本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態の系統安定化システムの基本的な構成を示すブロック図である。
本実施形態の系統安定化システム3は、再生可能エネルギー発電設備2が接続された電力系統1に接続され、電力系統1の電力の変動を抑制するシステムである。電力系統1には、再生可能エネルギー発電設備2からの電力と共に、水力発電所、火力発電所、原子力発電所など不図示の枯渇性エネルギー発電設備からの電力を利用するものであってもよい。また、電力系統1から電力が供給される商用電源には各家庭の電化製品などの負荷が接続され、電力を消費している。
図1を参照すると、系統安定化システム3は、キャパシタ装置4、蓄電装置5、および制御装置6を有している。
蓄電装置5は、一例として鉛蓄電池などの蓄電池を備えており、電力系統1の電力を蓄電池に充電したり、あるいは蓄電池から電力系統1に放電したりすることにより、電力系統1の電力の変動を抑制する装置である。蓄電装置5の充放電は制御装置6によって制御される。
キャパシタ装置4は、一例としてリチウムイオンキャパシタを備えており、電力系統1の電力をリチウムイオンキャパシタに充電したり、あるいはリチウムイオンキャパシタから電力系統1に放電したりすることにより、電力系統1の電力の変動を吸収し、抑制する装置である。キャパシタ装置4の充放電は制御装置6によって制御される。
制御装置6は、電力系統1の電力の変動を抑制するように、蓄電装置5およびキャパシタ装置4の充放電を制御する。その際、制御装置6は、蓄電装置5の充電または放電の発生回数を抑制するように、蓄電装置5とキャパシタ装置4の充放電の開始タイミングなど、蓄電装置5とキャパシタ装置4の充放電の相互の関係を調整する。本実施形態によれば、蓄電装置5とキャパシタ装置4の充放電の双方を調整し、蓄電装置5の充放電の回数を低減するように適切に制御するので、蓄電装置5の劣化を抑制し、系統安定化システム3の長寿命化を図ることができる。また、リチウムイオンキャパシタは、従来のキャパシタに比べて、大きな容量を確保しやすく、かつ安全性が高いので、電力系統1を安定化するシステムのような信頼性が要求される大規模なシステムに好適である。
例えば、制御装置6は、電力系統1の電力の変動を検出すると、まずキャパシタ装置4の充電あるいは放電を開始し、所定の短期変動時間を超えて電力の変動が継続している場合に蓄電装置5の充電あるいは放電を開始する。これにより、短期変動時間以内の電力の変動についてはキャパシタ装置4だけで抑制し、蓄電装置5の充電あるいは放電が発生しないように制御することができる。再生可能エネルギー発電設備2では発電量に短期間の変動が生じやすい傾向がある。本実施形態によれば、そのような短期変動時間内の電力の変動であれば、蓄電装置5の充電あるいは放電が起こらないので、蓄電装置5の充放電の回数を低減することができる。
電力系統1の電力の変動の主要因が再生可能エネルギー発電設備2の発電量の変化であれば、短期変動時間は、再生可能エネルギー発電設備2の発電量の変動の特性に合わせて設定するのが好ましい。再生可能エネルギー発電設備2の発電量の変動の特性は統計を採ることで取得することができる。短時間の変動をキャパシタ装置4で吸収するには、再生可能エネルギー発電設備2から短期変動としてどの程度の時間の電力変動が起こりやすいのかを考慮し、短期変動時間はその時間以上に設定するのがよい。また、キャパシタ装置4は、短期変動時間内の電力系統1の電力の変動を吸収できるだけの蓄電容量を持つのがよい。これによれば、再生可能エネルギー発電設備2で想定される短期間の電力の変動を吸収できるだけの蓄電容量をキャパシタ装置4に持たせておき、その短期間の電力の変動をキャパシタ装置4だけで吸収して蓄電装置5の充放電が起こらないように制御するので、使用されている再生可能エネルギー発電設備2に対して適切な電力変動の抑制が可能である。
電力の変動の判断の一例として、電力系統1の電力を維持すべき所望の電力値よりも高い第1の電力閾値と、所望の電力値よりも低い第2の電力閾値とを設定し、電力系統1の電力値が第1の電力閾値を上回った場合、あるいは電力系統1の電力値が第2の電力閾値を下回った場合に、電力系統1の電力が変動したと判断すればよい。電力系統1の電力が第1の電力閾値を上回った場合は、電力が上昇しているので、電力系統1からキャパシタ装置4への充電を開始すればよい。電力系統1の電力が第2の電力閾値を下回った場合は、電力が低下しているので、キャパシタ装置4から電力系統1への放電を開始すればよい。
あるいは、電力系統1の電力の変動に起因してその周波数が変動するので、判断の他の例として、電力系統1の所望の周波数値よりも高い第1の周波数閾値と、所望の周波数値よりも低い第2の周波数閾値とを設定し、電力系統1の周波数値が第1の周波数閾値を上回った場合、あるいは電力系統1の周波数値が第2の周波数閾値を下回った場合に、電力系統1の電力が変動したと判断すればよい。電力系統1の周波数値が第1の周波数閾値を上回った場合は、電力が上昇しているので、電力系統1からキャパシタ装置4への充電を開始すればよい。電力系統1の周波数値が第2の周波数閾値を下回った場合は、電力が低下しているので、キャパシタ装置4から電力系統1への放電を開始すればよい。
また、制御装置6は、電力系統1の電力の変動が検出されると、キャパシタ装置4に充電あるいは放電を開始させ、キャパシタ装置4の蓄電量が所定の蓄電量閾値に達すると、蓄電装置5に充電あるいは放電を開始させることにしてもよい。この場合、短期変動時間を設定する必要はない。キャパシタ装置4の蓄電容量は、再生可能エネルギー発電設備2の発電量の変動の特性に合わせて設定するのが好ましい。短期間の変動をキャパシタ装置4で吸収するには、再生可能エネルギー発電設備2から短期変動(短周期の一時的な変動)としてどの程度の蓄電量に相当する電力の時間的変化が起こるのかを想定し、キャパシタ装置4の蓄電容量はその蓄電量以上に設定するのがよい。本例によれば、キャパシタ装置4で吸収できるだけの電力の変動はキャパシタ装置4で吸収するので、キャパシタ装置4の蓄電容量を制限として蓄電装置5の充放電の回数を可能なだけ低減することができる。また、再生可能エネルギー発電設備2で想定される短期間の電力の変動を吸収できるだけの蓄電容量をキャパシタ装置4に持たせておき、キャパシタ装置4で吸収できるだけの電力の変動はキャパシタ装置4で吸収するので、使用されている再生可能エネルギー発電設備2に対して適切な電力変動の抑制が可能である。
また、制御装置6は、電力系統1の電力の変動を検出すると、まずキャパシタ装置4の充電あるいは放電を開始し、所定の短期変動時間を超えて電力の変動が継続している場合に蓄電装置5の充電あるいは放電を開始し、更に、電力系統1の電力の変動が短期変動時間を超える前にキャパシタ装置4の蓄電量が所定の蓄電量閾値(上限あるいは下限)に達した場合にも蓄電装置5に充電あるいは放電を開始させることにしてもよい。
以下、より具体的な実施例について説明する。
図2は、実施例1の系統安定化システムの構成を示すブロック図である。
本実施例による系統安定化システム3は、キャパシタ装置4、蓄電装置5、制御装置6、周波数検出器7、および電力検出器8を有している。キャパシタ装置4はリチウムイオンキャパシタ11および電力変換部9を有している。蓄電装置5は鉛蓄電池12および電力変換部10を有している。制御装置6は充放電制御部21および記憶部23を有している。
系統安定化システム3は、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー発電設備2によって発電された電力を供給する電力系統1の送電路に直接又は間接的に接続されている。
周波数検出器7は電力系統1に接続されている。周波数検出器7は電力系統1の状態を取得し(周波数を測定し)、制御装置6に通知する。周波数検出器7で取得された結果は、制御装置6にて、電力系統1と系統安定化システム3の間で電力の流通を行う充放電制御に用いられる。充放電制御には、電力変換部9に対する電圧、周波数、位相整合の制御が含まれる。
電力変換部9、10は電力系統1に接続されている。電力変換部9は充放電制御部21からの制御に基づく電力変換によって、電力系統1の入出力する電力とリチウムイオンキャパシタ11の充放電する電力とを整合させる。電力変換部10は充放電制御部21からの制御に基づく電力変換によって、電力系統1の入出力する電力と、鉛蓄電池12の充放電する電力とを整合させる。
リチウムイオンキャパシタ11は、電力変換部9を介して電力系統1の電力を充電し、また電力変換部9を介して電力系統1に放電する。
鉛蓄電池12は、電力変換部9を介して電力系統1の電力を充電し、また電力変換部9を介して電力系統1に放電する。
電力検出器8は電力変換部9の出力電力を検出し、検出結果を制御装置6に送る。
図3は、電力系統1の短周期変動の様子を例示した図である。
再生可能エネルギー発電設備2によって発電される電力によって電力系統1の電力K1には短時間に急激な電力変動KJ1,KJ2,KH1,KH2が発生することがある。その際、電力系統1の周波数も、電力の変動の影響を受けて、許容レベル以上に変動する場合がある。図3では、電力系統1の周波数F1に変動FJ1、FJ2、FH1、FH2が生じている。
電力系統1を安定化させるためには、このような短周期変動を抑制する必要がある。本実施例では、周波数変動FJ1、FJ2のように周波数が急激に上昇した場合、まず電力系統1から電力を流してリチウムイオンキャパシタ11を充電し、必要があれば更に鉛蓄電池12を充電することで、周波数F1の上昇を抑制する。また、周波数変動FH1、FH2のように周波数が急激に下降した場合、まずリチウムイオンキャパシタ11から電力系統1へ放電し、必要があれば更に鉛蓄電池12から電力系統1へ放電することで、周波数F1の低下を抑制する。
短周期変動を抑制するための制御は充放電制御部21が行っている。なお、リチウムイオンキャパシタ11および鉛蓄電池12の充放電は必ずしも短周期変動を抑制するためだけに限定されるものではなく、広く電力系統1を安定化するための変動抑制局面で使用され得る。
充放電制御部21は、周波数検出器7から通知される電力系統1の周波数と、予め設定された周波数の上限値および下限値とを比較する。上限値と下限値の間が周波数の許容変動範囲である。電力系統1の周波数が上限値以上の場合には電力系統1からリチウムイオンキャパシタ11への充電を開始し、充電開始時刻を記憶部23へ記録する。また、電力系統1の周波数が下限値以下の場合にはリチウムイオンキャパシタ11から電力系統1への放電を開始し、放電開始時刻を記憶部23に記録する。
充放電制御部21は、周波数検出器7により検出される電力系統1の周波数が許容変動範囲内に戻ったら、リチウムイオンキャパシタ11への充電あるいはリチウムイオンキャパシタ11からの放電を停止させる。
充放電制御部21は、周波数検出器7により検出される電力系統1の周波数が許容範囲内に戻らないうちに所定時間TB(短期変動時間)が経過したら、鉛蓄電池12の充電あるいは放電を開始する。
図4は、リチウムイオンキャパシタ11用の電力変換部9の入出力電力と、鉛蓄電池12用の電力変換部10の入出力電力との関係を示すグラフである。
曲線W1はリチウムイオンキャパシタ11の充放電電力を示しており、曲線W2は鉛蓄電池12の充放電電力を示し、曲線W3はリチウムイオンキャパシタ11と鉛蓄電池12の充放電電力の合成電力を示している。
充放電制御部21は、まずリチウムイオンキャパシタ11の充放電を先に開始し、鉛蓄電池12の充放電を後から開始する。その際、充放電制御部21は、キャパシタ装置4の容量を超えて蓄電装置5の充放電が必要になる時刻T1までに、鉛蓄電池12の充電あるいは放電する電力が電力系統1の増加あるいは減少を抑制できる電力値になるように、鉛蓄電池12の充放電を開始させる。その鉛蓄電池12の充放電の開始時刻がTBである。
また、充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電を開始してから時間TBが経過する前に、リチウムイオンキャパシタ11の蓄電量が上限あるいは下限に達した場合にも、鉛蓄電池12の充電あるいは放電を開始する。本実施例ではこの上限および下限が蓄電量閾値となる。
本実施例によれば、鉛蓄電池12の充放電を開始する前に電力系統1の電力変動が収まれば、つまり周波数が許容範囲に戻れば、鉛蓄電池12の充放電は行われないので、鉛蓄電池12のみの蓄電システムよりも鉛蓄電池12の充放電の回数が少なくなり、鉛蓄電池の寿命が延びることになる。リチウムイオンキャパシタ11は数万回程度の充放電が可能であるのに対して、鉛蓄電池12は数百~数千回程度しか充放電できないため、リチウムイオンキャパシタ11の充放電回数に対して鉛蓄電池12の充放電回数が少なくなるように制御を行うことで系統安定化システム3を長寿命化することができる。
図5は、実施例1における充放電制御部21が鉛蓄電池12の充放電を開始するタイミングを制御するフローチャートの一例である。
充放電制御部21は、まずステップS1で、リチウムイオンキャパシタ(LiC)11の充電あるいは放電を開始しているか否か判定する。充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電を開始するとき、充電あるいは放電を開始したという状態ことを記憶部23に記録するので、記憶部23から状態を読み出すことにより、充電あるいは放電が開始されていることを判断することができる。
充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電が開始していればステップS20へ進み、リチウムイオンキャパシタ11の充放電が開始していなければステップS1へ進む。
ステップS20では、充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11が充電あるいは放電を開始してからの経過時間が、予め設定された時間TBを超えたか否か判定する。なお、時間TBは、例えば給電設備を統括管理する中央給電指令所13から系統安定化システム3の充放電制御部21に通知され、充放電制御部21が記憶部23に格納しておくことにすればよい。
充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電を開始してから時間TBが経過していればステップS6に進み、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電を開始してから時間TBが経過していなければステップS3に進む。
ステップS6では、充放電制御部21は鉛蓄電池12の充電あるいは放電を開始する。
ステップS3では、充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電が停止しているのかを判定する。充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の充放電が停止しているならばステップS1へ進み、リチウムイオンキャパシタ11の充放電が停止していなければステップS4へ進む。
ステップS4では、充放電制御部21は、電力検出器8によりリチウムイオンキャパシタ11の電圧を測定し、リチウムイオンキャパシタ11に蓄積されている電力エネルギーの量(蓄電残量;SOC(State of charge))を算出し、ステップS5へ進む。リチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量の算出法としては、電力検出器8で検出される、リチウムイオンキャパシタ11に流れた電力量を充放電制御部21が積算してもよく、あるいはリチウムイオンキャパシタ11または電力変換部9が蓄電残量を測定して充放電制御部21に通知することにしてもよい。
ステップS5では、充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量がリチウムイオンキャパシタ11の蓄電量の上限値または下限値に達しているかを判定する。ここでいう上限値はリチウムイオンキャパシタ11がそこまで充電できるという蓄電量の上限であり、下限値はリチウムイオンキャパシタ11がそこまで放電できるという蓄電量の下限値である。
充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量が上限値あるいは下限値に達していれば鉛蓄電池12の充放電を開始し、上限値あるいは下限値に達していなければステップS20へ進む。
実施例2の系統安定化システム3の構成は、図2に示した実施例1のものと同じである。ただし、実施例2では充放電制御部21の動作が実施例1と異なる。実施例2では、充放電制御部21はリチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量が上方あるいは下方の設定値に達したら鉛蓄電池12の充電あるいは放電を開始する。本実施例では、この上方あるいは下方の設定値が蓄電量閾値となる。
図6は、実施例2における充放電制御部21が鉛蓄電池12の充放電を開始するタイミングを制御するフローチャートの一例である。
充放電制御部21は、まずステップS1で、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電を開始しているか否か判定する。
充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電が開始していればステップS21へ進み、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電が開始していなければステップS1へ進む。
ステップS21では、充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量が、予め設定された上方あるいは下方の設定値に達したか否か判定する。これらの設定値は例えば中央給電指令所13から充放電制御部21に通知され、充放電制御部21が記憶部23に予め格納しておくことにすればよい。
充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量が上方あるいは下方の設定値に達していたらステップS6に進み、蓄電残量が上方あるいは下方の設定値に達していなければステップS3へ進む。
ステップS6では、充放電制御部21は、鉛蓄電池12の充電あるいは放電を開始する。
ステップS3では、充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11が充電あるいは放電を停止しているか否か判定する。充放電制御部21はリチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電が停止したならばステップS1へ進み、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電が停止していなければステップS21へ進む。
実施例3の系統安定化システム3の構成は、図2に示した実施例1のものと同じである。ただし、実施例3では充放電制御部21の動作が実施例1と異なる。実施例3では、充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量が上限値あるいは下限値に達するときに、鉛蓄電池12の充放電する電力が電力系統1の電力変動を抑制できる電力に達するように、鉛蓄電池12の充電あるいは放電を開始する。本実施例では、この上限値および下限値が蓄電量閾値となる。すなわち、充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量が蓄電量閾値に達するまでの時間が、鉛蓄電池12の充電あるいは放電を開始した場合にその充電あるいは放電する電力が電力系統1の電力の変動を抑制できる電力に達するまでの時間以下になったら、鉛蓄電池12の充電あるいは放電を開始させる。
電力系統1の電力変動を抑制できる電力の値は、予め設定された電力値としてもよく、あるいは電力系統1の電力の測定値から算出することにしてもよい。再生可能エネルギー発電設備2の発電特性から電力系統1の変動中の電力値が想定できる。電力系統1の変動しているときの電力のピーク値あるいは平均値を統計的に求めて、その所望電力からの変動量を、電力系統1の電力変動を抑制できる電力値として設定すればよい。あるいは、変動中の電力系統1の電力を測定し、当該変動中の電力の平均値、ピーク値、あるいは最新値を求め、その所望電力からの変動量を、電力系統1の電力変動を抑制できる電力量として設定してもよい。
図7は、実施例3における充放電制御部21が鉛蓄電池12の充放電を開始するタイミングを制御するフローチャートの一例である。
充放電制御部21は、まずステップS1で、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電を開始しているか否か判定する。
充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電が開始していればステップS4へ進み、リチウムイオンキャパシタ11の充電あるいは放電が開始していなければステップS1へ進む。
ステップS4では、充放電制御部21は、電力検出器8で測定されるリチウムイオンキャパシタ11の電圧を利用して、リチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量(SOC)を演算し、ステップS220へ進む。
ステップS220では、充放電制御部21は、ステップS4で算出したリチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量と、電力検出器8によって検出される、リチウムイオンキャパシタ11が充放電している電力値とに基づいて、リチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量が、予め設定された上限値あるいは下限値に達するまでの時間(キャパシタ上下限値到達時間)TLを算出し、ステップS221へ進む。
例えば、算出された蓄電残量と、リチウムイオンキャパシタ11が充放電している電力値とに基づいて、リチウムイオンキャパシタ11の蓄電残量の変化を近似する近似関数を求め、その近似関数から蓄電残量が上限値あるいは下限値に達するまでの時間を算出すればよい。例えば、リチウムイオンキャパシタ11が充放電している電力が一定であれば、蓄電残量の変化は一次関数で近似することができる。
ステップS221では、充放電制御部21は、ステップS220で算出したキャパシタ上下限値到達時間TLと、鉛蓄電池12の電力が電力系統1の電力変動を抑制できるようになるまでの時間(蓄電池立ち上がり時間)とを比較する。
充放電制御部21は、上下限値到達時間TLが蓄電池立ち上がり時間以下であれば鉛蓄電池12の充電あるいは放電を開始し、上下限値到達時間TLが蓄電池立ち上がり時間以下でなければステップS3へ進む。
ステップS3では、充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11が充放電が停止しているか否か判定する。充放電制御部21は、リチウムイオンキャパシタ11の充放電が停止していればステップS1に進み、リチウムイオンキャパシタ11の充放電が停止していなければステップS4に進む。
実施例4の系統安定化システムは、蓄電装置5および制御装置6の構成および動作が、図2に示した実施例1のものと異なる。本実施例では、鉛蓄電池が複数あり、それらが、上述の実施例と同様に電力系統1の電力変動を抑制する用途の蓄電池(系統変動抑制蓄電池)と、電力を貯蔵して負荷による電力消費を相殺する用途の蓄電池(負荷使用相殺蓄電池)とに使い分けられる。
図8は、実施例4の系統安定化システムの構成を示すブロック図である。
本実施例による系統安定化システム3は、キャパシタ装置4、蓄電装置5、制御装置6、周波数検出器7、および電力検出器8を有している。キャパシタ装置4はリチウムイオンキャパシタ11および電力変換部9を有している。蓄電装置5は鉛蓄電池12a~12c、切替器32a~32c、および電力変換部10,31を有している。制御装置6は充放電制御部21、運用法制御部22、および記憶部23を有している。
上述のとおり、本実施例による系統安定化システム3では、蓄電装置5に電力変換部10、31が2つあり、鉛蓄電池12a~12cが3つある。鉛蓄電池12a~12cは切替器32a~32cにそれぞれ接続されている。電力変換部10、31は電力系統1に接続されている。電力変換部10は、電力系統1の電力変動を抑制するための鉛蓄電池を充放電するために用いられる。電力変換部31は、電力を貯蔵し、負荷による電力消費を相殺するための鉛蓄電池を充放電するのに用いられる。
切替器32a~32cのスイッチングによって、鉛蓄電池12a~12cのそれぞれを電力変換部10に接続するか電力変換部31に接続するかを選択することができる。切替器32a~32cは制御装置6の運用法制御部22によって制御される。本実施例では、運用法制御部22は、鉛蓄電池12a~12cのうちいずれか一つを電力変換部10に接続し、他の2つのを電力変換部31に接続する。
また、図8における、その他の各部は、図2に示した実施例1において同一の符号が付された各部と同様の機能を有する。
図9は、電力系統1の短周期変動と負荷による電力消費の変動の様子を例示した図である。図9には、電力系統1の電力(曲線K1)と、負荷による消費電力(曲線D1)が示されている。
電力系統に接続された負荷には、曲線D1に示すように、使用電力が下がる時間帯TH1と使用電力が上がる時間帯TJ1とがある。本実施例の系統安定化システム3は、負荷による電力使用が下がる時間TH1帯に電力系統1から充電して鉛蓄電池に電力を貯蔵し、負荷による電力使用が上がる時間帯TH1に鉛蓄電池から電力系統1に放電することで、電力系統1のピークシフトを行う。
電力系統1の電力変動(電力系統1の短周期の変動)を抑制するために用いられる電力変換部10に接続された鉛蓄電池は、充放電制御部21からの制御に従った充放電によって電力系統1の電力の変動を抑制する。一方、電力の貯蔵に用いられる電力変換部31に接続された鉛蓄電池は、充放電制御部21からの制御に従った充放電によって電力の貯蔵と放出を行い、電力系統1における負荷による電力消費を相殺する。
充放電制御部21の電力系統1の電力変動の抑制に関する制御は、上述した実施例1~3のいずれかと同様の制御でよい。一方、充放電制御部21の負荷による電力消費を相殺する制御は、例えば、統計によって取得した負荷による電力消費の変動を示す消費電力推移データを予め記憶部23に記録しておき、消費電力推移データが示す電力消費の変動を相殺するように鉛蓄電池を充放電すればよい。また、充放電制御部21は、鉛蓄電池12a~12cの制御に伴い、鉛蓄電池12a~12cのそれぞれの充放電回数を記憶部23に記録する。ここでは一例として充電回数と放電回数の和を充放電回数とする。また充電と放電を対として、充電と放電の対の発生回数を充放電回数としてもよい。
運用法制御部22は、充放電制御部21が記憶部23に記録した各鉛蓄電池12a~12cの充放電回数を読み出し、充放電回数が最も少ない鉛蓄電池を短周期変動抑制用として電力変換部10に接続し、残りの鉛蓄電池を電力貯蔵用として電力変換部31に接続するように、切替器32a~32cを制御する。運用法制御部22は、例えば、この制御を定期的に行うことにしてもよい。
本実施例によれば電力系統1の短周期変動の抑制と電力貯蔵の両方を行うことができる。また、その際に、短周期変動の抑制と電力貯蔵に用いられる鉛蓄電池12a~12cの充放電回数を平準化し、鉛蓄電池12a~12cを長寿命化し、その結果、系統安定化システム3を長寿命化することができる。
図10は、実施例4において、運用法制御部22が鉛蓄電池12a~12cの電力の入出力先を決定する処理を示すフローチャートの一例である。
運用法制御部22は、まずステップR1において、鉛蓄電池12a~12cの中から充放電回数が最も少ない鉛蓄電池を決定し、ステップR2へ進む。
ステップR2では、運用法制御部22は、ステップR1で決定した、充放電回数が最小の鉛蓄電池を電力変換部10に接続し、その他の鉛蓄電池を電力変換部31に接続し、ステップR3へ進む。
ステップR3では、運用法制御部22は、ステップR1で充放電回数が最小として決定された鉛蓄電池(つまりステップR2で電力変換部10に接続された鉛蓄電池)の充放電回数が、他の鉛蓄電池の充放電回数の最小値に、予め設定された設定値を加算した値を超えているか否か判定する。
ステップR1で充放電回数が最小として決定された鉛蓄電池の充放電回数が、他の鉛蓄電池の充放電回数の最小値に、予め設定された設定値を加算した値を超えていれば、運用法制御部22はステップR1へ進み、超えていなければステップR3へ進む。
以上、本発明の各実施形態および実施例について説明したが、本発明はそれらに限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の一部として他の構成を追加したり、各実施例の一部の構成を削除したり、各実施例の一部を他の構成に置換したりすることが可能である。
また、上記の各部の構成、機能、処理などは、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各部の構成、機能、処理などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するソフトウェアプログラムを解釈し、実行することにより実現してもよい。各機能を実現するソフトウェアプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
また、各実施例の説明では制御線や情報線については説明上必要と考えられるものを図示している。必ずしも、本発明を適用した製品に設けられる全ての制御線や情報線を示すものではない。実際には殆ど全ての構成が制御線や情報線によって相互に接続されていると考えてもよい。