JP6370347B2 - 赤外線反射フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、主にガラス窓等の室内側に配置して用いられる赤外線反射フィルムに関する。特に、本発明は、断熱性に優れ、かつ実用時の耐久性を兼ね備える赤外線反射フィルムに関する。
従来より、ガラスやフィルム等の基材上に赤外線反射層を備える赤外線反射基板が知られている。赤外線反射層としては、金属層と金属酸化物層とが交互積層されたものが広く用いられており、太陽光等の近赤外線を反射することにより、遮熱性を持たせることができる。金属層としては、赤外線の選択反射性を高める観点から、銀等が広く用いられており、金属酸化物層としては酸化インジウム錫(ITO)等が広く用いられている。これらの金属層や金属酸化物層は、耐擦傷性等の物理的強度が十分ではなく、さらには、熱、紫外線、酸素、水分、塩素(塩化物イオン)等の外部環境要因による劣化を生じ易い。そのため、一般には、赤外線反射層を保護する目的で、赤外線反射層の基材と反対側には、保護層が設けられる。
近年、赤外線反射フィルムの放射率を低減させて、断熱性を持たせる試みがなされている。赤外線反射フィルムの放射率の低減には、赤外線反射層中の金属層によって遠赤外線を室内に反射させることが重要となる。しかしながら、赤外線反射フィルムの保護層として用いられるフィルムや硬化性樹脂層(ハードコート層)は、一般にC=C結合、C=O結合、C−O結合、芳香族環等を含む化合物を多く含有しており、波長5μm〜25μmの遠赤外線領域の赤外振動吸吸が大きい。保護層で吸収された遠赤外線は、金属層で反射されることなく、熱伝導により室外へ熱として拡散される。そのため、保護層による遠赤外線の吸収量が大きいと、赤外線反射フィルムの放射率が上昇し、断熱効果が得られなくなる。
赤外線反射フィルムの放射率を低減する目的で、特許文献1では、透明保護層として、フルオロシラン等の硬化物層を用い、その厚みを500nm以下とすることにより、保護層での遠赤外線の吸収量を低減する方法が提案されている。
WO2011/109306号国際公開パンフレット
本発明者らの検討によれば、特許文献1に開示されているように、透明保護層の厚みを数百nmとした場合、透明保護層の光学膜厚が可視光の波長範囲と重複するため、界面での多重干渉によって、赤外線反射フィルムが虹模様に色付いて視認されるとの問題(虹彩現象)を生じることが判明した。虹彩現象を防止するためには、透明保護層の厚みを、可視光の波長範囲よりも小さくすることが有効である。しかしながら、透明保護層の厚みが数十nmまで小さくなると、保護層による保護効果が低下し、赤外線反射層、特に金属層の耐久性が低下して、酸化等の劣化を生じ易くなる。金属層が劣化すると、赤外線反射フィルムの断熱性の低下や、可視光線透過率の低下を生じる傾向がある。
特許文献1では、透明保護層を50nm程度まで薄くした例も開示されているが、当該形態では、赤外線反射層中の銀等の金属層にNi−Cr合金等の耐久性の高い金属層を隣接して配置することにより、金属層に耐久性が付与されている。金属層にNi−Cr合金層等を付加すれば、近赤外線の反射による遮熱性、および遠赤外線の反射による断熱性に加えて、耐久性を兼ね備える赤外線反射フィルムが得られる。しかしながら、Ni−Cr合金等は可視光の透過率が低いため、赤外線反射フィルムの可視光線透過率が50%程度まで低下するとの問題が生じる。
また、透明保護層を形成するための硬化性有機物等は、一般に、金属酸化物層との密着性が小さい。そのため、透明保護層の膜厚が小さい場合は、金属酸化物層と透明保護層との層間剥離が発生しやすいとの問題がある。層間剥離を防止するために、接着層やプライマー層等を別途設けることが考えられるが、新たな層が付加されると、遠赤外線の吸収量が増大するために、赤外線反射フィルムの断熱性が低下するとの別の問題を生じる。
上記に鑑み、本発明は、厚みが小さい場合でも、十分な耐久性および赤外線反射層への保護効果を備える透明保護層を用いることによって、断熱性に優れ、かつ高耐久性の赤外線反射フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らが検討の結果、金属層上に配置される金属酸化物層として、酸化亜鉛と酸化錫を含む複合金属酸化物を用い、かつ透明保護層が所定の化合物を含有することで、耐久性と断熱性の両方を満足する赤外線反射フィルムが得られることを見出し、本発明に至った。
本発明の赤外線反射フィルムは、透明フィルム基材上に、赤外線反射層および透明保護層をこの順に備える。赤外線反射層は、透明フィルム基材側から、第一金属酸化物層;銀を主成分とする金属層;および酸化亜鉛と酸化錫を含む複合金属酸化物からなる第二金属酸化物層、をこの順に備える。透明保護層は、有機物層である。また、透明保護層の厚みは、30nm〜130nmが好ましい。
本発明の赤外線反射フィルムは、透明保護層側から測定した垂直放射率が0.2以下であることが好ましい。垂直放射率が前記範囲であれば、室内からの遠赤外線が金属層により室内側に反射されるため、赤外線反射フィルムが高い断熱性を有する。
本発明の赤外線反射フィルムは、透明保護層の厚みが130nm以下と小さいため、虹彩現象の発生が抑制され、外観および視認性に優れる。また、透明保護層の厚みが小さく、透明保護層による遠赤外線の吸収が少ないため、本発明の赤外線反射フィルムは、近赤外線の反射による遮熱性に加えて、遠赤外線を室内に反射することによる断熱性に優れ、通年で省エネ効果を発揮し得る。さらに、本発明の赤外線反射フィルムは、赤外線反射層および透明保護層に所定の材料が用いられているため、両者の密着性に優れると共に、透明保護層の厚みが小さいにも関わらず、高い耐久性を備える。
赤外線反射フィルムの使用例を模式的に示す断面図である。 一実施形態の赤外線反射フィルムの積層構成を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の赤外線反射フィルムについて、適宜図面を参照しながら説明する。図1は、赤外線反射フィルムの使用形態を模式的に表す断面図である。本発明の赤外線反射フィルム100は、透明フィルム基材10上に、赤外線反射層20および透明保護層30を備える。赤外線反射フィルム100は、透明フィルム基材10側が、適宜の接着層60等を介して、窓50に貼りあわせられ、建物や自動車の窓50の室内側に配置して用いられる。当該使用形態では、室内側に透明保護層30が配置される。
図1に模式的に示すように、本発明の赤外線反射フィルム100は、屋外からの可視光(VIS)を透過して室内に導入すると共に、屋外からの近赤外線(NIR)を赤外線反射層20で反射する。近赤外線反射により、太陽光等に起因する室外からの熱の室内への流入が抑制される(遮熱効果が発揮される)ため、夏場の冷房効率を高めることができる。さらに、赤外線反射層20は、暖房器具80等から放射される室内の遠赤外線(FIR)を反射するため、断熱効果が発揮され、冬場の暖房効率を高めることができる。
[赤外線反射フィルム]
図2に示すように、赤外線反射フィルム100は、透明フィルム基材10の一主面上に、赤外線反射層20および透明保護層30をこの順に備える。赤外線反射層20は、透明フィルム基材10側から、第一金属酸化物層21、金属層25および第二金属酸化物層22をこの順に備える。透明保護層30は、赤外線反射層20の第二金属酸化物層22に直接接している。
赤外線反射層20によって室内の遠赤外線を反射するためには、透明保護層30による遠赤外線の吸収量が小さいことが重要である。一方、赤外線反射層20の擦傷や劣化を防止するために、透明保護層30には、機械的強度や化学的強度が求められる。本発明の赤外線反射フィルムは、所定の積層構成を有することにより、赤外線反射による断熱性と耐久性の両方を兼ね備えることができる。以下、赤外線反射フィルムを構成する各層について、順次説明する。
[透明フィルム基材]
透明フィルム基材10としては、可撓性の透明樹脂フィルム等が用いられる。透明フィルム基材としては、可視光線透過率が80%以上のものが好適に用いられる。なお、本明細書において、可視光線透過率は、JIS A5759−2008(建築窓ガラスフィルム)に準じて測定される。
透明フィルム基材10の厚みは特に限定されないが、10μm〜300μm程度の範囲が好適である。また、透明フィルム基材10上に赤外線反射層20が形成される際に、高温での加工が行われる場合があるため、透明フィルム基材を構成する樹脂材料は耐熱性に優れるものが好ましい。透明フィルム基材を構成する樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
赤外線反射フィルムの機械的強度を高める等の目的で、透明フィルム基材10の赤外線反射層20形成面側の表面にはハードコート層が設けられていることが好ましい。ハードコート層は、例えばアクリル系、シリコーン系等の適宜な紫外線硬化型樹脂の硬化被膜を、透明フィルム基材に付設する方式等により形成することができる。ハードコート層としては、硬度の高いものが好適に用いられる。
透明フィルム基材10の表面、あるいはハードコート層の表面には、赤外線反射層20との密着性を高める等の目的で、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理等の表面改質処理が行われてもよい。
[赤外線反射層]
赤外線反射層20は、可視光を透過し、近赤外線および遠赤外線を反射するものであり、透明フィルム基材10側から、第一金属酸化物層21、金属層25および第二金属酸化物層22をこの順に備える。
<金属層>
金属層25は、赤外線反射の中心的な役割を有する。本発明においては、可視光線透過率と赤外線反射率を高める観点から、銀を主成分とする、銀層または銀合金層が好適に用いられる。銀は高い自由電子密度を有するため、近赤外線・遠赤外線の高い反射率を実現することができ、赤外線反射層20を構成する層の積層数が少ない場合でも、遮熱効果および断熱効果に優れる赤外線反射フィルムが得られる。
金属層25中の銀の含有量は、90重量%以上が好ましく、93重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましく、96重量%以上が特に好ましい。金属層中の銀の含有量を高めることで、透過率および反射率の波長選択性を高め、赤外線反射フィルムの可視光線透過率を高めることができる。
金属層25は、銀以外の金属を含有する銀合金層であってもよい。例えば、金属層の耐久性を高めるために、銀合金が用いられる場合がある。金属層の耐久性を高める目的で添加される金属としては、パラジウム(Pd),金(Au),銅(Cu),ビスマス(Bi),ゲルマニウム(Ge),ガリウム(Ga)等が好ましい。中でも、銀に高い耐久性を付与する観点から、Pdが最も好適に用いられる。Pd等の添加量を増加させると、金属層の耐久性が向上する傾向がある。金属層25が、Pd等の銀以外の金属を含有する場合、その含有量は、0.3重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましく、2重量%以上が特に好ましい。一方で、Pd等の添加量が増加し、銀の含有量が低下すると、赤外線反射フィルムの可視光線透過率が低下する傾向がある。そのため、金属層25中の銀以外の金属の含有量は、10重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましく、4重量%以下が特に好ましい。
<金属酸化物層>
金属酸化物層21,22は、金属層25との界面における可視光線の反射量を制御して、高い可視光線透過率と赤外線反射率とを両立させる等の目的で設けられる。また、金属酸化物層は、金属層25の劣化を防止するための保護層としても機能し得る。赤外線反射層における反射および透過の波長選択性を高める観点から、金属酸化物層21,22の可視光に対する屈折率は、1.5以上が好ましく、1.6以上がより好ましく、1.7以上がさらに好ましい。
上記の屈折率を有する材料としては、Ti,Zr,Hf,Nb,Zn,Al,Ga,In,Tl,Ga,Sn等の金属の酸化物、あるいはこれらの金属の複合酸化物が挙げられる。特に、本発明においては、金属層25の透明保護層30側に設けられる第二金属酸化物層22として、酸化亜鉛と酸化錫とを含む複合金属酸化物が用いられることが好ましい。酸化亜鉛および酸化錫を含む金属酸化物は、化学的安定性(酸、アルカリ、塩化物イオン等に対する耐久性)に優れると共に、後述する透明保護層30との密着性に優れるため、第二金属酸化物層22と透明保護層30が相乗的に作用して、金属層25に対する保護効果が高められる。
第二金属酸化物層22中の亜鉛原子の含有量は、金属原子全量に対して、10原子%〜60原子%が好ましく、15原子%〜50原子%がより好ましく、20原子%〜40原子%がさらに好ましい。亜鉛原子(酸化亜鉛)の含有量が小さいと、金属酸化物層が結晶質となり、耐久性が低下する場合がある。また、亜鉛原子(酸化亜鉛)の含有量が小さいと、製膜に用いるスパッタターゲットの抵抗が高くなり、DCスパッタ法による製膜が困難となる傾向がある。一方、亜鉛原子の含有量が過度に大きいと、赤外線反射層の耐久性の低下や、第二金属酸化物層22と金属層25との密着性の低下等が生じる場合がある。
第二金属酸化物層22中の錫原子の含有量は、金属原子全量に対して30原子%〜90原子%が好ましく、40原子%〜85原子%がより好ましく、50原子%〜80原子%がさらに好ましい。錫原子(酸化錫)の含有量が過度に小さいと、金属酸化物層の化学的耐久性が低下する傾向がある。一方、錫原子(酸化錫)の含有量が過度に大きいと、製膜に用いるスパッタターゲットの抵抗が高くなり、DCスパッタ法による製膜が困難となる傾向がある。
第二金属酸化物層は、酸化亜鉛および酸化錫以外に、Ti,Zr,Hf,Nb,Al,Ga,In,Tl,Ga等の金属、あるいはこれらの金属酸化物を含有してもよい。これらの金属、あるいは金属酸化物は、スパッタ製膜時のターゲットの導電性を高めて製膜レートを大きくする目的や、金属酸化物層の透明性を高める等の目的で添加され得る。なお、第二金属酸化物層中の酸化原子と錫原子との含有量の合計は、金属原子全量に対して40原子%以上が好ましく、50原子%以上がより好ましく、60原子%以上がさらに好ましい。
第一金属酸化物層21を構成する材料としては、各種の金属酸化物を用いることができる。耐久性の向上や、生産性向上の観点から、第二金属酸化物層と同様に、酸化亜鉛および酸化錫を含有する複合金属酸化物が用いられることが好ましい。
上記金属層25および金属酸化物層21,22の厚みは、赤外線反射層が可視光線を透過し近赤外線を選択的に反射するように、材料の屈折率等を勘案して適宜に設定される。金属層25の厚みは、例えば、3nm〜50nmの範囲で調整され得る。また、金属酸化物層21,22の厚みは、例えば、3nm〜80nmの範囲で調整され得る。金属層および金属酸化物層の製膜方法は特に限定されないが、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法、電子線蒸着法等のドライプロセスによる製膜が好ましい。
高い製膜レートを実現する観点から、金属酸化物層21,22は、金属と金属酸化物とを含有するターゲットを用いたDCスパッタ法により製膜されることが好ましい。ZTOは導電性小さいため、酸化亜鉛と酸化錫のみを含有する焼結ターゲットは抵抗率が高く、DCスパッタにより製膜することは困難である。また、亜鉛と錫とを含有する金属ターゲットを用いた反応性スパッタは、酸素雰囲気下で行われるため、金属層上にZTOを製膜する際に、製膜下地層となる金属層が過剰な酸素によって酸化され、赤外線反射層の特性が低下するとの問題を生じ得る。そのため、特に、金属層25上に第二金属酸化物層22としてZTOからなる金属酸化物層が製膜される場合は、酸化亜鉛と酸化錫と金属とを焼結させたターゲットを用いたDCスパッタ法により製膜が行われることが好ましい。当該ターゲットは、好ましくは0.1重量%〜20重量%、より好ましくは0.2重量%〜15重量%の金属を、酸化亜鉛および/または酸化錫とともに焼結することによって形成されることが好ましい。ターゲット形成時の金属含有量が過度に小さいと、ターゲットの導電性が不十分となるためにDCスパッタによる製膜が困難となったり、金属層との密着性が低下する場合がある。ターゲット形成時の金属含有量が過度に大きいと、製膜時に酸化されない残存金属や、酸素量が化学量論組成に満たない金属酸化物の量が多くなり、金属酸化物層の可視光線透過率が低下する傾向がある。ターゲットに含まれる金属としては、亜鉛および/または錫が好ましいが、それ以外の金属が含まれていてもよい。
金属酸化物と金属とを焼結させたターゲットを用いて、ZTO金属酸化物層の製膜が行われる場合、製膜室内への酸素導入量は、全導入ガス流量に対し8体積%以下が好ましく、5体積%以下がより好ましく、4体積%以下がさらに好ましい。酸素導入量を小さくすることで、金属酸化物層製膜時の金属層の酸化を防止することができる。酸素導入量は、金属酸化物層の製膜に用いられるターゲットが配置された製膜室への全ガス導入量に対する酸素の量(体積%)である。遮蔽板により区切られた複数の製膜室を備えるスパッタ製膜装置が用いられる場合は、それぞれの区切られた製膜室へのガス導入量を基準に酸素導入量が算出される。
<赤外線反射層の積層構成>
赤外線反射層20は、第一金属酸化物層21、金属層25および第二金属酸化物層22の3層からなるものであってもよく、これら以外の層を含むものであってもよい。例えば、金属層25と金属酸化物層21,22との密着性の向上や、金属層への耐久性の付与等を目的として、両者の間に他の金属層や金属酸化物層等を有していてもよい。また、第一金属酸化物層21の透明フィルム基材10側に、さらに金属層および金属酸化物層を追加して、赤外線反射層20を、5層構成、7層構成…として積層数を増大させ、可視光線や近赤外線の透過および反射の波長選択性を向上することもできる。
一方、生産性向上や製造コスト低減の観点から、赤外線反射層20は、第一金属酸化物層21、金属層25および第二金属酸化物層22の3層からなることが好ましい。本発明においては、後述するように、第二金属酸化物層22上に所定の透明保護層が直接積層されることによって、高耐久性が付与されるため、赤外線反射層が3層構成の場合でも、実用に耐え得る十分な耐久性を有する赤外線反射フィルムを得ることができる。
[透明保護層]
赤外線反射層20の第二金属酸化物層22上には、赤外線反射層の擦傷や劣化を防止する目的で、透明保護層30が設けられる。本発明において、透明保護層30は、第二金属酸化物層22と直接接している。
透明保護層30の材料としては、可視光線透過率が高く、機械的強度および化学的強度に優れるものが好ましい。本発明においては透明保護層30の材料として有機物が用いられる。有機物としては、フッ素系、アクリル系、ウレタン系、エステル系、エポキシ系等の活性光線硬化型あるいは熱硬化型の有機樹脂や、有機成分と無機成分が化学結合した有機・無機ハイブリッド材料が好ましく用いられる。本発明においては、透明保護層30が、上記有機物に加えて、酸性基と重合性官能基とを同一分子中に有するエステル化合物に由来する架橋構造を有することが好ましい。
酸性基と重合性官能基とを同一分子中に有するエステル化合物としては、リン酸、硫酸、シュウ酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸等の多価の酸と;エチレン性不飽和基、シラノール基、エポキシ基等の重合性官能基と水酸基とを分子中に有する化合物とのエステルが挙げられる。なお、当該エステル化合物は、ジエステルやトリエステル等の多価エステルでもよいが、多価の酸の酸性基中の少なくとも1つはエステル化されていないことが好ましい。
透明保護層30が、上記のエステル化合物に由来する架橋構造を有することで、透明保護層の機械的強度および化学的強度が高められると共に、透明保護層30と第二金属酸化物層22との密着性が高められ、赤外線反射層の耐久性を高めることができる。上記エステル化合物の中でも、リン酸と重合性官能基を有する有機酸とのエステル化合物(リン酸エステル化合物)が、透明保護層と金属酸化物層との密着性を高める上で好ましい。透明保護層と金属酸化物層との密着性の向上は、エステル化合物中の酸性基が金属酸化物と高い親和性を示すことに由来し、中でもリン酸エステル化合物中のリン酸ヒドロキシ基が金属酸化物層との親和性に優れるため、密着性が向上すると推定される。
透明保護層30の機械的強度および化学的強度を高める観点から、上記エステル化合物は、重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を含有することが好ましい。上記エステル化合物は、分子中に複数の重合性官能基を有していてもよい。上記エステル化合物としては、例えば、下記式(1)で表される、リン酸モノエステル化合物またはリン酸ジエステル化合物が好適に用いられる。なお、リン酸モノエステルとリン酸ジエステルとを併用することもできる。
Figure 0006370347
式中、Xは水素原子またはメチル基を表し、(Y)は−OCO(CH25−基を表す。nは0または1であり、pは1または2である。
透明保護層中の上記エステル化合物に由来する構造の含有量は、1重量%〜40重量%が好ましく、1.5重量%〜35重量%がより好ましく、2重量%〜20重量%がさらに好ましく、2.5重量%〜17.5重量%がさらに好ましい。特に好ましい形態において、透明保護層中の上記エステル化合物に由来する構造の含有量は、2.5重量%〜15重量%、あるいは2.5重量%〜12.5重量%である。エステル化合物由来構造の含有量が過度に小さいと、強度や密着性の向上効果が十分に得られない場合がある。一方、エステル化合物由来構造の含有量が過度に大きいと、透明保護層形成時の硬化速度が小さくなって硬度が低下したり、透明保護層表面の滑り性が低下して耐擦傷性が低下する場合がある。透明保護層中のエステル化合物に由来する構造の含有量は、透明保護層形成時に、組成物中の上記エステル化合物の含有量を調整することによって、所望の範囲とすることができる。
透明保護層30の形成方法は特に限定されない。透明保護層は、例えば、上記の有機材料、あるいは有機材料の硬化性モノマーやオリゴマーと上記エステル化合物を溶剤に溶解させて溶液を調整し、この溶液を赤外線反射層の第二金属酸化物層22上に塗布し、溶媒を乾燥させた後、紫外線や電子線等の照射や熱エネルギ―の付与によって、硬化させる方法により形成されることが好ましい。
なお、透明保護層30の材料としては、上記の有機材料およびエステル化合物以外に、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤滑剤、可塑剤、着色防止剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜に調整され得る。
透明保護層30の厚みは、30nm〜130nmが好ましく、35nm〜130nmがより好ましく、40nm〜110nmがさらに好ましく、45nm〜100nmが特に好ましい。透明保護層の厚みが過度に大きいと、透明保護層での遠赤外線吸収量増大によって、赤外線反射フィルムの断熱性が低下する傾向がある。また、透明保護層の光学厚みが可視光の波長範囲と重複すると、界面での多重反射干渉による虹彩現象を生じることからも、透明保護層の厚みは小さいことが好ましい。本発明においては、透明保護層30が所定のエステル化合物由来の架橋構造を有すると共に、第二金属酸化物層22の材料として酸化亜鉛および酸化錫を含有する複合金属酸化物が用いられることで、耐久性が高められる。そのため、透明保護層の厚みが150nm以下の場合でも、耐久性に優れる赤外線反射フィルムを得ることができる。また、前述のように、金属層25としてPd等の金属を含有する銀合金を採用することによっても、耐久性が高められるため、耐久性を保持しつつ、透明保護層の厚みを小さくすることができる。
[赤外線反射フィルムの積層構成]
上記のように、本発明の赤外線反射フィルム100は、透明フィルム基材10の一主面上に、金属層および金属酸化物層を含む赤外線反射層20、ならびに透明保護層30を有する。透明保護層30は、第二金属酸化物層22上に直接形成されている。透明フィルム基材10と赤外線反射層20との間には、各層の密着性を高める目的や、赤外線反射フィルムの強度を高める等の目的で、ハードコート層や易接着層等が設けられていてもよい。易接着層やハードコート層等の材料や形成方法は特に限定されないが、可視光線透過率の高い透明な材料が好適に用いられる。
透明フィルム基材10の赤外線反射層20と反対側の面には、赤外線反射フィルムと窓ガラス等との貼り合せに用いるための接着剤層等が付設されていてもよい。接着剤層としては、可視光線透過率が高く、透明フィルム基材10との屈折率差が小さいものが好適に用いられる、例えば、アクリル系の粘着剤(感圧接着剤)は、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性を示し、耐候性や耐熱性等に優れることから、透明フィルム基材に付設される接着剤層の材料として好適である。
接着剤層は、可視光線の透過率が高く、かつ紫外線透過率が小さいものが好ましい。接着剤層の紫外線透過率を小さくすることによって、太陽光等の紫外線に起因する赤外線反射層の劣化を抑制することができる。接着剤層の紫外線透過率を小さくする観点から、接着剤層は紫外線吸収剤を含有することが好ましい。なお、紫外線吸収剤を含有する透明フィルム基材等を用いることによっても、屋外からの紫外線に起因する赤外線反射層の劣化を抑制することができる。接着剤層の露出面は、赤外線反射フィルムが実用に供されるまでの間、露出面の汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で、接着剤層の露出面の外部との接触による汚染を防止できる。
[赤外線反射フィルムの特性]
本発明の赤外線反射フィルムは、透明保護層30側から測定した垂直放射率が、0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.12以下であることがさらに好ましく、0.10以下であることが特に好ましい。なお、本明細書において、垂直放射率は、JlS R3106:2008(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)に準じて測定される。赤外線反射フィルムが5重量%の塩化ナトリウム水溶液に5日間浸漬された後の放射率の変化は、0.02以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、67%以上がさらに好ましい。上述のように、本発明においては、赤外線反射層20を構成する各層および透明保護層30の材料や厚みを調整することにより、上記の可視光線透過率、垂直放射率および耐久性を同時に兼ね備える赤外線反射フィルムが得られる。
[用途]
本発明の赤外線反射フィルムは、建物や乗り物等の窓、植物等を入れる透明ケース、冷凍もしくは冷蔵のショーケース等に貼着し、冷暖房効果の向上や急激な温度変化を防ぐために、好ましく使用される。
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例、比較例、参考例で用いた測定方法]
<各層の厚み>
赤外線反射層を構成する各層の厚みは、集束イオンビーム加工観察装置(日立製作所製、製品名「FB−2100」)を用いて、集束イオンビーム(FIB)法により試料を加工し、その断面を、電界放出形透過電子顕微鏡(日立製作所製、製品名「HF−2000」)により観察して求めた。基材上に形成されたハードコート層、および透明保護層の厚みは、瞬間マルチ測光システム(大塚電子製、製品名「MCPD3000」)を用い、測定対象側から光を入射させた際の可視光の反射率の干渉パターンから、計算により求めた。なお、透明保護層の厚みが小さく、可視光域の干渉パターンの観察が困難なもの(厚み約150nm以下)については、上記赤外線反射層の各層と同様に、透過電子顕微鏡観察により厚みを求めた。
<垂直放射率>
垂直放射率は、角度可変反射アクセサリを備えるフーリエ変換型赤外分光(FT−IR)装置(Varian製)を用いて、保護層側から赤外線を照射した場合の、波長5μm〜25μmの赤外光の正反射率を測定し、JIS R3106−2008(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)に準じて求めた。
<耐擦傷性試験>
12cm×3cmにカットした赤外線反射フィルムの透明フィルム基材側の面を、厚み25μmの粘着剤層を介してアルミ板に貼り合わせたものを試料として用いた。学振型染色物摩擦堅ろう度試験機(安田精機製作所製)を用いて、アルコールタイプのウェットティッシュ(コーナン商事製)で500gの荷重を加えながら、アルミ板上の赤外線反射フィルムの透明保護層側の面の10cmの長さの範囲を1000往復擦った。試験後の試料の保護層への傷、剥離の有無を目視で評価し、以下の評価基準に従い、評価した。
◎:表面に傷が認められないもの
〇:表面に細い傷が認められるが剥離は生じていないもの
×:表面に多数の傷や剥離が認められるもの
<耐塩水性試験>
赤外線反射フィルムの透明フィルム基材側の面を、厚み25μmの粘着剤層を介して3cm×3cmのガラス板に貼り合わせたものを試料として用いた。この試料を5重量%の塩化ナトリウム水溶液に浸漬し、試料および塩化ナトリウム水溶液が入った容器を50℃の乾燥機に入れ、5日後および10日後に放射率の変化および外観の変化を確認し、以下の評価基準に従って評価した。
◎:10日間浸漬後も外観変化がなく、かつ放射率の変化が0.02以下であるもの 〇:5日間浸漬後は外観変化がなく、かつ放射率の変化が0.02以下であるが、10日間浸漬後は、外観変化が確認されるもの
△:5日間浸漬後に、外観の変化が確認されるが、放射率の変化が0.02以下であるもの
×:5日間浸漬後に、外観の変化が確認され、放射率の変化が0.02以上であるもの
<外観(虹彩現象>
蛍光灯の下で、赤外線反射フィルムの透明保護層側表面の反射色を目視で確認し、以下の評価基準に従って評価した。
○:虹彩現象が生じていないもの
△:虹彩現象によるわずかな色付きが確認されるもの
×:虹彩現象により表面に虹模様が確認されるもの
[実施例1]
(基材へのハードコート層の形成)
厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、商品名「ルミラー U48」、可視光線透過率93%)の一方の面に、アクリル系の紫外線硬化型ハードコート層(日本曹達製、商品名「NH2000G」)が2μmの厚みで形成された。詳しくは、グラビアコーターにより、ハードコート溶液が塗布され、80℃で乾燥後、超高圧水銀ランプにより積算光量300mJ/cm2の紫外線が照射され、硬化が行われた。
(赤外線反射層の形成)
ポリエチレンテレフタレートフィルム基材のハードコート層上に、巻取式スパッタ装置を用いて、赤外線反射層が形成された。詳しくは、DCマグネトロンスパッタ法により、亜鉛−錫複合酸化物(ZTO)からなる膜厚30nmの第一金属酸化物層、Ag−Pd合金からなる膜厚15nmの金属層、ZTOからなる膜厚30nmの第二金属酸化物層が順次形成された。ZTO金属酸化物層の形成には、酸化亜鉛と酸化錫と金属亜鉛粉末とを、10:82.5:7.5の重量比で焼結させたターゲットが用いられ、電力密度:2.67W/cm2、基板温度80℃の条件でスパッタが行われた。この際、スパッタ製膜室へのガス導入量は、Ar:O2が98:2(体積比)となるように調整された。金属層の形成には、銀:パラジウムを96:4の重量比で含有する金属ターゲットが用いられた。
(透明保護層の形成)
赤外線反射層上に、リン酸エステル化合物に由来する架橋構造を有するフッ素系の紫外線硬化型樹脂からなる保護層が60nmの厚みで形成された。詳しくは、フッ素系ハードコート樹脂溶液(JSR製、商品名「JUA204」)の固形分100重量部に対して、リン酸エステル化合物(日本化薬製、商品名「KAYAMER PM−21」)を5重量部添加した溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、60℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気下で超高圧水銀ランプにより積算光量400mJ/cm2の紫外線が照射され、硬化が行われた。なお、上記リン酸エステル化合物は、分子中に1個のアクリロイル基を有するリン酸モノエステル化合物(前記の式(1)において、Xがメチル基、n=0、p=1である化合物)と分子中に2個のアクリロイル基を有するリン酸ジエステル化合物(前記の式(1)において、Xがメチル基、n=0、p=2である化合物)との混合物である。
[実施例2および比較例9]
透明保護層の厚みが表1に示すように変更されたこと以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。
[実施例4]
透明保護層の形成において、フッ素系ハードコート樹脂溶液に代えて、アクリル系ハードコート樹脂溶液(JSR製、商品名「Z7535」)が用いられた。それ以外は実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。
[実施例5〜8]
透明保護層形成時のリン酸エステル化合物の添加量が表1に示すように変更されたこと以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。
[実施例9]
第一金属酸化物層および第二金属酸化物層として、ZTOに代えて、酸化インジウム錫アルミニウム亜鉛(ITAZO)が用いられたこと以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。ITAZO層の形成には、スパッタターゲットとして、酸化インジウム、酸化錫、酸化アルミニウム、および酸化亜鉛を、45:5:1:49の重量比で焼結させた酸化物ターゲットが用いられた。
[実施例10]
透明保護層形成時の添加材料(架橋剤)として、KAYAMER PM−21に代えて、分子中に1個のアクリロイル基を有するリン酸モノエステル化合物(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレート P−1A」)が用いられた。それ以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。
[実施例11]
透明保護層形成時の添加材料(架橋剤)として、リン酸エステル化合物に代えて、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート−コハク酸変性物(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレート DPE−6A−MS」)が用いられた。それ以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。
[実施例12]
金属層の形成において、Ag−Pd合金に代えて、銀:金を90:10の重量比で含有する金属ターゲットが用いられ、Ag−Au合金からなる金属層が形成された。それ以外は実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。
[比較例1〜3]
透明保護層の厚みが表1に示すように変更されたこと以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。
[比較例4]
透明保護層形成時にリン酸エステル化合物が添加されなかったこと以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。
[比較例5および比較例6]
透明保護層形成時のリン酸エステル化合物の添加量が表1に示すように変更されたこと以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。
[比較例7および8]
透明保護層形成時の添加材料(架橋剤)として、KAYAMER PM−21に代えて、分子中に3個の(メタ)アクリロイル基を有するリン酸トリエステル化合物が用いられた。それ以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。架橋剤として、比較例7では、トリスメタクリロイルオキシエチルフォスフェート(大阪有機化学製、商品名「ビスコート #3PMA」)が用いられ、比較例8では、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート(大阪有機化学製、商品名「ビスコート #3PA」が用いられた。これらのリン酸エステルは、リン酸の由来の酸性基(O=P−OH)の全てがエステル化されたトリエステルであり、分子中に酸性基を有していない。
[参考例1]
第一金属酸化物層および第二金属酸化物層として、ZTOに代えて、酸化インジウム錫(ITO)が用いられたこと以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。ITO層の形成には、スパッタターゲットとして、酸化インジウムと酸化錫を、90:10の重量比で焼結させた酸化物ターゲットが用いられた。
[参考例2]
第一金属酸化物層および第二金属酸化物層として、ZTOに代えて、酸化インジウム亜鉛(IZO)が用いられたこと以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムが作製された。ITO層の形成には、スパッタターゲットとして、酸化インジウムと酸化亜鉛を、90:10の重量比で焼結させた酸化物ターゲットが用いられた。
上記各実施例および比較例、参考例の赤外線反射フィルムの構成(金属酸化物層の材料、ならびに透明保護層の厚みおよび架橋剤の種類・添加量)および評価結果を表1に示す。
Figure 0006370347
表1から明らかなように、実施例1〜12の赤外線反射フィルムは、放射率が小さく、耐擦傷性および耐塩水性を備え、かつ虹彩現象が抑制されている。
透明保護層の厚みが変更された、実施例1〜3および比較例1〜3を対比すると、透明保護層の厚みが大きい比較例2および比較例3では、著しい虹彩現象が見られた。また、比較例3では、透明保護層の厚み増大による放射率の増大が顕著であった。一方、透明保護層の厚みが20nmの比較例1では、耐擦傷性が×となっており、厚みが小さいために、物理的強度が不足していることが分かる。これに対して、実施例1〜3は、いずれも良好な結果を示した。特に、耐擦傷性に優れ、かつ虹彩現象が観察されないようにするには、実施例1のように、透明保護層の厚みが45nm〜100nm程度の範囲内に調整されることが特に好ましいといえる。
リン酸エステル化合物の添加量が変更された実施例1,5〜8および比較例5、6を対比すると、リン酸エステル化合物の添加量が小さい比較例5およびリン酸エステルの添加量が多い比較例6は、いずれも耐擦傷性が×となっていた。また、実施例1,5〜8の中でも、特に、実施例1,6,7の耐擦傷性が優れていた。これらの結果から、透明保護層の物理的強度を高めるためには、架橋剤としてのエステル化合物の添加量は、2.5重量%〜12.5重量%程度の範囲が特に好ましいことが分かる。
架橋剤として、分子中に酸性基を含有しないリン酸トリエステルが用いられた比較例7,8は、耐擦傷性が×となっていた。また、実施例1および実施例10と実施例11とを対比すると、架橋剤としてリン酸エステルが用いられた実施例1,10は、コハク酸エステルが用いられた実施例11よりも耐擦傷性が向上していた。これらの結果から、透明保護層の物理的強度および透明酸化物層との密着性を高めるには、単に架橋構造を含有するだけでは不十分であり、酸性基を含有するエステルに由来する架橋構造が導入されることが必要であることが分かる。また、エステルとしては、リン酸由来の酸性基(O=P−OH)が残存しているリン酸モノエステルやリン酸ジエステルが特に好ましいことが分かる。
一方、透明保護層の主成分である硬化性油脂としてアクリル系の硬化性ポリマーが用いられた実施例4は、フッ素系の硬化性ポリマーが用いられた実施例1等と同等の耐久性を示した。この結果から、赤外線反射フィルムへの耐久性および密着性の付与は、上記エステル化合物に由来する架橋構造の導入が重要であることが理解される。
赤外線反射層の金属層としてAg−Pd合金に代えてAg−Au合金が形成された実施例12においても、実施例1と同等の耐久性を示した。また、赤外線反射層の金属酸化物層として、ITAZOが用いられた実施例9も、実施例1と同等の耐久性を示した。一方、ITOが用いられた参考例1およびIZOが用いられた参考例2では、耐擦傷性に優れ、虹彩現象が観察されず、放射率が小さいものの、耐塩水性が低下していることがわかる。これらの結果から、本発明において、金属酸化物層として、酸化亜鉛と酸化錫の両方を含有する複合金属酸化物が用いられると、赤外線反射層の耐久性が高められることが分かる。
100: 赤外線反射フィルム
10: 透明フィルム基材
20: 赤外線反射層
21,22: 金属酸化物層
25: 金属層
30: 保護層
60: 接着剤層

Claims (12)

  1. 透明フィルム基材上に、赤外線反射層および透明保護層をこの順に備える赤外線反射フィルムであって、
    前記赤外線反射層は、前記透明フィルム基材側から、第一金属酸化物層;銀を主成分とする金属層;およびTi、Zr、Hf、Nb、Zn、Al、Ga、In、Tl、GaおよびSnからなる群から選ばれる金属の酸化物あるいはこれらの金属の複合酸化物からなる第二金属酸化物層、をこの順に備え、
    前記透明保護層の厚みが30nm〜130nmである有機物層であり、
    前記透明保護層は、前記第二金属酸化物層に直接接しており、エステル化合物に由来する架橋構造を有する、
    赤外線反射フィルム。
  2. 前記透明保護層の厚みは、100nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の赤外線反射フィルム。
  3. 前記第二金属酸化物層中の亜鉛原子の含有量は、金属原子全量に対して、60%以下であり、前記第二金属酸化物層は、前記金属層の上にあることを特徴とする、請求項1から2のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルム。
  4. 前記第二金属酸化物中の亜鉛原子の含有量は、金属原子全量に対して、10%以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルム。
  5. 前記第二金属酸化物層中の錫原子の含有量は、金属原子全量に対して、90%以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルム。
  6. 前記第金属酸化物中の錫原子の含有量は、金属原子全量に対して、30%以上であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルム。
  7. 前記第一金属酸化物層は、酸化亜鉛と酸化錫を含む複合金属酸化物からなることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルム。
  8. 前記赤外線反射層は、前記第一金属酸化物層と前記金属層との間、または前記金属層と前記第二金属酸化物層との間に、追加の金属層あるいは金属酸化物層を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルム。
  9. 前記エステル化合物は、酸性基と重合性官能基とを同一分子中に有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルム。
  10. 前記エステル化合物が、リン酸と重合性官能基を有する有機酸とのエステル化合物であることを特徴とする、請求項9に記載の赤外線反射フィルム。
  11. 前記エステル化合物が、硫酸と重合性官能基を有する有機酸とのエステル化合物であることを特徴とする、請求項9に記載の赤外線反射フィルム。
  12. 前記透明保護層中の、前記エステル化合物に由来する構造の含有量が1重量%〜40重量%であることを特徴とする、請求項8から11のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルム。
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