WO2014020701A1 - 銅合金線及び銅合金線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ここで、ワイヤーハーネスを軽量化する手段として、電線及び銅線の細径化が図られている。また、電線導体及び銅線の細径化によって、ワイヤーハーネスの軽量化とともに小型化も図られることになり、配線スペースを有効活用できるといったメリットもある。
このようなタフピッチ銅で構成された銅線においては、強度を十分に確保できないため、細径化による軽量化、小型化を図ることはできなかった。
Sn入り銅は、Snが銅の母中に固溶することによって強度を向上させる固溶強化型の銅合金であり、上述のタフピッチ銅に比較して強度が十分に向上されたものである。
このため、Sn入り銅を用いた場合であっても、伸びと強度とを両立させることができず、銅線の細径化を図ることができなかった。
そして、この銅合金線に対して最終時効熱処理を実施すると、再固溶していたCo及びPを含む化合物からなる析出物が、転位ループを析出サイトとして再度析出し、導電率が向上するとともに析出強化によって強度も向上することになる。また、この熱処理によって、転位が解放され、伸びが回復することになる。よって、強度及び伸びに優れた銅合金線を得ることができる。
なお、冷間加工後の最終時効熱処理は、銅合金線の状態で実施してもよいし、複数の銅合金線を撚り線加工した後に実施してもよい。
この構成の銅合金線においては、銅の母相中にCo及びPを含む化合物からなる析出物が分散されることになり、強度、導電率の向上を図ることが可能となる。
なお、Co及びPが下限値を下回ると析出物の個数が不足し、強度を充分に向上させることができない。一方、Co及びPが上限値を超えると、強度の向上に寄与しない元素が多く存在してしまい、導電率の低下等を招くおそれがある。このため、Co及びPは、上述の範囲内に設定することが望ましい。
また、Snは、銅の母相中に固溶することによって強度を向上させる作用を有する元素である。また、CoとPとを主成分とする析出物の析出を促進させる効果や、耐熱性、耐食性の向上を図ることもできる。このような作用効果を確実に奏功せしめるためには、Snの含有量を0.005質量%以上とする必要がある。また、Snが過剰に添加された場合には導電率の低下を招くため、Snの含有量は0.70質量%以下とすることが望ましい。
この構成の銅合金線においては、Niを上述の範囲内で含有しているので、結晶粒の粗大化を抑制でき、強度をさらに向上させることができる。
この構成の銅合金線においては、Zn,Mg,Ag,Zrのいずれか1種または2種以上を上述の範囲で含有しているので、これらの元素が硫黄(S)と化合物を形成することにより、銅の母相中に硫黄(S)が固溶することを抑制でき、強度等の機械的特性の劣化を抑制することができる。
この構成の銅合金線においては、引張強度、伸びが確保されているので、ワイヤーハーネスの細線化を図ることが可能となる。
また、冷間加工工程の後の最終時効熱処理工程は、単線の状態で実施してもよいし、上述の撚り線加工工程の後に実施してもよい。
本実施形態である銅合金線1は、ワイヤーハーネスを構成する絶縁電線5の素線として用いられるものである。図1に、本発明の実施形態である銅合金線1を用いた絶縁電線の一例を示す。
この絶縁電線5は、複数(図1においては7本)の銅合金線1が撚り合わされてなる電線導体6と、この電線導体6の外周を被覆する絶縁被覆7と、を備えている。
なお、この銅合金においては、さらにNi;0.01質量%以上0.15質量%以下を含んでいてもよい。また、さらにZn;0.002質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.002質量%以上0.25質量%以下、Ag;0.002質量%以上0.25質量%以下、Zr;0.001質量%以上0.1質量%以下のうち、いずれか1種または2種以上を含んでいてもよい。
以下に、各元素の含有量を上述の範囲内に設定した理由について説明する。
CoとPは、銅の母相中に分散する析出物を形成する元素である。
ここで、Coの含有量が0.12質量%未満及びPの含有量が0.04質量%未満の場合には、析出物の個数が不足し、強度を充分に向上させることができないおそれがある。一方、Coの含有量が0.40質量%超え及びPの含有量が0.16質量%超えの場合には、強度の向上に寄与しない元素が多く存在してしまい、導電率の低下等を招くおそれがある。
このため、Coの含有量を0.12質量%以上0.40質量%以下、Pの含有量を0.040質量%以上0.16質量%以下の範囲内に設定することが望ましい。
Snは、銅の母相中に固溶することによって強度を向上させる作用を有する元素である。また、CoとPとを主成分とする析出物の析出を促進させる効果や、耐熱性、耐食性を向上させる作用も有する。
ここで、Snの含有量が0.005質量%未満の場合には、上述した作用効果を確実に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Snの含有量が0.70質量%を超える場合には、導電率を確保できなくなるおそれがある。
このため、Snの含有量を0.005質量%以上0.70質量%以下の範囲内に設定することが望ましい。
Niは、Coの一部を代替することができ、結晶粒の粗大化を抑制する作用効果を有する元素である。
ここで、Niの含有量が0.01質量%未満の場合には、上述した作用効果を確実に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Niの含有量が0.15質量%を超える場合には、導電率を確保できなくなるおそれがある。
このため、Niを含有する場合には、Niの含有量を0.01質量%以上0.15質量%以下の範囲内とすることが好ましい。
Zn,Mg,Ag,Zrといった元素は、硫黄(S)と化合物を生成し、銅の母相中への硫黄(S)の固溶を抑制する作用効果を有する元素である。
ここで、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素の含有量がそれぞれ上述の下限値より少ない場合には、銅の母相中への硫黄(S)の固溶を抑制する作用効果を十分に奏功せしめることができない。一方、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素の含有量がそれぞれ上述の上限値より多い場合には、導電率を確保できなくなるおそれがある。
このため、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素を含有する場合には、それぞれ上述の範囲内とすることが好ましい。
ここで、析出物の観察は、次のようにして実施した。透過型電子顕微鏡によって倍率15万倍および75万倍で観察し、当該析出物の面積を算出してその円相当径を粒径として算出した。なお、倍率15万倍で11~100nmの粒径の析出物を、倍率75万倍で1~10nmの粒径の析出物を測定した。倍率75万倍での観察では1nm未満の析出物は明確に判別できないことから、観察される析出物全体の個数は粒径1nm以上の析出物の個数となる。また、透過型電子顕微鏡による観察は、倍率15万倍の場合は視野面積約4×105nm2 、倍率75万倍の場合は視野面積約2×104nm2 で実施した。
まず、上記銅合金からなる銅荒引線50を連続鋳造圧延法によって連続的に製出する(連続鋳造圧延工程S01)。この連続鋳造圧延工程S01においては、例えば図3に示す連続鋳造圧延設備が用いられる。
この連続圧延装置Eから製出された銅荒引線50は、洗浄冷却装置15及び探傷器16を介してコイラーFに巻き取られる。
ここで、上述の連続鋳造圧延設備によって製出される銅荒引線50の外径は、例えば8mm以上40mm以下とされており、本実施形態では8mmとされている。
そして、この連続鋳造圧延工程S01では、鋳造銅材21が、例えば800℃から1000℃の比較的高温で保持されることから、Co、Pといった元素が銅の母相中に多く固溶することになる。
ここで、中間時効熱処理工程S03では、熱処理温度が250℃以上450℃以下、保持時間が0.5時間以上15時間以下の条件で実施される。
この2次冷間加工工程S04においては、複数段の加工が実施され、外径0.015mm以上0.2mm以下の範囲内の銅合金線1とする。本実施形態の銅合金線1は、外径0.169mmとされている。
この最終時効熱処理工程S06は、バッチ式の熱処理の他に、線材を通過させる管状炉を使った熱処理、通電焼鈍等の各種手段を用いることができる。
そして、2次冷間加工工程S04の後に、最終時効熱処理工程S06を実施すると、再固溶していたCo,Pが、転位ループを析出サイトとして再度析出し、粒径の小さな析出物が数多く分散することになる。よって、導電率が向上するとともに析出強化によって強度も向上することになる。また、この熱処理によって、転位が解放され、伸びが回復することになる。よって、強度及び伸びに優れた銅合金線1及び電線導体6を製造することができる。
具体的には、本実施形態である銅合金線1は、引張強度が450MPa以上、伸びが5%以上とされているので、ワイヤーハーネスの細線化を図ることが可能となる。
また、本実施形態では、さらにZn;0.002質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.002質量%以上0.25質量%以下、Ag;0.002質量%以上0.25質量%以下、Zr;0.001質量%以上0.1質量%以下のうち、いずれか1種または2種以上を含んでいるので、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素が硫黄(S)と化合物を形成することにより、銅の母相中に硫黄(S)が固溶することを抑制でき、銅合金線1の強度等の機械的特性の劣化を抑制することができる。
例えば、本実施形態では、自動車用ワイヤーハーネスとして用いられる電線導体及び被覆電線を構成する銅合金線として説明したが、これに限定されることはなく、コピー機等の機器用ワイヤーハーネスに用いられる電線導体及び被覆電線を構成する銅合金線であってもよい。
また、撚り線加工工程の後に最終時効熱処理工程を実施するものとして説明したが、これに限定されることはなく、単線の状態で最終時効熱処理工程を実施し、その後、撚り線加工工程を実施してもよい。
また、本実施形態では、連続鋳造圧延工程を図3に示すベルトホイール式鋳造機を用いて実施するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の連続鋳造法を採用してもよい。
ベルトホイール式連続鋳造機を備えた連続鋳造圧延設備を用いて、表1に示す組成の銅合金からなる銅荒引線(直径8mm)を製出した。この銅荒引線に対して、1次冷間加工を実施して直径0.9mmとした後に、表1記載の条件で中間時効熱処理を施した。その後、2次冷間加工を実施して直径0.165mmとし、表1記載の条件で最終時効熱処理を施した。
本発明例について、中間時効熱処理後の銅線材を用いて析出物の観察を行った。析出物の観察は、透過型電子顕微鏡(機種名:TEM:日立製作所製、H-800、HF-2000、HF-2200および日本電子製 JEM-2010F)の透過電子像を用いて、各析出物の面積から相当粒径を算出した。なお、倍率は15万倍、75万倍とし、それぞれ測定視野約4×105nm2、約2×104nm2 で、観察を実施した。そして、析出物の平均粒径、及び、観察される析出物のうち粒径5nm以上の析出物の割合を算出した。結果を表2に示す。
JIS Z 2241に準拠し、島津製作所製AG-5kNXを用いて引張試験を実施し、引張強度及び伸びを測定した。結果を表2に示す。
一方、析出物の平均粒径が15nm以下、5nm以下の析出物の割合が10%以上である本発明例1-19においては、引張強度及び伸びをともに向上させることができた。
5 絶縁電線
6 電線導体
Claims (5)
- Co,P及びSnを含有する析出強化型銅合金からなり、
中間時効熱処理を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径が15nm以下であり、かつ、粒径5nm以下の析出物の個数が、観察される析出物全体の10%以上とされており、
当該中間時効熱処理の後、冷間加工及び最終時効熱処理されていることを特徴とする銅合金線。 - 前記析出強化型銅合金の組成が、Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物とされていることを特徴とする請求項1に記載の銅合金線。
- 前記析出強化型銅合金は、さらにNi;0.01質量%以上0.15質量%以下を含むことを特徴とする請求項2に記載の銅合金線。
- 前記析出強化型銅合金は、さらにZn;0.002質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.002質量%以上0.25質量%以下、Ag;0.002質量%以上0.25質量%以下、Zr;0.001質量%以上0.1質量%以下のうち、いずれか1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の銅合金線。
- Co,P及びSnを含有する析出強化型銅合金からなる銅合金線の製造方法であって、
中間時効熱処理工程と、この中間時効熱処理工程の後に実施される冷間加工工程と、この冷間加工工程の後に実施される最終時効熱処理工程を有し、
前記中間時効熱処理工程を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径を15nm以下とし、かつ、粒径5nm以下の析出物の個数を、観察される析出物全体の10%以上とすることを特徴とする銅合金線の製造方法。
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