WO2013118523A1 - 補機部品キャリア - Google Patents

Abstract

　エンジンルーム内にて補機部品（１０）を支持する補機部品キャリア（２０）は、天板（２１）と台座（２２）と促進構造を有する。天板（２１）は、補機部品（１０）を搭載しかつ平板形状である。台座（２２）は、天板（２１）をサイドメンバ（３）の上方かつエンジンマウント（４）の前方に支持する。促進構造は、車両前突時の外力により天板（２１）が上方へ凸となる向きの山形に折れ曲がることを促進して補機部品（１０）を上方へ変位させるように構成される。

Description

補機部品キャリア

　本発明は、補機部品を支持するためのキャリアに関する。補機部品は、車両前部に位置するエンジンルーム内に搭載されるバッテリまたはインバータ等である。

　前機関前駆動車の場合、車両前部に位置するエンジンルーム内に横置きエンジンが設けられる。エンジンと該エンジンに一体に結合したトランスアクスルは、エンジンマウントによって左右サイドメンバ間に跨った状態で支持される。左右一方のエンジンマウントの前方かつほぼ同じ高さにエンジン始動用のバッテリが配置される。バッテリは、サイドメンバに取付けたバッテリキャリア上に搭載されてサイドメンバから適切な高さに設定される。

　車両前突時の衝撃によってバッテリは、バッテリキャリアとともに後方に押されることが想定される。しかしバッテリがエンジンマウントの前方で同じ高さに配置されるためバッテリが後方へ移動できるスペースが十分に確保できない場合がある。この場合、バッテリが衝突物とエンジンマウントの間に挟まれて損傷を受けるおそれがある。

　特開平０８－１９２６３９号公報、特開２００６－８８８７１号公報、特開２０１１－１２５１８３号公報は、車両前突時におけるエンジンルーム内の各種部材の損傷を最小限に抑えるための技術を開示する。特開２０１１－１２５１８３号公報の技術は、車両前突時においてインバータを後方斜め上方へ案内する。インバータは、ハイブリッド車両等においてバッテリの電力供給を制御する電源装置の主となる。該技術は、インバータがエンジンマウント等の他部位と干渉することを回避して、インバータの損傷を軽減する。しかし電源装置を上方へ案内するための案内板が必要である。そのためキャリアが大型かつ複雑になり、車両のコストがアップする。

　車両前突時に補機部品が損傷することを軽減し得る簡易な技術が従来必要とされている。補機部品は、例えばエンジン始動用のバッテリであって、車両前部に位置するエンジンルーム内に搭載される。

　本発明の１つの特徴によると、エンジンルーム内にて補機部品を支持する補機部品キャリアは、天板と台座と促進構造を有する。天板は、補機部品を搭載しかつ平板形状である。台座は、天板をサイドメンバの上方かつエンジンマウントの前方に支持する。促進構造は、車両前突時の外力により天板が上方へ凸となる向きの山形に折れ曲がることを促進して補機部品を上方へ変位させるように構成される。

　したがって車両前突時に補機部品が衝突物とエンジンマウントの間に挟み込まれることが回避される。これにより補機部品の損傷が回避され若しくは軽減される。

　本発明の他の特徴によると促進構造は、天板が車両前突時に衝突物とエンジンマウントとの間に挟まれて山形に折れ曲がる構成を有し得る。したがって車両前突時に補機部品キャリアの全体が後方へ変位して、天板が衝突物とエンジンマウントとの間に挟まれ得る。これにより天板が山形に折れ曲がって補機部品が上方へ変位し得る。

　本発明の他の特徴によると促進構造は、天板に形成されて天板が山形に折れ曲がるように促進する曲げ起点部を有し得る。曲げ起点部は、車両前突時に衝撃による応力が集中して天板の曲げ変形の起点になり得る。したがって天板は、曲げ起点部によって確実に山形に折れ曲がり得る。これにより補機部品の損傷がより確実に回避され若しくは防止され得る。

　本発明の他の特徴によると台座は、相互に対向する前壁部と後壁部を有し得る。促進構造は、車両前突時の外力により前壁部と後壁部が相互に接近する方向に台座を変形させて天板を山形に折り曲げる構成を有し得る。したがって車両前突時の外力による台座の変形を利用して天板を山形に折り曲げることができる。これにより補機部品をより確実に上方へ変位させることができる。

自動車前部に位置するエンジンルームの概略平面図である。 図１中矢印II方向から見たエンジンルームの左側面図である。 補機部品キャリアの斜視図である。 自動車前突によって天板がエンジンマウントに衝突するまでにおけるバッテリと補機部品キャリアの変位を示す側面図である。 自動車前突において天板がエンジンマウントに衝突した後におけるバッテリと補機部品キャリアの変位を示す側面図である。 山形に折れ曲がった天板の斜視図である。 別形態の曲げ起点部を有する天板の斜視図である。 別形態の曲げ起点部を有する天板の斜視図である。

　本発明の１つの実施の形態を図１～７にしたがって説明する。図１，２に示すように自動車１のエンジンルーム２の左右にサイドメンバ３が配置される。左右のサイドメンバ３間に横置きタイプのエンジン５がエンジンマウント４によって支持される。エンジン５にはトランスアクスル６が結合される。図１中符号７はエンジンルーム２を開閉するエンジンフードパネルを示す。符号８はエンジンルーム２と車室内を区画するダッシュパネルを示す。符号９は左右サイドメンバ３の前端部間を結合するフロントクロスメンバを示す。

　エンジンルーム２内には、エンジン５の周辺部品である各種補機部品が搭載される。補機部品は、例えばエンジン始動用のバッテリ１０である。図２に示すようにバッテリ１０は、補機部品キャリア２０を介して一方（例えば左側）のサイドメンバ３に搭載される。補機部品キャリア２０は、サイドメンバ３の上方一定の高さに位置し、エンジンマウント４の前方に位置する。バッテリ１０と補機部品キャリア２０の後方にエンジンマウント４が位置する。エンジンマウント４は、サイドメンバ３の上面から上方へ突き出す。

　補機部品キャリア２０は、天板（天板部）２１と台座（台座部）２２を備える。天板２１は、平板形状であってバッテリ１０を搭載する。台座２２は、天板２１をサイドメンバ３に対して一定の高さ位置に支持する。天板２１は、車両前突時等において後方へ変位した場合にエンジンマウント４に衝突する高さに位置する。

　補機部品キャリア２０は、車両前突時等にバッテリ１０を上方へ変位させることを促進する促進構造を備える。車両前突時に衝突物（図示省略）が相対的に後方へ変位した場合、補機部品キャリア２０の全体が後方へ変位する。天板２１の後端部２１ａがエンジンマウント４に当接する。その後に天板２１は、後方への変位が規制される。

　天板２１には、上方へ凸となる向きの山形に折れ曲がるための折り曲げ部２３が設定される。折り曲げ部２３は、天板２１の前後方向ほぼ中央において幅方向に延びる。天板２１の左右両側部には、折り曲げ部２３に沿って折り曲げるための曲げ起点部２３ａが設けられる。図３に示すように曲げ起点部２３ａは、例えば上向きに凹んだ凹部である。

　図４に示すように車両前突時において天板２１の後端部２１ａがエンジンマウント４に当接すると天板２１の後退が規制される。その後さらに衝突物が後方へ相対変位して天板２１の前部が後方へ押されると、衝撃力Ｆを外力として曲げ応力が左右の曲げ起点部２３ａに集中する。これにより図６に示すように天板２１が折り曲げ部２３において上方へ凸となる向きの山形に折り曲げられる。天板２１は、前後に二つ折りされる。

　図３に示すように台座２２は、前後両壁部２２ａを有する。図５に示すように台座２２は、衝突物の変位により天板２１の前後両壁部２２ａが相互に接近するように変形する構造を備える。したがって天板２１が折り曲げ部２３に沿って山形に折り曲げられ得る。

　図５に示すように天板２１が折り曲げられると、その上面に搭載したバッテリ１０が高さ寸法Ｌだけ上方へ変位する。これによりバッテリ１０は、その後の衝突物によってさらに後方へ押された際、エンジンマウント４に干渉することなくその上方を通過する。バッテリ１０が衝突物との間に挟まれることなくエンジンマウント４の上方を通過することからバッテリ１０の損傷が大幅に低減され得る。

　図３に示すように補機部品キャリア２０の天板２１と台座２２は、天板２１を折り曲げ部２３に沿って山形に折れ曲がりやすくするための構造を有する。天板２１は、曲げ起点部２３ａを有する。台座２２は、前後左右４枚の壁部２２ａ，２２ｂを有する。前後の壁部２２ａは前後に一定の間隔をおいて相互に平行に配置される。左右の壁部２２ｂは左右に一定の間隔をおいて相互に平行に配置される。前後の壁部２２ａの左右端部と、左右の壁部２２ｂの前後端部の間には、それぞれ適度な隙間２２ｃが設けられる。

　これにより台座２２は、車両前突時の衝撃力Ｆにより前後の壁部２２ａ間の間隔を小さくする方向に変形しやすくなる。その結果、天板２１が折り曲げ部２３に沿って折れ曲がりやすく、天板２１が前後二つ折り方向の山形に折れ曲がりやすい。

　以上のように車両前突時の衝撃力Ｆにより補機部品キャリア２０がサイドメンバ３の変形により後方へ変位すると、先ず天板２１の後端部２１ａがエンジンマウント４に当接する。その後、天板２１が衝突物との間に挟まれて折り曲げ部２３に沿って上方へ凸となる向きの山形に折れ曲がる。これにより、天板２１の上面に搭載したバッテリ１０が上方へ変位する。

　バッテリ１０がエンジンマウント４よりも高い位置まで変位することにより、バッテリ１０がエンジンマウント４の上方を通過し干渉することが回避される。これによりバッテリ１０がエンジンマウント４に衝突することが回避され、バッテリ１０の損傷が回避され得る。

　本発明の形態を上記構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能であることは当業者であれば明らかである。したがって本発明の形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。例えば本発明の形態は、前記特別な構造に限定されず、下記のように変更が可能である。

　天板２１は、図６に示すように左右側部に凹形状の曲げ起点部２３ａを有していても良い。曲げ起点部２３ａに代えて若しくは追加して天板２１は、様々な形態の曲げ起点部を有していても良い。例えば天板２１は、図７に示す曲げ起点部２３ｂを有していても良い。曲げ起点部２３ｂは、左右の曲げ起点部２３ａ間等において、幅方向に長い長溝孔形状またはスリットを有し得る。曲げ起点部２３ｂによって天板２１は、折れ曲がり部２３に沿って山形に折れ曲がりやすくなる。

　天板２１は、図８に示す曲げ起点部２３ｃを有していても良い。曲げ起点部２３ｃは、折れ曲がり部２３に沿って天板２１の前後中央を幅方向に沿って延びる。曲げ起点部２３ｃは、断面半円形の突条に形成され、上側に凸となる向きを有し得る。曲げ起点部２３ｃは、天板２１の左右幅方向全域にわたって形成され得る。曲げ起点部２３ｃによって天板２１は、折れ曲がりやすく、バッテリ１０を確実に上方へ変位させ得る。

　エンジン周辺の補機部品は、上記するエンジン起動用のバッテリ１０でも良いし、その他各種の補機部品でも良い。例えば補機部品は、ハイブリッド車におけるパワーコントロールユニット（ＰＣＵ）のインバータ等でも良い。補機部品は、補機部品キャリアに搭載され、車両前突時に山形に折り曲がる天板２１によって上方へ変位し得る。これにより補機部品は、エンジンマウントとの衝突を回避され、補機部品が保護され得る。

Claims (4)

1. 　エンジンルーム内にて補機部品を支持する補機部品キャリアであって、
   　前記補機部品を搭載する平板形状の天板と、前記天板をサイドメンバの上方かつエンジンマウントの前方に支持する台座と、車両前突時の外力により前記天板が上方へ凸となる向きの山形に折れ曲がることを促進して前記補機部品を上方へ変位させるように構成された促進構造を有する補機部品キャリア。
2. 　請求項１に記載の補機部品キャリアであって、
   　前記促進構造は、前記天板が車両前突時に衝突物と前記エンジンマウントとの間に挟まれて山形に折れ曲がる構成を有する補機部品キャリア。
3. 　請求項１又は２記載の補機部品キャリアであって、
   　前記促進構造は、前記天板に形成されて前記天板が山形に折れ曲がるように促進する曲げ起点部を有する補機部品キャリア。
4. 　請求項１～３の何れか１つに記載の補機部品キャリアであって、
   　前記台座は、相互に対向する前壁部と後壁部を有し、
   　前記促進構造は、前記車両前突時の外力により前記前壁部と前記後壁部が相互に接近する方向に前記台座を変形させて前記天板を山形に折り曲げる構成を有する補機部品キャリア。

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