WO2012108424A1 - レクチン提示細胞、レクチンライブラリー、及びレクチンのスクリーニング方法 - Google Patents

レクチン提示細胞、レクチンライブラリー、及びレクチンのスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、特定の糖鎖に結合可能なレクチンを見出すために有用な改変レクチンライブラリー、それを構成する改変レクチン、及び改変レクチンライブラリーの製造方法を提供することを課題とする。本発明は、少なくとも、レクチンと、膜貫通ドメインと、前記レクチンが糖鎖と結合すると細胞内にシグナルを伝達するシグナル伝達モチーフを含むアンカードメインと、を含む融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターと、前記シグナル伝達モチーフを介して細胞内にシグナルが伝達されると発現するレポーター遺伝子と、を含むレクチン提示細胞、並びに当該レクチン提示細胞を含むライブラリー等を提供する。

Description

レクチン提示細胞、レクチンライブラリー、及びレクチンのスクリーニング方法
 本発明は、レクチン提示細胞、レクチンライブラリー、及びレクチンのスクリーニング方法等に関する。
 近年、様々な疾患の検査や診断に利用されるバイオマーカーとして、糖鎖が注目されている。例えば正常な細胞と癌化した細胞では、細胞表面のタンパク質に結合している糖鎖の構造が異なることが知られている。現在行われている血清マーカーを用いたがんの診断では、その約半数ががん特異的な糖鎖を検出している。
 糖鎖構造の検出には、抗体やレクチンが用いられる。しかしながら、糖鎖はもともと生体内に存在することから、免疫寛容により抗体作製に限界がある。また、既存の抗糖鎖抗体はIgMが大部分を占め、抗体産生の過程で親和性の成熟が起こらないため、糖鎖との結合が物理化学的に弱い。
 一方、レクチンは、糖鎖構造を認識して結合するタンパク質の総称であり、あらゆる生物が有するが、特にマメ科の植物から多くのレクチンが発見されている。例えば、タチナタ豆から得られるコンカナバリンAは、N結合型の高マンノース型糖鎖をよく認識し、インゲン豆に含まれるレクチンであるPHA(phytohemagglutinin)は、N結合型複合糖鎖に結合する。フジの種子から得られるWFAは末端にGalNAcβ1-4GlcNAc構造を持つN結合型糖鎖を認識し、レンズ豆から得られるレンズ豆レクチンは、マンノースに親和性を持つが、N結合型糖鎖の還元末端のGlcNAcにα1-6結合したフコースがあると、結合がきわめて高くなる。
 このように、所定の構造を有する糖鎖を検出するためにはレクチンが有用である。
 最近、レクチンマイクロアレイが開発された(非特許文献1、2参照)。レクチンマイクロアレイは、特異性が異なる既知のレクチン数十種類を基板上に固定したものであり、試料と接触させることにより、試料に含まれる糖鎖プロファイリングを簡単に行うことができる。
 しかしながら、レクチンは、多くの場合一種類の植物に一種類しか含まれておらず、また、抗体のように遺伝子の再構成や体細胞変異によって多様性が生じることがない。
 一方で糖鎖は極めて構造の多様性に富んでいるので、既知のレクチンだけでは、十分に糖鎖プロファイリングを行うことができるレクチンアレイは得られない。
 特定の標的分子を認識する抗体が必要な場合は、ファージディスプレイを用いて多様な抗体を表面に提示するファージのライブラリーを作製し、標的分子に親和性を有する抗体をスクリーニングすることができる。
 しかしながら、ファージディスプレイの場合、ファージ表面に提示できるのは10数アミノ酸の小さなペプチドのみであるため、糖鎖に強く結合できるレクチンを同じ方法で得るのは困難である。また、ファージディスプレイは、遺伝子欠損が起こりやすいという問題もある。
Kuno, A., et al., Nat Methods, 2005. 2(11): p. 851-6. Uchiyama, N., et al., Methods Enzymol, 2006. 415: p. 341-51.
 本発明は、特定の糖鎖に結合可能なレクチンを見出すために有用な改変レクチンライブラリー、それを構成する改変レクチン、及び改変レクチンライブラリーの製造方法を提供することを課題とする。
 本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、所定のシグナルが伝達されると発現するレポーター遺伝子を含む哺乳動物細胞を、少なくともレクチン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達モチーフを含む融合タンパク質を発現する発現ベクターで形質転換したところ、分泌型の可溶性タンパク質であるレクチンを細胞表面に提示するレポーター細胞が得られることを見出した。
 また、レクチン提示細胞を作製する際、種々の改変レクチンをコードする核酸を含むベクターを用いることにより、改変レクチンライブラリーを得られること、及び、改変レクチンライブラリーを構成する改変レクチンとして、ループC領域のカルシウム結合性アミノ酸部位の金属結合性を保存し、その前後のアミノ酸に改変を加えたものを用いると、種々の糖鎖に親和性を有するライブラリーに好適な改変レクチンが得られることを見出し、こうして得られた改変レクチンライブラリーを用いて、特定の糖鎖に結合能を有するレクチンをスクリーニングする方法を確立した。
 さらに、このスクリーニング方法により、改変レクチンライブラリーの中から、特定の糖鎖構造に特異的に結合する新規なレクチンを見出し、これらのレクチンを用いて特定の糖鎖構造を検出できることを確認し、本発明を完成するに至った。
 即ち、本発明は
〔1〕少なくとも、レクチンと、膜貫通ドメインと、前記レクチンが糖鎖と結合すると細胞内にシグナルを伝達するシグナル伝達モチーフを含むアンカードメインと、を含む融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターと、
 前記シグナル伝達モチーフを介して細胞内にシグナルが伝達されると発現するレポーター遺伝子と、を含むレクチン提示細胞;
〔2〕前記発現ベクターが、レクチンのN末端側に位置するシグナル配列、及び/又はレクチンと膜貫通ドメインとの間に位置するStalk配列をコードする核酸をさらに含む、上記〔1〕に記載のレクチン提示細胞;
〔3〕前記シグナル配列が、CD8αであり、前記膜貫通ドメインが、CD8αの膜貫通ドメインであり、前記アンカードメインが、CD3ζであり、前記レポーター遺伝子がIL-2プロモーターに作動可能に連結されている、上記〔2〕に記載のレクチン提示細胞;
〔4〕前記レポーター遺伝子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子である、上記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載のレクチン提示細胞;
〔5〕上記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載のレクチン提示細胞を2以上含み、各細胞が異なるレクチンを発現する、レクチンライブラリー;
〔6〕前記レクチンが、改変レクチンである、上記〔5〕に記載のレクチンライブラリー;
〔7〕前記改変レクチンがマメ化レクチンであって、天然型レクチンにおいてループCのカルシウム結合アスパラギンである残基が、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、及びグルタミン酸からなる群より選択され、且つ、該残基のN末端側4残基及びC末端側4残基の領域に少なくとも1つ、天然型レクチンとは異なるアミノ酸残基を含む、上記〔6〕記載のレクチンライブラリー;
〔8〕前記改変レクチンが、天然型レクチンのループCよりも長いループCを有する、上記〔6〕又は〔7〕に記載のレクチンライブラリー;
〔9〕前記改変レクチンが、ループCに、以下の[1]~[6]からなる群より選択される少なくとも1のアミノ酸配列を含む、上記〔6〕に記載のレクチンライブラリー:
[1] VEFDXXXNXXXXDP;
[2] VEFDXXXZXXXXDP;
[3] VEFDXXXXBXXXXDP;
[4] VEFDXXXXXBXXXXDP;
[5] VEFDXXXXXXBXXXXDP;及び
[6] VEFDXXXXXXXBXXXXDP
〔但し、[1]は野生型PNAの127番目のアスパラギン酸(127N)を保存し、124~126、128~131番目のアミノ酸にランダム変異を導入したものを意味し、[2]はライブラリー[1]の127NをZに変化させたものを意味し、ライブラリー[3]~[6]は、127NをBに変化させ、さらに127Nより5’末側にアミノ酸のランダム変異導入部位を1~4アミノ酸残基分拡張したものを意味する。式中、Xは任意のアミノ酸を示し、ZはAsp、Glu、Gln、またはHisを示し、BはHis、Asp、Glu、Asn、Lys、またはGlnを示す。〕;
〔10〕前記改変レクチンが、ループDに、以下の[1]~[4]からなる群より選択される少なくとも1のアミノ酸配列を含む、上記〔6〕に記載のレクチンライブラリー:
[1] SGXXXXXXIHLIR;
[2] SGXXXXXXXIHLIR;
[3] SGXXXXXXXXIHLIR;及び
[4] SXXXXXXIHLIR;
〔式中、Xは任意のアミノ酸を示す。〕;
〔11〕前記レクチン提示細胞が、抗生物質耐性遺伝子を発現する、上記〔5〕から〔10〕のいずれか1項に記載のレクチンライブラリー;
〔12〕改変レクチンライブラリーを製造する方法であって:
 2以上のレトロウイルスベクターを含むレトロウイルスベクターライブラリーであって、各レトロウイルスベクターが、それぞれ異なる改変レクチンと、膜貫通ドメインと、前記レクチンが糖鎖と結合すると細胞内にシグナルを伝達するシグナル伝達モチーフを含むアンカードメインと、を含む融合タンパク質をコードする核酸、及びパッケージングシグナルを含む、レトロウイルスベクターライブラリーを調製する工程と;
 前記レトロウイルスベクターライブラリーで、パッケージング細胞を形質転換する工程と;
 前記パッケージング細胞を培養して、レクチンウイルスライブラリーを産生する工程と;
 前記レクチンウイルスライブラリーを、前記シグナル伝達モチーフを介して細胞内にシグナルが伝達されるとレポーター遺伝子が発現するように構成されたレポーター細胞に感染させる工程と;
を含む方法;
〔13〕前記レトロウイルスベクターが、レクチンのN末端側に位置するシグナル配列、及び/又はレクチンと膜貫通ドメインとの間に位置するStalk配列をコードする核酸をさらに含む、上記〔12〕に記載の方法;
〔14〕前記シグナル配列が、CD8αであり、前記膜貫通ドメインが、CD8αの膜貫通ドメインであり、前記シグナル伝達モチーフが、CD3ζであり、前記レポーター遺伝子がIL-2プロモーターに作動可能に連結されている、上記〔13〕に記載の方法;
〔15〕前記レポーター遺伝子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子である、上記〔12〕から〔14〕のいずれか1項に記載の方法;
〔16〕前記レポーター細胞が、2B4細胞、又はBWZ.36細胞である、上記〔12〕から〔14〕のいずれか1項に記載の方法;
〔17〕上記〔5〕から〔11〕のいずれか1項に記載のレクチンライブラリーを使用して、糖鎖結合能を有するレクチンをスクリーニングする方法であって、
 糖鎖を固相担体に固定する工程と、
 前記糖鎖と前記レクチンライブラリーとを接触させてインキュベートする工程と、
 前記レポーター遺伝子の発現を検出し、レポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞を選択するする工程と、を含む方法;
〔18〕前記選択されたレクチン提示細胞を培養して増殖させ、固相担体に固定された糖鎖と接触させてインキュベートし、レポーター遺伝子の発現を検出し、レポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞を選択する工程、をさらに1回以上繰り返し、糖鎖結合能を有するレクチン提示細胞を濃縮する工程をさらに含む、上記〔17〕に記載の方法;
〔19〕前記レポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞から、レクチンをコードする核酸を抽出し、当該核酸の塩基配列を解析する工程をさらに含む、上記〔17〕又は〔18〕に記載の方法;
〔20〕上記〔11〕に記載のレクチンライブラリーを使用して、がん細胞表面の糖鎖に結合能を有するレクチンをスクリーニングする方法であって、
 がん細胞を固相担体に固定する工程と、
 前記がん細胞と前記レクチンライブラリーとを接触させ、インキュベートする工程と、
 前記レポーター遺伝子の発現を検出する工程と、
 前記レポーター遺伝子が発現している場合、抗生物質を加えてがん細胞を死滅させ、レクチン提示細胞を回収する工程と、
を含む方法;
〔21〕前記回収されたレクチン提示細胞を培養して増殖させ、固相担体に固定されたがん細胞と接触させてインキュベートし、レポーター遺伝子の発現を検出し、レポーター遺伝子が発現している場合、抗生物質を加えてがん細胞を死滅させ、レクチン提示細胞を回収する工程、をさらに1回以上繰り返し、がん細胞表面の糖鎖に結合能を有するレクチン提示細胞を濃縮する工程をさらに含む、上記〔20〕に記載の方法;
〔22〕前記レポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞から、レクチンをコードする核酸を抽出し、当該核酸の塩基配列を解析する工程をさらに含む、上記〔20〕又は〔21〕に記載の方法;
〔23〕ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にLeu-Trp-Glnが結合し、C末端側にArg-Glu-Phe-Cysが結合している、改変マメ科レクチン;
〔24〕ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にThr-Trp-Proが結合し、C末端側にArg-Ser-Tyr-Lysが結合している、改変マメ科レクチン;
〔25〕ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にLys-Trp-Hisが結合し、C末端側にSer-Phe-Tyr-Aspが結合している、改変マメ科レクチン;
〔26〕ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側に4アミノ酸挿入され、該アスパラギンのN末端側にVal-Asp-Leu-Gln-Val-Tyr-Ileが結合し、C末端側にGly-Ser-Leu-Asnが結合している、改変マメ科レクチン;
〔27〕ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にArg-Leu-Argが結合し、C末端側にTyr-Ile-Tyr-Argが結合している、改変マメ科レクチン;
〔28〕上記〔24〕に記載の改変マメ科レクチンを含む扁平上皮がんの診断薬;
〔29〕上記〔26〕に記載の改変マメ科レクチンを含む扁平上皮がん、胃がん、膵がん、又はメラノーマの診断薬;
〔30〕上記〔23〕から〔27〕のいずれか1項に記載の改変マメ科レクチンを固相単体に固定したレクチンアレイ;
〔31〕検出可能に標識した上記〔23〕から〔27〕のいずれか1項に記載の改変マメ科レクチンを含む糖鎖検出用キット;及び
〔32〕上記〔23〕から〔27〕のいずれか1項に記載の改変マメ科レクチンとFcとの融合タンパク質、及び検出可能に標識した抗Fc抗体を含む、糖鎖検出用キット、
に関する。
 本発明によれば、レクチン提示細胞を含むレクチンライブラリーを用いて、例えばがん細胞表面の糖鎖等、特定の糖鎖に結合するレクチンをスクリーニングすることができる。
 また、改変レクチン提示細胞を用いることにより、糖鎖構造の多様性に対応できる、多様性に富んだレクチンライブラリーを得ることができる。
 さらに、レクチンライブラリーを用いたスクリーニングにより、特定の糖鎖に結合することが明らかとなった改変レクチン提示細胞から、改変レクチンをコードする核酸を抽出して解析することによって、当該改変レクチンのアミノ酸配列や遺伝子配列の情報を得ることができる。
 また、本発明に係る改変レクチンライブラリー及びスクリーニング方法を用いて見出された新規なレクチンは、特定の糖鎖を認識するものであり、検査や診断等に有用である。
図1Aは、改変レクチンライブラリーコンストラクトの作製手順(前半)の概要を示す。 図1Bは、改変レクチンライブラリーコンストラクトの作製手順(後半)の概要を示す。 図2(A)は、各種マメ科レクチンのループCのアミノ酸配列と糖結合特異性を示し、図2(B)は、改変レクチンのループCのアミノ酸配列を示す。 図3は、in vitroパニングの概要を示す。 図4Aは、G418存在下での2B4細胞及びA549細胞の生存率を示す。 図4Bは、in vitroパニングの結果を示す。 図5は、各クローンの2B4細胞の顕微鏡写真を示す。 図6は、各クローンに含まれた改変レクチンの配列及び頻度を示す。 図7は、薬剤セレクションによるmyc発現の変化を示す。 図8は、各種のヒト由来がん細胞株と改変レクチン発現レポーター細胞との共培養の結果を示す。 図9は、各種のヒト由来がん細胞株とPNA発現レポーター細胞又は改変レクチン発現レポーター細胞との共培養の結果を示す。 図10は、改変レクチンとヒト由来がん細胞株との結合性を測定した結果を示す。 図10は、改変レクチンとヒト由来がん細胞株との結合性を測定した結果を示す。 図12は、糖鎖合成阻害剤処理による細胞表面糖鎖の変化を示す概念図である。 図13は、クローンa発現レポーター細胞と結合性のみられた5種類のヒトがん細胞に対して、糖鎖合成阻害剤を処理し、GFPの産生に対する影響を調べた結果を示す。 図14は、改変レクチンライブラリーを6種類の糖鎖ポリマーを用いて、セルソーターでスクリーニングした結果を示す。 図15は、改変レクチンライブラリーを6種類の糖鎖ポリマーで3回スクリーニングした後のレポーター細胞の濃縮率を示す。縦軸は、図7のフローサイトメトリーによるソート前の陽性細胞の割合を1%未満と表したときの割合を示す。 図16は、クローン化した12種類の改変レクチン発現レポーター細胞と糖鎖ポリマーとのレポーターアッセイの結果を示す。 図17は、改変レクチン発現レポーター細胞を、LeC抗原(Galβ1-3GlcNAcβ)を用いてスクリーニングし、クローン化した細胞のレポーターアッセイの結果を示す。 図18は、改変レクチン発現レポーター細胞を、血液型B型抗原の先端部位(Galα1-3Galβ)を用いてスクリーニングし、クローン化した細胞のレポーターアッセイの結果を示す。 図19は、改変レクチン発現レポーター細胞を、GlcNAcβ1-GalNAcαを用いてスクリーニングし、クローン化した細胞のレポーターアッセイの結果を示す。 図20は、限界希釈によりクローン化されたレポーター細胞から抽出したゲノムに挿入されていた改変レクチンの変異挿入部位のアミノ酸配列とその数を示す。Xはストップコドンを示し、1塩基deletionは変異挿入部位が1塩基欠失していたものを示し、フレームシフト配列は変異挿入部に余分な配列が付加されてフレームシフトしたものを示す。 図21は、18種類の改変レクチンのモノクローナルレポーター細胞とそのアミノ酸配列、糖結合活性の有無、由来のクローン名をまとめたものである。α-mycは、抗myc抗体による刺激でレポーター細胞にGFPが発現したしたか否かを示す。 図22は、18種類の改変レクチンモノクローナルレポーター細胞と各種糖鎖とのレポーターアッセイを示す。α-mycは、糖鎖の代わりに抗myc抗体を固相化したプレートで共培養し、解析したもので、レポーター細胞表面のレクチン発現率を示す。 図23は、改変ライブラリーの一態様を示す。Xはランダムなアミノ酸を示し、Zは、D、E、Q又はHを示し、Bは、H、D、E、N、K又はQを示す。 図24は、PNA変異体ライブラリー(1)を用いたスクリーニング後の濃縮率を示す。Aは、PNA変異体ライブラリー(1)発現レポーター細胞を、各糖鎖を固定したプレートで培養し、セルソーターを用いて3回スクリーニングし、プールしておいた細胞を用いてレポーターアッセイを行った結果を示す。Bは、スクリーニング前の陽性細胞の割合を0.3%としたときの、細胞の割合を示す。 図25は、図24及び26の補助データである。各糖鎖に結合しうるレクチン発現レポーター細胞を3回セルソーターで濃縮し、糖鎖の固定されていないプレート上で培養し、レポーターアッセイを行った結果を示す。 図26は、PNA変異体ライブラリー(2)~(5)mixを用いたスクリーニング後の濃縮率を示す。Aは、PNA変異体ライブラリー(2)~(5)mix発現レポーター細胞を、各糖鎖を固定したプレートで培養し、セルソーターを用いて3回スクリーニングし、プールしておいた細胞を用いてレポーターアッセイを行った結果を示す。Bは、スクリーニング前の陽性細胞の割合を1%としたときの、細胞の割合を示す。 図27は、改変レクチン発現2H10細胞の薬剤処理の結果を示す。シスリガンドを見積もるために、細胞表面発現糖鎖を改変する薬剤処理を行い、細胞のGFP発現を比較した。A:フローサイトメトリー。B:平均蛍光強度(MFI)の値。C:シスリガンドの概念図(細胞表面に発現する糖鎖と、レポーター細胞に発現するレクチンが結合する)。 図28は、改変レクチンFc融合タンパク質の概念図である。A:発現用プラスミド。B:模式図。 図29は、改変レクチンFc融合タンパク質の発現を確認したウェスタブロッティングの結果である。Rは、reducing condition、NRは、non-reducing conditionを示す。 図30は、PNAのアミノ酸配列及び塩基配列を示す。 図31は、改変レクチンFc融合タンパク質とヒトがん細胞株との結合試験の結果を示す。 図32は、改変レクチン画分を用いた赤血球凝集試験の結果を示す。 図33は、精製した改変レクチンA、B及びCのSDS電気泳動の結果を示す。 図34は、レポーター細胞上の改変レクチンの発現をフローサイトメトリーで確認した結果を示す。 図35は、レポーターアッセイによるスクリーニング効率の確認をPNAをポジティブコントロールとして測定した結果を示す。 図36は、ループC改変レクチンライブラリーをα-Mannoseを固定した固相担体でスクリーニングし、α-Mannoseを固定した固相担体でスクリーニング効率を確認した結果を示す。 図37は、ループC改変レクチンライブラリーをα-Mannoseを固定した固相担体でスクリーニングし、抗Myc抗体を固定したプレートでスクリーニング効率を確認した結果を示す。 図38は、ループC改変レクチンライブラリーをα-Fucoseを固定したプレートでスクリーニングし、α-Fucoseを固定したプレートでスクリーニング効率を確認した結果を示す。 図39は、ループC改変レクチンライブラリーをα-Fucoseを固定したプレートでスクリーニングし、抗Myc抗体を固定したプレートでスクリーニング効率を確認した36-39)結果を示す。 図40は図38で濃縮の確認できた細胞集団をクローン化し、得られた14種類の細胞を、α-Fucoseを固定したプレートを用いてスクリーニングした結果を示す。 図41は、pBS-インサート及びpMXx-PNAのEcoRI・XhoI処理後のアガロースゲル電気泳動図である。 図42は、pMXs付け替え後コロニーPCRアガロースゲル電気泳動図である。 図43は、α-Fuc、Galβ1-3GalNAc、抗α-myc抗体のいずれかを固定したプレートを用いてKyoC18-aのレポーターアッセイを行った結果を示す。 図44は、α-Fuc、Galβ1-3GalNAc、抗α-myc抗体のいずれかを固定したプレートを用いてKyoC18-bのレポーターアッセイを行った結果を示す。 図45は、α-Fuc、Galβ1-3GalNAc、抗α-myc抗体のいずれかを固定したプレートを用いてKyoC18-cのレポーターアッセイを行った結果を示す。 図46は、ループD改変ライブラリー作製におけるNotI処理後のインサートのアガロースゲル電気泳動図である。 図47は、ループD改変ライブラリー作製における制限酵素処理の概要を示す概念図である。 図48は、ループD改変ライブラリー作製におけるインサート濃度(左)及びベクター濃度(右)のチェックのために行ったゲル電気泳動の結果を示す。 図49は、ループD改変ライブラリー作製におけるコロニーPCRの結果を示す。 図50は、コロニーPCRの結果、ポジティブであったものの配列解析の結果を示す。 図51は、3’側ライゲーション部位の配列解析の結果を示す。
(レクチン提示細胞)
 本明細書において「レクチン提示細胞」は、レクチンを細胞表面に提示する細胞をいい、少なくともレクチン、膜貫通ドメイン、及びアンカードメインを含む融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターと、レポーター遺伝子と、を含む。アンカードメインは、レクチンが糖鎖と結合すると細胞内にシグナルを伝達するシグナル伝達モチーフを含み、レポーター遺伝子は、当該シグナルが伝達されると発現する。
 レクチンは可溶性タンパク質であり、天然型レクチンは発現すると細胞外に分泌されるが、膜貫通ドメイン及びアンカードメインとの融合タンパク質として発現させることにより、細胞表面にレクチンを繋ぎとめることができる。
 膜貫通ドメインをコードする核酸は、公知の膜タンパク質の膜貫通ドメインをコードする核酸を用いることができ、特に限定されないが、例えばCD8αの膜貫通ドメインをコードする核酸を用いることができる。CD8αの膜貫通ドメインは、融合タンパク質を効率よく細胞表面に輸送する。
 アンカードメインは、シグナル伝達モチーフを含み、且つ、融合タンパク質を細胞表面に繋ぎとめることができる限り、どのような構造のものであってもよいが、例えば、20アミノ酸、好ましくは24アミノ酸以上のα-へリックス構造を含むドメインを用いることができる。
 シグナル伝達モチーフは、レクチンに糖鎖が結合すると細胞内にシグナルを伝達し、このシグナルを受けてレポーター遺伝子が発現する。従って、シグナル伝達モチーフは、レポーター遺伝子のプロモーターの種類に応じて選択しておく必要がある。例えば、シグナル伝達モチーフが、ITAM(Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motif)である場合、レクチンに糖鎖が結合するとITAMにZAP-70が結合し、転写因子NF-ATが活性化されるので、レポーター遺伝子のプロモーターをIL-2プロモーターにしておくことにより、NF-ATがIL-2プロモーターに結合してレポーター遺伝子の転写が開始される。
 シグナル伝達モチーフとしては、ITAMと同様にNF-ATを介してIL-2プロモーターにシグナルを伝達する高親和性IgE受容体γ鎖(FcεRIγ)領域、DAP12等も挙げられる。
 また、シグナル伝達モチーフとしては、NF-κBやSTATなどのシグナル伝達分子が結合する領域を用いることもできる。
 以上より、アンカードメインとしては、例えば、ITAMを含み、αへリックス構造をとるCD3ζを用いることができる。CD3ζは、局在シグナルを有しないという利点もある。
 上記発現ベクターは、さらに、レクチンのN末端側に位置するシグナル配列をコードする核酸を含んでもよい。シグナル配列を用いることで、細胞表面にレクチンが効率よく輸送される、発現したレクチンの安定性が向上する、転写効率や翻訳効率を高める等の効果を得ることができる。
 シグナル配列としては、CD8αを用いることができるが、これに限定されない。
 上記発現ベクターは、さらに、レクチンと膜貫通ドメインとの間に位置するStalk配列をコードする核酸を含んでもよい。Stalk配列を配置することにより、レクチンの空間的な自由度が大きくなり、糖鎖に結合しやすくなる。Stalk配列は、例えば20アミノ酸以上、30アミノ酸以上、40アミノ酸以上のペプチドとすることができる。
 発現ベクターは特に限定されず、ウイルスベクター、プラスミド等公知のものを使用することができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、EBウイルスベクター、パピローマウイルスベクター等を用いることができる。
 レクチン提示細胞は、哺乳動物細胞とすることが好ましい。哺乳動物細胞においては、正しくフォールディングしていないタンパク質は分解され、正しくフォールディングしたタンパク質のみが発現されるタンパク質の品質管理機構が備わっているので、正しくフォールディングした結合能を有するレクチンが発現され、細胞表面に提示される。また、細胞の種類も特に限定されないが、例えば、リンパ球系細胞、造血系細胞を用いることができる。
 レポーター遺伝子は、発現産物の検出が容易な公知の遺伝子を用いることができ、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、赤色蛍光タンパク質(RFP)、lacZ遺伝子(β-ガラクトシダーゼ遺伝子)、β-ラクタマーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子等が挙げられる。
 このようなレクチン提示細胞を用いれば、レクチンに糖鎖が結合したことを、レポーター遺伝子の発現産物を検出することによって確認し容易に選択することができる。そして、糖鎖に結合したレクチン提示細胞から、公知の方法に従ってレクチンをコードする核酸を抽出し、その配列を解析することにより、その糖鎖に結合するレクチンの遺伝子配列やアミノ酸配列を調べることができる。
(レクチンライブラリー)
 本明細書において「レクチンライブラリー」は、レクチン提示細胞を2以上含み、各レクチン提示細胞が異なるレクチンを発現するライブラリーをいう。
 また、各レクチン提示細胞は、1つのレクチンを表面に提示することが好ましいが、複数のレクチンを提示する細胞が含まれていてもよい。
 レクチンライブラリーにおいて、レクチン提示細胞が提示するレクチンは、改変レクチンとすることができる。
 本明細書において「改変レクチン」とは、人為的にアミノ酸配列に改変を加えたレクチンをいう。上述のとおり、天然のレクチンのみでは、多様性に富む糖鎖を検出するには不十分である。改変レクチンを用いることによって、糖鎖の多様性に対応可能なライブラリーを構成することができる。
 改変レクチンは、天然レクチンをスキャフォールドとし、糖鎖結合部位に改変を加えて得ることができる。
 骨格とする天然レクチンは、例えばマメ科レクチンとすることができる。マメ科レクチンは、レクチンの中でも最も大きなファミリーを形成しており、現在までに100種類以上のものが知られている。
 いずれも約260アミノ酸からなり、130-160位のアミノ酸残基に相当する領域に金属イオン結合部位を有し、ここにカルシウムとマンガンが1分子ずつ配位すると、糖結合部位が構築される。
 マメ化レクチンの糖結合部位は、ループA、ループB、ループC、ループDの4つの可変結合ループ(variable binding loop)を有する。ループA、ループB及びループDにはほとんどバリエーションがなく、ループCのみが多様性を有する。このことから、マメ科レクチンの糖認識ドメイン(Carbohydrate recognition domain; CRD)として、ループCとそこに含まれる金属イオン結合性アミノ酸が重要であることが示唆される。本発明の改変レクチンにおいて改変を加える領域は特に限定されないが、改変はこの領域(ループC)に加えてもよく、他のループであってもよい。
 ループCの金属イオン結合性アミノ酸は、例えば、ピーナツレクチン(PNA)であれば127位のアスパラギンであり、カルシウムイオンがこれに結合する。PNAのアミノ酸配列及び塩基配列を、図30に示す。また、PNAの糖鎖結合部位を構成する4つのループ領域のアミノ酸配列を下表に示す(J. Mol. Biol.259,281-296 (1996)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 従って、改変レクチンにおいても、ループCのカルシウムイオン結合性アミノ酸部位は、金属イオン結合性を有するアスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、及びグルタミン酸から選択されるアミノ酸とすることが好ましい。
 改変レクチンは、さらに、ループCのカルシウム結合性アミノ酸の周辺に、少なくとも一つ天然型レクチンとは異なるアミノ酸残基を含むことが好ましい。カルシウム結合性アミノ酸の周辺とは、例えば、カルシウム結合性アミノ酸のN末端側10アミノ酸残基、7アミノ酸残基、4アミノ酸残基、C末端側10アミノ酸残基、7アミノ酸残基、4アミノ酸残基等とすることができる。
 また、GlcNAcのようにアセチル化された嵩高い糖に親和性を有するレクチンを得るために、ループCに1以上のアミノ酸を挿入し、天然のループCより長くしてもよい。例えば、ループCのカルシウム結合性アミノ酸のN末端側又はC末端側に、1~5のアミノ酸残基を挿入してもよい。挿入するアミノ酸残基をランダムな配列とすることにより、さらに多様なレクチンを含むライブラリーとすることができる。
 即ち、改変レクチンとしては、ループCのカルシウム結合性アミノ酸の位置に、Asn、Asp、Gln、Gluのいずれかを有し、ループCに0~5アミノ酸残基が挿入され、挿入後のループCにおいて、カルシウム結合性アミノ酸のN末端側10アミノ酸残基、及びC末端側10アミノ酸残基の領域に天然のレクチンとは異なるアミノ酸を少なくとも1つ含むものが好ましい。
 従って、改変レクチンライブラリーは、上述したカルシウム結合性アミノ酸のN末端側10アミノ酸残基、及びC末端側10アミノ酸残基の領域を、ランダムな配列とした多数の改変レクチン提示細胞を含むものとすることができる。
 改変レクチンライブラリーの一態様は、ループCのカルシウム結合性アミノ酸の位置に、Asn、Asp、Gln、Gluのいずれかを有し、カルシウム結合性アミノ酸のN末端側に0~4アミノ酸を挿入し、カルシウム結合性アミノ酸のN末端側3~7アミノ酸、及びC末端側4アミノ酸をランダムな配列とした改変レクチン提示細胞を含むものが挙げられる。
 また、改変レクチンライブラリーは、例えばカルシウム結合性アミノ酸前後の配列を以下のような構成とすることができる。ライブラリーは、[1]~[6]のいずれか1種のみとしてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
[1] VEFDXXXNXXXXDP
[2] VEFDXXXZXXXXDP
[3] VEFDXXXXBXXXXDP
[4] VEFDXXXXXBXXXXDP
[5] VEFDXXXXXXBXXXXDP
[6] VEFDXXXXXXXBXXXXDP
 [1]は 野生型PNAの 127 番目のアスパラギン酸(127N)を保存し、124~126、 128~131 番目のアミノ酸にランダム変異を導入した。[2]はライブラリー[1]の 127N を Z に変化させた。ライブラリー[3]~[6]は、127N を B に変化させ、さらに127N より5’末側にアミノ酸のランダム変異導入部位を 1~4 アミノ酸残基分拡張したものである。N:Asn、X:任意のアミノ酸、Z:Asp or Glu or Gln or His、B:His or Asp or Glu or Asn or Lys or Glnを示す。
 また、ループD(SGSLGGRQIHLIR)に改変を加える場合、例えば、以下の[1]~[4]の少なくとも1つとすることができる。
[1] SGXXXXXXIHLIR;
[2] SGXXXXXXXIHLIR;
[3] SGXXXXXXXXIHLIR;及び
[4] SXXXXXXIHLIR;
〔式中、Xは任意のアミノ酸を示す。〕。
 改変レクチンライブラリーに含まれるレクチン提示細胞は、抗生物質耐性遺伝子を含むことも好ましい。レクチン提示細胞が抗生物質耐性遺伝子を有する場合、後述するように、細胞表面の糖鎖にレクチン提示細胞が結合したとき、対応する抗生物質を投与することにより、糖鎖を有する細胞を死滅させて、レクチン提示細胞のみを回収することが可能となる。
 抗生物質耐性遺伝子は、公知のものを使用することができ、例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子が挙げられる。
(改変レクチンライブラリーの製造方法)
 改変レクチンライブラリーは、上記構成を有する限りどのように作製したものであってもよいが、例えば、レトロウイルスベクターを使用した以下の方法で作製することができる。
 まず、レトロウイルスベクターライブラリーを調製する。レトロウイルスベクターライブラリーは、2以上のレトロウイルスベクターを含み、各レトロウイルスベクターは、それぞれ異なる改変レクチンと、膜貫通ドメインと、アンカードメインと、を含む融合タンパク質をコードする核酸、及び、パッケージングシグナルを含む。
 レトロウイルスベクターライブラリーに挿入する改変レクチンをコードする核酸は、ランダム変異を導入するプライマーを設計し、天然レクチンのDNAを鋳型としてPCRで増幅することによって得ることができる。天然レクチンのDNAを、変異を導入する位置で分け、変異を導入しない方は通常のプライマーでPCRを行って増幅し、変異を導入する方は、ランダムプライマーでPCRを行って増幅し、それぞれをウイルスベクターに挿入することにより、DNAの中央部に変異を導入することができる。
 レトロウイルスベクターは、さらにレクチンのN末端側に位置するシグナル配列をコードする核酸を含んでいてもよく、レクチンと膜貫通ドメインとの間に位置するStalk配列をコードする核酸を含んでいてもよい。
 膜貫通ドメイン、アンカードメイン、シグナル配列、及びStalk配列をコードする核酸、及びパッケージングシグナルは、公知の方法によって調整し、各種の制限酵素を使用して、ベクターに挿入することができる。これらの核酸の1以上が最初から挿入された市販のレトロウイルスベクターを使用してもよい。
 レトロウイルスベクターライブラリーで、パッケージング細胞を形質転換する工程は、公知の方法、例えばリポフェクション法によって行うことができる。
 形質転換後に培養を行うことにより、ウイルスが産生されて上清に放出され、レクチンウイルスライブラリーを得ることができる。
 最後に、レクチンウイルスライブラリーを、レポーター細胞に感染させることにより、多様な改変レクチンを表面に提示した細胞からなる改変レクチンライブラリーを得ることができる。レトロウイルスは、通常1つのベクターしか運ばないので、感染多重度MOI=1としてレトロウイルスをレポーター細胞に感染させれば、1つの細胞について、1種類の改変レクチンを発現させることができる。
 パッケージング細胞は、レポーター細胞の種類に応じて、適宜選択することができる。
 例えば、レポーター細胞としては、レポーター遺伝子としてGFP遺伝子を含む2B4細胞(Ohtsuka, M., et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 2004. 101(21): p. 8126-31.)や、LacZ遺伝子(β-ガラクトシダーゼ遺伝子)を含むBWZ.36細胞(Sanderson, S. and N. Shastri, Int Immunol, 1994. 6(3): p. 369-76.)を用いることができるが、これらはいずれもげっ歯類のT細胞に由来する。従って、パッケージング細胞は、げっ歯類細胞に感染するレトロウイルスを産生するよう、エコトロピックウイルス由来のエンベロープタンパク質を発現するよう設計されたものを用いるとよい。
 レポーター細胞が、げっ歯類以外の哺乳動物細胞である場合、アンフォロトロピックウイルス由来のエンベロープタンパク質を発現するよう設計されたパッケージング細胞を用いるとよい。
 レトロウイルスベクターは、選択されたパッケージング細胞に感染してレトロウイルスを産生できるものを適宜選択することができる。
(レクチンのスクリーニング方法)
 上述したレクチンライブラリーを用いて、特定の糖鎖に結合能を有するレクチンをスクリーニングすることができる。
 本明細書において、「レクチンのスクリーニング方法」は、糖鎖を固相担体に固定する工程と、糖鎖とレクチンライブラリーを接触させてインキュベートする工程と、レポーター遺伝子の発現を検出してレポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞を選択する工程と、を含む。
 糖鎖を固定する工程は、例えば、市販のELISAプレートなどの固相担体に、糖鎖ポリマーを加えて行うことができる。糖鎖は、糖鎖ポリマー単独で固定しなくてもよく、糖タンパク質や、細胞を固相担体に固定することによって、糖鎖を固定してもよい。
 糖鎖とレクチンライブラリーを接触させる工程は、糖鎖を固定した固相担体に、レクチンライブラリーを接触させることによって行うことができる。
 レポーター遺伝子の発現を検出し、レポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞を選択する工程は、レポーター遺伝子の種類に応じて適宜行うことができるが、例えば、必要に応じてレポーター遺伝産物の基質等を加えた後、FACS等のセルソーターを用いることができる。FACSによれば、蛍光強度を測定し、蛍光強度の強いレクチン提示細胞を選択することによって行うことができるので、例えば、蛍光強度の上位約1%にゲートをかけて回収する。
 レクチンのスクリーニング方法では、さらに、選択されたレクチン提示細胞を培養して増殖させた後、固相担体に固定された糖鎖と接触させてインキュベートし、レポーター遺伝子の発現を検出して、レポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞を選択する工程を、さらに1回以上繰り返し、糖鎖結合能を有するレクチン提示細胞を濃縮してもよい。
 この工程は、例えば、2回~5回繰り返すことができる。
 濃縮された糖鎖結合能を有するレクチン提示細胞は、公知の方法(例えば限界希釈法)に従ってクローニングすることができる。
 レクチンのスクリーニング方法は、さらに、クローニングした糖鎖結合能を有するレクチン提示細胞から、公知の方法に従って核酸を抽出し、塩基配列を解析する工程を含んでもよい。これにより、所定の糖鎖に結合能を有する改変レクチンをコードする核酸の塩基配列を調べることができる。
 レクチンのスクリーニング方法の別の態様は、がん細胞表面の糖鎖に結合能を有するレクチンをスクリーニングする方法である。
 株化されたがん細胞表面には、由来組織やがんの悪性度の違いにより、様々な糖鎖が発現している(Essentials of Glycobiology. 2nd edition.Varki A, Cummings RD, Esko JD, et al., editors.Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2009.)。
 本態様では、レクチンライブラリーの含まれるレクチン提示細胞として、抗生物質耐性を有するものが用いられる。
 まず、がん細胞を固相担体に固定し、レクチンライブラリーとがん細胞を接触させる。
 インキュベートした後、レポーター遺伝子の発現を検出する。この工程は、例えば顕微鏡で観察することによって行うことができる。レポーター遺伝子が発現している場合、レクチン提示細胞が耐性を有する抗生物質を加えてがん細胞を死滅させることにより、レクチン提示細胞を回収することができる。
 この態様では、さらに、回収されたレクチン提示細胞を培養して増殖させ、固相担体に固定されたがん細胞と接触させてインキュベートし、レポーター遺伝子の発現を検出し、レポーター遺伝子が発現している場合、抗生物質を加えてがん細胞を死滅させ、レクチン提示細胞を回収する工程を、さらに1回以上繰り返し、がん細胞表面の糖鎖に結合能を有するレクチン提示細胞を濃縮してもよい。
 この工程は、例えば、2回~5回繰り返すことができる。
 濃縮された糖鎖結合能を有するレクチン提示細胞は、公知の方法(例えば限界希釈法)に従ってクローニングすることができる。
 この態様においても、さらに、クローニングした糖鎖結合能を有するレクチン提示細胞から、公知の方法に従って核酸を抽出し、塩基配列を解析する工程を含んでもよい。これにより、所定の糖鎖に結合能を有するレクチンをコードする核酸の塩基配列を調べることができる。
 こうして得られたレクチンは、がん細胞の検出に用いることが可能である。
(新規レクチン)
 本発明は、以下の4種類の新規な改変マメ科レクチンも包含する。
(a) ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にLeu-Trp-Glnが結合し、C末端側にArg-Glu-Phe-Cysが結合している、改変マメ科レクチン;
(b) ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にThr-Trp-Proが結合し、C末端側にArg-Ser-Tyr-Lysが結合している、改変マメ科レクチン;
(c) ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にLys-Trp-Hisが結合し、C末端側にSer-Phe-Tyr-Aspが結合している、改変マメ科レクチン;及び
(d) ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側に4アミノ酸挿入され、該アスパラギンのN末端側にVal-Asp-Leu-Gln-Val-Tyr-Ileが結合し、C末端側にGly-Ser-Phe-Tyrが結合している、改変マメ科レクチン。
 レクチン(a)は、LeC抗原39(Galβ1-3GlcNAcβ)とGlcNAcβ1-3GalNAcαを用いたスクリーニングで見出された。
 レクチン(b)は、血液型B型抗原の尖端部位(Galα1-3Galβ)を用いたスクリーニングで見出された。
 レクチン(c)は、LeC抗原39(Galβ1-3GlcNAcβ)と血液型B型抗原の尖端部位(Galα1-3Galβ)を用いたスクリーニングで見出された。
 レクチン(a)は、T抗原(Galβ1-3GalNAcα)>>LeC(Galβ1-3GlcNAcβ)>血液型B型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ)>GlcNAcβ1-3GalNAcα>Tn抗原(α-GalNAc)の順に結合する。
 レクチン(b)は、T抗原(Galβ1-3GalNAcα)>>血液型B型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ)>LeC(Galβ1-3GlcNAcβ)の順に結合する。
 レクチン(c)は、T抗原(Galβ1-3GalNAcα)>>LeC(Galβ1-3GlcNAcβ)>血液型B型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ)の順に結合する。
 レクチン(a)~(c)は、いずれもPNAの本来のリガンドであるGalβ1-3GalNAcβに結合するが、天然型のPNAは、血液型B型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ)やTn抗原(α-GalNAc)に結合せず、これとは異なる特異性を有する。
 レクチン(b)は、後述する実施例に示されるとおり、扁平上皮がん細胞に高い結合性を有する。現在、扁平上皮がんのマーカーは皆無であり、扁平上皮がんの検査・診断薬として有用である。
 レクチン(d)は、ヒト肺腺がん由来細胞株A549を用いてスクリーニングによって見出された。後述する実施例に示されるとおり、他に胃がん細胞、膵がん細胞、メラノーマ細胞にも結合性を有し、当該がんの検査・診断薬として有用である。
 本明細書において、「レクチンアレイ」は特異的に結合する糖鎖構造がわかっている複数のレクチンを固相担体に固定したものをいう。
 固相担体としては、ガラス、樹脂、金属等の基板を用いることができる。
 レクチンアレイと糖鎖を含む試料を接触させることにより、一度に複数のレクチンへの結合を測定できるので、ハイスループットに資料中の糖鎖の構造解析を行うことができる。
 レクチンへの糖鎖の結合の検出は、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、表面プラズモン共鳴によれば、標識を必要としない。また、試料が、既知のタンパク質に結合した未知の構造の糖鎖を含むものである場合、レクチンアレイに糖タンパク質を結合させ、検出可能に標識した当該タンパク質に対する抗体を結合させることによっても、糖とレクチンの結合の有無を検出することができる。
 本明細書において「糖鎖検出用キット」は、試料中の糖鎖を検出するためのキットであり、検出用試薬として検出可能に標識した改変レクチン(a)~(d)のいずれかを含む。
 糖鎖検出用キットは、例えば、細胞表面の所定の構造の糖鎖を検出して、細胞のがん化の有無を検出するために用いることができる。この場合、糖鎖検出用キットには、例えば、反応プレート、がん細胞に対する抗体、及び標識したレクチンが含まれる。
 レクチンの標識は、タンパク質を検出可能に標識する公知の方法で行うことができ、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素、125I、131I、35S、14C、3H等の放射性物質、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、インドシアニングリーン、近赤外蛍光材料等の蛍光物質、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクオリン等の発光物質等を用いて標識できる。その他、金コロイド、量子ドットなどのナノ粒子でレクチンを標識してもよく、レクチンをビオチンで標識し、酵素等で標識したアビジン又はストレプトアビジンを結合させて検出することもできる。
 またマメ科レクチンはカルシウム、マンガンなどの金属イオンをタンパク質内に含み、これらと結合することにより、糖と結合できる構造を構築する。酸処理等によりこの金属イオンを遊離させ、新たに放射性の金属イオンを取り込ませ標識することもできる。
 また、検出可能に標識した改変マメ化レクチンとして、改変マメ化レクチンを提示するレクチン提示細胞を用いることもできる。
 糖鎖検出用キットは、さらに、必要な緩衝液、酵素反応停止液、マイクロプレートリーダー等を備えていてもよい。
 本明細書において「糖鎖検出用キット」の別の態様は、試料中の糖鎖を検出するためのキットであり、改変レクチン(a)~(d)のいずれかの二量体とFcとの融合タンパク質と、検出可能に標識された抗Fc抗体を含む。Fcとは、免疫グロブリンの重鎖定常領域CH2とCH3からなるドメインをいう。改変レクチンとの融合タンパク質には、いずれのクラスの免疫グロブリンのFcを用いてもよい。
 改変レクチンとIgGFcとの融合タンパク質は、改変レクチンを二量体で発現するので、標的糖鎖に対する親和性が向上する。IgMFcとの融合タンパク質は五量体を作り、同様に親和性が向上する。
 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
 実施例に用いた基本的な実験操作は、以下のとおりである。
<細胞株と培養条件>
 R10 : 10% 非働化ウシ胎仔血清 (FBS) (Invitrogen), 25 mM HEPES, 100 U/ml penicillin, 100 μg/ml streptomycin (Gibco BRL)を含む RPMI1640培地(Invitrogen) 
 D10 : 10% 非働化FBS, 25 mM HEPES, 100 U/ml penicillin, 100 μg/ml streptomycinを含む DMEM培地(Invitrogen)
 培養は100 mm ディッシュ(Zellkultur und Labortechnologie, TPP 93100) 、200 mm ディッシュ(Becton Dickinson, Falcon 3025)、6-well plate(Becton Dickinson, Falcon 3046)、24-well plate(Zellkultur und Labortechnologie, TPP 92024)、96-well plate(Becton Dickinson, Falcon 3072)のいずれかを細胞数及び実験手法により使い分けて用いた。 R10 培地または D10 培地を10 ml入れ(200 mm ディッシュは20 ml、6-well plateは4 ml、24-well plateは1 ml、96-well plateは0.2 ml)、容器底面が 1/5~1/10 覆われる程度の細胞をまき、37℃ 5% CO2インキュベーターで静置して培養した。継代は2B4細胞を2日に1度、他の細胞を3~4日に1度の頻度で行った。
 2B4 マウスTリンパ腫由来細胞株。大阪大学免疫学フロンティア研究センター 免疫化学研究室/微生物病研究所 免疫化学分野の荒瀬博士より譲渡を受けた。レポーター遺伝子としてIL-2 promotor下流にEGFP遺伝子を導入している。R10を培地として培養した。
 Plat-E 同種指向性のレトロウイルスパッケージング細胞。10 μg/ml blasticidin S-HCl (Invitrogen), 1 μg/ml puromycin (Sigma) を含む D10 を培地として培養した(Morita, S. et al., Gene Ther, 2000. 7(12): p. 1063-6.)。
<オリゴDNAのリン酸化>
 ランダムオリゴDNAはSigma genosis社に作製を委託した。ランダムでないその他のオリゴDNAは株式会社ファスマックに作製を委託した。
 ランダムオリゴDNAに関してはDNA合成の際に、Sigma genosis社にて5’末端リン酸化処理を委託した。それ以外のオリゴDNAに関してはforward プライマー (50 μM) 2 μl と reverse プライマー (50 μM) 2 μl、10×T4 polynucleotide kinase buffer (Takara) 1 μl、10 mM ATP 1 μl、T4 polynucleotide kinase (Takara) 0.5 μl、 MilliQ 3.5 μlを加えて全量を 10 μl とした。37℃で1時間反応させ、その後70℃に20分間置いて酵素を失活させ、これをリン酸化プライマー溶液とした。
<PCR>
 本研究で用いたオリゴDNAを下表に示す。PCR装置はVeriti (Applied Biosystems)を用いて行った。反応液は、1~50 ng の鋳型 DNA、10 mMリン酸化プライマー 1.2 μl、10×KOD-Plus- buffer 4 μl、2 mM dNTPs 4 μl、25 mM MgSO4 1.6 μl、KOD-Plus DNA polymerase 0.8 μlを加えて全量を 40 μlとした。温度条件、DNAテンプレート、アニール温度、サイクル数は各項ごとに記した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
<ゲル抽出・精製>
 SeaKem GTG agarose (Cambrex) を使用して作製した1.0% アガロースゲル(0.25 mg/ml EtBr含有)にアプライして、TAEを泳動液に用いて電気泳動を行い、DNA を分子量によって分離した。目的の分子量のバンドを切り出してQIAquick gel extraction kit (Qiagen) を用いて精製した。方法はメーカーのプロトコールに従って行った。すなわち、ゲル重量の3倍量のBuffer QGをくわえ、50℃でゲルを完全に溶解した。2 mlコレクションチューにQIAquickスピンカラムをセットし、ゲル溶解液をカラムにアプライし、17,900 x gで1 min遠心した。フロースルー液を取り除き、Buffer PEを700 ml/カラムで添加し、同様の遠心を行いカラムを洗浄した。フロースルー液を除き、EtOHを完全に除くためにカラムを再度遠心した。カラムを1.5 mlエッペンチューブにセットし、10 mlのMilliQをカラムのメンブレン中央にアプライし、37℃で30 minインキュベートした後に同様の遠心で溶出した。
 TAEは、50倍濃度として調製した溶液をMilli Qで希釈して用いた。50 x TAEは、tris 242 g, 0.5 M EDTA(pH 8.0)100 ml, 酢酸(Wako) 57.1 mlを混和し、MilliQで1 Lまでメスアップして調製した。
<Ligation反応及び大腸菌形質転換>
 Ligation反応はDNA Ligation Kit <Mighty Mix> (Takara)を用いて行った。その都度示すベクターとインサートのモル比に調整したDNA溶液に、等量の Ligation Mixを加え、16℃で数時間反応させライゲーションを行った。大腸菌形質転換にはLigation液5 μlに50 μl の大腸菌(E.coli) DH5α コンピテントセルあるいはJM109コンピテントセルを加え、42℃、45秒のヒートショック法にて形質転換を行った。形質転換後、on iceにて3 min静置した後に倍量のSOC培地をくわえて37 ℃で30 min培養した。卓上遠心機で遠心し、上清を半量捨て、残りをLB/Amp agar plateに塗布し、37℃で一晩培養した。翌日、シングルコロニーを爪楊枝でピックアップして、Direct colony PCR法にてインサートDNAの確認を行った。PCR反応液は、5 x Go Taq DNA Polymerase buffer 10 ml, 2 mM dNTPs 5 ml, 25 mM MgCl2 3 ml (終濃度1.5 mM), 50 mM forward primer 0.5 ml, 50 mM reverse primer 0.5 ml, Go Taq DNA polymerase 0.5 mlを混和し、Milli Qで50 mlまでメスアップした溶液を8連PCRチューブ(0.2 ml Thermo-strip, ABgene)に6 mlずつ分注して行った。
<プラスミドDNAの抽出・精製>
 プラスミドDNA抽出は100 μg/ml ampicillin入り Luria-Bertani (LB) 培地で、形質転換したDH5αを植菌し37℃で14~15時間振盪培養し、NucleoBond (Machery-nagel) を用いてmini prep protcolに従って行った。すなわち、培養した大腸菌液を4,500 x gで10 min遠心し、ペレットを得た。上清を捨て、Buffer S1を400 mlくわえて、再懸濁した。続いて、Buffer S2を400 ml添加し、数回転倒混和したのちに常温で3 min放置し、細胞を溶解した。次にBuffer S3を400 mlくわえて、数回転等混和し、on iceで5 minインキュベートして細胞溶解液を中和した。その後、12,000 x g, 15 minで遠心した。その間に、NucleoBond AX20カラムにBuffer N2を1 ml添加しカラムを平衡化した。遠心後、澄んだ上清をすべてカラムにアプライし、自然落下でカラムに吸着させた。次に、Buffer N3 1.5 mlで2回カラムを洗浄し、続いてBuffer N5 0.8 mlを用いて、1.5 mlエッペンチューブに溶出した。溶出液に0.6 mlのイソプロパノールを添加して15,000 x g, 30 min, 4 ℃遠心し、ペレットを得た。上清を注意深く除去し、70% EtOHを500 mlくわえて、15,000 x g, 室温, 10 min遠心してペレットを得た。DNAペレットを風乾し、30 mlのMilliQに溶解した。分光光度計にてOD260値とOD280値及びOD320値を計測し、濃度及び精製度を算出した。濃度はOD320値でバックグラウンドを補正したOD260値より、精製度はOD320値で補正したOD260値/OD280値の比により算出した。
 なお、LB (Luria-Bertani)は、bactotryptone 5 g, yeast extract 2.5 g, NaCl 2.5 g, MilliQ 490 mlを混和し、オートクレーブ滅菌を行って用いた。
<DNAシーケンス解析>
 DNAの塩基配列は Big Dye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems) 用い、ABI PRISMTM 3130xl genetic analyzer (ABI) によって dye terminator法で決定した。その都度示したprimerを1 mMに希釈し、0.8 ml/tube, BigDye 1.0 ml/tube, 5 x Seq buffer 1.5 ml/tube, MilliQ 5.7 ml/tube, 100 ng/ml plasmid DNA 1.0 ml/tubeを混和した。PCR装置はVeritiを用いた。温度条件は94℃でdenature 2min行った後に、96℃でdenature 30 sec, 50℃でannealing 15 sec, 60℃でextention 4 minを25サイクル行った。PCR産物10 mlを1.5 mlエッペンチューブに移し、3M NAOAc 1.5 ml、95% EtOH 31.25 ml、Milli Q7.25 mlをくわえて、EtOH沈殿を行った。15,000 x gで20 min遠心し、上清を除いた後に70 % EtOHを150 ml添加し、7min遠心して透明のペレットを得た。上清を捨てDNAを乾燥させた後に、10 ml Hi-DiでDNAを溶解し、95℃で5 min denatureしたのちon iceで急冷してssDNAを保った。その後、ABI 3130 xlを用いて解析した。プロトコールはInstrument protcolにRapid Seq 36-pop7-BDv3-INJ50を、Analysis protcolにkB3130-pop7-BDv3を用いた。
<レトロウイルスによる遺伝子導入>
 レトロウイルスパッケージング細胞である Plat-E 細胞(Morita, S. et al., 2000)1×106 個を6-well plateにD10培地2 mlでまき、80~90% コンフルエントな状態まで一晩培養した。その後、Lipofectamine 2000 (Invitrogen) 10 mlを用いて、4 μg のプラスミドをトランスフェクションした。方法はメーカーのプロトコールに従った。すなわち、無血清培地であるOPTI-MEM I (Gibco BRL) 250 μl にプラスミドを懸濁した(溶液(i))。同時に、OPTI-MEM I 240 μl にLipofectamine2000 を10 μl 加え、室温で5分間静置した(溶液(ii))。その後、溶液(i)と(ii)を混ぜ20分間室温でインキュベートした後、混合液を細胞に滴下しトランスフェクションを行った。トランスフェクション後48時間培養し、この培養上清を 2,370 x g、4℃で10 min遠心して回収し、レトロウイルス溶液とした。
 5×104個の 2B4細胞を6-well plate にR10 2 mlでまき、各ウェルにポリブレンを終濃度 10 μg/ml 加えた。3時間培養した後に、レトロウイルス溶液を2 ml/wellで添加して48時間培養した。感染による改変レクチンの発現確認にはフローサイトメトリーを用いた。用いた抗体はAnti-myc Ab (5 mg/ml)を10 ml/wellと2次抗体としてGoat Anti-Mouse IgG (H+L)Chains-Cy5 conjugate (Zymed)を5mg/mlの濃度で10 ml/well、あるいはGoat F(ab’)2 Fragment Anti-Mouse IgG (H+L)-PE (Beckman Coulter)を10 mg/mlの濃度で10 ml/wellでそれぞれ氷上で30 min染色して用いた。
<フローサイトメトリー>
 回収した培養細胞を各種抗体で染色して、FACS buffer を加えて懸濁した。この細胞懸濁液 140 μl を3 μg/mlの PI (Sigma) 70 μlと共に 1.2 ml チューブ (ABgene) に加え、FACS 解析を行った。取り込みは FACSCalibur (BD) で行い、解析ソフトウェアは FlowJo(Tree Star) を用いた。
 なお、FACS bufferは、NaHCO3(0.35 g/l)、0.1% (w/v) NaN3、0.1% (w/v) BSAを含むHanks’balanced salt solution (Gibco BRL)とした。
[改変レクチンライブラリーの作製]
1. PNA糖結合部位改変レクチンライブラリーの作製(1)
 PNA糖結合部位改変レクチンライブラリー用コンストラクトの作製手順は図1A及びBに示した。以下に具体的に説明する。
1-1. pMXs-neoベクターへの点変異導入(Mutated pMXs-neoの作製)
 レトロウイルスベクターの骨格としてpMXs-neoベクター(Kitamura, T., et al., Exp Hematol, 2003. 31(11): p. 1007-14.)を用いた。
 pMXs-neoベクターは、後で使用する制限酵素(Stu I)の認識配列がベクター内のSELPに含まれているため、KOD plus mutagenesis kit(Toyobo)を用いて、当該配列にナンセンス変異を導入した。変異導入用プライマー(SELP mutated-F primer, SELP mutated-R primer)を作製し、KOD plus mutagenesis kitのプロトコールに従って、inverse PCRを行った。すなわち、50 ngの鋳型plasmid DNA、10 pmol/ml変異導入用プライマー混合液1.5 μl、10×KOD-Plus-buffer for iPCR 5 μl、2 mM dNTPs 5 μl、KOD-Plus-DNA polymerase 0.8 μlを加えて全量を50 μlとした。温度条件は94℃でdenatureした後に、denatureを98℃、10秒、annealingとextensionを68℃、7分30秒を8サイクル繰り返した。
 PCR反応液に制限酵素Dpn Iを2 μl加えて37℃で1時間反応させ、鋳型DNAを分解した。反応後、5 μlを1.5% アガロースゲル電気泳動でベクターの位置を確認した後に、リン酸化処理及びセルフライゲーションを同時に行った。反応液はDpn I処理PCR産物2 μl、Ligation high (Toyobo) 5 μl、T4 polynucleotide kinase (Toyobo) 1 μlを混和し全量15 μlとした。16℃で1.5時間反応させ、反応液10 μlを大腸菌DH5α 100 μlへヒートショック法にて形質転換した。形質転換後、LB/Amp agar plateに全量を播き37℃で一晩培養した。得られたシングルコロニーをTerrific Bloth (TB) 5 mlに植菌して更に一晩37℃, 230 rpmで震盪培養した(TBは、bactotryptone 12 g, yeast extract 24 g, glucose 5 g, glycerol 4 ml, MilliQ 900 mlを混和し、オートクレーブ滅菌して用いた)。
 大腸菌液よりplasmid DNAを抽出し、その配列をSELP-F for seq primerとSELP-R for seq primerを用いてサイクルシーケンシングを行って、ABI 3130xlで解析した。
 図1Bに示すMutated pMXs-neoを得た。
1-2. pMXs-PNA(b)-rep-neoベクターの作製
 Mutated pMXs-neoベクターに、レポーター細胞に必要な配列としてCD8α鎖シグナル配列、c-mycタグ配列、ループC以降のPNAの配列であるPNA(b)配列、NKp46(stalk)配列、CD8α鎖の膜貫通ドメイン、細胞内にシグナルを伝達するCD3ζ鎖(以下、まとめてPNA(b)-rep配列と表記)を組み込んだ。NKp46(stalk)配列は以下に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 PNA(b)は、図1Aに示すとおり、PNA DNAを鋳型として、プライマーとしてPNA(Stu I)及びPNA-R(Hpa I)をとしてPCRを行って調製した。
 Mutated pMXs-neoベクターをPac I処理、Not I処理し、BAPで脱リン酸化を行った。目的のサイズのDNAをゲル抽出で精製し、ベクターDNAとした。インサートDNAとして、pMXs-IG(Kitamura, T., et al., Exp Hematol, 2003. 31(11): p. 1007-14. )にPNA(b)-rep配列が組み込まれたプラスミドDNA(pMXs-PNA(b)-rep-IG)をPac I処理、Not I処理し、ゲル抽出にて必要なサイズのDNAを精製して使用した。
 ベクターDNAとインサートDNAの混合物を、モル比が1:10、液量が5μlになるよう調製し、等量のLigation mixを加えて、16℃で3時間反応させた後、DH5αをヒートショック法により形質転換してLB/Amp agar plateに播いて一晩培養した。
 生じたシングルコロニーをDirect colony PCR法及び1.0%アガロースゲル電気泳動法によってインサートDNAが挿入されていることを確認し、TB/Amp 40 mlに植菌し、一晩培養した後plasmid DNAを抽出し、配列を調べた。
 図1Bに示すpMXs-PNA(b)-rep-neoを得た。
1-3. pMXs- ERGIC-53-PNA(b)-rep-neoベクターの作製
 作製したpMXs-PNA(b)-rep-neoベクターをStu I処理で線状化し、EcoR I処理することでランダム変異を含むPNAの前半部分(PNA(f))を挿入することが次の目的である。
 しかし、ベクターのEcoR I認識配列が線状化ベクターの末端付近に位置することからEcoR I処理効率の判断が難しい。そのため片方の末端にEcoR I認識配列を付加したERGIC-53の配列を挿入した。ERGIC-53は配列内にEcoR I認識配列を1箇所含む。
 pMXs-PNA(b)-rep-neoベクターをStu I処理によって線状化し、BAP処理でDNA末端を脱リン酸化した産物をベクターDNAとした。pBluescript SKII(+)にEcoR I認識配列を付加したERGIC-53を挿入したpBS-ERGIC-53を、EcoR I処理し目的サイズのDNAをゲル抽出にて精製した産物をインサートDNAに用いた。
 ベクターDNAとインサートDNAの混合物をモル比として約1:5、液量を10μlになるよう調製し、等量のLigation mixを加えて、16℃で4時間反応させた。反応液5μlを用いて大腸菌DH5α 50μlを形質転換し、LB/Amp agar plateに播いて一晩培養した。生じたシングルコロニーについて、Direct colony PCR法及び1.0% アガロースゲル電気泳動法によってインサートDNAが挿入されていることを確認し、TB/Amp 40 mlに植菌した。一晩培養した後plasmid DNAを抽出し、ERGIC-53の配列が挿入されていることを確認した。
 図1Bに示すpMXs-ERGIC-53-PNA(b)-rep-neoを得た。
1-4. pMXs-PNA(f)(b)-rep-neoベクターの作製
 インサートDNAとなるPNA(f)は、PCR法によってVeriti (Applied Biosystems)で増幅した(図1A)。
 PNA(f)には、ランダムプライマーを用いてランダム変異を導入した。即ち、ループC 拡張型ランダムプライマー (PNA-5 primer)とPNA-F(EcoR I)プライマーを用いた。このランダムプライマーによれば、図2に示されるように、PNAのループCに属するカルシウム結合アスパラギンAsn127が、金属イオンと配位可能なAsn、Asp、Gln、Gluのいずれかとなり、Asn127のN末端側に4アミノ酸残基挿入され、ループCが拡張される。Asn127のN末端側において、挿入された4アミノ酸を含む7アミノ酸にランダムな変異が導入され、C末端側において、4アミノ酸にランダムな変異が導入される。
 この結果、得られた改変レクチンライブラリーのサイズは、5.87×106cfuであった。
 反応液は10 ngの鋳型DNA(PNA DNA)、50 mMリン酸化プライマー混合液 1.2μl、10×KOD-Plus-buffer 4 μl、2 mM dNTPs 4 μl、25 mM MgSO4 1.6μl、KOD-Plus-DNA polymerase 0.8 μlを加えて全量を 40 μlとした。温度条件は94℃で2分denatureのあと、94℃で15秒denature、58℃で30秒annealing、68℃で1分extentionを35サイクル繰り返したのち、68℃で7分である。インサートDNA(PNA (f))をEcoR Iで一晩処理した後に、ゲル抽出して精製し使用した。
 ベクターDNAとしてpMXs-PNA(b)-ERGIC-53-rep-neoをStu I処理後に精製して、続いてEcoR Iで処理し、ERGIC-53を含む約800bpの断片が分離されることを1.0% アガロースゲル電気泳動法で確認して、上方に位置する目的のバンドをゲル抽出により精製した。
 図1Bに示すpMXs-PNA(f)(b)-rep-neoを得た。
1-5. 大腸菌への形質転換とプラスミド抽出
 Eletro MAX DH10B (Invitrogen)を氷上で融解し、LB Agar plateにストリークし、一晩培養してシングルコロニーを得た。5mlのLB培地にシングルコロニーを植菌し、37℃で一晩培養し、プレカルチャー液とした。予め、500mlコルベンにLB培地を50ml入れてオートクレーブ滅菌した培地にプレカルチャー液500μlを加えて、37℃、230rpmでOD600値が0.5~0.6になるまで震盪培養した。OD値を確認し目的の範囲に入ったコルベンを氷水中で30min冷やし、大腸菌を仮死状態にした。
 以降の操作は全て4℃以下で行った。氷水中で冷やした大腸菌培養液を50mlずつtubeに移し、0℃、1000xgで15min遠心して大腸菌のペレットを得た。上清のLB培地を、アスピレーターを用いて完全に除去し、冷やした滅菌MilliQ 500μlを加えて、氷水中でゆっくりと回旋しペレットを懸濁した。冷やした滅菌MilliQで30mlまでメスアップし、0℃、1000xgで15min遠心して大腸菌のペレットを得た。上清をデカントで捨てて残った液に氷水中でゆっくりと回旋しペレットを懸濁した。同様の操作を更に計3回繰り返した後に、上清をアスピレーターで注意深く取り除き、冷やした10%グリセロール溶液を500μl加えて氷水中でゆっくりと回旋しペレットを懸濁した。
 冷やした10%グリセロール溶液で30 mlまでメスアップして、0℃、1000xg, 15min遠心して大腸菌のペレットを得た。アスピレーターを用いて上清を注意深く取り除き、得られた約50μlのペレットに冷やした10%グリセロール溶液50μlを加えて氷水中で穏やかに懸濁し、エレクトロポレーション用大腸菌コンピテントセルとした。
 作製したエレクトロポレーション用大腸菌コンピテントセルを予め氷上で冷やしておいた1.5mlエッペンチューブに50μlずつ移した。
 pMXs-PNA(f)(b)-rep-neoベクターのLigation反応液35 mlに1 mg/ml Yeast tRNA (Invitrogen) 40 ml, 7.5 M NH4OAc (Wako) 100 ml, 99.5%EtOH (Wako) 550 mlを加えて、14,000 x g, 室温, 20 min遠心後、上清を捨て70%EtOH 720 mlを加えて14,000 x g, 室温, 4 min遠心した。上清を捨てDNAを風乾し、6 μlのMilliQに溶解した環状DNA溶液を、大腸菌を入れたエッペンチューブへ無菌的に加えて、混和しon iceで15 min静置した。予めon iceで冷やしておいたキュベットに気泡を生じないように移して、水滴をキムタオルで念入りに拭き取った。キュベットをBTX-600 electro cell manipulator (Harvard apparatus)にセットして1.8 kV, 186 Ω, 50 μF の条件でエレクトロポレーション法により形質転換を行った。素早く1 mlの冷やしたSOC培地を加えて、37℃, 230 rpmで1時間浸透培養した後に、2 μlを取り3段階に希釈系列を作製しLB/Amp agar plateに播いてライブラリーの規模を測定した。残りの大腸菌液には700 μlに対して300 μlの80% グリセロール溶液を加えて-80℃で保存した。
2. 改変PNA提示2B4レポーター細胞ライブラリーの作製
2.1 レポーター細胞の作製
 レトロウイルスパッケージング細胞であるplat-E細胞を合計で24ウェルに播き、改変レクチンライブラリーのプラスミドDNAをLipofectionしてパッケージングさせた。方法は上述した<レトロウイルスによる遺伝子導入>に従って行った。終濃度10 μg/mlのポリブレン (Wako)を添加して2B4細胞に感染させてレポーター細胞を作製した。
 レトロウイルスを1ウェルあたり5×104の2B4細胞に感染させた。2B4細胞へのレトロウイルスの感染効率は、ライブラリーの場合4-5%なので、1ウェルあたり2.35×105~2.94×105cfuのレポーター細胞ライブラリーが作製されたことになる。24ウェルの合計では、5.64×106~7.04×106cfuのレポーター細胞を含むライブラリーが作製されたこととなり、1-4.で得られた改変レクチンライブラリーのサイズ5.87×106cfuを十分にカバーする量であった。
2.2 G418を用いた改変レクチン安定発現細胞株の濃縮
 レトロウウイルスが感染した2B4細胞をG418 (Sigma-Aldrich)によって濃縮した。ウイルス感染させて48時間培養した2B4細胞を回収し、200 mm dishにてG418を終濃度0.6 mg/mlとなるように添加し、7日間培養を続けた。途中で細胞密度が高くなってきた場合は回収して2つに分け、合計7日間培養した。凝集した死細胞が増えてくるため2日に1回の頻度でmediumを交換した(図4A)。
 7日目の細胞を回収し、PBS (-)で一度washした後に、1 x 105cells/wellで96 well U底plateに播き、フローサイトメトリー法にて発現確認を行った。発現確認は、anti-myc Ab(5 mg/ml)10 ml/wellで染色した後、Goat F(ab’)2Fragment anti-mouse IgG (H+L)-PE (10 mg/ml)を10 ml/wellで染色し、FACS bufferで洗浄してから行った。
 なお、PBS (-)は、10倍濃度としてNaCl 80 g, Na2HPO4 29 g, KCl 2 g, KH2PO2 gを混和しMilliQで1 Lまでメスアップして調製した。MilliQで10倍希釈したものをオートクレーブ滅菌して用いた。
3. A549細胞株に対するin vitro パニング及び限界希釈法によるクローン化
 in vitro パニングの手順は図3に示す。ヒト肺腺がん由来細胞株A549をR10培地、37℃、5%CO2の条件で、6-well plateに約80%程度コンフルエントとなるまで培養した後、改変レクチン発現レポーター細胞ライブラリーを2 x 105 cells/wellで滴下し、一晩共培養した。
 翌日、倒立型蛍光顕微鏡Axio observer.Z1 (Zeiss)を用いて、EGFPの蛍光を発する蛍光性細胞を観察した。拡大倍率は100倍あるいは200倍で観察し、明視野像は100 msecの露光時間、蛍光視野像は500 msec~1 secの露光時間で撮影した。蛍光性細胞の観察されたwellのみを、0.6 mg/ml G418を含むR10培地に置換し、7日間培養した。これによりG418耐性を有するレクチン提示細胞は生き残り、耐性を有しないがん細胞A549が死滅する(図4A)。
 培地は2日に1回新しい培地に交換した。生き残った細胞を100 mm dishに拡大培養し、十分増えたところで、再び80%程度コンフルエントまでA549細胞を培養した6-well plateに滴下し、共培養するという操作を繰り返した。
 GFP陽性細胞率は、蛍光顕微鏡による観察で得た画像中の細胞数をカウントして算出した。蛍光視野の露光時間500msecの条件で、目視により蛍光が認められた細胞数をカウントし、明視野の露光時間100msecの条件における1視野中の全細胞数で割った値を百分率で示した。GFP陽性細胞集団は、パニング前は0.55%であったが、3ラウンドのパニングにより、1.64%まで上昇した(図4B)。
 次に、再度A549細胞と一晩共培養してEGFPを発現させた後、A549細胞と一緒にdishからTrypsin + EDTAで剥離し、0.5 mM EDTA、3%FCSを含むPBS (-) 4.5 mlに懸濁した。続いて、FACS Vantage SEによるGFP陽性集団細胞の濃縮を行った。GFPの蛍光を示すFL1蛍光強度の上位5%程度を、1mlのFCSを入れた5mlチューブに回収した結果、GFP陽性細胞の割合が、A549との共培養後に16.7%まで上昇した(図4)。
 回収後の細胞を培養した後に、96-well plateに1 cell/wellとなる濃度まで希釈して播き、限界希釈法によるクローン化を行った。3週間後コロニーを形成した細胞集団を回収し24-well plateに拡大培養した。GFP陽性率16.7%の細胞集団から90種のクローンを得た。
 96-well plateにA549細胞を単層培養したplateを作製し、限界希釈で得られたクローンをそれぞれ5 x 104 cells/wellで滴下後、一晩共培養してAxio obserber.Z1でGFP陽性細胞の有無を観察した。90種のうち10種のクローンにおいて、視野の数%から10数%にGFPが検出された(図5)。
4. 改変レクチン提示細胞からのゲノムDNA抽出及び改変レクチンDNA配列解析
4-1. ゲノムDNA抽出
 上記10種のクローン細胞(2B2, 2C5, 2D3, 2D10, 2E5, 2F2, 2F11, 2H12, 3B8, 3H12)を回収し、各1 x 106 cellsからFlexiGene DNA kit (Qiagen)を用いてゲノムDNAを抽出した。方法はメーカーのプロトコールに従った。すなわち、回収した細胞を固定アングルローターで、300 x g, 5 min遠心し、細胞ペレットを得た。300 mlのBuffer FG1に細胞を懸濁し、10,000 x g, 20 sec遠心した。上清を捨て、300 mlのBuffer FG2/QIAGEN Proteaseを添加し、迅速にボルテックスし、ペレットを均一化した。
 チューブを転倒混和し65℃で10 minインキュベートした。300 mlの2-propanolを加えて糸状のDNAを確認した後に、10,000 x g, 3 min遠心した。上清を捨て、300 mlの70% EtOHに懸濁してから再度遠心した。上清を捨てペレットを風乾してから200 mlのBuffer FG3を加えて5 secボルテックスし、65℃でDNAが完全に溶解するまでインキュベートした。ゲノムDNAの濃度及び精製度は分光光度計Jasco V-550を用いてOD260値及びOD280値、OD320値を測定して算出した。
4-2. 改変レクチンDNAの増幅及び配列解析
 抽出したゲノムDNAを鋳型にPNA-F(EcoR I)primer, PNA-R(Xho I) primerを用いて、PCR法にて改変レクチンDNAを増幅した。
  PNA-F(EcoRI) cggaattcgccgaaacagtttccttc
  PNA-R(XhoI) ccgctcgagtgcacttgccatattcat
 反応液は、1 mg のゲノム DNA 、50 mMリン酸化プライマー混合液 1.2 μl、10×KOD-Plus-buffer 4 μl、2 mM dNTPs 4 μl、25 mM MgSO4 2.4 μl、KOD-Plus DNA polymerase 0.8 μlを加えて全量を 40 μlとした。温度設定はdenatureを94℃で2 min, その後denature 94℃で15 sec, annealing 58℃で30 sec, extentionを68℃で1 minのサイクルを30サイクル繰り返した後、68℃で7 minとした。
 PCR産物を1.0% アガロースゲル電気泳動で確認し、ゲルを切り出しDNAを抽出、精製した。精製したDNA 4.5 mlをpBluescript SKII(+)をSma I処理し、BAPで脱リン酸化したpBS/Sma I/BAP 0.5 mlと混和し等量のLigation mixを加えて16℃で1hライゲーション反応を行った。ライゲーション反応液を5 mlを用いて、E.coli DH5α 50 mlに形質転換し、LB/Amp agar plateに塗布して一晩培養した。生じたシングルコロニーをM13 forward primerとM13 reverse primerを用いたDirect colony PCR法にてinsert DNAの挿入を調べた。10種のクローンについてそれぞれ8コロニーずつ調べた。1.0%アガロースゲル電気泳動法でinsert DNAの挿入が認められたコロニー62種を3 mlのLB培地に植菌し一晩37℃, 230 rpmで培養した。培養液を回収し、それぞれからplasmid DNAを抽出した。抽出したplasmid DNAを各々100 ng/tubeで用いてシークエンス解析を行い、改変レクチンの配列を調べた。
 結果を図6に示す。
 2B2では、8つのうち2つで配列が読めたが、そのどちらもがAsn127相当部分の3残基後にTAGの終止コドンを含む配列(以降「終止A配列」と記載)であった。
 2C5は、8つのうち2つで配列が読めたが、一方は終止A配列であった。もう一方は「DVDLQVYINGSLND」の配列を持つ改変レクチンと思われる配列(以降「改変レクチンa配列」と記載)であった。
 2D3では、8つのうち5つで配列が読め、そのうち4つは終止A配列であり、1つは改変レクチンa配列であった。
 2D10では、8つのうち5つ配列が読めたが、1つは終止A配列であり、2つはAsn127に相当する部分の5残基前にTAGの終止コドンを含む配列(以降「終止B配列」と記載)であり、2つが改変レクチンa配列であった。
 2E5では、8つのうち6つで配列が読めたが、そのうち1つは改変レクチンa配列であり、残り5つは「DRNSQKKWNSRGQD」というこれまでのクローンに含まれていない配列(以降「改変レクチンb配列」と記載)であった。
 2F2では、8つのうち4つで配列が読め、2つは終止A配列、1つは終止B配列であったが、改変レクチンa配列が1つ含まれていた。
 2F11では、8つのうち4つで配列が読めた。そのうち3つが終止A配列で、残り1つが終止B配列であり、改変レクチンと思われる配列はピックアップしたコロニー由来のplasmid DNAには含まれていなかった。
 2H12では、8つ中4つで配列が読め、1つが終止A配列、1つが終止B配列であったが、残る1つが改変レクチンa配列であった。
 3B8では、8つのうち5つで配列が読めた。このうち3つが終止B配列と同じ位置のAsn127より5残基前にTAGの終止コドンを含むが、終止B配列とは異なるアミノ酸残基をもつ配列であった(以降「終止C配列」と記載)。残り2つは改変レクチンb配列であった。
 3H12では、8つのうち5つで配列が読め、4つが終止B配列であったが、残り1つが改変レクチンa配列であった。
 以上のように10種のクローンから得られた配列には相互に同一のものが見いだされ、元々同一の細胞クローンがパニングの段階で増殖を繰り返し濃縮されて来た結果であると考えられた。このクローンは少なくとも5種類の配列を含んでおり、このことは1つの2B4細胞に対して少なくとも5種類のレトロウイルス粒子が感染していることを意味する。
5. 改変レクチン発現細胞と各種ヒト由来がん細胞株との共培養実験
5-1. 改変レクチン安定発現レポーター細胞の作製とがん細胞との共培養
 4-2.で配列を解析したplasmid DNAから終止コドンを含まない改変レクチン遺伝子を含むベクターを2B4細胞に再度発現させるためにpMXS-neoベクターに繋ぎ変えた。
 pMXs-rep-neoベクターをEcoR IとXho Iで37℃, 3h処理し、目的のDNA断片を1.0%アガロースゲル電気泳動法で確認し切り出して、精製した。4-2.で配列を解析したplasmid DNAをEcoR IとXho Iで37℃, 3h処理し、目的のDNA断片(insert DNA)を1.0%アガロースゲル電気泳動法で確認し切り出して、精製した。
 insert DNA 4.5 mlとベクターDNA 0.5 mlを混和し、等量のLigation mixを加えて16℃で3h反応させライゲーションを行った。ライゲーション液5 mlを大腸菌(E.coli)JM109コンピテントセル50 mlへヒートショック法にて形質転換した。形質転換後、LB/Amp agar plateに塗布し一晩培養した。生じたシングルコロニーを5 mlのLB培地に植菌して更に一晩培養した後にplasmid DNAを抽出した。DNAの抽出はminiprepプロトコールに従った。
 抽出したplasmid DNA 4 mgを用いてリポフェクションし、上記<レトロウイルスによる遺伝子導入>の方法に従って、改変レクチン発現2B4細胞を作製した。
 作製後、0.6 mg/ml G418を含むR10培地に置換し7日間培養して改変レクチン発現細胞を濃縮した。
 がん細胞との共培養にはコントロールとしてintactな2B4細胞、mycタグのみ発現したmockレポーター細胞、intactなPNAを発現したレポーター細胞を用いた。それぞれの遺伝子配列をpMXs-rep-neoベクターにつなぎplat-E細胞を用いたトランスフェクション法で作製したレトロウイルスを2B4細胞に感染させ発現させた。発現後、G418によるセレクションを行い、発現細胞を濃縮した。
 図7に、改変レクチンa及びbを発現した細胞の割合を示す。G418による濃縮で、改変レクチンa発現細胞は30%程度濃縮され、改変レクチンb発現細胞は35.9%から97.3%まで濃縮された。
 次に、96-well plateに下表に示した各種ヒト由来がん細胞株18種を5 x 104cells/wellで滴下し、一晩培養した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 続いて2B4細胞、mock細胞、PNA発現細胞、改変レクチン提示細胞をそれぞれ5 x 104 cells/wellで滴下し、更に一晩培養した。翌日、蛍光顕微鏡で各wellを撮影した後に、すべての細胞を96-well U底plateに移した。T細胞表面抗原であるCD3eに対するモノクローナル抗体Anti-CD3e抗体(APC標識)(eBIoscience)を2 μg/mlにPBS(-)で希釈し、30 μl/well添加しon iceで30分染色した。FACS bufferで2回washした後、PIを終濃度1 mg/mlで添加してからFACS Caliburにて細胞の蛍光強度を測定し、FlowJoにて解析を行った。2B4細胞はCD3eを発現している。そのためCD3e陽性の細胞集団にゲートを設定し該当する細胞集団を10,000細胞測定した。
 用いた改変レクチン提示細胞は、改変レクチンa発現細胞、改変レクチンb発現細胞、及び後述する6-4.で同定された改変レクチンのクローンBの計3種類である。
 改変レクチンa発現細胞、及び改変レクチンb発現細胞の結果を、図8に示す。
 改変レクチンb発現細胞においては18種類どの細胞株との共培養でもGFPの発現は誘導されなかった(図9)。
 一方で、改変レクチンa発現細胞は、胃がん細胞株AZ521細胞との共培養で最も多くGFPが発現誘導され、14.3%の細胞で蛍光強度が10を超えた。これはレポーター細胞のみを培養した際のGFP発現が誘導された5.0%の2.9倍であった。次いで、膵臓がん細胞株MIApaca-2との共培養で9.8%の細胞にGFPの発現が誘導された。これはレポーター細胞のみの時の割合の2.0倍であった。他にメラノーマ細胞株SK-MEL-28で7.4%、肺腺がん細胞株A549で6.8%、GFPの発現が誘導され、それぞれレポーター細胞のみの時の1.5倍、1.4倍であった。
 それ以外の14種類の細胞株においてはレポーター細胞のみを培養した際のGFPを発現した細胞の割合に比べて1.0倍程度と大きく変化はしてなかった。スクリーニングの対象として用いたA549に対して6.8%の細胞でGFPの発現が誘導されているもののAZ521やMIApaca-2との共培養のほうがより多くの細胞でGFPが発現誘導される結果となった (Fig. 12-1)。
 次に、intactなPNA発現細胞をがん細胞18種と共培養した。その結果、PNA発現細胞はME180で最も多くの細胞でGFP発現が誘導され、41.7%の細胞で蛍光強度が10を超えた。これはレポーター細胞のみ培養時の6.7倍だった。次いで口腔扁平上皮がん細胞株HO-1-u-1で34.9%、子宮がん細胞株HeLa S3で31.1%、A549で14.5%、卵巣明細胞がん細胞株ES-2で12%、骨原性肉腫細胞株HOSで9.3%の細胞でGFPの発現が誘導された。それぞれ、レポーター細胞のみ培養時の5.6倍、5.0倍、2.3倍、1.9倍、1.5倍であった。PNA発現細胞はG418による濃縮によりPNAを90.7%発現している(図7)。
 PNA発現細胞の持つがん細胞に対する親和性の結果は、本研究で得られた改変レクチンa発現細胞の持つがん細胞に対する親和性の結果と大きく異なった。
 クローンBの結果を図10及び11に示す。
 Mock レポーター細胞が癌細胞との結合性を示さないのに対し、PNA 発現レポーター細胞は、子宮頸扁平上皮癌細胞株であるME180 細胞と口腔頚扁平上皮癌細胞株であるHO-1-u-1 細胞にとても結合した。また、クローンB発現レポーター細胞は、ME180 細胞とHO-1-u-1 細胞に対してPNA 発現レポーター細胞よりもさらに強い結合性を示した。
5-2. がん細胞株の糖鎖合成阻害剤処理によるリガンド候補の絞り込み
 HO-1-u-1細胞を、N型糖鎖合成過程の酵素を阻害する薬剤2種(KIfnesine : KIF, Swainsonie : SW)及び、O型糖鎖合成阻害剤であるbensyl-GalNAcで処理し、細胞表面糖鎖構造を変化させた。用いた薬剤の使用濃度はKIF 2 mg/ml、SW 10 mg/ml、bensyl-GalNac 1 mM/DMSOである。HO-1-u-1細胞を5 x 104cells/wellで6-well palteに播き、各種薬剤存在下で48h培養した。薬剤処理したHO-1-u-1細胞を回収し、5 x 104cells/wellで96-well plateに滴下し、各薬剤存在下で一晩培養した。改変レクチンa発現細胞及びPNA発現細胞を5 x 104 cells/wellで滴下し、更に各薬剤存在下で一晩培養した。蛍光顕微鏡で撮影した後にAnti-CD3e抗体(APC標識)でon iceにて30 min染色した。FACS CaliburでCD3e陽性細胞集団を10,000細胞測定して、FlowJoで解析した。
 KIFはN型糖鎖合成過程のGolgi mannosidase Iの阻害剤で、M9糖鎖からM8B糖鎖へのトリミング、およびM8B糖鎖からM5糖鎖へのトリミングを阻害する。その結果、細胞表面糖鎖構造は主にM9のような高分子量のHigh-mannose型となる。
 SWはGolgi mannnosidase IIの阻害剤で、Complex型糖鎖を減少させ細胞表面はGlcNAcM5糖鎖が蓄積する(図12)。
 また、O型糖鎖合成阻害剤のbensyl-GalNAcは疎水基を持つために細胞内に取り込まれ、O型糖鎖の根元に存在するGalNAcと同様にガラクトース転移酵素の基質となり、それ以降の糖鎖の伸張を競合的に阻害する。
 クローンa発現レポーター細胞と結合性のみられた5種類のヒトがん細胞に対して、糖鎖合成阻害剤を処理し、GFPの産生に対する影響を調べた。その結果、いずれもKIF処理でGFPの産生が上昇した一方、SW処理およびbenzyl-GalNAc処理では変化しなかった(図13)。こと結果は、改変レクチンaが、高分子量のhigh-mannose型糖鎖に結合することを示唆している。
6-1. PNA糖結合部位改変レクチンライブラリーの作製(2)
 上述した「1. PNA糖結合部位改変レクチンライブラリーの作製(1)」と同様の方法で、但し、1-4.とは異なるランダムプライマーを使用して、別の態様の改変レクチンライブラリーを作製した。
 使用したプライマーは以下のとおりである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 このようなプライマーを使用することにより、PNAのループCの(Asn127)を保存し、124~126、128~131番目の計7アミノ酸がランダムに置換された改変レクチンライブラリーを得ることができる。
 その他は、上記1.及び2.の方法に準じて、改変PNAを提示する2B4レポーター細胞ライブラリーを作製した。
 コンピテンシー算出(1 μl あたり6200 個のコロニーが形成されたので、6200 cfu/μlの大腸菌液が2.8 ml 作製されたことになる。つまりライブラリーの規模は1.7×107/total)を踏まえて、15cm LB/Amp プレート一枚につき1×105 cfu となるようにまき、それを40 枚行ってプラスミドを抽出し、一つのプールとしたので、総じて4×106種類プラスミドを有したライブラリーと見なせる。
 セルソーターを用いてレクチンの発現している細胞を濃縮した結果、90%弱の発現率を有したレポーター細胞集団を得た。この濃縮した細胞をPNA 変異体ライブラリーとし、スクリーニングに用いた。
6-2. レポーター細胞と糖鎖ポリマーとの結合試験
 レクチンが糖鎖と結合するかどうかを確認するために、小スケールでレポーターアッセイを行った。糖鎖をプレート上に固定化するために、ポリアクリルアミド(PAA)が結合している糖鎖ポリマー(GlycoTech)を用いた。用いた糖鎖の種類を以下に示した。
 1. T 抗原(Galβ1-3GalNAcα-PAA)
 2. Tn 抗原(GalNAcα-PAA)
 3. LeC(Galβ1-3GlcNAcβ-PAA)
 4. Galα1-3GalNAcα-PAA、
 5. GalNAcα1-3GalNAcα-PAA、
 6. 血液型A 型抗原の先端構造(GalNAcα1-3Galβ-PAA)、
 7. 血液型B 型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ-PAA)、
 8. GlcNAcβ1-3GalNAcα-PAA、
 9. Galβ1-4GlcNAcα-PAA、
 10. LeX 抗原[Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ-PAA]
 11. α-Mannose-PAA
 12. β-GlcNAc-PAA
 13. Fucα1-3GlcNAcβ-PAA
 96-well ELISA plate(Greiner)に糖鎖ポリマー(10 μg/ml)を50 μl 加え、発現確認としてとして抗myc 抗体(5 μg/ml)を50 μl、糖鎖なしのwell にはコントロールとしてPBS(-)を50 μl 加え、4℃で一晩、固相化した。その後、各well をPBS(-)200 μl で2 回洗い、各レポーター細胞をR10 200 μl 中に5×104 cells となるように加え、37℃、CO25%で16 時間培養した。培養した細胞の培養上清を全量回収し、さらに付着している細胞をPBS-EDTA(0.5 mM)で剥がして回収した。PI を終濃度1 μg/ml で加えてGFP の蛍光強度をフローサイトメーターにより解析した。
6-3. 糖鎖ポリマーを用いたレポーター細胞のスクリーニング
 糖に結合しうる改変レクチンを細胞表面に発現しているレポーター細胞を、GFP の発現を指標にスクリーニングした。使用した糖鎖は、Tn 抗原(α-GalNAc)、LeC 抗原(Galβ1-3GlcNAcβ)、LeX[Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ]、GalNAcα1-3Galβ、血液型B 型抗原の尖端部位(Galα1-3Galβ)、GlcNAcβ1-3GalNAcα の6 種類である。
 6-well ELISA plate(Iwaki)に、各糖鎖ポリマー(10 μg/ml)を1 ml 加えて、4℃で一晩、固相化を行った。翌日well をPBS(-)で洗い、レポーター細胞を1×106cells/R10 3 mlを加え、16 時間培養した。培養したレポーター細胞を回収し、PBS(-)とPBS-EDTA(0.5mM)でそれぞれ一度ずつ洗った後、3%FBS を含むPBS-EDTA(0.5 mM)で1.0×106cells/ml 細胞を懸濁し、細胞塊をほぐすためにセルストレーナー付き5 ml チューブ(Becton Dickinson)に通した。それをFACS vantage SE(Becton Dickinson)使用して、レポーター遺伝子である細胞内のGFP 発現の高いものを選択的に回収した。具体的には、GFP 蛍光強度の上位約1%にゲートをかけて、無菌のFBS 入5 ml チューブに回収した。
 回収した細胞は遠心(440 g、5 分)後に上清を9 割除き、残液をR10 培地に懸濁し、3.5 cm dish にGentamicin sulfate salt(Sigma)を(終濃度 100 μg/ml)で加え、37℃、CO2 5%で培養した。
 各糖鎖でのスクリーニングは、この操作を3回繰り返すことで、糖鎖に結合しうるレクチン発現レポーター細胞を濃縮した。
 濃縮率を解析した結果を図14、15に示す。
 特に、LeC 抗原(Galβ1-3GlcNAcβ)、血液型B 型抗原の尖端部位(Galα1-3Galβ)、GlcNAcβ1-3GalNAcαの三種類の糖鎖について、糖鎖と結合しうるレクチン発現レポーター細胞が30%弱まで濃縮された。さらに、これらの三種類の糖鎖でスクリーニングを行ったレポーター細胞を限界希釈によってクローン化し、レポーターアッセイを試みた。36 個のクローンについて(3 種類の糖鎖それぞれ12 種類)レポーターアッセイを行った結果、スクリーニングに使用した糖鎖にはほとんど結合しなかった(図16-19)。
6-4. 限界希釈法によるクローン化、ゲノムDNAの抽出、改変レクチンDNA配列解析
 上記3.の方法に従って、糖鎖に結合しうるレクチン発現レポーター細胞をクローン化し、4.の方法に従って、ゲノムDNAを抽出し、DNA配列を解析した。
 クローンの中で、特に、LeC 抗原(Galβ1-3GlcNAcβ)では、クローン名2A1、2A10、2C1、2H10 の4 種類、血液型B 型21抗原の尖端部位(Galα1-3Galβ)では、クローン名1B12、2B1、2B7、2H4 の4 種類、GlcNAcβ1-3GalNAcα では、クローン名1D2、1G11、1H3、2G4 の4 種類のゲノムを抽出した。各クローン化された細胞を1~2×106cells 用意した。ゲノム抽出には、Qiagen flexi gene DNA Kit (Qiagen)を使用し、方法は添付されているプロトコールに従った。
 12種のクローンについて、それぞれ8コロニーからプラスミドを抽出し、配列を解析した。結果を図20に示す。
 スクリーニングに使用した糖鎖が違うクローン細胞間から、同じ配列が同定されるものもあった。結果的にリーディングフレームがずれた配列を含めると21 種類、フレームシフトがないものだけだと18 種類の独立配列を同定した。
 限界希釈後のレポーター細胞は多数の遺伝子が1つのクローン細胞に混在しているポリクローナルなレポーター細胞であることが解ったため、活性を持つ遺伝子を同定するべく再度同じpMXs ベクターを用いてPNA 改変レクチンのモノクローナルレポーター細胞を作製した。(配列毎に作製したレポーター細胞をそれぞれ(1)~(18)と表記することにした。詳細なレポーター細胞番号と配列は図21に示す。
 さらに、スクリーニングに使用した糖鎖ポリマーとのレポーターアッセイを行うことで、実際にレクチン活性を持つ配列を3種類同定した。しかし、レクチン活性を持たない配列や、フレームシフトをおこして発現しない配列も含まれていた。以後、レクチン活性を持った遺伝子配列を同定した順に、クローンA(レポーター細胞(11) : LeC(Galβ1-3GlcNAcβ) とGlcNAcβ1-3GalNAcα の糖鎖でスクリーニングしたレポーター細胞に含まれていた)、クローンB(レポーター細胞(1):液型B 型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ)を用いてスクリーニングしたレポーター細胞に含まれていた)、クローンC(レポーター細胞(4):LeC(Galβ1-3GlcNAcβ)と血液型B 型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ)を用いてスクリーニングしたレポーター細胞に含まれていた)と命名した。
 クローンA、B、Cレポーター細胞はスクリーニングした糖鎖に結合できることがわかった。さらに、詳細な特異性を確認するためにT 抗原を含む8 種類の糖鎖ポリマーを用いてレポーターアッセイを行った結果、同定した3種類の改変レクチンは、もとのPNA のリガンド糖鎖であるGalβ1-3GalNAcα に強く結合した(図22)。
 以下に特異性を示す。(糖鎖構造式に下線のあるものがスクリーニングに使用された糖鎖。下線が二種類あるものは、両方のスクリーニングで得られたクローンを示す)クローンAは、T 抗原(Galβ1-3GalNAcα)>>LeC(Galβ1-3GlcNAcβ)>血液型B 型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ)>GlcNAcβ1-3GalNAcα>Tn 抗原(α-GalNAc)の順に結合した。クローンB は、T 抗原(Galβ1.3GalNAcα)>>血液型B 型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ)>LeC(Galβ1-3GlcNAcβ)の順に結合した。クローンC は、T 抗原(Galβ1-3GalNAcα)>>LeC(Galβ1-3GlcNAcβ)>血液型B 型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ)の順に結合した。
 PNA(WT)はマメ科レクチンの中でも特にGal 結合特異性が高く、GalNAc には結合特異性を示さないレクチンで有名である。本研究で行ったPNA(WT)レポーター細胞を用いたレポーターアッセイでは、T 抗原(Galβ1-3GalNAcα)>>LeC(Galβ1-3GlcNAcβ)に結合することが確認されたが、他の、血液型B 型抗原の先端構造(Galα1-3Galβ)GlcNAcβ1-3GalNAcα、Tn 抗原(α-GalNAc)には結合する結果は得られていない。つまり、クローンA、B、C は本スクリーニングにより、PNA と異なる特異性を持つレクチンであった。
6-5. 糖結合特異性を持った改変レクチン発現モノクローナルレポーター細胞の濃縮
 レポーターアッセイにより、18種類の改変レクチンのモノクローナルレポーター細胞の中から、糖結合活性をもつレクチンを発現するものを3 種類同定した。同定した順にクローンA、B、Cと命名した。これら3種類の改変レクチンのクローンの糖結合活性をより詳細に解析するために、レクチン発現量の高い改変レクチンクローンの発現レポーター細胞をより濃縮することを試みた。
 6-well ELISA プレートに、抗myc 抗体(5 μg/ml)を1 ml 加え、4℃で一晩固相化した。各well をPBS(-)で2 回洗った後、クローンA、B またはC のレポーター細胞を1×106個/R10 3 ml 加え、37℃、5% CO2、16 時間培養した。各細胞をPBS(-)とPBS-EDTA(0.5mM)で一度ずつ細胞を洗った後、3%FBS を含むPBS-EDTA(0.5 mM)で1.0×106cells/mlの濃度になるように懸濁し、セルストレーナー付き5 ml チューブ通し、細胞凝集塊を除去した。細胞の濃縮にはFACS vantage SE を使用して、GFP の蛍光強度の強い細胞を選択的に分取した。回収の際には、FBS を1 ml 加えた無菌の5 ml チューブを使用した。
 濃縮した改変レクチン発現モノクローナルレポーター細胞は、それぞれ6-2.の方法に従って結合試験に供した。
7-1. PNA糖結合部位改変レクチンライブラリーの作製(3)
 上述した「1. PNA糖結合部位改変レクチンライブラリーの作製(1)」と同様の方法で、但し、1-4.とは異なるランダムプライマーを使用して、別の態様の改変レクチンライブラリーを5種類作製した。
 使用したプライマーは以下のとおりである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 これらのプライマーをそれぞれ使用して、以下の5種類のライブラリーを作製した(図23)。
 PNA 変異体ライブラリー(1):124~131 番目をランダムに変異を入れた。但し、糖結合ポケットのアミノ酸127 番目のアスパラギン(Asn127)だけは、アスパラギン酸:D、グルタミン酸:E、グルタミン:Q の3 種類になるように変異を入れた。コドンの関係上、ヒスチジン:H も含む(N:アスパラギンは含まない)。
 PNA 変異体ライブラリー(2)~(5):(2)~(5)に共通して、Asn127を、Nを含めたアスパラギン酸:D、グルタミン酸:E、グルタミン:Q の4 種類になるように作製した。但し、コドンの関係上、ヒスチジン:H、リジン:K も含む。また、ライブラリーの結合ポケットのAsn127のN末側に、さらにランダムに1、2、3、4個分アミノ酸を拡張したライブラリーを作製し、それぞれ(2)、(3)、(4)、(5)とした。
 その他は、上記1.及び2.の方法に準じて、改変PNAを提示する2B4レポーター細胞ライブラリーを作製した。
 作製したライブラリーのスケールは、(1):3.0×106 cfu/total、(2):3.7×106 cfu/total、(3):3.2×106cfu/total、(4):3.1×106cfu/total、(5):4.2×106cfu/total であった。実際には、15 cm LB/Amp プレート1枚に1.0×105cfu となるように、各ライブラリーにつき大腸菌液を((1)30 枚、(2)18 枚、(3)16 枚、(4)15 枚、(5)21 枚、計100 枚)にまいて、その大腸菌からプラスミドを抽出したので、それぞれのライブラリーはそれぞれ(1)3.0×106、(2)1.8×106、(3)1.6×106、(4)1.5×106、(5)2.1×106種類のプラスミドを含有していることになる。但し、この中には、stop codon を含んだ発現しないプラスミドも含まれる。
7-2. 糖鎖ポリマーを用いたレポーター細胞のスクリーニング
 6-3.の方法に従って、糖に結合しうる改変レクチンを細胞表面に発現しているレポーター細胞を、GFP の発現を指標にスクリーニングした。レポーター細胞として、ライブラリー(1)、又はライブラリー(2)~(5)mixを用いた。
 ライブラリー(1)とライブラリー(2)~(5)をウイルス感染させた細胞は、レクチン発現率が20%程度だったため、スクリーニング効率を上げるために、セルソーターを用いてレクチンの発現している細胞を濃縮した。ライブラリー(1)は約50%に、ライブラリー(2)~(5)mix は約95%に発現率が濃縮された。この時点でレポーター細胞は両方とも1.5×106個以上回収した。
 ライブラリー(1)発現レポーター細胞は、Tn 抗原(α-GalNAc)、LeC(Galβ1-3GlcNAcβ)、LeX[Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ]の3 種類の糖鎖についてスクリーニングした。
 これらの糖鎖ポリマーとレポーター細胞とを共培養した後、レポーター遺伝子であるGFP の発現率が高いレポーター細胞の上位1%にゲートをかけ、糖鎖に結合するようなレクチン発現レポーター細胞をセルソーターで3 回濃縮した。毎回、3×104 程度のレポーター陽性の細胞を回収した。しかし、3種類の糖鎖のスクリーニングに関してすべてで、糖鎖に結合しうるレポーター細胞が濃縮されると共に、細胞自身に発現している糖鎖の相互作用によって刺激が入ると思われるレポーター細胞も濃縮された(図24、25)。
 ライブラリー(2)~(5)mix発現レポーター細胞は、α-Man、β-GlcNAc、Fucα1-3GlcNAc の3種類の糖鎖についてスクリーニングした。
 これらの糖鎖ポリマーとレポーター細胞とを共培養し、糖鎖に結合しうるレクチン発現レポーター細胞をGFP の陽性率上位1%にゲートをかけ、セルソーターで3 回濃縮した。毎回、3×104 程度のGFP 上位1%のレポーター細胞を回収した。しかし、ライブラリー(1)の結果同様、3 種類の糖鎖のスクリーニングに関してすべてで、糖鎖に結合しうるレクチン発現レポーター細胞を濃縮するとともに、細胞自身の糖鎖の相互作用(シスリガンドやトランスリガンド)によって刺激の入ると思われるレポーター細胞も濃縮された。(図25、26)。
7-3.薬剤処理による2B4 細胞表面の糖鎖構造変化
 レポーター細胞を濃縮する過程で、レポーター細胞表面の糖鎖にも結合して細胞内に刺激が入るレポーター細胞が多く存在することが示唆された。その真偽を確かめるために、いくつかの薬剤処理を行い、細胞表面の糖鎖を改変し、その応答を見た。
 6-4.で限界希釈によってクローン化した細胞の中で、通常の培養の時点でGFP 蛍光の強い2H10 クローン細胞を、2 μg/ml kifunensine(KIF,Calbiochem)、10 μg/ml swainsonine(SW,Calbiochem)、1 mM Benzyl-2-acetamido-2-deoxy-α-D-galactopyranoside (Bz-GalNAc,Santa Cruz)存在下で37℃、5% CO2、2 日間培養し、細胞表面糖鎖を改変した。
 薬剤処理の前後で、2H10 クローンのレポーター細胞のGFP 蛍光強度をフローサイトメーターで解析することにより、レポーター細胞同士の相互作用(例えば、シスのシグナルなど)(図27)の有無を確かめた。
 N 型糖鎖を変化させる薬剤KIFではGFP の平均蛍光強度が13.4 から11.4に下がり、SWでは13.4 から17.2 に上昇した。O 型糖鎖の伸長を阻害する薬剤であるBz-GalNAc 処理を行うと、GFP の平均蛍光強度が13.4 から6.92 まで低下した。
7-4. 薬剤処理による細胞表面の糖鎖構造変化の確認
 細胞表面の糖鎖構造の変化の確認には、ビオチン化DBA(EY laboratories)、ビオチン化PNA(生化学工業)、ビオチン化SSA (生化学工業)、OS-9 のMRH ドメイン(当研究室卒業生三上氏が調製したタンパク質のサンプル)4 種類を用いた。これらのレクチンとPE 標識SA(SA-PE,BD Pharmingen)をモル比4:1 で混合し、4℃で一時間静置し、ビオチン化レクチンを四量体化した複合体を作製した。96-well U 底プレートに薬剤処理した細胞を1×105 個添加した。先ほどテトラマー化したPE 標識SA-DBA 複合体(1 μg/ml)、PE 標識SA-PNA 複合体(1 μg/ml)、PE-標識SA-SSA複合体(1 μg/ml)、PE-標識SA-OS-9 MRH ドメイン(1 μg/ml)を各well に10 μl 加えて、37℃で30分反応させた。細胞をHBS で2 回洗い、フローサイトメーターを用いて、ビオチン化レクチンの結合をPE の蛍光強度を指標に解析した。
7-5. 改変レクチンのFc 融合タンパク質を用いたアッセイ系検討
 改変レクチンとヒト IgG-Fc 領域を融合させた二量体化組換えタンパク質を作製し、(図28)、それを用いて糖鎖との親和性をある程度定量することを試みた。Fc 融合タンパク質では、アビディティ効果によって、リガンドとなる分子との見かけ上の親和性が増加することが期待でき(Lee, R.T. and Y.C. Lee, Glycoconj J, 2000. 17(7-9): p. 543-51.; Knibbs, R.N., et al., Biochemistry, 1998. 37(48): p. 16952-7.)、レクチン-糖鎖間の比較的弱い結合の定量に適すると考えられる。
7-5-1. 改変レクチン遺伝子発現用pRc-CMV-hIgG-Fc ベクター構築
 改変レクチン-Fc 融合タンパク質を作製するために、PNA、クローンA、B、C の4 分子をコードする遺伝子部位をFc 融合タンパク質発現用pRc-CMV にクローニングした。 具体的な方法を以下に示した。
 [ベクター(pRC-CMV-Myc-hIgG)(Yamamoto, K. and Kawasaki, N. Methods Enzymol. 478 233-240 (2010))]
 このベクターは、目的タンパク質の N 末端にMyc タグ、C 末端にヒト IgG-Fc 領域を付加して発現できるように設計されている。それぞれのレポーター細胞作製に使用されたPNA(変異体)-pMXs のコンストラクトを鋳型に、シグナル配列と終止コドンを除いた全長を増幅するプライマーを設計し(下表参照)、PCR を行った。PCR 条件は、10×KOD plus Buffer を1×Buffer に、dNTPs 終濃度0.2 mM、MgSO4 終濃度1 mM、鋳型の改変PNA-pMXs プラスミド5 ng、リン酸化プライマーFwとRv 終濃度各々1.5 μM、KOD plus 0.8 U を加え、MilliQ で30 μl 溶液に調製した。反応条件は、94℃ 2分で熱変性した後、94℃ 15 秒の熱変性、 56℃ 30秒のアニーリング、68℃ 1分の伸長反応を30 サイクル繰り返し、 最後に再度68℃で7分伸長させた。以下に使用したプライマーの配列を示す。また、ゲル抽出・精製を行った。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 PCR 後のDNA 標品とHpaI(Takara)で制限酵素処理した pRc-CMV-Myc-hIgG を混和した(インサート:ベクター比=10:1)溶液と等量のDNA Ligation Kit ver. 2 のLigation Solution Iを加えてライゲーション反応を16℃で一晩行った。その後、DH5α に形質転換した。翌日コロニーから、プラスミドを抽出し、シークエンス解析により、PNA 改変レクチン-Fc融合タンパク質発現ベクター[pRc-CMV-Myc-PNA(変異体)-hIgG]を得たことを確認した。(図28)。
7-5-2. リポフェクションによる改変レクチン‐Fc 融合タンパク質作製と発現確認
 6.0 cm dish にHEK293T 細胞を2×106 個/D10 5 mlで播いて、一晩培養した。各Fc 融合タンパク質発現ベクター(クローンA、B、C、PNA(WT)の4 種類)またはpRc-CMV-Myc-hIgGベクター (mock) 8 μg/OPTI-MEM 500μl とlipofectamine 2000 20 μl/OPTI-MEM 500 μlを混和し、室温で20分おいた。このlipofectamine 2000 と各Fc 発現用プラスミド混合液1 mlを培養中のHEK293T 細胞に加えて、さらに48時間培養した。培養上清6 mlを回収し、Fc 融合タンパク質を得た。
 Fc 融合タンパク質の発現は,ウェスタンブロットによって確認した。まず、培養上清を500 g、10 分で遠心し、上清を全量回収した。Protein G-Sepharose Fast Flow(GE Healthcare)40 μl(50% v/v) を回収した上清に加え,4℃で一晩反応させた。PBS(-)でビーズを2 回洗浄した後、上清を捨て、ビーズに100 mM Glycine-HCl(pH 3.0)を100 μl 加えビーズを攪拌した。遠心後(4℃、3,300 g、5分)、上清を回収し、1M Tris-HCl を用いて、pH を7.0 に調整した。後に、SDS-PAGE とウェスタンブロットを行った。
 転写後のPVDF 膜を3% Difco Skim Milk (Becton Dicknson)を含むTBS-T 中にて4℃で3時間以上振盪し,ブロッキングを行った後,PVDF 膜をTBS-T で三回洗浄した。TBS/T で6000 倍希釈したalkaline phosphatase (AP)-labeled goat anti-human IgG を室温で1時間振盪しながら反応させた。その後,PVDF 膜をTBS-Tで3 回洗浄し,終濃度0.33 mg/ml でnitroblue tetrazolium (NBT;和光純薬工業)と0.17 mg/ml で5-bromo-4-chloro-3-indolyl phosphate disodium salt (BCIP; ICN)を含む100 mM Tris-HCl (pH 9.5),100 mM NaCl,5 mM MgCl2溶液を加え発色させた。還元状態にて目的の分子量の位置にバンドが検出された(図29)。
7-5-3. 改変レクチンFc融合タンパク質安定発現細胞株の作製
 HEK293 を 6-well plateに1×106cells/2 ml R10でまき、一晩培養した。
 ScaI(TOYOBO)処理した改変レクチン-hFc/pRC-CMVプラスミド2 μgをOPTI-MEM 250 μlに懸濁した。また、Lipofectamine 2000をOPTI-MEM 250 μgに懸濁した。それぞれRTで五分静置した。
 上記プラスミド希釈培地とLipofectamine 2000希釈培地をMixし、室温で20分静置した。続いて、前日培養していたHEK293に上記Mixtureを500 μl加え、2日間培養した。
 G418にてセレクション(1 μg/ml)を二週間行った。培地交換は死細胞が増えてきたら適時行った。限界希釈により、セレクションした細胞のクローン化を行った。ウエスタンブロッティングを行い(AP標識抗ヒトIgG抗体をプローブとした)、タンパク質発現量の多いクローンを選択した。
7-5-4. 改変レクチンFc融合タンパク質の精製
 HiTrap-rProtein A FF(GE Healthcare)カラムを用いて、アフィニティ精製を行った。
結合バッファー
  20 mMリン酸バッファー pH8.0
溶出バッファー
  20 mMリン酸&40 mMクエン酸バッファー pH 3.0
溶出条件
  0-50% Elution Buffer (EB) カラム体積の3倍
  50% EB   カラム体積の5倍
  50-100% EB  カラム体積の10倍(ここで改変レクチンFc融合タンパク質が溶出) 
7-5-5. ヒトがん細胞株との結合試験
 それぞれのがん細胞を1×105で96-well U底プレートに細胞をまいた。改変レクチンFc融合タンパク質[20 μg/ml]を各20 μl添加した。この時、単糖阻害(Gal 50 mM、Man 50 mM)も同時に行った。30分、4℃で静置した後、FACSバッファー150 μlを各ウェルに添加し、遠心後(190 g, 5 min, 4℃)上清を除くという操作を二回行った。PE標識抗ヒトIgG-Fc抗体(10 μg/ml)を各ウェルに10 μl加え、30分、4℃で静置した。FACSバッファー150 μlを各ウェルに添加し、遠心後(190 g, 5 min, 4℃)上清を除くという操作を二回行った。細胞を140 μlのFACSバッファーに懸濁し、PI(終濃度1 μg/ml)を加え、FACS Caliburを用いてPE蛍光強度を解析した。結果を図31に示す。図示されるとおり、細胞への改変レクチンの結合は増強された。図中、二次抗体のみが灰色で塗りつぶしたもの、RC融合タンパク質で染色したのが実線で表される。ただし、mockは改変レクチンを融合させていないFcタンパク質である。
8-1. 組換え改変レクチンの大量発現と精製
8-1-1. 大腸菌による組換え改変レクチン発現用プラスミドの作製
 EcoRI、XbaI処理したpColdIベクターに、同様の制限酵素でpMXs-改変レクチンプラスミドから切り出した改変レクチンcDNAを、Ligation Mix(TAKARA)を用いてライゲーションを行った。
8-1-2. 大量発現系
 上記で作製したコンストラクトをヒートショック法で大腸菌BL21(DE3)pLysSにトランスフォーメーションし、LB/Amp/Cam[Chloramphenicol]寒天プレートに巻いた。37℃で一晩培養した。プレ培養 LB/Amp/Cam培地4 ml に生えたコロニーをつついた楊枝を加え、培養し、500 ml のLB/Amp/Cam培地に2 mlのプレ培養液を加え、4時間培養、37℃で振盪培養した。
 吸光度(OD600)を測り、0.6付近を確認し、4℃で30分静置した。IPTGを終濃度0.5 mMで加えた。振盪培養 16℃ 一晩行い、4000g、4℃、15分で集菌し、TBSで菌体を洗った。
 TBS 12 mlに懸濁し、PMSF/イソプロパノールを0.5 mMで加え、-80℃で凍結した。
 室温で融解し、1 mM DTT、0.5% Triton-X100 になるように加え、超音波で破砕し10,000 rpm、10分遠心した。洗浄バッファー(TBSに0.5% Triton-X100、1 mM EDTA、1 mM DTTで加えたバッファー)でペレットを洗った後、上清を除き、ペレットを可溶化バッファー(Tris-HCl pH8.0、6 M グアニジン塩酸、0.1 mM EDTA、1 mM DTT)10mlに懸濁する。4℃、一晩ゆっくり振盪した。
 リフォールディングのために、リフォールディングバッファー(50 mM Tris-HCl pH 7.5、150 mM NaCl、1 mM CaCl2、1 mM MnCl2、 0.4 M L-Arginine、0.5 mM PMSF)145 mlに上記可溶化サンプルを、攪拌しながらタンパク質が凝集しないように5 ml加えた(30倍希釈)。
 遮光し、4℃で2日間インキュベートした後、10 mM Tris-HCl pH 7.5、150 mM NaCl、1 mM CaCl2、1 mM MnCl2、5Lに4℃で透析を二回行い、改変レクチン画分とした。
8-1-3. 改変レクチン画分を用いた赤血球凝集試験
 マウス(BALB/c)から採血し、4%赤血球浮遊液(PBSで希釈)を調製した。シアリダーゼ処理を37℃で1時間(1.2 mlの溶液に対して、シアリダーゼ10 mU加えた)行い、リフォールディングしたタンパク質を用いて、96-well U底プレートの各ウェルに100 μlの二倍希釈系列を調製した。続いて、4%赤血球浮遊液を25 μlずつ各ウェルに添加し、RTで30分間静置した。結果を図32に示す。
 コントロールとして、コンカナバリンA(Con A)を用いた。改変レクチンは、シアリダーゼ処理赤血球を凝集させ、A,B,Cは、それぞれ8,4,2倍希釈まで凝集活性が検出された。PBSはレクチンを含まないネガティブコントロールを示す。
8-1-4. ラクトースカラム(Lactose-Sepharose)による改変レクチンのアフィニティ精製
 上記の透析後の改変レクチン画分を、5ml容量のラクトースカラムに全量のせる。流速は0.2 ml/minとした。10 mM Tris-HCl pH 7.5、150 mM NaCl(TBS)50 mlで洗い(流速 0.2 ml/min)、0.5 Mラクトースを含むTBSで、カラムに結合した改変レクチンを溶出した。溶出したフラクションを集め、MilliQに透析した。透析用のMilliQは5回交換した。凍結乾燥し、精製改変レクチンを得た。
 アフィニティクロマトグラフィーで精製した精製改変レクチンA,B,CのSDS電気泳動(還元条件下)を行い、純度を確認した結果を図33に示す。いずれも、約30kDa付近に一本のバンドが検出された。
9. PNA糖結合部位改変レクチンライブラリーの作製(2)
9-1.改変レクチンライブラリー発現レポーター細胞の作製
 本発明者らが作成したループC改変ライブラリープラスミドを2B4細胞にリポフェクションによって形質転換し、レポーター細胞を作製した。
 野生型であるピーナッツレクチン(PNA)のループCを含む前後のアミノ酸配列は、VEFDTYSNSEYNDPであり、これに対しループC改変ライブラリーは以下の6 種となっている。
[1] VEFDXXXNXXXXDP
[2] VEFDXXXZXXXXDP
[3] VEFDXXXXBXXXXDP
[4] VEFDXXXXXBXXXXDP
[5] VEFDXXXXXXBXXXXDP
[6] VEFDXXXXXXXBXXXXDP
 [1]は 野生型PNAの 127 番目のアスパラギン酸(127N)を保存し、124~126、 128~131 番目のアミノ酸にランダム変異を導入した。[2]はライブラリー[1]の 127N を Z に変化させた。ライブラリー[3]~[6]は、127N を B に変化させ、さらに127N より5’末側にアミノ酸のランダム変異導入部位を 1~4 アミノ酸残基分拡張したものであり、レポーター細胞はこれら6種のライブラリープラスミドを等量混ぜ、トランスフェクションしたものである。ライブラリーのアミノ酸の表記は、X:ランダムなアミノ酸、Z:Asp or Glu or Gln or His、B:His or Asp or Glu or Asn or Lys or Glnを示す。
 具体的な方法を以下に示す。
 レトロウイルスパッケージング細胞であるPlat-E細胞を、6-well plate 2 枚に各wellあたり2 mlのD10培地で7~9割のコンフルエントの状態で培養した。1 wellあたり、改変ライブラリープラスミド 4 μgと無血清OPTI-MEM培地(Invitrogen)250μLを混ぜ、室温で5 min静置した(A)。一方、1 wellあたり、Lipofectamine 2000 (Invitrogen)10 μLとOPTI-MEM培地 250 μlを混ぜ、室温で5 min静置した(B)。(A)と(B)を混和し、20 min静置した。混合液を各wellにつき約500 μL分注し、2日間37℃で培養した。培養上清を回収し、4℃、3000 rpm,10 min遠心し、その上清をレトロウイルス液とした。5×104個の2B4細胞を6-well plateにR10 2mlでまき、ポリブレンを終濃度10 μg/mlとなるように加えた。2B4、1 wellに対して、2~2.5 mlのレトロウイルス液を加え、48 h、37℃で培養し、12 well分の細胞を一つのプールとして回収し、レポーター細胞とした。
9-2.レポーター細胞上の改変レクチンの発現確認
 今回作製したレポーター細胞は、発現する改変レクチンのN末端側にmycタグが発現するようにプラスミドが作製されている。このため、抗myc抗体を用いてmycタグの発現を指標として発現率(レトロウイルス感染率等)を調べることが出来る。
 方法を以下に示す。
 96-well ELISA plateに1×105個程度の細胞をR10培地で浮遊させ、 20μlずつ撒き、5 μg/mlの抗myc抗体20 μlを加えた(抗myc抗体のコントロールはPBSとした)。on iceで30 min静置した後、PBSを200 μl加え、1800 rpm 4 min 遠心し、上清を洗い落とした。Vortexで撹拌した後、二次抗体としてPE標識ヤギ抗マウスIgGを20 μl加え、on ice 遮光で30min反応させた。PBSを200 μl加え、1800 rpm 4 min 遠心し、上清を洗い落とした。140μl のFACS bufferで懸濁回収し、フローサイトメトリーによりPEの蛍光を検出することで発現を確認した。改変レクチンライブラリー発現細胞の抗myc抗体による染色の結果を図34に示す。右の線が抗myc抗体による染色、左の線が抗体を加えなかったコントロールを示している。この結果、約10~13%の2B4細胞に改変レクチンの発現確認ができた。これらの改変レクチンライブラリー発現細胞からスクリーニングを行った。
9-3.新規糖鎖ポリマーを用いたレポーター細胞のスクリーニング
 2B4レポーター細胞 には、IL-2 プロモーターの下流に、GFP 遺伝子が挿入されており、細胞表面のレクチンの架橋によって、細胞内にGFP産生が誘導される。糖鎖リガンドや、抗 myc 抗体とレクチン発現細胞を共培養後に、GFP の蛍光を測定することで、レクチンと糖鎖または myc タグと抗 myc 抗体の結合を検出できる。これを利用して、レクチンを発現させたレポーター細胞をスクリーニングした。今回、スクリーニングに用いる糖鎖として、新規のα-Mannoseとα-Fucose を選んだ。
 方法を以下に示す。
 6-well ELISA plateに各糖鎖ポリマー 10 μg/mlを1 ml加え、4℃ O/Nで固相化(固相化は各糖鎖ポリマーにつき3 well行い、回収の際はまとめてソーティングした)した。
 wellをPBS 1 mlで洗い、レポーター細胞をR10培地 3 mlに1×106個となるようまき、37℃、16 h培養した。上清を取り除き、PBSで軽く洗浄した後、FBSを 3%含む0.5 mM PBS/EDTA 4~5 mlで1×106 cell/mlとなるよう懸濁した。
 細胞塊をほぐすため、セルストレナー付き5 mlチューブに通した。
 FACS Vantage SEを使用して、GFP蛍光強度の上位1%にゲートをかけて、無菌のFBS入り5 mlチューブに回収した後、1000 rpm、5minで遠心し、上清を9割ほど除き、残液をR10培地 3 mlに懸濁し、3.5 cm dishにゲンタマイシンを終濃度 200 μg/mlで加え、37℃で培養した。この操作を、5回繰り返した。
9-4.レポーターアッセイによるスクリーニング効率の確認
9-4-1.α-Mannoseを用いたスクリーニング
 まず、スクリーニングで細胞が濃縮されているかを確認するため、レポーターアッセイを行った。
 96-well ELISA plateに、(i)コントロールとしてPBS、(ii)スクリーニングに用いた各糖鎖ポリマー (10μg/ml)、(iii)PNAのリガンドであるGalβ1-3GalNAcα-ポリマー (10 μg/ml)、(iv)抗myc抗体 (5 μg/ml)をそれぞれ2 wellずつ加え、4 ℃ O/Nで固相化した。
 上清を回収し、wellを200 μlのPBSで洗った後、レポーター細胞をR10 200 μl に5×104/well でまき、16 h、37℃で培養した。上清を回収し、50 μlの0.5 μM PBS/EDTAで懸濁し細胞を回収し、3 μg/mlのPIを50 μL加え(最終濃度 0.5 μg/ml)、GFPの蛍光強度をFACSで解析した。上記(iii)のプレートを用いて、PNA(ポジティブコントロール)の測定結果を図35に示す。
 pMXs-PNAを2B4にリポフェクションし、PNAレポーター細胞とした。PNAのリガンドはGalβ1-3GalNAcであり、これを固相としてPNAレポーター細胞をレポーターアッセイしたところ、実験系の再現性を確認することができた(実線)。Galβ1-3GalNAcを固相化しなかったwellを用いたコントロール(灰色部分)を重ねて示す。
 また、(ii)のプレート(α-Mannoseを固定)を用いて、ループC改変ライブラリーのスクリーニングを行った結果を図36に示し、スクリーニングを行った同じ細胞を(iv)のプレート(抗Myc抗体を固定)を用いてレポーターアッセイを行った結果を図37に示す。
9-4-2.α-Fucoseを用いたスクリーニング
 方法は9-4-1.と同様である。
 (ii)のプレート(α-Fucoseを固定)を用いて、ループC改変ライブラリーのスクリーニングを行った結果を図38に示し、スクリーニングを行った同じ細胞を(iv)のプレート(抗Myc抗体を固定)を用いてレポーターアッセイを行った結果を図39に示す。
 α-Mannoseによる系ではソーティングは出来ているものの、コントロールと糖鎖刺激に有意差が得られなかった。2B4レポーター細胞上の糖鎖と結合する改変レクチン発現細胞が濃縮されている可能性が考えられた。α-Fucoseの系は、コントロールに比べ明らかに糖鎖刺激が入っている細胞集団が存在したため、ソーティングを終え、次の段階であるクローン化、DNA配列の解析及び活性確認を進めた。
9-5. 限界希釈による改変レクチン発現細胞のクローン化及びそれらのレポーターアッセイ
 細胞数を数え、2×10cell/mlになるよう細胞懸濁液を調製した。200 倍希釈を二回行った後、細胞を96-well plateに1 cell/well/200μl  R10になるよう撒き、さらにこれに対する三倍希釈系列(×1/3,1/9,1/27)を作り、合計4枚の96-well plateにて培養した。
 明らかに他に比べ細胞数が多いwellを省き、細胞の増殖が確認された14 wellを24-well plateに拡大培養し、その後さらに6-well plateへ拡大培養を行い、レポーターアッセイ(レポーターアッセイの手順は9-4.と同様である)を行った。
 結果を図40に示す。クローン化した14種類の細胞について、α-Fucoseを固相化したプレートを用いてレポーターアッセイを行った。下段がα-Fucoseを固相化したもの、上段が固相化していないものを示す。実線がクローン化した改変レクチン発現細胞を固相化したα-Fucoseで刺激したもの、灰色部分は糖鎖刺激を加えていないクローン化した改変レクチン発現細胞である。14種の細胞群から、活性の認められたNo.2,3,4,6,8の計5つを選択し、DNA抽出することとした。
9-6.改変レクチン発現細胞クローンからのDNA抽出
 FlexiGene DNA kitを使用した。
 2×10cellを1.5 mlチューブに入れ、300 g、5 min遠心した後、上清を取り除き、300 μlのBuffer FG1を細胞ペレットに添加、ピペッティングした。10,000 g、20 sec 遠心処理した後、上清を捨て、Qiagen protease添加済のBuffer FG2を300 μl添加し、添加直後、ペレットが無くなるまでボルテックスで撹拌した。65℃で10 minインキュベートし、300 μlのイソプロパノールを加え、転倒混和した。10,000 g、3 min遠心処理した後、上清を取り除き、dry up後、70% EtOH 300 μl添加し、Vortex後、10,000 gで3 min遠心した。上清を捨て、dry upした後、200 μlのBuffer FG3を添加し、vortex後、65℃、5 minインキュベートしDNAを溶解させた。
9-7.改変レクチン遺伝子のpBlueScriptへのサブクローニング
 Primer(PNA-F,-R)のリン酸化を行った。なお、プライマーには、後にpMXsに付け替えをするため、細胞から抽出したDNAを5'側にEcoRI、3'側にXhoIサイトが付加されている。
 PCR反応は以下の条件で行った。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 QIAquick Gel Extraction kitを用い、ゲル抽出した後、pBlueScriptベクター(Sma I,Bap処理済)とLigationし、DH5αにトランスフォーメーションした後、LB/Amp plateに撒きO/N。コロニーPCRの後、目的インサートが挿入されているプラスミドをそれぞれ4コロニーずつ、合計20サンプルをLB/Amp液体培地で振盪培養した。その後、プラスミドを抽出し、sequence解析を行った。全20コロニーから得られた配列は以下の3種類であった。このことは、いずれのクローンも同じ細胞由来であること、更にこの細胞には3種類の改変レクチン遺伝子が発現していることを示す。得られた3種類の改変レクチン遺伝子を、それぞれkyoC18-a,-b,-cとした。
PNA(野生型) C loop
   GAT ACC TAT TCC AAC AGT GAG TAC AAC GAT CCA CCC ACT
   Asp Thr Tyr Ser Asn Ser Glu Tyr Asn Asp Pro Pro Thr
KyoC18-a (2,4,6,9で確認)
   GAT GTG TGG CCT AAC CCT CCG TAT CAT GAT CCA CCC ACT
   Asp Val Trp Pro Asn Pro Pro His Asn Asp Pro Pro Thr
KyoC18-b (3のみで確認)
   GAT CGT CTT AGG AAC TAT ATT TAT AGG GAT CCA CCC ACT
   Asp Arg Leu Arg Asn Tyr Ile Tyr Arg Asp  Pro Pro Thr
KyoC18-c (4,6で確認)
   GAT TTT GGT AGG ATT CAG CAA AAG CTG AAG CCG GAT CCA CCC ACT
   Asp Phe Gly Arg Ile Gln Gln Lys Leu Lys Pro Asp Pro Pro Thr
9-8.pMXsベクターの構築と2B4細胞での発現
 sequence解析から得られた3種のプラスミドkyoC18-a,-b,-c及びpMXs-PNAベクターをEcoRI、Xho Iで切断した。アガロースゲル電気泳動図を図41に示す。
 続いて、QIAquick Gel Extraction kitを用い、ゲル抽出し、切り出されたインサートとpMXsをLigationした。
 pMXsをDH5αにトランスフォーメーションし、コロニーPCRを行い、そのアガロースゲル電気泳動図を図42に示す(primer F:pMXs-f , R:PNA-r)。プラスミド抽出し、primer:pMXs-fを用いてsequenceを確認した。
9-9.改変レクチンkyoC18-a,-b,-cの活性確認
 上記でpMXsベクターに組み換えを行った改変レクチン候補クローンkyoC18-a,-b,-cの活性確認をするため、トランスフェクションによるモノクローナルレポーター細胞の作製及び、レポーターアッセイを行った。
9-9-1.モノクローナルレポーター細胞の作製
 レトロウイルスパッケージング細胞であるPlat-E細胞を、6-well plate 1 枚に各wellあたり2 mlのD10培地で8 割のコンフルエントの状態で細胞を培養した。
 1 wellあたり、それぞれの組み換えプラスミド 4 μg(各サンプルにつき2 well)と無血清OPTI-MEM培地(Invitrogen)250μLを混ぜ、室温で5 min静置した(A)。
 1 wellあたり、Lipofectamine 2000 (Invitrogen)10 μLとOPTI-MEM培地 250 μlを混ぜ、室温で5 min静置した(B)。
 (A)と(B)を混和し、室温 20 min静置した。混合液を各wellにつき約500 μL分注し、2 日間、37 ℃で培養した。培養上清を回収し、4℃、3000 rpm、10 min遠心し、その上清をレトロウイルス液とした。5×104個の2B4細胞を6-well plateにR10培地2mlでまいた。ポリブレンを終濃度10 μg/mlとなる様添加した。2B4 1 wellに対して、それぞれ2~2,5 mlのレトロウイルス液を加えた。37℃で48 h培養した。
9-9-2.レポーターアッセイ
 96-well ELISA plateに、(i)コントロールとしてPBS、(ii)α-Fuc ポリマー (10 μg/ml)、(iii)PNAのリガンドであるGalβ1-3GalNAcα-ポリマー (10 μg/ml)、(iv)抗myc抗体 (5 μg/ml)をそれぞれ2 wellずつ加え、4℃,O/Nで固相化した。上清を回収し、wellを200 μlのPBSで洗浄した。上記で作成したレポーター細胞をR10培地 200 μlに5×104/wellでまいた。37℃で16 h培養した。上清を回収し、50 μlの0.5μM PBS/EDTAで懸濁し細胞を回収した。3 μg/mlのPIを50 μL加え(最終濃度 0.5 μg/ml)、GFPの蛍光強度をFACSで解析した。kyoC18-a、-b、及び-cの結果を、それぞれ図43、44、及び45に示す。実線が改変レクチン発現細胞を固相化したα-Fucose等で刺激したもの、灰色部分は糖鎖刺激を加えていない改変レクチン発現細胞である。
 それぞれ抗myc抗体による刺激が入っていることから、改変レクチンの発現は上手くいっていると考える。kyoC18-a及び-bに関しては、α-Fuc、Galβ1-3GalNAcのいずれの刺激も入らなかったが、cではGalβ1-3GalNAcによる刺激が確認された。繰り返し実験したところ、Fucでは弱いシグナルが入っているように見えた。
 kyoC18-cの配列はPNAに比べてループCを2アミノ酸残基拡張したものであり、かつマメ科レクチンに保存されたAsnも保存されていないというユニークな特徴を持っていた。この様な配列をもった改変レクチンが、糖鎖活性を有するという結果は初めての発見である。
10.PNA ループD改変レクチンライブラリーの作製
 マメ科レクチンに関して、ループDの長さと糖鎖結合特異性との間に相関があることがわかっている。そこで、長さの異なるRandom forward primer (i)~(iii)及び,(i)を工夫した(iv)を用いてピーナッツレクチン(PNA)のループDを改変したレクチンライブラリーを作製した。
 下表に、PNAの糖鎖結合部位を構成する4つのループ領域のアミノ酸配列を示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
10-1. PNA-D loop糖結合部位改変レクチンライブラリー用コンストラクトの作製
10-1-1 PCR
・Template DNA
 PNA cDNAを組み込んだpMXsベクタープラスミドを使用。
・Random Forward Primer (m:a/c  n:a/c/g/t)
(i) 5’-tttctgcctccggcnnmnnmnnmnnmnnmnnmatacatctcatccgttca-3’
(ii) 5’-tttctgcctccggcnnmnnmnnmnnmnnmnnmnnmatacatctcatccgttc-3’
(iii) 5’-tttctgcctccggcnnmnnmnnmnnmnnmnnmnnmnnmatacatctcatccgttc-3’
(iv)5’-tttctgcctccnnmnnmnnmnnmnnmnnmatacatctcatccgttca-3’
・Reverse Primer (pMXsベクターに相補的)
  5’-ccctttttctggagactaaat-3’
(i)はループDの6アミノ酸をランダムにしたものである。
(ii)は(i)から3塩基追加、(iii)は6塩基追加、(iv)は(i)を5'上流に3塩基ずらした設計となっている。
 PCRの条件は下表に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
 各プライマー 200μL(50μL×4 本)ずつ反応させた。
10-1-2.ブタノール濃縮
 ゲル抽出の際に切り出すゲルの量を最小限にするため、ブタノール濃縮によってサンプルの体積を減らした。
 200μLのPCR反応液に等量(200μL)の2-butanolを加えピペッティングした。15,000rpm,1 minで遠心分離後、上層(ブタノール層)を除いた。170 μLの2-butanolを加え、ピペッティングを行い、
↓15,000rpm,1 min遠心後、厳密に上層を除く→この段階で約40μLに濃縮された。
↓遠心エバポレーター(TOMY CC-105)を用いて溶液に残った2-butanolを揮発させた。(開始時条件:50 pa,Low-heat,最下スロット、5 min)
↓2-butanolの匂いが無くなるまで遠心時間を調整しながら繰り返す。
↓最終的に、約30μLに濃縮された。
10-1-3.制限酵素処理
10-1-3-1.インサートの制限酵素処理
 上記にて濃縮したサンプルを、Seakem ME Agaroseゲルを用いて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kitを用いてゲル抽出した。次に、抽出されたサンプルをNot Iを用いて制限酵素処理した。Not I処理後のインサートのゲル電気泳動の結果を図46に示す。
 Not I処理の組成を下表に示す。反応は、37℃、48時間とし、その後ゲル抽出を行った。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
10-1-3-2.ベクターの制限酵素処理
 ベクターはpMXs-myc-PNAf-reporterを用い、reporter部分をHpaIとNot Iで切り出した。反応液の組成を下表に示し、工程の概要を図47に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
10-1-4.Ligation反応
 Ligationの条件を検討した結果、4℃、5日間の条件が最も効率が高かった。この時の濃度測定に用いた泳動写真を図48に、Ligationの組成を表14に示す。図48左はインサート濃度をチェックするための電気泳動の結果を示し、右はベクター濃度をチェックするための電気泳動の結果を示す。
 Ligationの組成については、ベクターは約5600 bp、インサートは750bpであることを考慮し、ベクター:インサートの比が1:7になるように調製した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000014
10-1-5.ヒートショック法を用いた形質転換
 4℃で5日間Ligationさせた後、各0.5μLずつ取り50μLの大腸菌DH5αに加え、氷上に40分置き、42℃、1分の水浴中で保温し、再度氷上に6分置いた後、10 cm LB/Amp plateに塗り、37℃で16 hインキュベートした。結果を下表に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015
10-1-6.コロニーPCR
 各プレートからコロニーを8個ずつピックアップしてコロニーPCRを行った。上記より、(i)では5/6、(ii)では7/7、(iii)では6/8、(iv)では7/8がポジティブであるという結果を得た。なお、挿入のあるポジティブコントロールにはPNA-pMXsベクター、ネガティブコントロールにはPNAbの入っていないPNAf-pMXsベクターを用いた。
 コロニーPCRの結果を図49に示す。図49左の左から1-5 laneはライブラリー(i)、8-14 laneはライブラリー(ii)、図49右の左から3-8 laneはライブラリー(iii)、1-8 laneはライブラリー(iv)を示す。
10-1-7.Sequence解析
 10-1-6.でポジティブであったものをそれぞれ2つずつ選択し、5'側 ligation 部位のSequence解析を行った。
 図50に、ループDのランダム変異導入部位前後の塩基配列を示し、図51に、3'側 ligation 部位のSequence結果を示す。図50の矢印で示した部分(5'TTTCT~)がPrimerの配列となっており、5'側ではHpaI(GTT/AAC)切断部位直後に増幅したcDNAが繋がっていることが確認できる。同様に図51点線枠内のNotIサイト(GCGGCCGC)において3'側でも正しくligationしていることを確認した。図50の(i)ではランダム部位(四角内)が18塩基、(ii)では21塩基、(iv)では(i)から3塩基上流にずれて18塩基あり、Primerの合成が正しく行われていることがわかる。しかし、(iii)は、Ligation反応はできているものの、前半の配列が設計と全く異なるものとなっていた。確認のため別のコロニー4つをSequence解析した結果、3つに同様の結果が見られたため、Primerの合成ミスまたは保存状態に問題があったと考えられる(1つは正しい配列であった)。
10-2.エレクトロポレーション用大腸菌コンピテントセル DH10Bの作製
 Ligationさせたベクターを用いて大腸菌を形質転換しLibraryを作製する際、ヒートショック法を用いた形質転換では転換効率が低く、Libraryの作製には向いていない。そこでまず、エレクトロポレーション用のコンピテントセルであるDH10Bを作製した。
 Invitrogen社のElectro MAX DH10Bをon ice で融解し、白金耳で抗生物質の入っていない20 cm LB培地にストリークで撒いた。単一となったコロニーをピックアップして、5 mLの液体LB培地に植菌し、37℃で一晩振盪培養しプレカルチャー液とした。500 mLコルベンに新たな液体LB培地100 mLを加え、これに上記のプレカルチャー液を1 mL加えた。37℃で2時間振盪培養し、15 minごとに吸光度OD600を測定し、OD600が0.5~0.6の範囲に入るまで培養した。目的の範囲に入ったコルベンを氷水中で30 min冷し、大腸菌を仮死状態にした。これ以降、サンプルの温度を4℃以下に保持した。
 冷やしておいた50 mL 遠心チューブ2 本に分注し、2 ℃、1000 gで15 min遠心し、上清を捨てた。滅菌済みの冷Milli Qを5 mL加え、on ice でスワリングし、ペレットを溶解させた後、更に45 mLのMilli Qを加え転倒混和した。2 ℃、1000 gで15 min遠心し上清を捨てた。デカントで残った水でスワリングしペレットを溶解させた後、更に30 mLの冷Milli Qを加え転倒混和した。2℃、1000 gで15 min遠心し上清を捨てた。
 冷10%グリセロール 5 mLでスワリングし、ペレットを溶解させた後、更に10 mLの冷10 %グリセロールを加え転倒混和した。2 ℃、1000 gで15 min遠心し、上清をピペットで吸い取った。冷10%グリセロール50μL(ペレットと等量)でスワリングし、ペレットを溶解した。Total 約200 μLのDH10Bを得た。
10-3.エレクトロポレーション法による大腸菌の形質転換
 DH10Bに対し、作製したコンストラクトを用いてエレクトロポレーションした。
 エレクトロポレーションとは、細胞懸濁液に電気パルスをかけることで細胞膜に微小な穴を空け、DNAを細胞内部に送り込むことで形質転換する手法である。
 1サンプルにつき一本のキュベットをon iceで冷やしておいた。SOC培地を1.5 mLチューブに1 mLずつ分注し、on iceで冷やした。DH10Bを別の1.5 mLチューブに25μLずつ分注した(A)。続いて、(A)にエタノール沈殿したLigation液を2 μL添加した(B)。(B)を気泡が入らないように注意しながらキュベットに移した。
 キュベットをBTX-600 electro cell manipuratorにセットして1.8 kV,186 Ω,50 μFの条件で電気パルスをかけた。素早くSOC培地をスポイトで取り、キュベット内でピペッティングし懸濁液を回収後、5 mLチューブに移した。37℃で1 h振盪培養し、70 μL取りスケール測定(×1、×0.1、×0.01)し、残りは20%グリセロールにて-80℃で凍らせてストックした。
 コンピテンシー算出及びSequence解析によりループDに変異が導入されたことを確認した。結果を下表に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000016
10-1-4.ライブラリープラスミドDNAの抽出
 10-1-3.にて-80℃でストックしていたサンプルを(i)~(iii)は2枚、(iv)は4枚の20cm LB/Amp dishに約6.0×104cfu/plateとなるよう撒き、37℃で16 hインキュベートした。dish1枚につき10 mLのTB液体培地を添加し、コンラージ棒を用いて、dish上のコロニーを懸濁回収した。上清を回収し、更に5 mLの液体TB培地を加えdishをリンスした後、Ampを最終濃度100 μg/mLになるように添加して、37℃で3 h 振盪培養した。
 それぞれ1本のカラムにまとめてプラスミドDNAを抽出・精製し、各100 μLのMilli Qで調整した後、分光光度計を用いてOD260、OD280を求め、濃度及び精製度を算出した。結果を下表に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000017
 これにより、ループD改変レクチンライブラリーが作製されたことを確認した。

Claims (32)

  1.  少なくとも、レクチンと、膜貫通ドメインと、前記レクチンが糖鎖と結合すると細胞内にシグナルを伝達するシグナル伝達モチーフを含むアンカードメインと、を含む融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターと、
     前記シグナル伝達モチーフを介して細胞内にシグナルが伝達されると発現するレポーター遺伝子と、を含むレクチン提示細胞。
  2.  前記発現ベクターが、レクチンのN末端側に位置するシグナル配列、及び/又はレクチンと膜貫通ドメインとの間に位置するStalk配列をコードする核酸をさらに含む、請求項1に記載のレクチン提示細胞。
  3.  前記シグナル配列が、CD8αであり、前記膜貫通ドメインが、CD8αの膜貫通ドメインであり、前記アンカードメインが、CD3ζであり、前記レポーター遺伝子がIL-2プロモーターに作動可能に連結されている、請求項2に記載のレクチン提示細胞。
  4.  前記レポーター遺伝子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子である、請求項1から3のいずれか1項に記載のレクチン提示細胞。
  5.  請求項1から4のいずれか1項に記載のレクチン提示細胞を2以上含み、各細胞が異なるレクチンを発現する、レクチンライブラリー。
  6.  前記レクチンが、改変レクチンである、請求項5に記載のレクチンライブラリー。
  7.  前記改変レクチンがマメ化レクチンであって、天然型レクチンにおいてループCのカルシウム結合アスパラギンである残基が、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、及びグルタミン酸からなる群より選択され、且つ、該残基のN末端側4残基及びC末端側4残基の領域に少なくとも1つ、天然型レクチンとは異なるアミノ酸残基を含む、請求項6に記載のレクチンライブラリー。
  8.  前記改変レクチンが、天然型レクチンのループCよりも長いループCを有する、請求項6又は7に記載のレクチンライブラリー。
  9.  前記改変レクチンが、ループCに、以下の[1]~[6]からなる群より選択される少なくとも1のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のレクチンライブラリー:
    [1] VEFDXXXNXXXXDP;
    [2] VEFDXXXZXXXXDP;
    [3] VEFDXXXXBXXXXDP;
    [4] VEFDXXXXXBXXXXDP;
    [5] VEFDXXXXXXBXXXXDP;及び
    [6] VEFDXXXXXXXBXXXXDP
    〔但し、[1]は野生型PNAの127番目のアスパラギン酸(127N)を保存し、124~126、128~131番目のアミノ酸にランダム変異を導入したものを意味し、[2]はライブラリー[1]の127NをZに変化させたものを意味し、ライブラリー[3]~[6]は、127NをBに変化させ、さらに127Nより5’末側にアミノ酸のランダム変異導入部位を1~4アミノ酸残基分拡張したものを意味する。式中、Xは任意のアミノ酸を示し、ZはAsp、Glu、Gln、またはHisを示し、BはHis、Asp、Glu、Asn、Lys、またはGlnを示す。〕。
  10.  前記改変レクチンが、ループDに、以下の[1]~[4]からなる群より選択される少なくとも1のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のレクチンライブラリー:
    [1] SGXXXXXXIHLIR;
    [2] SGXXXXXXXIHLIR;
    [3] SGXXXXXXXXIHLIR;及び
    [4] SXXXXXXIHLIR;
    〔式中、Xは任意のアミノ酸を示す。〕。
  11.  前記レクチン提示細胞が、抗生物質耐性遺伝子を発現する、請求項5から10のいずれか1項に記載のレクチンライブラリー。
  12.  改変レクチンライブラリーを製造する方法であって:
     2以上のレトロウイルスベクターを含むレトロウイルスベクターライブラリーであって、各レトロウイルスベクターが、それぞれ異なる改変レクチンと、膜貫通ドメインと、前記レクチンが糖鎖と結合すると細胞内にシグナルを伝達するシグナル伝達モチーフを含むアンカードメインと、を含む融合タンパク質をコードする核酸、及びパッケージングシグナルを含む、レトロウイルスベクターライブラリーを調製する工程と;
     前記レトロウイルスベクターライブラリーで、パッケージング細胞を形質転換する工程と;
     前記パッケージング細胞を培養して、レクチンウイルスライブラリーを産生する工程と;
     前記レクチンウイルスライブラリーを、前記シグナル伝達モチーフを介して細胞内にシグナルが伝達されるとレポーター遺伝子が発現するように構成されたレポーター細胞に感染させる工程と;
    を含む方法。
  13.  前記レトロウイルスベクターが、レクチンのN末端側に位置するシグナル配列、及び/又はレクチンと膜貫通ドメインとの間に位置するStalk配列をコードする核酸をさらに含む、請求項12に記載の方法。
  14.  前記シグナル配列が、CD8αであり、前記膜貫通ドメインが、CD8αの膜貫通ドメインであり、前記シグナル伝達モチーフが、CD3ζであり、前記レポーター遺伝子がIL-2プロモーターに作動可能に連結されている、請求項13に記載の方法。
  15.  前記レポーター遺伝子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子である、請求項12から14のいずれか1項に記載の方法。
  16.  前記レポーター細胞が、2B4細胞、又はBWZ.36細胞である、請求項12から14のいずれか1項に記載の方法。
  17.  請求項5から11のいずれか1項に記載のレクチンライブラリーを使用して、糖鎖結合能を有するレクチンをスクリーニングする方法であって、
     糖鎖を固相担体に固定する工程と、
     前記糖鎖と前記レクチンライブラリーとを接触させてインキュベートする工程と、
     前記レポーター遺伝子の発現を検出し、レポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞を選択するする工程と、を含む方法。
  18.  前記選択されたレクチン提示細胞を培養して増殖させ、固相担体に固定された糖鎖と接触させてインキュベートし、レポーター遺伝子の発現を検出し、レポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞を選択する工程、をさらに1回以上繰り返し、糖鎖結合能を有するレクチン提示細胞を濃縮する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
  19.  前記レポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞から、レクチンをコードする核酸を抽出し、当該核酸の塩基配列を解析する工程をさらに含む、請求項17又は18に記載の方法。
  20.  請求項11に記載のレクチンライブラリーを使用して、がん細胞表面の糖鎖に結合能を有するレクチンをスクリーニングする方法であって、
     がん細胞を固相担体に固定する工程と、
     前記がん細胞と前記レクチンライブラリーとを接触させ、インキュベートする工程と、
     前記レポーター遺伝子の発現を検出する工程と、
     前記レポーター遺伝子が発現している場合、抗生物質を加えてがん細胞を死滅させ、レクチン提示細胞を回収する工程と、
    を含む方法。
  21.  前記回収されたレクチン提示細胞を培養して増殖させ、固相担体に固定されたがん細胞と接触させてインキュベートし、レポーター遺伝子の発現を検出し、レポーター遺伝子が発現している場合、抗生物質を加えてがん細胞を死滅させ、レクチン提示細胞を回収する工程、をさらに1回以上繰り返し、がん細胞表面の糖鎖に結合能を有するレクチン提示細胞を濃縮する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
  22.  前記レポーター遺伝子が発現しているレクチン提示細胞から、レクチンをコードする核酸を抽出し、当該核酸の塩基配列を解析する工程をさらに含む、請求項20又は21に記載の方法。
  23.  ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にLeu-Trp-Glnが結合し、C末端側にArg-Glu-Phe-Cysが結合している、改変マメ科レクチン。
  24.  ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にThr-Trp-Proが結合し、C末端側にArg-Ser-Tyr-Lysが結合している、改変マメ科レクチン。
  25.  ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にLys-Trp-Hisが結合し、C末端側にSer-Phe-Tyr-Aspが結合している、改変マメ科レクチン。
  26.  ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側に4アミノ酸挿入され、該アスパラギンのN末端側にVal-Asp-Leu-Gln-Val-Tyr-Ileが結合し、C末端側にGly-Ser-Leu-Asnが結合している、改変マメ科レクチン。
  27.  ループCのカルシウム結合アスパラギンのN末端側にArg-Leu-Argが結合し、C末端側にTyr-Ile-Tyr-Argが結合している、改変マメ科レクチン。
  28.  請求項24に記載の改変マメ科レクチンを含む扁平上皮がんの診断薬。
  29.  請求項26に記載の改変マメ科レクチンを含む扁平上皮がん、胃がん、膵がん、又はメラノーマの診断薬。
  30.  請求項23から27のいずれか1項に記載の改変マメ科レクチンを固相単体に固定したレクチンアレイ。
  31.  検出可能に標識した請求項23から27のいずれか1項に記載の改変マメ科レクチンを含む糖鎖検出用キット。
  32.  請求項23から27のいずれか1項に記載の改変マメ科レクチンとFcとの融合タンパク質、及び検出可能に標識した抗Fc抗体を含む、糖鎖検出用キット。
PCT/JP2012/052728 2011-02-07 2012-02-07 レクチン提示細胞、レクチンライブラリー、及びレクチンのスクリーニング方法 WO2012108424A1 (ja)

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