藻類の回収法は以下の通りである。すなわち、液面上の微細藻類から構成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物に対して、図1の(b)の様に、第一の基板を接触させることで、第一の基板の表面にバイオフィルムを転写する(図1の(c))。この転写したバイオフィルムを第一の基板から剥離させることで、藻体を回収することができる。なお、培養容器の液面全面に対して第一の基板を接触させてもよいし、部分的に接触させても良いし、全面又は部分的な接触を複数回繰り返しても良い。複数回接触させることで、液面上の微細藻類の回収量が向上する。上記において、第一の基板の表面に、フィルム状の構造物を重ねるようにして転写することもできる。なお、この方法の対象となるバイオフィルムの構造は、その転写効率が良いことからフィルム状の構造物を好適に使用できる。
 第二の基板を用いた液面上の微細藻類の回収法は以下の通りである。すなわち、液面上の微細藻類から構成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物に対して、図1の(d)に示したように液面上の微細藻類を第二の基板を用いてかき集めるように回収する。図では、右側から左側に基板を移動させることをイメージして図示している。第二の基板の移動方向は、逆でも良いし、複数回に分けて回収しても良い。複数回に分けて回収する場合には、微細藻類を付着させたままの第二の基板を用いても良いし、第二の基板の表面から微細藻類を全部又は部分的に除去した後の第二の基板を用いても良い。また、図1では1枚の第二の基板しか記していないが、複数枚以上の第二の基板を同時に用いても良い。第二の基板の角度や大きさ、速度などは目的に応じて自由に設定することができる。
 基板を用いた回収方法は、第二の基板を用いた回収方法の方が、基板からのバイオフィルムの脱着性が良いこと、一般的には、第二の基板を用いた回収方法の方が基板面積が小さいことからより好適に用いることができる。
 本発明は、前記の回収時に、液面上の微細藻類を部分的に残しておくことも可能である。残す割合は、培養状況に応じて任意に決めることができる。
 部分的回収法としては、図2の上方より見た図2の(a)や(c)の様に、培養容器の側面と液面とが接触する部位側を回収する方法、図2の(b)や(d)の様に、培養容器の側面と培養容器の側面との間の領域を回収する方法などを行うことができる。なお図2において、白の部分がバイオフィルムとしての微細藻類を回収(収穫)した部分であり、色がついている部分がバイオフィルムとしての微細藻類を残しておく部分である。この中で、後述する分割処理を行わない場合には、図2の(b)による回収が最も好ましい。これは、基板を用いた回収操作で、バイオフィルムが少なくとも部分的に破壊され、破片がバイオフィルムの非存在領域にも分布する様になり、増殖を好適に行える可能性が高まるためである。
 部分回収後に液面上の微細藻類が存在している領域は、図2の(a)や(c)の様に、培養容器の液面上に微細藻類からなる構造物を一つと液面上に微細藻類がない領域を一つとを形成させても良い。また、図2の(b)や(d)のように、液面上に微細藻類からなる構造物を複数個と液面上に微細藻類がない領域を一つ形成させても良い。更に、図2の(e)のように、液面上に微細藻類からなる構造物を複数個と液面上に微細藻類がない領域を複数個形成させても良いし、液面上に微細藻類からなる構造物を一つと液面上に微細藻類がない領域を複数個形成させても良い。なお、本記載は、回収工程及びその直後に、液面上に残された微細藻類のバイオフィルム構造物が移動しないと仮定しての記述である。
 図1の(c)や(e)によって収穫した微細藻類の一部を基板から回収した後に、バイオマス抽出工程を行っても良いし、回収した微細藻類を新たな培養容器の液面上に浮かせた状態で培養を開始しても良い。すなわち、図1の(c)から(h)への工程、図1の(e)から(i)への工程がこれに相当する。
 微細藻類のフィルム状の構造物又は三次元状の構造物を液面上に浮かせる方法として、図1には記載しなかったが、図3に示した方法を用いても良い。すなわち、図3の(a)に第二の培養容器1(以下単に培養容器1という)の中に微細藻類が増殖可能な培養液を入れておき、そこへ、前記微細藻類の培養容器1よりもサイズがより小さな第一の培養容器2(以下単に培養容器2という)を浸漬すると、培養容器2内の液面上の微細藻類の多くが、培養容器1が形成する液面上に浮かび上がってくる。その後に、培養容器2を培養容器1から除去し、培養を継続する方法である。
 なお、培養容器1には、微細藻類が存在していないように描いているが、液面、底面、側面に少量の微細藻類が存在していても良い。また、培養容器2を培養容器1から除去しているが、これを除去せずに培養を継続してもかまわない。また、培養容器が中に入る必要性があることから、培養容器1は培養容器2よりも大きな培養容器であることが好ましい。更に、培養容器2の容器高さが培養容器1の水深よりも高いと、微細藻類のフィルム状の構造物又は三次元状の構造物を培養容器1の液面上に浮かせることが困難であるために、培養容器1の水深よりも培養容器2の容器高さが低い方が好ましい。但し、培養容器1を傾けることによって水深を深くしてから、培養容器2を浸漬することも可能である。その場合でも、傾けた時の水深よりも、培養容器2の高さが低い方が好ましい。
 図3の(c)の状態から培養容器2を除去する際に、培養容器2を水平方向にずらしてから、培養容器1から引きあげることが好ましい。これは、場所を移動しないと、培養容器1が形成する液面上にある微細藻類のバイオフィルムの一部又は全部を、再び培養容器2で回収してしまう可能性があるからである。なお、図3の様に微細藻類を含む培養容器2を培養容器1に浸漬すると、培養容器2の中の液面上のバイオフィルムは、比較的構造物の破壊が少ない状態で、浸漬部位の垂直方向近傍の培養容器1が形成する液面上に浮かび上がってくることが多い。また、図3の(c)で培養容器1の液面上の微細藻類のバイオフィルムを水平移動させてから培養容器2を除去することも好適に行うことができる。これも前記と同様の理由である。
 微細藻類のフィルム状の構造物又は三次元状の構造物を異なる培養容器に移動させる方法として、図4の様に行うことも可能である。この方法は、図4の(a)の様に、液面上に微細藻類のバイオフィルムを成形させた後に、第二の基板を用いて、液面上のバイオフィルムを回収し、図1の(d)から(e)に示した様に、培養容器1にその微細藻類を移動させる方法である。第二の基板上から微細藻類を剥ぎ取り、培養容器1の液面上に微細藻類を移しかえる操作としては、例えば、セルスクレーパーのようなものを用いることができる。すなわち、第二の基板からセルスクレーパーで微細藻類を剥ぎ取り、それと同時に、培養容器1の液面上に微細藻類を移動させるものである。なお、本模式図は、第二の基板を用いたが、第一の基板を用いても同様に行うことができる。また、図4の(e)に示した様に、本操作によっても、微細藻類の大部分は液面上に留まることが多かった。
 更に、前記の方法によって形成させた微細藻類からなる構造物を分割する処理(以下、分割処理ともいう)を行っても良い。分割処理を行うことによって、部分的にバイオフィルム構造が破壊され、培地と接触可能な微細藻類の数が増加し、微細藻類の増殖速度の向上が期待できると共に、微細藻類の存在していない液面の領域を減らすことができ、液面を有効に活用できるからである。なお、分散培養を行った場合には、培養溶液全体に対して攪拌操作を行う必要があるが、本発明の分割処理は、液面上での攪拌操作のみであるため、前者と比較して、攪拌のためのエネルギー使用量や時間、装置の簡易化が可能である。
 バイオフィルムの分割の方法は、いかなる方法を用いることも可能であるが、液面に振動を与える方法、例えば、液面上の波を利用する方法、風を利用する方法、水流を利用する方法、固体材料を用いる方法などをあげることができる。固体材料を用いる方法とは、例えば、棒やスクリューのようなものを用いて、液面上の微細藻類から構成されている構造物を分裂させる処理である。
 分割は、図1の(h)又は(i)の状態から、(j)の状態への処理であるが、より詳細には、図2の状態、図3の(c)又は(d)の状態、図4の(e)の状態で行うことができる。
 分割処理の後、分割されたバイオフィルムが液面上に浮いた図1の(j)の状態から第二段目の培養を行い、図1の(k)に示した様に、液面上に再び微細藻類からなるバイオフィルムを形成させることができる。その後、図1の(l)又は(m)に示した様に、液面上の微細藻類を回収することができる。回収物は、バイオマスの抽出に用いることも可能であり、また、次の培養用の種藻として用いることも可能である。
 図1には、バイオフィルムの回収物(収穫物)を用いての培養を一回(一サイクル)しか図示していないが、この工程は必要な回数、何回(何サイクル)でも行うことができる。すなわち、図1の(a)から(b)又は(d)、(f)、(g)の後、再び(a)に戻る工程は、何回でも行うことができる。また、培養容器は、同一の形状、大きさで図示したが、この限りではない。なお、培養容器は、順次そのサイズ、すなわち、液面表面積を大きくしていく方が、微細藻類バイオマスの収穫量向上及び微細藻類の増殖速度向上の観点から好ましい。なお、本発明では、図1の(b)から(c)、更に(h)への工程においても回収と記載し、例えば、図1の(l)から(n)又は(m)から(o)への工程も回収と記す。すなわち、回収物を次の培養に用いる場合も、回収物からバイオマスを取り出す工程での回収についても回収と記す。なお、特に後者のことを、本明細書では最終回収と記す場合がある。
 培養を終了させるときや複数個の培養容器を用いての培養において、最後に使用する培養容器は、部分的に液面上の微細藻類を回収しても良いが、全量回収するほうが好ましい。これは、微細藻類の回収量が増加するからである。
 培養は、図1の(f)の状態から、図1の(g)の状態を経由して、再び図1の(a)の状態にすることができる。この時、模式図では、培養容器は一つのものを用いているように表記しているが、培養容器を変えることも可能である。例えば、図1の(h)又は(i)の状態で開始する場合で、液面上の微細藻類のフィルム状の構造物又は三次元状の構造物を別の培養容器、例えば、よりサイズの大きな培養容器に移動させ、培養を継続させることも可能である。
 第一段目及び第二段目の培養で単一の培養容器を用いて微細藻類を継続して培養した場合には、水や培地の移動が少なく、そのための培養コストや手間を減少させることができる。第一段目の培養と第二段目の培養とで別の培養容器を用いた場合でも、前記と同様の効果を得ることができる。すなわち、通常の浮遊培養の場合、培養容器中の微細藻類を含む培地の一部を採取し、続く培養容器、例えば、より面積の大きな培養容器中の培地中へと前記の微細藻類を含む溶液を添加し、微細藻類が培養容器中で均一に存在させるようにするために攪拌を行う必要があるが、液面上に浮かせている微細藻類の構造物を液面上で分割させる方が容易だからである。
 液面上で形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物は、液面上で分割することができ、これにより、増殖に参加することのできる微細藻類の数を増加させることで、微細藻類の培養速度を向上させることができる。結果、微細藻類を用いたバイオマスの生産効率を向上させることができる。この方法は、液面上のフィルム状の構造物又は三次元状の構造物を一部回収した後に行うことも可能であるが、回収前に行うことでも効果が得られる。
 液面上の微細藻類を回収した後でも、底面上に微細藻類が残存しており、培地中に微細藻類の増殖が可能な栄養成分が残っていれば、再び培養容器底面から微細藻類を増殖させ、液面上に微細藻類のフィルム状の構造物又は三次元状の構造物を形成させることができる。従って、培養容器に対して、種藻を毎回導入しなくても良い。なお、この工程は、図1の(g)に記載されている。
 図1の(g)の状態から(a)の状態への工程では、液面上から微細藻類が増殖により供給される場合と、底面上に存在している微細藻類から供給される場合とがある。いずれの場合とも、図1の(a)の状態を作り出すのに、新たに種藻を準備しなくても良いことから、培養にかかるコストや手間を省くことが可能である。
 本発明では、図1(a)に示した様に、通常は培養容器底面にも微細藻類は存在している。本発明では、静置状態にしておくことが好ましいが、激しく攪拌しない限り、振盪培養を行っても本発明と同様の培養を行うことは可能である。しかし、液面上に形成されるバイオフィルム中の藻体数が少なくなることから、静置状態での培養の方が望ましい。また、攪拌に伴うエネルギーや装置も不要になることからより好ましい。なお、底面に沈むとは、微細藻類の大部分が底面に沈むことをいい、液面上や水中から完全に微細藻類が存在しなくなる状態を言うものではない。
 液面上の微細藻類を回収するタイミングであるが、培養容器内の液面が微細藻類で部分的に覆われている状態で回収することも可能であるが、微細藻類の藻体量が多いことから、培養容器内の液面が全て微細藻類で覆われてから回収することが好ましい。また、微細藻類が液面を全て覆いつくした後に、しばらく培養を継続してから回収を行っても良い。フィルム状の構造物と三次元状の構造物とでは、後者の方が単位面積あたりの微細藻類の量が多いため、後者の状態での回収の方がより好ましい。
 また、本発明の方法では、気液界面上での培養であることから、藻体の乾燥による死滅が少ない。
 本発明の微細藻類の培養方法において、第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを、基板の表面に転写又は堆積させることで回収することが好ましい。
 これら回収の方法について、次に説明する。
[第一の基板を用いた液面上のバイオフィルムの転写による回収]
 第一の基板を培養容器内の液面に対して、平行、又は、それに近い角度になるように静かに挿入し、液面上の微細藻類を第一の基板に付着させる。なお、挿入を行う際、第一の基板を液面に対して若干斜めに挿入し、最終的に液面に対して平行にするようにすると、多くの液面上のバイオフィルムを少ない転写回数で回収できることから好ましい。液面上のバイオフィルムが付着した第一の基板を静かに引き上げることで、培養容器の液面上からバイオフィルムを第一の基板に転写することができる。
[液面上のバイオフィルムの第二の基板による回収]
 図1の(d)に示したように、液面上のバイオフィルムを第二の基板を用いてかき集めるように回収することも可能である。図では、図の右側から左側に基板を移動させている。第二の基板の移動方向は、逆(すなわち、図の左側から右側への基板の移動)でも良いし、複数回回収しても良い。複数回回収する場合には、バイオフィルムを付着させたままの第二の基板を用いても良いし、前述の第一の基板の表面からバイオフィルムを全部又は部分的に除去した後の基板を第二の基板として用いても良いし、新しい基板を用いても良い。また、図1では1枚の第二の基板しか記していないが、複数枚の第二の基板を同時に用いても良い。なお、この中で第二の基板の強度が許す限り、一枚の第二の基板を用い、基板上のバイオフィルムを除去した後、同一の第二の基板を用いて回収を再開することが、回収効率の観点などから好ましい。また、第二の基板の大きさ、液面に対する第二の基板の角度や移動速度などは目的に応じて自由に設定することができる。なお、図1の(e)は、第二の基板上にバイオフィルムが回収された状態である。
 以下に、第二の基板による回収について、より詳細に説明する。
 図5は、液面上にバイオフィルム(図の例においてはフィルム状の構造物)を形成させた後に、液面上に浮いている微細藻類から構成されたフィルム状の構造物を、第二の基板(スライドガラス(76×26mm))を用いて回収している様子である。
 図5では、液面上のバイオフィルムに対して、スライドガラスの長辺を斜めに挿入し、そのまま左方向へと進めると共に、スライドガラス上に液面上のバイオフィルムを堆積させることによって、バイオフィルムを回収した。図の左側が、回収前のバイオフィルムが形成した液面、図の右側が、バイオフィルムを回収した後の液面を表している。
 図6は、スライドガラス上にバイオフィルムが折り重なったように堆積している様子を示している。なお、第二の基板による回収は、図1の(d)から(e)又は、(m)から(o)への工程に相当する。また、スライドガラスの他に、ナイロンフィルム等の他の基板も第二の基板として用いることができる。また、基板のサイズは、培養容器のサイズに応じて適宜変更できるが、培養容器の短辺と同一であるほうが好ましい。また、培養容器の形状は、第二の基板が培養容器との壁面などとの間に隙間ができないように挿引できる形状が好ましい。例えば、この様な形状としては、長方形型やレースウェイ型などが好ましい。
 液面上のバイオフィルムの回収又は最終回収を行うタイミングであるが、培養容器内の液面がバイオフィルムで部分的に覆われている状態で回収することも可能であるが、微細藻類の藻体量が多いことから、培養容器内の液面が全てバイオフィルムで覆われてから回収することが好ましい。また、バイオフィルムが液面を全て覆いつくした後に、しばらく培養を継続してから回収を行っても良い。
 特に、液面上に後述する三次元の構造物が形成された後に回収又は最終回収を行うことが好ましい。特に、最終回収においては好ましい。三次元状の構造物は、一般的にはフィルム状の構造物の増殖が更に進行したときに見られる構造であり、二次元的なフィルム状の構造物と比較して、回収可能な微細藻類の量が多いこと、及び回収物の含水率がより低いことからより好ましい。
 液面上のバイオフィルムを回収した後の状態が、図1の(f)である。培養容器の底面には、微細藻類が付着又は沈積している。なお、本発明の模式図では液面上への微細藻類の供給が底面からも行えるように記されているが、実際には、液面及び底面以外の培地中にも微細藻類が低濃度ながら存在しており、ここからの供給も可能である。なお、ここでは、遊走子は存在数から除外して記載している。また、液面及び底面から微細藻類が水中へと供給されている状態でも、本発明では、培養容器底面から液面上へと微細藻類が供給されていると記すものとする。また、培養容器底面から液面上への微細藻類の供給とは、実際に底面における微細藻類の増殖を伴わずに液面上に移動する場合と、微細藻類が底面から液面上に移動しながら増殖する場合との両方がある。
 なお、培養容器は、開放系でも閉鎖系でも良いが、高濃度二酸化炭素の使用による増殖速度の向上、外部からの目的外微生物やゴミの混入、風による液面上のバイオフィルムの破壊や移動の防止、水の蒸発防止などの観点から、閉鎖系での培養の方がより好ましい。
 なお、本発明では図1の(a)の状態のように、液面上で微細藻類を培養する培養方法を液面浮遊培養と呼ぶものとする。すなわち、微細藻類を液中又は液の底面のいずれか一方又は両方のみで培養する培養方法は液面浮遊培養には含まれない。
 なお本発明における液面とは、典型的には後述する液体培地の液面であり、通常、液体培地と空気との界面である。
 更に、図1の(a)の状態のような液面浮遊培養を、静置状態にして行うことを、本発明では静置培養による液面浮遊培養と呼ぶものとする。
 本発明の実施態様の一例によれば、純菌化工程を経て得られた微細藻類を、人工培地を含む液体培地中に懸濁させることにより、微細藻類を含む懸濁溶液を調製し、培養装置中で培養を行うことにより、微細藻類のフィルム状の構造物又は三次元状の構造物を液体培地の液面上で形成させ、これを部分的又は全体的に回収し、再び液面上で培養することによって、微細藻類のフィルム状構造物又は三次元状構造物を液体培地の液面上で形成させ、培養槽全体又は液面上から増殖した微細藻類を回収することができる。
[純菌化工程]
 本発明で言う純菌化工程とは、自然状態にある微細藻類の場合には、微細藻類と共に、様々な種類の生物やゴミなどが共存した状態で生育している状態を、目的の微細藻類のみに単離する工程を言う。なお、現実的には、このような完全な単離は困難な場合があり、目的の微細藻類を主として得られれば純菌化できたと本発明では定義している。
 なお、本発明において主として得られるとは、顕微鏡下の観察において、数ヶ所の視野で目的以外の微生物が確認できなかった場合を意味する。
 純菌化の方法としては、寒天培地上で微生物を含む希釈懸濁溶液を展開後、培養し、コロニーを形成させた後で、コロニーを採取する方法や、顕微鏡下で一匹ずつ採取する方法などが挙げられる。
[前培養工程]
 本発明で言う前培養工程とは、一般的には、純菌化工程を終了した後に得られた微細藻類を保存しておくが、前記保存微細藻類を増殖させ、本培養を行えるまで微細藻類の数を増やす工程のことである。前培養工程の培養法は、公知のいかなる培養方法も可能である。また、本発明の液面浮遊培養を行うことも可能である。また、前培養工程は、本培養が行える規模まで微細藻類を増殖させるために、数回の前培養工程を行っても良い。
 また、一般的には、1cm~1m以下の表面積を持つ培養槽を使用し、屋内外いずれでも培養可能であるが、屋内での方が好ましい。
[本培養工程]
 本発明で言う本培養工程とは、前培養工程を行った後の培養工程のことであり、最終回収工程を行う直前までの培養工程のことを言う。本培養工程は、複数回行っても良いものとする。
 また、一般的には、100cm以上の表面積を持つ培養槽を使用し、屋内外いずれでも培養可能であるが、屋外での培養の方が好ましい。
 本発明の微細藻類の培養方法における第一段目の培養及び第二段目の培養は、本培養工程に相当する。
[種藻]
 本発明の微細藻類の培養方法における種藻とは、上述の前培養工程や本培養工程の開始時に使用する微細藻類のことを指し、前培養工程や本培養工程における微細藻類の増殖の元となる微細藻類のことを言う。本培養工程は、前培養工程の直後の本培養工程に限られず、本培養工程の後に更に行う2回目又はそれ以降の本培養工程(例えば、上述の第二段目の培養など)も含む。すなわち、本発明の微細藻類の培養方法における種藻は、前培養工程により得られた微細藻類に限られず、本培養工程により得られた微細藻類(典型的には、本培養工程により液面上に形成されたバイオフィルム)も包含する。
[微細藻類の使用]
 前培養、本培養を行うにあたって使用する微細藻類は、浮遊培養、液面浮遊培養、付着培養など、公知のいかなる培養法によって得られたものを使用しても良い。
[懸濁処理]
 本発明において、懸濁処理とは、微細藻類の集合体をより小さな集合体又は単一の微細藻類にするためのいかなる処理方法も含むことができるものとする。例えば、ピペッティングや容器内で微細藻類の溶液を手で振る処理、スターラーチップや攪拌棒による処理などの弱い処理、超音波処理や高速振盪処理などの強い処理、細胞間マトリックスのような接着物質を分解する酵素などの物質を用いる方法などを含むものとする。
 懸濁処理により、微細藻類をより小さな集合体又は単一の微細藻類にすることによって、微細藻類凝集体のサイズが大きいものと比較して微細藻類凝集体のサイズが小さければ小さいほど、培地との接触面積が増え、その結果、微細藻類の増殖速度を向上させることができる場合があることから、好ましい。
 超音波処理とは、人の耳には聞こえない高い振動数を持った振動波を、微細藻類の溶液又は微細藻類の溶液を保持している容器に対して直接加えることを特徴とする方法で、必ずしも密閉容器である必要はなく、また、微細藻類を含む溶液が容器の底面から離れることがない方法である。
 高速振盪処理とは、振盪用密閉容器の中に微細藻類の凝集物を含む溶液を、気層が形成できるように入れ、振盪用密閉容器全体を高速で振盪させるとともに、懸濁溶液層が振盪用密閉容器の内壁から離れたり、接触したりするような処理方法を言う。
[懸濁溶液]
 本発明で言う懸濁溶液とは、懸濁処理を行った溶液のことを言うものとする。
[微細藻類の懸濁溶液]
 微細藻類の懸濁溶液とは、微細藻類を懸濁処理することによって得られた溶液のことを言う。この微細藻類は、液体中で浮遊培養したものを使用してもかまわないし、基板上に微細藻類を付着培養したものを、基板表面から微細藻類を剥がしてから使用しても良い。また、液面浮遊培養によって得られた微細藻類を使用しても良い。また、これらの少なくとも2つ以上の培養形態由来の微細藻類の混合物を使用しても良い。例えば、液面浮遊培養由来の微細藻類と液面培養時の培養容器底面上の微細藻類との混合物などが挙げられる。
 前培養、本培養とも、微細藻類の増殖状態を確認するために、懸濁処理を行っても良い。この処理によって、微細藻類の数を数えることが容易になるからである。
[分散処理]
 本発明において、分散処理とは、微細藻類の集合体をより小さな集合体又は単一の微細藻類にするための処理方法であり、例えば、ピペッティングや容器内で微細藻類の溶液を手で振る処理、スターラーチップや攪拌棒による処理などの弱い処理を除いた懸濁処理のことを言う。すなわち、分散処理とは、超音波処理や高速振盪処理などの強い処理、細胞間マトリックスのような接着物質を分解する酵素などの物質を用いる方法などを含むものとする。
[分散溶液]
 本発明で言う分散溶液とは、超音波処理や高速振盪処理などの分散処理を行った溶液のことを言うものとし、ピペッティングや容器内で微細藻類の溶液を手で振る処理、スターラーチップや攪拌棒による処理などの弱い懸濁処理を行った溶液のことは言わないものとする。
[微細藻類の分散溶液]
 微細藻類の分散溶液とは、微細藻類を分散処理することによって得られた溶液のことを言う。この微細藻類は、液体中で浮遊培養したものを使用してもかまわないし、基板上に微細藻類を付着培養したものを、基板表面から微細藻類を剥がしてから、又は懸濁処理と同時に基板表面から剥がした微細藻類を使用しても良い。また、液面浮遊培養によって得られた微細藻類を使用しても良い。また、これらの少なくとも2つ以上の培養形態由来の微細藻類の混合物を使用してもかまわない。例えば、液面浮遊培養由来の微細藻類と液面培養時の培養容器底面上の微細藻類との混合物などが挙げられる。
 前培養、本培養とも、微細藻類の増殖状態を確認するために、分散処理を行っても良い。この処理によって、微細藻類の数を数えることが容易になるからである。
[沈積]
 本発明で言う沈積とは、培養容器底面に対して微細藻類が近傍に存在している状態若しくは付着、又はその両方の状態が混在している状態を言う。微細藻類が近傍に存在している状態とは、僅かな液体培地の動きで、基板又は培養容器底面から微細藻類が容易に移動する状態を言う。また、沈積には、付着も含まれているものとする。
[付着]
 本発明で言う付着とは、基板又は培養容器底面に対して微細藻類が直接付着している状態を言い、僅かな液体培地の動き程度では基板又は培養容器底面から微細藻類がはがれない程度に付着していることを言う。また、本発明では、液体培地の液面上に形成させた微細藻類から構成されたバイオフィルム(フィルム状の構造物又は三次元状の構造物)が液面に浮いている状態を液面に付着しているとも表記することがある。
[培養工程]
 培養工程とは、液面上に存在している微細藻類バイオフィルムの量を更に増加させるための工程のことを言う。例えば、図1を例とすると、図1の(f)から(g)までの工程、図1の(g)から(a)への工程、図1の(j)から(k)への工程を言う。
 培養工程は、液面上にバイオフィルムを形成した後に、これらの構造物が更に増殖する工程も含むものとする。また、一般的には、フィルム状の構造物を形成した後に、三次元状の構造物を形成するが、これらの過程も培養工程に含むものとする。
 培養工程では、振盪培養を行ってもかまわない。これは、静置培養よりは微細藻類の数が少ないものの、液面上に微細藻類から構成されたフィルム状構造物又は三次元状構造物の形成が振盪培養を行っても可能だからである。しかし、液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルムの増殖数を向上させる目的から、静置培養を行うことが好ましい。また、静置培養は、従来のような浮遊培養と異なって、振盪や攪拌などの動力が不要であり、動力エネルギー及び動力発生装置が最小限であるため、コストを大幅に低減できることからも好ましい。
 すなわち、本発明の微細藻類の培養方法は、液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、静置培養することを含むことが上記の理由から好ましい。
[微細藻類の分布状態]
 本発明の培養方法を用いた微細藻類の培養では、第一の基板を用いた転写又は第二の基板を用いたバイオフィルムの回収を行う直前の微細藻類の分布状態は、液中における微細藻類の個数が、液面上の微細藻類の個数又は培養容器底面に沈積している微細藻類の個数と比較して少ないことが特徴である。また、この時の分布状態では、液面上の微細藻類の個数の方が培養容器底面に沈積している微細藻類と比較して多い方が好ましいが、必ずしもこの限りではない。なおここでいう微細藻類の個数には、顕微鏡を用いての観察が困難な、微細藻類の細胞から発生する遊走子は含まれないものとする。
 なお、液中における個数とは、液面と、培養容器の底面との中間点近傍で数えられた微細藻類の個数のことをいい、一立方センチメートルあたりの微細藻類の個数を言う。また、液面上、又は培養容器の底面近傍の微細藻類の個数とは、一平方センチメートルあたりの微細藻類の個数のことを言うものとする。なお、微細藻類の個数は、微細藻類の重量、乾燥重量や濁度など、微細藻類を定量可能な方法で置き換えることができるものとする。
[静置培養]
 本発明で言う静置培養とは、微細藻類を意識的に移動させない状態で培養する培養法のことをいう。すなわち、例えば、局所的な培地温度の変化に伴って、培地が対流し、その流れによって、微細藻類が移動することがあるが、意識的に微細藻類を移動させていないことから、この様な場合も含めて、本発明では静置培養というものとする。
 本発明では、全工程において静置状態で培養すること(すなわち、静置培養すること)が好ましい。これは、液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルム(フィルム状の構造物又は三次元状の構造物)が破壊されるのを防ぐためである。微細藻類から構成されたバイオフィルムが破壊されると、第二の基板を用いた回収の効率が低下すると共に、液中又は培養容器底面に微細藻類が移動してしまう可能性があるからである。但し、静置状態でなくても、液面上に微細藻類から構成されたバイオフィルムを形成することは、微細藻類の数が少なくなるものの可能であるため、本発明では、静置状態での培養が好ましいが、この限りではないものとする。また、分割処理を行う場合には、液面上を攪拌することが可能である。これは、液面上に局在化して存在する微細藻類バイオフィルムを、培養容器液面の広範囲にわたって可能な限り均一に微細藻類のバイオフィルムを分布させることによって、微細藻類の増殖速度が向上する観点から行う処理である。
 本発明では、静置状態ではない状態を作り出す方法として、培養容器全体を振盪させる方法、培養容器にスターラーチップなどの攪拌子や攪拌棒で攪拌する方法、空気や高濃度二酸化炭素を含む気体をバブリングさせる方法、微細藻類の懸濁溶液を流動させる方法などをあげることができる。
 本発明の微細藻類の培養方法において、第一段目の培養及び第二段目の培養が共に静置培養であることが好ましい。
[付着培養]
 本発明で言う付着培養とは、基板表面又は培養容器壁面に微細藻類が付着した状態で培養することを言うものとする。
[浮遊培養]
 本発明では、微細藻類を培地中で培養することを浮遊培養と呼んでいる。本発明では、液面、培養容器側面や底面以外の液中に微細藻類を浮遊させながら培養している状態を浮遊培養と呼んでいる。
[液面浮遊培養]
 本発明では、液面上で微細藻類を培養する培養方法のことを液面浮遊培養と言う。なお、液面以外の培養容器底面や培地中などに微細藻類が同時に存在していても、液面浮遊培養という。また、液面浮遊培養は、液面に付着して培養していると考えることもできるため、本発明では、付着培養の一種であると扱うこともある。
 また、本発明での液面浮遊培養を行っていると、液面上のバイオフィルム(フィルム状の構造物又は三次元状の構造物)から液中へと微細藻類の集合体が浸出する現象が見られることがある。本発明では、この様な状況での培養も液面浮遊培養に含むものとしている。
 本発明において、液面浮遊培養を行うと共に、上述の浮遊培養及び付着培養のいずれか一方又は両方を同時に行うことができる。
 以上のように、本発明では微細藻類を培養する液体培地中の場所に従って、上述のように培養方法の名称を区別したが、上述のようにこれらは同時に行うことが可能である。
 液面浮遊培養、浮遊培養及び付着培養により本発明の微細藻類を培養する工程としては、例えば、ボツリオコッカス属に属する微細藻類を培養できる公知の方法が適用できる。例えば、液体培地を入れた三角フラスコ等の培養容器に微細藻類を接種して、静置しながら光照射下で通気培養すればよい。
 次に、液面浮遊培養、浮遊培養及び付着培養で使用できる液体培地について説明する。
[培地(液体培地)]
 本発明では、微細藻類を培養できる限り、公知のいかなる培地(液体培地)も使用することが可能である。なお、培地は、培養する微細藻類の種類に応じて選択することが望ましい。例えば、前述のAVFF007株は淡水で生育するため、培地は淡水性であることが好ましい。公知の培地として、AF-6培地、Allen培地、BBM培地、C培地、CA培地、CAM培地、CB培地、CC培地、CHU培地、CSi培地、CT培地、CYT培地、D培地、ESM培地、f/2培地、HUT培地、M-11培地、MA培地、MAF-6培地、MF培地、MDM培地、MG培地、MGM培地、MKM培地、MNK培地、MW培地、P35培地、URO培地、VT培地、VTAC培地、VTYT培地、W培地、WESM培地、SW培地、SOT培地などを挙げることができる。このうち淡水性のものはAF-6培地、Allen培地、BBM培地、C培地、CA培地、CAM培地、CB培地、CC培地、CHU培地、CSi培地、CT培地、CYT培地、D培地、HUT培地、M-11培地、MA培地、MAF-6培地、MDM培地、MG培地、MGM培地、MW培地、P35培地、URO培地、VT培地、VTAC培地、VTYT培地、W培地、SW培地、SOT培地である。前述のAVFF007株を培養する培地としては、C培地、CSi培地、CHU培地、及びこれら培地の混合物が好ましく、C培地、CSi培地及びこれら培地の混合物がより好ましい。
 培地は、紫外線滅菌、オートクレーブ滅菌、フィルター滅菌しても良く、しなくても良い。
 なお、本発明では、液体培地がカルシウムを含むことが好ましい。すなわち、培地にカルシウムを添加することが望ましい。カルシウムが培地に入っていると、微細藻類の増殖速度が向上し、液面上のバイオフィルム(フィルム状の構造物又は三次元状の構造物)の形成が容易となるからである。液体培地中のカルシウム濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.3mM以上であり、より好ましくは0.5mM以上である。
 液体培地中のカルシウム濃度の上限値は、特に限定されないが、通常100mM以下であり、好ましくは50mM以下であり、より好ましくは5mM以下である。
[水深]
 本発明で使用する液体培地の水深は、特に限定されないが、水深が浅い方が好ましい。これは、水深が浅いほど水の使用量が少なくなるからである。また、水を移動したりするハンドリングのための煩雑さやエネルギー使用量も小さくなるからである。更に、培養容器の製造コストも低下するからである。しかし、水深は深いほど単位面積あたりの栄養分を増加させることが可能であるからある程度の深さは必要である。本発明では、水深は0.4cm以上が好ましく、1.0cmから10mがより好ましく、2.0cmから1mが更に好ましく、5.0cmから30cmが最も好ましい。水深が0.4cm以上であるとバイオフィルムの形成が可能となり、水深が1.0cm以上であると、液面上にバイオフィルムが形成させるまでの間に水分が蒸発することで微細藻類の培養に好ましくない状態となることが充分に避けられ、水深が10m以下であると培地や微細藻類を含む懸濁溶液のハンドリングが困難になり過ぎることを避けるとともに、液中への光の吸収のため光の利用効率が低下することを抑制することができるからである。水深が、5.0cmから30cmであると、バイオフィルムが形成されるまでの間の培地の水分の蒸発が少なく、また、培地や微細藻類を含む懸濁溶液のハンドリングが容易となり、水や培地中の極微量存在する微細藻類による光の吸収が最小限となることから光の利用効率が良くなる。また、水深が浅いほど二酸化炭素の供給が容易となり、光合成によって生成した酸素の大気中への放出が容易となる。
 本発明では、培地は主として培養のための栄養素を供給する役割を担っているため、液中の栄養成分が十分であれば、液体培地の深さを浅くすることができ、これにより培地液量の大幅な削減が可能である。これにより、水や培地コストが大幅に低下するだけでなく、液体を移動させたりするためのハンドリングも容易になる。また、使用済み培地の処理コストも液体培地量が少ないことから安価となる。更に、水深の浅さは、気相中の二酸化炭素(CO)の液体培地槽全体への拡散にも有利である。また、培養池の水深が深くなればなるほど、光が培地によって吸収されてしまうが、深さが浅いため、吸収による光量の低下は最小限である。
[二酸化炭素]
 本発明では、培地中に意図的に二酸化炭素を供給する手段を用いずに培養する方が好ましい。すなわち、培地中への二酸化炭素を含む気体をバブリングによって供給する方法は用いない方が好ましい。これは、液面上の微細藻類からなるバイオフィルム(フィルム状の構造物又は三次元状の構造物)が、バブリングにより破壊されるのを防ぐためである。但し、破壊が部分的である場合には、バブリングによって二酸化炭素を供給しても良いものとする。また、バブリングによって、液面上に微細藻類を浮かせる方法が、特開2001-340847、特開2007-160178、特開昭62-213892、特開平1-131711などで公開されているが、この方法によって液面上に微細藻類を強制的に浮かせると共に、二酸化炭素を供給する手段を採用しても良いものとする。バブリングを用いない方法は、二酸化炭素を供給するガスの配管を設置する必要がないこと、二酸化炭素供給源、例えば、火力発電所や製鉄所などの周辺の土地の確保が一般的には困難であること、広大な面積に対して均一に二酸化炭素を供給するための制御が非常に困難であることなどから、気相中の二酸化炭素を直接使用できることは、大幅なコストダウンにつながることから非常に有効である。
 本発明では、意図的に二酸化炭素を培地内へと供給する手段を用いない方が好ましいとしているが、気相中の二酸化炭素が液面上の微細藻類又は微細藻類の存在していない領域を経由して、培地内へと二酸化炭素が供給される場合は、前記の手段に相当しないものと定義している。なお、液面上に微細藻類から構成されたフィルム状の構造物が形成される前は、培地の液面と二酸化炭素を含む気体とが直接接触している部分が多く存在しているが、この場合には、液面を介して二酸化炭素が培地中へと溶解するが、これは意図的に二酸化炭素を供給していると言わないものとする。また、液面上にフィルム状の構造物又は三次元状の構造物が形成された後でも、フィルム状の構造物又は三次元状の構造物を経由して、二酸化炭素が培地中に溶解するが、この場合も意図的に二酸化炭素を培地中へと供給していないものとする。
 本発明では、大気中の二酸化炭素を使用することが、コスト面で有利であることから望ましいが、大気中濃度よりも高い濃度の二酸化炭素の利用も可能である。この場合には、拡散による二酸化炭素の損失を防ぐために、閉鎖型の培養容器で培養することが望ましい。この場合における気相中の二酸化炭素の濃度は本発明の効果が達成できる限り特に限定されないが、好ましくは大気中の二酸化炭素濃度以上、20体積%未満であり、より好ましくは0.1~15体積%であり、更に好ましくは0.1~10体積%である。
 なお、大気中の二酸化炭素濃度は一般に、0.04体積%程度と言われている。
 すなわち本発明によれば、気相中の二酸化炭素を利用できる利点もある。これは、大きく成長して欲しい微細藻類が液面上にあることから、気相中の二酸化炭素を取り込みやすいためである。その場合には、二酸化炭素の配管やバブリングが最小限であり、藻体生産のコストを低減することができる。
[その他培養条件]
 培養開始直後の液体培地(培養溶液)のpHは2以上11以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくはpHが5以上9以下の範囲内であり、特に好ましくはpHが5以上、7以下の範囲内である。これは、微細藻類の増殖速度を好適に増加させることができるとともに、CSiFF03(図7にその組成を示す)培地のような高pHで沈殿物を発生し易い培地は、弱酸性にすると沈殿物の発生が抑制されるからである。また、底面上の藻と比較して、液面上の藻の数が多くなることからも、弱酸性条件下で培養を開始することが望ましい。また、微細藻類の種類に依存して、好適なpHは変化することから、微細藻類の種類に応じたpHを選択するのが好ましい。なお、培養開始直後と培養開始後のpHは、微細藻類の増殖に伴って変化する場合があることから、培養開始直後の液体培地のpHは、微細藻類の回収時のpHと異なっていても良いものとする。
 培養温度は、微細藻類の種類に応じて選択することができるが、0℃以上90℃以下であることが好ましい。より好ましくは、15℃以上50℃以下であり、特に好ましくは、20℃以上40℃未満である。培養温度が20℃以上40℃未満であると、微細藻類の増殖速度が十分速く、AVFF007株の場合、特に、37℃での培養が最も増殖速度が速い。
 微細藻類の下限初期藻体濃度は、培養溶液中に藻体が1個あれば、時間をかけさえすれば増殖は可能であるため、その制限は特に設けないが、好ましくは1個/mL以上であり、より好ましくは1000個/mL以上であり、更に好ましくは1×10個/mL以上である。微細藻類の上限初期藻体濃度は、どの様な高濃度でも増殖が可能であるため、その制限は特に設けないが、ある濃度以上であると藻体濃度が高ければ高いほど、投入藻体数と増殖後の藻体数の比が低下することから、10000×10個/mL以下が好ましく、1000×10個/mL以下がより好ましく、500×10個/mL以下が更に好ましい。
 本発明では、一度培養に使用した培地を、新しく調製した培地に混合して使用することができる。この様にすることで、微細藻類の育成量が減少する場合があるが、水の使用量を削減することができる。また、前記の微細藻類の育成量の低下を抑制するための方法として、高濃度培地を添加する方法が考えられ、本発明ではこれらの方法を用いることができる。
 本発明では、液面浮遊培養する場合の前培養期間は、1日以上300日以下が好ましく、3日以上100日以下がより好ましく、7日以上50日以下が更に好ましい。
 液面浮遊培養の期間としては、当該微細藻類が生育する限り培養を継続することができ、通常、1~100日間で行うことが好ましく、7~50日間で行うことがより好ましく、10~30日間で行うことが更に好ましい。例えば、図1の(f)から(g)から(a)、又は(j)から(k)などへの時間のことである。
 本発明では、培地中のpHを一定に保つ緩衝作用を持った物質を培地中に添加することも可能である。一般的に、微細藻類は生存や増殖に伴って菌体外に様々な物質を放出することが知られているが、放出する物質によっては、培地中のpHを変化させ、微細藻類の培養が好適に行われないような環境へと変化してしまうことも考えられる。この様な現象を回避するために、緩衝作用を持った物質を添加することが好ましい。更に、微細藻類は二酸化炭素を炭素源として利用し、増殖するが、二酸化炭素の培地中への溶解に伴って、培地のpHが低下し、微細藻類の培養が好適に行われないような環境へと変化してしまうことも考えられる。この様な現象を回避するためにも、緩衝作用を持った物質を添加することが好ましい。緩衝作用を持った物質としては、公知の物質を使用することができ、その使用には制限がないが、4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid(HEPES)や、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液などを好適に用いることができる。これら、緩衝物質の濃度や種類は、微細藻類の培養環境に応じて決めることができる。
[培養容器]
 本発明で用いることのできる培養容器(培養池)の形状は、微細藻類の懸濁溶液を保持できる限りにおいて、公知のいかなる形態の培養容器でも用いることができる。例えば、円柱状、方形状、球状、板状、チューブ状、プラスチックバッグなどの不定形状のものを使用することができる。また、本発明で使用可能な培養容器は、オープンポンド(開放池)型、レースウェイ型、チューブ型(J. Biotechnol., 92, 113, 2001)など様々な公知の方式を用いることができる。培養容器として、使用することの可能な形態は、例えば、Journal of Biotechnology 70 (1999) 313-321, Eng. Life Sci. 9, 165-177 (2009). に記載の培養容器をあげることができる。これらの中で、オープンポンド型又はレースウェイ型を用いることが、コスト面からは好ましい。
 本発明で使用可能な培養容器は、開放型、閉鎖型のいずれも使用することができるが、培養目的以外の微生物やゴミの混入防止、培地の蒸発抑制、風による液面上のバイオフィルム(微細藻類構造物)の破壊や移動の防止、大気中の二酸化炭素濃度以上の二酸化炭素を使用した際の、培養容器外への二酸化炭素の拡散を防ぐために、閉鎖型の培養容器の方が好適に用いることができる。
[光源及び光量]
 前記光照射において用いることのできる光源は、いかなる光源も用いることができるが、太陽光、LED光、蛍光燈、白熱球、キセノンランプ光、ハロゲンランプなどを用いることができ、この中でも、自然エネルギーである太陽光、発光効率の良いLED、簡便に使用することのできる蛍光燈を用いることが好ましい。
 光量は、100ルクス以上100万ルクス以下であることが好ましく、300ルクス以上50万ルクス以下が更に好ましい。最も好ましい光量は、1000ルクス以上、20万ルクス以下である。光量は、多ければ多いほど微細藻類の増殖速度が向上するため好ましいが、1000ルクス以上であると、微細藻類の成長速度が充分に速く、20万ルクス以下であると、光障害の発生が抑えられ、微細藻類の増殖速度が減少したり、死滅する割合を抑えることができる。
 光は、連続照射、及び、ある一定の時間間隔で照射、非照射を繰り返す方法のいずれでもかまわないが、自然の状態に近いことから、12時間間隔で光をON、OFFすることが好ましい。なお、実験の結果から、液面浮遊培養は、培養開始直後は、連続照射が、培養中期から培養後期には、12時間間隔で光をON、OFF照射することが好ましい。
 光の波長は、特に制限を設けないが、光合成が行える波長であれば、どの様な波長でも用いることができる。好ましい波長は、太陽光又は太陽光に類似の波長であるが、単一の波長を照射することで光合成生物の育成速度が向上する例も報告されており、本発明でもこの様な照射方法を用いることが好ましい。
 一方でコストの観点では、単一の波長の光を用いた照射よりも、波長を制御しない光を用いた照射がコスト的に有利であり、太陽光を用いるのがコストの観点では最も有利である。
[培養繰返し回数]
 本発明で言う培養繰返し回数とは、微細藻類の培養工程、微細藻類の回収工程の繰り返えし数のことである。すなわち、図1の(a)から、(b)又は(d)、(f)を経由し、(g)へ、更に、(a)にまで戻ってくる工程の繰返し回数である。本発明では、液面上の微細藻類から構成されたフィルム状の構造物を転写により回収したとしても、底面に微細藻類が残っている、又は回収後も液面上に微細藻類が若干残っている、又は意図的に微細藻類を液面上に残しているので、微細藻類が増殖に必要な栄養素が残っている限り、何回でも、前記の工程を繰り返すことが可能である。培養回数は、微細藻類増殖のための栄養素の量、目的以外の微生物の存在状態などに依存して決められる。培養容器の数を少なくすることができると共に、微細藻類を含む培養液を移動するための煩わしさから開放されることとなる。
[液面上に形成されたバイオフィルム]
 本発明は、本発明の微細藻類の培養方法により、液面上に形成されたバイオフィルムにも関する。
 バイオフィルムとは、通常、フィルム状の構造物であり、微細藻類がお互いにつながりあうことで、フィルム状の構造を形成している状態のことを言う。微細藻類がお互いにつながりあうためには、例えば、微細藻類から細胞間マトリックスなどのような物質(例えば、多糖等)を放出し、それらの化学的な作用によって、微細藻類同士を結び付ける必要がある。すなわち、弱い水流の動き程度ではお互いが離れない程度に結合している状態のことを言う。一般的には、この様なフィルム状の構造物のことを生物膜などと表記される場合も多い。
 本発明に係るバイオフィルムは、培養容器全面に渡って、微細藻類凝集物の切れ目がない均一なフィルム状の構造物であっても良いが、そのようなフィルム状の構造物の一部が気泡状に盛り上がり形成された立体的な三次元状の構造物であっても良い。なお、フィルム状構造物の一部が気泡状に盛り上がる現象は、微細藻類の増殖の進行に伴って観察される。この構造物は、培養容器内に多数あっても良く、それぞれのサイズは異なっていても良い。
 この様な三次元状の構造物は、光源に近い部位の微細藻類が多くなるような構造となることが特徴的である。これは、三次元状構造物内よりも、大気層と接触している、すなわち、光源に近いほうの面の方が、二酸化炭素が多く、光量も多いためと推定している。
 三次元状の構造物が発達するほど、微細藻類の存在箇所が液面から離れるようになり、かつ、光源に近くなる。液面からの水分の供給が減少し、かつ、光照射により発生した熱の拡散がしにくくなり、その結果、光源に近い部位に存在する微細藻類ほど含水率が低下する。含水率の低下は、回収工程後のオイル抽出工程を行う際の脱水工程の簡略化を可能とし、微細藻類を用いたバイオマス生産のコスト削減に対して有利である。なお、一般的には、回収工程の際に、遠心分離機を用いて、微細藻類の含水率を下げる処理を行うが、本発明の培養方法による回収法では、遠心分離機により得られた微細藻類の含水率よりも低い含水率にすることも可能である。
 また、微細藻類の増殖の進行に伴って、フィルム状の構造物には、しわ状の構造が表れることがあるが、フィルム状の構造物はこの様な構造を伴っていても良い。
 更に、微細藻類の増殖の進行に伴って、フィルム状の構造物又は立体的な三次元状の構造物には、ひだ状又はカーテン状の構造を培地中に形成することがあるが、フィルム状の構造物又は立体的な三次元状の構造物はこの様な構造を伴っていても良い。
 以上のように、フィルム状の構造物又は立体的な三次元状の構造物は、しわ状、ひだ状、カーテン状の構造を伴っても良く、或いは、フィルム状の構造物は気泡状の構造を伴って形成される立体的な三次元状の構造物となっても良く、その様な構造を伴うことによって、単位面積あたりの藻体量が増加する点から好ましい。
 バイオフィルムの面積は、液面上に存在しているバイオフィルムの断片が、基板を用いて回収を行う際に、基板から液面を介して逃げない程度の面積であることが好ましく、培養容器全面に渡って、バイオフィルムの切れ目がないことがより好ましい。例えば、この様な面積として、1cm以上を挙げることができ、好ましくは10cm以上である。最も好ましくは100cm以上、またバイオフィルムの面積は液面の表面積以下である。この様な面積の上限は培養容器の液面の面積以下であれば特に限定されない。
 フィルム状の構造物の厚さは、通常、1μm~10000μmの範囲であり、1μm~1000μmの範囲であることが好ましく、10μm~1000μmの範囲であることがより好ましい。
 本発明に係るバイオフィルムが、フィルム状の構造物の一部又は複数の部分において気泡状に盛り上がり形成された立体的な三次元状の構造物である場合、培地の液面を基準とした該三次元状の構造物の高さは通常、0.01mm~100mmの範囲であり、0.1mm~20mmの範囲であることが好ましく、5mm~20mmの範囲であることがより好ましい。
 本発明に係るバイオフィルムの単位面積あたりの乾燥藻体重量は、0.001mg/cm以上であることが好ましく、0.1mg/cm以上であることがより好ましく、1mg/cm以上であることが特に好ましい。最も好ましくは5mg/cm以上である。単位面積あたりの乾燥藻体重量が大きい方が、採取されるオイルなどのバイオマスの量が大きくなることが見込まれるからである。バイオフィルムの単位面積あたりの乾燥藻体重量は通常100mg/cm以下である。
 また本発明に係るバイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度は、10万個/cm以上であることが好ましく、100万個/cm以上であることがより好ましく、1000万個/cm以上であることが特に好ましい。バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度が10万個/cm未満では、液面上にバイオフィルムの形成が確認できず、微細藻類の回収性が悪くなる。一方、バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度が1000万個/cm以上であれば、膜密度が高く、強固なバイオフィルムが液面上に形成され、回収性が向上する。バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度の上限値は、多ければ多いほど好ましいため特に限定されないが、通常、100億個/cm以下である。
 本発明に係るバイオフィルムは、水分を除去する工程の省力化とコストダウンの観点から、含水率が低いことが好ましい。具体的には、バイオフィルムの含水率は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが特に好ましく、70質量%以下であることが最も好ましい。バイオフィルムの含水率は通常50質量%以上である。
 なお、含水率は、乾燥前の藻体の重量から乾燥後の藻体の重量を差し引いた値に対して、乾燥前の藻体の重量で割って、100を掛けたものである。
 また本発明に係るバイオフィルムは、バイオマスとしての有用性の観点から、オイル含有量が高いことが好ましい。具体的には、バイオフィルムの乾燥藻体あたりのオイル含有量が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。バイオフィルムの乾燥藻体あたりのオイル含有量は通常80質量%以下である。
 また本発明の微細藻類としては、上記の構造や、上記範囲の面積、厚さ、単位面積あたりの乾燥藻体重量、含水率、オイル含有量を有するバイオフィルムを液面上に形成可能な微細藻類であることが、上記と同様の理由で好ましい。
[回収工程]
 回収工程とは、例えば、図1の(b)から(c)、又は(l)から(n)に示されるように、液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルム(フィルム状の構造物又は三次元状の構造物)を第一の基板に転写した後、第一の基板からバイオフィルムを剥ぎ取る工程、又は、例えば、図1の(d)から(e)、又は(m)から(o)に示されるように、液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルム(フィルム状の構造物又は三次元状の構造物)を第二の基板を用いて回収する工程のことである。
 本発明は、液面上に形成されたバイオフィルムを、第一の基板に転写させて回収する、バイオフィルムの回収方法にも関する。
 また本発明は、液面上に形成されたバイオフィルムを、第二の基板に堆積させて回収する、バイオフィルムの回収方法にも関する。
 第一の基板からのバイオフィルムの脱着(回収)は、バイオフィルムを第一の基板から剥離させることが可能な方法であればいかなる公知の方法を使用することもできる。例えば、セルスクレーパーのようなものを用いて基板からバイオフィルムを剥ぎ取る方法、水流を用いる方法、超音波を用いる方法などをあげることができるが、セルスクレーパーのような第一の基板の表面を大きく傷つけることのないような素材によって作られた固体材料を用いる方法が好ましい。これは、他の方法では、バイオフィルムが培地などで薄められることになり、再度濃縮が必要な場合があり、非効率であるからである。
 第二の基板からのバイオフィルムの脱着(回収)は、バイオフィルムを第二の基板から剥離させることが可能な方法であればいかなる公知の方法を使用することもできる。例えば、重力による方法、セルスクレーパーのような第一の基板の表面を大きく傷つけることのないような素材によって作られた固体材料を用いて基板からバイオフィルムを剥ぎ取る方法、水流を用いる方法、超音波を用いる方法などをあげることができるが、重力による自然落下を利用した方法、又は、セルスクレーパーのような固体材料を用いる方法が好ましい。これは、他の方法では、バイオフィルムが培地などで薄められることになり、再度濃縮が必要な場合があり、非効率であるからである。また、重力による自然落下を用いてバイオフィルムを回収した後に、セルスクレーパーのようなものを用いて、第二の基板上に残存している藻を脱着することもできる。なお、本発明では、回収工程には、前記の様に、次の培養を行うための回収及びバイオマスを取り出す工程を行うために行う回収も含まれているものとする。
[微細藻類を部分的に残す方法]
 液面上のバイオフィルムを、第一の基板を用いて転写する工程、すなわち、例えば、図1の(b)から(c)、又は図1の(l)から(n)への工程、第二の基板を用いて回収する工程、すなわち、例えば、図1の(d)から(e)、又は(m)から(o)への工程において、液面上の微細藻類を部分的に残す方法である。部分的に残すことによって、底面や液中に存在する微細藻類から藻体を供給するよりも、液面上に早くフィルム状の構造物を形成させることが可能な場合がある。液面上に残すパターンとしては、いかなる模様で行っても良いが、例えば、図2の(a)から(e)に示した様に行っても良いし、また、転写を利用して碁盤の目のようにしても良い。
 本発明の微細藻類の培養方法において、第一段目の培養において液面上の全面に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部を第一の培養容器から回収する際に、液面の面積の0.1%以上99.9%以下の面積のバイオフィルムを回収することが好ましく、20%以上80%以下の面積のバイオフィルムを回収することがより好ましく、25%以上75%以下の面積のバイオフィルムを回収することが更に好ましく、30%以上70%以下の面積のバイオフィルムを回収することが最も好ましい(すなわち、液面上の残存バイオフィルムの面積は、液面の表面積に対して、0.1%以上99.9%以下が好ましく、20%以上80%以下がより好ましく、25%以上75%以下が更に好ましく、30%以上70%以下が最も好ましい)。
 また、液面上に供給したバイオフィルム、又は液面上に残存させたバイオフィルムのいずれかを、攪拌することによって構造物をより細分化すると共に、前記バイオフィルムの少なくとも一部を液面上に浮かせておいてもよい。この様にすることで、増殖速度を増加させることができる場合があるからである。
[バイオフィルムの転写]
 本発明で言う転写とは、付着の一種で、実質的に増殖を伴わない付着である。本発明では、第一の基板を用いて、液面上に形成されたバイオフィルムを、実質的にそのままの形で第一の基板の表面に移し採る操作を言う。
 バイオフィルムの転写は、例えば、図1の(b)や(l)に示したように、第一の基板を用い、液面上に形成させたバイオフィルムを基板の表面へと転写させる工程である。図では、培養容器内の全面にバイオフィルムが形成されており、この様な状態で回収工程を行っているが、この様な状態での回収を行っても良いし、微細藻類からなるバイオフィルムが部分的に存在していない状態がある場合でも本発明では転写工程を行うことができる。また、本発明のような方法で培養を行っていると、液面上に形成されたバイオフィルムがしわ状になったり、折り重なる様になったりすること、ひだ状の微細藻類から構成されたフィルム状の構造物がオーロラ(カーテン状)の様に液中に生育する場合もある。本発明では、この様な状態でも転写を行うことが可能であり、このような方法による、転写法、培養法も本発明に含めることができる。
[分割処理]
 本発明で言う分割処理とは、微細藻類から構成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物の構造を部分的に壊し、液面上に広く分布させる操作のことである。
 分割を行うのは、微細藻類の回収前、微細藻類の回収後のいずれか又は両方で行うことが可能であるが、微細藻類を回収する前に行うと三次元状の構造物の形成を促進させる効果があるから好ましい。三次元状の構造物の形成によって、単位面積あたりの微細藻類の数が増加し、回収後の含水率が低下するなど、微細藻類のバイオマス生産のコスト削減に有利である。
 微細藻類の回収後に行う場合には、回収操作によって生じた微細藻類非存在領域に対して、分割操作を行うことによってその様な領域に対しても微細藻類を存在させることが可能となり、培養容器の液面の有効活用を計ることが可能である。また、前記のように、分割処理による増殖速度の向上により、単位面積あたりの微細藻類の数の増加、回収後の含水率の低下による、微細藻類のバイオマス生産のコスト削減にも有利である。
 分割方法としては、液面上のバイオフィルムを、可能な限り液面上に浮かせた状態で、構造物を可能な限り均一に分割することができる方法であればいかなる方法を用いることもできるが、風を利用する方法、水流を利用する方法、液面の波などの振動を利用する方法、固体材料を用いる方法などをあげることができる。固体材料を用いる方法とは、例えば、棒やスクリューのようなものを用いて、液面上のバイオフィルムを分裂させる処理である。また、回収工程そのものを分割処理に用いることも可能である。すなわち、第一の基板や第二の基板を用いた回収時の動作によって自然に液面上に残存させるバイオフィルムが分割される現象を利用するものである。
 分割の程度は、細かければ細かいほど好ましいが、細かくするためには、より激しい操作が必要となり、微細藻類が底面に沈む可能性が高くなってしまう。そこで、本発明では、目視で見えるような大きさでもかまわないとする。分割後のバイオフィルムの大きさは、0.01cmから10000cmが好ましく、0.1cmから1000cmがより好ましく、0.2cmから100cmが最も好ましい。なお、分割処理は、培養中、何回行っても良い。
 本発明の微細藻類の培養方法において、分割処理を行う場合には、バイオフィルムが実質的に存在する領域と、実質的に存在しない領域とが共存している液面に対して分割処理を行うことが好ましい。
 上記分割処理により、バイオフィルムが実質的に存在しない領域に、分割されたバイオフィルムを移動させることがより好ましい。
[基板]
 本発明でいうところの基板とは、図1の(b)若しくは(l)、又は、図1の(d)若しくは(m)で使用する液面上のバイオフィルムを、転写又は回収するために使用する基板のことを言う。
 第一の基板及び第二の基板の面積は、好ましくは培養容器中の培養溶液液面の面積よりも小さい方が好ましい。
 本発明に係る基板は、複数個のバイオフィルム回収部位を持つ基板であることが好ましく、すなわち、本発明の微細藻類の培養方法において、上記第一段目の培養において液面上に形成されたバイオフィルムを、複数個のバイオフィルム回収部位を持つ一枚の基板を用いて回収することが好ましい。これにより、第一段目の培養で得られたバイオフィルムを、複数個の第二の培養容器中へと移しやすくなるためである。
[素材]
 本発明で使用可能な培養容器、第一の基板、及び第二の基板の素材は、特に限定することはなく、公知のものを使用することができる。例えば、有機高分子化合物や無機化合物、それらの複合体から構成された素材を使用することができる。また、それらの混合物を用いることも可能である。
 有機高分子化合物としては、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル誘導体、ポリエステル誘導体、ポリアミド誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリプロピレン誘導体、ポリアクリル誘導体、ポリエチレンテレフタレート誘導体、ポリブチレンテレフタレート誘導体、ナイロン誘導体、ポリエチレンナフタレート誘導体、ポリカーボネート誘導体、ポリ塩化ビニリデン誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリエーテルスルホン誘導体、ポリアリレート誘導体、アリルジグリコールカーボネート誘導体、エチレン-酢酸ビニル共重合体誘導体、フッ素樹脂誘導体、ポリ乳酸誘導体、アクリル樹脂誘導体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等などを用いることができる。
 無機化合物としては、ガラス、セラミックス、コンクリートなどを用いることができる。
 金属化合物としては、鉄、アルミニウム、銅やステンレスなどの合金を用いることができる。
 上記の中でも、第一の基板、第二の基板、又は培養容器の素材の一部は、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリエステルの中から選ばれる少なくとも一つから構成されていることが好ましい。
 また、培養容器、第一の基板、第二の基板の素材が同一であっても良く、異なっていても良い。
 また、閉鎖型の培養容器を用いる場合には、受光面は、光が透過する素材である方が良く、透明材料であれば更に良い。
[第一の基板]
 第一の基板は、図では培養容器の表面全体を覆う基板が使用されているが、この様に培養容器の全体を覆う基板を使用しても良いし、培養容器の一部のみを覆うことのできる第一の基板を使用しても良い。第一の基板による液面上の微細藻類の転写は、複数回行っても良い。複数回行うことによって、転写率が向上するからである。また、第一の基板は、何度でも再利用してもかまわない。
[第二の基板]
 第二の基板は、培養容器の表面積よりも小さな基板を用いる方が好ましい。また、回収は複数回行っても良い。複数回行うことによって、回収率が向上するからである。また、図では、第二の基板を1枚だけ使用しているが、複数枚同時に使用することも可能である。これにより、回収率が向上する。また、第二の基板は、何度でも再利用してもかまわない。
[フィルム状の構造物]
 本発明で言うフィルム状の構造物とは、微細藻類から構成され、微細藻類同士が互いに細胞間物質によって集合した構造体のことを言い、本発明では、このフィルム状の構造物が液面上に浮いていることが大きな特徴である。一般的には、フィルム状の構造物から三次元状の構造物へと増殖に伴って変化する。主として、二次元的な構造体である。
[三次元状の構造物]
 本発明で言うところの三次元状の構造物とは、微細藻類から構成され、微細藻類同士が互いに細胞間物質によって集合した構造体のことを言い、本発明では、この三次元状の構造物が液面上に浮いていることが大きな特徴である。一般的には、フィルム状の構造物から三次元状の構造物へと増殖に伴って変化し、フィルム状の構造物と三次元状の構造物とが共存している状況も存在する。
 三次元状の構造物には、フィルム状の構造物がしわ状になった構造物、液面下にひだ状やカーテン状に伸びた構造物などが含まれ、液面上に気泡の形成が少なくとも1つ、又は多数重複することで形成した構造物のことを言う。
[バイオマス及びオイル]
 本発明は、本発明の微細藻類の培養方法により液面上に形成されたバイオフィルムから得られるバイオマス及びオイルにも関する。
 また本発明は、本発明の微細藻類の培養方法を含む、微細藻類由来のバイオマスの製造方法にも関する。
 本発明において、「バイオマス」とは、化石資源を除いた再生可能な生物由来の有機性資源をいい、例えば、生物由来の物質、食料、資材、燃料、資源などが挙げられる。
 本発明において、「オイル」とは、可燃性の流動性物質のことであり、主として、炭素、水素から構成された化合物のことであり、場合によっては、酸素、窒素などを含む物質のことである。オイルは、一般的に混合物であり、ヘキサンやアセトンなどの低極性溶媒を用いて抽出される物質である。その組成は、炭化水素化合物や脂肪酸、トリグリセリドなどから構成されている。また、エステル化して、バイオディーゼルとして使用するものもある。
 本発明に係るバイオフィルムに含まれるバイオマス及びオイルを採取する方法としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に制限されない。
 バイオマスの一例であるオイルの一般的な回収方法は、バイオフィルムを加熱乾燥させて、乾燥藻体を得た後、必要に応じて細胞破砕を行い、有機溶媒を用いてオイルを抽出する。抽出されたオイルは、一般的に、クロロフィルなどの不純物を含むため、精製を行う必要がある。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによるもの、蒸留(例えば、特表2010-539300に記載の蒸留方法)によるものなどがある。
 また、高濃度の微細藻類の溶液を調製した後、超音波処理によって微細藻類を破砕したり、プロテアーゼや酵素などによって微細藻類を破砕したりした後、有機溶媒を用いて藻体内のオイルを抽出する方法もある(例えば、特表2010-530741に記載の方法)。
 このように、本発明に係るバイオフィルムは、バイオマス燃料として有用である。すなわち、本発明は、本発明に係るバイオフィルムの回収方法により回収されたバイオフィルムを燃料として使用する、バイオマス燃料の製造方法にも関する。
[乾燥藻体]
 本発明における乾燥藻体は、本発明にかかるバイオフィルムを乾燥させたものである。
 当該バイオフィルムを乾燥させる方法としては、バイオフィルム中の水分を除去できる方法であれば特に制限されない。例えば、バイオフィルムを天日干しにする方法、バイオフィルムに乾燥空気を吹き付ける方法、バイオフィルムを凍結乾燥(フリーズドライ)する方法、加熱する方法等が挙げられる。これらのうち、バイオフィルムに含まれる成分の分解を抑制できる観点からは、凍結乾燥する乾燥方法が、短時間で効率的に乾燥できる観点からは、加熱乾燥する方法が好ましい。
 以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
 液面浮遊培養にて培養(前培養)することにより形成したフィルム状の構造物であるバイオフィルムを採取することで、実験用試料を調製した。なお、前培養において、微細藻類としてAVFF007株を使用し、初期の藻体濃度を10×10個/mLに調製して使用した。前培養の条件としては、プラントバイオシェルフ組織培養用(株式会社池田理化、AV152261-12-2)を用いて行い、上記微細藻類の懸濁溶液を添加した6穴プレート(直径3.5cm、アズワン株式会社、微生物培養用プレート、1-835501)に8mL入れることで培養を行った。4000ルクスの蛍光灯を、12時間毎にONとOFFとを切り替える光照射を行い、室温(23℃)、図8に示す組成を有するCSiFF01培地を水深8mmとなる量で培地として使用し、上記6穴プレートでの20日間の静置培養を行った。液面上に形成されたフィルム状の構造物の採取は、ポリエチレンフィルムを用いた転写による回収を行った。
 微細藻類(フィルム状の構造物)の回収物を、予め3mLのCSiFF01培地を入れておいた6穴プレートに、微細藻類の転写面を上面にして、培地中に沈め、セルスクレーパー(MS-93100、住友ベークライト株式会社)を用いて、ポリエチレンフィルム上の微細藻類を剥がし、ウェル内の培地中に懸濁させた。この懸濁溶液の全量を5mLホモジナイズ用(株式会社トミー精工、TM-655S)に入れた後、ビーズ式細胞破砕装置(MS-100、トミー精工株式会社)にセットし、4200rpmで20秒間のホモジナイズ処理を、細胞破砕用ビーズを用いずに3回行った。懸濁溶液中の藻体濃度を、濁度(660nmの吸光度)から算出した。なお、算出式は、予め濁度と藻体数との関係式を得ておいた後、濁度から藻体数を計算によって算出した。AVFF007株の場合には、y=115.26x+782x+25.63となった。なお、yが藻体数[単位:×10個/mL]、xが660nmでの吸光度である。
 前培養から得られた微細藻類を用いて第一段目の培養(本培養)を開始した。前培養で得られた懸濁溶液をCSiFF03培地で希釈することによって、初期使用藻体濃度20×10個/mLの分散溶液を60mL調製した。この溶液をスチロール角型ケース1型(内寸3.1cm×3.1cm、アズワン株式会社)に3.85mL(水深4mm)ずつ添加し、フタをしない状態で、真空デシケーター(アズワン株式会社、1-070-01)に16個入れた。5%二酸化炭素雰囲気下にした後、プラントバイオシェルフ組織培養用を用いて、4000ルクスの蛍光灯を12時間毎にONとOFFとを切り替える光照射を行い、室温(23℃)で7日間の静置培養を行った。
 第一段目の培養で、液面上にフィルム状の構造物が形成されているのを確認した後、スチロール角型ケース1型の内寸と同じ長さのポリエチレンフィルムを用い、液中に該フィルムを角型ケースの壁面に沿って挿入後、横方向にスライドさせることで、液面上に形成されたフィルム状の構造物を堆積させることで回収した。なお、第一段目の培養で得られた単位面積あたりの乾燥藻体量は、110℃の加熱処理から算出して、0.021mg/cmとなった。
 次に、以下の手順(分割処理など)を行った後、第二段目の培養(本培養)を開始した。スチロール角型ケース8型(内寸、7.85cm×14.25cm、アズワン株式会社)に90mLのCSiFF03培地を入れ(水深8mm)、ここに前記第一段目の培養で形成した藻体の回収物を、上記容器の中央付近の液面に浮くように入れた。藻体の回収物は、液面上に局在化して存在していたため、回収に使用したポリエチレンフィルムを用いて、液面上の微細藻類を培養容器全面に均一に分布するように分割処理を行った。なお、微細藻類の大部分は液面上に浮いたが、一部は培養容器底面に沈んだ。この様にして調製した微細藻類を液面上に浮かせた容器を8個準備し、二台の真空デシケーターを使用し、それぞれの中に4つずつスチロール角型ケース8型のフタをしない状態で入れ、プラントバイオシェルフ組織培養用を用いて、第二段目の培養を開始した。なお、培養条件は、第一段目の培養と同一である。また、二酸化炭素は評価日ごとに調製し、供給した。
 第二段目の培養2日目に、スチロール角型ケース8型の短辺の長さに切断したナイロンフィルムを用いて、第一段目の培養時の回収法と同様の方法で回収を試みたが、液面上には培養容器の液面全体にわたるバイオフィルムが形成されておらず、ナイロンフィルムと培養容器壁面との間の隙間から、微細藻類が漏れたため回収量が少なくなった。このため、ポリエチレンフィルムによる転写法、すなわち、前培養時の微細藻類の回収方法と同様の方法で回収を行った。これ以外の培養日での回収は、使用した素材を除き、第一段目の培養における回収方法と同様の方法で回収を行った。
 第二段目の培養10日目には、フィルム状の構造物であるバイオフィルムが液面全体に広がり、気泡も多数発生している様子が観測された。第二段目の培養21日目には、三次元状の構造物が液面上に形成されていた。
 第二段目の培養日数と、液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を図9に示した。
 以上の結果から、液面上に微細藻類を浮かせた状態から、液面上にバイオフィルムを形成するように培養可能であることが明らかとなった。なお、乾燥藻体量は、110℃の加熱処理によって算出した。
[参考例1]
 前培養、第一段目の培養は、実施例1と同様の方法で行った。
 実施例1における第一段目の培養と同様の方法で微細藻類を回収し、予め2mLのCSiFF03培地を入れておいた5mLのホモジナイズ用チューブの中に入れ、4200rpmの振盪速度で20秒間、3回のホモジナイズ処理を行うことで、微細藻類の分散溶液を調製した。
 次に、第二段目の培養を開始した。スチロール角型ケース8型に88mLのCSiFF03培地を入れ、ここに前記第一段目の培養由来の微細藻類の分散溶液(2mL)を全量入れた。これで、合計液量は90mLとなり、水深は8mmとなる。この様にして調製したスチロール角型ケース8型を2個準備し、容器内の微細藻類を含む培地をよく攪拌した後、一台の真空デシケーターを使用し、スチロール角型ケース8型のフタをしない状態で入れ、プラントバイオシェルフ組織培養用を用いて、第二段目の培養を開始した。なお、培養条件などは、実施例1と同一である。
 すなわち、実施例1では第一段目の培養において液面上に形成されたバイオフィルムとしての微細藻類を用いて、バイオフィルムが液面上に浮いた状態から第二段目の培養を開始したが、参考例1では第一段目の培養において液面上に形成されたバイオフィルムを用いて微細藻類の分散溶液を調製し、該分散溶液を用いて第二段目の培養を開始したものである。
 第二段目の培養を開始してから21日後の、実施例1及び参考例1において液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量の結果を、第二段目の培養を開始してから0日後の乾燥藻体量の結果(図10では“培養0日”と表記)と共に、図10に示した。
 液面浮遊状態から第二段目の培養を開始した実施例1の結果と、分散状態から第二段目の培養を開始した参考例1の結果は、ほぼ同一(すなわち、実施例1及び参考例1の第二段目の培養における微細藻類の増殖速度はほぼ同一)であり、この結果は、液面浮遊状態から、液面上にバイオフィルムを形成するように培養することが可能であることを示すものである。
[実施例2]
 実施例1と同様の方法で前培養及び微細藻類の回収を行った。
 実施例1と同様の方法で第一段目の培養を行った。但し、初期使用藻体濃度は、10×10個/mLに変更し、培養容器としては、スチロール角型ケース8型を用いた。また、回収用の基板としては、スライドガラスを用いて行った。
 3L(水深1.6cm)の図11に示す組成を有するCSi培地を入れたクリスタルコンテナー(アズワン株式会社、5-379-01、内寸53cm×35cm)に、前記の回収用の基板を用いた回収法で回収した微細藻類を、その液面上にアプライした。なお、実施例2では実施例1とは異なり、第二段目の培養を行う前の分割処理などは行っていないので、図12の培養0日後に示した様に、液面上の一ヶ所に微細藻類が留まっている状態から第二段目の培養を開始した。
 これを、プラントバイオシェルフに設置し、実施例1と同様の条件下で、第二段目の培養を開始した。なお、第二段目の培養は、開放系で行い、水分の蒸発のために蒸留水を必要に応じて添加した。また、二酸化炭素は大気中からの供給のみとした。
 第二段目の培養開始から7日後の、図12の培養7日に示した様に、1週間後には、培養容器のほぼ全面に微細藻類が広がるまでに増殖した。
 培養開始から13日後には、図12の培養13日に示した様に、培養容器を微細藻類がほぼ覆いつくし、液中への液面浮遊藻の折り返し構造が見られるまでに増殖した。以上から、分割処理を行わなくとも微細藻類の液面浮遊培養は可能であった。
[実施例3]
 実施例1と同様の方法で前培養及び微細藻類の回収を行った。なお、回収後の微細藻類の分散溶液調製用の培地としては、図13に示す組成を有するCSiFF04培地を用いた。実施例1と同様の方法で第一段目の培養を行った。但し、初期使用藻体濃度は、50×10個/mLに変更し、培養容器としては、PS製ケース23号を用い、微細藻類の分散溶液をそれぞれ9.4mL、すなわち、水深1.5cmとなるように入れた容器を20個調製し、光量は15000ルクスに変更した。また、実施例3では第一段目の培養を6日間行い、ポリエチレンフィルムに代えてナイロンフィルムを用いて液面上に形成されたバイオフィルムの回収を行った。実施例1と同様に、加熱処理から算出した、第一段目の培養で得られた単位面積あたりの乾燥藻体量は、0.123mg/cmであった。なお、液面上に形成されたバイオフィルムは、実施例1の方法では、フィルム状の構造物に近い構造であったが、実施例3では、三次元状の構造物を形成していた。
 以下の手順(分割処理など)を行った後、第二段目の培養も実施例1と同様の方法で行ったが、第一段目の培養で得られた液面浮遊バイオフィルムの、第二段目の培養における培地の液面上への導入法を、図3に示した方法で行った。
 具体的には、液面上にバイオフィルムを形成したPS製ケース23号(図3の培養容器2に相当)を、培地を入れた染色バット(図3の培養容器1に相当)に浸漬すると同時に、PS製ケース23号から染色バットの液面上へとバイオフィルムを浮上させた。次に、PS製ケース23号を染色バットへの浸漬位置からずらして染色バットの液面上に引き上げることで、染色バットの液面上に浮上したバイオフィルムを再びPS製ケース23号で回収しないようにした。染色バット上に浮いたバイオフィルムは、ピンセットを用いて、液面上に均一に分布するように分割処理を行った。なお、水深が0.5cm及び1cmの場合には、染色バットを傾けて、水深が深い状態を作り出してから、前記の処理を行った。また、培養容器及び培地量としては、染色バット(アズワン株式会社、1-1413-01、内寸74mm×94mm×高さ63mm)を用い、水深に応じてそれぞれ、CSiFF04培地を24.8mL(水深0.5cm)、59.6mL(水深1cm)、129.1mL(水深2cm)、337.8mL(水深5cm)入れたものをそれぞれ3個ずつ準備した。また、染色バットの側面は、水深に応じて、黒いテープで遮光した。第二段目の培養期間は、14日間とした。
 第二段目の培養における水深と、第二段目の培養を14日間行った後の液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を図14に示した。
 実施例3では液面上に微細藻類からなる三次元状の構造物であるバイオフィルムが形成され、図14に示されるように水深が深ければ深いほど微細藻類の増殖量は多くなった。
 以上から、第一段目の培養で、液面上に微細藻類からなる三次元状の構造物であるバイオフィルムを形成させ、これを全量、第二段目の培養で使用する面積のより大きな培養容器の液中に沈めると同時に、第一段目の培養で形成された微細藻類の全量を第二段目の培養で使用する培養容器の液面に移し、第一段目の培養で使用した培養容器を第二段目の培養で使用する培養容器から取り除いた後、第二段目の培養で使用する培養容器の液面に移った微細藻類を分割処理し、第二段目の培養(継続培養)することでも、液面上でバイオフィルムを形成するように培養可能であることが分かった。
 なお、水深が深ければ深いほど、微細藻類の増殖速度が高くなったのは、培地中の培地成分量が多くなったためと考えている。
[実施例4]
 実施例1と同様の方法で前培養及び微細藻類の回収を行った。なお、実施例4において前培養の期間は33日間とした。
 実施例1と同様の方法で第一段目の培養を行った。但し、培地はCSiFF04培地を用い、初期使用藻体濃度は、50×10個/mLに変更し、光量は4000ルクスに変更し、1150mLの微細藻類の懸濁溶液を準備した。また、培養容器としては、スチロールケース角型8型を用い、微細藻類の懸濁溶液をそれぞれ220mL入れた容器を5個調製し、真空デシケーターは使用せずに、そのままフタをしてプラントバイオシェルフ組織培養用の上に設置して第一段目の培養を開始した。従って、二酸化炭素濃度は、容器内に残っている大気中濃度である。
 第一段目の培養を7日間行った後、実施例1の第一段目の培養におけるバイオフィルムの回収方法と同様の方法で液面上のバイオフィルムを回収した。但し、実施例4では、第一段目の培養によって液面上に形成されたバイオフィルムの回収量を種々変えるために、フィルムサイズの異なるナイロンフィルムを用いて、液面上に形成されたバイオフィルムの回収面積を変化させた。バイオフィルムの回収物は、乾熱乾燥によって乾燥藻体量を算出した。
 第一段目の培養を7日間行った後に液面上に形成されたバイオフィルムについて、面積を基準にして液面上の全て(すなわち100%)のバイオフィルムである微細藻類を回収したもの(すなわち、液面上に残したバイオフィルムの割合が0%)の乾燥藻体量を求めた。同様にして、回収する割合を、面積を基準にして75%、50%、25%及び0%(すなわち、液面上に残したバイオフィルムの割合はそれぞれ25%、50%、75%及び100%)とした場合について、同様に乾燥藻体量を求めた。これら乾燥藻体量の結果を、図15の白棒で示した。すなわち、白棒の培養0日後が第一段目の培養によって液面上に形成されたバイオフィルムの採取(回収)によって得られた乾燥藻体量である。液面上に残しておく藻体量が0%の場合、すなわち、液面上の全ての微細藻類を採取(回収)したものが最も多く、液面上に残しておく割合が増加するに従って、回収藻体量は減少した。
 液面上のバイオフィルムである微細藻類を回収した後、液面に波を発生させることでバイオフィルムの分割処理を行った。
 分割処理後、第二段目の培養を開始した。培養条件は、第一段目の培養と同一条件である。また、第二段目の培養における培地は、第一段目の培養における培地をそのまま継続して使用した。第二段目の培養開始から14日後に液面上に形成されたバイオフィルムである微細藻類を全量回収した。
 上述の第一段目の培養後に液面上に残したバイオフィルムの割合の各々について、第二段目の培養開始から14日後に液面上に形成されたバイオフィルムである微細藻類の乾燥藻体量の結果を図15の黒い棒で示した。
 すなわち、白棒と黒棒との合計値が第一段目及び第二段目の培養を通じて培養容器上で培養された微細藻類の乾燥藻体量の合計量となる。液面上に残しておくバイオフィルムの割合が50%以上で、第一段目の培養と第二段目の培養で収穫された微細藻類の乾燥藻体量がほぼ同一量となった。従って、第一段目及び第二段目の培養から収穫された微細藻類の乾燥藻体量の合計量を多くするという点からは、50%以上収穫することが最も効率の良いことがわかった。
 第一段目の培養で収穫後に液面上に残存させた微細藻類の乾燥藻体量を上述の回収したバイオフィルムである微細藻類の乾燥藻体量及び回収面積から算出し、第二段目の培養14日後に得られた微細藻類の乾燥藻体量から、第二段目の培養における微細藻類の増殖倍率を求めた。増殖倍率の結果を図15の折れ線グラフに示した。
 以上から、第一段目の培養後に液面上に残したバイオフィルムの割合(残存率)が低いほど、第二段目の培養における微細藻類の増殖倍率が高く、微細藻類を有効に活用できていることがわかった。
 収穫された微細藻類の乾燥藻体量の合計量及び微細藻類の増殖倍率の結果の両者を勘案すると、液面上に残しておく微細藻類の割合は、50%が最も好ましいことがわかった。
 なお、図15において“培養0日”と表記した結果は、上述のように第一段目の培養後の収穫によって得られた微細藻類の乾燥藻体量である。液面上にバイオフィルムを0%残しておく、すなわち、全量回収した場合にも第二段目の培養後に微細藻類の回収量として有限の値が得られたのは、第一段目の培養後では培養容器の液面上の微細藻類のみを回収したため、培養容器の底面及び側面には微細藻類がそのまま残存しており、ここから増殖したものと考えられる。
[実施例5]
 実施例1と同様の方法で前培養及び微細藻類の回収を行った。なお、実施例5において前培養の期間は14日間とした。
 図21に、培養開始から収穫までの培養における“親”と“子”の関係を示す。
 実施例1と同様の方法で第一段目の培養を行った。但し、培地はCSiFF04培地を用い、初期使用藻体濃度は、50×10個/mLに変更し、410mLの微細藻類の懸濁溶液を準備した。また、培養容器としては、側面を黒いビニールテープにて遮光処理をしたPS製ケース28号を用い、微細藻類の懸濁溶液をそれぞれ40mL、すなわち、水深1.5cmとなるように入れた容器を図21に示すように10個調製し、光量は15000ルクスに変更した。
 第一段目の培養3日後に前記10個の培養容器のうち、2個を使用して液面上に形成されたバイオフィルムである微細藻類の乾燥藻体量を算出した。回収(収穫)方法は、実施例1の第一段目の培養における方法と同様の方法を用いた。得られた乾燥藻体量は、0.352mg/cmであった。
 残りの前記培養容器8個の内、4個に対して、実施例1の第一段目の培養における方法と同様の方法でバイオフィルムである微細藻類の回収を行った。なお、基板は、1.2cm幅のナイロンフィルムを作成し(すなわち、培養容器長辺の長さの4分の1の長さ、すなわち、バイオフィルムは4等分される)、図5に示したようにして、液面上のバイオフィルムを回収した。回収は、1つの培養容器に対して、3回行い、それぞれ以下によって調製した異なる培養容器3個にそれぞれをアプライした。また、それぞれの回収は、可能な限り回収物量が同程度になるようにした。
 これを予め40mLのCSiFF04培地を入れておいたPS製ケース28号の液面上に静かにアプライすることで、第一段目の培養後に回収したバイオフィルムである微細藻類を液面上に浮かせた。これを、培養容器全体を揺さぶるようにして上記バイオフィルムに対して分割処理を行い、バイオフィルムを適度な大きさに分割した。なお、前記培養容器1個に対して、3個の培養容器を使用した。すなわち、合計16個の培養容器となった。前記8個の培養容器のうち残りの4個の培養容器については、部分的な回収を行わずに、この状態で後述の第二段目の培養を行い、第二段目の培養から4、12日後に回収を行った。その結果を図16では“部分収穫なし”と表記した。
 上述の“部分収穫なし”とした培養容器以外の残りの4個の培養容器については、以下の手順により分割処理されたバイオフィルムの一部を新たな3個の培養容器(図16において“子1”、“子2”、“子3”と表記)に移し、後述の第二段目の培養を行った。それと共に、分割処理されたバイオフィルムの一部を回収した後に残ったバイオフィルムを含む前記4個の培養容器(図16において“親”と表記)も後述の第二段目の培養を行った。
 具体的には、第一段目の培養後の回収に用いたナイロンフィルムを用いて、再び培養容器の液面上に存在する分割処理されたバイオフィルムの回収を行い、バイオフィルムを“親”の培養容器から“子”の培養容器へと移した。なお、ここでのバイオフィルムは、液面上からの回収を一度行った後であることから、液面上のフィルム状の構造が若干崩れ、回収量を制御することが先の回収と比べて困難であった。
 この回収物を予め40mLのCSiFF04培地を入れておいたPS製ケース28号(“子”の培養容器)の液面上に静かにアプライすることで、液面上に浮かせた。これを、“子”の培養容器全体を揺さぶるようにして液面上に浮いたバイオフィルムの分割処理を行った。分割処理後には、数mm~1cm程度の大きさを最大値として、より小さな多数のバイオフィルム構造物となった。
 上記と同様の操作を行い、1個の培養容器中の分割処理されたバイオフィルムから、該バイオフィルムの一部を液面上に浮かせた新しい培養容器を3個準備した(“子1”~“子3”)。
 また、残る3個の培養容器に対しても同様の操作を行い、合計16個の培養容器を得た。
 以上のようにして調整した合計20個の培養容器について、培養容器8個を入れた真空デシケーターを2台、4個入れたものを1台準備し、第一段目の培養と同一の培養条件で第二段目の培養を開始した。
 第二段目の培養の開始から4日後及び12日後に、実施例1の第二段目の培養における方法と同様の方法で液面上に形成されたバイオフィルムの回収(収穫)を行った。“部分収穫なし”、“親”及び“子1”~“子3”と表記した各培養容器について、第二段目の培養の開始から4日後及び12日後に回収されたバイオフィルムの乾燥藻体量の結果を図16に示した。
 上記したように、図中、“部分収穫なし”が、途中での収穫を行わなかったもの、“親”が部分回収後に液面上に残ったバイオフィルムを用いて培養を継続したもの、“子”が部分回収時の回収物を液面上に浮かせた後、分割処理を行って培養を行ったものである。
 第二段目の培養開始から4日後でも、子の培養容器には、液面上にバイオフィルムが形成されており、12日後には、三次元状の構造物であるバイオフィルムの形成が見られた。“親”及び“子1”~“子3”を“部分収穫なし”と比較すると、第二段目の培養開始から12日後ではそれぞれの乾燥藻体量は低くなったが、“親”及び“子1”~“子3”の乾燥藻体量を合計すると、“部分収穫なし”の乾燥藻体量を基準にして30%より多い収穫量となった。
 これらのことは、液面上に形成されたバイオフィルムを部分収穫することによって、複数の培養容器に移し分けて培養し、各々の培養容器中で液面上にバイオフィルムを形成するように培養することが可能であり、その合計の収穫量は、1つの培養容器中で部分収穫を行わずに継続して培養を行うよりも微細藻類の培養効率が良いことを示している。
 本発明に係る微細藻類の培養方法によれば、微細藻類の懸濁溶液を調製することなく、次の培養を行うことができる。更に、微細藻類の懸濁溶液を次の培養容器内に導入し、培養容器内に存在している培地全体を攪拌処理する必要がなく、実質的に液面上の微細藻類バイオフィルムのみを液面上で攪拌又は分散することが可能となり、効率的な培養を行うことができる。更に、液面上でのバイオフィルムの形成が可能となり、従来の浮遊培養と比較して、微細藻類の回収が極めて容易になる。即ち、本発明では、微細藻類を回収する段階では、微細藻類の集合体から構成されたバイオフィルムが液面上に浮かんでおり、そのバイオフィルムを回収対象としているため、従来のように大量の培地から微細藻類を回収する必要がなく、液面上のバイオフィルム及びバイオフィルムに含まれている水分のみを回収対象としている。そのため、微細藻類の回収コストを大幅に低下できる。また、大量の液体培地をハンドリングする必要が無く、大量の水を使用する必要が無い。
 本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
 本出願は、2012年12月7日出願の日本特許出願(特願2012-268781)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
1 第二の培養容器
2 第一の培養容器

Claims (22)

  1.  純菌化工程を経て得られた微細藻類を、第一の培養容器内の培養液中で培養することによって、前記培養液の液面上に微細藻類からなるフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを形成させる第一段目の培養と、
     前記培養液の液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの少なくとも一部を種藻として用いることで、前記微細藻類を液面上で培養する第二段目の培養とを含む、微細藻類の培養方法。
  2.  前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部又は全てを、前記第一の培養容器から回収し、該回収したバイオフィルムを第二の培養容器中へと移して、該第二の培養容器内の培養液中で種藻として用いることで、前記第二段目の培養を行う、請求項1に記載の微細藻類の培養方法。
  3.  前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部を、基板を用いて複数回回収し、該回収したバイオフィルムを複数個の第二の培養容器中へと移して、該複数個の第二の培養容器それぞれの内の培養液中で種藻として用いることで、前記第二段目の培養を行う、請求項1又は2に記載の微細藻類の培養方法。
  4.  前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部を、前記第一の培養容器から回収し、前記第一の培養容器内の培養液中で、前記第一の培養容器内に残ったバイオフィルムを種藻として用いることで、前記第二段目の培養を行う、請求項1に記載の微細藻類の培養方法。
  5.  前記第一段目の培養と前記第二段目の培養との間に、前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを分割する分割処理を行うことを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  6.  バイオフィルムが実質的に存在する領域と、実質的に存在しない領域とが共存している液面に対して分割処理を行う、請求項5に記載の微細藻類の培養方法。
  7.  前記分割処理により、バイオフィルムが実質的に存在しない領域に、分割されたバイオフィルムを移動させる、請求項6に記載の微細藻類の培養方法。
  8.  前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを、複数個のバイオフィルム回収部位を持つ一枚の基板を用いて回収する、請求項1~7のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  9.  前記第二の培養容器の面積が、前記第一の培養容器の面積より大きい、請求項2、3及び5~8のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  10.  前記第一段目の培養後に、液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを有する前記第一の培養容器を、前記第二の培養容器に沈めることによって、前記バイオフィルムを前記第二の培養容器の液面上に浮かせて前記第二の培養容器へと移す、請求項9に記載の微細藻類の培養方法。
  11.  前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムの一部を前記第一の培養容器から回収する際に、液面の面積の25%以上75%以下の面積のバイオフィルムを回収する、請求項1~10のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  12.  前記第一段目の培養及び第二段目の培養が共に静置培養である、請求項1~11のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  13.  前記第一段目の培養において液面上に形成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物であるバイオフィルムを、基板の表面に転写又は堆積させることで回収する、請求項1~12のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  14.  前記微細藻類が緑藻である、請求項1~13のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  15.  前記微細藻類がオイルを含む微生物である、請求項1~14のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  16.  前記微細藻類が、ボツリオコッカス属(Botryococcus sp.)である、請求項1~15のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  17.  前記微細藻類が、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)である、請求項16に記載の微細藻類の培養方法。
  18.  前記微細藻類が、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus) AVFF007株(受託番号FERM BP-11420)である、請求項17に記載の微細藻類の培養方法。
  19.  請求項1~18のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法により、液面上に形成されたバイオフィルム。
  20.  請求項19に記載のバイオフィルムから得られるバイオマス。
  21.  請求項19に記載のバイオフィルムから得られるオイル。
  22.  請求項1~18のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法を含む、微細藻類由来のバイオマスの製造方法。
PCT/JP2013/082500 2012-12-07 2013-12-03 液面上での微細藻類の培養方法において、液面上の微細藻類から種藻を採取し、別の培養容器で培養を行う方法 WO2014088010A1 (ja)

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