WO2013115237A1 - 低摩擦基材の製造方法 - Google Patents

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潤一 藤澤
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Abstract

 少なくとも表面に樹脂層を有する基材の該樹脂層に電子線を照射する工程と、該樹脂層に電子線を照射した後、該樹脂層表面にシリコーン成分を付着させる工程とを含む低摩擦基材の製造方法が、提供される。

Description

低摩擦基材の製造方法
 本発明は、表面の摩擦係数が低く、スリップ性(滑り性)に優れた低摩擦基材の製造方法に関する。より詳しくは、表面が低摩擦処理された基材の製造方法に関する。そのような低摩擦基材は、例えば、可視光領域において高い透過性を有し且つ赤外光領域において高い反射性を有する赤外線反射フィルムに適用される。
 赤外線反射フィルムは、主に、放射される太陽光の熱影響を抑制するために用いられる。例えば、建物や自動車等の窓ガラスに赤外線反射フィルムを貼ることで、窓ガラスを通って室内に入射される赤外線(特に近赤外線)を遮蔽し、室内の温度上昇を抑制し、これにより、冷房の消費電力を抑制して省エネルギー化を図ることができる。
 赤外線の反射には、金属や金属酸化物の積層構造による赤外線反射層が用いられる。しかしながら、金属や金属酸化物は耐擦傷性が低い。そのため、赤外線反射フィルムでは、赤外線反射層の上に保護層を設けるのが一般的である。例えば、特許文献1には、ポリアクリロニトリル(PAN)を保護層の材料として用いることが開示されている。ポリアクリロニトリルのような高分子は、赤外線の吸収率が低く、室内から透光性部材を通って外に出射される遠赤外線を遮蔽できることから、冬期や室外の温度が低下する様な夜間での断熱効果による省エネルギー化も図ることができる。
 ポリアクリロニトリルのような高分子を保護層の材料として用いる場合、保護層は、まず、高分子を溶剤に溶解させて溶液を調製し、この溶液を赤外線反射層の上に塗布し、次いで、溶液を乾燥させる(溶剤を揮発させる)、という手順で形成される。
日本国特公昭61-51762号公報
 ところで、ポリアクリロニトリルが可溶な溶剤はジメチルホルムアミド(DMF)(沸点:153℃)の様な高い沸点溶剤のみであることが知られている。溶剤の沸点が高い場合は、乾燥工程の温度を高くすることで乾燥工程の時間を低減することが可能であるが、基材が高分子材料である場合は高温によって基材がダメージを受ける可能性がある。そのために、基材がダメージを受けない程度の温度で乾燥工程を行う必要が生じ、保護層の材料にポリアクリロニトリルを用いる場合は乾燥工程が長時間に及ぶという課題があった。この課題を解決するために、メチルエチルケトン(MEK)(沸点:80℃)などの沸点が低い溶剤に可溶なアクリロニトリルと他のモノマー成分の共重合体を保護層に用いることを発明者らが見出した。
 しかしながら、アクリロニトリルと他のモノマー成分の共重合体は保護層の表面が十分なスリップ性(滑り性)を有さないという問題に発明者らは直面した。ポリアクリロニトリルを保護層に用いた赤外線反射フィルムではスリップ性は十分であるので、スリップ性の課題は他のモノマー成分に起因すると推測される。保護層表面のスリップ性が悪いと、例えば赤外線反射フィルムが貼着された建築物や自動車の窓を清掃する際に、該保護層表面に無理な力(ストレス)が作用し、保護層が部分的に又は全体的に破壊されてしまい、耐擦傷性の低い赤外線反射層が露出してしまう、という問題が生じる。
 そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、表面の摩擦係数が低く、スリップ性(滑り性)に優れた低摩擦基材の製造方法を提供することを課題とする。
 本発明に係る低摩擦基材の製造方法は、
 少なくとも表面に樹脂層を有する基材の該樹脂層に電子線を照射する工程と、
 該樹脂層に電子線を照射した後、該樹脂層表面にシリコーン成分を付着させる工程とを含む。
 かかる方法によれば、樹脂層に電子線が照射されることで、樹脂層表面にラジカルが発生する。この状態で樹脂層表面にシリコーン成分を付着させると、シリコーン成分が樹脂層表面に転写されやすくなる。そのため、樹脂層表面の摩擦係数が低くなり、スリップ性(滑り性)が付与されることとなる。これにより、基材は低摩擦基材へと変化する。
 ここで、本発明に係る低摩擦基材の製造方法の一態様として、
 シリコーン成分を付着させる工程は、表面にシリコーン成分が形成されたポリマーフィルムの該表面側を樹脂層上に被覆する工程である、ようにすることができる。
 かかる方法によれば、ポリマーフィルムを樹脂層上に被覆することで、ポリマーフィルム上のシリコーン成分が樹脂層表面に付着する。
 また、本発明に係る低摩擦基材の製造方法の他態様として、
 電子線を照射する工程の前に、樹脂層に電子線を照射した際にラジカルを発生する化合物を含む層を樹脂層上に形成する工程をさらに含む、ようにすることができる。
 かかる方法によれば、ラジカル発生度合いが十分に高くはない樹脂層であっても、樹脂層に電子線を照射した際にラジカルを発生する化合物を含む層を樹脂層上に形成することで、ラジカル発生度合いを高めることができ、これにより、シリコーン成分の樹脂層表面への転写量を増やすことができる。
 また、本発明に係る低摩擦基材の製造方法の別の態様として、
 シリコーン成分を付着させる工程の後の樹脂層表面の動摩擦係数が0.001~0.45である、ようにするのが好ましい。
 また、本発明に係る低摩擦基材の製造方法のさらに別の態様として、
 樹脂層は、下記化学式Iの繰り返し単位A、B及びCのうち、少なくともいずれか二つ以上の繰り返し単位を含む高分子を含む層である、ようにすることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
 また、本発明に係る低摩擦基材の製造方法の別の態様として、
 樹脂層は、基材の一方の面に反射層及び保護層を順に積層した赤外線反射フィルムの保護層である、ようにすることができる。
 かかる方法によれば、表面の摩擦係数が低く、スリップ性(滑り性)に優れた赤外線反射フィルムを得ることができる。
 この場合、
 保護層側表面の垂直放射率が0.20以下である、ようにするのが好ましい。
 かかる方法によれば、遠赤外線は、保護層に入射されても保護層に吸収されにくく、反射層に到達し、その結果、反射層で反射されやすくなる。従って、赤外線反射フィルムを窓ガラス等の透光性部材に室内側から貼っておくことで、室内から透光性部材を通って外に出射される遠赤外線を遮蔽することができる。
 また、前記保護層は、前記保護層表面を構成するシリコーン成分をさらに含んでおり、
 該シリコーン成分の量が0.0001~1.0000g/mである、ようにするのも好ましい。
 本発明によれば、表面の摩擦係数が低く、スリップ性(滑り性)に優れた低摩擦基材を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る赤外線反射フィルムの積層構造を説明するための概要図を示す。 本発明の一実施形態に係る赤外線反射フィルムの動摩擦係数を測定するためのボールオンディスク型摩擦摩耗試験機の試験部の基本構成の図を示す。
 以下、本発明に係る低摩擦基材の一実施形態として、表面の摩擦係数が低く、スリップ性(滑り性)に優れた赤外線反射フィルムについて説明する。なお、本実施形態に係る赤外線反射フィルムは、従来の赤外線反射フィルムが持つ遮熱特性(近赤外線の反射特性)に加え、断熱特性(遠赤外線の反射特性)を併せ持つ赤外線反射フィルムである。
 本実施形態に係る赤外線反射フィルムは、図1に示す如く、基材1の一方の面1aに、反射層2及び保護層3をその順に積層し、他方の面1bに粘着層4を設けた層構造となっている。なお、保護層3は、本発明に係る樹脂層の一形態である。
 基材1は、ポリエステル系フィルムが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンメチレンテレフタレート、あるいはこれらを2種以上組み合わせた混合樹脂からなるフィルムが用いられる。尚、これらの中で、性能面から、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく、特に2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適である。
 反射層2は、基材1の表面(一方の面)1aに蒸着により形成される蒸着層である。該蒸着層の形成方法としては、例えば、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等の物理蒸着(PVD)がある。ここで、真空蒸着においては、真空中で抵抗加熱、電子ビーム加熱、レーザ光加熱、アーク放電等の方法で蒸着物質を加熱蒸発させることで、基材1上に反射層2が形成される。また、スパッタリングにおいては、アルゴン等の不活性ガスが存在する真空中で、グロー放電等により加速されたAr+等の陽イオンをターゲット(蒸着物質)に撃突させて蒸着物質をスパッタ蒸発させることで、基材1上に反射層2が形成される。イオンプレーティングは、真空蒸着とスパッタリングとを組み合わせた形態の蒸着法である。この方法では、真空中において、加熱により放出された蒸発原子を、電界中でイオン化と加速を行い、高エネルギー状態で基材1上に付着させることで、反射層2が形成される。
 反射層2は、半透明金属層2aを一対の金属酸化物層2b,2cで挟み込んだ複層構造となっており、上記蒸着層の形成方法を用い、まず、基材1の表面(一方の面)1aに金属酸化物層2bを蒸着し、次に、金属酸化物層2b上に半透明金属層2aを蒸着し、最後に、半透明金属層2a上に金属酸化物層2cを蒸着して形成される。半透明金属層2aは、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銀合金(MgAg、Ag-Pd-Cu合金(APC)、AgCu、AgAuCu、AgPd、AgAu等)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、あるいはこれらを2種又は2層以上組み合わせた金属材料が用いられる。金属酸化物層2b,2cは、反射層2に透明性を付与し、半透明金属層2aの劣化を防止するためのものであり、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウムチタン(IT)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化ガリウム亜鉛(GZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、酸化ガリウムインジウム(IGO)等の酸化物が用いられる。
 保護層3は、下記化学式Iの繰り返し単位A、B及びCのうち、少なくともいずれか二つ以上の繰り返し単位を含む高分子を含む層である。化学式I中のR1として、Hやメチル基を用いることができる。また、化学式I中のR2~R5として、H、炭素数が1~4のアルキル基又はアルケニル基を用いることができる。ちなみに、繰り返し単位A、B及びCで構成され、R1~R5としてHを用いたものは、水素化ニトリルゴム(HNBR)である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
 これらの高分子を得るためのモノマー成分としては、例えば、化学式IIで示すようなアクリロニトリル(繰り返し単位D)及びその誘導体、炭素数が4のアルキル(繰り返し単位E)及びその誘導体、並びに、ブタジエン(繰り返し単位F1又はF2)及びそれらの誘導体の共重合体等が挙げられる。ここで、R6は、H又はメチル基、R7~R18は、H又は炭素数が1~4のアルキル基を示す。なお、F1,F2のそれぞれは、ブタジエンが重合する繰り返し単位を示しており、F1がメインの繰り返し単位となっている。また、これらの高分子は、化学式IIのアクリロニトリル(繰り返し単位D)及びその誘導体、1,3-ブタジエン(繰り返し単位F1)及びその誘導体の共重合体であるニトリルゴムや、ニトリルゴム中に含まれる二重結合の一部又は全部が水素化された水素化ニトリルゴムであってもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
 上記共重合体を部分的に切り出した化学式IIIを用いて、アクリロニトリル、ブタジエン及びアルキルが重合された共重合体と、それぞれの繰り返し単位A、B及びCとの関係を説明する。化学式IIIは、保護層3に用いられる高分子鎖の一部を切り出しており、1,3-ブタジエン(繰り返し単位F1)、アクリロニトリル(繰り返し単位D)、及び1,3-ブタジエン(繰り返し単位F1)が順に結合されている。なお、化学式IIIはR7,R11~R14がHの結合例を示している。化学式IIIは、左側のブタジエンにはアクリロニトリルのシアノ基(-CN)が結合された側が結合しており、アクリロニトリルのシアノ基(-CN)が結合していない側に右側のブタジエンが形成されている。この様な結合例においては、1個の繰り返し単位A、1個の繰り返し単位B、及び2個の繰り返し単位Cが含まれている。この中で、繰り返し単位Aは左側のブタジエンの右側の炭素原子とアクリロニトリルのシアノ基(-CN)とが結合した炭素原子を含んでおり、繰り返し単位Bはアクリロニトリルのシアノ基(-CN)が結合していない炭素原子と右側のブタジエンの左側の炭素原子とを含んだ組合せである。そして、左側のブタジエンの一番左側の炭素原子と、右側のブタジエンの一番右側の炭素原子は、結合する分子の種類により繰り返し単位Aまたは繰り返し単位Bの一部の炭素原子となる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 かかる保護層3は、上述した高分子を(必要に応じて架橋剤とともに)溶剤に溶解させて溶液を調製し、この溶液を反射層2の上に塗布し、次いで、溶液を乾燥させる(溶剤を揮発させる)、という手順で形成される。溶剤は、上述した高分子を可溶な溶剤であり、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、塩化メチレン(ジクロロメタン)等の溶剤が用いられる。尚、メチルエチルケトンや塩化メチレンは、低沸点の溶剤(メチルエチルケトンは79.5℃、塩化メチレンは40℃)である。従って、これらの溶剤を用いると、低い乾燥温度で溶剤を揮発させることができるため、基材1(や反射層2)が熱ダメージを受けることはない。
 保護層3の厚さは、下限値としては、1μm以上である。好ましくは、3μm以上である。また、上限値としては、20μm以下である。好ましくは、15μm以下である。より好ましくは、10μm以下である。保護層3の厚さが小さいと、赤外線の反射特性は高くなるものの、耐擦傷性が損なわれ、保護層3としての機能を十分に発揮することができない。保護層3の厚さが大きいと、赤外線反射フィルムの断熱特性が悪くなる。保護層3の厚さが上記範囲内であれば、赤外線の吸収が小さく且つ反射層2を適切に保護することができる保護層3が得られる。
 尚、垂直放射率とは、JIS R3106で規定される通り、垂直放射率(εn)=1-分光反射率(ρn)で表わされる。分光反射率ρnは、常温の熱放射の波長域5~50μmで測定される。5~50μmの波長域は遠赤外線領域であり、遠赤外線の波長域の反射率が高くなるほど、垂直放射率は小さくなる。
 また、化学式I中のkとlとmの比率は、k:l:m=5~50重量%:25~85重量%:0~60重量%(但し、kとlとmの合計は100重量%)となるのが好ましい。より好ましくは、k:l:m=15~40重量%:55~85重量%:0~20重量%(但し、kとlとmの合計は100重量%)である。さらに好ましくは、k:l:m=25~40重量%:55~75重量%:0~10重量%(但し、kとlとmの合計は100重量%)である。
 ところで、保護層3に良好な耐溶剤性を付与する観点から、保護層3は、高分子同士の架橋構造を有することが好ましい。高分子同士を架橋させることにより、保護層3の耐溶剤性が向上するため、高分子を可溶な溶剤が保護層3に接触した場合であっても、保護層3が溶出するのを防止することができる。
 高分子同士に架橋構造を付与する手段としては、溶液を乾燥させた後に、電子線を照射することが挙げられる。電子線の積算照射線量は、下限値としては、50kGy以上である。好ましくは、100kGy以上である。より好ましくは、200kGy以上である。また、上限値としては、1000kGy以下である。好ましくは、600kGy以下である。より好ましくは、400kGy以下である。なお、積算照射線量とは、電子線を1回照射する場合であれば、その照射線量をいい、電子線を複数回照射する場合であれば、その照射線量の合計をいう。電子線の1回の照射線量は、300kGy以下であるのが好ましい。電子線の積算照射線量が上記範囲内であれば、高分子同士の十分な架橋を得ることができる。また、電子線の積算照射線量が上記範囲内であれば、電子線の照射によって発生する高分子や基材1の黄変を最小限に抑えることができ、着色の少ない赤外線反射フィルムを得ることができる。なお、これら電子線の照射条件は、加速電圧が150kVでの照射条件である。
 また、高分子を溶剤に溶解させる際に、あるいは、高分子を溶剤に溶解させた後に、ラジカル重合型モノマー等の多官能モノマーといった架橋剤を添加することが好ましい。特に、(メタ)アクリレート系モノマーのラジカル重合型モノマーが好ましい。多官能モノマーを添加すると、多官能モノマーに含まれる官能基がそれぞれの高分子鎖と反応(結合)することにより、高分子同士が(多官能モノマーを介して)架橋されやすくなる。従って、電子線の積算照射線量を(50kGy程度に)引き下げても高分子同士の十分な架橋を得ることができる。そのため、電子線の積算照射線量を低照射線量で済ませることができる。また、電子線の積算照射線量が低下することで、高分子や基材1の黄変をさらに抑制することができ、しかも、生産性を向上させることができる。
 しかしながら、添加剤の添加量が多くなれば、赤外線反射フィルムの(反射層2を基準とした)保護層3側表面の垂直放射率が悪化する。垂直放射率が悪化すると、赤外線反射フィルムにおける赤外線の反射特性が低下し、赤外線反射フィルムの断熱特性が悪くなる。そのため、添加剤の添加量は、高分子に対して1~35重量%であるのが好ましい。より好ましくは、高分子に対して2~25重量%である。
 保護層3表面の動摩擦係数は、0.001~0.45である。動摩擦係数は、例えば、ボールオンディスク型摩擦摩耗試験機5で測定することが可能である。より具体的には、図2に示すように、ボールオンディスク型摩擦摩耗試験機5は、試料ディスク6上に固定ボール7が配置され、固定ボール7の上方から錘8による荷重が負荷されるように構成されている。この状態で、試料ディスク6が回転することにより発生する摩擦力をセンサー9で計測し、計測された摩擦力を、固定ボール7の上方から負荷された荷重で除して摩擦係数を算出する。保護層3表面の動摩擦係数を上記範囲とすることによって、保護層3表面に良好なスリップ性(滑り性)を付与することができる。
 保護層3表面の動摩擦係数を上記範囲に調製する方法として、電子線が照射された保護層(上述した高分子によって形成された層)上にシリコーン成分が形成された基材(剥離ライナー)を貼り合わせ、シリコーン成分を保護層3表面に転写させる方法が挙げられる。
 本発明におけるシリコーン成分は、分子中にケイ素原子と酸素原子が交互に結合したシロキサン骨格(ケイ素原子と酸素原子の繰り返し単位の数は通常10~8000程度)の該ケイ素原子にメチル基やメトキシ基が結合した高分子である。上記メチル基はフェニル基やビニル基、アミノ基などの有機官能基に一部が置換された化合物であってもよい。該高分子の末端や側鎖にはシラノール基(-Si-OH)やアルケニル基やエポキシ基、(メタ)アクリロイル基などの重合性官能基を有していてもよく、上記高分子中に含まれる該重合性官能基の数は特に限定されず、両方の末端に重合性官能基を有してもよいし、分枝高分子である場合は両末端および側鎖の全てに重合性官能基を有していてもよい。また、保護層の摩擦係数が十分に低減されていればよく、ケイ素原子と酸素原子の繰り返しの数は上記値に限定されるものではない。
 その他の転写の方法としては、粘着剤層を有する樹脂製の基材(剥離ライナー)の該粘着剤層と反対側の表面にシリコーン成分が形成された基材の該粘着剤層側をシリコーン成分が形成された樹脂製の基材(剥離ライナー)の該保護層3上に被覆する(貼り合わせる)ことによって、シリコーン成分を保護層3表面に転写する方法や、一方の表面にシリコーン成分が形成された樹脂製の基材(剥離ライナー)の該一方の表面側を保護層3上に被覆する(貼り合わせる)ことによって、シリコーン成分を保護層3表面に転写する方法がある。
 これらのシリコーン成分が形成された基材(剥離ライナー)としては、加熱硬化型または活性エネルギー線硬化型に分類される。熱硬化型はさらに縮合反応型と付加反応型とに分類される。活性エネルギー線硬化型はさらに紫外線硬化型(ラジカル重合型、カチオン重合型)と電子線硬化型とに分類される。
 縮合反応型では、例えば、シロキサン分子の両末端にシラノール基(-Si-OH)を有するベースポリマーと、水素原子を有するポリメチルヒドロシロキサンやポリメチルヒドロシロキサンのメチル基の一部がメトキシ基に変性された架橋剤を、有機錫触媒下で脱水素反応または脱アルコール反応により得られた架橋物がシリコーン処理に使用される。上記架橋物には基材からの剥離力を調整する目的で、ベースポリマーよりも低分子量のシリコーンポリマーを別途添加しても良い。この中で、上記反応の未反応成分である該ベースポリマー、該架橋剤の成分及び該低分子量シリコーンポリマーが動摩擦係数の低減に寄与するものと推測される。
 付加反応型では、例えば、シロキサン分子の両末端あるいは両末端及び側鎖にビニル基などのアルケニル基を有するベースポリマーと、水素原子を有するポリメチルヒドロシロキサンを白金触媒下でヒドロシリル化(付加反応)により得られた架橋物が使用される。上記架橋物には剥離ライナーからの剥離力を調整する目的で、ベースポリマーよりも低分子量のシリコーンポリマーを別途添加しても良い。この中で、上記反応の未反応成分である該ベースポリマー、該架橋剤の成分及び該低分子量シリコーンポリマーが動摩擦係数の低減に寄与するものと推測される。
 また、活性エネルギー線硬化型においても上記と同様で、それぞれの材料の未反応成分が保護層3表面の動摩擦係数低減に寄与しているものと推測される。
 他の反応型に比べて動摩擦係数の低減に寄与する未反応成分が多い傾向にあるので、樹脂基材としては、縮合反応型であることが好ましい。
 剥離力を調整する目的で添加する低分子量シリコーンポリマーは、動摩擦係数の低減に寄与するため、剥離ライナーとしては、シリコーン成分層に低分子量シリコーンポリマーが含まれたものが望ましい。
 基材に用いられる材料としては特に限定されないが、代表的にはポリエチレンテレフタレートである。表面にシリコーン成分が形成された基材(剥離ライナー)としては、三菱樹脂株式会社製 商品名「ダイアホイル」の「MRE」シリーズ、「MRN」シリーズなどの市販のシリコーン処理がされた剥離ポリエステルフィルムを用いることができる。なお、実施例では、基材(剥離ライナー)として、加熱硬化型の縮合反応型シリコーン成分及び加熱硬化型の付加型シリコーン成分が採用されているが、基材は、これに限定されるものでない。
 ところで、基材(剥離ライナー)を保護層3上に貼り合わせるのに先立ち、電子線を照射する理由は、上述の如く、保護層3における高分子同士に架橋構造を付与するためだけではない。電子線を照射することで、保護層3表面にラジカルが発生するため、基材を保護層3上に貼り合わせた後のシリコーン成分の保護層3表面への転写が促進されるからである。即ち、電子線の照射は、保護層3における高分子同士に架橋構造を付与することと、シリコーン成分の保護層3表面への転写を促進させることとを目的としている。
 そこで、電子線を複数回照射する場合は、電子線を照射した後、基材を保護層3上に貼り合わせ、しばらくしたら(シリコーン成分が転写されるに足りる時間を経過したら)、基材を剥離し、再び電子線を照射した後、新たに基材を保護層3上に貼り合わせる、といった手順を繰り返すのが好ましい。これにより、シリコーン成分の転写量を増やすことができて、スリップ性(滑り性)をさらに高めることができるようになる。
 基材の保護層3上への貼り合わせは、電子線を照射した後、15分以内に行うのが好ましい。より好ましくは、1分以内である。さらに好ましくは、15秒以内である。電子線を照射した後、上記時間内に基材を保護層3上に貼り合わせることにより、良好に動摩擦係数を低減することが可能になる。
 また、基材を保護層3上に貼り合わせた後、貼り合わせた状態(被覆状態)を2日以上維持しておくのが好ましい。より好ましくは、6日以上である。ただし、電子線を照射した後、15分を超えてから基材を保護層3上に貼り合わせた場合においては、貼り合わせた状態を7日以上維持しておくことにより、動摩擦係数の低減が可能になる。
 十分な量のシリコーンが転写されるに足りる時間は、加熱により短縮することができる。たとえば、基材を保護層3上に貼り合せた後、50℃で加温した場合、貼り合せた状態(被覆状態)を12時間維持しておくのが望ましい。より好ましくは、1日以上である。被覆状態を上記の範囲に設定することにより、より良好に動摩擦係数を低減することが可能になる。
  転写後、保護層3の表面を構成するシリコーン成分の量(シリコーン転写量)の範囲は0.0001g/m~1.0000g/mである。好ましくは0.0002g/m~0.5000g/m、より好ましくは0.0004g/m~0.3000g/m、さらに好ましくは0.0005g/m~0.1000g/mである。シリコーン転写量が0.0001g/m以下では保護層3に良好なスリップ性が付与されず、1.0000g/mを超えると表面の白化が起きるおそれが生じる。
 一方、シリコーン転写量を上記範囲とすることで、赤外線反射フィルムに良好なスリップ性(滑り性)を付与することができる。なお、かかるシリコーン転写量は、転写に用いた基材を剥離してシリコーン成分を露出させた後、保護層3の表面に存在するシリコーン成分の量である。
  シリコーン転写量は、例えば、蛍光X線回折装置を用いて測定することができる。より具体的には、後述する実施例で示すように蛍光X線回折(XRF)を用い、保護層3表面のシリコーン成分層を対象として測定を行い、Si-Ka曲線を得る。得られたSi-Ka曲線からSi元素の強度を求め、この強度をSi元素の量に換算し、さらに、このSi元素量を、シリコーン転写量(化合物量)に換算することで、シリコーン転写量を測定することができる。
 なお、基材を保護層3上に貼り合わせた状態で電子線を照射すると、電子線により活性化された保護層3に含まれる高分子と基材に含まれる成分とが結合することにより、基材の剥離が困難となるので、好ましくない。
 以上の構成からなる本実施形態に係る赤外線反射フィルムによれば、反射層2上の層構造の厚み、即ち、保護層3の厚みを少なくすることで、(反射層2を基準とした)保護層3側表面の垂直放射率が小さくなっている。また、特に、遠赤外線を吸収しにくく、透過しやすいニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、完全水素化ニトリルゴムなどを保護層3に用いれば、それによっても垂直放射率は小さくなる。これにより、遠赤外線は、保護層3に入射されても保護層3に吸収されにくく、反射層2に到達し、その結果、反射層2で反射されやすくなる。従って、本実施形態に係る赤外線反射フィルムを窓ガラス等の透光性部材に室内側から貼っておくことで、室内から透光性部材を通って外に出射される遠赤外線を遮蔽することができ、これにより、冬季や室内の温度が低下する夜間での断熱効果が期待できる。本実施形態に係る赤外線反射フィルムでは、その目的のために、保護層3側表面の垂直放射率が0.20以下に設定される。より好ましくは、垂直放射率が0.15以下である。
 また、本実施形態に係る赤外線反射フィルムによれば、可視光線透過率(JIS A5759参照)を高くすることで、透光性部材の透光性が阻害されることはない。本実施形態に係る赤外線反射フィルムでは、その目的のために、可視光線透過率が50%以上に設定される。
 また、近赤外線は、(粘着層4及び)基材1に入射されても(粘着層4及び)基材1に吸収されにくく、反射層2に到達し、その結果、反射層2で反射されやすくなる。従って、本実施形態に係る赤外線反射フィルムを窓ガラス等の透光性部材に室内側から貼っておくことで、窓ガラス等の透光性部材を通って室内に入射される近赤外線を遮蔽することができ、これにより、従来の赤外線反射フィルムと同様、夏季での遮熱効果が期待できる。本実施形態に係る赤外線反射フィルムでは、その目的のために、(反射層2を基準とした)基材1側表面から光を入射させたときの日射透過率(JIS A5759参照)が60%以下に設定される。
 そして、本実施形態に係る赤外線反射フィルムによれば、上述の如く、保護層3に良好な耐溶剤性が付与されている。即ち、保護層3における高分子同士を架橋することで、保護層3の耐溶剤性が向上している。これにより、高分子を可溶な溶剤が保護層3に接触した場合であっても、保護層3が溶出するのを防止することができ、そのため、赤外線反射層が露出することによって耐擦傷性が低下するのを防止することができる。
 そして、以上の構成の本実施形態に係る赤外線反射フィルムによれば、上述の如く、保護層3表面の動摩擦係数が0.001~0.45であるため、保護層3表面のスリップ性(滑り性)が良好となり、保護層3表面に無理な力(ストレス)が作用せず、保護層3が部分的に又は全体的に破壊されにくくなる。従って、保護層3の破壊により耐擦傷性の低い反射層2が露出し、反射層2がダメージを受ける、といった事態が生じるのを防止することができる。また、これにより、赤外線の反射特性が損なわれ、赤外線反射フィルムが十分に機能しなくなる、といった事態に発展するのを防止することができる。
 ここで、本発明者らは、本実施形態に係る赤外線反射フィルムを作製し(実施例)、併せて、比較用の赤外線反射フィルムを作製した(比較例)。
 実施例、比較例ともに作製方法は次のとおりである。厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製 商品名「ダイアホイル T602E50」)を基材1として用いた。この基材1の一方の面1aにDCマグネトロンスパッタ法により反射層2を形成した。詳しくは、DCマグネトロンスパッタ法を用い、基材1の一方の面1aに酸化インジウム錫からなる金属酸化物層2bを35nmの厚みで形成し、その上にAg-Pd-Cu合金からなる半透明金属層2aを18nmの厚みで形成し、その上に酸化インジウム錫からなる金属酸化物層2cを35nmの厚みで形成し、これを反射層2とした。そして、この反射層2の上に塗工法により保護層3を形成した。尚、保護層3の詳細な形成条件は、それぞれ実施例、比較例の説明において詳述する。
 <実施例1>
 水素化ニトリルゴム(ランクセス社製 商品名「テルバン5065」〔k:33.3、l:63、m:3.7、R1~R3:H〕)10重量%とメチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製)90重量%を混合し、撹拌溶解を80℃の温度で5時間行い、水素化ニトリルゴムをメチルエチルケトンの溶剤に溶解させ、溶液を調製した。そして、反射層2の上に溶液をアプリケーターを用いて塗布し、空気循環式の乾燥オーブンに入れ、80℃で10分間乾燥を行った。これにより、厚さが5μmの保護層3を形成した。その後、電子線照射装置(岩崎電気株式会社製 製品名「EC250/30/20mA」)を用いて保護層3の表面側から電子線を照射した。電子線の照射条件は、ライン速度を3m/min、加速電圧を150kV、積算照射線量を600kGyとした。本実施例においては、1回の照射線量が200kGyの電子線を3回照射した。より具体的には、まず、上述のように保護層3の表面側から照射線量が200kGyの電子線を照射し(1回目)、その後、保護層3の表面に剥離ライナーとしてポリエステル系剥離ライナー(三菱樹脂株式会社製 商品名「ダイアホイル MRN38」)を貼り合わせた。そして、1分後にそのポリエステル系剥離ライナーを剥離した。次に、保護層3の表面側から照射線量が200kGyの電子線を照射し(2回目)、その後、保護層3の表面に新しいポリエステル系剥離ライナーを貼り合わせた。そして、1分後にそのポリエステル系剥離ライナーを剥離した。同様に、保護層3の表面側から照射線量が200kGyの電子線を照射し(3回目)、その後、保護層3の表面にさらに新しいポリエステル系剥離ライナーを貼り合わせた。そして、1分後にそのポリエステル系剥離ライナーを剥離した。このようにすることで、実施例1に係る赤外線反射フィルムを得た。なお、3回目の電子線を照射した後は、10秒以内にポリエステル系剥離ライナーを保護層3の表面に貼り合わせた。
 <実施例2>
 保護層に用いる材料として、水素化ニトリルゴム(HNBR:ランクセス社製 商品名「テルバン5005」〔k:33.3、l:66.7、m:0、R1~R3:H〕)を用いた点以外は、実施例1と同じである。
 <実施例3>
 保護層に用いる材料として、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR:JSR株式会社製 商品名「JSR N222L」〔k:27.4、l:36.3、m:36.3、R1、R4,R5:H〕)を用いた点以外は、実施例1と同じである。
 <実施例4>
 溶液を調製する際に、レベリング剤として、DIC社製 商品名「GRANDIC PC4100」を水素化ニトリルゴムの固形分に対して0.5%添加したこと、電子線の照射を1回としたこと、照射線量を100kGyとしたこと、剥離フィルムがポリエステル系剥離ライナー(三菱樹脂株式会社製 商品名「ダイアホイル MRE38」)であること以外は、実施例2と同様の方法で赤外線反射フィルムを得た。なお、電子線を照射した後は、10秒以内にポリエステル系剥離ライナーを保護層3の表面に貼り合わせた。
 <実施例5>
 ポリエステル系剥離ライナーの保護層3の表面への貼り合わせを、電子線を照射した後、約10分後に行うこと以外は、実施例4と同様の方法で赤外線反射フィルムを得た。
 <実施例6>
 電子線を照射する際に、照射線量が80kGyであること以外は、実施例5と同様の方法で、赤外線反射フィルムを得た。
 <比較例1>
 各回の電子線照射後にポリエステル系剥離ライナーを積層しない以外は実施例1と同様の方法で、赤外線反射フィルムを得た。
 <比較例2>
 ポリエステル系剥離ライナーとして、三菱樹脂株式会社製 商品名「ダイアホイル MRN38」の代わりに、三菱樹脂株式会社製 商品名「ダイアホイル MRF38」を用いたこと、保護層3の表面側から電子線を照射した後、ポリエステル系剥離ライナーを保護層3の表面に貼り合わせるのではなく、ポリエステル系剥離ライナーを保護層3の表面に貼り合わせた状態で電子線を照射するようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で赤外線反射フィルムを得た。
 <評価>
 そして、実施例1~6、比較例1~2のそれぞれについて、赤外線反射フィルムの保護層3表面の動摩擦係数、赤外線反射フィルムの垂直放射率及びシリコーン転写量を以下の方法によって測定した。これらの結果を表1に示す。なお、動摩擦係数、垂直放射率の測定及びシリコーン転写量は、最後の電子線照射後(電子線を1回だけ照射する場合は当該照射後)に貼り合わせたポリエステル系剥離ライナーを1週間後に剥離してから行った。
 実施例1~6、比較例1~2のそれぞれにおける保護層3の表面の動摩擦係数の測定には、摩擦摩耗試験機(FPR-2100 株式会社レスカ製)を用いた。そして、実施例1~6、比較例1~2における動摩擦係数の測定条件は、負荷荷重を50g、回転速度を5rpm、回転半径を5mm、測定時間を60s、サンプリング時間を500msとした。実施例1~6、比較例1~2で用いるサンプルを、粘着剤を介してガラス(5cm×4.5cm×1.2mm厚)に貼り付けて作製した。動摩擦係数は、サンプリングデータの平均値から算出した。なお、保護層3の表面の動摩擦係数が0.001~0.45である場合にスリップ性(滑り性)が良好であるとした。
 垂直放射率の測定方法は、次のとおりである。角度可変反射アクセサリを装着したフーリエ変換型赤外分光(FT-IR)装置(Varian社製)を用いて、波長5ミクロン~25ミクロンの赤外光の正反射率を測定し、JIS R 3106-2008(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)に準じて求めた。
  シリコーン転写量の測定は、蛍光X線回折(XRF)装置(ZSX100e 株式会社Rigaku製)を用いて行った。XRFの測定条件は、X線源:縦型Rh管、分析面積:30mmφ、分析元素:Si、分光結晶:RX4、出力:50kV,70mAとした。上記測定からSi-Ka曲線を得、得られたSi-Ka曲線からSi元素の強度を求め、求めた強度からSi元素量を得た。そして、得られたSi元素量をジメチルシロキサンの質量に換算し、シリコーン成分の転写量を求めた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 表1に示すように、実施例1の結果において、赤外線反射フィルムにおける保護層3表面の動摩擦係数が0.015(0.001~0.45の範囲内)であるとともに、垂直放射率が0.11(0.20以下)であり、動摩擦係数及び垂直放射率が共に良好な値を示した。また、シリコーン転写量は0.0040g/mであった。
  また、実施例2の結果において、保護層3に用いる材料として、水素化ニトリルゴム(HNBR:ランクセス社製 商品名「テルバン5005」〔k:33.3、l:66.7、m:0、R1~R3:H〕)を用いた場合でも、赤外線反射フィルムにおける保護層3表面の動摩擦係数が0.026(0.001~0.45の範囲内)であるとともに、垂直放射率が0.10(0.20以下)であり、動摩擦係数及び垂直放射率が共に良好な値を示した。また、シリコーン転写量は0.0026g/mであった。
 そして、実施例3の結果において、保護層3に用いる材料として、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR:JSR株式会社製 商品名「JSR N222L」〔k:27.4、l:36.3、m:36.3、R1、R4,R5:H〕)を用いた場合でも、赤外線反射フィルムにおける保護層3表面の動摩擦係数が0.030(0.001~0.45の範囲内)であるとともに、垂直放射率が0.14(0.20以下)であり、動摩擦係数及び垂直放射率が共に良好な値を示した。また、シリコーン転写量は0.0021g/mであった。
 また、実施例4の結果において、レベリング剤として、DIC社製 商品名「GRANDIC PC4100」を水素化ニトリルゴムの固形分に対して0.5%添加し、電子線の照射を1回として、ポリエステル系剥離ライナー(三菱樹脂株式会社製 商品名「ダイアホイル MRE38」)を用いた場合でも、赤外線反射フィルムにおける保護層3表面の動摩擦係数が0.066(0.001~0.45の範囲内)であるとともに、垂直放射率が0.12(0.20以下)であり、動摩擦係数及び垂直放射率が共に良好な値を示した。また、シリコーン転写量は0.0014g/mであった。
 また、実施例5の結果において、電子線を照射してからポリエステル系剥離ライナーを保護層3の表面に貼り合わせる時間を10秒以内から約10分後に延ばした場合でも、赤外線反射フィルムにおける保護層3表面の動摩擦係数が0.088(0.001~0.45の範囲内)であるとともに、垂直放射率が0.13(0.20以下)であり、動摩擦係数及び垂直放射率が共に良好な値を示した。また、シリコーン転写量は0.0006g/mであった。
 実施例6の結果において、電子線照射線量を80kGy、照射回数を1回とした場合でも、赤外線反射フィルムにおける保護層3表面の動摩擦係数が0.086(0.001~0.45の範囲内)であるとともに、垂直放射率が0.12(0.20以下)であり、動摩擦係数及び垂直放射率が共に良好な値を示した。また、シリコーン転写量は0.0006g/mであった。
 また、比較例1の結果において、各回の電子線照射後にポリエステル系剥離ライナーを積層しないと、垂直放射率は0.11(0.20以下)であるものの、動摩擦係数は0.54と0.001~0.45より高い値を示し、良好な結果が得られなかった。比較例1では、シリコーン成分が保護層3に転写されておらず(シリコーン成分の転写量は0.0000g/m)、このことから、滑り性の付与にはシリコーン成分の転写が寄与していることが分かった。
 そして、比較例2の結果においては、ポリエステル系剥離ライナーとして、三菱樹脂株式会社製 商品名「ダイアホイル MRF38」を用いた場合、上述のように、電子線により活性化された保護層3に含まれる高分子と基材(剥離ライナー)に含まれる成分とが結合することにより、1回目の電子線照射後に基材(剥離ライナー)を剥離するのが困難であったため、保護層3表面の動摩擦係数、垂直放射率及びシリコーン転写量が測定不能であった。なお、そのため、電子線の照射は1回のみとした。
 なお、本発明に係る低摩擦基材及びその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
 例えば、上記実施形態においては、赤外線反射フィルムを対象とし、赤外線反射フィルムの表面(保護層3)におけるスリップ性(滑り性)の向上について説明した。しかしながら、本発明は、赤外線反射フィルムに限定されるものではない。本発明は、表面の摩擦係数が低く、スリップ性(滑り性)に優れた低摩擦基材が要求される全ての分野、製品に適用され得るものである。
 従って、上記実施形態においては、基材1はポリエステル系フィルムといった樹脂であったが、樹脂に限定されるものではなく、例えば、金属シートであってもよい。
 また、上記実施形態においては、基材1及び保護層3の複層基材が対象となったが、低摩擦基材にする基材は単層基材であってもよい。従って、例えば、単層のポリエステル系フィルム表面にシリコーン成分を転写させる方法も本発明が意図する範囲である。
 また、上記実施形態においては、主として電子線を複数回照射する例について説明した。しかしながら、電子線を1回照射するだけの場合も、スリップ性(滑り性)の向上を図ることができるため、本発明が意図する範囲である。
 また、電子線を複数回照射する場合の1回目の照射に先立ち、あるいは電子線を1回だけ照射する場合の照射に先立ち、樹脂層(上記実施形態においては、保護層3)に対し、樹脂層に電子線を照射した際にラジカルを発生する化合物を含む層を形成しておけば、樹脂層そのものに電子線を照射する場合のラジカル発生度合いが十分に高くない樹脂層であっても、ラジカル発生度合いを高めることができ、これにより、シリコーン成分の樹脂層表面への転写量を増やすことができる。なお、電子線を照射した際にラジカルを発生する化合物を含む層を形成する方法としては、例えばシリコーン系レベリング剤を塗布する方法が挙げられる。
 また、上記実施形態においては、繰り返し単位A及びC、あるいは繰り返し単位A、B及びCのうち、少なくともいずれか二つ以上の繰り返し単位からなる高分子について説明した。しかしながら、これに限定されるものではない。これら繰り返し単位以外の他の繰り返し単位についても、保護層に必要な特性を損なわない範囲で含ませることができる。他の繰り返し単位としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは、高分子全体に対する割合が10重量%以下であるのが好ましい。
 また、上記実施形態においては、反射層2を蒸着により形成した。しかしながら、これに限定されるものではない。
 また、上記実施形態においては、剥離ライナーとして、ポリエステル系剥離ライナーを用いたが、これに限定されるものではない。
 また、上記実施形態に係る赤外線反射フィルムは、遮熱特性と断熱特性とを併せ持つ赤外線反射フィルムである。しかしながら、これに限定されるものではない。本発明に係る赤外線反射フィルムは、従来の遮熱特性のみを持つ赤外線反射フィルムにも適用できることは言うまでもない。
 1…基材、1a…一方の面、1b…他方の面、2…反射層、2a…半透明金属層、2b,2c…金属酸化物層、3…保護層(樹脂層)、4…粘着層

Claims (8)

  1.  少なくとも表面に樹脂層を有する基材の該樹脂層に電子線を照射する工程と、
     該樹脂層に電子線を照射した後、該樹脂層表面にシリコーン成分を付着させる工程とを含む
     低摩擦基材の製造方法。
  2.  シリコーン成分を付着させる工程は、表面にシリコーン成分が形成されたポリマーフィルムの該表面側を樹脂層上に被覆する工程である
     請求項1に記載の低摩擦基材の製造方法。
  3.  電子線を照射する工程の前に、樹脂層に電子線を照射した際にラジカルを発生する化合物を含む層を樹脂層上に形成する工程をさらに含む
     請求項1に記載の低摩擦基材の製造方法。
  4.  シリコーン成分を付着させる工程の後の樹脂層表面の動摩擦係数が0.001~0.45である
     請求項1に記載の低摩擦基材の製造方法。
  5.  樹脂層は、下記化学式Iの繰り返し単位A、B及びCのうち、少なくともいずれか二つ以上の繰り返し単位を含む高分子を含む層である
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
     請求項1に記載の低摩擦基材の製造方法。
  6.  樹脂層は、基材の一方の面に反射層及び保護層を順に積層した赤外線反射フィルムの保護層である
     請求項1に記載の低摩擦基材の製造方法。
  7.  保護層側表面の垂直放射率が0.20以下である
     請求項6に記載の低摩擦基材の製造方法。
  8.  前記保護層は、前記保護層表面を構成するシリコーン成分をさらに含んでおり、
     該シリコーン成分の量が0.0001~1.0000g/mである
     請求項6に記載の低摩擦基材の製造方法。
     
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